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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
A61M25/00 530
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023516863
(86)(22)【出願日】2021-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2021016589
(87)【国際公開番号】W WO2022230006
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻堂 盛貴
(72)【発明者】
【氏名】江利川 尭
(72)【発明者】
【氏名】桂田 武治
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-079976(JP,A)
【文献】特開平08-187292(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181962(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/150427(WO,A1)
【文献】特開平05-192410(JP,A)
【文献】国際公開第2018/055706(WO,A1)
【文献】特開2018-158008(JP,A)
【文献】特表2005-537816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00 - 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルであって、
先端部と基端部とを有するカテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトの先端部に接続される先端チップと、
を備え、
前記カテーテルシャフトの先端部には、前記カテーテルシャフトの先端または前記先端よりも基端側の位置に凹部が形成されており、
前記先端チップは、前記凹部に入り込む基端部を有し、
前記カテーテルの縦断面視において、前記先端チップの前記基端部の少なくとも一部分は、前記カテーテルの外周側から前記カテーテルの中心軸側に向けて、前記中心軸に略直交する方向、または、基端側から先端側に向かう斜め方向に延伸している、
カテーテル。
【請求項2】
請求項1に記載のカテーテルであって、さらに、
前記カテーテルシャフトに埋設され、コイルまたは編組から構成された補強体を備える、
カテーテル。
【請求項3】
請求項2に記載のカテーテルであって、
前記補強体の先端は、前記カテーテルシャフトの前記凹部から基端側に離間した位置に配置されている、
カテーテル。
【請求項4】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載のカテーテルであって、
前記先端チップは、前記カテーテルシャフトを形成する樹脂材料よりも硬度の低い樹脂材料によって形成されている、
カテーテル。
【請求項5】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載のカテーテルであって、
前記先端チップは、前記カテーテルシャフトを形成する樹脂材料よりも溶融粘度の低い樹脂材料によって形成されている、
カテーテル。
【請求項6】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載のカテーテルであって、
前記凹部は、前記カテーテルシャフトの先端に開口している、
カテーテル。
【請求項7】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載のカテーテルであって、さらに、
先端側固定部を有するバルーンを備え、
前記バルーンの前記先端側固定部は、前記先端チップと前記カテーテルシャフトとの少なくとも一方に接続されている、
カテーテル。
【請求項8】
請求項に記載のカテーテルであって、さらに、
前記カテーテルシャフトに埋設され、コイルまたは編組から構成された補強体を備え、
前記補強体の先端は、前記カテーテルの径方向において、前記バルーンの前記先端側固定部に重なる位置に位置している、
カテーテル。
【請求項9】
請求項または請求項に記載のカテーテルであって、
前記バルーンの前記先端側固定部の一部分は、前記カテーテルの径方向において、前記先端チップの前記基端部に重なる位置に固定されている、
カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは、血管等の体腔内の病変部(狭窄部や閉塞部)へ挿通されるガイドワイヤの補助をしたり、病変部を治療したりするために、体腔内に挿入される長尺状医療機器である。カテーテルは、筒状のカテーテルシャフトと、カテーテルシャフトの先端に固定された筒状の先端チップとを備える。カテーテルシャフトおよび先端チップの中空部は、例えばガイドワイヤを挿通させるためのルーメンとして機能する。
【0003】
カテーテルを病変部内に挿入しようとする際に、先端チップが病変部に捕捉される(スタックする)ことがある。先端チップが病変部に捕捉された状態で手技者がカテーテルを基端側に引っ張ると、先端チップにカテーテルの軸方向への引っ張り荷重が作用し、先端チップとカテーテルシャフトとの接合部が破断して、先端チップがインナーシャフトから脱離するおそれがある。
【0004】
カテーテルにおいて、先端チップとカテーテルシャフトとの接合部の破断を防止するために、先端チップの基端部とカテーテルシャフトの先端部とを外周から一体的に被覆するチューブを設ける技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第6918920号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術は、先端チップとカテーテルシャフトとの接合部の強度を直接的に向上させるものではなく、該接合部の外周に設けたチューブを用いて該接合部を間接的に補強するものであり、先端チップとカテーテルシャフトとの接合強度を十分に高めることができない。なお、このような課題は、バル-ンカテーテルに限らず、中空のカテーテルシャフトと、カテーテルシャフトの先端に固定された筒状の先端チップと、を備えるカテーテルに共通の課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本明細書に開示されるカテーテルは、先端部と基端部とを有するカテーテルシャフトと、前記カテーテルシャフトの先端部に接続される先端チップと、を備える。前記カテーテルシャフトの先端部には、前記カテーテルシャフトの先端または前記先端よりも基端側の位置に凹部が形成されている。前記先端チップは、前記凹部に入り込む基端部を有する。
【0009】
本カテーテルでは、先端チップの基端部が、カテーテルシャフトに形成された凹部に入り込んでいることにより、先端チップとカテーテルシャフトとの接触面積が増大し、アンカーとして機能する。そのため、本カテーテルによれば、先端チップとカテーテルシャフトとの接合強度を十分に高めることができ、カテーテルシャフトから先端チップが脱離することを効果的に抑制することができる。
【0010】
(2)上記カテーテルにおいて、さらに、前記カテーテルシャフトに埋設され、コイルまたは編組から構成された補強体を備える構成としてもよい。本カテーテルによれば、補強体によってカテーテルシャフトが補強されるため、安全性を維持したカテーテルを提供することができる。
【0011】
(3)上記カテーテルにおいて、前記補強体の先端は、前記カテーテルシャフトの前記凹部から基端側に離間した位置に配置されている構成としてもよい。本カテーテルによれば、カテーテルシャフトに凹部を形成する際、あるいは、カテーテルシャフトに先端チップを固定する際に、例えば熱や機械的な力が付与された場合にも、カテーテルシャフトから補強体が露出することを抑制することができるため、より安全性を維持したカテーテルを提供することができる。
【0012】
(4)上記カテーテルにおいて、前記カテーテルの縦断面視において、前記先端チップの前記基端部の少なくとも一部分は、前記カテーテルの外周側から前記カテーテルの中心軸側に向けて、前記中心軸に略直交する方向、または、基端側から先端側に向かう斜め方向に延伸している構成としてもよい。本カテーテルによれば、先端チップの基端部がカテーテルシャフト内部へさらに入り込むことにより、さらに効果的なアンカーとして機能させることができる。そのため、先端チップとカテーテルシャフトとの接合強度をさらに効果的に高めることができ、カテーテルシャフトから先端チップが脱離することをさらに効果的に抑制することができる。
【0013】
(5)上記カテーテルにおいて、前記先端チップは、前記カテーテルシャフトを形成する樹脂材料よりも硬度の低い樹脂材料によって形成されている構成としてもよい。本カテーテルによれば、先端チップが比較的硬度の低い樹脂材料から形成されていることから、カテーテルの先端の柔軟性を確保することができ、カテーテルの先端によって体内組織を傷付けることを抑制することができる。また、本カテーテルによれば、カテーテルシャフトが比較的硬度の高い樹脂材料から形成されていることから、カテーテルシャフトに凹部を形成した後に、加熱された先端チップの材料を凹部に流し込んでもカテーテルシャフトの先端部の形状が維持されるため、先端チップの基端部が凹部に入り込んだ構成を容易にかつ確実に実現することができる。
【0014】
(6)上記カテーテルにおいて、さらに、先端側固定部を有するバルーンを備え、前記バルーンの前記先端側固定部は、前記先端チップと前記カテーテルシャフトとの少なくとも一方に接続されている構成としてもよい。
【0015】
本カテーテルでは、先端チップの基端部が、カテーテルシャフトに形成された凹部に入り込んでいることにより、カテーテルシャフトと先端チップとの接触面積が増大し、アンカーとして機能する。そのため、本カテーテルによれば、先端チップとカテーテルシャフトとの接合強度を十分に高めることができ、カテーテルシャフトから先端チップが脱離することを効果的に抑制することができる。また、本カテーテルでは、先端チップとカテーテルシャフトとの接合部の不具合に起因してバルーンの先端側固定部が剥離することを抑制することができる。
【0016】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、カテーテル、バルーンカテーテル、それらの製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態におけるカテーテル110の構成を概略的に示す説明図
図2】第1実施形態のカテーテル110におけるカテーテルシャフト150と先端チップ180との接合部付近の詳細構成を示す説明図
図3】第1実施形態のカテーテル110におけるカテーテルシャフト150と先端チップ180との接合部付近の詳細構成を示す説明図
図4】第1実施形態の各変形例を示す説明図
図5】第1実施形態の各変形例を示す説明図
図6】第1実施形態の各変形例を示す説明図
図7】第2実施形態におけるバルーンカテーテル10の構成を概略的に示す説明図
図8】第2実施形態のバルーンカテーテル10におけるインナーシャフト50と先端チップ80との接合部付近の詳細構成を示す説明図
図9】第2実施形態の変形例を示す説明図
図10】第2実施形態の変形例を示す説明図
図11】カテーテルシャフト150に形成された凹部155の形状の変形例を示す説明図
図12】カテーテルシャフト150に形成された凹部155の形状の変形例を示す説明図
図13】カテーテルシャフト150に形成された凹部155の形状の変形例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.第1実施形態:
A-1.カテーテル110の構成:
図1は、第1実施形態におけるカテーテル110の構成を概略的に示す説明図である。図1には、カテーテル110の中心軸AXを含む縦断面(YZ断面)の構成が示されている。ただし、図示の便宜上、カテーテル110の一部の構成については、断面構成ではなく側面構成が示されており、またカテーテル110の一部の構成については、図示が省略されている。図1において、Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である。図1では、カテーテル110が全体としてZ軸方向に平行な直線状となった状態を示しているが、カテーテル110は湾曲させることができる程度の柔軟性を有している。なお、本明細書では、カテーテル110およびその各構成部材について、先端側の端を「先端」といい、先端およびその近傍を「先端部」といい、基端側の端を「基端」といい、基端およびその近傍を「基端部」という。
【0019】
カテーテル110は、血管、消化管、尿管等の人体の体腔や体内組織中に挿入されて使用される長尺状医療機器である。カテーテル110の全長は、例えば1500mm程度である。カテーテル110は、カテーテルシャフト150と、先端チップ180と、カテーテルシャフト150の基端に接続されたコネクタ160とを備える。
【0020】
カテーテルシャフト150は、例えばガイドワイヤ(不図示)が挿入されるルーメン151が形成された中空の長尺部材である。カテーテルシャフト150の外径は、例えば0.2mm~2.0mm程度である。
【0021】
カテーテルシャフト150は、樹脂材料により形成されている。カテーテルシャフト150を形成するための樹脂材料として、可撓性と適度な柔軟性を有する樹脂材料が用いられることが好ましい。そのような樹脂材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリアミドエラストマーが挙げられる。
【0022】
先端チップ180は、カテーテルシャフト150の先端部に接続された中空の部材である。先端チップ180には、カテーテルシャフト150のルーメン151に連通して一体のルーメンを構成するルーメン181が形成されている。本実施形態では、先端チップ180は、基端側から先端側に向かって徐々に縮径するテーパ状の外周面を有している。
【0023】
先端チップ180は、樹脂材料により形成されている。先端チップ180を形成するための樹脂材料として、カテーテルシャフト150を形成するための樹脂材料より柔軟性の高い(換言すれば、硬度の低い)樹脂材料が用いられる。また、先端チップ180を形成するための樹脂材料として、カテーテルシャフト150を形成するための樹脂材料より溶融粘度の低い樹脂材料が用いられる。そのような樹脂材料としては、例えば、カテーテルシャフト150がポリテトラフルオロエチレンまたはポリアミドエラストマーにより形成されている場合、ポリウレタンエラストマーが挙げられる。
【0024】
図2および図3は、第1実施形態のカテーテル110におけるカテーテルシャフト150と先端チップ180との接合部付近の詳細構成を示す説明図である。図2には、図1のX1部の縦断面(YZ断面)の構成が拡大して示されており、図3には、図2のX2部の縦断面(YZ断面)の構成が拡大して示されている。
【0025】
図2および図3に示すように、カテーテルシャフト150の先端部には、凹部155が形成されている。なお、本明細書において、カテーテルシャフト150の凹部155とは、カテーテル110の外周側から中心軸AXに近い側に向かう凹みであって、中心軸AXに平行な方向においてカテーテルシャフト150によって囲まれた部分を意味する。そのため、カテーテルシャフト150の凹部155は、図3において太線で示す部分であり、図2および図3において破線で囲んで示す部分(以下、「欠損部156」という。)は、凹部に該当しない。図2および図3に示すように、凹部155は、カテーテルシャフト150の先端153よりも基端側に位置している。また、本実施形態では、凹部155は、カテーテルシャフト150の外周面に開口している。
【0026】
先端チップ180の基端部184は、カテーテルシャフト150の凹部155に入り込んでいる。本実施形態では、先端チップ180の基端部184は、凹部155内に、ほぼ隙間無く充填されている。
【0027】
本実施形態では、カテーテル110の中心軸AXを含む少なくとも1つの縦断面(例えば、図3に示す縦断面)において、先端チップ180の基端部184(先端チップ180のうちの凹部155内に入り込んだ部分)は、カテーテル110の外周側から中心軸AX側に向けて(図3の例では、上方から下方に向けて)、基端側から先端側に向かう斜め方向(図3の例では、右上から左下に向かう方向)に延伸している。ここで、上記断面における先端チップ180の基端部184の延伸方向の特定方法は、下記の通りである。まず、該断面において、カテーテル110の外周側から中心軸AX側に向かう方向(図3の例では、上方から下方に向かう方向であり、以下、「高さ方向」ともいう。)に沿って、基端部184の高さを10等分する補助線AL(基端部184の上端を通る線および基端部184の下端を通る線を含む)を引く。次に、各補助線ALの位置で、基端部184の中心軸AX方向の幅(図3の例では、Z軸方向に沿った大きさ)を2等分する分割点P0,P1,・・・,P10を特定する。そして、各分割点P0~P10について順番に、隣り合う分割点を直線的に結ぶ仮想線VLを引く。該仮想線VLの方向を、基端部184の延伸方向とする。図3に示すように、本実施形態では、基端部184の延伸方向は、高さ方向の全体にわたって、基端側から先端側に向かう斜め方向となっている。
【0028】
なお、本実施形態では、先端チップ180とカテーテルシャフト150との接合部の構成は、カテーテル110の全周にわたって同様の構成となっている。すなわち、本実施形態のカテーテル110は、カテーテル110の中心軸AXを含む任意の断面において、図2および図3に示す先端チップ180とカテーテルシャフト150との接合部の構成を有している。
【0029】
上述したカテーテルシャフト150と先端チップ180との接合構成は、例えば、以下の方法により製造することができる。すなわち、カテーテルシャフト150を作製した後に、カテーテルシャフト150の先端部に、例えばレーザー加工を施すことによって、凹部155および欠損部156を形成する。このとき、レーザーの出力や照射方向を調整することにより、凹部155および欠損部156の形状を調整することができる。その後、加熱することによって軟化させた先端チップ180の形成材料を凹部155および欠損部156に流し込み、成形する。これにより、凹部155に基端部184が入り込んだ構成の先端チップ180が作製される。
【0030】
なお、カテーテルシャフト150の凹部155および欠損部156の形成は、他の方法によっても実現することができる。該他の方法としては、例えば、カテーテルシャフト150の内部にコイルを埋設しておき、凹部155および欠損部156を設ける位置のコイル体を除去する方法が挙げられる。また、カテーテルシャフト150にはあらかじめ凹部155および欠損部156が形成されていなくてもよく、先端チップ180をカテーテルシャフト150に接合した結果、カテーテルシャフト150の先端部に先端チップ180の基端部184が入り込むことにより凹部155が形成される構成となっていてもよい。
【0031】
A-2.第1実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態のカテーテル110は、カテーテルシャフト150と先端チップ180とを備える。カテーテルシャフト150は、先端部と基端部とを有する部材である。先端チップ180は、カテーテルシャフト150の先端部に接続されている。カテーテルシャフト150の先端部には、カテーテルシャフト150の先端153よりも基端側の位置に凹部155が形成されている。先端チップ180は、凹部155に入り込む基端部184を有する。
【0032】
このように、本実施形態のカテーテル110では、先端チップ180の基端部184が、カテーテルシャフト150に形成された凹部155に入り込んでいることにより、先端チップ180とカテーテルシャフト150との接触面積が増大し、アンカーとして機能する。そのため、本実施形態のカテーテル110によれば、先端チップ180とカテーテルシャフト150との接合強度を十分に高めることができ、カテーテル110の軸方向への引っ張り荷重が作用した場合にであっても、カテーテルシャフト150から先端チップ180が脱離することを効果的に抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態のカテーテル110では、カテーテル110の縦断面視において、先端チップ180の基端部184の少なくとも一部分は、カテーテル110の外周側からカテーテル110の中心軸AX側に向けて、基端側から先端側に向かう斜め方向に延伸している。そのため、本実施形態のカテーテル110によれば、先端チップ180の基端部184がカテーテルシャフト150内部へさらに入り込むことにより、さらに効果的なアンカーとして機能させることができる。そのため、本実施形態のカテーテル110によれば、先端チップ180とカテーテルシャフト150との接合強度を極めて効果的に高めることができ、カテーテルシャフト150から先端チップ180が脱離することを極めて効果的に抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態のカテーテル110では、カテーテルシャフト150は、樹脂材料から形成されており、先端チップ180は、カテーテルシャフト150の形成のための樹脂材料よりも硬度の低い樹脂材料によって形成されている。本実施形態のカテーテル110によれば、先端チップ180が比較的硬度の低い樹脂材料から形成されていることから、カテーテル110の先端の柔軟性を確保することができ、カテーテル110の先端によって体内組織を傷付けることを抑制することができる。また、本実施形態のカテーテル110によれば、カテーテルシャフト150が比較的硬度の高い樹脂材料から形成されていることから、カテーテルシャフト150に凹部155を形成した後に、加熱された先端チップ180の材料を凹部155に流し込んでもカテーテルシャフト150の先端部の形状が維持されるため、先端チップ180の基端部184が凹部155に入り込んだ構成を容易にかつ確実に実現することができる。
【0035】
A-3.第1実施形態の変形例:
図4から図6は、第1実施形態の各変形例を示す説明図である。図4のA欄に示す変形例では、先端チップ180の基端部184の延伸方向が、上述した第1実施形態と異なる。すなわち、図4のA欄に示す変形例では、先端チップ180の基端部184は、カテーテル110の外周側から中心軸AX側に向けて、中心軸AXに略直交する方向(図4の例では、Y軸に平行な方向)に延伸している。図4のA欄に示す変形例の構成においても、先端チップ180の基端部184が、カテーテルシャフト150に形成された凹部155に入り込んでいることにより、先端チップ180とカテーテルシャフト150との接触面積が増大し、アンカーとして機能するため、先端チップ180とカテーテルシャフト150との接合強度を十分に高めることができ、カテーテルシャフト150から先端チップ180が脱離することを効果的に抑制することができる。
【0036】
図4のB欄に示す変形例では、先端チップ180の基端部184の高さが比較的低い(凹部155の深さが比較的浅い)という点で、図4のA欄に示す変形例と異なる。図4のB欄に示す変形例の構成においても、先端チップ180の基端部184が、カテーテルシャフト150に形成された凹部155に入り込んでいることにより、先端チップ180とカテーテルシャフト150との接触面積が増大し、アンカーとして機能するため、先端チップ180とカテーテルシャフト150との接合強度を十分に高めることができ、カテーテルシャフト150から先端チップ180が脱離することを効果的に抑制することができる。
【0037】
図5のA欄に示す変形例では、先端チップ180の基端部184の延伸方向が、上述した第1実施形態と異なる。すなわち、図5のA欄に示す変形例では、先端チップ180の基端部184は、カテーテル110の外周側から中心軸AX側に向けて、先端側から基端側に向かう斜め方向(図5の例では、左上から右下に向かう方向)に延伸している。図5のA欄に示す変形例の構成においても、先端チップ180の基端部184が、カテーテルシャフト150に形成された凹部155に入り込んでいることにより、先端チップ180とカテーテルシャフト150との接触面積が増大し、アンカーとして機能するため、先端チップ180とカテーテルシャフト150との接合強度を十分に高めることができ、カテーテルシャフト150から先端チップ180が脱離することを効果的に抑制することができる。
【0038】
図5のB欄に示す変形例では、先端チップ180の基端部184の延伸方向が、上述した第1実施形態と異なる。すなわち、図5のB欄に示す変形例では、先端チップ180の基端部184の内、カテーテル110の外周に近い側(上側)の一部分は、カテーテル110の外周側から中心軸AX側に向けて、先端側から基端側に向かう斜め方向(図5の例では、左上から右下に向かう方向)に延伸している一方、中心軸AXに近い側(下側)の一部分は、カテーテル110の外周側から中心軸AX側に向けて、基端側から先端側に向かう斜め方向(図5の例では、右上から左下に向かう方向)に延伸している。図5のB欄に示す変形例の構成においても、先端チップ180の基端部184が、カテーテルシャフト150に形成された凹部155に入り込んでいることにより、先端チップ180とカテーテルシャフト150との接触面積が増大し、アンカーとして機能するため、先端チップ180とカテーテルシャフト150との接合強度を十分に高めることができ、カテーテルシャフト150から先端チップ180が脱離することを効果的に抑制することができる。
【0039】
図6に示す変形例では、カテーテルシャフト150が、中空の内層158と、内層158の外周を覆う外層159と、を有する2層チューブであり、内層158と外層159との間に、例えば金属により形成されたコイルが補強体190として配置されている。補強体190の先端193は、カテーテルシャフト150の凹部155から基端側に離間した位置に配置されている。図6に示す変形例によれば、補強体190によってカテーテルシャフト150が補強されるため、安全性を維持したカテーテル110を提供することができる。また、図6に示す変形例によれば、カテーテルシャフト150に凹部155を形成する際、あるいは、カテーテルシャフト150に先端チップ180を固定する際に、例えば熱や機械的な力が付与された場合にも、カテーテルシャフト150から補強体190が露出することを抑制することができるため、より安全性を維持したカテーテル110を提供することができる。
【0040】
B.第2実施形態:
B-1.バルーンカテーテル10の構成:
図7は、第2実施形態におけるバルーンカテーテル10の構成を概略的に示す説明図である。図7には、バルーンカテーテル10の中心軸AXを含む縦断面(YZ断面)の構成が示されている。ただし、図示の便宜上、バルーンカテーテル10の一部の構成については、断面構成ではなく側面構成が示されており、またバルーンカテーテル10の一部の構成については、図示が省略されている。図7において、Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である。図7では、バルーンカテーテル10が全体としてZ軸方向に平行な直線状となった状態を示しているが、バルーンカテーテル10は湾曲させることができる程度の柔軟性を有している。なお、本明細書では、バルーンカテーテル10およびその各構成部材について、先端側の端を「先端」といい、先端およびその近傍を「先端部」といい、基端側の端を「基端」といい、基端およびその近傍を「基端部」という。
【0041】
バルーンカテーテル10は、血管等の体腔内の病変部(狭窄部や閉塞部)を押し広げて拡張させるために、体腔内に挿入される長尺状医療機器である。本実施形態のバルーンカテーテル10は、いわゆるラピッドエクスチェンジ型のバルーンカテーテルである。バルーンカテーテル10の全長は、例えば1500mm程度である。バルーンカテーテル10は、特許請求の範囲におけるカテーテルの一例である。
【0042】
バルーンカテーテル10は、バルーン20と、アウターシャフト30と、インナーシャフト50と、先端チップ80と、アウターシャフト30の基端に接続されたコネクタ60とを備える。
【0043】
インナーシャフト50は、例えばガイドワイヤ(不図示)が挿入されるルーメン51が形成された中空の長尺部材である。インナーシャフト50の外径は、例えば0.2mm~2.0mm程度である。インナーシャフト50におけるバルーン20の内部の位置には、放射線照射下でバルーン20の位置を把握できるように、放射線不透過性を有するマーカ25a,25bが取り付けられている。マーカ25a,25bの数や位置は、バルーン20の長さに応じて、適宜、変更することができる。インナーシャフト50は、特許請求の範囲におけるカテーテルシャフトの一例である。
【0044】
インナーシャフト50は、樹脂材料により形成されている。インナーシャフト50を形成するための樹脂材料として、可撓性と適度な柔軟性を有する樹脂材料が用いられることが好ましい。そのような樹脂材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリアミドエラストマーが挙げられる。
【0045】
先端チップ80は、インナーシャフト50の先端部に接続された中空の部材である。先端チップ80には、インナーシャフト50のルーメン51に連通して一体のルーメンを構成するルーメン81が形成されている。
【0046】
先端チップ80は、樹脂材料により形成されている。先端チップ80を形成するための樹脂材料として、インナーシャフト50を形成するための樹脂材料より柔軟性の高い(換言すれば、硬度の低い)樹脂材料が用いられる。また、先端チップ80を形成するための樹脂材料として、インナーシャフト50を形成するための樹脂材料より溶融粘度の低い樹脂材料が用いられる。そのような樹脂材料としては、例えば、インナーシャフト50がポリテトラフルオロエチレンまたはポリアミドエラストマーにより形成されている場合、ポリウレタンエラストマーが挙げられる。
【0047】
アウターシャフト30は、中空の部材である。アウターシャフト30は、先端側から順に、先端アウターシャフト部32と、ガイドワイヤポート部33と、中間アウターシャフト部35と、基端アウターシャフト部37とから構成されている。先端アウターシャフト部32および中間アウターシャフト部35は、樹脂材料により形成された筒状部である。先端アウターシャフト部32には、インナーシャフト50が挿入されており、先端アウターシャフト部32とインナーシャフト50との間には、バルーン20を拡張するための流体(造影剤や生理食塩水等)を供給するためのルーメン31が形成されている。ガイドワイヤポート部33は、先端アウターシャフト部32と、中間アウターシャフト部35と、インナーシャフト50とを互いに溶着した部分である。基端アウターシャフト部37は、いわゆるハイポチューブと呼ばれる金属製の管状部材である。基端アウターシャフト部37の先端は、中間アウターシャフト部35の基端に挿入されて溶着されている。
【0048】
バルーン20は、流体の供給および排出に伴い拡張および収縮可能な部材であり、例えば樹脂材料により形成されている。バルーン20の先端側固定部22は、先端チップ80の基端部およびインナーシャフト50の先端部に、例えば溶着により接続されており、バルーン20の基端側固定部23は、アウターシャフト30の先端部に、例えば溶着により接続されている。
【0049】
図8は、第2実施形態のバルーンカテーテル10におけるインナーシャフト50と先端チップ80との接合部付近の詳細構成を示す説明図である。図8には、図7のX3部の縦断面(YZ断面)の構成が拡大して示されている。
【0050】
図8に示すように、インナーシャフト50の先端部には、凹部55が形成されている。なお、本明細書において、インナーシャフト50の凹部55とは、バルーンカテーテル10の外周側から中心軸AXに近い側に向かう凹みであって、中心軸AXに平行な方向においてインナーシャフト50によって囲まれた部分を意味する。図8に示すように、凹部55は、インナーシャフト50の先端53よりも基端側に位置している。また、本実施形態では、凹部55は、インナーシャフト50の外周面52に開口している。
【0051】
先端チップ80の基端部84は、インナーシャフト50の凹部55に入り込んでいる。本実施形態では、先端チップ80の基端部84は、凹部55内に、ほぼ隙間無く充填されている。
【0052】
本実施形態では、バルーンカテーテル10の中心軸AXを含む少なくとも1つの縦断面(例えば、図8に示す縦断面)において、先端チップ80の基端部84(先端チップ80のうちの凹部55内に入り込んだ部分)は、バルーンカテーテル10の外周側から中心軸AX側に向けて(図8の例では、上方から下方に向けて)、基端側から先端側に向かう斜め方向(図8の例では、右上から左下に向かう方向)に延伸している。図8に示すように、本実施形態では、基端部84の延伸方向は、高さ方向の全体にわたって、基端側から先端側に向かう斜め方向となっている。なお、上記断面における基端部84の延伸方向の特定方法は、上述した第1実施形態における基端部184の延伸方向の特定方法と同様である。また、本実施形態では、先端チップ80とインナーシャフト50との接合部の構成は、バルーンカテーテル10の全周にわたって同様の構成となっている。すなわち、本実施形態のバルーンカテーテル10は、バルーンカテーテル10の中心軸AXを含む任意の断面において、図8に示す先端チップ80とインナーシャフト50との接合部の構成を有している。また、上述したインナーシャフト50と先端チップ80との接合構成の製造方法は、上述した第1実施形態におけるカテーテルシャフト150と先端チップ180との接合構成の製造方法と同様である。
【0053】
なお、図8に示すように、本実施形態では、インナーシャフト50の内部に、インナーシャフト50の延伸方向に延伸する補強体90が配置されている。より詳細には、インナーシャフト50は、中空の内層58と、内層58の外周を覆う外層59と、を有する2層チューブであり、内層58と外層59との間に、例えば金属により形成されたコイルが補強体90として配置されている。補強体90は、インナーシャフト50の最先端部には配置されていない。すなわち、補強体90の先端93は、インナーシャフト50の凹部55よりも基端側に位置している。
【0054】
上述したように、本実施形態では、先端チップ80を形成するための樹脂材料として、インナーシャフト50を形成するための樹脂材料より柔軟性の高い樹脂材料が用いられるが、より詳細には、インナーシャフト50の外層59を形成するための樹脂材料より柔軟性の高い樹脂材料が用いられる。なお、インナーシャフト50の内層58と外層59とは、同種の樹脂材料により形成されていてもよいし、異なる種類の樹脂材料により形成されていてもよい。
【0055】
以上説明したように、第2実施形態のバルーンカテーテル10は、インナーシャフト50と先端チップ80とを備える。インナーシャフト50は、先端部と基端部とを有する部材である。先端チップ80は、インナーシャフト50の先端部に接続されている。インナーシャフト50の先端部には、インナーシャフト50の先端53よりも基端側の位置に凹部55が形成されている。先端チップ80は、凹部55に入り込む基端部84を有する。
【0056】
このように、第2実施形態のバルーンカテーテル10では、先端チップ80の基端部84が、インナーシャフト50に形成された凹部55に入り込んでいることにより、先端チップ80とインナーシャフト50との接触面積が増大し、アンカーとして機能する。そのため、第2実施形態のバルーンカテーテル10によれば、先端チップ80とインナーシャフト50との接合強度を十分に高めることができ、インナーシャフト50から先端チップ80が脱離することを効果的に抑制することができる。なお、インナーシャフト50にはあらかじめ凹部55が形成されていなくてもよく、先端チップ80をインナーシャフト50に接合した結果、インナーシャフト50の先端部に先端チップ80の基端部84が入り込むことにより凹部55が形成される構成となっていてもよい。
【0057】
また、第2実施形態のバルーンカテーテル10では、バルーンカテーテル10の縦断面視において、先端チップ80の基端部84の少なくとも一部分は、バルーンカテーテル10の外周側からバルーンカテーテル10の中心軸AX側に向けて、基端側から先端側に向かう斜め方向に延伸している。そのため、第2実施形態のバルーンカテーテル10によれば、先端チップ80の基端部84がインナーシャフト50内部へさらに入り込むことにより、さらに効果的なアンカーとして機能させることができる。そのため、本実施形態のバルーンカテーテル10によれば、先端チップ80とインナーシャフト50との接合強度をさらに効果的に高めることができ、インナーシャフト50から先端チップ80が脱離することをさらに効果的に抑制することができる。
【0058】
また、第2実施形態のバルーンカテーテル10では、インナーシャフト50は、樹脂材料から形成された外層59を有し、先端チップ80は、インナーシャフト50の外層59の形成のための樹脂材料よりも硬度の低い樹脂材料によって形成されている。そのため、第2実施形態のバルーンカテーテル10によれば、先端チップ80が比較的硬度の低い樹脂材料から形成されていることから、バルーンカテーテル10の先端の柔軟性を確保することができ、バルーンカテーテル10の先端によって体内組織を傷付けることを抑制することができる。また、第2実施形態のバルーンカテーテル10によれば、インナーシャフト50の外層59が比較的硬度の高い樹脂材料から形成されていることから、インナーシャフト50に凹部55を形成した後に、加熱された先端チップ80の形成材料を凹部55に流し込んでもインナーシャフト50の先端部の形状が維持されるため、先端チップ80の基端部84が凹部55に入り込んだ構成を容易にかつ確実に実現することができる。
【0059】
また、第2実施形態のバルーンカテーテル10は、さらに、インナーシャフト50に埋設され、コイルから構成された補強体90を備える。そのため、補強体90によってインナーシャフト50が補強されるため、安全性を維持したバルーンカテーテル10を提供することができる。また、第2実施形態のバルーンカテーテル10では、補強体90の先端93は、インナーシャフト50の凹部55から基端側に離間した位置に配置されている。そのため、インナーシャフト50に凹部55を形成する際、あるいは、インナーシャフト50に先端チップ80を固定する際に、例えば熱や機械的な力が付与された場合にも、インナーシャフト50から補強体90が露出することを抑制することができる。従って、第2実施形態のバルーンカテーテル10によれば、より安全性を維持したバルーンカテーテル10を提供することができる。
【0060】
また、第2実施形態のバルーンカテーテル10は、さらに、先端側固定部22を有するバルーン20を備える。バルーン20の先端側固定部22は、先端チップ80とインナーシャフト50との両方に接続されている。そのため、第2実施形態のバルーンカテーテル10によれば、アンカーとして機能する先端チップ80の基端部84の存在によって先端チップ80とインナーシャフト50との接合強度を十分に高めることができ、その結果、先端チップ80とインナーシャフト50との接合部の不具合に起因してバルーン20の先端側固定部22が剥離することを抑制することができる。また、第2実施形態のバルーンカテーテル10によれば、先端チップ80とインナーシャフト50との接合強度を更に高めることができ、インナーシャフト50から先端チップ80が脱離することをより効果的に抑制することができる。
【0061】
また、第2実施形態のバルーンカテーテル10では、バルーン20の先端側固定部22の一部分は、バルーンカテーテル10の径方向において、先端チップ80の基端部84に重なる位置に固定されている。そのため、第2実施形態のバルーンカテーテル10によれば、バルーン20の先端側固定部22の存在によって先端チップ80の基端部84が設けられた箇所を補強することができ、先端チップ80とインナーシャフト50との接合強度をさらに効果的に高めることができ、インナーシャフト50から先端チップ80が脱離することをさらに効果的に抑制することができる。
【0062】
B-2.第2実施形態の変形例:
上述した第2実施形態では、いわゆるラピッドエクスチェンジ型のバルーンカテーテルを例に挙げて説明したが、本明細書に開示される技術は、他のタイプのバルーンカテーテルにも同様に適用可能である。図9および図10は、第2実施形態の変形例を示す説明図である。第2実施形態の変形例は、本明細書に開示される技術を、いわゆるオーバーザワイヤ型のバルーンカテーテルに適用した例である。図9には、第2実施形態の変形例におけるバルーンカテーテル10aの中心軸AXを含む縦断面(YZ断面)の構成が示されており、図10には、図9のX4部の縦断面(YZ断面)の構成が拡大して示されている。
【0063】
第2実施形態の変形例におけるバルーンカテーテル10aは、バルーン20と、シャフト40と、先端チップ80と、シャフト40の基端に接続されたコネクタ70とを備える。シャフト40は、特許請求の範囲におけるカテーテルシャフトの一例である。
【0064】
先端チップ80は、シャフト40の先端部に接続されている。先端チップ80には、シャフト40のルーメン41に連通して一体のルーメンを構成するルーメン81が形成されている。該一体のルーメンは、コネクタ70に形成された処置部78の内腔と連通している。バルーン20の先端側固定部22は、先端チップ80の基端部およびシャフト40の先端部に、例えば溶着により接続されており、バルーン20の基端側固定部23は、シャフト40に、例えば溶着により接続されている。
【0065】
シャフト40には、バルーン20を拡張するための流体を供給するためのルーメン47が形成されている。このルーメン47は、コネクタ70に形成された流体注入排出部77の内腔と連通している。
【0066】
図10に示すように、シャフト40の先端部には、凹部45が形成されている。凹部45は、シャフト40の先端43よりも基端側に位置している。また、凹部45は、シャフト40の外周面に開口している。先端チップ80の基端部84は、シャフト40の凹部45に入り込んでいる。
【0067】
シャフト40の内部には、補強体90が配置されている。すなわち、シャフト40は、中空の内層48と、内層48の外周を覆う外層49と、を有する2層チューブであり、内層48と外層49との間に、例えば金属により形成されたコイルが補強体90として配置されている。補強体90の先端93は、シャフト40の凹部45よりも基端側に位置している。また、補強体90の先端93は、バルーンカテーテル10aの径方向において、バルーン20の先端側固定部22に重なる位置に位置している。
【0068】
図9および図10に示す第2実施形態の変形例のバルーンカテーテル10aによれば、上述した第2実施形態のバルーンカテーテル10aと同様に、シャフト40から先端チップ80が脱離することを効果的に抑制することができる。すなわち、第2実施形態の変形例のバルーンカテーテル10aでは、先端チップ80の基端部84が、シャフト40に形成された凹部45に入り込んでいることにより、先端チップ80とシャフト40との接触面積が増大し、アンカーとして機能するため、先端チップ80とシャフト40との接合強度を十分に高めることができ、シャフト40から先端チップ80が脱離することを効果的に抑制することができる。
【0069】
なお、第2実施形態の変形例のバルーンカテーテル10aでは、補強体90の先端93が、バルーンカテーテル10aの径方向において、バルーン20の先端側固定部22に重なる位置に位置しているため、補強体90によってバルーン20が補強され、安全性を維持したバルーンカテーテル10aを提供することができる。
【0070】
C.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0071】
上記実施形態におけるカテーテル110およびバルーンカテーテル10の構成や、それらの装置を構成する部品の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、先端チップ180(80)の基端部184(84)は、凹部155(55)内にほぼ隙間無く充填されているが、基端部184(84)と凹部155(55)との間に多少の隙間があってもよい。
【0072】
上記実施形態におけるカテーテルシャフト150(またはインナーシャフト50、以下同様)に形成された凹部155(または凹部55、以下同様)の形状は、あくまで一例であり、種々変形可能である。図11から図13は、カテーテルシャフト150に形成された凹部155の形状の変形例を示す説明図である。図11から図13には、中心軸AXを含むカテーテルシャフト150の縦断面(YZ断面)の構成が示されている。凹部155の断面形状は、図11のA欄に示すように、略矩形の部分と、該部分の軸方向中央付近から外周面152(より詳細には、外周面152の内の凹部155の内表面を構成する部分を除く部分、以下同様)まで延びる細幅の部分と、から構成される形状であってもよいし、図11のB欄に示すように、略円形の部分と、該部分の軸方向中央付近から外周面152まで延びる細幅の部分と、から構成される形状であってもよいし、図11のC欄に示すように、外周面152に近いほど幅が太くなるような略釣り鐘状であってもよい。また、凹部155の断面形状は、図12のA欄に示すように、略矩形の部分と、該部分の基端部付近から外周面152まで延びる細幅の部分と、から構成される形状であってもよいし、図12のB欄に示すように、略矩形の部分と、該部分の先端部付近から外周面152まで延びる細幅の部分と、から構成される形状であってもよいし、図12のC欄に示すように、外周面152に開口する略矩形状であってもよい。また、凹部155の断面形状は、図13のA欄に示すように、外周面152に近いほど幅が太くなるような略逆三角形状であってもよいし、図13のB欄に示すように、外周面152に開口する略円形状であってもよいし、図13のC欄に示すように、略矩形の部分と、該部分の先端部付近からカテーテルシャフト150の先端153の面まで延びる細幅の部分と、から構成される形状であってもよい。
【0073】
上記第2実施形態では、インナーシャフト50の内部に補強体90が配置されているが、インナーシャフト50の外部に、インナーシャフト50に沿って補強体90が配置されていてもよい。また、補強体90として、コイルの他に、例えば編組といった他の材料を用いてもよい。また、上記第2実施形態において、補強体90を省略してもよい。
【0074】
上記第2実施形態では、インナーシャフト50が2層構成であるが、インナーシャフト50が、単層構成であってもよいし、3層以上の構成であってもよい。また、上記第2実施形態では、バルーン20の先端側固定部22が先端チップ80とインナーシャフト50との両方に接続されているが、バルーン20の先端側固定部22が先端チップ80とインナーシャフト50との一方に接続されているとしてもよい。
【0075】
上記第2実施形態では、先端チップ80とインナーシャフト50との接合部の構成は、バルーンカテーテル10の全周にわたって同様の構成となっているが、バルーンカテーテル10の全周のうちの少なくとも一部分において、該接合部の構成が採用されていればよい。また、上記第2実施形態において、図4および図5に示された第1実施形態の変形例と同様の変形例が採用されてもよい。
【0076】
上記第1実施形態では、カテーテルシャフト150が単層構成であるが、カテーテルシャフト150が多層構成であってもよい。カテーテルシャフト150が多層構成である場合には、先端チップ180を形成するための樹脂材料として、カテーテルシャフト150の最外層を形成するための樹脂材料より柔軟性の高い樹脂材料が用いられる。また、カテーテルシャフト150の内部にコイルや編組等の補強体が配置されていてもよい。
【0077】
上記第1実施形態では、先端チップ180とカテーテルシャフト150との接合部の構成は、カテーテル110の全周にわたって同様の構成となっているが、カテーテル110の全周のうちの少なくとも一部分において、該接合部の構成が採用されていればよい。
【0078】
上記実施形態では、カテーテルシャフト150(またはインナーシャフト50、以下同様)の先端部において、カテーテルシャフト150の先端153(または先端53、以下同様)よりも基端側の位置に凹部155(または凹部55、以下同様)が形成されているが、凹部155がカテーテルシャフト150の先端153に形成されていてもよい。
【0079】
上記各実施形態における各部材の形成材料は、あくまで一例であり、種々変更可能である。また、上記各実施形態におけるカテーテル110およびバルーンカテーテル10の製造方法は、あくまで一例であり、他の方法によりカテーテル110およびバルーンカテーテル10が製造されてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10:バルーンカテーテル 20:バルーン 22:先端側固定部 23:基端側固定部 25a,25b:マーカ 30:アウターシャフト 31:ルーメン 32:先端アウターシャフト部 33:ガイドワイヤポート部 35:中間アウターシャフト部 37:基端アウターシャフト部 40:シャフト 41:ルーメン 43:先端 45:凹部 47:ルーメン 48:内層 49:外層 50:インナーシャフト 51:ルーメン 52:外周面 53:先端 55:凹部 58:内層 59:外層 60:コネクタ 70:コネクタ 77:流体注入排出部 78:処置部 80:先端チップ 81:ルーメン 84:基端部 90:補強体 93:先端 110:カテーテル 150:カテーテルシャフト 151:ルーメン 152:外周面 153:先端 155:凹部 156:欠損部 158:内層 159:外層 160:コネクタ 180:先端チップ 181:ルーメン 184:基端部 190:補強体 193:先端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13