(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】光コネクタ清掃工具
(51)【国際特許分類】
G02B 6/36 20060101AFI20240903BHJP
B08B 1/30 20240101ALI20240903BHJP
【FI】
G02B6/36
B08B1/30
(21)【出願番号】P 2023529492
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2022005384
(87)【国際公開番号】W WO2022269991
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2021104165
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂口 有也
(72)【発明者】
【氏名】藤田 峻介
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/141405(WO,A1)
【文献】特開2007-003901(JP,A)
【文献】特開2005-181971(JP,A)
【文献】特開2014-206733(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0098045(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/36-6/40
B08B 1/30-1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光コネクタの接続端面を清掃する光コネクタ清掃工具であって、
帯状の清掃体を供給する供給部と、
前記供給部から供給された前記清掃体を前記接続端面に押し付ける押圧面を持つヘッド部と、前記ヘッド部を支持する支持部と、を有する清掃シャフトと、
前記押圧面から前記清掃体を回収する回収部と、
前記ヘッド部が突出するように前記清掃シャフトを収容した内孔を有する筒状部材と、を備え、
前記押圧面から前記回収部に回収される前記清掃体は、前記内孔の内面と、前記ヘッド部において前記内面と対向する第1の対向部と、の間を通過し、
前記第1の対向部は、
前記内面と前記第1の対向部との間に前記清掃体が介在する第1の領域と、
前記第1の領域に隣接する第2の領域と、を含み、
前記内面と前記第1の領域との間の第1の隙間は、前記内面と前記第2の領域との間の第2の隙間よりも広
く、
前記内面において前記第1の対向部と対向する部分は、外側に向かって凹んだ円弧状の断面形状を有しており、
前記円弧状の断面形状の曲率半径は、前記ヘッド部の厚さ方向における前記内孔の最大径よりも大きい光コネクタ清掃工具。
【請求項2】
請求項
1に記載の光コネクタ清掃工具であって、
前記供給部から前記押圧面に供給される前記清掃体は、前記内孔の内面と、前記ヘッド部において前記内面と対向する第2の対向部と、の間を通過し、
前記第2の対向部は、
前記内面と前記第2の対向部との間に前記清掃体が介在する第3の領域と、
前記第3の領域に隣接する第4の領域と、を含み、
前記内面と前記第3の領域との間の第3の隙間は、前記内面と前記第4の領域との間の第4の隙間よりも広い光コネクタ清掃工具。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の光コネクタ清掃工具であって、
前記供給部は、使用前の前記清掃体を送り出す送出ボビンを含み、
前記回収部は、使用済みの前記清掃体を巻き取る巻取ボビンを含み、
前記光コネクタ清掃工具は、
前記送出ボビンと前記巻取ボビンを収容した工具本体と、
前記工具本体に対する前記清掃シャフトの相対移動に伴って、前記巻取ボビンを回転駆動させることで、前記清掃体を前記巻取ボビンに巻回する駆動機構と、を備えた光コネクタ清掃工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタの接続端面を清掃する光コネクタ清掃工具に関するものである。
文献の参照による組み込みが認められる指定国については、2021年6月23日に日本国に出願された特願2021-104165に記載された内容を参照により本明細書に組み込み、本明細書の記載の一部とする。
【背景技術】
【0002】
清掃テープにより光コネクタの接続端面を清掃する光コネクタ清掃工具として、清掃シャフトの進退移動に伴って、清掃テープを供給リールから清掃シャフトの先端に供給すると共に、当該清掃テープを清掃シャフトから引取リールに回収するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この光コネクタ清掃工具の清掃シャフトは、清掃テープを接続端面に当接させる先端摺動面を有するテープ支持軸と、このテープ支持軸を支持する円筒状のガイドパイプと、を備えている。テープ支持軸の上面には、清掃テープが当該テープ支持軸の先端に向かって移動するテープ往路が形成されていると共に、当該テープ支持軸の下面にも、清掃テープが後端に向かって移動するテープ復路が形成されている。また、ガイドパイプの内部にも、清掃テープが移動するテープ往路とテープ復路とが形成されている。そして、テープ支持軸の挿入軸がガイドパイプの内部に挿入されており、テープ支持軸のテープ往路とガイドパイプのテープ往路とが繋がっていると共に、テープ支持軸のテープ復路とガイドパイプのテープ復路とが繋がっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の光コネクタ清掃工具では、清掃テープが引取リールに回収される際、当該移動する清掃テープによってテープ支持軸が引っ張られることで当該テープ支持軸が上方(回収側)に撓んでしまう場合がある。このため、テープ支持軸とガイドパイプとの間に清掃テープが挟まれてしまい、清掃テープの回収が困難になってしまう場合がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、清掃体の回収を円滑に行うことができる光コネクタ清掃工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明に係る光コネクタ清掃具は、光コネクタの接続端面を清掃する光コネクタ清掃工具であって、帯状の清掃体を供給する供給部と、前記供給部から供給された前記清掃体を前記接続端面に押し付ける押圧面を持つヘッド部と、前記ヘッド部を支持する支持部と、を有する清掃シャフトと、前記押圧面から前記清掃体を回収する回収部と、前記ヘッド部が突出するように前記清掃シャフトを収容した内孔を有する筒状部材と、を備え、前記押圧面から前記回収部に回収される前記清掃体は、前記内孔の内面と、前記ヘッド部において前記内面と対向する第1の対向部と、の間を通過し、前記第1の対向部は、前記内面と前記第1の対向部との間に前記清掃体が介在する第1の領域と、前記第1の領域に隣接する第2の領域と、を含み、前記内面と前記第1の領域との間の第1の隙間は、前記内面と前記第2の領域との間の第2の隙間よりも広い光コネクタ清掃工具である。
【0008】
[2]上記発明において、前記内面において前記第1の対向部と対向する部分は、外側に向かって凹んだ円弧状の断面形状を有していてもよい。
【0009】
[3]上記発明において、前記内面において前記第1の対向部と対向する部分は、外側に向かって凹んだ段差状の断面形状を有していてもよい。
【0010】
[4]上記発明において、前記供給部から前記押圧面に供給される前記清掃体は、前記内孔の内面と、前記ヘッド部において前記内面と対向する第2の対向部と、の間を通過し、前記第2の対向部は、前記内面と前記第2の対向部との間に前記清掃体が介在する第3の領域と、前記第3の領域に隣接する第4の領域と、を含み、前記内面と前記第3の領域との間の第3の隙間は、前記内面と前記第4の領域との間の第4の隙間よりも広くてもよい。
【0011】
[5]上記発明において、前記供給部は、使用前の前記清掃体を送り出す送出ボビンを含み、前記回収部は、使用済みの前記清掃体を巻き取る巻取ボビンを含み、前記光コネクタ清掃工具は、前記送出ボビンと前記巻取ボビンを収容した工具本体と、前記工具本体に対する前記清掃シャフトの相対移動に伴って、前記巻取ボビンを回転駆動させることで、前記清掃体を前記巻取ボビンに巻回する駆動機構と、を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、筒状部材の内孔の内面と、ヘッド部材の第1の対向部の第1の領域との間の第1の間隔が、前記内面と前記第1の対向部の第2の領域との間の第2の間隔よりも広くなっているので、清掃体の回収を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態における光コネクタ清掃工具の清掃対象である光コネクタを示す正面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態における光コネクタ清掃工具を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態においてカバーを外した状態の光コネクタ清掃工具を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態において工具本体から一方のハウジングを外すと共に延出部材から筒状部材を外した状態の光コネクタ清掃工具を示す分解斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態における工具本体の分解斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態における延出部材の分解斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態におけるヘッド部材を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態における延出部材の先端部分の断面図であり、
図3のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態におけるヘッド部材と筒状部材の内孔の内面との関係を示す図であり、
図8のIX-IX線に沿った端面図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態における筒状部材の内孔の変形例を示す端面図である。
【
図11】
図11(a)及び
図11(b)は、本発明の実施形態における光コネクタ清掃工具の使用状態を示す側面図であり、
図11(a)は、延出部材に向かって工具本体を前進させた状態を示す図であり、
図11(b)は、延出部材から工具本体を後退させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
本実施形態における光コネクタ清掃工具1は、光ファイバ同士を接続する光コネクタの接続端面を清掃するクリーナである。
図1は本実施形態における光コネクタ清掃工具1の清掃対象である光コネクタ200を示す正面図である。
【0016】
この光コネクタ清掃工具1の清掃対象である光コネクタ200は、複数の光ファイバを同時に接続する多心一括接続型の光コネクタプラグを例示することができる。
【0017】
具体的には、この光コネクタ200は、
図1に示すように、扁平(長方形)の断面形状(端面形状)を有するフェルール210を備えている。このフェルール210は、所謂、MT(Mechanical Transferable)フェルールであり、当該フェルール210の断面長手
方向に沿って並べられた複数(例えば12個)のファイバ保持孔を有している。そして、この複数のファイバ保持孔には光ファイバ220がそれぞれ挿入されており、当該光ファイバ220は接着剤によりフェルール210に固定されている。この複数の光ファイバ220は、フェルール210の端面からそれぞれ露出している。このフェルール210は、ハウジング230に保持されている。
【0018】
なお、フェルール210が保持する光ファイバ220の数は、特に限定されず、例えば12本より多くてもよい。また、光ファイバ220が、フェルール210の断面長手方向に沿った複数の列(例えば2列)に並べられていてもよい。上記のフェルール210として、JIS C 5981やJIS C 5982に規定されているMTフェルールを用いてもよい。
【0019】
上記のフェルール210を備えた一対の光コネクタ200を接続する場合には、当該一対の光コネクタ200をスリーブ状のアダプタ240の両側の挿入口241に挿入する。当該挿入口241は、4つの溝242により構成される。そして、当該一対の光コネクタ200のフェルール210の端面同士を突き合せることで、当該フェルール210の端面からそれぞれ露出している光ファイバ220同士が光学的に接続される。この際、一方のフェルール210が有するガイドピン211が他方のフェルール210のガイド穴(不図示)に挿入されることで、光コネクタ200同士が高精度に位置決めされる。
【0020】
この突合せの際に、フェルール210の端面にゴミ、埃、油分等の汚れが付着していると、着脱時の損傷や伝送損失の増大などの原因となってしまう場合がある。そのため、光コネクタ200を接続する前に、以下に説明する光コネクタ清掃工具1を使用して、フェルール210の端面を清掃する。この清掃の際、清掃対象である光コネクタ200はアダプタ240の一方の挿入口241に挿入されており、光コネクタ清掃工具1が当該アダプタ240の他方の挿入口241に挿入されることで、当該光コネクタ200のフェルール210の端面の清掃が行われる。
【0021】
なお、上述した光コネクタ200は、プラグ-アダプタ-プラグ結合方式に用いられる光コネクタプラグであるが、プラグ-レセプタクル結合方式に用いられる光コネクタレセプタクルにおいて、以下に説明する光コネクタ清掃工具1を用いてフェルールの端面を清掃してもよい。具体的には、この光コネクタレセプタクルは、光ファイバの先端に取り付けられたフェルールを、光コネクタプラグが挿入されるハウジング内に組み込んだものである。
【0022】
或いは、光コネクタ清掃工具1の先端に、アダプタの内孔と同じ形状の内孔を有するキャップを取り付けて、当該キャップに光コネクタプラグを挿入することで、アダプタに挿入されていない状態の光コネクタプラグ単体の接続端面を清掃してもよい。
【0023】
以下に、本実施形態における光コネクタ清掃工具1の構成について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する光コネクタ清掃工具1は、延出部材100の先端部分の構成を除いて、特開2014-35489号公報、特開2014-35490号公報、及び、特開2014-35491号公報に開示されている光コネクタ清掃工具と基本的に同一の構成を有している。
【0024】
先ず、本実施形態における光コネクタ清掃工具1の全体構成について、
図2及び
図3を参照しながら説明する。
図2は本実施形態における光コネクタ清掃工具1を示す斜視図であり、
図3は本実施形態においてカバー5,6を外した状態の光コネクタ清掃工具1を示す斜視図である。
【0025】
本実施形態における光コネクタ清掃工具1(以下単に「清掃工具1」とも称する。)は、
図2及び
図3に示すように、工具本体10と、当該工具本体10から延出した延出部材100と、を備えている。工具本体10は、前カバー5と後カバー6により覆われている。延出部材100は、前カバー5の開口5aから前方(図中の+Y方向)に向かって突出している。
【0026】
延出部材100は、光コネクタ200の接続端面(上述のフェルール210の端面)に清掃体2を押圧する押圧面121(後述)を先端に有している。工具本体10は、当該清掃体2を押圧面121に連続的に供給し及び回収するボビン30,40(後述)を有している。そして、工具本体10に対して延出部材100が、当該延出部材100の軸方向(図中のY軸方向)に沿って相対的に移動することが可能となっている。
【0027】
この工具本体10と延出部材100との相対移動(延出部材100に対する工具本体10が前進する動作)に伴って清掃体2が押圧面121上を移動することで、清掃体2が光コネクタ200の接続端面に押し付けられながら摺動するので、当該端面に付着している汚れを効率的に拭き取ることが可能となっている。ただし、粘着性の清掃体を適用した場合には、清掃体を接続端面に押し付けるのみで摺動しないように構成することも可能である。また、この相対移動(延出部材100に対する工具本体10が後退する動作)に伴って、使用済みの清掃体2を押圧面121から巻取ボビン40に回収すると共に、未使用の清掃体2を送出ボビン30から押圧面121に供給することが可能となっている。
【0028】
上述のように、本実施形態における清掃対象の光コネクタ200は多心一括接続型の光コネクタであり、当該光コネクタ200のフェルール210の端面は扁平形状を有している。このため、清掃体2は、細長い帯状の連続体(テープ)である。この清掃体2の幅は、フェルール210の端面に露出している全ての光ファイバ220の端面とその周囲(例えば、ガイドピン211同士の間の領域)を一度に拭くことが可能な大きさを有している。こうしたテープ状の清掃体2の一例としては、特に限定されないが、ポリエステルやナイロン等から成る極細の繊維の織布を例示することができる。
【0029】
次に、本実施形態における清掃工具1の工具本体10の構成について、
図4及び
図5を参照しながら詳細に説明する。
図4は本実施形態において工具本体10から一方のハウジング22を外すと共に延出部材100から筒状部材190を外した状態の光コネクタ清掃工具を示す分解斜視図であり、
図5は本実施形態における工具本体10の分解斜視図である。
【0030】
工具本体10は、
図4及び
図5に示すように、ハウジング20と、送出ボビン30と、巻取ボビン40と、ガイド筒51,52と、ロール53と、ラチェット爪60と、伝動部材70と、を備えている。
【0031】
ハウジング20は、第1のハウジング21と第2のハウジング22から構成されている。このハウジング20の内部には、送出ボビン30、巻取ボビン40、ガイド筒51,52、ロール53、ラチェット爪60、及び、伝動部材70が収容されている。第1のハウジング21に形成された固定筒211a~211cに、第2のハウジング22に形成された固定ピン(不図示)が嵌合することで、第1のハウジング21と第2のハウジング22とが固定されている。
【0032】
第1及び第2のハウジング21,22は、特に限定されないが、樹脂材料から形成されている。第1及び第2のハウジング21,22の両方に、支持部20a、リブ20b、係止爪20c、窓20d、収容部20e、および前側面20fが形成されている。これに加えて、第1のハウジング21には、支持軸部212a~212dが形成されている。なお、第1及び第2のハウジング21,22は、透明樹脂で形成されることが好ましい。これにより、ハウジング内部における清掃体2の未使用分(残量)を、ユーザが確認可能となる。
【0033】
送出ボビン30は、清掃体2を供給するためのリール(円筒状の巻き枠)である。この送出ボビン30には、未使用の清掃体2が巻かれている。この送出ボビン30は、第1のハウジング21の支持軸部212aに回転可能に支持されている。上述の延出部材100に対する工具本体10が後退する動作に伴ってこの送出ボビン30が回転することで、当該送出ボビン30から押圧面121に未使用の清掃体2が連続的に送り出される。
【0034】
この送出ボビン30の両方の側面には、円周状に並べられた複数の係合溝31が形成されている。これに対し、第1及び第2のハウジング21,22には、上述の係止爪20cがこの係合溝31に対向するように、内側に向かって突出している。この係止爪20cの先端が係合溝31に当接することで、送出ボビン30の空回りが抑制されている。
【0035】
巻取ボビン40は、使用済みの清掃体2を巻き取るためのリールである。この巻取ボビン40は、第1のハウジング21の支持軸部212bに回転可能に支持されている。上述の延出部材100に対する工具本体10の後退動作に伴ってこの巻取ボビン40が回転することで、押圧面121で使用された使用済みの清掃体2がこの巻取ボビン40に連続的に巻き取られる。
【0036】
この巻取ボビン40の両方の側面には、外環部41と内環部42が形成されている。外環部41及び内環部42は、巻取ボビン40の側面から側方(図中のX方向)に向かって突出した円環形状を有しており、巻取ボビン40の軸孔を中心として同心円状に配置されている。外環部41の内周面には、ラチェット爪60と噛合するラチェット歯車411が形成されている。一方、内環部42の内周面は、伝動部材70の板バネ部72が接触する摩擦面421として機能する。
【0037】
ラチェット爪60は、外環部41と内環部42との間に介在するように、巻取ボビン40の両方の側面に設けられており、ハウジング21,22の支持部20aに回転可能に支持されている。このラチェット爪60は、外環部41のラチェット歯車411と共にラチェット機構を構成している。このラチェット機構は、巻取ボビン40が清掃体2を巻き取る方向(巻取方向)に回転することは許容するが、当該巻取方向とは反対の方向への巻取ボビン40の回転を禁止する。
【0038】
具体的には、巻取ボビン40が巻取方向とは反対の方向(
図5において時計回りの方向)に回転する場合には、ラチェット爪60がラチェット歯車411に噛み合うことで、巻取ボビン40の回転が禁止される。これに対し、巻取ボビン40が巻取方向(
図5において反時計回りの方向)に回転する場合には、ラチェット爪60のバネ部61の端部がハウジング21,22のリブ20bに当接し、当該バネ部61が変形することで、ラチェット爪60とラチェット歯車411との噛合が断続的に解除され、巻取ボビン40の回転が許容される。
【0039】
伝動部材70は、巻取ボビン40が有する両方の内環部42の内側に配置されている。それぞれの伝動部材70は、第1のハウジング21の支持軸部212bに回転可能に支持されており、巻取ボビン40に対して相対的に回転可能となっている。すなわち、第1のハウジング21の支持軸部212bは、巻取ボビン40に加えて、2つの伝動部材70を支持している。
【0040】
それぞれの伝動部材70は、ピニオンギア71と、一対の板バネ部72と、を備えている。ピニオンギア71は、巻取ボビン40の外環部41及び内環部42よりも側方(図中のX軸方向)に向かって突出している。このピニオンギア71は、延出部材100のラックギア176(後述)に噛合しており、このピニオンギア71とラックギア176とがラックアンドピニオン機構を構成している。このラックアンドピニオン機構により、上述の工具本体10に対する延出部材100の相対的な直線運動が回転運動に変換される。
【0041】
一対の板バネ部72は、当該伝動部材70の軸心の周りに回転対称に配置されている。それぞれの板バネ部72の中央部を内側に弾性変形させた状態で、伝動部材70が巻取ボビン40の内環部42の内側に嵌め込まれている。従って、それぞれの板バネ部72と内環部42の摩擦面421との間には摩擦力が作用しており、この板バネ部72と摩擦面421とが摩擦伝動機構を構成している。上述のラックアンドピニオン機構により変換された回転運動が、この摩擦伝動機構を介して巻取ボビン40に伝達される。
【0042】
ガイド筒51,52は、第1のハウジングの支持軸部212c,212dに回転可能に支持されている。また、ロール53は、第1及び第2のハウジング21,22に保持されたピン531に回転可能に支持されている。送出ボビン30から送り出された未使用の清掃体2は、ガイド筒51によって延出部材100の押圧面121に向かって案内される。一方、使用済みの清掃体2は、ガイド筒52とロール53によって巻取ボビン40に向かって案内される。この際、清掃体2がロール53で折り返されており、清掃体2が当該ロール53に引っ掛けられている。
【0043】
次に、本実施形態における清掃工具1の延出部材100の構成について、
図6~
図9を参照しながら詳細に説明する。
【0044】
図6は本実施形態における延出部材100の分解斜視図であり、
図7は本実施形態におけるヘッド部材110を示す斜視図である。
図8は本実施形態における延出部材100の先端部分の断面図であり、
図3のVIII-VIII線に沿った断面図である。
図9は本実施形態
におけるヘッド部材110と筒状部材190の内孔194の内面との関係を示す図であり、
図8のIX-IX線に沿った端面図である。なお、
図6~8では、清掃体2を図示していな
い。
【0045】
延出部材100は、
図6に示すように、清掃シャフト105と、筒状部材用コイルバネ180(
図4参照)と、筒状部材190と、を備えている。
【0046】
清掃シャフト105は、清掃体2を光コネクタ200の接続端面に押し付けるための部材(押圧部材)である。この清掃シャフト105は、延出部材100の長手軸方向(図中のY軸方向)に沿って延在する長尺の部材であり、ヘッド部材(ヘッド部)110と、ヘッド用コイルバネ160と、支持部材(支持部)170と、を備えている。なお、ヘッド部材110と支持部材170が一体的に成形されていてもよい。さらに、その成形体がヘッド用コイルバネ160の機能を備えていてもよい。
【0047】
ヘッド部材110は、清掃シャフト105の先端部分を構成している部材である。このヘッド部材110は、
図7に示すように、押圧部120と、首部130と、本体部140と、挿入部150と、を備えている。特に限定されないが、例えば、このヘッド部材110は樹脂材料から構成されており、押圧部120、首部130、本体部140、及び、挿入部150は一体的に形成されている。
【0048】
押圧部120は、光コネクタ200の接続端面に清掃体2を押し付ける押圧面121をその先端に有している。この押圧面121は、清掃対象である光コネクタ200のフェルール210の端面の形状に対応するように、扁平形状(長方形)を有している。この押圧面121には、当該押圧面121の上側から下側に清掃体2が巻き掛けられており、未使用の清掃体2が上側から供給され、使用済みの清掃体2が下側に送り出される(
図4及び
図11(a)の矢印Aを参照)。すなわち、清掃体2は、この押圧面121上において当該押圧面121の短軸方向に沿って上側から下側に移動する。
【0049】
また、この押圧面121の両端には、一対の挿入溝122が形成されている。押圧面121をフェルール210の端面に押し付けた際に、当該端面から突出するガイドピン211がこの挿入溝122に入り込むことで、押圧面121が清掃体2をフェルール210の端面に密着させることが可能となっている。
【0050】
そして、この押圧部120は、首部130を介して本体部140に接続されている。この首部130は、光コネクタ200から押圧部120への押圧力に対して弾性変形可能となっている。この首部130が、光コネクタ200のフェルール210の端面の傾きに応じて、押圧部120を傾動させる。
【0051】
本体部140は、押圧部120の断面形状に対応した扁平(長方形)の断面形状を持つ板状形状を有している。押圧部120の押圧面121に上側から供給される未使用の清掃体2が、この本体部140の上面141上を通過する。一方、押圧面121から下側に送り出される使用済みの清掃体2が、この本体部140の下面145上を通過する。
【0052】
本体部140の上面141の両端に、リブ142が設けられており、当該上面141上を移動する清掃体2がこのブ142によって案内される。下面145の両端にもリブ146が設けられており、当該下面145上を移動する清掃体2がこのリブ146によって案内される。なお、本体部140の上面141が、リブ142を備えていなくてもよい。同様に、本体部140の下面145がリブ142を備えていなくてもよい。
【0053】
この本体部140の後側には挿入部150が接続されている。この挿入部150は、支持部材170の先端部171に挿入される部分であり、本体部140よりも狭い幅の板状形状を有している。この挿入部150の後端には、後方(図中の-Y方向)に向かって突出する円柱状の軸部151が形成されていると共に、側方(図中のX軸方向)に向かって突出する突起152が形成されている。
【0054】
図6に示すように、ヘッド用コイルバネ160は、ヘッド部材110の軸部151が当該ヘッド用コイルバネ160に挿入された状態で、ヘッド部材110と支持部材170との間に介在している。このヘッド用コイルバネ160によって、ヘッド部材110が支持部材170に対して前方に付勢されている。これにより、ヘッド部材110の押圧面121が清掃体2を光コネクタ200の接続端面に適切な押圧力で押し付けることが可能となっている。
【0055】
支持部材170は、ヘッド部材110を前後方向(図中のY軸方向)に移動可能に支持する部材である。この支持部材170は、
図6に示すように、先端部171と、胴体部172と、肩部173と、腕部175と、を備えている。特に限定されないが、例えば、この支持部材170は樹脂材料から構成されており、先端部171、胴体部172、肩部173、及び、腕部175は一体的に形成されている。
【0056】
この支持部材170の先端部171には、挿入溝171aと、窓171bと、が形成されている。挿入溝171aは、支持部材170の先端に開口した溝である。この挿入溝171aに、ヘッド部材110の挿入部150が前後方向(図中のY軸方向)に移動可能に挿入されている。また、窓171bは、先端部171の側面に開口している。この窓171bに、ヘッド部材110の挿入部150の突起152が挿入されている。挿入溝171aによってヘッド部材110を前後方向に案内されると共に、窓171bによってヘッド用コイルバネ160によって付勢されたヘッド部材110の前方(図中の+Y方向)への抜け落ちが防止されている。
【0057】
胴体部172は、この先端部171の後側に接続されている。この胴体部172は、柱状形状を有しており、延出部材100の軸方向(図中のY軸方向)に沿って延在している長尺の部位である。この胴体部172の後側の部分は、工具本体10のハウジング20内に配置されているが、当該胴体部172の他の部分は、ハウジング20の前側の面20fから前方(図中の+Y方向)に向かって延出している。
【0058】
この胴体部172の上面は、工具本体10から供給される未使用の清掃体2をヘッド部材110に案内する案内面として機能する。一方、この胴体部172の下面は、ヘッド部材110から回収される使用済みの清掃体2をロール177まで案内する案内面として機能する。また、この胴体部172は、筒状部材用コイルバネ180に挿入されており、当該筒状部材用コイルバネ180を支持する機能も有している(
図4参照)。
【0059】
一対の肩部173は、この胴体部172の後端に接続されている。それぞれの肩部173は、胴体部172の後端から側方(図中のX軸方向)に突出しており、第1及び第2のハウジング21,22の窓20dの中に配置されている。
【0060】
また、この肩部173には、側方(図中のX軸方向)に突出する突起174が形成されている。肩部173がハウジング21,22の窓20d内に配置された状態において、この突起174は、当該窓20dから突出しており、筒状部材190の窓197(後述)に嵌め込まれている(
図3参照)。
【0061】
一対の腕部175は、肩部173の下側に接続されており、当該肩部173から後方(図中の-Y方向)に向かって延びている。この腕部175は、第1及び第2のハウジング21,22の収容部20eにそれぞれ収容されている。
【0062】
一対の腕部175の前側の端部には、保持孔175aが形成されている。この保持孔175aにはピン178が挿入されており、このピン178にロール177が回転可能に支持されている。胴体部172の下面に沿って案内された使用済みの清掃体2は、このロール177と、上述の工具本体10のガイド筒52及びロール53とによって、巻取ボビン40に向かって案内される。この際、清掃体2が、このロール177で折り返されており、当該清掃体2がロール177に引っ掛けられている。上述のように、この清掃体2は、工具本体10のロール53でも折り返されているので、結果的に、清掃体2がロール177,53の間に掛け渡されている。
【0063】
また、それぞれの腕部175の後側の部分には、ラックギア176が形成されている。この一対のラックギア176の間に巻取ボビン40が配置されており、このラックギア176に上述の伝動部材70のピニオンギア71が噛合することで、ラックアンドピニオン機構が構成されている。
【0064】
筒状部材190は、筒部191と、板部196と、を有する部材である。筒部191は、光コネクタ200の清掃時にアダプタ240に挿入される先端部192と、この先端部192の後側に接続された本体部195と、を備えている。先端部192の上下左右の外側面には凸部193が形成されている。この先端部192がアダプタ240に挿入された際に、この凸部193が当該アダプタ240の挿入口241に形成された溝242に嵌合する。
【0065】
この筒部191は、その軸方向(図中のY軸方向)に貫通する内孔を備えており、その内孔には、清掃シャフト105、及び、筒状部材用コイルバネ180が収容されている。また、この筒部191は、支持部材170の胴体部172の上下面に沿って移動する清掃体2を保護する機能も有している。特に限定されないが、例えば、この筒状部材190は樹脂材料から構成されており、先端部192、本体部195、及び、板部196は一体的に形成されている。
【0066】
図8に示すように、筒部191の先端部192の内孔194には、ヘッド部材110の本体部140が収容されている。そして、この本体部140に首部130を介して接続されたヘッド部材110の押圧部120が、当該筒部191の先端部192の内孔194の開口194eから前方(図中の+Y方向)に向かって突出している。
【0067】
本実施形態では、筒部191の先端部192の内孔194が、
図9に示すような断面状を有している。すなわち、この内孔194は、ヘッド部材110の本体部140を収容可能な扁平の断面形状を有しており、上面194a、下面194b、及び、側面194c,194dから構成された内面を備えている。
【0068】
この内孔194の上面194aは、その内孔194の空間を広げるように、上側に向かって凹んだ円弧状の断面形状を有している。この上面194aは、ヘッド部材110の本体部140の上面141(第2の対向部)と対向している。ヘッド部材110の押圧面121に上側から供給される未使用の清掃体2は、この上面194aと本体部140の上面141との間を通過する。
【0069】
同様に、この内孔194の下面194bは、その内孔194の空間を広げるように、下側に向かって凹んだ円弧状の断面形状を有している。この下面194bは、ヘッド部材110の本体部140の下面145(第1の対向部)と対向している。ヘッド部材110の押圧面121から下側に送り出される使用済みの清掃体2は、この下面194bと本体部140の下面145との間を通過する。
【0070】
これに対し、この内孔194の一方の側面194cは、上面194aの一方の端部と下面194bの一方の端部とを直線状に接続する断面形状を有している。この側面194cは、ヘッド部材110の本体部140の側面147と対向しているが、この側面194c,147同士の間には清掃体2は介在していない。
【0071】
同様に、この内孔194の他方の側面194dも、上面194aの他方の端部と下面194bの他方の端部とを直線状に接続する断面形状を有している。この側面194dは、ヘッド部材110の本体部140の側面148と対向しているが、この側面194d,148同士の間には清掃体2は介在していない。
【0072】
本実施形態では、
図9に示すように、内孔194の下面194bが、上述のように、内孔194の空間を広げるよう、下側に向かって凹んだ円弧状の断面形状を有しているため、第1の隙間D
1が第2の隙間D
2よりも大きくなっている。
【0073】
ここで、第1の隙間D1は、ヘッド部材110の下面145の第1の領域145aの幅方向の中央部と、内孔194の下面194bとの間の隙間である。また、第2の隙間D2は、ヘッド部材110の下面145の第2の領域145bと、内孔194の下面194bとの間の隙間である。
【0074】
そして、第1の領域145aは、ヘッド部材110の本体部140の下面145において、下面145,194b同士の間に清掃体2が介在している部分である。これに対し、第2の領域145bは、ヘッド部材110の本体部140の下面145において、第1の領域145aに隣接する部分であり、下面145,194b同士の間に清掃体2が介在していない部分である。
【0075】
また、本実施形態では、
図9に示すように、内孔194の下面194bが上述のように、内孔194の空間を広げるよう、下側に向かって凹んだ円弧状の断面形状を有しているため、第1の隙間D
1が第3の隙間D
3よりも大きくなっている。ここで、第3の隙間D
3は、第1の領域145aの幅方向(図中のX軸方向)の端部と、内孔194の下面194bとの間の隙間である。
【0076】
同様に、本実施形態では、
図9に示すように、内孔194の上面194aが、上述のように、内孔194の空間を広げるよう、上側に向かって凹んだ円弧状の断面形状を有しているため、第4の隙間D
4が第5の隙間D
5よりも大きくなっている。
【0077】
ここで、第4の隙間D4は、ヘッド部材110の上面141の第3の領域141aの幅方向の中央部と、内孔194の上面194aとの間の隙間である。また、第5の隙間D5は、ヘッド部材110の上面141の第4の領域141bと、内孔194の上面194aとの間の隙間である。
【0078】
そして、第3の領域141aは、ヘッド部材110の本体部140の上面141において、上面141,194a同士の間に清掃体2が介在している部分である。これに対し、第4の領域141bは、ヘッド部材110の本体部140の上面141において、第3の領域141aに隣接する部分であり、上面141,194a同士の間に清掃体2が介在していない部分である。
【0079】
また、本実施形態では、
図9に示すように、内孔194の上面194aが、上述のように、内孔194の空間を広げるよう、上側に向かって凹んだ円弧状の断面形状を有しているため、第4の隙間D
4が第6の隙間D
6よりも大きくなっている。ここで、第6の隙間D
6は、第3の領域141aの幅方向(図中のX軸方向)の端部と、内孔194の上面194aとの間の隙間である。
【0080】
なお、筒状部材190の先端部192の内孔194の断面形状は、第1の隙間D1が第2の隙間D2よりも大きく、且つ、第4の隙間D4が第5の隙間D5よりも大きくなっている限り、特に限定されない。
【0081】
例えば、
図10に示すように、内孔194の下面194bが、下側に向かって凹んだ段差状の断面形状を有していてもよい。同様に、内孔194の上面194aが、上側に向かって凹んだ段差状の断面形状を有していてもよい。
図10は本実施形態における筒状部材190の内孔194の変形例を示す端面図である。
【0082】
なお、この場合に、特に図示しないが、当該内孔194の下面194bの凹部の底面を、下側に向かって凹んだ円弧形状としてもよい。同様に、当該内孔194の上面194aの凹部の底面を、上側に向かって凹んだ円弧形状としてもよい。
【0083】
或いは、特に図示しないが、内孔194の下面194bの形状が、下段194iと上段194jとの間の段差194kが、第1の領域145aの幅方向(図中のX軸方向)の端部と対向するような段差形状を有していてもよく、この場合には、第1の隙間D1が第3の隙間D3よりも大きくなる。また、内孔194の上面194aの形状が、下段194fと上段194gとの間の段差194hが、第3の領域141aの幅方向(図中のX軸方向)の端部と対向するような段差形状を有してもよく、この場合には、第4の隙間D4が第6の隙間D6よりも大きくなる。この場合にも、当該内孔194の下面194bの凹部の底面を、下側に向かって凹んだ円弧形状としてもよい。同様に、当該内孔194の上面194aの凹部の底面を、上側に向かって凹んだ円弧形状としてもよい。
【0084】
また、本実施形態では、内孔194の下面194bの段差形状が二段であるが、特にこれに限定されず、当該下面194bが三段以上の階段形状を有していてもよい。同様に、内孔194の上面194aの段差形状が二段であるが、特にこれに限定されず、当該上面194aが三段以上の階段形状を有していてもよい。
【0085】
図6に戻り、筒状部材190の筒部191の本体部195の後側の開口195aからは、支持部材170の肩部173と腕部175が後方(図中の-Y方向)に向かって突出する。そして、筒状部材190の板部196に形成された窓197に、支持部材170の肩部173の突起174が嵌合しており(
図3参照)、これにより支持部材170と筒状部材190とが相互に固定されている。
【0086】
また、筒状部材190の筒部191の本体部195は、その中央部に内径が大きくなるテーパ部195b有している。このテーパ部195bとハウジング20の前側の面20fとの間に、筒状部材用コイルバネ180が介装されている。この筒状部材用コイルバネ180は、工具本体10から離れる方向(図中の+Y方向)に筒状部材190を付勢している。
【0087】
次に、以上に説明した光コネクタ清掃工具1の使用方法の一例について、
図11(a)及び
図11(b)を参照しながら説明する。
【0088】
図11(a)及び
図11(b)は本実施形態における光コネクタ清掃工具1の使用状態を示す側面図であり、
図11(a)は延出部材100に向かって工具本体10を前進させた状態を示す図であり、
図11(b)は延出部材100から工具本体10を後退させた状態を示す図である。
【0089】
光コネクタ清掃工具1を用いて光コネクタ200の接続端面を清掃するに際して、先ず、作業者が、清掃工具1の延出部材100の先端部を、アダプタ240の挿入口241に挿入する。これにより、ヘッド部材110の押圧面121が清掃体2をフェルール210の端面に押し付ける。この際、延出部材100の筒状部材190の先端部192の凸部193がアダプタ240の溝242に嵌合することで、ヘッド部材110の押圧面121が光コネクタ200のフェルール210に対して位置決めされる。
【0090】
次いで、作業者が、延出部材100に対して工具本体10を押し込むと、
図11(a)に示すように、筒状部材用コイルバネ180が収縮すると共に、延出部材100のロール177と工具本体10のロール53との間の間隔が、所定長さLだけ広くなる。
【0091】
このため、供給側のガイド筒51とロール177との間に存在する清掃体2の長さが所定長さLだけ短くなるのに対し、ロール177,53の間に存在する清掃体2の長さが所定長さLだけ長くなる。その結果、押圧面121上の清掃体2が巻取ボビン40側に引っ張られて、当該清掃体2がフェルール210の端面に押し付けられながら摺動して、当該端面に付着している汚れを拭き取る。
【0092】
この際、本実施形態では、上述のように、第1の隙間D1が第2の隙間D2よりも広くなっている。すなわち、本実施形態では、ヘッド部材110の下面145上を通過する清掃体2と、筒状部材190の内孔194の下面194bの中央部との間に、広いクリアランスが確保されている。このため、清掃体2が巻取ボビン40側に引っ張られることで長尺の清掃シャフト105が下方(巻取ボビン40側)に撓んでしまった場合であっても、清掃体2と筒状部材190の内孔194の下面194bとの接触面積を低減することができる。従って、清掃体2に生じる摩擦力を小さくすることができ、清掃シャフト105のヘッド部材110と筒状部材190との間に清掃体2を噛み込んでしまう事態(所謂、ジャミング)の発生を抑制することができる。
【0093】
特に、光コネクタが小型化し、フェルールの端面形状の短軸方向が短くなると、清掃工具の清掃シャフトの厚さも薄くなり、当該清掃シャフトが撓みやすくなり、上述したジャミングの発生が顕著になってしまう場合がある。これに対し、本実施形態では、第1の隙間D1が広くなっているので、光コネクタ200の小型化に伴って清掃シャフト105が薄型化した場合であっても、上記のジャミングの発生を効果的に抑制することができる。
【0094】
また、光コネクタの小型化に伴って清掃工具も小型化すると、ヘッド部材の下面と筒状部材の内孔の下面との間のクリアランスが小さくなる傾向があり、この場合にも、上記のジャミングの発生が顕著になってしまう場合がある。これに対し、本実施形態では、第1の隙間D1が広くなっているので、清掃工具1を小型化した場合であっても、清掃体2と筒状部材190の内孔194の下面194bとの接触面積を低減することができ、上記のジャミングの発生を効果的に抑制することができる。
【0095】
また、ヘッド部材において押圧部が押圧されてヘッド用コイルバネ160が収縮すると、清掃体2に余長が発生する場合がある。これに対し、本実施形態では、第1の隙間D1が広くなっているので、ヘッド部材110の押圧部120が押圧されてヘッド用コイルバネ160が収縮しても、柔軟な清掃体2が変形して第1の隙間D1を通過することができる。このため、清掃体2の幅方向(図中のX軸方向)の端部がヘッド部材110の下面145と筒状部材190の内孔194との間に挟まれてしまうことを抑制することができる。
【0096】
その一方で、本実施形態では、第2の隙間D2が第1の隙間D1よりも狭くなっている。すなわち、ヘッド部材110の下面145上を通過する清掃体2と、筒状部材190の内孔194の下面194bの両端部との間のクリアランスは、上記の中央部のクリアランスと比較して狭くなっている。ここで、筒状部材の先端部の角部は、アダプタ240の挿入口241の形状に対応するために薄肉化する傾向がある。これに対し、本実施形態では、第2の隙間D2が第1の隙間D1よりも狭くなっているので、筒状部材190の先端部192の角部の薄肉化を抑制することができる。
【0097】
また、本実施形態では、第4の隙間D4が第5の隙間D5よりも大きくなっている。すなわち、ヘッド部材110の上面141上を通過する清掃体2と、筒状部材190の内孔194の上面194aの中央部との間に、広いクリアランスが確保されている。このため、光コネクタの小型化に伴って清掃工具1を小型化した場合であっても、清掃体2と筒状部材190の内孔194の上面194aとの接触面積を低減することができ、上記のジャミングの発生を効果的に抑制することができる。
【0098】
なお、この清掃工具1は、上述のように、扁平形状の端面を持つフェルール210を有する多心一括接続方式の光コネクタ200を清掃対象とするものであるので、当該清掃工具1の清掃シャフト105が、当該清掃シャフト105の軸心を中心として、工具本体10に対して相対的に回転することはない。
【0099】
また、
図11(a)に示すように、上記の作業者による工具本体10の押し込みによって、ラックギア176がピニオンギア71を回転させる。しかしながら、ラチェット爪60によって巻取方向(
図11(a)において反時計回り)とは反対の方向(
図11(a)において時計回り)への巻取ボビン40の回転が禁止されているので、伝動部材70の板バネ部72と内環部42の摩擦面421との間に滑りが生じる。従って、この場合には、伝動部材70は空回りして、巻取ボビン40は回転しない。
【0100】
次いで、作業者が延出部材100に対する工具本体10の押し込みを解除すると、
図11(b)に示すように、筒状部材用コイルバネ180の弾性力により延出部材100に対して工具本体10が後退し、延出部材100のロール177と工具本体10のロール53との間の距離が所定長さLだけ短くなると同時に、ラックギア176がピニオンギア71を回転させる。このピニオンギア71の回転力は、伝動部材70の板バネ部72及び内環部42の摩擦面421を介して巻取ボビン40に伝達され、当該巻取ボビン40が回転し、使用済みの清掃体2が巻取ボビン40に巻き取られる。
【0101】
すなわち、工具本体10に対する延出部材100の相対移動に伴って巻取ボビン40を回転駆動させる駆動機構は、ラックギア176及びピニオンギア71から構成される上記のラックアンドピニオン機構と、板バネ部72及び摩擦面421から構成される上記の摩擦伝動機構と、から構成されている。
【0102】
これと同時に、供給側のガイド筒51とロール177との間に存在する清掃体2の長さが所定長さLだけ長くなる。この際、ヘッド部材110の押圧面121とロール177との間の距離は一定であると共に、ヘッド部材110の押圧面121に清掃体2が巻き掛けられているため、所定長さLに相当する長さの未使用の清掃体2が送出ボビン30から送り出される。
【0103】
清掃が完了したら、作業者は延出部材100をアダプタ240の挿入口241から引き抜くことで、清掃工具1をアダプタ240から取り外す。
【0104】
以上のように、本実施形態では、筒状部材190の内孔194の下面194bとヘッド部材110の下面145の第1の領域145aとの間の第1の隙間D1が、内孔194の下面194bとヘッド部材110の下面145の第2の領域145bの間の第2の隙間D2よりも広くなっている。このため、清掃シャフト105のヘッド部材110と筒状部材190との間に清掃体2を挟んでしまう事態の発生を抑制することができ、清掃体2の回収を円滑に行うことができる。
【0105】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0106】
例えば、上述の実施形態では、筒状部材190の先端部192の内孔194の上面194a及び下面194bの両方の断面形状を円弧状としたが、特にこれに限定されない。具体的には、巻取ボビン40側(回収側)である下面194bの断面形状のみを円弧状とし、送出ボビン30側(供給側)である上面194aの断面形状は直線状としてもよい。すなわち、第1の隙間D1が第2の隙間D2よりも大きくなっていれば、第4の隙間D4と第5の隙間D5とが同一であってもよい。また、円弧状ではなくV字状にして、それぞれの隙間の条件を満たすように構成することも可能である。
【0107】
また、特開2014-35489号公報の
図12A~
図12Cに開示されているように、所定長さLの清掃体2を供給するためのロール153,177を備えていなくてもよい。この場合には、巻取ボビン40の巻取方向が上述した実施形態とは反対であり、また、ラチェット爪60及びラチェット歯車411からなるラチェット機構も上述の実施形態とは反対の方向に設置される。
【符号の説明】
【0108】
1…光コネクタ清掃工具
2…清掃体
10…工具本体
20…ハウジング
30…送出ボビン
40…巻取ボビン
100…延出部材
105…清掃シャフト
110…ヘッド部材
120…押圧部
121…押圧面
140…本体部
141…上面
141a…第3の領域
141b…第4の領域
145…下面
145a…第1の領域
145b…第2の領域
170…支持部材
190…筒状部材
191…筒部
192…先端部
194…内孔
194a…上面
194b…下面
200…光コネクタ
210…フェルール