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特許7549157電力制御装置、電力制御方法、電力制御装プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】電力制御装置、電力制御方法、電力制御装プログラム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20240903BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
E02F9/20 N
E02F9/00 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023556227
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2022036269
(87)【国際公開番号】W WO2023074241
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2023-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2021175811
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022003479
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 和人
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/101233(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/129525(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/00
H02P 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の関節構成部と、当該複数の関節構成部を駆動する複数の駆動部に電力を供給する電源と、を備える建設機械における電力制御装置であって、
前記複数の駆動部の駆動情報を取得する駆動情報取得部と、
前記駆動情報に基づいて、前記複数の関節構成部によって前記建設機械が行う動作を識別する識別部と、
識別された前記建設機械の動作に応じて、前記複数の駆動部に供給する電力を決定する決定部と、
を備え
前記関節構成部は、地面を走行可能な下部走行体、当該下部走行体に対して旋回可能に取り付けられた上部旋回体、当該上部旋回体に起伏可能に取り付けられたブーム、当該ブームに屈曲可能に取り付けられたアーム、当該アームに屈曲可能に取り付けられたバケットの少なくともいずれかであり、
前記建設機械の動作は、走行動作であり、
前記決定部は、前記下部走行体を駆動する駆動部に供給する電力を、前記上部旋回体、前記ブーム、前記アーム、及び前記バケットを駆動する駆動部に供給する電力よりも大きくする電力制御装置。
【請求項2】
前記駆動情報は、前記建設機械の操作部で受け付けた操作指令、前記複数の駆動部のそれぞれに対する動作指令の少なくとも一つであり、
前記識別部は、記憶部に記憶された動作と駆動情報との対応関係と、取得された前記駆動情報と、に基づいて、前記建設機械が行う動作を識別する、
請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項3】
複数の関節構成部と、当該複数の関節構成部を駆動する複数の駆動部に電力を供給する電源と、を備える建設機械における電力制御装置であって、
前記複数の駆動部の駆動情報を取得する駆動情報取得部と、
前記駆動情報に基づいて、前記複数の関節構成部によって前記建設機械が行う動作を識別する識別部と、
識別された前記建設機械の動作に応じて、前記複数の駆動部に供給する電力を決定する決定部と、
を備え、
前記関節構成部は、地面を走行可能な下部走行体、当該下部走行体に対して旋回可能に取り付けられた上部旋回体、当該上部旋回体に起伏可能に取り付けられたブーム、当該ブームに屈曲可能に取り付けられたアーム、当該アームに屈曲可能に取り付けられたバケットの少なくともいずれかであり、
前記建設機械の動作は、旋回動作であり、
前記決定部は、前記上部旋回体を駆動する駆動部に供給する電力を、前記下部走行体、前記ブーム、前記アーム、及び前記バケットを駆動する駆動部に供給する電力よりも大きくする電力制御装置。
【請求項4】
複数の関節構成部と、当該複数の関節構成部を駆動する複数の駆動部に電力を供給する電源と、を備える建設機械における電力制御装置であって、
前記複数の駆動部の駆動情報を取得する駆動情報取得部と、
前記駆動情報に基づいて、前記複数の関節構成部によって前記建設機械が行う動作を識別する識別部と、
識別された前記建設機械の動作に応じて、前記複数の駆動部に供給する電力を決定する決定部と、
を備え、
前記関節構成部は、地面を走行可能な下部走行体、当該下部走行体に対して旋回可能に取り付けられた上部旋回体、当該上部旋回体に起伏可能に取り付けられたブーム、当該ブームに屈曲可能に取り付けられたアーム、当該アームに屈曲可能に取り付けられたバケットの少なくともいずれかであり、
前記建設機械の動作は、前記ブーム、前記アーム、及び前記バケットを用いた掘削動作、旋回積込動作、溝掘動作、地面ならし動作の少なくとも一つであり、
前記決定部は、前記ブーム、前記アーム、及び前記バケットを駆動する駆動部に供給する電力を、前記下部走行体を駆動する駆動部に供給する電力よりも大きくする電力制御装置。
【請求項5】
前記バケットが運搬する被運搬物の重量を示す情報を取得する重量取得部を更に備え、
前記決定部は、前記上部旋回体、前記ブーム、前記アーム、前記バケットの各駆動部のうち、前記重量取得部で取得された前記被運搬物の重量に応じた負荷が大きい駆動部に供給する電力を、負荷が小さい駆動部に供給する電力よりも大きくする、
請求項に記載の電力制御装置。
【請求項6】
複数の関節構成部と、当該複数の関節構成部を駆動する複数の駆動部に電力を供給する電源と、を備える建設機械における電力制御装置であって、
前記複数の駆動部の駆動情報を取得する駆動情報取得部と、
前記駆動情報に基づいて、前記複数の関節構成部によって前記建設機械が行う動作を識別する識別部と、
識別された前記建設機械の動作に応じて、前記複数の駆動部に供給する電力を決定する決定部と、
を備え、
前記関節構成部は、地面を走行可能な下部走行体、当該下部走行体に対して旋回可能に取り付けられた上部旋回体、当該上部旋回体に起伏可能に取り付けられたブーム、当該ブームに屈曲可能に取り付けられたアーム、当該アームに屈曲可能に取り付けられたバケットの少なくともいずれかであり、
前記上部旋回体の旋回軸からの前記バケットの距離を取得する距離取得部を更に備え、
前記決定部は、前記距離取得部で取得された距離が大きいほど、前記上部旋回体の駆動部に供給する電力を大きくすることを決定する電力制御装置。
【請求項7】
複数の関節構成部と、当該複数の関節構成部を駆動する複数の駆動部に電力を供給する電源と、を備える建設機械における電力制御装置であって、
前記複数の駆動部の駆動情報を取得する駆動情報取得部と、
前記駆動情報に基づいて、前記複数の関節構成部によって前記建設機械が行う動作を識別する識別部と、
識別された前記建設機械の動作に応じて、前記複数の駆動部に供給する電力を決定する決定部と、
を備え、
前記関節構成部は、地面を走行可能な下部走行体、当該下部走行体に対して旋回可能に取り付けられた上部旋回体、当該上部旋回体に起伏可能に取り付けられたブーム、当該ブームに屈曲可能に取り付けられたアーム、当該アームに屈曲可能に取り付けられたバケットの少なくともいずれかであり、
前記決定部は、前記ブーム、前記アーム、前記バケットの各駆動部で回収される回生電力を当該各駆動部の間で配分し、当該各駆動部の需要電力の合計を超える余剰な回生電力を前記電源側に戻すことを決定する電力制御装置。
【請求項8】
前記各駆動部は回転動力を発生させるモータを含み、
前記駆動情報は、前記各モータの回転数、前記モータの電流指令値の少なくとも1つを含む、
請求項1から7のいずれかに記載の電力制御装置。
【請求項9】
複数の関節構成部と、当該複数の関節構成部を駆動する複数の駆動部に電力を供給する電源と、を備える建設機械における電力制御装置であって、
前記複数の駆動部の駆動情報を取得する駆動情報取得部と、
前記駆動情報に基づいて、前記複数の関節構成部によって前記建設機械が行う動作を識別する識別部と、
識別された前記建設機械の動作に応じて、前記複数の駆動部に供給する電力を決定する決定部と、
を備え、
前記複数の駆動部それぞれの需要電力を取得する需要電力取得部と、
バッテリの充電率および放電可能量の少なくともいずれかを供給可能電力として取得する供給可能電力取得部を更に備え、
前記決定部は、前記需要電力の合計が前記供給可能電力を超える場合に、前記識別された前記建設機械の動作に応じて、前記複数の駆動部に供給する電力を決定する電力制御装置。
【請求項10】
複数の関節構成部と、当該複数の関節構成部を駆動する複数の駆動部に電力を供給する電源と、を備える建設機械における電力制御方法であって、
前記複数の駆動部の駆動情報を取得する駆動情報取得ステップと、
前記駆動情報に基づいて、前記複数の関節構成部によって前記建設機械が行う動作を識別する識別ステップと、
識別された前記建設機械の動作に応じて、前記複数の駆動部に供給する電力を決定する決定ステップと、
を備え
前記関節構成部は、地面を走行可能な下部走行体、当該下部走行体に対して旋回可能に取り付けられた上部旋回体、当該上部旋回体に起伏可能に取り付けられたブーム、当該ブームに屈曲可能に取り付けられたアーム、当該アームに屈曲可能に取り付けられたバケットの少なくともいずれかであり、
前記建設機械の動作は、走行動作であり、
前記決定ステップは、前記下部走行体を駆動する駆動部に供給する電力を、前記上部旋回体、前記ブーム、前記アーム、及び前記バケットを駆動する駆動部に供給する電力よりも大きくする電力制御方法。
【請求項11】
複数の関節構成部と、当該複数の関節構成部を駆動する複数の駆動部に電力を供給する電源と、を備える建設機械における電力制御プログラムであって、
前記複数の駆動部の駆動情報を取得する駆動情報取得ステップと、
前記駆動情報に基づいて、前記複数の関節構成部によって前記建設機械が行う動作を識別する識別ステップと、
識別された前記建設機械の動作に応じて、前記複数の駆動部に供給する電力を決定する決定ステップと、
をコンピュータに実行させ
前記関節構成部は、地面を走行可能な下部走行体、当該下部走行体に対して旋回可能に取り付けられた上部旋回体、当該上部旋回体に起伏可能に取り付けられたブーム、当該ブームに屈曲可能に取り付けられたアーム、当該アームに屈曲可能に取り付けられたバケットの少なくともいずれかであり、
前記建設機械の動作は、走行動作であり、
前記決定ステップは、前記下部走行体を駆動する駆動部に供給する電力を、前記上部旋回体、前記ブーム、前記アーム、及び前記バケットを駆動する駆動部に供給する電力よりも大きくする電力制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械における電力制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場で使用される建設機械(以下、建機ともいう)として、電動機(以下、電気モータまたはモータともいう)で駆動される電動建機や、油圧機器と電動機が併用されるハイブリッド建機が知られている(以下、総称して電動建機ともいう)。モータの回転動力で駆動されるボールねじ等の機械要素によって電動建機の各関節構成部を直接的に駆動する方式のアクチュエータは電気機械式アクチュエータ(EMA:Electro-Mechanical Actuator)と呼ばれ、モータの回転動力で駆動される油圧ポンプ等の油圧機器によって電動建機の各関節構成部を間接的に駆動する方式のアクチュエータは電気油圧式アクチュエータ(EHA:Electro-Hydrostatic Actuator)と呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-88660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電動建機には、下部走行体、上部旋回体、ブーム、アーム、バケット等の各関節構成部を駆動するための電力を生成する発電機が設けられる。発電機の発電量は変動し、各関節構成部で必要な電力も電動建機の動作によって大きく変動する。このため、各関節構成部で必要な電力が発電機から適切に供給されない可能性がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、建設機械において電力を適切に配分できる電力制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の電力制御装置は、複数の関節構成部と、当該複数の関節構成部を駆動する複数の駆動部に電力を供給する電源と、を備える建設機械における電力制御装置であって、複数の駆動部の駆動情報を取得する駆動情報取得部と、駆動情報に基づいて、複数の関節構成部によって建設機械が行う動作を識別する識別部と、識別された建設機械の動作に応じて、複数の駆動部に供給する電力を決定する決定部と、を備える。この態様によれば、各駆動部の駆動情報に基づいて認識された建設機械の動作に応じて、各駆動部への電力供給量が決定されるため、各駆動部の間で適切な電力配分を実現できる。
【0007】
本発明の別の態様は、電力制御方法である。この方法は、複数の関節構成部と、当該複数の関節構成部を駆動する複数の駆動部に電力を供給する電源と、を備える建設機械における電力制御方法であって、複数の駆動部の駆動情報を取得する駆動情報取得ステップと、駆動情報に基づいて、複数の関節構成部によって建設機械が行う動作を識別する識別ステップと、識別された建設機械の動作に応じて、複数の駆動部に供給する電力を決定する決定ステップと、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、建設機械において電力を適切に配分できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】電動建機の概略構成図である。
図2】電動建機の上面図である。
図3】電動建機の駆動装置の第1の構成例を示す。
図4】充放電回路の構成例を示す。
図5】電動建機の駆動装置の第2の構成例を示す。
図6】電動建機の駆動装置の第3の構成例を示す。
図7】充放電コンバータが直流/交流電圧バスに供給する電圧Vの時間tによる変化を模式的に示す。
図8】電動建機の電力制御装置の構成例を示す。
図9】各アクチュエータにおけるモータの電流指令値をdq座標系で示す。
図10】電力制御装置による電力制御処理の例を示すフローチャートである。
図11】判定処理、電力配分量決定処理、電力供給処理の例を模式的に示す。
図12】決定部による電力供給量決定処理の例を示すフローチャートである。
図13】作業部の動作に応じた各アクチュエータへの電力配分の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態で説明する駆動装置の技術的思想は、関節構成部を備える任意の電動機械に適用できる。本実施形態では関節構成部として下部走行体、上部旋回体、ブーム、アーム、バケットを備える建設機械または電動建機の例を説明するが、その他の電動機械に本実施形態の駆動装置の技術的思想を適用することを妨げるものではない。例えば、関節構成部としての関節部またはジョイントを備える産業用ロボットに本実施形態の駆動装置の技術的思想を適用してもよい。また、本実施形態で説明する駆動装置および/または電力制御装置の技術的思想は、関節構成部として下部走行体、上部旋回体、ブーム、アーム、バケットを備える任意の建設機械に適用できる。また、本実施形態ではモータの回転動力で駆動される機械要素によって電動建機の各関節構成部を直接的に駆動するEMAをアクチュエータとして例示するが、本実施形態の技術的思想はモータの回転動力で駆動される油圧機器によって電動建機の各関節構成部を間接的に駆動するEHAにも適用できる。
【0012】
図1は、電動建機100の概略構成図である。図2は、電動建機100の上面図である。なお、以下の説明において、前後上下左右等の向きは、電動建機100の向きと同一とする。すなわち、以下の説明では、電動建機100の進行方向前方を単に前方と称し、電動建機100の進行方向後方を単に後方と称し、重力方向上側を単に上側と称し、重力方向下側を単に下側と称し、前方を向いて車幅方向右側を単に右側と称し、車幅方向左側を単に左側と称して説明する。
【0013】
建設機械である電動建機100では、地面を前方および後方に走行可能な下部走行体101の上に上部旋回体102が旋回可能に取り付けられている。上部旋回体102には、前方左側にキャブ103が設けられると共に、前方中央部にブーム104が起伏可能に取り付けられている。ブーム104の先端には、アーム105が上下に屈曲可能に取り付けられている。アーム105の先端には、バケット106が上下に屈曲可能に取り付けられている。
【0014】
キャブ103の前方左側には、ジャイロセンサ110が取り付けられている。換言すれば、上部旋回体102において、旋回中心C1から最大限離間した位置にジャイロセンサ110が取り付けられている。ジャイロセンサ110は、キャブ103(下部走行
体101、上部旋回体102)の傾斜角度、傾斜方向、旋回位置、回転角速度を検出可能なセンサである。なお、傾斜方向とは、傾斜の上り方向または下り方向をいう。
【0015】
以下、下部走行体101、上部旋回体102、ブーム104、アーム105、バケット106を電動建機100の関節構成部と総称する。従って、図1および図2の電動建機100は5個の関節構成部を有する建設機械である。なお、下部走行体101は地面を走行可能な走行部を構成し、上部旋回体102は走行部に対して旋回可能な旋回部を構成し、ブーム104、アーム105、バケット106は旋回部に取り付けられて作業を行う作業部を構成する。
【0016】
関節構成部は厳密には、下部走行体101、上部旋回体102、ブーム104、アーム105、バケット106が駆動される際に回転する部位であり、図1においてそれぞれ101A、102A、104A、105A、106Aで示される。下部走行体101の関節構成部101Aは無限軌道を構成する前輪および後輪であり、上部旋回体102の関節構成部102Aは下部走行体101に取り付けられている旋回軸であり、ブーム104の関節構成部104Aは上部旋回体102に取り付けられている起伏軸であり、アーム105の関節構成部105Aはブーム104の先端に取り付けられている屈曲軸であり、バケット106の関節構成部106Aはアーム105の先端に取り付けられている屈曲軸である。以下、特に明記する必要がある場合を除いて、101A、102A、104A、105A、106Aの符号は使用せず、101、102、104、105、106を使用する。例えば、「下部走行体101」および/または「関節構成部101」との表現は、文脈に応じて関節構成部101Aを指すものとする。
【0017】
図3は、電動建機100の駆動装置1の第1の構成例を示す。駆動装置1は、直流電源としてのバッテリ10が生成する直流電圧または直流電力に基づいて電動建機100の関節構成部である下部走行体101、上部旋回体102、ブーム104、アーム105、バケット106を駆動する。なお、直流電力を生成する直流電源としてのバッテリ10の代わりに交流電力を生成する交流電源を設けてもよい。電動建機100の各関節構成部には、それぞれを駆動する駆動部としてのアクチュエータが設けられる。以下、下部走行体101を走行駆動する一対の走行体アクチュエータ21Aおよび21B、上部旋回体102を旋回駆動する旋回体アクチュエータ22、ブーム104を起伏駆動するブームアクチュエータ24、アーム105を屈曲駆動するアームアクチュエータ25、バケット106を屈曲駆動するバケットアクチュエータ26を、アクチュエータ2と総称する。
【0018】
各アクチュエータ2は、コンバータと、インバータと、モータを備える。一対の走行体アクチュエータ21Aおよび21Bは、コンバータ211Aおよび211Bと、インバータ221Aおよび221Bと、モータ231Aおよび231Bを備える。旋回体アクチュエータ22は、コンバータ212と、インバータ222と、モータ232を備える。ブームアクチュエータ24は、コンバータ214と、インバータ224と、モータ234を備える。アームアクチュエータ25は、コンバータ215と、インバータ225と、モータ235を備える。バケットアクチュエータ26は、コンバータ216と、インバータ226と、モータ236を備える。以下、コンバータ211A、211B、212、214、215、216をコンバータ210と総称し、インバータ221A、221B、222、224、225、226をインバータ220と総称し、モータ231A、231B、232、234、235、236をモータ230と総称する。
【0019】
コンバータ210には、バッテリ10と共に上部旋回体102に設けられる旋回体アクチュエータ22のコンバータ212を除き、後述するようにバッテリ10による直流電力から変換された交流電力が入力される。旋回体アクチュエータ22のコンバータ212には、バッテリ10による直流電力が後述するDC/ACコンバータ121やDC/ACコンバータ131で変換されることなく入力される。各コンバータ210は、入力された交流または直流の電力を、後段の各インバータ220が動作可能な直流電力に変換する。インバータ220は、コンバータ210から入力された直流電力に基づいて、後段のモータ230を回転駆動する3相の交流電力を生成する。モータ230は、インバータ220から入力された3相の交流電力に基づいて、回転動力を発生させて対応する関節構成部を駆動する。
【0020】
バッテリ10は充放電コンバータ11を介して直流電圧バス31に接続される。充放電コンバータ11は双方向のDC/DC変換器であり、バッテリ10の充放電の制御と直流電圧の変換を担う。バッテリ10の放電時には、バッテリ10の放電による直流電圧が充放電コンバータ11によって直流電圧バス31における所定の直流電圧に変換される。バッテリ10の充電時には、直流電圧バス31における所定の直流電圧が充放電コンバータ11によってバッテリ10が充電可能な直流電圧に変換される。直流電圧バス31の所定の直流電圧は任意に設定できるが、例えば、200V~400V程度の高電圧とするのが好ましい。
【0021】
以上の構成のうち、バッテリ10、充放電コンバータ11、直流電圧バス31、旋回体アクチュエータ22は、電動建機100の本体である上部旋回体102に設けられる(図3における一点鎖線より上方の構成が上部旋回体102に含まれる)。前述の旋回体アクチュエータ22は直流電圧バス31に接続されているため、上部旋回体102の旋回駆動のための電力は直流電圧バス31から供給される。また、直流電圧バス31から分岐するように、ブーム104、アーム105、バケット106によって構成される作業部に電力を供給する作業部給電機構12と、下部走行体101に電力を供給する走行体給電機構13が設けられる。
【0022】
作業部給電機構12は、DC/ACコンバータ121と、ブーム伝送部122と、アーム伝送部123と、バケット伝送部124を備える。DC/ACコンバータ121は、バッテリ10で生成された直流電力を交流電力に変換する(直流交流)変換部を構成する。具体的には、上部旋回体102において直流電圧バス31に接続されるDC/ACコンバータ121は、直流電圧バス31から供給される直流電圧を1kHz以上の周波数の交流電圧に変換する。商用電源の交流電力の周波数としては100Hz未満が一般的だが、このような低い周波数では以下で説明する非接触伝送部を構成するコイルが大型化してしまう。そこで、本実施形態では商用電源よりも高い1kHz以上の周波数を採用することで、コイルを小型化してスペースの限られた電動建機100の各関節構成部に非接触伝送部をコンパクトに形成する。なお、直流電力を生成するバッテリ10の代わりに交流電力を生成する交流電源が設けられる場合、交流電源で生成された交流電力(例えば100Hz未満)をより高い周波数(例えば1kHz以上)を有する交流電力に変換するAC/ACコンバータがDC/ACコンバータ121の代わりの変換部として設けられる。
【0023】
ブーム伝送部122、アーム伝送部123、バケット伝送部124は、電動建機100の関節構成部であるブーム104、アーム105、バケット106においてDC/ACコンバータ121で変換された交流電力を非接触で伝送する非接触伝送部を構成する。具体的には、ブーム伝送部122はブームアクチュエータ24およびアーム伝送部123に非接触で電力を伝送し、アーム伝送部123はアームアクチュエータ25およびバケット伝送部124に非接触で電力を伝送し、バケット伝送部124はバケットアクチュエータ26に非接触で電力を伝送する。ブーム伝送部122、アーム伝送部123、バケット伝送部124は、DC/ACコンバータ121から供給された交流電力を伝送する交流電圧バス32によって直列に接続される。このように、ブーム伝送部122、アーム伝送部123、バケット伝送部124を直列に接続することで、それぞれの伝送部のためにDC/ACコンバータ121を別々に設ける必要がなくなるため、駆動装置1の構成を簡素化できる。
【0024】
ブーム伝送部122は、ブーム104と上部旋回体102を左右方向の回転軸(図1の104A)の周りに相対回転可能に接続するスイベル等の接続部品の内部に格納された複数のコイルによって構成される。具体的には、上部旋回体102側においてDC/ACコンバータ121と接続される一次コイル1221と、アーム105側において交流電圧バス32と接続される二次コイル1222と、ブームアクチュエータ24と接続される三次コイル1223によってブーム伝送部122が構成される。なお、ブーム伝送部122の全部または一部のコイルと、前段のDC/ACコンバータ121および/または後段のコンバータ214(更にはインバータ224)を一体的なトランスユニットまたは非接触伝送ユニットとして構成してもよい。
【0025】
一次コイル1221、二次コイル1222、三次コイル1223は互いに磁気的に結合している。DC/ACコンバータ121から一次コイル1221に供給された交流電力は、一次コイル1221と磁気的に結合した二次コイル1222および/または三次コイル1223によって、アーム105側および/またはブームアクチュエータ24に非接触で伝送される。このように、ブーム104の駆動部としてのブームアクチュエータ24は、非接触伝送部としてのブーム伝送部122における一次コイル1221および三次コイル1223によって非接触で伝送された交流電力に基づいてブーム104を駆動する。なお、一次コイル1221、二次コイル1222、三次コイル1223の間のギャップには電力伝送効率を高めるために磁性体等を挿入してもよい。
【0026】
また、ブームアクチュエータ24のモータ234の減速時等に発生する回生電力は、インバータ224およびコンバータ214を介して三次コイル1223に供給され、それと磁気的に結合した一次コイル1221および/または二次コイル1222によって、上部旋回体102側および/またはアーム105側に非接触で伝送される。後述するように、アームアクチュエータ25のモータ235および/またはバケットアクチュエータ26のモータ236の減速時等に発生する回生電力は、交流電圧バス32を介して二次コイル1222に供給され、それと磁気的に結合した一次コイル1221および/または三次コイル1223によって、上部旋回体102側および/またはブームアクチュエータ24に非接触で伝送される。なお、各コイル1221、1222、1223の間の磁気的な結合は、非接触で伝送される交流電圧の大きさを一定に保つようなものでもよいし、非接触で伝送される交流電圧の大きさを変化させる変圧器またはトランスのようなものでもよい。
【0027】
アーム伝送部123は、アーム105とブーム104を左右方向の回転軸(図1の105A)の周りに相対回転可能に接続するスイベル等の接続部品の内部に格納された複数のコイルによって構成される。具体的には、ブーム104側において交流電圧バス32と接続される一次コイル1231と、バケット106側において交流電圧バス32と接続される二次コイル1232と、アームアクチュエータ25と接続される三次コイル1233によってアーム伝送部123が構成される。
【0028】
一次コイル1231、二次コイル1232、三次コイル1233は互いに磁気的に結合している。ブーム伝送部122の二次コイル1222から交流電圧バス32を介して一次コイル1231に供給された交流電力は、一次コイル1231と磁気的に結合した二次コイル1232および/または三次コイル1233によって、バケット106側および/またはアームアクチュエータ25に非接触で伝送される。このように、アーム105の駆動部としてのアームアクチュエータ25は、非接触伝送部としてのアーム伝送部123における一次コイル1231および三次コイル1233によって非接触で伝送された交流電力に基づいてアーム105を駆動する。なお、一次コイル1231、二次コイル1232、三次コイル1233の間のギャップには電力伝送効率を高めるために磁性体等を挿入してもよい。
【0029】
また、アームアクチュエータ25のモータ235の減速時等に発生する回生電力は、インバータ225およびコンバータ215を介して三次コイル1233に供給され、それと磁気的に結合した一次コイル1231および/または二次コイル1232によって、ブーム104側および/またはバケット106側に非接触で伝送される。後述するように、バケットアクチュエータ26のモータ236の減速時等に発生する回生電力は、交流電圧バス32を介して二次コイル1232に供給され、それと磁気的に結合した一次コイル1231および/または三次コイル1233によって、ブーム104側および/またはアームアクチュエータ25に非接触で伝送される。なお、各コイル1231、1232、1233の間の磁気的な結合は、非接触で伝送される交流電圧の大きさを一定に保つようなものでもよいし、非接触で伝送される交流電圧の大きさを変化させる変圧器またはトランスのようなものでもよい。
【0030】
バケット伝送部124は、バケット106とアーム105を左右方向の回転軸(図1の106A)の周りに相対回転可能に接続するスイベル等の接続部品の内部に格納された複数のコイルによって構成される。具体的には、アーム105側において交流電圧バス32と接続される一次コイル1241と、バケットアクチュエータ26と接続される二次コイル1242によってバケット伝送部124が構成される。
【0031】
一次コイル1241と二次コイル1242は互いに磁気的に結合している。アーム伝送部123の二次コイル1232から交流電圧バス32を介して一次コイル1241に供給された交流電力は、一次コイル1241と磁気的に結合した二次コイル1242によってバケットアクチュエータ26に非接触で伝送される。このように、バケット106の駆動部としてのバケットアクチュエータ26は、非接触伝送部としてのバケット伝送部124における一次コイル1241および二次コイル1242によって非接触で伝送された交流電力に基づいてバケット106を駆動する。なお、一次コイル1241と二次コイル1242の間のギャップには電力伝送効率を高めるために磁性体等を挿入してもよい。
【0032】
また、バケットアクチュエータ26のモータ236の減速時等に発生する回生電力は、インバータ226およびコンバータ216を介して二次コイル1242に供給され、それと磁気的に結合した一次コイル1241によってアーム105側に非接触で伝送される。なお、各コイル1241、1242の間の磁気的な結合は、非接触で伝送される交流電圧の大きさを一定に保つようなものでもよいし、非接触で伝送される交流電圧の大きさを変化させる変圧器またはトランスのようなものでもよい。
【0033】
走行体給電機構13は、DC/ACコンバータ131と、降圧伝送部132と、一対の昇圧伝送部133Aおよび133Bを備える。DC/ACコンバータ131は、バッテリ10で生成された直流電力を交流電力に変換する(直流交流)変換部を構成する。具体的には、上部旋回体102において直流電圧バス31に接続されるDC/ACコンバータ131は、直流電圧バス31から供給される直流電圧を1kHz以上の周波数の交流電圧に変換する。なお、直流電力を生成するバッテリ10の代わりに交流電力を生成する交流電源が設けられる場合、交流電源で生成された交流電力(例えば100Hz未満)をより高い周波数(例えば1kHz以上)を有する交流電力に変換するAC/ACコンバータがDC/ACコンバータ131の代わりの変換部として設けられる。降圧伝送部132、一対の昇圧伝送部133Aおよび133Bは、電動建機100の関節構成部である下部走行体101においてDC/ACコンバータ131で変換された交流電力を非接触で伝送する非接触伝送部、および、下部走行体101の駆動部である走行体アクチュエータ21Aおよび21Bに非接触で電力を伝送する下部走行体伝送部を構成する。
【0034】
降圧伝送部132は、下部走行体101と上部旋回体102を上下方向の回転軸(図1の旋回軸102A)の周りに相対回転可能に接続するスイベル等の接続部品の内部に格納された複数のコイルによって構成される。具体的には、上部旋回体102側においてDC/ACコンバータ131と接続される一次コイル1321と、下部走行体101側において一対の昇圧伝送部133Aおよび133Bと並列に接続される二次コイル1322によって降圧伝送部132が構成される。なお、降圧伝送部132の全部または一部のコイルと、前段のDC/ACコンバータ131を一体的なトランスユニットまたは非接触伝送ユニットとして構成してもよい。
【0035】
一次コイル1321と二次コイル1322は互いに磁気的に結合している。DC/ACコンバータ131から一次コイル1321に供給された交流電力は、一次コイル1321と磁気的に結合した二次コイル1322によって、下部走行体101側に非接触で伝送される。後述するように、走行体アクチュエータ21Aおよび/または21Bのモータ231Aおよび/または231Bの減速時等に発生する回生電力は、昇圧伝送部133Aおよび/または133Bを介して二次コイル1322に供給され、それと磁気的に結合した一次コイル1321によって上部旋回体102側に非接触で伝送される。なお、一次コイル1321と二次コイル1322の間のギャップには電力伝送効率を高めるために磁性体等を挿入してもよい。
【0036】
降圧伝送部132は、一次コイル1321および二次コイル1322の巻数の違いによって非接触で伝送される交流電圧の大きさを変化させる変圧器またはトランスとして構成され、上部旋回体102側のDC/ACコンバータ131から供給された交流電圧を降圧して下部走行体101側に非接触で伝送する。前述のように、DC/ACコンバータ131が接続される直流電圧バス31の直流電圧は例えば200V~400V程度であるが、降圧伝送部132によって40V~60V程度の低電圧の交流電圧に変換される。降圧伝送部132が設けられるのは上部旋回体102と下部走行体101の間の回転部(旋回部)であるが、水分を含む土砂や水の付着によって万が一漏電が起こったとしても降圧伝送部132によって電圧が下げられているため安全性を確保できる。なお、降圧伝送部132と比べて人が接触する可能性が低い作業部給電機構12におけるブーム伝送部122では、降圧伝送部132のような大幅な降圧を行う必要はない。このため、作業部給電機構12における交流電圧バス32の交流電圧は、降圧伝送部132によって降圧された交流電圧より高くなる。
【0037】
一対の昇圧伝送部133Aおよび133Bは、クローラ等の左右一対の下部走行体101に対応して並列に設けられる。以下では昇圧伝送部133と総称してまとめて説明する。同様に、一対の走行体アクチュエータ21Aおよび21Bは走行体アクチュエータ21と総称し、一対のコンバータ211Aおよび211Bはコンバータ211と総称し、一対のインバータ221Aおよび221Bはインバータ221と総称し、一対のモータ231Aおよび231Bはモータ231と総称する。
【0038】
昇圧伝送部133は、左右の各下部走行体101の内部に格納された複数のコイルによって構成される。具体的には、降圧伝送部132の二次コイル1322と接続される一次コイル1331と、走行体アクチュエータ21と接続される二次コイル1332によって昇圧伝送部133が構成される。なお、昇圧伝送部133の全部または一部のコイルと、後段のコンバータ211(更にはインバータ221)を一体的なトランスユニットまたは非接触伝送ユニットとして構成してもよい。
【0039】
一次コイル1331と二次コイル1332は互いに磁気的に結合している。降圧伝送部132の二次コイル1322から一次コイル1331に供給された交流電力は、一次コイル1331と磁気的に結合した二次コイル1332によって走行体アクチュエータ21に非接触で伝送される。また、走行体アクチュエータ21のモータ231の減速時等に発生する回生電力は、インバータ221およびコンバータ211を介して二次コイル1332に供給され、それと磁気的に結合した一次コイル1331によって、降圧伝送部132の二次コイル1322および/または他方の昇圧伝送部133の一次コイル1331に非接触で伝送される。なお、一次コイル1331と二次コイル1332の間のギャップには電力伝送効率を高めるために磁性体等を挿入してもよい。
【0040】
昇圧伝送部133は、一次コイル1331および二次コイル1332の巻数の違いによって非接触で伝送される交流電圧の大きさを変化させる変圧器またはトランスとして構成され、降圧伝送部132の二次コイル1322から供給された交流電圧を昇圧して走行体アクチュエータ21に非接触で伝送する。前述のように降圧伝送部132で40V~60V程度まで降圧された交流電圧は、昇圧伝送部133によって走行体アクチュエータ21のコンバータ211が動作可能な大きさまで昇圧される。以上のように、下部走行体101の駆動部としての走行体アクチュエータ21は、非接触伝送部としての降圧伝送部132および昇圧伝送部133によって非接触で伝送された交流電力に基づいて下部走行体101を駆動する。
【0041】
各関節構成部のアクチュエータ2で回収される回生電力は、他のアクチュエータ2による関節構成部の駆動に用いられる他、直流電圧バス31に接続される電気二重層キャパシタ(EDLC: Electric double-layer capacitor)等で構成される回生電力充電部としてのキャパシタ14に充電される。本実施形態の電力制御装置に関して後述するように、交流電圧バス32によって相互に接続されたブームアクチュエータ24、アームアクチュエータ25、バケットアクチュエータ26で回収された回生電力は、これらのアクチュエータ群において優先的に消費され、余剰があった場合のみ上部旋回体102側に戻される。
【0042】
具体的には、バケットアクチュエータ26で回収された回生電力のうち、ブームアクチュエータ24およびアームアクチュエータ25のいずれでも消費されない余剰分は、コンバータ216で交流電力に変換された上で、バケット伝送部124、アーム伝送部123、ブーム伝送部122を介して、上部旋回体102のDC/ACコンバータ121に非接触で伝送される。アームアクチュエータ25で回収された回生電力のうち、ブームアクチュエータ24およびバケットアクチュエータ26のいずれでも消費されない余剰分は、コンバータ215で交流電力に変換された上で、アーム伝送部123、ブーム伝送部122を介して、上部旋回体102のDC/ACコンバータ121に非接触で伝送される。ブームアクチュエータ24で回収された回生電力のうち、アームアクチュエータ25およびバケットアクチュエータ26のいずれでも消費されない余剰分は、コンバータ214で交流電力に変換された上で、ブーム伝送部122を介して上部旋回体102のDC/ACコンバータ121に非接触で伝送される。
【0043】
ブームアクチュエータ24、アームアクチュエータ25、バケットアクチュエータ26の少なくともいずれかから余った回生電力を受け取ったDC/ACコンバータ121は、その交流電力を直流電力に変換してキャパシタ14を充電する充放電回路141に供給する。図4は、充放電回路141の構成例を示す。充放電回路141は、直流電圧バス31の高電位ライン31Hに接続される高電位トランジスタ142Hと、直流電圧バス31の低電位ライン31Lに接続される低電位トランジスタ142Lと、高電位トランジスタ142Hおよび低電位トランジスタ142Lの接続点143と低電位ライン31Lの間にキャパシタ14と直列に接続される昇降圧リアクトル144を備える。充放電回路141は、高電位トランジスタ142Hおよび低電位トランジスタ142Lのスイッチング動作によってキャパシタ14の充放電の制御と直流電圧の変換を行う。
【0044】
なお、DC/ACコンバータ121が直流電力に変換した回生電力は、充放電コンバータ11を介したバッテリ10の充電に用いられてもよいし、充電されずに他のアクチュエータ(旋回体アクチュエータ22および/または走行体アクチュエータ21)に供給されてもよい。また、キャパシタ14に蓄えられた電力は充放電回路141によって放電可能であり各アクチュエータ2に供給される。
【0045】
同様に、一対の走行体アクチュエータ21A、21Bで回収された回生電力は、これらのアクチュエータ群において優先的に消費され、余剰があった場合のみ上部旋回体102側に戻される。具体的には、一方の走行体アクチュエータ21で回収された回生電力のうち、他方の走行体アクチュエータ21で消費されない余剰分は、コンバータ211で交流電力に変換された上で、昇圧伝送部133、降圧伝送部132を介して、上部旋回体102のDC/ACコンバータ131に非接触で伝送される。
【0046】
一対の走行体アクチュエータ21Aおよび21Bの少なくともいずれかから余った回生電力を受け取ったDC/ACコンバータ131は、その交流電力を直流電力に変換してキャパシタ14を充電する充放電回路141に供給する。なお、DC/ACコンバータ131が直流電力に変換した回生電力は、充放電コンバータ11を介したバッテリ10の充電に用いられてもよいし、充電されずに他のアクチュエータ(旋回体アクチュエータ22、ブームアクチュエータ24、アームアクチュエータ25、バケットアクチュエータ26等)に供給されてもよい。また、旋回体アクチュエータ22で回収された回生電力は、コンバータ212で直流電力に変換された上で、キャパシタ14を充電する充放電回路141、バッテリ10を充電する充放電コンバータ11、他のアクチュエータ(走行体アクチュエータ21、ブームアクチュエータ24、アームアクチュエータ25、バケットアクチュエータ26等)等に供給される。
【0047】
以上の駆動装置1によれば、電動建機100の関節構成部のうち下部走行体101、ブーム104、アーム105、バケット106に、非接触伝送部としての降圧伝送部132、ブーム伝送部122、アーム伝送部123、バケット伝送部124を設けることで、これらの関節構成部の円滑な動作を妨げることなく非接触で交流電力を伝送できる。また、各非接触伝送部は複数のコイルによって簡素に構成できるため、特許文献1のような直流電力の伝送のための配線を関節構成部に収納する構成に比べて、関節構成部の複雑化や大型化を防止できる。
【0048】
図5は、電動建機100の駆動装置1の第2の構成例を示す。図3の第1の構成例と同様の構成要素には同一の符号を付して重複した説明を省略する。第2の構成例では、バッテリ10で生成された直流電力を交流電力に変換する直流交流変換部としてのDC/ACコンバータ15がバッテリ10に付随して設けられる。
【0049】
バッテリ10の放電時には、バッテリ10の放電による直流電力がDC/ACコンバータ15によって1kHz以上の周波数の交流電力に変換されて交流電圧バス33に供給される。バッテリ10の充電時には、交流電圧バス33における交流電力がDC/ACコンバータ15によって直流電力に変換されてバッテリ10を充電する。DC/ACコンバータ15から交流電力が供給される交流電圧バス33は、旋回体アクチュエータ22、作業部給電機構12、走行体給電機構13に1kHz以上の周波数の交流電力を供給する。
【0050】
図3の第1の構成例では旋回体アクチュエータ22のコンバータ212に直流電圧バス31からの直流電力が入力されたが、図5の第2の構成例では旋回体アクチュエータ22のコンバータ212に交流電圧バス33からの交流電力が入力される。旋回体アクチュエータ22のコンバータ212は、入力された交流電力を後段のインバータ222が動作可能な直流電力に変換する。
【0051】
作業部給電機構12は、図3におけるDC/ACコンバータ121が設けられない点を除いて第1の構成例と同様である。図3におけるDC/ACコンバータ121の機能は、図5におけるDC/ACコンバータ15が担う。すなわち、DC/ACコンバータ15は交流電圧バス33を介して、ブーム伝送部122の一次コイルに交流電力を供給する。
【0052】
走行体給電機構13は、図3におけるDC/ACコンバータ131が設けられない点を除いて第1の構成例と同様である。図3におけるDC/ACコンバータ131の機能は、図5におけるDC/ACコンバータ15が担う。すなわち、DC/ACコンバータ15は交流電圧バス33を介して、降圧伝送部132の一次コイルに交流電力を供給する。
【0053】
図5の第2の構成例では、回生電力充電部を構成するキャパシタ14および充放電回路141の前段にAC/DCコンバータ16が設けられる。AC/DCコンバータ16は交流電圧バス33の交流電力を、充放電回路141がキャパシタ14の充電処理を行うための直流電力に変換する。また、キャパシタ14の放電処理の際は、充放電回路141が出力する直流電力がAC/DCコンバータ16によって交流電力に変換されて交流電圧バス33に供給される。
【0054】
図6は、電動建機100の駆動装置1の第3の構成例を示す。図3の第1の構成例と同様の構成要素には同一の符号を付して重複した説明を省略する。第3の構成例では、充放電コンバータ11がバッテリ10で生成された直流電力に1kHz以上の周波数の交流電力を重畳する交流重畳部として機能する。図7は、充放電コンバータ11が直流/交流電圧バス34に供給する電圧Vの時間tによる変化を模式的に示す。「DC」がバッテリ10で生成された直流電圧を示し、これに「AC」で示される交流電圧が充放電コンバータ11によって重畳された電圧Vが直流/交流電圧バス34に供給される。
【0055】
直流/交流電圧バス34に直接的に接続される旋回体アクチュエータ22のコンバータ212および充放電回路141は、直流/交流電圧バス34から供給される電圧Vのうち主に直流成分に基づいて図3の第1の構成例と同様に動作する。
【0056】
作業部給電機構12は、図3におけるDC/ACコンバータ121の代わりに、直流除去フィルタとしてのDC除去フィルタ125と交流変換部としてのAC/ACコンバータ126を備える。DC除去フィルタ125は、交流重畳部としての充放電コンバータ11の出力に接続され、直流電力を除去して交流電力を通過させることで、直流交流変換部としてのDC/ACコンバータ121と同等の機能を担う。図7の例では、直流成分「DC」がDC除去フィルタ125によって除去され、交流成分「AC」がDC除去フィルタ125を通過する。
【0057】
DC除去フィルタ125を通過した交流電力は、そのままブーム伝送部122の一次コイルに供給されてもよいが、図6の例ではブーム伝送部122における非接触伝送の効率を上げるためのAC/ACコンバータ126が不図示の共振回路と共に設けられる。AC/ACコンバータ126は、DC除去フィルタ125を通過した交流電力の周波数を変換して非接触伝送部としてのブーム伝送部122に供給する。具体的には、AC/ACコンバータ126は交流電力の周波数を高める処理を行い、ブーム伝送部122における非接触伝送の効率が高まる高周波数帯に交流電力を遷移させる。AC/ACコンバータ126で周波数が高められた交流電力は、ブーム伝送部122の一次コイルに供給される。なお、ブーム伝送部122における非接触伝送の効率を高めるためのAC/ACコンバータ126は、図3の第1の構成例や図5の第2の構成例に設けてもよい。
【0058】
走行体給電機構13は、図3におけるDC/ACコンバータ131の代わりに、直流除去フィルタとしてのDC除去フィルタ134と交流変換部としてのAC/ACコンバータ135を備える。DC除去フィルタ134は、交流重畳部としての充放電コンバータ11の出力に接続され、直流電力を除去して交流電力を通過させることで、直流交流変換部としてのDC/ACコンバータ131と同等の機能を担う。図7の例では、直流成分「DC」がDC除去フィルタ134によって除去され、交流成分「AC」がDC除去フィルタ134を通過する。
【0059】
DC除去フィルタ134を通過した交流電力は、そのまま降圧伝送部132の一次コイルに供給されてもよいが、図6の例では降圧伝送部132における非接触伝送の効率を上げるためのAC/ACコンバータ135が不図示の共振回路と共に設けられる。AC/ACコンバータ135は、DC除去フィルタ134を通過した交流電力の周波数を変換して非接触伝送部としての降圧伝送部132に供給する。具体的には、AC/ACコンバータ135は交流電力の周波数を高める処理を行い、降圧伝送部132における非接触伝送の効率が高まる高周波数帯に交流電力を遷移させる。AC/ACコンバータ135で周波数が高められた交流電力は、降圧伝送部132の一次コイルに供給される。なお、降圧伝送部132における非接触伝送の効率を高めるためのAC/ACコンバータ135は、図3の第1の構成例や図5の第2の構成例に設けてもよい。
【0060】
図8は、電動建機100の電力制御装置4の構成例を示す。電力制御装置4は、需要電力取得部41と、供給可能電力取得部42と、電力比較部43と、決定部44と、識別部45と、駆動情報取得部47を備える。
【0061】
需要電力取得部41は、下部走行体101、上部旋回体102、ブーム104、アーム105、バケット106の各アクチュエータ2の需要電力を示す情報として、各アクチュエータ2におけるモータの回転数Nおよび電流指令値iq、idを取得する。これらの情報は、各アクチュエータ2に内蔵された不図示の通信装置が近距離無線通信技術等によって需要電力取得部41に送信してもよいし、各アクチュエータ2に供給される交流電力を搬送波として変調して非接触伝送部122、123、124、132、133を介して需要電力取得部41に送信してもよい。図9は、各アクチュエータ2におけるモータの電流指令値をdq座標系で示す。dq座標系ではd軸電流idがモータにおけるトルクの発生に寄与せず、id=0の場合はq軸電流iqに回転数Nを乗じたiq・Nが各アクチュエータ2の需要電力となる。一方、モータの高速回転時の界磁による逆起電力を低減させるための弱め界磁制御を行う場合は負のd軸電流idも流す必要があるため、需要電力取得部41はq軸電流iqだけでなくd軸電流idも考慮して各アクチュエータ2の需要電力を算出する。なお、需要電力取得部41は、電動建機100の操作部40のオペレータによる操作すなわち各アクチュエータ2に対する操作指令に基づいて、各アクチュエータ2の需要電力を見積もってもよい。
【0062】
供給可能電力取得部42は、電力制御装置4が各アクチュエータ2に供給可能な電力を取得する。電力制御装置4の供給可能電力は、バッテリ10の充電量または放電可能量、キャパシタ14の充電量または放電可能量、各アクチュエータ2で回収される回生電力の総和である。バッテリ10の充電量または放電可能量を示す情報として、供給可能電力取得部42はバッテリ10の充電率であるSOC(State Of Charge)および放電可能量を取得する。キャパシタ14の充電量または放電可能量を示す情報として、供給可能電力取得部42はキャパシタ14の充電率であるSOCを取得する。各アクチュエータ2で回収される回生電力は、作業部(ブーム104、アーム105、バケット106)のアクチュエータ24、25、26で回収される作業部回生電力と、下部走行体101の走行体アクチュエータ21A、21Bで回収される走行体回生電力と、上部旋回体102のアクチュエータ22で回収される旋回体回生電力に大別される。後述するように、作業部回生電力は作業部のアクチュエータ24、25、26において優先的に消費され、走行体回生電力は下部走行体101の走行体アクチュエータ21A、21Bにおいて優先的に消費される。
【0063】
電力比較部43は、需要電力取得部41で取得された各アクチュエータ2の需要電力の合計と、供給可能電力取得部42で取得された電力制御装置4の供給可能電力を比較する。決定部44は、各アクチュエータ2の需要電力の合計が電力制御装置4の供給可能電力より大きい場合、識別部45で識別された電動建機100の動作および/または慣性モーメント取得部46で取得された作業部の慣性モーメントに応じて、需要電力より小さい電力を供給するアクチュエータ2を決定する。なお、決定部44は、各アクチュエータ2の需要電力の合計と電力制御装置4の供給可能電力の大小関係によらず、識別部45で識別された電動建機100の動作に応じて、各アクチュエータ2に供給する電力を決定してもよい。また、決定部44は、各アクチュエータ2の需要電力の合計が電力制御装置4の供給可能電力より大きい場合、複数のアクチュエータ2のうち、識別部45で識別された電動建機100の動作に応じた必要電力が小さいアクチュエータ2に需要電力より小さい電力を供給することを決定する。決定部44による電力供給量決定処理の具体例については後述する。
【0064】
供給可能電力取得部42で取得された電力制御装置4の供給可能電力は、決定部44で決定された配分に応じて各アクチュエータ2に供給される。この時、各アクチュエータ2で回収される余剰な回生電力は、充放電コンバータ11および/または充放電回路141によって、バッテリ10および/またはキャパシタ14に充電される。また、上部旋回体102と作業部の間の双方向電力伝送を担うDC/ACコンバータ121は、バッテリ10やキャパシタ14等の上部旋回体102側からの直流電力を交流電力に変換して作業部のアクチュエータ24、25、26に供給すると共に、作業部のアクチュエータ24、25、26で回収される余剰な回生電力を交流から直流に変換して上部旋回体102のバッテリ10やキャパシタ14等に供給または充電する。同様に、上部旋回体102と下部走行体101の間の双方向電力伝送を担うDC/ACコンバータ131は、バッテリ10やキャパシタ14等の上部旋回体102側からの直流電力を交流電力に変換して下部走行体101のアクチュエータ21A、21Bに供給すると共に、下部走行体101のアクチュエータ21A、21Bで回収される余剰な回生電力を交流から直流に変換して上部旋回体102のバッテリ10やキャパシタ14等に供給または充電する。また、決定部44は、直列に接続されたブーム伝送部122、アーム伝送部123、バケット伝送部124の間の電力(回生電力を含む)の配分を決定する。同様に、決定部44は、直列に接続された二つの昇圧伝送部133A、133Bの間の電力(回生電力を含む)の配分を決定する。
【0065】
駆動情報取得部47は、電動建機100の各関節構成部、すなわち、下部走行体101、上部旋回体102、ブーム104、アーム105、バケット106の各アクチュエータ2の駆動情報を取得する。各アクチュエータ2の駆動情報としては、電動建機100の操作部40で受け付けたオペレータによる操作指令、当該操作指令に基づいて生成される各アクチュエータ2におけるモータに印加される電圧指令値や電流指令値等の動作指令、各アクチュエータ2におけるモータの回転数、電流、トルク等の動作パラメータの測定データ、各関節構成部に設けられる加速度センサ等の測定データ等が例示される。識別部45は、電動建機100の各関節構成部が行う動作を、駆動情報取得部47で取得された駆動情報、および、メモリ等の記憶部(不図示)に記憶された動作と駆動情報の対応関係に基づいて識別する。識別部45は、駆動情報取得部47で取得された駆動情報と電動建機100の動作を対応付けたテーブルを参照して電動建機100の動作を識別してもよいし、このようなテーブルに相当する網羅的な教師データによる機械学習を行った人工知能を通じて電動建機100の動作を識別してもよい。識別部45に設けられる慣性モーメント取得部46は、バケット106が運搬する被運搬物の重量を取得する重量取得部461と、上部旋回体102の旋回軸からのバケット106の距離を取得する距離取得部462を備え、被運搬物を含む作業部の旋回軸周り慣性モーメントを取得する。なお、作業部の慣性モーメントの演算に必要な作業部(ブーム104、アーム105、バケット106)自体の重量または質量は慣性モーメント取得部46に予め記憶されているものとする。
【0066】
図10は、電力制御装置4による電力制御処理の例を示すフローチャートである。フローチャートの説明において「S」はステップまたは処理を意味する。S1では、需要電力取得部41が、下部走行体101、上部旋回体102、ブーム104、アーム105、バケット106の各アクチュエータ2の需要電力を取得または算出する。S2では、供給可能電力取得部42が、電力制御装置4が各アクチュエータ2に供給可能な電力を取得する。S3では、電力比較部43が、S1で取得された各アクチュエータ2の需要電力の合計と、S2で取得された電力制御装置4の供給可能電力を比較する。S3における電力比較の結果、各アクチュエータ2の需要電力の合計が電力制御装置4の供給可能電力より大きい場合(S4におけるYes)はS5に進み、各アクチュエータ2の需要電力の合計が電力制御装置4の供給可能電力以下の場合(S4におけるNo)はS8に進む。
【0067】
S5では、駆動情報取得部47が電動建機100の各関節構成部のアクチュエータ2の駆動情報を取得し、識別部45が取得された駆動情報に基づいて、下部走行体101、上部旋回体102、ブーム104、アーム105、バケット106によって電動建機100が行う動作を識別する。S6では、慣性モーメント取得部46が、重量取得部461で取得されるバケット106の被運搬物の重量および距離取得部462で取得される旋回軸からのバケット106の距離に基づいて、被運搬物を含む作業部の旋回軸周り慣性モーメントを取得する。S7では、決定部44が、S5で識別された電動建機100の動作および/またはS6で取得された作業部の慣性モーメントに応じて、各アクチュエータ2に供給する電力を決定する。例えば、決定部44は、S6で取得された被運搬物の重量に応じて、上部旋回体102、ブーム104、アーム105、バケット106の各アクチュエータ2のうち、負担する重量または負荷が少ないアクチュエータ2に供給する電力が負担する重量または負荷が多いアクチュエータ2に供給する電力より小さくなるように決定する。また、決定部44は、S6で取得された距離が大きいほど、旋回体アクチュエータ22に供給する電力を大きくする。
【0068】
S8では、S2で取得された電力制御装置4の供給可能電力が、充放電コンバータ11、充放電回路141、DC/ACコンバータ121、131等を介して、各アクチュエータ2に供給または配分される。S4でNoと判定された場合は、原則としてS1で取得された需要電力の通りに各アクチュエータ2に電力が供給される。S4でYesと判定された場合は、S7で決定された配分に応じて各アクチュエータ2に電力が供給される。なお、S8において各アクチュエータ2の需要電力を上回る余剰な回生電力が発生した場合は、充放電コンバータ11および/または充放電回路141によって、バッテリ10および/またはキャパシタ14に充電される。
【0069】
図11は、S4の判定処理、S7の電力配分量決定処理、S8の電力供給処理の例を模式的に示す。縦軸は電力を表し、横軸は時間を表す。曲線は各時刻における電力制御装置4の供給可能電力を表す。前述の通り、電力制御装置4の供給可能電力は、バッテリ10の充電量、キャパシタ14の充電量、各アクチュエータ2で回収される回生電力の総和であり、時間によって大きく変動する。時刻T1、T2に示される積み上げ棒グラフは、当該各時刻における各アクチュエータ2の需要電力を表す。なお、図示および説明の簡素化のため、作業部のアクチュエータ24、25、26の需要電力のみを示す。従って、図示の供給可能電力は、作業部のアクチュエータ24、25、26に対する供給可能電力のみを含み、走行体アクチュエータ21A、21B、旋回体アクチュエータ22に対する供給可能電力を含まない。
【0070】
時刻T1では、各アクチュエータ2の需要電力の合計が電力制御装置4の供給可能電力以下となるためS4ではNoと判定され、S8では図示の需要電力の通りに各アクチュエータ2に電力が供給される。時刻T2では、各アクチュエータ2の当初の需要電力の合計が点線で示されるものであったとする。この場合、各アクチュエータ2の需要電力の合計が電力制御装置4の供給可能電力より大きくなるためS4ではYesと判定される。S7では、決定部44が、各アクチュエータ2の需要電力の合計が電力制御装置4の供給可能電力以下となるように、各アクチュエータ2に供給する電力を決定する。その結果、S8では電力制御装置4の供給可能電力の範囲で各アクチュエータ2に電力が供給される。このように、各アクチュエータ2の需要電力の合計が電力制御装置4の供給可能電力より大きい場合、決定部44の決定に基づいて少なくともいずれかのアクチュエータ2への電力配分が減らされるため、供給可能電力の範囲で適切な電力配分を実現できる。
【0071】
図12は、決定部44によるS7の電力供給量決定処理の例を示すフローチャートである。S11では、S5で識別された電動建機100の主な動作が下部走行体101による走行動作であるか否かが判定される。S11でYesと判定された場合はS12に進み、主たる動作を担う下部走行体101への電力配分はそのままに、必要電力が小さい上部旋回体102または作業部への電力配分が減らされる。S11でNoと判定された場合はS13に進み、S5で識別された電動建機100の主な動作が上部旋回体102による旋回動作であるか否かが判定される。S13でYesと判定された場合はS14に進み、主たる動作を担う上部旋回体102への電力配分はそのままに、必要電力が小さい下部走行体101または作業部への電力配分が減らされる。S13でNoと判定された場合はS15に進み、S5で識別された作業部の動作(例えば、掘削動作、旋回積込動作、溝掘動作、地面ならし動作)に応じて各アクチュエータ2に電力が配分される。
【0072】
図13は、作業部の動作に応じた各アクチュエータ2への電力配分の例を示す。「需要電力」の積み上げ棒グラフは各アクチュエータ2の需要電力を表し、「掘削動作」「90度旋回積込動作」の各積み上げ棒グラフは、S15において各動作に応じて各アクチュエータ2に配分される電力を表す。図示されるように、「需要電力」は電力制御装置4の供給可能電力を上回っているが、「掘削動作」「90度旋回積込動作」では電力制御装置4の供給可能電力の範囲で各動作にとって適切な電力配分が実現される。「掘削動作」では、掘削動作を担う作業部のアクチュエータ24、25、26には電力が多めに配分される一方で、必要電力が小さい走行体アクチュエータ21A、21B、旋回体アクチュエータ22への電力が抑制または低減される。「90度旋回積込動作」では、作業部だけでなく上部旋回体102でも大きな電力が必要となるため、旋回体アクチュエータ22には需要電力通りの電力が配分される。一方、「90度旋回積込動作」では下部走行体101が停止しているため、必要電力が小さい走行体アクチュエータ21A、21Bへの電力の配分または供給が停止される。
【0073】
S16では、S6で取得された作業部の旋回軸周り慣性モーメントが所定値以上であるか否かが判定される。S16でYesと判定された場合はS17に進み、上部旋回体102への電力配分がS15から増やされる。これは作業部の慣性モーメントが大きくなると、それを旋回させる上部旋回体102における電力消費量が増えるためである。なお、上部旋回体102に追加で配分される電力は、必要電力が小さい下部走行体101または作業部への電力配分を減らすことで捻出される。S18では以上の処理S11~S17を経て各アクチュエータ2への電力配分量が決定される。図11図13で説明したように、各アクチュエータ2への電力配分量の合計は電力制御装置4の供給可能電力以下になる。
【0074】
S19以降の処理は、各アクチュエータ2で回収される回生電力の配分に関する。S19では、作業部のアクチュエータ24、25、26で回収される作業部回生電力(S2で検知可能)が、当該作業部アクチュエータ群に優先的に配分される。S20では、S2で検知された作業部回生電力の総和がS18で決定された作業部のアクチュエータ24、25、26への配分電力の総和より大きいか否かが判定される。S20でYesと判定された場合はS21に進み、余剰な作業部回生電力がDC/ACコンバータ121を介して上部旋回体102側またはバッテリ10/キャパシタ14側に戻される。
【0075】
S22では、下部走行体101の走行体アクチュエータ21A、21Bで回収される走行体回生電力(S2で検知可能)が、当該走行体アクチュエータ群に優先的に配分される。S23では、S2で検知された走行体回生電力の総和がS18で決定された下部走行体101の走行体アクチュエータ21A、21Bへの配分電力の総和より大きいか否かが判定される。S23でYesと判定された場合はS24に進み、余剰な走行体回生電力がDC/ACコンバータ131を介して上部旋回体102側またはバッテリ10/キャパシタ14側に戻される。
【0076】
以上の本実施形態によれば、複数のアクチュエータ2の需要電力の合計が電源の供給可能電力より大きい場合、決定部44の決定に基づいて少なくともいずれかのアクチュエータ2への電力配分が減らされるため、供給可能電力の範囲で適切な電力配分を実現できる。特に、電源がバッテリ10によって構成される場合、限られた充電量を効率的に利用することで、電力制御装置4ひいては電動建機100の連続稼働時間を延ばすことができる。
【0077】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0078】
図8の電力制御装置4の構成例では各アクチュエータ2に供給される交流電力が非接触伝送部122、123、124、132、133を介して非接触で伝送されていたが、バッテリ10で生成された直流電力が配線によって各アクチュエータ2に供給される構成の電動建機にも本発明の電力制御装置4は適用可能である。
【0079】
実施形態ではアクチュエータ2が電動建機100の各関節構成部を直接的に駆動するEMAの例を説明したが、電動建機100の各関節構成部はアクチュエータ2によって間接的に駆動されてもよい。例えば、各関節構成部を直接的に駆動するのが油圧モータや油圧シリンダ等の油圧機器である場合、各油圧機器への油圧を制御する油圧バルブの制御にモータ230を用いることでアクチュエータ2をEHAとして構成してもよい。
【0080】
また、実施形態では建設機械または電動建機として、下部走行体101、上部旋回体102、ブーム104、アーム105、バケット106を関節構成部として備えるものを例示したが、その他の関節構成部を備える任意の建設機械に本発明は適用できる。例えば、ブルドーザ、スクレイパー、掘削機、ショベル、運搬機械、ダンプトラック、トレーラー、ショベルローダー、フォークローダー、ベルトコンベア、クレーン、建設用リフト、フォークリフト、杭打ち機、せん孔機械、ボーリングマシン、さく岩機、ロードローラー、トラックミキサ、コンプレッサ、ポンプ、ウインチ等が例示される。
【0081】
なお、実施形態で説明した各装置の機能構成はハードウェア資源またはソフトウェア資源により、あるいはハードウェア資源とソフトウェア資源の協働により実現できる。ハードウェア資源としてプロセッサ、ROM、RAM、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【0082】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部又は全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部又は全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は建設機械における電力制御技術に関する。
【符号の説明】
【0084】
1 駆動装置、2 アクチュエータ、4 電力制御装置、10 バッテリ、11 充放電コンバータ、12 作業部給電機構、13 走行体給電機構、14 キャパシタ、15 DC/ACコンバータ、16 AC/DCコンバータ、21 走行体アクチュエータ、22 旋回体アクチュエータ、24 ブームアクチュエータ、25 アームアクチュエータ、26 バケットアクチュエータ、31 直流電圧バス、32 交流電圧バス、33 交流電圧バス、34 直流/交流電圧バス、40 操作部、41 需要電力取得部、42 供給可能電力取得部、43 電力比較部、44 決定部、45 識別部、46 慣性モーメント取得部、100 電動建機、101 下部走行体、102 上部旋回体、104 ブーム、105 アーム、106 バケット、121 DC/ACコンバータ、122 ブーム伝送部、123 アーム伝送部、124 バケット伝送部、125 DC除去フィルタ、126 AC/ACコンバータ、131 DC/ACコンバータ、132 降圧伝送部、133 昇圧伝送部、134 DC除去フィルタ、135 AC/ACコンバータ、141 充放電回路、230 モータ、461 重量取得部、462 距離取得部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13