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  • 特許-熱伝導性組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】熱伝導性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240903BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20240903BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20240903BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240903BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240903BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240903BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20240903BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L83/07
C08L83/05
C08K3/013
C08K3/04
C08K3/22
C08K3/28
C09K5/14 101E
C09K5/14 102E
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024013140
(22)【出願日】2024-01-31
【審査請求日】2024-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2023100275
(32)【優先日】2023-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023204644
(32)【優先日】2023-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】近藤 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英雄
(72)【発明者】
【氏名】星野 千里
(72)【発明者】
【氏名】ぺララ,スレシュ,クマル
(72)【発明者】
【氏名】ネイク,サンディープ
(72)【発明者】
【氏名】ダラヴォイ,チュリカ
(72)【発明者】
【氏名】ドライ,スカンタ
(72)【発明者】
【氏名】デュッダ,パラナベシュ
(72)【発明者】
【氏名】プラサド,マニシュ,チャンド
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・リー
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/187569(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 101/00-101/16
C08L 83/00-83/16
C08K 3/013-3/28
C09K 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーと第1の熱伝導率向上剤と第2の熱伝導率向上剤とを含み、第1の熱伝導率向上剤が単結晶ダイヤモンドであり、第2の熱伝導率向上剤が酸化アルミニウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素、SiC及び窒化アルミニウムからなる群から選択される組成物であって、ノードソン社のEFD自動ディスペンサーを使用し、2mmの開口を有する30ccシリンジを使用して求められる90psi(621kPa)で毎分12グラムを超える吐出量と、ホットディスク法又はASTM D5470法によって求められる12W/mKを超える熱伝導率とを有する組成物。
【請求項2】
前記ポリマーがシリコーンポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記シリコーンポリマーが、
(i)式(Ia)のアルケニル官能化ジオルガノポリシロキサン
(Ia)
[式中、
=RSiO1/2
=RSiO1/2
=RSiO2/2
=R10SiO2/2
=R11SiO3/2
=R12SiO3/2
Q=SiO4/2
であり、ここで、R、R、R、R、R、R、R、R10、R12は、それぞれ独立して、1~60個の炭素原子を有する1価の脂肪族、芳香族及びフルオロ炭化水素基又はアルコキシ基から選択され、
、R、R11は、それぞれ独立して、1~60個の炭素原子を有し少なくとも1つの末端オレフィン結合を含有する1価の脂肪族、芳香族若しくはフルオロ炭化水素基から選択され、
下付き文字a、b、c、d、e、f及びgは、1≦a+b+c+d+e+f+g≦6000かつa+c+e≧1の制限のもと、0又は正の整数である]
及び
(ii)式(Ib)の水素官能化オルガノポリシロキサン
a′ b′ c′ d′ e′ f′g′ (1b)
[式中、
=R131415SiO1/2
=R161718SiO1/2
=R1920SiO2/2
=R2122SiO2/2
=R23SiO3/2
=R24SiO3/2
Q=SiO4/2
であり、ここで、R14、R15、R16、R17、R18、R20、R21、R22、R24は、1~60個の炭素原子を有する1価の脂肪族、芳香族又はフルオロ炭化水素基であり、
13、R19、R23は、水素であり、
下付き文字a′、b′、c′、d′、e′、f′及びg′は、1≦a′+b′+c′+d′+e′+f′+g′≦6000かつa′+c′+e′≧1の制限のもと、0又は正の整数である]を含み、
ただし、a′+c′+e′=1のときa+c+e>1であり、かつa+c+e=1のときa′+c′+e′>1であり、
または(i)と(ii)との架橋生成物を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
100Pa・sを超える粘度を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリマーが組成物の1~6重量%の範囲の量で存在する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
100Kmm/Wまたはそれ未満の厚さの変化に対する熱抵抗の変化の勾配を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
0~90のショアE硬度を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
150μmまたはそれを超えるボンドライン厚(BLT)を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
1×1010Ω・cmまたはそれを超える体積抵抗率を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
5kV/mmまたはそれを超える絶縁耐力を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
一成分型架橋シリコーンゲル組成物、二成分型組成物又はグリース組成物である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーと少なくとも1つの熱伝導率向上剤とを含み、高い熱伝導率及び高い吐出量を結果として生じる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
小型化及び高密度集積化に向けて電子デバイスが開発されるのに伴って、電子デバイスの発熱は徐々に増大してきており、熱による故障が電子デバイスの性能、信頼性及び寿命を阻害する主要な問題となっている。したがって、効率的な熱管理を行うことがこの課題を解決する決め手になる。電子デバイスについての熱の除去を向上させるため、熱源及びヒートシンクの2つの固体接触面の間には、熱界面材料(TIM)が広く用いられている。こうした材料には、グリース、ギャップフィラー、プレキュアゲル、硬化性材料(一成分型又は二成分型)、相変化材料、エラストマーパッド、接着剤、サーマルテープ、金属合金及びはんだ等といった、さまざまな形態のものがある。2つの固体表面(チップ及びヒートシンク)の間の間隙は不均一であり、またそうでない場合でも低い熱伝導率を有する空気が充填されている。この間隙に熱界面材料が充填されて、熱伝導経路が提供される。所望に応じて、熱除去のための連続的な伝導経路を提供するために、複数の熱界面材料を異なる固体表面間に使用してもよい。
【0003】
電気通信の領域における5G通信技術、並びに民生及び産業領域におけるモノのインターネット(IoT)の登場により、TIMに対する性能要求はさらに高まることになる。5G及び(5Gを使用する)IoTデバイスは、はるかにより高い信頼性及び利用可能性の要求と併せて、より高い周波数、より高いデバイス密度、より高い帯域幅、より低い遅延、小さなフィーチャーサイズ及び低電力で動作する。これらの要因は電子デバイスに対する熱除去の要求をはるかにより厳しいものにしており、より高性能の、すなわち、より高い熱伝導率、例えば3~5W/mKの低熱伝導率から平均6~10W/mKのTIMへの移行が産業界における一般的な傾向であり、そして10W/mKを超えるさらにより高い熱伝導率の開発が促されている。次世代集積回路(IC)、三次元(3D)集積化及び超高速高出力密度の通信デバイスの開発が、熱管理に対する要求を極めて厳しいものにしている。
【0004】
熱伝導性粒子が充填された従来のTIMは、1~5W/mKの範囲の複合材料の熱伝導率(TC)を達成するために、アルミナやZnOのようなフィラーの体積分率vが高い(v>50%)ことを要求する。多くの製品もまた、導電性の条件が緩和されている場合には、アルミニウムのような金属フィラーを利用する。しかしながら、高いTC(>10W/mK)を達成するために、BNフィラー、AlNフィラー、ダイヤモンドフィラー、SiCフィラー及びそれらの組み合わせといった追加のフィラーが、多くの特許出願において開示されている。これらのフィラーの利点は、それらが電気絶縁性であり、はるかにより高い熱伝導率を有することである(高TCフィラー)。熱伝導率のほかに、TIM配合物は、用途における利用のためにさまざまな他の重要な特性を示さなければならない。それらは、低熱抵抗、低揮発性、低ポンプアウト、低ブリードアウト、低クラック、熱安定性、硬度、所定粘度での塗布のための高吐出量、せん断速度、ポンプ圧等を含み得る。低温-高温サイクル/衝撃中の特性の安定性もまた、1000~2000時間までの試験を行うことによって示される必要がある。これらの特性は、以下に開示されるように、適切なポリマー-樹脂-分散剤の組み合わせに組成中の高いフィラー添加量を組み合わせる、TIM配合物の慎重な設計によって達成される。
【0005】
日本特許第7007161号には、ダイヤモンドフィラーを含有する組成物であって、ダイヤモンドフィラーの形状が粒状(非球状、より好ましくは多面体、より好ましくは六面体、八面体等、特に好ましくは六面体)であり、面数が10~18であり、球形度が0.2を超える組成物が記載されている。ダイヤモンドの大きさは、0.01~100μmである。ダイヤモンドの真比重と熱伝導率向上剤の真比重との差は、0.2~4g/cmである。ダイヤモンドの体積平均粒径に対する熱伝導率向上剤の体積平均粒径の比は、0.01~0.5である。示されている全体的な熱伝導率は低く、<10W/mKである。日本特許第7084143号は、放熱組成物、放熱部材及び放熱部材用フィラー凝集物が記載されている。この組成物は、10Wより大きい熱伝導率を示す複数のフィラーとともにダイヤモンドを含有する(ダイヤモンドは15体積%を超える)。また、合計空隙量(<3%)、ダイヤモンド粒子を含有する熱伝導性フィラーに対するポリマーマトリックスの接触角(<70°)であることも言及されており、ダイヤモンド粒子は表面酸素含有量(>5%)を有する。日本特許第2938428号には、280~350の範囲の稠度及び2.5~4W/mKの範囲の熱伝導率を有するダイヤモンド及びAlNのような熱伝導性無機フィラーと組み合わせて液体シリコーンを含有する熱低減グリースが記載されている。中国特許第112226199号には、超高熱伝導性硬化性ペーストの絶縁組成物が記載されており、これはダイヤモンドなどの熱伝導性フィラーと酸化第二鉄のような機能性フィラーとを含有し、11.8W/mKの熱伝導率及び毎分33gの吐出量を有する。
【0006】
しかしながら、そのような組成物の吐出性及び熱伝導率を改良するための余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、良好な吐出性を維持し、低ポンプアウト、低ブリードアウト、低クラック、低硬度上昇及び500~1000時間までの低温-高温サイクル/衝撃(-40℃から150℃)中の信頼性といった所望の特性をすべて満たしつつ、12W/mKを超える熱伝導率を提供する。本発明は、熱伝導性組成物に、主要なフィラーとしてダイヤモンドを組み込む。
【0008】
以下に、本発明のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために本開示の概要を提示する。この概要は、主要な又は重要な要素を特定することを意図したものではなく、実施形態又は特許請求の範囲に対して何らかの制約を規定することを意図したものでもない。さらに、この概要は、本開示の他の部分でより詳細に説明され得るいくつかの態様について、簡略化された概観を提供し得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの態様において、ポリマーと少なくとも1つの熱伝導率向上剤とを含む組成物であって、ノードソン社のEFD自動ディスペンサーを使用し、2mmの開口を有する30ccシリンジを使用して90psi(621kPa)で求められる毎分12gを超える吐出量と、ISO 22007-2に記載されたホットディスク法又はASTM D5470による試験方法によって求められる12W/mKを超える熱伝導率とを有する組成物が提供される。
【0010】
1つの実施形態において、ポリマーは、シリコーンポリマーである。
【0011】
1つの実施形態において、シリコーンポリマーは、
(i)式(Ia)のアルケニル官能化ジオルガノポリシロキサン
(Ia)
[式中、
=RSiO1/2
=RSiO1/2
=RSiO2/2
=R10SiO2/2
=R11SiO3/2
=R12SiO3/2
Q=SiO4/2
であり、ここで、R、R、R、R、R、R、R、R10、R12は、それぞれ独立して、1~60個の炭素原子を有する1価の脂肪族、芳香族及びフルオロ炭化水素基又はアルコキシ基から選択され、
、R、R11は、それぞれ独立して、1~60個の炭素原子を有し少なくとも1つの末端オレフィン結合を含有する1価の脂肪族、芳香族若しくはフルオロ炭化水素基から選択され、
下付き文字a、b、c、d、e、f及びgは、1≦a+b+c+d+e+f+g≦6000かつa+c+e≧1の制限のもと、0又は正の整数である]
及び
(ii)式(Ib)の水素官能化オルガノポリシロキサン
a′ b′ c′ d′ e′ f′g′ (1b)
[式中、
=R131415SiO1/2
=R161718SiO1/2
=R1920SiO2/2
=R2122SiO2/2
=R23SiO3/2
=R24SiO3/2
Q=SiO4/2
であり、ここで、R14、R15、R16、R17、R18、R20、R21、R22、R24は、1~60個の炭素原子を有する1価の脂肪族、芳香族又はフルオロ炭化水素基であり、
13、R19、R23は、水素であり、
下付き文字a′、b′、c′、d′、e′、f′及びg′は、1≦a′+b′+c′+d′+e′+f′+g′≦6000かつa′+c′+e′≧1の制限のもと、0又は正の整数である]を含み、
ただし、a′+c′+e′=1のときa+c+e>1であり、かつa+c+e=1のときa′+c′+e′>1であり、
または(i)と(ii)との架橋生成物を含む。
【0012】
1つの実施形態において、組成物は、第1の熱伝導率向上剤と第2の熱伝導率向上剤とを含む。
【0013】
別の実施形態において、第1の熱伝導率向上剤は、ダイヤモンドである。ダイヤモンドは、単結晶ダイヤモンドであることが好ましい。
【0014】
さらなる別の実施形態において、第2の熱伝導率向上剤は、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素、SiC及び窒化アルミニウムからなる群から選択される。
【0015】
別の実施形態において、組成物の粘度は、温度23℃にてB型回転粘度計を使用して測定し、No.7ローター、4rpmで3分後に得られた値で100Pa・sを超える。
【0016】
さらなる別の実施形態において、ポリマーは、組成物の1~6重量%の範囲の量で存在する。
【0017】
別の実施形態において、組成物の厚さの変化に対する熱抵抗値の変化の勾配は、100Kmm/Wまたはそれ未満である。
【0018】
別の実施形態において、組成物は、0~90のショアE硬度を有する。
【0019】
別の実施形態において、組成物は、150μmまたはそれを超えるボンドライン厚(BLT)を有する。
【0020】
別の実施形態において、組成物は、1×1010Ω・cmまたはそれを超える体積抵抗率を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
別の実施形態において、組成物は、5kV/mmまたはそれを超える絶縁耐力を有する。
図1は、実施例6の垂直安定性挙動のテストデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では例示的な実施形態が参照され、その例は添付図面に示されている。他の実施形態も用いられてよく、構造的及び機能的な変更がなされ得ることが理解されるべきである。さらに、さまざまな実施形態の特徴は、組み合わせられ又は代替されることができる。よって以下の説明は、例示としてのみ提示されており、例示された実施形態になされ得るさまざまな代替及び変更をいかなる意味でも制限するものではない。本開示では、多数の具体的な詳細が、主題とする開示の完全な理解をもたらす。本開示の態様は、本明細書において説明される態様を必ずしもすべて含むわけではない他の実施形態を用いて実施され得ること等が理解されるべきである。
【0023】
本明細書で使用されるところでは、「例」及び「例示的」という語は、事例又は例証を意味してい。「例」又は「例示的」という語は、主要な又は好ましい態様又は実施形態を示すものではない。「又は」という語は、文脈がそうでないことを示唆しない限り、排他的ではなく包括的であることを意図している。一例として、「AはB又はCを用いる」という言い回しは、任意の包括的な置き換え(例えば、AはBを用いる、AはCを用いる、又はAはB及びCの両方を用いる)を含む。別の問題として、冠詞「1つの」及び「ある」は、文脈がそうでないことを示唆しない限り、一般的に「1つまたはより多く」を意味することを意図している。
【0024】
本明細書で使用されるところでは、「熱伝導率向上剤」という用語は、組成物の熱伝導率を向上させる固体化合物又は化合物の混合物を意味する。熱伝導率向上剤の例は、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、アルミニウム金属、炭化ケイ素、グラファイト及びダイヤモンドのようなカーボン系フィラー、アルミニウム、銀のような金属フィラーといった固体無機化合物又はこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書で使用されるところでは、「プレキュアゲル」又は「架橋シリコーンゲル」という用語は、たとえばイオン結合若しくは共有結合により化学的に、又は物理的に架橋され得る連続ポリマー相又はネットワーク、およびシリコーンまたは他のオイルのようなオイル、可塑剤、未反応モノマー、または膨潤その他によりネットワークのすき間を充填する他の流体増量剤を含み得る、流体で増量されたポリマー系を意味する。このようなネットワークの架橋密度及び増量剤の割合は、ゲルの弾性率、すなわち軟らかさ及び他の特性を調整するように制御することができる。「プレキュアゲル」という用語はまた、比較的長い架橋鎖によって形成された「緩い」架橋ネットワークを有するが、しかし例えば流体増量剤を有しないことによって、他の場合にはゲルと同様の粘弾特性を有する擬似ゲル又はゲル状物として広く分類され得る材料を包含するように理解されるべきである。
【0026】
「1価の炭化水素」という表現は、1つまたはより多くの水素原子が除去された任意の炭化水素基を意味し、アルキル、アルケニル、アルキニル、環状アルキル、環状アルケニル、環状アルキニル、アリール、アラルキル及びアレニルを包含し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0027】
「アルキル」という用語は、任意の1価の飽和直鎖、分岐又は環状炭化水素基を意味し、「アルケニル」という用語は、1つまたはより多くの炭素-炭素二重結合を含む任意の1価の直鎖、分岐又は環状炭化水素基であって、基の結合箇所が、炭素-炭素二重結合又はその中のその他の場所のいずれにあってもよい炭化水素基を意味し、「アルキニル」という用語は、1つまたはより多くの炭素-炭素三重結合及び任意に1つまたはより多くの炭素-炭素二重結合を含む任意の1価の直鎖、分岐又は環状炭化水素基であって、基の結合箇所が、炭素-炭素三重結合、炭素-炭素二重結合又はその中のその他の場所のいずれにあってもよい炭化水素基を意味する。アルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル及びイソブチルが挙げられる。アルケニルの例としては、ビニル、プロペニル、アリル、メタリル、エチリデニルノルボルナン、エチリデンノルボルニル、エチリデニルノルボルネン及びエチリデンノルボルネニルが挙げられる。アルキニルの例としては、アセチレニル、プロパルギル及びメチルアセチレニルが挙げられる。
【0028】
「環状アルキル」、「環状アルケニル」及び「環状アルキニル」という表現は、2環式、3環式及びより多くの多環式構造だけでなく、それらの環式構造がアルキル基、アルケニル基及び/又はアルキニル基でさらに置換されたものも含む。代表的な例としては、ノルボルニル、ノルボルネニル、エチルノルボルニル、エチルノルボルネニル、シクロヘキシル、エチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキセニル、シクロヘキシルシクロヘキシル及びシクロドデカトリエニルが挙げられる。
【0029】
「アリール」という用語は、任意の1価の芳香族炭化水素基を意味し、「アラルキル」という用語は、1つまたはより多くの水素原子が同数の同一の及び/又は異なるアリール(本明細書での定義による)基によって置換されている任意のアルキル基(本明細書での定義による)を意味し、「アレニル」という用語は、1つまたはより多くの水素原子が同数の同一の及び/又は異なるアルキル基(本明細書での定義による)によって置換されている任意のアリール基(本明細書での定義による)を意味する。アリールの例としては、フェニル及びナフタレニルが挙げられる。アラルキルの例としては、ベンジル及びフェネチルが挙げられる。アレニルの例としては、トリル及びキシリルが挙げられる。
【0030】
本開示は、架橋シリコーンゲル、アルケニル官能化ジオルガノポリシロキサン流体、水素官能化オルガノポリシロキサン、アルコキシ官能化表面湿潤剤(分散剤)又は加水分解性オルガノポリシロキサン、熱伝導性フィラー、添加剤及び顔料を含む、一成分型熱伝導性グリース組成物、再加工可能な熱伝導性プレキュアゲル組成物及び二成分型熱伝導性組成物を提供する。ダイヤモンド及び他の熱伝導性フィラーとともに、分散剤及び有機官能化シリコーン流体を使用することにより、超高熱伝導率が達成された。これらの熱伝導性組成物はダイヤモンド及びAlNフィラーのような硬質フィラーからなるものでありうるにもかかわらず、それらは、フィラー及びフィラー比の最適化だけではなく、有機官能化シリコーン流体と分散剤とを併用した組成の最適化にも基づいて、長期にわたり非常に安定した吐出量を示し、1000時間を超えて非常に高い温度(150℃)で顕著な熱安定性を示した。
【0031】
一成分型熱伝導性プレキュアゲル組成物においては、毎分12gを超える吐出性とともに14W/mKを超える熱伝導率が達成され、硬度(ショアE)は、1000時間の熟成後であっても150℃で10以内であり、安定した吐出性を示した。
【0032】
二成分型ポストキュア(付加硬化性)熱伝導性組成物においては、毎分13gを超える吐出量とともに15W/mKを超える熱伝導率が達成され、また、150℃の高温でのより少ない硬度上昇が示され、熟成後に安定した吐出量が示された。
【0033】
一成分型熱伝導性グリース組成物はまた、添加剤を含んでよい。本開示で使用される添加剤は、顔料、潤滑剤、粘度調整剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、難燃剤、阻害剤、接着促進剤の1つ又はそれらの2つまたはより多くの組み合わせから選択され得る。
【0034】
一成分型熱伝導性グリース組成物においては、毎分19gを超える吐出量とともに12W/mKを超える熱伝導率が達成された。
【0035】
高TC及び高吐出性の組成物を提供可能な最良の組み合わせに到達するために、フィラーの組み合わせが最適化される。したがって、組成物を得るために任意の2つ又は3つまたはより多くのフィラーを組み合わせることができるが、そのようなアプローチは殆ど成功することがなく、粉末組成物又は低TC組成物を結果としてもたらすことに留意すべきである。実験の設計及び最適化を行った後にのみ、フィラーの充填を向上させる最適なフィラーの組み合わせを得ることができ、かくして、ペーストのようなレオロジー、粘度及び流動特性を維持しながら、高い熱伝導率を提供することができる。フィラーの組み合わせは、3つまたはより多くのフィラーで構成されるものとして説明されることができる-(C-I)はD50が1マイクロメートルまでの最小フィラーであり、アルミナ、ZnO、SiC、ダイヤモンド、BN及び/又は窒化アルミニウムフィラー又はその組み合わせで構成され得る-これらのフィラーは、それらが大きい表面積を有するにもかかわらず、フィラー-フィラー間及びフィラー-基板間の接触と併せて、フィラー-ポリマー-分散剤間の多数の接触をもたらすことにより、全体的なTCを向上させる。それらはまた、組成物に対して所望の潤滑性及びチキソトロピー効果を提供することができる。次のフィラー(C-II)は、5~30マイクロメートルまでの中間径フィラーであり、これらは、大きいフィラー間の接触の向上及び間隙充填を提供し、これらのフィラーは、アルミナ、ダイヤモンド、BN又は窒化アルミニウム粉末又はそれらの組み合わせで構成される。第3のフィラー(C-III)は、最大フィラータイプ(>30マイクロメートル)であり、これらは、高熱伝導性経路、すなわち向上した熱伝導率を提供するために最大の結晶領域径を提供する。最大フィラーには、組成物の全体的な伝導率を向上させるBN、立方晶BN、SiC、ダイヤモンド及びAlNのような本質的に高TCである材料が利用される。慎重な実験研究の結果、優れた熱伝導率(>12W/mK)、吐出量(>12g/分)、電気絶縁性(体積抵抗率>1×1010Ω・cm)、可撓性及び成形性を有し、低コストで容易に製造可能な熱伝導性組成物を実現するために、熱伝導性フィラーとして使用される、特定のフィラー及びフィラーの組み合わせをここに実証するものであり、本発明が完成されている。
【0036】
本明細書において、良好で安定した吐出量及び良好な熱安定性と併せて超高熱伝導率を達成するために、ダイヤモンドと他の熱伝導性フィラーとを使用してフィラーの最適化が行われた。
【0037】
本開示は、組成物における1つ又は複数の成分についての多数の異なる範囲を特定し得る。それぞれの範囲の数値を組み合わせて、特定されていない新たな範囲を形成できることが理解されるであろう。
【0038】
1つの態様において、ポリマーと少なくとも1つの熱伝導率向上剤とを含む組成物であって、ノードソン社のEFD自動ディスペンサーを使用し、2mmの開口を有する30ccシリンジを使用して90psi(621kPa)で求められた毎分12gを超える吐出性と、ISO 22007-2に記載されたホットディスク法又はASTM D5470による試験方法によって求められた12W/mKを超える熱伝導率とを有する組成物が提供される。
【0039】
1つの実施形態において、ポリマーは、シリコーンポリマーである。
【0040】
1つの実施形態において、シリコーンポリマーは、
(i)式(Ia)のアルケニル官能化ジオルガノポリシロキサン
(Ia)
[式中、
=RSiO1/2
=RSiO1/2
=RSiO2/2
=R10SiO2/2
=R11SiO3/2
=R12SiO3/2
Q=SiO4/2
であり、ここで、R、R、R、R、R、R、R、R10、R12は、それぞれ独立して、1~60個の炭素原子を有する1価の脂肪族、芳香族及びフルオロ炭化水素基又はアルコキシ基から選択され、
、R、R11は、それぞれ独立して、1~60個の炭素原子を有し少なくとも1つの末端オレフィン結合を含有する1価の脂肪族、芳香族若しくはフルオロ炭化水素基から選択され、
下付き文字a、b、c、d、e、f及びgは、1≦a+b+c+d+e+f+g≦6000かつa+c+e≧1の制限のもと、0又は正の整数である]
及び
(ii)式(Ib)の水素官能化オルガノポリシロキサン
a′ b′ c′ d′ e′ f′g′ (1b)
[式中、
=R131415SiO1/2
=R161718SiO1/2
=R1920SiO2/2
=R2122SiO2/2
=R23SiO3/2
=R24SiO3/2
Q=SiO4/2
であり、ここで、R14、R15、R16、R17、R18、R20、R21、R22、R24は、1~60個の炭素原子を有する1価の脂肪族、芳香族又はフルオロ炭化水素基であり、
13、R19、R23は、水素であり、
下付き文字a′、b′、c′、d′、e′、f′及びg′は、1≦a′+b′+c′+d′+e′+f′+g′≦6000かつa′+c′+e′≧1の制限のもと、0又は正の整数である]を含み、
ただし、a′+c′+e′=1のときa+c+e>1であり、かつa+c+e=1のときa′+c′+e′>1であり、
または(i)と(ii)との架橋生成物を含む。
(i)成分は、式(Ia)によって表されるオルガノポリシロキサンであり、1分子中に珪素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個有する。(i)成分の25℃における粘度は0.01~10Pa・sの範囲であってよく、好ましくは0.06~1Pa・sであってよい。25℃における粘度が0.01Pa・s未満では組成物の保存安定性が悪くなり、10Pa・sを超えると流れ性を確保できなくなる。上述した粘度および本願の他の箇所で言及した粘度は、ブルックフィールド回転粘度計を用いた測定値である。
このようなオルガノポリシロキサンは、上記粘度とアルケニル基含有量を満たせば、特に限定されず、公知のオルガノポリシロキサンを使用することができる。オルガノポリシロキサンの分子構造としては、例えば、直鎖状、分岐鎖状、一部分岐を有する直鎖状、デンドリマー状等が挙げられる。分子構造は好ましくは直鎖状、一部分岐を有する直鎖状である。(i)成分は、こうした構造を有する単一の重合体、こうした構造を有する共重合体、または異なる粘度を有する2種またはより多くのオルガノポリシロキサンの混合物でもよい。
また(i)成分は、珪素原子と結合するアルケニル基を1分子中に1個有する、モノアルケニル末端オルガノポリシロキサンと併用してよい。このオルガノポリシロキサンの25℃における粘度は0.001から1Pa・sの範囲にあってよく、好ましくは0.006~0.1Pa・sであってよい。このポリオルガノシロキサンを(i)成分、すなわち珪素原子と結合するアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンと併用することにより、流動性の向上が得られ、また硬化物の場合、熱界面材料として必要な低硬度が得られやすくなる。
(ii)成分は、式(1b)に示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、ケイ素原子に直接結合した水素原子を有している。即ち、1分子中に少なくとも2つのケイ素原子に直接結合する水素原子(ヒドロシリル基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、(i)成分の架橋剤として作用する。(ii)成分中のヒドロシリル基と(i)成分中のアルケニル基とは、後述する白金族金属系硬化触媒により促進されるヒドロシリル化反応により付加して、架橋構造を有する3次元網目構造を与える。(ii)成分中のヒドロシリル基の数が2個未満の場合は、硬化は得られない。
(ii)成分の添加量は、(ii)成分のヒドロシリル基が(i)成分のアルケニル基1モルに対して0.1~5.0モルとなる量、即ちケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数が前記(i)成分のアルケニル基のモル数の0.1~5.0倍となる量であり、好ましくは0.2~2.0モルとなる量、更に好ましくは0.3~1.0モルとなる量である。(ii)成分のヒドロシリル基の量が(i)成分のアルケニル基1モルに対して0.1モル未満である場合には、硬化が得られないか、又は硬化物の強度が不十分で成形体として取り扱えない場合がある。また5.0モルを超えると硬化物の可撓性が失われ、硬化物が脆くなる。
【0041】
1つの実施形態において、組成物は、第1の熱伝導率向上剤と第2の熱伝導率向上剤とを含む。
【0042】
別の実施形態において、第1の熱伝導率向上剤は、ダイヤモンドである。
【0043】
さらなる別の実施形態において、第2の熱伝導率向上剤は、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素、SiC及び窒化アルミニウムからなる群から選択される。
【0044】
別の実施形態において、組成物の粘度は、100Pa・sを超える。粘度は、ASTM-D2196に準拠し、No.7ローター、4rpmで3分後にブルックフィールド粘度計を使用して測定された。
【0045】
さらなる別の実施形態において、ポリマーは、組成物の1~6重量%の範囲の量で存在する。
【0046】
別の実施形態において、厚さの変化に対する熱抵抗値の変化の勾配は、100Kmm/W以下である。
【0047】
別の実施形態において、組成物は、0~90のショアE硬度を有する。
【0048】
別の実施形態において、組成物は、。10×10×0.5mmのSiチップ2枚に組成物を挟み、圧力1MPaを30秒加えられた時に150μmまたはそれを超えるボンドライン厚(BLT)を有する。
【0049】
別の実施形態において、組成物は、ASTM D257に準拠した測定で500V、1mm厚の条件で1×1010Ω・cmまたはそれを超える体積抵抗率を有する。
【0050】
別の実施形態において、組成物は、ASTM D149に準拠した測定で5kV/mmまたはそれを超える絶縁耐力を有する。
【0051】
熱伝導率向上剤は、単一の種類の化合物の混合物であって、異なる平均粒径の化合物を含む混合物を含み得ることが理解されるであろう。1つの実施形態において、熱伝導率向上剤は、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、SiC及び酸化アルミニウムを含む。
【0052】
熱伝導率向上剤の粒径は、特定の目的又は意図された用途に対し、所望に応じて選定され得る。本明細書で使用されるところでは、「粒径」とは、文脈がそうでないことを示していない限り、体積平均粒径のことを言う。実施形態において、熱伝導率向上剤は、約0.01~約500μm、約0.1~約250μm、約1~約100μm、約5~約75μm、さらには約10~約50μmの平均粒径を有する。組成物は、異なる平均粒径の熱伝導率向上剤の組み合わせを含み得ることが理解されるであろう。そのような組み合わせは、特定の目的又は意図された用途に対し、所望に応じて選定され得る。1つの実施形態において、組成物は、約0.01μmから約1μm未満の平均粒径を有する第1の熱伝導率向上剤、約1μmから約30μmの平均粒径を有する第2の熱伝導率向上剤、及び約50μmから約200μmの平均粒径を有する第3の熱伝導率向上剤を含む。第1、第2及び第3の熱伝導率向上剤は、フィラーの化学的な構成が互いに同一であっても異なっていてもよい。粒径は、任意の適切な方法によって求めることができる。平均粒径は、材料の供給元から提供又は報告されることが多い。平均粒径は、JIS R1629に従い、レーザ回折・散乱法によって粒径分布を計測することにより求められ得る。本研究では、計測により得られた体積基準のメジアン径(D50)を平均粒径として使用した。(1つまたはより多くの)フィラーは、組成物の総重量に基づいて、約80重量%~約99重量%、約82重量%~約96重量%又は約85重量%~約95重量%の量で存在し得る。
【0053】
架橋シリコーンゲルは、本明細書において、プレキュアゲル又はポリマーゲルとも呼ばれ得る。架橋シリコーンゲルは、アルケニル官能化ジオルガノポリシロキサンを水素官能化オルガノポリシロキサンと反応させることによって作製される。この反応は、適切な触媒を使用したヒドロシリル化反応条件によって行われ得る。汎用的なヒドロシリル化触媒は、白金系触媒である(たとえば、Karstedt触媒であるが、これに限定されない)。1つの実施形態において、プレキュアゲルは、Ptで触媒されたヒドロシリル化反応を通じて、直鎖の末端がビニルでキャップされたポリシロキサンをペンダントポリ(ヒドロシロキサン)若しくはポリ(メチルヒドロシロキサン)コポリマー(架橋剤)又はSi-H反応性基を含有する架橋MT若しくはMQ樹脂と反応させることにより、作製可能である。類似のゲルネットワークもまた、Ptで触媒されたヒドロシリル化経路を通じて、ペンダントビニルシリコーンポリマーを末端がキャップされたポリ(ヒドロシロキサン)若しくはポリ(メチルヒドロシロキサン)コポリマー又はSi-H反応性基を含有する架橋MT若しくはMQ樹脂と反応させることにより、実現され得る。Si-C結合を形成するように反応させられる有効なSi-H/Si-アルケニルモル比[r]は、r≦0.3を満たさなければならない。最終的な「ゲルレオロジー」は、以下の条件を満たさなければならない。
a)0.2≦G′≦1000(Pa)
b)0.1≦G″/G′≦10
ここで、用語G′は、応力又はひずみ制御型レオメータにより1Hz又は6.28rad/sの発振周波数下でT=25℃で測定された、熱界面材料組成物において使用される最終プレキュアゲル組成物の「貯蔵せん断弾性率」を表し、用語G″は、応力又はひずみ制御型レオメータにより1Hz又は6.28rad/sの発振周波数下でT=25℃で測定された、熱界面材料組成物において使用される最終プレキュアゲル組成物の「損失せん断弾性率」を表す。G″及びG′は、それぞれの粘弾性領域でまとめて測定される。
【0054】
以下の実施例は、本技術の態様及び実施形態を説明するように意図される。すべての部及びパーセントは、重量によるものであり、すべての温度は、明示的に別段の記載がない限り摂氏によるものである。本出願で参照されたすべての特許、他の刊行物及び米国特許出願は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0055】
実施例
【0056】
定常せん断粘度及びチキソトロピーは、パラレルプレートジオメトリ(測定ジオメトリギャップ300μm)を用いて、ティー・エイ・インスツルメント社のレオメーター(DHR-3)を使用して求めた。
【0057】
ASTM D2240型デュロメーター(ショアE)を使用して、硬化した(二成分型)配合物の硬度試験を行った。
【0058】
ホットディスク装置を使用して22℃で熱伝導性組成物のバルクの熱伝導率を測定し、また、ASTM D5470に準拠して熱抵抗及び熱伝導率を測定した。
【0059】
EFDのOptimumという2mmの開口を有する30ccのシリンジにサンプルを充填し、ノードソン社のEFD自動ディスペンサーを使用して90psi(621kPa)で吐出し、1分あたりの吐出量の測定を行った。
【0060】
10×10×0.5mmのSiチップ2枚に組成物を挟み、Siチップ上に1MPaで30秒間の圧縮を印加することにより、BLT(ボンドライン厚)を求めた。
【0061】
ASTM D257に準拠して体積抵抗率を測定し、ASTM D149に準拠して絶縁耐力を測定した。
【0062】
0.5mm、1mm、2mmのスペーサーを用い、アルミニウム/アルミナQパネルと寸法5cm×5cmのガラス板との間に円を形成するように組成物2グラムを置き、垂直滑り試験(垂直安定性能)を行った。板は、ペーパークリップで一緒に挟み、垂直位置に置いて、温度サイクル又は衝撃(-40~150℃)を加えた。
【0063】
結晶子径は、波長1.54Åの銅ターゲット(Kα線)、加速電圧40kV、管電流30mA、スキャン速度毎分4°、ステップ幅0.02°でX線回折装置を使用してXRDにより測定された。
【0064】
表面酸素含有量は、Al Kα線源、真空度2×10-9Torr、半球型アナライザー、滞留時間0.7秒、エネルギーステップ1eV及びHRスキャン0.1eVでX線光電子分光装置を使用してXPSにより測定された。
【0065】
表1、2及び3に示された実施例にしたがって組成物を調製した。
【0066】
ジビニル末端オルガノポリシロキサン(A-1a)は、0.1Pa・sの粘度を有し、以下の式によって表され:
【化1】

式中、Xの各々はビニルであり、nは42である。
ジビニル末端オルガノポリシロキサン(A-1b)は、0.03Pa・sの粘度を有し、以下の式によって表され:
【化2】

式中、Xの各々はビニルであり、nは20である。
【0067】
モノビニル末端オルガノポリシロキサン(A-2a)は、0.02Pa・sの粘度を有し、以下の式によって表され:
【化3】

式中Xはビニルであり、mは30である。
モノビニル末端オルガノポリシロキサン(A-2b)は、0.01Pa・sの粘度を有し、以下の式によって表され:
【化4】

式中Xはビニルであり、mは20である。
【0068】
架橋剤オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B-1)は、0.05~0.5重量%のSi-H含有量とともに、0.01~0.1Pa・sの粘度範囲を有し、0.02Pa・sの粘度を有する以下の式の化合物が実施例において用いられた:
【化5】
【0069】
粘度11.6Pa・sの架橋シリコーンゲル(X-1)の合成:
Pt触媒(2重量% Karstedt触媒、10ppm Pt)及び阻害剤(Surfynol(登録商標)61、200ppm)と併せて、ビニル末端PDMS(500g、MW~17280g/mol、ビニルミリ当量~0.115)を室温でダブルプラネタリーミキサーに投入し、20rpmで30分間、室温で混合した。50℃の反応混合物にシリコーンハイドライド(55.4g、MW~40802、ハイドライドミリ当量~0.1586)を加え、さらに1時間、20rpmで混合を継続した。50℃で同じ速度で混合を継続しながら、60分間減圧を行い、反応抑制剤を除去してゲルネットワークを形成する。その後、反応温度を90℃に上昇させ、すべてのハイドライドが消費され、ゲルが形成されるまで継続する。
【0070】
シンキー社製ミキサーでプレキュアゲル組成物を作製した。まず、特定の量の分散剤、ビニル末端PDMS流体及びゲルをプラスチック容器に量り取り、2000rpmで30秒間混合した。この混合物に種々の粒径のダイヤモンド及び他の熱伝導性フィラーを段階的に加え、各段階において30秒間2000rpmでシンキー社製ミキサーを使用してすべての材料を混合した。各段階において、30秒間の混合後、組成物は、ブロードブレードスパチュラを用いて2分間手で混合された。最後に、1~2回、2000rpmで30秒間混合し、均一なペーストを得た。
【0071】
二成分型硬化性組成物もまた、プレキュアゲル組成物と同様に作製した。A成分とB成分を別々に作製し、等量ずつ混合し、70℃で1時間硬化させた。
【0072】
不規則形の多結晶ダイヤモンドは、HongXiang社又はHexanovation社のいずれかより購入した。
【0073】
窒化アルミニウムは、東洋アルミニウム株式会社より購入した。
【0074】
ナノ酸化亜鉛は、Zochem社より入手した。
【0075】
体積平均粒径5.2マイクロメートル径、結晶子径428Å及び表面酸素含有量8.1%の不規則形の多結晶ダイヤモンド(C-1)
【0076】
体積平均粒径89マイクロメートル径、結晶子径1070Å及び表面酸素含有量6.9%の不規則形の多結晶ダイヤモンド(C-2)
【0077】
体積平均粒径165マイクロメートル径、結晶子径1206Å及び表面酸素含有量13.5%の単結晶ダイヤモンド(C-3)
【0078】
体積平均粒径107マイクロメートル径、結晶子径905Å及び表面酸素含有量16.7%の単結晶ダイヤモンド(C-4)
【0079】
体積平均粒径125マイクロメートル径の単結晶ダイヤモンド(C-4a)
【0080】
体積平均粒径1.2、5及び20マイクロメートル径の窒化アルミナ(それぞれ、C-5a、C-5b及びC-5c)
【0081】
体積平均粒径0.16マイクロメートル径のナノ酸化亜鉛(C-6)
【0082】
(D-1)は、以下の式の化合物で表される加水分解性オルガノポリシロキサン(II-i)である。
【化6】
【0083】
(D-2)は、式(II-ii)の化合物で表される加水分解性ポリオルガノシロキサンである。
【化7】
【0084】
E-1は、組成物において添加剤として使用されるデシルトリメトキシシランである。
【0085】
他のフィラーと併せてダイヤモンドを使用した熱伝導性グリース型組成物
【表1】
【0086】
表1は、高い熱伝導率及び良好な吐出量を達成する熱伝導性グリース組成物のために行われた4つの異なる最適化を示す。
【0087】
不規則形のダイヤモンドが組成物において使用された場合(比較例1及び比較例2)、低吐出量が観察され、組成物は安定しなかった。
【0088】
熱伝導性組成物の熱伝導率、吐出性及び安定性を改善するために、他の熱伝導性フィラーと併せて単結晶ダイヤモンドが使用された(表1)。表1からわかるように、実施例1~4は、毎分19gを超える吐出量とともに12W/mKを超える熱伝導率を有する。
【0089】
超高熱伝導性二成分型付加硬化熱伝導性組成物
【0090】
TIA2101GFは、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社が製造する市販の二成分型シリコーン組成物である。
【0091】
異なるフィラー装填率を有する二成分型付加硬化性熱伝導性組成物が作製され、非常に良好で安定した吐出量(>20g/分)及び良好な熱安定性とともに超高熱伝導率(>20W/mK)を達成した(表2)。A成分とB成分とを1:1の比で混合し、70℃で1時間硬化させた。硬化したサンプルのH/Vi比は0.4~0.9の範囲である。F-1は架橋剤オルガノハイドロジェンポリシロキサン(粘度0.02Pa・s)中のビス-{(1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ}ジメチル-シランの1.5重量%溶液である。G-1は白金系触媒:モノビニル末端オルガノポリシロキサン(粘度0.02Pa・s)中の2%白金量のビニルダイマー錯体の18重量%溶液である。白金の量は組成物中7ppmであってよい。

【表2A】

【表2B】
【0092】
表2からわかるように、実施例5~9は、毎分13gを超える吐出量とともに12W/mKを超える熱伝導率を示し、また、150℃の高温でより少ない硬度上昇を示し、熟成後に安定した吐出量を示した。
【0093】
図1に示すように、実施例6の熱衝撃下(-40℃~150℃)で500時間後の熱衝撃下垂直安定性能(下から上に、0.5mm、1mm及び2mmの間隙)は、非常に良好な垂直安定性を示した。
【0094】
超高熱伝導性架橋シリコーンゲル組成物
【0095】
【表3】
【0096】
表3からわかるように、実施例10~14は、毎分12gを超える吐出量とともに14W/mKを超える熱伝導率を示し、硬度(ショアE)は、1000時間の熟成後であっても150℃で10以内であり、安定した吐出量を示した。
【0097】
以上で説明したことは、本明細書の実施例を含む。本明細書を説明する目的で構成要素又は方法の想到し得るあらゆる組み合わせを説明することは無論不可能であるが、当業者であれば本明細書の多くのさらなる組み合わせ及び置き換えが可能であることを認識することができる。したがって、本明細書は、添付の特許請求の範囲の思想及び範囲内に入るような代替、変更及び変形をすべて包含することが意図される。さらに、「含む」という用語が詳細な説明又は特許請求の範囲のいずれかにおいて使用される限りにおいて、かかる用語は、「備える」という用語が請求項において移行句として用いられる際に解釈されるように、「備える」と同様、包括的であることが意図されている。
【0098】
上記説明は、熱伝導性ゲル組成物のさまざまな非限定的な実施形態を特定するものである。当業者及び本発明を製造及び使用し得る者であれば、変更に想到し得る。開示された実施形態は、単に例示のためのものであり、本発明の範囲又は特許請求の範囲に規定された主題を限定することを意図したものではない。

【要約】      (修正有)
【課題】良好な吐出性を維持し、低ポンプアウト、低ブリードアウト、低クラック、低硬度上昇及び500~1000時間までの低温-高温サイクル/衝撃(-40℃から150℃)中の信頼性といった所望の特性をすべて満たしつつ、12W/mKを超える熱伝導率を有する熱伝導性組成物を提供する。
【解決手段】ポリマーと少なくとも1つの熱伝導率向上剤とを含む組成物が開示される。該組成物は、ノードソン社のEFD自動ディスペンサーを使用し、2mmの開口を有する30ccシリンジを使用して求められた90psiで毎分12グラムを超えるディスペンシング量と、ホットディスク法又はASTM D5470法によって求められた12W/mKを超える熱伝導率とを有する。
【選択図】なし
図1