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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】胸骨圧迫補助具
(51)【国際特許分類】
   A61H 31/00 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
A61H31/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2024026510
(22)【出願日】2024-02-26
【審査請求日】2024-02-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】724002977
【氏名又は名称】冨岡 珠里
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 珠里
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0058969(KR,A)
【文献】特表2014-521476(JP,A)
【文献】特表2010-528722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胸骨圧迫時に仰向けになった傷病者の胸部の上に置かれて胸骨圧迫を補助するために使用される胸骨圧迫補助具において、
胸骨圧迫を行う実施者の手根部により押される本体上面と、傷病者の胸部に接触する本体下面とを有し、前記本体下面の胸部との接触面が前記本体上面よりも小さくなる下凸状の補助具本体であって、胸骨圧迫時に、実施者が前記本体上面を斜めに押し下げた場合には横に倒れ、実施者が前記本体上面を垂直に押し下げた場合にのみ安定して胸部を押し下げるように構成されている補助具本体を備え、
傷病者の胸部を覆って隠すためのカバーであり、前記補助具本体に着脱自在に連結されるハンカチをさらに備えることを特徴とする胸骨圧迫補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胸骨圧迫を補助するための胸骨圧迫補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
胸骨圧迫(心臓マッサージ)の質向上を目的とした製品が開発されているものの、医療従事者向けのものやトレーニング用のもの、講習用のものが多い。
【0003】
実際に胸骨圧迫を実施する状況に活用できる胸骨圧迫補助具として下記特許文献1のように押圧部位に体重をかけやすくし、力を集中させることによって心臓を効果的に圧迫するものが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-70420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、標準救急医学第5版によると、胸骨圧迫は強く、早く、絶え間なく実施することが求められており、成人に対しては少なくとも5cmの深さで強く押す必要がある。しかし、この深さで長時間持続して胸骨圧迫を絶え間なく実施することは容易なことではなく、また、これに加え1分間に100~120回のリズムで胸骨を圧迫する必要があり、適切なリズムを保ちつつ、十分な深さで持続して胸骨を圧迫し続けるためには胸骨圧迫実施者の補助具が必要である。
【0006】
胸骨圧迫を実施するにあたり、傷病者の胸骨部位に実施者の手根部を添え、実施者は腕を真っすぐに伸ばし、実施者の肩~手根部までが傷病者の胸部に対して垂直となるような姿勢でなければならない。上記に述べた正しい姿勢で胸骨圧迫を行うことによって、実施者の力が効果的に傷病者の胸骨へ伝わり、深さの十分な質の高い胸骨圧迫へとつながるとともに、実施者の体力温存にもつながるため、質の高い胸骨圧迫を持続的に行うことができる。
【0007】
しかし、上記特許文献1に開示された心臓マッサージ用補助具は、傷病者の胸部に置いたときの安定性が高いために、胸骨圧迫実施時に、実施者の腕が傷病者の胸部に対して真っすぐ垂直でなくても押すことができ、このような場合には胸骨圧迫に十分必要な力をかけることができない。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、胸骨圧迫実施者の姿勢を矯正し、質の高い胸骨圧迫を実現させる胸骨圧迫補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る胸骨圧迫補助具は、傷病者の胸部に接触する下面(12)と、下面の反対側に形成され、胸骨圧迫実施者の手根部に接触、傷病者の胸部に対して水平な上面(11)と、上面と下面をつなぐ側面(13)とを有し、傷病者の胸部に対して垂直に力を加えた場合のみ安定して圧迫することができる下凸状のブロック体(10)で構成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、傷病者の胸骨に沿って配置するブロック体(10)の形状が、垂直に力を加えた場合のみ安定して圧迫ができる下凸状であるため、胸骨圧迫実施者は安定して圧迫ができるように、自身の肩~手根部までが傷病者に対して垂直になる姿勢へ矯正される。矯正された結果、正しい姿勢で胸骨圧迫を実施することが可能となり、十分な深さで持続的に胸骨圧迫を続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る胸骨圧迫補助具の補助具本体とハンカチを連結させた全体像の斜視図である。
図2】補助具本体の全体像の斜視図である。
図3】補助具本体の上方から見た平面図である。
図4】迫補助具本体の下方から見た底面図である。
図5】補助具本体の側方から見た側面図である。
図6】ハンカチの構成を示す図である。
図7】連結具としての補助具側連結具とカバー側連結具の構成を示す図である。
図8】胸骨圧迫補助具の変形例1の全体像の斜視図である。
図9】胸骨圧迫補助具の変形例1の側面図である。
図10】胸骨圧迫補助具の変形例1の底面図である。
図11】胸骨圧迫補助具の変形例2の全体像の斜視図である。
図12】胸骨圧迫補助具の変形例2の側面図である。
図13】胸骨圧迫補助具の変形例2の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る胸骨圧迫補助具について説明する。本発明の実施形態に係る胸骨圧迫補助具(1)は、仰向けに寝た傷病者の胸部を実施者の手で押圧する胸骨圧迫を行う際に用いるものである。本実施形態に係る胸骨圧迫補助具(1)は、補助具本体(10)と、傷病者の胸部を覆って隠すためのカバーであるハンカチ31とを備える。
【0013】
傷病者の胸骨に沿って配置するブロック体である補助具本体(10)は、傷病者の胸部に接触する本体下面(12)と、実施者の手根部に接触し、仰向けになった傷病者の胸部に対して水平で、本体下面(12)よりも面積が大きい本体上面(11)、本体上面(11)と本体下面(12)をつなぐ本体側面(13)で構成されている。この補助具本体(10)は、例えばその材質がゴムやシリコン等の軽量弾性樹脂や粘土で形成され、下方に向けて細くなって突出するような下凸状の立体形状である。
【0014】
実施例としては、例えば本体上面(11)と本体下面(12)を楕円形の平面とした場合、本体上面(11)の楕円形は、実施者の手根部の大きさを考慮して、その長軸が7cm、短軸が4cm、本体下面(12)の楕円形は、本体上面(11)の楕円形よりも長軸短軸ともに小さく、その長軸が4cm、短軸が1cmである。また、補助具本体(10)の高さ(本体側面(13)の高さ)は2.5cmで形成され、本体上面(11)から本体下面(12)へ向かうほど補助具本体(10)の水平断面の面積が小さくなる。
【0015】
このように、補助具本体(10)の形状を下凸状とすることで、胸骨圧迫の実施者が手根部により本体正面(11)を垂直下方に真っ直ぐに押し下げた場合にのみ、安定して胸骨圧迫に必要な力を傷病者の胸部にかけることができる。すなわち、補助具本体(10)の本体下面(12)の面積が小さいため、実施者が本体正面(11)を斜めに押し下げた場合には、補助具本体(10)は横に倒れてしまい、傷病者の胸部を押し下げることができない。このように、補助具本体(10)を用いることで、実施者は、自身の肩~手根部までが傷病者に対して垂直になる姿勢へ矯正され、その結果、正しい姿勢で胸骨圧迫を実施することが可能となり、十分な深さで持続的に胸骨圧迫を続けることができる。
【0016】
なお、補助具本体(10)の形状に関しては、実施者が本体上面(11)を垂直に押し下げた場合にのみ安定して傷病者の胸部を押し下げることが可能となる下凸状の形状であれば、適宜変更可能である。例えば、次のような変形例が考えられる。変形例1(図8図10参照))として挙げられるのは、本体下面(12)の形状が角の丸い細長い長方形である場合である。本体下面(12)の角を丸くしたのは、胸骨を圧迫した際に、傷病者の胸部を傷害することを防ぐためである。この場合においても本体下面(12)へ向かうほど水平断面の面積は小さくなる。
【0017】
続いて変形例2(図11図13)として挙げられるのは、補助具本体(10)の本体上面(11)が楕円形であり、補助具の形状が卵型の形状あるいは半球に近い形状であって、本体下面(12)が下に凸の曲面の場合である。本変形例2の補助具本体(10)によれば、本体下面(12)が曲面であるため、補助具本体(10)を傷病者の胸部の上に置いた際に、上記実施形態よりも安定せず、胸骨圧迫の実施者はより正しい姿勢で本体上面(11)を正確に垂直に押し下げる必要がある。
【0018】
補助具本体(10)の本体上面(11)には、ソーラーパネル(21)とスイッチ(23)が設置され、胸骨圧迫に伴う加圧での故障や実施者の手根部接触に伴う誤作動を防ぐ必要があるため本体上面(11)には、それぞれの形状に合わせた凹部を設ける。これにより、補助具本体(10)の上面が凹凸状に形成される。
【0019】
2022年1月26日に公開された、旭化成ゾールメディカル株式会社による、医療従事者を除く一般市民500人を対象とした「一次救命処置およびAED使用に関する意識調査」の結果から、自身が救命に関する知識を十分に持っていると仮定した上で、目の前に倒れている人が女性だった場合に胸骨圧迫やAEDの使用などの救命処置ができると思うかと尋ねる質問に対しては、「できる」と答えた人が34.8%であり、残りは「救命処置をしたいが抵抗がある」「できない、したくない」「わからない」であった。この内「救命処置をしたいが抵抗がある」に対する男女比は、男性58.0%、女性42.0%であり、「救命処置をしたいが抵抗がある」「できない、したくない」「わからない」と答えた人の理由で一番多いのが「衣服を脱がせたり、肌に触れることに抵抗があるため」、その次に「セクシャルハラスメントで訴えられないか心配なため」が続き、1分1秒を争う救命現場において、胸骨圧迫をはじめ心肺蘇生法に対する心理的抵抗を軽減する方法が求められている。
【0020】
このような課題に鑑み、本実施形態では、補助具本体(10)にハンカチ(31)を着脱自在に延期連結している。ハンカチ(31)は傷病者の胸部を覆うことができるサイズであり、例えば縦40cm、横20cmで形成され、ハンカチ(31)の中央部には補助具本体(10)の形状に合わせて切り抜いたことによる穴が開いている(図6参照)。
【0021】
本体側面(13)に取り付けられる補助具側連結具(24)と、ハンカチ(31)に取り付けられるカバー側連結具(32)は、例えばスナップボタンのような留め具で形成される。例えば、補助具側連結具(24)は、補助具本体の(10)左右両側の本体側面(13)に取り付けられ、カバー側連結具(32)は、ハンカチ(31)の補助具本体(10)の形状に合わせて切り抜いた部分の左右の縁に取り付けられる。
【0022】
補助具側連結具(24)とカバー側連結具(32)から成る連結具を介して補助具本体(10)とハンカチ(31)を連結させることにより、傷病者の胸部をハンカチ(31)で覆った状態で胸骨圧迫を行うことが可能となる。これにより、胸骨圧迫を実施するにあたり胸部が露わになることに関する傷病者のプライバシー保護につながると共に、胸骨圧迫実施者の胸骨圧迫に対する心理的抵抗を軽減させることができる。
【0023】
補助具本体(10)の本体側面(13)の内側に取り付けられるスピーカー(22)は、例えば、本体側面(13)の左右前後4か所にスピーカーの穴が取り付けられる。
【0024】
補助具本体(10)の内部には、ソーラーパネル(21)とスイッチ(23)とスピーカー(22)とソーラーパネル(21)で生成される電気を貯めておくための図示しない充電池に接続され、これらの駆動を制御する図示しない制御回路が設置されている。
【0025】
スピーカー(22)から流れてくる内容としては、例えば心肺蘇生法の手順をガイドする音声や、110/分のリズム音が挙げられる。例えば心肺蘇生法の手順をガイドする場合、以下のような音声が流れるとする。「1.周囲の安全を確認してください。」、「2.倒れている人の両肩をたたき、左右の耳元で『大丈夫ですか』と尋ねてください。」、「3.反応がなければ、大きな声で周りの人の助けを呼んでください。」、「4.119番通報とAEDを持ってきてもらうようお願いしてください。」、「5.胸とお腹の動きを見て、普段通りの呼吸ができているか確認してください。しゃくりあげるような呼吸は普段通りの呼吸ではありません。」、「6.普段通りの呼吸ができていない場合、倒れている人の服を脱がせるか、またはできるところまでまくり上げてください。」、「7.倒れている人の胸の真ん中の位置を確認しましょう。」、「8.倒れている人の胸の真ん中に本製品の下の面を合わせるように置き、倒れている人の胸全体をハンカチで被せましょう。」、「9.流れてくるリズム音に合わせて胸骨圧迫を行います。本製品が横に倒れないよう、腕を真っすぐに伸ばして、倒れている人の胸を真上から強く押しましょう。」
【0026】
以下、本胸骨圧迫補助具(1)を使用して胸骨圧迫を行う場合について説明する。まず、胸骨圧迫補助具(1)の本体上面(11)にあるスイッチ(23)を押し、流れてくる音声ガイドに従って心肺蘇生法を開始する。なお、以下の段落[0023]からは、[0021]で例に挙げた音声ガイドの「7.倒れている人の胸の真ん中の位置を確認しましょう。」からに相当する。
【0027】
ハンカチ(31)の端を持って傷病者の胸骨の位置もしくは胸部の真ん中を確認した後、傷病者の胸骨に沿うように補助具本体(10)を位置する。
【0028】
ハンカチ(31)の端から手を放し、傷病者の胸部をハンカチ(31)で覆う。
【0029】
音声ガイドに従い、流れてくる110/分のリズム音に合わせて胸骨圧迫を実施する。
【0030】
胸骨圧迫終了後には、スイッチ(23)をもう一度押し、音声ガイド並びにリズム音を停止する。
【符号の説明】
【0031】
1 胸骨圧迫補助具
10 補助具本体
11 本体上面
12 本体下面
13 本体側面
21 ソーラーパネル
22 スピーカー
23 スイッチ
24 補助具側連結具
31 ハンカチ
32 カバー側連結具
【要約】      (修正有)
【課題】胸骨圧迫実施者の姿勢を矯正し、質の高い胸骨圧迫を実現させる胸骨圧迫補助具を提供する。
【解決手段】傷病者の胸部に接触する下面と、下面の反対側に形成され、胸骨圧迫実施者の手根部に接触し、傷病者の胸部に対して水平な上面(11)と、上面と下面をつなぐ側面(13)とを有し、傷病者の胸部に対して垂直に力を加えた場合のみ安定して圧迫することができる下凸状のブロック体で構成する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13