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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】評価装置、および評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/20 20060101AFI20240903BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20240903BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20240903BHJP
【FI】
G01B21/20 102
G01B11/24 A
G06Q10/20
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024042091
(22)【出願日】2024-03-18
【審査請求日】2024-05-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000229564
【氏名又は名称】株式会社バルカー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆啓
(72)【発明者】
【氏名】元野 雄太
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特許第7512339(JP,B2)
【文献】特開2021-110614(JP,A)
【文献】特開2017-227459(JP,A)
【文献】特開平7-4910(JP,A)
【文献】特開平10-160455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00-21/32
G01B 11/00-11/30
G06Q 10/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リングジョイント型のフランジの第1の三次元形状データを取得する取得部と、
前記第1の三次元形状データに基づいて、前記フランジのフランジ面に形成されたリングジョイント溝の状態を評価する評価部とを備え、
前記評価部は、
前記リングジョイント溝の形状に関する複数の第1形状パラメータを測定する形状測定部と、
前記リングジョイント溝の対象領域に生じた傷を検出する検出部と、
リングジョイントガスケットが接触する前記リングジョイント溝の第1接触面の第1歪み量を測定する歪み量測定部と、
前記複数の第1形状パラメータ、前記傷および前記第1歪み量のうちの少なくとも1つに基づいて、前記リングジョイント溝の修繕の要否を判断する判断部とを含む、評価装置。
【請求項2】
前記複数の第1形状パラメータのうちの少なくとも1つが基準範囲外である場合、前記傷の長さが第1の長さ以上である場合、前記第1歪み量が第1閾値以上である場合、または前記傷の長さが前記第1の長さ未満であってかつ前記傷の深さが第1の深さ以上である場合、前記判断部は、前記リングジョイント溝が修繕を要する状態であると判断する、請求項1に記載の評価装置。
【請求項3】
前記複数の第1形状パラメータは、前記リングジョイント溝の中心を示す中心線と前記第1接触面とのなす角度と、前記リングジョイント溝の幅および深さとを含む、請求項2に記載の評価装置。
【請求項4】
前記判断部の判断結果に基づいて、ユーザへのアドバイス情報を出力する出力制御部をさらに備え、
前記出力制御部は、前記リングジョイント溝が修繕を要する状態であるとの判断結果に基づいて、前記リングジョイント溝の切削または研磨を推奨する情報を前記アドバイス情報として出力する、請求項2または3に記載の評価装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記対象領域において互いに近接する第1の傷および第2の傷を検出した場合、前記第1の傷および前記第2の傷を1つの傷として統合する、請求項1~3のいずれか1項に記載の評価装置。
【請求項6】
前記歪み量測定部は、前記フランジの径方向および周方向について、前記第1歪み量を測定する、請求項1~3のいずれか1項に記載の評価装置。
【請求項7】
前記対象領域は、前記リングジョイント溝の前記第1接触面における所定領域、または前記第1接触面の全領域である、請求項1~3のいずれか1項に記載の評価装置。
【請求項8】
前記取得部は、前記リングジョイントガスケットの第2の三次元形状データをさらに取得し、
前記評価部は、前記第2の三次元形状データに基づいて、前記リングジョイントガスケットの状態をさらに評価し、
前記形状測定部は、前記リングジョイントガスケットの形状に関する複数の第2形状パラメータをさらに測定し、
前記検出部は、前記リングジョイント溝が接触する前記リングジョイントガスケットの第2接触面の傷をさらに検出し、
前記歪み量測定部は、前記第2接触面の第2歪み量をさらに測定し、
前記判断部は、前記複数の第2形状パラメータ、前記第2接触面の傷および前記第2歪み量のうちの少なくとも1つに基づいて、前記リングジョイントガスケットの交換の要否をさらに判断する、請求項1~3のいずれか1項に記載の評価装置。
【請求項9】
前記複数の第2形状パラメータのうちの少なくとも1つが基準範囲外である場合、前記第2接触面の傷の長さが第2の長さ以上である場合、前記第2歪み量が第2閾値以上である場合、または前記第2接触面の傷の長さが前記第2の長さ未満であってかつ前記第2接触面の傷の深さが第2の深さ以上である場合、前記判断部は、前記リングジョイントガスケットの交換が必要であると判断する、請求項8に記載の評価装置。
【請求項10】
前記複数の第2形状パラメータは、前記リングジョイントガスケットの中心径、高さおよび幅を含む、請求項9に記載の評価装置。
【請求項11】
前記歪み量測定部は、前記第1歪み量と前記第2歪み量とに基づいて、前記リングジョイント溝に前記リングジョイントガスケットが嵌め込まれた領域における第3歪み量を算出し、
前記第3歪み量が第3閾値以上である場合、前記判断部は、前記リングジョイント溝の修繕および前記リングジョイントガスケットの交換の少なくとも一方が必要であると判断する、請求項9に記載の評価装置。
【請求項12】
前記取得部は、前記リングジョイントガスケットを介して前記フランジと他のフランジとが締結されたフランジ締結体の第3の三次元形状データをさらに取得し、
前記評価部は、前記第3の三次元形状データに基づいて、前記フランジ締結体における前記フランジと前記他のフランジとの隙間を測定する隙間測定部をさらに含み、
前記隙間が所定値以上である場合、前記判断部は、前記フランジおよび前記他のフランジの各々のリングジョイント溝、および前記リングジョイントガスケットのうちの少なくとも1つに異常が発生していると判断する、請求項1~3のいずれか1項に記載の評価装置。
【請求項13】
プロセッサが、リングジョイント型のフランジの第1の三次元形状データを取得するステップと、
前記プロセッサが、前記第1の三次元形状データに基づいて、前記フランジのフランジ面に形成されたリングジョイント溝の状態を評価するステップとを含み、
前記評価するステップは、
前記リングジョイント溝の形状に関する複数の第1形状パラメータを測定することと、
前記リングジョイント溝の対象領域に生じた傷を検出することと、
リングジョイントガスケットが接触する前記リングジョイント溝の第1接触面の第1歪み量を測定することと、
前記複数の第1形状パラメータ、前記傷および前記第1歪み量のうちの少なくとも1つに基づいて、前記リングジョイント溝の修繕の要否を判断することとを含む、評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、評価装置、および評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯型の非接触三次元座標測定装置を利用してフランジの歪みを測定する技術が知られている。例えば、特開2017-227459号公報(特許文献1)は、フランジ面の歪み測定において、測定に必要なスペースが少なく、振動が発生している現場においても測定精度が落ちることなく、うねりのデータだけでなくフランジ面の傾きのデータも測定する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-227459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フランジ部からの流体の漏れの原因の一つとしては、配管のつなぎ目に用いられるガスケットの劣化や損傷などが考えられるため、定期的に作業者はガスケットを交換する。このとき、作業者は、フランジのフランジ面の状態を目視や触診により確認し、フランジ面に修繕が必要と判断した場合には適切な作業(例えば、研磨等)を実施する。例えば、リングジョイントガスケットが用いられるリングジョイント型のフランジにおいて、リングジョイント溝が形成されたフランジ面の状態の確認および修繕の要否の判断は、作業者の技術的知識および経験に依存しており、人によってばらつきがあるという問題がある。また、知識や経験が乏しい作業者がフランジ面(リングジョイント溝)を確認しても、上記修繕の要否を判断できない場合も多い。
【0005】
本開示のある局面における目的は、フランジ面に形成されたリングジョイント溝の状態に応じて、当該リングジョイント溝の修繕の要否を判断することが可能な評価装置、および評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある実施の形態に従う評価装置は、リングジョイント型のフランジの第1の三次元形状データを取得する取得部と、第1の三次元形状データに基づいて、フランジのフランジ面に形成されたリングジョイント溝の状態を評価する評価部とを備える。評価部は、リングジョイント溝の形状に関する複数の第1形状パラメータを測定する形状測定部と、リングジョイント溝の対象領域に生じた傷を検出する検出部と、リングジョイントガスケットが接触するリングジョイント溝の第1接触面の第1歪み量を測定する歪み量測定部と、複数の第1形状パラメータ、傷および第1歪み量のうちの少なくとも1つに基づいて、リングジョイント溝の修繕の要否を判断する判断部とを含む。
【0007】
好ましくは、複数の第1形状パラメータのうちの少なくとも1つが基準範囲外である場合、傷の長さが第1の長さ以上である場合、第1歪み量が第1閾値以上である場合、または傷の長さが第1の長さ未満であってかつ傷の深さが第1の深さ以上である場合、判断部は、リングジョイント溝が修繕を要する状態であると判断する。
【0008】
好ましくは、複数の第1形状パラメータは、リングジョイント溝の中心を示す中心線と第1接触面とのなす角度と、リングジョイント溝の幅および深さとを含む。
【0009】
好ましくは、評価装置は、判断部の判断結果に基づいて、ユーザへのアドバイス情報を出力する出力制御部をさらに備える。出力制御部は、リングジョイント溝が修繕を要する状態であるとの判断結果に基づいて、リングジョイント溝の切削または研磨を推奨する情報をアドバイス情報として出力する。
【0010】
好ましくは、検出部は、対象領域において互いに近接する第1の傷および第2の傷を検出した場合、第1の傷および第2の傷を1つの傷として統合する。
【0011】
好ましくは、歪み量測定部は、フランジの径方向および周方向について、第1歪み量を測定する。
【0012】
好ましくは、対象領域は、リングジョイント溝の第1接触面における所定領域、または第1接触面の全領域である。
【0013】
好ましくは、取得部は、リングジョイントガスケットの第2の三次元形状データをさらに取得する。評価部は、第2の三次元形状データに基づいて、リングジョイントガスケットの状態をさらに評価する。形状測定部は、リングジョイントガスケットの形状に関する複数の第2形状パラメータをさらに測定する。検出部は、リングジョイント溝が接触するリングジョイントガスケットの第2接触面の傷をさらに検出する。歪み量測定部は、第2接触面の第2歪み量をさらに測定する。判断部は、複数の第2形状パラメータ、第2接触面の傷および第2歪み量のうちの少なくとも1つに基づいて、リングジョイントガスケットの交換の要否をさらに判断する。
【0014】
好ましくは、複数の第2形状パラメータのうちの少なくとも1つが基準範囲外である場合、第2接触面の傷の長さが第2の長さ以上である場合、第2歪み量が第2閾値以上である場合、または第2接触面の傷の長さが第2の長さ未満であってかつ第2接触面の傷の深さが第2の深さ以上である場合、判断部は、リングジョイントガスケットの交換が必要であると判断する。
【0015】
好ましくは、複数の第2形状パラメータは、リングジョイントガスケットの中心径、高さおよび幅を含む。
【0016】
好ましくは、歪み量測定部は、第1歪み量と第2歪み量とに基づいて、リングジョイント溝にリングジョイントガスケットが嵌め込まれた領域における第3歪み量を算出する。第3歪み量が第3閾値以上である場合、判断部は、リングジョイント溝の修繕およびリングジョイントガスケットの交換の少なくとも一方が必要であると判断する。
【0017】
好ましくは、取得部は、リングジョイントガスケットを介してフランジと他のフランジとが締結されたフランジ締結体の第3の三次元形状データをさらに取得する。評価部は、第3の三次元形状データに基づいて、フランジ締結体におけるフランジと他のフランジとの隙間を測定する隙間測定部をさらに含む。隙間が所定値以上である場合、判断部は、フランジおよび他のフランジの各々のリングジョイント溝、およびリングジョイントガスケットのうちの少なくとも1つに異常が発生していると判断する。
【0018】
他の実施の形態に従う評価方法は、リングジョイント型のフランジの第1の三次元形状データを取得するステップと、第1の三次元形状データに基づいて、フランジのフランジ面に形成されたリングジョイント溝の状態を評価するステップとを含む。評価するステップは、リングジョイント溝の形状に関する複数の第1形状パラメータを測定することと、リングジョイント溝の対象領域に生じた傷を検出することと、リングジョイントガスケットが接触するリングジョイント溝の第1接触面の第1歪み量を測定することと、複数の第1形状パラメータ、傷および第1歪み量のうちの少なくとも1つに基づいて、リングジョイント溝の修繕の要否を判断することとを含む。
【発明の効果】
【0019】
本開示によると、フランジ面に形成されたリングジョイント溝の状態に応じて、当該リングジョイント溝の修繕の要否を判断することできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】評価システムの全体構成を説明するための図である。
図2】評価装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3】評価システムの動作概要の一例を説明するためのフローチャートである。
図4】フランジ締結体を示す図である。
図5】フランジのリングジョイント溝の形状パラメータの測定方式を説明するための図である。
図6】リングジョイント溝の傷の長さの算出方式を説明するための図である。
図7】複数の傷の統合方式を説明するための図である。
図8】リングジョイント溝の傷の深さの算出方式を説明するための図である。
図9】リングジョイント溝の径方向の歪み量の測定方式を説明するための図である。
図10】リングジョイント溝の周方向の歪み量の測定方式を説明するための図である。
図11】ガスケットの形状パラメータの測定方式を説明するための図である。
図12】ガスケットの対象領域の設定方式を説明するための図である。
図13】ガスケットの傷の長さの算出方式を説明するための図である。
図14】ガスケットの傷の深さの算出方式を説明するための図である。
図15】ガスケットの径方向の歪み量の測定方式を説明するための図である。
図16】ガスケットの周方向の歪み量の測定方式を説明するための図である。
図17】締結部分における歪み量の測定方式を説明するための図である。
図18】締結部分の歪み量の測定方式の他の例を説明するための図である。
図19】評価装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0022】
<システム構成>
図1は、評価システムの全体構成を説明するための図である。図1を参照して、評価システム1000は、フランジ30のフランジ面(フランジ座面)の状態を評価するためのシステムである。フランジ30は、フランジ座面としてのリングジョイント座面を有するリングジョイント型のフランジである。これにより、フランジ30は、リングジョイントガスケットを嵌め込み可能に構成される。
【0023】
評価システム1000は、評価装置10と、3Dスキャナ20とを含む。なお、本実施の形態では、評価装置10のユーザである作業者が、例えば、フランジ30の締結に用いられていた使用済のシール材を新たな使用前のシール材に交換する際に、3Dスキャナ20を用いてフランジ30のフランジ面の状態を評価する場面を想定する。本実施の形態に係るシール材は、リングジョイントガスケット40(以下、単に「ガスケット40」とも称する。)である。
【0024】
ガスケット40は、一対のフランジ30同士が接合する部分に挟み込まれ、フランジ30のボルトの締め付けによって固定されることで、フランジ30の隙間から流体が漏洩することを防止する。ガスケット40は、設置される部位の隙間を封止し、その部位に密封性を持たせることが可能なシール材である。
【0025】
3Dスキャナ20は、例えば、携帯型の非接触式3Dスキャナであり、対象物(ここでは、フランジ30、ガスケット40)の三次元形状データを取得し、取得された三次元形状データを出力する。3Dスキャナ20は、レーザ光線方式、パターン光投影方式等の公知の方式を用いてよい。
【0026】
フランジ30は、使用されるガスケット40を受け入れるように構成されたリングジョイント溝を有する。ガスケット40は、一対のフランジ30のリングジョイント溝を埋めてシールする。締結具が締められると、ガスケット40はリングジョイント溝に押し込まれ、変形して一方のフランジ30と他方のフランジ30との接合部をシールする。ガスケット40は、例えば、断面形状が八角形であるオクタゴナル形リングジョイントガスケット、断面形状が楕円形であるオーバル形リングジョイントガスケット等である。
【0027】
評価装置10は、3Dスキャナ20から三次元形状データを取得する(すなわち、三次元形状データの入力を受け付ける)。典型的には、評価装置10は、3Dスキャナ20と通信可能に構成される。本実施の形態では、評価装置10は、評価対象のフランジ30の三次元形状データに基づいて、フランジ30のフランジ面に形成されたリングジョイント溝に生じた傷、歪み等に基づいてリングジョイント溝の状態を評価する。具体的には、評価装置10は、リングジョイント溝の修繕の要否を判断し、対処方法に関するアドバイス情報を出力する。
【0028】
また、評価装置10は、評価対象のガスケット40の三次元形状データに基づいて、ガスケット40に生じた傷、歪み等に基づいて、ガスケット40の交換の要否を判断し、対処方法に関するアドバイス情報を出力する。さらに、評価装置10は、フランジ30およびガスケット40の両方の三次元形状データ、一対のフランジ30とガスケット40との締結体の三次元形状データ等を利用して、フランジ30およびガスケット40の異常を判断し、対処方法に関するアドバイス情報を出力する。
【0029】
評価装置10は、典型的には、汎用的なコンピュータアーキテクチャに従う構造を有しており、予めインストールされたプログラムをプロセッサが実行することで、後述する各種の処理を実現する。評価装置10は、例えば、ラップトップPC(Personal Computer)である。ただし、評価装置10は、以下に説明する機能および処理を実行可能な装置であればよく、他の装置(例えば、デスクトップPC、タブレット端末装置)であってもよい。
【0030】
<ハードウェア構成>
図2は、評価装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図2を参照して、評価装置10は、プロセッサ101と、メモリ103と、ディスプレイ105と、入力装置107と、入出力インターフェイス(I/F)109と、通信インターフェイス(I/F)111とを含む。これらの各部は、互いにデータ通信可能に接続される。
【0031】
プロセッサ101は、典型的には、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Multi Processing Unit)等といった演算処理部である。プロセッサ101は、メモリ103に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、評価装置10の各部の動作を制御する。具体的には、プロセッサ101は、当該プログラムを実行することによって、評価装置10の各機能を実現する。
【0032】
メモリ103は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read-Only Memory)、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などによって実現される。メモリ103は、プロセッサ101によって実行されるプログラム、3Dスキャナ20によって取得された三次元形状データ等を記憶する。
【0033】
ディスプレイ105は、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等である。ディスプレイ105は、評価装置10と一体的に構成されてもよいし、評価装置10とは別個に構成されてもよい。
【0034】
入力装置107は、評価装置10に対する操作入力を受け付ける。入力装置107は、例えば、キーボード、ボタン、マウスなどによって実現される。また、入力装置107は、タッチパネルとして実現されていてもよい。
【0035】
入出力インターフェイス109は、プロセッサ101と3Dスキャナ20との間のデータ伝送を仲介する。入出力インターフェイス109は、例えば、3Dスキャナ20と接続される。プロセッサ101は、入出力インターフェイス109を介して、3Dスキャナ20で測定された三次元形状データを取得する。
【0036】
通信インターフェイス111は、プロセッサ101と外部装置との間のデータ伝送を仲介する。通信方式としては、例えば、Bluetooth(登録商標)、無線LAN(Local Area Network)等による無線通信方式が用いられる。なお、通信方式として、USB(Universal Serial Bus)等の有線通信方式を用いてもよい。なお、プロセッサ101は、通信インターフェイス111を介して、3Dスキャナ20と通信してもよい。
【0037】
<動作概要>
図3は、評価システムの動作概要の一例を説明するためのフローチャートである。図3を参照して、3Dスキャナ20は、一対のフランジ30およびガスケット40を3Dスキャンすることにより、これらの三次元形状データを生成する(ステップS10)。具体的には、3Dスキャナ20は、各フランジ30の三次元形状データと、ガスケット40の三次元形状データと、ガスケット40を介した一対のフランジ30の締結体(以下、「フランジ締結体」とも称する。)の三次元形状データを生成する。
【0038】
評価装置10(例えば、プロセッサ101)は、各三次元形状データを3Dスキャナ20から取得して、内部メモリ(例えば、メモリ103)に記憶する(ステップS12)。
【0039】
プロセッサ101は、フランジ締結体の三次元形状データに基づいて、フランジ締結体の隙間を測定する(ステップS14)。具体的には、プロセッサ101は、フランジ締結体における一方のフランジ30と他方のフランジ30との隙間を測定する。
【0040】
プロセッサ101は、フランジ30の三次元形状データに基づいて、フランジ30に関する各種データを測定する(ステップS16)。具体的には、プロセッサ101は、フランジ30のフランジ面に形成されたリングジョイント溝の形状、リングジョイント溝に生じた傷の長さや深さ、リングジョイント溝の歪み量等を測定する。
【0041】
プロセッサ101は、ガスケット40の三次元形状データに基づいて、ガスケット40に関する各種データを測定する(ステップS18)。具体的には、プロセッサ101は、ガスケット40の形状、ガスケット40に生じた傷の長さや深さ、ガスケット40の歪み量等を測定する。さらに、プロセッサ101は、リングジョイント溝にガスケット40が嵌め込まれた状態において、当該嵌め込まれた領域の歪み量を測定する(ステップS20)。
【0042】
プロセッサ101は、ステップS14~S20の各測定結果に基づいて、リングジョイント溝の修繕およびガスケット40の交換の要否を判断する(ステップS22)。プロセッサ101は、当該判断結果に基づいて、ユーザへのアドバイス情報をディスプレイ105に表示する(ステップS24)。
【0043】
評価システム1000によると、フランジ30およびガスケット40の三次元形状データを用いて、リングジョイント溝およびガスケット40における形状、傷および歪み量等が測定される。また、フランジ締結体の隙間、およびリングジョイント溝へのガスケット40の嵌め込み時における歪み量も測定される。そして、各測定結果に応じてリングジョイント溝の修繕およびガスケット40の交換の要否が判断され、当該判断結果に応じたアドバイス情報が提示される。そのため、作業者は、修繕や交換の要否を迅速に把握でき、アドバイス情報に基づいた処置を効率的に行なうことができる。
【0044】
<フランジ締結体の隙間測定>
ここでは、図3のステップS14の具体的な処理内容について説明する。
【0045】
図4は、フランジ締結体を示す図である。図4(a)は、リングジョイント溝310にオーバル形のリングジョイントガスケット40が嵌め込まれた様子を示している。図4(b)は、リングジョイント溝にオクタゴナル形のリングジョイントガスケット40が嵌め込まれた様子を示している。
【0046】
図4(a)には、オーバル形のガスケット40を介して一対のフランジ30(すなわち、上フランジおよび下フランジ)が締結されたフランジ締結体が示されている。図4(b)には、オクタゴナル形のガスケット40を介して一対のフランジ30が締結されたフランジ締結体が示されている。具体的には、各フランジ30のフランジ面300に形成されたリングジョイント溝310にオーバル形(またはオクタゴナル形)のガスケット40が嵌め込まれる。リングジョイント溝310は、側面311および底面312を有する。典型的には、オーバル形(またはオクタゴナル形)のガスケット40は、リングジョイント溝310の側面311と接触する。
【0047】
図4に示すように、一方のフランジ30(例えば、上フランジ)と、他方のフランジ30(例えば、下フランジ)との隙間Cgが形成される。評価装置10は、フランジ締結体の三次元形状データに基づいて隙間Cgを測定する。なお、作業者が、隙間Cgをノギスで測定し、その測定値を評価装置10に入力する構成であってもよい。典型的には、評価装置10は、複数の箇所(例えば、4箇所以上)において隙間Cgを測定する。
【0048】
<フランジに関する各種データの測定>
ここでは、図3のステップS16の具体的な処理内容について説明する。
【0049】
(形状パラメータの測定)
図5は、フランジのリングジョイント溝の形状パラメータの測定方式を説明するための図である。図5(a)および図5(b)を参照して、評価装置10は、フランジ30の三次元形状データに基づいて、リングジョイント溝310の形状に関する複数の形状パラメータP1を測定する。
【0050】
複数の形状パラメータP1は、リングジョイント溝310の中心を示す中心線および側面311のなす角度θrと、リングジョイント溝310の幅Fおよび深さdとを含む。側面311は、ガスケット40が接触するリングジョイント溝310の接触面に相当する。深さdは、フランジ面300とリングジョイント溝310の底面312との距離に相当する。形状パラメータP1は、リングジョイント溝310のすみの半径(図示しない)を含んでいてもよい。
【0051】
(傷の長さおよび深さの測定)
評価装置10は、フランジ30の三次元形状データに基づいて、リングジョイント溝310の対象領域Nf内に生じた傷を検出する。リングジョイント溝310の傷は、公知の技術を用いて検出されればよい。例えば、評価装置10は、メモリ103に予め記憶された傷の特徴量と、三次元形状データに基づいて作成された画像の特徴量とを比較することで、リングジョイント溝310の傷を検出する。典型的には、対象領域Nfは、リングジョイント溝310の内径側および外径側の各々の側面311におけるガスケット40と接触する領域に設定される。
【0052】
図5(a)を参照して、オーバル形のリングジョイントガスケットが採用される場合、対象領域Nfの幅Wは、例えば、“d/2”に設定される。対象領域Nfの中心位置は、例えば、側面311の中心位置(フランジ面300と底面312との中心位置)に設定される。
【0053】
図5(b)を参照して、オクタゴナル形のリングジョイントガスケットが採用される場合、対象領域Nfの幅Wは、当該リングジョイントガスケットの斜辺部の幅“w*”または“w*×(4/3)”に設定される。評価装置10は、三次元形状データに基づいて、リングジョイント溝310とガスケット40との実際の接触領域の幅の実測値を測定し、当該実測値を幅Wとしてもよい。
【0054】
図6は、リングジョイント溝の傷の長さの算出方式を説明するための図である。図6(a)および図6(b)を参照して、評価装置10は、三次元形状データに基づいて、側面311の対象領域Nfに生じた傷50の長さLを測定(算出)する。例えば、中心線から側面311に対して垂線351~353を引く。垂線351はフランジ面300と交差し、垂線352は側面311に生じた傷50の一端と交差し、垂線353は傷50の他端と交差する。これにより、長さL1,L2が算出されるため、これらの長さL1,L2と、形状パラメータP1に含まれる角度θrと、角度θ(=90°-θr)等に基づいて、傷50の長さLが算出される。
【0055】
図7は、複数の傷の統合方式を説明するための図である。図7(a)は、複数の傷の統合方式の一例を示している。図7(b)は、複数の傷の統合方式の他の例を示している。図7(c)は、複数の傷を統合した後の傷の長さを示している。
【0056】
評価装置10は、複数の傷が互いに近い距離にある場合には、複数の傷を1つの傷として統合する。図7(a)を参照して、評価装置10は、傷A1~A3を検出する。続いて、評価装置10は、複数の傷A1~A3にそれぞれ対応する複数の統合領域B1~B3を算出する。統合領域は、複数の傷を1つの傷として統合できるか否かを判断するために設定される領域である。例えば、統合領域B1は、傷A1の各位置から領域幅Kの距離で規定される領域である。同様に、統合領域B2,B3は、それぞれ傷A2,A3の各位置から領域幅Kの距離で規定される領域である。
【0057】
評価装置10は、複数の統合領域B1~B3について、当該統合領域が他の統合領域と重畳しているか否かを判断する。図7(a)の例では、各統合領域B1~B3は互いに重畳しているため、評価装置10は、複数の傷A1~A3を1つの傷として統合する。
【0058】
図7(b)を参照して、評価装置10は、傷A1,A2を検出して、複数の傷A1,A2にそれぞれ対応する複数の統合領域B1,B2を算出する。統合領域B1の算出方式について説明する。傷A1の最大長を示す基準線を引き、基準線上の傷A1の2つの端部から領域幅Kの距離にある線分C1,C2を求める。続いて、基準線に直交する左右方向について、基準線から最も遠い位置に存在する傷A1の端部を特定する。特定された各方向の端部から領域幅Kの距離にある線分C3,C4を求める。統合領域B1は、線分C1~C4で囲まれる領域である。統合領域B2についても同様の算出方式により求める。
【0059】
評価装置10は、統合領域B1が統合領域B2と重畳しているか否かを判断する。図7(b)の例では、統合領域B1,B2は互いに重畳しているため、評価装置10は、複数の傷A1,A2を1つの傷として統合する。
【0060】
図7(c)を参照して、評価装置10は、上述した統合方式を用いて、傷A1~A3を統合して1つの傷としてみなしたとする。この場合、統合された傷の最大長さは、傷A1~A3の各位置のうちフランジ面300から最も近い点R1と、傷A1~A3の各位置のうち底面312から最も近い(または、フランジ面300から最も遠い)点R2との距離で規定される。そのため、図6で説明した方法により、線分R1R2の長さを用いて、統合された傷の長さLが算出される。
【0061】
図8は、リングジョイント溝の傷の深さの算出方式を説明するための図である。図8(a)を参照して、一例として、側面311(リングジョイント溝310の斜辺)から、傷50の最も深い位置に対して垂線を引き、当該垂線の長さが傷50の深さDとして測定(算出)される。図8(b)を参照して、他の例として、中心線から傷50の最も深い位置に対して垂線を引く。当該垂線と側面311(リングジョイント溝310の斜辺)との交点と、当該位置との間の距離が傷50の深さDとして算出される。図8(c)を参照して、さらに他の例として、傷50の周辺部を取り囲む仮想面361を定義する。仮想面361から傷50の最も深い位置までの距離が深さDとして算出される。
【0062】
(歪み量の測定)
評価装置10は、フランジ30の三次元形状データに基づいて、ガスケット40が接触する、リングジョイント溝310の接触面(すなわち、側面311)の歪み量を測定する。具体的には、評価装置10は、フランジ30の径方向および周方向について、側面311の歪み量を測定する。
【0063】
図9は、リングジョイント溝の径方向の歪み量の測定方式を説明するための図である。図9(a)は、フランジ面300の上面図である。図9(b)および図9(c)は、リングジョイント溝310の断面図である。
【0064】
図9(a)を参照して、フランジの中心Oから径方向に向かって複数のチェック線が引かれる。典型的には、フランジの周方向に等間隔(例えば、45度間隔)でチェック線が引かれる。チェック線と交差する内径側および外径側の側面311について歪み量が測定される。
【0065】
図9(b)を参照して、歪みが生じている側面311(リングジョイント溝310の斜辺)の平均面を基準面(円錐側面)として定義する。基準面から側面311に垂線を引き、当該垂線の長さが径方向の歪み量Srとして測定(算出)される。図9(c)を参照して、他の例として、中心線から基準面に対して垂線を引く。当該垂線および側面311(リングジョイント溝310の斜辺)の交点と、当該垂線および基準面の交点との間の距離が径方向の歪み量Srとして算出される。
【0066】
図10は、リングジョイント溝の周方向の歪み量の測定方式を説明するための図である。図10(a)および図10(b)は、リングジョイント溝310の断面図である。図10(c)は、リングジョイント溝310の側面311と測定面との交点の周方向の軌跡を示す図である。
【0067】
図10(a)を参照して、フランジ30の内径の中心軸と、フランジ面300とのなす角度θmを定義する。角度θmに基づいて、フランジ面300と平行な複数の測定面X1,X2を作成する。測定面X1と外径側の側面311との交点を点Od1、測定面X1と内径側の側面311との交点を点Id1とする。測定面X2と外径側の側面311との交点を点Od2、測定面X2と内径側の側面311との交点を点Id2とする。他の例として、図10(b)を参照して、中心軸からリングジョイント溝310に垂線を引くことにより、複数の測定面X1,X2を作成してもよい。
【0068】
図10(c)を参照して、リングジョイント溝310の全周における点Od1の軌跡が示されている。当該軌跡の平均を基準円として定義し、基準円と軌跡との距離が周方向の歪み量Scとして測定(算出)される。そして、基準円から所定距離(例えば、±0.15mm)内を許容領域とする。図10(c)の例では、点Od1の軌跡は許容領域内に含まれている(すなわち、歪み量Scが所定距離未満である)ため、側面311の点Od1における歪み量Srは許容される。点Od2,Id1,Id2における歪み量についても同様に算出される。
【0069】
<ガスケットに関する各種データの測定>
ここでは、図3のステップS18の具体的な処理内容について説明する。
【0070】
(形状パラメータの測定)
図11は、ガスケットの形状パラメータの測定方式を説明するための図である。図11(a)および図11(b)を参照して、評価装置10は、ガスケット40の三次元形状データに基づいて、ガスケット40の形状に関する複数の形状パラメータP2を測定する。
【0071】
図11(a)を参照して、ガスケット40がオーバル形のリングジョイントガスケットである場合、複数の形状パラメータP2は、ガスケット40の中心径(すなわち、ガスケット40の内径中心線と断面中心線との間の距離)、高さHov、幅AovおよびR部の長さを含む。図11(b)を参照して、ガスケット40がオクタゴナル形のリングジョイントガスケットである場合、複数の形状パラメータP2は、ガスケット40の中心径、高さHoc、幅Aoc、頭部の平面幅Coc、および頭部のテーパー角度θocを含む。
【0072】
(傷の長さおよび深さの測定)
評価装置10は、ガスケット40の三次元形状データに基づいて、ガスケット40の対象領域Ng内に生じた傷を検出する。ガスケット40の傷は、公知の技術を用いて検出されればよい。例えば、評価装置10は、メモリ103に予め記憶された傷の特徴量と、三次元形状データに基づいて作成された画像の特徴量とを比較することで、ガスケット40の傷を検出する。典型的には、対象領域Ngは、リングジョイント溝310の内径側および外径側の各側面311が接触する、ガスケット40の接触面に設定される。
【0073】
図12は、ガスケットの対象領域の設定方式を説明するための図である。図12(a)を参照して、オーバル形のリングジョイントガスケットが採用される場合、ガスケット40の断面中心線となす角が角度θrとなるように、ガスケット40に対して接線401と引く。接線401とガスケット40との接点を中心として、“d/2”の幅を規定し、ガスケット40に対して2つの垂線を引く。一方の垂線とガスケット40との交点を点Y1とし、他方の垂線とガスケット40との交点を点Y2とする。
【0074】
ガスケット40がオーバル形のリングジョイントガスケットである場合の対象領域Ngは、点Y1から点Y2までのガスケット40の側面領域に設定される。図12(a)に示す対象領域Ngは、リングジョイント溝310の外径側の側面311が接触するガスケット40の接触面を含む。
【0075】
図12(b)を参照して、オクタゴナル形のリングジョイントガスケットが採用される場合、斜辺部中央を中心として“w*×(4/3)”の幅を規定し、ガスケット40に対して2つの垂線を引く。一方の垂線とガスケット40との交点を点Y3とし、他方の垂線とガスケット40との交点を点Y4とする。
【0076】
ガスケット40がオクタゴナル形のリングジョイントガスケットである場合の対象領域Ngは、点Y3から点Y4までのガスケット40の側面領域に設定される。図12(b)に示す対象領域Ngは、リングジョイント溝310の外径側の側面311と接触するガスケット40の接触面を含む。なお、斜辺部中央を中心として“w*”の幅で規定される側面領域を対象領域Ngとして設定する構成であってもよい。
【0077】
図13は、ガスケットの傷の長さの算出方式を説明するための図である。図13(a)および図13(b)を参照して、評価装置10は、三次元形状データに基づいて、ガスケット40の対象領域Ngに生じた傷60の長さLgを測定(算出)する。例えば、断面中心線からガスケット40の接触面411(すなわち、ガスケット40とリングジョイント溝310とが接触する面)に対して垂線451~453を引く。垂線451は接触面411の端部と交差し、垂線452は対象領域Ngに生じた傷60の一端と交差し、垂線453は傷60の他端と交差する。これにより、長さL1g,L2gが算出されるため、これらの長さL1g,L2gと、形状パラメータP2に含まれる角度θrと、角度θ(=90°-θr)等に基づいて、傷60の長さLgが算出される。
【0078】
なお、ガスケット40に生じた複数の傷の統合方式は、上述したリングジョイント溝に生じた複数の傷の統合方式と同様である。
【0079】
図14は、ガスケットの傷の深さの算出方式を説明するための図である。図14(a)を参照して、ガスケット40の接触面411から、傷60の最も深い位置に対して垂線を引き、当該垂線の長さが傷60の深さDgとして測定(算出)される。図14(b)を参照して、他の例として、断面中心線から傷60の最も深い位置に対して垂線を引く。当該垂線とガスケット40の接触面411との交点と、当該位置との間の距離が傷60の深さDgとして算出される。図14(c)を参照して、さらに他の例として、傷60の周辺部を取り囲む仮想面461を定義する。仮想面461から傷60の最も深い位置までの距離が深さDgとして算出される。
【0080】
(歪み量の測定)
評価装置10は、ガスケット40の三次元形状データに基づいて、リングジョイント溝310の側面311が接触する、ガスケット40の接触面411の歪み量を測定する。具体的には、評価装置10は、ガスケット40の径方向および周方向について、接触面411の歪み量を測定する。オーバル形のガスケット40における接触面411は、ガスケット40のR部を含む面である。オクタゴナル形のガスケット40における接触面411は、ガスケット40の斜辺部を含む面である。
【0081】
図15は、ガスケットの径方向の歪み量の測定方式を説明するための図である。図15(a)は、ガスケット40の上面図である。図15(b)および図15(c)は、ガスケット40の断面図である。
【0082】
図15(a)を参照して、ガスケット40の内径の中心Ogから径方向に向かって複数のチェック線が引かれる。典型的には、ガスケット40の周方向に等間隔(例えば、45度間隔)でチェック線が引かれる。チェック線と交差する内径側および外径側の接触面411について歪み量が測定される。
【0083】
図15(b)を参照して、歪みが生じている接触面411の平均面を基準面として定義する。基準面から接触面411に垂線を引き、当該垂線の長さが径方向の歪み量Srgとして測定(算出)される。図15(c)を参照して、他の例として、中心線から基準面に対して垂線を引く。当該垂線および接触面411の交点と、当該垂線および基準面の交点との間の距離が径方向の歪み量Srgとして算出される。
【0084】
図16は、ガスケットの周方向の歪み量の測定方式を説明するための図である。図16(a)および図16(b)は、ガスケット40の断面図である。図16(c)は、ガスケット40の接触面411と測定面との交点の周方向の軌跡を示す図である。
【0085】
図16(a)を参照して、ガスケット40の内径の中心軸と、ガスケット40の底面412(または上面)とのなす角度θmgを定義する。角度θmgに基づいて、ガスケット40の接触面411と平行な複数の測定面X1g,X2gを作成する。測定面X1gと外径側の接触面411との交点を点Oe1、測定面X1gと内径側の接触面411との交点を点Ie1とする。また、測定面X2gと外径側の接触面411との交点を点Oe2、測定面X2gと内径側の接触面411との交点を点Ie2とする。他の例として、図16(b)を参照して、中心軸からガスケット40に垂線を引くことにより、複数の測定面X1g,X2gを作成してもよい。
【0086】
図16(c)を参照して、ガスケット40の全周における点Oe1の軌跡が示されている。当該軌跡の平均を基準円として定義し、基準円と軌跡との距離が周方向の歪み量Scgとして測定(算出)される。そして、基準円から所定距離(例えば、±0.15mm)内を許容領域とする。図16(c)の例では、点Oe1の軌跡は許容領域内に含まれている(すなわち、歪み量Scgが所定距離未満である)ため、接触面411の点Oe1の歪み量Srgは許容される。点Oe2,Ie1,Ie2の歪み量についても同様に算出される。
【0087】
<ガスケット嵌め込み時の歪み量の測定>
ここでは、図3のステップS20の具体的な処理内容について説明する。
【0088】
リングジョイント溝310の側面311の歪み量は、図9図10で説明した方式により測定できる。また、ガスケット40の接触面411の歪み量は、図15図16で説明した方式により測定できる。ただし、実際には、ガスケット40がリングジョイント溝310に嵌め込まれた状態でこれらは使用されるため、当該状態においてどの程度の歪みが生じているのかを測定することが好ましい。ここでは、ガスケット40をリングジョイント溝310に嵌め込んだ締結部分における歪み量の測定方式について説明する。
【0089】
図17は、締結部分における歪み量の測定方式を説明するための図である。図17(a)は、ガスケットの接触面およびリングジョイント溝の側面の歪み量を説明するための図である。図17(b)は、締結部分の歪み量を説明するための図である。
【0090】
図17(a)を参照して、ガスケット40の接触面411の歪み量およびリングジョイント溝の側面311の歪み量は、いずれも基準歪み量Thx未満となっている。そのため、評価装置10は、接触面411および側面311の各々の歪み量が許容される歪み量であると判定する。
【0091】
図17(b)を参照して、評価装置10は、接触面411および側面311の各々の歪み量に基づいて、ガスケット40をリングジョイント溝310に嵌め込んだ締結部分の歪み量を算出する。具体的には、接触面411の各位置の歪み量と、ガスケット40をリングジョイント溝310に嵌め込んだ場合に接触面411の各位置に対向する側面311の各位置の歪み量との合計値を、締結部分の歪み量として算出する。
【0092】
例えば、図17(a)を参照すると、領域501において、接触面411は上方向(+Th方向)に歪んでおり、側面311も上方向に歪んでいる。そのため、締結部分の歪み量は大きくならず、基準歪み量Thx未満となる。
【0093】
一方、領域502において、接触面411は上方向に歪んでいるが、側面311は下方向(-Th方向)に歪んでいる。そのため、締結部分の歪み量が大きくなってしまい、基準歪み量Thx以上となる。
【0094】
評価装置10は、締結部分の歪み量の最大値を抽出し、当該最大値と基準歪み量Thxとを比較することにより、締結部分の歪み量が許容されるのか否かを判断する。
【0095】
図18は、締結部分の歪み量の測定方式の他の例を説明するための図である。図18(a)は、ガスケットの接触面およびリングジョイント溝の側面の歪み量を説明するための図である。図18(b)は、締結部分の歪み量を説明するための図である。
【0096】
図18(a)の例では、リングジョイント溝310の側面311に傷や付着物が存在している。このように、側面311(または接触面411)に傷や付着物が存在する場合に、これらを考慮して歪み量を算出する構成であってもよい。図18(b)を参照すると、側面311に傷や付着物が存在している領域において、締結部分の歪み量が基準歪み量Thx以上となっていることがわかる。
【0097】
<修繕および交換の要否判断>
ここでは、図3のステップS22の具体的な処理内容について説明する。
【0098】
評価装置10は、上述した各評価結果に基づいて、リングジョイント溝310の修繕およびガスケット40の交換の要否を判断する。具体的には、以下の条件を用いて、修繕および交換の要否を判定する。
【0099】
(条件Z1:フランジ締結体の隙間)
条件Z1は、フランジ締結体の隙間Cgに基づく条件である。具体的には、評価装置10は、複数の箇所の各々において測定された各隙間Cgの少なくとも1つが基準値Cx(例えば、1.5mm)以上であるとの条件Z1を満たすか否かを判断する。条件Z1を満たす場合、評価装置10は、一方のフランジ30、他方のフランジ30の各々のリングジョイント溝310、およびガスケット40のうちの少なくとも1つに異常が発生していると判断する。
【0100】
評価装置10は、フランジ30やガスケット40の深刻度を評価する。深刻度は“0~10”の11段階で評価される。深刻度の値が大きいほどフランジ30やガスケット40の状態が深刻である(すなわち、フランジ30やガスケット40の状態が悪い)ものとする。条件Z1を満たす場合、評価装置10は、深刻度を“2”と評価する。
【0101】
(条件Z2:リングジョイント溝の形状)
条件Z2は、フランジ30のリングジョイント溝310の形状パラメータP1に基づく条件である。評価装置10は、各形状パラメータP1について対応する基準を満たしているか否かを判断する。
【0102】
具体的には、評価装置10は、角度θrが基準角度範囲θx(例えば、23±0.5度の範囲)外であるとの条件Z2aを満たすか否かを判断する。評価装置10は、リングジョイント溝310の幅Fが基準範囲Fx(例えば、規定幅±0.2mmの範囲)外であるとの条件Z2bを満たすか否かを判断する。評価装置10は、リングジョイント溝310の深さdが基準範囲dx(例えば、“規定深さ”~“規定深さ+0.4mm”の範囲)外であるとの条件Z2cを満たすか否かを判断する。
【0103】
そして、条件Z2a~条件Z2cのうちの少なくとも1つが成立する場合(すなわち、条件Z2を満たす場合)、評価装置10は、リングジョイント溝310が修繕を要する状態であると判断する。条件Z2を満たす場合、評価装置10は、リングジョイント溝310の深刻度を“10”と評価する。
【0104】
(条件Z3:リングジョイント溝の傷および歪み量)
条件Z3は、リングジョイント溝310の対象領域Nfに生じた傷の最大長さLmaxおよび側面311の歪み量に基づく条件である。最大長さLmaxは、検出された複数の傷の長さLのうちの最大値である。
【0105】
評価装置10は、傷の最大長さLmaxが基準値Lx1以上であるとの条件Z3aを満たすか否かを判断する。基準値Lx1は、例えば、対象領域Nfの幅Wを用いて“W×(1/2)”に設定される。上述したように、オーバル形のリングジョイントガスケットが採用される場合、“W=d/2”であり、オクタゴナル形のリングジョイントガスケットが採用される場合、“W=w*×(4/3)”または“W=w*”である。最大長さLmaxが基準値Lx1以上である(すなわち、条件Z3aを満たす)場合、評価装置10は、リングジョイント溝310が修繕を要する状態であると判断する。
【0106】
また、評価装置10は、側面311の歪み量が基準歪み量Th1(例えば、0.15mm)以上であるか否かを判断する。具体的には、評価装置10は、側面311の径方向の最大歪み量J1および側面311の周方向の最大歪み量J2の両方が基準歪み量Th1以上であるとの条件Z3bを満たすか否かを判断する。最大歪み量J1および最大歪み量J2の両方が基準歪み量Th1以上である(すなわち、条件Z3bを満たす)場合、評価装置10は、リングジョイント溝310が修繕を要する状態であると判断する。
【0107】
まとめると、条件Z3aおよび条件Z3bのうちの少なくとも一方を満たす(すなわち、条件Z3を満たす)場合、評価装置10は、リングジョイント溝310が修繕を要する状態であると判断する。条件Z3を満たす場合、評価装置10は、リングジョイント溝310の深刻度を“8”と評価する。
【0108】
(条件Z4:リングジョイント溝の傷)
条件Z4は、リングジョイント溝の傷の長さLおよび深さDに基づく条件である。
【0109】
評価装置10は、基準値Lx1未満かつ基準値Lx2以上である長さLを有し、かつ基準値Dx1(例えば、0.25mm)以上である深さDを有する傷が存在するとの条件Z4aを満たすか否かを判断する。例えば、基準値Lx2は、“W×(1/4)”に設定される。また、評価装置10は、基準値Lx2未満である長さLを有し、かつ基準値Dx2(例えば、0.75mm)以上である深さDを有する傷が存在するとの条件Z4bを満たすか否かを判断する。
【0110】
条件Z4aおよび条件Z4bのうちの少なくとも一方を満たす(すなわち、条件Z4を満たす)場合、評価装置10は、リングジョイント溝310が修繕を要する状態であると判断する。条件Z4を満たす場合、評価装置10は、リングジョイント溝310の深刻度を“6”と評価する。
【0111】
(条件Z5:ガスケットの形状)
条件Z5は、ガスケット40の形状パラメータP2に基づく条件である。評価装置10は、各形状パラメータP2について対応する基準を満たしているか否かを判断する。
【0112】
具体的には、評価装置10は、ガスケット40の中心径が基準範囲Cdx(例えば、規定値±0.18mmの範囲)外であるとの条件Z5aを満たすか否かを判断する。評価装置10は、ガスケット40の高さH(例えば、Hov,Hoc)が基準範囲Hx(例えば、“規定値-0.5mm”~“規定値+1.3mm”の範囲)外であるとの条件Z5bを満たすか否かを判断する。評価装置10は、ガスケット40の幅A(例えば、Aov,Aoc)が基準範囲Ax(例えば、規定値±0.2mmの範囲)外であるとの条件Z5cを満たす否かを判断する。
【0113】
オーバル形のガスケット40が採用される場合、評価装置10は、ガスケット40のR部の長さが基準範囲(例えば、規定値±0.2mmの範囲)外であるとの条件Z5dを満たす否かを判断する。
【0114】
オクタゴナル形のガスケット40が採用される場合、評価装置10は、ガスケット40の平面幅Cocが基準範囲(例えば、規定値±0.2mmの範囲)外であるとの条件Z5eを満たす否かを判断する。さらに、評価装置10は、ガスケット40の頭部のテーパー角度θocが基準範囲(例えば、23±0.5度の範囲)外であるとの条件Z5fを満たす否かを判断する。
【0115】
オーバル形のガスケット40について、条件Z5a~Z5dのうちの少なくとも1つが成立する場合(すなわち、条件Z5を満たす場合)、評価装置10は、ガスケット40が交換を要する状態であると判断する。また、オクタゴナル形のガスケット40について、条件Z5a~Z5c,Z5e,Z5fのうちの少なくとも1つが成立する場合(すなわち、条件Z5を満たす場合)、評価装置10は、ガスケット40が交換を要する状態であると判断する。条件Z5を満たす場合、評価装置10は、ガスケット40の深刻度を“10”と評価する。
【0116】
(条件Z6:ガスケットの傷および歪み量)
条件Z6は、ガスケット40の対象領域Ngに生じた傷の最大長さLgmaxおよび接触面411の歪み量に基づく条件である。最大長さLgmaxは、検出された複数の傷の長さLgのうちの最大値である。
【0117】
評価装置10は、傷の最大長さLgmaxが基準値Lgx1以上であるとの条件Z6aを満たすか否かを判断する。基準値Lgx1は、例えば、対象領域Ngの幅Wgを用いて“Wg×(1/2)”に設定される。オーバル形のリングジョイントガスケットが採用される場合、幅Wgは図12(a)の対象領域Ngの幅である。オクタゴナル形のリングジョイントガスケットが採用される場合、幅Wgは図12(b)の対象領域Ngの幅である。最大長さLgmaxが基準値Lgx1以上である(すなわち、条件Z6aを満たす)場合、評価装置10は、ガスケット40が交換を要する状態であると判断する。
【0118】
評価装置10は、接触面411の歪み量が基準歪み量Th2(例えば、0.15mm)以上であるか否かを判断する。具体的には、評価装置10は、接触面411の径方向の最大歪み量Jg1および接触面411の周方向の最大歪み量Jg2の両方が基準歪み量Th2以上であるとの条件Z6bを満たすか否かを判断する。最大歪み量J1および最大歪み量J2の両方が基準歪み量Th2以上である(すなわち、条件Z6bを満たす)場合、評価装置10は、ガスケット40が交換を要する状態であると判断する。
【0119】
まとめると、条件Z6aおよび条件Z6bのうちの少なくとも一方を満たす(すなわち、条件Z6を満たす)場合、評価装置10は、ガスケット40が交換を要する状態であると判断する。条件Z6を満たす場合、評価装置10は、ガスケット40の深刻度を“8”と評価する。
【0120】
(条件Z7:ガスケットの傷)
条件Z7は、ガスケットの傷の長さLgおよび深さDgに基づく条件である。
【0121】
評価装置10は、基準値Lgx1未満かつ基準値Lgx2以上である長さLgを有し、かつ基準値Dx1(例えば、0.25mm)以上である深さDgを有する傷が存在するとの条件Z7aを満たすか否かを判断する。例えば、基準値Lgx2は、“Wg×(1/4)”に設定される。また、評価装置10は、基準値Lgx2未満である長さLgを有し、かつ基準値Dx2(例えば、0.75mm)以上である深さDgを有する傷が存在するとの条件Z7bを満たすか否かを判断する。
【0122】
条件Z7aおよび条件Z7bのうちの少なくとも一方を満たす(すなわち、条件Z7を満たす)場合、評価装置10は、ガスケット40が交換を要する状態であると判断する。条件Z7を満たす場合、評価装置10は、ガスケット40の深刻度を“6”と評価する。
【0123】
(条件Z8:締結部分の歪み量)
条件Z8は、リングジョイント溝310にガスケット40を嵌め込んだ締結部分の歪み量に基づく条件である。
【0124】
評価装置10は、締結部分の歪み量の最大値が基準歪み量Thx(例えば、0.05mm)以上であるとの条件Z8を満たすか否かを判断する。締結部分の歪み量の最大値が基準歪み量Thx以上である(すなわち、条件Z8を満たす)場合、評価装置10は、リングジョイント溝310が修繕を要する状態である、または、ガスケット40が交換を要する状態であると判断する。条件Z8を満たす場合、評価装置10は、締結部分の深刻度を“4”と評価する。
【0125】
(条件Z9:締結部分の歪み量および傷)
条件Z9は、締結部分の歪み量および傷の深さ(例えば、深さD,Dg)に基づく条件である。
【0126】
評価装置10は、締結部分の歪み量の最大値および傷の深さの合計値が基準値Thx(例えば、0.05mm)以上であるとの条件Z9を満たすか否かを判断する。合計値が基準値Thx以上である(すなわち、条件Z9を満たす)場合、評価装置10は、リングジョイント溝310が修繕を要する状態である、または、ガスケット40が交換を要する状態であると判断する。条件Z9を満たす場合、評価装置10は、締結部分の深刻度を“4”と評価する。
【0127】
(まとめ)
評価装置10は、条件Z1を満たす場合、フランジ30およびガスケット40のうちの少なくとも1つに異常が発生していると判断する。評価装置10は、条件Z2~Z4のいずれかを満たす場合、リングジョイント溝310が修繕を要する状態であると判断する。評価装置10は、条件Z5~Z7のいずれかを満たす場合、ガスケット40が交換を要する状態であると判断する。評価装置10は、条件Z8,Z9のいずれかを満たす場合、フランジ30のリングジョイント溝310が修繕を要する状態、または、ガスケット40が交換を要する状態であると判断する。また、条件Z1~Z9のいずれかを満たす場合、評価装置10は、満たされる条件に応じて深刻度を評価する。
【0128】
一方、条件Z1~Z9をいずれも満たさない場合には、リングジョイント溝310およびガスケット40の状態は良好であると考えられる。そのため、この場合、評価装置10は、リングジョイント溝310の修繕およびガスケット40の交換は不要であると判断する。
【0129】
<アドバイス情報の表示>
ここでは、図3のステップS24の具体的な処理内容について説明する。
【0130】
(条件Z1を満たす場合)
ガスケット、リングジョイント溝等が変形している可能性がある。そのため、評価装置10は、フランジ開放時にこれらの異常確認を行なう必要である旨および深刻度“2”を含むアドバイス情報をディスプレイ105に表示する。また、アドバイス情報は、異常確認の結果に応じてリングジョイント溝の修繕、およびガスケット交換を行なうことを推奨する情報を含む。リングジョイント溝の修繕を推奨する情報は、例えば、傷および歪み量の最大値に所定値(例えば、0.05mm)を加算した加算値以上の切削または研磨を推奨する情報を含む。
【0131】
(条件Z2,Z3を満たす場合)
リングジョイント溝が変形しており修繕が必要である。評価装置10は、リングジョイント溝の修繕が必要である旨を含むアドバイス情報をディスプレイ105に表示する。アドバイス情報は、リングジョイント溝とガスケットとのすり合わせ、および光明丹を用いた当たり面の確認を推奨する情報を含む。条件Z2を満たす場合、アドバイス情報は、深刻度“10”を示す情報をさらに含む。条件Z3を満たす場合、アドバイス情報は、深刻度“8”を示す情報をさらに含む。
【0132】
(条件Z4を満たす場合)
リングジョイント溝に異常があり修繕が必要である。評価装置10は、リングジョイント溝の修繕が必要である旨および深刻度“4”を含むアドバイス情報をディスプレイ105に表示する。アドバイス情報は、リングジョイント溝とガスケットとのすり合わせ、および光明丹を用いた当たり面の確認を推奨する情報を含む。
【0133】
(条件Z5,Z6を満たす場合)
ガスケットが変形しており交換が必要である。評価装置10は、ガスケットの交換が必要である旨を含むアドバイス情報をディスプレイ105に表示する。アドバイス情報は、リングジョイント溝とガスケットとのすり合わせ、および光明丹を用いた当たり面の確認を推奨する情報を含む。条件Z5を満たす場合、アドバイス情報は、深刻度“10”を示す情報をさらに含む。条件Z6を満たす場合、アドバイス情報は、深刻度“8”を示す情報をさらに含む。
【0134】
(条件Z7を満たす場合)
ガスケットに異常があり交換が必要である。評価装置10は、ガスケットの交換が必要である旨および深刻度“6”を含むアドバイス情報をディスプレイ105に表示する。アドバイス情報は、リングジョイント溝とガスケットとのすり合わせ、および光明丹を用いた当たり面の確認を推奨する情報を含む。
【0135】
(条件Z8,Z9を満たす場合)
ガスケットまたはリングジョイント溝の変形等により漏洩の可能性がある。評価装置10は、リングジョイント溝の修繕およびガスケットの交換を推奨する情報および深刻度“4”を含むアドバイス情報をディスプレイ105に表示する。
【0136】
<機能構成>
図19は、評価装置の機能構成の一例を示すブロック図である。図19を参照して、評価装置10は、主たる機能構成として、データ取得部601と、評価部603と、出力制御部605とを含む。これらの各機能は、例えば、評価装置10のプロセッサ101がメモリ103に格納されたプログラムを実行することによって実現される。なお、これらの機能の一部または全部はハードウェアで実現されるように構成されていてもよい。
【0137】
データ取得部601は、フランジ30およびガスケット40の各々の三次元形状データを取得する。また、データ取得部601は、リングジョイントガスケット40を介して一方のフランジ30と他方のフランジ30とが締結されたフランジ締結体の三次元形状データを取得する。具体的には、データ取得部601は、入出力インターフェイス109(または通信インターフェイス111)を介して、3Dスキャナ20から各々の三次元形状データを取得する。
【0138】
評価部603は、各三次元形状データに基づいて、リングジョイント溝310、ガスケット40、およびフランジ締結体の状態を評価する。具体的には、評価部603は、形状測定部611と、隙間測定部612と、設定部613と、検出部615と、歪み量測定部617と、判断部619とを含む。
【0139】
形状測定部611は、フランジ30の三次元形状データに基づいて、リングジョイント溝310の形状に関する複数の形状パラメータP1(例えば、角度θr、幅F、深さd)を測定する。形状測定部611は、ガスケット40の三次元形状データに基づいて、ガスケット40の形状に関する複数の形状パラメータP2(例えば、ガスケットの中心径、高さ、幅)を測定する。
【0140】
隙間測定部612は、フランジ締結体の三次元形状データに基づいて、フランジ締結体における一方のフランジ30と他方のフランジ30との隙間を測定する。
【0141】
設定部613は、フランジ30の三次元形状データに基づいて、リングジョイント溝310の対象領域Nfを設定する。具体的には、設定部613は、図5で説明した方式に従って対象領域Nfを設定する。対象領域Nfは、リングジョイント溝310の接触面(すなわち、側面311)における所定領域(例えば、幅Wで規定される領域)である。なお、対象領域Nfは、側面311の全領域であってもよい。
【0142】
また、設定部613は、ガスケット40の三次元形状データに基づいて、ガスケット40の対象領域Ngを設定する。具体的には、設定部613は、図12で説明した方式に従って対象領域Ngを設定する。対象領域Ngは、リングジョイント溝310の側面311が接触するガスケット40の接触面411に設定される。
【0143】
検出部615は、フランジ30の三次元形状データに基づいて、対象領域Nfに生じた傷を検出する。ある局面では、検出部615は、上述した複数の傷の統合方式に従って、対象領域Nfにおいて互いに近接する第1の傷(例えば、図7中の傷A1)および第2の傷(例えば、図7中の傷A2)を検出した場合、第1の傷および第2の傷を1つの傷として統合する。検出部615は、対象領域Nfにおける傷の検出結果を判断部619に出力する。検出結果は、検出された傷の長さL、傷の深さD等を含む。
【0144】
また、検出部615は、ガスケット40の三次元形状データに基づいて、リングジョイント溝310が接触するガスケット40の接触面411(例えば、対象領域Ng)に生じた傷を検出する。検出部615は、対象領域Ngにおける傷の検出結果を判断部619に出力する。検出結果は、検出された傷の長さLg、傷の深さDg等を含む。
【0145】
歪み量測定部617は、フランジ30の三次元形状データに基づいて、リングジョイント溝310の接触面(すなわち、側面311)の歪み量を測定する。具体的には、歪み量測定部617は、図9で説明した測定方式に従って、側面311の径方向の歪み量を測定し、図10で説明した測定方式に従って、側面311の周方向の歪み量を測定する。
【0146】
他の局面では、歪み量測定部617は、ガスケット40の三次元形状データに基づいて、ガスケット40の接触面411の歪み量を測定する。具体的には、歪み量測定部617は、図15で説明した測定方式に従って、接触面411の径方向の歪み量を測定し、図16で説明した測定方式に従って、接触面411の周方向の歪み量を測定する。
【0147】
さらに他の局面では、歪み量測定部617は、側面311の歪み量と接触面411の歪み量とに基づいて、リングジョイント溝310にガスケット40が嵌め込まれた領域(例えば、締結部分)における歪み量を算出する。具体的には、歪み量測定部617は、図17および図18で説明した測定方式に従って、当該歪み量を算出する。
【0148】
判断部619は、複数の形状パラメータP1、リングジョイント溝310の傷および歪み量のうちの少なくとも1つに基づいて、リングジョイント溝310の修繕の要否を判断する。
【0149】
具体的には、複数の形状パラメータP1のうちの少なくとも1つが基準範囲外である場合(例えば、条件Z2を満たす場合)、対象領域Nfの傷の長さLが第1の長さ(例えば、基準値Lx1)以上である場合(例えば、条件Z3aを満たす場合)、または、側面311の歪み量が第1閾値(例えば、基準歪み量Th1)以上である場合(例えば、条件Z3bを満たす場合)、判断部619は、リングジョイント溝310が修繕を要する状態であると判断する。
【0150】
また、傷の長さLが第1の長さ未満であってかつ当該傷の深さDが第1の深さ(例えば、基準値Dx1)以上である場合(例えば、条件Z4aを満たす場合)、判断部619は、リングジョイント溝310が修繕を要する状態であると判断する。
【0151】
他の局面では、判断部619は、複数の形状パラメータP2、接触面411の傷および歪み量のうちの少なくとも1つに基づいて、ガスケット40の交換の要否を判断する。
【0152】
具体的には、複数の形状パラメータP2のうちの少なくとも1つが基準範囲外である場合(例えば、条件Z5を満たす場合)、接触面411の傷の長さLgが第2の長さ(例えば、基準値Lgx1)以上である場合(例えば、条件Z6aを満たす場合)、または、歪み量が第2閾値(例えば、基準歪み量Th2)以上である場合(例えば、条件Z6bを満たす場合)、判断部619は、ガスケット40の交換が必要であると判断する。
【0153】
また、接触面411の傷の長さLgが第2の長さ未満であってかつ当該傷の深さDgが第2の深さ(例えば、基準値Dx1)以上である場合(例えば、条件Z7aを満たす場合)、判断部619は、ガスケット40の交換が必要であると判断する。
【0154】
さらに他の局面では、リングジョイント溝310にガスケット40が嵌め込まれた領域における歪み量が第3閾値(例えば、基準歪み量Thx)以上である場合(例えば、条件Z8または条件Z9を満たす場合)、判断部619は、リングジョイント溝310の修繕およびガスケット40の交換の少なくとも一方が必要であると判断する。
【0155】
さらに他の局面では、フランジ締結体における隙間Cgが基準値Cx以上である場合(例えば、条件Z1を満たす場合)、判断部619は、一方のフランジ30、他方のフランジ30の各々のリングジョイント溝310、およびガスケット40のうちの少なくとも1つに異常が発生していると判断する。
【0156】
出力制御部605は、判断部619の判断結果に基づいて、ユーザへのアドバイス情報を出力する。具体的には、出力制御部605は、リングジョイント溝310が修繕を要する状態であるとの判断結果に基づいて、リングジョイント溝310の切削または研磨を推奨する情報をアドバイス情報として出力する。また、出力制御部605は、ガスケット40が交換を要する状態であるとの判断結果に基づいて、ガスケット40の交換を推奨する情報をアドバイス情報として出力する。典型的には、出力制御部605は、上述した<アドバイス情報の表示>で説明した内容をディスプレイ105に表示する。
【0157】
<利点>
本実施の形態によると、作業者の技術的知識および経験によらず、フランジのリングジョイント溝、ガスケット、およびフランジ締結体の状態に応じて、リングジョイント溝の修繕の要否やガスケットの交換の要否が適切に判断される。また、修繕および交換の要否について人によってばらつきも生じない。また、アドバイス情報により、作業者は、フランジおよびガスケットに対する処置を効率的に行なうことができる。
【0158】
<その他の実施の形態>
(1)上述した実施の形態において、コンピュータを機能させて、上述のフローチャートで説明したような制御を実行させるプログラムを提供することもできる。このようなプログラムは、コンピュータに付属するフレキシブルディスク、二次記憶装置、主記憶装置およびメモリカードなどの一時的でないコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、コンピュータに内蔵するハードディスクなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0159】
(2)上述の実施の形態として例示した構成は、本発明の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能である。また、上述した実施の形態において、その他の実施の形態で説明した処理や構成を適宜採用して実施する場合であってもよい。
【0160】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0161】
10 評価装置、20 スキャナ、30 フランジ、40 リングジョイントガスケット、50,60 傷、101 プロセッサ、103 メモリ、105 ディスプレイ、107 入力装置、109 入出力インターフェイス、111 通信インターフェイス、300 フランジ面、310 リングジョイント溝、601 データ取得部、603 評価部、605 出力制御部、611 形状測定部、612 隙間測定部、613 設定部、615 検出部、617 歪み量測定部、619 判断部、1000 評価システム。
【要約】
【課題】フランジ面に形成されたリングジョイント溝の状態に応じて、当該リングジョイント溝の修繕の要否を判断することが可能な評価装置を提供する。
【解決手段】評価装置は、リングジョイント型のフランジの第1の三次元形状データを取得する取得部と、第1の三次元形状データに基づいて、フランジのフランジ面に形成されたリングジョイント溝の状態を評価する評価部とを備える。評価部は、リングジョイント溝の形状に関する複数の第1形状パラメータを測定する形状測定部と、リングジョイント溝の対象領域に生じた傷を検出する検出部と、リングジョイントガスケットが接触するリングジョイント溝の第1接触面の第1歪み量を測定する歪み量測定部と、複数の第1形状パラメータ、傷および第1歪み量のうちの少なくとも1つに基づいて、リングジョイント溝の修繕の要否を判断する判断部とを含む。
【選択図】図19
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17
図18
図19