(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】粒体の定量フィーダ装置
(51)【国際特許分類】
B65G 65/48 20060101AFI20240904BHJP
【FI】
B65G65/48 D
(21)【出願番号】P 2020154995
(22)【出願日】2020-09-15
【審査請求日】2023-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】508038806
【氏名又は名称】株式会社アイシンナノテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100159628
【氏名又は名称】吉田 雅比呂
(72)【発明者】
【氏名】月原 信夫
(72)【発明者】
【氏名】豊田 敦史
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-180563(JP,A)
【文献】特開2016-166081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 65/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒体が投入される有底円筒状の収容容器と、
前記収容容器の底面に設けられ、前記粒体を落下排出させる開口部と、
前記収容容器の軸線に沿って延設され、駆動部に接続されて回転する主軸と、
前記収容容器の内側面に向かって延出するように前記主軸に取り付けられ、前記収容容器の底面に沿って回転することで前記粒体を前記開口部に送り出す定量排出手段と、を有し、
前記定量排出手段は、
前記粒体の平均粒子径よりも小径な円柱形状であって弾性力を有する棒状部材である粒体の定量フィーダ装置。
【請求項2】
粒体が投入される有底円筒状の収容容器と、
前記収容容器の底面に設けられ、前記粒体を落下排出させる開口部と、
前記収容容器の軸線に沿って延設され、駆動部に接続されて回転する主軸と、
前記収容容器の内側面に向かって延出するように前記主軸に取り付けられ、前記収容容器の底面に沿って回転することで前記粒体を前記開口部に送り出す定量排出手段と、を有し、
前記定量排出手段は、
底面が多角形の直角柱形状であって弾性力を有する棒状部材であ
り、
前記収容容器の底面から前記定量排出手段における回転方向の一番前方側に配置された側稜の高さは、前記粒体の平均粒子径よりも小である粒体の定量フィーダ装置。
【請求項3】
請求項1
または2記載の粒体の定量フィーダ装置において、
前記定量排出手段よりも上方に配置され、平面視において前記開口部を覆う仕切り板を有する粒体の定量フィーダ装置。
【請求項4】
請求項
3記載の粒体の定量フィーダ装置において、
前記収容容器の内側面に向かって延出するように前記主軸に取り付けられ、前記仕切り板の上面に沿って回転する第2棒状部材を有する粒体の定量フィーダ装置。
【請求項5】
請求項1乃至
4のいずれか1項記載の粒体の定量フィーダ装置において、
前記定量排出手段は、平面視において前記主軸と収容容器の内側面とを結ぶ仮想線よりも回転方向の反対方向に向かって湾曲した粒体の定量フィーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒体を定量供給するための定量フィーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、粉粒体を微量域で定量供給することは、その粉粒体の物性、例えば、比重、粒子、粒度の相違、水分や静電気に起因する付着性や凝集性に影響を受け、非常に困難な作業となっている。
【0003】
このような課題に対し、出願人は、特許文献1に示すような粉粒体の定量フィーダ装置を開発した。この装置の基本構造は、特許文献1の
図5に示すように、供給手段、供給盤および強制排出盤から構成されている。供給盤および強制排出盤は同じ高さに設置され、供給手段は、それよりも1段高い位置に配されている。供給手段、供給盤および強制排出盤はすべて回転するように構成されている。
【0004】
供給手段4は、複数の羽根体を有しており、各羽根体の先端が供給盤の上面と摺接する。供給盤および強制排出盤は、歯車状の円盤に形成されており、周縁に歯が等間隔に形成されている。供給盤および強制排出盤は、互いの歯が噛み合うように配置されている。
【0005】
有底円筒状の収容容器に投入された粉粒体は、回転する供給手段の各羽根体によって、逐次、回転する供給盤の各計量溝内に送られ、各計量溝が順次粉体で埋められていく。そして、強制排出盤の突歯が、供給盤の計量溝と噛合する位置の下には、排出シュートが設けられており、供給盤の計量溝に埋められた粉粒体が、強制排出盤の突歯により強制的に排出シュートへ排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、定量供給したい原料が、紙粘土のような性状で非常に固着し易いものの場合、例え、定量しやすいように篩などで小豆程度の大きさに粒形を揃えても、特許文献1の定量フィーダ装置では、供給盤の計量溝と強制排出盤の突歯とが噛み合う際に、突歯によって、粒体が捏ねつけられ計量溝にへばりつき詰まってしまう。
【0008】
また同様に、特許文献1の定量フィーダ装置では、粒体が供給手段と収容容器の底面との隙間にも入り込み、供給手段の裏面にへばりついて供給手段が回転できなくなる。
【0009】
このように、従来の粉粒体の定量フィーダ装置では、粘土状の原料を定量供給できないという問題があった。
【0010】
本発明は、このような問題に対してなされたものであり、一定程度の大きさに粒形を揃えておけば、粘土状の原料であっても定量供給できる粉粒体の定量フィーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記のような目的を達成するために、以下のような特徴を有している
【0012】
[1] 粒体が投入される有底円筒状の収容容器と、
前記収容容器の底面に設けられ、前記粒体を落下排出させる開口部と、
前記収容容器の軸線に沿って延設され、駆動部に接続されて回転する主軸と、
前記収容容器の内側面に向かって延出するように前記主軸に取り付けられ、前記収容容器の底面に沿って回転することで前記粒体を前記開口部に送り出す定量排出手段と、を有し、
前記定量排出手段は、弾性力を有する棒状部材である粒体の定量フィーダ装置
【0013】
[2] [1]記載の粒体の定量フィーダ装置において、
前記定量排出手段は、前記粒体の平均粒子径よりも小径な円柱形状である粒体の定量フィーダ装置
【0014】
[3] [1]記載の粒体の定量フィーダ装置において、
前記定量排出手段は、底面が多角形の直角柱形状であって、
前記収容容器の底面から前記定量排出手段における回転方向の一番前方側に配置された側稜の高さは、前記粒状体の平均粒子径よりも小である粒体の定量フィーダ装置
【0015】
[4] [1]乃至[3]のいずれか1項記載の粒体の定量フィーダ装置において、
前記定量排出手段よりも上方に配置され、平面視において前記開口部を覆う仕切り板を有する粒体の定量フィーダ装置
【0016】
[5] [4]記載の粒体の定量フィーダ装置において、
前記収容容器の内側面に向かって延出するように前記主軸に取り付けられ、前記仕切り板の上面に沿って回転する第2棒状部材を有する粒体の定量フィーダ装置
【0017】
[6] [1]乃至[5]のいずれか1項記載の粒体の定量フィーダ装置において、
前記定量排出手段は、平面視において前記主軸と収容容器の内側面とを結ぶ仮想線よりも回転方向の反対方向に向かって湾曲した粒体の定量フィーダ装置。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る粉体の定量フィーダ装置の全体構成を側方から示す断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る粉体の定量フィーダ装置の全体構成を示す平面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る粉体の定量フィーダ装置の定量排出手段の機能を説明する説明図であって、
図3Aは、通常時の定量排出手段による粒体の押出方向を示す説明図、
図3Bは、弾性変形した定量排出手段による粒体の押出方向を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付した図面を参照し、本発明の実施の形態に係る粒体の定量フィーダ装置について説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に係る粒体の定量フィーダ装置の全体構成を示す図である。
図1に示すように、粒体の定量フィーダ装置は、粒体1が投入・収容された円筒形状の収容容器2と、収容容器2から投下された粒体1を定量排出する定量排出部3と、定量排出部3によって押し出された粒体1を排出する排出シュート4とを、上からこの順に備えている。収容容器2、定量排出部3、排出シュート4は、フレーム5に固定されている。
【0021】
フレーム5には、収容容器2と同軸上において上方に突出する主軸6が取り付けられている。主軸6は、図示しない減速機を介して、モータ7(本発明の「駆動部」に相当。)の出力軸に接続され回転(
図2において反時計回り)するように構成されている。
【0022】
粒体1は、紙粘土のような性状で非常に固着し易い。そのため本発明の実施の形態に係る粒体の定量フィーダ装置で定量供給する際にも、あらかじめ篩などで小豆程度の大きさに粒形を揃えておく必要がある。発明を限定する趣旨ではないが、粒形は2~15mm程度が好ましく、本実施形態では目開きが5mmの篩で粒形を平均粒子径3.5mm程度に揃えている。
【0023】
収容容器2は、原料である粒体1が供給される開口21を上側に備えている。収容容器2は、フレーム5の上に取り付けられ、収容容器2の下端縁で囲まれたフレーム5の上面が、粒体1を収容する際には収容容器2の底面51となる。
【0024】
フレーム5には、底面51となる箇所の一部に、フレーム5を高さ方向に貫通する孔52(本発明の開口部に相当)が形成されている。孔52は、
図2において仮想線で示すように、平面視において、長円形状であり収容容器2の内側面に沿って配置されている。
【0025】
図1に示すように、孔52の下には、排出シュート4が配されている。収容容器2に収容された粒体1は、後述する定量排出部3(本発明の「定量排出手段」に相当。)によって強制排出され、孔52を通って、排出シュート4から排出される。
【0026】
定量排出部3は、第1棒状部材31からなる。第1棒状部材31は、半径約2mmの円柱状部材であり、ステンレス鋼(SUS)で形成されて弾性力を有する。
【0027】
第1棒状部材31は、基端側(主軸6側)が曲げ加工されることで略「6の字」形状に形成されており、この曲げられた部分で主軸11に取り付けられ、主軸6の回転に伴い底面51に沿って回転するように構成されている。
【0028】
本実施形態の第1棒状部材31は、
図2に示すように、収容容器2の内側面に向かって延出するとともに、その先端が収容容器2の内側面と接触しないように、該内側面と若干間隔を有する程度の長さに設計されている。
【0029】
収容容器2の下部には、仕切り板8が設けられている。仕切り板8は、第1棒状部材31より上方に配置されている。また、仕切り板8は、
図2に示すように、収容容器2の内側面から主軸11に向かって環状の略扇形に張り出して孔52を覆っている。
【0030】
主軸6には、第2棒状部材32が仕切り板8の上方に配置されて取り付けられている。第2棒状部材32は、第1棒状部材31と同素材同形状であり、主軸6の回転に伴い仕切り板8の上面に沿って回転するように構成されている。第2棒状部材32は、
図2に示すように、主軸6を中心として、第1棒状部材31と点対称となるよう、周方向に位相を180°ずらして取り付けられている。
【0031】
以上説明した本実施形態に係る粒体の定量フィーダ装置では、まず、第1棒状部材31が底面51に沿って回転することで粒体1を押して、孔52を介して排出シュート4から落下排出させる。
【0032】
このとき、第1棒状部材31は、円柱形状であるため、回転方向の一番前方側に位置することになる側面の高さと、第1棒状部材31の中心の高さとが一致する。そして、第1棒状部材31の半径は、粒体1の平均粒子径より小である。
【0033】
よって、第1棒状部材31は、原則として粒体1の重心よりも下側を押すことができるため、粒体1を底面51に押し付けてこびり付かせることを防止することができる。
【0034】
また、
図4に示すように、第1棒状部材31は弾性力を有するため、ある粒体1が底面51に若干くっついて回転方向に移動させにくい場合に、自身の先端を回転方向の反対側に湾曲するように撓らせて、その粒体1を主軸6から離れる方向に押すことで底面51から剥がすことができる。つまり、一定方向に押しにくくなった粒体1であっても、押す方向を変化させることで排出させることができる。
【0035】
また、孔52を覆う仕切り板8を第1棒状部材31より上方に設けることで、孔52の真上にある粒体1が重力によって孔52を介して排出シュート4から排出されることを防止することで、排出される粒体1を第1棒状部材31で押し出す分だけに限定することで、供給量を安定化させることができる。
【0036】
また、仕切り板8の上方に第2棒状部材32を設けることで、仕切り板8の表面に積もる粒体1を底面51に落として全体を攪拌することができる。
【0037】
以下、変形例について説明する。
【0038】
本実施形態では、収容容器2とフレーム5とが直接固定されていたが、この間に高さ調整リングを設けてもよい。この構成によれば、粒体1のサイズに応じて、仕切り板8の高さを調整することができる。この場合、同様に、主軸6の第1棒状部材31と第2棒状部材32との間に高さ調整リングを設けてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、収容容器2から仕切り板8が延設されていたが、本発明はこれに限られず、収容容器2とフレーム5とで仕切り板8を挟持してもよく、フレーム5側に設けてもよい。
【0040】
また、本実施形態では、孔52として長円形状のものを例に説明したが、形状は、これに限られず、円形、矩形等であってもよく、開閉自在なシャッターをさらに設けることで、供給量を調整可能とすることもできる。
【0041】
本実施形態では、第1棒状部材31及び第2棒状部材32として円柱形状のものを例に説明したが、本発明はこれに限られず、多角柱状(特に、多角形の直角柱形状)であってもよい。この場合であっても、粒体1の重心(平均半径)よりも下方側を押すことが好ましいため、収容容器2の底面51から第1棒状部材の回転方向の一番前方側に配置された側稜の高さが、前記粒状体の平均粒子径よりも小であることが好ましい。また、粒体1の重心(平均半径)よりも下方側を押すことができればよいため、粒体1の粒形と、第1棒状部材31及び第2棒状部材32の太さとは、この関係をみたす範囲で、適宜、設計することができる。
【0042】
また、第1棒状部材31及び第2棒状部材32は、主軸6から収容容器2の内側面まで直線状であるものを例に説明したが、本発明はこれに限られず、平面視において主軸11と収容容器2の内側面とを結ぶ仮想線よりも回転方向の反対方向に向かって湾曲してもよい。
【0043】
また、第1棒状部材31及び第2棒状部材32は、複数あってもよく、例えば、第1棒状部材31を周方向に45°ずつ位相をずらして4本設けることで、供給量及び供給速度を調整することもできる。
【0044】
また、本実施形態では、ステンレス鋼(SUS)製の第1棒状部材31及び第2棒状部材32を例に説明したが、第1棒状部材31及び第2棒状部材32は、弾性力を有するものであれば、どのような素材でもよく樹脂製であってもよい。
【0045】
また、本実施形態の第1棒状部材31は、収容容器2の内側面の近傍まで延びるものを例に説明したが、本発明はこれに限られず、平面視で孔52の内側を通過する長さであれば足りる。さらに、第1棒状部材31の長さを、孔52の内側を通過する長さ以上、収容容器2の内側面未満で調整することで、供給量を調整することができる。第1棒状部材31の長さ調整は、長さの異なる第1棒状部材31を複数あらかじめ準備してもよく、二重筒形状にして伸縮可能にしてもよい。
【0046】
なお、仕切り板8は、環状の略扇形に限られず、孔52の少なくとも一部を覆う形状であれば足り、設けずに省略することもできる。
【0047】
なお、本明細書において、平均粒子径(重量平均粒子径)は、ロータップ試験篩振とう機及び標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いて、ペリーズ・ケミカル・エンジニアーズ・ハンドブック第6版(マックグローヒル・ブック・カンパニー、1984、21頁)に記載の方法で測定されるものである。
【符号の説明】
【0048】
1 粒体
2 収容容器
3 定量排出手段
31 第1棒状部材(棒状部材)
32 第2棒状部材
51 底面
52 孔(開口部)
6 主軸
8 仕切り板