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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】留置針組立体
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20240904BHJP
   A61M 5/158 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
A61M25/06 512
A61M5/158 500
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021530617
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2020025585
(87)【国際公開番号】W WO2021006104
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2019125777
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】八島 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】中川 大輔
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第02/004060(WO,A1)
【文献】特開2007-296022(JP,A)
【文献】特開2014-180412(JP,A)
【文献】特開2018-157890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
A61M 5/158
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の外針と、
前記外針の基端部が固定される外針基と、
前記外針および前記外針基内に挿入される内針と、
前記内針の基端部が固定される内針基と、
前記外針基を着脱自在に保持すると共に前記内針基を前記内針の軸方向に移動可能に保持する筐体と、
前記筐体において前記内針基の移動を規制する規制位置と前記内針基の移動の規制を解除する解除位置の間を移動可能に配置されるスイッチ部材と、
前記外針および前記内針を覆うように配置され、前記スイッチ部材の一部と係合することで前記スイッチ部材の前記規制位置から前記解除位置への移動を規制する係合部を有するプロテクタと、を備え、
前記係合部は、前記プロテクタの軸方向の移動によってスイッチ部材の係合凹部と係合する前記内針の軸方向に連続するもしくは前記内針の軸方向に突出する突起、または前記プロテクタの軸方向の移動によってスイッチ部材の突起と係合する前記内針の軸方向に連続するもしくは前記内針の軸方向に窪む凹部から構成されることを特徴とする留置針組立体。
【請求項2】
請求項1に記載の留置針組立体において、
前記スイッチ部材は、前記内針の軸方向と交差する方向に移動することで前記規制位置から前記解除位置に移動するように配置されることを特徴とする留置針組立体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の留置針組立体において、
前記スイッチ部材は、前記筐体から露出すると共に前記プロテクタに覆われる露出部を有し、
前記露出部は、前記内針の先端側の頂面が前記内針の先端側に向けて漸次前記筐体に近接する傾斜面を有する形状に構成されることを特徴とする留置針組立体。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の留置針組立体において、
前記プロテクタは、前記外針基と当接することで自身の傾きを低減する傾き低減部を有することを特徴とする留置針組立体。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の留置針組立体において、
前記筐体および前記スイッチ部材の一方は、一側係止部を有し、
前記筐体および前記スイッチ部材の他方は、前記一側係止部に係止する他側係止部を有し、
前記一側係止部は、前記スイッチ部材が前記規制位置にある場合に前記他側係止部が係止する位置に設けられることを特徴とする留置針組立体。
【請求項6】
請求項5に記載の留置針組立体において、
前記一側係止部は、前記スイッチ部材が前記規制位置にある場合に前記他側係止部が係止する位置、および前記スイッチ部材が前記解除位置にある場合に前記他側係止部が係止する位置にそれぞれ設けられることを特徴とする留置針組立体。
【請求項7】
請求項5または6に記載の留置針組立体において、
前記一側係止部または前記他側係止部は、前記スイッチ部材が前記規制位置から前記解除位置に向けて移動する場合の方が、前記規制位置から前記解除位置の反対側に向けて移動する場合よりも係止が外れやすい形状に構成されることを特徴とする留置針組立体。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の留置針組立体において、
前記スイッチ部材の前記規制位置から前記解除位置への移動に伴って弾性変形し、前記スイッチ部材を前記規制位置に向けて付勢する弾性部材を備えることを特徴とする留置針組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管等に穿刺されて輸液ライン等との接続に用いられる留置針を備える留置針組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、予め外針(カテーテル)に内針を挿入しておき、この内針に案内させて外針を生体の血管内等に挿入した後に内針を抜去し、留置された外針に輸液ライン等を接続するようにした留置針が知られている。近年では特に、抜去後の内針に触れることによるウィルス感染等を防止すべく、抜去後にコイルバネ等によって筐体内に内針を収容することを可能にした留置針組立体が普及している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような留置針では、外針の先端から突出させた内針の尖った先端を生体に穿刺して血管等の内部に到達させた後に外針および外針基を内針に沿ってさらに押し進めることで、外針の先端を血管等の内部に奥深く挿入するようになっている。従って、このような留置針は、使用前の状態において内針および外針が突出しているため、これらを覆って保護するプロテクタ(カバー)を一般に備えている。通常、このプロテクタは、使用者が内針を筐体内に収容する際に操作されるスイッチ部材も覆うようになっており、プロテクタを装着した状態ではスイッチ部材の操作ができないようになっている。これにより、例えば輸送中や保管中にスイッチ部材が何かに触れて動作し、使用前に内針が筐体内に収容されてしまうことで留置針組立体が使用不能になるのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-296022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の留置針組立体は、プロテクタがスイッチ部材を単に覆っているだけであり、スイッチ部材は常に動作可能な状態であるという問題があった。このため、スイッチ部材に触れなくても衝撃や振動等によってスイッチ部材が動作する可能性があり、留置針組立体の取り扱いに注意を要する場合があった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑み、取り扱いの容易な留置針組立体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る留置針組立体は、管状の外針と、前記外針の基端部が固定される外針基と、前記外針および前記外針基内に挿入される内針と、前記内針の基端部が固定される内針基と、前記外針基を着脱自在に保持すると共に前記内針基を前記内針の軸方向に移動可能に保持する筐体と、前記筐体において前記内針基の移動を規制する規制位置と前記内針基の移動の規制を解除する解除位置の間を移動可能に配置されるスイッチ部材と、前記外針および前記内針を覆うように配置され、前記スイッチ部材の一部と係合することで前記スイッチ部材の前記規制位置から前記解除位置への移動を規制する係合部を有するプロテクタと、を備え、前記係合部は、前記プロテクタの軸方向の移動によってスイッチ部材の係合凹部と係合する前記内針の軸方向に連続するもしくは前記内針の軸方向に突出する突起、または前記プロテクタの軸方向の移動によってスイッチ部材の突起と係合する前記内針の軸方向に連続するもしくは前記内針の軸方向に窪む凹部から構成されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、係合部をスイッチ部材と係合させることで、プロテクタを装着している状態ではスイッチ部材が動作しないようにすることができる。これにより、留置針組立体の取り扱いを容易にすることができる。
【0009】
また、本発明において、前記スイッチ部材は、前記内針の軸方向と交差する方向に移動することで前記規制位置から前記解除位置に移動するように配置され、前記係合部は、前記内針の軸方向に連続するもしくは前記内針の軸方向に突出する突起、または前記内針の軸方向に連続するもしくは前記内針の軸方向に窪む凹部から構成されることが好ましい。
【0010】
これによれば、プロテクタを内針の軸方向に移動させて筐体に装着するだけで、容易に係合部をスイッチ部材に係合させることができる。また、係合部をプロテクタの取り外し時のガイドとして機能させ、留置針組立体の使用時にプロテクタをスムーズに取り外すことができる。
【0011】
また、本発明において、前記スイッチ部材は、前記筐体から露出すると共に前記プロテクタに覆われる露出部を有し、前記露出部は、前記内針の先端側の頂面が前記内針の先端側に向けて漸次前記筐体に近接する傾斜面を有する形状に構成されることが好ましい。
【0012】
これによれば、留置針組立体の使用時にプロテクタを取り外す際に、プロテクタの開口縁によってスイッチ部材の露出部が押圧され、スイッチ部材が動作するのを防止することができる。
【0013】
また、本発明において、前記プロテクタは、前記外針基と当接することで自身の傾きを低減する傾き低減部を有することが好ましい。
【0014】
これによれば、傾き低減部が外針基に当接することによってプロテクタの傾きを低減することが可能となるため、筐体の形状、特に外針基を保持する部分の形状の自由度が増し、筐体を操作性に優れた形状とすることができる。
【0015】
また、本発明において、前記筐体および前記スイッチ部材の一方は、一側係止部を有し、前記筐体および前記スイッチ部材の他方は、前記一側係止部に係止する他側係止部を有し、前記一側係止部は、前記スイッチ部材が前記規制位置にある場合に前記他側係止部が係止する位置に設けられることが好ましい。
【0016】
これによれば、プロテクタの取り外し後もスイッチ部材が容易には動作しないようにすることが可能となるため、留置針組立体1の取り扱いを容易にすることができる。
【0017】
また、本発明において、前記一側係止部は、前記スイッチ部材が前記規制位置にある場合に前記他側係止部が係止する位置、および前記スイッチ部材が前記解除位置にある場合に前記他側係止部が係止する位置にそれぞれ設けられることが好ましい。
【0018】
これによれば、スイッチ部材が解除位置に到達したときにクリック感を生じさせることが可能となるため、スイッチ部材が解除位置に到達したことを使用者に指先の間隔だけで容易に判別させることができる。
【0019】
また、本発明において、前記一側係止部または前記他側係止部は、前記スイッチ部材が前記規制位置から前記解除位置に向けて移動する場合の方が、前記規制位置から前記解除位置の反対側に向けて移動する場合よりも係止が外れやすい形状に構成されることが好ましい。
【0020】
スイッチ部材は規制位置から解除位置の反対側に向けて移動することで筐体から外れる可能性があるが、これによれば、適度なクリック感と適度な押圧力によるスイッチ部材の良好な操作性と、スイッチ部材の確実な抜け止めを両立させることができる。
【0021】
また、本発明において、前記スイッチ部材の前記規制位置から前記解除位置への移動に伴って弾性変形し、前記スイッチ部材を前記規制位置に向けて付勢する弾性部材を備えることが好ましい。
【0022】
これによれば、スイッチ部材がわずかに移動した場合にスイッチ部材を規制位置に押し戻すことが可能となるため、プロテクタの取り外し後のスイッチ部材の動作をより抑制することができる。また、スイッチ部材の移動に対して適度な抵抗を付与することでスイッチ部材の操作感を調整し、操作性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る留置針組立体によれば、取り扱いを容易にすることが可能という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る留置針組立体の一部を分解して示した外観斜視図である。
図2図1におけるI-I線断面図である。
図3】ベース部材の先端側の一部を示した外観斜視図である。
図4】スイッチ部材の外観斜視図である。
図5図2のII-II線断面図である。
図6】内針が筐体内に収容された状態を示した断面図である。
図7】スイッチ部材の変形例を示した図である。
図8】プロテクタの外観および内部を示した図である。
図9】プロテクタ80の変形例を示した図である。
図10】内針基の変形例を示した図である。
図11】内針基の変形例を示した図である。
図12】筐体の変形例を示した図である。
図13】筐体の変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る留置針組立体1の一部を分解して示した外観斜視図である。また、図2A図1におけるI-I線断面図であり、図2B図2Aの一部を拡大して示した断面図である。
【0026】
これらの図に示されるように、留置針組立体1は、生体の血管等に挿入されて留置される外針(カテーテル)10および外針10の基端部に固定された外針基(カテーテルハブ)20と、外針10および外針基20内に挿入された内針30と、内針30の基端部に固定された内針基40と、外針基20を一端に保持すると共に内針基40を内針30の軸方向に移動可能に収容する筐体50と、内針基40の外周を覆うように筐体50内に配置された付勢部材60と、内針30の軸方向に垂直な方向に移動可能に筐体50に配置されたスイッチ部材70と、を備えている。
【0027】
留置針組立体1はまた、外針10、外針基20、内針30、筐体50の一部およびスイッチ部材70を覆うように筐体50に装着され、使用時に取り外されるプロテクタ80を備えている。なお、図1および図2Bは、プロテクタ80を取り外した状態を示しており、図2Aは、プロテクタ80を筐体50に装着した状態を示している。
【0028】
留置針組立体1は、内針30の軸方向を基準として構成されており、留置針組立体1の全体ならびに外針10、外針基20、内針30、内針基40、筐体50およびプロテクタ80の軸方向は内針30の軸方向と略一致しており、周方向についても同様である。従って、以下の説明では、図2AおよびBにおける左右方向を軸方向とし、左側を先端側、右側を基端側としている。また、留置針組立体1は通常、図1ならびに図2AおよびBにおける下側を生体側、すなわち内針30および外針10の穿刺対象側とする姿勢で使用される。
【0029】
外針10は、先端がテーパ状に形成された管状の部材であり、柔軟性を有する適宜の樹脂から構成されている。外針基20は、外針10に輸液ラインやシリンジ等を接続するための略段付円錐台状の外形状を有する筒状の部材であり、所定の規格のルアーコネクタを備えている。外針基20の先端部には内外径を縮小した外針固定部21が設けられており、外針10の基端部はこの外針固定部21において接着剤等により固定されている。
【0030】
外針10および外針基20は、透明または半透明の樹脂から構成されており、医師や看護師等の使用者はいわゆる逆血(フラッシュバック)を外針10および外針基20において確認することが可能となっている。なお、外針基20に適宜の止血弁を設け、筐体50から外針基20を取り外した後に、内部に貯留した血液が漏れ出さないようにしてもよい。
【0031】
内針30は、先端に刃面が形成された管状の部材であり、外針10よりも剛性の高い適宜の金属または樹脂等から構成されている。内針30の先端形状は、特に限定されるものではなく、例えばバックカットやランセット加工等を施すことによって、穿刺抵抗を低減するようにしてもよい。内針30の先端近傍には、逆血を内針30と外針10の間隙に流して可視化するための側孔(サイドホール)31が設けられている。
【0032】
すなわち、血管内から内針30内に流入した逆血の一部は側孔31を通じて内針30と外針10の間隙に流入し、透明または半透明の外針10を透して視認されるようになっている。なお、この内針30と外針10の間を通過した血液は、外針基20の内部に貯留されることとなる。この外針基20内に貯留された血液も、透明または半透明の外針基20を透して視認可能である。
【0033】
内針基40は、内針30を支持するための略段付円筒状の部材であり、先端側の小径部41および基端側の大径部42から構成されている。小径部41の基端側の外周面には、内針基40と筐体50の相対的な回転を防止する回り止め突起41aが2か所に設けられている。また、小径部41の先端側には内径を縮小した内針固定部41bが設けられている。
【0034】
小径部41内に挿入された内針30の基端部は、この内針固定部41bにおいて接着剤等により固定されている。内針30の内部は内針基40の内部と連通しており、内針30の内部を通過した血液は、内針基40の内部に流れ込むこととなる。内針基40は、筐体50と共に透明または半透明の樹脂から構成されており、使用者は内針基40においても逆血を確認することが可能となっている。
【0035】
内針基40の大径部42における基端側の開口は、通気性を有するが通液性を有さないフィルタ43によって閉塞されている。これにより内針基40の内部空間は、内針30を通過した血液を貯留するフラッシュチャンバを構成している。フィルタ43は、多孔質体から構成されており、内針基40内の空気を適宜に排出することで血液の内針基40内への流入を促進すると共に、内針基40内に貯留された血液が外部に漏出するのを防止する。フィルタ43は、基端側から大径部42内に挿入され、大径部42の内側に設けられた位置決め凸部42aに当接することで基端から少し入り込んだ位置に位置決めされている。
【0036】
大径部42のフィルタ43よりも基端側の内周面は、フィルタ43の内針基40への取り付け(内針基40内への挿入)を容易にすべく、基端側に向けてテーパ状に拡径されている。また、このフィルタ43よりも基端側の内周面は、筐体50の一部を収容する収容部44を構成している。収容部44の詳細については、後述する。また、大径部42の基端側端部の外周面には付勢部材60の付勢力を受ける鍔状の受力部45が設けられている。
【0037】
筐体50は、留置針組立体1の各部を保持すると共に、使用者によって把持されるものである。筐体50は、ベース部材50aおよび内針収容部材50bを組み合わせることで先端側のみが開口した有底筒状に構成されている。また、筐体50の軸方向長さは、外針10から抜去した内針30の全体を内針基40と共に収容可能な長さとなっている。
【0038】
ベース部材50aは、中空の略四角柱状の把持部51と、把持部51の基端側から延出する略円筒状の接続部52と、把持部51の先端側から延出する略漏斗状の延出部53と、から構成され、軸方向に貫通する円形断面の貫通孔54を有する筒状の部材である。ベース部材50aは、透明または半透明の樹脂から構成されており、上述のように内針基40内の逆血を外部から視認可能となっている。
【0039】
把持部51は、使用者が把持するための部分である。把持部51は、右手で把持する場合に左側面51aに親指を配置し、右側面51bに中指を配置する持ち方(いわゆる、横持ち)を想定した外形状に構成されている。具体的には、左側面51aおよび右側面51bは、内針30の穿刺時に力を加えやすいように、先端側に向けて互いに漸次離隔する凹面状にそれぞれ構成されている。また、左側面51aおよび右側面51bには、複数の滑り止め突起51cが設けられている。
【0040】
把持部51の上面51dの先端側には、略四角柱状の凹部51eおよび凹部51eの底面51fと把持部51の下面51gの間で貫通するスリット51hが設けられている。後述するスイッチ部材70は、この凹部51eおよびスリット51h内に挿入されている。また、上面51dの凹部51eよりも基端側の領域は、先端側に向けて漸次下面51gから離隔する凹面状に構成されている。これにより留置針組立体1は、上面51dに親指を配置し、下面51gに人差し指を配置する持ち方(いわゆる、縦持ち)も許容するものとなっている。
【0041】
また、把持部51をいわゆる横持ちおよび縦持ちのいずれにも対応可能な略四角柱状に構成することで、筐体50を机上等に置く際の転がりを防止することができる。これにより、筐体50に転がり防止用の突起等を別途設ける必要がないため、筐体50をより持ちやすく、使い勝手の良い形状に構成することが可能となる。本実施形態では特に、把持部51の左右側面51a、51bの先端側を外側に張り出すように構成することで、上述のように穿刺時の操作性を向上させるだけでなく、転がり防止機能も向上させている。
【0042】
把持部51の先端側の角部には、丸み51iが設けられている。また、把持部51の基端側端部は、基端側に向けて漸次外形状が滑らかに張り出しつつ四角形から円形に変化するように構成されており、内針収容部材50bと組み合わせた場合に把持部51と内針収容部材50bの端面同士が密着するようになっている。また、把持部51の基端側端部の外径は、内針収容部材50bの先端側端部の外径と略同一となっている。すなわち、把持部51の基端側端部は、内針収容部材50bとの間に段差が生じないように構成されており、これにより筐体50は使用時に持ちやすい形状となっている。
【0043】
接続部52は、内針収容部材50b内に挿入されて嵌合する部分である。接続部52の外径は内針収容部材50bの内径よりもやや小さく設定されている。また、接続部52の中間部のやや先端寄りの位置には、周方向に連続する抜け止め突起52aが設けられている。
【0044】
延出部53は、内部に内針基40の一部を収容して保持すると共に、先端部に嵌合された外針基20を着脱自在に保持する部分である。図1ならびに図2AおよびBに示されるように、延出部53は、把持部51に繋がる略円筒状の第1の外径部53aと、第1の外径部53aから先端側に向けて漸次縮径する略中空円錐台状の縮径部53bと、縮径部53bから先端側に延びる略円筒状の第2の外径部53cと、から構成されている。また、延出部53は、図の下側、すなわち使用時に内針30および外針10の穿刺対象側となる外周面にストッパ53dが設けられている。
【0045】
第1の外径部53aは、第2の外径部53cよりも大径となっており、内部に内針基40の大径部42および付勢部材60の一部が収容されている。このような第1の外径部53aを設けることで、内針基40をより先端側に配置することができる。これにより、把持部51を把持する手や指に邪魔されることなく内針基40内の逆血を確認することが可能となる。
【0046】
縮径部53bは、第1の外径部53aの外周面と第2の外径部53cの外周面を滑らかに連続させる部分である。このような縮径部53bを設けることで、外針10を内針30に沿って押し進めるために外針基20を押圧する指を配置しやすくすると共に、この指を動かす際の引っ掛かりをなくすことができる。
【0047】
第2の外径部53cは、外針基20の開口(例えば、ルアーテーパ)内に挿入されて嵌合可能な外径に設定されている。また、ストッパ53dを別途設けたことにより、第2の外径部53cは、外針基20の開口内に挿入されない部分(非挿入部分)も略同一の外径に構成されている。従って、第2の外径部53cの非挿入部分と外針基20の開口側端面22との外径差Dは、従来の段付円筒を利用した場合と比較して大きなものとなっている。すなわち、外針基20の開口側端面22は、指先で押圧しやすい状態となっている。
【0048】
本実施形態ではさらに、内針基40をスイッチ部材70の規制部73よりも先端側に配置することで、第2の外径部53cの軸方向長さが指の腹を配置するのに適切な長さとなるように設定している。これにより、外針基20をより押圧しやすくすることが可能となる。
【0049】
図3は、ベース部材50aの先端側の一部を示した外観斜視図であり、下側から見た場合を示している。同図に示されるように、ストッパ53dは、第2の外径部53cおよび縮径部53bの外周面から周方向において部分的に遠心方向に突出し、軸方向に連続するリブ状に構成されている。また、ストッパ53dは、第2の外径部53cおよび縮径部53bの下側、すなわち使用時に内針30および外針10の穿刺対象側となる部分の最下部近傍の2か所に設けられている。
【0050】
なお、本実施形態のストッパ53dは、頂面が第1の外径部53aの外周面と面一で連続するように構成されている。すなわち、延出部53の縮径部53b、第2の外径部53cおよびストッパ53dは、第1の外径部53aと同一外径の円筒の一部を除去することによって構成されていると言うことも可能である。
【0051】
外針基20は、図2Bに示されるように、外針基20の開口側端面22をストッパ53dの先端側端面53eに当接させることで、軸方向における所定の位置に配置される。このとき、外針基20の開口側端面22は、下側の一部がストッパ53dによって隠されるものの大部分が露出していることとなる。
【0052】
このように、ストッパ53dを延出部53の周方向において部分的に突出させるようにすることで、外針基20の開口側端面22における押圧可能な領域を従来以上に拡大することができる。特に、ストッパ53dを軸方向に連続するリブ状に構成することで、ストッパ53dを補強部材として活用することが可能となるため、第1の外径部53aの非挿入分における外径を拡大することなく、延出部53に必要な強度および剛性を確保することが可能となっている。また、通常の使用状態では指先が配置されることのない下側部分においてのみストッパ53dを突出させるようにすることで、延出部53に必要な強度および剛性を確保しながらも、指先による押圧操作がストッパ53dによって阻害されないようにすることができる。
【0053】
また、リブ状のストッパ53dを延出部53の周方向において適宜に離隔させた複数個所(本実施形態では、2か所)に分けて設けることで、ベース部材50aの成形性と外針基20の安定的な位置決めを両立させることができる。すなわち、ストッパ53dを比較的幅狭に構成してヒケやボイド等の成形不良を防止しながらも、周方向の複数個所で外針基20と当接させることで、外針基20の傾きを抑制し、外針基20を安定的に保持することが可能となる。
【0054】
貫通孔54は、内針基40の小径部41の外径よりやや大きい内径の第1の内径部54aと、内針基40の受力部45の外径よりやや大きい内径の第2の内径部54bと、から構成されている。第1の内径部54aは、延出部53の先端部に設けられ、貫通孔54のそれ以外の部分は第2の内径部54bとなっている。また、第1の内径部54aの基端側には、内針基40の回り止め突起41aが収容される回り止め溝54cが2か所に設けられている。
【0055】
内針基40は、貫通孔54の先端側において小径部41の先端が延出部53から飛び出した状態で配置されている。従って内針基40は、小径部41を第1の内径部54aに支持されると共に、受力部45を第2の内径部54bに支持されており、がたつきの少ない状態でベース部材50aの内部に収容されている。また、この状態では回り止め突起41aが回り止め溝54c内に収容されているため、内針基40は、ベース部材50aに対して相対的に回転しないようになっている。
【0056】
内針収容部材50bは、基端側に向けてわずかに外径が縮径すると共に、基端側に底部55を有する有底円筒状の部材である。内針収容部材50bの内周面には、ベース部材50aの接続部52の抜け止め突起52aに対応する位置に周方向に連続する抜け止め溝56が設けられている。この抜け止め溝56と抜け止め突起52aが係合することで、ベース部材50aと内針収容部材50bは容易に分離しないようになっている。
【0057】
また、内針収容部材50bは、適宜の樹脂から構成されており、樹脂成形時の金型構造上、底部55は内側に突出する(窪んだ)形状となっている。すなわち、底部55は、射出成形のゲート(金型のキャビティ内へ流入する樹脂の入口)が配置される部位であり、厚みが略一定となるように窪ませることで、ヒケやボイド等の発生を防止しつつ、鋭利な切断跡となる場合のあるゲート跡が外側に突出しないようになっている。ゲートを底部55に配置することで、キャビティ内における樹脂の流動をスムーズにし、成形性を向上させることができる。また、留置針組立体1の使用者や穿刺対象の生体に触れる可能性の高い外周面にゲート跡の突出防止用の窪み等を設ける必要がないため、内針収容部材50bを持ちやすい形状に構成することができる。
【0058】
付勢部材60は、抜去後の内針30を基端側に向けて付勢して筐体内に引き込むためのものであり、コイルバネから構成されている。付勢部材60は、貫通孔54の第2の内径部54b内において内針基40の大径部42が挿通された状態で配置されている。従って、付勢部材60は、第2の内径部54bの先端側の端面(第1の内径部54aとの段差部)と内針基40の受力部45の間で圧縮されることで付勢力を発生し、内針基40を基端側に向けて付勢する。
【0059】
なお、第2の内径部54bの先端側は、先端側に向けて漸次縮径するように構成されている。このようにすることで、組立時に付勢部材60を第2の内径部54bに嵌合させてベース部材50aに保持させることが可能となるため、組立性を向上させることができる。
【0060】
スイッチ部材70は、通常は付勢部材60の付勢力による内針30および内針基40の移動を規制し、使用者の押圧操作によって移動することでこの規制を解除するためのものである。図4は、スイッチ部材70の外観斜視図である。同図に示されるように、スイッチ部材70は、略四角錐台状の露出部71と、露出部71から下方に延びる2つの略平板状のガイド部72と、2つのガイド部72を繋ぐように設けられた略U字状の規制部73と、から構成されている。
【0061】
露出部71は、筐体50の把持部51から露出して使用者に押圧される部分である。露出部71の頂面71aは、把持部51に配置された場合に先端側となる部分が先端側に向けて漸次低くなる(すなわち、漸次把持部51に近接する)ように傾斜した傾斜面71bとなっている。また、露出部71の把持部51に配置された場合に両側面となる部分には、プロテクタ80の一部と係合する溝状の係合凹部71cがそれぞれ設けられている。
【0062】
ガイド部72は、把持部51に配置された場合に凹部51e内に収容される部分であり、凹部51eの内側面に対して摺動するように設けられている。ガイド部72はまた、使用者の押圧力に対する補強部材としても機能している。すなわち、ガイド部72を設けることにより規制部73の曲げ強度が高められるため、露出部71に過大な力が加えられた場合にもスイッチ部材70が容易に破損しないようにすることができる。
【0063】
規制部73は、把持部51に配置された場合にスリット51h内に挿入され、内針基40の基端側端面と当接する部分である。規制部73の把持部51に配置された場合に両側面となる部分には、略V字状断面の第1の係止溝73aおよび第2の係止溝73b(本発明の一側係止部)がそれぞれ設けられている。規制部73の各角部には比較的大きな面取りが設けられており、組立時におけるスリット51h内の角部への引っ掛かりや、作動時における内針基40の角部への引っ掛かり等が生じないようになっている。
【0064】
スイッチ部材70は、内針30および内針基40の移動を規制する規制位置と、内針30および内針基40の移動の規制を解除する解除位置の間を移動可能に把持部51に配置される。図1ならびに図2AおよびBは、スイッチ部材70が規制位置にある場合を示している。これらの図に示されるように、規制位置においては、露出部71の略全体が把持部51から露出し、傾斜面71bが先端側に位置し、係合凹部71cが軸方向に連続する状態となる。また、規制部73の下側部分が内針基40の基端側端面と当接した状態となる。
【0065】
図5AおよびBは、図2AのII-II線断面図である。図5Aは、プロテクタ80が装着された状態でスイッチ部材70が規制位置にある場合を示している。また、図5Bは、プロテクタ80を取り外した状態でスイッチ部材70を解除位置に移動させた場合を示している。
【0066】
図5Aに示されるように、プロテクタ80は内側に第1の係合突起82(本発明の係合部)を備えており、プロテクタ80を筐体50に装着することで、この第1の係合突起82とスイッチ部材70の係合凹部71cが係合するようになっている。すなわち、プロテクタ80が装着された状態では、スイッチ部材70は解除位置への移動が不能となり、スイッチ部材70の動作が確実に防止されるようになっている。
【0067】
また、スリット51hの内側面には略V字状断面の係止突起51j(本発明の他側係止部)が設けられており、スイッチ部材70が規制位置にある場合には、この係止突起51jが第1の係止溝73a内に収容されて係止するようになっている。従って、スイッチ部材70は、プロテクタ80を取り外した後も容易には移動しないようになっている。これにより、穿刺前や穿刺中に使用者の指等が露出部71に触れたとしても、スイッチ部材70が動作する可能性を低減することができるため、留置針組立体1の取り扱いを容易にすることが可能となる。
【0068】
図5Bに示されるように、使用者が露出部71を押圧することでスイッチ部材70は、下方の解除位置に向けて移動する。このとき係止突起51jは、規制部73または把持部51が弾性変形することで第1の係止溝73aから脱出し、スイッチ部材70が解除位置に到達する際に弾性変形の復元力によって第2の係止溝73b内に収容され、これに係止することとなる。
【0069】
このように、係止突起51jと共に第1の係止溝73aおよび第2の係止溝73bを設けることで、プロテクタ80の取り外し後もスイッチ部材70が容易に動作しないようにするだけでなく、スイッチ部材70が押圧操作される際に使用者にクリック感を感じさせることが可能となる。
【0070】
すなわち、使用者は指先の感触でスイッチ部材70が解除位置に移動したことを知ることが可能であり、留置針組立体1の操作性が向上することとなる。一般に、付勢部材60の伸長や内針30および内針基40の移動を使用者が指先の感触で知ることは難しく、従来の留置針組立体では、スイッチ部材が確実に解除位置に到達したか否かを使用者は判別しにくいという問題があったが、留置針組立体1によれば、スイッチ部材70が確実に解除位置まで到達したことを、使用者は指先のクリック感で容易に判別することが可能となっている。
【0071】
本実施形態では特に、平板状のガイド部72につながる略U字状の規制部73の2つの腕部の外側面に第1の係止溝73aおよび第2の係止溝73bを設け、係止突起51jが第1の係止溝73aから脱出する際に2つの腕部が互いに近接するように規制部73を無理なく弾性変形させると共に、スリット51hが拡幅するように把持部51を弾性変形させるため、スイッチ部材70のスムーズな移動を阻害することなくクリック感を生じさせることを可能としている。
【0072】
なお、規制部73の形状は、コの字状やV字状等であってもよい。また、第1の係止溝73a、第2の係止溝73bおよび係止突起51jの形状は、特に限定されるものではなく、適宜の形状を採用することができる。また、第1の係止溝73a、第2の係止溝73bおよび係止突起51jは、スイッチ部材70側に突起を設けて把持部51側に溝を設けるようにしてもよいし、スイッチ部材70側に1つの溝または突起を設けて把持部51側に2つの突起または溝を設けるようにしてもよい。
【0073】
図5Bに示されるように、解除位置においては規制部73が内針基40の基端側端面と当接しない状態となる。従って、内針基40は内針30と共に規制部73の内側を通過して筐体50内の基端側に向けて移動し、最終的に内針30が筐体50内に収容された状態となる。
【0074】
図6は、内針30が筐体50内に収容された状態を示した断面図である。同図に示されるように、内針基40は付勢部材60によって内針収容部材50bの底部55に押し付けられた状態となり、内針30の全体が筐体50内に収容される。また、内針収容部材50bの底部55は、一部が内針基40の収容部44内に収容された状態となる。このように底部55を収容部44内に収容させることで、ゲート跡の突出防止のために窪ませた底部55を活用して筐体50内で内針30を安定的に保持し、安全性を高めることが可能となる。また、筐体50の軸方向の全長を短縮することができるため、留置針組立体1をコンパクト化し、操作性を向上させることが可能となる。
【0075】
なお、底部55と収容部44を互いに嵌合させるようにすることで、内針30の再突出をより確実に防止するようにしてもよい。また、フィルタ43を内針基40よりも軟質な材料から構成し、底部55をフィルタ43に衝突させることで、衝撃を吸収するようにしてもよい。また、スイッチ部材70が解除位置にある場合に規制部73がベース部材50aから突出しないように、ベース部材50aおよびスイッチ部材70を構成してもよい。この場合、把持部51の下面51gに指を配置しているときにも、この指にスイッチ部材70の作動が阻害されないようにすることができる。
【0076】
図7AおよびBは、スイッチ部材70の変形例を示した図であり、プロテクタ80を取り外した状態でスイッチ部材70が規制位置にある場合を示している。
【0077】
図7Aは、スイッチ部材70に板バネ状の弾性部材74を追加した例を示している。この例では、弾性部材74は平板状の部材であり、ガイド部72から内側に向けて突出するように設けられている。そして、弾性部材74は、スイッチ部材70の規制位置から解除位置への移動に伴って把持部51の一部(この例では、凹部51eの底面51fの先端側である円弧状の部分)に当接し、弾性変形するようになっている。従って、スイッチ部材70は、この弾性変形した弾性部材74によって規制位置に向けて付勢される。
【0078】
このように弾性部材74を設けることで、スイッチ部材70の移動に対して適度な抵抗を付与すると共に、係止突起51jが第2の係止溝73bと係止する前であれば、スイッチ部材70を規制位置に押し戻すことが可能となる。これにより、プロテクタ80の取り外し後におけるスイッチ部材70の容易な動作を適宜に抑制し、留置針組立体1の取り扱いを容易にすると共に、操作性を向上させることができる。また、スイッチ部材70に良好な操作感を付与することができる。
【0079】
なお、弾性部材74は、スイッチ部材70の移動に伴って変形が弾性変形から塑性変形に移行するように構成されるものであってもよい。また、弾性部材74の形状は、特に限定されるものではなく、適宜に弾性変形することが可能な任意の形状を採用することができる。また、弾性部材74は、把持部51と一体的に設けられるものであってもよく、例えば金属製のコイルバネや板バネ等、スイッチ部材70および把持部51とは別個に設けられるものであってもよい。
【0080】
図7Bは、スイッチ部材70の抜け止め機能を向上させた例を示している。この例では、係止突起51jの突出量(高さ)、ならびに第1の係止溝73aおよび第2の係止溝73bの窪み量(深さ)を増加させると共に、第1の係止溝73aと第2の係止溝73bの間のV字状断面の突起状となった部分の頂上部を切り欠いている。
【0081】
係止突起51jおよび第1の係止溝73aは、スイッチ部材70の規制位置から解除位置への移動を抑制するだけではなく、スイッチ部材70の規制位置から解除位置の反対側(図の上方)への移動も抑制するようになっている。すなわち、係止突起51jおよび第1の係止溝73aは、スイッチ部材70の把持部51からの抜け止め機能も奏している。この抜け止め機能は、係止突起51jの突出量および第1の係止溝73aの窪み量を増やして係止力を高めることで向上可能であるが、単に係止力を高めただけでは、スイッチ部材70を規制位置から解除位置に向けて移動させるのに必要な押圧力も増加することとなるため、スイッチ部材70の操作性が悪化するという問題が生じることとなる。
【0082】
そこで、この例では、第1の係止溝73aを、スイッチ部材70が規制位置から解除位置に向けて移動する場合の方が、規制位置から解除位置の反対側に向けて移動する場合のよりも係止が外れやすい形状に構成している。具体的には、第1の係止溝73aと第2の係止溝73bの間の突起状部分の頂上部を切り欠くことで、スイッチ部材70が規制位置から解除位置に向けて移動し、係止突起51jが第1の係止溝73aから脱出する際の乗り越え高さを低減し、スイッチ部材70を移動させるのに必要な押圧力を減少させている。
【0083】
このようにすることで、スイッチ部材70の抜け止め機能を向上させながらも、操作に必要な押圧力が過度に大きくならないようにすることができる。換言すれば、図7Bに示す例によれば、適度なクリック感と適度な押圧力によるスイッチ部材70の良好な操作性と、スイッチ部材70の確実な抜け止めを両立させることができる。
【0084】
なお、第1の係止溝73aの解除位置側の乗り越え高さを低減するのではなく、係止突起51jまたは第1の係止溝73aにおいて解除位置側の側面と解除位置の反対側の側面の傾斜角度を異ならせるようにしてもよい。また、例えば係止突起51jを図の斜め下方に向けて突出する舌片状に構成する等、スイッチ部材70の移動方向を規制位置から解除位置に向かう方向に規制する適宜のラチェット機構を、把持部51またはスイッチ部材70に設けるようにしてもよい。
【0085】
図1ならびに図2AおよびBに戻って、プロテクタ80は、外針10および内針30を覆うことで、内針30の先端が何かに突き刺さるのを防止すると共に、細管である外針10および内針30が何かに衝突して折損等するのを防止するものである。また、プロテクタ80は、スイッチ部材70の露出部71を覆って露出部71に何かが触れるのを防止するだけでなく、プロテクタ80が筐体に装着された状態ではスイッチ部材70が動作しないように構成されている。
【0086】
プロテクタ80は、先端側に底部81を有する有底円筒の開口側を筐体50の把持部51およびスイッチ部材70の露出部71の形状に合わせて膨出させた形状に構成されている。底部81は、内針収容部材50bの底部55と同様に、内側に突出する(窪んだ)形状に構成され、射出成形のゲートが配置されている。これにより、プロテクタ80の成形性を向上させると共に、プロテクタ80の形状の自由度を高めることが可能となる。プロテクタ80の開口側における外周面の下側には、転がり防止のための平面部80aが設けられている。
【0087】
図8Aはプロテクタ80を開口側から見た外観斜視図であり、図8Bはプロテクタ80の内部を開口側から見た図であり、図8C図8AのIII-III線断面図である。これらの図に示されるように、プロテクタ80の内側面には、スイッチ部材70の露出部71の両側面に対応する位置において軸方向に連続する(延びる)ように設けられた2つの第1の係合突起82と、把持部51の左右側面51a、51bの先端部に対応する位置において軸方向に垂直な方向(図2AおよびBにおける上下方向)に連続する(延びる)ように設けられた2つの第2の係合突起83と、外針基20に対応する位置において外針基20を取り囲むように設けられた8つのリブ状の傾き低減部84と、が設けられている。
【0088】
第1の係合突起82は、上述のようにスイッチ部材70の係合凹部71cと係合するように設けられており、第2の係合突起83は、筐体50の把持部51の左右側面51a、51bの先端側の張り出した部分と係合するように設けられている(図5A参照)。プロテクタ80は、軸方向に沿って開口側を内針30の先端側から筐体50に近接させることで、筐体50に装着される。第1の係合突起82は、軸方向に連続するように設けられているため、プロテクタ80の軸方向の移動によってそのまま係合凹部71cと係合する。
【0089】
第2の係合突起83は、プロテクタ80または把持部51の弾性変形によって把持部51の左右側面51a、51bの張り出し部分を乗り越えた後に、左右側面51a、51bに圧接し、プロテクタ80のがたつきを抑制すると共に、抜け止めとして機能する。なお、プロテクタ80の基端側に向けての移動は、第1の係合突起82の奥側に設けられた垂直面85によって規制されるようになっている。すなわち、プロテクタ80は、筐体50に装着する際に垂直面85を把持部51に当接させることによって軸方向に位置決め可能となっている。
【0090】
第1の係合突起82は、上述のようにスイッチ部材70の動作を規制するものであり、本発明の係合部を構成する。具体的に第1の係合突起82は、係合凹部71cと係合した状態で上側の当接面82aが係合凹部71cの内側面と当接することにより、スイッチ部材70の規制位置から解除位置への移動を規制するように構成されている。
【0091】
プロテクタ80における第1の係合突起82の基端部近傍には、把持部51の上面51dと対向する支持面86が設けられており、この支持面86が把持部51の上面51dと当接することでプロテクタ80の下方(図2AおよびBにおける下方)への移動は規制されている。従って、スイッチ部材70も、係合凹部71cの内側面が第1の係合突起82の当接面82aと当接することで、下方の解除位置に向けての移動が規制されることとなる。
【0092】
すなわち、プロテクタ80が装着された状態では、スイッチ部材70の解除位置への移動が確実に防止されるようになっている。従って、留置針組立体1は、衝撃や振動等が加わったとしても、プロテクタ80が装着されている限りスイッチ部材70が動作することはなく、容易に取り扱うことが可能となっている。
【0093】
なお、上述のように本実施形態では、係止突起51jおよび第1の係止溝73aを設けることによってプロテクタ80を取り外した後もスイッチ部材70は容易に動作しないようになっている。さらに、本実施形態では、スイッチ部材70の先端側に傾斜面71bを設けることで、プロテクタ80を取り外す際に係合凹部71cから第1の係合突起82が外れる際に、プロテクタ80の開口縁によってスイッチ部材70が押圧されにくいようになっている。従って、本実施形態の留置針組立体1は、プロテクタ80の取り外し後もスイッチ部材70が容易に動作しないようになっており、取り扱いがきわめて容易なものとなっている。
【0094】
第1の係合突起82はまた、プロテクタ80の上下方向のがたつきを抑制する機能も奏している。なお、プロテクタ80の左右方向のがたつきは、主に第2の係合突起83によって抑制される。また、第1の係合突起82は軸方向に連続するように設けられているため、プロテクタ80を筐体50から取り外す際のプロテクタ80の移動方向を軸方向に規制するガイドとしても機能するようになっている。このようなガイドを設けることで、プロテクタ80をスムーズに取り外すことが可能となる。
【0095】
また、プロテクタ80とスイッチ部材70を係合させるようにすることで、プロテクタ80と筐体50の係合を、第2の係合突起83と把持部51の左右側面51a、51bとの係合のような簡素な構成のみとすることが可能となる。これにより、筐体50の形状の自由度が増すため、把持部51および延出部53等の各部を操作性に優れた形状とすることができる。
【0096】
さらに、本実施形態では、筐体50に対するプロテクタ80の傾きを外針基20と当接する傾き低減部84によって低減することで、筐体50の形状の自由度をさらに増すことを可能としている。傾き低減部84は、軸方向に連続するリブ状に構成されており、第1の係合突起82および第2の係合突起83よりもさらに奥側の位置において、外針基20を取り囲むように、周方向に均等な間隔で8か所に設けられている。従って、傾き低減部84は、リブ頂面84aが外針基20の外周面と当接することによって、プロテクタ80の上下方向および左右方向の傾きを低減するようになっている。
【0097】
このように、外針基20と当接して傾きを低減する傾き低減部84を設けることで、筐体50に傾き低減用の係合構造を設ける必要がなくなるため、筐体50を操作性に優れた形状とすることができる。特に、外針基20を保持する延出部53の外径を小さくすることが可能となるため、上述のように内針30の穿刺後に指で外針基20を押圧して外針10を押し進める操作を容易にすることができる。
【0098】
なお、傾き低減部84の個数および配置位置は、特に限定されるものではなく、外針基20と当接してプロテクタ80の傾きを低減可能な適宜の個数の傾き低減部84を適宜の位置に配置することができる。また、傾き低減部84の形状は、外針基20と適宜に当接可能な形状であれば特に限定されるものではなく、例えば外針基20に向けて突設された柱状の傾き低減部84や、周方向に連続するリブ状の傾き低減部84を設けるようにしてもよい。
【0099】
図9A~Cは、プロテクタ80の変形例を示した図である。図9Aは、第1の係合突起82を軸方向に突出するように構成した例を示している。この例では、第1の係合突起82は平板状または棒状に構成され、プロテクタ80の内部から基端側に向けて突出するように設けられている。また、スイッチ部材70の露出部71には、軸方向に窪む係合凹部71cが設けられており、プロテクタ80を筐体50に装着することで、第1の係合突起82が係合凹部71c内に挿入されるようになっている。
【0100】
この例においても、スイッチ部材70の規制位置から解除位置への移動は、第1の係合突起82の当接面82aが係合凹部71cの内側面に当接し、第1の係合突起82の下側面82bが把持部51に当接することで規制される。また、第1の係合突起82と係合凹部71cの係合によりプロテクタ80の上下方向のがたつきが抑制されると共に、第1の係合突起82はプロテクタ80の取り外し時のガイドとして機能する。このように、第1の係合突起82は、軸方向に突出するものであってもよく、この場合にも軸方向に連続する第1の係合突起と同様の効果を奏することができる。
【0101】
図9Bは、第1の係合突起82をスイッチ部材70の規制部73において係合するようにした例を示している。この例では、第1の係合突起82は、プロテクタ80の下側の内側面において軸方向に連続するリブ状に設けられている。また、スイッチ部材70の規制部73は、スイッチ部材70が規制位置にある場合に筐体50から突出するように構成されている。そして、この規制部73には、第1の係合突起82に対応する位置において軸方向に連続する溝状の係合凹部71cが設けられており、プロテクタ80を筐体50に装着することで、第1の係合突起82が係合凹部71cと係合するようになっている。
【0102】
この例においても、スイッチ部材70の規制位置から解除位置への移動は、第1の係合突起82の当接面82aが係合凹部71cの底面に当接し、支持面86が把持部51に当接することで規制される。また、第1の係合突起82と係合凹部71cの係合によりプロテクタ80の上下方向のがたつきが抑制され、第1の係合突起82はプロテクタ80の取り外し時のガイドとして機能する。このように、第1の係合突起82は、スイッチ部材70の露出部71において係合するものに限定されず、スイッチ部材70のいずれかの部分と係合するものであればよい。
【0103】
図9Cは、2つの第1の係合突起82の間隔を先端側に向けて漸次狭めるようにした例を示している。このようにすることで、スイッチ部材70の露出部71を2つの第1の係合突起82で挟持することが可能となるため、筐体50の形状を変更することなく、プロテクタ80のがたつきをより少なくすることができる。特に、軸に垂直な方向だけでなく、軸方向のがたつきも少なくすることができるため、留置針組立体1の取り扱いをさらに容易にすることが可能となる。
【0104】
なお、2つの第1の係合突起82の間隔を狭めるのではなく、2つの係合凹部71cの底面間の距離を先端側に向けて漸次拡大することで、がたつきを少なくするようにしてもよい。また、第1の係合突起82の厚さや係合凹部71cの溝の幅を変化させることで、がたつきを少なくするようにしてもよい。
【0105】
その他、図示は省略するが、プロテクタ80側に軸方向に連続するまたは軸方向に窪む凹部を設け、スイッチ部材70側に軸方向に連続するまたは軸方向に突出する突起を設けるようにしてもよい。また、プロテクタ80は、スイッチ部材70の一部と係合するが、スイッチ部材70の露出部71を覆わないものであってもよい。
【0106】
また、プロテクタ80は、スイッチ部材70が規制位置にある場合には筐体50と接触せず、外針基20およびスイッチ部材70のみと接触するものであってもよい。また、プロテクタ80は、透明であってもよいし、不透明であってもよいし、メッシュ状や格子状に構成されるものであってもよい。
【0107】
次に、内針基40および筐体50の変形例について説明する。なお、以下の変形例においては、上述の例と同一の部分については同一の符号を付すと共に、その説明を省略する。
【0108】
図10Aは内針基40の変形例の平面図(上面図)であり、図10Bは内針基40の変形例の側面図であり、図10C図10AのIV-IV線断面図である。この例では、まず小径部41の内針固定部41bにおける外周面の4か所に窪み41cが設けられている。内針固定部41bは、他の部分よりも厚肉となるが、このように、適宜の窪み41cを複数個所に設けることで、内針固定部41bの強度を保ちつつ、射出成型時のヒケやボイド等の発生を防止し、成形性を向上させることができる。なお、この例では、平坦な矩形状の底面を有する窪み41cを設けた場合を示したが、窪み41cの形状はその他の形状であってもよい。また、窪み41cの個数は、限定されるものではない。
【0109】
この例ではまた、小径部41と大径部42の間にテーパ状のテーパ部46が設けられている。そして、大径部42の互いに相反する2か所に、平面状の平面部42bが設けられている。この平面部42bは、大径部42bの一部を軸心と略平行に切り落とすようにして設けられてる。また、2つの平面部42bの間の距離は、小径部41の外径と略一致している。
【0110】
このように、略段付き円筒状の内針基40に平面部42bを設けることで、周方向における方向性を持たせることができるため、自動機による留置針組立体1の組立を容易化し、生産性を向上させることが可能となる。具体的には、例えば平面部42bを把持することで内針基40の周方向の向きを定めることができるため、ベース部材50aに内針基40を挿入する際の回り止め突起41aの位置決めを容易化することが可能となる。
【0111】
また、この例では、受力部45の基端側の角部に丸み45aが設けられている。このように、丸み45aを設けることで、スイッチ部材70への引っ掛かりを防止し、組立性および操作性を向上させることができる。
【0112】
この例の内針固定部41bの内側には、略漏斗状の接着剤収容部41dが先端側に設けられると共に、内針30の外径よりもやや大きい内径の流出防止部41eが基端側に設けられている。内針固定部41bの内側をこのように構成することで、接着剤の基端側への流出(後述するフラッシュチャンバ部47への流出)を防止し、内針30の確実な固定が可能となる。なお、流出防止部41eは、基端側の一部を除いて先端側に向けて僅かに拡径するテーパ状に構成されており、流出防止部41e内にも少量の接着剤が流入するようになっている。
【0113】
また、この例の内針基40の内側における内針固定部41bと収容部44の間には、内針30内を通過した血液を貯留するフラッシュチャンバ部47が先端側に設けられ、フィルタ43が配置されるフィルタ配置部48が基端側に設けられている。フィルタ配置部48の内径は、フラッシュチャンバ部47の内径よりも大きくなっており、フィルタ43は両者の間の段差部49に当接することによって軸方向に位置決めされるようになっている。また、収容部44の内周面はフィルタ配置部48の内周面と滑らかに連続しており、フィルタ43を基端側からスムーズに挿入してフィルタ配置部48に配置することが可能となっている。
【0114】
図11Aは、図10AのIV-IV線断面図であり、図10A~Cに示される内針基40において流出防止部41eとフラッシュチャンバ部47の間に流出防止部41eよりも小径の流通路41fを設けるようにした場合を示している。この流通路41fは、内針30の内径と略同一の内径を有しており、内針固定部41bに固定された内針30内と連通するように設けられている。従って、内針30内を通過した血液は、流通路41fを介してフラッシュチャンバ部47内に流入することとなる。
【0115】
このように、流出防止部41eよりも小径の流通路41fを設けることで、接着剤のフラッシュチャンバ部47への流出をより確実に防止することができる。また、流出防止部41eと流通路41fの間の段差部41gに内針30の基端面を当接させるようにすることで、内針30の軸方向の位置決めを容易化することができる。
【0116】
図11Bは、図10A~Cに示される内針基40に摩擦部90を設けるようにした場合を示した側面図である。この摩擦部90は、受力部45に対して軸方向に隣接する位置において大径部42の外周面に嵌合させたリング状(円環状)の部材から構成されている。このリング状の部材は、例えば合成ゴム等、内針基40を構成する樹脂よりも柔軟なエラストマー(弾性材料)から構成されている。そして、摩擦部90の外径は、受力部45の外径(すなわち、内針基の最大外径)と略同一、または受力部45の外径よりもやや大きく設定されている。すなわち、摩擦部90は、付勢部材60の付勢力によって内針基40が移動する際に、筐体50(ベース部材50aまたは内針収容部材50b)の内周面と接触することで内針基40の移動速度を低減するブレーキとして機能するものである。
【0117】
従来の留置針組立体では、コイルバネ等の付勢力によって内針を筐体内に収容する際に、内針および内針基の移動速度によっては内針に付着または滞留した血液が周囲に飛散する場合があるという問題があった。このため、せっかく内針を筐体内に収容する機構を備えながらも、飛散した血液が使用者等に付着することによりウィルス感染等が生じる危険性があった。
【0118】
図11Bに示される変形例は、このような実情に鑑み、より安全性の高い留置針組立体1を提供しようとするものである。すなわち、筐体50との間で内針基40の他の部分よりも大きな摩擦力を発生させるように構成された摩擦部90を、内針基40における筐体50と接触可能な位置に設けることで、内針基40の移動速度を低減し、内針30からの血液の飛散を防止することができる。
【0119】
摩擦部90の材質は、特に限定されるものではなく、既知の各種材質を採用することができる。また、摩擦部90の形状は、特に限定されるものではなく、例えば軸方向から見た場合に外周面が楕円形状や多角形状等を呈するように摩擦部90を構成するようにしてもよい。また、摩擦部90の筐体50と接触する面(外周面)は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。また、摩擦部90の筐体50と接触する面に突起や凹凸形状等を設け、摩擦部90が筐体50の内周面等に食い込むことによって摩擦力を増大させるようにしてもよい。
【0120】
また、摩擦部90は、内針基40とは別の部材を篏合、係合、接着等により内針基40に固定することで構成されるものであってもよいし、インサート成形によって内針基40と別部材を一体的に形成することで構成されるものであってもよい。また、材質を異ならせるのではなく、内針基40の形状を部分的に変更することによって構成されるものであってもよい。
【0121】
なお、図11Bに示される例では、上述のように柔軟なエラストマーからなるリング状の部材を内針基40の外周面に嵌合させるようにすることで、大幅なコストの増大や生産性の悪化等を招くことなく、摩擦部90を設けることを可能としている。また、摩擦部90を構成するリング状の部材を、付勢部材60と受力部45の間に配置することで、簡素且つ安価な構成でありながらも摩擦部90の位置ずれを防止し、減速機能を確実に発揮させることを可能としている。
【0122】
図12Aは筐体50の変形例の平面図(上面図)であり、図12Bは筐体50の変形例の側面図である。また、図13Aは筐体50の変形例の底面図(下面図)であり、図13B図12AのV-V線断面図である。なお、図13Bでは、ベース部材50と内針収容部材50bを分解して示している。
【0123】
この例では、まず延出部53の第2の外径部53cにおけるストッパ53dよりも先端側の部分が、外針基20のルアーテーパに対応させたテーパ状に構成されている。これにより、外針基20をより安定的に保持することが可能となる。また、スリット51hの上縁の角部に丸み51k、51lが設けられている。これにより、組立時にスイッチ部材70をスリット51hに挿入する際の引っ掛かりを防止し、組立性を向上させることができる。
【0124】
この例ではまた、ベース部材50aの下面51g側に、上面51d側の凹部51eと同様の下側凹部51mを設けられており、ベース部材50aのスリット51hよりも先端側の下側部分の肉厚が低減されている。このようにすることで、ベース部材50aの射出成型時のヒケやボイドの発生を防止し、成形性を向上させることが可能となる。
【0125】
また、この例では、ベース部材50aの貫通孔54の第1の内径部54aにおいて、回り止め溝54cが左右側方の2か所に設けられている。通常、使用者による内針基40内へ逆血の確認は、上方からの視認によって行われるため、このように回り止め溝54cを側方に配置することで、逆血の視認性を向上させることが可能となる。
【0126】
また、第1の内径部54aおよび回り止め溝54cの基端側の角部には、それぞれ面取り54d、54eが設けられている。このような面取り54d、54eを設けることで、内針基40の小径部41を第1の内径部54aに挿入する際の引っ掛かりを防止し、組立性を向上させることが可能となる。
【0127】
さらにこの例では、貫通孔54の第2の内径部54bの先端側の縮径部分を廃止することで、付勢部材60の先端側の端部を第1の内径部54aと第2の内径部54bの間の段差部54fに確実に当接させ、付勢部材60の作動の安定性を優先させるようにしている。
【0128】
また、この例の内針収容部材50bは、ベース部材50aの接続部52が接続される先端側の被接続部57と、基端側の本体部58から構成され、本体部58は、外径および内径が共に被接続部57よりも小径となっている。内針収容部材50bをこのような段付き有底円筒状に構成することで、被接続部57と本体部58の間の段差部59を押圧して内針収容部材50bをベース部材50aに向けて移動させ、ベース部材50aに嵌合させることが可能となるため、組立性を向上させることができる。また、肉厚を増加させることなく、本体部58bの内周面58aをベース部材50aの貫通孔54の第2の内径部54bと略同一の内径に構成することが可能となるため、内針基40および付勢部材60を内針収容部材50b内においても適度に拘束し、安定的に移動させることができる。
【0129】
また、この例のベース部材50aの接続部52の外周面には、先端側(把持部51側)の第1の支持外径外径部52bと、基端側の第2の支持外径部52cと、第1の支持外径部52bと第2の支持外径部52cの間の嵌合外径部52dと、が設けられている。第1の支持大外径部52bの外径は第2の支持外径部52cよりも大径であり、嵌合外径部52dの外径は、第1の支持外径部52bよりも大径となっている。また、第1の支持外径部52bと嵌合外径部52dの間、および第2の支持外径部52cと嵌合大径部52dの間には、中間テーパ外径部52e、52fがそれぞれ設けられている。
【0130】
そして、内針収容部材50bの被接続部57の内周面には、先端側の第1の支持内径部57bと、基端側の第2の支持内径部57cと、第1の支持内径部57bと第2の支持内径部57cの間の嵌合内径部57dと、が設けられている。第1の支持内径部57bの内径は第1の支持外径部52bと略同一に設定され、第2の支持内径部57cの内径は第2の支持外径部52cと略同一に設定されている。また、嵌合内径部57dの内径は、嵌合外径部52cの外径よりも小径、且つ第1の支持内径部57bよりも大径に設定されている。また、第1の支持内径部57bと嵌合内径部57dの間、および第2の支持内径部57cと嵌合内径部57dの間には、中間テーパ内径部57e、57fがそれぞれ設けられている。
【0131】
接続部52および被接続部57をこのように構成することで、ベース部材50aと内針収容部材50bの確実な接続と組立性を両立させることが可能となる。具体的には、第2の支持外径部52の外径は、第1の支持内径部57bよりも小径であるため、接続部52を被接続部57内への挿入を容易化すると共に、第1の支持内径部57bが嵌合外径部52bを乗り越える際の弾性変形を容易化することができる。そして、嵌合外径部52dおよび中間テーパ外径部52e、52fと、嵌合内径部57dおよび中間テーパ内径部57e、57fが互いに嵌合した状態では、第1の支持外径部52bおよび第1の支持内径部57bが互いに対応する位置に配置され、第2の支持外径部52cおよび第2の支持内径部57cが互いに対応する位置に配置されるため、がたつきの少ない確実な接続を得ることができる。
【0132】
なお、この例では、第2支持外径部52cの基端側に、基端側に向けて漸次外径が縮小する基端側テーパ外径部52gを設けると共に、第1支持内径部57bの先端側に、先端側に向けて漸次内径が拡大する先端側テーパ内径部57aを設けることで、接続部52の被接続部57内への挿入がより容易となるようにしている。
【0133】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の留置針組立体は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0134】
例えば、留置針組立体1の各部の形状および配置は、上記実施形態において示した形状および配置に限定されるものではなく、既知の種々の形状および配置を採用することができる。また、留置針組立体1は、付勢部材60を有さず、手動または重力落下により内針基40を移動させるものであってもよい。また、留置針組立体1は、人間や動物等の生体に対して用いられるものに限定されず、生体以外に対して用いられるものであってもよい。
【0135】
また、スイッチ部材70は、内針30の軸方向に垂直な方向に移動するものに限定されず、その他の方向に移動するものであってもよい。また、スイッチ部材70は、自身が直接内針基40に当接して内針基40の移動を規制するものに限定されず、他の部材を介して内針基40の移動を規制するものであってもよい。
【0136】
また、上記実施形態において示した作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したものに過ぎず、本発明による作用および効果は、これらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0137】
1 留置針組立体
10 外針
20 外針基
30 内針
40 内針基
50 筐体
51j 係止突起
70 スイッチ部材
71 露出部
71a 頂面
71b 傾斜面
73a 第1の係止溝
73b 第2の係止溝
74 弾性部材
80 プロテクタ
82 第1の係合突起
84 傾き低減部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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