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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】熱風管および熱風炉
(51)【国際特許分類】
   C21B 9/10 20060101AFI20240904BHJP
【FI】
C21B9/10 305
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020118604
(22)【出願日】2020-07-09
(65)【公開番号】P2022015632
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】古舘 昭二
(72)【発明者】
【氏名】桑山 竜馬
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-267405(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2003-0012959(KR,A)
【文献】韓国公開特許第2002-0044433(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0062957(KR,A)
【文献】特開昭52-027002(JP,A)
【文献】実開昭54-104405(JP,U)
【文献】特開平05-051615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 7/00 - 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱風炉から高炉に熱風を供給する熱風管であって、
熱風管本体と、
前記熱風管本体の途中に設置された熱風弁と、
前記熱風管本体の前記熱風弁よりも上流側に設置された伸縮管と、
前記熱風管本体に通される熱風よりも高圧の加圧空気を前記伸縮管に供給する加圧ラインと、を有し、
前記加圧空気は、前記熱風炉の送風運転時に前記熱風炉に供給される送風用の空気であり、
前記加圧空気は、前記熱風管本体に通される熱風よりも低温であることを特徴とする熱風管。
【請求項2】
請求項1に記載した熱風管において、
前記加圧ラインは、途中に逆止弁を有することを特徴とする熱風管。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した熱風管において、
前記熱風炉には前記送風用の空気を前記熱風炉に供給する送風管が接続され、
前記送風管の途中には送風弁が設置され、
前記加圧空気は、前記送風管の前記送風弁から前記熱風炉までの部分から取り出されることを特徴とする熱風管。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載した熱風管において、
前記加圧空気は、前記熱風炉の燃焼時および送風時に常時流されることを特徴とする熱風管。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載した熱風管において、
前記加圧空気は、摂氏120度以上であることを特徴とする熱風管。
【請求項6】
熱風管を通して高炉に熱風を供給する熱風炉であって、
前記熱風管は、
熱風管本体と、
前記熱風管本体の途中に設置された熱風弁と、
前記熱風管本体の前記熱風弁よりも上流側に設置された伸縮管と、
前記伸縮管に前記伸縮管の内部よりも高圧の加圧空気を供給する加圧ラインと、を有し、
前記加圧空気は、前記熱風炉の送風運転時に前記熱風炉に供給される送風用の空気であり、
前記加圧空気は、前記熱風管本体に通される熱風よりも低温であることを特徴とする熱風炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱風管および熱風炉に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉には、熱風管を介して熱風炉が接続される。熱風管の途中には熱風弁および伸縮管が設置される(特許文献1参照)。このような熱風管では、伸縮管により、熱風炉の運転切り替え時の熱膨張を吸収でき、熱風弁の交換時の作業隙間が確保できる。
熱風管の内部は、送風運転時は熱風により内部が高圧となり、蓄熱運転時には熱風が通らないため低圧となる。特許文献1の熱風管では、伸縮管として均圧室を有する均圧型とし、熱風管内の圧力による伸縮方向の力を均圧室の圧力で相殺している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭62-267405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した熱風管では、伸縮管を含む熱風管の内側に耐熱煉瓦が張られる。しかし、熱風管内の高温高圧の熱風が、耐熱煉瓦の隙間を通って熱風管本体まで達することがある。
伸縮管には、伸縮を可能とするためにベローズなど蛇腹状の伸縮部材が用いられ、その内側の耐火部材として可撓性を有するセラミックウールなどが用いられる。セラミックウールは、設置時に伸縮部材の空隙部に充填されているが、経時的変化で劣化脱落し、空隙部が残されるようになる。このような空隙部においては、熱風炉の送風運転と蓄熱運転との圧力変動によって熱風が流入し、流入した熱風の高熱によって伸縮部材の表面が赤熱するという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、熱風による伸縮管の不具合を防止できる熱風管および熱風炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の熱風管は、熱風炉から高炉に熱風を供給する熱風管であって、熱風管本体と、
前記熱風管本体の途中に設置された熱風弁と、前記熱風管本体の前記熱風弁よりも上流側に設置された伸縮管と、前記熱風管本体に通される熱風よりも高圧の加圧空気を前記伸縮管に供給する加圧ラインと、を有することを特徴とする。
このような本発明では、加圧ラインから供給される加圧空気により、伸縮管の内側を高圧に保ち、熱風管を通る熱風が煉瓦隙間を通して伸縮管まで達することを防止ないし抑制できる。その結果、伸縮管の熱風による影響を防止できる。
【0007】
本発明の熱風管において、前記加圧ラインは、途中に逆止弁を有することが好ましい。
このような本発明では、加圧空気の意図しない圧力低下があった場合でも、熱風管からの熱風の侵入ないし加圧空気源への逆流を防止できる。
【0008】
本発明の熱風管において、前記加圧空気は、前記熱風炉の送風運転時に前記熱風炉に供給される送風用の空気であることが好ましい。
このような本発明では、専用の加圧空気供給装置が不要であり、装置構成の簡素化を図ることができる。また、同じ送風用の空気を用いることで、熱風管本体に通される熱風よりも高圧の加圧空気を自動的に供給できる。すなわち、送風用の空気のうち熱風炉に導入された分は、伸縮管に達した際に熱風炉の圧損だけ低圧になる。これに対し、加圧空気として利用する分は、元の送風用の空気の圧力が維持され、これにより熱風管本体を通る熱風よりも自動的に高圧となる。
【0009】
本発明の熱風管において、前記熱風炉には前記送風用の空気を前記熱風炉に供給する送風管が接続され、前記送風管の途中には送風弁が設置され、前記加圧空気は、前記送風管の前記送風弁から前記熱風炉までの部分から取り出されることが好ましい。
このような本発明では、熱風炉から熱風を送り出す送風運転時には、送風管から加圧ラインを経て伸縮管へ加圧空気が自動的に供給される。一方、送風運転のための送風が停止された際には、加圧ラインへの加圧空気が自動的に停止される。従って、加圧空気の断続切り替え操作を自動化することができる。
【0010】
本発明の熱風管において、前記加圧空気は、前記熱風炉の燃焼時および送風時に常時流されることが好ましい。
このような本発明では、伸縮管に加圧空気が常時流されているため、煉瓦隙間からの熱風の侵入が突然生じた場合でも、伸縮管への到達を確実に防止できる。なお、加圧空気は、熱風炉に送風用の空気を供給する送風管の送風弁よりも上流側から取り出した送風用の空気が利用でき、例えば各熱風炉の送風管が接続される送風本管から取り出した送風用の空気とすることができる。送風管の送風弁よりも上流側から加圧空気を取り出す際には、流量制御弁もしくは圧力制御弁を設けて流量または圧力を調整することが好ましい。
【0011】
本発明の熱風管において、前記加圧空気は、前記熱風管本体に通される熱風よりも低温であることが好ましい。
このような本発明では、伸縮管に供給された際に加圧空気が冷却されて、伸縮管および熱風管の鉄皮が高温により酸化され、強度低下することを防止でき、配管などの劣化を回避することができる。熱風管本体に通される熱風よりも低温とは、例えば摂氏350度以下である。
【0012】
本発明の熱風管において、前記加圧空気は、摂氏120度以上であることが好ましい。
このような本発明では、供給された加圧空気の結露に関して、とくに酸の結露防止を図ることができ、配管などの腐食を回避することができる。
【0013】
本発明の熱風炉は、熱風管を通して高炉に熱風を供給する熱風炉であって、前記熱風管は、熱風管本体と、前記熱風管本体の途中に設置された熱風弁と、前記熱風管本体の前記熱風弁よりも上流側に設置された伸縮管と、前記伸縮管に前記伸縮管の内部よりも高圧の加圧空気を供給する加圧ラインと、を有することを特徴とする。
このような本発明では、前述した本発明の熱風管で説明した通りの効果が得られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱風による伸縮管の不具合を防止できる熱風管および熱風炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の熱風管および熱風炉の一実施形態を示す平面図。
図2】前記実施形態における伸縮管を示す拡大断面図。
図3】前記実施形態における各部圧力を示すグラフ。
図4】本発明の他の実施形態の熱風管および熱風炉を示す平面図。
図5】本発明の他の実施形態の熱風管および熱風炉を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1から図3には、本発明の熱風管および熱風炉の一実施形態が示されている。
図1において、高炉1は炉体2の周囲に環状管3を有し、環状管3と炉体2とは複数の羽口で接続されている。環状管3には熱風本管4が接続され、熱風本管4から供給された熱風が、環状管3から羽口を経て炉体2内に吹き込まれる。
【0017】
熱風本管4に沿って、複数の熱風炉11,12,13が設置されている。
各々の熱風炉11,12,13では、炉内で燃料ガスを燃焼させることで炉内の蓄熱煉瓦に蓄熱する蓄熱運転と、炉内に導入した外気を蓄熱煉瓦で加熱して熱風本管4に熱風を送り出す送風運転と、が交替で実行される。
【0018】
熱風炉11,12,13には、熱風本管4に熱風を送り出すために熱風管21,22,23が接続されている。
熱風管21,22,23は、鋼管を用いた熱風管本体210,220,230で形成され、熱風管本体210,220,230の途中には、それぞれミキシングチャンバ211,221,231、伸縮管212,222,232、および熱風弁213,223,233が設置されている。
【0019】
ミキシングチャンバ211,221,231は、熱風炉11,12,13からの熱風に外気を混合し、所定の温度に調整された熱風を送り出す。
伸縮管212,222,232は、熱風管本体210,220,230およびミキシングチャンバ211,221,231の熱膨張による軸方向および軸直角方向の変位を吸収するとともに、熱風弁213,223,233の交換時に作業隙間を確保するために用いられる。
熱風弁213,223,233は、熱風炉11,12,13が送風運転する際に熱風管本体210,220,230を導通させ、蓄熱運転する際には熱風管本体210,220,230を閉止することが可能である。
【0020】
熱風炉11,12,13には、それぞれ蓄熱運転時の燃焼排気を行う煙道管31,32,33と、送風運転時の加圧空気供給を行う送風管41,42,43と、が接続されている。
煙道管31,32,33は、各々煙道本管38に接続され、熱風炉11,12,13からの燃焼排気を煙突39から排出可能である。
煙道管31,32,33の途中には、それぞれ煙道弁311,321,331が設置され、熱風炉11,12,13から煙道本管38への連通および閉止を切替え可能である。
【0021】
送風管41,42,43は、それぞれ煙道管31,32,33の途中に接続され、煙道管31,32,33を経由して熱風炉11,12,13に接続される。
送風管41,42,43は、各々送風本管48に接続され、ブロア49からの加圧空気を熱風炉11,12,13に供給可能である。
送風管41,42,43の途中には、それぞれ送風弁411,421,431が設置され、熱風炉11,12,13と送風本管48との連通および閉止を切替え可能である。
【0022】
送風管41,42,43の送風弁411,421,431より下流側、つまり煙道管31,32,33側から、伸縮管212,222,232に至る加圧ライン51,52,53が分岐されている。
加圧ライン51,52,53は、送風管41,42,43を通される送風用の加圧空気、つまり熱風管本体210,220,230に通される熱風よりも高圧の加圧空気を、伸縮管212,222,232に供給可能である。
加圧ライン51,52,53には、途中に逆止弁511,521,531が設置され、伸縮管212,222,232から送風管41,42,43への流通は防止されている。
【0023】
図2には、本実施形態の伸縮管212,222,232が示されている。
伸縮管212,222,232は、それぞれ同じ伸縮管60で形成され、熱風管本体61(熱風炉11,12,13に接続される上流側の熱風管本体210,220,230)と、熱風管本体62(熱風本管4に接続される下流側の熱風管本体210,220,230)とを連結している。
【0024】
熱風管本体61,62および伸縮管60は、それぞれ断面円形の鋼管63で形成され、鋼管63の内側には耐火材64が張られている。熱風管本体61,62および伸縮管60の端部にはフランジ65が形成され、各々のフランジ65どうしをボルト締結することで互いに接続されている。
なお、フランジ65をボルトで締結するほか、熱風管本体61,62と伸縮管60とを直接溶接してもよい。フランジ65を締結する方式は作業性が良好であり、溶接方式は熱風の漏れの防止性能が良好である。
一連に接続された熱風管本体61,62および伸縮管60の内側には、各々の耐火材64の内面に沿って、耐火煉瓦66(断熱煉瓦であってもよい)が積層される。これらの耐火煉瓦66の内側に形成される通路67に、熱風炉11,12,13からの熱風が通される。
【0025】
伸縮管60において、鋼管63および耐火材64は、軸方向(図2の流れ方向Df)に3つに分割されている。3つの筒体60A,60B,60Cの間には、2つの隙間60D,60Dが形成され、各筒体60A,60B,60Cは互いに軸方向および軸直角方法に変位可能である。
筒体60A,60B,60Cの外周は、ベローズ68で覆われている。ベローズ68は蛇腹状の筒体で形成され、各筒体60A,60B,60Cの軸方向および軸直角方法に変位を許容しつつ、隙間60D,60Dを通じた伸縮管60の内外面の流通を遮断可能である。
ベローズ68の中間部は、固定具681により、中間の筒体60Bに固定されている。
【0026】
ベローズ68には、加圧ライン70(図1の加圧ライン51,52,53)が接続されている。
前述の通り、加圧ライン70(加圧ライン51,52,53)には、熱風管本体210,220,230に通される熱風(通路67を通る熱風)よりも高圧の加圧空気が供給され、ベローズ68の内部空間682の圧力を、通路67を通る熱風よりも高圧とすることができる。
【0027】
さらに、加圧ライン70(加圧ライン51,52,53)に通される加圧空気は、熱風管本体210,220,230に通される熱風(通路67を通る熱風)よりも低温の摂氏350度以下であり、かつ摂氏120度以上に調整されている。
この際、摂氏350度以下で摂氏120度以上の加圧空気として、例えば送風本管48に供給されるブロア49からの加圧空気が利用できる。この加圧空気は、ブロア49での断熱圧縮により昇温されており、摂氏350度以下で摂氏120度以上の加圧空気とするために特別なヒータによる加熱あるいは放熱器による冷却などを省略できる。
【0028】
図3の下段に示すように、本実施形態の熱風炉S1,S2,S3(図1の熱風炉11,12,13)では、順次交代でいずれか1つで送風運転H11,H12,H13を行うとともに、他で蓄熱運転C11,C12,C13を行う。
【0029】
例えば、熱風炉S1(図1の熱風炉11)では、蓄熱運転C11によって炉内を十分な高温にしたのち、送風運転H11を開始する。
送風運転H11を開始する際には、図1の煙道管31を閉じるとともに、送風管41および熱風管21を開く。これにより、送風本管48に供給されている加圧空気が熱風炉11に送られ、熱風炉S1,S2,S3内を通って加熱された熱風が熱風管21へ送り出され、高炉1へと送風される。同時に、送風管41を通る加圧空気の一部が、加圧ライン51を通して伸縮管212に供給される。
【0030】
所定時間が経過したら、熱風炉S1による送風運転H11を終了し、熱風炉S1では2期間分の蓄熱運転を開始する。
蓄熱運転C11を開始する際には、図1の煙道管31を開くとともに、送風管41および熱風管21を閉じ、炉内で燃料を燃焼させて蓄熱するとともに、排気を煙道管31から排出する。
熱風炉S1による蓄熱運転C11の期間に、蓄熱運転C12で蓄熱済の熱風炉S2による送風運転H12、および蓄熱運転C13で蓄熱済の熱風炉S3による送風運転H13が同様に行われる。
【0031】
例えば、熱風炉S1による送風運転H11の際には、熱風管21に熱風が通されるとともに、加圧ライン51からの加圧空気が伸縮管212に供給される。
図3の上段において、送風本管48においては、加圧空気の圧力P48で略一定に維持されている。これに対し、熱風管21を通る熱風の圧力P21、および加圧ライン51を通る加圧空気の圧力P212は、それぞれ送風運転の開始とともに上昇し、送風運転中は一定に維持されたのち、送風運転の終了とともに圧力0に戻る。
【0032】
ここで、熱風管21を通る熱風の圧力P21は、熱風炉11を通過する際の圧力損失により、送風本管48の圧力P48よりも小さな値となる。一方、加圧ライン51で送られる加圧空気の圧力P212は、送風本管48の圧力P48より僅かに小さい程度に維持され、熱風管21を通る熱風の圧力P21よりも十分高圧とされる。
その結果、伸縮管212において、熱風管21を通る高温高圧の熱風が、表面近くまで達することを防止できる。
【0033】
図2において、伸縮管60の通路67を通る熱風は圧力P21であるのに対、加圧ライン70からベローズ68の内部空間682へ供給される加圧空気は圧力P212であり、従って伸縮管60の通路67を通る熱風が耐火煉瓦66の隙間を通って内部空間682へ侵入しようとしても、内部空間682に供給されている高圧の空気で阻まれ、内部空間682へ侵入することが防止される。
【0034】
このような本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態では、加圧ライン70(51,52,53)から伸縮管60(212,222,232)に供給される加圧空気により、ベローズ68の内部空間682の圧力を、通路67を通る熱風よりも高圧に保ち、熱風管21,22,23(通路67)を通る熱風が耐火煉瓦66の隙間を通して伸縮管60の鋼管63やベローズ68まで達することを防止ないし抑制できる。その結果、伸縮管212,222,232の熱風による影響を防止できる。
【0035】
本実施形態では、加圧ライン51,52,53の途中に逆止弁511,521,531が設けた。このため、加圧ライン51,52,53に供給される加圧空気の意図しない圧力低下があった場合でも、熱風管21,22,23からの熱風の侵入ないし加圧空気源である送風管41,42,43への逆流を防止できる。
【0036】
本実施形態では、加圧ライン51,52,53に供給される加圧空気として、熱風炉11,12,13の送風運転時に熱風炉11,12,13に供給される送風管41,42,43に通される送風用の空気を用いた。このため、専用の加圧空気供給装置が不要であり、装置構成の簡素化を図ることができる。
また、熱風炉11,12,13に供給される送風用の空気と同じ空気を用いることで、熱風炉11,12,13から熱風管本体210,220,230に通される熱風よりも高圧の加圧空気を自動的に供給できる。
すなわち、送風管41,42,43に通される送風用の空気のうち、熱風炉11,12,13に導入された分は、熱風管本体210,220,230を通って伸縮管212,222,232に達した際に、熱風炉11,12,13の圧損だけ低圧になる。これに対し、加圧ライン51,52,53を通って加圧空気として利用する分は、送風管41,42,43における元の送風用の空気の圧力が維持され、これにより熱風管本体210,220,230を通る熱風よりも自動的に高圧となる。
【0037】
本実施形態では、熱風炉11,12,13には送風用の空気を熱風炉11,12,13に供給する送風管41,42,43が接続され、送風管41,42,43の途中には送風弁411,421,431が設置され、加圧ライン51,52,53に送られる加圧空気は、送風管41,42,43の送風弁411,421,431から熱風炉11,12,13までの部分から取り出されるようにした。このため、熱風炉11,12,13から熱風を送り出す送風運転時には、送風管41,42,43から加圧ライン51,52,53を経て伸縮管212,222,232へ加圧空気が自動的に供給される。一方、送風運転のための送風が停止された際には、加圧ライン51,52,53への加圧空気が自動的に停止される。従って、加圧空気の断続切り替え操作を自動化することができる。
【0038】
本実施形態では、加圧ライン51,52,53から伸縮管212,222,232に供給される加圧空気は、熱風管本体210,220,230に通される熱風よりも低温、つまり伸縮管212,222,232や鋼管63が高温酸化や強度低下を発生しない摂氏350度以下の低温であるとしたため、伸縮管212,222,232に供給された際に加圧空気にて伸縮管212,222,232および鋼管63の高温化を防止でき、伸縮管212,222,232や鋼管63の劣化などを回避できる。
さらに、加圧ライン51,52,53からの加圧空気は、摂氏120度以上であるとしたため、伸縮管212,222,232に供給された加圧空気の結露に関して、とくに酸の結露防止を図ることができ、鋼管63の腐食などを回避することができる。
【0039】
前述した図1から図3の実施形態では、加圧ライン51,52,53に送られる加圧空気を、送風管41,42,43の送風弁411,421,431から熱風炉11,12,13までの部分から取り出し、これにより加圧空気の断続切り替え操作を自動化できるようにしていた。
これに対し、図4に示す本発明の他の実施形態では、加圧空気の取り出しが異なる構造とされている。
【0040】
図4において、本実施形態は、基本構成が前述した図1の実施形態と同様であり、共通部分についての重複する説明は省略し、相違する部分について説明する。
本実施形態において、熱風炉11A,12A,13Aは熱風管21A,22A,23Aを有し、熱風管21A,22A,23Aは加圧ライン51A,52A,53Aを有する。
加圧ライン51A,52A,53Aは、それぞれ送風本管48に接続され、送風本管48から取り出した加圧空気を伸縮管212,222,232に供給可能である。
【0041】
前述した図1の実施形態では、送風弁411,421,431の断続に伴って加圧ライン51,52,53の加圧空気も自動的に断続されていた。
これに対し、本実施形態では、加圧ライン51A,52A,53Aが加圧空気を取り出す送風本管48は常時略一定の圧力(図3の圧力P48)とされるため、送風運転時および蓄熱運転時の別にかかわりなく伸縮管212,222,232には、流量制御弁または圧力調節弁(図示省略)を設け制御することで、常時略一定の加圧空気が供給される。
【0042】
このような本実施形態では、加圧ライン51A,52A,53Aから伸縮管212,222,232に常時略一定の加圧空気が供給されているため、耐火煉瓦66(図2参照)の隙間から通路67を通る熱風が突然侵入した場合でも、伸縮管60の鋼管63やベローズ68まで到達することを確実に防止できる。
【0043】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
前記実施形態では、加圧ライン51,52,53,51A,52A,53Aに逆止弁511,521,531を設置したが、その弁構造や設置位置は適宜選択してよい。また、逆止弁511,521,531を設けることは必須ではなく、適宜省略してもよい。
【0044】
前記実施形態では、加圧ライン51,52,53,51A,52A,53Aで送られる加圧空気として、熱風炉11,12,13,11A,12A,13Aの送風運転時に各々に供給される送風用の空気を、送風管41,42,43または送風本管48から取り出して用いていた。これに対し、別途加圧空気供給装置を設置し、必要な温度および圧力、風量の加圧空気を加圧ライン51,52,53,51A,52A,53Aに供給してもよい。
【0045】
前記実施形態では、加圧ライン51,52,53,51A,52A,53Aから伸縮管212,222,232に供給される加圧空気を、熱風管本体210,220,230に通される熱風よりも低温であり、かつ摂氏120度以上であるとしたが、例えば加圧空気中の結露成分を予め除去できていれば、これらの温度条件は緩和してもよい。
【0046】
前記実施形態では、それぞれ高炉1あたり3基の熱風炉11,12,13,11A,12A,13Aを設置したが、その数は2基あるいは4基以上であってもよい。熱風炉11,12,13,11A,12A,13Aの形式は任意であり、外燃式あるいは内燃式が適宜利用できる。
前記実施形態では、熱風管21,22,23,21A,22A,23Aを、それぞれ熱風管本体210,220,230の途中に、ミキシングチャンバ211,221,231、伸縮管212,222,232、熱風弁213,223,233の順に配置されたものとした。このような構成では、伸縮管212,222,232が熱風弁213,223,233よりも上流側にあることで、熱風弁213,223,233を閉じた状態では熱風に曝されることなく伸縮管212,222,232の内部作業が可能である。
【0047】
前述した図1の実施形態あるいは図4の実施形態では、伸縮管212,222,232が、ミキシングチャンバ211,221,231と熱風弁213,223,233との間だけに設置されていた。
これに対し、図5に示す本発明の他の実施形態では、ミキシングチャンバ211,221,231と熱風炉11,12,13との間に、別の伸縮管212B,222B,232Bが設置されている。これらの伸縮管212B,222B,232Bには、加圧ライン51,52,53(図1参照)から分岐された加圧ライン51B,52B,53Bが接続され、それぞれから加圧空気が供給されている。
加圧ライン51B,52B,53Bには、それぞれ逆止弁(図1の逆止弁511,521,531と同様)が設置されている。加圧ライン51B,52B,53Bは、加圧ライン51A,52A,53A(図4参照)から分岐されてもよい。
このような別の伸縮管212B,222B,232Bでは、当該区間に熱風弁213,223,233がないので、弁取替用としての収縮代を考慮する必要がなく、破損トラブルの件数は熱風弁213,223,233に隣接する伸縮管212,222,232に比べ少ないが、熱風管本体210,220,230の変位許容性能を向上できる。
【0048】
前述した各実施形態では、熱風炉11,12,13,11A,12A,13Aを、燃焼室と蓄熱室が同一の容器内である内燃式熱風炉としているが、燃焼室と蓄熱室とが独立した容器である外燃式熱風炉としてもよい。この際、燃焼室と蓄熱室を接続する配管に伸縮管を設けている場合があるが、この伸縮管に本発明の熱風管を適用してよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は熱風管および熱風炉に利用できる。
【符号の説明】
【0050】
1…高炉、2…炉体、3…環状管、4…熱風本管、11,11A,12,12A,13,13A…熱風炉、21,21A,22,22A,23,23A…熱風管、210,220,230…熱風管本体、211,221,231…ミキシングチャンバ、212,212B,222,222B,232,232B…伸縮管、213,223,233…熱風弁、31,32,33…煙道管、311,321,331…煙道弁、38…煙道本管、39…煙突、41,42,43…送風管、411,421,431…送風弁、48…送風本管、49…ブロア、51,51A,51B,52,52A,52B,53,53A,53B…加圧ライン、511,521,531…逆止弁、60…伸縮管、60A,60B,60C…筒体、60D,60E…隙間、61,62…熱風管本体、63…鋼管、64…耐火材、65…フランジ、66…耐火煉瓦、67…通路、68…ベローズ、681…固定具、682…内部空間、70…加圧ライン、C11,C12,C13…蓄熱運転、Df…流れ方向、H11,H12,H13…送風運転、
P21…熱風管の圧力、P212…加圧ラインの圧力、P48…送風本管の圧力、S1,S2,S3…熱風炉。
図1
図2
図3
図4
図5