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特許7549199タイヤの成形装置およびタイヤの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】タイヤの成形装置およびタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/26 20060101AFI20240904BHJP
   B29D 30/36 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
B29D30/26
B29D30/36
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020148267
(22)【出願日】2020-09-03
(65)【公開番号】P2022042713
(43)【公開日】2022-03-15
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 修
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-061235(JP,A)
【文献】特開昭57-012628(JP,A)
【文献】特開2018-039151(JP,A)
【文献】特開2015-085583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/26
B29D 30/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形ドラムと、この成形ドラムのドラム幅方向両側に配置される筒状のターンアップブラダと、前記成形ドラムのドラム軸方向に移動して膨張させた状態の前記ターンアップブラダの外表面を押圧する押圧リングとを備えて、前記ターンアップブラダの外表面を被覆する密着防止布を有しているタイヤの成形装置において、
前記成形ドラムおよびそれぞれの前記ターンアップブラダにバント部材が巻き付けられて、前記バンド部材の外周面に配置されたビードが外挿された状態になるそれぞれの前記ターンアップブラダの前記外表面のドラム軸方向一方端部に、前記密着防止布によって被覆されていないビード用ゴム領域が形成されていて、前記外表面のドラム軸方向他方端側の前記押圧リングに押圧される部分に前記密着防止布によって被覆されていない押圧リング用ゴム領域が形成されていて、前記外表面の前記ビード用ゴム領域と前記押圧リング用ゴム領域との間が前記密着防止布によって被覆されている被覆領域になっていることを特徴とするタイヤの成形装置。
【請求項2】
前記ビード用ゴム領域が、前記ターンアップブラダの周方向全周に延在している請求項1に記載のタイヤの成形装置。
【請求項3】
前記押圧リング用ゴム領域が、前記ターンアップブラダの周方向に断続的に配置されている請求項1または2に記載のタイヤの成形装置。
【請求項4】
前記押圧リング用ゴム領域が、点在している請求項1または2に記載のタイヤの成形装置。
【請求項5】
前記押圧リング用ゴム領域が、円形状である請求項4に記載のタイヤの成形装置。
【請求項6】
前記押圧リングの前記外表面を押圧する領域に滑り止め部を有する請求項1~5のいずれかに記載のタイヤの成形装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のタイヤの成形装置を用いて、前記バンド部材の幅方向両端部をそれぞれの前記ビードまわりにターンアップさせて前記バンド部材の対向する部分に圧着させて中間グリーンタイヤを成形し、この中間グリーンタイヤにトレッドゴムを含む残りの構成部材を接合してグリーンタイヤを成形した後、このグリーンタイヤを加硫するタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの成形装置およびタイヤの製造方法に関し、さらに詳しくは、ターンアップブラダおよび押圧リングを用いてターンアップさせたバンド部材を、ビードに一段と強固に安定して圧着させることができるタイヤの成形装置およびこの成形装置を用いたタイヤの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤを製造する際に使用される成形ドラムが種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。成形ドラムを用いて中間グリーンタイヤを成形する工程では、成形ドラムの外周面に配置した筒状のバンド部材の幅方向両端部を、ビードまわりに折り返すターンアップ作業が行われる。このターンアップ作業では、例えば、膨張させたターンアップブラダを用いてバンド部材の幅方向両端部をビードまわりにターンアップさせて、対向するバンド部材の部分に強く圧着させる。
【0003】
ターンアップブラダは主に加硫ゴムによって形成されていて、未加硫ゴムが密着すると剥がれ難くなる。そこで、バンド部材がターンアップブラダに密着して剥がれなくなることを防止するために、従来、ターンアップブラダの外表面を密着防止布によって覆うことが行われている。そして、膨張させたターンアップブラダの外表面を押圧リングによって押圧することで、ターンアップさせた幅方向両端部を、対向するバンド部材の部分により確実に圧着している。
【0004】
ところが、この密着防止布の存在によって、ブラダ外表面と押圧リングとの間で滑りが生じ易くなる。この滑りが生じると、バンド部材の両端部を強く引っ張った状態でターンアップさせることができず、ビード(内周面)とのバンド部材とを強固に圧着できない不具合が発生することがある。この不具合に起因して不要なエアが残存するなど、タイヤの加硫故障の原因になるため、ターンアップしたバンド部材をビードに一段と安定して強固に圧着させるには改善に余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-117970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ターンアップブラダおよび押圧リングを用いてターンアップさせたバンド部材を、ビードに一段と強固に安定して圧着させることができるタイヤの成形装置およびこの成形装置を用いたタイヤの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明のタイヤの成形装置は、成形ドラムと、この成形ドラムのドラム幅方向両側に配置される筒状のターンアップブラダと、前記成形ドラムのドラム軸方向に移動して膨張させた状態の前記ターンアップブラダの外表面を押圧する押圧リングとを備えて、前記ターンアップブラダの外表面を被覆する密着防止布を有しているタイヤの成形装置において、前記成形ドラムおよびそれぞれの前記ターンアップブラダにバント部材が巻き付けられて、前記バンド部材の外周面に配置されたビードが外挿された状態になるそれぞれの前記ターンアップブラダの前記外表面のドラム軸方向一方端部に、前記密着防止布によって被覆されていないビード用ゴム領域が形成されていて、前記外表面のドラム軸方向他方端側の前記押圧リングに押圧される部分に前記密着防止布によって被覆されていない押圧リング用ゴム領域が形成されていて、前記外表面の前記ビード用ゴム領域と前記押圧リング用ゴム領域との間が前記密着防止布によって被覆されている被覆領域になっていることを特徴とする。
【0008】
本発明のタイヤの製造方法は、上記のタイヤの成形装置を用いて、前記バンド部材の幅方向両端部をそれぞれの前記ビードまわりにターンアップさせて前記バンド部材の対向する部分に圧着させて中間グリーンタイヤを成形し、この中間グリーンタイヤにトレッドゴムを含む残りの構成部材を接合してグリーンタイヤを成形した後、このグリーンタイヤを加硫することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のタイヤの成形装置によれば、それぞれの前記ターンアップブラダの前記外表面のドラム軸方向一方端部に、ビード用ゴム領域が形成されているので、ターンアップブラダに外挿されて配置されたそれぞれのビードの内周面およびバンド部材と、ターンアップブラダとの間での滑りが抑制される。そして、ドラム軸方向一方端部がビードによって保持された状態で前記ターンアップブラダを膨張させて、前記押圧リングをドラム軸方向に移動させて、このターンアップブラダの外表面を押圧すると、押圧リング用ゴム領域と前記押圧リングとの間での滑りが抑制されるので、バンド部材の幅方向両端部をより強くドラム半径方向外側に引っ張ることができる。これに伴い、ターンアップさせたバンド部材を、ビード(特にビード内周面)に一段と強固に安定して圧着させることができる。
【0010】
本発明のタイヤの製造方法によれば、ターンアップさせたバンド部材を、ビード(特にビード内周面)に一段と強固に安定して圧着させて中間グリーンタイヤが成形できるので、成形したグリーンタイヤにターンアップに起因する不要なエアが残る不具合が抑制される。それ故、グリーンタイヤの加硫故障を防止するには有利になり、品質の優れたタイヤの生産性よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のタイヤの成形装置を、成形ドラムを縦断面視にして例示する説明図である。
図2図1のタイヤの成形装置を平面視で例示する説明図である。
図3図1の一部拡大図である。
図4図3のターンアップブラダおよび成形ドラムを平面視で例示する説明図である。
図5図4の押圧リング用ゴム領域の変形例を示す説明図である。
図6図4の押圧リング用ゴム領域の別の変形例を示す説明図である。
図7図3の成形ドラムおよびドラムサイド部にバンド部材を巻き付けた状態を例示する説明図である。
図8図7のバンド部材の幅方向端部にビード部を外挿して配置した状態を例示する説明図である。
図9図8のターンアップブラダを膨張させてバンド部材の幅方向端部を立ち上げた状態を例示する説明図である。
図10図9のターンアップブラダの外表面を押圧リングによって押圧してターンアップしたバンド部材の幅方向端部を対向する部分に圧着している状態を例示する説明図である。
図11】押圧リング用ゴム領域を有していない仕様のターンアップブラダを膨張させてバンド部材を立ち上げた状態を例示する説明図である。
図12】押圧リングの変形例を示す説明図である。
図13】成形された中間グリーンタイヤの上半分を横断面視で例示する説明図である。
図14】成形されたグリーンタイヤの上半分を横断面視で例示する説明図である。
図15】加硫装置によって加硫されているグリーンタイヤの左半分を横断面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のタイヤの成形装置およびタイヤの製造方法を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1図4に例示する本発明のタイヤの成形装置1(以下、成形装置1という)は、拡縮する成形ドラム2と、成形ドラム2のドラム幅方向両側に配置されるドラムサイド部4と、成形ドラム2のドラム軸方向に移動する押圧リング10とを備えている。それぞれのドラムサイド部4にはターンアップブラダ6が装備されていて、このターンアップブラダ6はその外表面を被覆する密着防止布8を有している。成形装置1はさらに、成形ドラム2、ターンアップブラダ6および押圧リング10の動きを制御する制御部11を有している。
【0014】
成形ドラム2は、ドラム中心に配置されたドラム軸3と、ドラム軸3を中心にして環状に配置された多数のセグメント2Aを有していて、それぞれのセグメント2Aをドラム軸3に対して進退させることで成形ドラム2は拡縮する。それぞれのセグメント2Aの外周面がドラム表面(成形面)になる。
【0015】
ドラム軸3は、中心軸5によって回転可能に軸支されている。それぞれのドラムサイド部4および押圧リング10も中心軸5に軸支されている。図中の一点鎖線Zはドラム軸3および中心軸5の軸芯を示し、一点鎖線CLはドラム幅方向中心を示している。成形装置1は制御部11を除いて、基本的にドラム幅方向中心CLに対して対称構造になっている。
【0016】
ドラムサイド部4の外周面のドラム軸方向一方端部には、ビードロック9が備わっている。ビードロック9はドラム半径方向に移動する。ビードロック9の動きも制御部11によって制御される。
【0017】
ターンアップブラダ6は、加硫ゴム製の円環状の中空体であり、内部に空気が注入されることで膨張し、内部の空気が排出されることで収縮する。ターンアップブラダ6は、ドラムサイド部4の外周面に配置されていて、ドラム幅方向一方端部6aは、ビードロック9の外周面に固定されている。
【0018】
図4に例示するように密着防止布8は、ターンアップブラダ6の外表面7に露出した状態で埋設されている。密着防止布8はターンアップブラダ6の膨張を過度に規制しないように適度な伸縮性を有している。
【0019】
ターンアップブラダ6の外表面7のドラム軸方向一方端部6aには、密着防止布8によって被覆されていないビード用ゴム領域7aが形成されている。ビード用ゴム領域7aは周方向全周に渡って連続している。ビード用ゴム領域7aは、周方向に断続的に形成された仕様にすることもできるが、この仕様にする場合は、ビード用ゴム領域7aの周方向の断続間隔は短くする(数センチ以下にする)。
【0020】
また、外表面7のドラム軸方向他方端6b側には密着防止布8によって被覆されていない押圧リング用ゴム領域7bが形成されている。押圧リング用ゴム領域7bは、ターンアップブラダ6が膨張した状態で押圧リング10により押圧される部分である。この実施形態では、押圧リング用ゴム領域7bは周方向全周に渡って連続している。
【0021】
図5図6に例示するように、押圧リング用ゴム領域7bは、周方向に断続的に形成することもできる。図5では、多数の円形状の押圧リング用ゴム領域7bが散在(点在)している。詳述すると、この実施形態では円形状の押圧リング用ゴム領域7bが周方向に間隔をあけて配置された列がドラム軸方向に3つ並列され、かつ、ドラム軸方向に隣り合う列では押圧リング用ゴム領域7bの配置位置が周方向にずらされている。ドラム幅方向に並列される押圧リング用ゴム領域7bは3列に限らず、2列、4列でもよく、1列にすることもできる。押圧リング用ゴム領域7bは単純な円形に限らず、楕円形状にすることも、多角形にすることもできるが、なるべく角の無い形状にすることが好ましい。
【0022】
図5に例示するように、それぞれの押圧リング用ゴム領域7bは同じ大きさで同じ形状になっていることが好ましい。大きさを異ならせた押圧リング用ゴム領域7bを混在させることも、形状を異ならせた押圧リング用ゴム領域7bを混在させることもできる。
【0023】
図6では、ドラム軸方向に延在する多数の細長の押圧リング用ゴム領域7bが周方向に間隔をあけて配置されている。図6では、それぞれの押圧リング用ゴム領域7bは同じ大きさで同じ形状になっている。また、この実施形態のように、周方向に隣り合うそれぞれの押圧リング用ゴム領域7bどうしは等間隔で配置されることが好ましい。
【0024】
図5図6のように押圧リング用ゴム領域7bが、周方向に断続的に形成された仕様にする場合は、押圧リング用ゴム領域7bが配置されているドラム軸方向区間での外表面7の全面積における押圧リング用ゴム領域7bの占有面積の割合を例えば40%以上65%以上にするとよい。この割合が40%未満では、後述する押圧リング用ゴム領域7bによる十分な滑り止め効果を得難くなる。この割合が65%超では、ターンアップブラダ6の膨張に対する密着防止布8による規制具合が過大になって、ターンアップブラダ6を十分に膨張させるためにターンアップブラダ6に付与する内圧を過大にする必要がある。
【0025】
外表面7のビード用ゴム領域7aと押圧リング用ゴム領域7bとのドラム軸方向の間では密着防止布8によって被覆されている被覆領域8aになっている。被覆領域8aは、ビード用ゴム領域7aや押圧リング用ゴム領域7bに比して、未加硫ゴムや加硫ゴムに対して摩擦係数が低くて(滑り易くて)、密着し難い。
【0026】
押圧リング10は、待機位置と押圧位置との間でドラム軸方向に移動する。押圧位置に移動した押圧リング10は、膨張させた状態のターンアップブラダ6の外表面7を、先端部および内周面で押圧する。
【0027】
次に、この成形装置1を用いて中間グリーンタイヤG1を成形する工程を経て、タイヤを製造する工程の一例を説明する。
【0028】
図7に例示するように、縮径状態の成形ドラム2の外周面およびターンアップブラダ6の外表面7にバンド部材Rを筒状に巻き付けた状態にする。バンド部材Rは、インナーライナの外周面にカーカス材が積層されて形成されている。バンド部材Rの表面は主に未加硫ゴムで形成されているので粘着性が強い。
【0029】
次いで、図8に例示するようにそれぞれのセグメント2Aをドラム半径方向外側に移動させて、成形ドラム2を拡径状態にして、成形ドラム2とドラムサイド部4との境界で段差を形成する。これに伴い段差が形成されたバンド部材Rのそれぞれの幅方向端部RaにビードBを外挿して段差部分に当接するように配置する。これにより、それぞれのビードBは、セグメント2Aのドラム軸方向両側面に沿うように配置され、成形ドラム2に対して横打ちされた状態になる。ビードBは円環状のビードコアと、ビードコアの外周側に接合されたビードフィラ(未加硫ゴム)とで構成されている。
【0030】
そして、ビードロック9をドラム半径方向外側に移動させて、ビードBの内周面(ビードコア底面)を支持して固定する。これにより、ターンアップブラダ6のドラム幅方向一方端部6a(ビード用ゴム領域7a)には、ビードBが外挿された状態になり、ドラム幅方向一方端部6aは、ビードBとビードロック9とに挟持される。
【0031】
次いで、図9に例示するように、ターンアップブラダ6を膨張させた後に、待機位置の押圧リング10をドラム軸方向に中心CLに向かって移動させて、膨張したターンアップブラダ6の外表面7を押圧させる。このとき、ビード用ゴム領域7aはビードBの内周面(ビードコア底面)に圧着され、バンド部材Rのそれぞれの幅方向端部Raは膨張しているターンアップブラダ6の被覆領域8aに当接し、押圧リング用ゴム領域7bは、押圧リング10に当接している。膨張するターンアップブラダ6によって、それぞれの幅方向端部RaはビードBの内周面を起点にしてドラム半径方向外側に立ち上げられる。
【0032】
引き続き、図10に例示するように、押圧リング10をさらにドラム軸方向に中心CLに向かって移動させて、膨張したターンアップブラダ6の外表面7を押圧させてターンアップブラダ6を押し潰した状態にする。これにより、それぞれの幅方向端部RaがそれぞれのビードBのビードコアを中心にして折り返されて、セグメント2Aの外周面に載置されているバンド部材Rの対向する部分Rbに圧着される。
【0033】
ビード用ゴム領域7aが形成されているので、それぞれのビードBの内周面およびバンド部材Rと、ターンアップブラダ6との間での滑りが抑制される。そして、ターンアップブラダ6を、ドラム軸方向一方端部6aがビードBによって保持された状態で膨張させて、押圧リング10によって外表面7を押圧しても、押圧リング用ゴム領域7bと押圧リング10との間での滑りが抑制される。そのため、図9に例示するようにバンド部材Rのそれぞれの幅方向端部Raを、より強くドラム半径方向外側に引っ張ることができる。これに伴い、ターンアップさせたバンド部材Rを、ビードB(特にビード内周面)に一段と強固に安定して圧着させることができる。
【0034】
ターンアップブラダ6の密着防止布8によって被覆されている部分(被覆領域8a)ではターンアップブラダ6の膨張が規制される分、被覆されていない部分(ビード用ゴム領域7aおよび押圧リング用ゴム領域7b)では余分にターンアップブラダ6が膨張する。特に、押圧リング用ゴム領域7bではターンアップブラダ6が他の領域に比して膨張し易くなって押圧力が増大する。即ち、外表面7の一部に被覆領域8aを設けることで、押圧リング用ゴム領域7bの加硫ゴムの摩擦力だけでなく、追加的な押圧力の増大が作用して、押圧リング用ゴム領域7bと押圧リング10との間での滑りが一段と抑制することが可能になっている。
【0035】
この実施形態では、被覆領域8aがバンド部材Rのそれぞれの幅方向端部Raに当接するので、バンド部材Rがターンアップブラダ6に密着して剥がれなくなる不具合を回避できる。ターンアップブラダ6に密着したバンド部材Rを剥がす際にはバンド部材Rが損傷するリスクが生じる。したがって、この実施形態では、ターンアップに起因してバンド部材Rに意図しない変形や損傷が生じることを防止するにも有利になっている。
【0036】
図11に例示するのは、外表面7に押圧リング用ゴム領域7bが形成されていないターンアップブラダ6を用いてターンアップした場合である。この場合は、膨張させたターンアップブラダ6の押圧リング用ゴム領域7bと押圧リング10との間での滑りが生じ易い。そのため、図9の場合に比して、バンド部材Rのそれぞれの幅方向端部Raを強くドラム半径方向外側に引っ張ることができない。それ故、ターンアップさせたバンド部材Rを、ビードB(特にビード内周面)に強固に安定して圧着させるには不利になる。
【0037】
図12に例示するように、膨張させたターンアップブラダ6と押圧リング10との間での滑りを抑制するために、押圧リング10の内周面に滑り止め部10aを設けることもできる。滑り止め部10aとしては例えば、加硫ゴム片を採用する、或いは、内周面が微小凹凸を有する仕様にして加硫ゴムに対する摩擦係数を高くする。
【0038】
それぞれの幅方向端部Raのターンアップが完了することで、図13に例示する中間グリーンタイヤG1が成形される。中間グリーンタイヤG1の外周面には、次工程でベルト部材やトレッドゴム等が貼り付けられて、図14に例示するグリーンタイヤGが成形される。次いで、図15に例示するようにグリーンタイヤGを加硫用モールド13の中に配置して加硫装置12によって加硫することにより空気入りタイヤが完成する。
【0039】
上述したタイヤの製造方法によれば、ターンアップさせたバンド部材Rを、ビードB(特にビード内周面)に一段と強固に安定して圧着させて中間グリーンタイヤG1が成形できるので、成形したグリーンタイヤGにターンアップに起因する不要なエアが残る不具合が抑制される。それ故、グリーンタイヤGの加硫故障を防止するには有利になり、品質の優れたタイヤの生産性よく製造することができる。
【0040】
図5に例示するように押圧リング用ゴム領域7bを円形状にすると、角がないので、ターンアップブラダ6が繰り返し膨張と収縮を繰り返しても、密着防止布8には応力集中が生じ難くなり、密着防止布8の損傷(剥がれ)を防止するには有利になる。また、図5に例示するように、押圧リング用ゴム領域7bを点在させると、ターンアップブラダ6が経時変化(永久伸び変形)が生じても、押圧リング用ゴム領域7bと押圧リング10との接触面積の変化が小さくなり、両者の間での滑りを安定して抑制し易くなる。
【符号の説明】
【0041】
1 成形装置
2 成形ドラム
2A セグメント
3 ドラム軸
4 ドラムサイド部
5 中心軸
6 ターンアップブラダ
6a ドラム軸方向一方端部
6b ドラム軸方向他方端部
7 外表面
7a ビード用ゴム領域
7b 押圧リング用ゴム領域
8 密着防止布
8a 被覆領域
9 ビードロック
10 押圧リング
10a 滑り止め部
11 制御部
12 加硫装置
13 加硫用モールド
R バンド部材
Ra 幅方向端部
Rb 対向する部分
B ビード
G1 中間グリーンタイヤ
G グリーンタイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15