特許 7549205 二重容器

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2024-09-03

(45)【発行日】2024-09-11

(54)【発明の名称】二重容器

(51)【国際特許分類】

   B65D 1/02 20060101AFI20240904BHJP

【ＦＩ】

B65D1/02 111

B65D1/02 220

【請求項の数】 4

(21)【出願番号】P 2020181810

(22)【出願日】2020-10-29

(65)【公開番号】P2022072403

(43)【公開日】2022-05-17

【審査請求日】2023-09-19

(73)【特許権者】

【識別番号】000104674

【氏名又は名称】キョーラク株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110001139

【氏名又は名称】ＳＫ弁理士法人

(74)【代理人】

【識別番号】100130328

【弁理士】

【氏名又は名称】奥野 彰彦

(74)【代理人】

【識別番号】100130672

【弁理士】

【氏名又は名称】伊藤 寛之

(72)【発明者】

【氏名】青木 達郎

【審査官】森本 哲也

(56)【参考文献】

【文献】特開２０１９－２１４４１１（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開平１０－１５１７６２（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開平０９－２８６１１７（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｂ６５Ｄ １／０２

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

容器本体と口部装着部材とを有する二重容器であって、
前記容器本体は、外殻と内袋とを有し且つ内容物の減少に伴って前記内袋が収縮するように構成され、収容部と、口部を備え、
前記口部は、係合部を備えるとともに、前記収容部の上端から延びるように設けられ、
前記収容部は、前記口部側から順に、肩部と、胴部と、底部を有し、
前記胴部は、前記肩部と前記底部の間に設けられ、
前記肩部は、前記口部の中心軸に沿った方向に、前記口部側から前記容器本体を見たときに見える部位であり、
前記肩部には、前記口部を挟むように設けられた一対の上側挟持部が設けられ、
前記上側挟持部では、前記外殻が前記内袋を挟持し、
前記口部装着部材は、逆止弁を有するとともに、前記口部の前記係合部に装着され、
前記口部および前記口部装着部材を通じて内容物が外部に吐出され、
前記上側挟持部が、ダイレクトブロー成形において形成されるピンチオフ部である、二重容器。

【請求項2】

請求項１に記載の二重容器であって、
前記底部に形成されるピンチオフ部において前記内袋が前記外殻によって挟持されない、二重容器。

【請求項3】

請求項１又は請求項２に記載の二重容器であって、
前記上側挟持部では、前記外殻と前記内袋の間に隙間が設けられていない、二重容器。

【請求項4】

請求項１～請求項３のいずれか１項に記載の二重容器であって、
前記胴部は、少なくとも一部が扁平形状である、二重容器。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、二重容器に関する。

【背景技術】

【0002】

特許文献１には、外殻と内袋とを有し且つ内容物の減少に伴って内袋が収縮する容器本体を備える二重容器が開示されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【文献】特開２０１５－１０１３９６号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

特許文献１のような容器では、内袋が収縮する際に内袋の対向する内面同士が近接して、内容物が通る流路が狭くなった狭窄部が形成されてしまう場合がある。狭窄部が形成されると、内容物の吐出性が悪くなる場合がある。

【0005】

本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、内袋が収縮する際に内袋に狭窄部が形成されることが抑制される、二重容器を提供するものである。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本発明によれば、外殻と内袋とを有し且つ内容物の減少に伴って前記内袋が収縮するように構成された容器本体を有する二重容器であって、前記容器本体は、収容部と、口部を備え、前記口部は、前記収容部の上端から延びるように設けられ、前記収容部は、前記口部側から順に、肩部と、胴部と、底部を有し、前記胴部は、前記肩部と前記底部の間に設けられ、前記肩部は、前記口部の中心軸に沿った方向に、前記口部側から前記容器本体を見たときに見える部位であり、前記肩部には、前記口部を挟むように設けられた一対の上側挟持部が設けられ、前記上側挟持部では、前記外殻が前記内袋を挟持する、二重容器が提供される。

【0007】

本発明では、肩部に設けられた一対の上側挟持部において内袋が外殻によって挟持されているので、上側挟持部が延在する方向において、内袋の対向する内面同士が近接しにくくなり、狭窄部が形成されることが抑制される。

【0008】

以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記記載の二重容器であって、前記上側挟持部では、前記外殻と前記内袋の間に隙間が設けられていない、二重容器である。
好ましくは、前記記載の二重容器であって、前記胴部は、少なくとも一部が扁平形状である、二重容器である。

【図面の簡単な説明】

【0009】

【図1】本発明の一実施形態の二重容器１の容器本体３を示し、図１Ａは平面図、図１Ｂは正面図、図１Ｃは底面図を示す。

【図2】図２Ａは、図１Ａ中のＡ－Ａ断面図であり、図２Ｂは、図２Ａの状態から内袋１４が外殻１２から離れて収縮した後の状態を示す。

【図3】容器本体３の製造方法を説明するための断面図である。

【図4】図３中の金型３１及びパリソン３３をＢ－Ｂ面から見た状態を示す（パリソン３３は、便宜上、点線で外形のみを示している。）。

【図5】比較例の二重容器１の容器本体３を示す正面図である。

【発明を実施するための形態】

【0010】

以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。

【0011】

図１に示すように、本発明の一実施形態の二重容器１は、容器本体３を備える。容器本体３は、収容部７と、口部９を備える。

【0012】

図１～図２に示すように、容器本体３は、収容部７及び口部９において、外殻１２と内袋１４を備える。内容物の減少に伴って内袋１４が外殻１２から離れて収縮する。内容物の充填前に内袋１４を外殻１２から剥離する予備剥離を行ってから内袋１４内に内容物を充填してもよく、内袋１４から内容物を吐出する際に内袋１４を外殻１２から剥離させてもよい。

【0013】

外殻１２は、復元性が高くなるように、内袋１４よりも肉厚に形成される。外殻１２は、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン－プロピレン共重合体及びその混合物などのポリオレフィンやＰＥＴなどのポリエステル等で構成される。外殻１２は、複数層構成であってもよい。内袋１４は、複数の層から構成することが好ましい。例えば、外層と接触する層にエチレン－ビニルアルコール共重合体（ＥＶＯＨ）樹脂からなるＥＶＯＨ層を用い、内容物に接触する層に、例えば、上記ポリオレフィン又はポリエステルからなる内面層を用いることができる。そして、上記ＥＶＯＨ層と内面層との間には、接着層を用いることが好ましい。

【0014】

容器本体３は、ダイレクトブロー成形（溶融状態の筒状のパリソンを用いて行うブロー成形）によって形成可能であり、この場合、容器本体３は、図３～図４に示すように、押出ヘッド（不図示）から押し出された溶融状態の筒状の積層パリソン３３を一対の金型３１，３２を用いてブロー成形することによって形成することができる。パリソン３３は、外殻１２及び内袋１４と同様の層構成を有する。一例では、パリソン３３は、外面側から順に、外殻１２となる外層３３ａと、内袋１４となる内層３３ｂを備える。金型３１，３２は、キャビティ面３１ａ，３２ａを備え、金型３１，３２を閉じたときにキャビティ面３１ａ，３２ａによって規定される形状によって容器本体３の外形が規定される。キャビティ面３１ａ，３２ａは、収容部７となる部位３１ａ１，３２ａ１と、口部９となる部位３１ａ２，３２ａ２と、口部９から連なるように形成され且つ成形後に切断される袋部となる部位３１ａ３，３２ａ３を備える。

【0015】

図１に示すように、口部９は、キャップやポンプなどの口部装着部材を装着可能な係合部９ｄを備える。係合部９ｄは、口部装着部材がネジ式の場合は雄ねじ部であり、口部装着部材が打栓式の場合は周方向に突出する環状突起である。口部９は、収容部７の上端から延びるように設けられている。口部装着部材は、好ましくは、逆止弁を有しており、内容物の吐出は可能であるが、外気が容器本体３内に流入しないようになっている。口部９は、略円筒形である。収容部７は、口部９よりも外接円径が大きい。内容物の全部又は大部分が収容部７内に収容され、内容物は口部９及び口部装着部材を通じて外部に吐出される。

【0016】

収容部７は、口部９側から順に、肩部２１と、胴部２２と、底部２３を有する。胴部２２は、肩部２１と底部２３の間に設けられる。肩部２１は、口部９の中心軸Ｃに沿った方向に、口部９側から容器本体３を見たときに見える部位（図１Ａで見える部位から口部９を除いた部位））である。底部２３は、口部９の中心軸Ｃに沿った方向に、口部９の反対側から容器本体３を見たときに見える部位（図１Ｃで見える部位）である。胴部２２は、収容部７のうち、肩部２１及び底部２３以外の部位である。

【0017】

肩部２１には、口部９を挟むように設けられた一対の上側挟持部２４ａ，２４ｂ（区別が不要なときは符号のａ，ｂは省略する。）が設けられている。図２に示すように、上側挟持部２４では、外殻１２が内袋１４を挟持しており、内袋１４が外殻１２から離れることができない。肩部２１に上側挟持部２４が設けられていない比較例の容器本体では、図５に示すように、内袋１４の内面同士が近接して、内容物が通る流路が狭くなった狭窄部２５が形成されやすいが、本実施形態にように、肩部２１に上側挟持部２４ａ，２４ｂが設けられている容器本体３では、図１～図２に示すように、上側挟持部２４ａ，２４ｂにおいて内袋１４が規制されているので、内袋１４が収縮する際に、上側挟持部２４が延在する方向（図１Ｂの左右方向）において内袋１４の内面同士が近接しにくくなり、その結果、狭窄部２５が形成されにくくなる。内容物（特に、マヨネーズやケチャップのような粘稠性内容物）は狭窄部２５を通過しにくいので、狭窄部２５が形成されると、内容物の吐出性が悪くなりやすい。このため、本実施形態では、狭窄部２５の形成を抑制することによって、内容物の吐出性の悪化を抑制している。

【0018】

上側挟持部２４は、好ましくは、図３～図４に示すように、ダイレクトブロー成形において一対の金型３１，３２でパリソン３３を挟んで形成されるピンチオフ部Ｐ１である。一般に、ダイレクトブロー成形では、口部の外径よりも、外径が小さいパリソンを用いてブロー成形を行うのが一般的である。この場合、筒状パリソンが容器の底部側と口部側で閉じられた部位にのみピンチオフ部が形成されるが、口部側のピンチオフ部は通常は切除されて開口部が形成される。このため、図５に示すように、容器本体３の底部２３にのみピンチオフ部Ｐ２が設けられ、肩部２１にはピンチオフ部が設けられない。一方、本実施形態では、肩部２１にピンチオフ部Ｐ１を形成して上側挟持部２４として活用すべく、口部９の外径よりも外径が大きいパリソン３３を用いてブロー成形を行うことによって、肩部２１となる部位においてパリソン３３を金型３１，３２で挟んでピンチオフ部Ｐ１を形成している。また、肩部２１にピンチオフ部Ｐ１が形成される場合、口部９の側面にも肩部２１から連なるようにピンチオフ部Ｐ１が形成される。この場合、上側挟持部２４は、肩部２１と口部９にまたがるように設けられる。また、このような外径が大きいパリソン３３を用いて容器本体３を成形すると、成形時にパリソン３３が引き伸ばされる度合い（ブロー比）が低下するので、容器本体３の偏肉の度合いが小さくなるという利点が得られる。

【0019】

ところで、胴部２２の断面形状は、特に限定されないが、少なくとも一部が扁平形状であることが好ましく、全体が扁平形状であることがさらに好ましい。胴部２２が扁平形状である場合、ブロー比が大きくなりやすいので、本発明を適用する技術的意義が特に顕著である。ここで、扁平度を式１によって定義する。最大半径Ｒ１及び最小半径Ｒ２は、それぞれ、図１Ａに示すように、扁平度を測定する高さ位置での、中心軸Ｃからの距離が最大及び最小となる部位での、中心軸Ｃから容器外面までの距離である。
（式１）扁平度＝口部９の中心軸Ｃに垂直な断面での最大半径Ｒ１／最小半径Ｒ２

【0020】

扁平度は、中心軸Ｃに沿って一定であっても変化してもよい。最大扁平度（扁平度が最大となる部位での扁平度）は、例えば、１．２～６であり、１．５～５が好ましい。この値は、例えば、１．２、１．５、２．０、２．５、３．０、３．５、４．０、４．５、５．０、５．５、６．０であり、ここで例示した数値の何れか２つの間の範囲内であってもよい。

【0021】

図１及び図３に示すように、口部９の外径をＤ１とし、パリソン３３の外径をＤ２とすると、Ｄ２／Ｄ１は、例えば、１．１～３であり、例えば、１．１、１．２、１．３、１．４、１．５、１．６、１．７、１．８、１．９、２．０、２．５、３．０であり、ここで例示した数値の何れか２つの間の範囲内であってもよい。また、胴部２２の外径が最大の部位の外径をＤ３とすると、Ｄ２は、Ｄ３よりも小さいことが好ましい。Ｄ２は、好ましくは、Ｄ１＋（Ｄ３－Ｄ１）×αであり、αは、０．１～０．９が好ましく、例えば、０．１、０．２、０．３、０．４、０．５、０．６、０．７、０．８、０．９であり、ここで例示した数値の何れか２つの間の範囲内であってもよい。

【0022】

ところで、ピンチオフ部では、外殻１２の溶着強度が比較的低いので、ピンチオフ部に衝撃を加えることによって外殻１２と内袋１４の間に隙間を形成して、この隙間を、外殻１２と内袋１４の間に外気を導入するための外気導入部と利用することが考えられる。しかし、上側挟持部２４において外殻１２と内袋１４の間に隙間を形成すると、上側挟持部２４において内袋１４が外殻１２によって挟持されなくなる場合がある。この場合、狭窄部２５の形成が抑制されなくなる。このため、本実施形態では、外殻１２と内袋１４の間に隙間が設けられていない。言い換えると、上側挟持部２４では、図２Ａに示すように、上側挟持部２４を挟んだ両側の外殻１２同士がつながっており、上側挟持部２４が通気性を有しておらず、上側挟持部２４を通じて外殻１２と内袋１４の間に外気を導入することができないようになっている。これによって、上側挟持部２４において外殻１２が内袋１４をより確実に保持可能になっている。

【0023】

肩部２１のうち、上側挟持部２４が設けられている部位は、口部９の中心軸Ｃに対する角度が７０～９０度であることが好ましい。この角度は、例えば、７０、７５、８０、８５、９０度であり、ここで例示した数値の何れか２つの間の範囲内であってもよい。このように中心軸Ｃに対してほぼ垂直となる部位に上側挟持部２４を設けることによって、上側挟持部２４が延在する方向において内袋１４の内面同士が近接することがより効果的に抑制される。

【0024】

底部２３には、上述したように、金型３１，３２でパリソン３３を挟んで形成されるピンチオフ部Ｐ２が設けられる。成形直後の状態では、ピンチオフ部Ｐ２は、外殻１２が内袋１４を挟持する下側挟持部３４となっている。この状態では、上側挟持部２４ａ，２４ｂ及び下側挟持部３４において内袋１４が規制されているので、内袋１４が収縮する際に、上側挟持部２４が延在する方向において内袋１４の内面同士がより近接しにくくなる。

【0025】

一方、ピンチオフ部Ｐ２に衝撃を加えることによって外殻１２と内袋１４の間に隙間を形成して、この隙間を、外殻１２と内袋１４の間に外気を導入するための外気導入部として利用してもよい。この場合、外殻１２を穿孔することなく、外気導入部を形成することができる。なお、この場合、ピンチオフ部Ｐ２において内袋１４が外殻１２によって挟持されなくなる場合があり、その場合は、内袋１４は、上側挟持部２４ａ，２４ｂのみによって規制される。ピンチオフ部Ｐ２を下側挟持部３４として活用する場合には、下側挟持部３４及び上側挟持部２４以外の部位において、外殻１２を穿孔して外気導入孔を形成することが好ましい。

【符号の説明】

【0026】

１ ：二重容器
３ ：容器本体
７ ：収容部
９ ：口部
９ｄ ：係合部
１２ ：外殻
１４ ：内袋
２１ ：肩部
２２ ：胴部
２３ ：底部
２４ ：上側挟持部
２４ａ ：上側挟持部
２４ｂ ：上側挟持部
２５ ：狭窄部
３１ ：金型
３１ａ ：キャビティ面
３１ａ１ ：部位
３１ａ２ ：部位
３１ａ３ ：部位
３２ ：金型
３２ａ ：キャビティ面
３２ａ１ ：部位
３２ａ２ ：部位
３２ａ３ ：部位
３３ ：積層パリソン
３３ａ ：外層
３３ｂ ：内層
３４ ：下側挟持部
Ｃ ：中心軸
Ｐ１ ：ピンチオフ部
Ｐ２ ：ピンチオフ部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】