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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/26 20060101AFI20240904BHJP
   B29C 51/12 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
B29C51/26
B29C51/12
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020197403
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085628
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】原澤 友紀
(72)【発明者】
【氏名】中島 祥
(72)【発明者】
【氏名】石田 龍一
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/151213(WO,A1)
【文献】特開平01-209130(JP,A)
【文献】特開2002-046168(JP,A)
【文献】特開2020-179528(JP,A)
【文献】特開2013-103422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/26
B29C 51/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルの製造方法であって、
前記パネルは、第1及び第2本体部と、ヒンジ部を備え、
前記ヒンジ部は、平行に延びる第1及び第2ヒンジと、その間の中間部を備え、
第1本体部と前記中間部は、第1ヒンジで互いに回動可能に連結されており、
第2本体部と前記中間部は、第2ヒンジで互いに回動可能に連結されており、
前記方法は、押出工程と、賦形工程と、インサート工程と、型閉じ工程を備え、
前記押出工程では、第1及び第2金型の間に第1及び第2樹脂シートを押し出し、
第2樹脂シートは、第1樹脂シートと第2金型の間に配置され、
前記賦形工程では、第1及び第2樹脂シートをそれぞれ第1及び第2金型のキャビティ面に沿って賦形し、
前記インサート工程では、第1及び第2樹脂シートの間に発泡体を配置し、
前記型閉じ工程では、第1及び第2金型を型閉じし、
第2金型は、前記ヒンジ部を形成する凸条を備え、
前記凸条の先端には、第1及び第2ヒンジに対応する第1及び第2突起と、前記中間部に対応し且つ第1及び第2突起の間に配置された溝が設けられており、
前記型閉じ工程では、前記凸条の先端と第1金型の間で第1及び第2樹脂シート及び前記発泡体を挟んで圧縮することによって前記ヒンジ部が形成され、
前記溝の深さをDg、第2樹脂シートの厚さをTs2とすると、
Dg/Ts2の値は、1.5~3であ
前記凸条に対向する部位での前記発泡体の厚さをTcとすると、
Tc/Ts2の値は、2~6である、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記溝の幅をWgとすると、
Wg/Dgの値は、2.5~4である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風呂蓋や、車両の荷室に設置されるフロアボード等として利用可能なパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一対のヒンジの間に中空二重壁構造の中間部(支持体)が設けられているパネルが開示されている。このようなパネルは、ヒンジにおいて折りたたみ可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-46168号公報
【文献】WO2013/077198
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のパネルは、特許文献2に開示されているような一対の樹脂シートを用いた真空成形によって形成可能であるが、その場合に、中間部の閉空間内に加圧されたエアーが残留してしまう場合がある。この部位に加圧されたエアーが残留すると、このエアーによって、中間部とヒンジの境界に水ぶくれ状の膨張部が形成されてしまう場合がある。
【0005】
このような問題を避けるために、成形の際に中間部に中空ピンを刺して中間部の閉空間内に加圧されたエアーが残留しないようにする対策が考えられるが、中間部のサイズが小さい場合には、中空ピンを刺すことが容易でなく、このような対策を施すことが困難である。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、中間部のサイズが小さい場合であっても、中間部とヒンジの境界に水ぶくれ状の膨張部が形成されることが抑制される、パネルの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、パネルの製造方法であって、前記パネルは、第1及び第2本体部と、ヒンジ部を備え、前記ヒンジ部は、平行に延びる第1及び第2ヒンジと、その間の中間部を備え、第1本体部と前記中間部は、第1ヒンジで互いに回動可能に連結されており、第2本体部と前記中間部は、第2ヒンジで互いに回動可能に連結されており、前記方法は、押出工程と、賦形工程と、インサート工程と、型閉じ工程を備え、前記押出工程では、第1及び第2金型の間に第1及び第2樹脂シートを押し出し、第2樹脂シートは、第1樹脂シートと第2金型の間に配置され、前記賦形工程では、第1及び第2樹脂シートをそれぞれ第1及び第2金型のキャビティ面に沿って賦形し、前記インサート工程では、第1及び第2樹脂シートの間に発泡体を配置し、前記型閉じ工程では、第1及び第2金型を型閉じし、第2金型は、前記ヒンジ部を形成する凸条を備え、前記凸条の先端には、第1及び第2ヒンジに対応する第1及び第2突起と、前記中間部に対応し且つ第1及び第2突起の間に配置された溝が設けられており、前記型閉じ工程では、前記凸条の先端と第1金型の間で第1及び第2樹脂シート及び前記発泡体を挟んで圧縮することによって前記ヒンジ部が形成され、前記溝の深さをDg、第2樹脂シートの厚さをTs2とすると、Dg/Ts2の値は、1.5~3である、方法が提供される。
【0008】
本発明者は鋭意検討を行ったところ、第1及び第2樹脂シートの間に発泡体を挟んで、これらを圧縮することによって、第1及び第2ヒンジとその間の中間部を備えるヒンジ部を形成したところ、中間部に中空ピンを刺さなくても、中間部とヒンジの境界に膨張部が形成されることが抑制されることを見出し、本発明の完成に到った。膨張部の形成が抑制される作用としては、成形時に発泡体を通じてエアーが逃げやすくなるために、中間部内に加圧エアーが残留しにくくなるためであると考えられる。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記凸条に対向する部位での前記発泡体の厚さをTcとすると、Tc/Ts2の値は、2~6である、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記溝の幅をWgとすると、Wg/Dgの値は、2.5~4である、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1Aは、パネル1の背面図であり、図1Bは、図1A中のC-C断面図である。
図2図2Aは、図1A中の領域Aの拡大図であり、図2Bは、図1B中の領域Bの拡大図である。
図3】パネル1の製造に利用可能な成形機10の構成図(金型21,31及びその近傍の部材については縦断面図)である。
図4】金型21,31の間に樹脂シート23,33を押し出した状態を示す断面図である。
図5図4中の領域Aの拡大図である。
図6図4の状態から、樹脂シート23,33を金型21,31のキャビティ内面に沿って賦形した後の状態を示す断面図である。
図7図6の状態から、発泡体37を樹脂シート23に貼り付けた後の状態を示す断面図である。
図8】型閉じ工程の途中の状態であって、樹脂シート33のうち突起35a,35bを覆う部位33a,33bが発泡体37に接触した直後の状態を示す。
図9図8中の領域Aの拡大図である。
図10】樹脂シート23,33の間に発泡体37が無い場合に、型閉じ工程の途中に、部位33a,33bが樹脂シート23に接触した直後の状態を示す。
図11】中間部5cとヒンジ5a,5bの境界に、水ぶくれ状の膨張部9が形成された状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0012】
1.パネル1
まず、本発明の一実施形態のパネルの製造方法によって製造可能なパネル1について説明する。図1図2に示すように、パネル1は、第1及び第2本体部2a,2bと、ヒンジ部5を備える。
【0013】
本体部2a,2bは、パネル形状の成形体である。パネル1は、表壁3と、裏壁4を備える。表壁3と裏壁4は、間隔をおいて対向している。表壁3と裏壁4の周囲は、周囲壁6によって繋がれている。
【0014】
表壁3の表面は平坦である。ヒンジ部5は、裏壁4が表壁3に向かって凹むことで形成されている。裏壁4には、ヒンジ部5に隣接した位置に傾斜部4aが設けられており、表壁3と裏壁4の間隔は、傾斜部4aにおいて、ヒンジ部5に向かうにつれて狭くなっている。
【0015】
パネル1の表壁3側には、表皮材8が設けられている。表皮材8は、パネル1の表壁3側に、本体部2aと、ヒンジ部5と、本体部2bにまたがるように設けられている。表皮材8は、不織布のような通気性を有するカーペット状の部材で構成されることが好ましく、パネル1の成形時に表壁3と一体成形することが好ましい。
【0016】
本体部2a,2bでの表壁3及び裏壁4の厚さは、例えば、0.5~2mmであり、具体的には例えば、0.5、1.0、1.5、2.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0017】
表壁3と裏壁4の間には発泡体7が設けられている。発泡体7は、表壁3と裏壁4の間のスペースを確保したり、パネル1の強度や断熱性を高めたりする機能を有する。
【0018】
ヒンジ部5は、平行に延びる第1及び第2ヒンジ5a,5bと、その間の中間部5cを備える。第1本体部2aと中間部5cは、第1ヒンジ5aで互いに回動可能に連結されており、第2本体部2bと中間部5cは、第2ヒンジ5bで互いに回動可能に連結されている。このため、本体部2a,2bがヒンジ部5で互いに回動可能に連結されている。
【0019】
中間部5cは、断面が略台形状であり、中間部5cの厚さは、中間部5cの幅方向の端に向かって徐々に小さくなっている。このため、中間部5cは、スムーズにヒンジ5a,5bに連結される。
【0020】
ヒンジ5a,5bの厚さは、例えば0.001~0.5mmであり、具体的には例えば、0.001、0.01、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ヒンジ5a,5bの幅は、例えば0.5~3mmであり、具体的には例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0021】
中間部5cの厚さをTiとすると、Tiは、1.5~3mmであり、具体的には例えば、1.5、2.0、2.5、3.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。中間部5cの幅をWiとすると、Wiは、例えば4~8mmであり、具体的には例えば、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。また、Wi/Tiの値は、例えば1.5~5であり、好ましくは、2.5~4であり、具体的には例えば、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0022】
本体部2a,2bでの裏壁4の厚さをTrとすると、Ti/Trの値は、例えば1.5~3であり、具体的には例えば、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0023】
なお、本願明細書では、ヒンジ5a,5b及び中間部の厚さは、表皮材8の厚さを含まない厚さを意味する。また、各種部材の厚さ及び幅等の値は、別段の規定がない場合には、平均値を意味する。
【0024】
2.成形機10
次に、図3図5を用いて、パネル1の製造方法の実施に利用可能な成形機10について説明する。成形機10は、一対の樹脂シート形成装置20と、第1及び第2金型21,31を備える。各樹脂シート形成装置20は、ホッパー12と、押出機13と、アキュームレータ17と、Tダイ18を備える。押出機13とアキュームレータ17は、連結管25を介して連結される。アキュームレータ17とTダイ18は、連結管27を介して連結される。
以下、各構成について詳細に説明する。
【0025】
<ホッパー12,押出機13>
ホッパー12は、原料樹脂11を押出機13のシリンダ13a内に投入するために用いられる。原料樹脂11の形態は、特に限定されないが、通常は、ペレット状である。原料樹脂は、例えばポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂であり、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体及びその混合物などが挙げられる。原料樹脂11は、ホッパー12からシリンダ13a内に投入された後、シリンダ13a内で加熱されることによって溶融されて溶融樹脂になる。また、シリンダ13a内に配置されたスクリューの回転によってシリンダ13aの先端に向けて搬送される。スクリューは、シリンダ13a内に配置され、その回転によって溶融樹脂を混練しながら搬送する。
【0026】
<アキュームレータ17、Tダイ18>
溶融樹脂は、シリンダ13aの樹脂押出口から押し出され、連結管25を通じてアキュームレータ17内に注入される。アキュームレータ17は、シリンダ17aとその内部で摺動可能なピストン17bを備えており、シリンダ17a内に溶融樹脂が貯留可能になっている。そして、シリンダ17a内に溶融樹脂が所定量貯留された後にピストン17bを移動させることによって、連結管27を通じて溶融樹脂をTダイ18内に設けられたスリットから押し出して溶融状態の第1及び第2樹脂シート23,33を形成する。
【0027】
<金型21,31>
樹脂シート23,33は、開閉可能な金型21,31を開いた状態で金型21,31の間に押し出される。図4に示すように、金型21,31は、キャビティ面21a,31aを有し、キャビティ面21a,31aを取り囲むようにピンチオフ部21b,31bが設けられている。キャビティ面21a,31a内には、減圧吸引孔(図示せず)が設けられており、減圧吸引孔を通じて樹脂シート23,33を減圧吸引してキャビティ面21a,31aに沿った形状に賦形することが可能になっている。樹脂シート23,33の厚さは、例えば、0.5~2mmであり、具体的には例えば、0.5、1.0、1.5、2.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0028】
金型31には、ヒンジ部5を形成する凸条35が設けられている。凸条35は、細長い突部であり、凸条35の長手方向が樹脂シート23,33の押出方向に非平行になるように構成されることが好ましく、凸条35の長手方向が樹脂シート23,33の押出方向に直交するように構成されることがさらに好ましい。この場合、ヒンジ部5の長手方向に沿った樹脂シート23,33の厚さの変化が抑制される。
【0029】
図5に示すように、凸条35の先端には、ヒンジ5a,5bに対応する第1及び第2突起35a,35bと、中間部5cに対応し且つ突起35a,35bの間に配置された溝35cが設けられている。突起35a,35bの幅は、例えば0.5~3mmであり、具体的には例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0030】
溝35cは、略台形状である。溝35cの深さをDgとすると、Dgは、1.5~3mmであり、具体的には例えば、1.5、2.0、2.5、3.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。溝35cの幅をWgとすると、Wgは、例えば4~8mmであり、具体的には例えば、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。また、Wg/Dgの値は、例えば1.5~5であり、好ましくは、2.5~4であり、具体的には例えば、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0031】
樹脂シート33の厚さTs2とすると、Dg/Ts2の値は、例えば1.5~3であり、具体的には例えば、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0032】
3.パネル1の製造方法
ここで、図4図9を用いて、本発明の一実施形態のパネル1の製造方法について説明する。本実施形態の方法は、押出工程と、賦形工程と、インサート工程と、型閉じ工程を備える。以下、詳細に説明する。
【0033】
(1)押出工程
押出工程では、図4に示すように、金型21,31の間に樹脂シート23,33を押し出す。樹脂シート33は、樹脂シート23と金型31の間に配置される。金型21と樹脂シート23の間には表皮材シート38が配置される。表皮材シート38は不要な場合は省略可能である。
【0034】
(2)賦形工程
賦形工程では、図6に示すように、樹脂シート23,33をそれぞれ金型21,31のキャビティ面21a,31aに沿って賦形する。この工程は、金型21,31によって樹脂シート23,33の減圧吸引を行うことによって実行することができる。樹脂シート23が賦形される際に、表皮材シート38もキャビティ面21aに沿って賦形される。
【0035】
(3)インサート工程
インサート工程では、図6図7に示すように、樹脂シート23,33の間に発泡体37を配置する。好ましくは、発泡体37は、樹脂シート23に溶着させる。発泡体37は、第1及び第2本体部37a,37bが連結部37cで連結されて構成される。本体部37a,37bは、それぞれパネル1の本体部2a,2b内に収容される。連結部37cは、ヒンジ部5に対応する。発泡体37は、連結部37cが凸条35に対向するように配置される。連結部37cの厚さをTcとすると、Tcは、例えば、2~6mmであり、具体的には例えば、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。また、Tc/Ts2の値は、例えば2~6であり、具体的には例えば、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0036】
発泡体37の発泡倍率は、例えば3~50倍であり、20~50倍が好ましい。この発泡倍率は、具体的には例えば、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50倍であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。発泡体37の材料としては、ポリオレフィン、ポリスチレン、又はそのアロイなどが挙げられる。
【0037】
(4)型閉じ工程
型閉じ工程では、金型21,31の型閉じを行う。
【0038】
図8図9は、型閉じ工程の途中の状態であって、樹脂シート33のうち突起35a,35bを覆う部位33a,33bが発泡体37に接触した直後の状態を示す。この時点で、樹脂シート33と発泡体37によって囲まれた空間が閉空間Sになる。この状態で型閉じをさらに進めると、発泡体37のうち部位33a,33bに対向する部位が、部位33a,33bによって溶融されると共に、発泡体37のうち閉空間Sに対向する部位が閉空間Sに入り込んで、閉空間S内のエアーを圧縮しようとする。しかし、発泡体37は、ある程度の通気性を有しているので、閉空間S内のエアーが発泡体37を通じて逃げることができる。このため、閉空間S内のエアーが加圧されることが抑制される。
【0039】
図8図9の状態から金型21,31の型閉じがさらに進むと、ピンチオフ部21b,31bに沿って樹脂シート23,33が互いに溶着されて、一対の金型21,31によって形成されるキャビティの内面に沿った形状のパネル1が得られる。凸条35と金型21との間において、樹脂シート23,33及び発泡体37(より詳しくは、連結部37c)が圧縮されてヒンジ部5が形成される。凸条35の先端の突起35a,35bで圧縮された部位がヒンジ5a,5bとなり、溝35cに対向する部位が中間部5cとなる。表皮材シート38が表皮材8となる。ピンチオフ部21b,31bの外側の部位がバリとなる。この後は、金型21,31を開いてパネル1を取り出し、バリを除去することによって、図1に示すパネル1が得られる。
【0040】
ここで、比較のために、樹脂シート23,33の間に発泡体37が無い場合に、型閉じ工程の途中に、部位33a,33bが樹脂シート23に接触した直後の状態を図10に示す。このような形態では、発泡体37が無いので、部位33a,33bが樹脂シート23に接触することによって閉空間Sが形成される。この状態で型閉じをさらに進めると、部位33a,33bと、樹脂シート23のうち部位33a,33bに対向する部位が、突起35a,35bと金型21によって圧縮されると共に、樹脂シート23のうち閉空間Sに対向する部位が閉空間Sに入り込んで、閉空間S内のエアーを圧縮する。閉空間S内のエアーは、樹脂シート23,33を通じて逃げることができないので、閉空間S内のエアーはそのまま圧縮されて加圧エアーとして中間部5cに残留することになる。そして、パネル1が金型21,31から取り出されると、中間部5c内の加圧エアーによって、図11に示すように、中間部5cとヒンジ5a,5bの境界に、水ぶくれ状の膨張部9が形成される。本実施形態では、上述したように、樹脂シート23,33の間に発泡体37を配置することによって、中間部5c内に加圧エアーを残留することを抑制し、それによって膨張部9が形成されることを抑制する。
【実施例
【0041】
1.パネル1の製造
・実施例1
上述した方法に従って、上記実施形態に示す形状のパネル1を製造した。詳細な製造条件は、以下の通りである。
・樹脂シート23,33の厚さ:1mm
・樹脂シート23,33の材料:ポリプロピレン50質量%、HDPE30質量%、タルク:20質量%
・突起35a,35bの幅:1mm
・溝35cの深さ:2mm、溝35cの幅:6mm
・発泡体37の連結部37c厚さ:4mm
・発泡体37の材料:ピオセラン(積水化成品工業(株)製)、ポリエステルとポリスチレンのアロイ
・発泡体37の発泡倍率:35倍
・表皮材シート38:厚さ1mmの不織布
【0042】
・比較例1
樹脂シート23,33の間に発泡体を配置しない点以外は、実施例1と同様にパネル1を製造した。
【0043】
・参考例1
突起35a,35b及び溝35cを以下のように変更した以外は、比較例1と同様にパネル1を製造した。
・溝35cの深さ:1mm、溝35cの幅:2mm
【0044】
2.パネル1の評価
上述の各パネル1を目視して、膨張部9が形成されているかどうかを確認したところ、実施例1のパネル1では、膨張部9は形成されていなかった。一方、比較例1のパネルでは、図11に示すような膨張部9が形成されていた。この結果は、樹脂シート23,33の間に発泡体37を配置した状態でパネル1の成形を行うことによって、膨張部9の形成を抑制することができることを示している。
【0045】
また、参考例1でも膨張部9が形成されていなかった。この結果は、溝35cの深さが、樹脂シート33の厚さと同程度以下である場合には、閉空間S内のエアーが加圧されたとしても加圧の程度が小さく、膨張部9が形成されないことを示している。つまり、膨張部9が形成されるのは、(溝35cの深さ/樹脂シート33の厚さ)の値が特定の範囲内である場合にのみ起こる現象であるということができる。
【符号の説明】
【0046】
1 :パネル
2a :第1本体部
2b :第2本体部
3 :表壁
4 :裏壁
4a :傾斜部
5 :ヒンジ部
5a :第1ヒンジ
5b :第2ヒンジ
5c :中間部
6 :周囲壁
7 :発泡体
8 :表皮材
9 :膨張部
10 :成形機
11 :原料樹脂
12 :ホッパー
13 :押出機
13a :シリンダ
17 :アキュームレータ
17a :シリンダ
17b :ピストン
18 :Tダイ
20 :樹脂シート形成装置
21 :第1金型
21a :キャビティ面
21b :ピンチオフ部
23 :第1樹脂シート
25 :連結管
27 :連結管
31 :第2金型
31a :キャビティ面
31b :ピンチオフ部
33 :第2樹脂シート
33a :部位
33b :部位
35 :凸条
35a :第1突起
35b :第2突起
35c :溝
37 :発泡体
37a :第1本体部
37b :第2本体部
37c :連結部
38 :表皮材シート
S :閉空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11