(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】二重容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20240904BHJP
【FI】
B65D1/02 111
(21)【出願番号】P 2020202153
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】江口 鉄明
(72)【発明者】
【氏名】樽野 真輔
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 雄飛
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-151893(JP,A)
【文献】特開2015-145249(JP,A)
【文献】国際公開第03/097468(WO,A1)
【文献】特開2016-020085(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168922(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 77/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻と内袋とを有し且つ前記内袋が収縮可能な容器本体を備えた二重容器であって、
前記外殻と前記内袋の一方は第1PET層で構成され、
前記外殻と前記内袋の他方は、第2PET層と水溶性ガスバリア層で構成され、
前記水溶性ガスバリア層は、前記第1PET層及び前記第2PET層の間に配置され、
前記第1PET層及び前記第2PET層の少なくとも一方を構成するPETは、IV値が0.9以上である、二重容器。
【請求項2】
外殻と内袋とを有し且つ前記内袋が収縮可能な容器本体を備えた二重容器であって、
前記外殻と前記内袋の一方は第1PET層で構成され、
前記外殻と前記内袋の他方は、第2PET層と水溶性ガスバリア層で構成され、
前記水溶性ガスバリア層は、前記第1PET層及び前記第2PET層の間に配置される
とともに、
前記容器本体の開口端まで延在する、二重容器。
【請求項3】
外殻と内袋とを有し且つ前記内袋が収縮可能な容器本体を備えた二重容器であって、
前記外殻と前記内袋の一方は第1PET層で構成され、
前記外殻と前記内袋の他方は、第2PET層と水溶性ガスバリア層
及びそれらの間に設けられた水溶性の接着層とで構成され、
前記水溶性ガスバリア層は、前記第1PET層及び前記第2PET層の間に配置される、二重容器。
【請求項4】
請求項1
又は請求項2に記載の二重容器であって、
前記外殻は、前記第1PET層で構成され、
前記内袋は、前記第2PET層と前記水溶性ガスバリア層で構成される、二重容器。
【請求項5】
請求項1
~請求項
4の何れか1項に記載の二重容器であって、
前記外殻には外気導入孔が形成されており、当該外気導入孔を介して前記外殻と前記内袋の間の中間空間に外気が導入されることで、前記外殻から前記内袋が剥離して当該内袋が収縮する、二重容器。
【請求項6】
請求項1~請求項
5の何れか
1項に記載の二重容器であって、
前記水溶性ガスバリア層は、BVOH層で構成される、二重容器。
【請求項7】
請求項1~請求項
6の
何れか1項に記載の二重容器のリサイクル方法であって、
使用後の前記容器本体を水中に浸して前記水溶性ガスバリア層を溶出させる工程を備える、二重容器のリサイクル方法。
【請求項8】
外殻と内袋とを有し且つ前記内袋が収縮
可能な容器本体を備えた二重容器であって、
前記外殻と前記内袋の一方は第1PET層で構成され、
前記外殻と前記内袋の他方は、第2PET層とガスバリア層で構成され、
前記ガスバリア層は、BVOH層が、一対のEVOH層に挟まれて構成される、二重容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外殻と内袋とを有し且つ内容物の減少に伴って内袋が収縮する二重容器が知られている。例えば、特許文献1には、外殻(外層体)と内袋(内層体)とがポリエチレンテレフタレート(以下、PETと呼ぶ)で形成された二重容器(積層剥離容器)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示される二重容器は、ナイロン又はエチレン-ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと呼ぶ)で形成された中間層を備えており、内容物が減少すると中間層が接着した外殻に対し内袋のみが剥離するようになっている。しかしながら、このような構成の二重容器をリサイクルしようとすると、PETではない中間層が外殻と接着していることから中間層を分離する必要があり、容易にリサイクルすることが難しかった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、容易にリサイクルをすることが可能な二重容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、外殻と内袋とを有し且つ内容物の減少に伴って前記内袋が収縮する容器本体を備えた二重容器であって、前記外殻と前記内袋の一方は第1PET層で構成され、前記外殻と前記内袋の他方は、第2PET層と水溶性ガスバリア層で構成され、前記水溶性ガスバリア層は、前記第1PET層及び前記第2PET層の間に配置される、二重容器が提供される。
【0007】
ここで、水溶性ガスバリア層とは、100℃(好ましくは、20、30、40、50、60、70、80、又は90℃)の水中に浸漬させた状態で撹拌することによって1質量%(好ましくは2,3,4,又は5質量%)以上、溶解可能な樹脂の層である。水溶性ガスバリア層は、二重容器のガスバリア性を向上させるために用いられる。このような樹脂としては、例えば、ブテンジオール・ビニルアルコール共重合(以下、BVOHと呼ぶ)樹脂が挙げられる。
【0008】
本発明によれば、使用後の容器本体を水中に浸して水溶性ガスバリア層を溶出させることでPET層だけを残存させることができる。これにより、外殻と内袋とを有し且つ内容物の減少に伴って内袋が収縮する容器本体を備えた構成の二重容器を、容易にリサイクルをすることが可能となっている。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0010】
好ましくは、前記外殻は、前記第1PET層で構成され、前記内袋は、前記第2PET層と前記水溶性ガスバリア層で構成される。
【0011】
好ましくは、前記外殻には外気導入孔が形成されており、当該外気導入孔を介して前記外殻と前記内袋の間の中間空間に外気が導入されることで、前記外殻から前記内袋が剥離して当該内袋が収縮する。
【0012】
好ましくは、前記水溶性ガスバリア層は、BVOH層で構成される。
【0013】
また、本発明によれば、上記の二重容器のリサイクル方法であって、使用後の前記容器本体を水中に浸して前記水溶性ガスバリア層を溶出させる工程を備える、二重容器のリサイクル方法が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、外殻と内袋とを有し且つ内容物の減少に伴って前記内袋が収縮する容器本体を備えた二重容器であって、前記外殻と前記内袋の一方は第1PET層で構成され、前記外殻と前記内袋の他方は、第2PET層とガスバリア層で構成され、前記ガスバリア層は、BVOH層が、一対のEVOH層に挟まれて構成される、二重容器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る二重容器1の正面図である。
【
図2】
図1の二重容器1のキャップ3を開いた状態でのA-A線断面図である。
【
図3】
図1の二重容器1の容器本体2の層構成を示す模式図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る二重容器1の容器本体2の層構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0017】
1.第1実施形態
1.1 二重容器1の構成
本発明の第1実施形態に係る二重容器1は、
図1及び
図2に示すように、容器本体2と、キャップ3とを備える。本実施形態の二重容器1は、いわゆる積層剥離容器であり、内容物が充填された内袋24は、内容物の減少に伴って外殻23から離れて収縮するようになっている。
【0018】
容器本体2は、内容物を収容する収容部21と、収容部21から内容物を吐出する口部22とを備える。口部22は、キャップ3を装着可能な係合部22aを備える。係合部22aは、ネジ式キャップの場合は雄ねじ部であり、打栓式キャップの場合は周方向に突出する環状突起である。
【0019】
容器本体2は、外殻23と内袋24とを有し、且つ内容物の減少に伴って内袋24が外殻23から離れて収縮するよう構成される。外殻23と内袋24は積層されており、内袋24内に内容物が収容される。このような容器では、内袋24内に外気が侵入しにくいので、内容物の劣化が抑制される。
【0020】
外殻23には、
図2に示すように、収容部21の肩部に設けられた凹部21aにおいて、外気導入孔25が設けられている。外気導入孔25は、外殻23と内袋24の間の中間空間Sに外気を導入するための孔である。外気導入孔25から中間空間Sに外気が導入されることで、内容物が減少した際に外殻23から内袋24が剥離して内袋24が収縮できるようになっている。なお、外気導入孔25には、外殻23と内袋24の間の中間空間Sへの空気の出入りを調整するための弁部材26を装着することが好適である。なお、弁部材26を用いる場合には、弁部材26をPET樹脂で成形するか、又は水溶性樹脂で成形することが好適である。これにより、後述する二重容器1のリサイクル方法において、分離工程で弁部材26を取り外すことなく処理することが可能となる。また、弁部材26を凹部21aに設けることで、収容部21をシュリンクフィルムで覆う場合にも、弁部材26とシュリンクフィルムの干渉を避けることができる。
【0021】
また、本実施形態において、外殻23は、
図3に示すように、PETから構成される第1PET層23aで構成される単層構造であり、内袋24は、PETから構成される第2PET層24a及び水溶性ガスバリア層としてのBVOH層24bで構成される2層構造である。BVOH層24bは、具体的には、ブテンジオール・ビニルアルコール共重合樹脂(BVOH樹脂)からなる層である。内袋24において、BVOH層24bは第2PET層24aの外側に配置される。したがって、容器本体2において、BVOH層24bは、第1PET層23a及び第2PET層24aの間に配置されることになる。
【0022】
外殻23と内袋24とを全体で見ると、容器本体2の層構成は3層構成となっており、外層から順に第1PET層23a//BVOH層24b/第2PET層24aとなっている。そして、容器本体2は、外気導入孔25を外殻23(第1PET層23a)のみ貫通する深さとしておくことで、中間空間Sへ外気が導入されることにより第1PET層23aとBVOH層24bの間で剥離するようになっている。なお、本実施形態では、第2PET層24aとBVOH層24bの間に接着層は設けられていない。
【0023】
第1PET層23a及び第2PET層24aを構成するPETは、それぞれダイレクトブロー成形ができるよう、例えばIV値が0.9以上のものを用いることが好ましい。また、PETのIV値は、より好ましくは、1.0以上であり、さらに好ましくは、1.1以上である。なお、IV値は、固有粘度とも呼ばれ、JIS K 7367-5によって求められる。
【0024】
一方、BVOH層24bを構成するBVOH樹脂は、容器本体2にガスバリア性を付与するために用いられる。また、BVOH樹脂は、水に溶解する性質を有している。具体的には、BVOH樹脂は、ガスバリア性を付与するために従来から用いられているEVOH樹脂よりも優れた水溶性(水溶解性)を有し、低い水温下においても短時間で溶解させることが可能である。なお、本明細書において、「水溶性」とは、100℃(好ましくは、20、30、40、50、60、70、80、又は90℃)の水中に浸漬させて撹拌することによって1質量%(好ましくは2,3,4,又は5質量%)以上、溶解することと規定される。
【0025】
上記のような層構成の容器本体2は、パリソンのブロー成形によって形成することができる。ブロー成形は、インジェクションブロー成形(二軸延伸ブロー成形)であってもよく、ダイレクトブロー成形であってもよい。
【0026】
インジェクションブロー成形の場合は、外殻23を形成する外殻プリフォームと内袋24を形成する内袋プリフォームを二重に組み合わせ、これを赤外線ヒーターで温めてブロー成形を行うことによって容器を製造する。各プリフォームは、射出成形又は押出成形等によって成形される。また、内袋プリフォームは、第2PET層とBVOH層の2層構成となっている。
【0027】
一方、ダイレクトブロー成形の場合は、押出機から押し出された溶融状態の多層パリソンを一対の分割金型で挟んでパリソン内部にエアーを吹き込むことによって容器を製造する。パリソンは、筒状であっても、シート状であってもよい。
【0028】
キャップ3は、
図2に示すように、逆止弁30と、吐出口31とを備える。そして、上記構成の容器本体2にキャップ3を取り付けて構成される二重容器1は、いわゆるスクイズ式容器である。二重容器1は、キャップ3の吐出口31を下側に向けて傾斜させた状態で外殻23をスクイズすると、内袋24が圧縮されることで内容物によってキャップ3の逆止弁30が押されて逆止弁30が開き、内容物が吐出される構成となっている。
【0029】
1.2 二重容器1のリサイクル方法
次に、上記構成の二重容器1、特に、容器本体2をリサイクルする方法について説明する。本実施形態の二重容器1のリサイクル方法は、分離工程と、粉砕工程と、溶出工程と、再製品化工程とを備える。
【0030】
<分離工程>
分離工程では、まず、内容物を全て吐出させるとともに、キャップ3を取り外す。次に、容器本体2の収容部21がシュリンクフィルムで覆われている場合には、シュリンクフィルムを取り外し、外気導入孔25に弁部材26が装着されている場合は、これも取り外す。ただし、弁部材26がPET樹脂製又は水溶性樹脂製である場合には、弁部材26を取り外す必要はない。本工程により、二重容器1は、容器本体2とその他の部分とに分離される。なお、当該分離工程は、製品を使用した消費者によって行われる場合もある。
【0031】
<粉砕工程>
次に、粉砕工程では、容器本体2を例えばカッター等の粉砕手段で粉砕して、粉砕片(ペレット)にする。粉砕片には、外殻23を構成していた第1PET層23a及び内袋24を構成していた第2PET層24aに対応するPET樹脂と、内袋24を構成していたBVOH層24bに対応するBVOH樹脂とが含まれる。粉砕片のサイズは特に限定されないが、次の溶出工程でBVOH樹脂が溶解可能な程度に小さいサイズであることが好ましい。
【0032】
<溶出工程>
次に、溶出工程では、粉砕工程において容器本体2を粉砕して得られた粉砕片を水中に浸して撹拌する。すると、BVOH樹脂が水に溶解する。また、内袋24が水溶性の接着層を有している場合には、当該接着層も溶解される。なお、BVOH樹脂を効果的に溶出させるには、粉砕片を浸す水を高温とすることが好ましい。本工程により、BVOH樹脂が水中に溶出するため、PET樹脂のみを取り出すことができる。なお、溶出工程を進めると、BVOH樹脂が次第に蓄積していくが、「水中」という場合の水には、BVOH樹脂が溶解した水も含まれる。また、粉砕片を浸す「水」は、純水に限定されるわけではなく、他の成分を含有する水溶液であっても良い。
【0033】
<再製品化工程>
溶出工程によってPET樹脂の単一素材となった粉砕片は、PETペレットとして各種の再製品化工程に供される。
【0034】
1.3 作用効果
以上のように、本実施形態の二重容器1によれば、容器本体2の外殻23が第1PET層23aで構成され、内袋24が第2PET層24a及びBVOH層24bで構成されている。内袋24がBVOH層24bを備えていることで、容器本体2のガスバリア性を向上させることが可能となっている。そして、リサイクルの際、容器本体2を水中に浸すことでBVOH層24bを溶出させることができ、容易にPET層のみを残存させ、リサイクルに供することが可能となっている。
【0035】
また、本実施形態では、複数層構成である内袋24の第2PET層24aとBVOH層24bの間に接着層が設けられていない。これにより、溶出されるPETに不純物が入らず、リサイクル性を向上させることが可能となっている。なお、接着層を設けない場合、二重容器1の使用時に第2PET層24aとBVOH層24bの間でも剥離が生じ得る。しかしながら、本実施形態の二重容器1は、外気導入孔25を外殻23(第1PET層23a)のみに設け、外気が第1PET層23aとBVOH層24bの間の中間空間Sへ導入されるよう構成されている。したがって、剥離は主に第1PET層23aとBVOH層24bの間において生じることとなり、内容物の減少に伴って内袋24が外殻23から適切に剥離するようになっている。
【0036】
1.4 第1実施形態の変形例
なお、本発明は、以下の態様でも実施可能である。
・上述した実施形態では、外殻23が、PETから構成される第1PET層23aで構成される単層構造であり、内袋24が、PETから構成される第2PET層24a及びBVOH層24bで構成される2層構造であった。つまり、上述した実施形態では、BVOH層24bが内袋24に設けられていた。しかしながら、BVOH層を外殻23に設けることも可能である。すなわち、内袋24を第1PET層で構成される単層構造とし、外殻23を第2PET層及びBVOH層で構成される2層構成とすることも可能である。この場合も、BVOH層は内袋24の第1PET層と外殻23の第2PET層の間に配置され、また、内袋24の第2PET層24aとBVOH層24bの間には接着層は設けられていない。このような構成であっても、容器本体2を水中に浸すことでBVOH層を溶出させることができ、容易にリサイクルをすることが可能である。
・上記実施形態において、二重容器1はスクイズ式であったが、ポンプによって内容物を吐出するポンプ式であっても良い。
・上記実施形態では、容器本体2を粉砕してから水溶性EVOHを溶出させていた。しかしながら、粉砕前の容器本体2を水中に浸し、外気導入孔25から外殻23と内袋24の間の中間空間Sに水を流入させることでBVOH層を溶出させ、その後、残ったPET層を粉砕するようにしても良い。
・上記実施形態では、内袋24を構成する第2PET層24aとBVOH層24bの間に接着層は設けられていなかった。しかしながら、水溶性の接着層を設けることで、リサイクル性を維持しつつ接着性を向上させることも可能である。
【0037】
2.第2実施形態
2.1 二重容器1の構成
次に、本発明の第2実施形態に係る二重容器1について説明する。本実施形態の二重容器1は、第1実施形態に係る二重容器1と類似しており、容器本体2の層構成のみが異なっている。したがって、以下では、第1実施形態の二重容器1との相違点についてのみ説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0038】
本実施形態に係る二重容器1の容器本体2は、
図4に示すように、外殻23と内袋24とを有し、且つ内容物の減少に伴って内袋24が外殻23から離れて収縮するよう構成される。外殻23は、PETから構成される第1PET層23aで構成される単層構造である。一方、内袋24は、PETから構成される第2PET層24a及びガスバリア層24bから構成される複数層構成である。そして、内袋24において、ガスバリア層24bは、第2PET層24aの外側に配置される。したがって、本実施形態のガスバリア層24bは、第1PET層23a及び第2PET層24aの間に配置されることになる。
【0039】
また、本実施形態において、ガスバリア層24bは、それ自体が、BVOH層24b2が一対のEVOH層である第1EVOH層24b1及び第2EVOH層24b3に挟まれて構成される複数層構成となっている。なお、第1EVOH層24b1及び第2EVOH層24b3は、EVOH樹脂からなる層である。EVOH樹脂は、BVOH樹脂と同様、ガスバリア性を有しており、加えて、外殻23を構成するPETとの剥離性も有している。
【0040】
外殻23と内袋24とを全体で見ると、容器本体2の層構成は5層構成となっており、外層から順に第1PET層23a//第1EVOH層24b1/BVOH層24b2/第2EVOH層24b3/第2PET層24aとなっている。そして、容器本体2は、外気導入孔25を外殻23(第1PET層23a)のみ貫通する深さとしておくことで、中間空間Sへ外気が導入されることにより第1PET層23aと第1EVOH層24b1の間で剥離するようになっている。なお、本実施形態において、複数層構成である内袋24の第1EVOH層24b1とBVOH層24b2の間、BVOH層24b2と第2EVOH層24b3の間、第2EVOH層24b3と第2PET層24aの間のいずれにも接着層は設けられていない。
【0041】
2.2 二重容器1のリサイクル方法
本実施形態の二重容器1をリサイクルする方法も、第1実施形態の方法と類似しており、分離工程と、粉砕工程と、溶出工程と、再製品化工程とを備えているが、これら各工程のうち、溶出工程のみが第1実施形態の方法と異なっている。したがって、以下では、本実施形態の二重容器1のリサイクル方法のうち、溶出工程についてのみ説明する。
【0042】
第1実施形態の二重容器1のリサイクル方法の溶出工程においては、粉砕工程において容器本体2を粉砕して得られた粉砕片を水中に浸して撹拌することでBVOH樹脂を水に溶解させていた。一方、本実施形態の溶出工程においては、粉砕片を水ではなく、水とイソプロピルアルコール(IPA)の混合溶媒に浸す。これにより、ガスバリア層24bを構成するBVOH樹脂及びEVOH樹脂がともに上記混合溶液に溶解して溶出するため、本実施形態の二重容器1についても、PET樹脂のみを取り出すことが可能となっている。なお、本実施形態においても、BVOH樹脂及びEVOH樹脂を効果的に溶出させるため、粉砕片を浸す混合溶媒を高温とする(熱混合溶媒とする)ことが好ましい。
【0043】
2.3 作用効果
以上のように、本実施形態の二重容器1によれば、容器本体2が上記の層構成、すなわち第1PET層23a及び第2PET層24aの間にガスバリア層24bを有する構成となっていることで、容器本体2のガスバリア性を向上させることが可能となっている。また、本実施形態では、ガスバリア層24bのBVOH層24b2を第1EVOH層24b1及び第2EVOH層24b3で挟むことで、BVOH層24b2の吸湿による性能低下を防止することが可能となっている。加えて、本実施形態の容器本体2は、外殻23を構成する第1PET層23aと内袋24を構成する第1EVOH層24b1とが隣接していることで、剥離性を向上させることが可能となっている。
【0044】
また、本実施形態では、複数層構成である内袋24のいずれの層間にも接着層は設けられていない。これにより、溶出されるPETに不純物が入らず、リサイクル性を向上させることが可能となっている。なお、接着層を設けない場合、内袋24の各層間、特に、剥離性のある第2EVOH層24b3と第2PET層24aの間でも剥離は生じ得る。しかしながら、本実施形態の二重容器1は、外気導入孔25を外殻23(第1PET層23a)のみに設け、外気が第1PET層23aと内袋24の第1EVOH層24b1の間の中間空間Sへ導入されるよう構成されている。したがって、剥離は主に第1PET層23aと第1EVOH層24b1の間において生じることとなり、内容物の減少に伴って内袋24が外殻23から適切に剥離するようになっている。
【0045】
2.4 第2実施形態の変形例
・上述した実施形態では、ガスバリア層24bが内袋24に設けられていた。しかしながら、ガスバリア層24bを外殻23に設けることも可能である。すなわち、内袋24を第1PET層で構成される単層構造とし、外殻23を第2PET層及びガスバリア層で構成される複数層構造とし、ガスバリア層を第1PET層及びdai2PET層で挟む構成とすることも可能である。なお、この場合も、ガスバリア層は、BVOH層が一対のEVOH層に挟まれて構成される複数層構成とすることが好適である。
【符号の説明】
【0046】
1 :二重容器
2 :容器本体
3 :キャップ
21 :収容部
21a :凹部
22 :口部
22a :係合部
23 :外殻
23a :第1PET層
24 :内袋
24a :第2PET層
24b :BVOH層(水溶性ガスバリア層)
25 :外気導入孔
26 :弁部材
30 :逆止弁
31 :吐出口
S :中間空間