(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】プリント基板設計プログラム、プリント基板設計方法及びプリント基板設計装置
(51)【国際特許分類】
G06F 30/394 20200101AFI20240904BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
G06F30/394
H05K3/00 D
(21)【出願番号】P 2021006816
(22)【出願日】2021-01-20
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中本 慎一
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-096202(JP,A)
【文献】特開平08-264656(JP,A)
【文献】特開2002-009159(JP,A)
【文献】特開2011-133990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/30 -30/398
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のプリント基板と前記第1のプリント基板に複数の電源端子または複数の接地端子を介して接続される第2のプリント基板との第1の設計情報を取得し、
前記第1のプリント基板と前記第2のプリント基板のそれぞれについて、
前記第1の設計情報に基づいて、電源配線層または接地配線層が形成される領域を、電源電流または接地電流の複数の供給元と複数の供給先の位置から決定される前記電源電流または前記接地電流の流れる方向に沿って分割した複数の第1の領域を決定し、
前記複数の第1の領域を複数の等電位線で分割した複数の第2の領域を決定し、
前記複数の等電位線における隣接する等電位線間に設定された目標電圧降下値と、前記複数の電源端子または前記複数の接地端子のそれぞれに設定された目標電流値に基づいて、前記複数の第2の領域のそれぞれの目標抵抗値を計算し、
前記目標抵抗値に基づいて、前記電源配線層または前記接地配線層を設計した第2の設計情報を生成する、
処理をコンピュータに実行させるプリント基板設計プログラム。
【請求項2】
前記目標電流値は、前記複数の電源端子または前記複数の接地端子のそれぞれについて同じ値である、請求項1に記載のプリント基板設計プログラム。
【請求項3】
前記目標抵抗値の計算では、前記複数の第1の領域の間における前記電源電流または前記接地電流の流入及び流出はないものとして計算が行われる、請求項1または2に記載のプリント基板設計プログラム。
【請求項4】
前記複数の供給元と前記複数の供給先の何れかは、前記複数の電源端子または前記複数の接地端子の何れかにビアを介して接続されるビア接続部である、請求項1乃至3の何れか一項に記載のプリント基板設計プログラム。
【請求項5】
前記方向は、前記複数の供給元のそれぞれと、前記複数の供給先のうち前記複数の供給元のそれぞれに対しての最短距離に位置する供給先とを結ぶ第1の直線の方向である、請求項1乃至4の何れか一項に記載のプリント基板設計プログラム。
【請求項6】
前記複数の供給元よりも前記複数の供給先が広範囲に配置されている場合、前記方向は、前記複数の供給先のそれぞれと、前記複数の供給元のうち前記複数の供給先のそれぞれに対しての最短距離に位置する供給元とを結ぶ第2の直線の方向である、請求項1乃至5の何れか一項に記載のプリント基板設計プログラム。
【請求項7】
前記目標電流値に基づいて、前記複数の第2の領域のそれぞれの電流値を計算し、前記目標電圧降下値を、計算した前記電流値で割ることで、前記目標抵抗値が計算される、請求項1乃至6の何れか一項に記載のプリント基板設計プログラム。
【請求項8】
前記複数の第2の領域のうち、前記複数の供給元の何れかが含まれる第2の領域の前記電流値は、前記方向の上流側の第2の領域から供給される第1の電流値と、含まれる供給元の電流値とを加算した値である、請求項7に記載のプリント基板設計プログラム。
【請求項9】
前記複数の第2の領域のうち、前記複数の供給先の何れかが含まれる第2の領域の前記電流値は、前記方向の下流側の第2の領域に供給する第3の電流値と、含まれる供給先の電流値とを加算した値である、請求項7または8に記載のプリント基板設計プログラム。
【請求項10】
コンピュータが、
第1のプリント基板と前記第1のプリント基板に複数の電源端子または複数の接地端子を介して接続される第2のプリント基板との第1の設計情報を取得し、
前記第1のプリント基板と前記第2のプリント基板のそれぞれについて、
前記第1の設計情報に基づいて、電源配線層または接地配線層が形成される領域を、電源電流または接地電流の複数の供給元と複数の供給先の位置から決定される前記電源電流または前記接地電流の流れる方向に沿って分割した複数の第1の領域を決定し、
前記複数の第1の領域を複数の等電位線で分割した複数の第2の領域を決定し、
前記複数の等電位線における隣接する等電位線間に設定された目標電圧降下値と、前記複数の電源端子または前記複数の接地端子のそれぞれに設定された目標電流値に基づいて、前記複数の第2の領域のそれぞれの目標抵抗値を計算し、
前記目標抵抗値に基づいて、前記電源配線層または前記接地配線層を設計した第2の設計情報を生成する、
プリント基板設計方法。
【請求項11】
第1のプリント基板と前記第1のプリント基板に複数の電源端子または複数の接地端子を介して接続される第2のプリント基板との第1の設計情報を記憶する記憶部と、
前記第1の設計情報を前記記憶部から取得し、前記第1のプリント基板と前記第2のプリント基板のそれぞれについて、前記第1の設計情報に基づいて、電源配線層または接地配線層が形成される領域を、電源電流または接地電流の複数の供給元と複数の供給先の位置から決定される前記電源電流または前記接地電流の流れる方向に沿って分割した複数の第1の領域を決定し、前記複数の第1の領域を複数の等電位線で分割した複数の第2の領域を決定し、前記複数の等電位線における隣接する等電位線間に設定された目標電圧降下値と、前記複数の電源端子または前記複数の接地端子のそれぞれに設定された目標電流値に基づいて、前記複数の第2の領域のそれぞれの目標抵抗値を計算し、前記目標抵抗値に基づいて、前記電源配線層または前記接地配線層を設計した第2の設計情報を生成する処理部と、
を有するプリント基板設計装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板設計プログラム、プリント基板設計方法及びプリント基板設計装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板には、LSI(Large Scale Integrated circuit)を搭載した別のプリント基板が複数の電源端子や複数の接地端子を介して接続されることがある。近年、それらの端子の高密度化により端子サイズの微細化が進んでいる。このため、端子間を接続するための半田接合部や、プリント基板内のビアにおける電流密度が増加しており、エレクトロマイグレーションによる半田接合部やビアの破断が発生しやすい状況になっている。
【0003】
また、電流供給元(たとえば、DC(Direct Current)-DCコンバータ)から電流供給先(たとえば、LSI)までの経路の抵抗値の違いにより、上記複数の電源端子や複数の接地端子のうち、電流供給元や電流供給先に近いものに局所的に電流が集中する。このような電源端子や接地端子に接続する半田接合部やビアでは、特に電流密度が高くなるため、エレクトロマイグレーションが促進され、破断が発生しやすい状況に陥る。
【0004】
従来、電流が特定の電源端子に集中することを防ぐために、電源配線層に開口部などを設けたり、電源配線層の数を増やしたりして、電流経路における抵抗値を調整する手法がある(たとえば、特許文献1,2参照)。
【0005】
なお、電源端子に過剰な電流が流れることを防ぐために、電源端子に接続するビアの径を変えて抵抗値を調整する手法がある(たとえば、特許文献3参照)。また、複雑な形状の電極パターンでも、ポテンシャル解析により電極パターン内部の抵抗値や抵抗分布を求めることを可能とした技術がある(たとえば、特許文献4参照)。また、アンテナコイルの設計過程において、設計対象のアンテナを配置する空間を複数のメッシュに区切り、各メッシュの最適な電流量を計算する手法があった(たとえば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-129261号公報
【文献】特開2019-129262号公報
【文献】特開2018-107307号公報
【文献】特開平7-63799号公報
【文献】特開2020-35028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電源配線層に開口部などを設けたり、電源配線層の数を増やしたりして、電流経路における抵抗を調整する従来の手法では、複数の電源端子や複数の接地端子に流れる電流の均等度合いが許容範囲内になるまで、電源配線層や接地配線層の再設計が繰り返される。すなわち、均等度合いが許容範囲外である場合には、電流が多い箇所は抵抗値が上がるように、電流が少ない箇所は抵抗値が下がるような設計変更が行われる。このため、電流集中を抑制可能な電源配線層または接地配線層を設計するには時間がかかるという問題があった。
【0008】
1つの側面では、本発明は、電流集中を抑制可能な電源配線層または接地配線層の設計時間を短縮できるプリント基板設計プログラム、プリント基板設計方法及びプリント基板設計装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの実施態様では、第1のプリント基板と前記第1のプリント基板に複数の電源端子または複数の接地端子を介して接続される第2のプリント基板との第1の設計情報を取得し、前記第1のプリント基板と前記第2のプリント基板のそれぞれについて、前記第1の設計情報に基づいて、電源配線層または接地配線層が形成される領域を、電源電流または接地電流の複数の供給元と複数の供給先の位置から決定される前記電源電流または前記接地電流の流れる方向に沿って分割した複数の第1の領域を決定し、前記複数の第1の領域を複数の等電位線で分割した複数の第2の領域を決定し、前記複数の等電位線における隣接する等電位線間に設定された目標電圧降下値と、前記複数の電源端子または前記複数の接地端子のそれぞれに設定された目標電流値に基づいて、前記複数の第2の領域のそれぞれの目標抵抗値を計算し、前記目標抵抗値に基づいて、前記電源配線層または前記接地配線層を設計した第2の設計情報を生成する、処理をコンピュータに実行させるプリント基板設計プログラムが提供される。
【0010】
また、1つの実施態様では、プリント基板設計方法が提供される。
また、1つの実施態様ではプリント基板設計装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
1つの側面では、本発明は、電流集中を抑制可能な電源配線層または接地配線層の設計時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施の形態のプリント基板設計方法及びプリント基板設計装置の一例を示す図である。
【
図2】プリント基板設計装置のハードウェア例を示すブロック図である。
【
図3】プリント基板設計装置の機能例を示すブロック図である。
【
図4】プリント基板設計装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】領域分割処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】詳細設計処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】第1の設計例における設計対象の2つのプリント基板の断面模式図である。
【
図8】第1の設計例における設計対象の2つのプリント基板の上面模式図である。
【
図9】下側のプリント基板における電流方向の決定例を示す図である。
【
図10】上側のプリント基板における電流方向の決定例を示す図である。
【
図11】下側のプリント基板における第1領域の決定例を示す図である。
【
図12】上側のプリント基板における第1領域の決定例を示す図である。
【
図13】下側のプリント基板における第2領域の決定例及び目標電圧降下値の設定例を示す図である。
【
図14】上側のプリント基板における第2領域の決定例及び目標電圧降下値の設定例を示す図である。
【
図15】目標電流値の設定例と下側のプリント基板における各第2領域の電流値の計算例を示す図である。
【
図16】上側のプリント基板における各第2領域の電流値の計算例を示す図である。
【
図17】第2の領域の決定後の2つのプリント基板の上面模式図である。
【
図18】目標抵抗値の計算例と詳細設計の例を示す図である。
【
図19】詳細設計により目標抵抗値が得られたときの効果を示す図である。
【
図20】第1の設計例における設計対象の2つのプリント基板の断面模式図である。
【
図21】第2の設計例における設計対象の2つのプリント基板の上面模式図である。
【
図22】下側のプリント基板における電流方向の決定例を示す図である。
【
図23】上側のプリント基板における電流方向の決定例を示す図である。
【
図24】下側のプリント基板における第1領域の決定例を示す図である。
【
図25】上側のプリント基板における第1領域の決定例を示す図である。
【
図26】下側のプリント基板における第2領域の決定例及び目標電圧降下値の設定例を示す図である。
【
図27】上側のプリント基板における第2領域の決定例及び目標電圧降下値の設定例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態のプリント基板設計方法及びプリント基板設計装置の一例を示す図である。
【0014】
第1の実施の形態のプリント基板設計装置10は、複数の電源端子または複数の接地端子を介して接続される複数のプリント基板の設計を行う。
プリント基板設計装置10は、記憶部11及び処理部12を有する。
【0015】
記憶部11は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性の記憶装置、または、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの不揮発性の記憶装置である。
記憶部11は、複数の電源端子または複数の接地端子を介して接続される複数のプリント基板の設計情報(以下、第1設計情報11aという)を記憶する。
【0016】
第1設計情報11aは、たとえば、複数のプリント基板のそれぞれに含まれる電源配線層、接地配線層、ビア、複数の電源端子、複数の接地端子などの配置や形状、物性値(抵抗率など)に関する情報を含むCAD(Computer Aided Design)データである。また、第1設計情報11aは、信号配線層、複数の信号端子などの配置や形状などに関する情報や、搭載される素子の情報(LSIの消費電流、許容電圧降下値など)を含んでいてもよい。なお、第1設計情報11aに含まれる電源配線層や接地配線層の情報は、基本設計によって得られたものであり、電源端子などにおける電流集中を避けるための構成に関する情報は、後述する詳細設計により生成される。
【0017】
なお、プリント基板設計装置10が、ユーザによる入力を受け付けて、その入力に基づいて、第1設計情報11aを作成してもよいし、プリント基板設計装置10は、別の情報処理装置において生成された第1設計情報11aを取得してもよい。
【0018】
処理部12は、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)などのハードウェアであるプロセッサにより実現される。ただし、処理部12は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの電子回路を含んでもよい。プロセッサは、RAMなどのメモリに記憶されたプログラムを実行する。たとえば、プリント基板設計プログラムが実行される。なお、複数のプロセッサの集合を「マルチプロセッサ」または単に「プロセッサ」ということがある。
【0019】
処理部12は、第1設計情報11aに基づいて、複数のプリント基板のそれぞれにおいて、特定の電源端子や接地端子に電流が集中しないように各領域の抵抗値を調整した電源配線層と接地配線層を設計する。なお、以下の例では、2つのプリント基板の設計方法を説明するが、3つ以上のプリント基板についても同様に適用できる。
【0020】
図1には、設計対象のプリント基板15,16の例が示されている。プリント基板15,16は、複数の電源端子または複数の接地端子を介して接続されている。
図1の例では、プリント基板15,16のそれぞれにおける複数の電源端子(図示が省略されている)が、半田バンプ(
図1の断面模式図における半田バンプ17a,17b,17cなど)を介して接続されている。また、プリント基板15には、DC-DCコンバータ18(
図1ではDCDCと表記されている)が搭載されており、プリント基板16には、LSI19が搭載されている。
【0021】
以下、
図1のようなプリント基板15,16の電源配線層の設計手順の一例を説明する。
処理部12は、記憶部11から第1設計情報11aを取得すると(ステップS1)、プリント基板15,16のそれぞれについて以下のような処理を行う。
【0022】
まず、処理部12は、第1設計情報11aに基づいて、電源配線層が形成される領域を、電源電流の複数の供給元と複数の供給先の位置から決定される電源電流の流れる方向に沿って分割した複数の第1領域を決定する(ステップS2)。
【0023】
図1の例では、ステップS2の処理に関するプリント基板15,16の上面模式図において、プリント基板15内部の電源配線層が形成される領域15a、プリント基板16内部の電源配線層が形成される領域16aが示されている。
【0024】
領域15aには、複数のビア接続部(ビア接続部15b,15cなど)が設けられている。DC-DCコンバータ18の下方に位置する複数のビア接続部(ビア接続部15bなど)は、プリント基板15の電源配線層において、DC-DCコンバータ18から供給される電源電流が流れる複数のビアが接続される部分である。プリント基板16と接続する複数の電源端子の下方に位置する複数のビア接続部(ビア接続部15cなど)は、プリント基板15の電源配線層において、プリント基板16に供給する電源電流が流れる複数のビアが接続される部分である。
【0025】
領域16aにも、複数のビア接続部(ビア接続部16b,16cなど)が設けられている。プリント基板15と接続する複数の電源端子の上方に位置する複数のビア接続部(ビア接続部16bなど)は、プリント基板16の電源配線層において、プリント基板15から供給される電源電流が流れる複数のビアが接続される部分である。LSI19の下方に位置する複数のビア接続部(ビア接続部16cなど)は、プリント基板16の電源配線層において、LSI19に供給する電源電流が流れる複数のビアが接続される部分である。
【0026】
したがって、領域15aにおいては、DC-DCコンバータ18の下方に位置する複数のビア接続部が電源電流の供給元であり、プリント基板16と接続する複数の電源端子の下方に位置する複数のビア接続部が電源電流の供給先となる。また、領域16aにおいては、プリント基板15と接続する複数の電源端子の上方に位置する複数のビア接続部が電源電流の供給元であり、LSI19の下方に位置する複数のビア接続部が電源電流の供給先(消費先ということもできる)となる。
【0027】
このため、ステップS2の処理では、処理部12は、まず領域15a,16aのそれぞれにおいて、電源電流の複数の供給元である複数のビア接続部と、複数の供給先である複数のビア接続部の位置から電源電流の流れる方向を決める。電源電流の流れる方向は、電源電流の供給元のビア接続部と、そのビア接続部に対して最短距離に位置する電源電流の供給先のビア接続部とを通る直線の方向とすればよい。
【0028】
処理部12は、
図1に示すように、領域15aにおいて、電源電流の各供給元のビア接続部に対して、上記のような直線15d1,15d2,15d3を生成する。たとえば、直線15d3は、電源電流の供給元のビア接続部15bと、ビア接続部15bに対して最短距離に位置する電源電流の供給先のビア接続部15cとを通る直線である。また、処理部12は、
図1に示すように、領域16aにおいて、電源電流の各供給元のビア接続部に対して、上記のような直線16d1,16d2,16d3を生成する。たとえば、直線16d3は、電源電流の供給元のビア接続部16bと、ビア接続部16bに対して最短距離に位置する電源電流の供給先のビア接続部16cとを通る直線である。
【0029】
図1のように、電源電流の複数の供給元が設けられる領域と、複数の供給先が設けられる領域と、電源配線層が形成される領域15a,16aの幅(y軸方向の長さ)が同程度である場合、決定した何れの直線もx軸方向に延びる直線である。このため、処理部12は、領域15a,16aを、x軸方向に沿って複数の第1領域に分割する。なお、処理部12は、計算を容易にするために、電源電流の各供給元や各供給先が、複数の第1領域にまたがらないように分割を行う。
【0030】
図1には、上記のように生成した各直線の間で、領域15a,16aを分割することで得られた第1領域15e1,15e2,15e3,16e1,16e2,16e3が示されている。なお、計算を簡略化するために、第1領域15e1,15e2,15e3,16e1,16e2,16e3のそれぞれの間では電源電流の流入及び流出はないものとする。
【0031】
ステップS2の処理後、処理部12は、複数の第1領域を複数の等電位線で分割した複数の第2領域を決定する(ステップS3)。
図1には、複数の第1領域を複数の等電位線(等電位線15f1,15f2,16f1,16f2など)で分割した複数の第2領域(第2領域15g1,15g2,16g1,16g2,16g3など)の例が示されている。
図1の例では、電源電流の流れる方向はx軸方向であるため、等電位線はy軸方向に延びる直線である。
【0032】
なお、等電位線を細かく設定することで計算量は増えるが、計算精度は上がる。
ステップS3の処理後、処理部12は、複数の等電位線における各隣接する等電位線間に設定された目標電圧降下値と、複数の電源端子のそれぞれに設定された目標電流値に基づいて、複数の第2の領域のそれぞれの目標抵抗値を計算する(ステップS4)。目標電流値は、たとえば、複数の電源端子のそれぞれについて、同じ値とする。なお、各電源端子に設定される目標電流値は、電流集中を防げれば同じ値としなくてもよく、許容範囲内で異なる値としてもよい。
【0033】
目標電圧降下値は、たとえば、LSI19の許容電圧降下値などから設定される。なお、各等電位線間の目標電圧降下値は同一でなくてもよい。
目標電流値は、たとえば、LSI19の消費電流などから設定される。処理部12は、たとえば、LSI19の消費電流を、プリント基板15,16を接続する電源端子の数で割ることで、目標電流値を計算する。
【0034】
図1には、第2領域15g1,16g3の目標抵抗値の計算例が示されている。
第2領域15g1には、第2領域15g1に含まれるビア接続部からビアを介して電源端子に流れる電源電流の値と、電流方向の下流側の第2領域15g2に含まれるビア接続部からビアを介して電源端子に流れる電源電流の値とを合計した値の電流が流れる。各電源端子に設定された目標電流値をiとすると、第2領域15g1には、2iの電流が流れる。第2領域15g1の両端の等電位線15f1,15f2間に設定された目標電圧降下値をΔvとした場合、第2領域15g1の目標抵抗値は、Ra=Δv/2iとなる。
【0035】
第2領域16g3には、第2領域16g1~16g3に含まれるビア接続部にビアを介して電源端子から供給される電源電流の合計値の電流が流れる。各電源端子に設定された目標電流値をiとすると、第2領域16g3には、3iの電流が流れる。第2領域16g3の両端の等電位線16f1,16f2間に設定された目標電圧降下値をΔvとした場合、第2領域16g3の目標抵抗値は、Rb=Δv/3iとなる。
【0036】
その後、処理部12は、計算した目標抵抗値に基づいて、電源配線層を設計した第2設計情報を生成する(ステップS5)。処理部12は、計算した目標抵抗値に基づいて、電源配線層の層数を増やすことで抵抗を下げたり、電源配線層に1または複数の開口部を設けることで抵抗を上げることで、各第2領域が目標抵抗値(または目標抵抗値との差が許容範囲内)になるように設計(詳細設計)を行う。
【0037】
処理部12は、生成した第2設計情報を出力し(ステップS6)、処理を終える。処理部12は、たとえば、第2設計情報を、図示しない表示装置に出力して表示させてもよいし、記憶部11に出力して記憶させてもよい。また、処理部12は、ネットワークを介してプリント基板設計装置10の外部の情報処理装置に第2設計情報を送信してもよい。
【0038】
なお、上記の処理手順は一例であり、たとえば、処理部12は、複数の等電位線を最初に設定した後に、複数の第1領域を決定し、決定した複数の第1領域を、複数の等電位線により分割して複数の第2領域を決定してもよい。
【0039】
以上のような第1の実施の形態のプリント基板設計方法によれば、各電源端子に設定された目標電流値や目標電圧降下値に基づいて、電源配線層を分割した複数の第2領域の各々の目標抵抗値を計算する。詳細設計前に電源端子の電流集中を防げる電源配線層の各第2領域の目標抵抗値が得られるため、詳細設計が繰り返されることが抑制され設計時間を短縮できる。
【0040】
なお、上記の例では電源配線層の設計について説明したが、接地配線層についても同様に適用できる。
すなわち、処理部12は、第1設計情報11aに基づいて、接地配線層が形成される領域を、接地電流の複数の供給元と複数の供給先の位置から決定される接地電流の流れる方向に沿って分割した複数の第1領域を決定する。そして、処理部12は、複数の第1領域を複数の等電位線で分割した複数の第2領域を決定する。その後、処理部12は、複数の等電位線における各隣接する等電位線間に設定された目標電圧降下値と、複数の接地端子のそれぞれに設定された目標電流値に基づいて、複数の第2領域のそれぞれの目標抵抗値を計算する。そして、処理部12は、目標抵抗値に基づいて、接地配線層を設計した第2の設計情報を生成する。これにより上記と同様の効果が得られる。
【0041】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態を説明する。
図2は、プリント基板設計装置のハードウェア例を示すブロック図である。
【0042】
プリント基板設計装置20は、
図2に示すようなコンピュータにより実現できる。プリント基板設計装置20は、CPU21、RAM22、HDD23、GPU(Graphics Processing Unit)24、入力インタフェース25、媒体リーダ26及び通信インタフェース27を有する。上記ユニットは、バスに接続されている。
【0043】
CPU21は、プログラムの命令を実行する演算回路を含むプロセッサである。CPU21は、HDD23に記憶されたプログラムやデータの少なくとも一部をRAM22にロードし、プログラムを実行する。なお、CPU21は複数のプロセッサコアを備えてもよく、プリント基板設計装置20は複数のプロセッサを備えてもよく、以下で説明する処理を複数のプロセッサまたはプロセッサコアを用いて並列に実行してもよい。また、複数のプロセッサの集合(マルチプロセッサ)を「プロセッサ」と呼んでもよい。
【0044】
RAM22は、CPU21が実行するプログラムやCPU21が演算に用いるデータを一時的に記憶する揮発性の半導体メモリである。なお、プリント基板設計装置20は、RAM以外の種類のメモリを備えてもよく、複数個のメモリを備えてもよい。
【0045】
HDD23は、OS(Operating System)やミドルウェアやアプリケーションソフトウェアなどのソフトウェアのプログラム、及び、データを記憶する不揮発性の記憶装置である。プログラムには、たとえば、プリント基板の設計処理をプリント基板設計装置20に実行させるプリント基板設計プログラムが含まれる。なお、プリント基板設計装置20は、フラッシュメモリやSSD(Solid State Drive)などの他の種類の記憶装置を備えてもよく、複数の不揮発性の記憶装置を備えてもよい。
【0046】
GPU24は、CPU21からの命令にしたがって、プリント基板設計装置20に接続されたディスプレイ24aに画像を出力する。ディスプレイ24aとしては、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、プラズマディスプレイ(PDP:Plasma Display Panel)、有機EL(OEL:Organic Electro-Luminescence)ディスプレイなどを用いることができる。
【0047】
入力インタフェース25は、プリント基板設計装置20に接続された入力デバイス25aから入力信号を取得し、CPU21に出力する。入力デバイス25aとしては、マウスやタッチパネルやタッチパッドやトラックボールなどのポインティングデバイス、キーボード、リモートコントローラ、ボタンスイッチなどを用いることができる。また、プリント基板設計装置20に、複数の種類の入力デバイスが接続されていてもよい。
【0048】
媒体リーダ26は、記録媒体26aに記録されたプログラムやデータを読み取る読み取り装置である。記録媒体26aとして、たとえば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク(MO:Magneto-Optical disk)、半導体メモリなどを使用できる。磁気ディスクには、フレキシブルディスク(FD:Flexible Disk)やHDDが含まれる。光ディスクには、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)が含まれる。
【0049】
媒体リーダ26は、たとえば、記録媒体26aから読み取ったプログラムやデータを、RAM22やHDD23などの他の記録媒体にコピーする。読み取られたプログラムは、たとえば、CPU21によって実行される。なお、記録媒体26aは、可搬型記録媒体であってもよく、プログラムやデータの配布に用いられることがある。また、記録媒体26aやHDD23を、コンピュータ読み取り可能な記録媒体ということがある。
【0050】
通信インタフェース27は、ネットワーク27aに接続され、ネットワーク27aを介して他の情報処理装置と通信を行うインタフェースである。通信インタフェース27は、スイッチなどの通信装置とケーブルで接続される有線通信インタフェースでもよいし、基地局と無線リンクで接続される無線通信インタフェースでもよい。
【0051】
次に、プリント基板設計装置20の機能及び処理手順を説明する。
図3は、プリント基板設計装置の機能例を示すブロック図である。
プリント基板設計装置20は、第1設計情報記憶部31、領域分割部32、目標抵抗値計算部33、詳細設計部34、出力部35を有する。第1設計情報記憶部31は、たとえば、RAM22またはHDD23に確保した記憶領域を用いて実装できる。領域分割部32、目標抵抗値計算部33、詳細設計部34、出力部35は、たとえば、CPU21が実行するプログラムモジュールを用いて実装できる。
【0052】
第1設計情報記憶部31は、前述の第1設計情報11aを記憶する。
領域分割部32は、2つのプリント基板の電源配線層または接地配線層が形成される領域を複数の領域(前述の
図1の例では複数の第2領域)に分割する。
【0053】
目標抵抗値計算部33は、複数の領域のそれぞれにおける目標抵抗値を計算する。
詳細設計部34は、計算された目標抵抗値に基づいて、電源配線層または接地配線層の詳細設計を行う。
【0054】
出力部35は、詳細設計によって得られた設計情報を出力する。
図4は、プリント基板設計装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
領域分割部32は、第1設計情報記憶部31から第1設計情報11aを取得し(ステップS10)、第1設計情報11aに基づいて、複数のプリント基板のそれぞれの電源配線層または接地配線層が形成される領域を複数の領域に分割する(ステップS11)。ステップS11の処理手順の詳細については後述する。
【0055】
次に、目標抵抗値計算部33は、ステップS11の処理における領域分割の際に設定される複数の等電位線のうち、各隣接する等電位線間に目標電圧降下値を設定する(ステップS12)。
【0056】
また、目標抵抗値計算部33は、プリント基板間を接続する複数の電源端子または複数の接地端子のそれぞれに目標電流値を設定し(ステップS13)、複数の領域のそれぞれの電流値を計算する(ステップS14)。
【0057】
そして、目標抵抗値計算部33は、目標電圧降下値と各領域の電流値に基づいて、複数の領域のそれぞれの目標抵抗値を計算する(ステップS15)。
詳細設計部34は、目標抵抗値に基づいて、電源配線層または接地配線層を設計(詳細設計)する(ステップS16)。ステップS16の処理手順の詳細については後述する。
【0058】
その後、出力部35は、詳細設計によって得られた設計情報(第2設計情報)を出力する(ステップS17)。出力部35は、たとえば、第2設計情報を、ディスプレイ24aに出力して表示させてもよいし、HDD23に出力して記憶させてもよい。また、出力部35は、ネットワーク27aを介してプリント基板設計装置20の外部の情報処理装置に第2設計情報を送信してもよい。
【0059】
なお、上記の処理手順は一例であり、適宜処理の順序を入れ替えるなどしてもよい。
図5は、領域分割処理の手順の一例を示すフローチャートである。
領域分割部32は、第1設計情報11aに基づいて、各プリント基板の電源配線層または接地配線層における電流方向を決定する(ステップS20)。電流方向は、電源配線層においては、電源電流の複数の供給元と複数の供給先の位置から決定され、接地配線層においては、接地電流の複数の供給元と複数の供給先の位置から決定される。
【0060】
電流方向は、たとえば、電源電流または接地電流の供給元のビア接続部と、そのビア接続部に対して最短距離に位置する電源電流または接地電流の供給先のビア接続部とを通る直線の方向とすればよい。このため、領域分割部32は、上記のような直線を、電源電流または接地電流の供給元の複数のビア接続部のそれぞれについて生成する。なお、領域分割部32は、たとえば、電源配線層や接地配線層が複雑な形状の場合、複数の供給元と複数の供給先の位置に基づいたシミュレーションによって電流方向を決定してもよい。
【0061】
そして、領域分割部32は、電源配線層または接地配線層が形成される領域を、決定した電源電流の流れる方向に沿って分割した複数の第1領域を決定する(ステップS21)。領域分割部32は、複数の第1領域のそれぞれの境界が、上記のように生成した複数の直線のそれぞれを、なるべくまたがないように複数の第1領域を決定する。領域分割部32は、たとえば、上記のように生成した複数の直線のうち、各隣接する直線の中間で電源配線層または接地配線層が形成される領域を分割することで、複数の第1領域を決定する。
【0062】
さらに、領域分割部32は、複数の等電位線を設定し、複数の等電位線により複数の第1領域のそれぞれを分割することで複数の第2領域を決定し(ステップS22)、領域分割処理を終える。
【0063】
図6は、詳細設計処理の手順の一例を示すフローチャートである。
詳細設計部34は、第1設計情報11aに基づいて、複数の第2領域のそれぞれの抵抗値を算出し、各第2領域の抵抗値がその第2領域について算出された目標抵抗値よりも大きいか否かを判定する(ステップS30)。
【0064】
詳細設計部34は、目標抵抗値よりも大きい抵抗値をもつ第2領域があると判定した場合、電源配線層または接地配線層において、その第2領域を含む領域における層数を追加する(ステップS31)。これにより、その第2領域の抵抗値を小さくさせ、目標抵抗値に近づけることができる。ステップS31の処理後、ステップS30からの処理が繰り返される。
【0065】
詳細設計部34は、目標抵抗値よりも大きい抵抗値をもつ第2領域がないと判定した場合、各第2領域の抵抗値がその第2領域について算出された目標抵抗値よりも小さいか否かを判定する(ステップS32)。
【0066】
詳細設計部34は、目標抵抗値よりも小さい抵抗値をもつ第2領域があると判定した場合、電源配線層または接地配線層のその第2領域において1または複数の開口部を設けることで、電流経路を制限する(ステップS33)。これにより、その第2領域の抵抗値を大きくさせ、目標抵抗値に近づけることができる。ステップS33の処理後、ステップS30からの処理が繰り返される。
【0067】
詳細設計部34は、目標抵抗値よりも小さい抵抗値をもつ第2領域がないと判定した場合、詳細設計処理を終了する。
なお、上記の処理例では、各第2領域の抵抗値が目標抵抗値に一致した場合、詳細設計が終了するが、各第2領域の抵抗値と目標抵抗値との差が所定の許容範囲内である場合には、詳細設計が終了するようにしてもよい。
【0068】
以下、上記のようなプリント基板設計方法を用いた設計例を2例説明する。
(第1の設計例)
第1の設計例は、
図1に示したプリント基板15,16とほぼ同様の2つのプリント基板を設計対象とするものである。
【0069】
図7は、第1の設計例における設計対象の2つのプリント基板の断面模式図である。
図8は、第1の設計例における設計対象の2つのプリント基板の上面模式図である。
図7では、
図8のVII-VII線における断面が示されている。
【0070】
プリント基板40,41は、複数の電源端子または複数の接地端子を介して接続されている。
図7の例では、プリント基板40,41のそれぞれにおける複数の電源端子(図示が省略されている)が、半田バンプ(半田バンプ42a,42b,42c,42dなど)を介して接続されている。また、プリント基板40には、DC-DCコンバータ43が搭載されており、プリント基板41には、LSI44が搭載されている。
【0071】
図8には、プリント基板40内部の電源配線層が形成される領域40a、プリント基板41内部の電源配線層が形成される領域41aが示されている。
領域40a,41aには、複数のビア接続部が設けられている。たとえば、上側のプリント基板41の領域41aに設けられたビア接続部41bは、下側のプリント基板40の領域40aのビア接続部と、電源端子及びビアを介して電気的に接続される。
【0072】
上記のようなプリント基板40,41を設計する場合、領域分割部32は、前述の
図5のステップS20の処理において、たとえば、以下のように電流方向を決定する。
図9は、下側のプリント基板における電流方向の決定例を示す図である。
【0073】
下側のプリント基板40の領域40aには、DC-DCコンバータ43の下方に位置し、電流供給元となる複数のビア接続部(ビア接続部40bなど)が設けられている。さらに、領域40aには、プリント基板41と接続する複数の電源端子の下方に位置し、電流供給先となる複数のビア接続部(ビア接続部40cなど)が設けられている。
【0074】
領域分割部32は、領域40aにおいて、電源電流の供給元の各ビア接続部と、そのビア接続部に対して最短距離に位置する電源電流の供給先のビア接続部とを通る直線40d1,40d2,40d3,40d4,40d5,40d6を生成する。たとえば、直線40d1は、電源電流の供給元のビア接続部40bと、ビア接続部40bに対して最短距離に位置する電源電流の供給先のビア接続部40cとを通る直線である。領域分割部32は、領域40aにおいて直線40d1~40d6の方向を電流方向として決定する。
【0075】
図10は、上側のプリント基板における電流方向の決定例を示す図である。
上側のプリント基板41の領域41aには、プリント基板40と接続する複数の電源端子の上方に位置し、電流供給元となる複数のビア接続部(ビア接続部41bなど)が設けられている。さらに、領域41aには、LSI44の下方に位置し、電流供給先となる複数のビア接続部(ビア接続部41cなど)が設けられている。
【0076】
領域分割部32は、領域41aにおいて、電源電流の供給元の各ビア接続部と、そのビア接続部に対して最短距離に位置する電源電流の供給先のビア接続部とを通る直線41d1,41d2,41d3,41d4,41d5,41d6を生成する。たとえば、直線41d1は、電源電流の供給元のビア接続部41bと、ビア接続部41bに対して最短距離に位置する電源電流の供給先のビア接続部41cとを通る直線である。領域分割部32は、領域41aにおいて直線41d1~41d6の方向を電流方向として決定する。
【0077】
次に、領域分割部32は、前述の
図5のステップ21の処理において、たとえば、以下のように第1領域を決定する。
図11は、下側のプリント基板における第1領域の決定例を示す図である。
【0078】
領域分割部32は、プリント基板40の領域40aを、直線40d1~40d6のうち、各隣接する直線の中間でx軸方向に分割することで、
図11に示すように複数の第1領域40e1,40e2,40e3,40e4,40e5,40e6を決定する。
【0079】
計算を簡略化するために、第1領域40e1~40e6のそれぞれの間では、電源電流の流入及び流出はないものとする。
図12は、上側のプリント基板における第1領域の決定例を示す図である。
【0080】
領域分割部32は、プリント基板41の領域41aを、直線41d1~41d6のうち、各隣接する直線の中間でx軸方向に分割することで、
図12に示すように複数の第1領域41e1,41e2,41e3,41e4,41e5,41e6を決定する。
【0081】
計算を簡略化するために、第1領域41e1~41e6のそれぞれの間では、電源電流の流入及び流出はないものとする。
次に、領域分割部32は、前述の
図5のステップ22の処理において、たとえば、以下のように第2領域を決定し、目標抵抗値計算部33は、前述の
図4のステップS12の処理において、たとえば、以下のように、目標電圧降下値を設定する。
【0082】
図13は、下側のプリント基板における第2領域の決定例及び目標電圧降下値の設定例を示す図である。
領域分割部32は、プリント基板40の領域40aに複数の等電位線(等電位線40f1,40f2,40f3,40f4,40f5など)を設定し、
図11に示した第1領域40e1~40e6をy軸方向に分割する。これにより、複数の第2領域(第2領域40g1,40g2,40g3,40g4など)が決定される。
【0083】
その後、目標抵抗値計算部33は、設定された複数の等電位線における各隣接する等電位線間に目標電圧降下値を設定する。
図13の例では、等電位線40f1から等電位線40f5までにおいて、電圧V
5から電圧V
1への電圧降下が発生することを目標としており、各隣接する等電位線間で同じΔvの目標電圧降下値が設定されている。
【0084】
図14は、上側のプリント基板における第2領域の決定例及び目標電圧降下値の設定例を示す図である。
領域分割部32は、プリント基板41の領域41aに複数の等電位線(等電位線41f1,41f2,41f3,41f4,41f5など)を設定し、
図12に示した第1領域41e1~41e6をy軸方向に分割する。これにより、複数の第2領域(第2領域41g1,41g2,41g3,41g4など)が決定される。
【0085】
その後、目標抵抗値計算部33は、設定された複数の等電位線における各隣接する等電位線間に目標電圧降下値を設定する。
図14の例では、等電位線41f1から等電位線41f5までにおいて、電圧V
5から電圧V
1への電圧降下が発生することを目標としており、各隣接する等電位線間で同じΔvの目標電圧降下値が設定されている。
【0086】
その後、目標抵抗値計算部33は、
図4のステップS13,S14の処理において、たとえば、以下のように、目標電流値を設定するとともに、各第2領域の電流値を計算する。
【0087】
図15は、目標電流値の設定例と下側のプリント基板における各第2領域の電流値の計算例を示す図である。
目標抵抗値計算部33は、プリント基板40,41間を接続する複数の電源端子のそれぞれに同一の目標電流値を設定する。目標電流値は、たとえば、LSI44の消費電流を、プリント基板40,41間を接続する電源端子の数で割ることで得られる。
【0088】
目標抵抗値計算部33は、目標電流値に基づいて、各第2領域の電流値を計算する。上記のように、複数の第1領域のそれぞれの間で電源電流の流入及び流出がないものとしているため、目標抵抗値計算部33は、各第2領域において、y方向に隣接する第2領域との間で電源電流の流入や流出はないものとして計算を行う。
【0089】
複数の電源端子のそれぞれに流れる電源電流の値を目標電流値=iとした場合、たとえば、それぞれ1つのビア接続部を含む第2領域40g1~40g4のそれぞれからは、目標電流値=iの電源電流が引き出されることになる。このため、
図15では、“-i”と表記されている。
【0090】
第2領域40g4における電流値は、第2領域40g4から目標電流値=iの電源電流が引き出されるためiと算出される。第2領域40g3における電流値は、上流側の第2領域40g4へ供給される電源電流(電流値=i)と、引き出される目標電流値=iを加算して2iと算出される。第2領域40g2における電流値は、上流側の第2領域40g3へ供給される電源電流(電流値=2i)と、引き出される目標電流値=iを加算して3iと算出される。第2領域40g1における電流値は、上流側の第2領域40g2へ供給される電源電流(電流値=3i)と、引き出される目標電流値=iを加算して4iと算出される。
【0091】
図16は、上側のプリント基板における各第2領域の電流値の計算例を示す図である。
上記のように、複数の第1領域のそれぞれの間で電源電流の流入及び流出がないものとしているため、目標抵抗値計算部33は、各第2領域において、y方向に隣接する第2領域との間で電源電流の流入や流出はないものとして計算を行う。
【0092】
複数の電源端子のそれぞれに流れる電源電流の値を目標電流値=iとした場合、たとえば、それぞれ1つのビア接続部を含む第2領域41g1~41g4のそれぞれには、プリント基板40から目標電流値=iの電源電流が供給されることになる。このため、
図16では、“+i”と表記されている。
【0093】
第2領域41g1における電流値は、
図15の第2領域40g1から目標電流値=iの電源電流が供給されるためiと算出される。第2領域41g2における電流値は、下流側の第2領域41g1から供給される電源電流(電流値=i)と、
図15の第2領域40g2から供給される電源電流(目標電流値=i)を加算して2iと算出される。第2領域41g3における電流値は、下流側の第2領域41g2から供給される電源電流(電流値=2i)と、
図15の第2領域40g3から供給される電源電流(目標電流値=i)を加算して3iと算出される。第2領域41g4における電流値は、下流側の第2領域41g3から供給される電源電流(電流値=3i)と、
図15の第2領域40g3から供給される電源電流(目標電流値=i)を加算して4iと算出される。
【0094】
次に、目標抵抗値計算部33は、
図4のステップS15の処理において、たとえば、以下のように、目標抵抗値を計算し、詳細設計部34は、
図4のステップS16の処理において、たとえば、以下のように詳細設計を行う。
【0095】
図17は、第2の領域の決定後の2つのプリント基板の上面模式図である。以下では、
図17のXVIII-XVIII線における断面を用いて、目標抵抗値の計算例と、詳細設計の例を説明する。
【0096】
図18は、目標抵抗値の計算例と詳細設計の例を示す図である。
図18において、R
2_1は、
図15の第2領域40g4の目標抵抗値、R
2_2は、
図15の第2領域40g3の目標抵抗値、R
2_3は、
図15の第2領域40g2の目標抵抗値、R
2_4は、
図15の第2領域40g1の目標抵抗値である。また、
図18において、R
1_1は、
図16の第2領域41g4の目標抵抗値、R
1_2は、
図16の第2領域41g3の目標抵抗値、R
1_3は、
図16の第2領域41g2の目標抵抗値、R
1_4は、
図16の第2領域41g1の目標抵抗値である。
【0097】
プリント基板40において、前述のように、第2領域40g4における電流値はi、目標電圧降下値はΔvであるため、R2_1=Δv/iと算出され、第2領域40g3における電流値は2i、目標電圧降下値はΔvであるため、R2_2=Δv/2iと算出される。また、前述のように、第2領域40g2における電流値は3i、目標電圧降下値はΔvであるため、R2_3=Δv/3iと算出され、第2領域40g1における電流値は4i、目標電圧降下値はΔvであるため、R2_4=Δv/4iと算出される。
【0098】
プリント基板41において、前述のように、第2領域41g4における電流値は4i、目標電圧降下値はΔvであるため、R1_1=Δv/4iと算出され、第2領域41g3における電流値は3i、目標電圧降下値はΔvであるため、R1_2=Δv/3iと算出される。また、前述のように、第2領域41g2における電流値は2i、目標電圧降下値はΔvであるため、R1_3=Δv/2iと算出され、第2領域41g1における電流値はi、目標電圧降下値はΔvであるため、R1_4=Δv/iと算出される。
【0099】
詳細設計部34は、上記のように決定した目標抵抗値を実現するために、たとえば、
図18に示すような詳細設計を行う。
プリント基板40において、第2領域40g4のビア接続部に接続されるビア50aは電源配線層51aに接続され、第2領域40g3のビア接続部に接続されるビア50bは電源配線層51a,51bに接続されている。また、プリント基板40において、第2領域40g2のビア接続部に接続されるビア50cは電源配線層51a,51b,51cに接続され、第2領域40g1のビア接続部に接続されるビア50dも電源配線層51a,51b,51cに接続されている。
【0100】
プリント基板41において、第2領域41g4のビア接続部に接続されるビア52aは電源配線層53a,53b,53cに接続され、第2領域41g3のビア接続部に接続されるビア52bも電源配線層53a,53b,53cに接続されている。また、プリント基板41において、第2領域41g2のビア接続部に接続されるビア52cは電源配線層53a,53bに接続され、第2領域41g1のビア接続部に接続されるビア52dは電源配線層53aに接続されている。
【0101】
このように各第2領域における電源配線層の層数を変えることで、抵抗値を目標抵抗値に近づけることができる。たとえば、抵抗値を1/2にしたい場所では、電源配線層の層数を2倍にすればよい。
【0102】
なお、
図6に示したように、電源配線層に開口部を設けて電流経路を制限することで、第2領域における抵抗値を目標抵抗値に近づけるようにしてもよい。たとえば、抵抗値を3倍にしたい場所では、電源電流を妨げる方向に開口部を配置するなどし、電流経路の幅を1/3にすることで抵抗値を3倍にすることができる。
【0103】
上記の手法で目標抵抗値の達成が困難な場合は、電源端子数を変えて第1領域に含まれるビア接続部の数を変えるようにしてもよい。ただ、その変更により、電源電流の流れる方向に変更がある場合には、再度領域分割を行うことが望ましい。
【0104】
図19は、詳細設計により目標抵抗値が得られたときの効果を示す図である。
図19には、
図18に示したビア50a,50b,50c,50d,52a,52b,52c,52dに流れる電源電流(ビア電流)が示されている。また、
図19には、第2領域40g1~40g4,41g1~40g4における電圧降下の様子が示されている。さらに、
図19には、第2領域40g1~40g4,41g1~41g4の抵抗値(電源配線層における電流方向の抵抗)が示されている。
【0105】
横軸は、
図18などにおいてx軸方向に並ぶ第2領域40g1~40g4,41g1~41g4を示している。x1は第2領域40g4,41g4、x2は第2領域40g3,41g3、x3は第2領域40g2,41g2、x4は第2領域40g1,41g1を表す。縦軸は、ビア電流と電圧降下のグラフにおいてはビア電流の電流値と電圧値、電源配線層における電流方向の抵抗のグラフにおいてはその抵抗値を表す。
【0106】
図19のように、詳細設計により目標抵抗値が得られたとき、ビア50a,50b,50c,50d,52a,52b,52c,52dに流れる電源電流を均等にでき、電源端子の電流集中を防げる。また、第2領域40g1~40g4,41g1~41g4における電圧降下を設定した目標電圧降下値であるΔvとすることができる。
【0107】
上記のようなプリント基板設計方法によれば、詳細設計前に電源端子の電流集中を防げる電源配線層の各第2領域の目標抵抗値が得られるため、詳細設計が繰り返されることが抑制され設計時間を短縮できる。
【0108】
(第2の設計例)
第2の設計例は、2つのプリント基板を接続する複数の電源端子が、搭載されるDC-DCコンバータの複数の電源端子やLSIの複数の電源端子よりも広範囲に設けられている場合を想定したものである。たとえば、大電流を消費するために2つのプリント基板を接続する複数の電源端子が多くなる場合などに、本設計例が適用可能である。
【0109】
図20は、第1の設計例における設計対象の2つのプリント基板の断面模式図である。
図21は、第2の設計例における設計対象の2つのプリント基板の上面模式図である。
図20では、
図21のXX-XX線における断面が示されている。
【0110】
プリント基板40,41は、複数の電源端子または複数の接地端子を介して接続されている。
図20の例では、プリント基板40,41のそれぞれにおける複数の電源端子(図示が省略されている)が、半田バンプ(半田バンプ62a,62b,62c,62dなど)を介して接続されている。また、プリント基板60には、DC-DCコンバータ63が搭載されており、プリント基板61には、LSI64が搭載されている。
【0111】
図21には、プリント基板60内部の電源配線層が形成される領域60a、プリント基板41内部の電源配線層が形成される領域61aが示されている。
領域60a,61aには、複数のビア接続部が設けられている。たとえば、上側のプリント基板61の領域61aに設けられたビア接続部61bは、下側のプリント基板60の領域60aのビア接続部と、電源端子及びビアを介して電気的に接続される。
【0112】
上記のようなプリント基板60,61を設計する場合、領域分割部32は、前述の
図5のステップ20の処理において、たとえば、以下のように電流方向を決定する。
図22は、下側のプリント基板における電流方向の決定例を示す図である。
【0113】
下側のプリント基板60の領域60aには、DC-DCコンバータ63の下方に位置し、電流供給元となる複数のビア接続部(ビア接続部60bなど)が設けられている。さらに、領域60aには、プリント基板61と接続する複数の電源端子の下方に位置し、電流供給先となる複数のビア接続部(ビア接続部60cなど)が設けられている。
【0114】
図22の例の場合、電流供給元となる複数のビア接続部よりも電流供給先となる複数のビア接続部が広範囲に配置されている。この場合、領域分割部32は、領域60aにおいて、電源電流の供給先の各ビア接続部と、そのビア接続部に対して最短距離に位置する電源電流の供給元のビア接続部とを通る直線を生成する。たとえば、直線60dは、電源電流の供給先のビア接続部60cと、ビア接続部60cに対して最短距離に位置する電源電流の供給元のビア接続部60bとを通る直線である。領域分割部32は、領域60aにおいて生成した直線の方向を電流方向として決定する。
図22のように、電流方向の一部は、1つのビア接続部(たとえば、ビア接続部60b)から放射状に伸びる複数の直線で表されている。
【0115】
図23は、上側のプリント基板における電流方向の決定例を示す図である。
上側のプリント基板61の領域61aには、プリント基板60と接続する複数の電源端子の上方に位置し、電流供給元となる複数のビア接続部(ビア接続部61bなど)が設けられている。さらに、領域61aには、LSI64の下方に位置し、電流供給先となる複数のビア接続部(ビア接続部61cなど)が設けられている。
【0116】
領域分割部32は、領域61aにおいて、電源電流の供給元の各ビア接続部と、そのビア接続部に対して最短距離に位置する電源電流の供給先のビア接続部とを通る直線を生成する。たとえば、直線61dは、電源電流の供給元のビア接続部61bと、ビア接続部61bに対して最短距離に位置する電源電流の供給先のビア接続部61cとを通る直線である。領域分割部32は、領域61aにおいて直線41d1~41d6の方向を電流方向として決定する。
図23のように、電流方向の一部は、1つのビア接続部(たとえば、ビア接続部61c)から放射状に伸びる複数の直線で表されている。
【0117】
次に、領域分割部32は、前述の
図5のステップ21の処理において、たとえば、以下のように第1領域を決定する。
図24は、下側のプリント基板における第1領域の決定例を示す図である。
【0118】
領域分割部32は、プリント基板60の領域60aを、生成した直線(直線60dなど)をなるべくまたがないように分割して複数の第1領域を決定する。
図24の例では、ある点P1から放射方向に伸びる分割線によって分割された第1領域60e1,60e2,60e3,60e4,60e5,60e6,60e7,60e8が示されている。
【0119】
計算を簡略化するために、第1領域60e1~60e8のそれぞれの間では、電源電流の流入及び流出はないものとする。
図25は、上側のプリント基板における第1領域の決定例を示す図である。
【0120】
領域分割部32は、プリント基板61の領域61aを、生成した直線(直線61dなど)をなるべくまたがないように分割して複数の第1領域を決定する。
図25の例では、ある点P2から放射方向に伸びる分割線によって分割された第1領域61e1,61e2,61e3,61e4,61e5,61e6,61e7,61e8が示されている。
【0121】
計算を簡略化するために、第1領域61e1~61e8のそれぞれの間では、電源電流の流入及び流出はないものとする。
次に、領域分割部32は、前述の
図5のステップ22の処理において、たとえば、以下のように第2領域を決定し、目標抵抗値計算部33は、前述の
図4のステップS12の処理において、たとえば、以下のように、目標電圧降下値を設定する。
【0122】
図26は、下側のプリント基板における第2領域の決定例及び目標電圧降下値の設定例を示す図である。
領域分割部32は、プリント基板60の領域60aに等電位線60f1,60f2,60f3,60f4,60f5を設定し、
図24に示した第1領域60e1~60e8を分割する。等電位線60f1~60f5は、第1領域60e1~60e8の境界線に垂直に交差する。これにより、複数の第2領域(第2領域60g1,60g2,60g3など)が決定される。
【0123】
その後、目標抵抗値計算部33は、設定された等電位線60f1~60f5における各隣接する等電位線間に目標電圧降下値を設定する。
図26の例では、等電位線60f1から等電位線60f5までにおいて、電圧V
5から電圧V
1への電圧降下が発生することを目標としており、各隣接する等電位線間で同じΔvの目標電圧降下値が設定されている。
【0124】
図27は、上側のプリント基板における第2領域の決定例及び目標電圧降下値の設定例を示す図である。
領域分割部32は、プリント基板61の領域61aに等電位線61f1,61f2,61f3,61f4,61f5を設定し、
図25に示した第1領域61e1~61e8を分割する。等電位線61f1~61f5は、第1領域61e1~61e8の境界線に垂直に交差する。これにより、複数の第2領域(第2領域61g1,61g2,61g3,61g4など)が決定される。
【0125】
その後、目標抵抗値計算部33は、設定された複数の等電位線における各隣接する等電位線間に目標電圧降下値を設定する。
図27の例では、等電位線61f1から等電位線61f5までにおいて、電圧V
5から電圧V
1への電圧降下が発生することを目標としており、各隣接する等電位線間で同じΔvの目標電圧降下値が設定されている。
【0126】
図26、
図27のように設定した等電位線60f1~60f8と等電位線61f1~61f8は第1の設計例とは異なり重ならないが、等電位線60f1~60f8,61f1~61f8は目標電圧降下値の設定のために用いるものであるため、それでよい。
【0127】
その後、目標抵抗値計算部33は、
図4のステップS13,S14の処理において、目標電流値を設定するとともに、各第2領域の電流値を計算する。
目標抵抗値計算部33は、プリント基板60,61間を接続する複数の電源端子のそれぞれに同一の目標電流値を設定する。目標電流値は、たとえば、LSI44の消費電流を、プリント基板60,61間を接続する電源端子の数で割ることで得られる。以下、目標電流値=iとする。
【0128】
目標抵抗値計算部33は、目標電流値に基づいて、各第2領域の電流値を計算する。上記のように、複数の第1領域のそれぞれの間で電源電流の流入及び流出がないものとしているため、目標抵抗値計算部33は、各第2領域において、円周方向に隣接する第2領域との間で電源電流の流入や流出はないものとして計算を行う。これらの処理についても、
図26、
図27を用いて説明する。
【0129】
図26において、いくつかのビア接続部を含む第2領域60g1~60g3のそれぞれからは、含まれるビア接続部の数と目標電流値=iとの積で表される電流値の電源電流が引き出される。また、
図27において、いくつかのビア接続部を含む第2領域61g1~61g3のそれぞれには、含まれるビア接続部の数と目標電流値=iとの積で表される電源電流がプリント基板60から供給される。
【0130】
なお、複数の第2領域をまたぐビア接続部については、含まれるビア接続部の面積に応じて何れの第2領域に属するものであるかを決めてもよいし、含まれるビア接続部の面積比に応じて電流値を複数の第2領域の間で分けてもよい。
【0131】
図26において、第2領域60g1,60g2に含まれるビア接続部の数がそれぞれ4つとした場合、第2領域60g3における電流値は、第2領域60g3から4iの電源電流が引き出されるため4iと算出される。第2領域60g2における電流値は、第2領域60g3へ供給される電源電流(電流値=4i)と、引き出される目標電流値=4iを加算して8iと算出される。第2領域60g1における電流値は、第2領域60g2へ供給される電源電流(電流値=8i)と、引き出される目標電流値=4iを加算して12iと算出される。
【0132】
図27において、第2領域61g1に含まれるビア接続部の数が3つ、第2領域61g2に含まれるビア接続部の数が5つ、第2領域61g3に含まれるビア接続部の数が2つ、第2領域61g4に含まれるビア接続部の数が1つとする。この場合、第2領域61g1における電流値は、3つのビア接続部のそれぞれから目標電流値=iの電源電流が供給されるため、3iと算出される。第2領域61g2における電流値は、5つのビア接続部のそれぞれから目標電流値=iの電源電流が供給されるとともに、第2領域61g1から3iが供給されるため、8iと算出される。第2領域61g3における電流値は、2つのビア接続部のそれぞれから目標電流値=iの電源電流が供給されるとともに、第2領域61g2から8iが供給されるため、10iと算出される。第2領域61g4における電流値は、1つのビア接続部から目標電流値=iの電源電流が供給されるとともに、第2領域61g3から10iが供給されるため、11iと算出される。
【0133】
その後、目標抵抗値計算部33は、
図4のステップS15の処理において、たとえば、以下のように、目標抵抗値を計算し、詳細設計部34は、
図4のステップS16の処理において、たとえば、以下のように詳細設計を行う。これらの処理は、第1の設計例と同じであるため説明を省略する。
【0134】
以上のような第2の設計例においても、第1の設計例と同様の効果が得られる。
なお、上記の説明では電源配線層の設計に関するものであったが、接地配線層の設計に関しても、上記と同様の設計方法が適用できる。
【0135】
なお、前述のように、上記の処理内容は、たとえば、コンピュータであるプリント基板設計装置20にプログラムを実行させることで実現できる。
プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(たとえば、記録媒体26a)に記録しておくことができる。記録媒体として、たとえば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどを使用できる。磁気ディスクには、FD及びHDDが含まれる。光ディスクには、CD、CD-R(Recordable)/RW(Rewritable)、DVD及びDVD-R/RWが含まれる。プログラムは、可搬型の記録媒体に記録されて配布されることがある。その場合、可搬型の記録媒体から他の記録媒体(たとえば、HDD23)にプログラムをコピーして実行してもよい。
【0136】
以上、実施の形態に基づき、本発明のプリント基板設計プログラム、プリント基板設計方法及びプリント基板設計装置の一観点について説明してきたが、これらは一例にすぎず、上記の記載に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0137】
10 プリント基板設計装置
11 記憶部
11a 第1設計情報
12 処理部
15,16 プリント基板
15a,16a 領域
15b,15c,16b,16c ビア接続部
15d1~15d3,16d1~16d3 直線
15e1~15e3,16e1~16e3 第1領域
15f1,15f2,16f1,16f2 等電位線
15g1,15g2,16g1~16g3 第2領域
17a,17b,17c 半田バンプ
18 DC-DCコンバータ
19 LSI