(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/40 20170101AFI20240904BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20240904BHJP
B29C 64/357 20170101ALI20240904BHJP
【FI】
B29C64/40
B29C64/106
B29C64/357
(21)【出願番号】P 2021013151
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】富田 知幸
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 亮平
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-098165(JP,A)
【文献】特開2019-217748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/40
B29C 64/106
B29C 64/357
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形物の製造方法であって、
積層造形工程と、除去工程を備え、
前記積層造形工程では、予め準備された支持体が配置された造形領域において樹脂の単層構造体を積層することによって前記樹脂で構成された造形物と前記支持体が一体となった一体物を形成し、
前記除去工程では、前記一体物を前記造形物と前記支持体に分離することによって、前記一体物から前記支持体を除去
し、
前記支持体は、前記単層構造体が形成される部位である傾斜面に凹部を有する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記積層造形工程は、熱溶融積層法で行われる、方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の方法であって、
前記単層構造体は、ヘッドを移動させながら流動状態の樹脂を吐出するとともに吐出した樹脂を固化させることによって形成され、
前記凹部の開口径は、前記ヘッドの吐出口の直径よりも小さい、方法。
【請求項4】
請求項1~
請求項3の何れか1つに記載の方法であって、
前記支持体を構成する樹脂と前記造形物を構成する樹脂は、共通するモノマーを有する、方法。
【請求項5】
請求項1~
請求項4の何れか1つに記載の方法であって、
前記除去工程で分離した前記支持体を、次の造形物を製造するための積層造形工程において再利用する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形によって形成される造形物の製造方法に関する。
【0002】
積層造形とは、所定の構造を有する立体を造形する方法であって、流動状態の材料が押出された後、固化し、その上にさらに材料が積層されていくことで物品が造形される。積層造形方法にはUV硬化法、熱溶融積層法等が提案されているが、装置構造が簡便であることから、熱溶融積層法が広く使用されている。
【0003】
積層造形される立体構造には様々な構造があり、造形される過程において、他の何かでサポートしておかないと造形できない部位を含むものもある。そこで、造形物を積層造形する際に、造形物の少なくとも一部を支持する支持体も一緒に積層造形をし、造形完了後に支持体を溶解させて除去することが一般的である(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の方法では、造形物と支持体を一緒に造形するので、支持体の分だけ、造形時間が長くなってしまうという問題がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、造形時間の短縮が可能な、造形物の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、造形物の製造方法であって、積層造形工程と、除去工程を備え、前記積層造形工程では、予め準備された支持体が配置された造形領域において樹脂の単層構造体を積層することによって前記樹脂で構成された造形物と前記支持体が一体となった一体物を形成し、前記除去工程では、前記一体物を前記造形物と前記支持体に分離することによって、前記一体物から前記支持体を除去する、方法が提供される。
【0008】
本発明の積層造形工程では、予め準備された支持体を用いて、造形物と支持体が一体となった一体物を形成するので、支持体の造形にかかる時間が不要であるために、造形時間の短縮が可能である。
【0009】
好ましくは、前記記載の方法であって、前記積層造形工程は、熱溶融積層法で行われる、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記支持体は、前記単層構造体が形成される部位に凹部を有する、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記単層構造体は、ヘッドを移動させながら流動状態の樹脂を吐出するとともに吐出した樹脂を固化させることによって形成され、前記凹部の開口径は、前記ヘッドの吐出口の直径よりも小さい、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記支持体を構成する樹脂と前記造形物を構成する樹脂は、共通するモノマーを有する、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記除去工程で分離した前記支持体を、次の造形物を製造するための積層造形工程において再利用する、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図2Aは、三次元網目構造2を示す斜視図であり、
図2Bは、単層構造体6,7,8を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0012】
1.第1実施形態
1-1.造形物1の構成
図1~
図2は、本発明の一実施形態の造形物1の製造方法によって製造可能な造形物1の例を示す。造形物1は、例えばブラパッドや人工乳房などの乳房体である。である。造形物1は、上面1a及び下面1bを備える。造形物1が乳房体である場合、上面1aは、乳房の外形を模した形状を有し、下面1bは、造形物1が装着されるユーザーの身体の外面にフィットする形状を有する。下面1bには、身体の凸部の相補形状となる凹部1cが設けられている。
【0013】
造形物1は、積層造形によって形成される。積層造形は、造形物1の一部を構成する単層構造体を積層することによって造形物1を形成する方法である。積層造形は、UV硬化法、熱溶融積層法等の何れの方法であってもよいが、熱で溶融した樹脂を積層させる熱溶融積層法が好ましい。
【0014】
造形物1は、一例では、
図2Aに示すような三次元網目構造2を有する。三次元網目構造2は、線状樹脂2aで構成された単層構造体が積層されることによって網目状になった構造である。造形物1がこのような構造を有する場合、隣接する線状樹脂2a間の間隔を変化させたり、線状樹脂2aの太さを変化させたりすることによって、造形物1の剛性を変化させることができる。造形物1が乳房体である場合、造形物1をユーザーの要望に応じた剛性を有するものにする必要があるところ、三次元網目構造2を有する造形物1では、このような要望を実現することが容易である。また、造形物1内の一部の剛性をその他の部位よりも高く又は低くしたいという要望があるが、三次元網目構造2の一部において隣接する線状樹脂2a間の間隔を狭く又は広くすることによって上記要望を容易に実現することができる。
【0015】
線状樹脂2aの直径は、例えば0.5~6.0mmであり、1.0~4.0mmが好ましい。この直径は、具体的には例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0016】
一例では、三次元網目構造2は、
図2Bに示す単層構造体6,7,8がこの順で繰り返し積層されて構成される。単層構造体6は、互いに間隔を開けて設けられた複数の平行線で構成される線状樹脂6aを有する。単層構造体7は、互いに間隔を開けて設けられた複数の平行線で構成される線状樹脂7aを有する。単層構造体8は、互いに間隔を開けて設けられた複数の平行線で構成される線状樹脂8aを有する。線状樹脂6a,7a,8aは、互いに60度ずつずれた方向に延びるように設けられている。
【0017】
造形物1を構成する樹脂は、特に限定されず、ABS、ポリオレフィン(例:ポリプロピレン)、ポリエステル、熱可塑性エラストマーが挙げられる。造形物1が乳房体のような高い柔軟性が要求されるものである場合、造形物1を構成する樹脂は、熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0018】
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、アクリル系エラストマー等が挙げられる。この熱可塑性エラストマーは、スチレン系エラストマーを含むことが好ましい。スチレン系エラストマーは柔軟性が高いので、熱可塑性エラストマーがスチレン系エラストマーを含むことによって、熱可塑性エラストマーの柔軟性が高くなる。熱可塑性エラストマー中のスチレン系エラストマーの割合は、50~100質量%が好ましく、80~100質量%がさらに好ましく、具体的には例えば、50、60、70、80、90、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0019】
スチレン系エラストマーとは、スチレン単位を有する熱可塑性エラストマーであり、スチレン系共重合体(例えば、スチレン-エチレン-スチレンブロック共重合体(SES)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)等)、水素添加スチレン系共重合体(例えば、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-ブチレン・ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBBS)、水素添加スチレン-ブタジエンゴム(HSBR)等)等から選ばれた一種又は二種以上をブレンドしたものを挙げることができる。
【0020】
熱可塑性エラストマーのショアA硬度は、0~10が好ましく、具体的には例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ショアA硬度がこの範囲内である場合に、柔軟性に優れた造形物が得られる。ショアA硬度は、JIS K6253に基づいて測定する。
【0021】
1-2.造形物1の製造方法
次に、本発明の一実施形態の造形物1の製造方法について説明する。この方法は、積層造形工程と、除去工程を備える。以下、各工程について説明する。
【0022】
(1)積層造形工程
積層造形工程では、
図3に示すように、予め準備された支持体3が配置された造形領域Rにおいて樹脂4の単層構造体を積層することによって、
図4Aに示すように、樹脂4で構成された造形物1と支持体3が一体となった一体物9を形成する。
【0023】
積層造形工程は、任意の積層造形法で行うことができる。単層構造体は、一例では、ヘッド5を移動させながら流動状態の樹脂を吐出するとともに、吐出した樹脂4を固化させることによって行うことができる。熱溶融積層法では、加熱によって流動状態になった樹脂を吐出し、吐出された流動状態の樹脂は、冷却によって固化される。UV硬化法では、吐出された流動状態の樹脂は、UV照射によって固化される。
【0024】
一例では、熱溶融積層法では、
図3に示すように、ヘッド5内で溶融した樹脂4をヘッド5の先端に設けた吐出口5aから吐出しながら、造形領域Rにおいてヘッド5を移動させることによって造形物1を形成することができる。ヘッド5に供給する樹脂の形態は限定されず、フィラメントであってもペレットであってもよい。樹脂の形態がフィラメントである場合、ヘッド5に内蔵されたギアをフィラメントに係合させた状態でギアを回転させることによってフィラメントを下流に移動させてヘッド5内で溶融された樹脂4を吐出することができる。樹脂の形態がペレットである場合、ヘッド5として、スクリューを内蔵したスクリュー式押出機を用いることができ、スクリューの回転によって、ヘッド5内で溶融された樹脂4を吐出することができる。樹脂が熱可塑性エラストマーのように柔軟性が非常に高いものである場合には、ギアの回転によってフィラメントを下流に移動させることが困難な場合があるので、この場合、ヘッド5は、スクリュー式押出機であることが好ましい。
【0025】
吐出口5aから吐出された直後の樹脂4の温度を造形温度と定義する。造形温度は、120~230℃であることが好ましい。この場合に、冷却時に樹脂4が十分に固化されやすく、且つ造形材料の加熱による劣化が起こりにくいからである。上記造形温度は、具体的には例えば、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0026】
造形物1は、凹部1cを有するので、凹部1cの上方の部位1d(
図1Bに図示)を形成するためには、支持体3を準備し、支持体3上に部位1dを形成する必要がある。
【0027】
特許文献1では、造形物と支持体を一緒に造形しているが、このような方法では、支持体の分だけ、造形時間が長くなってしまうという問題がある。そこで、本実施形態では、予め準備された支持体3を用いることによって、造形時間を短縮している。
【0028】
支持体3の形成方法は、特に限定されず、積層造形や射出成形などによって形成することができる。射出成形によって支持体3を形成する場合、支持体3の表面を平滑にすることが容易であり、この場合、造形物1の凹部1cの内面を平滑にすることができる。造形物1が乳房体である場合、凹部1cの内面が身体に接触する面となるので、この面を平滑にすることによって、乳房体の品質を向上させることができる。
【0029】
支持体3を構成する樹脂(以下、「支持体樹脂」)の融点は、樹脂4の融点よりも高いことが好ましい。この場合、支持体樹脂の融点と、樹脂4の融点の間の温度で造形することによって、支持体3を溶融させることなく、造形物1の造形が可能である。また、この場合、支持体3が溶融しないので、後述する除去工程で分離された支持体3を次の造形物を製造するための積層造形工程において再利用することができる。支持体樹脂の融点は、造形温度よりも高いことが好ましい。この場合、支持体3を溶融させることなく、造形物1の造形が可能である。本明細書において、「融点」は、JIS K 7121:2012に従って測定した融解ピーク温度Tpmを意味する。
【0030】
図3Bに示すように、支持体3は、傾斜面3aを有する。傾斜面3aは、平面であっても曲面であってもよい。造形物1が乳房体である場合、凹部1cの内面には、造形物1を身体にフィットさせるための傾斜面を設けることが好ましいところ、支持体3に傾斜面3aを設けることによって、凹部1cの内面にも傾斜面を設けることができる。水平面に対する傾斜面3aの傾斜角度は、例えば5~85度であり、10~80度が好ましい。この傾斜角度は、具体的には例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85度であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0031】
ところで、支持体3上に樹脂4を吐出すると、樹脂4が支持体3上で滑ってしまい、所望形状の造形物1が得られなくなる場合がある。従って、支持体3上での樹脂4の滑りを抑制する滑り抑制構成を備えることが好ましい。。
【0032】
滑り抑制構成の一例は、支持体樹脂と樹脂4が、共通するモノマーを有することである。共通するモノマーを有する樹脂(つまり、同系統の樹脂)は、一般に、親和性が高いので、このような樹脂の組み合わせを用いることによって、樹脂4の滑りが抑制される。例えば、樹脂4がスチレン系エラストマーである場合、支持体樹脂としては、スチレン系エラストマーや、エラストマー以外のスチレン系樹脂を採用することが好ましい。支持体樹脂と樹脂4の共通するモノマーの割合は、例えば50~100質量%であり、具体的には例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0033】
滑り抑制構成の別の例は、支持体樹脂と樹脂4のハンセン溶解度パラメータの差の絶対値をΔSPとすると、ΔSPの値が1.3以下であることである。ΔSPは、樹脂同士の親和性を示す指標であり、ΔSPの値が小さいほど支持体樹脂と樹脂4の間の親和性が高いので、ΔSPの値が1.3以下となる樹脂の組み合わせを用いることによって、樹脂4の滑りが抑制される。ΔSPは、1.0以下が好ましく、0.5以下がさらに好ましく、具体的には例えば、0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0034】
滑り抑制構成の別の例は、
図3Bに示すように、支持体3のうち、単層構造体が形成される部位(
図3Bでは、傾斜面3a)に凹部3bを設けることである。この場合、樹脂4が凹部3bに入り込んで固化することによって、樹脂4が支持体3に係合されて、樹脂4の滑りが抑制される。この滑り抑制構成を採用する場合、支持体樹脂と樹脂4の親和性が低くても、樹脂4の滑りが抑制されるので、支持体3の材料選択の幅が広がるという利点がある。凹部3bの開口径は、吐出口5aの直径よりも小さいことが好ましい。この場合、凹部3b内に入り込む樹脂4の量が多くなりすぎず、樹脂4が凹部3bに入り込むことに起因する形状の乱れが抑制される。
【0035】
支持体3が多孔体である場合、多孔体の孔が凹部3bとして機能する。多孔体としては、ゼオライトのような材料自体が多孔質であるものであってもよく、積層造形によって形成された
図2に示すような三次元網目構造2を有するものであってもよい。また、支持体3が金型を用いて形成する成形体である場合、金型の凸部を転写して凹部3bを形成してもよい。
【0036】
滑り抑制構成の別の例は、
図3Bに示すように、支持体3に接触する層を形成する際の、ヘッド5の吐出口5aの中心線5b上でのヘッド5と支持体3の間の間隔をGとし、ヘッド5の吐出口の直径をDとすると、G/Dを0.5以下とすることである。G/Dは、0.8程度に設定されるのが一般的であるが、G/Dをこのような値に設定すると、樹脂4が支持体3上で滑りやすい。樹脂4の滑りを抑制するには、支持体樹脂と樹脂4の親和性を高めることが考えられるが、その場合、支持体樹脂の選択の自由度が狭くなってしまうという課題がある。
【0037】
本構成では、このような課題を解決すべく、G/Dが0.5以下という構成を採用している。G/Dをこのような値にすると、吐出された樹脂4が支持体3に強く押し付けられるので、樹脂4と支持体3の密着性が高まって、樹脂4の滑りが抑制される。このため、本構成の採用によって、支持体3の材料選択の幅が広がる。G/Dは、例えば0.1~0.5であり、具体的には例えば、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0038】
また、下層の単層構造体上に次の単層構造体を形成する際の、ヘッド5と前記下層との間の距離をG1とすると、G/G1は、0.1~1が好ましく、0.3~0.8が好ましい。G,G1は、いわゆる造形ピッチを示している。支持体3と造形物1が分離されやすいように、支持体3上に単層構造体を形成する際の造形ピッチは、下層の単層構造体上に次の単層構造体を形成する際の造形ピッチよりも大きくする、つまり、G/G1を1よりも大きくするのが一般的であるが、本構成では、G/G1を1以下とすることによって、支持体3上での樹脂4の滑りを抑制している。G/G1は、具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0039】
本構成は、支持体3に凹部3bを設ける構成との併用が特に効果的である。この場合、樹脂4が凹部3b内に入り込みやすくなり、樹脂4の滑りがさらに効果的に抑制される。
【0040】
(2)除去工程
除去工程では、
図4Aに示す一体物9を、
図4Bに示すように支持体3と造形物1に分離することによって、一体物9から支持体3を除去する。これによって、造形物1が得られる。
【0041】
支持体樹脂と樹脂4の少なくとも一方がエラストマーのような柔軟性が高い樹脂である場合、支持体3又は造形物1を変形させることによって上記分離を行うことができる。支持体3と樹脂4の両方の剛性が高い場合は、支持体3と造形物1を互いに引き離す方向の力を加えることによって上記分離を行うことができる。例えば、支持体3を別の部材に固定した状態で、支持体3又はその周囲に領域に設けた突き出しピンで造形物1を突くことによって、上記分離を行うことができる。
【0042】
除去工程で取り外した支持体3は、次の造形物1を製造するための積層造形工程において再利用することができる。このため、上記分離は、支持体3が損傷しないように行うことが好ましい。また、支持体3を再利用することによって、支持体3の製造にかかる時間とコストを削減することが可能である。
【0043】
2.その他の実施形態
・上記実施形態では、傾斜面3a及び凹部3bを有する支持体3を用いているが、傾斜面3aを有しない支持体3や、凹部3bを有しない支持体3を用いてもよい。
・上記実施形態では、G/Dを0.5以下としているが、G/Dは、0.5よりも大きくてもよい。この場合、G/Dは、例えば、0.1~1であり、具体的には例えば、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.00であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 :造形物
1a :上面
1b :下面
1c :凹部
1d :部位
2 :三次元網目構造
2a :線状樹脂
3 :支持体
3a :傾斜面
3b :凹部
4 :樹脂
5 :ヘッド
5a :吐出口
5b :中心線
6 :単層構造体
6a :線状樹脂
7 :単層構造体
7a :線状樹脂
8 :単層構造体
8a :線状樹脂
9 :一体物
R :造形領域