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特許7549232端部検出装置、スラブ長測定装置、端部検出方法及びスラブ長測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】端部検出装置、スラブ長測定装置、端部検出方法及びスラブ長測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/04 20060101AFI20240904BHJP
【FI】
G01S13/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021051651
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149473
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 貴博
(72)【発明者】
【氏名】杉橋 敦史
(72)【発明者】
【氏名】谷 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 紀幸
(72)【発明者】
【氏名】上田 敏澄
(72)【発明者】
【氏名】西村 太志
(72)【発明者】
【氏名】曽山 智之
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-139583(JP,A)
【文献】特開2015-179023(JP,A)
【文献】特開2004-061273(JP,A)
【文献】国際公開第2012/104921(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0036864(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
G01N 22/00-22/04
B21B 38/04
B21C 51/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるスラブの端部を検出する端部検出装置において、
前記スラブの側方に配置され、前記スラブに対してマイクロ波を送信するマイクロ波送信部と、
前記マイクロ波送信部と並んで配置され、前記マイクロ波の前記スラブの側面からの反射波を受信するマイクロ波受信部と、
前記スラブの端部が前記マイクロ波送信部又は前記マイクロ波受信部の前方を通過したタイミングに基づいて、前記スラブの端部を検出する演算処理部と、
を有し、
前記演算処理部は、
前記スラブが前記マイクロ波送信部又は前記マイクロ波受信部の前方に存在する場合の前記反射波の信号強度と、前記スラブが前記マイクロ波送信部又は前記マイクロ波受信部の前方に存在しない場合の前記反射波の信号強度との間で予め定められた信号強度に対応した所定のタイミングを、前記スラブの端部が前記マイクロ波送信部又は前記マイクロ波受信部の前方を通過したタイミングと判断する、端部検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の端部検出装置を用いて検出した、前記スラブの前側の端部と前記スラブの後側の端部とから、前記スラブの長さを算出する、スラブ長測定装置。
【請求項3】
搬送されるスラブの端部を検出する端部検出方法において、
前記スラブの側方に配置されたマイクロ波送信部を用いて、前記スラブに対してマイクロ波を送信するマイクロ波送信ステップと、
前記マイクロ波送信部と並んで配置されたマイクロ波受信部を用いて、前記マイクロ波の前記スラブの側面からの反射波を受信するマイクロ送受信ステップと、
前記スラブの端部が前記マイクロ波送信部又は前記マイクロ波受信部の前方を通過したタイミングに基づいて、前記スラブの端部を検出する演算処理ステップと、
を有し、
前記演算処理ステップは、
前記スラブが前記マイクロ波送信部又は前記マイクロ波受信部の前方に存在する場合の前記反射波の信号強度と、前記スラブが前記マイクロ波送信部又は前記マイクロ波受信部の前方に存在しない場合の前記反射波の信号強度との間で予め定められた信号強度に対応した所定のタイミングを、前記スラブの端部が前記マイクロ波送信部又は前記マイクロ波受信部の前方を通過したタイミングと判断する、端部検出方法。
【請求項4】
前記演算処理ステップは、
前記反射波の信号強度を、式(1)に示すシグモイド関数f(α)で近似し、
近似された前記シグモイド関数f(α)におけるcの値に基づいて、前記所定のタイミングを判断する、請求項3に記載の端部検出方法。
なお、αは、前記スラブの搬送に掛かった時間t又は前記スラブの搬送方向の位置xであり、a、b、cはフィッティング係数である。
【請求項5】
前記演算処理ステップは、
前記反射波の信号強度を、式(2)~式(4)に示すナイフエッジ回折のモデルg(α)で近似し、
近似された前記ナイフエッジ回折のモデルg(α)におけるbの値に基づいて、前記所定のタイミングを判断する、請求項3に記載の端部検出方法。
なお、αは、前記スラブの搬送に掛かった時間t又は前記スラブの搬送方向の位置xであり、a、bはフィッティング係数であり、C(ν)はフレネル余弦積分関数であり、S(ν)はフレネル正弦積分関数である。
【請求項6】
前記演算処理ステップは、
前記反射波の信号強度を、前記スラブの搬送方向に対する傾きを考慮した、式(5)~式(7)に示すナイフエッジ回折のモデルh(α)で近似し、
近似された前記ナイフエッジ回折のモデルh(α)におけるbの値に基づいて、前記所定のタイミングを判断する、請求項3に記載の端部検出方法。
なお、αは、前記スラブの搬送に掛かった時間t又は前記スラブの搬送方向の位置xであり、rは前記スラブが前記マイクロ波送信部又は前記マイクロ波受信部の前方に存在する場合の前記マイクロ波送信部及び前記マイクロ波受信部から前記スラブの側面までの距離であり、a、bはフィッティング係数であり、C(ν)はフレネル余弦積分関数であり、S(ν)はフレネル正弦積分関数である。
【請求項7】
請求項3~6のいずれか一項に記載の端部検出方法を用いて検出した、前記スラブの前側の端部と前記スラブの後側の端部とから、前記スラブの長さを算出する、スラブ長測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送されるスラブの端部を検出する又は検出した端部からスラブの長さを算出する、端部検出装置、スラブ長測定装置、端部検出方法及びスラブ長測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、製鉄業における製鋼工程では、鋼材であるスラブは、連続鋳造プロセスによって製造され、後工程のスケジュールに応じて一時的に屋外のヤードで保管された後、後工程に搬送される。ヤードで保管されるスラブは、表面にスラブの成分や寸法と紐づけられた管理番号が印字され、そうした管理番号に基づいて管理される。
間違ったスラブを後工程に流出させないために、スラブが後工程の加熱炉に装入される前に管理番号を読み取り、読み取った管理番号に基づいて、後工程に搬送されるスラブが正しいスラブであるかどうかが、確認される。
【0003】
しかしながら、スラブに印字された管理番号が、屋外のヤードでの保管中や搬送中に消えてしまい、正しく読み取ることができない場合がある。そこで、スラブが後工程に搬送される前に、スラブの管理番号のみならず、スラブの寸法(幅、長さ、厚み)についても測定しておくことで、管理番号を正しく読み取れない場合には、スラブの寸法の測定結果に基づいて、後工程に搬送されるスラブが、正しいスラブであるかどうかを確認できるようにしておくことが要求される。
【0004】
生産性や設備上の観点から、スラブの寸法(特に、測定値が大きくなる長さ)は、スラブが加熱炉に装入される前に、屋外に設けられた搬送ラインによって、屋外を搬送されているときに測定されるのが望ましい。スラブの長さは、スラブの前端部から後端部までの長さであるので、スラブの長さを測定するには、スラブの前側の端部及び後側の端部を精度良く検出する方法が要求される。
【0005】
ここで、特許文献1には、被測定物に向けて光ビームを照射し、ラインセンサで検出された光ビームの信号レベルに基づいて被測定物の端部の位置を特定する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-35605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、可視光から赤外光の波長のレーザ光が使用されている。このため、特許文献1に記載の装置は、高い空間分解能を得ることができるが、スラブが搬送される屋外で測定を行う場合には、可視光や赤外光であるレーザ光が雨滴や粉塵によって散乱されてしまうという問題を有している。したがって、特許文献1に記載の装置のようなレーザ方式のセンサを屋外で使用すると、搬送されるスラブの端部を精度良く検出できない虞がある。
【0008】
また、被測定物の端部を検出するセンサとして、カメラ方式のものがあるが、カメラ方式のセンサは、光量を確保しづらい夜間の測定には不向きであるという欠点がある。
【0009】
そこで、屋外の測定における上記諸問題を解決するために、マイクロ波帯域の電磁波(マイクロ波)を用いることが考えられる。マイクロ波を用いれば、雨滴や粉塵、暗さの影響を抑制しつつ、搬送されるスラブの端部を検出できるという利点がある。ところが、一般に、マイクロ波は空間分解能に劣るため、所望の精度でスラブの端部を検出できないという課題が生じることになる。
【0010】
そこで、本発明は、一例として、雨滴や粉塵、暗さの影響を受け易い環境下であっても、搬送されるスラブの端部を精度良く検出できる、又は、検出された端部に基づいてスラブの長さを算出できる、端部検出装置、スラブ長測定装置、端部検出方法及びスラブ長測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の実施形態に係る端部検出装置は、搬送されるスラブの端部を検出する端部検出装置において、前記スラブの側方に配置され、前記スラブに対してマイクロ波を送信するマイクロ波送信部と、前記マイクロ波送信部と並んで配置され、前記マイクロ波の前記スラブの側面からの反射波を受信するマイクロ波受信部と、前記スラブの端部が前記マイクロ波送信部又は前記マイクロ波受信部の前方を通過したタイミングに基づいて、前記スラブの端部を検出する演算処理部と、を有し、前記演算処理部は、前記スラブが前記マイクロ波送信部又は前記マイクロ波受信部の前方に存在する場合の前記反射波の信号強度と、前記スラブが前記マイクロ波送信部又は前記マイクロ波受信部の前方に存在しない場合の前記反射波の信号強度との間で予め定められた信号強度に対応した所定のタイミングを、前記スラブの端部が前記マイクロ波送信部又は前記マイクロ波受信部の前方を通過したタイミングと判断する。
また、本発明の実施形態に係るスラブ長算出装置は、前記端部検出装置を用いて検出した、前記スラブの前側の端部と前記スラブの後側の端部とから、前記スラブの長さを算出する。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の実施形態に係る端部検出方法は、搬送されるスラブの端部を検出する端部検出方法において、前記スラブの側方に配置されたマイクロ波送信部を用いて、前記スラブに対してマイクロ波を送信するマイクロ波送信ステップと、前記マイクロ波送信部と並んで配置されたマイクロ波受信部を用いて、前記マイクロ波の前記スラブの側面からの反射波を受信するマイクロ送受信ステップと、前記スラブの端部が前記マイクロ波送信部又は前記マイクロ波受信部の前方を通過したタイミングに基づいて、前記スラブの端部を検出する演算処理ステップと、を有し、前記演算処理ステップは、前記スラブが前記マイクロ波送信部又は前記マイクロ波受信部の前方に存在する場合の前記反射波の信号強度と、前記スラブが前記マイクロ波送信部又は前記マイクロ波受信部の前方に存在しない場合の前記反射波の信号強度との間で予め定められた信号強度に対応した所定のタイミングを、前記スラブの端部が前記マイクロ波送信部又は前記マイクロ波受信部の前方を通過したタイミングと判断する。
また、本発明の実施形態に係るスラブ長算出方法は、前記端部検出方法を用いて検出した、前記スラブの前側の端部と前記スラブの後側の端部とから、前記スラブの長さを算出する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、雨滴や粉塵、暗さの影響を受け易い環境下であっても、搬送されるスラブの端部を精度良く検出できる、又は、検出された端部に基づいてスラブの長さを算出できる、端部検出装置、スラブ長測定装置、端部検出方法及びスラブ長測定方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る測定装置及びスラブを示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るスラブの前端部が、センサの前方を通過する様子を説明する図である。
図3】本発明の一実施形態に係るスラブの後端部が、センサの前方を通過する様子を説明する図である。
図4】本発明の一実施形態に係るスラブが、センサの前方を通過するときに得られる反射波の信号強度とスラブの搬送時の時間との関係を示すグラフである。
図5】本発明の一実施形態に係る演算処理部における処理の流れを示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る測定装置におけるナイフエッジ回折のモデルを説明する図であって、スラブの前端部がセンサの前方を通過するときの様子を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る測定装置におけるナイフエッジ回折のモデルを説明する図であって、スラブの後端部がセンサの前方を通過するときの様子を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る測定装置において、スラブが搬送方向に対して傾いた状態で搬送される場合を示す図である。
図9】実施例1において得られた反射波の信号強度を示すグラフである。
図10】実施例1及び実施例2においてそれぞれ得られた反射波の信号強度を比較して示すグラフである。
図11】実施例1及び実施例3においてそれぞれ得られた反射波の信号強度を比較して示すグラフである。
図12】実施例1及び実施例4においてそれぞれ得られた反射波の信号強度を比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態は、雨滴や粉塵、暗さの影響を受け難いマイクロ波帯域の電磁波(マイクロ波)を使いつつ、搬送されるスラブの前端部及び後端部を精度良く検出し、ひいては、スラブの長さを精度良く測定できる端部検出装置、スラブ長測定装置、端部検出方法及びスラブ長測定方法を提案するものである。
【0016】
(スラブ12の説明)
図1は、本発明に係る測定装置10及びスラブ12を示す図である。スラブ12は、製鉄業における製鋼工程において、連続鋳造プロセスによって製造され、厚板や薄板等に加工される前の半製品である、偏平な直方体の形状をした鋼材である。スラブ12は、連続鋳造プロセスによって製造された後に、後工程のスケジュールに応じて一時的に屋外のヤードで保管され、その後、後工程に搬送される。このとき、スラブ12は、屋外に設けられた搬送ライン(図示せず)によって、屋外を搬送される。
【0017】
図1では、スラブ12及び後述するセンサ14については、鉛直方向から見た平面図で示されている。矢印Tは、スラブ12が搬送ライン上を搬送される際の、搬送ラインの動作方向で規定される搬送方向を示している。スラブ12は、搬送方向と平行な状態で搬送される場合と、搬送方向に対して傾いた状態で搬送される場合がある。
【0018】
スラブ12が搬送方向と平行な状態で搬送される場合とは、スラブ12が、平面視でスラブ12の長手方向と搬送方向とが平行な状態で搬送される場合のことであり、スラブ12が搬送方向に対して傾いた状態で搬送される場合とは、スラブ12が、平面視でスラブ12の長手方向と搬送方向とが傾いた状態で搬送される場合のことである。図1では、一例として、スラブ12が搬送方向と平行な状態で搬送される場合が示されている。
【0019】
以下の説明では、スラブ12の長手方向と搬送方向との傾きの有無によらず、スラブ12が搬送される際に前側となる端部(前側の端部)を、スラブ12の前端部12Aと称し、スラブ12が搬送される際に後側となる端部(後側の端部)を、スラブ12の後端部12Bと称する。スラブ12の前端部12A及び後端部12Bは、それぞれ「スラブの端部」の一例である。スラブ12の長さは、スラブ12の長手方向に沿った前端部12Aと後端部12Bとの間の長さに相当する。
【0020】
(測定装置10の説明)
測定装置10は、スラブ12が屋外を搬送されているときに、搬送されるスラブ12の端部(前側の端部及び後側の端部の少なくともいずれか一方)を検出するものであり、必要に応じて、搬送されるスラブ12の前側の端部とスラブ12の後側の端部とを検出し、検出したスラブ12の前側の端部とスラブ12の後側の端部の通過タイミングから、スラブ12の長さを算出するものである。この測定装置10は、センサ14と、送受信回路16と、演算処理部18とを有する。
【0021】
センサ14は、屋外を搬送されるスラブ12に向けられており、スラブ12の水平方向の側方に配置されている。センサ14は、マイクロ波送信部20とマイクロ波受信部22とを有する。センサ14に設けられたマイクロ波送信部20は、搬送されるスラブ12の側方に配置され、スラブ12に対してマイクロ波を送信するものであり、センサ14に設けられたマイクロ波受信部22は、マイクロ波送信部20と並んで配置され、マイクロ波のスラブ12の側面からの反射波を受信するものである。
【0022】
なお、図1では、マイクロ波送信部20及びマイクロ波受信部22が、スラブ12の搬送方向に沿って並ぶように図示されているが、マイクロ波送信部20及びマイクロ波受信部22はどの方向に並んでいてもよい。また、図1では、マイクロ波送信部20及びマイクロ波受信部22は、一つのセンサ内に設けられているが、別々のセンサに設けるようにしてもよい。
【0023】
送受信回路16は、マイクロ波送信部20及びマイクロ波受信部22と電気的に接続されている。送受信回路16は、マイクロ波送信部20からマイクロ波を送信させる。また、送受信回路16は、マイクロ波受信部22で受信された反射波の信号強度に応じたデータを演算処理部18に出力する。
【0024】
演算処理部18は、コンピュータによって構成されている。この演算処理部18は、ハードウェア構成として、プロセッサ24と、メモリ26とを有する。プロセッサ24は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等によって構成される。メモリ26は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びストレージ等によって構成される。
【0025】
ROMは、各種プログラム及び各種データを格納する。RAMは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラムや各種データを格納する。
【0026】
ROM又はストレージには、後述するようにスラブ12の前端部12A及び後端部12Bを検出し、この検出結果に基づいてスラブ12の長さを算出するためのプログラム28が格納されている。プロセッサ24は、プログラム28を読み出し、RAMを作業領域としてプログラム28を実行する。
【0027】
演算処理部18は、スラブ12の端部がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方を通過したタイミングに基づいて、スラブ12の端部を検出するものである。即ち、演算処理部18は、スラブ12の前側の端部(前端部12A)がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方を通過したタイミングに基づいて、スラブ12の前側の端部(前端部12A)を検出するものであり、スラブ12の後側の端部(後端部12B)がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方を通過したタイミングに基づいて、スラブ12の後側の端部(後端部12B)を検出するものである。
演算処理部18は、機能的な構成として、送受信制御部30と、スラブ端部検出部32と、スラブ長さ算出部34とを有する。送受信制御部30、スラブ端部検出部32及びスラブ長さ算出部34は、プロセッサ24がメモリ26からプログラム28を読み出し、プログラム28を実行することで実現される。
【0028】
後述する通り、送受信制御部30は、マイクロ波送信部20からマイクロ波が送信されるように、送受信回路16を制御する機能を有する。また、送受信制御部30は、マイクロ波受信部22で受信された反射波の信号強度に応じたデータが演算処理部18に出力されるように、送受信回路16を制御する機能を有する。スラブ端部検出部32は、スラブ12の前端部12A及び後端部12Bをそれぞれ検出する機能を有し、スラブ長さ算出部34は、スラブ12の長さを算出する機能を有する。
【0029】
(スラブ12がセンサ14の前方を通過する様子の説明)
図2は、本発明に係るスラブ12の前端部12Aが、センサ14の前方を通過する様子を説明する図である。状態Aは、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過する前の状態であって、スラブ12がセンサ14の前方に存在しない状態である。状態Bは、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過中の状態であり、状態Cは、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過した後の状態であって、スラブ12がセンサ14の前方に存在する状態である。
【0030】
図3は、本発明に係るスラブ12の後端部12Bが、センサ14の前方を通過する様子を説明する図である。状態Dは、スラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過する前の状態であって、スラブ12がセンサ14の前方に存在する状態であり、状態Eは、スラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過中の状態である。状態Fは、スラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過した後の状態であって、スラブ12がセンサ14の前方に存在しない状態である。
【0031】
なお、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過することは、スラブ12の前端部12Aがマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方を通過することに相当する。また、スラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過することは、スラブ12の後端部12Bがマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方を通過することに相当する。
【0032】
さらに、スラブ12がセンサ14の前方に存在することは、スラブ12がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方に存在することに相当し、スラブ12がセンサ14の前方に存在しないことは、スラブ12がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方に存在しないことに相当する。
【0033】
(反射波の信号強度の説明)
図4は、本発明に係るスラブ12が、センサ14の前方を通過するときに得られる反射波の信号強度とスラブ12の搬送時の時間との関係を示すグラフである。図4の縦軸は反射波の信号強度を示しており、図4の横軸はスラブ12の搬送時の時間を示している。スラブ12の搬送時の時間は、スラブ12の搬送時の時刻でもよく、また、基準時間からの経過時間でもよい。図4の矢印A~Fで指し示される信号強度が得られる時間は、図2及び図3の状態A~状態Fにそれぞれ対応している。
【0034】
一般に、マイクロ波は、波長に比例した一定の角度で広がりながら空間を伝わり、大部分は送信経路上にある物体で反射するものの、一部は送信経路上にある物体の周囲を回りこむという特性を有する。この特性の影響により、図4に示すように、スラブ12がセンサ14の前方に存在しない状態Aでは、反射波の信号強度はほぼゼロになり、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過中の状態Bでは、反射波の信号強度が急激に増加する。スラブ12がセンサ14の前方に存在する状態C、Dでは、反射波の信号強度が増加したままほぼ一定になる。スラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過中の状態Eでは、反射波の信号強度が急激に減少し、スラブ12がセンサ14の前方に存在しない状態Fでは、反射波の信号強度はほぼゼロになるという挙動を示す。
【0035】
(測定装置10の処理の流れの説明)
本発明の第一実施形態に係る測定装置10の処理の流れを説明する。
図5は、測定装置10における処理の流れを示す図である。測定装置10はステップS001から処理を開始し、ステップS001~S006の処理を実行する。
【0036】
(ステップS001)
ステップS001では、測定装置10における演算処理部18(送受信制御部30)が、マイクロ波送信部20からマイクロ波が送信されるように、送受信回路16を制御する。これにより、測定装置10は、搬送されるスラブ12の側方に配置されたマイクロ波送信部20を用いて、スラブ12に対してマイクロ波を送信する。
なお、ステップS001より前の時点では、スラブ12の前端部12Aは、センサ14(即ち、マイクロ波送信部20及びマイクロ波受信部22)の前方に到達していなかった(即ち、前方を通過していなかった)ものとする。
その後、ステップS002に進む。
【0037】
(ステップS002)
ステップS002では、演算処理部18(送受信制御部30)が、マイクロ波受信部22で受信された反射波の信号強度に応じたデータが演算処理部18に出力されるように、送受信回路16を制御する。これにより、測定装置10は、マイクロ波送信部20と並んで配置されたマイクロ波受信部22を用いて、マイクロ波のスラブ12の側面からの反射波を受信する。その結果、マイクロ波受信部22で受信された反射波の信号強度に応じたデータが、送受信回路16から演算処理部18に出力される。
その後、ステップS003に進む。
【0038】
(ステップS003)
ステップS003では、スラブ12の後端部12Bが、センサ14の前方(即ち、マイクロ波送信部20及びマイクロ波受信部22の前方)を通過したかどうか、即ち、スラブ12がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方に存在しない状態になったかどうかが判断される。こうした判断を行う手法は、特に限定されるものではないが、例えば、搬送ラインの搬送速度とスラブ12のおおよその長さとから、後端部12Bがセンサ14の前方を通過するであろう時間に、余裕時間を追加することで、「少なくとも通過したであろう」ことを判断するようにすることで、判断することができる。
そして、後端部12Bが、センサ14の前方を通過してないと判断した場合には、ステップS001に戻り、後端部12Bがセンサ14の前方を通過したと判断した場合には、送受信制御部30を用いて送受信回路16を制御し、マイクロ波の送信及び受信を停止したうえで、ステップS004に進む。
即ち、演算処理部18(送受信制御部30)は、スラブ12がセンサ14の前方を通過する間にわたって、送受信回路16を制御し続け、反射波の信号強度に応じたデータを取得し続ける。
なお、図4に示す状態Cから状態Dの間は、信号強度の値はあまり変化しない。そのため、後述する反射波の信号強度の上値S1と下値S2を取得したり、フィッティングができる程度のデータが取得できてさえいれば、状態Cから状態Dに至るまでの間は、ステップS001~S002の処理を一時休止し、データを取得しないようにすることも可能である。
【0039】
(ステップS004)
ステップS004では、ステップS001~S003までの処理が実行されることにより、スラブ12の搬送時の時間に応じて変化する、反射波の信号強度のデータ(図4参照)が得られる。
【0040】
演算処理部18は、スラブ12の搬送時の時間を計時する時計機能を有しており、反射波の信号強度と時計機能により得られたスラブ12の搬送時の時間とを紐づける。そして、演算処理部18は、反射波の信号強度とスラブ12の搬送時の時間とを紐づけたデータを、検出データとしてメモリ26に記憶させる。
【0041】
これにより、メモリ26には、スラブ12がセンサ14の前方を通過する間に得られた検出データ、すなわち、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過する前からスラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過した後までの間に得られた検出データが記憶される。この検出データには、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過する前から通過した後までの間に得られたデータと、スラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過する前から通過した後までの間に得られたデータが含まれる。
その後、ステップS005に進む。
【0042】
(ステップS005)
ステップS005では、演算処理部18(スラブ端部検出部32)は、後述するように、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過したタイミングに基づいて、スラブ12の前端部12Aを検出する処理を実行する。また、ステップS005では、演算処理部18(スラブ端部検出部32)は、後述するように、スラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過したタイミングに基づいて、スラブ12の後端部12Bを検出する処理を実行する。
【0043】
ここで、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過したタイミング、及び、スラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過したタイミングは、概念的には、それぞれ、スラブ12がセンサ14の前方に存在する場合の反射波の信号強度と、スラブ12がセンサ14の前方に存在しない場合の反射波の信号強度との間の1/2の信号強度が得られたタイミングであると考えられる。また、時間変化(スラブ12の搬送速度が既知なので、位置変化ともいえる)に対する反射波の信号強度の傾きの絶対値が最大となるタイミングであるとも考えられる。
しかしながら、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過したり、スラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過したりするのは、極めて短い時間で行われる動作であるため、厳密に、1/2の信号強度が得られたタイミングであったり、傾きの絶対値が最大となるタイミングに基づいて判断する必要はなく、ある程度の幅を許容することも可能である。
そのため、本実施形態においては、スラブ12がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方に存在する場合の反射波の信号強度と、スラブ12がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方に存在しない場合の前記反射波の信号強度との間の信号強度の内から、上述の1/2の信号強度や傾きの絶対値が最大となる信号強度に相当する任意の信号強度を予め定めておき、当該予め定められた信号強度に対応した“所定のタイミング”を、スラブ12の端部がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方を通過したタイミングと判断するようにしている。
また、本実施形態においては、信号強度の立ち上がり又は立ち下りエッジ付近での傾きを求め、求めた傾きが、傾きの絶対値が最大となることに対応した所定の傾きとなるタイミングを、予め定められた信号強度に対応した“所定のタイミング”であると見なし、スラブ12の端部がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方を通過したタイミングと判断するようにしてもよい。
なお、傾きを評価する場合には、信号強度の時間変化(又は位置変化)を、微小な区間に区切って、それぞれの区間毎に傾きを求めることで評価することになるが、マイクロ波の反射波の信号強度は、スラブ12とセンサ14との位置関係による影響だけではなく、マイクロ波の回折による影響も受ける(例えば、図9では、-0.04、-0.07付近に回折によって生じた振動によるピークが見える)ため、区間の取り方が狭すぎると、回折によるピークの傾きと区別できなくなる可能性がある。そのため、傾きを評価する際には、マイクロ波の回折の影響を除外できるくらいの広い区間(具体的には50mm以上であることが好ましい)で、傾きをサンプリングして評価することが好ましい。
【0044】
そこで、演算処理部18(スラブ端部検出部32)は、上述の所定のタイミングを、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過したタイミング、及び、スラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過したタイミングと判断する。
【0045】
上述の所定のタイミングを判断する手法には、後述する第一例~第四例がある。
なお、後述する第一例~第四例の説明では、説明を簡単にするため、上述の所定のタイミングを、スラブ12がセンサ14の前方に存在する場合の反射波の信号強度と、スラブ12がセンサ14の前方に存在しない場合の反射波の信号強度との間の1/2の信号強度が得られたタイミング(即ち、時間変化に対する反射波の信号強度の傾きの絶対値が最大となるタイミング)とする場合を例に挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、上述の所定のタイミングとして、スラブ12がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方に存在する場合の反射波の信号強度と、スラブ12がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方に存在しない場合の前記反射波の信号強度との間の信号強度の内から、任意の信号強度に相当するタイミングを用いることが可能である。
【0046】
また、演算処理部18(スラブ端部検出部32)は、上述の所定のタイミングに対応する時間、すなわち、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過したタイミングに対応する第一時間と、スラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過したタイミングに対応する第二時間を、メモリ26に記憶された検出データ(反射波の信号強度とスラブ12の搬送時の時間とを紐づけたデータ)に基づいて検出し、メモリ26に記憶する。
その後、ステップS006に進む。
【0047】
(ステップS006)
ステップS006では、演算処理部18(スラブ長さ算出部34)が、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過したタイミングと、スラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過したタイミングとに基づいて、スラブ12の長さを算出する。
【0048】
具体的には、演算処理部18(スラブ長さ算出部34)は、メモリ26に記憶された第一時間と第二時間とを読み出し、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過したタイミングに対応する第一時間と、スラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過したタイミングに対応する第二時間との差に、スラブ12の搬送速度を掛け合わせることで、スラブ12の長さを算出する。
【0049】
スラブ12の搬送速度は、予め定められた設定値でもよく、また、測定器を用いて測定された測定値でもよい。スラブ12の搬送速度が変化する場合には、式(A)の通り、例えば測定器を用いて測定された速度履歴v(t)を第一時間t1と第二時間t2との間で積分することでスラブ12の長さが算出される。
【0050】
本発明の実施形態に係る測定装置10では、スラブ長測定装置として機能するものであり、以上の要領により、搬送されるスラブ12の前端部12A及び後端部12Bが検出され、この検出結果に基づいて、スラブ12の長さが算出される。
なお、ここでは、スラブ12の端部がセンサ14の前方を通過したタイミングに対応する時間(第一時間及び第二時間)を用いて、スラブ12の長さを算出したが、本発明はこのやり方に限定されない。例えば、搬送ラインにエンコーダを取り付ける等して、搬送ラインの動作量から、スラブ12の位置を把握できるようにしておき、スラブ12の端部がセンサ14の前方を通過したタイミングを、スラブ12の位置(例えば、基準位置からの移動距離)を用いて表すことで、スラブ12の長さを算出することもできる。即ち、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過したタイミングに対応する第一位置と、スラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過したタイミングに対応する第二位置との差から、スラブ12の長さを算出することができる。
なお、以上の説明では、本発明の実施形態に係る測定装置10は、スラブ12の長さを算出する機能を持ったスラブ長測定装置であるとして説明したが、本発明の実施形態に係る測定装置10はスラブ長測定装置としてではなく、スラブ12の前端部12A又は後端部12Bを検出する、端部検出装置として機能させることもできる。その場合には、上述のステップS006を省略することにより、実現することができる。
【0051】
(上述の所定のタイミングを判断する手法の例)
続いて、上述の所定のタイミングを判断する手法を、スラブ12がセンサ14の前方に存在する場合の反射波の信号強度と、スラブ12がセンサ14の前方に存在しない場合の反射波の信号強度との間の1/2の信号強度が得られたタイミング(即ち、時間変化に対する反射波の信号強度の傾きの絶対値が最大となるタイミング)に基づいて判断する手法を例に挙げて、第一例~第四例として説明する。
【0052】
(第一例)
第一例では、次の要領により、演算処理部18(スラブ端部検出部32)が、上述の1/2の信号強度が得られたタイミングを判断する。
初めに、演算処理部18(スラブ端部検出部32)は、メモリ26に記憶された検出データ(反射波の信号強度とスラブ12の搬送時の時間とを紐づけたデータ)を読み出す。
【0053】
そして、演算処理部18(スラブ端部検出部32)は、読み出した検出データに基づいて、反射波の信号強度の上値S1と下値S2をそれぞれ算出する。反射波の信号強度の上値S1は、スラブ12がセンサ14の前方(即ち、マイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方)に存在することに応じて、反射波の信号強度が増加したままほぼ一定になったときの信号強度であり、所定期間における信号強度の平均値でもよく、また、反射波の信号強度の最大値でもよい。同様に、反射波の信号強度の下値S2は、スラブ12がセンサ14の前方(即ち、マイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方)に存在しないことに応じて、反射波の信号強度がほぼゼロになったときの信号強度であり、所定期間における信号強度の平均値でもよく、また、反射波の信号強度の最小値又はゼロでもよい。
【0054】
続いて、演算処理部18(スラブ端部検出部32)は、信号強度が、反射波の信号強度の上値S1と下値S2との間の1/2の値となる中間値ΔS1/2を算出する。そして、演算処理部18(スラブ端部検出部32)は、反射波の信号強度の立ち上がりエッジ(図4のおける状態B)において中間値ΔS1/2が得られたタイミングと、反射波の信号強度の立ち下がりエッジ(図4のおける状態E)において中間値ΔS1/2が得られたタイミングをそれぞれ判断する。
【0055】
なお、反射波の信号強度の立ち上がりエッジにおいて中間値ΔS1/2が得られたタイミングは、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過するときに、スラブ12がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方に存在する場合の反射波の信号強度と、スラブ12がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方に存在しない場合の反射波の信号強度との間の1/2の信号強度が得られたタイミング(反射波の信号強度の時間変化における傾きが最大となるタイミング)に相当し、スラブ12の前端部12Aが、マイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方を通過したタイミングに相当する。
また、反射波の信号強度の立ち下がりエッジにおいて中間値ΔS1/2が得られたタイミングは、スラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過するときに、スラブ12がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方に存在する場合の反射波の信号強度と、スラブ12がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方に存在しない場合の反射波の信号強度との間の1/2の信号強度が得られたタイミング(反射波の信号強度の時間変化における傾きが最小となるタイミング)に相当し、スラブ12の後端部12Bが、マイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方を通過したタイミングに相当する。
【0056】
第一例では、以上の要領により、上述の1/2の信号強度が得られたタイミングが判断される。
【0057】
(第二例)
第二例では、次の要領により、演算処理部18(スラブ端部検出部32)が、上述の1/2の信号強度が得られたタイミングを判断する。
初めに、演算処理部18(スラブ端部検出部32)は、メモリ26に記憶された検出データ(反射波の信号強度とスラブ12の搬送時の時間とを紐づけたデータ)を読み出す。
【0058】
そして、演算処理部18(スラブ端部検出部32)は、読み出した検出データに基づいて、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過する前からスラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過した後までの間に得られた反射波の信号強度について、信号強度の上値S1と下値S2とを含む、反射波の信号強度の立ち上がりエッジ(図4の状態B)を、式(1)に示すシグモイド関数f(α)で近似する。また、立ち下がりエッジ(図4の状態E)付近では、時間又は位置の増加に対して、信号強度は低下するため、信号強度の上値S1と下値S2とを含む、反射波の信号強度の立ち下がりエッジ(図4の状態E)を、式(1)に示すシグモイド関数のαの符号を反転したf(-α)で近似する。
【0059】
なお、αは、スラブ12の搬送に(任意に決められた基準時刻から)掛かった時間又はスラブ12の(任意に決められた基準位置からの)搬送方向の位置xであり、a、b、cはフィッティング係数である。
【0060】
上記式(1)で示されるシグモイド関数f(α)を仮定し、最小二乗法によりフィッティングすることで、反射波の信号強度の立ち上がりエッジ(図4の状態B)と立ち下がりエッジ(図4の状態E)のそれぞれについて、反射波の信号強度が、上記式(1)で示されるシグモイド関数f(α)とf(-α)とで近似され、フィッティング係数a、b、cが求まる。
ここで、シグモイド関数f(α)及びf(-α)自体の持つ特性から、フィッティングの結果得られたシグモイド関数f(α)及びf(-α)のフィッティング係数cは、反射波の信号強度の上値S1と下値S2との間の1/2の値である中間値ΔS1/2に対応する、αの値であると見なすことができる。
そのため、αがスラブ12の搬送に掛かった時間である場合には、フィッティングによって求められたcの値は、搬送時の時間の値として求まるため、cの値を知ることで、反射波の信号強度の上値S1と下値S2との間の1/2の値である中間値ΔS1/2が生じるタイミングを、時間情報から知ることができる。
また、αがスラブ12の搬送方向の位置xである場合には、フィッティングによって求められたcの値は、搬送方向の位置を示す値として求まるため、cの値を知ることで、反射波の信号強度の上値S1と下値S2との間の1/2の値である中間値ΔS1/2が生じるタイミングを、位置情報から知ることができる。
【0061】
なお、反射波の信号強度の立ち上がりエッジにおいてcの値に基づくタイミングは、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過するときに、スラブ12がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方に存在する場合の反射波の信号強度と、スラブ12がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方に存在しない場合の前記反射波の信号強度との間の1/2の信号強度が得られたタイミング(反射波の信号強度の時間変化における傾きが最大となるタイミング)に相当し、スラブ12の前端部12Aが、マイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方を通過したタイミングに相当する。
また、反射波の信号強度の立ち下がりエッジにおいてcの値に基づくタイミングは、スラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過するときに、スラブ12がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方に存在する場合の反射波の信号強度と、スラブ12がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方に存在しない場合の前記反射波の信号強度との間の1/2の信号強度が得られたタイミング(反射波の信号強度の時間変化における傾きが最小となるタイミング)に相当し、スラブ12の後端部12Bが、マイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方を通過したタイミングに相当する。
【0062】
第二例では、以上の要領により、上述の1/2の信号強度が得られたタイミングが判断される。
【0063】
(第三例)
第三例では、次の要領により、演算処理部18(スラブ端部検出部32)が、上述の1/2の信号強度が得られたタイミングを判断する。
初めに、演算処理部18(スラブ端部検出部32)は、メモリ26に記憶された検出データ(反射波の信号強度とスラブ12の搬送時の時間とを紐づけたデータ)を読み出す。
【0064】
そして、演算処理部18(スラブ端部検出部32)は、読み出した検出データに基づいて、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過する前からスラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過した後までの間に得られた反射波の信号強度について、信号強度の上値S1と下値S2とを含む、反射波の信号強度の立ち上がりエッジ(図4の状態B)を、式(2)~式(4)に示すナイフエッジ回折のモデルg(α)で近似する。また、立ち下がりエッジ(図4の状態E)付近では、時間又は位置の増加に対して、信号強度は低下するため、信号強度の上値S1と下値S2とを含む、反射波の信号強度の立ち下がりエッジ(図4の状態E)を、式(2)~式(4)に示すナイフエッジ回折モデルg(-α)で近似する。
【0065】
なお、αは、スラブ12の搬送に(任意に決められた基準時刻から)掛かった時間又はスラブ12の(任意に決められた基準位置からの)搬送方向の位置xであり、a、bはフィッティング係数であり、C(ν)はフレネル余弦積分関数であり、S(ν)はフレネル正弦積分関数である。
【0066】
このように反射波の信号強度をナイフエッジ回折のモデルg(α)及びg(-α)で近似するのは、スラブ12がマイクロ波を全反射する鏡面であると仮定すれば、スラブ12で反射した反射波の信号は、スラブ12を挟んで送信機と反対側に配置された受信機で受信される信号と等価であるという考えに基づいている。
【0067】
図6図7は、測定装置10におけるナイフエッジ回折のモデルを説明する図である。図6は、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過するときの様子を示す図であり、図7は、スラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過するときの様子を示す図である。
【0068】
図6の状態Aに示されるように、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過する前の、スラブ12がセンサ14の前方に存在しない状態は、ナイフエッジ回折のモデルにおいて送信機50と受信機52の間に衝立42があるのと同じである。図6の状態Bに示されるように、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過中の状態は、ナイフエッジ回折のモデルにおいて送信機50と受信機52の間に衝立42の端部42Aがあるのと同じである。図6の状態Cに示されるように、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過した後の、スラブ12がセンサ14の前方に存在する状態は、ナイフエッジ回折のモデルにおいて送信機50と受信機52の間に衝立42がないのと同じである。
【0069】
同様に、図7の状態Dに示されるように、スラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過する前の状態であって、スラブ12がセンサ14の前方に存在する状態は、ナイフエッジ回折のモデルにおいて送信機50と受信機52の間に衝立42がないのと同じである。図7の状態Eに示されるように、スラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過中の状態は、ナイフエッジ回折のモデルにおいて送信機50と受信機52の間に衝立42の端部42Bがあるのと同じである。図7の状態Fに示されるように、スラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過した後の状態であって、スラブ12がセンサ14の前方に存在しない状態は、ナイフエッジ回折のモデルにおいて送信機50と受信機52の間に衝立42があるのと同じである。
【0070】
このように、送信機50と受信機52の間に衝立42がある場合の受信機52で受信された信号強度を表すナイフエッジ回折のモデルが公知であるため、そうしたナイフエッジ回折のモデルを用いて、スラブ12がセンサ14の前方を通過するときの反射波の信号強度についても、ナイフエッジ回折のモデルg(α)及びg(-α)で近似することが可能である。
【0071】
つまり、上記式(2)~(4)で示されるナイフエッジ回折のモデルg(α)及びg(-α)を仮定し、最小二乗法によりフィッティングすることで、反射波の信号強度の立ち上がりエッジ(図4の状態B)と立ち下がりエッジ(図4の状態E)のそれぞれについて、反射波の信号強度が、上記式(2)~(4)で示されるナイフエッジ回折のモデルg(α)及びg(-α)で近似され、フィッティング係数a、bが求まる。
ここで、ナイフエッジ回折のモデルg(α)及びg(-α)自体の持つ特性から、フィッティングの結果得られたナイフエッジ回折のモデルg(α)及びg(-α)のフィッティング係数bは、反射波の信号強度の上値S1と下値S2との間の1/2の値である中間値ΔS1/2に対応する、αの値であると見なすことができる。
そのため、αがスラブ12の搬送に掛かった時間である場合には、フィッティングによって求められたbの値は、搬送時の時間の値として求まるため、bの値を知ることで、反射波の信号強度の上値S1と下値S2との間の1/2の値である中間値ΔS1/2が生じるタイミングを、時間情報から知ることができる。
また、αがスラブ12の搬送方向の位置xである場合には、フィッティングによって求められたbの値は、搬送方向の位置を示す値として求まるため、bの値を知ることで、反射波の信号強度の上値S1と下値S2との間の1/2の値である中間値ΔS1/2が生じるタイミングを、位置情報から知ることができる。
【0072】
なお、反射波の信号強度の立ち上がりエッジにおいてbの値に基づくタイミングは、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過するときに、スラブ12がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方に存在する場合の反射波の信号強度と、スラブ12がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方に存在しない場合の前記反射波の信号強度との間の1/2の信号強度が得られたタイミング(反射波の信号強度の時間変化における傾きが最大となるタイミング)に相当し、スラブ12の前端部12Aが、マイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方を通過したタイミングに相当する。
また、反射波の信号強度の立ち下がりエッジにおいてbの値に基づくタイミングは、スラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過するときに、スラブ12がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方に存在する場合の反射波の信号強度と、スラブ12がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方に存在しない場合の前記反射波の信号強度との間の1/2の信号強度が得られたタイミング(反射波の信号強度の時間変化における傾きが最小となるタイミング)に相当し、スラブ12の後端部12Bが、マイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方を通過したタイミングに相当する。
【0073】
第三例では、以上の要領により、上述の1/2の信号強度が得られたタイミングが判断される。
【0074】
(第四例)
第四例は、スラブ12が搬送方向に対して傾いた状態で搬送される場合を想定した例である。図8は、測定装置10において、スラブ12が搬送方向に対して傾いた状態で搬送される場合を示す図である。傾き角θは、スラブ12の搬送方向に対する傾き角である。
このように、スラブ12が搬送方向に対して傾いた状態で搬送される場合には、マイクロ波送信部20及びマイクロ波受信部22からスラブ12の側面12Cまでの距離が時々刻々と変化するため、反射波の信号強度の上値S1と下値S2を求めることは容易ではなく、単純に、シグモイド関数f(α)及びf(-α)やナイフエッジ回折のモデルg(α)及びg(-α)を用いて近似することも容易ではない。そのため、この距離の変化に応じて反射波の信号強度の変化を補正したナイフエッジ回折のモデルを用いることが望ましい。
【0075】
そこで、第四例では、次の要領により、演算処理部18(スラブ端部検出部32)が、上述の1/2の信号強度が得られたタイミングを判断する。
初めに、演算処理部18(スラブ端部検出部32)は、メモリ26に記憶された検出データ(反射波の信号強度とスラブ12の搬送時の時間とを紐づけたデータ)を読み出す。
【0076】
そして、演算処理部18(スラブ端部検出部32)は、読み出した検出データに基づいて、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過する前からスラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過した後までの間に得られた反射波の信号強度について、信号強度の上値S1と下値S2とを含む、反射波の信号強度の立ち上がりエッジ(図4の状態B)を、スラブ12の搬送方向に対する傾きを考慮した、式(5)~式(7)に示すナイフエッジ回折のモデルh(α)で近似する。また、立ち下がりエッジ(図4の状態E)付近では、時間又は位置の増加に対して、信号強度は低下するため、信号強度の上値S1と下値S2とを含む、反射波の信号強度の立ち下がりエッジ(図4の状態E)を、式(5)~式(7)に示すナイフエッジ回折のモデルのαの符号を反転させたh(-α)で近似する。
【0077】
なお、αは、スラブ12の搬送に(任意に決められた基準時刻から)掛かった時間又はスラブ12の(任意に決められた基準位置からの)搬送方向の位置xであり、rはスラブ12がセンサ14の前方に存在する場合のマイクロ波送信部20及びマイクロ波受信部22からスラブ12の側面12Cまでの距離であり、a、bはフィッティング係数であり、C(ν)はフレネル余弦積分関数であり、S(ν)はフレネル正弦積分関数である。
【0078】
上記式(5)~(7)で示されるナイフエッジ回折のモデルh(α)及びh(-α)を仮定し、最小二乗法によりフィッティングすることで、反射波の信号強度の立ち上がりエッジ(図4の状態B)と立ち下がりエッジ(図4の状態E)のそれぞれについて、反射波の信号強度が、上記式(5)~(7)で示されるナイフエッジ回折のモデルh(α)で近似され、フィッティング係数a、bが求まる。
ここで、スラブ12の搬送方向に対する傾きを考慮したナイフエッジ回折のモデルh(α)及びh(-α)自体の持つ特性から、フィッティングの結果得られた、スラブ12の搬送方向に対する傾きを考慮したナイフエッジ回折のモデルh(α)及びh(-α)のフィッティング係数bは、反射波の信号強度の上値S1と下値S2との間の1/2の値である中間値ΔS1/2に対応する、αの値であると見なすことができる。
そのため、αがスラブ12の搬送に掛かった時間である場合には、フィッティングによって求められたbの値は、搬送時の時間の値として求まるため、bの値を知ることで、反射波の信号強度の上値S1と下値S2との間の1/2の値である中間値ΔS1/2が生じるタイミングを、時間情報から知ることができる。
また、αがスラブ12の搬送方向の位置xである場合には、フィッティングによって求められたbの値は、搬送方向の位置を示す値として求まるため、bの値を知ることで、反射波の信号強度の上値S1と下値S2との間の1/2の値である中間値ΔS1/2が生じるタイミングを、位置情報から知ることができる。
なお、反射波の信号強度の立ち上がりエッジにおいてbの値に基づくタイミングは、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過するときに、スラブ12がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方に存在する場合の反射波の信号強度と、スラブ12がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方に存在しない場合の前記反射波の信号強度との間の1/2の信号強度が得られたタイミング(反射波の信号強度の時間変化における傾きが最大となるタイミング)に相当し、スラブ12の前端部12Aが、マイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方を通過したタイミングに相当する。
また、反射波の信号強度の立ち下がりエッジにおいてbの値に基づくタイミングは、スラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過するときに、スラブ12がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方に存在する場合の反射波の信号強度と、スラブ12がマイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方に存在しない場合の前記反射波の信号強度との間の1/2の信号強度が得られたタイミング(反射波の信号強度の時間変化における傾きが最小となるタイミング)に相当し、スラブ12の後端部12Bが、マイクロ波送信部20又はマイクロ波受信部22の前方を通過したタイミングに相当する。
【0079】
第四例では、以上の要領により、上述の1/2の信号強度が得られたタイミングが判断される。
スラブ12が搬送方向に対して傾いた状態で搬送される場合には、時間経過とともにスラブ12とセンサ14との間の距離が変化することに応じて、反射波の信号強度が変化するため、上値S1と下値S2を決定しづらいという問題があるが、第四例を用いることにより、信号強度の値が位置に対して傾いていても、1/2の信号強度が得られたタイミングを知ることができる。
【0080】
(本発明に係る作用効果の説明)
次に、本発明の実施形態における作用及び効果について説明する。
【0081】
以上詳述した通り、本発明の実施形態では、搬送されるスラブ12の前端部12A及び後端部12Bを検出するために、マイクロ波が用いられる。したがって、雨滴や粉塵、暗さの影響を抑制しつつ、搬送されるスラブ12の前端部12A及び後端部12Bを検出できる。また、スラブ12の周りが、照明されていない暗闇であっても、搬送されるスラブ12の前端部12A及び後端部12Bを検出できる。
【0082】
しかも、スラブ12がセンサ14の前方に存在する場合の反射波の信号強度と、スラブ12がセンサ14の前方に存在しない場合の反射波の信号強度との間で予め定められた信号強度に対応した所定のタイミングを、スラブ12の前端部12Aがセンサ14の前方を通過したタイミング、及び、スラブ12の後端部12Bがセンサ14の前方を通過したタイミングとそれぞれ判断する。したがって、マイクロ波を用いた場合でも、搬送されるスラブ12の前端部12A及び後端部12Bを精度良く検出できる。
【0083】
また、搬送されるスラブ12の前端部12A及び後端部12Bを精度良く検出できるので、このスラブ12の前端部12A及び後端部12Bの検出結果に基づいて、スラブ12の長さを精度良く測定できる。
【0084】
また、上述の第一例によれば、反射波の信号強度の上値S1と下値S2がそれぞれ算出され、反射波の信号強度の立ち上がりエッジにおいて中間値ΔS1/2が得られたタイミングと、反射波の信号強度の立ち下がりエッジにおいて中間値ΔS1/2が得られたタイミングとに基づいて、上述の所定のタイミングが判断される。したがって、上述の所定のタイミングを精度良く検出できる。
【0085】
また、上述の第二例によれば、反射波の信号強度が、式(1)に示すシグモイド関数f(α)及びf(-α)で近似され、このシグモイド関数f(α)及びf(-α)におけるcの値に基づいて、上述の所定のタイミングが判断される。したがって、上述の所定のタイミングを精度良く検出できる。
【0086】
また、上述の第三例によれば、反射波の信号強度が、式(2)~式(4)に示すナイフエッジ回折のモデルg(α)及びg(-α)で近似され、このナイフエッジ回折のモデルg(α)及びg(-α)におけるbの値基づいて、上述の所定のタイミングが判断される。したがって、上述の所定のタイミングを精度良く検出できる。
【0087】
また、上述の第四例によれば、反射波の信号強度が、スラブ12の搬送方向に対する傾きを考慮した、式(5)~式(7)に示すナイフエッジ回折のモデルh(α)及びh(-α)で近似され、このナイフエッジ回折のモデルh(α)及びh(-α)におけるbの値に基づいて、上述の所定のタイミングが判断される。したがって、スラブ12が搬送方向に対して傾いた状態で搬送される場合でも、上述の所定のタイミングを精度良く検出できる。
【0088】
次に、本発明の実施形態における変形例について説明する。
【0089】
上記実施形態では、スラブ12の長さを算出する目的で、スラブ12の前端部12A及び後端部12Bが検出されるが、スラブ12の長さを算出する以外の目的で、スラブ12の前端部12A及び後端部12Bが検出されてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、スラブ12の前端部12A及び後端部12Bの両方が検出されるが、スラブ12の前端部12A及び後端部12Bのどちらか一方のみが検出されてもよい。
【0091】
(実施例)
次に、実施例について説明する。
【0092】
以下に説明する実施例1~4では、スラブに見立てた金属直方体の側方にセンサを配置した。センサには、周波数が79GHzであるマイクロ波を送受信できるものを使用した。そして、平面視で金属直方体の長手方向が搬送方向と平行な状態で金属直方体を搬送し、金属直方体の搬送方向と平面視で垂直な方向に沿ってマイクロ波を送信すると共に、センサで受信された反射波の信号強度を測定した。
【0093】
図9図12は、実施例1~4において得られた反射波の信号強度をそれぞれ示すグラフである。図9図12において、縦軸は反射波の信号強度を示しており、横軸は金属直方体の前端部の位置を示している。図9図12の縦軸の次元は、反射波の電界強度であり、その大きさは電界強度に比例する任意単位(a.u.)とした。
金属直方体の前端部の位置は、センサの中心軸を基準にした位置である。すなわち、センサの正面(センサの中心軸上)に金属直方体の前端部が位置するときの金属直方体の前端部の位置を0mとしている。
【0094】
(実施例1)
実施例1は、上述の所定のタイミングを判断する手法の第一例に相当する。図9は、実施例1において得られた反射波の信号強度を示すグラフである。図9のグラフG1は、実施例1において測定された反射波の信号強度を示している。
【0095】
この実施例1において、金属直方体の前端部の位置が-0.2mのときは、金属直方体がセンサの前方に存在する場合であり、このときの反射波の信号強度の値は831.8a.u.である。一方、金属直方体の前端部の位置が+0.2mmのときは、金属直方体がセンサの前方に存在しない場合であり、このときの反射波の信号強度の値は18.2a.u.である。
【0096】
反射波の信号強度の上値S1を831.8a.u.とし、反射波の信号強度の下値S2を18.2a.u.として、反射波の信号強度の上値S1と下値S2との間の1/2の値である中間値ΔS1/2を算出すると、中間値ΔS1/2は406.8a.u.となる。中間値ΔS1/2が406.8a.u.となるときの金属直方体の前端部の位置は-4mmであった。このように、実施例1では、数mmの精度で金属直方体の前端部の位置を検出できた。
【0097】
(実施例2)
実施例2は、上述の所定のタイミングを判断する手法の第二例に相当する。図10は、実施例1及び実施例2においてそれぞれ得られた反射波の信号強度を比較して示すグラフである。図10において、グラフG1は、実施例1において測定された反射波の信号強度を示し、グラフG2は、実施例1において測定された反射波の信号強度を、上記式(1)で示されるシグモイド関数f(α)のαの符号を判定させた式f(-α)で近似した値を示している。つまり、上記式(1)で示されるシグモイド関数f(-α)を仮定し、最小二乗法により係数a、b、cをフィッティングして、実施例1において測定された反射波の信号強度を、上記式(1)で示されるシグモイド関数f(-α)で近似した。αには、スラブ12の搬送方向の位置x(mm)を用いた。
【0098】
上記式(1)で示されるシグモイド関数f(-α)において、フィッティング係数cの値を算出すると、1.57mmであった。このように、実施例2では、数mmの精度で金属直方体の前端部の位置を検出できた。
【0099】
(実施例3)
実施例3は、上述の所定のタイミングを判断する手法の第三例に相当する。図11は、実施例1及び実施例3においてそれぞれ得られた反射波の信号強度を比較して示すグラフである。図11において、グラフG1は、実施例1において測定された反射波の信号強度を示し、グラフG3は、実施例1において測定された反射波の信号強度を、上記式(2)~式(4)で示されるナイフエッジ回折のモデルg(α)のαの符号を判定させた式g(-α)で近似した値を示している。つまり、上記式(2)~式(4)で示されるナイフエッジ回折のモデルg(-α)を仮定し、最小二乗法により係数a、bをフィッティングして、実施例1において測定された反射波の信号強度を、上記式(2)~式(4)で示されるナイフエッジ回折のモデルg(-α)で近似した。αには、スラブ12の搬送方向の位置x(mm)を用いた。
【0100】
上記式(2)~式(4)で示されるナイフエッジ回折のモデルg(-α)において、フィッティング係数bの値を算出すると、-0.97mmであった。このように、実施例3では、数mmの精度で金属直方体の前端部の位置を検出できた。
【0101】
(実施例4)
実施例4は、上述の所定のタイミングを判断する手法の第四例に相当する。図12は、実施例1及び実施例4においてそれぞれ得られた反射波の信号強度を比較して示すグラフである。図12において、グラフG1は、実施例1において測定された反射波の信号強度を示し、グラフG4は、実施例1において測定された反射波の信号強度を、上記式(5)~式(7)で示されるナイフエッジ回折のモデルh(α)のαの符号を判定させた式h(-α)で近似した値を示している。つまり、上記式(5)~式(7)で示されるナイフエッジ回折のモデルh(-α)を仮定し、最小二乗法により係数a、bをフィッティングして、実施例1において測定された反射波の信号強度を、上記式(5)~式(7)で示されるナイフエッジ回折のモデルh(-α)で近似した。αには、スラブ12の搬送方向の位置x(mm)を用いた。
【0102】
上記式(5)~式(7)で示されるナイフエッジ回折のモデルh(-α)において、係数bの値は反射波の信号強度の最大値の1/2の値が得られる位置を示しており、この位置を算出すると、0.52mmであった。また、金属直方体の搬送方向に対する傾き角は4.5°と算出された。このように、実施例4では、金属直方体が搬送方向に対して傾いた状態で搬送される場合でも、数mmの精度で金属直方体の前端部の位置を検出できた。
【0103】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0104】
10 測定装置
12 スラブ
12A 前端部(スラブの端部の一例)
12B 後端部(スラブの端部の一例)
12C 側面
14 センサ
16 送受信回路
18 演算処理部
20 マイクロ波送信部
22 マイクロ波受信部
24 プロセッサ
26 メモリ
28 プログラム
30 送受信制御部
32 スラブ端部検出部
34 スラブ長さ算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12