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特許7549257パーフルオロエラストマー水性分散液の製造方法、組成物、架橋性組成物および架橋物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】パーフルオロエラストマー水性分散液の製造方法、組成物、架橋性組成物および架橋物
(51)【国際特許分類】
   C08F 259/08 20060101AFI20240904BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240904BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20240904BHJP
   C08K 5/57 20060101ALI20240904BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
C08F259/08
C08F2/44 C
C08K3/28
C08K5/57
C08L51/06
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2022563849
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2021042652
(87)【国際公開番号】W WO2022107890
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2020192791
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021084877
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 壮司
(72)【発明者】
【氏名】入江 正樹
(72)【発明者】
【氏名】岩阪 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】玉井 利奈
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/105651(WO,A1)
【文献】特開平11-181009(JP,A)
【文献】特表2008-545873(JP,A)
【文献】特開2005-320501(JP,A)
【文献】国際公開第2019/168183(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 259/08
C08F 261/06
C08K 3/28
C08K 5/57
C08L 51/06
C08F 2/44
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体(1)および水性媒体の存在下に、パーフルオロモノマーを重合することによって、パーフルオロエラストマーの水性分散液を製造するパーフルオロエラストマー水性分散液の製造方法であって、重合体(1)が一般式(1)で表される単量体(1)に基づく重合単位(1)を含み、重合体(1)のイオン交換容量が、1.50meq/g以上である製造方法。
CF=CF-R-CZ-A (1)
(式中、Rは連結基であり、ZおよびZは、それぞれ独立して、FまたはCFであり、Aはアニオン性基である。)
【請求項2】
が、-COOMまたは-SOM(式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基)である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
単量体(1)が、一般式(2)で表される単量体(2)である請求項1に記載の製造方法。
CF=CF(-O-Rf-A) (2)
(式中、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のエーテル結合もしくはケト基を有する含フッ素アルキレン基である。Aは、-COOM、-SOM、-OSOMまたは-C(CFOM(Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基)である。)
【請求項4】
Aが、-COOMまたは-SOM(式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基)である請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
重合体(1)の重量平均分子量が、1.4×10以上である請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
重合単位(1)の含有量が、重合体(1)を構成する全重合単位に対して、50モル%以上である請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
重合体(1)の添加量が、前記水性媒体100質量%に対して、0.01~20質量%である請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記パーフルオロモノマーの重合を、実質的に含フッ素界面活性剤の非存在下に行う請求項1~7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記パーフルオロモノマーの重合を、pH調整剤の存在下に行う請求項1~8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記パーフルオロモノマーの重合を、重合開始剤の存在下に行い、前記重合開始剤の添加量が、前記パーフルオロモノマー100質量%に対して、0.0001~10質量%である請求項1~9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の製造方法によりパーフルオロエラストマーの水性分散液を得た後、
前記水性分散液、または、前記水性分散液から前記パーフルオロエラストマーを回収することにより得られる前記パーフルオロエラストマーと、
無機窒化物、有機スズ化合物、アンモニアを発生させる化合物および架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種と、
を混合することにより架橋性組成物を得る、架橋性組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の製造方法により架橋性組成物を得た後、前記架橋性組成物を架橋することにより架橋物を得る、架橋物の製造方法。
【請求項13】
パーフルオロエラストマー、および、一般式(1)で表される単量体(1)に基づく重合単位(1)を含み、イオン交換容量が、1.50meq/g以上である重合体(1)を含有し、含フッ素界面活性剤を実質的に含まない組成物。
CF=CF-R-CZ-A (1)
(式中、Rは連結基であり、ZおよびZは、それぞれ独立して、FまたはCFであり、Aはアニオン性基である。)
【請求項14】
が、-COOMまたは-SOM(式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基)である請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
単量体(1)が、一般式(2)で表される単量体(2)である請求項13に記載の組成物。
CF=CF(-O-Rf-A) (2)
(式中、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のエーテル結合もしくはケト基を有する含フッ素アルキレン基である。Aは、-COOM、-SOM、-OSOMまたは-C(CFOM(Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基)である。)
【請求項16】
Aが、-COOMまたは-SOM(式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基)である請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
重合体(1)の重量平均分子量が、1.4×10以上である請求項13~16のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
重合単位(1)の含有量が、重合体(1)を構成する全重合単位に対して、50モル%以上である請求項13~17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
重合体(1)の含有量が、前記パーフルオロエラストマーに対して0.0001~20質量%である請求項13~18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
水性分散液である請求項13~19のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
前記水性分散液の固形分濃度が、前記水性分散液に対して、5~50質量%である請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物中の金属含有量が、10質量ppm以下である請求項13~21のいずれかに記載の組成物。
【請求項23】
請求項13~22のいずれかに記載の組成物、ならびに、無機窒化物、有機スズ化合物、アンモニアを発生させる化合物および架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する架橋性組成物。
【請求項24】
請求項23に記載の架橋性組成物を架橋することにより得られる架橋物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パーフルオロエラストマー水性分散液の製造方法、組成物、架橋性組成物および架橋物に関する。
【背景技術】
【0002】
パーフルオロエラストマーの製造方法として、たとえば、特許文献1では、水性媒体100質量部に対して2質量部以上の下記一般式(1)で表される含フッ素界面活性剤の存在下に、パーフルオロモノマーを水性媒体中で乳化重合してパーフルオロエラストマー粒子を含む水性分散液を得る工程を含むことを特徴とするパーフルオロエラストマー水性分散液の製造方法が提案されている。
X-(CFm1-Y (1)
(式中、XはH又はFを表し、m1は3~6の整数を表し、Yは-SOM、-SOM、-SOR、-SOR、-COOM、-PO、-PO(MはH、NH又はアルカリ金属を表し、Rは炭素数1~12のアルキル基を表す。)を表す。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/125726号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示では、重合槽へのパーフルオロエラストマーの付着を抑制しながら、十分な重合速度で十分な数のパーフルオロエラストマー粒子を発生させることができるパーフルオロエラストマー水性分散液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示によれば、重合体(1)および水性媒体の存在下に、パーフルオロモノマーを重合することによって、パーフルオロエラストマーの水性分散液を製造するパーフルオロエラストマー水性分散液の製造方法であって、重合体(1)が一般式(1)で表される単量体(1)に基づく重合単位(1)を含み、重合体(1)のイオン交換容量が、1.50meq/g以上である製造方法が提供される。
CF=CF-R-CZ-A (1)
(式中、Rは連結基であり、ZおよびZは、それぞれ独立して、FまたはCFであり、Aはアニオン性基である。)
【0006】
本開示の製造方法において、Aが、-COOMまたは-SOM(式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基)であることが好ましい。
本開示の製造方法において、単量体(1)が、一般式(2)で表される単量体(2)であることが好ましい。
CF=CF(-O-Rf-A) (2)
(式中、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のエーテル結合もしくはケト基を有する含フッ素アルキレン基である。Aは、-COOM、-SOM、-OSOMまたは-C(CFOM(Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基)である。)
本開示の製造方法において、Aが、-COOMまたは-SOM(式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基)であることが好ましい。
本開示の製造方法において、重合体(1)の重量平均分子量が、1.4×10以上であることが好ましい。
本開示の製造方法において、重合単位(1)の含有量が、重合体(1)を構成する全重合単位に対して、50モル%以上であることが好ましい。
本開示の製造方法において、重合体(1)の添加量が、前記水性媒体100質量%に対して、0.01~20質量%であることが好ましい。
本開示の製造方法において、前記パーフルオロモノマーの重合を、実質的に含フッ素界面活性剤の非存在下に行うことが好ましい。
本開示の製造方法において、前記パーフルオロモノマーの重合を、pH調整剤の存在下に行うことが好ましい。
本開示の製造方法において、前記パーフルオロモノマーの重合を、重合開始剤の存在下に行い、前記重合開始剤の添加量が、前記パーフルオロモノマー100質量%に対して、0.0001~10質量%であることが好ましい。
【0007】
また、本開示によれば、上記の製造方法によりパーフルオロエラストマーの水性分散液を得た後、前記水性分散液、または、前記水性分散液から前記パーフルオロエラストマーを回収することにより得られる前記パーフルオロエラストマーと、無機窒化物、有機スズ化合物、アンモニアを発生させる化合物および架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種と、を混合することにより架橋性組成物を得る、架橋性組成物の製造方法が提供される。
【0008】
また、本開示によれば、上記の製造方法により架橋性組成物を得た後、前記架橋性組成物を架橋することにより架橋物を得る、架橋物の製造方法が提供される。
【0009】
また、本開示によれば、パーフルオロエラストマー、および、一般式(1)で表される単量体(1)に基づく重合単位(1)を含み、イオン交換容量が、1.50meq/g以上である重合体(1)を含有する組成物が提供される。
CF=CF-R-CZ-A (1)
(式中、Rは連結基であり、ZおよびZは、それぞれ独立して、FまたはCFであり、Aはアニオン性基である。)
【0010】
本開示の組成物において、Aが、-COOMまたは-SOM(式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基)であることが好ましい。
本開示の組成物において、単量体(1)が、一般式(2)で表される単量体(2)であることが好ましい。
CF=CF(-O-Rf-A) (2)
(式中、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のエーテル結合もしくはケト基を有する含フッ素アルキレン基である。Aは、-COOM、-SOM、-OSOMまたは-C(CFOM(Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基)である。)
【0011】
本開示の組成物において、Aが、-COOMまたは-SOM(式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基)であることが好ましい。
本開示の組成物において、重合体(1)の重量平均分子量が、1.4×10以上であることが好ましい。
本開示の組成物において、重合単位(1)の含有量が、重合体(1)を構成する全重合単位に対して、50モル%以上であることが好ましい。
本開示の組成物において、重合体(1)の含有量が、前記パーフルオロエラストマーに対して0.0001~20質量%であることが好ましい。
本開示の組成物は、含フッ素界面活性剤を実質的に含まないことが好ましい。
本開示の組成物は、水性分散液であることが好ましい。
本開示の組成物において、前記水性分散液の固形分濃度が、前記水性分散液に対して、5~50質量%であることが好ましい。
本開示の組成物は、前記組成物中の金属含有量が、10質量ppm以下であることが好ましい。
【0012】
また、本開示によれば、上記の組成物、ならびに、無機窒化物、有機スズ化合物、アンモニアを発生させる化合物および架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する架橋性組成物が提供される。
【0013】
また、本開示によれば、上記の架橋性組成物を架橋することにより得られる架橋物が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、重合槽へのパーフルオロエラストマーの付着を抑制しながら、十分な重合速度で十分な数のパーフルオロエラストマー粒子を発生させることができるパーフルオロエラストマー水性分散液の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示を具体的に説明する前に、本開示で使用するいくつかの用語を定義または説明する。
【0016】
本開示において、フルオロエラストマーとは、非晶質フルオロポリマーである。「非晶質」とは、フルオロポリマーの示差走査熱量測定〔DSC〕(昇温速度10℃/分)あるいは示差熱分析〔DTA〕(昇温速度10℃/分)において現われた融解ピーク(ΔH)の大きさが4.5J/g以下であることをいう。フルオロエラストマーは、架橋することにより、エラストマー特性を示す。エラストマー特性とは、ポリマーを延伸することができ、ポリマーを延伸するのに必要とされる力がもはや適用されなくなったときに、その元の長さを保持できる特性を意味する。
【0017】
本開示において、部分フッ素化エラストマーとは、フルオロモノマー単位を含み、全重合単位に対するパーフルオロモノマー単位の含有量が90モル%未満のフルオロポリマーであって、20℃以下のガラス転移温度を有し、4.5J/g以下の融解ピーク(ΔH)の大きさを有するフルオロポリマーである。
【0018】
本開示において、パーフルオロエラストマーとは、全重合単位に対するパーフルオロモノマー単位の含有量が90モル%以上、好ましくは91モル%以上のフルオロポリマーであって、20℃以下のガラス転移温度を有し、4.5J/g以下の融解ピーク(ΔH)の大きさを有するフルオロポリマーであり、さらに、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度が71質量%以上、好ましくは71.5質量%以上であるポリマーである。本開示において、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度は、フルオロポリマーを構成する各モノマーの種類と含有量より、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度(質量%)を計算により求めるものである。
【0019】
本開示において、パーフルオロモノマーとは、分子中に炭素原子-水素原子結合を含まないモノマーである。上記パーフルオロモノマーは、炭素原子およびフッ素原子の他、炭素原子に結合しているフッ素原子のいくつかが塩素原子で置換されたモノマーであってもよく、炭素原子の他、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、燐原子、硼素原子または珪素原子を有するものであってもよい。上記パーフルオロモノマーとしては、全ての水素原子がフッ素原子に置換されたモノマーであることが好ましい。上記パーフルオロモノマーには、架橋部位を与えるモノマーは含まれない。
【0020】
架橋部位を与えるモノマーとは、硬化剤により架橋を形成するための架橋部位をフルオロポリマーに与える架橋性基を有するモノマー(キュアサイトモノマー)である。
【0021】
本開示において、パーフルオロエラストマーを構成する各モノマーの含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析、その他公知の方法をモノマーの種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0022】
本開示において、「有機基」は、1個以上の炭素原子を含有する基、または有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基を意味する。
当該「有機基」の例は、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
シアノ基、
ホルミル基、
RaO-、
RaCO-、
RaSO-、
RaCOO-、
RaNRaCO-、
RaCONRa-、
RaOCO-、
RaOSO-、および、
RaNRbSO
(これらの式中、Raは、独立して、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、または、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
Rbは、独立して、Hまたは1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基である)
を包含する。
上記有機基としては、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基が好ましい。
【0023】
また、本開示において、「置換基」は、置換可能な基を意味する。当該「置換基」の例は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、芳香族オキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、芳香族スルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、脂肪族スルホニルオキシ基、芳香族スルホニルオキシ基、ヘテロ環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、脂肪族スルホンアミド基、芳香族スルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基、アミノ基、脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基、ヘテロ環アミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、芳香族オキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルフィニル基、芳香族スルフィニル基、脂肪族チオ基、芳香族チオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、脂肪族オキシアミノ基、芳香族オキシアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ハロゲン原子、スルファモイルカルバモイル基、カルバモイルスルファモイル基、ジ脂肪族オキシホスフィニル基、および、ジ芳香族オキシホスフィニル基を包含する。
【0024】
上記脂肪族基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記脂肪族基としては、総炭素原子数1~8、好ましくは1~4のアルキル基、たとえば、メチル基、エチル基、ビニル基、シクロヘキシル基、カルバモイルメチル基などが挙げられる。
【0025】
上記芳香族基は、たとえば、ニトロ基、ハロゲン原子、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記芳香族基としては、炭素数6~12、好ましくは総炭素原子数6~10のアリール基、たとえば、フェニル基、4-ニトロフェニル基、4-アセチルアミノフェニル基、4-メタンスルホニルフェニル基などが挙げられる。
【0026】
上記ヘテロ環基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記ヘテロ環基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは2~10の5~6員へテロ環、たとえば2-テトラヒドロフリル基、2-ピリミジル基などが挙げられる。
【0027】
上記アシル基は、脂肪族カルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、芳香族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記アシル基としては、総炭素原子数2~8、好ましくは2~4のアシル基、たとえばアセチル基、プロパノイル基、ベンゾイル基、3-ピリジンカルボニル基などが挙げられる。
【0028】
上記アシルアミノ基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基などを有していてもよく、たとえば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基などを有していてもよい。上記アシルアミノ基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは2~8のアシルアミノ基、総炭素原子数2~8のアルキルカルボニルアミノ基、たとえばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基などが挙げられる。
【0029】
上記脂肪族オキシカルボニル基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記脂肪族オキシカルボニル基としては、総炭素原子数2~8、好ましくは2~4のアルコキシカルボニル基、たとえばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、(t)-ブトキシカルボニル基などが挙げられる。
【0030】
上記カルバモイル基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基などを有していてもよい。上記カルバモイル基としては、無置換のカルバモイル基、総炭素数2~9のアルキルカルバモイル基、好ましくは無置換のカルバモイル基、総炭素原子数2~5のアルキルカルバモイル基、たとえばN-メチルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基、N-フェニルカルバモイル基などが挙げられる。
【0031】
上記脂肪族スルホニル基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、芳香族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記脂肪族スルホニル基としては、総炭素原子数1~6、好ましくは総炭素原子数1~4のアルキルスルホニル基、たとえばメタンスルホニル基などが挙げられる。
【0032】
上記芳香族スルホニル基は、ヒドロキシ基、脂肪族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記芳香族スルホニル基としては、総炭素原子数6~10のアリールスルホニル基、たとえばベンゼンスルホニルなどが挙げられる。
【0033】
上記アミノ基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基などを有していてもよい。
【0034】
上記アシルアミノ基は、たとえば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基などを有していてもよい。上記アシルアミノ基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは総炭素原子数2~8のアシルアミノ基、より好ましくは総炭素原子数2~8のアルキルカルボニルアミノ基、たとえばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基などが挙げられる。
【0035】
上記脂肪族スルホンアミド基、芳香族スルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基は、たとえば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基、2-ピリジンスルホンアミド基などであってもよい。
【0036】
上記スルファモイル基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基などを有していてもよい。上記スルファモイル基としては、スルファモイル基、総炭素原子数1~9のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数2~10のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数7~13のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2~12のヘテロ環スルファモイル基、より好ましくはスルファモイル基、総炭素原子数1~7のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数3~6のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数6~11のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2~10のヘテロ環スルファモイル基、たとえば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、N,N-ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基、4-ピリジンスルファモイル基などが挙げられる。
【0037】
上記脂肪族オキシ基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、メトキシ基、エトキシ基、i-プロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メトキシエトキシ基などを有していてもよい。上記脂肪族オキシ基としては、総炭素原子数1~8、好ましくは1~6のアルコキシ基、たとえばメトキシ基、エトキシ基、i-プロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メトキシエトキシ基などが挙げられる。
【0038】
上記芳香族アミノ基、ヘテロ環アミノ基は、脂肪族基、脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、カルバモイル基、該アリール基と縮環したヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、好ましくは総炭素原子数1~4の脂肪族基、総炭素原子数1~4の脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、総炭素原子数1~4のカルバモイル基、ニトロ基、総炭素原子数2~4の脂肪族オキシカルボニル基を有していてもよい。
【0039】
上記脂肪族チオ基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、総炭素原子数1~8、より好ましくは総炭素原子数1~6のアルキルチオ基、たとえばメチルチオ基、エチルチオ基、カルバモイルメチルチオ基、t-ブチルチオ基などが挙げられる。
【0040】
上記カルバモイルアミノ基は、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基などを有していてもよい。上記カルバモイルアミノ基としては、カルバモイルアミノ基、総炭素原子数2~9のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~10のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7~13のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~12のヘテロ環カルバモイルアミノ基、好ましくはカルバモイルアミノ基、総炭素原子数2~7のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~6のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7~11のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~10のヘテロ環カルバモイルアミノ基、たとえば、カルバモイルアミノ基、メチルカルバモイルアミノ基、N,N-ジメチルカルバモイルアミノ基、フェニルカルバモイルアミノ基、4-ピリジンカルバモイルアミノ基などが挙げられる。
【0041】
本開示において、端点によって表わされる範囲には、その範囲内に含まれるすべての数値が含まれる(たとえば、1~10には、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98などが含まれる)。
【0042】
本開示において、「少なくとも1」の記載には、1以上の全ての数値が含まれる(たとえば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100など)。
【0043】
以下、本開示の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0044】
本開示は、重合体(1)および水性媒体の存在下に、パーフルオロモノマーを重合することによって、パーフルオロエラストマーの水性分散液を製造するパーフルオロエラストマー水性分散液の製造方法に関する。
【0045】
本開示の製造方法において用いる重合体(1)は、一般式(1)で表される単量体(1)に基づく重合単位(1)を含む。
CF=CF-R-CZ-A (1)
(式中、Rは連結基であり、ZおよびZは、それぞれ独立して、FまたはCFであり、Aはアニオン性基である。)
【0046】
さらに、本開示の製造方法において用いる重合体(1)は、1.50meq/g以上のイオン交換容量を有している。
【0047】
本開示の製造方法は、重合体(1)および水性媒体の存在下に、パーフルオロモノマーを重合するものであることから、重合槽へのパーフルオロエラストマーの付着を抑制しながら、十分な重合速度で十分な数のパーフルオロエラストマー粒子を発生させることができる。さらに、本開示の製造方法によれば、非常に高温でも優れた圧縮永久歪み特性を示すパーフルオロエラストマーを製造することができる。
【0048】
重合体(1)のイオン交換容量としては、より好ましくなる順に、1.50meq/g以上、1.75meq/g以上、2.00meq/g以上、2.40meq/g以上、2.50meq/g以上、2.60meq/g以上、3.00meq/g以上、3.20meq/g以上、3.50meq/g以上である。イオン交換容量は、重合体(1)のイオン性基(アニオン性基)の含有量であり、重合体(1)の組成から計算により求められる。加水分解によりイオン性となる前駆体基(たとえば、-COOCH)は、イオン交換容量を決定する目的ではイオン性基と見なされない。重合体(1)のイオン交換容量はより高い方が重合体(1)のアニオン性基が多く、安定性の高い粒子が形成される上、粒子形成力が高いため単位水量当たりの粒子数が多くなり、より高い重合速度となると推測される。重合体(1)のイオン交換容量が低すぎると、重合により生じたパーフルオロエラストマーが重合槽に付着したり、十分な重合速度が得られなかったり、発生するパーフルオロエラストマー粒子の数が少なかったりする。
【0049】
本開示の製造方法において、一般式(1)で表される単量体(1)として、1種または2種以上の単量体を用いることができる。
【0050】
本開示において、アニオン性基には、サルフェート基、カルボキシレート基などのアニオン性基に加えて、-COOHのような酸基、-COONHのような酸塩基などのアニオン性基を与える官能基が含まれる。アニオン性基としては、サルフェート基、カルボキシレート基、ホスフェート基、ホスホネート基、スルホネート基、または、-C(CFOM(式中、Mは、-H、金属原子、-NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基である。)が好ましい。
【0051】
Rは、連結基である。本開示において「連結基」は、二価連結基である。連結基は、単結合であってもよく、少なくとも1個の炭素原子を含むことが好ましく、炭素原子の数は、2以上であってよく、4以上であってよく、8以上であってよく、10以上であってよく、20以上であってもよい。上限は限定されないが、たとえば、100以下であってよく、50以下であってよい。
【0052】
連結基は、鎖状または分岐鎖状、環状または非環状構造、飽和または不飽和、置換または非置換であってよく、所望により硫黄、酸素、および窒素からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を含み、所望によりエステル、アミド、スルホンアミド、カルボニル、カーボネート、ウレタン、尿素およびカルバメートからなる群から選択される1つ以上の官能基を含んでよい。上記連結基は、炭素原子を含まず、酸素、硫黄または窒素等のカテナリーヘテロ原子であってもよい。
【0053】
Rは、たとえば、酸素、硫黄、窒素等のカテナリーヘテロ原子、または、2価の有機基であることが好ましい。
【0054】
Rが2価の有機基である場合、炭素原子に結合する水素原子は、フッ素以外のハロゲン、たとえば塩素等で置き換えられてもよく、二重結合を含んでも含まなくてもよい。また、Rは、鎖状および分岐鎖状のいずれでもよく、環状および非環状のいずれでもよい。また、Rは、官能基(たとえば、エステル、エーテル、ケトン(ケト基)、アミン、ハロゲン化物等)を含んでもよい。
【0055】
Rはまた、非フッ素の2価の有機基であってもよいし、部分フッ素化または過フッ素化された2価の有機基であってもよい。
【0056】
Rとしては、たとえば、炭素原子にフッ素原子が結合していない炭化水素基、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子で置換された炭化水素基、または、炭素原子に結合する水素原子の全てがフッ素原子で置換された炭化水素基であってもよく、これらは酸素原子を含んでいてもよく、二重結合を含んでいてもよく、官能基を含んでいてもよい。
【0057】
Rは、エーテル結合またはケト基を含んでいてもよい炭素数1~100の炭化水素基であることが好ましく、該炭化水素基は、炭素原子に結合する水素原子の一部または全部がフッ素に置換されていてもよい。
【0058】
Rとして好ましくは、-(CH-、-(CF-、-O-(CF-、-(CF-O-(CF-、-O(CF-O-(CF-、-(CF-[O-(CF-、-O(CF-[O-(CF-、-[(CF-O]-[(CF-O]-、-O[(CF-O]-、-O[(CF-O]-[(CF-O]-、-O-[CFCF(CF)O]-(CF-、-O-(CF-O-[CF(CF)CFO]-O-、-O-[CFCF(CF)O]-(CF-O-、-O-[CFCF(CF)O]-(CF-O-[CF(CF)CFO]-O-、-[CFCF(CF)O]-、-[CF(CF)CFO]-、-(CF-O-[CF(CF)CFO]-、-(CF-O-[CF(CF)CFO]-(CF-、-[CFCF(CF)]-CO-(CF-、および、これらの組み合わせから選択される少なくとも1種である。
式中、a、b、cおよびdは独立して少なくとも1以上である。a、b、cおよびdは独立して、2以上であってよく、3以上であってよく、4以上であってよく、10以上であってよく、20以上であってよい。a、b、cおよびdの上限は、たとえば、100である。
Rとしてより好ましくは、-O-CF-、-O-CFCF-、-O-CFCF-O-、-O-CFCFCF-、-O-CFCFCF-O-、-O-CFCF(CF)-O-、-O-CFCF-O-CF(CF)CF-O-、-O-CFCF(CF)-O-CFCF-O-、および、-O-CFCF(CF)-O-CF-から選択される少なくとも1種である。
【0059】
Rとしては、一般式(r1):
-CF-O-(CX -{O-CF(CF)}-(O)- (r1)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、FまたはCFであり、eは0~3の整数であり、fは0~3の整数であり、gは0または1である)で表される2価の基が好ましく、一般式(r2):
-CF-O-(CX -(O)- (r2)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、FまたはCFであり、eは0~3の整数であり、gは0または1である)で表される2価の基がより好ましい。
【0060】
Rとして好適な具体的としては、-CF-O-CF-、-CF-O-CH-、-CF-O-CHCF-、-CF-O-CFCF-、-CF-O-CFCH-、-CF-O-CFCFCH-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF-、-CF-O-CF(CF)CH-等が挙げられる。なかでも、Rは、酸素原子を含んでもよい、パーフルオロアルキレン基が好ましく、具体的には、-CF-O-、-CF-O-CF-、-CF-O-CFCF-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-が好ましい。
【0061】
一般式(1)の-R-CZ-としては、一般式(s1):
-CF-O-(CX -{O-CF(CF)}-(O)-CZ- (s1)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、FまたはCFであり、eは0~3の整数であり、fは0~3の整数であり、gは0または1であり、ZおよびZは、それぞれ独立して、FまたはCFである)で表されるものが好ましく、式(s1)において、ZおよびZは、一方がFで他方がCFであることがより好ましい。
【0062】
また、一般式(1)において、-R-CZ-としては、一般式(s2):
-CF-O-(CX -(O)-CZ- (s2)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、FまたはCFであり、eは0~3の整数であり、gは0または1であり、ZおよびZは、それぞれ独立して、FまたはCFである)で表されるものが好ましく、式(s2)において、ZおよびZは、一方がFで他方がCFであることがより好ましい。
【0063】
一般式(1)の-R-CZ-としては、-O-CFCF-、-O-CFCFCF-、-O-CFCFCFCF-、-O-CFCF(CF)-O-CF-、-O-CFCF(CF)-O-CFCF-、-CF-O-CF-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-C(CF-、-CF-O-CF-CF-、-CF-O-CF-CF(CF)-、-CF-O-CF-C(CF-、-CF-O-CFCF-CF-、-CF-O-CFCF-CF(CF)-、-CF-O-CFCF-C(CF-、-CF-O-CF(CF)-CF-、-CF-O-CF(CF)-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)-C(CF-、-CF-O-CF(CF)CF-CF-、-CF-O-CF(CF)CF-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-C(CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF(CF)-、または、-CF-O-CF(CF)CF-O-C(CF-が好ましく、-O-CFCF-、-O-CFCFCF-、-O-CFCFCFCF-、-O-CFCF(CF)-O-CF-、-O-CFCF(CF)-O-CFCF-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF-CF(CF)-、-CF-O-CFCF-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-CF(CF)-、または、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF(CF)-がより好ましく、-O-CFCF-、-O-CFCF(CF)-O-CFCF-が更に好ましい。
【0064】
重合体(1)は、高度にフッ素化されていることも好ましい。たとえば、ホスフェート基部分(たとえば、CHOP(O)(OM))およびサルフェート基部分(たとえば、CHOS(O)OM)のようなアニオン性基(A)を除き、重合体(1)中のC-H結合の80%以上、90%以上、95%以上、または100%がC-F結合で置換されていることが好ましい。
【0065】
単量体(1)および重合体(1)は、アニオン性基(A)を除いて、C-F結合を有し、C-H結合を有していないことも好ましい。すなわち、一般式(1)において、Rは炭素数が1以上のパーフルオロアルキレン基であることが好ましく、上記パーフルオロアルキレン基は、鎖状および分岐鎖状のいずれでもよく、環状および非環状のいずれでもよく、少なくとも1つのカテナリーヘテロ原子を含んでもよい。上記パーフルオロアルキレン基の炭素数は、2~20であってよく、4~18であってもよい。
【0066】
単量体(1)および重合体(1)は、部分フッ素化されたものであってもよい。すなわち、単量体(1)および重合体(1)は、アニオン性基(A)を除いて、炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子を有し、炭素原子に結合した少なくとも1つのフッ素原子を有することも好ましい。
【0067】
アニオン性基(A)は、-SOM、-OSOM、-COOM、-SONR’CHCOOM、-CHOP(O)(OM)、[-CHO]P(O)(OM)、-CHCHOP(O)(OM)、[-CHCHO]P(O)(OM)、-CHCHOSOM、-P(O)(OM)、-SONR’CHCHOP(O)(OM)、[-SONR’CHCHO]P(O)(OM)、-CHOSOM、-SONR’CHCHOSOM、または、-C(CFOMであってよい。なかでも、-SOM、-OSOM、-COOM、-P(O)(OM)または-C(CFOMが好ましく、-COOM、-SOM、-OSOMまたは-C(CFOMがより好ましく、-SOM、-COOMまたは-P(O)(OM)がさらに好ましく、-SOMまたは-COOMが特に好ましく、-COOMが最も好ましい。重合体(1)は、Aが-COOMである重合単位(1)およびAが-SOMである重合単位(1)の両方を含有する重合体であってもよい。
【0068】
Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基である。
【0069】
金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、KまたはLiが好ましい。
【0070】
Mとしては、H、金属原子またはNR が好ましく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)またはNR がより好ましく、H、Na、K、LiまたはNHが更に好ましく、H、Na、KまたはNHが更により好ましく、H、またはNHが特に好ましく、Hが最も好ましい。
【0071】
単量体(1)は、一般式(1a)で示される単量体であることも好ましい。
重合体(1)は、一般式(1a)で示される単量体に基づく重合単位(1a)を含む重合体であることも好ましい。
CF=CF-O-Rf-A (1a)
(式中、Aはアニオン性基であり、Rfは、過フッ素化されており、鎖状または分岐鎖状、環状または非環状構造、飽和または不飽和、置換または非置換であってもよく、硫黄、酸素、および窒素からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を任意追加的に含有する過フッ素化二価連結基である。)
【0072】
Rfは、炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基であることが好ましい。上記炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、酸素原子が末端である構造を含まず、炭素炭素間にエーテル結合を含んでいるアルキレン基である。
【0073】
一般式(1)において、Aはサルフェート基であることが好ましい形態の一つである。Aは、たとえば、-CHOSOM、-CHCHOSOM、または、-SONR’CHCHOSOMであり、式中、R’はH、または炭素数1~4のアルキル基であり、Mは上記と同じである。
【0074】
がサルフェート基である場合、一般式(1)で表される単量体としては、たとえば、CF=CF(OCFCFCHOSOM)、CF=CF(O(CFCHOSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)CHOSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCHOSOM)、CF=CF(OCFCFSON(CH)CHCHOSOM)、CF=CF(OCFCFCFCFSON(CH)CHCHOSOM)等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
【0075】
一般式(1)において、Aはスルホネート基であることも好ましい形態の一つである。Aとしてはたとえば、-SOMであり、式中、Mは上記と同じである。
【0076】
がスルホネート基である場合、一般式(1)で表される単量体としては、CF=CF(OCFCFSOM)、CF=CF(O(CFSOM)、CF=CF(O(CFSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)SOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCFCFSOM)等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
【0077】
一般式(1)において、Aはカルボキシレート基であることも好ましい形態の一つである。Aとしては、たとえばCOOMまたはSONR’CHCOOMであり、式中、R’はHまたは炭素数1~4のアルキル基であり、Mは上記と同じである。Aがカルボキシレート基である場合、一般式(1)で表される単量体としては、CF=CF(OCFCFCOOM)、CF=CF(O(CFCOOM)、CF=CF(O(CFCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)COOM)、CF=CF(OCFCF(CF)O(CFCOOM)(nは1より大きい)、CF=CF(OCFCFSONR’CHCOOM)、CF=CF(O(CFSONR’CHCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)SONR’CHCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFSONR’CHCOOM)等が挙げられる。上記式中、R’はHまたは炭素数1~4のアルキル基であり、Mは上記と同じである。
【0078】
一般式(1)において、Aはホスフェート基であることも好ましい形態の一つである。Aとしては、たとえば、-CHOP(O)(OM)、[-CHO]P(O)(OM)、-CHCHOP(O)(OM)、[-CHCHO]P(O)(OM)、[-SONR’CHCHO]P(O)(OM)またはSONR’CHCHOP(O)(OM)であり、式中、R’は炭素数1~4のアルキル基であり、Mは上記と同じである。
【0079】
がホスフェートである場合、一般式(1)で表される単量体としては、CF=CF(OCFCFCHOP(O)(OM))、CF=CF(O(CFCHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)CHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCFSON(CH)CHCHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCFCFCFSON(CH)CHCHOP(O)(OM))等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
【0080】
一般式(1)において、Aはホスホネート基であることも好ましい形態の一つである。Aがホスホネート基である場合、一般式(1)で表される単量体としては、CF=CF(OCFCFP(O)(OM))、CF=CF(O(CFP(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)P(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFP(O)(OM))が挙げられ、式中、Mは上記と同じである。
【0081】
単量体(1)は、一般式(2)で表される単量体(2)であることも好ましい。
重合体(1)は、一般式(2)で表される単量体(2)に基づく重合単位(2)を含む重合体(2)であることも好ましい。
CF=CF(-O-Rf-A) (2)
(式中、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のエーテル結合もしくはケト基を有する含フッ素アルキレン基である。Aは、-COOM、-SOM、-OSOMまたは-C(CFOM(Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基)である。)
【0082】
重合体(2)は、一般式(2)で表される単量体の単独重合体であってもよいし、他の単量体との共重合体であってもよい。
【0083】
一般式(2)において、上記Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のケト基を有する含フッ素アルキレン基である。Rfは-COOMと結合する末端に-CZ-(ZおよびZは前記のとおり)を含んでよい。なお、上記炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、酸素原子が末端である構造を含まず、炭素炭素間にエーテル結合を含んでいるアルキレン基である。
【0084】
Rfの含フッ素アルキレン基の炭素数は2以上が好ましい。また、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましく、5以下が特に好ましい。含フッ素アルキレン基としては、-CF-、-CHCF-、-CFCF-、-CFCH-、-CFCFCH-、-CF(CF)-、-CF(CF)CF-、-CF(CF)CH-、-CFCFCF-、-CFCFCFCF-等が挙げられる。含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましく、分岐していない直鎖状のパーフルオロアルキレン基であることがより好ましい。
【0085】
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は3以上が好ましい。また、上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は、60以下が好ましく、30以下がより好ましく、12以下が更に好ましく、5以下が特に好ましい。上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、たとえば、一般式:
【化1】
(式中、ZはFまたはCF;ZおよびZはそれぞれHまたはF;ZはH、FまたはCF;p1+q1+r1が1~10の整数;s1は0または1;t1は0~5の整数)で表される2価の基であることも好ましい。
【0086】
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基として具体的には、-CFCF(CF)OCF-、-CF(CF)CF-O-CF(CF)-、-CFCF(CF)OCFCFCF-、-(CF(CF)CF-O)-CF(CF)-(式中、nは1~10の整数)、-CF(CF)CF-O-CF(CF)CH-、-(CF(CF)CF-O)-CF(CF)CH-(式中、nは1~10の整数)、-CHCFCFO-CHCFCH-、-CFCFCFO-CF-、-CFCFCFO-CFCF-、-CFCFCFO-CFCFCF-、-CFCFCFO-CFCFCH-、-CFCFO-CF-、-CFCFO-CFCH-等が挙げられる。上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0087】
上記ケト基を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は3以上が好ましい。また、上記ケト基を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は、60以下が好ましく、30以下がより好ましく、12以下が更に好ましく、5以下が特に好ましい。
【0088】
上記ケト基を有する含フッ素アルキレン基として具体的には、-CFCF(CF)CO-CF-、-CFCF(CF)CO-CFCF-、-CFCF(CF)CO-CFCFCF-、-CFCF(CF)CO-CFCFCFCF-等が挙げられる。上記ケト基を有する含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0089】
含フッ素アルキレン基中のケト基に水が付加してもよい。したがって、単量体(2)は水和物であってもよい。ケト基に水が付加した含フッ素アルキレン基としては、-CFCF(CF)C(OH)-CF-、-CFCF(CF)C(OH)-CFCF-、-CFCF(CF)C(OH)-CFCFCF-、-CFCF(CF)C(OH)-CFCFCFCF-等が挙げられる。
【0090】
Aは、-COOM、-SOM、-OSOMまたは-C(CFOM(Mは、各出現において、同一または異なっていてもよく、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基)である。
【0091】
としては、HまたはC1-10の有機基が好ましく、HまたはC1-4の有機基がより好ましく、HまたはC1-4のアルキル基が更に好ましい。
【0092】
金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、KまたはLiが好ましい。
【0093】
Mとしては、各出現において、同一または異なっていてもよく、H、金属原子またはNR が好ましく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)またはNR がより好ましく、H、Na、K、LiまたはNHが更に好ましく、H、Na、KまたはNHが更により好ましく、H、またはNHが特に好ましく、Hが最も好ましい。
【0094】
Aとしては、-COOMまたは-SOMが好ましく、-COOMがより好ましい。
【0095】
一般式(2)で表される単量体は、一般式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)、(2e)、(2f)および(2g)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
CF=CF-O-(CFn1-A (2a)
(式中、n1は、1~10の整数を表し、Aは前記と同じ。)
CF=CF-O-(CFC(CF)F)n2-A (2b)
(式中、n2は、1~5の整数を表し、Aは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFXn3-A (2c)
(式中、Xは、FまたはCFを表し、n3は、1~10の整数を表し、Aは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFCFXO)n4-(CFn6-A (2d)
(式中、n4は、1~10の整数を表し、n6は、1~3の整数を表し、AおよびXは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFCFCFXO)n5-CFCFCF-A (2e)
(式中、n5は、0~10の整数を表し、AおよびXは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFn7-O-(CFn8-A (2f)
(式中、n7は、1~10の整数を表し、n8は、1~3の整数を表す。Aは、前記定義と同じ。)
CF=CF[OCFCF(CF)]n9O(CFn10O[CF(CF)CFO]n11CF(CF)-A (2g)
(式中、n9は、0~5の整数を表し、n10は、1~8の整数を表し、n11は、0~5の整数を表す。Aは、前記定義と同じ。)
【0096】
一般式(2a)において、上記n1は、5以下の整数であることが好ましく、3以下の整数であることがより好ましく、2以下の整数であることがさらに好ましい。
【0097】
一般式(2a)で表される単量体としては、たとえば、CF=CF-O-CFCOOM、CF=CF(OCFCFCOOM)、CF=CF(O(CFCOOM)、CF=CF(OCFCFSOM)、CF=CFOCFSOM、CF=CFOCFCFCFSOM、CF=CFOCFCFCFCFSOM(式中、Mは上記定義と同じ。)が挙げられる。
【0098】
一般式(2b)において、n2は、得られる組成物の分散安定性の点で、3以下の整数であることが好ましい。
【0099】
一般式(2c)において、n3は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、上記Aは、-COOMであることが好ましく、上記Mは、H、NaまたはNHであることが好ましい。
【0100】
一般式(2d)において、Xは、組成物の分散安定性の点で、-CFであることが好ましく、n4は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、Aは、-COOMであることが好ましく、Mは、H、NaまたはNHであることが好ましい。
【0101】
一般式(2d)で表される単量体としては、たとえば、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCOOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCOOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCFCOOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFSOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFSOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCFSOM(式中、Mは、H、NHまたはアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
【0102】
一般式(2e)において、n5は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、Aは、-COOMであることが好ましく、Mは、H、NaまたはNHであることが好ましい。
【0103】
一般式(2e)で表される単量体としては、たとえば、CF=CFOCFCFCFCOOM、CF=CFOCFCFCFSOM(式中、Mは、H、NHまたはアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
【0104】
一般式(2f)において、n7は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、Aは、-COOMであることが好ましく、Mは、H、NaまたはNHであることが好ましい。
【0105】
一般式(2f)で表される単量体としては、たとえば、CF=CF-O-(CF-O-CF-COOM(式中、Mは、H、NHまたはアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
【0106】
一般式(2g)において、n9は、水溶性の点で3以下の整数であることが好ましく、n10は3以下の整数であることが好ましく、n11は3以下の整数であることが好ましく、Aは、-COOMであることが好ましく、Mは、H、NaまたはNHであることが好ましい。
【0107】
一般式(2g)で表される単量体としては、たとえば、CF=CFO(CFOCF(CF)COOM、CF=CFOCFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFOCF(CF)COOM、CF=CF[OCFCF(CF)]O(CFO[CF(CF)CFO]CF(CF)COOM、CF=CF[OCFCF(CF)]O(CFO[CF(CF)CFO]CF(CF)COOM(式中、Mは、H、NHまたはアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
【0108】
重合体(1)は、重合単位(1)のみからなる単独重合体であってもよいし、重合単位(1)と、一般式(1)で表される単量体(1)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位とを含む共重合体であってもよい。水性媒体への溶解性の観点からは、重合単位(1)のみからなる単独重合体が好ましい。重合単位(1)は、各出現において、同一または異なっていてもよく、重合体(1)は、2種以上の異なる一般式(1)で表される単量体に基づく重合単位(1)を含んでいてもよい。
【0109】
上記他の単量体としては、一般式CFR=CR(式中、Rは、独立に、H、Fまたは炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である)で表される単量体が好ましい。また、他の単量体としては、炭素数2または3の含フッ素エチレン性単量体が好ましい。他の単量体としては、たとえば、CF=CF、CF=CFCl、CH=CF、CFH=CH、CFH=CF、CF=CFCF、CH=CFCF、CH=CHCF、CHF=CHCF(E体)、CHF=CHCF(Z体)などが挙げられる。
なかでも、共重合性が良好である点で、テトラフルオロエチレン(CF=CF)、クロロトリフルオロエチレン(CF=CFCl)およびフッ化ビニリデン(CH=CF)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、テトラフルオロエチレンおよびフッ化ビニリデンからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。従って、上記他の単量体に基づく重合単位は、テトラフルオロエチレンおよびフッ化ビニリデンからなる群より選択される少なくとも1種に基づく重合単位であることが好ましい。上記他の単量体に基づく重合単位は、各出現において、同一または異なっていてもよく、重合体(1)は、2種以上の異なる他の単量体に基づく重合単位を含んでいてもよい。
【0110】
重合体(1)が、重合単位(1)、および、単量体(1)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位を含有する場合において、単量体(1)に基づく重合単位(1)の含有量が、重合体(1)を構成する全重合単位に対して、好ましくは40~60モル%、より好ましくは45~55モル%であり、他の単量体に基づく重合単位の含有量が、重合体(1)を構成する全重合単位に対して、好ましくは60~40モル%であり、より好ましくは55~45モル%である。このような構成は、単量体(1)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位が、一般式CFR=CRで表される単量体に基づく重合単位である場合に特に好適である。
【0111】
重合体(1)が、重合単位(1)、および、単量体(1)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位を含有する場合において、重合単位(1)と、単量体(1)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位との交互率は、好ましくは40%以上であり、より好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは60%以上であり、尚さらに好ましくは70%以上であり、特に好ましくは80%以上であり、最も好ましくは90%以上である。交互率は、たとえば、40~99%であってよい。このような構成は、単量体(1)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位が、一般式CFR=CRで表される単量体に基づく重合単位である場合に特に好適である。
【0112】
重合体(1)における重合単位(1)と単量体(1)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位との交互率は、重合体(1)の19F-NMR分析により求めることができる。
【0113】
たとえば、単量体(1)がCF=CFOCFCFCOOHであり、他の単量体がフッ化ビニリデン(CH=CF)である場合、重合体(1)の交互率は、次の方法により算出することができる。重合体(1)の19F-NMR測定を行い、NMRスペクトルに現れるCF=CFOCFCFCOOHの“OCF ”に由来する2つのピーク(-79ppm~-83ppmmに現れるピークおよび-83ppm~-87ppmに現れるピーク)のそれぞれの総積分値から、次の計算式に従って算出する。
交互率(%)≧(b×2)/(a+b)×100
a:-79ppm~-83ppmmエリアのピークの総積分値
b:-83ppm~-87ppmエリアのピークの総積分値
【0114】
上記他の単量体としては、また、一般式(n1-2):
【0115】
【化2】
【0116】
(式中、X、Xは同じかまたは異なりHまたはF;XはH、F、Cl、CHまたはCF;X、Xは同じかまたは異なりHまたはF;aおよびcは同じかまたは異なり0または1である。Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される単量体が挙げられる。
【0117】
具体的には、CH=CFCF-O-Rf、CF=CF-O-Rf、CF=CFCF-O-Rf、CF=CF-Rf、CH=CH-Rf、CH=CH-O-Rf(式中、Rfは前記式(n1-2)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0118】
上記他の単量体としては、式(n2-1):
【0119】
【化3】
【0120】
(式中、XはH、FまたはCH;Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素アクリレート単量体も挙げられる。上記Rf基は、
【0121】
【化4】
【0122】
(式中、d3は1~4の整数;e3は1~10の整数)などが挙げられる。
【0123】
上記他の単量体としては、式(n2-2):
CH=CHO-Rf (n2-2)
(式中、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素ビニルエーテルも挙げられる。
【0124】
一般式(n2-2)の単量体として具体的には、
【0125】
【化5】
【0126】
(式中、e6は1~10の整数)などが好ましく挙げられる。
【0127】
より具体的には、
【0128】
【化6】
【0129】
などが挙げられる。
【0130】
その他、一般式(n2-3):
CH=CHCHO-Rf (n2-3)
(式中、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素アリルエーテル、一般式(n2-4):
CH=CH-Rf (n2-4)
(式中、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素ビニル単量体等も挙げられる。
【0131】
一般式(n2-3)および(n2-4)で表される単量体として具体的には、
【0132】
【化7】
【0133】
などの単量体が挙げられる。
【0134】
重合体(1)において、重合単位(1)の含有量としては、全重合単位に対して、より好ましくなる順に、1.0モル%以上、3.0モル%以上、5.0モル%以上、10モル%以上、20モル%以上、30モル%以上、40モル%以上、50モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上である。重合単位(1)の含有量は、実質的に100モル%であることが特に好ましく、重合体(1)は、重合単位(1)のみからなることが最も好ましい。
【0135】
重合体(1)において、一般式(1)で表される単量体と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位の含有量としては、全重合単位に対して、より好ましくなる順に、99.0モル%以下、97.0モル%以下、95.0モル%以下、90モル%以下、80モル%以下、70モル%以下、60モル%以下、50モル%以下、40モル%以下、30モル%以下、20モル%以下、10モル%以下である。一般式(1)で表される単量体と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位の含有量は、実質的に0モル%であることが特に好ましく、重合体(1)は、他の単量体に基づく重合単位を含まないことが最も好ましい。
【0136】
重合体(1)の重量平均分子量(Mw)の下限としては、より好ましくなる順に、0.2×10以上、0.4×10以上、0.6×10以上、0.8×10以上、1.0×10以上、1.3×10以上、1.4×10以上、1.5×10以上、1.7×10以上、1.9×10以上、2.1×10以上、2.3×10以上、2.7×10以上、3.1×10以上、3.5×10以上、3.9×10以上、4.3×10以上である。重合体(1)の重量平均分子量(Mw)の上限としては、より好ましくなる順に、150.0×10以下、100.0×10以下、60.0×10以下、50.0×10以下、40.0×10以下である。
【0137】
重合体(1)の数平均分子量(Mn)の下限としては、より好ましくなる順に、0.1×10以上、0.2×10以上、0.3×10以上、0.4×10以上、0.5×10以上、1.0×10以上、1.2×10以上、1.4×10以上、1.6×10以上、1.8×10以上である。重合体(1)の数平均分子量(Mn)の上限としては、より好ましくなる順に、75.0×10以下、50.0×10以下、40.0×10以下、30.0×10以下、20.0×10以下である。
【0138】
重合体(1)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくなる順に、3.0以下、2.7以下、2.4以下、2.2以下、2.0以下、1.9以下、1.7以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下である。
【0139】
数平均分子量および重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、単分散ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)を標準として分子量を算出する値である。また、GPCによる測定ができない場合には、NMR、FT-IR等により得られた末端基数から計算された数平均分子量とメルトフローレートとの相関関係により、重合体(1)の数平均分子量を求めることができる。メルトフローレートは、JIS K 7210に準拠して測定できる。
【0140】
重合体(1)は、通常、末端基を有する。末端基は、重合時に生成する末端基であり、代表的な末端基は、水素、ヨウ素、臭素、鎖状または分岐鎖状のアルキル基、および、鎖状または分岐鎖状のフルオロアルキル基から独立に選択され、任意追加的に少なくとも1つのカテナリーヘテロ原子を含有してもよい。アルキル基またはフルオロアルキル基は、炭素数が1~20であることが好ましい。これらの末端基は、一般的には、重合体(1)の形成に使用される開始剤または連鎖移動剤から生成するか、または連鎖移動反応中に生成する。
【0141】
重合体(1)は、53以下のイオン交換率(IXR)を有することが好ましい。上記IXRは、イオン性基に対するポリマー主鎖中の炭素原子数と定義される。加水分解によりイオン性となる前駆体基(たとえば、-SOF)は、IXRを決定する目的ではイオン性基と見なされない。
【0142】
IXRは、0.5以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、1.0以上が更に好ましく、1.2以上が更により好ましく、1.5以上が殊更に好ましく、1.9以上が特に好ましい。また、IXRは30以下がより好ましく、10以下が更に好ましく、3以下が特に好ましく、2.2以下が最も好ましい。
【0143】
重合体(1)において、イオン性基(アニオン性基)は、典型的に、ポリマー主鎖に沿って分布している。重合体(1)は、ポリマー主鎖を、この主鎖に結合された繰り返し側鎖とともに含み、この側鎖はイオン性基を有することが好ましい。
【0144】
重合体(1)は、10未満、より好ましくは7未満のpKaを有するイオン性基を含むことが好ましい。重合体(1)のイオン性基は、好ましくは、スルホナート、カルボキシラート、ホスホナート、および、ホスファートからなる群から選択される。
【0145】
用語「スルホナート、カルボキシラート、ホスホナート、およびホスファート」は、それぞれの塩、または塩を形成し得るそれぞれの酸をいうことが意図される。塩が用いられる場合、好ましくは、その塩はアルカリ金属塩またはアンモニウム塩である。好ましいイオン性基は、スルホナート基である。
【0146】
重合体(1)は、水溶性を有していることが好ましい。水溶性とは、容易に水性媒体に溶解または分散する性質を意味する。水溶性を有する重合体は、たとえば、動的光散乱法(DLS)によって、粒子径を測定できないか、または、10nm以下の粒子径が示される。
【0147】
重合体(1)は、十分な水溶性を有していることが好ましい。一般に、水溶液中の重合体(1)の含有量が高いほど、重合体(1)が水性媒体に十分に溶解または分散することが困難になる。したがって、水溶液中の重合体(1)の含有量の高い場合でも、動的光散乱法(DLS)によって粒子径を測定できない重合体(1)は、水溶性が高いといえる。重合体(1)は、1.0質量%の含有量で水溶液中に含まれる場合でも粒子径を測定できないことが好ましい。より好ましくは1.5質量%、さらに好ましくは2.0質量%の含有量で重合体(1)が水溶液中に含まれる場合でも粒子径を測定できないことが好ましい。
【0148】
重合体(1)の水溶液の粘度は、好ましくは5.0mPa.s以上であり、より好ましくは8.0mPa.s以上であり、さらに好ましくは10.0mPa.s以上であり、特に好ましくは12.0mPa.s以上であり、最も好ましくは14.0mPa.s以上であり、好ましくは100.0mPa.s以下であり、より好ましくは50.0mPa.s以下であり、さらに好ましくは25.0mPa.s以下であり、殊更に好ましくは20.0mPa.s以下である。
【0149】
重合体(1)の水溶液の粘度は、水溶液中の重合体(1)の含有量を水溶液に対して33質量%に調整し、得られた水溶液の粘度を、エー・アンド・デイ社製音叉振動式粘度計(型番:SV-10)を用いて、20℃で測定することにより、特定することができる。
【0150】
重合体(1)の臨界ミセル濃度(CMC)は、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、さらに好ましくは1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0151】
重合体(1)の臨界ミセル濃度は、表面張力を測定することで決定できる。表面張力は、例えば、協和界面化学株式会社製表面張力計CBVP-A3型により測定することができる。
【0152】
重合体(1)の酸価は、好ましくは60以上であり、より好ましくは90以上であり、さらに好ましくは120以上であり、特に好ましくは150以上であり、最も好ましくは180以上であり、上限は特に限定されないが、好ましくは300以下である。
【0153】
重合体(1)の酸価は、重合体(1)が酸型の官能基以外のアニオン性基、たとえば、-COOM、-SOM、-OSOMまたは-C(CFOM(Mは、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基)を有している場合には、これらの基を酸型の基に変換した後、酸-塩基滴定によって測定できる。
【0154】
重合体(1)として、一般式(12)で表される単量体(12)の重合体(12)であって、単量体(12)に基づく重合単位(12)の含有量が、重合体(12)を構成する全重合単位に対して、40モル%以上であり、重量平均分子量(Mw)が、1.4×10以上である重合体(12)を用いることもできる。重合体(12)は、新規な重合体である。
一般式(12):CF=CF-O-Rf-A
(式中、Xは、独立に、FまたはCFであり、Rfは、炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のエーテル結合もしくはケト基を有する含フッ素アルキレン基である。Aは、-COOM、-SOM、-OSOMまたは-C(CFOM(Mは、-H、金属原子、-NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基である)である。)
【0155】
一般式(12)中のRfおよびAについては、重合体(2)を構成する単量体を表す一般式(2)中のRfおよびAと同様である。
【0156】
重合体(12)は、単量体(12)に基づく重合単位(12)のみからなる単独重合体であってもよいし、重合単位(12)と、単量体(12)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位とを含む共重合体であってもよい。他の単量体については、上述したとおりである。重合単位(12)は、各出現において、同一または異なっていてもよく、重合体(12)は、2種以上の異なる一般式(12)で表される単量体に基づく重合単位(12)を含んでいてもよい。
【0157】
重合体(12)における重合単位(12)の含有量としては、重合体(12)を構成する全重合単位に対して、より好ましくなる順に、40モル%以上、50モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、99モル%以上である。重合単位(12)の含有量は、実質的に100モル%であることが特に好ましく、重合体(12)は、重合単位(12)のみからなることが最も好ましい。
【0158】
重合体(12)において、単量体(12)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位の含有量としては、重合体(12)を構成する全重合単位に対して、より好ましくなる順に、60モル%以下、50モル%以下、40モル%以下、30モル%以下、20モル%以下、10モル%以下、1モル%以下である。単量体(12)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位の含有量は、実質的に0モル%であることが特に好ましく、重合体(12)は、他の単量体に基づく重合単位を含まないことが最も好ましい。
【0159】
重合体(12)の重量平均分子量(Mw)の下限としては、より好ましくなる順に、1.4×10以上、1.7×10以上、1.9×10以上、2.1×10以上、2.3×10以上、2.7×10以上、3.1×10以上、3.5×10以上、3.9×10以上、4.3×10以上、4.7×10以上、5.1×10以上である。重合体(12)の重量平均分子量(Mw)の上限としては、より好ましくなる順に、150.0×10以下、100.0×10以下、60.0×10以下、50.0×10以下、40.0×10以下である。
【0160】
重合体(12)の数平均分子量(Mn)の下限としては、より好ましくなる順に、1.0×10以上、1.2×10以上、1.4×10以上、1.6×10以上、1.8×10以上である。重合体(12)の数平均分子量(Mn)の上限としては、より好ましくなる順に、75.0×10以下、50.0×10以下、40.0×10以下、30.0×10以下、20.0×10以下である。
【0161】
重合体(12)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.7以下であり、さらに好ましくは2.4以下であり、尚さらに好ましくは2.2以下であり、特に好ましくは2.0以下であり、最も好ましくは1.9以下である。
【0162】
重合体(1)のうち、重合体(12)は、新規な重合体であり、一般式(12)で表される単量体(12)の重合を行うことにより、単量体(12)の重合体(12)を製造する重合体(12)の製造方法であって、重合の反応系中の酸素濃度を1500体積ppm以下に維持する製造方法(12)により製造することができる。
【0163】
製造方法(12)において、重合の反応系中の酸素濃度は、1500体積ppm以下である。製造方法(12)においては、単量体(12)の重合の全期間にわたって、反応系中の酸素濃度が1500体積ppm以下に維持される。反応系中の酸素濃度は、好ましくは500体積ppm以下であり、より好ましくは100体積ppm以下であり、さらに好ましくは50体積ppm以下である。また、反応系中の酸素濃度は、通常、0.01体積ppm以上である。
【0164】
重合体(1)として、一般式(13)で表される単量体(13)の重合体(13)であって、単量体(13)に基づく重合単位(13)の含有量が、重合体(13)を構成する全重合単位に対して、50質量%以上である重合体(13)を用いることもできる。重合体(13)は、新規な重合体である。
一般式(13):CX=CX-O-Rf-SO
(式中、Xは、独立に、FまたはCFであり、Rfは、炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のエーテル結合もしくはケト基を有する含フッ素アルキレン基である。Mは、-H、金属原子、-NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基である。)
【0165】
一般式(13)中、Xは、独立に、FまたはCFである。少なくとも1以上のXがFであることが好ましく、XがいずれもFであることがより好ましい。
【0166】
一般式(13)中のRfおよびMについては、重合体(2)を構成する単量体を表す一般式(2)中のRfおよびAと同様である。
【0167】
重合体(13)は、単量体(13)に基づく重合単位(13)のみからなる単独重合体であってもよいし、重合単位(13)と、単量体(13)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位とを含む共重合体であってもよい。他の単量体については、上述したとおりである。重合単位(13)は、各出現において、同一または異なっていてもよく、重合体(13)は、2種以上の異なる一般式(13)で表される単量体に基づく重合単位(13)を含んでいてもよい。
【0168】
重合体(13)は、単量体(13)に基づく重合単位(13)の含有量が、重合体(13)を構成する全重合単位に対して、50質量%以上である。重合体(13)における重合単位(13)の含有量は、重合体(13)を構成する全重合単位に対して、好ましくなる順に、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、99質量%以上である。重合単位(13)の含有量は、実質的に100質量%であることが特に好ましく、重合体(13)は、重合単位(13)のみからなることが最も好ましい。
【0169】
重合体(13)において、単量体(13)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位の含有量は、重合体(13)を構成する全重合単位に対して、好ましくなる順に、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、1質量%以下である。単量体(13)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位の含有量は、実質的に0質量%であることが特に好ましく、重合体(13)は、他の単量体に基づく重合単位を含まないことが最も好ましい。
【0170】
重合体(13)の数平均分子量の下限は、好ましくなる順に、0.3×10以上、0.4×10以上、0.5×10以上、0.7×10以上、0.8×10以上、1.0×10以上、1.2×10以上、1.4×10、1.6×10以上、1.8×10以上、2.0×10以上、3.0×10以上である。重合体(13)の数平均分子量の上限は、好ましくなる順に、75.0×10以下、50.0×10以下、40.0×10以下、30.0×10以下、20.0×10以下である。
【0171】
重合体(13)の重量平均分子量の下限は、好ましくなる順に、0.4×10以上、0.5×10以上、0.6×10以上、0.8×10以上、1.0×10以上、1.2×10以上、1.4×10以上、1.7×10以上、1.9×10以上、2.1×10以上、2.3×10以上、2.7×10以上、3.1×10以上、3.5×10以上、3.9×10以上、4.3×10以上、4.7×10以上、5.1×10以上、10.0×10以上、15.0×10以上、20.0×10以上、25.0×10以上である。重合体(13)の重量平均分子量の上限は、好ましくなる順に、150.0×10以下、100.0×10以下、60.0×10以下、50.0×10以下、40.0×10以下である。
【0172】
重合体(13)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくなる順に、3.0以下、2.7以下、2.4以下、2.2以下、2.0以下、1.9以下、1.7以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下である。
【0173】
重合体(1)のうち、重合体(13)は、新規な重合体であり、一般式(13)で表される単量体(13)の重合を行うことにより、単量体(13)の重合体(13)を製造する重合体(13)の製造方法(13)により製造することができる。
【0174】
製造方法(13)において、重合の反応系中の酸素濃度は、好ましくは1500体積ppm以下であり、より好ましくは500体積ppm以下であり、さらに好ましくは100体積ppm以下であり、特に好ましくは50体積ppm以下である。また、反応系中の酸素濃度は、通常、0.01体積ppm以上である。上記の製造方法においては、単量体(13)の重合の全期間にわたって、反応系中の酸素濃度が上記範囲内に維持されることが好ましい。
【0175】
製造方法(12)および製造方法(13)において、単量体(12)および単量体(13)の重合温度は、分子量が一層高い重合体(12)および重合体(13)を容易に製造できることから、70℃以下であることが好ましく、65℃以下であることがより好ましく、60℃以下であることがさらに好ましく、55℃以下であることが特に好ましく、50℃以下であることが殊更好ましく、45℃以下であることが特に好ましく、40℃以下であることが最も好ましく、10℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることがさらに好ましい。
【0176】
製造方法(12)および製造方法(13)において、単量体(12)または単量体(13)と、上述した他の単量体とを共重合してもよい。
【0177】
製造方法(12)および製造方法(13)において、重合圧力は、通常、大気圧~10MPaGである。重合圧力は、使用する単量体の種類、目的とする重合体の分子量、反応速度によって適宜決定される。
【0178】
製造方法(12)および製造方法(13)において、重合時間は、通常、1~200時間であり、5~100時間であってよい。
【0179】
製造方法(12)および製造方法(13)において、重合の反応系中の酸素濃度は、たとえば、窒素、アルゴンなどの不活性気体、または、気体状の単量体を用いる場合には当該気体状の単量体を、反応器中の液相または気相に流通させることにより、制御することができる。重合の反応系中の酸素濃度は、重合系の排ガスラインから出てきたガスを、低濃度酸素分析計で測定および分析することにより、求めることができる。
【0180】
製造方法(12)および製造方法(13)において、単量体(12)または単量体(13)の重合は、水性媒体中で行ってもよいし、水性媒体の非存在下で行ってもよい。また、水性媒体の非存在下であって、単量体(12)または単量体(13)を含有する単量体の量に対して、10質量%未満の非水性媒体(たとえばトルエンなどの有機溶媒)の存在下に、単量体(12)または単量体(13)の重合を行ってもよい。単量体(12)または単量体(13)の重合は、乳化重合または懸濁重合であってもよいし、塊状重合であってもよい。
【0181】
製造方法(12)および製造方法(13)において、水性媒体は、重合を行わせる反応媒体であって、水を含む液体を意味する。水性媒体は、水を含むものであれば特に限定されず、水と、たとえば、アルコール、エーテル、ケトン等のフッ素非含有有機溶媒、及び/又は、沸点が40℃以下であるフッ素含有有機溶媒とを含むものであってもよい。水性媒体として、好ましくは水である。
【0182】
製造方法(12)および製造方法(13)において、単量体の重合を、重合開始剤の存在下に行うことができる。重合開始剤としては、上記重合温度範囲でラジカルを発生しうるものであれば特に限定されず、公知の油溶性及び/又は水溶性の重合開始剤を使用することができる。更に、還元剤等と組み合わせてレドックスとして重合を開始することもできる。重合開始剤の濃度は、単量体の種類、目的とする重合体の分子量、反応速度によって適宜決定される。単量体(12)または単量体(13)の重合を水性媒体中で行う場合には、過硫酸塩などの水溶性重合開始剤を用いることが好ましい。単量体(12)または単量体(13)の重合を水性媒体の非存在下に行う場合は、パーオキサイドなどの油溶性重合開始剤を用いることが好ましい。
【0183】
重合開始剤としては、過硫酸塩(例えば、過硫酸アンモニウム)や、ジコハク酸パーオキシド、ジグルタル酸パーオキシド等の有機過酸化物を、単独で又はこれらの混合物の形で使用することができる。また、亜硫酸ナトリウム等の還元剤と共用し、レドックス系にして用いてもよい。更に、重合中に、ヒドロキノン、カテコール等のラジカル捕捉剤を添加したり、亜硫酸アンモニウム等のパーオキサイドの分解剤を添加し、系内のラジカル濃度を調整したりすることもできる。
【0184】
重合開始剤としては、分子量が一層高い重合体を容易に製造できることから、なかでも、過硫酸塩が好ましい。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどが挙げられ、過硫酸アンモニウムが好ましい。
【0185】
重合開始剤として、油溶性ラジカル重合開始剤を用いてもよい。油溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性の過酸化物であってよく、たとえばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジsec-ブチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート類、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類、ジt-ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類などが、また、ジ(ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-テトラデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロバレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル-ω-ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル-パーオキサイド、ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル-ω-クロ-デカフルオロヘキサノイル-パーオキサイド、ω-ハイドロドデカフルオロヘプタノイル-パーフルオロブチリル-パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロドトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドなどのジ[パーフロロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類などが代表的なものとしてあげられる。
【0186】
重合開始剤の添加量は、特に限定はないが、重合速度が著しく低下しない程度の量(たとえば、数ppm対水濃度)以上を重合の初期に一括して、または逐次的に、または連続して添加すればよい。上限は、装置面から重合反応熱で除熱を行ないながら、反応温度を上昇させてもよい範囲であり、より好ましい上限は、装置面から重合反応熱を除熱できる範囲である。
【0187】
製造方法(12)および製造方法(13)においては、重合開始剤を重合開始時に添加するとともに、重合中にも添加することができる。重合開始時に添加する重合開始剤の添加量と、重合中に添加する重合開始剤の添加量との割合としては、好ましくは95/5~5/95であり、より好ましくは60/40~10/90であり、さらに好ましくは30/70~15/85である。重合中に添加する重合開始剤の添加方法は、特に限定されず、一回で全量を添加してもよいし、2回以上に分割して添加してもよいし、連続的に添加してもよい。
【0188】
製造方法(12)および製造方法(13)においては、分子量が一層高い重合体を容易に製造できることから、重合に用いる重合開始剤の総添加量が、水性媒体に対して、0.00001~10質量%であることが好ましい。重合に用いる重合開始剤の総添加量としては、より好ましくは0.0001質量%以上であり、さらに好ましくは0.001質量%以上であり、特に好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0189】
製造方法(12)および製造方法(13)においては、分子量が一層高い重合体を容易に製造できることから、重合に用いる重合開始剤の総添加量が、単量体に対して、0.001~10モル%であることが好ましい。重合に用いる重合開始剤の総添加量としては、より好ましくは0.005モル%以上であり、さらに好ましくは0.01モル%以上であり、殊更好ましくは0.1モル%以上であり、最も好ましくは0.5モル%以上であり、より好ましくは5モル%以下であり、さらに好ましくは2.5モル%以下であり、特に好ましくは2.2モル%以下であり、最も好ましくは2.0モル%以下である。
【0190】
製造方法(12)および製造方法(13)においては、分子量が一層高い重合体を容易に製造できることから、重合開始時の単量体(12)または単量体(13)を含有する単量体の存在量が、水性媒体の存在量に対して、20質量%以上であることが好ましい。単量体の存在量は、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上である。単量体の存在量の上限は特に限定されないが、重合を円滑に進行させる観点から、200質量%以下であってよい。重合開始時の単量体の存在量とは、重合開始時の反応器内に存在する、単量体(12)または単量体(13)、および、存在する場合は他の単量体の合計の存在量である。
【0191】
製造方法(12)および製造方法(13)において、pH調整剤の存在下に重合を行ってもよい。pH調整剤は、重合開始前に添加してもよいし、重合開始後に添加してもよい。
【0192】
単量体(12)または単量体(13)の重合を水性媒体の非存在下に行う場合、パーオキサイドなどの重合開始剤の総添加量は、単量体(12)または単量体(13)を含有する単量体(単量体混合物)の総量に対して、0.001~10モル%であることが好ましい。重合に用いる重合開始剤の総添加量としては、より好ましくは0.005モル%以上であり、さらに好ましくは0.01モル%以上であり、より好ましくは10モル%以下であり、さらに好ましくは5.0モル%以下であり、殊更に好ましくは2.5モル%以下であり、特に最も好ましくは2.2モル%以下であり、好ましくは2.0モル%以下である。
【0193】
pH調整剤としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸アンモニウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸アンモニウム等を用いることができる。
【0194】
製造方法(12)および製造方法(13)において、単量体(12)または単量体(13)の重合は、反応器に、水性媒体、単量体(12)または単量体(13)、および、必要に応じて他の単量体、必要に応じて他の添加剤を仕込み、反応器の内容物を撹拌し、そして反応器を所定の重合温度に保持し、次に所定量の重合開始剤を加え、重合反応を開始することにより行うことができる。重合反応開始後に、目的に応じて、単量体、重合開始剤、他の添加剤を添加してもよい。
【0195】
製造方法(12)および製造方法(13)において、単量体の重合は、実質的に含フッ素界面活性剤の非存在下で行うことができる。本開示において「実質的に含フッ素界面活性剤の非存在下に」とは、水性媒体に対する含フッ素界面活性剤の量が10質量ppm以下であることを意味する。水性媒体に対する含フッ素界面活性剤の量としては、好ましくは1質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppb以下であり、更に好ましくは10質量ppb以下であり、更により好ましくは1質量ppb以下である。
【0196】
本開示の製造方法において、重合体(1)の添加量は、水性媒体100質量%に対して、0.01~20質量%であることが好ましい。上記重合における重合体(1)の添加量(存在量)を、上記の範囲内とすることによって、パーフルオロモノマーの重合反応が円滑に進行し、パーフルオロエラストマーを効率よく製造することができる。重合体(1)の添加量が少なすぎると、十分な重合速度が得られなかったり、十分な収率が得られなかったりする。
【0197】
重合体(1)の添加量としては、一層円滑にパーフルオロモノマーの重合反応が進行することから、水性媒体100質量%に対して、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、特に好ましくは0.75質量%以上であり、最も好ましくは1.0質量%以上である。
【0198】
また、重合体(1)の添加量としては、添加量が多すぎると、添加量に見合った効果が得られず、経済的に不利であり、また、重合終了後の後処理が煩雑になる可能性があることから、水性媒体100質量%に対して、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。
【0199】
上記重合における重合体(1)の添加の時機は、特に限定されず、重合の開始前に添加してもよいし、重合の開始後に添加してもよい。また、上記重合において、重合体(1)を任意の時機に一括して添加してもよいし、連続的に添加してもよい。重合体(1)を連続的に添加するとは、たとえば、重合体(1)を一括ではなく、経時的に、かつ、間断なくまたは分割して、添加することである。重合体(1)を連続的に添加する場合は、添加した重合体(1)の合計量が、上記した範囲の添加量となるように添加することが好ましい。重合体(1)を添加する場合には、重合体(1)および水を含む水溶液を調製し、該水溶液を添加してもよい。
【0200】
重合体(1)として、重合体(1)を含有する水溶液を用いることができる。
【0201】
重合体(1)または重合体(1)を含有する水溶液は、単量体(1)のダイマーおよびトリマーを含有していてもよいし、単量体(1)のダイマーおよびトリマーを実質的に含有しないものであってよい。単量体(1)のダイマーおよびトリマーは、通常、単量体(1)を重合して重合体(1)を得る際に生じる。重合体(1)中または重合体(1)を含有する水溶液中のダイマーおよびトリマーの含有量としては、重合体(1)に対して、1.0質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以下であり、さらに好ましくは0.001質量%以下であり、特に好ましくは0.0001質量%以下である。
【0202】
重合体(1)中または重合体(1)を含有する水溶液中のダイマーおよびトリマーの含有量は、重合体(1)のゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)分析を行い、GPC分析により得られるクロマトグラムの各ピークの総面積に対する、ダイマーおよびトリマーのピーク面積の合計の割合(面積百分率)を算出することにより、特定することができる。
【0203】
また、重合体(1)中または重合体(1)を含有する水溶液中のダイマーおよびトリマーの含有量が、重合体(1)に対して、0.5質量%未満の場合には、液体クロマトグラフィ-質量分析法(LC/MS)による測定により、特定することができる。
具体的には、単量体(1)の5水準以上の含有量の水溶液を作成し、それぞれの含有量のLC/MS分析を行ない、含有量と、その含有量に対するエリア面積(ピークの積分値)との関係をプロットし、単量体(1)の検量線を作成する。さらに、単量体(1)の検量線から、単量体(1)のダイマーおよびトリマーの検量線を作成する。
重合体(1)にメタノールを加えて混合物を調製し、限外ろ過デイスク(分画分子量3000Da)を用いてろ過し、得られた回収液をLC/MS分析する。
そして、検量線を用いて、単量体(1)のダイマーおよびトリマーのクロマトグラムのエリア面積(ピークの積分値)を、ダイマーおよびトリマーの含有量に換算することができる。
【0204】
重合体(1)中または重合体(1)を含有する水溶液中のダイマーおよびトリマーは、重合体(1)を含有する水溶液を、限外濾過、精密濾過、透析膜処理、分液および再沈殿からなる群より選択される少なくとも1種の手段により処理することにより、除去することができる。
【0205】
本開示の製造方法は、重合体(1)を少なくとも1種用いれば、パーフルオロエラストマーを効率よく製造することが可能であるが、2種以上の重合体(1)を用いてもよい。
【0206】
本開示の製造方法は、実質的に含フッ素界面活性剤の非存在下に、パーフルオロモノマーを重合するものであることが好ましい。
【0207】
従来、パーフルオロモノマーの重合には含フッ素界面活性剤が使用されてきたが、本開示の製造方法は、重合体(1)を用いることによって、含フッ素界面活性剤を使用しなくてもパーフルオロモノマーを重合して、パーフルオロエラストマーを得ることができる。
【0208】
本開示において「実質的に含フッ素界面活性剤の非存在下に」とは、水性媒体に対して含フッ素界面活性剤の含有割合が10質量ppm以下であることを意味し、含フッ素界面活性剤の含有割合としては、好ましくは1質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppb以下であり、さらに好ましくは10質量ppb以下であり、特に好ましくは1質量ppb以下である。
【0209】
上記含フッ素界面活性剤としては、アニオン性含フッ素界面活性剤などが挙げられる。上記含フッ素界面活性剤としては、含フッ素界面活性剤(ただし、ラジカル重合で反応可能な官能基と親水基とを有する化合物を除く)が好ましい。
【0210】
上記アニオン性含フッ素界面活性剤は、たとえば、アニオン性基を除く部分の総炭素数が20以下のフッ素原子を含む界面活性剤であってよい。
【0211】
上記含フッ素界面活性剤としてはまた、アニオン性部分の分子量が800以下のフッ素を含む界面活性剤であってよい。
【0212】
なお、上記「アニオン性部分」は、上記含フッ素界面活性剤のカチオンを除く部分を意味する。たとえば、後述する式(I)で表されるF(CFn1COOMの場合には、「F(CFn1COO」の部分である。
【0213】
上記含フッ素界面活性剤としてはまた、LogPOWが3.5以下の含フッ素界面活性剤が挙げられる。上記LogPOWは、1-オクタノールと水との分配係数であり、LogP[式中、Pは、含フッ素界面活性剤を含有するオクタノール/水(1:1)混合液が相分離した際のオクタノール中の含フッ素界面活性剤濃度/水中の含フッ素界面活性剤濃度比を表す]で表されるものである。
【0214】
上記LogPOWは、カラム;TOSOH ODS-120Tカラム(φ4.6mm×250mm、東ソー社製)、溶離液;アセトニトリル/0.6質量%HClO水=1/1(vol/vol%)、流速;1.0ml/分、サンプル量;300μL、カラム温度;40℃、検出光;UV210nmの条件で、既知のオクタノール/水分配係数を有する標準物質(ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸およびデカン酸)についてHPLCを行い、各溶出時間と既知のオクタノール/水分配係数との検量線を作成し、この検量線に基づき、試料液におけるHPLCの溶出時間から算出する。
【0215】
上記含フッ素界面活性剤として具体的には、米国特許出願公開第2007/0015864号明細書、米国特許出願公開第2007/0015865号明細書、米国特許出願公開第2007/0015866号明細書、米国特許出願公開第2007/0276103号明細書、米国特許出願公開第2007/0117914号明細書、米国特許出願公開第2007/0142541号明細書、米国特許出願公開第2008/0015319号明細書、米国特許第3250808号明細書、米国特許第3271341号明細書、特開2003-119204号公報、国際公開第2005/042593号、国際公開第2008/060461号、国際公開第2007/046377号、特開2007-119526号公報、国際公開第2007/046482号、国際公開第2007/046345号、米国特許出願公開第2014/0228531号、国際公開第2013/189824号、国際公開第2013/189826号に記載されたものなどが挙げられる。
【0216】
上記アニオン性含フッ素界面活性剤としては、下記一般式(N):
n0-Rfn0-Y (N
(式中、Xn0は、H、ClまたはおよびFである。Rfn0は、炭素数3~20で、鎖状、分岐鎖状または環状で、一部または全てのHがFにより置換されたアルキレン基であり、該アルキレン基は1つ以上のエーテル結合を含んでもよく、一部のHがClにより置換されていてもよい。Yはアニオン性基である。)で表される化合物が挙げられる。
【0217】
のアニオン性基は、-COOM、-SOM、または、-SOMであってよく、-COOM、または、-SOMであってよい。
【0218】
Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、-Hまたは有機基である。
【0219】
上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)などが挙げられ、たとえば、Na、KまたはLiである。
【0220】
としては、-HまたはC1-10の有機基であってよく、-HまたはC1-4の有機基であってよく、-HまたはC1-4のアルキル基であってよい。
【0221】
Mは、H、金属原子またはNR であってよく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)またはNR であってよく、H、Na、K、LiまたはNHであってよい。
【0222】
上記Rfn0は、Hの50%以上がフッ素に置換されているものであってよい。
【0223】
上記一般式(N)で表される化合物としては、
下記一般式(N):
n0-(CFm1-Y (N
(式中、Xn0は、H、ClおよびFであり、m1は3~15の整数であり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、下記一般式(N):
Rfn1-O-(CF(CF)CFO)m2CFXn1-Y (N
(式中、Rfn1は、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、m2は、0~3の整数であり、Xn1は、FまたはCFであり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、下記一般式(N):
Rfn2(CHm3-(Rfn3-Y (N
(式中、Rfn2は、炭素数1~13のエーテル結合及び/又は塩素原子を含み得る、部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、m3は、1~3の整数であり、Rfn3は、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基であり、qは0または1であり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、下記一般式(N):
Rfn4-O-(CYn1n2CF-Y (N
(式中、Rfn4は、炭素数1~12のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Yn1およびYn2は、同一若しくは異なって、HまたはFであり、pは0または1であり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、および、下記一般式(N):
【化8】
(式中、Xn2、Xn3およびXn4は、同一若しくは異なってもよく、H、F、または、炭素数1~6のエーテル結合を含んでよい直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基である。Rfn5は、炭素数1~3のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキレン基であり、Lは連結基であり、Yは、上記定義したものである。但し、Xn2、Xn3、Xn4およびRfn5の合計炭素数は18以下である。)で表される化合物が挙げられる。
【0224】
上記一般式(N)で表される化合物としてより具体的には、下記一般式(I)で表されるパーフルオロカルボン酸(I)、下記一般式(II)で表されるω-Hパーフルオロカルボン酸(II)、下記一般式(III)で表されるパーフルオロエーテルカルボン酸(III)、下記一般式(IV)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)、下記一般式(V)で表されるパーフルオロアルコキシフルオロカルボン酸(V)、下記一般式(VI)で表されるパーフルオロアルキルスルホン酸(VI)、下記一般式(VII)で表されるω-Hパーフルオロスルホン酸(VII)、下記一般式(VIII)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VIII)、下記一般式(IX)で表されるアルキルアルキレンカルボン酸(IX)、下記一般式(X)で表されるフルオロカルボン酸(X)、下記一般式(XI)で表されるアルコキシフルオロスルホン酸(XI)、下記一般式(XII)で表される化合物(XII)、下記一般式(XIII)で表される化合物(XIII)等が挙げられる。
【0225】
上記パーフルオロカルボン酸(I)は、下記一般式(I)
F(CFn1COOM (I)
(式中、n1は、3~14の整数であり、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、-Hまたは有機基である。)で表されるものである。
【0226】
上記ω-Hパーフルオロカルボン酸(II)は、下記一般式(II)
H(CFn2COOM (II)
(式中、n2は、4~15の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0227】
上記パーフルオロエーテルカルボン酸(III)は、下記一般式(III)
Rf-O-(CF(CF)CFO)n3CF(CF)COOM (III)
(式中、Rfは、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、n3は、0~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0228】
上記パーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)は、下記一般式(IV)
Rf(CHn4RfCOOM (IV)
(式中、Rfは、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、Rfは、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基、n4は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0229】
上記アルコキシフルオロカルボン酸(V)は、下記一般式(V)
Rf-O-CYCF-COOM (V)
(式中、Rfは、炭素数1~12のエーテル結合及び/又は塩素原子を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、YおよびYは、同一若しくは異なって、HまたはFであり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0230】
上記パーフルオロアルキルスルホン酸(VI)は、下記一般式(VI)
F(CFn5SOM (VI)
(式中、n5は、3~14の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0231】
上記ω-Hパーフルオロスルホン酸(VII)は、下記一般式(VII)
H(CFn6SOM (VII)
(式中、n6は、4~14の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0232】
上記パーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VIII)は、下記一般式(VIII)
Rf(CHn7SOM (VIII)
(式中、Rfは、炭素数1~13のパーフルオロアルキル基であり、n7は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0233】
上記アルキルアルキレンカルボン酸(IX)は、下記一般式(IX)
Rf(CHn8COOM (IX)
(式中、Rfは、炭素数1~13のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、n8は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0234】
上記フルオロカルボン酸(X)は、下記一般式(X)
Rf-O-Rf-O-CF-COOM (X)
(式中、Rfは、炭素数1~6のエーテル結合及び/又は塩素原子を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Rfは、炭素数1~6の直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0235】
上記アルコキシフルオロスルホン酸(XI)は、下記一般式(XI)
Rf-O-CYCF-SOM (XI)
(式中、Rfは、炭素数1~12のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状であって、塩素を含んでもよい、部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、YおよびYは、同一若しくは異なって、HまたはFであり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0236】
上記化合物(XII)は、下記一般式(XII):
【化9】
(式中、X、XおよびXは、同一若しくは異なってもよく、H、Fおよび炭素数1~6のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Rf10は、炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基であり、Lは連結基であり、Yはアニオン性基である。)で表されるものである。
【0237】
は、-COOM、-SOM、または、-SOMであってよく、-SOM、または、-COOMであってよい(式中、Mは上記定義したものである。)。
【0238】
Lとしては、たとえば、単結合、炭素数1~10のエーテル結合を含みうる部分または完全フッ素化されたアルキレン基が挙げられる。
【0239】
上記化合物(XIII)は、下記一般式(XIII):
Rf11-O-(CFCF(CF)O)n9(CFO)n10CFCOOM (XIII)
(式中、Rf11は、塩素を含む炭素数1~5のフルオロアルキル基であり、n9は、0~3の整数であり、n10は、0~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。化合物(XIII)としては、CFClO(CFCF(CF)O)n9(CFO)n10CFCOONH(平均分子量750の混合物、式中、n9およびn10は上記定義したものである。)が挙げられる。
【0240】
含フッ素界面活性剤は、1種の含フッ素界面活性剤であってもよいし、2種以上の含フッ素界面活性剤を含有する混合物であってもよい。
【0241】
含フッ素界面活性剤としては、以下の式で表される化合物が挙げられる。含フッ素界面活性剤は、これらの化合物の混合物であってよい。上記重合の一実施形態においては、実質的に以下の式で表される化合物の非存在下に、フルオロモノマーを重合する。
F(CFCOOM、
F(CFCOOM、
H(CFCOOM、
H(CFCOOM、
CFO(CFOCHFCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFCFCFOCF(CF)COOM、
CFCFOCFCFOCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFClCFCFOCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCFCFOCFCF(CF)OCFCOOM、
CFClCF(CF)OCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCF(CF)OCFCF(CF)OCFCOOM、
【化10】
(各式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムである。Rは、Hまたは有機基である。)
【0242】
本開示の製造方法において、重合は、たとえば、重合反応器に、水性媒体、重合体(1)、パーフルオロモノマーおよび必要に応じて他の添加剤を仕込み、反応器の内容物を撹拌し、そして反応器を所定の重合温度に保持し、次に所定量の重合開始剤を加え、重合反応を開始することにより行う。重合反応開始後に、目的に応じて、モノマー、重合開始剤、連鎖移動剤および重合体(1)などを追加添加してもよい。
【0243】
本開示の製造方法において、重合開始剤の存在下に重合を行ってもよい。
【0244】
重合開始剤としては、重合温度範囲でラジカルを発生しうるものであれば特に限定されず、公知の油溶性および/または水溶性の重合開始剤を使用することができる。さらに、還元剤などと組み合わせてレドックスとして重合を開始することもできる。上記重合開始剤の濃度は、モノマーの種類、目的とするパーフルオロエラストマーの分子量、反応速度によって適宜決定される。
【0245】
上記重合開始剤としては、油溶性ラジカル重合開始剤、または水溶性ラジカル重合開始剤を使用できる。
【0246】
油溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性の過酸化物であってよく、たとえばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジsec-ブチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート類、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類、ジt-ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類などが、また、ジ(ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-テトラデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロバレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル-ω-ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル-パーオキサイド、ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル-ω-クロ-デカフルオロヘキサノイル-パーオキサイド、ω-ハイドロドデカフルオロヘプタノイル-パーフルオロブチリル-パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロドトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドなどのジ[パーフロロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類などが代表的なものとしてあげられる。
【0247】
水溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の水溶性過酸化物であってよく、たとえば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸などのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、ジコハク酸パーオキシド、ジグルタル酸パーオキシドなどの有機過酸化物、t-ブチルパーマレエート、t-ブチルハイドロパーオキサイドなどがあげられる。亜硫酸塩類のような還元剤も併せて含んでもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1~20倍であってよい。
【0248】
たとえば、30℃以下の低温で重合を実施する場合などでは、重合開始剤として、酸化剤と還元剤を組み合わせるレドックス開始剤を用いるのが好ましい。酸化剤としては、過硫酸塩、有機過酸化物、過マンガン酸カリウム、三酢酸マンガン、セリウム硝酸アンモニウムなどが挙げられる。還元剤としては、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、臭素酸塩、ジイミン、シュウ酸などが挙げられる。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムが挙げられる。亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウムが挙げられる。開始剤の分解速度を上げるため、レドックス開始剤の組み合わせには、銅塩、鉄塩を加えることも好ましい。銅塩としては、硫酸銅(II)、鉄塩としては硫酸鉄(II)が挙げられる。
【0249】
上記レドックス開始剤としては、たとえば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸、過硫酸アンモニウム/重亜硫酸塩/硫酸鉄、三酢酸マンガン/シュウ酸、セリウム硝酸アンモニウム/シュウ酸、臭素酸塩/重亜硫酸塩などが挙げられ、過マンガン酸カリウム/シュウ酸が好ましい。レドックス開始剤を用いる場合は、酸化剤または還元剤のいずれかをあらかじめ重合槽に仕込み、ついでもう一方を連続的または断続的に加えて重合を開始させてもよい。たとえば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸を用いる場合、重合槽にシュウ酸を仕込み、そこへ過マンガン酸カリウムを連続的に添加することが好ましい。
【0250】
重合開始剤の添加量としては、パーフルオロモノマー100質量%に対して、好ましくは0.0001~10質量%であり、より好ましくは0.01~5質量%である。上記重合における重合開始剤の添加量(存在量)を、上記の範囲内とすることによって、パーフルオロモノマーの重合反応が円滑に進行し、パーフルオロエラストマーを効率よく製造することができる。重合開始剤の添加量が少なすぎると、十分な重合速度が得られなかったり、十分な収率が得られなかったりする。
【0251】
上記重合における重合開始剤の添加の時機は、特に限定されず、重合の開始前に添加してもよいし、重合の開始後に添加してもよい。また、上記重合において、重合開始剤を任意の時機に一括して添加してもよいし、連続的に添加してもよい。重合開始剤を連続的に添加するとは、たとえば、重合開始剤を一括ではなく、経時的に、かつ、間断なくまたは分割して、添加することである。重合開始剤を連続的に添加する場合は、添加した重合開始剤の合計量が、上記した範囲の添加量となるように添加することが好ましい。重合開始剤を添加する場合には、重合開始剤および水を含む水溶液を調製し、該水溶液を添加してもよい。
【0252】
上記重合において、さらに、目的に応じて、連鎖移動剤を添加し、重合速度、分子量の調整を行うこともできる。
【0253】
上記重合においては、得られる重合体の分子量分布が狭く、分子量の制御が容易である点、末端にヨウ素原子または臭素原子を導入することができる点から、連鎖移動剤としてヨウ素化合物または臭素化合物を使用することもできる。ヨウ素化合物または臭素化合物を使用して行う重合方法としては、たとえば、実質的に無酸素状態で、ヨウ素化合物または臭素化合物の存在下に、加圧しながら水媒体中で重合を行う方法が挙げられる(ヨウ素移動重合法)。使用するヨウ素化合物または臭素化合物の代表例としては、たとえば、一般式:
21Br
(式中、xおよびyはそれぞれ0~2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、R21は炭素数1~16の飽和もしくは不飽和のフルオロ炭化水素基またはクロロフルオロ炭化水素基、または炭素数1~3の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい)で表される化合物が挙げられる。ヨウ素化合物または臭素化合物を使用することによって、ヨウ素原子または臭素原子が重合体に導入され、架橋点として機能する。
【0254】
ヨウ素化合物および臭素化合物としては、たとえば1,3-ジヨードパーフルオロプロパン、2-ヨードパーフルオロプロパン、1,3-ジヨード-2-クロロパーフルオロプロパン、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,5-ジヨード-2,4-ジクロロパーフルオロペンタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8-ジヨードパーフルオロオクタン、1,12-ジヨードパーフルオロドデカン、1,16-ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2-ジヨードエタン、1,3-ジヨード-n-プロパン、CFBr、BrCFCFBr、CFCFBrCFBr、CFClBr、BrCFCFClBr、CFBrClCFClBr、BrCFCFCFBr、BrCFCFBrOCF、1-ブロモ-2-ヨードパーフルオロエタン、1-ブロモ-3-ヨードパーフルオロプロパン、1-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブタン、2-ブロモ-3-ヨードパーフルオロブタン、3-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、2-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ジヨードモノブロモ置換体、ならびに(2-ヨードエチル)および(2-ブロモエチル)置換体等が挙げられ、これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。
【0255】
これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性、入手容易性等の点から、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、2-ヨードパーフルオロプロパンを用いるのが好ましい。
【0256】
また、連鎖移動剤としては、たとえば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、コハク酸ジメチルなどのエステル類のほか、イソペンタン、メタン、エタン、プロパン、メタノール、イソプロパノール、アセトン、各種メルカプタン、四塩化炭素などの各種ハロゲン化炭化水素、シクロヘキサンなどがあげられる。
【0257】
連鎖移動剤の添加量は、供給されるパーフルオロモノマー全量に対して、通常、1~50,000質量ppmであり、好ましくは1~20,000質量ppmである。
【0258】
連鎖移動剤は、重合開始前に一括して反応容器中に添加してもよいし、重合開始後に一括して添加してもよいし、重合中に複数回に分割して添加してもよいし、また、重合中に連続的に添加してもよい。
【0259】
フルオロモノマーとしてヨウ素原子を有するフルオロモノマーを使用する場合、および/または、連鎖移動剤としてヨウ素化合物を使用する場合、パーフルオロエラストマーをパーオキサイド架橋させることができ、機械特性に優れたパーフルオロエラストマーの架橋された弾性体が得られる点で、得られるパーフルオロエラストマーのヨウ素含有量は、好ましくは0.02~5.0質量%であり、より好ましくは0.05~3.0質量%であり、さらに好ましくは0.1~2.0質量%である。
【0260】
本開示の製造方法において、重合体(1)に加え、各化合物を安定化するため添加剤を使用することができる。上記添加剤としては、緩衝剤、pH調整剤、安定化助剤、分散安定剤などが挙げられる。
【0261】
上記水性媒体は、重合を行わせる反応媒体であって、水を含む液体を意味する。上記水性媒体は、水を含むものであれば特に限定されず、水と、たとえば、アルコール、エーテル、ケトンなどのフッ素非含有有機溶媒、および/または、沸点が40℃以下であるフッ素含有有機溶媒とを含むものであってもよい。
【0262】
本開示の製造方法において、pH調整剤の存在下に重合を行ってもよい。pH調整剤の存在下に重合を行うことにより、重合槽へのパーフルオロエラストマーの付着を一層抑制しながら、十分な重合速度で十分な数のパーフルオロエラストマー粒子を発生させることができる。pH調整剤は、重合開始前に添加してもよいし、重合開始後に添加してもよい。
【0263】
pH調整剤としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸アンモニウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸アンモニウム等を用いることができる。
【0264】
上記重合において、通常、重合温度は、5~120℃であり、重合圧力は、0.05~10MPaGである。重合温度、重合圧力は、使用するモノマーの種類、目的とするパーフルオロエラストマーの分子量、反応速度によって適宜決定される。
【0265】
本開示の製造方法は、重合体(1)および水性媒体の存在下に、パーフルオロモノマーを重合することから、重合槽へのポリマー(パーフルオロエラストマー)の付着を抑制することができる。重合槽へのポリマー付着率としては、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下であり、最も好ましくは1質量%以下である。
【0266】
ポリマー付着率は、重合終了後に重合槽に付着したポリマー付着物の質量の、重合終了後のポリマー(パーフルオロエラストマー)の総量に対する比率(重合槽への付着率)である。ポリマー付着物には、重合終了後に水性分散液を重合槽から抜き出した後に、重合槽内壁や撹拌翼などの重合槽内部に付着しているポリマーと、凝集により水性分散液から遊離し、水性分散液中に分散せずに、浮遊または沈殿しているポリマーとが含まれる。ポリマー付着物の質量は、ポリマー付着物に含まれる水分を120℃で乾燥し除去した後の質量である。
ポリマー付着率(質量%)=ポリマー付着物の質量/得られたポリマー(付着物込み)の質量×100
得られたポリマーの質量=水性分散液の質量×水性分散液の固形分濃度(質量%)/100+ポリマー付着物の質量
【0267】
本開示の製造方法においては、水性媒体中でパーフルオロモノマーの重合を行うことにより、パーフルオロエラストマーの水性分散液を得る。パーフルオロモノマーは、好ましくは親水基を含有しない。本開示の製造方法により得られるフルオロポリマーは、部分フッ素化エラストマーではなく、パーフルオロエラストマーである。
【0268】
パーフルオロモノマーとしては、
テトラフルオロエチレン〔TFE〕、
ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、
一般式(13):CF=CF-ORf13
(式中、Rf13は、炭素数1~8のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(14):CF=CFOCFORf14
(式中、Rf14は炭素数1~6の直鎖状または分岐鎖状パーフルオロアルキル基、炭素数5~6の環式パーフルオロアルキル基、1~3個の酸素原子を含む炭素数2~6の直鎖状または分岐鎖状パーフルオロオキシアルキル基である)で表されるフルオロモノマー、および、
一般式(15):CF=CFO(CFCF(Y15)O)(CF
(式中、Y15はフッ素原子またはトリフルオロメチル基を表す。mは1~4の整数である。nは1~4の整数である。)で表されるフルオロモノマー
からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0269】
また、パーフルオロモノマーの重合においては、パーフルオロモノマーとともに、架橋部位を与えるモノマーを重合させてもよい。
【0270】
架橋部位を与えるモノマーとしては、
一般式(16):CX =CXRf15
(式中、X、Xは、それぞれ独立に、H、Fまたは炭素数1~5のアルキル基であり、Rf15は1個以上のエーテル結合性酸素原子を有していてもよく、芳香環を有していてもよい、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基またはオキシアルキレン基であり、Xはヨウ素原子、臭素原子、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、水酸基、ビニル基、アジド基、スルホニルアジド基、カルボニルアジド基またはアルキン基である)で表されるモノマーが挙げられる。アルキン基は、エチニル基であってよい。
【0271】
架橋部位を与えるモノマーとしては、なかでも、
一般式(17):CX16 =CX16-Rf16CHR1617
(式中、X16は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子またはCH、Rf16は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基またはパーフルオロ(ポリ)オキシアルキレン基、R16は、水素原子またはCH、X17は、ヨウ素原子または臭素原子である)で表されるフルオロモノマー、
一般式(18):CX16 =CX16-Rf1717
(式中、X16は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子またはCH、Rf17は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基またはパーフルオロ(ポリ)オキシアルキレン基、X17は、ヨウ素原子または臭素原子である)で表されるフルオロモノマー、
一般式(19):CF=CFO(CFCF(CF)O)(CF-X18
(式中、mは0~5の整数、nは1~3の整数、X18は、シアノ基、アジド基、スルホニルアジド基、カルボニルアジド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキン基、ヨウ素原子、臭素原子、または、CHIである)で表されるフルオロモノマー、
一般式(20):CH=CFCFO(CF(CF)CFO)(CF(CF))-X19
(式中、mは0~5の整数、nは1~3の整数、X19は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、またはCHOHである)で表されるフルオロモノマー、および、
一般式(21):CR20 =CR20-Z20-CR20=CR20
(式中、R20は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~5のアルキル基である。Z20は、直鎖状または分岐鎖状で酸素原子を有していてもよい、炭素数1~18のアルキレン基、炭素数3~18のシクロアルキレン基、少なくとも部分的にフッ素化している炭素数1~10のアルキレン基もしくはオキシアルキレン基、または、
-(Q)-CFO-(CFCFO)(CFO)-CF-(Q)
(式中、Qはアルキレン基またはオキシアルキレン基である。pは0または1である。m/nが0.2~5である。)で表され、分子量が500~10000である(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である。)で表されるモノマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0272】
16は、フッ素原子であることが好ましい。Rf16およびRf17は炭素数が1~5のパーフルオロアルキレン基であることが好ましい。R16は、水素原子であることが好ましい。X18は、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、または、-CHIであることが好ましい。X19は、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、またはCHOHであることが好ましい。
【0273】
架橋部位を与えるモノマーとしては、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCOOH、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCHI、CF=CFOCFCFCHI、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CN、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOH、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CHOH、CH=CHCFCFI、CH=CH(CFCH=CH、CH=CH(CFCH=CH、および、CF=CFO(CFCNからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCNおよびCF=CFOCFCFCHIからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0274】
パーフルオロモノマー、または、パーフルオロモノマーおよび架橋部位を与えるモノマーの重合を行うことにより、パーフルオロエラストマーを得ることができる。
【0275】
パーフルオロエラストマーとしては、TFE単位を含むパーフルオロエラストマー、たとえばTFE/一般式(13)、(14)または(15)で表されるフルオロモノマー共重合体、および、TFE/一般式(13)、(14)または(15)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0276】
その組成は、TFE/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)共重合体の場合、好ましくは、45~90/10~55(モル%)であり、より好ましくは55~80/20~45であり、さらに好ましくは55~70/30~45、最も好ましくは56~69.5/30.5~44である。
【0277】
TFE/PMVE/架橋部位を与えるモノマー共重合体の場合、好ましくは45~89.9/10~54.9/0.01~4(モル%)であり、より好ましくは55~77.9/20~49.9/0.1~3.5であり、さらに好ましくは55~69.8/30~44.8/0.2~3、最も好ましくは55.3~69.5/30.3~44.5/0.2~2.8である。
【0278】
TFE/炭素数が4~12の一般式(13)、(14)または(15)で表されるフルオロモノマー共重合体の場合、好ましくは50~90/10~50(モル%)であり、より好ましくは60~88/12~40であり、さらに好ましくは65~85/15~35、最も好ましくは66~84/16~34である。
【0279】
TFE/炭素数が4~12の一般式(13)、(14)または(15)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体の場合、好ましくは50~89.9/10~49.9/0.01~4(モル%)であり、より好ましくは60~87.9/12~39.9/0.1~3.5であり、さらに好ましくは65~84.8/15~34.8/0.2~3、最も好ましくは66~84.3/15.5~33.8/0.2~2.8である。
これらの組成の範囲を外れると、ゴム弾性体としての性質が失われ、樹脂に近い性質となる傾向がある。
【0280】
パーフルオロエラストマーとしては、TFE/一般式(15)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体、TFE/一般式(15)で表されるフルオロモノマー共重合体、TFE/一般式(13)で表されるフルオロモノマー共重合体、および、TFE/一般式(13)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0281】
パーフルオロエラストマーとしては、国際公開第97/24381号、特公昭61-57324号公報、特公平4-81608号公報、特公平5-13961号公報等に記載されているパーフルオロエラストマーも挙げることができる。
【0282】
パーフルオロエラストマーは、高温における圧縮永久歪み特性に優れる点から、ガラス転移温度が-70℃以上であることが好ましく、-60℃以上であることがより好ましく、-50℃以上であることがさらに好ましい。また、耐寒性が良好である点から、5℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、-3℃以下であることがさらに好ましい。
【0283】
上記ガラス転移温度は、示差走査熱量計(メトラー・トレド社製、DSC822e)を用い、試料10mgを10℃/minで昇温することによりDSC曲線を得て、DSC曲線の二次転移前後のベースラインの延長線と、DSC曲線の変曲点における接線との2つの交点の中点を示す温度として求めることができる。
【0284】
パーフルオロエラストマーは、耐熱性が良好な点で、170℃におけるムーニー粘度ML(1+20)が30以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、50以上であることがさらに好ましい。また、加工性が良好な点で、150以下であることが好ましく、120以下であることがより好ましく、110以下であることがさらに好ましい。
【0285】
パーフルオロエラストマーは、耐熱性が良好な点で、140℃におけるムーニー粘度ML(1+20)が30以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、50以上であることがさらに好ましい。また、加工性が良好な点で、180以下であることが好ましく、150以下であることがより好ましく、110以下であることがさらに好ましい。
【0286】
パーフルオロエラストマーは、耐熱性が良好な点で、100℃におけるムーニー粘度ML(1+10)が10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましく、30以上であることがさらに好ましい。また、加工性が良好な点で、120以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、80以下であることがさらに好ましい。
【0287】
上記ムーニー粘度は、ALPHA TECHNOLOGIES社製 ムーニー粘度計MV2000E型を用いて、170℃または140℃、100℃において、JIS K6300に従い測定することができる。
【0288】
本開示の製造方法によれば、パーフルオロエラストマーの水性分散液が得られる。得られるパーフルオロエラストマー水性分散液の固形分濃度(パーフルオロエラストマーの含有量)は、重合が終了した時点で、好ましくは10~50質量%であり、より好ましくは15~40質量%であり、さらに好ましくは20~30質量%である。
【0289】
パーフルオロエラストマー水性分散液の固形分濃度(パーフルオロエラストマーの含有量)は、水性分散液1gを150℃、60分の条件で乾燥させ、加熱残分の質量を測定して、水性分散液の質量に対する加熱残分の質量の割合を算出することにより、特定することができる。
【0290】
パーフルオロエラストマーの水性分散液は、パーフルオロエラストマー粒子を含むものであってもよい。パーフルオロエラストマー粒子の平均粒子径としては、好ましくは0.1~700nmであり、より好ましくは1.0~400nmであり、さらに好ましくは10~200nmである。パーフルオロエラストマー粒子の平均粒子径は、キュムラント平均径であり、動的光散乱法により測定できる。
【0291】
パーフルオロエラストマーの水性分散液に含まれるパーフルオロエラストマー粒子の粒子数としては、好ましくは1.0×1014個/cc以上であり、より好ましくは5.0×1014個/cc以上であり、さらに好ましくは1.0×1015個/cc以上である。上記粒子数(ポリマー粒子の個数)は下記式に従い算出することができる。
【0292】
【数1】
上記式で得られるパーフルオロエラストマー粒子の個数は水1ccあたりの個数である。比重はパーフルオロエラストマーの比重である。パーフルオロエラストマーの比重は、JIS Z 8807:2012に従い求めることができる。
【0293】
パーフルオロエラストマーの水性分散液に対して、凝析、加熱などの処理を行ってもよい。
【0294】
上記凝析は、凝析剤を、水性分散液に添加することにより、行うことができる。凝析剤としては、たとえば、塩酸、硝酸、フッ酸、硫酸、トリフルオロ酢酸などの酸などがあげられるが、好ましくは硝酸および塩酸からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0295】
凝析されたパーフルオロエラストマーを水で洗浄し、パーフルオロエラストマー内に存在する少量の緩衝液や塩等の不純物を除去した後、洗浄したパーフルオロエラストマーを乾燥させてもよい。乾燥温度は、好ましくは40~200℃であり、より好ましくは50~180℃であり、さらに好ましくは70~150℃である。
【0296】
凝析後に得られるパーフルオロエラストマーの形態は、特に限定されないが、ガム(gum)、クラム(crumb)、粉末、ペレットなどであってよく、ガムまたはクラムであることが好ましい。ガム(gum)は、パーフルオロエラストマーからなる粒状の小さな塊であり、クラム(crumb)とは、パーフルオロエラストマーが、室温でガムとして小粒状の形を保つことができず互いに融着した結果、不定形な塊状の形態となったものである。ガムまたはクラムは、好適には、本開示の製造方法により得られる水性分散液から従来公知の方法で凝析、乾燥等することにより得られる。
【0297】
水性分散液中のパーフルオロエラストマーを、金属元素を有しない酸を用いて凝析させ、凝析したパーフルオロエラストマーを、金属元素の含有量が低減された液状媒体で洗浄してもよい。さらに、洗浄されたパーフルオロエラストマーを乾燥してもよい。液状媒体としては、水が好ましく、超純水がさらに好ましい。液状媒体の金属含有量は、好ましくは10質量ppm以下であり、より好ましくは2質量ppm以下であり、さらに好ましくは1質量ppm以下であり、特に好ましくは0.5質量%以下である。また、国際公開第2018/225586号に記載の製造方法を用いてもよい。このような製造方法により、金属含有量が低減されたパーフルオロエラストマーが製造でき、半導体製造装置の部品に適するパーフルオロエラストマーが製造できる。パーフルオロエラストマー中の金属含有量は、好ましくは10質量ppm以下であり、より好ましくは7質量ppm以下であり、さらに好ましくは5質量ppm以下である。パーフルオロエラストマー中の金属含有量は、後述する組成物中の金属含有量と同様の方法により測定できる。
【0298】
上記凝析、または、洗浄により発生した排水、および/または、乾燥で発生するオフガスから、重合体(1)、重合体(1)から副生する重合体(1)の分解物や副生成物、残留モノマーなどを回収し、精製することにより、重合体(1)、重合体(1)から副生する重合体(1)の分解物や副生成物、残留モノマーなどを再利用してもよい。上記回収、および、精製を行う方法としては特に限定されるものではないが、公知の方法により行うことができる。たとえば、特表2011-520020号公報に記載の方法により、実施可能である。
【0299】
上記凝析により発生した排水、洗浄により発生した排水、および、乾燥で発生するオフガスから、重合体(1)、重合体(1)から副生する重合体(1)の分解物や副生成物、残留モノマーなどを回収し、精製する方法としては特に限定されるものではないが、従来公知の方法を採用することができ、たとえば、米国特許出願公開第2007/0015937号明細書、米国特許出願公開第2007/0025902号明細書、米国特許出願公開第2007/0027251号明細書に記載の方法が挙げられ、具体的には以下の方法が挙げられる。
【0300】
上記排水から重合体(1)、重合体(1)から副生する重合体(1)の分解物や副生成物、残留モノマーなどを回収する方法としては、排水にイオン交換樹脂、活性炭、シリカゲル、クレイ、ゼオライトなどの吸着粒子を接触させて重合体(1)などを吸着させた後、排水と吸着粒子とを分離する方法が挙げられる。重合体(1)などを吸着した吸着粒子を焼却すれば、重合体(1)などの環境への放出を防ぐことができる。
【0301】
また、重合体(1)などを吸着したイオン交換樹脂粒子から公知の方法により重合体(1)などを脱離・溶出させて回収することもできる。たとえば、イオン交換樹脂粒子が陰イオン交換樹脂粒子である場合、鉱酸を陰イオン交換樹脂に接触させるにより重合体(1)などを溶出させることができる。続いて得られる溶出液に水溶性有機溶媒を添加すると通常2相に分離するので、重合体(1)などを含む下相を回収して中和することにより、重合体(1)などを回収できる。上記水溶性有機溶媒としては、アルコール、ケトン、エーテルなどの極性溶媒が挙げられる。
【0302】
重合体(1)などをイオン交換樹脂粒子から回収する別の方法としては、アンモニウム塩と水溶性有機溶媒を使用する方法、アルコールと所望により酸とを使用する方法が挙げられる。後者の方法では重合体(1)などのエステル誘導体が生成するので、蒸留することによりアルコールと容易に分離できる。
【0303】
上記排水にパーフルオロエラストマー粒子や他の固形分が含まれる場合、排水と吸着粒子とを接触させる前にこれらを除去しておくことが好ましい。パーフルオロエラストマー粒子や他の固形分を除去する方法としては、アルミニウム塩などを添加することによりこれらを沈殿させた後、排水と沈殿物とを分離させる方法、電気凝固法などが挙げられる。また、機械的な方法により除去してもよく、たとえば、交差流ろ過法、深層ろ過法、プレコートろ過法が挙げられる。
【0304】
上記排水中の未凝集の上記パーフルオロエラストマー濃度は、生産性の観点から低いことが好ましく、1.0質量%未満がより好ましく、0.5質量%未満が特に好ましい。
【0305】
上記オフガスから重合体(1)などを回収する方法としては、スクラバーを使用して、脱イオン水、アルカリ水溶液、グリコールエーテル溶媒などの有機溶媒などと接触させて、重合体(1)などを含むスクラバー溶液を得る方法が挙げられる。アルカリ水溶液として高濃度アルカリ水溶液を使用すると、重合体(1)などが相分離した状態でスクラバー溶液が回収できるので、上記重合体(1)などの回収と再利用が容易である。アルカリ化合物としてはアルカリ金属水酸化物、第4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0306】
重合体(1)などを含むスクラバー溶液を逆浸透膜などを使用して濃縮してもよい。濃縮したスクラバー溶液は通常フッ素イオンを含むが、濃縮後さらにアルミナを添加して該フッ素イオンを除去することにより、重合体(1)などの再利用を容易にすることもできる。また、スクラバー溶液に吸着粒子を接触させて重合体(1)などを吸着させて、上述した方法により重合体(1)などを回収してもよい。
【0307】
上記のいずれかの方法により回収した重合体(1)などは、パーフルオロエラストマーの製造に再利用することができる。
【0308】
次に、本開示の架橋性組成物の製造方法を具体的に説明する。
【0309】
本開示の架橋性組成物の製造方法においては、上述した製造方法によりパーフルオロエラストマーの水性分散液を得た後、得られた水性分散液、または、水性分散液からパーフルオロエラストマーを回収することにより得られたパーフルオロエラストマーと、無機窒化物、有機スズ化合物、アンモニアを発生させる化合物および架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種と、混合することにより架橋性組成物を得る。本開示の製造方法により得られる架橋性組成物からは、架橋物を容易に得ることができる。
【0310】
無機窒化物としては、特に限定されるものではないが、窒化ケイ素(Si)、窒化リチウム、窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化バナジウム、窒化ジルコニウムなどがあげられる。これらの中でも、ナノサイズの微粒子が供給可能であることから、窒化ケイ素であることが好ましい。
【0311】
有機スズ化合物としては、テトラフェニルスズ、トリフェニルスズなどがあげられる。
【0312】
アンモニアを発生させる化合物としては、40~330℃でアンモニアを発生させる化合物が好ましい。
【0313】
アンモニア発生化合物としては、尿素またはその誘導体、アンモニウム塩が好ましく、尿素またはアンモニウム塩がより好ましく、尿素がさらに好ましい。アンモニウム塩としては有機アンモニウム塩でも無機アンモニウム塩でもよい。また、アンモニア発生化合物としては、微量の水と反応して、アンモニアを発生させるものであってもよい。
【0314】
尿素の誘導体としては、ビウレア、チオウレア、尿素塩酸塩、ビウレットなどがあげられる。
【0315】
有機アンモニウム塩としては、特開平9-111081号公報、国際公開第00/09603号、国際公開第98/23675号に記載された化合物、たとえばパーフルオロヘキサン酸アンモニウム、パーフルオロオクタン酸アンモニウムなどのポリフルオロカルボン酸のアンモニウム塩;パーフルオロヘキサンスルホン酸アンモニウム、パーフルオロオクタンスルホン酸アンモニウムなどのポリフルオロスルホン酸のアンモニウム塩;パーフルオロヘキサンリン酸アンモニウム、パーフルオロオクタンリン酸アンモニウムなどのポリフルオロアルキル基含有リン酸またはホスホン酸のアンモニウム塩;安息香酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム、フタル酸アンモニウムなどの非フッ素系のカルボン酸またはスルホン酸のアンモニウム塩が挙げられる。
【0316】
無機アンモニウム塩としては、特開平9-111081号公報に記載された化合物、たとえば硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0317】
また、アンモニア発生化合物としては、アセトアルデヒドアンモニア、ヘキサメチレンテトラミン、ホルムアミジン、ホルムアミジン塩酸塩、ホルムアミジン酢酸塩、t-ブチルカルバメート、ベンジルカルバメート、HCFCFCH(CH)OCONH、フタルアミドなども挙げられる。
【0318】
架橋剤としては、パーオキサイド架橋、ポリオール架橋、ポリアミン架橋、トリアジン架橋、オキサゾール架橋、イミダゾール架橋、および、チアゾール架橋において用いる架橋剤が挙げられる。
【0319】
パーオキサイド架橋において用いる架橋剤は、熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生し得る有機過酸化物であればよく、具体的には、たとえば1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド(パーブチルD)、t-ブチルクミルパーオキサイド(パーブチルC)、ジクミルパーオキサイド(パークミルD、パークミルD-40、パークミルD-40MB(T))、α,α-ビス(t-ブチルパーオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25B、パーヘキサ25B-40)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキシン-3(パーヘキシン25B、パーヘキシン25B-40)、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25Z)、t-ブチルパーオキシマレイン酸(t-ブチルMA)、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(パーブチルI-75)、メチルエチルケトンパーオキサイド(パーメックD(DR)、パーメックH(HR、HY)、パーメックN(NR、NY)、パーメックS(SR)、パーメックF(FR)、パーメックG(GR、GY))、シクロヘキサノンパーオキサイド(パーヘキサH)、アセチルアセトンパーオキサイド(パーキュアーAH、AL)、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(パーヘキサTMH)、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(パーヘキサHC)、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン(パーヘキサMC)、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(パーヘキサC-80(S)、パーヘキサC-75(EB)、パーヘキサC(C)、パーヘキサC-40、パーヘキサC-40MB(S))、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン(パーヘキサ22)、4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ペンタン酸ブチル(パーヘキサV、パーヘキサV-40(F))、2,2-ジ(4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン(パーテトラA)、p-メンタンヒドロパーオキサイド(パーメンタH)、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド(パークミルP)、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド(パーオクタH)、クメンヒドロパーオキサイド(パークミルH-80)、t-ブチルヒドロパーオキサイド(パーブチルH-69)、ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(パーブチルP、パーブチルP-40、ペロキシモンF-40、パーブチルP-40MB(K))、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド(パーヘキシルD)、ジイソブチリルパーオキサイド(パーロイルIB)、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド(パーロイル355(S))、ジラウロイルパーオキサイド(パーロイルL)、ジコハク酸パーオキサイド(パーロイルSA)、ジ-(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、及び、ジベンゾイルパーオキサイドの混合物(ナイパーBMT-K40、ナイパーBMT-M)、ジベンゾイルパーオキサイド(ナイパーBW、ナイパーBO、ナイパーFF、ナイパーBS、ナイパーE、ナイパーNS)、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド(ナイパーPMB)、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート(パーロイルNPP-50M)、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(パーロイルIPP-50、パーロイルIPP-27)、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(パーロイルTCP)、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(パーロイルOPP)、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート(パーロイルSBP)、クミルパーオキシネオデカノエート(パークミルND、パークミルND-50E)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(パーオクタND、パーオクタND-50E)、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート(パーヘキシルND、パーヘキシルND-50E)、t-ブチルパーオキシネオデカノエート(パーブチルND、パーブチルND-50E)、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート(パーブチルNHP)、t-ヘキシルパーオキシピバレート(パーヘキシルPV、パーヘキシルPV-50E)、t-ブチルパーオキシピバレート(パーブチルPV、パーブチルPV-40E)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(パーオクタO)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25O)、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(パーヘキシルO、パーキュアーHO(N))、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(パーブチルO、パーキュアーO)、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(パーヘキシルI)、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート(パーブチル355)、t-ブチルパーオキシラウレート(パーブチルL)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(パーブチルE)、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート(パーヘキシルZ)、t-ブチルパーオキシアセテート(パーブチルA)、t-ブチルパーオキシ-3-メチルベンゾエート及びt-ブチルパーオキシベンゾエートの混合物(パーブチルZT)、t-ブチルパーオキシベンゾエート(パーブチルZ)、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート(ペロマーAC)、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(BTTB-25)、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン(ノフマーBC-90)などをあげることができる。なかでも、好ましいものは、ジアルキルタイプのものである。さらに、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンが特に好ましい。一般に活性-O-O-の量、分解温度などを考慮して有機過酸化物の種類並びに使用量が選ばれる。
【0320】
また、この場合に用いることのできる架橋助剤としては、パーオキシラジカルとポリマーラジカルに対して反応活性を有する化合物であればよく、たとえば-CH=CH、-CHCH=CH、-CF=CF、-C(CF)=CF、-C(CH)=CF、-CF=CF(CF)、-CF=CF(CH)、-C(C)=CF、-CF=CF(C)、-CH=CF、-CF=CHF、-C(CF)=CHF、-CF=CH(CF)、-CH=CF(CF)などの官能基を有する多官能性化合物があげられる(各式中の「C」はフェニル基を表す)。具体的には、たとえばトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N’-n-フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5-トリス(2,3,3-トリフルオロ-2-プロペニル)-1,3,5-トリアジン2,4,6-トリオン)、トリス(ジアリルアミン)-S-トリアジン、亜リン酸トリアリル、N,N-ジアリルアクリルアミド、1,6-ジビニルドデカフルオロヘキサンなどがあげられる。
【0321】
また、パーオキサイド架橋剤とともに用いる架橋助剤としては、一般式(31):
【化11】
(式中、6つのR31は、それぞれ独立に、H、ハロゲン原子、または、エーテル結合が挿入されていてもよい、任意選択的にハロゲン化された1~5の炭素原子を有する基であり、Z31は、ヘテロ原子を任意選択的に含有する、線状若しくは分岐状の炭素数1~18の任意選択的にハロゲン化されたアルキレン基、シクロアルキレン基、または、(パー)フルオロポリオキシアルキレン基)で表される化合物を挙げることもできる。
【0322】
一般式(31)で表される化合物としては、一般式(32):
【化12】
(式中、jは、2~10の整数、好ましくは4~8の整数であり、4つのR32は、それぞれ独立に、H、Fまたは炭素数1~5のアルキル基若しくは(パー)フルオロアルキル基である)で表される化合物、一般式(33):
【化13】
(式中、Y31は、それぞれ独立して、F、ClまたはHであり、Y32は、それぞれ独立して、F、Cl、HまたはOR33(ここで、R33は、部分的に、実質的にまたは完全にフッ化若しくは塩素化されていてもよい、分岐若しくは直鎖のアルキル基である)であり、Z33は、エーテル結合が挿入されていてもよい、任意選択的にフッ素化された、2~10個の炭素原子を有する二価の基であり、好ましくはZ33は、mが3~5の整数である、-(CF-基であり、一般式(33)で表される化合物は、好ましくはFC=CF-O-(CF-O-CF=CFである)で表される化合物、一般式(34):
【化14】
(式中、Y31、Y32およびZ33は、上記のとおりであり、R34は、それぞれ独立に、H、Fまたは炭素数1~5のアルキル基若しくは(パー)フルオロアルキル基である)で表される化合物などを挙げることができる。
【0323】
架橋剤、または、パーオキサイド架橋剤とともに用いる架橋助剤としては、一般式(35):
【化15】
【0324】
(式中、R35~R37は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素化アルキル基、または、置換もしくは非置換のアリール基であり、R35~R37の少なくとも1つは、フッ素原子またはフッ素原子を含む基である。mは1~5の整数である。mが2以上である場合、m個のR35~R37は、それぞれ、同じであっても、異なっていてもよい。ベンゼン環の水素原子は、置換されていてもよい。)で表される構造を、少なくとも1つ有する化合物を挙げることもできる。mが1の場合は、該構造を2以上有することが好ましい。
【0325】
一般式(35)で表される構造を有する化合物としては、一般式(36):
【化16】
【0326】
(式中、R35~R37は、上記のとおり。pは0~2の整数であり、nは2~6の整数である。)で表される化合物、一般式(37):
【化17】
【0327】
(式中、R35~R37は、上記のとおり。R38は、単結合手、-SO-、-O-、-S-、-CO-、ヘテロ原子含有基、置換もしくは非置換のアルキレン基、置換もしくは非置換のシクロアルキレン基または置換もしくは非置換のアリーレン基である。mは1~5の整数である。これらの基は一部又は全部がフッ素化されていてもよい。)で表される化合物などを挙げることができる。
【0328】
ヘテロ原子含有基としては、ヘテロ原子を含有する2価の基であれば、特に限定されない。ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ホウ素原子、リン原子が例示できる。
【0329】
ポリオール架橋に用いる架橋剤としては、ビスフェノールA、ビスフェノールAFなどの多価アルコール化合物があげられる。
【0330】
ポリアミン架橋に用いる架橋剤としては、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、N,N’-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミン、4,4’-ビス(アミノシクロヘキシル)メタンカルバメートなどの多価アミン化合物があげられる。
【0331】
トリアジン架橋に用いる架橋剤としては、テトラフェニルスズ、トリフェニルスズなどの有機スズ化合物があげられる。
【0332】
オキサゾール架橋、イミダゾール架橋、チアゾール架橋に使用する架橋剤としては、たとえば一般式(41):
【0333】
【化18】
【0334】
(式中、R41は-SO-、-O-、-CO-、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数1~10のパーフルオロアルキレン基または単結合手、または、
【0335】
【化19】
【0336】
で示される基であり、R42およびR43は一方が-NHであり他方が-NHR44、-NH、-OHまたは-SHであり、R44は水素原子、フッ素原子または一価の有機基であり、好ましくはR42が-NHでありR43が-NHR44である。炭素数1~6のアルキレン基の好ましい具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などをあげることができ、炭素数1~10のパーフルオロアルキレン基としては、
【0337】
【化20】
【0338】
などがあげられる。なお、これらの化合物は、特公平2-59177号公報、特開平8-120146号公報などで、ビスジアミノフェニル化合物の例示として知られているものである)で表されるビスジアミノフェニル系架橋剤、ビスアミノフェノール系架橋剤、ビスアミノチオフェノール系架橋剤、一般式(42):
【0339】
【化21】
(R41は、上記のとおり、R45は、それぞれ独立に、以下の基のいずれかである。)
【化22】
【0340】
で表されるビスアミドラゾン系架橋剤、一般式(43):
【0341】
【化23】
【0342】
(式中、Rf41は炭素数1~10のパーフルオロアルキレン基である)で表されるアミドラゾン系架橋剤、または一般式(44):
【0343】
【化24】
【0344】
(式中、nは1~10の整数である)で表されるビスアミドオキシム系架橋剤、一般式(45):HN=CR4546
(式中、R45は、H、NH、およびNHR47からなる群から選択され、R46は、Ph、SOH、NR4849、2-ピリジン、およびCHCONHからなる群から選択され、R47は、Ph、NH、およびCNからなる群から選択され、R48は、H、NHPh、CHCONH、炭素数1~8の直鎖アルキル基、および炭素数1~8の分岐鎖アルキル基からなる群から選択され、かつ、R49は、Ph、COOC(CH、NH、CHCOOH、CSNH、CNHNH Cl、p-フェニルCN、
【化25】
および、COPhからなる群から選択される)で表される化合物などがあげられる。これらのビスアミノフェノール系架橋剤、ビスアミノチオフェノール系架橋剤またはビスジアミノフェニル系架橋剤などは従来シアノ基を架橋点とする架橋系に使用していたものであるが、カルボキシル基およびアルコキシカルボニル基とも反応し、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環を形成し、架橋物を与える。
【0345】
また、架橋剤としては、一般式(46):X41-(CH-R50-(CH-X41(式中、X41は、それぞれ独立に、アルキン基、シアノ基またはY41 (Y41は、SO、SO、CまたはCOであり、pは0または1である)であり、n、mは独立して1~4の整数であり、R50は、
i)炭素数3~10のフルオロアルキレン基、
ii)炭素数3~10のフルオロアルコキシレン基、
iii)置換アリーレン基、
iv)フッ化ビニリデンおよびパーフルオロ(メチルビニルエーテル)の共重合単位を含むオリゴマー、
v)フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンの共重合単位を含むオリゴマー、
vi)テトラフルオロエチレンおよびパーフルオロ(メチルビニルエーテル)の共重合単位を含むオリゴマー、および、
vii)テトラフルオロエチレンおよび炭化水素オレフィンの共重合単位を含むオリゴマーからなる群から選択される)で表される架橋剤を挙げることもできる。この架橋剤は、シアノ基、アジド基、スルホニルアジド基、カルボニルアジド基またはアルキン基を有するパーフルオロエラストマーとともに用いることが好ましい。たとえば、パーフルオロエラストマーのシアノ基と、架橋剤のアジド基とが反応して、テトラゾール環を形成し、架橋物を与える。
【0346】
とくに好ましい架橋剤としては、複数個の3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル基、もしくは3-アミノ-4-メルカプトフェニル基を有する化合物、または一般式(47):
【0347】
【化26】
【0348】
(式中、R41、R42およびR43は上記のとおり)で表される化合物があげられ、具体的には、たとえば2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(一般名:ビス(アミノフェノール)AF)、2,2-ビス(3-アミノ-4-メルカプトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、テトラアミノベンゼン、ビス-3,4-ジアミノフェニルメタン、ビス-3,4-ジアミノフェニルエーテル、2,2-ビス(3,4-ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-メチルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-エチルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-プロピルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-パーフルオロフェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-ベンジルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどである。
【0349】
これらの中でも、架橋剤としては耐熱性、耐スチーム性、耐アミン性、良好な架橋性の点から、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(AFTA-Ph)が好ましい。
【0350】
上記架橋剤の含有量は、パーフルオロエラストマー100質量部に対して、好ましくは0.05~10質量部であり、より好ましくは0.5~5質量部である。
【0351】
架橋性組成物は、充填剤を含有してもよい。
【0352】
充填剤としては、有機物フィラーがあげられ、耐熱性、耐プラズマ性(プラズマ照射時の低パーティクル性、低重量減少率)の点から有機顔料;ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどのイミド構造を有するイミド系フィラー;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)などのケトン系エンジニアリングプラスチックが好ましく、特に有機顔料が好ましい。
【0353】
有機顔料としては、縮合アゾ系顔料、イソインドリノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アンスラキノン系顔料などがあげられるが、それらの中でも、耐熱性、耐薬品性に優れ、架橋物特性に与える影響が少ない点から、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アンスラキノン系顔料が好ましく、キナクリドン系顔料がより好ましい。
【0354】
さらに、一般的な充填剤を含有していてもよい。一般的な充填剤としては、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシベンゾエート、ポリテトラフルオロエチレン粉末などのエンジニアリングプラスチック製の有機物フィラー;酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム、酸化チタンなどの金属酸化物フィラー;炭化ケイ素、炭化アルミニウムなどの金属炭化物、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどの金属窒化物フィラー;フッ化アルミニウム、フッ化カーボン、硫酸バリウム、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルクなどの無機物フィラーがあげられる。
【0355】
これらの中でも、各種プラズマの遮蔽効果の点から、カーボンブラック、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム、窒化ケイ素、ポリイミド、フッ化カーボン、炭化ケイ素が好ましい。
【0356】
また、無機物フィラー、有機物フィラーを単独で、または2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0357】
架橋性組成物における充填剤の含有量としては、パーフルオロエラストマー100質量部に対して、好ましくは0.5~100質量部であり、より好ましくは5~50質量部である。
【0358】
とくに高純度かつ非汚染性が要求されない分野では、必要に応じてパーフルオロエラストマーに配合される通常の添加物、たとえば加工助剤、可塑剤、着色剤などを配合することができ、前記のものとは異なる常用の架橋剤や架橋助剤を1種またはそれ以上配合してもよい。
【0359】
架橋性組成物は、有機塩基性化合物を含有してもよい。有機塩基性化合物としては、式:CH(CH17-NHのオクダデシルアミン;
式:HN-C(O)-(CH11-CH=CH-(CHCHのエルカアミド;
式:HN-C(O)-(CH-CH=CH-(CHCHのオレアミド;
式:HN-(CH-NHのヘキサメチレンジアミン
式:
【化27】
の1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン(DBU)等を挙げることができる。
【0360】
架橋性組成物は、上記の各成分を、通常のポリマー用加工機械、たとえば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いて混合することにより調製することができる。この他、密閉式混合機を用いる方法によっても調製することができる。
【0361】
また、本開示は、パーフルオロエラストマー、および、一般式(1)で表される単量体(1)に基づく重合単位(1)を含み、イオン交換容量が、1.50meq/g以上である重合体(1)を含有する組成物にも関する。
CF=CF-R-CZ-A (1)
(式中、Rは連結基であり、ZおよびZは、それぞれ独立して、FまたはCFであり、Aはアニオン性基である。)
【0362】
パーフルオロエラストマーの好適な構成は、本開示の製造方法により得られるパーフルオロエラストマーの構成と同様である。
【0363】
重合体(1)の好適な構成は、本開示の製造方法で用いる重合体(1)の構成と同様である。
【0364】
本開示の組成物の形態は、特に限定されないが、たとえば、水性分散液、ガム、クラム、粉末、ペレットなどであってよい。水性分散液とは、水性媒体を分散媒とし、パーフルオロエラストマーを分散質とする分散系である。上記水性媒体は、水を含む液体であれば特に限定されず、水に加え、たとえば、アルコール、エーテル、ケトン、パラフィンワックスなどの有機溶媒を含むものであってもよい。
【0365】
上記組成物における重合体(1)の含有量の下限値は、パーフルオロエラストマーに対して0.0001質量%が好ましく、0.001質量%がより好ましく、0.01質量%がさらに好ましく、0.1質量%が特に好ましい。上記組成物における重合体(1)の含有量の上限値は、20質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、6質量%がさらに好ましく、4質量%がさらにより好ましく、2質量%以下が最も好ましい。
【0366】
上記組成物における重合体(1)の含有量は、たとえば、固体19F-MAS NMR測定により求めることができる。重合体(1)の含有量の測定方法としては、国際公開第2014/099453号、国際公開第2010/075497、国際公開第2010/075496号、国際公開第2011/008381、国際公開第2009/055521号、国際公開第1987/007619号、特開昭61-293476号公報、国際公開第2010/075494号、国際公開第2010/075359号、国際公開第2006/119224号、国際公開第2013/085864号、国際公開第2012/082707号、国際公開第2012/082703号、国際公開第2012/082454号、国際公開第2012/082451号、国際公開第2006/135825号、国際公開第2004/067588号、国際公開第2009/068528号、特開2004-075978号公報、特開2001-226436号公報、国際公開第1992/017635号、国際公開第2014/069165号、特開平11-181009号公報などに記載のそれぞれの重合体の測定方法が記載されている。具体的な装置としてはBruker社製 AVANCE III HD400や、Bruker社製 AVANCE300などを用いることができる。回転数は装置の共鳴周波数に応じて設定し、スピニングサイドバンドがパーフルオロエラストマーや重合体(1)の含有量計算に使用するピークに重ならないように設定する。
【0367】
また、上記組成物における重合体(1)の含有量を、次の方法により測定してもよい。上記組成物を、パーフルオロエラストマーを溶解させる溶媒と混合し、得られた混合液から重合体(1)を抽出するために、得られた混合液に脱イオン水を加え、重合体(1)が含まれる上相(水相)を回収し、回収した上相を加熱乾燥させることにより得られた残分(重合体(1))の質量を測定して、重合体(1)の含有量を算出する方法により、測定することができる。
【0368】
パーフルオロエラストマーを溶解させる溶媒としては、水素原子の全てがハロゲン原子で置換されたパーハロ系溶剤が好ましく、特に水素原子の全てがフッ素原子で置換されたパーフルオロ系溶剤が好ましい。パーフルオロ系溶剤の具体例としては、パーフルオロトリ-n-ブチルアミン、パーフルオロトリエチルアミンなどのパーフルオロ3級アミン、パーフルオロ置換テトラヒドロフラン、パーフルオロベンゼン、フロリナートFC-77(スリーエム社製)、デムナムソルベント(ダイキン工業社製、主成分:C14)、R-318(ダイキン工業社製、主成分:CCl)、フロリナートFC-43(スリーエム社製、主成分:(CN)などがあげられるが、これらの中でも、取り扱い性の点から、パーフルオロトリ-n-ブチルアミン、フロリナートFC-77が好ましい。
【0369】
また、パーフルオロエラストマーを溶解させる溶媒としては、上記例示のものの他に、各種フッ素系溶媒が好ましく用いられ、具体例としては、パーフルオロアルカン、HFC(ハイドロフルオロカーボン)、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)などがあげられ、具体的には、HFE-7100(スリーエム社製、主成分:COCH)、HFE-7200(スリーエム社製、主成分:COC)、バートレルXF(ケマーズ社製、主成分:C10)などをあげることができる。
【0370】
本開示の組成物は、パーフルオロエラストマー、重合体(1)および水性媒体を含有する水性分散液であってもよい。水性分散液の固形分濃度の上限値は、水性分散液に対して、50質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、35質量%がさらに好ましく、30質量%が特に好ましい。水性分散液の固形分濃度の下限値は、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、15質量%がさらに好ましく、20質量%が特に好ましい。水性分散液の固形分濃度は、重合により得られる水性分散液を希釈したり、濃縮したりすることにより、調整することができる。
【0371】
水性分散液の固形分濃度とは、水性分散液に含まれる固形分の濃度である。固形分としては、パーフルオロエラストマー、重合体(1)などが挙げられる。また、水性分散液の固形分濃度は、水性分散液中のパーフルオロエラストマーおよび重合体(1)の合計含有量であってよい。水性分散液の固形分濃度は、水性分散液1gを150℃、60分の条件で乾燥させ、加熱残分の質量を測定して、水性分散液の質量に対する加熱残分の質量の割合を算出することにより、特定することができる。
【0372】
本開示の組成物は、含フッ素界面活性剤を実質的に含有しないことが好ましい。
【0373】
本開示において、「含フッ素界面活性剤を実質的に含まない」とは、パーフルオロエラストマーに対して、含フッ素界面活性剤の含有割合が10質量ppm以下であることを意味する。含フッ素界面活性剤の含有割合は、好ましくは1質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppb以下であり、さらにより好ましくは10質量ppb以下であり、尚さらに好ましくは1質量ppb以下であり、特に好ましくは、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC/MS)による測定に測定される含フッ素界面活性剤の含有割合が検出限界未満である。
【0374】
含フッ素界面活性剤の含有割合は、公知な方法で定量でき、たとえば、LC/MS分析にて定量することができる。
【0375】
まず、得られた水性分散液、粉末、ペレット、成形体、架橋物、または、ペレット、成形体もしくは架橋物を微細化することにより得られる粉砕物に、メタノールなどの有機溶剤を加えて含フッ素界面活性剤を抽出し、抽出液をLC/MS分析する。得られるLC/MSスペクトルから、分子量情報を抜出し、候補となる界面活性剤の構造式との一致を確認する。抽出方法は、ソックスレー抽出法であってよい。
【0376】
その後、確認された界面活性剤を5水準以上の濃度の水溶液を作成し、それぞれの濃度のLC/MS分析を行ない、エリア面積との検量線を作成する。
【0377】
すなわち、含フッ素界面活性剤の含有量は、たとえば、組成物にメタノールを加え、抽出を行ない、得られた抽出液をLC/MS分析することにより測定できる。
さらに抽出効率を高めるために、ソックスレー抽出、超音波処理等による処理を行ってもよい。
得られたLC/MSスペクトルから、分子量情報を抜出し、候補となる含フッ素界面活性剤の構造式との一致を確認する。
その後、確認された含フッ素界面活性剤の5水準以上の含有量の水溶液を作製し、それぞれの含有量の水溶液のLC/MS分析を行ない、含有量と、その含有量に対するエリア面積と関係をプロットし、検量線を描く。
そして、検量線を用いて、抽出液中の含フッ素界面活性剤のLC/MSクロマトグラムのエリア面積を、含フッ素界面活性剤の含有量に換算することができる。
【0378】
含フッ素界面活性剤としては、上述した本開示の製造方法において例示したものと同じである。たとえば、アニオン性基を除く部分の総炭素数が20以下のフッ素原子を含む界面活性剤であってよく、アニオン性部分の分子量が800以下のフッ素を含む界面活性剤であってよく、LogPOWが3.5以下の含フッ素界面活性剤であってよい。
【0379】
上記アニオン性含フッ素界面活性剤としては、一般式(N)で表される化合物が挙げられ、具体的には、一般式(N)で表される化合物、一般式(N)で表される化合物、一般式(N)で表される化合物、一般式(N)で表される化合物、および、一般式(N)で表される化合物が挙げられる。より具体的には、一般式(I)で表されるパーフルオロカルボン酸(I)、一般式(II)で表されるω-Hパーフルオロカルボン酸(II)、一般式(III)で表されるパーフルオロエーテルカルボン酸(III)、一般式(IV)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)、一般式(V)で表されるパーフルオロアルコキシフルオロカルボン酸(V)、一般式(VI)で表されるパーフルオロアルキルスルホン酸(VI)、一般式(VII)で表されるω-Hパーフルオロスルホン酸(VII)、一般式(VIII)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VIII)、一般式(IX)で表されるアルキルアルキレンカルボン酸(IX)、一般式(X)で表されるフルオロカルボン酸(X)、一般式(XI)で表されるアルコキシフルオロスルホン酸(XI)、一般式(XII)で表される化合物(XII)、一般式(XIII)で表される化合物(XIII)等が挙げられる。
【0380】
本開示の組成物は、金属成分をほとんど含有しないか、全く含有しないことが好ましい。組成物中の金属含有量は、好ましくは10質量ppm以下であり、より好ましくは7質量ppm以下であり、さらに好ましくは5質量ppm以下であり、特に好ましくは1質量ppm以下である。金属含有量が低減された組成物は、凝析物または乾燥物であってよい。凝析物は、水性分散液中のパーフルオロエラストマーを凝析させることにより得られ、乾燥物は、凝析物を乾燥させることにより得られる。金属含有量が低減された組成物は、半導体製造装置の部品に好適に利用することができる。
【0381】
組成物中の金属含有量は、組成物を白金ルツボに入れて希硝酸および超純水で洗浄し、バーナーおよび電気炉で灰化させ、硫酸およびフッ化水素酸で加熱分解し、希硝酸に溶解させて測定用液を調製し、得られた測定用液について、ICP質量分析装置(Agilent Technologies社製、Agilent8800)を用いて、30種類の金属元素(Fe、Na、K、Li、Be、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Cs、Ba、Pb、Bi、Th)の含有量を測定し、各測定値を合計することにより求めることができる。
【0382】
本開示の組成物は、好適には、本開示の製造方法により製造することができる。
【0383】
また、本開示は、上記の組成物および架橋剤を含有する架橋性組成物にも関する。架橋剤の好適な構成は、本開示の製造方法により得られる架橋性組成物の構成と同様である。架橋性組成物は、上述した充填剤、必要に応じてパーフルオロエラストマーに配合される通常の添加物、たとえば加工助剤、可塑剤、着色剤などを含有してもよい。
【0384】
上述した架橋性組成物を架橋することにより、架橋物を得ることができる。
【0385】
上記架橋は、一次架橋、二次架橋の順で、行うことができる。一次架橋は、150~250℃で5~120分間行うことが好ましく、170~200℃で5~60分間行うことがより好ましい。架橋手段としては、公知の架橋手段を用いればよく、例えば、プレス架橋などをあげることができる。
【0386】
二次架橋は、250~320℃で2~48時間行うことが好ましく、280~310℃で5~24時間行うことがより好ましい。架橋手段としては、公知の架橋手段を用いれば良く、例えば、オーブン架橋などをあげることができる。
【0387】
架橋性組成物を成形して予備成形体を得た後、架橋することにより、架橋物(成形品)を得てもよい。架橋性組成物を成形して予備成形体を得る方法は通常の方法でよく、金型にて加熱圧縮する方法、加熱された金型に圧入する方法、押出機で押出す方法など公知の方法で行なうことができる。ホースや電線などの押出製品の場合は押出後にスチームなどによる加熱架橋を行なうことで、架橋物を得ることができる。
【0388】
本開示の架橋物は、特に耐熱性が要求される半導体製造装置、特に高密度プラズマ照射が行なわれる半導体製造装置のシール材として好適に使用できる。上記シール材としては、O-リング、角-リング、ガスケット、パッキン、オイルシール、ベアリングシール、リップシール等が挙げられる。
【0389】
そのほか、半導体製造装置に使用される各種のポリマー製品、例えばダイヤフラム、チューブ、ホース、各種ゴムロール、ベルト等としても使用できる。また、コーティング用材料、ライニング用材料としても使用できる。
【0390】
なお、本開示でいう半導体製造装置は、特に半導体を製造するための装置に限られるものではなく、広く、液晶パネルやプラズマパネルを製造するための装置等、高度なクリーン度が要求される半導体分野において用いられる製造装置全般を含むものであり、例えば次のようなものを挙げることができる。
【0391】
(1)エッチング装置
ドライエッチング装置
プラズマエッチング装置
反応性イオンエッチング装置
反応性イオンビームエッチング装置
スパッタエッチング装置
イオンビームエッチング装置
ウェットエッチング装置
アッシング装置
(2)洗浄装置乾式エッチング洗浄装置
UV/O洗浄装置
イオンビーム洗浄装置
レーザービーム洗浄装置
プラズマ洗浄装置
ガスエッチング洗浄装置
抽出洗浄装置
ソックスレー抽出洗浄装置
高温高圧抽出洗浄装置
マイクロウェーブ抽出洗浄装置
超臨界抽出洗浄装置
(3)露光装置
ステッパー
コータ・デベロッパー
(4)研磨装置
CMP装置
(5)成膜装置
CVD装置
スパッタリング装置
(6)拡散・イオン注入装置
酸化拡散装置
イオン注入装置
【0392】
本開示の架橋物は、たとえば、CVD装置、プラズマエッチング装置、反応性イオンエッチング装置、アッシング装置またはエキシマレーザー露光機のシール材として優れた性能を発揮する。
【0393】
また、本開示の架橋物は、優れた耐熱性、耐油性、耐アミン性、耐薬品性及び耐寒性を有しており、他材と接触して摺動したり、他材、物質を封止、密封したり、防振、防音を目的とする部位一般に用いられ、自動車産業、航空機産業、半導体産業等の各分野において各種部品として使用することができる。
用いられる分野としては例えば、半導体関連分野、自動車分野、航空機分野、宇宙・ロケット分野、船舶分野、化学プラント等の化学品分野、医薬品等の薬品分野、現像機等の写真分野、印刷機械等の印刷分野、塗装設備等の塗装分野、分析機器、計器等の分析・理化学機械分野、食品プラント機器及び家庭用品を含む食品機器分野、飲料食品製造装置分野、医薬品製造装置分野、医療部品分野、化学薬品輸送用機器分野、原子力プラント機器分野、鉄板加工設備等の鉄鋼分野、一般工業分野、電気分野、燃料電池分野、電子部品分野、光学機器部品分野、宇宙用機器部品分野、石油化学プラント機器分野、石油、ガス等のエネルギー資源探索採掘機器部品分野、石油精製分野、石油輸送機器部品分野などが挙げられる。
【0394】
本開示の架橋物の使用形態としては、例えば、リング、パッキン、ガスケット、ダイアフラム、オイルシール、ベアリングシール、リップシール、プランジャーシール、ドアシール、リップ及びフェースシール、ガスデリバリープレートシール、ウエハサポートシール、バレルシール等の各種シール材やパッキンなどが挙げられる。シール材としては、耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性、非粘着性が要求される用途に用いることができる。
また、チューブ、ホース、ロール、各種ゴムロール、フレキシブルジョイント、ゴム板、コーティング、ベルト、ダンパー、バルブ、バルブシート、バルブの弁体、耐薬品用コーティング材料、ラミネート用材料、ライニング用材料などとしても使用できる。
なお、上記リング、パッキン、シールの断面形状は、種々の形状のものであってよく、具体的には、例えば、四角、O字、へルールなどの形状であってもよいし、D字、L字、T字、V字、X字、Y字などの異形状であってもよい。
【0395】
上記半導体関連分野においては、例えば、半導体製造装置、液晶パネル製造装置、プラズマパネル製造装置、プラズマディスプレイパネル製造装置、プラズマアドレス液晶パネル製造装置、有機ELパネル製造装置、フィールドエミッションディスプレイパネル製造装置、太陽電池基板製造装置、半導体搬送装置等に用いることができる。そのような装置としては、例えば、CVD装置、半導体用ガス制御装置等のガス制御装置、ドライエッチング装置、ウェットエッチング装置、プラズマエッチング装置、反応性イオンエッチング装置、反応性イオンビームエッチング装置、スパッタエッチング装置、イオンビームエッチング装置、酸化拡散装置、スパッタリング装置、アッシング装置、プラズマアッシング装置、洗浄装置、イオン注入装置、プラズマCVD装置、排気装置、露光装置、研磨装置、成膜装置、乾式エッチング洗浄装置、UV/O洗浄装置、イオンビーム洗浄装置、レーザービーム洗浄装置、プラズマ洗浄装置、ガスエッチング洗浄装置、抽出洗浄装置、ソックスレー抽出洗浄装置、高温高圧抽出洗浄装置、マイクロウェーブ抽出洗浄装置、超臨界抽出洗浄装置、フッ酸、塩酸、硫酸、オゾン水等を用いる洗浄装置、ステッパー、コータ・デベロッパー、CMP装置、エキシマレーザー露光機、薬液配管、ガス配管、NFプラズマ処理、Oプラズマ処理、フッ素プラズマ処理等のプラズマ処理が行われる装置、熱処理成膜装置、ウエハ搬送機器、ウエハ洗浄装置、シリコンウエハ洗浄装置、シリコンウエハ処理装置、LP-CVD工程に用いられる装置、ランプアニーリング工程に用いられる装置、リフロー工程に用いられる装置などが挙げられる。
【0396】
半導体関連分野における具体的な使用形態としては、例えば、ゲートバルブ、クォーツウィンドウ、チャンバー、チャンバーリット、ゲート、ベルジャー、カップリング、ポンプのO-リングやガスケット等の各種シール材;レジスト現像液や剥離液用のO-リング等の各種シール材、ホースやチューブ;レジスト現像液槽、剥離液槽、ウエハ洗浄液槽、ウェットエッチング槽のライニングやコーティング;ポンプのダイアフラム;ウエハ搬送用のロール;ウエハ洗浄液用のホースチューブ;クリーンルーム等のクリーン設備用シーラントといったクリーン設備用シール材;半導体製造装置やウエハ等のデバイスを保管する保管庫用のシーリング材;半導体を製造する工程で用いられる薬液移送用ダイアフラムなどが挙げられる。
【0397】
上記自動車分野においては、エンジン本体、主運動系、動弁系、潤滑・冷却系、燃料系、吸気・排気系、駆動系のトランスミッション系、シャーシのステアリング系、ブレーキ系や、基本電装部品、制御系電装部品、装備電装部品等の電装部品などに用いることができる。なお、上記自動車分野には、自動二輪車も含まれる。
上述のようなエンジン本体やその周辺装置では、耐熱性、耐油性、燃料油耐性、エンジン冷却用不凍液耐性、耐スチーム性が要求される各種シール材に本開示の架橋物を用いることができ、そのようなシール材としては、例えば、ガスケット、シャフトシール、バルブステムシール等のシールや、セルフシールパッキン、ピストンリング、割リング形パッキン、メカニカルシール、オイルシール等の非接触型又は接触型のパッキン類、ベローズ、ダイアフラム、ホース、チューブの他、電線、緩衝材、防振材、ベルトAT装置に用いられる各種シール材などが挙げられる。
【0398】
上記燃料系における具体的な使用形態としては、燃料インジェクター、コールドスタートインジェクター、燃料ラインのクイックコネクター、センダー・フランジ・クイックコネクター、燃料ポンプ、燃料タンク・クイック・コネクター、ガソリン混合ポンプ、ガソリンポンプ、燃料チューブのチューブ本体、燃料チューブのコネクター、インジェクター等に用いられるO-リング;呼気系マニフォールド、燃料フィルター、圧力調整弁、キャニスター、燃料タンクのキャップ、燃料ポンプ、燃料タンク、燃料タンクのセンダーユニット、燃料噴射装置、燃料高圧ポンプ、燃料ラインコネクターシステム、ポンプタイミングコントロールバルブ、サクションコントロールバルブ、ソレノイドサブアッシー、フューエルカットバルブ等に用いられるシール;キャニスタ・パージ・ソレノイド・バルブシール、オンボード・リフューエリング・ベイパー・リカバリー(ORVR)バルブシール、燃料ポンプ用のオイルシール、フューエルセンダーシール、燃料タンクロールオーバー・バルブシール、フィラーシール、インジェクターシール、フィラーキャップシール、フィラーキャップバルブのシール;燃料ホース、燃料供給ホース、燃料リターンホース、ベーパー(エバポ)ホース、ベント(ブリーザー)ホース、フィラーホース、フィラーネックホース、燃料タンク内のホース(インタンクホース)、キャブレターのコントロールホース、フューエルインレットホース、フューエルブリーザホース等のホース;燃料フィルター、燃料ラインコネクターシステム等に用いられるガスケットや、キャブレター等に用いられるフランジガスケット;蒸気回収ライン、フューエルフィードライン、ベーパー・ORVRライン等のライン材;キャニスター、ORVR、燃料ポンプ、燃料タンク圧力センサー、ガソリンポンプ、キャブレターのセンサー、複合空気制御装置(CAC)、パルセーションダンパー、キャニスター用、オートコック等に用いられるダイアフラムや、燃料噴射装置のプレッシャーレギュレーターダイアフラム;燃料ポンプ用のバルブ、キャブレーターニードルバルブ、ロールオーバーチェックバルブ、チェックバルブ類;ベント(ブリーザー)、燃料タンク内に用いられるチューブ;燃料タンク等のタンクパッキン、キャブレターの加速ポンプピストンのパッキン;燃料タンク用のフューエルセンダー防振部品;燃料圧力を制御するためのO-リングや、ダイアフラム;アクセレレータ・ポンプ・カップ;インタンクフューエルポンプマウント;燃料噴射装置のインジェクタークッションリング;インジェクターシールリング;キャブレターのニードルバルブ芯弁;キャブレターの加速ポンプピストン;複合空気制御装置(CAC)のバルブシート;フューエルタンク本体;ソレノイドバルブ用シール部品などが挙げられる。
【0399】
上記ブレーキ系における具体的な使用形態としては、マスターバック、油圧ブレーキホースエアーブレーキ、エアーブレーキのブレーキチャンバー等に用いられるダイアフラム;ブレーキホース、ブレーキオイルホース、バキュームブレーキホース等に用いられるホース;オイルシール、O-リング、パッキン、ブレーキピストンシール等の各種シール材;マスターバック用の大気弁や真空弁、ブレーキバルブ用のチェック弁;マスターシリンダー用のピストンカップ(ゴムカップ)や、ブレーキカップ;油圧ブレーキのマスターシリンダーやバキュームブースター、油圧ブレーキのホイールシリンダー用のブーツ、アンチロック・ブレーキ・システム(ABS)用のO-リングやグロメットなどが挙げられる。
【0400】
上記基本電装部品における具体的な使用形態としては、電線(ハーネス)の絶縁体やシース、ハーネス外装部品のチューブ、コネクター用のグロメットなどが挙げられる。
制御系電装部品における具体的な使用形態としては、各種センサー線の被覆材料などが挙げられる。
上記装備電装部品における具体的な使用形態としては、カーエアコンのO-リング、パッキンや、クーラーホース、高圧エアコンホース、エアコンホース、電子スロットルユニット用ガスケット、ダイレクトイグニッション用プラグブーツ、ディストリビューター用ダイアフラムなどが挙げられる。また、電装部品の接着にも用いることができる。
【0401】
上記吸気・排気系における具体的な使用形態としては、吸気マニホールド、排気マニホールド等に用いられるパッキンや、スロットルのスロットルボディパッキン;EGR(排気再循環)、押圧コントロール(BPT)、ウエストゲート、ターボウエストゲート、アクチュエーター、バリアブル・タービン・ジオメトリー(VTG)ターボのアクチュエーター、排気浄化バルブ等に用いられるダイアフラム;EGR(排気再循環)のコントロールホース、エミッションコントロールホース、ターボチャージャーのターボオイルホース(供給)、ターボオイルホース(リターン)、ターボエアホース、インタークーラーホース、ターボチャージャーホース、インタークーラーを備えたターボエンジンのコンプレッサーと接続されるホース、排気ガスホース、エアインテークホース、ターボホース、DPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)センサーホース等のホース;エアダクトやターボエアダクト;インテークマニホールドガスケット;EGRのシール材、ABバルブのアフターバーン防止バルブシート、(ターボチャージャーなどの)タービンシャフトシールや、自動車のエンジンにおいて使用されるロッカーカバーや空気吸い込みマニホールドなどの溝部品に用いられるシール部材などが挙げられる。
【0402】
その他、排出ガス制御部品において、蒸気回収キャニスター、触媒式転化装置、排出ガスセンサー、酸素センサー等に用いられるシールや、蒸気回収および蒸気キャニスターのソレノイド・アーマチュアのシール;吸気系マニフォールドガスケットなどとして用いることができる。
また、ディーゼルエンジンに関する部品において、直噴インジェクター用のO-リングシール、回転ポンプシール、制御ダイアフラム、燃料ホース、EGR,プライミングポンプ,ブーストコンペンセーターのダイアフラムなどとして用いることができる。また、尿素SCRシステムに用いられるO-リング、シール材、ホース、チューブ、ダイアフラムや、尿素SCRシステムの尿素水タンク本体、および尿素水タンクのシール材などにも用いることができる。
【0403】
上記トランスミッション系における具体的な使用形態としては、トランスミッション関連のベアリングシール、オイルシール、O-リング、パッキン、トルコンホースなどが挙げられる。
ミッションオイルシールや、ATのミッションオイルホース、ATFホース、O-リング、パッキン類なども挙げられる。
なお、トランスミッションには、AT(オートマチック・トランスミッション)、MT(マニュアル・トランスミッション)、CVT(連続可変トランスミッション)、DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)などがある。
また、手動または自動変速機用のオイルシール、ガスケット、O-リング、パッキンや、無段変速機(ベルト式またはトロイダル式)用のオイルシール、ガスケット、O-リング、パッキンの他、ATFリニアソレノイド用パッキング、手動変速機用オイルホース、自動変速機用ATFホース、無断変速機(ベルト式またはトロイダル式)用CVTFホースなども挙げられる。
ステアリング系における具体的な使用形態としては、パワーステアリングオイルホースや高圧パワーステアリングホースなどが挙げられる。
【0404】
自動車エンジンのエンジン本体において用いられる形態としては、例えば、シリンダーヘッドガスケット、シリンダーヘッドカバーガスケット、オイルパンパッキン、一般ガスケットなどのガスケット、O-リング、パッキン、タイミングベルトカバーガスケットなどのシール、コントロールホースなどのホース、エンジンマウントの防振ゴム、コントロールバルブダイアフラム、カムシャフトオイルシールなどが挙げられる。
自動車エンジンの主運動系においては、クランクシャフトシール、カムシャフトシールなどのシャフトシールなどに用いることができる。
自動車エンジンの動弁系においては、エンジンバルブのバルブステムオイルシール、バタフライバルブのバルブシートなどに用いることができる。
自動車エンジンの潤滑・冷却系においては、エンジンオイルクーラーのエンジンオイルクーラーホース、オイルリターンホース、シールガスケットや、ラジエータ周辺のウォーターホース、ラジエータのシール、ラジエータのガスケット、ラジエータのO-リング、バキュームポンプのバキュームポンプオイルホースなどの他、ラジエーターホース、ラジエータータンク、オイルプレッシャー用ダイアフラム、ファンカップリングシールなどに用いることができる。
【0405】
このように、自動車分野における使用の具体例の一例としては、エンジンヘッドガスケット、オイルパンガスケット、マニフォールドパッキン、酸素センサー用シール、酸素センサーブッシュ、酸化窒素(NOx)センサー用シール、酸化窒素(NOx)センサーブッシュ、酸化硫黄センサー用シール、温度センサー用シール、温度センサーブッシュ、ディーゼルパーティクルフィルターセンサー用シール、ディーゼルパーティクルフィルターセンサーブッシュ、インジェクターO-リング、インジェクターパッキン、燃料ポンプのO-リングやダイアフラム、ギアボックスシール、パワーピストンパッキン、シリンダーライナーのシール、バルブステムのシール、スタティックバルブステムシール、ダイナミックバルブステムシール、自動変速機のフロントポンプシール、リアーアクスルピニオンシール、ユニバーサルジョイントのガスケット、スピードメーターのピニオンシール、フートブレーキのピストンカップ、トルク伝達装置のO-リングやオイルシール、排ガス再燃焼装置のシールやベアリングシール、再燃焼装置用ホース、キャブレターのセンサー用ダイアフラム、防振ゴム(エンジンマウント、排気部、マフラーハンガー、サスペンションブッシュ、センターベアリング、ストラットバンパーラバー等)、サスペンション用防振ゴム(ストラットマウント、ブッシュ等)、駆動系防振ゴム(ダンパー等)、燃料ホース、EGRのチューブやホース、ツインキャブチューブ、キャブレターのニードルバルブの芯弁、キャブレターのフランジガスケット、オイルホース、オイルクーラーホース、ATFホース、シリンダーヘッドガスケット、水ポンプシール、ギアボックスシール、ニードルバルブチップ、オートバイ用リードバルブのリード、自動車エンジンのオイルシール、ガソリンホースガンのシール、カーエアコン用シール、エンジンのインタークーラー用ゴムホース、送油経路コネクター装置(fuel line connector systems)のシール、CACバルブ、ニードルチップ、エンジン回り電線、フィラーホース、カーエアコンO-リング、インテークガスケット、燃料タンク材料、ディストリビューター用ダイアフラム、ウォーターホース、クラッチホース、PSホース、ATホース、マスターバックホース、ヒーターホース、エアコンホース、ベンチレーションホース、オイルフィラーキャップ、PSラックシール、ラック&ピニオンブーツ、CVJブーツ、ボールジョイントダストカバー、ストラットダストカバー、ウェザーストリップ、グラスラン、センターユニットパッキン、ボディーサイトウェルト、バンパーラバー、ドアラッチ、ダッシュインシュレーター、ハイテンションコード、平ベルト、ポリVベルト、タイミングベルト、歯付きベルト、Vリブドベルト、タイヤ、ワイパーブレード、LPG車レギュレータ用ダイアフラムやプランジャー、CNG車レギュレータ用ダイアフラムやバルブ、DME対応ゴム部品、オートテンショナのダイアフラムやブーツ、アイドルスピードコントロールのダイアフラムやバルブ、オートスピードコントロールのアクチュエーター,負圧ポンプのダイアフラムやチェックバルブやプランジャー、O.P.S.のダイアフラムやO-リング、ガソリン圧抜きバルブ、エンジンシリンダースリーブのO-リングやガスケット、ウェットシリンダースリーブのO-リングやガスケット、ディファレンシャルギヤのシールやガスケット(ギヤ油のシールやガスケット)、パワーステアリング装置のシールやガスケット(PSFのシールやガスケット)、ショックアブソーバのシールやガスケット(SAFのシールやガスケット)、等速ジョイントのシールやガスケット、ホイール軸受のシールやガスケット、メタルガスケットのコーティング剤、キャリパーシール、ブーツ類、ホイールベアリングシール、タイヤの加硫成形に使用されるブラダーなどが挙げられる。
【0406】
上記航空機分野、宇宙・ロケット分野、船舶分野においては、特に燃料系統や潤滑油系統に用いることができる。
上記航空機分野においては、例えば、航空機用各種シール部品、航空機用エンジンオイル用途の航空機用各種部品、ジェットエンジンバルブステムシールやガスケットやO-リング、ローテーティングシャフトシール、油圧機器のガスケット、防火壁シール、燃料供給用ホースやガスケットやO-リング、航空機用ケーブルやオイルシールやシャフトシールなどとして用いることが可能である。
【0407】
上記宇宙・ロケット分野においては、例えば、宇宙船、ジェットエンジン、ミサイル等のリップシール、ダイアフラム、O-リングや、耐ガスタービンエンジン用オイルのO-リング、ミサイル地上制御用防振台パッドなどとして用いることができる。
また、船舶分野においては、例えば、スクリューのプロペラシャフト船尾シール、ディーゼルエンジンの吸排気用バルブステムシール、バタフライバルブのバルブシール、バタフライバルブのバルブシートや軸シール、バタフライ弁の軸シール、船尾管シール、燃料ホース、ガスケット、エンジン用のO-リング、船舶用ケーブル、船舶用オイルシール、船舶用シャフトシールなどとして使用することができる。
【0408】
上記化学プラント等の化学品分野、医薬品等の薬品分野においては、高度の耐薬品性が要求されるような工程、例えば、医薬品、農薬、塗料、樹脂等の化学品を製造する工程に用いることができる。
上記化学品分野及び薬品分野における具体的な使用形態としては、化学装置、化学薬品用ポンプや流量計、化学薬品用配管、熱交換器、農薬散布機、農薬移送ポンプ、ガス配管、燃料電池、分析機器や理化学機器(例えば、分析機器や計器類のカラム・フィッティングなど)、排煙脱硫装置の収縮継ぎ手、硝酸プラント、発電所タービン等に用いられるシールや、医療用滅菌プロセスに用いられるシール、メッキ液用シール、製紙用ベルトのコロシール、風洞のジョイントシール;反応機、攪拌機等の化学装置、分析機器や計器類、ケミカルポンプ、ポンプハウジング、バルブ、回転計等に用いられるO-リングや、メカニカルシール用O-リング、コンプレッサーシーリング用のO-リング;高温真空乾燥機、ガスクロマトグラフィーやpHメーターのチューブ結合部等に用いられるパッキンや、硫酸製造装置のガラス冷却器パッキン;ダイアフラムポンプ、分析機器や理化学機器等に用いられるダイアフラム;分析機器、計器類に用いられるガスケット;分析機器や計器類に用いられるはめ輪(フェルール);バルブシート;Uカップ;化学装置、ガソリンタンク、風洞等に用いられるライニングや、アルマイト加工槽の耐食ライニング;メッキ用マスキング冶具のコーティング;分析機器や理化学機器の弁部品;排煙脱硫プラントのエキスパンジョンジョイント;濃硫酸等に対する耐酸ホース、塩素ガス移送ホース、耐油ホース、ベンゼンやトルエン貯槽の雨水ドレンホース;分析機器や理化学機器等に用いられる耐薬品性チューブや医療用チューブ;繊維染色用の耐トリクレン用ロールや染色用ロール;医薬品の薬栓;医療用のゴム栓;薬液ボトル、薬液タンク、バッグ、薬品容器;耐強酸、耐溶剤の手袋や長靴等の保護具などが挙げられる。
【0409】
上記現像機等の写真分野、印刷機械等の印刷分野、塗装設備等の塗装分野においては、乾式複写機のロール、ベルト、シール、弁部品等として用いることができる。
上記写真分野、印刷分野及び塗装分野における具体的な使用形態としては、複写機の転写ロールの表面層、複写機のクリーニングブレード、複写機のベルト;複写機、プリンター、ファクシミリ等のOA機器用のロール(例えば、定着ロール、圧着ロール、加圧ロールなどが挙げられる。)、ベルト;PPC複写機のロール、ロールブレード、ベルト;フィルム現像機、X線フィルム現像機のロール;印刷機械の印刷ロール、スクレーパー、チューブ、弁部品、ベルト;プリンターのインキチューブ、ロール、ベルト;塗布、塗装設備の塗装ロール、スクレーパー、チューブ、弁部品;現像ロール、グラビアロール、ガイドロール、磁気テープ製造塗工ラインのガイドロール、磁気テープ製造塗工ラインのグラビアロール、コーティングロールなどが挙げられる。
【0410】
上記食品プラント機器及び家庭用品を含む食品機器分野においては、食品製造工程や、食品移送器用または食品貯蔵器用に用いることができる。
上記食品機器分野における具体的な使用形態としては、プレート式熱交換器のシール、自動販売機の電磁弁シール、ジャーポットのパッキン、サニタリーパイプパッキン、圧力鍋のパッキン、湯沸器シール、熱交換器用ガスケット、食品加工処理装置用のダイアフラムやパッキン、食品加工処理機用ゴム材料(例えば、熱交換器ガスケット、ダイアフラム、O-リング等の各種シール、配管、ホース、サニタリーパッキン、バルブパッキン、充填時にビンなどの口と充填剤との間のジョイントとして使用される充填用パッキン)などが挙げられる。また、酒類、清涼飲料水等の製品、充填装置、食品殺菌装置、醸造装置、湯沸し器、各種自動食品販売機等に用いられるパッキン、ガスケット、チューブ、ダイアフラム、ホース、ジョイントスリーブなども挙げられる。
【0411】
上記原子力プラント機器分野においては、原子炉周辺の逆止弁や減圧弁、六フッ化ウランの濃縮装置のシールなどに用いることができる。
【0412】
上記一般工業分野における具体的な使用形態としては、工作機械、建設機械、油圧機械等の油圧機器用シール材;油圧、潤滑機械のシールやベアリングシール;マンドレル等に用いられるシール材;ドライクリーニング機器の窓等に用いられるシール;サイクロトロンのシールや(真空)バルブシール、プロトン加速器のシール、自動包装機のシール、空気中の亜硫酸ガスや塩素ガス分析装置(公害測定器)用ポンプのダイアフラム、スネークポンプライニング、印刷機のロールやベルト、搬送用のベルト(コンベアベルト)、鉄板等の酸洗い用絞りロール、ロボットのケーブル、アルミ圧延ライン等の溶剤絞りロール、カプラーのO-リング、耐酸クッション材、切削加工機械の摺動部分のダストシールやリップゴム、生ごみ焼却処理機のガスケット、摩擦材、金属またはゴムの表面改質剤、被覆材などが挙げられる。また、製紙プロセスで用いられる装置のガスケットやシール材、クリーンルーム用フィルターユニットのシーリング剤、建築用シーリング剤、コンクリートやセメント等の保護コーティング剤、ガラスクロス含浸材料、ポリオレフィンの加工助剤、ポリエチレンの成形性改良添加剤、小型発電機や芝刈機等の燃料容器、金属板にプライマー処理を施すことによって得られるプレコートメタルなどとしても使用することができる。その他、織布に含浸させて焼付けてシート及びベルトとして使用することもできる。
【0413】
上記鉄鋼分野における具体的な使用形態としては、鉄板加工設備の鉄板加工ロールなどが挙げられる。
【0414】
上記電気分野における具体的な使用形態としては、新幹線の絶縁油キャップ、液封型トランスのベンチングシール、変圧器のシール、油井ケーブルのジャケット、電気炉等のオーブンのシール、電子レンジの窓枠シール、CRTのウェッジとネックとを接着させる際に用いられるシール材、ハロゲンランプのシール材、電気部品の固定剤、シーズヒーターの末端処理用シール材、電気機器リード線端子の絶縁防湿処理に用いられるシール材などが挙げられる。また、耐油・耐熱電線、高耐熱性電線、耐薬品性電線、高絶縁性電線、高圧送電線、ケーブル、地熱発電装置に用いられる電線、自動車エンジン周辺に用いられる電線等の被覆材に用いることもできる。車両用ケーブルのオイルシールやシャフトシールに用いることもできる。更には、電気絶縁材料(例えば、各種電気機器の絶縁用スペーサ、ケーブルのジョイントや末端部などに用いる絶縁テープ、熱収縮性のチューブなどに使用される材料)や、高温雰囲気で用いられる電気および電子機器材料(例えば、モータ用口出線材料、高熱炉まわりの電線材料)にも使用可能である。また、太陽電池の封止層や保護フィルム(バックシート)にも使用できる。
【0415】
上記燃料電池分野においては、固体高分子形燃料電池、リン酸塩型燃料電池等における、電極間、電極-セパレーター間のシール材や、水素、酸素、生成水等の配管のシールやパッキン、セパレーターなどとして用いることができる。
【0416】
上記電子部品分野においては、放熱材原料、電磁波シールド材原料、コンピュータのハードディスクドライブ(磁気記録装置)用のガスケット等に用いることができる。また、ハードディスクドライブの緩衝ゴム(クラッシュストッパー)、ニッケル水素二次電池の電極活物質のバインダー、リチウムイオン電池の活物質のバインダー、リチウム二次電池のポリマー電解質、アルカリ蓄電池の正極の結着剤、EL素子(エレクトロルミネセンス素子)のバインダー、コンデンサーの電極活物質のバインダー、封止剤、シーリング剤、光ファイバーの石英の被覆材、光ファイバー被覆材等のフィルムやシート類、電子部品、回路基板のポッティングやコーティングや接着シール、電子部品の固定剤、エポキシ等の封止剤の変性剤、プリント基板のコーティング剤、エポキシ等のプリント配線板プリプレグ樹脂の変性材、電球等の飛散防止材、コンピュータ用ガスケット、大型コンピュータ冷却ホース、二次電池、特にリチウム二次電池用のガスケットやO-リング等のパッキン、有機EL構造体の外表面の片面または両面を覆う封止層、コネクター、ダンパーなどとしても用いられる。
【0417】
上記化学薬品輸送用機器分野においては、トラック、トレーラー、タンクローリー、船舶等の安全弁や積出しバルブなどに用いることができる。
【0418】
上記石油、ガス等のエネルギー資源探索採掘機器部品分野においては、石油、天然ガス等の採掘の際に用いられる各種シール材、油井に使われる電気コネクターのブーツなどとして用いられる。
上記エネルギー資源探索採掘機器部品分野における具体的な使用形態としては、ドリルビットシール、圧力調整ダイアフラム、水平掘削モーター(ステーター)のシール、ステーターベアリング(シャフト)シール、暴噴防止装置(BOP)に用いられるシール材、回転暴噴防止装置(パイプワイパー)に用いられるシール材、MWD(リアルタイム掘削情報探知システム)に用いられるシール材や気液コネクター、検層装置(ロギングエクイップメント)に用いられる検層ツールシール(例えば、O-リング、シール、パッキン、気液コネクター、ブーツなど)、膨張型パッカーやコンプリーションパッカー及びそれらに用いるパッカーシール、セメンチング装置に用いられるシールやパッキン、パーフォレーター(穿孔装置)に用いられるシール、マッドポンプに用いられるシールやパッキンやモーターライニング、地中聴検器カバー、Uカップ、コンポジションシーティングカップ、回転シール、ラミネートエラストメリックベアリング、流量制御のシール、砂量制御のシール、安全弁のシール、水圧破砕装置(フラクチャリングエクイップメント)のシール、リニアーパッカーやリニアーハンガーのシールやパッキン、ウェルヘッドのシールやパッキン、チョークやバルブのシールやパッキン、LWD(掘削中検層)用シール材、石油探索・石油掘削用途で用いられるダイアフラム(例えば、石油掘削ピットなどの潤滑油供給用ダイアフラム)、ゲートバルブ、電子ブーツ、穿孔ガンのシールエレメントなどが挙げられる。
【0419】
その他、厨房、浴室、洗面所等の目地シール;屋外テントの引き布;印材用のシール;ガスヒートポンプ用ゴムホース、耐フロン性ゴムホース;農業用のフィルム、ライニング、耐候性カバー;建築や家電分野等で使用されるラミネート鋼板等のタンク類などにも用いることができる。
【0420】
更には、アルミ等の金属と結合させた物品として使用することも可能である。そのような使用形態としては、例えば、ドアシール、ゲートバルブ、振り子バルブ、ソレノイド先端の他、金属と結合されたピストンシールやダイアフラム、金属ガスケット等の金属と結合された金属ゴム部品などが挙げられる。
また、自転車におけるゴム部品、ブレーキシュー、ブレーキパッドなどにも用いることができる。
【0421】
また、本開示の架橋物の形態の1つとしてベルトが挙げられる。
上記ベルトとしては、次のものが例示される。動力伝達ベルト(平ベルト、Vベルト、Vリブドベルト、歯付きベルトなどを含む)、搬送用ベルト(コンベアベルト)として、農業用機械、工作機械、工業用機械等のエンジン周りなど各種高温となる部位に使用される平ベルト;石炭、砕石、土砂、鉱石、木材チップなどのバラ物や粒状物を高温環境下で搬送するためのコンベアベルト;高炉等の製鉄所などで使用されるコンベアベルト;精密機器組立工場、食品工場等において、高温環境下に曝される用途におけるコンベアベルト;農業用機械、一般機器(例えば、OA機器、印刷機械、業務用乾燥機等)、自動車用などのVベルトやVリブドベルト;搬送ロボットの伝動ベルト;食品機械、工作機械の伝動ベルトなどの歯付きベルト;自動車用、OA機器、医療用、印刷機械などで使用される歯付きベルトなどが挙げられる。
特に、自動車用歯付きベルトとしては、タイミングベルトが代表的である。
【0422】
上記ベルトは、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。
多層構造である場合、上記ベルトは、本開示の架橋性組成物を架橋して得られる層及び他の材料からなる層からなるものであってもよい。
多層構造のベルトにおいて、他の材料からなる層としては、他のゴムからなる層や熱可塑性樹脂からなる層、各種繊維補強層、帆布、金属箔層などが挙げられる。
【0423】
本開示の架橋物はまた、産業用防振パッド、防振マット、鉄道用スラブマット、パッド類、自動車用防振ゴムなどに使用できる。自動車用防振ゴムとしては、エンジンマウント用、モーターマウント用、メンバマウント用、ストラットマウント用、ブッシュ用、ダンパー用、マフラーハンガー用、センターベアリング用などの防振ゴムが挙げられる。
【0424】
また、他の使用形態として、フレキシブルジョイント、エキスパンションジョイント等のジョイント部材、ブーツ、グロメットなどが挙げられる。船舶分野であれば、例えばマリンポンプ等が挙げられる。
ジョイント部材とは、配管および配管設備に用いられる継ぎ手のことであり、配管系統から発生する振動、騒音の防止、温度変化、圧力変化による伸縮や変位の吸収、寸法変動の吸収や地震、地盤沈下による影響の緩和、防止などの用途に用いられる。
フレキシブルジョイント、エキスパンションジョイントは、例えば、造船配管用、ポンプやコンプレッサーなどの機械配管用、化学プラント配管用、電気配管用、土木・水道配管用、自動車用などの複雑形状成形体として好ましく用いることができる。
ブーツは、例えば、等速ジョイントブーツ、ダストカバー、ラックアンドピニオンステアリングブーツ、ピンブーツ、ピストンブーツなどの自動車用ブーツ、農業機械用ブーツ、産業車両用ブーツ、建築機械用ブーツ、油圧機械用ブーツ、空圧機械用ブーツ、集中潤滑機用ブーツ、液体移送用ブーツ、消防用ブーツ、各種液化ガス移送用ブーツなどの各種産業用ブーツなどの複雑形状成形体として好ましく用いることができる。
【0425】
本開示の架橋物は、フィルタープレス用ダイアフラム、ブロワー用ダイアフラム、給水用ダイアフラム、液体貯蔵タンク用ダイアフラム、圧力スイッチ用ダイアフラム、アキュムレーター用ダイアフラム、サスペンション等の空気ばね用ダイアフラムなどにも使用できる。
【0426】
本開示の架橋物をゴムや樹脂に添加することにより、雨、雪、氷や汗等の水に濡れる環境下において滑りにくい成形品やコーティング被膜を得る滑り防止剤が得られる。
【0427】
また、本開示の架橋物は、例えば、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等による化粧合板、プリント基板、電気絶縁板、硬質ポリ塩化ビニル積層板等を製造する際の熱プレス成形用クッション材としても用いることができる。
【0428】
本開示の架橋物は、その他、兵器関連の封止ガスケット、侵襲性化学剤との接触に対する保護衣服のような各種支持体の不浸透性化に寄与することもできる。
【0429】
また、自動車、船舶などの輸送機関などに使われるアミン系添加剤(特に酸化防止剤、清浄分散剤として用いられるアミン系添加剤)が含まれる潤滑油(エンジンオイル、ミッションオイル、ギヤーオイルなど)や燃料油、グリース(特にウレア系グリース)をシール、封止するために使われるO(角)-リング、V-リング、X-リング、パッキン、ガスケット、ダイアフラム、オイルシール、ベアリングシール、リップシール、プランジャーシール、ドアシール、リップおよびフェースシール、ガスデリバリープレートシール、ウエハサポートシール、バレルシールその他の各種シール材等に用いることができ、チューブ、ホース、各種ゴムロール、コーティング、ベルト、バルブの弁体などとしても使用できる。また、ラミネート用材料、ライニング用材料としても使用できる。
【0430】
自動車等の内燃機関のトランスミッション油及び/又はエンジン油に接触しその油温及び/又は油圧を検出するセンサーのリード電線などに使用される耐熱耐油性電線の被覆材料や、オートマチック・トランスミッションやエンジンのオイルパン内等の高温油雰囲気中においても使用することが可能である。
【0431】
その他、本開示の架橋物に加硫被膜を形成させて使用する場合がある。具体的には、複写機用非粘着耐油ロール、耐候結氷防止用ウェザーストリップ、輸液用ゴム栓、バイアルゴム栓、離型剤、非粘着軽搬送ベルト、自動車エンジンマウントのプレーガスケットの粘着防止被膜、合成繊維の被覆加工、パッキング被覆薄層をもつボルト部材または継ぎ手等の用途が挙げられる。
【0432】
なお、本開示の架橋物の自動車関連部品用途については、同様の構造の自動二輪車の部品用途も含まれる。
また、上記自動車関連における燃料としては、軽油、ガソリン、ディーゼルエンジン用燃料(バイオディーゼルフューエルを含む)などが挙げられる。
【0433】
また、本開示の架橋性組成物は、架橋して架橋物として使用する以外にも、種々の工業分野において各種部品として使用することもできる。そこで次に、本開示の架橋性組成物の用途について説明する。
本開示の架橋性組成物は、金属、ゴム、プラスチック、ガラスなどの表面改質材;メタルガスケット、オイルシールなど、耐熱性、耐薬品性、耐油性、非粘着性が要求されるシール材および被覆材;OA機器用ロール、OA機器用ベルトなどの非粘着被覆材、またはブリードバリヤー;織布製シートおよびベルトへの含浸、焼付による塗布などに用いることができる。
本開示の架橋性組成物は、高粘度、高濃度にすることによって、通常の用法により複雑な形状のシール材、ライニング、シーラントとして用いることができ、低粘度にすることによって、数ミクロンの薄膜フィルムの形成に用いることができ、また中粘度にすることによりプレコートメタル、O-リング、ダイアフラム、リードバルブの塗布に用いることができる。
さらに、織布や紙葉の搬送ロールまたはベルト、印刷用ベルト、耐薬品性チューブ、薬栓、ヒューエルホースなどの塗布にも用いることができる。
【0434】
本開示の架橋性組成物により被覆する物品基材としては、鉄、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、真鍮などの金属類; ガラス板、ガラス繊維の織布及び不織布などのガラス製品;ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトンなどの汎用および耐熱性樹脂の成形品および被覆物; SBR、ブチルゴム、NBR、EPDMなどの汎用ゴム、およびシリコーンゴム、フッ素ゴムなどの耐熱性ゴムの成形品および被覆物;天然繊維および合成繊維の織布および不織布;などを使用することができる。
本開示の架橋性組成物から形成される被覆物は、耐熱性、耐溶剤性、潤滑性、非粘着性が要求される分野で使用でき、具体的な用途としては、複写機、プリンター、ファクシミリなどのOA機器用のロール(例えば、定着ロール、圧着ロール)および搬送ベルト;シートおよびベルト;O-リング、ダイアフラム、耐薬品性チューブ、燃料ホース、バルブシール、化学プラント用ガスケット、エンジンガスケットなどが挙げられる。
【0435】
本開示の架橋性組成物はまた、溶剤に溶解し、塗料、接着剤として使用できる。また、乳化分散液(ラテックス)として、塗料としても使用できる。
上記組成物は、各種装置、配管等のシール材やライニング、金属、セラミックス、ガラス、石、コンクリート、プラスチック、ゴム、木材、紙、繊維等の無機及び有機基材からなる構造物の表面処理剤等として使用される。
上記組成物は、ディスペンサー方式塗装やスクリーン印刷塗装により基材等に塗布することができる。
【0436】
本開示の架橋性組成物は、フィルムを流延するため、またはファブリック、プラスチック、金属、またはエラストマーのような基材を浸漬するための塗料組成物として使用されてもよい。
特に、本開示の架橋性組成物は、ラテックスの形態として、被覆ファブリック、保護手袋、含浸繊維、O-リング被覆、燃料系クイック連結O-リング用被覆、燃料系シール用被覆、燃料タンクロールオーバーバルブダイヤフラム用被覆、燃料タンク圧力センサーダイヤフラム用被覆、オイルフィルターおよび燃料フィルターシール用被覆、燃料タンクセンダーシールおよびセンダーヘッドフィッテングシール用被覆、複写機定着機構ロール用被覆、並びにポリマー塗料組成物を製造するために使用されてもよい。
それらはシリコーンラバー、ニトリルラバー、および他のエラストマーの被覆に有用である。その熱安定性と同様に基材エラストマーの耐透過性および耐薬品性の両方を高める目的のために、それらはそのようなエラストマーから製造される部品の被覆にも有用である。他の用途は、熱交換器、エキスパンジョンジョイント、バット、タンク、ファン、煙道ダクトおよび他の管路、並びに収納構造体、例えばコンクリート収納構造体用の被覆を含む。上記組成物は、多層部品構造の露出した断面に、例えばホース構造およびダイアフラムの製造方法において塗布されてもよい。接続部および結合部におけるシーリング部材は、硬質材料からしばしば成り、そして本開示の架橋性組成物は、改良された摩擦性界面、シーリング面に沿って低減された微量の漏れを伴う高められた寸法締りばめを提供する。そのラテックスは、種々の自動車システム用途におけるシール耐久性を高める。
それらは、パワーステアリング系統、燃料系統、エアーコンディショニング系統、並びに、ホースおよびチューブが別の部品に接続されるいかなる結合部の製造においても使用されることもできる。上記組成物のさらなる有用性は、3層燃料ホースのような多層ラバー構造における、製造欠陥(および使用に起因する損傷)の補修においてである。上記組成物は、塗料が塗布される前または後に、形成され、またはエンボス加工され得る薄鋼板の塗布にも有用である。例えば、被覆された鋼の多数の層は組み立てられて、2つの剛性金属部材の間にガスケットを作ることもできる。シーリング効果は、その層の間に本開示の架橋性組成物を塗布することにより得られる。このプロセスは、組み立てられた部品のボルト力およびひずみを低下させ、一方、低い亀裂、たわみ、および穴ひずみにより良好な燃料節約および低放出を提供する目的のために、エンジンヘッドガスケットおよび排気マニフォールドガスケットを製造するために使用され得る。
【0437】
本開示の架橋性組成物は、その他、コーティング剤;金属、セラミック等の無機材料を含む基材にディスペンサー成形してなる基材一体型ガスケット、パッキン類;金属、セラミック等の無機材料を含む基材にコーティングしてなる複層品などとしても使用することができる。
【0438】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例
【0439】
つぎに本開示の実施形態について実施例をあげて説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0440】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0441】
<反応器内の酸素濃度>
反応器に接続された排ガスラインから排出されるガスについて、低濃度酸素分析計(商品名「PS-820-L」、飯島電子工業社製)を用いて測定および分析することにより、重合中の反応器内の酸素濃度を求めた。
【0442】
<重合体の濃度>
重合体の水溶液約1gを、減圧乾燥機中で60℃、60分の条件で乾燥し、加熱残分の質量を測定し、重合体水溶液の質量(1g)に対する、加熱残分の質量の割合を百分率で表した値を採用した。
【0443】
<重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、Agilent Technologies社製の1260 Infinity IIを用い、東ソー社製のカラム(TSKgel G3000PWXLを1本)を使用し、溶媒としてトリス緩衝液とアセトニトリルの混合溶媒(トリス緩衝液:アセトニトリル=8:2(v/v))を流速0.5ml/分で流して測定し、単分散ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)を標準として分子量を算出することにより求めた。
調製例4で得られた重合体のMwおよびMnの測定においては、上記のカラムに代えて、東ソー社製のカラム(TSKgel G3000PWXLを1本およびTSG gel GMPWXLを1本)を連結して使用した。
【0444】
<交互率>
重合体の19F-NMR測定を行い、NMRスペクトルに現れるCF=CFOCFCFSONaの“OCF ”に由来する2つのピーク(-75ppm~-80ppmmに現れるピークおよび-80ppm~-84ppmに現れるピーク)のそれぞれの総積分値から、次の計算式に従って算出した。
交互率(%)≧(b×2)/(a+b)×100
a:-75ppm~-80ppmmエリアのピークの総積分値
b:-80ppm~-84ppmエリアのピークの総積分値
【0445】
上記で算出される交互率は、重合体中のCF=CFOCFCFSONaに基づく重合単位のうち、VdFに基づく重合単位に隣接する重合単位の比率である。
CF=CFOCFCFSONaに基づく重合単位中の炭素原子(C)に対して、VdF(C=CF)に基づく重合単位中の炭素原子(C)が結合している比率は、次の計算式により求められる。
比率(%)=(b×2)/(a+b)×100
CF=CFOCFCFSONaに基づく重合単位中の炭素原子(C)に対して、VdF(C=CF)に基づく重合単位中の炭素原子(C)以外の炭素原子(C**=C**FOCFCFSONaに基づく重合単位中の炭素原子(C**)およびVdF(CH=C**)に基づく重合単位中の炭素原子(C**))が結合している比率は、次の計算式により求められる。
比率(%)=(a-b)/(a+b)×100
【0446】
<パーフルオロエラストマーを含む水性分散液の固形分濃度>
パーフルオロエラストマーを含む水性分散液1gを、送風乾燥機中で150℃、60分の条件で乾燥し、水性分散液の質量(1g)に対する、加熱残分の質量の割合を百分率で表した値を採用した。
【0447】
<パーフルオロエラストマーの組成>
19F-NMR(固体NMR)およびフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)により測定した。
【0448】
<ヨウ素含有量>
元素分析により測定した。
【0449】
<パーフルオロエラストマーのガラス転移温度>
ガラス転移温度は、示差走査熱量計(メトラー・トレド社製、DSC822e)を用い、試料10mgを10℃/minで昇温することによりDSC曲線を得て、JIS K6240に規定される微分曲線のピークトップ温度をガラス転移温度とした。
【0450】
<パーフルオロエラストマーのムーニー粘度>
ALPHA TECHNOLOGIES社製 ムーニー粘度計MV2000E型を用いて、170℃または100℃において、JIS K6300に従い測定した。
【0451】
<ポリマー付着率>
重合終了後に重合槽に付着したポリマー付着物の質量の、重合終了後のポリマー(パーフルオロエラストマー)の総量に対する比率(重合槽への付着率)を次の式により求めた。
ポリマー付着率(質量%)=ポリマー付着物の質量/得られたポリマー(ポリマー付着物込み)の質量×100
得られたポリマーの質量=水性分散液の質量×水性分散液の固形分濃度(質量%)/100+ポリマー付着物の質量
ポリマー付着物には、重合終了後に水性分散液を重合槽から抜き出した後に、重合槽内壁や撹拌翼などの重合槽内部に付着しているポリマーと、凝集により水性分散液から遊離し、水性分散液中に分散せずに、浮遊または沈殿しているポリマーとが含まれる。ポリマー付着物の質量は、ポリマー付着物に含まれる水分を120℃で乾燥し除去した後の質量である。
【0452】
<重合速度>
下記式により算出した。
重合速度={水性分散液重量×固形分濃度/100}/{(重合に使用した純水量+重合に使用した重合体(1)の水溶液に含まれる水の量)×重合時間}
式中の各量の単位は、下記の通りである。
水性分散液重量:g
固形分濃度:質量%
重合に使用した純水量:kg
重合に使用した重合体(1)の水溶液に含まれる水の量:kg
重合時間:時間
重合速度:g/(時間×kg)
【0453】
<平均粒子径>
水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子の平均粒子径(キュムラント平均径)は、ELSZ-1000S(大塚電子社製)を用い、動的光散乱法により測定を行い、キュムラント法により算出した。
【0454】
<水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子数>
下記式により算出した。
【0455】
【数2】
【0456】
式中、平均粒子径は、上記した方法で算出したキュムラント平均径であり、ポリマー粒子の個数(パーフルオロエラストマー粒子数)は水1ccあたりの個数であり、比重として、パーフルオロエラストマーの比重の実測値を用いた。
【0457】
<凝析、洗浄および乾燥後に得られるパーフルオロエラストマー中の金属含有量>
パーフルオロエラストマー中の金属含有量は、パーフルオロエラストマーを白金ルツボに入れて希硝酸および超純水で洗浄し、バーナーおよび電気炉で灰化させ、硫酸およびフッ化水素酸で加熱分解し、希硝酸に溶解させて測定用液を調製し、得られた測定用液について、ICP質量分析装置(Agilent Technologies社製、Agilent8800)を用いて、30種類の金属元素(Fe、Na、K、Li、Be、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Cs、Ba、Pb、Bi、Th)の含有量を測定し、各測定値を合計して求めた。
【0458】
調製例1
CF=CFOCFCFCOOHで表される単量体A 110g、水 220gに過硫酸アンモニウム(APS)を加え、窒素雰囲気下52℃で96時間攪拌し、CF=CFOCFCFCOOHの単独重合体である重合体Aを含む重合体A水溶液A-1を得た。APSは反応中適宜追添し合計5mol%用いた。反応器内の酸素濃度は11体積ppmから61体積ppmの範囲で推移した。得られた重合体A水溶液A-1をGPC分析した結果、重合体AはMw=1.5万、Mn=1.0万であった。得られた重合体A水溶液A-1に水を加え、濃度を2.2質量%に調整した(重合体A水溶液A-2)。
【0459】
調製例2
CF=CFOCFCFCOOHで表される単量体A 150g、水 300gにAPSを加え、窒素雰囲気下52℃で96時間攪拌し、CF=CFOCFCFCOOHの単独重合体である重合体Bを含む重合体B水溶液B-1を得た。APSは反応中適宜追添し合計4mol%用いた。反応器内の酸素濃度は30体積ppmから65体積ppmの範囲で推移した。得られた重合体B水溶液B-1をGPC分析した結果、重合体BはMw=1.7万、Mn=1.1万であった。得られた重合体B水溶液B-1に水を加え、濃度を2.2質量%に調整した(重合体B水溶液B-2)。
【0460】
調製例3
CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCOOHで表される単量体C 30g、水60g、NH 0.5eq(単量体Cに対して0.5当量に相当する量)、APS 2mol%を加え、窒素雰囲気下52℃で72時間攪拌し、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCOOHの単独重合体である重合体Cを含む重合体C水溶液C-1を得た。反応器内の酸素濃度は20体積ppmから50体積ppmの範囲で推移した。得られた重合体C水溶液C-1をGPC分析した結果、重合体CはMw=1.4万、Mn=0.9万であった。得られた重合体C水溶液C-1に水、NH 0.4eq(重合に用いた単量体Cに対して0.4当量に相当する量)を加え、濃度を2.8質量%に調整した(重合体C水溶液C-2)。
【0461】
実施例1
(CN基含有パーフルオロエラストマーの重合)
着火源をもたない内容積0.5リットルのステンレススチール製オートクレーブ(SUS316製、フルゾーンタイプの攪拌翼と邪魔板1枚が付属)に、脱イオン水108.2g、88.6gの重合体A水溶液A-2(固形分濃度:2.2質量%)を入れた後、系内を窒素ガスで充分に置換した後、脱気し、1000rpmで撹拌しながら、54℃に昇温し、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)の混合ガス(TFE/PMVE=24/76モル%比)を、内圧が0.83MPa・Gになるように仕込んだ。次いで、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN(CNVE)0.259gを脱イオン水0.8gと共に窒素で圧入した後、過硫酸アンモニウム(APS)1.03gを脱イオン水2.5gに溶解し、窒素で圧入して反応を開始した。
【0462】
重合の進行に伴い、槽内圧力が低下するので、圧力が0.735MPa・Gとなった時に、TFE2gおよびPMVE2.2gをオートクレーブに導入し、昇圧した。反応の進行に伴い同様にTFE及びPMVEを60/40モル%の比率で圧入し、0.735MPa・G~約0.89MPa・Gの間で、昇圧、降圧を繰り返し、重合終了までにTFEを28gとPMVEを30.8g圧入した。重合中にCF=CFOCFCF(CF)OCFCFCNを5回、TFEの総仕込み量が6、10、14、18、24gに達した時点で、0.259gずつ分割して脱イオン水0.8gと共に窒素で圧入した。
【0463】
その後、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して、固形分濃度19.7質量%の水性分散液248gを得た。重合時間は7.3時間であった。水性分散液を取り出した後のオートクレーブの攪拌翼、槽内壁、邪魔板に付着したポリマーを採取し、加熱により水分を除去すると5.7gであった。付着率を上記式により算出したところ、10.4質量%であった。
【0464】
(CN基含有パーフルオロエラストマーの後処理)
得られた水性分散液100gに脱イオン水75gを加え、混合希釈した。この混合希釈液を10%塩酸水溶液700gに滴下した。滴下は、塩酸水溶液を攪拌しながら行なった。
【0465】
塩酸水溶液中にパーフルオロエラストマーが凝析されるので、凝析されたパーフルオロエラストマーをろ別し、脱イオン水100gに移し、5分間攪拌しながら洗浄した。5分後、再びパーフルオロエラストマーをろ別し、脱イオン水100gに移し、5分間攪拌しながら洗浄した。この後、脱イオン水100gでの洗浄操作を繰り返し、水洗後の洗浄水のpHが6以上になった時点で、パーフルオロエラストマーをろ別した。ろ別されたパーフルオロエラストマーは、70℃で48時間、真空乾燥させた。得られたパーフルオロエラストマーは19.3gであった。
【0466】
(CN基含有パーフルオロエラストマーの分析)
得られたパーフルオロエラストマーを分析したところ、以下の結果が得られた。
パーフルオロエラストマーの組成:TFE/PMVE/CNVE=58.4/41.1/0.53モル%
ガラス転移温度:-3.4℃
【0467】
重合速度を上記式により算出したところ、34.2g/(時間×kg)であった。
【0468】
水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子のキュムラント平均径は49.7nmであった。水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子数を上記式により算出したところ、1.9×1015個/ccであった。
【0469】
実施例2
最初に仕込む脱イオン水の量を86.5gに、重合体A水溶液A-2(固形分濃度:2.2質量%)の量を110.8gに、それぞれ変更したこと以外は実施例1と同様に重合を行い、固形分濃度21.2質量%の水性分散液255gを得た。
【0470】
重合時間は6.8時間であった。槽内の付着ポリマーを採取し、加熱により水分を除去すると2.8gで、付着率は5.0質量%であった。
【0471】
得られた水性分散液について、実施例1と同様に後処理を行い、19.6gのパーフルオロエラストマーを得た。
【0472】
得られたパーフルオロエラストマーを分析したところ、以下の結果が得られた。
パーフルオロエラストマーの組成:TFE/PMVE/CNVE=57.7/41.7/0.58モル%
ガラス転移温度:-3.4℃
【0473】
重合速度は40.7g/(時間×kg)、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子のキュムラント平均径は45.4nm、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子数は2.7×1015個/ccであった。
【0474】
実施例3
最初に仕込む脱イオン水の量を64.8gに、重合体A水溶液A-2(固形分濃度:2.2質量%)の量を133.0gに、それぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様に重合を行い、固形分濃度21.4質量%の水性分散液257gを得た。
【0475】
重合時間は6.9時間であった。槽内の付着ポリマーを採取し、加熱により水分を除去すると0.7gで、付着率は1.3質量%であった。
【0476】
得られた水性分散液について、実施例1と同様に後処理を行い、19.6gのパーフルオロエラストマーを得た。
【0477】
得られたパーフルオロエラストマーを分析したところ、以下の結果が得られた。
パーフルオロエラストマーの組成:TFE/PMVE/CNVE=57.3/42.1/0.64モル%
ガラス転移温度:-3.3℃
【0478】
重合速度は41.2g/(時間×kg)、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子のキュムラント平均径は44.3nm、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子数は3.0×1015個/ccであった。
【0479】
実施例4
(CN基含有パーフルオロエラストマーの製造)
着火源をもたない内容積6リットルのステンレススチール製オートクレーブ(SUS316製、マックスブレンドタイプの攪拌翼と邪魔板1枚が付属)に、脱イオン水1255.3g、1083.3gの重合体B水溶液B-2(固形分濃度:2.2質量%)を入れた後、系内を窒素ガスで充分に置換した後、脱気し、400rpmで撹拌しながら、54.5℃に昇温し、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)の混合ガス(TFE/PMVE=24/76モル%比)を、内圧が0.83MPa・Gになるように仕込んだ。次いで、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN(CNVE)を1.21gを、脱イオン水1.5gと共に窒素で圧入した後、過硫酸アンモニウム(APS)14.7gを脱イオン水30gに溶解し、窒素で圧入して反応を開始した。
【0480】
重合の進行に伴い、圧力が0.735MPa・Gとなった時に、TFE12gおよびPMVE13.3gをオートクレーブに導入し、昇圧した。反応の進行にともない同様にTFE及びPMVEを60/40モル%の比率で圧入し、0.735MPa・G~約0.85MPa・Gの間で、昇圧、降圧を繰り返した。混合モノマーが202.4g追加された時に10%アンモニア水溶液16.44gを窒素で圧入し、重合終了までに前記のTFE12gとPMVE13.3gを含めて、TFEを328gとPMVEを363.1g圧入した。重合中にCNVEを17回、1.21gずつ途中添加で脱イオン水1.5gとともに重合槽内に圧入した。CNVEのx回目(1≦x≦17)の途中添加は、TFEの仕込量が{(328/18)×x}gを超えた時に行った。
【0481】
その後、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して、固形分濃度23.1質量%の水性分散液3127gを得た。重合時間は6.6時間であった。水性分散液を取り出した後の槽内の付着ポリマーを採取し、加熱により水分を除去すると20.1gで、付着率は2.7質量%であった。
【0482】
得られた水性分散液1000gについて、加える脱イオン水を750g、希釈液を滴下する10%塩酸水溶液を7000g、洗浄用の脱イオン水を1000gとしたこと以外は実施例1と同様に後処理を行い、221.3gのパーフルオロエラストマーを得た。
【0483】
得られたパーフルオロエラストマーを分析したところ、以下の結果が得られた。
パーフルオロエラストマーの組成:TFE/PMVE/CNVE=58.1/41.3/0.53モル%
ムーニー粘度:ML1+20(170℃)=71
ガラス転移温度:-3.4℃
金属含有量:1.6質量ppm
【0484】
重合速度は46.6g/(時間×kg)、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子のキュムラント平均径は54.6nm、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子数は1.8×1015個/ccであった。
【0485】
後処理を行うことにより得られたパーフルオロエラストマー100質量部に対し、架橋剤として2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(AFTA-Ph)を2.0質量部、充填剤として酸化カルシウム(CML#35、近江化学工業社製)を5質量部配合したものをオープンロールにて混練して、架橋可能なパーフルオロエラストマー組成物を調製した。
【0486】
得られたパーフルオロエラストマー組成物を200℃で40分間プレスして架橋を行った後、さらに290℃で24時間オーブン架橋を施し、厚さ2mmの架橋物およびOリング(P-24)を作製した。以下の方法により、パーフルオロエラストマー組成物および架橋物の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0487】
<架橋性>
パーフルオロエラストマー組成物について、ALPHA TECHNOLOGIES社製RPA2000を用いて、200℃における架橋曲線を求め、最低トルク(ML)、最大トルク(MH)、誘導時間(T10)および最適架橋時間(T90)を求めた。
【0488】
<常態物性>
厚さ2mmの架橋物を用いて、JIS-K6251に準じて、100%モジュラス(MPa)、引張破断強度(MPa)および引張破断伸び(%)を測定した。
【0489】
<硬度>
厚さ2mmの架橋物を用いて、JIS-K6253に準じて硬度(Shore A)を測定した(ピーク値)。
【0490】
<架橋物の比重>
厚さ2mmの架橋物を用いて、自動比重計DMA-220H(新光電子社製)を用いて、架橋物の比重を測定した。
【0491】
さらに、以下の方法により、Oリング(P-24)の圧縮永久歪みを測定した。Oリングの圧縮永久歪みは、24.4%であった。
【0492】
<圧縮永久歪み>
圧縮永久歪みは、ASTM D395またはJIS K6262に記載の方法に準じて測定した。Oリングを、圧縮装置を用いて、常温で、圧縮率25%まで圧縮(厚さ(線径)3.5mmのOリングを、厚さ2.625mmまで圧縮)した。
次に、圧縮されたOリングが固定された圧縮装置を、電気炉内に静置し、300℃で70時間放置した後、電気炉から圧縮装置を取り出した。その後、圧縮されたOリングが固定された圧縮装置を、別の電気炉に静置し、70℃で24時間放置した。圧縮装置からOリングを取り外し、取り外したOリングを恒温室に静置し、23℃で30分放置し、Oリングの厚さ(t2)を測定した。次式により、圧縮永久歪みを求めた。圧縮永久歪みが小さいことは、架橋物を過酷な条件で使用した後でも、圧縮永久歪みが小さく、圧縮永久歪み特性に優れることを意味する。
圧縮永久歪み(%)=(t-t)/(t-t)×100
:Oリングの元の厚さ(mm)
:スペーサの厚さ(mm)
:圧縮試験後のOリングの厚さ(mm)
上記の試験においては、t=3.5mm、t=2.625mmである。
【0493】
実施例5
最初に仕込む脱イオン水の量を84.9gに、重合体A水溶液A-2(固形分濃度:2.2質量%)の量を110.8gにそれぞれ変更し、次いでアンモニア水を入れてpHを7.1に調整したこと以外は実施例1と同様に重合を行い、固形分濃度21.1質量%の水性分散液256gを得た。
【0494】
重合時間は11.5時間であった。槽内の付着ポリマーを採取し、加熱により水分を除去すると0.5gで、付着率は0.8質量%であった。
【0495】
得られた水性分散液について、実施例1と同様に後処理を行い、20.0gのパーフルオロエラストマーを得た。
【0496】
得られたパーフルオロエラストマーを分析したところ、以下の結果が得られた。
パーフルオロエラストマーの組成:TFE/PMVE/CNVE=57.6/41.8/0.60モル%
ガラス転移温度:-3.1℃
【0497】
重合速度は24.2g/(時間×kg)、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子のキュムラント平均径は82.3nm、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子数は4.5×1014個/ccであった。
【0498】
実施例6
最初に仕込む脱イオン水の量を128.1gに、重合体A水溶液A-2(固形分濃度:2.2質量%)の量を66.5gにそれぞれ変更し、重合開始後、混合モノマーが16.8g追加された時に10%アンモニア水溶液1.03gを窒素で圧入したこと以外は実施例1と同様に重合を行い、固形分濃度19.6質量%の水性分散液248gを得た。
【0499】
重合時間は7.5時間であった。槽内の付着ポリマーを採取し、加熱により水分を除去すると6.3gで、付着率は11.5質量%であった。
【0500】
得られた水性分散液100gについて、加える脱イオン水を75g、希釈液を滴下する10%塩酸水溶液を500g、洗浄用の脱イオン水を100gとしたこと以外は実施例1と同様に後処理を行い、19.0gのパーフルオロエラストマーを得た。
【0501】
得られたパーフルオロエラストマーを分析したところ、以下の結果が得られた。
パーフルオロエラストマーの組成:TFE/PMVE/CNVE=57.7/41.9/0.48モル%
ガラス転移温度:-3.2℃
【0502】
重合速度は33.4g/(時間×kg)、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子のキュムラント平均径は54.8nm、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子数は1.4×1015個/ccであった。
【0503】
実施例7
(ヨウ素含有パーフルオロエラストマーの重合)
着火源をもたない内容積0.5リットルのステンレススチール製オートクレーブ(SUS316製、フルゾーンタイプの攪拌翼と邪魔板1枚が付属)に、脱イオン水113.2g、101.6gの重合体B水溶液B-2(固形分濃度:2.2質量%)を入れた後、系内を窒素ガスで充分に置換した後、脱気し、1000rpmで撹拌しながら、50℃に昇温し、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)の混合ガス(TFE/PMVE=25.6/74.4モル%比)を、内圧が0.83MPa・Gになるように仕込んだ後、過硫酸アンモニウム(APS)0.0424gを脱イオン水1.5gに溶解し、窒素で圧入して反応を開始した。
【0504】
重合の進行に伴い、圧力が0.783MPa・Gまで降下した時点で、連鎖移動剤としてジヨウ素化合物 I(CFI 0.416gを脱イオン水1.5gと共に圧入した。次いで圧力が0.735MPa・Gとなった時に、TFE2gおよびPMVE1.8gをオートクレーブに導入し、昇圧した。反応の進行にともない同様にTFE及びPMVEを64.8/35.2モル%の比率で圧入し、0.735MPa・G~約0.89MPa・Gの間で、昇圧、降圧を繰り返した。反応開始後、12時間毎にAPS 0.00294gを脱イオン水1.5gと共に窒素で圧入して反応を継続した。混合モノマーが26.6g追加された時に10%アンモニア水溶液1.54gを窒素で圧入し、重合終了までにTFEを44gとPMVEを39.6g圧入した。
【0505】
その後、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して、固形分濃度23.8質量%の水性分散液298gを得た。重合時間は34.2時間であった。水性分散液を取り出した後の槽内の付着ポリマーを採取し、加熱により水分を除去すると0.5gで、付着率は0.7質量%であった。
【0506】
(ヨウ素含有パーフルオロエラストマーの後処理)
得られた水性分散液200gについて、加える脱イオン水を150g、希釈液を滴下する10%塩酸水溶液を1300g、洗浄用の脱イオン水を200gとしたこと以外は実施例1と同様に後処理を行い、46.6gのパーフルオロエラストマーを得た。
【0507】
得られたパーフルオロエラストマーを分析したところ、以下の結果が得られた。
パーフルオロエラストマーの組成:TFE/PMVE=61.1/38.9モル%
ヨウ素含有量:0.19質量%
ムーニー粘度:ML1+10(100℃)=69
ガラス転移温度:-3.8℃
金属含有量:3.5質量ppm
【0508】
重合速度は9.1g/(時間×kg)、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子のキュムラント平均径は119.9nm、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子数は1.7×1014個/ccであった。
【0509】
後処理を行うことにより得られたパーフルオロエラストマー100質量部に対し、架橋剤であるトリアリルイソシアヌレート(TAIC、日本化成社製)を2.0質量部、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25B、日油社製)を1.0質量部、充填剤としてカーボンブラック(Thermax N-990、Cancarb社製)を15質量部配合したものをオープンロールにて混練して、架橋可能なパーフルオロエラストマー組成物を調製した。
【0510】
得られたパーフルオロエラストマー組成物を160℃で10分間プレスして架橋を行った後、さらに180℃で4時間オーブン架橋を施し、厚さ2mmの架橋物およびOリング(P-24)を作製した。実施例4と同様にして、パーフルオロエラストマー組成物および架橋物の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0511】
実施例8
最初に仕込む脱イオン水の量を46.9gに、重合体A水溶液A-2を重合体C水溶液C-2(固形分濃度:2.8質量%)152.2gにそれぞれ変更したこと以外は実施例1と同様に重合を行い、固形分濃度21.8質量%の水性分散液253gを得た。
【0512】
重合時間は9.2時間であった。槽内の付着ポリマーを採取し、加熱により水分を除去すると4.3gで、付着率は7.2質量%であった。
【0513】
得られた水性分散液100gについて、加える脱イオン水を75g、希釈液を滴下する10%塩酸水溶液を800g、洗浄用の脱イオン水を100gとしたこと以外は実施例1と同様に後処理を行い、16.6gのパーフルオロエラストマーを得た。
【0514】
得られたパーフルオロエラストマーを分析したところ、以下の結果が得られた。
パーフルオロエラストマーの組成:TFE/PMVE/CNVE=58.3/41.2/0.51モル%
ガラス転移温度:-3.0℃
【0515】
重合速度は30.9g/(時間×kg)、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子のキュムラント平均径は105.2nm、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子数は2.3×1014個/ccであった。
【0516】
【表1】
【0517】
調製例4
反応器に、170gのsodium 1,1,2,2-tetrafluoro-2-((1,2,2-trifluorovinyl)oxy)ethane-1-sulfonate(単量体D)、340gの水、単量体Dの量に対して2.0モル%に相当する量の過硫酸アンモニウム(APS)を加え、Nフロー下にて40℃で72時間攪拌し、単量体Dの単独重合体である重合体Dを含む重合体D水溶液D-1を得た。反応器内の酸素濃度は15体積ppmから800体積ppmの範囲で推移した。
得られた重合体D水溶液D-1をGPC分析した結果、重合体DはMw=1.0万、Mn=0.8万であった。
容器にアンバーライト(IR120B(H)-HG)300mlを測り取り、水で着色が無くなるまで洗浄した後、1M-HClを500ml加え、1時間室温で攪拌した。コック付きカラムにアンバーライトを充填し、水を滴下液の酸性度が中性になるまで流した。重合体D水溶液D-1をコック付きカラムに投入し滴下を開始した。滴下終了後、水を滴下液が中性になるまで流し、1,1,2,2-tetrafluoro-2-((1,2,2-trifluorovinyl)oxy)ethane-1-sulfonic acid(単量体E)の重合体Eを含む重合体E水溶液E-1を得た。得られた水溶液の濃度は1.5質量%であった。重合体E水溶液E-1を分析した。重合体EはMw=1.0万、Mn=0.8万であった。本水溶液をDLS分析したところ、粒子径を測定できなかった。
【0518】
実施例9
最初に仕込む脱イオン水の量を63.8gに、重合体A水溶液A-2を重合体E水溶液E-1(固形分濃度:1.5質量%)130.0gにそれぞれ変更し、次いでアンモニア水を入れてpH5.9に調整したこと以外は実施例1と同様に重合を行い、固形分濃度22.0質量%の水性分散液259gを得た。
【0519】
重合時間は10.1時間であった。槽内の付着ポリマーを採取し、加熱により水分を除去すると0.4gで、付着率は0.7質量%であった。
【0520】
得られた水性分散液100gについて、加える脱イオン水を75g、希釈液を滴下する35%塩酸水溶液を750g、洗浄用の脱イオン水を100gとしたこと以外は実施例1と同様に後処理を行い、20.8gのパーフルオロエラストマーを得た。
【0521】
得られたパーフルオロエラストマーを分析したところ、以下の結果が得られた。
パーフルオロエラストマーの組成:TFE/PMVE/CNVE=54.0/45.4/0.62モル%
ガラス転移温度:-6.2℃
金属含有量:2.2質量ppm
【0522】
重合速度は29.4g/(時間×kg)、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子のキュムラント平均径は69.5nm、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子数は7.9×1014個/ccであった。
【0523】
実施例10
最初に仕込む脱イオン水の量65.7gに、重合体B水溶液B-2を重合体E水溶液E-1(固形分濃度:1.5質量%)130.0gに、反応開始前に圧入するAPSの量を0.141gに、12時間毎に圧入するAPSの量を0.0294gにそれぞれ変更し、次いでアンモニア水を入れてpH5.9に調整したこと以外は実施例7と同様に重合を行い、固形分濃度23.7質量%の水性分散液299gを得た。
【0524】
重合時間は33.0時間であった。槽内の付着ポリマーを採取し、加熱により水分を除去すると0.47gで、付着率は0.7質量%であった。
【0525】
得られた水性分散液200gについて、加える脱イオン水を150g、希釈液を滴下する10%塩酸水溶液を1300g、洗浄用の脱イオン水を1000gとしたこと以外は実施例1と同様に後処理を行い、51.2gのパーフルオロエラストマーを得た。
【0526】
得られたパーフルオロエラストマーを分析したところ、以下の結果が得られた。
パーフルオロエラストマーの組成:TFE/PMVE=61.3/38.7モル%
ヨウ素含有量:0.18質量%
ガラス転移温度:-6.7℃
【0527】
重合速度は9.3g/(時間×kg)、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子のキュムラント平均径は129.7nm、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子数は1.3×1014個/ccであった。
【0528】
実施例11
着火源をもたない内容積6リットルのステンレススチール製オートクレーブ(SUS316製、攪拌翼と邪魔板1枚が付属)に、脱イオン水1383.4g、1197.3gの重合体B水溶液B-2(固形分濃度:2.2質量%)を入れた後、系内を窒素ガスで充分に置換した後、脱気し、400rpmで撹拌しながら、50℃に昇温し、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)の混合ガス(TFE/PMVE=25.6/74.4モル%比)を、内圧が0.83MPa・Gになるように仕込んだ後、過硫酸アンモニウム(APS)1.277gを脱イオン水5.0gに溶解し、窒素で圧入して反応を開始した。
【0529】
重合の進行に伴い、圧力が0.735MPa・Gとなった時に、TFE14gおよびPMVE12gをオートクレーブに導入して昇圧し、連鎖移動剤としてジヨウ素化合物 I(CFI 5.11gを脱イオン水5.0gと共に圧入した。反応の進行にともない同様にTFE及びPMVEを65.9/34.1モル%の比率で圧入し、0.735MPa・G~約0.87MPa・Gの間で、昇圧、降圧を繰り返した。反応開始後、12時間毎にAPS 0.2394gを脱イオン水3.0gと共に窒素で圧入して反応を継続した。混合モノマーが337.8g追加された時に10%アンモニア水溶液18.53gを窒素で圧入し、重合終了までにTFEを616gとPMVEを528g圧入した。重合中に1,1,2,2-tetrafluoro-3-iodo-1-((1,2,2-trifluorovinyl)oxy)propaneを4回、TFEの総仕込み量が308、364、434、490gに達した時点で、2.08gずつ分割して脱イオン水1.5gと共に窒素で圧入した。
【0530】
その後、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して、固形分濃度29.8質量%の水性分散液3773.7gを得た。重合時間は52.7時間であった。水性分散液を取り出した後の槽内の付着ポリマーを採取し、加熱により水分を除去すると0.7gで、付着率は0.06質量%であった。
【0531】
得られた水性分散液200gについて、加える脱イオン水を150g、希釈液を滴下する10%塩酸水溶液を1300g、洗浄用の脱イオン水を200gとしたこと以外は実施例1と同様に後処理を行い、56.8gのパーフルオロエラストマーを得た。
【0532】
得られたパーフルオロエラストマーを分析したところ、以下の結果が得られた。
ヨウ素含有量:0.44質量%
ムーニー粘度:ML1+10(100℃)=61.1
ガラス転移温度:-1.4℃
【0533】
重合速度は8.3g/(時間×kg)、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子のキュムラント平均径は119.1nm、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子数は2.3×1014個/ccであった。
【0534】
実施例12
最初に仕込む脱イオン水の量831.8gに、重合体B水溶液B-2を重合体E水溶液E-1(固形分濃度:1.5質量%)1756.1gに、反応開始前に圧入するAPSの量を4.257gに、12時間毎に圧入するAPSの量を0.798gにそれぞれ変更し、次いでアンモニア水を入れてpH5.9に調整したこと以外は実施例11と同様に重合を行い、固形分濃度29.8質量%の水性分散液3776.4gを得た。
【0535】
重合時間は30.0時間であった。槽内の付着ポリマーを採取し、加熱により水分を除去すると0.1gで、付着率は0.01質量%であった。
【0536】
得られた水性分散液200gについて、加える脱イオン水を150g、希釈液を滴下する10%塩酸水溶液を1300g、洗浄用の脱イオン水を200gとしたこと以外は実施例1と同様に後処理を行い、56.4gのパーフルオロエラストマーを得た。
【0537】
得られたパーフルオロエラストマーを分析したところ、以下の結果が得られた。
パーフルオロエラストマーの組成:TFE/PMVE=64.1/35.9モル%
ヨウ素含有量:0.43質量%
ムーニー粘度:ML1+10(100℃)=57.5
ガラス転移温度:-3.1℃
【0538】
重合速度は14.7g/(時間×kg)、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子のキュムラント平均径は116.2nm、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子数は2.5×1014個/ccであった。
【0539】
調製例5
反応器に、6.8gのsodium 1,1,2,2-tetrafluoro-2-((1,2,2-trifluorovinyl)oxy)ethane-1-sulfonateで表される単量体D、34gの水、sodium 1,1,2,2-tetrafluoro-2-((1,2,2-trifluorovinyl)oxy)ethane-1-sulfonateの量に対して1.5モル%に相当する量の過硫酸アンモニウム(APS)を加え、N置換及び脱気後、VdFを3.2g導入し、密閉下にて60℃で2時間攪拌し、単量体DとVdFの共重合体である重合体Fを含む重合体F水溶液F-1を得た。反応器内圧は加温後0.30MPaGまで上昇し、反応に伴い0.19MPaGまで低下した。得られた重合体Fを含有する水溶液F-1に水を加え、濃度を2.65質量%に調整した(重合体F水溶液F-2)。
【0540】
得られた重合体F水溶液F-2をNMRで分析してポリマー組成を調べたところ、ポリマーに含まれる単量体Dに基づく重量単位とVdFに基づく重量単位とのモル比は1.0/1.0であった。また、重合体Fにおける単量体Dに基づく重合単位とVdFに基づく重合単位との交互率は、76%以上であった。得られた重合体Fの重量平均分子量(Mw)は15.3×10、数平均分子量(Mn)は7.2×10であった。
【0541】
実施例13
最初に仕込む脱イオン水の量を118.8gに、重合体A水溶液A-2を重合体F水溶液F-2(固形分濃度:2.65質量%)78.0gにそれぞれ変更したこと以外は実施例1と同様に重合を行い、固形分濃度20.8質量%の水性分散液252gを得た。
【0542】
重合時間は5.3時間であった。槽内の付着ポリマーを採取し、加熱により水分を除去すると4.0gで、付着率は7.7質量%であった。
【0543】
得られた水性分散液100gについて、加える脱イオン水を75g、希釈液を滴下する10%塩酸水溶液を700g、洗浄用の脱イオン水を100gとしたこと以外は実施例1と同様に後処理を行い、19.1gのパーフルオロエラストマーを得た。
【0544】
得られたパーフルオロエラストマーを分析したところ、以下の結果が得られた。
パーフルオロエラストマーの組成:TFE/PMVE/CNVE=57.1/42.5/0.38モル%
ガラス転移温度:-5.4℃
【0545】
重合速度は50.3g/(時間×kg)、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子のキュムラント平均径は42.0nm、水性分散液中のパーフルオロエラストマー粒子数は3.4×1014個/ccであった。