(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】環境制御装置、環境調整装置、空気調和装置、環境制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/63 20180101AFI20240904BHJP
F24F 11/46 20180101ALI20240904BHJP
F24F 11/65 20180101ALI20240904BHJP
【FI】
F24F11/63
F24F11/46
F24F11/65
(21)【出願番号】P 2023013127
(22)【出願日】2023-01-31
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥本 衛
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-055226(JP,A)
【文献】特開2023-001424(JP,A)
【文献】特開平06-180139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11//00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が存在する空間の環境を調整する環境調整部(A)を制御する制御部(100)を備えた環境制御装置であって、
前記制御部(100)は、
前記空間に存在する人の生体情報として前記空間に存在する人の心拍、脈波、体動、又は呼吸の情報を検出する非接触式の生体センサ(57)から出力された第1信号を、状態取得部(80)によって取得された前記空間に存在する人の状態を示す状態情報としての前記空間に存在する人の数、位置、姿勢、又は体格の情報に基づいて処理することにより、対象者の生体情報としての前記対象者の心拍、脈波、体動、又は呼吸の情報であり且つ前記第1信号が示す前記生体情報と同じ種類の生体情報を示す第2信号を生成し、
前記第2信号に基づいて、前記対象者の感情情報を推定し、
前記対象者の感情情報に基づいて、前記環境調整部(A)を制御する
環境制御装置。
【請求項2】
前記第1信号は、複数の人の前記生体情報が重畳された信号であり、
前記制御部(100)は、前記状態情報に基づいて前記第1信号から前記対象者の前記生体情報を示す信号を抽出することにより、前記第2信号を生成する
請求項1に記載の環境制御装置。
【請求項3】
前記制御部(100)は、ユーザが設定する優先情報に基づいて前記対象者を決定する
請求項
2に記載の環境制御装置。
【請求項4】
人が存在する空間の環境を調整する環境調整部(A)を制御する制御部(100)を備えた環境制御装置であって、
前記制御部(100)は、
前記空間に存在する人の生体情報を検出する非接触式の生体センサ(57)から出力された第1信号を、状態取得部(80)によって取得された前記空間に存在する人の状態を示す状態情報に基づいて処理することにより、対象者の生体情報を示す第2信号を生成し、
前記第2信号に基づいて、前記対象者の感情情報を推定し、
前記対象者の感情情報に基づいて、前記環境調整部(A)を制御し、
前記第1信号は、複数の人の前記生体情報が重畳された信号且つ振幅の異なる複数の信号が重畳された信号であり、
前記制御部(100)は、前記空間における前記対象者の相対的な位置に応じて、前記第1信号の中から所定の振幅の信号を抽出することにより、前記第2信号を生成する
環境制御装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の前記環境調整部(A)、前記生体センサ(57)、前記状態取得部(80)、及び前記制御部(100)を備える
環境調整装置。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1つに記載の前記環境調整部(A)、前記生体センサ(57)、前記状態取得部(80)、及び前記制御部(100)を備え、
前記環境調整部(A)は、前記対象者が存在する前記空間の空気を調和する空気調和部(A)である
空気調和装置。
【請求項7】
人が存在する空間の環境を調整する環境調整部(A)を制御する環境制御方法であって、
前記空間に存在する人の生体情報として前記空間に存在する人の心拍、脈波、体動、又は呼吸の情報を検出する非接触式の生体センサ(57)から出力された第1信号を、状態取得部(80)によって取得された前記空間に存在する人の状態を示す状態情報としての前記空間に存在する人の数、位置、姿勢、又は体格の情報に基づいて処理することにより、対象者の生体情報としての前記対象者の心拍、脈波、体動、又は呼吸の情報であり且つ前記第1信号が示す前記生体情報と同じ種類の生体情報を示す第2信号を生成する処理と、
前記第2信号に基づいて、前記対象者の感情情報を推定する処理と、
前記対象者の感情情報に基づいて、前記環境調整部(A)を制御する処理とを含む
環境制御方法。
【請求項8】
人が存在する空間の環境を調整する環境調整部(A)を制御する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記空間に存在する人の生体情報として前記空間に存在する人の心拍、脈波、体動、又は呼吸の情報を検出する非接触式の生体センサ(57)から出力された第1信号を、状態取得部(80)によって取得された前記空間に存在する人の状態を示す状態情報としての前記空間に存在する人の数、位置、姿勢、又は体格の情報に基づいて処理することにより、対象者の生体情報としての前記対象者の心拍、脈波、体動、又は呼吸の情報であり且つ前記第1信号が示す前記生体情報と同じ種類の生体情報を示す第2信号を生成する処理と、
前記第2信号に基づいて、前記対象者の感情情報を推定する処理と、
前記対象者の感情情報に基づいて、前記環境調整部(A)を制御する処理と、をコンピュータに実行させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、環境制御装置、環境調整装置、空気調和装置、環境制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の空気調和装置は、対象者の人の属性を判定し、その人の属性に応じて、風量や圧縮機の回転数を制御する。これにより、対象者の快適性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような空気調和装置では、対象者に環境刺激を付与することで、対象者の快適性を向上させたり、対象者の集中力を向上させたりできる。しかし、このような環境刺激を付与したとしても、この環境刺激が対象者にとって適切でないことがある。
【0005】
そこで、対象者の生体情報から対象者が感じている快適や不快などの感情を推定することが考えられる。特許文献1の空気調和装置が設置される空間では、様々な人が出入りするため、対象者の生体情報を簡単に取得する手段として、非接触式のセンサを用いることが好ましい。
【0006】
しかし、非接触式のセンサによって対象者の生体情報を取得する場合、対象者の姿勢によってはセンサで取得される信号の振幅が小さいため、対象者の感情を推定できないことがあった。また、取得された生体情報が空間に居るどの人の生体情報であるか特定することが難しいため、対象者個人の感情を推定することが難しかった。
【0007】
本開示の目的は、対象者の感情情報の推定精度を向上できる環境制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様は、人が存在する空間の環境を調整する環境調整部(A)を制御する制御部(100)を備えた環境制御装置を対象とする。前記制御部(100)は、前記空間に存在する人の生体情報を検出する非接触式の生体センサ(57)から出力された第1信号を、状態取得部(80)によって取得された前記空間に存在する人の状態を示す状態情報に基づいて処理することにより、対象者の生体情報を示す第2信号を生成し、前記第2信号に基づいて、前記対象者の感情情報を推定し、前記対象者の感情情報に基づいて、前記環境調整部(A)を制御する。
【0009】
第1の態様では、生体センサ(57)の出力信号である第1信号を人の状態情報に基づいて処理することにより第2信号が生成される。この第2信号に基づいて対象者の感情情報が推定されるので、感情情報の推定精度を向上できる。
【0010】
第2の態様は、第1に態様において、前記状態情報は、前記空間に存在する人の数、位置、姿勢、又は体格の情報を含む。
【0011】
第2の態様では、状態情報が空間に存在する人の数、位置、姿勢、又は体格の情報を含むので、これらの各情報に応じて第1信号を適切に処理できる。これにより、感情情報を推定するのに十分な第2信号を生成できる。
【0012】
第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記生体情報は、前記空間に存在する人の心拍、脈波、体動、又は呼吸の情報を含む。
【0013】
第3の態様では、生体情報が空間に存在する人の心拍、脈波、体動、又は呼吸の情報を含むので、感情情報を推定できる。
【0014】
第4の態様は、第1~第3のいずれか1つの態様において、前記第1信号は、複数の人の前記生体情報が重畳された信号であり、前記制御部(100)は、前記状態情報に基づいて前記第1信号から前記対象者の前記生体情報を示す信号を抽出することにより、前記第2信号を生成する。
【0015】
第4の態様では、空間に複数の人が居る場合に、複数の人の生体信号が重畳された第1信号から対象者の生体情報を示す信号が抽出される。これにより、対象者個人の生体情報を示す信号が特定されるので、対象者の感情情報を精度よく推定できる。
【0016】
第5の態様は、第4の態様において、前記第1信号は、振幅の異なる複数の信号が重畳された信号であり、前記制御部(100)は、前記空間における前記対象者の相対的な位置に応じて、前記第1信号の中から所定の振幅の信号を抽出することにより、前記第2信号を生成する。
【0017】
生体センサ(57)では、生体センサ(57)に比較的近い位置に居る人の信号の振幅は大きく、生体センサ(57)から比較的遠い位置に居る人の信号の振幅は小さい。第5の態様では、制御部(100)が、空間における対象者の相対的な位置に応じて、第1信号の中から所定の振幅の信号を抽出することにより、対象者個人の生体情報示す信号を特定できる。
【0018】
第6の態様は、第4又は第5の態様において、前記制御部(100)は、ユーザが設定する優先情報に基づいて前記対象者を決定する。
【0019】
第6の態様では、ユーザが設定する優先情報に基づいて対象者が決定されるので、空間に複数の人が居る場合において、ユーザが優先させたい人にとって好ましい環境に調整できる。
【0020】
第7の態様は、環境調整装置を対象とする。環境調整装置は、第1~6のいずれか1つの態様の前記環境調整部(A)、前記生体センサ(57)、前記状態取得部(80)、及び前記制御部(100)を備える。
【0021】
第8の態様は、空気調和装置を対象とする。空気調和装置は、第1~第6のいずれか1つの態様の前記環境調整部(A)、前記生体センサ(57)、前記状態取得部(80)、及び前記制御部(100)を備える。前記環境調整部(A)は、前記対象者が存在する前記空間の空気を調和する空気調和部(A)である。
【0022】
第9の態様は、人が存在する空間の環境を調整する環境調整部(A)を制御する環境制御方法を対象とする。環境制御方法は、前記空間に存在する人の生体情報を検出する非接触式の生体センサ(57)から出力された第1信号を、状態取得部(80)によって取得された前記空間に存在する人の状態を示す状態情報に基づいて処理することにより、対象者の生体情報を示す第2信号を生成する処理と、前記第2信号に基づいて、前記対象者の感情情報を推定する処理と、前記対象者の感情情報に基づいて、前記環境調整部(A)を制御する処理とを含む。
【0023】
第10の態様は、人が存在する空間の環境を調整する環境調整部(A)を制御する処理をコンピュータに実行させるプログラムを対象とする。プログラムは、前記空間に存在する人の生体情報を検出する非接触式の生体センサ(57)から出力された第1信号を、状態取得部(80)によって取得された前記空間に存在する人の状態を示す状態情報に基づいて処理することにより、対象者の生体情報を示す第2信号を生成する処理と、前記第2信号に基づいて、前記対象者の感情情報を推定する処理と、前記対象者の感情情報に基づいて、前記環境調整部(A)を制御する処理と、をコンピュータに実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施形態に係る空気調和装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、空気調和装置の概略の配管系統図である。
【
図3】
図3は、空気調和装置の室内機の内部構造を示す構成図である。
【
図4】
図4は、空気調和装置の室内機の正面図である。
【
図5】
図5は、空気調和装置の主要機器を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、Russelの感情円環モデルの模式図である。
【
図7】
図7は、対象優先運転のフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2信号生成処理のフローチャートである。
【
図9】
図9は、変形例4の空気調和装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比または数を誇張または簡略化して表す場合がある。
【0026】
本開示の環境制御装置(E)は、空気調和装置(10)に適用される。空気調和装置(10)は、環境調整装置の一例である。
図1に示すように、空気調和装置(10)は、対象空間である室内空間(I)の対象者(T)に環境刺激を付与する。空気調和装置(10)は、室内空間(I)の環境を調整する。空気調和装置(10)は、室内空間(I)の空気を調和する。本実施形態の空気調和装置(10)は、室内空間(I)の空気の温度を調節する。
【0027】
(1)空気調和装置の構成
(1-1)全体構成
図1および
図2に示すように、空気調和装置(10)は、室外機(20)と、室内機(30)と、第1連絡配管(12)と、第2連絡配管(13)とを有する。空気調和装置(10)は、1つの室外機(20)と1つの室内機(30)とを有するペア式である。第1連絡配管(12)は、ガス連絡配管であり、第2連絡配管(13)は、液連絡配管である。室外機(20)と室内機(30)とが、第1連絡配管(12)および第2連絡配管(13)を介して互いに接続されることで、冷媒回路(11)が構成される。冷媒回路(11)は、冷媒を循環させることにより冷凍サイクルを行う。冷媒は、例えばジフルオロメタンである。
【0028】
(1-2)室外機
室外機(20)は、室外に設置される。室外機(20)は、室外ケーシング(20a)と、圧縮機(21)と、室外熱交換器(22)と、膨張弁(23)と、四方切換弁(24)と、室外ファン(25)とを有する。室外ケーシング(20a)は、圧縮機(21)と、室外熱交換器(22)と、膨張弁(23)と、四方切換弁(24)と、室外ファン(25)とを収容する。
【0029】
圧縮機(21)は、揺動ピストン式、ロータリ式、スクロール式などの回転式圧縮機である。室外熱交換器(22)は、フィンアンドチューブ式である。四方切換弁(24)は、第1状態(
図2の実線で示す状態)と第2状態(
図2の破線で示す状態)とに切り換わる。第1状態の四方切換弁(24)は、圧縮機(21)の吐出部と室外熱交換器(22)のガス端部とを連通させ、且つ圧縮機(21)の吸入部と第1連絡配管(12)とを連通させる。第2状態の四方切換弁(24)は、圧縮機(21)の吐出部と第1連絡配管(12)とを連通させ、且つ圧縮機(21)の吸入部と室外熱交換器(22)のガス端部とを連通させる。室外ファン(25)は、プロペラファンである。
【0030】
(1-3)室内機
図3および
図4に示す室内機(30)は、室内空間(I)に設置される。室内機(30)は、室内空間(I)の壁(W)に設置される壁掛け式である。室内機(30)は、室内ケーシング(30a)と、エアフィルタ(31)と、室内熱交換器(32)と、室内ファン(33)と、ドレンパン(34)と、第1フラップ(35)と、第2フラップ(36)とを有する。
【0031】
室内ケーシング(30a)は、左右に横長の中空状に形成される。室内ケーシング(30a)は、エアフィルタ(31)と、室内熱交換器(32)と、室内ファン(33)と、ドレンパン(34)と、第1フラップ(35)と、第2フラップ(36)とを収容する。室内ケーシング(30a)には、吸込口(41)および吹出口(42)が形成される。吸込口(41)は、室内ケーシング(30a)の上部に形成される。吸込口(41)は、室内空間(I)の空気を吸い込むための開口である。吸込口(41)は、室内ケーシング(30a)の長手方向(左右方向)に延びる。吹出口(42)は、室内ケーシング(30a)の下部の前側寄りに形成される。吹出口(42)は、室内ケーシング(30a)の長手方向に延びる。室内ケーシング(30a)の内部には、吸込口(41)から吹出口(42)までの間に空気通路(43)が形成される。
【0032】
エアフィルタ(31)は、空気通路(43)における室内熱交換器(32)の上流側に配置される。エアフィルタ(31)は、吸込口(41)に沿うように形成されるメッシュ状の部材である。エアフィルタ(31)は、吸込口(41)から吸い込まれる空気中の塵埃を捕集する。
【0033】
室内熱交換器(32)は、空気通路(43)における室内ファン(33)の上流側に配置される。室内熱交換器(32)は、フィンアンドチューブ式の熱交換器である。室内熱交換器(32)は、その内部を流れる冷媒と、室内ファン(33)によって搬送される空気とを熱交させる。
【0034】
室内ファン(33)は、送風機の一例である。室内ファン(33)は、クロスフローファンである。室内ファン(33)は、室内ケーシング(30a)の長手方向に延びている。室内ファン(33)は、ファンモータ(33a)によって回転駆動される。室内ファン(33)は、空気通路(43)の空気を搬送する。室内ファン(33)が駆動すると、室内空間(I)の空気が空気通路(43)に吸い込まれ、空気通路(43)を流れる。同時に、空気通路(43)の空気は、吹出口(42)から吹き出される。室内ファン(33)は、吹出口(42)から室内空間(I)へ供給される吹出空気の風量を調節可能に構成される。ファンモータ(33a)の回転数が調節されることで、吹出空気の風量が調節される。
【0035】
ドレンパン(34)は、室内熱交換器(32)の下側に配置される。ドレンパン(34)は、室内ケーシング(30a)内で発生した水を受けるトレーである。ドレンパン(34)は、室内熱交換器(32)の表面で発生した結露水を受ける。
【0036】
第1フラップ(35)および第2フラップ(36)は、吹出空気の風向を調節する風向調節部を構成する。室内機(30)は、2つの第1フラップ(35)と、8つの第2フラップ(36)とを有するが、これらの数は単なる例示である。第1フラップ(35)は、吹出空気の上下の向きを調節する。第2フラップ(36)は、吹出空気の左右の向きを調節する。2つの第1フラップ(35)は、上下方向に配列される。第1フラップ(35)は、室内ケーシング(30a)の長手方向に沿って延びる。第1フラップ(35)は、第1フラップモータ(35a)の駆動により、上下に回動する。複数の第2フラップ(36)は、室内ケーシング(30a)の長手方向に配列される。第2フラップ(36)は、上下方向に沿って延びる。第2フラップ(36)は、第2フラップモータ(36a)の駆動により、左右に回動する。
【0037】
(1-4)リモートコントローラ
図2および
図5に示すように、空気調和装置(10)は、リモートコントローラ(50)を有する。リモートコントローラ(50)は、操作部(51)と表示部(52)とを有する。操作部(51)は、ユーザが空気調和装置(10)に対する各種の指示を入力するために用いられる。操作部(51)は、ボタン、スイッチ、またはタッチパネルなどで構成される。ここでいう指示は、空気調和装置(10)のONとOFFの切り換え、空気調和装置(10)の運転モードの選択、室内空間(I)の設定温度の変更を含む。表示部(52)は、空気調和装置(10)の状態や運転に関する情報を表示する。この情報は、空気調和装置(10)の運転モードや設定温度を含む。
【0038】
(1-5)センサ
空気調和装置(10)は、複数のセンサを有する。複数のセンサは、室内温度センサ(55)と、赤外線センサ(56)と、電波センサ(57)とを含む。室内温度センサ(55)は、吸込口(41)の付近に配置される。
図4に示すように、赤外線センサ(56)および電波センサ(57)は、室内ケーシング(30a)の前面に配置される。赤外線センサ(56)および電波センサ(57)は、室内ケーシング(30a)の前面における長手方向(左右方向)の中間位置に配置される。
【0039】
室内温度センサ(55)は、室内空間(I)の空気の温度を検出する。室内温度センサ(55)は、吸込口(41)に吸い込まれる空気の温度を検出する。
【0040】
赤外線センサ(56)は、室内空間(I)の空気の温度分布、および室内空間(I)に存在する人の表面温度を検知する。赤外線センサ(56)は、室内空間(I)を2次元的な複数の区間に細分化し、これらの区間毎の温度のデータを取得するために用いられる。
【0041】
電波センサ(57)は、対象者(T)の感情情報を取得するためのセンサである。電波センサ(57)は、マイクロ波を用いて対象者(T)の生体信号を検出するバイタルセンサである。電波センサ(57)は、非接触式のバイタルセンサである。つまり、電波センサ(57)は、対象者(T)に接触させることなく対象者(T)の生体信号を検出できる。生体信号は、対象者(T)の呼吸、心拍、脈波、脳波、体動などに由来する信号を含む。電波センサ(57)は、本開示の生体センサに対応する。
【0042】
(1-6)制御部
制御部(100)は、空気調和装置(10)を制御する環境制御装置(E)を構成する。厳密にいうと、制御部(100)は、空気調和部(A)を制御する。ここで、空気調和部(A)は、室内空間(I)の空調を行うために必要な機械的な要素を意味する。空気調和部(A)は、対象者の周囲の環境を調整し、対象者(T)に環境刺激を付与するための環境調整部を構成する。
【0043】
図5に示すように、制御部(100)は、室内制御部(IC)、室外制御部(OC)、および操作制御部(RC)を有する。室内制御部(IC)、室外制御部(OC)、および操作制御部(RC)は、有線または無線を介して互いに通信可能に構成される。室内制御部(IC)、室外制御部(OC)、および操作制御部(RC)のそれぞれは、MCU(Micro Control Unit,マイクロコントローラユニット)、電気回路、電子回路を含む。MCUは、CPU(Central Processing Unit,中央演算処理装置)、メモリ、通信インターフェースを含む。メモリには、CPUが実行するための各種のプログラムが記憶されている。
【0044】
室外制御部(OC)は、室外機(20)に設けられる。室外制御部(OC)は、室外ケーシング(20a)の内部に配置される。室外制御部(OC)は、圧縮機(21)、膨張弁(23)、四方切換弁(24)、および室外ファン(25)を制御する。厳密には、室外制御部(OC)は、圧縮機(21)の運転および停止、圧縮機(21)の回転数、膨張弁(23)の開度、四方切換弁(24)の状態、室外ファン(25)の運転および停止、室外ファン(25)の回転数を制御する。
【0045】
室内制御部(IC)は、室内機(30)に設けられる。室外制御部(OC)は、室内ケーシング(30a)の内部に配置される。室内制御部(IC)は、室内ファン(33)を制御する。具体的には、室内制御部(IC)は、室内ファン(33)の運転および停止、室内ファン(33)のファンモータ(33a)の回転数を制御する。室内制御部(IC)は、第1フラップ(35)および第2フラップ(36)を制御する。具体的には、室内制御部(IC)は、第1フラップ(35)および第2フラップ(36)の角度位置を調節するように、第1フラップモータ(35a)および第2フラップモータ(36a)を制御する。
【0046】
室内制御部(IC)には、室内温度センサ(55)、赤外線センサ(56)、および電波センサ(57)の検出信号が入力される。
【0047】
操作制御部(RC)は、ユーザが操作部(51)により入力した運転モードや設定温度に関する指令を室内制御部(IC)に送信する。この指令は、室内制御部(IC)から室外制御部(OC)に送信される。
【0048】
(2)基本動作
空気調和装置(10)は、冷房運転と、暖房運転とを行う。
【0049】
(2-1)冷房運転
冷房運転は、室内空間(I)の空気を冷却し、設定温度(目標温度)に近づける運転である。冷房運転では、四方切換弁(24)が第1状態になる。圧縮機(21)で圧縮した冷媒が室外熱交換器(22)で放熱した後、膨張弁(23)で減圧する。減圧した冷媒は、室内熱交換器(32)で蒸発する。室内熱交換器(32)によって冷却された空気は室内空間(I)へ供給される。室内熱交換器(32)で蒸発した冷媒は、圧縮機(21)に吸入される。
【0050】
(2-2)暖房運転
暖房運転は、室内空間(I)の空気を加熱し、設定温度(目標温度)に近づける運転である。暖房運転では、四方切換弁(24)が第2状態になる。暖房運転では、圧縮機(21)で圧縮した冷媒が室内熱交換器(32)で放熱した後、膨張弁(23)で減圧する。室内熱交換器(32)によって加熱された空気は室内空間(I)へ供給される。減圧した冷媒は、室外熱交換器(22)で蒸発した後、圧縮機(21)に吸入される。
【0051】
(3)対象優先運転
空気調和装置(10)は、対象優先運転を行う。対象優先運転は、優先情報に基づいて決定された対象者(T)に対して環境刺激を付与し、対象者(T)の感情を快適に維持させる運転である。対象優先運転に関する内容の詳細を説明する。
【0052】
(3-1)状態取得部
空気調和装置(10)は、室内空間(I)に存在する人の状態を示す状態情報を取得するための状態取得部(80)を有する。状態取得部(80)は、赤外線センサ(56)および第1演算処理部(81)によって構成される。本実施形態では、第1演算処理部(81)は、空気調和装置(10)の制御部(100)に設けられる。具体的には、
図5に示すように、第1演算処理部(81)は、室内制御部(IC)に設けられる。
【0053】
状態取得部(80)は、赤外線センサ(56)の出力に基づいて室内空間(I)の温度分布を示す2次元の熱画像を生成する。熱画像は、例えば、複数の画素が格子状に配置された構成である。状態取得部(80)は、生成した熱画像に基づいて、人の状態情報を出力する。状態取得部(80)は、熱画像を解析することにより、人の状態情報を出力する。これにより、室内空間(I)に存在する人の状態情報を取得できる。状態情報は、室内空間(I)に存在する人の数、位置、姿勢、又は体格の情報を含む。
【0054】
(3-2)感情推定部
空気調和装置(10)は、対象者(T)の感情情報を推定するための感情推定部(60)を有する。感情推定部(60)は、電波センサ(57)および第2演算処理部(61)によって構成される。本実施形態では、第2演算処理部(61)は、空気調和装置(10)の制御部(100)に設けられる。具体的には、
図5に示すように、第2演算処理部(61)は、室内制御部(IC)に設けられる。
【0055】
感情推定部(60)は、電波センサ(57)で検出した生体信号に基づいて対象者(T)の感情情報を推定する。本実施形態の感情推定部(60)は、快適-不快の感情価と、覚醒-非覚醒の状態とに基づいて対象者(T)の感情を推定する。
図6に示すように、人の感情は、例えばRusselが推定した感情円環モデルで表すことができる。感情円環モデルは、横軸Xに快適-不快の感情価、縦軸Yに覚醒-非覚醒をとった場合に、感情価および覚醒度合いと、人の感情の関係を概念的に表したものである。このため、快適-不快の感情価、および覚醒-非覚醒の状態を把握できれば、人の感情を推定できる。
【0056】
快適-不快の感情価は、自律神経の状態を示す指標に基づいて推定できる。ここで、このパラメータとしては、自律神経バランス(LF/HF)や自律神経活動度(SDNN)がある。これらのパラメータは、何れも電波センサ(57)が検出した生体信号から抽出した心拍の成分に基づき取得できる。
【0057】
LF/HFは、対象者(T)の交感神経と副交感神経のバランスを指標化したものである。感情推定部(60)は、例えば心拍間隔を周波数解析して、0.05.Hz~0.20Hzの領域の間の低周波成分(LF)と、0.20Hz以上の高周波成分(HF)を求め、これらの成分の比をLF/HFとして求める。HFは、副交感神経が交感神経よりも優位である場合に大きくなり、LHは、交換神経が副交感神経よりも優位である場合に大きくなる。したがって、対象者(T)が不快であり、ストレスが高い場合には、LF/HFが大きくなる。逆に、対象者(T)が快適であり、ストレスが低い場合には、LF/HFが小さくなる。
【0058】
SDNNは、心拍間隔のゆらぎを表す指標である。SDNNは、例えば5分間における心拍間隔の標準偏差である。SDNNは、副交感神経が交感神経よりも優位である場合に大きくなり、交換神経が副交感神経よりも優位である場合に小さくなる。したがって、対象者(T)が不快であり、ストレスが高い場合には、SDNNが小さくなる。逆に、対象者(T)が快適であり、ストレスが低い場合には、SDNNは大きくなる。
【0059】
覚醒-非覚醒の状態は、対象者(T)の体動、呼吸、心拍などに影響を与える。このため、電波センサ(57)で取得した生体信号から、体動、呼吸、心拍に由来する信号を抽出することで、対象者(T)が覚醒状態か、非覚醒状態かを推定できる。
【0060】
以上のようにして、快適-不快の感情価、および覚醒-非覚醒状態がわかれば、感情円環モデルを用いて対象者(T)の感情を推定できる。
【0061】
(3-3)対象優先運転の具体的な制御動作
対象優先運転の詳細について、
図7および
図8のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0062】
ユーザがリモートコントローラ(50)の操作部(51)を操作し、対象優先運転を開始させる入力操作を行うと、制御部(100)に対象優先運転の開始が要求される。すると、制御部(100)は、対象優先運転を開始させる。
【0063】
図7に示すように、対象優先運転が始まると、ステップS11では、制御部(100)が、ユーザが入力する優先情報に基づいて、対象者(T)を決定する。具体的には、まず制御部(100)が、ユーザに優先情報を入力させるための信号を表示部(52)に出力する。この信号が表示部(52)に出力されると、ユーザは操作部(51)を操作して、優先情報を入力する。優先情報が入力されると、制御部(100)は、入力された優先情報に基づいて対象者(T)を決定する。ユーザは操作部(51)を操作して、表示部(52)に表示される複数の優先情報の中から1つ又は複数の優先情報を選択してもよい。
【0064】
優先情報は、感情推定を行う対象者(T)を決定するために用いられる優先事項に関する情報である。優先情報は、例えば、室内空間(I)における位置(手前、中央、奥など)、人の属性(幼児や大人など)、人の姿勢(立位、座位、臥位など)、人の状態(睡眠中、安静状態など)などの情報である。例えば、優先情報として入力された位置の情報が「手前」であった場合には、室内空間(I)を室内機(30)から離れる方向に3分割したときに室内機(30)から最も近い区画に居る人が対象者(T)となる。ここで決定される対象者(T)は、1つの優先情報に基づいて決定されてもよいし、複数の優先情報に基づいて決定されてもよい。
【0065】
次いで、ステップS12では、制御部(100)が空気調和部(A)に初期動作を開始させる。初期動作では、室内空間(I)の温度を所定温度に近づけるように、上述した冷房運転や暖房運転と同様の動作が行われる。つまり、室内熱交換器(32)で冷却または加熱された空気が、室内空間(I)に供給される。ここでいう所定温度は、例えば室内の目標温度である。目標温度は、リモートコントローラ(50)に設定された設定温度に相当する。また、初期動作では、対象者(T)に吹出空気が届くように、第1フラップ(35)および第2フラップ(36)を調節する。
【0066】
次いで、ステップS13からステップS16では、制御部(100)が感情推定動作を行う。感情推定動作では、制御部(100)が対象者(T)の感情情報を推定する。具体的には、制御部(100)が、電波センサ(57)で検出した生体信号に基づいて、上述のようにして、対象者(T)の快適-不快の感情価、および覚醒-非覚醒の状態を推定する。
【0067】
詳細には、ステップS13において、状態取得部(80)が、室内空間(I)に存在する人の状態情報を取得する。具体的には、ステップS21では、第1演算処理部(81)が赤外線センサ(56)の出力に基づいて、上述のように、人の状態情報を取得する。
【0068】
次いで、ステップS14において、第2演算処理部(61)が、電波センサ(57)から出力された第1信号を取得する。第1信号には、対象者(T)を含む室内空間(I)に存在する人の呼吸、心拍、脈波、体動などに由来する信号が含まれる。室内空間(I)に人が一人だけ居る場合には、第1信号は、その人の呼吸や心拍等に由来する信号が重畳された信号である。室内空間(I)に人が複数人居る場合には、第1信号は、室内空間(I)に居る人全員の呼吸や心拍等に由来する信号が重畳された信号である。
【0069】
次いで、ステップS15において、第2演算処理部(61)が、第1信号および状態情報に基づいて、第2信号を生成する。具体的には、ステップS23では、第2演算処理部(61)が、状態情報に基づいて第1信号を処理することにより、第2信号を生成する。第2信号を生成する処理(第2信号生成処理)の詳細については、後述する。
【0070】
次いで、ステップS16において、第2演算処理部(61)が、生成された第2信号に基づいて、対象者(T)の感情情報を推定する。具体的には、第2演算処理部(61)が、第2信号に基づいて、対象者(T)の快適-不快の感情価、および覚醒-非覚醒の状態を推定する。
【0071】
次いで、ステップS17では、制御部(100)は、対象者(T)の感情が快適の範囲であることを示す条件が成立するか否かを判定する。この条件は、推定した対象者(T)の感情が、
図6の感情円環モデルの縦軸Yの右側の範囲にあることを意味する。この条件は、例えば上述したLF/HFが所定値より小さい条件や、SDNNが所定値より大きい条件であってもよい。
【0072】
ステップS17において、対象者(T)の感情が快適と判定されると、ステップS12の初期動作が継続して実行される。ステップS17において、条件が成立しない場合、処理はステップS18に移行する。
【0073】
ステップS18では、制御部(100)は、感情改善動作を行う。感情改善動作では、制御部(100)は、対象者(T)の感情を改善させるように、空気調和部(A)を制御する。具体的には、制御部(100)は、対象者(T)に向けて吹出空気を送りつつ、現在の運転条件と異なる運転条件で空気調和部(A)を制御する。この際、異なる運転条件として、対象者(T)の感情が現在の状態に対して逆方向に遷移するような運転条件とすることが好ましい。対象者(T)の感情が現在の状態に対して逆方向に遷移するとは、例えば、
図6の感情円環モデルにおいて、現在の対象者(T)の感情が不快側かつ覚醒側の場合には、対象者(T)の感情を快適側且つ非覚醒側に変化させることであり、現在の対象者(T)の感情が不快側かつ非覚醒側の場合には、対象者(T)の感情を快適側且つ覚醒側に変化させることである。
【0074】
対象者(T)の感情を不快側かつ覚醒側から快適側且つ非覚醒側に変化させるには、例えば、制御部(100)は、室内空気の温度を現在の温度よりも高くする覚醒側の第1運転条件で空気調和部(A)を運転させる。つまり、制御部(100)は、室内空気の目標温度を上昇させる。これに伴い、室内熱交換器の冷媒温度(凝縮温度や蒸発温度)が高くなるように、圧縮機(21)の回転数が調節される。その結果、対象者(T)に温度を上昇させることに起因する熱刺激が付与される。対象者(T)の周囲の温度をさせ上昇させると、対象者(T)を非覚醒側の状態に促すとともに、対象者(T)の感情価を快適側に近づける効果が得られる。
【0075】
また、対象者(T)の感情を不快側かつ覚醒側から快適側且つ非覚醒側に変化させる別の手段として、例えば、制御部(100)は、空気の風量を現在の風量よりも小さくする覚醒側の第2運転条件で空気調和部(A)を運転させる。つまり、制御部(100)は、吹出空気の風量あるいは風速を小さくするように、室内ファン(33)の回転数を減少させる。その結果、風量を小さくすることに起因する対象者(T)の風の刺激が付与される。対象者(T)に作用する空気の風量が減少すると、対象者(T)を非覚醒側の状態に促すとともに、対象者(T)の感情価を快適側に近づける効果が得られる。
【0076】
以上のように、対象者(T)に対する熱刺激または風の刺激が低減するので、対象者(T)の感情を快適側且つ非覚醒側に遷移させることができる。
【0077】
一方、対象者(T)の感情を不快側かつ非覚醒側から快適側且つ覚醒側に変化させるには、例えば、制御部(100)は、室内空気の温度を現在の温度よりも低くする非覚醒側の第1運転条件で空気調和部(A)を運転させる。つまり、制御部(100)は、室内空気の目標温度を下降させる。これに伴い、室内熱交換器の冷媒温度(凝縮温度や蒸発温度)が低くなるように、圧縮機(21)の回転数が調節される。その結果、対象者(T)に温度を下降させることに起因する熱刺激が付与される。対象者(T)の周囲の温度を下降させると、対象者(T)を覚醒側の状態に促すとともに、対象者(T)の感情価を快適側に近づける効果が得られる。
【0078】
また、対象者(T)の感情を不快側かつ非覚醒側から快適側且つ覚醒側に変化させる別の手段として、例えば、制御部(100)は、空気の風量を現在の風量よりも大きくする非覚醒側の第2運転条件で空気調和部(A)を運転させる。つまり、制御部(100)は、吹出空気の風量あるいは風速を大きくするように、室内ファン(33)の回転数を増加させる。その結果、風量を大きくすることに起因する対象者(T)の風の刺激が付与される。対象者(T)に作用する空気の風量が増加すると、対象者(T)を覚醒側の状態に促すとともに、対象者(T)の感情価を快適側に近づける効果が得られる。
【0079】
以上のように、対象者(T)に対する熱刺激または風の刺激が増加するので、対象者(T)の感情を快適側且つ覚醒側に遷移させることができる。
【0080】
感情改善動作では、制御部(100)は、所定時間を超えて、現在の運転条件と異なる運転条件で空気調和部(A)を動作させた後、上述の感情推定動作を行う。そして、感情推定動作によって得られる対象者(T)の感情に応じて、現在の運転条件を継続する、又は現在の運転条件と異なる運転条件で空気調和部(A)を動作させる。
【0081】
(3-4)第2信号生成処理
図8に示す第2信号生成処理では、ステップS21において、第2演算処理部(61)が、第1信号から心拍に由来する信号(以下、心拍信号という)を抽出する。
【0082】
次いで、ステップS22において、第2演算処理部(61)が、状態情報に含まれる人数の情報が、一人か、複数人かを判定する。ステップS22において、人数の情報が一人と判定されると、処理はステップS23に移行する。ステップS22において、人数の情報が複数人と判定されると、処理はステップS24に移行する。
【0083】
ステップS23において、第2演算処理部(61)が、状態情報に含まれる対象者(T)の姿勢の情報が横向きか否かを判定する。ここで、横向きとは、対象者(T)の前面が室内機(30)に向いていない状態をいう。なお、このとき室内空間(I)には一人だけ存在するため、ステップS21において第1信号から抽出された心拍信号が、対象者(T)の心拍信号である。
【0084】
ステップS23において、姿勢の情報が横向きであると判定されると、処理はステップS25に移行する。ステップS23において、姿勢の情報が横向きではないと判定されると、第1信号から抽出された心拍信号が第2信号として出力される。
【0085】
ステップS25において、第2演算処理部(61)は、対象者(T)の心拍信号の増幅処理を行う。人が横を向いた状態では、電波センサ(57)から出力されるその人の信号の振幅が小さい。そのため、横を向いている人の信号をそのまま用いて感情を推定した場合、横を向いている人の信号がノイズに埋もれてしまい、感情を推定できない可能性があるからである。ステップS25において、第2演算処理部(61)は、対象者(T)の心拍信号に、レベルを変化させたフィルタを用いてフィルタ処理をしてもよい。ステップS25では、信号の処理が行われた後、処理が行われた信号が第2信号として出力される。
【0086】
ステップS24において、第2演算処理部(61)は、状態情報に含まれる人の位置情報に基づいて、第1信号から抽出された心拍信号の中から対象者(T)の心拍信号を抽出する。具体的には、ステップS24において、第2演算処理部(61)は、室内空間(I)における対象者(T)の相対的な位置に応じて、第1信号から抽出された心拍信号の中から所定の振幅の信号を抽出する。これにより、対象者(T)の心拍信号が抽出される。
【0087】
詳細には、このとき、室内空間(I)には複数の人が存在するため、第1信号から抽出された心拍信号は、複数の人の心拍信号が重畳された信号である。そして、電波センサ(57)から出力される心拍信号を含む生体信号は、電波センサ(57)と人との距離に応じて、生体信号の振幅の大きさが異なる。具体的には、電波センサ(57)と人との距離が離れるにしたがって、出力される生体信号の振幅が小さくなる。つまり、室内空間(I)に存在する複数の人が互いに異なる位置に居る場合には、第1信号は、振幅の異なる複数の生体信号が重畳された信号となる。
【0088】
例えば、室内空間(I)に3人の人が居た場合、第1信号の心拍信号には、振幅が1番大きい心拍信号、振幅が2番目に大きい心拍信号、および振幅が1番小さい心拍信号が含まれる。振幅が1番大きい心拍信号は、電波センサ(57)から最も近くに居る人の心拍信号である。振幅が2番目に大きい心拍信号は、電波センサ(57)から2番目に近い位置に居る人の心拍信号である。振幅が1番小さい心拍信号は、電波センサ(57)から最も遠い位置に居る人の心拍信号である。この例において、対象者(T)が電波センサ(57)から最も遠い位置に居る人であった場合には、複数の心拍信号が重畳された信号の中から、振幅が1番小さい心拍信号を抽出することにより、対象者(T)の心拍信号を抽出できる。
【0089】
このように、振幅の相対的な大きさから人の相対的な位置が把握できるので、振幅の異なる各心拍信号と、状態情報に含まれる人の位置情報(電波センサ(57)からの距離情報)とを対応づけることができる。第1信号に含まれる振幅の異なる心拍信号と、状態情報に含まれる複数の人の位置情報とを対応づけることにより、第1信号に含まれる特定の心拍信号が室内空間(I)に居る誰の心拍信号であるかを特定できる。つまり、対象者(T)の相対的な位置に応じて、複数の心拍信号が重畳された信号の中から所定の振幅の信号を抽出することにより、対象者(T)の心拍信号を抽出できる。そして、第2演算処理部(61)は、特定された対象者(T)個人の心拍信号に基づいて対象者(T)の感情情報を推定できるので、感情情報の推定精度を向上させることができる。
【0090】
次いで、ステップS26において、第2演算処理部(61)が、状態情報に含まれる対象者(T)の姿勢の情報が横向きか否かを判定する。
【0091】
ステップS26において、対象者(T)の姿勢の情報が横向きであると判定されると、処理はステップS27に移行する。ステップS26において、姿勢の情報が横向きではないと判定されると、ステップS24において抽出された対象者(T)の心拍信号が第2信号として出力される。
【0092】
ステップS27において、第2演算処理部(61)は、ステップS25と同様に、対象者(T)の心拍信号の増幅処理を行う。ステップS27において、第2演算処理部(61)は、対象者(T)の心拍信号に、レベルを変化させたフィルタを用いてフィルタ処理をしてもよい。ステップS27では、信号の処理が行われた後、処理が行われた信号が第2信号として出力される。
【0093】
以上のように、第2演算処理部(61)が、第1信号および状態情報に基づいて第2信号を生成することにより、対象者(T)の心拍信号を特定するとともに、特定した心拍信号に適切な処理を行うので、対象者(T)の感情情報の推定精度を向上できる。そして、推定精度が向上された対象者(T)の感情情報に基づいて空気調和部(A)が制御されるので、対象者(T)の感情を快適に維持させることができる。
【0094】
例えば、優先情報として位置情報を「手前」と入力した場合には、室内空間(I)の手前側に居る人を対象者(T)としてその人の感情を推定し、その人の快適の感情が維持されるように空気調和部(A)を制御する。また、例えば、優先情報として位置情報を「奥」且つ姿勢情報を「臥位」と入力した場合には、室内空間(I)の奥側で横たわっている人を対象者(T)としてその人の感情を推定し、その人の快適の感情が維持されるように空気調和部(A)を制御する。
【0095】
また、例えば、優先情報として、属性情報を「幼児」と入力した場合には、制御部(100)が、状態情報に含まれる体格情報および位置情報と第1信号に含まれる心拍信号とに基づいて室内空間(I)にいる幼児を特定する。具体的には、体格が小さく且つ心拍信号の振幅が小さい人を幼児と特定する。そして、特定した幼児を対象者(T)としてその幼児の感情を推定し、その幼児の快適の感情が維持されるように空気調和部(A)を制御する。このとき、対象者(T)である幼児が室内空間(I)を移動した場合にも、赤外線センサ(56)によって幼児の位置が特定できるので、継続して幼児の感情を推定して、幼児の感情に応じて空気調和部(A)を制御できる。
【0096】
(3-5)対象優先運転に関する制御方法
以上のように、本開示の制御方法は、上記(3-1)、上記(3-2)、上記(3-3)、上記(3-4)、
図7~
図8に記載の各処理を含む。
【0097】
具体的には、制御方法は、電波センサ(57)から出力された第1信号を、状態取得部(80)によって取得された状態情報に基づいて処理することにより、対象者(T)の生体情報を示す第2信号を生成する処理と、第2信号に基づいて対象者(T)の感情情報を推定する処理と、対象者(T)の感情情報に基づいて空気調和部(A)を制御する処理とを含む。
【0098】
さらに、制御方法は、状態情報に基づいて第1信号から対象者(T)の生体情報を示す信号を抽出することにより、第2信号を生成する処理を含む。制御方法は、室内空間(I)における対象者(T)の相対的な位置に応じ第1信号の中から所定の振幅の信号を抽出することにより、前記第2信号を生成する処理を含む。制御方法は、ユーザが設定する優先情報に基づいて対象者(T)を決定する処理を含む。
【0099】
本開示の制御方法は、詳細を後述する各変形例、およびその他の実施形態で述べる処理を有してもよい。
【0100】
(3-6)プログラム
制御部(100)の記憶部には、上述した対象優先運転に関する制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが記憶される。ここでいう、制御方法は、上記(3-5)の「対象優先運転に関する制御方法」で述べた全ての処理を含む。
【0101】
(4)実施形態の特徴
(4-1)
実施形態の制御部(100)は、室内空間(I)に存在する人の生体情報を検出する電波センサ(57)から出力された第1信号を、状態取得部(80)によって取得された室内空間(I)に存在する人の状態を示す状態情報に基づいて処理することにより、対象者(T)の生体情報を示す第2信号を生成し、第2信号に基づいて対象者(T)の感情情報を推定し、対象者(T)の感情情報に基づいて空気調和部(A)を制御する。
【0102】
電波センサ(57)は、非接触式の生体センサであるため、室内空間(I)に存在する人の位置や姿勢によっては電波センサ(57)の出力が弱い場合がある。電波センサ(57)の出力が弱いと、電波センサ(57)の出力信号に基づいて対象者(T)の感情を推定しても、対象者(T)の感情を正確に把握できないことがあった。また、室内空間(I)に複数の人が居る場合には、どの出力信号が誰のものか特定できないために、対象者(T)個人の感情を推定することができず、対象者(T)にとって快適な環境に調整することが難しかった。
【0103】
これに対し、本実施形態では、電波センサ(57)の出力信号である第1信号を人の状態情報に基づいて処理することにより第2信号が生成される。この第2信号に基づいて対象者(T)の感情情報が推定されるので、感情情報の推定精度を向上できる。
【0104】
(4-2)
実施形態の状態情報は、室内空間(I)に存在する人の数、位置、姿勢、又は体格の情報を含む。
【0105】
本実施形態では、状態情報が室内空間(I)に存在する人の数、位置、姿勢、又は体格の情報を含むので、これらの各情報に応じて第1信号を適切に処理できる。これにより、感情情報を推定するのに十分な第2信号を生成できる。
【0106】
(4-3)
実施形態の生体情報は、室内空間(I)に存在する人の心拍、脈波、体動、又は呼吸の情報を含む。本実施形態では、生体情報が室内空間(I)に存在する人の心拍、脈波、体動、又は呼吸の情報を含むので、感情情報を推定できる。
【0107】
(4-4)
実施形態の第1信号は、複数の人の生体情報が重畳された信号であり、制御部(100)は、状態情報に基づいて第1信号から対象者(T)の生体情報を示す信号を抽出することにより、第2信号を生成する。
【0108】
本実施形態では、室内空間(I)に複数の人が居る場合に、複数の人の生体信号が重畳された第1信号から対象者(T)の生体情報を示す信号が抽出される。これにより、対象者(T)個人の生体情報を示す信号が特定されるので、対象者(T)の感情情報を精度よく推定できる。
【0109】
(4-5)
実施形態の第1信号は、振幅の異なる複数の信号が重畳された信号であり、制御部(100)は、室内空間(I)における対象者(T)の相対的な位置に応じて、第1信号の中から所定の振幅の信号を抽出することにより、第2信号を生成する。
【0110】
電波センサ(57)では、電波センサ(57)に比較的近い位置に居る人の信号の振幅は大きく、電波センサ(57)から比較的遠い位置に居る人の信号の振幅は小さい。本実施形態では、制御部(100)が、室内空間(I)における対象者(T)の相対的な位置に応じて、第1信号の中から所定の振幅の信号を抽出することにより、対象者(T)個人の生体情報示す信号を特定できる。
【0111】
(4-6)
実施形態の制御部(100)は、ユーザが設定する優先情報に基づいて対象者(T)を決定する。本実施形態では、ユーザが設定する優先情報に基づいて対象者(T)が決定されるので、室内空間(I)に複数の人が居る場合において、ユーザが優先させたい人にとって好ましい環境に調整できる。
【0112】
(4-7)
実施形態の感情推定部(60)は、快適-不快の感情価と、対象者(T)の覚醒度に基づいて対象者(T)の感情を推定する。このため、例えば
図6のRusselの感情円環モデルを用いて対象者(T)の感情を特定できる。
【0113】
(5)変形例
上述した実施形態においては、以下のような変形例の構成としてもよい。以下では、上述した実施形態と異なる点について説明する。
【0114】
(5-1)変形例1
変形例1の対象優先運転では、対象者(T)の決定において、複数の対象者(T)を決定してもよい。また、このとき、複数の対象者(T)に対して優先度が設定されてもよい。そして、この優先度は、自動で設定されてもよく、ユーザが手動で設定してもよい。
【0115】
優先度が自動で設定される場合、例えば、室内空間(I)に幼児がいるときには、幼児を最も優先度の高い対象者(T)として決定する。幼児は温度変化への対応能力が高くないからである。
【0116】
例えば、優先度をユーザが手動で設定する場合、ユーザは、優先度が最も高い優先度1の優先情報として「幼児」と入力し、優先度が優先度1の次に高い優先度2の優先情報として「大人」且つ「手前」と入力したとする。
【0117】
この場合、制御部(100)が室内空間(I)に幼児がいると判定すると、制御部(100)は、幼児を対象者(T)として決定し、幼児にとって快適な環境になるように、空気調和部(A)を制御する。制御部(100)が室内空間(I)に幼児がいないと判定すると、状態情報から室内空間(I)に優先度2の「大人」且つ「手前」に人が居るか否かを判定する。制御部(100)が優先度2の優先情報に該当する人がいると判定した場合には、優先度2の優先情報に該当する人を対象者(T)とし、この対象者(T)にとって快適な環境になるように、空気調和部(A)を制御する。制御部(100)は、この対象者(T)が居ないと判定した場合には、表示部(52)にその旨を報知してもよいし、対象優先運転以外の運転(例えば、自動運転モード)を実行してもよい。
【0118】
このように、制御部(100)は、対象者(T)の優先度に応じて、空気調和部(A)を制御する。これにより、ユーザが設定した優先度の高い対象者(T)にとって快適な環境になるように環境を調整できる。
【0119】
(5-2)変形例2
変形例2の対象優先運転において、初期動作を開始した後、制御部(100)が、室内空間(I)に一人だけ居る、且つ対象者(T)が室内空間(I)において同じ場所で安静にしていない(活動している)と判定した場合には、感情推定動作を行わなくてもよい。快適-不快の感情価を自律神経の状態を示す指標に基づいて推定する際には、対象者(T)の状態が安静状態であることが必要であるため、対象者(T)が室内空間(I)を活発に活動している状態では、快適-不快の感情価を正確に推定することが難しいからである。
【0120】
制御部(100)が、室内空間(I)に一人だけ居る、且つ室内空間(I)において同じ場所で安静にしていないと判定した場合には、感情の推定ができないことを報知するための信号を出力する。具体的には、制御部(100)は、この信号を表示部(52)に出力する。表示部(52)は、文字、図形、アイコン、コードなどにより、“対象者の感情が推定できない”ことを示す情報を対象者(T)に報知する。つまり、表示部(52)は、上記情報を対象者(T)に知らせるための報知部である。報知部は、音や光によって上記情報を報知してもよい。
【0121】
(5-3)変形例3
変形例3の対象優先運転において、初期動作を開始した後、制御部(100)が、室内空間(I)に一人だけ居る、且つ対象者(T)が睡眠中であると判定した場合には、感情推定動作を行わなくてもよい。人が眠っているときと活動しているときでは、快適な環境が異なるからである。そのため、対象者(T)が睡眠中である場合、制御部(100)は、睡眠に適した環境になるように空気調和部(A)を制御する。
【0122】
(5-4)変形例4
変形例4の対象優先運転において、初期動作を開始した後に、制御部(100)は、室内空間(I)に一人だけ居る、且つ体格が小さい、且つ心拍数または呼吸数が所定の条件と異なっている場合、室内空間(I)に居る人が幼児であると判定してもよい。ここでいう所定の条件とは、一般的な大人の心拍数または呼吸数の正常範囲を指す。そして、この場合、室内空間(I)に居る人が幼児であり、決定された対象者(T)が幼児である場合、感情を推定する際に用いられるパラメータの判定領域を変更する。これにより、幼児に合わせた感情推定を行うことができるので、感情推定の精度を向上できる。
【0123】
(5-4)変形例4
(5-4-1)基本構成
実施形態の空気調和部(A)は、室内空間(I)の空気の温度を調節する機能と、対象者(T)に供給する空気の風量を調節する機能とを有する。加えて、変形例1の空気調和部(A)は、室内空間(I)を換気する換気要素(70)を有する。厳密には、換気要素(70)は、室内空間(I)に外気を供給する給気の機能と、室内空間(I)の空気を室外に排出する排気の機能とを有する。
図10に示すように、換気要素(70)は、換気ファン(71)と、ダクト(72)と、流路切換機構(73)とを有する。
【0124】
換気ファン(71)は、室外機(20)の内部に設置される。換気ファン(71)は、ファンモータの回転数を調節することにより、風量が可変に構成される。
【0125】
ダクト(72)は、空気が流れる流路を形成する部材である。ダクト(72)は、硬質の管でもよいし、柔軟なホースであってもよい。ダクト(72)は、連絡配管(12,13)とともに壁(W)を貫通する。ダクト(72)の一端は、室外空間(O)に連通し、ダクト(72)の他端は、室内機(30)内の空気通路(43)に接続される。ダクト(72)の一端は、空気通路(43)における室内熱交換器(32)の上流側に接続されるのが好ましい。
【0126】
流路切換機構(73)は、ダクト(72)の中途部に接続される。ダクト(72)は、複数の流路と、これらの流路を切り換えるダンパ(図示を省略)とを有する。ダクト(72)は、第1状態と第2状態とに切り換わる。第1状態のダクト(72)は、換気ファン(71)の吸込側と室外空間(O)とを連通し、且つ換気ファン(71)の吹出側と室内機(30)の空気通路(43)とを連通する。第2状態のダクト(72)は、換気ファン(71)の吸込側と室内機(30)の空気通路(43)とを連通し、且つ換気ファン(71)の吹出側と室外空間(O)とを連通する。
【0127】
制御部(100)は、換気要素(70)を制御する。具体的には、制御部(100)は、換気ファン(71)の運転および停止、換気ファン(71)の回転数、流路切換機構(73)の状態を制御する。制御部(100)は、給気動作と排気動作を切り換えるように、換気要素(70)を制御する。
【0128】
給気動作では、制御部(100)は流路切換機構(73)を第1状態とし、換気ファン(71)を運転させる。給気動作では、室外空間(O)の室外空気が、ダクト(72)および空気通路(43)を介して室内空間(I)へ供給される。
【0129】
排気動作では、制御部(100)は流路切換機構(73)を第2状態とし、換気ファン(71)を運転させる。排気動作では、室内空間(I)の空気が、空気通路(43)およびダクト(72)を介して室外空間(O)へ排出される。
【0130】
(5-4-2)対象優先運転
変形例1の対象優先運転は、感情改善動作において、現在の対象者(T)の感情が不快側かつ覚醒側の場合、制御部(100)が、室内空間(I)の換気量を、現在の動作よりも小さくする。つまり、制御部(100)は、室内空間(I)の換気量を小さくするように、換気要素(70)を制御する。ここでいう換気量は、上述した給気動作による換気量であってもよいし、排気動作による換気量であってもよい。換気量が少なくなると、室内空間(I)のCO2濃度が増大する。その結果、この動作では、対象者(T)に換気に伴う刺激が付与される。換気に伴い刺激は、室内空間(I)のCO2などの気体成分の濃度変化に起因する刺激ということもできる。対象者(T)の周囲のCO2が増大すると、対象者(T)を非覚醒側の状態に促すとともに、対象者(T)の感情価を快適側に近づける効果が得られる。
【0131】
変形例1の対象優先運転は、感情改善動作において、現在の対象者(T)の感情が不快側かつ非覚醒側の場合、制御部(100)が、室内空間(I)の換気量を、現在の動作よりも大きくする。つまり、制御部(100)は、室内空間(I)の換気量を大きくするように、換気要素(70)を制御する。換気量が大きくなると、室内空間(I)のCO2濃度が低下する。その結果、この動作では、対象者(T)に換気に伴う刺激が付与される。対象者の周囲のCO2が減少すると、対象者(T)を覚醒側の状態に促すとともに、対象者(T)の感情価を快適側に近づける効果が得られる。
【0132】
(5-5)変形例5
制御部(100)は、対象者(T)が覚醒側か非覚醒側かの判断を行わずに、快適-不快の感情価のみに基づいて感情改善運転を実行してもよい。この場合、感情推定部(60)は、対象者(T)の感情が快適-不快に関する快適度の感情情報を推定する。
【0133】
(5-6)変形例6
制御部(100)は、感情改善動作において、対象者(T)の快適-不快以外の感情を改善するように空気調和部(A)を制御してもよい。この場合、感情推定部(60)は、例えば
図6の感情円環モデルにある快適-不快以外の感情情報を推定する。
【0134】
(6)その他の実施形態
上記実施形態においては、以下のような構成としてもよい。
【0135】
(6-1)環境調整装置の他の例
上記実施形態の環境調整装置は、空気調和部(A)を有する空気調和装置(10)である。しかし、環境調整装置は、対象者(T)に環境刺激を付与できる環境調整部を有する装置であれば、他の装置であってもよい。環境調整装置は、例えば床暖房装置、浴槽水温調整装置、サウナ装置、または音響発生装置であってもよい。
【0136】
床暖房装置は、対象者(T)に熱刺激を付与するように床面の温度を調整する環境調整部を有する。浴槽水温調整装置は、対象者(T)に熱刺激を付与するように対象者(T)が存在する浴槽内の水温を調整する環境調整部を有する。サウナ装置は、対象者(T)に熱刺激を付与するように対象者(T)が存在するサウナ空間の温度を調整する環境調整部を有する。音響発生装置は、対象者(T)に音の刺激を付与するように音を発する環境調整部を有する。
【0137】
(6-2)感情推定部の他の例
感情推定部(60)は、対象者(T)の感情を推定できれば、他の構成であってもよい。具体的には、感情推定部(60)は、電波センサ(57)に代わる他のセンサを有してもよい。非接触式のセンサは、例えばミリ波レーダであってもよい。
【0138】
感情推定部(60)の第2演算処理部(61)は、制御部(100)と別体に構成されてもよい。具体的には、例えば、感情推定部(60)は、上記のセンサと、第2演算処理部(61)とを有するユニットであり、感情推定部(60)で推定した対象者(T)の感情を制御部(100)に出力する構成であってもよい。この場合、制御部(100)は、ユニットから受信した対象者(T)の感情に基づいて環境調整部を制御する。
【0139】
(6-3)状態取得部の他の例
状態取得部(80)は、室内空間(I)に存在する人の状態情報を取得できれば、他の構成であってもよい。具体的には、状態取得部(80)は、赤外線センサ(56)に代わる他のセンサをゆうしてもよい。赤外線センサ(56)は、対象者(T)の人数を特定するための人数検知部を構成する。赤外線センサ(56)は、対象者(T)の位置を特定するための位置検知部を構成する。赤外線センサ(56)は、対象者(T)の姿勢を特定するための姿勢検知部を構成する。赤外線センサ(56)は、対象者(T)の体格を特定するための体格検知部を構成する。人数検知部、位置検知部、姿勢検知部、および体格検知部は、例えば対象者(T)の静止画や動画を撮像する撮像装置であってもよい。この場合、撮像装置は、サーモカメラであってもよい。
【0140】
状態取得部(80)の第1演算処理部(81)は、制御部(100)と別体に構成されてもよい。具体的には、例えば、状態取得部(80)は、上記のセンサと、第1演算処理部(81)とを有するユニットであり、状態取得部(80)で取得した対象者(T)の状態情報を制御部(100)に出力する構成であってもよい。この場合、制御部(100)は、ユニットから受信した対象者(T)の状態情報に基づいて第1信号を処理して、第2信号を生成する。
【0141】
(6-4)制御部の他の例
制御部(100)は、空気調和装置(10)の通信可能な管理装置に設けられてもよい。管理装置は、例えばサーバ装置、集中管理装置、または端末装置である。端末装置は、ユーザが所有するスマートフォンや、タブレット端末であってもよい。
【0142】
(6-5)空気調和装置の他の例
空気調和装置(10)は、1つの室内機(30)と1つの室外機(20)とを有するペア式である。しかしながら、空気調和装置(10)は、2つ以上の室内機(30)を有する室内マルチ式や、2つ以上の室外機(20)を有する室外マルチ式であってもよい。
【0143】
空気調和装置(10)は、空気を換気する換気装置、空気を浄化する空気清浄装置、空気を加湿したり除湿したりする調湿装置であってもよい。つまり、ここでいう「空気調和」は、空気の温度調節だけでなく、空気の換気、空気の清浄、空気の湿度調節を含む意味である。
【0144】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態に係る要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0145】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0146】
以上説明したように、本開示は、環境制御装置、環境調整装置、空気調和装置、環境制御方法、及びプログラムについて有用である。
【符号の説明】
【0147】
10 空気調和装置
57 電波センサ(生体センサ)
80 状態取得部
100 制御部
A 空気調和部(環境調整部)
E 環境制御装置
T 対象者