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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】直接形電力変換回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240904BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02M3/155 H
H02M3/155 U
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023103331
(22)【出願日】2023-06-23
【審査請求日】2024-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】榊原 憲一
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-82680(JP,A)
【文献】特開2014-79154(JP,A)
【文献】特開2018-61422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源線(LH)と、
前記第1電源線よりも低い電位が印加される第2電源線(LL)と、
交流電源(1)から単相交流電圧(Vin)が印加される入力側、および、前記第1電源線及び前記第2電源線が接続される出力側を有し、前記単相交流電圧(Vin)に対して全波整流および低域通過濾波を施して得られる整流電圧(Vrf)を出力する整流回路(203)と、
前記整流回路の前記出力側で前記第1電源線と前記第2電源線との間に設けられた充放電回路(4)と、
前記第1電源線と前記第2電源線との間の電圧たる直流電圧(Vdc)が入力されるインバータ(5)と
を備え、
前記整流回路(203)は、
前記全波整流に用いられるダイオード整流器(2;2a,2b)と、
前記第1電源線と前記第2電源線との間へ直接もしくは前記ダイオード整流器(2;2a)を介して間接に接続される第1コンデンサ(C3)と、
前記第1コンデンサ(C3)と協働して、前記低域通過濾波を行う第1リアクトル(L3)と
を有し、
前記充放電回路(4)は、
前記第1電源線と前記第2電源線との間に設けられる第2コンデンサ(C4)を含み、前記第2コンデンサを放電する放電回路(4a)と、
全波整流された前記単相交流電圧(|Vin|)または前記整流電圧(Vrf)を昇圧し、前記整流回路(203)に入力する入力電流(Iin)の振幅(Im)に依存せず、前記単相交流電圧(Vin)の位相(θ)に依存して設定される長さを有する充電期間(CH)で前記第2コンデンサ(C4)を充電する充電回路(4b)と
を有し、
前記第1リアクトル(L3)の電圧(VL)が低下すると前記充電期間(CH)の始点(ts)および終点(te)のいずれもが前記位相(θ)に対して遅相側へずれ、
前記第1コンデンサ(C3)の電圧(V3)が上昇すると前記始点(ts)および前記終点(te)のいずれもが前記位相に対して遅相側へずれ、
前記第1リアクトル(L3)の電圧(VL)の極性は、前記ダイオード整流器(2;2a)と前記第1リアクトル(L3)との間で流れる前記交流電源(1)から供給される電流の向きとは逆方向を正とし、前記第1コンデンサ(C3)の電圧(V3)の極性は、前記ダイオード整流器(2;2a)の出力側および入力側のうち前記第1コンデンサ(C3)が接続される側における電圧の極性と一致する、直接形電力変換回路(100,100A,100B,100C,100D)。
【請求項2】
前記第2コンデンサ(C4)は、前記位相(θ)の2倍の値の余弦値(cos(2θ))が正である期間においてのみ、当該余弦値と前記直流電圧の指令値(Vdc*)との積に比例するデューティ(dc)で放電し、
前記充電回路(4b)は、
前記整流回路(203)の前記出力側において、前記第2コンデンサ(C4)と直列に接続される第2リアクトル(L4)と、
前記第2コンデンサ(C4)の高電位側に位置し、前記第2リアクトル(L4)と前記第2コンデンサ(C4)との間に接続され、前記第2リアクトル(L4)から前記第2コンデンサ(C4)へ向かう方向を順方向とするダイオード(D40)と、
前記第2リアクトル(L4)に流れるリアクトル電流(I4)を前記ダイオード(D40)を介して前記第2コンデンサ(C4)へ流すか、前記第2電源線(LL)へ流すかを切り替えるスイッチ(Sl)と
を有し、
第1の前記充電期間の前記終点(te)から前記第1の前記充電期間の直後の第2の前記充電期間の前記始点(ts)に至るまで、前記リアクトル電流(I4)は前記スイッチ(Sl)を経由して増大しつつ前記第2電源線(LL)に流れ、
前記始点(ts)は、前記リアクトル電流(I4)が上昇して上限値(il^)に至る時点であり、
前記リアクトル電流(I4)が前記充電期間(CH)において前記第2コンデンサ(C4)へ流れ、
前記上限値(il^)は前記振幅(Im)と、前記位相についての所定の関数(G(θ))との積であり、
前記所定の関数(G(θ))は、前記位相の正弦値の平方(sinθ)の逆数の半値((2・sinθ)-1)を1から減じた値と前記正弦値の絶対値(|sinθ|)との積(F(θ))に修正項(ΔF)を加算した値を採り、
前記第1リアクトル(L3)の電圧(VL)が小さい程、前記修正項(ΔF)は大きく、
前記第1コンデンサ(C3)の電圧(V3)が大きい程、前記修正項(ΔF)は大きい、請求項1に記載の直接形電力変換回路(100,100A,100B,100C,100D)。
【請求項3】
前記第2コンデンサ(C4)は、前記位相(θ)の余弦値(cosθ)の平方(cosθ)と前記直流電圧の指令値(Vdc*)との積に比例するデューティ(dc)で放電し、
前記充電回路(4b)は、
前記整流回路(203)の前記出力側において、前記第2コンデンサ(C4)と直列に接続される第2リアクトル(L4)と、
前記第2コンデンサ(C4)の高電位側に位置し、前記第2リアクトル(L4)と前記第2コンデンサ(C4)との間に接続され、前記第2リアクトル(L4)から前記第2コンデンサ(C4)へ向かう方向を順方向とするダイオード(D40)と、
前記第2リアクトル(L4)に流れるリアクトル電流(I4)を前記ダイオード(D40)を介して前記第2コンデンサ(C4)へ流すか、前記第2電源線(LL)へ流すかを切り替えるスイッチ(Sl)と
を有し、
第1の前記充電期間の前記終点(te)から前記第1の前記充電期間の直後の第2の前記充電期間の前記始点(ts)に至るまで、前記リアクトル電流(I4)は前記スイッチ(Sl)を経由して増大しつつ前記第2電源線(LL)に流れ、
前記始点(ts)は、前記リアクトル電流(I4)が上昇して上限値(il^)に至る時点であり、
前記リアクトル電流(I4)が前記充電期間(CH)において前記第2コンデンサ(C4)へ流れ、
前記上限値(il^)は前記振幅(Im)と、前記位相についての所定の関数(G(θ))との積であり、
前記所定の関数(G(θ))は、前記位相の2倍の値の余弦値(cos(2θ))と0以上1以下の係数(1-kb)との積の半値に1/2を加えた値と正弦値の絶対値(|sinθ|)との積(F(θ))に修正項(ΔF)を加算した値を採り、
前記第1リアクトル(L3)の電圧(VL)が小さい程、前記修正項(ΔF)は大きく、
前記第1コンデンサ(C3)の電圧(V3)が大きい程、前記修正項(ΔF)は大きい、請求項1に記載の直接形電力変換回路(100,100A,100C,100D)。
【請求項4】
前記第2コンデンサ(C4)は、前記位相(θ)の2倍の値の余弦値(cos(2θ))が正である期間においてのみ、当該余弦値と前記単相交流電圧の振幅(Vm)との積に比例するデューティ(dc)で放電し、
前記充電回路(4b)は、
前記整流回路(203)の前記出力側において、前記第2コンデンサ(C4)と直列に接続される第2リアクトル(L4)と、
前記第2コンデンサ(C4)の高電位側に位置し、前記第2リアクトル(L4)と前記第2コンデンサ(C4)との間に接続され、前記第2リアクトル(L4)から前記第2コンデンサ(C4)へ向かう方向を順方向とするダイオード(D40)と、
前記第2リアクトル(L4)に流れるリアクトル電流(I4)を前記ダイオード(D40)を介して前記第2コンデンサ(C4)へ流すか、前記第2電源線(LL)へ流すかを切り替えるスイッチ(Sl)と
を有し、
第1の前記充電期間の前記終点(te)から前記第1の前記充電期間の直後の第2の前記充電期間の前記始点(ts)に至るまで、前記リアクトル電流(I4)は前記スイッチ(Sl)を経由して増大しつつ前記第2電源線(LL)に流れ、
前記始点(ts)は、前記リアクトル電流(I4)が上昇して上限値(il^)に至る時点であり、
前記リアクトル電流(I4)が前記充電期間(CH)において前記第2コンデンサ(C4)へ流れ、
前記上限値(il^)は前記振幅(Im)と、前記位相についての所定の関数(G(θ))との積であり、
前記所定の関数(G(θ))は、前記位相の正弦値の平方(sin(θ))の逆数の半値((2・sin(θ))-1)を1から減じた値と、0以上1以下の係数(kb)と、係数(π/√8)と、前記正弦値の絶対値(|sinθ|)との積(F(θ))に修正項(ΔF)を加算した値を採り、
前記第1リアクトル(L3)の電圧(VL)が小さい程、前記修正項(ΔF)は大きく、
前記第1コンデンサ(C3)の電圧(V3)が大きい程、前記修正項(ΔF)は大きい、請求項1に記載の直接形電力変換回路(100,100A,100B,100C,100D)。
【請求項5】
前記第2コンデンサ(C4)は、第1値(B)を1から減じた値(1-B)を採るデューティ(dc)で放電し、
前記充電回路(4b)は、
前記整流回路(203)の前記出力側において、前記第2コンデンサ(C4)と直列に接続される第2リアクトル(L4)と、
前記第2コンデンサ(C4)の高電位側に位置し、前記第2リアクトル(L4)と前記第2コンデンサ(C4)との間に接続され、前記第2リアクトル(L4)から前記第2コンデンサ(C4)へ向かう方向を順方向とするダイオード(D40)と、
前記第2リアクトル(L4)に流れるリアクトル電流(I4)を前記ダイオード(D40)を介して前記第2コンデンサ(C4)へ流すか、前記第2電源線(LL)へ流すかを切り替えるスイッチ(Sl)と
を有し、
第1の前記充電期間の前記終点(te)から前記第1の前記充電期間の直後の第2の前記充電期間の前記始点(ts)に至るまで、前記リアクトル電流(I4)は前記スイッチ(Sl)を経由して増大しつつ前記第2電源線(LL)に流れ、
前記始点(ts)は、前記リアクトル電流(I4)が上昇して上限値(il^)に至る時点であり、
前記リアクトル電流(I4)が前記充電期間(CH)において前記第2コンデンサ(C4)へ流れ、
前記上限値(il^)は前記振幅(Im)と、前記位相についての所定の関数(G(θ))との積であり、
前記所定の関数(G(θ))は、前記位相の正弦値の絶対値(|sinθ|)から前記第1値(B)と第2値(J)との積(B・J)を減じた値(F(θ))と修正項(ΔF)との和を採り、
前記第1値(B)は、前記単相交流電圧の振幅(Vm)と前記絶対値(|sinθ|)との積(Vrec)から前記第2コンデンサ(C4)の電圧(Vc)を減じた値(Vrec-Vc)に対する、前記直流電圧の指令値(Vdc*)から前記第2コンデンサの前記電圧(Vc)を減じた値(Vdc*-Vc)の比([Vdc*-Vc]/[Vrec-Vc])であり、
前記第2値(J)は、前記位相の2倍の値の余弦値(cos(2θ))と0以上1以下の係数(1-kb)との積を1から減じた値の半値と、前記直流電圧の指令値(Vdc*)に対する前記単相交流電圧の前記振幅(Vm)の比(Vm/Vdc*)との積であり、
前記第1リアクトル(L3)の電圧(VL)が小さい程、前記修正項(ΔF)は大きく、
前記第1コンデンサ(C3)の電圧(V3)が大きい程、前記修正項(ΔF)は大きい、請求項1に記載の直接形電力変換回路(100,100A,100C,100D)。
【請求項6】
前記充電期間(CH)の長さは、前記第1リアクトル(L3)の電圧(VL)および前記第1コンデンサ(C3)の電圧(V3)のいずれにも依存せず前記位相(θ)に依存する第1量(F(θ))と、前記第1リアクトル(L3)の電圧(VL)および前記第1コンデンサ(C3)の電圧(V3)のいずれかまたは両方に依存する第2量(ΔF)との和(G(θ))に比例する、請求項2から請求項5のいずれか一つに記載の直接形電力変換回路(100,100A,100B,100C,100D)。
【請求項7】
前記充電回路(4b)は前記充電回路(4b)に入力する第2の入力電流(I4)をチョッピングして前記第2コンデンサ(C4)を充電し、
前記チョッピングの周期(Tsw)における前記第2の入力電流(I4)の平均値を当該平均値の最大値で除した値が小さい程、前記充電期間(CH)は短く、
前記第1リアクトル(L3)の電圧(VL)が小さい程、前記充電期間(CH)は長く、
前記第1コンデンサ(C3)の電圧(V3)が大きい程、前記充電期間(CH)は長い、請求項1に記載の直接形電力変換回路(100,100A,100B,100C,100D)。
【請求項8】
前記第1コンデンサ(C3)は前記第1電源線(LH)と前記第2電源線(LL)との間へ直接に接続され、前記第1コンデンサ(C3)の電圧(V3)の極性は、前記第2電源線(LL)から前記第1電源線(LH)に向かう方向が正に採用される、請求項1に記載の直接形電力変換回路(100,100A,100C)。
【請求項9】
前記第1コンデンサ(C3)は前記ダイオード整流器(2;2a)よりも前記インバータ(5)から離れ、
前記第1コンデンサ(C3)の電圧(V3)の極性は、前記単相交流電圧(Vin)の低電位から高電位へ向かう方向が正に採用される、請求項1に記載の直接形電力変換回路(100B,100D)。
【請求項10】
前記第1リアクトル(L3)は前記ダイオード整流器(2;2a)と前記第1コンデンサ(C3)との間に設けられ、
前記第1リアクトル(L3)の電圧(VL)の極性は、前記第1リアクトル(L3)に流れる電流(I2)の向きと逆方向が正に採用される、請求項1に記載の直接形電力変換回路(100,100C)。
【請求項11】
前記第1リアクトル(L3)は前記ダイオード整流器(2;2a)よりも前記インバータ(5)から離れ、
前記第1リアクトル(L3)の電圧(VL)の極性は、前記単相交流電圧(Vin)の低電位から高電位へ向かう方向が正に採用される、請求項1記載の直接形電力変換回路(100A,100B)。
【請求項12】
前記充電回路(4b)は
前記第1電源線(LH)と前記第2電源線(LL)との間で、前記第2コンデンサよりも前記第1電源線(LH)側で前記第2コンデンサ(C4)と直列に接続される第2リアクトル(L4)と、
前記第2リアクトル(L4)と前記第2コンデンサ(C4)との間に接続され、前記第2リアクトル(L4)から前記第2コンデンサ(C4)へ向かう方向を順方向とするダイオード(D40)と、
前記第1電源線から前記第2リアクトル(L4)へ流れるリアクトル電流(I4)を前記ダイオード(D40)を介して前記第2コンデンサ(C4)へ流すか、前記第2電源線(LL)へ流すかを切り替えるスイッチ(Sl)と
を有し、
前記スイッチ(Sl)と前記第2リアクトル(L4)との直列接続に対して、前記整流電圧(Vrf)が印加される、請求項1に記載の直接形電力変換回路(100,100A,100B)。
【請求項13】
前記整流回路(203)は
前記単相交流電圧(Vin)に全波整流を行って第2の整流電圧(|Vin|)を得る第2のダイオード整流器(2b)
を更に有し、
前記充電回路(4b)は
前記第2のダイオード整流器(2b)の出力側において前記第2コンデンサ(C4)と直列に接続される第2リアクトル(L4)と、
前記第2コンデンサ(C4)の高電位側に位置し、前記第2リアクトル(L4)と前記第2コンデンサ(C4)との間に接続され、前記第2リアクトル(L4)から前記第2コンデンサ(C4)へ向かう方向を順方向とするダイオード(D40)と、
前記第2のダイオード整流器(2b)から前記第2リアクトル(L4)へ流れるリアクトル電流(I4)を前記ダイオード(D40)を介して前記第2コンデンサ(C4)へ流すか、前記第2電源線(LL)へ流すかを切り替えるスイッチ(Sl)と
を有する、請求項1に記載の直接形電力変換回路(100C,100D)。
【請求項14】
前記充電回路(4b)は
前記ダイオード整流器(2)の出力側において前記第1リアクトル(L3)を挟まずに前記第2コンデンサ(C4)と直列に接続される第2リアクトル(L4)と、
前記第2コンデンサ(C4)の高電位側に位置し、前記第2リアクトル(L4)と前記第2コンデンサ(C4)との間に接続され、前記第2リアクトル(L4)から前記第2コンデンサ(C4)へ向かう方向を順方向とするダイオード(D40)と、
前記整流回路(203)から前記第2リアクトル(L4)へ流れるリアクトル電流(I4)を前記ダイオード(D40)を介して前記第2コンデンサ(C4)へ流すか、前記第2電源線(LL)へ流すかを切り替えるスイッチ(Sl)と
を有する、請求項1に記載の直接形電力変換回路(100A,100B,100C,100D)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は直接形電力変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は直接形電力変換回路を開示する。当該直接形電力変換回路はコンバータと、電力バッファ回路と、インバータと、直流リンクとを備える。コンバータは単相交流電圧を入力し、直流リンクに脈動電力を出力する。インバータは直流リンクにおける直流電圧を交流電圧に変換する。電力バッファ回路は、コンデンサとスイッチとを有する放電回路と、コンデンサを充電する充電回路とを含む。インバータに供給される電力がコンバータから供給される場合と、電力バッファ回路から供給される場合とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5874800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リアクトルとコンデンサとスイッチング素子とを含む昇圧回路が公知である。当該リアクトルを流れる電流(以下単に「リアクトル電流」とも称される)がコンデンサに流れたり流れなかったりすることで、昇圧回路の外部からリアクトルに印加される電圧を超える電圧で、コンデンサが充電される。このような昇圧回路を、上述の直接形電力変換回路の充電回路とコンデンサとの組み合わせへ利用することができる。例えば電力バッファ回路は当該コンデンサを充放電する充放電回路によって実現される。
【0005】
例えばリアクトル電流を流す際、いわゆる臨界モードが採用される。リアクトル電流を臨界モードによって流す場合、コンデンサへの充電によってリアクトル電流が減少して零に至った時点で、スイッチング素子がオンしてリアクトル電流がスイッチング素子へ流れ始める。このような時点は、単相交流電圧の位相には依存せず、リアクトル電流の有無のみで容易に決定され得る。
【0006】
充放電回路が有する素子に要求される電流規格をリアクトル電流のピーク値を低減することによって緩和する観点と、効率の観点とからは、リアクトル電流にいわゆる連続モードが採用されることが望ましい。リアクトル電流に連続モードが採用されるとき、リアクトル電流がコンデンサに流れている状態でリアクトル電流をコンデンサへ流さずにスイッチング素子へ流すタイミングを、設定する必要がある。
【0007】
本開示は、上記タイミングの必要性に鑑み、直接形電力変換器の充放電回路におけるコンデンサの充電期間を制御し、連続モードの実現に資することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示における直接形電力変換回路(100,100A,100B,100C,100D)の第1の態様は、第1電源線(LH)と、前記第1電源線よりも低い電位が印加される第2電源線(LL)と、交流電源(1)から単相交流電圧(Vin)が印加される入力側、および、前記第1電源線及び前記第2電源線が接続される出力側を有し、前記単相交流電圧(Vin)に対して全波整流および低域通過濾波を施して得られる整流電圧(Vrf)を出力する整流回路(203)と、前記整流回路の前記出力側で前記第1電源線と前記第2電源線との間に設けられた充放電回路(4)と、前記第1電源線と前記第2電源線との間の電圧たる直流電圧(Vdc)が入力されるインバータ(5)とを備える。
【0009】
前記整流回路(203)は、前記全波整流に用いられるダイオード整流器(2;2a,2b)と、前記第1電源線と前記第2電源線との間へ直接もしくは前記ダイオード整流器(2;2a)を介して間接に接続される第1コンデンサ(C3)と、前記第1コンデンサ(C3)と協働して、前記低域通過濾波を行う第1リアクトル(L3)とを有する。
【0010】
前記充放電回路(4)は、前記第1電源線と前記第2電源線との間に設けられる第2コンデンサ(C4)を含み、前記第2コンデンサを放電する放電回路(4a)と、全波整流された前記単相交流電圧(|Vin|)または前記整流電圧(Vrf)を昇圧し、前記整流回路(203)に入力する入力電流(Iin)の振幅(Im)に依存せず、前記単相交流電圧(Vin)の位相(θ)に依存して設定される長さを有する充電期間(CH)で前記第2コンデンサ(C4)を充電する充電回路(4b)とを有する。
【0011】
前記第1リアクトル(L3)の電圧(VL)が低下すると前記充電期間(CH)の始点(ts)および終点(te)のいずれもが前記位相(θ)に対して遅相側へずれる。前記第1コンデンサ(C3)の電圧(V3)が上昇すると前記始点(ts)および前記終点(te)のいずれもが前記位相に対して遅相側へずれる。
【0012】
前記第1リアクトル(L3)の電圧(VL)の極性は、前記ダイオード整流器(2;2a)と前記第1リアクトル(L3)との間で流れる前記交流電源(1)から供給される電流の向きとは逆方向を正とする。
【0013】
前記第1コンデンサ(C3)の電圧(V3)の極性は、前記ダイオード整流器(2;2a)の出力側および入力側のうち前記第1コンデンサ(C3)が接続される側における電圧の極性と一致する。
【0014】
本開示における直接形電力変換回路(100,100A,100B,100C,100D)の第2の態様は、直接形電力変換回路の第1の態様であって、前記第2コンデンサ(C4)は、前記位相(θ)の2倍の値の余弦値(cos(2θ))が正である期間においてのみ、当該余弦値と前記直流電圧の指令値(Vdc*)との積に比例するデューティ(dc)で放電する。
【0015】
第2の態様において前記充電回路(4b)は、前記整流回路(203)の前記出力側において、前記第2コンデンサ(C4)と直列に接続される第2リアクトル(L4)と、前記第2コンデンサ(C4)の高電位側に位置し、前記第2リアクトル(L4)と前記第2コンデンサ(C4)との間に接続され、前記第2リアクトル(L4)から前記第2コンデンサ(C4)へ向かう方向を順方向とするダイオード(D40)と、前記第2リアクトル(L4)に流れるリアクトル電流(I4)を前記ダイオード(D40)を介して前記第2コンデンサ(C4)へ流すか、前記第2電源線(LL)へ流すかを切り替えるスイッチ(Sl)とを有する。
【0016】
第2の態様において、第1の前記充電期間の前記終点(te)から前記第1の前記充電期間の直後の第2の前記充電期間の前記始点(ts)に至るまで、前記リアクトル電流(I4)は前記スイッチ(Sl)を経由して増大しつつ前記第2電源線(LL)に流れる。前記始点(ts)は、前記リアクトル電流(I4)が上昇して上限値(il^)に至る時点である。前記リアクトル電流(I4)が前記充電期間(CH)において前記第2コンデンサ(C4)へ流れる。
【0017】
第2の態様において、前記上限値(il^)は前記振幅(Im)と、前記位相についての所定の関数(G(θ))との積である。前記所定の関数(G(θ))は、前記位相の正弦値の平方(sinθ)の逆数の半値((2・sinθ)-1)を1から減じた値と前記正弦値の絶対値(|sinθ|)との積(F(θ))に修正項(ΔF)を加算した値を採る。
【0018】
第2の態様において、前記第1リアクトル(L3)の電圧(VL)が小さい程、前記修正項(ΔF)は大きい。前記第1コンデンサ(C3)の電圧(V3)が大きい程、前記修正項(ΔF)は大きい。
【0019】
本開示における直接形電力変換回路(100,100A,100C,100D)の第3の態様は、直接形電力変換回路の第1の態様であって、前記第2コンデンサ(C4)は、前記位相(θ)の余弦値(cosθ)の平方(cosθ)と前記直流電圧の指令値(Vdc*)との積に比例するデューティ(dc)で放電する。
【0020】
第3の態様において前記充電回路(4b)は、前記整流回路(203)の前記出力側において、前記第2コンデンサ(C4)と直列に接続される第2リアクトル(L4)と、前記第2コンデンサ(C4)の高電位側に位置し、前記第2リアクトル(L4)と前記第2コンデンサ(C4)との間に接続され、前記第2リアクトル(L4)から前記第2コンデンサ(C4)へ向かう方向を順方向とするダイオード(D40)と、前記第2リアクトル(L4)に流れるリアクトル電流(I4)を前記ダイオード(D40)を介して前記第2コンデンサ(C4)へ流すか、前記第2電源線(LL)へ流すかを切り替えるスイッチ(Sl)とを有する。
【0021】
第3の態様において、第1の前記充電期間の前記終点(te)から前記第1の前記充電期間の直後の第2の前記充電期間の前記始点(ts)に至るまで、前記リアクトル電流(I4)は前記スイッチ(Sl)を経由して増大しつつ前記第2電源線(LL)に流れる。前記始点(ts)は、前記リアクトル電流(I4)が上昇して上限値(il^)に至る時点である。前記リアクトル電流(I4)が前記充電期間(CH)において前記第2コンデンサ(C4)へ流れる。
【0022】
第3の態様において、前記上限値(il^)は前記振幅(Im)と、前記位相についての所定の関数(G(θ))との積である。前記所定の関数(G(θ))は、前記位相の2倍の値の余弦値(cos(2θ))と0以上1以下の係数(1-kb)との積の半値に1/2を加えた値と正弦値の絶対値(|sinθ|)との積(F(θ))に修正項(ΔF)を加算した値を採る。
【0023】
第3の態様において前記第1リアクトル(L3)の電圧(VL)が小さい程、前記修正項(ΔF)は大きい。前記第1コンデンサ(C3)の電圧(V3)が大きい程、前記修正項(ΔF)は大きい。
【0024】
本開示における直接形電力変換回路(100,100A,100B,100C,100D)の第4の態様は、直接形電力変換回路の第1の態様であって、前記第2コンデンサ(C4)は、前記位相(θ)の2倍の値の余弦値(cos(2θ))が正である期間においてのみ、当該余弦値と前記単相交流電圧の振幅(Vm)との積に比例するデューティ(dc)で放電する。
【0025】
第4の態様において前記充電回路(4b)は、前記整流回路(203)の前記出力側において、前記第2コンデンサ(C4)と直列に接続される第2リアクトル(L4)と、前記第2コンデンサ(C4)の高電位側に位置し、前記第2リアクトル(L4)と前記第2コンデンサ(C4)との間に接続され、前記第2リアクトル(L4)から前記第2コンデンサ(C4)へ向かう方向を順方向とするダイオード(D40)と、前記第2リアクトル(L4)に流れるリアクトル電流(I4)を前記ダイオード(D40)を介して前記第2コンデンサ(C4)へ流すか、前記第2電源線(LL)へ流すかを切り替えるスイッチ(Sl)とを有する。
【0026】
第4の態様において、第1の前記充電期間の前記終点(te)から前記第1の前記充電期間の直後の第2の前記充電期間の前記始点(ts)に至るまで、前記リアクトル電流(I4)は前記スイッチ(Sl)を経由して増大しつつ前記第2電源線(LL)に流れる。前記始点(ts)は、前記リアクトル電流(I4)が上昇して上限値(il^)に至る時点である。前記リアクトル電流(I4)が前記充電期間(CH)において前記第2コンデンサ(C4)へ流れる。
【0027】
第4の態様において、前記上限値(il^)は前記振幅(Im)と、前記位相についての所定の関数(G(θ))との積である。前記所定の関数(G(θ))は、前記位相の正弦値の平方(sin(θ))の逆数の半値((2・sin(θ))-1)を1から減じた値と、0以上1以下の係数(kb)と、係数(π/√8)と、前記正弦値の絶対値(|sinθ|)との積(F(θ))に修正項(ΔF)を加算した値を採る。
【0028】
第4の態様において前記第1リアクトル(L3)の電圧(VL)が小さい程、前記修正項(ΔF)は大きい。前記第1コンデンサ(C3)の電圧(V3)が大きい程、前記修正項(ΔF)は大きい。
【0029】
本開示における直接形電力変換回路(100,100A,100C,100D)の第5の態様は、直接形電力変換回路の第1の態様であって、前記第2コンデンサ(C4)は、第1値(B)を1から減じた値(1-B)を採るデューティ(dc)で放電する。
【0030】
第5の態様において前記充電回路(4b)は、前記整流回路(203)の前記出力側において、前記第2コンデンサ(C4)と直列に接続される第2リアクトル(L4)と、前記第2コンデンサ(C4)の高電位側に位置し、前記第2リアクトル(L4)と前記第2コンデンサ(C4)との間に接続され、前記第2リアクトル(L4)から前記第2コンデンサ(C4)へ向かう方向を順方向とするダイオード(D40)と、前記第2リアクトル(L4)に流れるリアクトル電流(I4)を前記ダイオード(D40)を介して前記第2コンデンサ(C4)へ流すか、前記第2電源線(LL)へ流すかを切り替えるスイッチ(Sl)とを有する。
【0031】
第5の態様において、第1の前記充電期間の前記終点(te)から前記第1の前記充電期間の直後の第2の前記充電期間の前記始点(ts)に至るまで、前記リアクトル電流(I4)は前記スイッチ(Sl)を経由して増大しつつ前記第2電源線(LL)に流れる。前記始点(ts)は、前記リアクトル電流(I4)が上昇して上限値(il^)に至る時点である。前記リアクトル電流(I4)が前記充電期間(CH)において前記第2コンデンサ(C4)へ流れる。
【0032】
第5の態様において、前記上限値(il^)は前記振幅(Im)と、前記位相についての所定の関数(G(θ))との積である。前記所定の関数(G(θ))は、前記位相の正弦値の絶対値(|sinθ|)から前記第1値(B)と第2値(J)との積(B・J)を減じた値(F(θ))と修正項(ΔF)との和を採る。
【0033】
第5の態様において、前記第1値(B)は、前記単相交流電圧の振幅(Vm)と前記絶対値(|sinθ|)との積(Vrec)から前記第2コンデンサ(C4)の電圧(Vc)を減じた値(Vrec-Vc)に対する、前記直流電圧の指令値(Vdc*)から前記第2コンデンサの前記電圧(Vc)を減じた値(Vdc*-Vc)の比([Vdc*-Vc]/[Vrec-Vc])である。前記第2値(J)は、前記位相の2倍の値の余弦値(cos(2θ))と0以上1以下の係数(1-kb)との積を1から減じた値の半値と、前記直流電圧の指令値(Vdc*)に対する前記単相交流電圧の前記振幅(Vm)の比(Vm/Vdc*)との積である。
【0034】
第5の態様において前記第1リアクトル(L3)の電圧(VL)が小さい程、前記修正項(ΔF)は大きい。前記第1コンデンサ(C3)の電圧(V3)が大きい程、前記修正項(ΔF)は大きい。
【0035】
本開示における直接形電力変換回路(100,100A,100B,100C,100D)の第6の態様は、直接形電力変換回路の第2の態様から第5の態様のいずれかであって、前記充電期間(CH)の長さは、前記第1リアクトル(L3)の電圧(VL)および前記第1コンデンサ(C3)の電圧(V3)のいずれにも依存せず前記位相(θ)に依存する第1量(F(θ))と、前記第1リアクトル(L3)の電圧(VL)および前記第1コンデンサ(C3)の電圧(V3)のいずれかまたは両方に依存する第2量(ΔF)との和(G(θ))に比例する。
【0036】
本開示における直接形電力変換回路(100,100A,100B,100C,100D)の第7の態様は、直接形電力変換回路の第1の態様であって、前記充電回路(4b)は前記充電回路(4b)に入力する第2の入力電流(I4)をチョッピングして前記第2コンデンサ(C4)を充電する。
【0037】
第7の態様において、前記チョッピングの周期(Tsw)における前記第2の入力電流(I4)の平均値を当該平均値の最大値で除した値が小さい程、前記充電期間(CH)は短い。前記第1リアクトル(L3)の電圧(VL)が小さい程、前記充電期間(CH)は長い。前記第1コンデンサ(C3)の電圧(V3)が大きい程、前記充電期間(CH)は長い。
【0038】
例えば、前記第1コンデンサ(C3)は前記第1電源線(LH)と前記第2電源線(LL)との間へ直接に接続され、前記第1コンデンサ(C3)の電圧(V3)の極性は、前記第2電源線(LL)から前記第1電源線(LH)に向かう方向が正に採用される。
【0039】
あるいは例えば、前記第1コンデンサ(C3)は前記ダイオード整流器(2;2a)よりも前記インバータ(5)から離れ、前記第1コンデンサ(C3)の電圧(V3)の極性は、前記単相交流電圧(Vin)の低電位から高電位へ向かう方向が正に採用される。
【0040】
あるいは例えば、前記第1リアクトル(L3)は前記ダイオード整流器(2;2a)と前記第1コンデンサ(C3)との間に設けられ、前記第1リアクトル(L3)の電圧(VL)の極性は、前記第1リアクトル(L3)に流れる電流(I2)の向きと逆方向が正に採用される。
【0041】
あるいは例えば、前記第1リアクトル(L3)は前記ダイオード整流器(2;2a)よりも前記インバータ(5)から離れ、前記第1リアクトル(L3)の電圧(VL)の極性は、前記単相交流電圧(Vin)の低電位から高電位へ向かう方向が正に採用される。
【0042】
あるいは例えば前記充電回路(4b)は、前記第1電源線(LH)と前記第2電源線(LL)との間で、前記第2コンデンサよりも前記第1電源線(LH)側で前記第2コンデンサ(C4)と直列に接続される第2リアクトル(L4)と、前記第2リアクトル(L4)と前記第2コンデンサ(C4)との間に接続され、前記第2リアクトル(L4)から前記第2コンデンサ(C4)へ向かう方向を順方向とするダイオード(D40)と、前記第1電源線から前記第2リアクトル(L4)へ流れるリアクトル電流(I4)を前記ダイオード(D40)を介して前記第2コンデンサ(C4)へ流すか、前記第2電源線(LL)へ流すかを切り替えるスイッチ(Sl)とを有する。前記スイッチ(Sl)と前記第2リアクトル(L4)との直列接続に対して、前記整流電圧(Vrf)が印加される。
【0043】
あるいは例えば前記整流回路(203)は前記単相交流電圧(Vin)に全波整流を行って第2の整流電圧(|Vin|)を得る第2のダイオード整流器(2b)を更に有する。前記充電回路(4b)は、前記第2のダイオード整流器(2b)の出力側において前記第2コンデンサ(C4)と直列に接続される第2リアクトル(L4)と、前記第2コンデンサ(C4)の高電位側に位置し、前記第2リアクトル(L4)と前記第2コンデンサ(C4)との間に接続され、前記第2リアクトル(L4)から前記第2コンデンサ(C4)へ向かう方向を順方向とするダイオード(D40)と、前記第2のダイオード整流器(2b)から前記第2リアクトル(L4)へ流れるリアクトル電流(I4)を前記ダイオード(D40)を介して前記第2コンデンサ(C4)へ流すか、前記第2電源線(LL)へ流すかを切り替えるスイッチ(Sl)とを有する。
【0044】
あるいは例えば前記充電回路(4b)は、前記ダイオード整流器(2)の出力側において前記第1リアクトル(L3)を挟まずに前記第2コンデンサ(C4)と直列に接続される第2リアクトル(L4)と、前記第2コンデンサ(C4)の高電位側に位置し、前記第2リアクトル(L4)と前記第2コンデンサ(C4)との間に接続され、前記第2リアクトル(L4)から前記第2コンデンサ(C4)へ向かう方向を順方向とするダイオード(D40)と、前記整流回路(203)から前記第2リアクトル(L4)へ流れるリアクトル電流(I4)を前記ダイオード(D40)を介して前記第2コンデンサ(C4)へ流すか、前記第2電源線(LL)へ流すかを切り替えるスイッチ(Sl)とを有する。
【0045】
本開示にかかる直接形電力変換回路は、充放電回路におけるコンデンサの充電期間を制御し、連続モードの実現に資する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本開示の一実施の形態にかかる直接形電力変換回路の構成を例示する回路図である。
図2】制御装置の構成を例示するブロック図である。
図3】ブロックの構成を例示するブロック図である。
図4】充電動作制御部の動作を模式的に例示するグラフである。
図5】入力電流とリプル率との関係を例示するグラフである。
図6】入力電流とリプル率との関係を例示するグラフである。
図7】変動分の振幅とリプル率との関係を例示するグラフである。
図8】関数、入力電流、スイッチング周期、オフ期間、オン期間、デューティの経時的変化を例示するグラフである。
図9】関数、入力電流、スイッチング周期、オフ期間、オン期間、デューティの経時的変化を例示するグラフである。
図10】直接形電力変換回路において連続モード制御が採用されたときの入力電流の波形を例示するグラフである。
図11】直接形電力変換回路において連続モード制御が採用されたときの入力電流の波形を例示するグラフである。
図12】単相交流電圧の周波数を基本周波数とする高調波成分の次数と、高調波電流との関係を例示するグラフである。
図13】単相交流電圧の周波数を基本周波数とする高調波成分の次数と、高調波電流との関係を例示するグラフである。
図14】インバータからの出力電力と、インバータからの出力電圧の平均値との関係を例示するグラフである。
図15】出力電力と、スイッチング周波数との関係を例示するグラフである。
図16】出力電力と、直接形電力変換回路の効率との関係を例示するグラフである。
図17】本開示の第1の変形にかかる直接形電力変換回路の構成を例示する回路図である。
図18】本開示の第2の変形にかかる直接形電力変換回路の構成を例示する回路図である。
図19】本開示の第3の変形にかかる直接形電力変換回路の構成を例示する回路図である。
図20】本開示の第4の変形にかかる直接形電力変換回路の構成を例示する回路図である。
図21】本開示の変動項の変形の比較となる入力電流、電流、リアクトル電流の波形を示すグラフである。
図22】本開示の変動項の変形にかかる入力電流、電流、リアクトル電流の波形を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
<構成の概略>
図1は本開示の一実施の形態にかかる直接形電力変換回路100の構成を例示する回路図である。直接形電力変換回路100は、ダイオード整流器2と、LCフィルタ3と、充放電回路4と、インバータ5とを備える。直流電源線LH,LLはインバータ5と充放電回路4との間で直流リンク7として機能する。直流電源線LLには直流電源線LHよりも低い電位が印加される。
【0048】
ダイオード整流器2とLCフィルタ3との組み合わせは、単相交流電圧Vinが印加される入力側と、直流電源線LH,LLが接続される出力側とを有する整流回路203として把握できる。
【0049】
整流回路203には、単相交流電源1から交流電流Iin(以下「入力電流Iin」と称す)が流れ込む。整流回路203は、単相交流電圧Vinに対して全波整流および低域を通過させる濾波(以下「低域通過濾波」と表現される)を施して整流電圧Vrfを出力する。ダイオード整流器2は当該全波整流を行う。LCフィルタ3は当該低域通過濾波を行う。LCフィルタ3、ひいては整流回路203は、充放電回路4へ流れる電流に対して低域通過濾波を施して、単相交流電源1へ流れる電流の高域を遮断する濾波を実行するともいえる。
【0050】
ダイオード整流器2はダイオードD21,D22,D23,D24を備えている。ダイオードD21,D22,D23,D24はブリッジ回路を構成する。直接形電力変換回路100におけるダイオード整流器2は、単相交流電源1から単相交流電圧Vinが印加される入力側と、出力側とを有する。直接形電力変換回路100においてダイオード整流器2は、単相交流電圧Vinを単相全波整流して電圧|Vin|を得て、これを電圧Vrとしてダイオード整流器2の出力側から出力する。
【0051】
LCフィルタ3はリアクトルL3とコンデンサC3とを備えている。直接形電力変換回路100においてコンデンサC3は直流電源線LH,LLの間に直接に設けられる。コンデンサC3は例えばフィルムコンデンサである。リアクトルL3はコンデンサC3と協働して上述の低域通過濾波を行う。
【0052】
リアクトルL3は、コンデンサC3よりもインバータ5から離れて、直流電源線LH又は直流電源線LLに(直接形電力変換回路100ではダイオード整流器2の出力側で直流電源線LHに)直列に接続される。
【0053】
直接形電力変換回路100ではリアクトルL3とコンデンサC3との直列接続にダイオード整流器2が出力する電圧Vr(ここではVr=|Vin|)が印加されるが、整流回路203の構成によっては電圧VrがリアクトルL3を介することなくコンデンサC3に印加される。あるいは充放電回路4の入力側に印加される(これらにおいてはVr=|Vin|とは限らない)。整流回路203におけるこれらの変形については直接形電力変換回路100A,100B,100C,100Dを用いて後述される。
【0054】
ダイオード整流器2は直流の電流I2(以下「出力電流I2」とも称される)を出力する。直接形電力変換回路100ではダイオード整流器2が単相交流電源1とLCフィルタ3との間に設けられ、出力電流I2とリアクトルL3に流れる電流とが一致する。
【0055】
電圧|Vin|に対して上述の低域通過濾波が施されて得られる整流電圧Vrfが、コンデンサC3の両端の間の電圧(以下「両端電圧」とも称される)V3として現れる。両端電圧V3の極性は、電圧Vrの極性と一致する。整流電圧Vrfは電圧|Vin|の脈動の周期と同じ周期で脈動する。
【0056】
充放電回路4は放電回路4aと充電回路4bと電流阻止部4cとを有する。放電回路4aは、直流電源線LH,LLの間に設けられるコンデンサC4を含み、コンデンサC4を放電する機能を有する。
【0057】
具体的には、放電回路4aはスイッチScを更に含む。スイッチScとコンデンサC4とが直流電源線LH,LLの間で直列に接続される。コンデンサC4は、スイッチScを介して直流電源線LH,LLの間に設けられると言える。スイッチScはコンデンサC4よりも直流電源線LHに近く設けられる。
【0058】
スイッチScが導通することにより、コンデンサC4から直流リンク7へ、より具体的には直流電源線LH,LLへと放電される。スイッチScが導通する時比率は放電デューティdcと仮称される。放電デューティdcは可制御である。
【0059】
スイッチScは、例えばダイオードD42と、ダイオードD42に対して逆並列接続されたトランジスタ(例えば絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)Qcとを用いて実現される。ここで逆並列接続とは、順方向が相互に逆となるような並列接続を指す。具体的にはトランジスタQcの順方向は直流電源線LLから直流電源線LHへと向かう方向であり、ダイオードD42の順方向は直流電源線LHから直流電源線LLへと向かう方向である。
【0060】
以下ではコンデンサC4の両端の間の電圧がコンデンサ電圧Vcとして説明される。コンデンサ電圧Vcは両端電圧V3より高いので、基本的にはダイオードD42には電流が流れない。従ってスイッチScの導通/非導通は専らトランジスタQcのそれに依存する。
【0061】
直接形電力変換回路100において充電回路4bは、両端電圧V3として現れる整流電圧Vrfを昇圧してコンデンサC4を充電する。例えば充電回路4bは、ダイオードD40と、リアクトルL4と、スイッチSlを含む。
【0062】
ダイオードD40は、カソードと、アノードとを備え、当該カソードはスイッチScとコンデンサC4との間に接続される。リアクトルL4は直流電源線LHとダイオードD40のアノードとの間に接続される。スイッチSlは直流電源線LLとダイオードD40のアノードとの間に接続される。
【0063】
スイッチSlは、例えばダイオードD41と、ダイオードD41に対して逆並列接続されたトランジスタ(例えば絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)Qlとを用いて実現される。具体的にはトランジスタQlの順方向は直流電源線LHから直流電源線LLへと向かう方向であり、ダイオードD41の順方向は直流電源線LLから直流電源線LHへと向かう方向である。
【0064】
直流電源線LHの方が直流電源線LLよりも電位が高いので、基本的にはダイオードD41には電流が流れない。従ってスイッチSlの導通/非導通は専らトランジスタQlのそれに依存する。
【0065】
リアクトルL4は整流回路203の出力側において、コンデンサC4と直列に接続される。コンデンサC4は、充電回路4bによって充電され、コンデンサ電圧Vcは整流電圧Vrfよりも高い。ダイオードD40はコンデンサC4の高電位側に位置して、リアクトルL4とコンデンサC4の間に接続される、ということができる。リアクトルL4からコンデンサC4へ向かう方向が、ダイオードD40の順方向である。
【0066】
リアクトルL4は整流回路203の出力側において、コンデンサC4と直列に接続されるダイオードD40を介してコンデンサC4と直列に接続される。リアクトルL4は整流回路203の出力側において、スイッチSlと直列に接続される。スイッチSlは、リアクトルL4に流れるリアクトル電流I4を、自身がオフすることによってダイオードD40を介してコンデンサC4へ流すか、自身がオンすることによって直流電源線LLへ流すかを切り替える機能を有する。リアクトル電流I4は直流電源線LHから直流電源線LLへと流れるので、その極性は反転せず、従って直流である。
【0067】
以下の説明においてスイッチSlに流れる電流ilが導入される。スイッチSlがオフする期間が、コンデンサC4を充電する充電期間に相当する。充電回路4bとコンデンサC4とは周知の昇圧回路を構成する。コンデンサC4の充電期間においてコンデンサC4には時間と共に減少する充電電流が流れ、当該充電電流は電流(I4-il)で表される。スイッチSlがオンする期間においては、ダイオードD40の機能によりコンデンサC4とスイッチSlとの間には電流が流れず、コンデンサC4は充電されず、リアクトル電流I4と電流ilとは互いに等しい。
【0068】
コンデンサ電圧Vcは両端電圧V3よりも大きい。電流阻止部4cはコンデンサC3,C4の間で直流電源線LH又は直流電源線LLに設けられ、コンデンサC4からコンデンサC3へと流れる電流を阻止する。コンデンサ電圧Vcが両端電圧V3に影響を受けることが回避される。
【0069】
電流阻止部4cは例えばダイオードD43で実現される。図1の例示では、ダイオードD43は直流電源線LHに設けられ、その順方向はダイオード整流器2からインバータ5へと向かう方向である。
【0070】
インバータ5は充放電回路4よりもインバータ5側の直流電源線LH,LLの間に発生する直流電圧Vdcを交流電圧に変換する。当該交流電圧は誘導性負荷6に印加される。例えば当該交流電圧は三相交流電圧であって、出力端Pu,Pv,Pwに出力される。
【0071】
インバータ5はいわゆる電圧形インバータを構成する。インバータ5は6つのスイッチング素子Sup,Svp,Swp,Sun,Svn,Swnを含む。スイッチング素子Sup,Svp,Swpはそれぞれ出力端Pu,Pv,Pwと直流電源線LHとの間に接続され、スイッチング素子Sun,Svn,Swnはそれぞれ出力端Pu,Pv,Pwと直流電源線LLとの間に接続される。
【0072】
誘導性負荷6は例えば回転機である。誘導性負荷6を三相の同期機として制御系を例示すると、速度検出部9は、誘導性負荷6に流れる三相の負荷電流iu,iv,iwを検出し、これらから得られる回転角速度ωmならびにq軸電流Iq及びd軸電流Idを制御装置10に与える。
【0073】
制御装置10は、回転角速度ωmならびにq軸電流Iq及びd軸電流Idの他、単相交流電圧Vinの振幅Vm,角速度ω(あるいはこれと時間tとの積である位相θ=ωt)、回転角速度の指令値ωm*、コンデンサ電圧Vcおよびその指令値Vc*、直流電圧Vdcの指令値Vdc*、リアクトル電圧VLが入力される。
【0074】
リアクトル電圧VLは、リアクトルL3にかかる電圧の仮称である。後述されるように、リアクトル電圧VLに代えて、あるいはリアクトル電圧VLと共に、両端電圧V3が制御装置10に入力されてもよい。リアクトルL3はダイオード整流器2とコンデンサC3との間に設けられる。リアクトルL3にはダイオード整流器2から出力電流I2が流入し、リアクトル電圧VLの極性は出力電流I2が流れる向き、より具体的には出力電流I2のうち、交流電源1から供給される入力電流Iinの成分の向きとは逆方向を正とする。
【0075】
<制御装置10>
制御装置10には分配率kbが入力される場合もある。分配率kbはインバータ5に与えられる電力が、充放電回路4から供給される場合と、整流回路203から供給される場合とを分配する比率である。分配率kbは0以上1以下の値を採る。スイッチScが常にオフであればkb=0である。スイッチScが常にオンであればkb=1である。分配率kbは、例えば特許文献1において分配率kとして説明されて公知である。
【0076】
図2は制御装置10の構成を例示するブロック図である。制御装置10は、インバータ制御部101と、放電制御部102と、充電制御部103とを備える。
【0077】
インバータ制御部101は、放電デューティdcと、整流デューティdrecと、インバータ5が出力する電圧の指令値Vu*,Vv*,Vw*とに基づいて、インバータ制御信号SSup,SSvp,SSwp,SSun,SSvn,SSwnを出力する。インバータ制御信号SSup,SSvp,SSwp,SSun,SSvn,SSwnは、それぞれスイッチング素子Sup,Svp,Swp,Sun,Svn,Swnの動作を制御する。
【0078】
インバータ制御部101は、出力電圧指令生成部1011、振幅変調指令部1012、積和演算部1013、比較部1014、論理演算部1015、速度制御部1016を有している。
【0079】
速度制御部1016には、指令値ωm*の他、速度検出部9から回転角速度ωmならびにq軸電流Iq及びd軸電流Idが入力される。速度制御部1016はインバータ5の変調率ks、インバータ5が出力する三相電圧の位相φを計算し、これらを出力電圧指令生成部1011に出力する。出力電圧指令生成部1011は位相θ,φと変調率ksとを用いて上記三相電圧の指令値Vu*,Vv*,Vw*を計算する。出力電圧指令生成部1011および速度制御部1016は、例えば特許第7206491号公報において、それぞれ出力電圧指令生成部37および速度制御部30として説明されて公知である。
【0080】
振幅変調指令部1012は放電デューティdcと、整流デューティdrecとに基づいて、積和演算部1013の動作を制御する。インバータ5へ整流回路203から電力が入力される期間と、インバータ5へ充放電回路4から電力が入力される期間との比が、整流デューティdrecと放電デューティdcとの比と等しい。
【0081】
例えばインバータ5のスイッチング素子Sup,Svp,Swpが全てオンし、スイッチング素子Sun,Svn,Swnが全てオフする状況、およびインバータ5のスイッチング素子Sup,Svp,Swpが全てオフし、スイッチング素子Sun,Svn,Swnが全てオンする状況のいずれにおいても、インバータ5へは整流回路203および充放電回路4のいずれからも電力が入力されない。このような状況にある期間を零期間と仮称すると、零期間に相当する時比率は、整流デューティdrecと放電デューティdcとの和を、1から減じて得られる時比率として求められる。
【0082】
積和演算部1013は(簡単のために乗算器のみの記号で示されているが)、指令値Vu*,Vv*,Vw*と、放電デューティdcおよび整流デューティdrecとの積和演算を行って信号波Mを生成する。比較部1014は信号波MとキャリアCAとの値の比較結果を論理演算部1015へ出力する。論理演算部1015は当該比較結果に対して論理演算を行って、インバータ制御信号SSup,SSvp,SSwp,SSun,SSvn,SSwnを出力する。
【0083】
このように指令値Vu*,Vv*,Vw*、整流デューティdrec、放電デューティdc、キャリアCAを用いてインバータ制御信号SSup,SSvp,SSwp,SSun,SSvn,SSwnを出力する技術それ自体は、例えば特許文献1によって公知である。
【0084】
放電制御部102は、デューティ演算部1021、比較器1022を有する。デューティ演算部1021は位相θ(=ωt)、振幅Vm、コンデンサ電圧Vc、指令値Vdc*を入力し、放電デューティdcと整流デューティdrecとを生成する。比較器1022は放電デューティdcとキャリアCAとを比較して、スイッチScを導通させる放電スイッチ信号SScを生成する。このように位相θ(=ωt)、振幅Vm、コンデンサ電圧Vc、キャリアCAを用いて放電デューティdc、整流デューティdrec、放電スイッチ信号SScを生成する技術それ自体は、例えば特許文献1によって公知である。
【0085】
<コンデンサC4の充電>
充電制御部103は、振幅決定部103aと、充電指令生成部103bと、充電動作制御部103cと、共振抑制部1035と、加算器1037とを有する。
【0086】
振幅決定部103aは、減算器1031と、比例積分制御器1032とを含む。減算器1031は、コンデンサ電圧Vcと指令値Vc*との差分を求める。当該差分に対して、比例積分制御器1032は積分制御、あるいは比例積分制御を行って振幅Imを決定する。振幅決定部103aの動作それ自体も、例えば特許文献1によって公知である。
【0087】
充電指令生成部103bは、充電波形テーブル1033と、乗算器1034とを含む。充電波形テーブル1033は、分配率kbと位相θ(=ωt)とを入力し、位相θについての関数F(θ)(=F(ωt))を出力する。加算器1037は関数F(θ)と変動分ΔFとを加算して関数G(θ)=F(θ)+ΔFを出力する。関数G(θ)は関数F(θ)に変動分ΔFを加算して得られる値を採る、といえる。変動分ΔFは後に詳述される。
【0088】
乗算器1034は、振幅Imと、関数G(θ)とを乗算し、電流ilの上限値il^を決定する。
【0089】
関数F(θ)はLCフィルタ3の共振を考慮しないときの上限値il^を設定して電流ilを決定する。関数F(θ)はリアクトル電圧VLおよび両端電圧V3のいずれにも依存しない。例えば特許文献1において種々に例示される関数F(ωt)に対して位相θの正弦値sinθの絶対値|sinθ|を乗じた値が、この実施の形態における関数F(θ)として採用される。
【0090】
特許文献1においては、スイッチSlがオンする期間が決定され、この期間に基づいてリアクトル電流I4が制御される場合が例示される。この実施の形態ではスイッチSlがオンする期間ではなく、上限値il^によってリアクトル電流I4が制御される。スイッチSlがオンしているときにはリアクトルL4に印加される電圧Vrは|sinθ|に比例するので、特許文献1で紹介されたスイッチSlがオンする期間は、本実施の形態において電流ilに換算して考慮される。この換算の観点から、特許文献1で例示される関数F(ωt)の絶対値|sinθ|倍が、この実施の形態における関数F(θ)として採用され得る。具体的には例えば:
位相θの2倍の値2θの余弦値cos(2θ)が負または零である期間で放電デューティdcが零であり;
当該余弦値cos(2θ)が正である期間で放電デューティdcが当該余弦値cos(2θ)に比例する値、より具体的には指令値Vdc*のコンデンサ電圧Vcに対する比(Vdc*/Vc)(以下、「第1電圧比」とも称される)と当該余弦値cos(2θ)との積(Vdc*/Vc)・cos(2θ)を採り;
関数F(θ)は、前記位相θの正弦値の平方sinθの逆数の半値(2・sinθ)-1を1から減じた値[1-(2・sinθ)-1]と、絶対値|sinθ|との積[1-(2・sinθ)-1]・|sinθ|を採る。
【0091】
あるいは例えば:
放電デューティdcが位相θの余弦値cos(θ)の平方cosθに比例する値、より具体的には第1電圧比(Vdc*/Vc)と当該余弦値cos(θ)の平方cosθとの積を採り;
関数F(θ)は、位相θの2倍の値2θの余弦値cos(2θ)と、係数(1-kb)との積(1-kb)・cos(2θ)の半値に1/2を加えた値[1+(1-kb)・cos(2θ)]/2に対して絶対値|sinθ|を乗じた値[1+(1-kb)・cos(2θ)]・|sinθ|/2を採る。ここで係数(1-kb)は分配率kbを1から減じた値であり、0以上1以下の値を採る。
【0092】
あるいは例えば下記のように関数F(θ)を設定して第1電圧比を高めることができる。具体的には例えば:
位相θの2倍の値2θの余弦値cos(2θ)が負または零である期間で放電デューティdcが零であり;
当該余弦値cos(2θ)が正である期間で放電デューティdcが当該余弦値cos(2θ)に比例する値、より具体的には振幅Vmのコンデンサ電圧Vcに対する比(Vm/Vc)(以下、「第2電圧比」とも称される)と当該余弦値cos(2θ)との積(Vm/Vc)・cos(2θ)を採り;
関数F(θ)は、前記位相θの正弦値の平方sinθの逆数の半値(2・sinθ)-1を1から減じた値[1-(2・sinθ)-1]と、分配率kbと、係数π/√8と、絶対値|sinθ|との積(kb・π/√8)・[1-(2・sinθ)-1]・|sinθ|を採る。
【0093】
例えば特許6418287号公報で開示された値に基づいて関数F(θ)を設定し、直流電圧Vdcを振幅Vmよりも高める(以下、「昇圧制御」とも称される)ことができる。具体的には例えば:
放電デューティdcが後述される値Bを1から減じた値(1-B)を採り;
関数F(θ)は、値Bと、後述される値Jとの積B・Jを位相θの正弦値の絶対値|sinθ|から減じて得られる値(|sinθ|-B・J)を採る。
【0094】
値Bは単相交流電圧Vinを全波整流して得られる電圧Vrec(これは振幅Vmと絶対値|sinθ|との積Vm・|sinθ|として求められる)からコンデンサ電圧Vcを減じた値(Vrec-Vc)に対する、指令値Vdc*からコンデンサ電圧Vcを減じた値(Vdc*-Vc)の比(Vdc*-Vc)/(Vrec-Vc)である。
【0095】
値Jは、位相θの2倍の値2θの余弦値cos(2θ)と、係数(1-kb)との積(1-kb)・cos(2θ)を1から減じた値の半値[1-(1-kb)・cos(2θ)]/2と第3電圧比(Vm/Vdc*)との積である。
【0096】
第3電圧比(Vm/Vdc*)は指令値Vdc*に対する振幅Vmの比である。
【0097】
<変動分ΔF>
変動分ΔFは共振抑制部1035から出力される。変動分ΔFは関数F(θ)に対する修正項として機能する。
【0098】
例えば共振抑制部1035にはリアクトル電圧VLが入力される。共振抑制部1035はリアクトル電圧VLに比例する値(-kL・VL)を計算し、これを変動分ΔFとして出力する(kL>0)。このような変動分ΔFを用いてリアクトル電流I4を修正し、LCフィルタ3の共振の影響を低減する技術それ自体は例えば特許第5920520号公報によって公知である。
【0099】
例えば共振抑制部1035には両端電圧V3が入力される。共振抑制部1035は両端電圧V3に比例する値kc・V3を計算し、これを変動分ΔFとして出力する(kc>0)。このような変動分ΔFを用いてリアクトル電流I4を修正し、LCフィルタ3の共振の影響を低減する技術それ自体は例えば特許第6772577号公報によって公知である。
【0100】
本実施の形態において、変動分ΔFはリアクトル電圧VLと両端電圧V3とのいずれかまたは両方に依存して生成される。例えばいずれも非負である係数kc0,kL0を導入して、変動分ΔFは値kc0・V3-kL0・VL(但しkc0+kL0≠0、kc0=0のときkL0=kL、kL0=0のときkc0=kc)で計算される。リアクトル電圧VLが小さい程、変動分ΔFは大きい。両端電圧V3が大きい程、変動分ΔFは大きい。
【0101】
充電動作制御部103cは電流ilと上限値il^とに基づいて、充電回路4bの動作を制御する。より具体的には、電流ilが、上限値il^に至るまでスイッチSlをオンさせる充電スイッチ信号SSlを、充電動作制御部103cが生成する。
【0102】
スイッチSlがオンするときには、リアクトル電流I4が全て電流ilとなってスイッチSlを流れる。スイッチSlがオンすると電流ilは上昇し、上限値il^に至ると充電スイッチ信号SSlがスイッチSlをオフする。スイッチSlがオフするとリアクトル電流I4が全てコンデンサC4の充電に供される。従って上限値il^は電流ilの上限であり、かつリアクトル電流I4の上限でもある。
【0103】
本実施の形態において充電動作制御部103cは、充電回路4bに、連続モードを含むモードでリアクトル電流I4を流させるモード変調部として機能する。具体的には電流ilが正のときに充電スイッチ信号SSlがスイッチSlをオンさせることにより、連続モードでリアクトル電流I4が流れる。特許文献1では充電回路4bが臨界モードで動作する場合が例示される。
【0104】
ブロックZは振幅決定部103aと、乗算器1034と、充電動作制御部103cとを含む。例えばブロックZはいわゆるリニアIC(線形集積回路)を用いて実現される。
【0105】
図3はブロックZの構成を例示するブロック図である。充電動作制御部103cは例えば比較器1036、タイマー1039、フリップフロップ1038を有する。
【0106】
フリップフロップ1038はリセット入力端Rと、セット入力端Sと、出力端Qとを有する。セット入力端Sにおける電位が立ち上がってから、リセット入力端Rにおける電位が立ち上がるまで、出力端Qの電位は第1の論理値に対応した値が維持される。リセット入力端Rにおける電位が立ち上がってから、セット入力端Sにおける電位が立ち上がるまで、出力端Qの電位は第2の論理値に対応した値が維持される。出力端Qの電位は充電スイッチ信号SSlとして機能する。例えば第1の論理値に対応する電位がトランジスタQlをターンオンする電位であり、第2の論理値に対応する電位がトランジスタQlをターンオフする電位である。
【0107】
比較器1036は、電流ilから上限値il^を減じた値(il-il^)が非負であることを示す電位を、リセット入力端Rへ出力する。
【0108】
タイマー1039は例えば時間の経過と共に増加するカウント値を生成するアップカウンタである。タイマー1039には関数G(θ)=F(θ)+ΔFが入力され、タイマー1039はカウント値を関数G(θ)まで増加させるアップカウンタとして機能する。
【0109】
タイマー1039には出力端Qが接続される。タイマー1039のカウント値は、出力端Qの電位が、第2の論理値に対応する値から第1の論理値に対応する値へと遷移することによってリセットされる。
【0110】
図4は充電動作制御部103cの動作を模式的に例示するグラフである。当該グラフにおいて横軸は時間を示し、コンデンサC4が充電される期間である充電期間CHと、充電期間CHの始点tsおよび終点teとが示される。
【0111】
図4に示されるグラフにおいて、縦軸は、カウント値K、二値論理Xs、二値論理Xr、二値論理Xq、充電スイッチ信号SSl、電流il,(I4-il)、上限値il^が示される。
【0112】
二値論理Xsはセット入力端Sにおける電位に対応する。当該電位が高い状態と二値論理Xsの活性とが対応し、当該電位が低い状態と二値論理Xsの非活性とが対応する。二値論理Xrはリセット入力端Rにおける電位に対応する。当該電位が高い状態と二値論理Xrの活性とが対応し、当該電位が低い状態と二値論理Xrの非活性とが対応する。二値論理Xqは出力端Qにおける電位に対応する。当該電位が高い状態と二値論理Xqの活性とが対応し、当該電位が低い状態と二値論理Xqの非活性とが対応する。例えば充電スイッチ信号SSlが高い電位を採るときにスイッチSlがオンし、充電スイッチ信号SSlが低い電位を採るときにスイッチSlがオフする。
【0113】
本実施の形態では二値論理Xs,Xr,Xqのいずれについても活性の状態が論理値“H”に、非活性の状態が論理値“L”に、それぞれ対応して説明される。二値論理Xsの活性および非活性と、セット入力端Sにおける電位と、論理値の“H”“L”との組み合わせは、上記の例示に限定されない。二値論理Xr,Xqに関する組み合わせは、二値論理Xsに関する組み合わせと整合する。例えば充電スイッチ信号SSlが高い電位を採るときにスイッチSlがオフし、充電スイッチ信号SSlが低い電位を採るときにスイッチSlがオンする場合には、二値論理Xqが活性であるときの出力端Qの電位は、二値論理Xqが非活性であるときの出力端Qの電位よりも低い。
【0114】
カウント値Kは二値論理Xqが非活性から活性へ遷移する時点でリセットされる。当該時点は終点teに対応する。カウント値Kは二値論理Xqが活性から非活性へ遷移する時点から時間の経過と共に増加する。当該時点は始点tsに対応する。
【0115】
カウント値Kが所定値に到達すると、タイマー1039は論理値“H”に対応する電位をセット入力端Sへ出力する。これはタイマー1093が二値論理Xsを活性化させたとみることもできる。
【0116】
二値論理Xsが非活性から活性へと遷移することにより、二値論理Xqは非活性から活性へと遷移し、充電スイッチ信号SSlによってスイッチSlがオンする。スイッチSlのオンにより、リアクトル電流I4はコンデンサC4へ流れなくなる。
【0117】
二値論理Xqが非活性から活性となってタイマー1039がリセットされ、カウント値Kの上昇も停止する。これにより二値論理Xsは非活性となり、二値論理Xsの活性化はパルス状に発生する。
【0118】
カウント値Kが所定値に到達する時点が終点teである。所定値が終点teを決定するということができる。カウント値Kは終点teで一旦リセットされてから始点tsにおいて上昇が開始することに鑑みて、所定値が充電期間CHを決定するということもできる。
【0119】
当該所定値は関数G(θ)とカウント値Kの上昇速度とによって定まる。図4では所定値が関数G(θ)である場合が例示される。この場合には例えばカウント値Kの単位時間当たりの増分は1である。カウント値Kの単位時間当たりの増分がNであれば、所定値は関数G(θ)のN倍とされることにより、充電期間CHは上述の例示と同様に決定される。このことから、充電期間CHは関数G(θ)に比例するといえる。変動分ΔFは上述の様に設定されるので、リアクトル電圧VLが小さい程、両端電圧V3が大きい程、充電期間CHは長い、ということができる。
【0120】
関数G(θ)は位相θについての関数F(θ)と変動分ΔFとの和である。関数F(θ)は上述のように設定される周期関数であり、リアクトル電流I4が零であることを前提としない。このような終点teの設定により、リアクトル電流I4は臨界モードのみならず連続モードの態様でも流れる。
【0121】
充電回路4bに入力する電流はリアクトル電流I4であり、充電回路4bはリアクトル電流I4をスイッチSlを用いたスイッチングによってチョッピングし、コンデンサC4を充電するといえる。
【0122】
変動分ΔFの影響を無視すると、チョッピングの周期(これはスイッチSlのスイッチング周期ともいえる)Tswにおけるリアクトル電流I4の平均値は、当該平均値の最大値で除した値(以下「正規値」と仮称)が関数F(θ)に相当する。カウント値Kがリセットされる時点についての所定値も関数F(θ)に基づいており、正規値が小さい程、充電期間CHは短い。そして変動分ΔFの影響を考慮すると、リアクトル電圧VLが小さい程、充電期間CHは長く、両端電圧V3が大きい程、充電期間CHは長い。
【0123】
以下の説明では、リアクトル電流I4を臨界モードに則って流す制御が「臨界モード制御」と仮称され、リアクトル電流I4が境界位相近傍を除き連続モードに則って流す制御が「連続モード制御」と仮称される。ここで「境界位相近傍」とは、関数F(θ)が0となる位相θおよびその近傍の位相θを纏めた位相期間の仮称である。境界位相近傍ではリアクトル電流I4は不連続モードで流れ得る。
【0124】
スイッチSlがオンしている間、リアクトルL4が有するインダクタンスに由来する速度で電流ilは上昇する。電流ilが上限値il^に到達すると、比較器1036は論理値“H”に対応する電位をリセット入力端Rへ出力する。これは比較器1036が二値論理Xrを活性化させたとみることもできる。
【0125】
二値論理Xrが非活性から活性へと遷移することにより、二値論理Xqは活性から非活性へと遷移し、充電スイッチ信号SSlによってスイッチSlがオフする。スイッチSlのオフにより、リアクトル電流I4はコンデンサC4へ流れて電流ilの値は零となる。これにより二値論理Xrは非活性となり、二値論理Xrの活性化はパルス状に発生する。
【0126】
電流ilが上限値il^に到達する時点が始点tsである。上限値il^が始点tsを決定するということができる。
【0127】
タイマーのカウントアップによってフリップフロップをセットし、当該セットによってタイマーをリセットし、電流ilに相当する電流が位相に依存した上限値へ到達してフリップフロップをリセットする技術それ自体は、例えば米国特許第7279876号明細書、米国特許第8270190号明細書、STMicroelectronicsの商品L4984Dのデータシート(https://www.st.com/resource/en/datasheet/l4984d.pdf参照)によって公知である。後二者はタイマーのカウントアップを決定する所定値が電源電圧の位相に依存する技術も開示するが、低域通過濾波を行うフィルタによる共振も、変動分ΔFに相当する量については考慮されていない。
【0128】
本実施の形態ではカウント値Kについての所定値は関数G(θ)を用いて上述の様に設定される。上限値il^も所定値と同様に変動分ΔFに依存する。上述の説明に則して言えば、リアクトル電圧VLが小さい程、両端電圧V3が大きい程、所定値も上限値il^も大きく、始点tsおよび終点teのいずれもが遅くなる。この遅れを位相θについて見れば、リアクトル電圧VLが小さい程、両端電圧V3が大きい程、始点tsおよび終点teのいずれもが位相θに対して遅相側へずれる、といえる。充電期間CHは、例えばカウント値Kが0から関数G(θ)に比例する値まで上昇する期間であり、充電期間CHは振幅Imに依存せず、位相θに依存して設定される長さを有する。
【0129】
本実施の形態ではこのようにして充電期間CHの始点tsと終点teとが決定される。リアクトル電流I4が連続モードによって流れる期間が存在する。
【0130】
上記のように例示される関数G(θ)が採用される場合、入力電流Iinが正弦波であることは前提ではない。例えば特許文献1において、力率を1とすることを考慮した説明が行われる。しかし特許文献1では臨界モードでの制御が例示されており、本実施の形態のように連続モード制御が行われる場合には、境界位相近傍において不連続モードでリアクトル電流I4が流れることも想定され、従って入力電流Iinが正弦波から歪む場合も想定される。
【0131】
<高調波の低減>
始点tsのみならず、終点teも変動分ΔFを反映することの効果について、図5図6図7を用いた説明によって以下に示す。説明を簡単にするため、スイッチScがオンしている状況における充放電回路4の動作が例示される。コンデンサ電圧Vcは両端電圧V3よりも高く、電流阻止部4cの機能により、リアクトルL4とコンデンサC4とは直接には接続されないので、充放電回路4は公知の力率改善回路として機能するとみることができる。また、変動分ΔFの影響を単純化するため、便宜的に関数F(θ)として|sinθ|が採用され、変動分ΔFとして入力電流Iinの周波数の9倍の周波数(9次成分)を有する正弦波(9次高調波)の絶対値が採用される。
【0132】
このように、リアクトル電圧VL、コンデンサ電圧Vcに依存しない値を変動分ΔFとして仮想的に採用するとき、変動分ΔFは、LCフィルタ3の共振の影響を考慮しないときの電流ilの決定に採用される関数F(θ)に対する、外乱とみることができる。
【0133】
図5は変動分ΔFが0.125×|sin(9θ)|であるときの、入力電流Iinとリプル率との関係を例示するグラフである。図6は変動分ΔFが0.25×|sin(9θ)|であるときの、入力電流Iinとリプル率との関係を例示するグラフである。図5および図6のいずれにおいても、横軸には入力電流Iinの実効値が示され、当該実効値は振幅Imの1/√2倍に相当する。図5および図6のいずれにおいても、縦軸にはリプル率が示され、当該リプル率は入力電流Iinにおける9次高調波の百分率である。
【0134】
図5における折線J11および図6における折線J21は、いずれも始点tsの設定のみに変動分ΔFを反映させ、終点teの設定には変動分ΔFを反映させない場合の上記関係を示す。当該場合は、図3に即して言えば、タイマー1039に対して関数G(θ)に代えて関数F(θ)が入力された場合に相当するといえる。
【0135】
図5における折線J12および図6における折線J22は、いずれも始点tsの設定のみならず終点teの設定にも変動分ΔFを反映させた場合の上記関係を示す。当該場合は、図3に即して言えば、タイマー1039に対して図示通り、関数G(θ)が入力された場合に相当する。
【0136】
折線J12は折線J11よりもリプル率が低く、折線J22は折線J21よりもリプル率が低い。
【0137】
図7は、上述の実効値が16[Arms]の場合における、変動分ΔFの振幅と上記のリプル率との関係を例示するグラフである。折線J31は、始点tsの設定のみ変動分ΔFを反映させ、終点teの設定には変動分ΔFを反映させない場合の上記関係を示す。折線J32は、始点tsの設定のみならず終点teの設定にも変動分ΔFを反映させた場合の上記関係を示す。
【0138】
折線J31において変動分ΔFの振幅が0.125であるときのプロットは、図5で示された折線J11において入力電流Iinが16[Arms]であるときのプロットに相当する。折線J31において変動分ΔFの振幅が0.25であるときのプロットは、図6で示された折線J21において入力電流Iinが16[Arms]であるときのプロットに相当する。
【0139】
折線J32において変動分ΔFの振幅が0.125であるときのプロットは、図5で示された折線J12において入力電流Iinが16[Arms]であるときのプロットに相当する。折線J32において変動分ΔFの振幅が0.25であるときのプロットは、図6で示された折線J22において入力電流Iinが16[Arms]であるときのプロットに相当する。
【0140】
図7において、振幅Imに対する変動分ΔFの振幅の百分率とリプル率の百分率の値とが等しい場合が、鎖線で追記されている。折線J32は当該鎖線よりも下にあり、変動分ΔFの振幅に対するリプル率の平均の変化率(これは図7において、折線J32を直線で近似した場合の当該直線の傾斜として現れる)は約0.85である。この値0.85が1よりも小さいことは、変動分ΔFについてのゲインの低下を示す。当該低下は、境界位相近傍において変動分ΔFが急激に変化することに由来する。
【0141】
境界位相近傍ではリアクトル電流I4は小さく、上限値il^が計算上では負となる領域が存在する。その領域では実際にはリアクトル電流I4は流れず、境界位相近傍においてリアクトル電流I4が不連続モードで流れる期間が発生し、上記のゲインの低下を招来する。かかる低下は、しかし、共振抑制部1035における係数kc,kLを補正することにより低減され得る。
【0142】
図8および図9のいずれもが、関数G(θ)、入力電流Iin、周期Tsw、オフ期間Toff、オン期間Ton、時比率Don,Doffの経時的変化を例示するグラフである。
【0143】
関数G(θ)として、関数F(θ)と、変動分ΔF=0.125×|sin(9θ)|との和が採用される。入力電流Iinは、9次高調波成分を含む。周期Tswはオフ期間Toffとオン期間Tonとの和である。オフ期間ToffはスイッチSlが連続してオフする期間である。オフ期間Toffは充電期間CHに相当する。オン期間TonはスイッチSlが連続してオンする期間である。オン期間Tonにおいてリアクトル電流I4が増大する。時比率Donはオン期間Tonの周期Tswに対する比である。時比率Doffはオフ期間Toffの周期Tswに対する比である。
【0144】
図8は始点tsの設定のみに変動分ΔFを反映させ、終点teの設定には変動分ΔFを反映させない場合を示す。当該場合は、図3に即して言えば、タイマー1039に対して関数G(θ)に代えて関数F(θ)が入力された場合に相当するといえる。従って、オフ時間Toffは変動分ΔFの影響を受けず、関数F(θ)により、位相θに対して一定に制御される。
【0145】
比例積分制御器1032の時定数は周期Tswに比べて極めて大きい。従って、オン時間Tonは、乗算器1034に入力される変動分ΔFに応じて、上限値(il^)に瞬時に対応して制御される。
【0146】
図9は始点tsの設定のみならず終点teの設定にも変動分ΔFを反映させた場合を示す。当該場合は、図3に即して言えば、乗算器1034にもタイマー1039に対しても、図示通り、関数G(θ)が入力された場合に相当する。乗算器1034に入力される変動分ΔFに対応する応答は、図8で説明された場合と同様である。しかしオフ時間Toffは、変動分ΔFの影響を受けることにより、関数F(θ)による一定値に加えて、変動分ΔFに比例して脈動する。一方、単相交流電圧Vinとコンデンサ電圧Vcとの関係から、時比率Don、Doffは変動分ΔFに係わらず位相に対して一定に制御される。従って、オフ時間Toffの脈動に対してオン時間Tonが高速に応答し、脈動を吸収するように周期Tswが変動する。
【0147】
図8図9とから、関数G(θ)を用いて乗算器1034および充電動作制御部103cが動作することにより、変動分ΔFが入力電流Iinの波形に与える影響は終点teの設定に変動分ΔFを反映させても反映させなくても同程度であって、共振抑制部1035の指令によってLCフィルタ3の共振の影響が低減されることが看取される。
【0148】
連続モード制御が行われる場合には、上述された想定の様に、入力電流Iinが正弦波から歪む。当該歪みは特に、境界位相近傍において大きい。始点tsの設定のみに変動分ΔFを反映させ、終点teの設定には変動分ΔFを反映させない場合(図8参照)と比較して、始点tsおよび終点teのいずれの設定にも変動分ΔFを反映させた場合(図9参照)には、境界位相近傍(図8および図9において時刻Timeが0.19sである時点およびその近傍)においてスイッチング周波数fsw(図8および図9で例示された周期Tswの逆数)が低下し、不連続モードが入力電流Iinを歪ませる影響が大きい。終点teの設定に変動分ΔFを反映させない場合では、終点teの制御が遅延せず、終点teの設定にも変動分ΔFを反映させる場合と比較すると、スイッチング周波数fswの変動が小さく、不連続モードが入力電流Iinを歪ませる影響も小さい。
【0149】
図10及び図11はいずれも、直接形電力変換回路100において連続モード制御が採用されたときの入力電流Iinの波形を例示するグラフである。図10はkL=0の場合を、図11はkL=0.015の場合を、それぞれ例示する。図10に例示される場合と、図11に例示される場合とは、係数kL以外の条件は揃えられている。例えば単相交流電圧Vinの電圧値(実効値)は200Vであり、その周期は0.02秒(=1/50Hz)であり、直接形電力変換回路100に入力される電力は4kWであり、キャリアCAの周波数は5.9kHであり、LCフィルタ3のカットオフ周波数は1.75kHzである。
【0150】
図10図11とを比較して、連続モード制御が採用されても、入力電流Iinの高調波が抑制されていることが看取される。
【0151】
図12および図13は、単相交流電圧Vinの周波数を基本周波数として、その高調波成分の次数と、高調波電流(より具体的にはその振幅の実効値[Arms])との関係を例示するグラフである。図12及び図13のいずれも、直接形電力変換回路100において連続モード制御が採用された場合を例示する。図13図12が示すグラフのうち、高調波電流の小さい領域を拡大して示す。
【0152】
図12および図13のいずれにおいても、折線G10は規格JISC61000-3-2(300V,20A/相以下)の限度値を示し、折線G11は図10に例示された入力電流Iinの高調波成分を示し、折線G12は図11に例示された入力電流Iinの高調波成分を示す。
【0153】
図12において、折線G11,G12はほぼ同程度に見え、いずれも折線G10よりも低い値を示す様に見える。図8および図9を用いて説明された、スイッチScがオンしている状況の入力電流Iinの歪みも小さい。図13において拡大されて表示されることにより、30次以上の次数において、折線G12が折線G11よりも小さいことが看取される。特に35次において折線G12は、折線G11との乖離が大きいことが看取される。このことから、kL=0、即ち実質的にG(θ)=F(θ)であるときには、入力電流Iinは、その高調波成分の大きさが、規格JISC61000-3-2を満足しないことがわかる。これに対して、kL=0.015として変動分ΔFが考慮されることにより、折線G12が折線G10よりも小さな値を示し、規格JISC61000-3-2が満足されることがわかる。
【0154】
<効率の改善>
図14は、インバータ5からの出力電力Pmot[W]と、インバータ5からの出力電圧Vmot[V]の平均値との関係を例示するグラフである。図15は、出力電力Pmot[W]と、スイッチSlのスイッチング周波数fsw(これは充放電回路4におけるチョッピングの周期Tswの逆数であるとも言える)との関係を例示するグラフである。図16は、出力電力Pmot[W]と、直接形電力変換回路100の効率との関係を例示するグラフである。
【0155】
ただし、説明の簡単のため、スイッチScがオンする状態が維持された場合が例示される。この場合、充放電回路4は公知の力率改善回路として機能する。
【0156】
図14から図16のいずれにおいても、白い丸および白い丸同士を繋ぐ破線は、臨界モード制御が採用されたときの上記関係を示す。図14から図16のいずれにおいても、黒い丸および黒い丸同士を繋ぐ実線は、上述のようにして充電期間CHの始点tsと終点teとが決定される制御(これは上述の「連続モード制御」に相当する)が採用されたときの上記関係を示す。
【0157】
図14から図16に示される結果は、臨界モード制御における指令値Vdc*、変調率ks、キャリアCAの周波数が、それぞれ連続モード制御における指令値Vdc*、変調率ks、キャリアCAの周波数と等しく設定された場合の結果である。臨界モード制御におけるインバータ5の損失と、連続モード制御におけるインバータ5の損失とは、等しい。図14から図16において、インバータ5の損失による影響は排除される。ここでは誘導性負荷6としてリアクトルと抵抗の直列接続回路を三相Y結線した静止負荷が採用されている。
【0158】
図14において、臨界モード制御における上記関係と、連続モード制御における上記関係との相違は看取されない。
【0159】
図15において、連続モード制御では、始点tsおよび終点teのいずれもが、関数G(θ)に則って決定されるので、スイッチング周波数fswは出力電力Pmotに依存しない。図15では当該スイッチング周波数fswの値は、出力電力Pmotに依らず約70kHzを採る。出力電力Pmotを高めるには電流ilのピーク値を高める必要があり、臨界モード制御では電流ilがピーク値とゼロとの間を遷移するので、スイッチSlのオン時間およびオフ時間を長くする必要がある。臨界モード制御ではスイッチング周波数fswと出力電力Pmotとの間には概ね反比例の関係がある。
【0160】
図15では、出力電力Pmotが約1150W以下では連続モード制御の方が、臨界モード制御よりもスイッチング周波数fswが低く、出力電力Pmotが約1150W以上では連続モード制御の方が、臨界モード制御よりもスイッチング周波数fswが高い。
【0161】
図16において、出力電力Pmotが約1150[W]以下では連続モード制御の方が、臨界モード制御よりも効率が高く、出力電力Pmotが約1150W以下では連続モード制御の方が、臨界モード制御よりも効率が低い。この相違は、臨界モード制御におけるスイッチング周波数fswと、連続モード制御におけるスイッチング周波数fswとの大小関係に由来する。臨界モードではスイッチング周波数fswが高い程、リアクトルL4の鉄損およびスイッチSlのスイッチング損失が大きく、効率は低い。
【0162】
例えば誘導性負荷6が電動機であって、これに直接形電力変換回路100が部分負荷運転をさせるとき、連続モード制御が採用される方が、臨界モード制御が採用される場合と比較して、効率が高い運転領域が広く得られる。
【0163】
<整流回路203の第1の変形>
図17は本開示の第1の変形にかかる直接形電力変換回路100Aの構成を例示する回路図である。直接形電力変換回路100Aの構成は、直接形電力変換回路100の構成に対して整流回路203の構成が異なり、他の構成は同一である。直接形電力変換回路100Aも直接形電力変換回路100と同様に、充放電回路4とインバータ5とを備え、制御装置10によって直接形電力変換回路100と同様に制御される。
【0164】
直接形電力変換回路100Aにおいて整流回路203が含むLCフィルタ3は、ダイオード整流器2の入力側と出力側とに分かれて配置される。具体的にはLCフィルタ3が有するリアクトルL3は単相交流電源1とダイオード整流器2の入力側との間に設けられ、コンデンサC3はダイオード整流器2の出力側に接続される。リアクトルL3はダイオード整流器2よりもインバータ5から離れているということもできる。このような整流回路203の構成それ自体は、例えば特許第5920520号公報において公知である。
【0165】
このような構成が採用される整流回路203においては、リアクトル電圧VLの極性は、単相交流電圧Vinの低電位から高電位に向かう方向が正に採用される。このようにリアクトル電圧VLの極性を設定することによって直接形電力変換回路100と同様に値-kL・VLを取り扱えることは、当該極性を設定するための技術と共に、例えば特許第5920520号公報において公知である。
【0166】
入力電流IinがリアクトルL3およびダイオードD21,D24を経由して流れるときには、単相交流電圧Vinの低電位から高電位に向かう方向は、図17において単相交流電圧Vinに併記された矢印の方向と一致する。リアクトルL3に流れる電流の方向は、図17において入力電流Iinに併記された矢印の方向と一致する。単相交流電源1側におけるリアクトルL3の電位は、単相交流電源1と反対側におけるリアクトルL3の電位よりも高い。
【0167】
入力電流IinがリアクトルL3およびダイオードD22,D23を経由して流れるときには、単相交流電圧Vinの低電位から高電位に向かう方向は、図17において単相交流電圧Vinに併記された矢印の方向と反対である。リアクトルL3に流れる電流の方向は、図17において入力電流Iinに併記された矢印の方向と反対である。単相交流電源1側におけるリアクトルL3の電位は、単相交流電源1と反対側におけるリアクトルL3の電位よりも低い。
【0168】
よってリアクトル電圧VLの極性は、単相交流電圧Vinの低電位から高電位に向かう方向が正に採用される。
【0169】
入力電流Iinがダイオード整流器2とリアクトルL3との間で流れ、ダイオードD21,D24を経由して流れる場合にも、入力電流IinがダイオードD22,D23を経由して流れる場合にも、リアクトル電圧VLの極性は、入力電流Iinが流れる方向とは逆方向が正とされる。
【0170】
直接形電力変換回路100においても、リアクトル電圧VLの極性は、ダイオード整流器2とリアクトルL3との間で流れる出力電流I2、より具体的には出力電流I2のうち、交流電源1から供給される入力電流Iinの成分の向きとは逆の方向が正とされる。よって直接形電力変換回路100,100Aのいずれにおいても、リアクトル電圧VLの極性は、リアクトルL3とダイオード整流器2との間で流れる電流、より具体的にはそのうちで交流電源1から供給される入力電流Iinの成分が流れる方向とは逆方向が正であると言える。
【0171】
直接形電力変換回路100,100Aのいずれにおいても、コンデンサC3は直流電源線LL,LHの間へ直接に接続される。直接形電力変換回路100においてはVr=|Vin|であり、V3=Vrfである。直接形電力変換回路100Aにおいては、Vr=V3=Vrfである。整流電圧Vrfは全波整流された単相交流電圧|Vin|を低域通過濾波して得られることに鑑みれば、両端電圧V3の極性は、直接形電力変換回路100、100Aのいずれにおいても、ダイオード整流器2の出力側(これはダイオード整流器2のコンデンサC3が接続される側ともいえる)の電圧の極性と一致する、といえる。より具体的には、両端電圧V3の極性は、直流電源線LLから直流電源線LHへ向かう方向が正に採用される、といえる。
【0172】
<整流回路203の第2の変形>
図18は本開示の第2の変形にかかる直接形電力変換回路100Bの構成を例示する回路図である。直接形電力変換回路100Bの構成は、直接形電力変換回路100の構成に対して整流回路203の構成を除いて同一である。直接形電力変換回路100Bも直接形電力変換回路100と同様に、充放電回路4とインバータ5とを備え、制御装置10によって直接形電力変換回路100と同様に制御される。但し後述する理由により、充放電回路4において電流阻止部4cは不要である。図18では電流阻止部4cが短絡除去された場合、具体的にはリアクトルL4とスイッチScとがダイオードD40とは反対側において直接に接続された場合が例示される。
【0173】
直接形電力変換回路100Bにおいて整流回路203が含むLCフィルタ3は、ダイオード整流器2の入力側に配置される。具体的にはLCフィルタ3が有するリアクトルL3は単相交流電源1とダイオード整流器2の入力側との間に設けられ、コンデンサC3はダイオード整流器2の入力側に接続される。リアクトルL3およびコンデンサC3は、ダイオード整流器2よりもインバータ5から離れているということもできる。このような整流回路203の構成それ自体は、例えば特許第5920520号公報において公知である。
【0174】
このような構成が採用される整流回路203においても、直接形電力変換回路100Aに採用される整流回路203と同様に、リアクトル電圧VLの極性は、単相交流電圧Vinの低電位から高電位に向かう方向が正に採用され、入力電流Iinが流れる方向とは逆方向が正とされる。よって直接形電力変換回路100,100A,100Bのいずれにおいても、リアクトル電圧VLの極性は、リアクトルL3とダイオード整流器2との間で流れる電流、より具体的にはそのうち、交流電源1から供給される入力電流Iinの成分が流れる方向とは逆方向が正であると言える。
【0175】
直接形電力変換回路100Bにおいては、ダイオード整流器2がコンデンサC3とコンデンサC4との間に介在するので、電流阻止部4cの機能はダイオード整流器2によって担われ、電流阻止部4cは不要である。
【0176】
コンデンサC3は、ダイオードD21のアノードとダイオードD22のカソードとの接続点(以下「第1接続点」と仮称される)と、ダイオードD23のアノードとダイオードD24のカソードとの接続点(以下「第2接続点」と仮称される)との間に接続される。
【0177】
入力電流IinがダイオードD21,D24を経由して流れるときには、単相交流電圧Vinの低電位から高電位に向かう方向は、図18において単相交流電圧Vinに併記された矢印の方向と一致する。このとき、第1接続点の電位は第2接続点の電位より高く、両端電圧V3の正方向は、図18において両端電圧V3に併記された矢印の方向と一致する。
【0178】
入力電流IinがダイオードD22,D23を経由して流れるときには、単相交流電圧Vinの低電位から高電位に向かう方向は、図18において単相交流電圧Vinに併記された矢印の方向と反対である。このとき、第1接続点の電位は第2接続点の電位より低く、両端電圧V3の正方向は、図18において両端電圧V3に併記された矢印の方向と反対である。
【0179】
両端電圧V3の極性は、単相交流電圧Vinの低電位から高電位に向かう方向が正に採用される、ということができる。
【0180】
直接形電力変換回路100Bにおいて第1接続点と第2接続点とは、ダイオード整流器2のうちコンデンサC3が接続される側であり、ここにおける電圧の極性と両端電圧V3の極性とが一致する。直接形電力変換回路100においてコンデンサC3は、ダイオード整流器2が電圧Vr=|Vin|を出力する側で、ダイオード整流器2へリアクトルL3を介して設けられる。電圧Vrの極性と整流電圧Vrfの極性とは一致する。
【0181】
よって両端電圧V3の極性は、直接形電力変換回路100,100A,100Bのいずれにおいても、ダイオード整流器2の出力側および入力側のうちコンデンサC3が接続される側における電圧の極性と一致する、といえる。
【0182】
<整流回路203の第3の変形>
図19は本開示の第3の変形にかかる直接形電力変換回路100Cの構成を例示する回路図である。直接形電力変換回路100Cの構成は、直接形電力変換回路100の構成に対して整流回路203の構成を除いて同一である。直接形電力変換回路100Cも直接形電力変換回路100と同様に、充放電回路4とインバータ5とを備え、制御装置10によって直接形電力変換回路100と同様に制御される。但し後述する理由により、充放電回路4において電流阻止部4cは不要である。図19では電流阻止部4cが開放除去された場合、具体的にはリアクトルL4とスイッチScとがダイオードD40とは反対側で分離された場合が例示される。
【0183】
直接形電力変換回路100Cにおいて整流回路203は、ダイオード整流器2が一対のダイオード整流器2a,2bを含む。
【0184】
ダイオード整流器2aは直接形電力変換回路100が備えるダイオード整流器2と同様に、LCフィルタ3と単相交流電源1との間に設けられる。
【0185】
例えばダイオード整流器2aはダイオードD21a,D22a,D23a,D24aを備えている。ダイオードD21a,D22a,D23a,D24aはブリッジ回路を構成する。ダイオード整流器2aは、単相交流電源1から単相交流電圧Vinが印加される入力側と、出力側とを有する。ダイオード整流器2aは、単相交流電圧Vinを単相全波整流して電圧|Vin|を得て、これを電圧Vrとして出力側から出力する。
【0186】
リアクトルL3はダイオード整流器2aとコンデンサC3との間に設けられる。LCフィルタ3にはダイオード整流器2aから出力電流I2が流れ込み、リアクトルL3に流れる電流は出力電流I2と一致する。直接形電力変換回路100Cにおいては、コンデンサC3は直流電源線LH,LLの間へ直接に接続される。
【0187】
ダイオード整流器2bは直接形電力変換回路100A,100Bが備えるダイオード整流器2と同様に、リアクトルL3を介することなく直流電源線LHs,LLを介して充放電回路4に接続される。
【0188】
例えばダイオード整流器2bはダイオードD21b,D22b,D23b,D24bを備えている。ダイオードD21b,D22b,D23b,D24bはブリッジ回路を構成する。ダイオード整流器2bは、単相交流電源1から単相交流電圧Vinが印加される入力側と、出力側とを有する。ダイオード整流器2bは、単相交流電圧Vinを単相全波整流して電圧|Vin|を得て、これを電圧Vrとして出力側から出力する。直流電源線LLの電位は直流電源線LHsの電位よりも低い。
【0189】
ダイオード整流器2bが出力する電圧Vrは充放電回路4、具体的にはスイッチSlとリアクトルL4との直接接続に対して印加される。ダイオード整流器2bが出力する電流はリアクトル電流I4と一致する。スイッチSlがオンするときには、リアクトル電流I4は直流電源線LHsからリアクトルL4およびスイッチSlを介して直流電源線LLへ流れる。スイッチSlがオフするときには、リアクトル電流I4はダイオードD40を介してコンデンサC4へ流れ、コンデンサC4を充電する。
【0190】
充放電回路4においてリアクトルL4の高電位側は直流電源線LHsを介してダイオード整流器2bの出力側の高電位側と接続され、スイッチScの高電位側は直流電源線LHおよびリアクトルL3を介してダイオード整流器2bの出力側の高電位側と接続される。充放電回路4において電流阻止部4cが開放除去されており、ダイオード整流器2bから充放電回路4へ流れる電流は、ダイオード整流器2aからLCフィルタ3へ流れる出力電流I2と独立して流れる。このような整流回路203の構成それ自体、および直接形電力変換回路100Cが直接形電力変換回路100と同様に制御され得ることは、例えば特許第5381970号公報において公知である。
【0191】
直接形電力変換回路100Cにおいても、直接形電力変換回路100と同様に、リアクトル電圧VLの極性は、ダイオード整流器2aとリアクトルL3との間で流れる出力電流I2、より具体的には出力電流I2のうち、交流電源1から供給される成分とは逆の方向が正とされる。
【0192】
直接形電力変換回路100Cにおいても直接形電力変換回路100と同様に、コンデンサC3は直流電源線LL,LHの間へ直接に接続される。直接形電力変換回路100,100CのいずれにおいてもVr=|Vin|であり、V3=Vrfである。両端電圧V3の極性は、直接形電力変換回路100においてダイオード整流器2の出力側(これはダイオード整流器2の、コンデンサC3が接続される側ともいえる)の電圧の極性と一致し、直接形電力変換回路100Cにおいてダイオード整流器2aの出力側(これはダイオード整流器2aのコンデンサC3が接続される側ともいえる)の電圧の極性と一致する、といえる。両端電圧V3の極性は、直流電源線LLから直流電源線LHへ向かう方向が正に採用される、といえる。
【0193】
<整流回路203の第4の変形>
図20は本開示の第4の変形にかかる直接形電力変換回路100Dの構成を例示する回路図である。直接形電力変換回路100Dの構成は、直接形電力変換回路100Cの構成に対して整流回路203の構成を除いて同一である。
【0194】
具体的には直接形電力変換回路100Dにおける整流回路203は、直接形電力変換回路100Cにおける整流回路203と比較して、単相交流電源1と直流電源線LH,LLとの間におけるダイオード整流器2aとLCフィルタ3との配置順序が入れ替わっている点で相違する。かかる相違に由来して、直接形電力変換回路100Dにおけるダイオード整流器2aは、電圧|Vin|ではなく、直接形電力変換回路100Bにおけるダイオード整流器2と同様に、整流電圧Vrfを出力する。
【0195】
コンデンサC3はダイオード整流器2aよりもインバータ5から離れ、リアクトルL3はダイオード整流器2aよりもインバータ5から離れる。
【0196】
直接形電力変換回路100Bが直接形電力変換回路100と同様に制御され得ることと同様に、直接形電力変換回路100Dは直接形電力変換回路100Cと同様に制御され得る。
【0197】
直接形電力変換回路100Dにおいても直接形電力変換回路100Bと同様に、リアクトル電圧VLの極性は、単相交流電圧Vinの低電位から高電位に向かう方向が正に採用され、リアクトルL3とダイオード整流器2aとの間に流れる電流、より具体的にはそのうち、交流電源1から供給される成分が流れる方向とは逆方向が正とされる。
【0198】
直接形電力変換回路100Dにおいても直接形電力変換回路100Bと同様に、両端電圧V3の極性は、単相交流電圧Vinの低電位から高電位に向かう方向が正に採用されるといえる。両端電圧V3の極性は、ダイオード整流器2aの入力側(これはダイオード整流器2aのコンデンサC3が接続される側ともいえる)の電圧の極性と一致する、ともいえる。
【0199】
<変動分ΔFの変形>
直接形電力変換回路100C,100Dでは、交流電源1と直流リンク7との間で、LCフィルタ3と充放電回路4とが並列に接続される。かかる接続において、充放電回路4へ流れる電流、具体的にはリアクトル電流I4が、変動分ΔFに基づいて補正されることにより、LCフィルタ3で発生する共振によって発生する電流の少なくとも一部が打ち消される。例えば出力電流I2を零から引いた値(-I2)に比例した値が変動分ΔFに採用される。共振抑制部1035にはリアクトル電圧VLが入力され、リアクトルL3のインダクタンスLfと、微分演算子sを導入してVL=Lf・sI2の関係がある。インダクタンスLfは既知であるので、例えばリアクトル電圧VLの積分値をインダクタンスLfで除して出力電流I2が求められ、変動分ΔFが設定される。
【0200】
図21および図22はいずれも、直接形電力変換回路100Cにおける入力電流Iin、出力電流I2、リアクトル電流I4の波形を示すグラフである。いずれのグラフも、関数F(θ)として|sinθ|が採用される場合が例示される。図21はΔF=0の場合を例示する。図22はΔF=―I2の場合を例示する。図22は変動分ΔFの変形について示し、図21は当該変形の比較を示す。
【0201】
図22に示されるリアクトル電流I4の波形は変動分ΔFの影響を受けて、図21に示されるリアクトル電流I4の波形から大きく歪む。図22に示される入力電流Iinの波形はリアクトル電流I4の歪みの影響を受けて、図21に示される入力電流Iinの波形と比較して歪みが改善されている。
【0202】
以上、実施形態および変形が説明されたが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。上述の各種の実施形態および変形例は相互に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0203】
2,2a,2b ダイオード整流器
4 充放電回路
4a 放電回路
4b 充電回路
5 インバータ
100,100A,100B,100C,100D 直接形電力変換回路
203 整流回路
C3,C4 コンデンサ
CH 充電期間
D40 ダイオード
I2 電流
I4 リアクトル電流
Iin 入力電流
Im 振幅
F(θ),G(θ) 関数
J,B 値
L3,L4 リアクトル
LH,LL 直流電源線
Sl スイッチ
Tsw 周期
V3 両端電圧
VL リアクトル電圧
Vc コンデンサ電圧
Vdc 直流電圧
Vdc* 指令値
Vin 単相交流電圧
Vm 振幅
Vrf 整流電圧
dc 放電デューティ
kb 分配率
te 終点
ts 始点
ΔF 変動分(修正項)
θ 位相
【要約】
【課題】充放電回路におけるコンデンサの充電期間を制御し、連続モードの実現に資することを目的とする。
【解決手段】整流回路は、第1コンデンサと第1リアクトルとを有し、単相交流電圧に対して全波整流および低域通過濾波を施して整流電圧を得る。インバータには第1電源線と第2電源線との間の電圧が入力される。充放電回路は充電回路と放電回路とを有する。放電回路は第1電源線と第2電源線との間に設けられる第2コンデンサを含む。充電回路は全波整流された単相交流電圧または整流電圧を昇圧し、充電期間で第2コンデンサを充電する。充電期間は、整流回路に入力する入力電流の振幅に依存せず、単相交流電圧の位相に依存して設定される長さを有する。第1リアクトルの電圧が低下すると充電期間の始点および終点のいずれもが位相に対して遅相側へずれる。第1コンデンサの電圧が上昇すると始点および終点のいずれもが位相に対して遅相側へずれる。
【選択図】図1
図1
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図22