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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】フローティング機構付きコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/91 20110101AFI20240904BHJP
   H01R 24/38 20110101ALI20240904BHJP
【FI】
H01R12/91
H01R24/38
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022160706
(22)【出願日】2022-10-05
(65)【公開番号】P2024054475
(43)【公開日】2024-04-17
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(72)【発明者】
【氏名】土屋 博崇
(72)【発明者】
【氏名】越智 洋次
(72)【発明者】
【氏名】大澤 文雄
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-228256(JP,A)
【文献】特開2008-288120(JP,A)
【文献】特開平08-335483(JP,A)
【文献】特開2007-087682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/91
H01R 24/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に接続されるプラグとソケットとを備えた同軸コネクタであって、
前記プラグには、中央に配置されたプラグ中心コンタクトと、該プラグ中心コンタクトの外側に配置されたプラグシェルと、前記プラグ中心コンタクトとプラグシェルとの間に介在させたプラグハウジングとを備え、
前記ソケットには、中央に配置されたソケット中心コンタクトと、支持体に固定されるソケット固定ハウジングと、該ソケット固定ハウジングのプラグ側端面上を前記ソケット中心コンタクトとともに径方向に移動可能なソケット可動ハウジングと、前記ソケット固定ハウジングの外側を覆うソケット固定シェルとを備え、
前記プラグ中心コンタクトと前記ソケット中心コンタクトとが接続されるとともに、前記プラグシェルと前記ソケット固定シェルとが接続されるようにしたフローティング機構付きコネクタにおいて、
前記ソケット可動ハウジングの外側を覆い、該ソケット可動ハウジングとともに移動するソケット可動シェルと、該ソケット可動シェルと前記ソケット固定シェルとの間に介在され、前記ソケット可動シェルと前記ソケット固定シェルとを常時接続する導電性を有するシェル接続手段とを備え
前記シェル接続手段は、前記ソケット可動シェルの外周部より放射状に突出した複数の弾性接触片によって構成され、該弾性接触片の先端に形成された接触部が前記ソケット固定シェルの内周面と接触するようにしたことを特徴とするフローティング機構付きコネクタ。
【請求項2】
前記ソケット可動ハウジングは、筒状のハウジング本体の下端部に外向きに張り出したフランジ部を備え、
前記ソケット可動シェルは、前記ハウジング本体の外周を覆う本体筒部と、該本体筒部の下端より外向きに張り出し、前記フランジ部の上面を覆う上面被覆部とを一体に備えている請求項1に記載のフローティング機構付きコネクタ。
【請求項3】
前記ソケット可動シェルは、前記上面被覆部の外周縁に一体に支持され、前記フランジ部の外周を覆うフランジ外周被覆部を備えている請求項2に記載のフローティング機構付きコネクタ。
【請求項4】
前記ソケット固定ハウジングには、上面及び外側に開口し、前記弾性接触片が移動可能に挿入されるフローティング用凹部が形成されている請求項1に記載のフローティング機構付きコネクタ。
【請求項5】
前記ソケット可動ハウジングには、外周面に前記弾性接触片の変形を許容する回避用凹部が形成されている請求項1に記載のフローティング機構付きコネクタ。
【請求項6】
前記ソケット固定ハウジングには、周方向に隣り合う前記フローティング用凹部間に前記プラグ側端面と同一平面を成す摺動支持面を有する滑落防止部が形成され、
フローティング時に前記摺動支持面が前記ソケット可動ハウジングの底面部を支持し、前記ソケット可動ハウジングが前記フローティング用凹部へ落ち込むことを防止するようにした請求項4に記載したフローティング機構付きコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器と同軸ケーブルとの接続や電子機器間の接続等に使用される同軸コネクタであって、特にプラグとソケットとの接続性に優れたフローティング機構付きコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の同軸コネクタのソケットには、ソケットの中央に配置されたソケット側中心コンタクトと、ソケット側中心コンタクトの外側に配置されたソケット側シェルとを備え、プラグとの接続時には、ソケット側中心コンタクト及びソケット側シェルの両方が相手方のプラグ中心コンタクト及びプラグ側シェルと適切に接続されることが必要とされる。
【0003】
従って、電子機器に内蔵された基板やシャーシ等の支持体に対するソケット及びプラグの取付け位置等によって、相互に接続されるプラグとソケットとの間に軸方向又は径方向に位置ずれが生じたとしても両同軸コネクタの接続時には、位置ずれが修正されなければならない。
【0004】
そこで、従来の同軸コネクタのソケットには、基板や筺体等の支持体に固定されるソケット固定ハウジングに対し径方向(xy軸方向)で移動可能に支持されたソケット可動ハウジングを備えたフローティング機構付きのものが用いられている。
【0005】
この種のフローティング機構付きコネクタでは、ソケット固定ハウジングの外周及び上面を覆うソケットシェルを備え、ソケットシェルをプラグシェルと接続させることにより、ソケット可動ハウジングの移動を許容しつつシールド性を確保したものも開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6712376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の如き従来の技術では、ソケット固定ハウジングの外周及び上面をソケットシェルで覆うことにより、シールド性の向上が図られているが、ソケット固定ハウジング上で移動するソケット可動ハウジングはその構造上シールドされていない。
【0008】
一方、この種のフローティング機構付きコネクタでは、高いEMC特性が求められており、ソケット可動ハウジングを含めて全体が導電性金属からなるシールド部材で覆うことができれば更なるEMC特性の向上が期待できる。
【0009】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、フローティング機構を具備したコネクタの全体をシェルで覆い、EMC特性の向上を図ることができるフローティング機構付きコネクタの提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、相互に接続されるプラグとソケットとを備えた同軸コネクタであって、前記プラグには、中央に配置されたプラグ中心コンタクトと、該プラグ中心コンタクトの外側に配置されたプラグシェルと、前記プラグ中心コンタクトとプラグシェルとの間に介在させたプラグハウジングとを備え、前記ソケットには、中央に配置されたソケット中心コンタクトと、支持体に固定されるソケット固定ハウジングと、該ソケット固定ハウジングのプラグ側端面上を前記ソケット中心コンタクトとともに径方向に移動可能なソケット可動ハウジングと、前記ソケット固定ハウジングの外側を覆うソケット固定シェルとを備え、前記プラグ中心コンタクトと前記ソケット中心コンタクトとが接続されるとともに、前記プラグシェルと前記ソケット固定シェルとが接続されるようにしたフローティング機構付きコネクタにおいて、前記ソケット可動ハウジングの外側を覆い、該ソケット可動ハウジングとともに移動するソケット可動シェルと、該ソケット可動シェルと前記ソケット固定シェルとの間に介在され、前記ソケット可動シェルと前記ソケット固定シェルとを常時接続する導電性を有するシェル接続手段とを備えていることにある。
【0011】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記ソケット可動ハウジングは、筒状のハウジング本体の下端部に外向きに張り出したフランジ部を備え、前記ソケット可動シェルは、前記ハウジング本体の外周を覆う本体筒部と、該本体筒部の下端より外向きに張り出し、前記フランジ部の上面を覆う上面被覆部とを一体に備えていることにある。
【0012】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項2の構成に加え、前記ソケット可動シェルは、前記上面被覆部の外周縁に一体に支持され、前記フランジ部の外周を覆うフランジ外周被覆部を備えていることにある。
【0013】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記シェル接続手段は、前記ソケット可動シェルの外周部より放射状に突出した複数の弾性接触片によって構成され、該弾性接触片の先端に形成された接触部が前記ソケット固定シェルの内周面と接触するようにしたことにある。
【0014】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項4の構成に加え、前記ソケット固定ハウジングには、上面及び外側に開口し、前記弾性接触片が移動可能に挿入されるフローティング用凹部が形成されていることにある。
【0015】
請求項6に記載の発明の特徴は、請求項4の構成に加え、前記ソケット可動ハウジングには、外周面に前記弾性接触片の変形を許容する回避用凹部が形成されていることにある。
【0016】
請求項7に記載の発明の特徴は、請求項5の構成に加え、前記ソケット固定ハウジングには、周方向に隣り合う前記フローティング用凹部間に前記プラグ側端面と同一平面を成す摺動支持面を有する滑落防止部が形成され、フローティング時に前記摺動支持面が前記ソケット可動ハウジングの底面部を支持し、前記ソケット可動ハウジングが前記フローティング用凹部へ落ち込むことを防止するようにしたことにある。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るフローティング機構付きコネクタは、請求項1に記載の構成を具備することによって、ソケット可動シェルもシェルで覆い、コネクタ全体をシールドすることができ、EMC特性の向上を図ることができる。
【0018】
また、本発明において、請求項2の構成を具備することによって、ソケット可動ハウジング及びソケット可動シェルを安定して移動させることができるとともに、隙間なくソケット可動ハウジングをシールドすることができる。
【0019】
さらに、本発明において、請求項3の構成を具備することによって、ソケット可動ハウジング全体をシールドすることができるとともに、インピーダンスの調整を図ることができる。
【0020】
さらに、本発明において、請求項4の構成を具備することによって、ソケット固定シェルとソケット可動シェルとの間を安定して接続させることができる。
【0021】
さらに、本発明において、請求項5の構成を具備することによって、ソケット固定シェルとソケット可動シェルとの間の安定した接続状態を維持しつつ、ソケット可動ハウジング及びソケット可動シェルをソケット固定ハウジングに対し円滑に移動させることができる。
【0022】
さらに、本発明において、請求項6の構成を具備することによって、弾性接触片とソケット固定ハウジングとの干渉を防止し、円滑に変形させることができる。
【0023】
さらに、本発明において、請求項7の構成を具備することによって、フローティング時にソケット固定ハウジングがソケット固定ハウジングに対し傾くことなく安定した状態で摺動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係るフローティング機構付きコネクタの一例を示す斜視図である。
図2】同上の分解斜視図である。
図3】同上の中心コンタクトを具備する一体型バネ体を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は異なる方向から見た斜視図、(c)は側面図である。
図4】同上のソケット固定ハウジングを示す図であって、(a)は平面図、(b)は同底面図、(c)は同A-A線矢視断面図である。
図5】同上のソケット可動ハウジングを示す図であって、(a)は斜視図、(b)は同底面図、(c)はB-B線矢視断面図、(d)は同C-C線矢視断面図である。
図6】同上のソケット可動シェルを示す図であって、(a)は平面図、(b)は同正面図、(c)は同D-D線矢視断面図である。
図7】同上のソケット固定シェルを示す図であって、(a)は平面図、(b)は同正面図、(c)は同E-E線矢視断面図である。
図8】同上のフローティング機構付きコネクタの動作を説明するための中立位置の状態を示す図であって、(a)は部分破断平面図、(b)は同縦断面図である。
図9】同上のフローティング機構付きコネクタのx方向へ変位した状態を示す図であって、(a)は部分破断平面図、(b)は同縦断面図である。
図10】同上のフローティング機構付きコネクタのxy方向へ変位した状態を示す図であって、(a)は部分破断平面図、(b)は同縦断面図である。
図11】同上のソケット固定ハウジングとソケット可動ハウジングの位置関係を説明するための簡略化した部分破断横断面図であって、(a)は図8に示す中立位置の状態、(b)は同図9に示すx方向に変位した状態、(c)は同xy方向へ変位した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明に係るフローティング機構付きコネクタの実施態様を図1図11に示した実施例に基づいて説明する。
【0026】
このフローティング機構付きコネクタは、相互に接続されるプラグとソケット1とを備え、プラグとソケット1とがフローティング機構により互いに径方向(xy軸方向)の位置ずれを修正しつつ接続できるようになっている。
【0027】
プラグは、特に図示しないが、中央に配置された導電性金属材からなるプラグ中心コンタクトと、プラグ中心コンタクトの外側に配置されたプラグシェルと、プラグ中心コンタクトとプラグシェルとの間に介在させた絶縁性のプラグハウジングとを備え、プラグシェル内にプラグ側絶縁体及びプラグ中心コンタクトが組み込まれた構造となっている。
【0028】
ソケット1は、中央に配置されたソケット中心コンタクト2と、電子機器の基板やシャーシ等の支持体に固定されるソケット固定ハウジング3と、ソケット固定ハウジング3のプラグ側端面上をソケット中心コンタクト2とともに径方向に移動可能なソケット可動ハウジング4と、ソケット固定ハウジング3の外側を覆うソケット固定シェル5と、ソケット可動ハウジング4の外側を覆い、ソケット可動ハウジング4とともに移動するソケット可動シェル6とを備え、プラグ中心コンタクトとソケット中心コンタクト2とが接続されるとともに、プラグシェルとソケット固定シェル5とが接続されるようになっている。
【0029】
このソケット1は、一端がソケット固定ハウジング3に固定され、他端がソケット可動ハウジング4に固定されたフローティング用バネ体7を備え、ソケット可動ハウジング4がソケット中心コンタクト2とともにフローティング用バネ体7を介してソケット固定ハウジング3に移動可能に支持されていることにより、フローティング機構が形成されている。
【0030】
また、ソケット1は、ソケット可動シェル6とソケット固定シェル5との間に介在された導電性を有するシェル接続手段を備え、シェル接続手段によってソケット可動シェル6とソケット固定シェル5とが常時導通した状態に接続されている。
【0031】
このソケット1では、ソケット中心コンタクト2とフローティング用バネ体7とを一体化した導電性金属板材からなるコンタクト付きフローティング用バネ体(以下、一体型バネ体8という)を使用し、ソケット中心コンタクト2がソケット可動ハウジング4の移動に追従できるようにしている。
【0032】
一体型バネ体8は、図3に示すように、弾性を有する導電性金属板材を打ち抜き・折り曲げ加工することにより一体に形成され、フローティング用バネ体7にソケット中心コンタクト2を一体に支持させ、ソケット中心コンタクト2の構成の一部をフローティング用バネ体7に兼用させた構造となっている。
【0033】
フローティング用バネ体7は、ソケット固定ハウジング3に固定される支持固定部71と、ソケット可動ハウジング4に固定されるフローティング固定部72と、支持固定部71とフローティング固定部72とを連結する弾性変形可能な揺動バネ部73とを備え、支持固定部71とフローティング固定部72とが互いに前後に間隔を置いて平行配置され、揺動バネ部73の弾性変形によって支持固定部71に対しフローティング固定部72が前後移動及び左右に揺動できるようになっている。
【0034】
支持固定部71は、矩形状に形成され、その上端に揺動バネ部73の一端が一体に支持され、下端よりソケット中心コンタクト2を構成する基板接続端子片21が水平方向に延出している。
【0035】
揺動バネ部73は、支持固定部-フローティング固定部間方向、即ち、前後方向で伸縮可能な弾性伸縮部731と、支持固定部-フローティング固定部間方向軸回りにねじれ可能な弾性捩れ部とを一体に備え、弾性伸縮部731の伸縮により支持固定部71に対するフローティング固定部72の前後方向移動を許容し、各弾性捩れ部のねじれにより支持固定部71に対するフローティング固定部72の左右方向移動を許容し、且つ、弾性により原位置に復帰できるようになっている。
【0036】
弾性伸縮部731は、上端が支持固定部71の上縁に円弧状に湾曲した折り返し部732を介して支持された状態で斜め下方に延出し、下端に折り返し部733を介して水平方向に延出した水平支持部734が一体に支持されている。
【0037】
そして、この弾性伸縮部731は、両折り返し部732,733で湾曲することにより、支持固定部-フローティング固定部間方向、即ち、前後方向で伸縮し、弾性により原位置に復帰できるようになっている。
【0038】
水平支持部734は、水平方向に延出した細板状に形成され、一端が折り返し部733を介して弾性伸縮部731に支持され、他端が折り返し部735を介してフローティング固定部72の下縁に一体に支持されている。
【0039】
各折り返し部732,733,735は、それぞれ支持固定部71及びフローティング固定部72の板幅と同じかそれより狭く形成され、揺動バネ部73における弾性捩れ部を構成している。
【0040】
即ち、支持固定部71に対しフローティング固定部72が左右方向に相対移動した場合、各折り返し部732,733,735が支持固定部-フローティング固定部間方向軸回りにねじれることにより、当該左右方向の移動を許容するとともに、弾性により原位置に復帰できるようになっている。
【0041】
尚、揺動バネ部73には、支持固定部-フローティング固定部間方向にスリット736が形成され、スリット736を挟む両側部が互いに独立して変形できるようにすることで、各折り返し部732,733,735が支持固定部-フローティング固定部間方向軸回りにねじれ易くなっている。
【0042】
フローティング固定部72は、上下方向に向けた矩形状に形成され、両側部にソケット中心コンタクト2の接続部を構成する弾性挟持片22,22が一体に支持されている。
【0043】
ソケット中心コンタクト2は、プラグ中心コンタクトと接続する接続部と、接続基板に接続される基板接続端子片21とを備え、接続部と基板接続端子片21とがフローティング用バネ体7を介して電気的に接続されている。
【0044】
接続部は、互いに左右方向で対向する一対の弾性挟持片22,22を備え、ピン状のプラグ中心コンタクトの接触部を両弾性挟持片22,22で挟持することによりプラグ中心コンタクトと接続するようになっている。
【0045】
各弾性挟持片22,22は、上下に長い帯板状に形成され、その下方側縁がフローティング固定部72の下端側縁より垂直に折り曲げた支持片23,23に一体に支持され、支持固定部71とフローティング固定部72との間に左右方向で互いに対向するように配置されている。
【0046】
また、各弾性挟持片22,22には、上端に内側に湾曲した接点24が形成され、互いに対向する接点24,24間にプラグ中心コンタクトが挟持されるようになっている。
【0047】
ソケット固定ハウジング3は、図4に示すように、絶縁性合成樹脂により上下に開口したコンタクト収容部31を有する円筒状に形成され、上面側からソケット可動シェル6、ソケット可動ハウジング4及びソケット固定シェル5が順次組み付けられるとともに、下面側よりコンタクト収容部31に一体型バネ体8が組み込まれ、フローティング用バネ体7を介してソケット可動ハウジング4とソケット固定ハウジング3とが移動可能に接合される。
【0048】
ソケット固定ハウジング3には、コンタクト収容部31の外側の肉厚部に上下方向に向けた支持固定部圧入部32が形成され、この支持固定部圧入部32にフローティング用バネ体7の支持固定部71が圧入されることにより、フローティング用バネ体7の一端、即ち、支持固定部71がソケット固定ハウジング3に固定される。
【0049】
また、ソケット固定ハウジング3には、支持固定部圧入部32の内側に開口し、且つ、支持固定部圧入部32と連通した回避溝33が形成され、揺動バネ部73が干渉しないようになっている。
【0050】
よって、一体型バネ体8のフローティング固定部72及び両弾性挟持片22,22は、下部が揺動バネ部73を介してソケット固定ハウジング3に支持されるとともにコンタクト収容部31内に移動可能な状態で収容され、且つ、上部がコンタクト収容部31の上端開口より突出している。
【0051】
さらに、ソケット固定ハウジング3には、上面及び外側に開口した複数のフローティング用凹部34,34…が周方向に間隔をおいて形成されている。
【0052】
また、周方向で隣り合うフローティング用凹部34,34間には、プラグ側端面と同一平面を成す摺動支持面35を有する滑落防止部が形成され、フローティング時に摺動支持面35がソケット可動ハウジング4の底面部を支持し、ソケット可動ハウジング4の底面縁部がフローティング用凹部34へ落ち込むことを防止し、ソケット可動ハウジング4がソケット固定ハウジング3に対し傾くことなく摺動できるようにしている。
【0053】
ソケット可動ハウジング4は、図5に示すように、絶縁性樹脂により一体に成形され、筒状のハウジング本体41の下端部に外向きに張り出した円板状のフランジ部42を有し、内部に下面に開口した角穴状のコンタクト収容部43が形成されている。
【0054】
このソケット可動ハウジング4には、コンタクト収容部43と平行配置に下面に開口した固定部圧入孔44が形成され、ソケット可動ハウジング4をソケット固定ハウジング3の上面部に組み付けることにより、固定部圧入孔44にソケット固定ハウジング3の上端より突出したフローティング固定部72の上端部が圧入されるとともに、コンタクト収容部31内にソケット中心コンタクト2の接続部、即ち、両弾性挟持片22,22の上部が収容される。
【0055】
また、ソケット可動ハウジング4には、上端面に開口し、且つ、コンタクト収容部31と連通したコンタクト挿通孔45を備え、このコンタクト挿通孔45を通してピン状のプラグ中心コンタクトがコンタクト収容部31内に挿入されるようになっている。
【0056】
フランジ部42は、ソケット固定ハウジング3の直径よりも小径の円盤状に形成され、外周面部に下面及び外側に開口した複数の回避用凹部46,46…が周方向に間隔をおいて形成されている。
【0057】
各回避用凹部46は、それぞれソケット固定ハウジング3に形成された各フローティング用凹部34の位置と対応するように配置され、且つ、周方向幅が回避用凹部34の周方向幅よりも狭く形成されている。
【0058】
尚、ソケット可動ハウジング4(フランジ部42)の底面部は、周縁部が回避用凹部46,46によって切欠いた状態となっているが、ソケット固定ハウジング3のフローティン用凹部34,34間に摺動支持面35を有する滑落防止部を備えていることで、周方向で隣り合う回避用凹部46,46間の部分(以下、摺動面縁部47という)がフローティング時に摺動支持面35上を摺動するので、ソケット可動ハウジング4全体が摺動支持面35に安定した状態で支持される。
【0059】
ソケット可動シェル6は、図6に示すように、導電性金属板材をプレス加工することによって一体に形成され、筒状の本体筒部61と、本体筒部61の下端より外向きに張り出した上面被覆部62と、上面被覆部62の外周縁に一体に支持された筒状のフランジ外周被覆部63とを備え、下端部に拡径部を有する段付き筒状に形成されている。
【0060】
このソケット可動シェル6は、上方よりソケット可動ハウジング4に組み付けられて一体化され、本体筒部61がハウジング本体41の外周を覆い、上面被覆部62がフランジ部42の上面を覆い、フランジ外周被覆部63がフランジ部42の外周を覆う。即ち、ソケット可動ハウジング4全体が導電性材料からなるソケット可動シェル6によって覆われている。
【0061】
尚、以下の説明においては、ソケット可動シェル6が一体化されたソケット可動ハウジング4を便宜上、可動ハウジング体と称し、特に説明する場合を除き、ハウジング本体41とは本体筒部61に覆われたハウジング本体41を指し、フランジ部42とは上面被覆部62及びフランジ外周被覆部63に覆われたフランジ部42を指すものとする。
【0062】
また、ソケット可動シェル6は、フランジ外周被覆部63の外周部より放射状に突出した複数の弾性接触片64,64…を備え、この複数の弾性接触片64,64…がソケット可動シェル6とソケット固定シェル5との間に介在され、ソケット可動シェル6とソケット固定シェル5とを常時導通した状態に接続するシェル接続手段を成している。
【0063】
本実施例においては、各弾性接触片64,64…が周方向で90度毎に間隔をおいて四方に突出している。尚、各弾性接触片64の数は、少なくとも3カ所以上で周方向に等間隔をおいて設けることが好ましい。
【0064】
各弾性接触片64,64…は、フランジ部42の外周面に基端部641と、基端部641の下端より外側斜め下向きに延出した傾斜部642と、傾斜部642の先端に形成された接触部643とを備え、片持ち板バネ状に形成されている。
【0065】
また、各弾性接触片64,64…は、その水平方向の突出距離が可動ハウジング体のフランジ部42の外周面とソケット固定シェル5の内周面との間の隙間より大きくなるように設定され、可動ハウジング体がソケット固定ハウジング3上で移動した場合であっても、常に何れかの弾性接触片64,64…がソケット固定シェル5の内周面と所定の接触圧以上の接触圧で接触するようになっている。
【0066】
尚、ソケット可動シェル6は、ソケット可動ハウジング4のフランジ部42外周面に形成された回避用凹部46,46…の位置と各弾性接触片64,64…の位置とが合致するようにソケット可動ハウジング4に対し組み付けられる。
【0067】
各回避用凹部46,46…は、弾性接触片64,64…の幅より広い幅(周方向幅)と、弾性接触片64,64…の変形が阻害されないように十分な直径方向の奥行きが設けられ、弾性接触片64,64…が弾性変形した際に弾性接触片64,64…がフランジ部42と干渉しないようになっている。
【0068】
また、可動ハウジング体は、図8に示すように、フランジ部42の下面をソケット固定ハウジング3の上端面上に載置されるよう組み込まれ、その際、各弾性接触片64,64…がフローティング用凹部34,34…内に挿入されるようになっている。
【0069】
フローティング用凹部34,34…は、設計上の最大変位量を考慮し、弾性接触片64,64…が当該最大変位量分変位し、且つ、弾性変形した場合であってもソケット固定ハウジング3と接触しないよう幅、高さ、奥行きが確保されている。
【0070】
また、フローティング用凹部34,34…のコンタクト収容部31側壁部の上縁部には、斜め方向に向けて円弧状の切り欠き部341が形成され、切り欠き部341によって弾性接触片64,64…が可動ハウジング体が移動した場合でもソケット固定ハウジング3と干渉しないようになっている。
【0071】
ソケット固定シェル5は、図7に示すように、導電性金属材を絞り加工することにより一体に形成され、ソケット固定ハウジング3の外周を覆う継ぎ目のない円筒状の外周壁部51と、外周壁部51の上縁に一体に支持され、ソケット固定ハウジング3の上面周縁を覆う円環状の上面遮蔽部52と、外周壁部51の下縁に外向きに張り出した複数の基板接続部53,53…とを備えている。
【0072】
外周壁部51は、ソケット固定ハウジング3の厚みより可動ハウジング体のフランジ部42(フランジ部42及び上面被覆部62)の厚み分だけ筒軸方向に高く、且つ、ソケット固定ハウジング3の直径と略同じ直径の円筒状に形成されている。
【0073】
上面遮蔽部52は、中央に可動ハウジング体のハウジング本体41の直径より大きく、フランジ部42の直径より小さい開口部54を有している。
【0074】
基板接続部53,53…は、支持体である実装基板上のパターンに半田付けすることにより、ソケット固定シェル5が実装基板に電気的に接続(GND接続)されるようになっている。
【0075】
このソケット固定シェル5は、可動ハウジング体のハウジング本体41を開口部54より突出させた状態で同フランジ部42及びソケット固定ハウジング3の上面側より被せられ、ソケット可動ハウジング4の端面と上面遮蔽部52との間に可動ハウジング体のフランジ部42が移動可能に収容されるようになっている。
【0076】
また、ソケット固定シェル5が組み付けられることによって、可動ハウジング体の各弾性接触片64,64…がソケット固定シェル5の外周壁部51内周面と接触し、外周壁部51内周面が各弾性接触片64,64…を内側に向けて押圧し、可動ハウジング体がソケット固定ハウジング3の略中央に芯だしされる。
【0077】
このように構成されたフローティング機構付きコネクタでは、プラグとソケット1とを相互接続する際、可動ハウジング体がフローティング用バネ体7を介してソケット固定ハウジング3上に移動可能に支持され、ソケット中心コンタクト2とともに移動するので、相互接続時にプラグに対し前後左右何れの方向(xy方向)に軸ズレが生じていいても自動的に軸ズレを調整し、プラグ中心コンタクトが可動ハウジング体のコンタクト挿通孔45に挿入され、プラグ中心コンタクトとソケット中心コンタクト2とが接続される。
【0078】
その際、ソケット固定シェル5がGND接続され、且つ、シェル接続手段を成す各弾性接触片64,64…によってソケット固定シェル5とソケット可動シェル6とが常時導通した状態にあるので、プラグ中心コンタクトが挿入されるソケット1全体が略隙間なくGND接続されたソケット可動シェル6及びソケット固定シェル5によって覆われるので高いEMC特性を得ることができる。
【0079】
即ち、プラグとソケット1とを接続する際、図8に示すように、位置ずれが無い場合には、各弾性接触片64,64…がソケット固定シェル5の内周面と所定の接触圧によって接触されており、xy方向の変位が微小の場合には、この状態が維持される。
【0080】
また、この状態では、図11(a)に示すように、摺動面縁部47がソケット固定ハウジング3のフローティン用凹部34,34間に配置された滑落防止部の上面を成す摺動支持面35上に位置し、ソケット可動ハウジング4がソケット固定ハウジング3上に安定した状態で載置されている。
【0081】
一方、図9図10に示すように、プラグとソケット1との間にx方向及びy方向に大きな位置ずれが生じた場合は、変位方向と直交する方向に突出した弾性接触片64,64…がフローティング用凹部34,34…内を幅方向に移動し、変位方向に突出した一方の弾性接触片64,64…がソケット固定シェル5に押圧されて撓むので、可動ハウジング体がその方向に変位することができる。
【0082】
この場合、変位方向と反対側の弾性接触片64,64…がソケット固定シェル5の内周面より離脱しても少なくとも2カ所の弾性接触片64,64…がソケット固定シェル5の内周面と接触した状態にあり、ソケット可動シェル6とソケット固定シェル5との間の導通が常時維持される。
【0083】
また、図9図10に示すようにフローティングした場合、回避用凹部46,46間の摺動面縁部47がフローティン用凹部34,34間に位置する摺動支持面35上を摺動するので、ソケット可動ハウジング4全体が摺動支持面35に安定した状態で支持され、ソケット可動ハウジング4の底面縁部がフローティン用凹部34に落ち込むことが無く、ソケット可動ハウジング4が傾くことなくソケット固定ハウジング3上を摺動できるようになっている。
【0084】
尚、上述の実施例では、シェル接続手段がソケット可動シェル6の外周部より放射状に突出した複数の弾性接触片64,64…によって構成されている場合について説明したが、シェル接続手段の態様はこれに限定されず、例えば、ソケット固定シェル5の内周部よりソケット可動シェル6側に向けて突出したバネ片を用いてもよく、導電性材料からなるコイルばねをソケット可動シェル6(フランジ外周被覆部63)の外周面とソケット固定シェル5の内周面との間に介在させてもよい。
【0085】
また、シェル接続手段は、フランジ部42の上面を覆う上面被覆部62がソケット固定シェル5の上面遮蔽部52と接触した状態で摺動できるようにしたものであってもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 ソケット
2 ソケット中心コンタクト
21 基板接続端子片
22 弾性挟持片
23 支持片
24 接点
3 ソケット固定ハウジング
31 コンタクト収容部
32 支持固定部圧入部
33 回避溝
34 フローティング用凹部
35 摺動支持面
4 ソケット可動ハウジング
41 ハウジング本体
42 フランジ部
43 コンタクト収容部
44 固定部圧入孔
45 コンタクト挿通孔
46 回避用凹部
47 摺動面縁部
5 ソケット固定シェル
51 外周壁部
52 上面遮蔽部
53 基板接続部
54 開口部
6 ソケット可動シェル
61 本体筒部
62 上面被覆部
63 フランジ外周被覆部
64 弾性接触片
641 基端部
642 傾斜部
643 接触部
7 フローティング用バネ体
71 支持固定部
72 フローティング固定部
73 揺動バネ部
731 弾性伸縮部
732 折り返し部
733 折り返し部
734 水平支持部
735 折り返し部
736 スリット
8 一体型バネ体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11