IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気硝子株式会社の特許一覧

特許7549300Li2O-Al2O3-SiO2系結晶化ガラス
<>
  • 特許-Li2O-Al2O3-SiO2系結晶化ガラス 図1
  • 特許-Li2O-Al2O3-SiO2系結晶化ガラス 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】Li2O-Al2O3-SiO2系結晶化ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 10/12 20060101AFI20240904BHJP
   C03C 3/083 20060101ALI20240904BHJP
   C03C 3/085 20060101ALI20240904BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20240904BHJP
   C03C 3/093 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
C03C10/12
C03C3/083
C03C3/085
C03C3/087
C03C3/093
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023030671
(22)【出願日】2023-03-01
(62)【分割の表示】P 2020535003の分割
【原出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2023071830
(43)【公開日】2023-05-23
【審査請求日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2019054662
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】横田 裕基
(72)【発明者】
【氏名】俣野 高宏
(72)【発明者】
【氏名】高橋 能弘
(72)【発明者】
【氏名】東條 真
【審査官】三村 潤一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-023237(JP,A)
【文献】特開平11-228181(JP,A)
【文献】国際公開第2005/037721(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00 - 14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、SiO 40~90%、Al 8~30%、LiO 1~10%、SnO 0~20%、ZrO 1~20%、MgO 0~10%、P 0~10%、TiO 0.0003~0.3%、Fe 0~0.1%、Pt 0~7ppm、Rh 0~7ppmを含有し、質量比で、(LiO+NaO+KO)/ZrOが1.98以下、(MgO+ZnO)/LiOが0.394以下であることを特徴とするLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項2】
さらに、質量%で、NaO 0~10%、KO 0~10%、CaO 0~10%、SrO 0~10%、BaO 0~10%、ZnO 0~10%、B 0~10%を含有することを特徴とする請求項1に記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項3】
質量比で、SnO/(SnO+ZrO+P+TiO+B)が0.06以上であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項4】
質量比で、Al/(SnO+ZrO)が7.1以下であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項5】
質量比で、SnO/(SnO+ZrO)が0.01~0.99であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項6】
質量%で、NaO+KO+CaO+SrO+BaO 8%以下を含有することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項7】
質量比で、(SiO+Al)/LiOが20以上であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項8】
質量比で、(SiO+Al)/SnOが44以上であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項9】
質量比で、TiO/ZrOが0.0001~5.0であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項10】
質量%で、HfO+Ta 0.05%未満を含有することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項11】
質量%で、Pt+Rh 9ppm以下を含有することを特徴とする求項1~1のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項12】
外観が無色透明であることを特徴とする請求項1~1のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項13】
厚み3mm、波長300nmにおける透過率が10%以上であることを特徴とする請求項1~1のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項14】
主結晶としてβ-石英固溶体が析出していることを特徴とする請求項1~1のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項15】
30~380℃における熱膨張係数が、30×10-7/℃以下であることを特徴とする請求項1~1のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項16】
30~750℃における熱膨張係数が、30×10-7/℃以下であることを特徴とする請求項1~1のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLiO-Al-SiO系結晶化ガラスに関する。詳細には、例えば石油ストーブ、薪ストーブ等の前面窓、カラーフィルターやイメージセンサー用基板等のハイテク製品用基板、電子部品焼成用セッター、光拡散板、半導体製造用炉心管、半導体製造用マスク、光学レンズ、寸法測定用部材、通信用部材、建築用部材、化学反応用容器、電磁調理用トッププレート、耐熱食器、耐熱カバー、防火戸用窓ガラス、天体望遠鏡用部材、宇宙光学用部材等の材料として好適なLiO-Al-SiO系結晶化ガラスに関する。
背景技術
【0002】
従来、石油ストーブ、薪ストーブ等の前面窓、カラーフィルターやイメージセンサー用基板等のハイテク製品用基板、電子部品焼成用セッター、光拡散板、半導体製造用炉心管、半導体製造用マスク、光学レンズ、寸法測定用部材、通信用部材、建築用部材、化学反応用容器、電磁調理用トッププレート、耐熱食器、耐熱カバー、防火戸用窓ガラス、天体望遠鏡用部材、宇宙光学用部材等の材料として、LiO-Al-SiO系結晶化ガラスが用いられている。例えば特許文献1~3には、主結晶としてβ-石英固溶体(LiO・Al・nSiO[ただし2≦n≦4])やβ-スポジュメン固溶体(LiO・Al・nSiO[ただしn≧4])等のLiO-Al-SiO系結晶を析出してなるLiO-Al-SiO系結晶化ガラスが開示されている。
【0003】
LiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、熱膨張係数が低く、機械的強度も高いため、優れた熱的特性を有している。また結晶化工程において熱処理条件を適宜調整することにより、析出結晶の種類を制御することが可能であり、透明な結晶化ガラス(β-石英固溶体が析出)を容易に作製することができる。
【0004】
ところで、この種の結晶化ガラスを製造する場合、1400℃を超える高温で溶融する必要がある。このため、ガラスバッチに添加される清澄剤には、高温での溶融時に清澄ガスを多量に発生させることができるAsやSBが使用されている。しかしながら、AsやSBは毒性が強く、ガラスの製造工程や廃ガラスの処理時等に環境を汚染する可能性がある。
【0005】
そこで、AsやSBの代替清澄剤として、SnOやClが提案されている(例えば、特許文献4および5参照)。ただし、Clは、ガラス成形時に金型や金属ロールを腐食させやすく、結果として、ガラスの表面品位を劣化させるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特許文献1:特公昭39-21049号公報
特許文献2:特公昭40-20182号公報
特許文献3:特開平1-308845号公報
特許文献4:特開平11-228180号公報
特許文献5:特開平11-228181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、LiO-Al-SiO系結晶化ガラスには、TiOやFe等に起因する着色があり、黄色味があり、外観上好ましくないという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、LiO-Al-SiO系結晶化ガラスにおいて、TiOやFe等に起因する黄色の着色が抑制されたLiO-Al-SiO系結晶化ガラスを提供することである。
課題を解決するための手段
【0009】
透明結晶化ガラスの黄色い着色を改善する場合、TiOの含有量を低減すればよいが、TiOの含有量を少なくすると、結晶化工程における最適焼成温度域が狭くなり、結晶核の生成量が少なくなり易い。その結果、粗大結晶が多くなって、結晶化ガラスが白濁し、透明性を損ないやすくなる。しかし、TiOの含有量低減に伴う結晶核生成量の不足は、ZrOを1質量%以上と多く含有させることにより補うことができることを見出した。
【0010】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量%で、SiO 40~90%、Al 5~30%、LiO 1~10%、SnO 0~20%、ZrO 1~20%、MgO 0~10%、P 0~10%、TiO 0~2%未満を含有することを特徴とする。
【0011】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、さらに、質量%で、NaO 0~10%、KO 0~10%、CaO 0~10%、SrO 0~10%、BaO 0~10%、ZnO 0~10%、B 0~10%を含有することが好ましい。
【0012】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、さらに、質量%で、Fe 0.1%以下を含有することが好ましい。
【0013】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量比で、SnO/(SnO+ZrO+P+TiO+B)が0.06以上であることが好ましい。ここで、「SnO/(SnO+ZrO+P+TiO+B)」とは、SnOの含有量をSnO、ZrO、P、TiO、及びBの合量で除した値である。
【0014】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量比で、Al/(SnO+ZrO)が7.1以下であることが好ましい。ここで、「Al/(SnO+ZrO)」とは、Alの含有量をSnO、及びZrOの合量で除した値である。
【0015】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量比で、SnO/(SnO+ZrO)が0.01~0.99であることが好ましい。ここで、「SnO/(SnO+ZrO)」とは、SnOの含有量をSnO、及びZrOの合量で除した値である。
【0016】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量%で、NaO+KO+CaO+SrO+BaO 8%以下を含有することが好ましい。ここで、「NaO+KO+CaO+SrO+BaO」とは、NaO、KO、CaO、SrO、及びBaOの合量である。
【0017】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量比で、(SiO+Al)/LiOが20以上であることが好ましい。ここで、「(SiO+Al)/LiO」とは、SiO、及びAlの合量をLiOの含有量で除した値である。
【0018】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量比で、(SiO+Al)/SnOが44以上であることが好ましい。ここで、「(SiO+Al)/SnO」とは、SiO、及びAlの合量をSnOの含有量で除した値である。
【0019】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量比で、(MgO+ZnO)/LiOが0.395未満、又は0.754超であることが好ましい。ここで、「MgO+ZnO)/LiO」とは、MgO及びZnOの合量をLiOの含有量で除した値である。
【0020】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量比で、(LiO+NaO+KO)/ZrOが2.0以下であることが好ましい。ここで、「(LiO+NaO+KO)/ZrO」とは、LiO、NaO及びKOの合量をZrOの含有量で除した値である。
【0021】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量比で、TiO/ZrOが0.0001~5.0であることが好ましい。ここで、「TiO/ZrO」とは、TiOの含有量をZrOの含有量で除した値である。
【0022】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量比で、TiO/TiO+Feが0.001~0.999であることが好ましい。ここで、「TiO/(TiO+Fe)」とは、TiOの含有量をTiO及びFeの含量で除した値である。
【0023】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量%で、HfO+Ta 0.05%未満を含有することが好ましい。ここで、「HfO+Ta」とは、HfO及びTaの合量である。
【0024】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量%で、Pt 7ppm以下を含有することが好ましい。
【0025】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量%で、Rh 7ppm以下を含有することが好ましい。
【0026】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量%で、Pt+Rh 9ppm以下を含有することが好ましい。ここで、「Pt+Rh」とは、Pt及びRhの合量である。
【0027】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、外観が無色透明であることが好ましい。
【0028】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mm、波長300nmにおける透過率が10%以上であることが好ましい。このようにすれば、紫外透過性を求める各種の用途に好適に使用することができる。
【0029】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスにおいては、主結晶としてβ-石英固溶体が析出していることが好ましい。このようにすれば、熱膨張係数の低い結晶化ガラスを得ることが容易になる。
【0030】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスにおいては、30~380℃における熱膨張係数が、30×10-7/℃以下であることが好ましい。このようにすれば、低膨張性を求める各種の用途に好適に使用することができる。
【0031】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスにおいては、30~750℃における熱膨張係数が、30×10-7/℃以下であることが好ましい。このようにすれば、広い温度域にて低膨張性を求める各種の用途に好適に使用することができる。
【0032】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mm、波長300nmにおける透過率が10%以上であり、30~380℃における熱膨張係数が、30×10-7/℃以下であることを特徴とする。
【0033】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスにおいては、厚み3mm、波長300nmにおける結晶化前後の透過率変化率が50%以下であることが好ましい。ここで、「結晶化前後の透過率変化率」とは、{(結晶化前の透過率(%)-結晶化後の透過率(%))/結晶化前の透過率(%)}×100(%)を意味する。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、LiO-Al-SiO系結晶化ガラスにおいて、TiOやFe等に起因する黄色の着色が抑制されたLiO-Al-SiO系結晶化ガラスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】試料No.29の結晶化前の透過率曲線である。
図2】試料No.29の結晶化後の透過率曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量%で、SiO 40~90%、Al 5~30%、LiO 1~10%、SnO 0~20%、ZrO 1~20%、MgO 0~10%、P 0~10%、TiO 0~2%未満を含有する。ガラス組成を上記のように限定した理由を以下に示す。なお、以下の各成分の含有量に関する説明において、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0037】
SiOはガラスの骨格を形成するとともに、LiO-Al-SiO 系結晶を構成する成分である。SiOの含有量は40~90%、52~80%、55~75%、56~70%、59~70%、60~70%、60~69.5%、60.5~69.5%、61~69.5%、61.5~69.5%、62~69.5%、62.5~69.5%、63~69.5%、特に63.5~69.5%であることが好ましい。SiOの含有量が少なすぎると、熱膨張係数が高くなる傾向があり、耐熱衝撃性に優れた結晶化ガラスが得られにくくなる。また、化学的耐久性が低下する傾向がある。一方、SiOの含有量が多すぎると、ガラスの溶融性が低下したり、ガラス融液の粘度が高くなって、清澄しにくくなったりガラスの成形が難しくなって生産性が低下しやすくなる。また、結晶化に要する時間が長くなり、生産性が低下しやすくなる。
【0038】
Alはガラスの骨格を形成するとともに、LiO-Al-SiO系結晶を構成する成分である。また、Alは結晶核の周囲に配位し、コア-シェル構造を形成する成分である。コア-シェル構造が存在することで、シェル外部から結晶核成分が供給されにくくなり、結晶核が肥大化しにくくなり、多数の微小な結晶核が形成されやすくなる。Alの含有量は5~30%、8~30%、9~28%、10~27%、12~27%、14~7%、16~27%、17~27%、18~27%、18~26.5%、18.1~26.5%、19~26.5%、19.5~26.5%、20~26.5%、20.5~26.5%、特に20.8~25.8%であることが好ましい。Alの含有量が少なすぎると、熱膨張係数が高くなる傾向があり、耐熱衝撃性に優れた結晶化ガラスが得られにくくなる。また、化学的耐久性が低下する傾向がある。さらに、結晶核が大きくなり、結晶化ガラスが白濁しやすくなる。一方、Alの含有量が多すぎると、ガラスの溶融性が低下したり、ガラス融液の粘度が高くなって、清澄しにくくなったりガラスの成形が難しくなって生産性が低下しやすくなる。また、ムライトの結晶が析出してガラスが失透する傾向があり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。
【0039】
LiOはLiO-Al-SiO系結晶を構成する成分であり、結晶性に大きな影響を与えるとともに、ガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性および成形性を向上させる成分である。LiOの含有量は1~10%、2~10%、2~8%、2.5~6%、2.8~5.5%、2.8~5%、3~5%、3~4.5%、3~4.2%、特に3.2~4%であることが好ましい。LiOの含有量が少なすぎると、ムライトの結晶が析出してガラスが失透する傾向がある。また、ガラスを結晶化させる際に、LiO-Al-SiO系結晶が析出しにくくなり、耐熱衝撃性に優れた結晶化ガラスを得ることが困難になる。さらに、ガラスの溶融性が低下したり、ガラス融液の粘度が高くなって、清澄しにくくなったりガラスの成形が難しくなって生産性が低下しやすくなる。一方、LiOの含有量が多すぎると、結晶性が強くなりすぎて、ガラスが失透しやすくなる傾向があり、結晶化ガラスが破 損しやすくなる。
【0040】
SiO、Al、LiOは主結晶であるβ-石英固溶体の主な構成成分であり、LiOとAlは互いの電荷を補償しあうことで、SiO骨格に固溶する。これら三成分を好適な比率で含有することで効率的に結晶化が進行し、低コストでの製造が可能となる。(SiO+Al)/LiOは20以上、20.2以上、20.4以上、20.6以上、20.8以上、特に21以上であることが好ましい。
【0041】
SnOは清澄剤として作用する成分である。また、結晶化工程で効率的に結晶を析出させるために必要な成分でもある。一方で、多量に含有するとガラスの着色を著しく強める成分でもある。SnOの含有量は0~20%、0超~20%、0.05~20%、0.1~10%、0.1~5%、0.1~4%、0.1~3%、0.15~3%、0.2~3%、0.2~2.7%、0.2~2.4%、0.25~2.4%、0.3~2.4%、0.35~2.4%、0.4~2.4%、0.45~2.4%、0.5~2.4%、0.5~2.35%、0.5~2.3%、0.5~2.2%、0.5~2.1%、0.5~2.05%、0.5~2%、0.5~1.95%、0.5~1.93%、0.5~1.91%、0.5~1.9%、0.5~1.88%、0.5~1.85%、0.5~1.83%、0.5~1.81%、特に0.5~1.8%であることが好ましい。SnOの含有量が少なすぎると、ガラスの清澄が困難となり、生産性が低下しやすくなる。また、結晶核が十分に形成されず、粗大な結晶が析出してガラスが白濁したり、破損したりするおそれがある。一方、SnOの含有量が多すぎると、結晶化ガラスの着色が強くなる恐れがある。また、製造時のSnO蒸発量が増え、環境負荷が高くなる傾向がある。
【0042】
ZrOは結晶化工程で結晶を析出させるための核形成成分である。ZrOの含有量は、1~20%、1~15%、1~10%、1~5%、1.5~5%、1.75~4.5%、1.75~4.4%、1.75~4.3%、1.75~4.2%、1.75~4.1%、1.75~4%、1.8~4%、1.85~4%、1.9~4%、1.95~4%、2~4%、2.05~4%、2.1~4%、2.15~4%、2.2~4%、2.25~4%、2.3~4%、2.3~3.95%、2.3~3.9%、2.3~3.95%、2.3~3.9%、2.3~3.85%、2.3~3.8%、2.7超~3.8%、2.8~3.8%、2.9~3.8%、特に3~3.8%であることが好ましい。ZrOの含有量が少なすぎると、結晶核が十分に形成されず、粗大な結晶が析出して結晶化ガラスが白濁したり、破損したりするおそれがある。一方、ZrOの含有量が多すぎると、粗大なZrO結晶が析出しガラスが失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。
【0043】
SnO+ZrOは、1~30%、1.1~30%、1.1~27%、1.1~24%、1.1~21%、1.1~20%、1.1~17%、1.1~14%、1.1~11%、1.1~9%、1.1~7.5%、1.4~7.5%、1.8~7.5%、2.0~7.5%、2.2~7%、2.2~6.4%、2.2~6.2%、2.2~6%、2.3~6%、2.4~6%、2.5~6%、特に2.8~6%であることが好ましい。SnO+ZrOが少なすぎると結晶核が析出しにくくなり、結晶化しにくくなる。一方、SnO+ZrOが多すぎると結晶核が大きくなり、結晶化ガラスが白濁しやすくなる。
【0044】
SnOはZrOの分相を助長する効果がある。液相温度を低く抑えながら(初相析出による失透のリスクを抑えながら)、効率的に分相を発生させ、後の工程における核形成、結晶成長を迅速に行うために、SnO/(SnO+ZrO)は質量比で、0.01~0.99、0.01~0.98、0.01~0.94、0.01~0.90、0.01~0.86、0.01~0.82、0.01~0.78、0.01~0.74、0.01~0.70、0.03~0.70、特に0.05~0.70であることが好ましい。
【0045】
また、SnOは高温化でSnO→SnO+1/2Oの反応を起こし、ガラス融液中にOガスを放出する。この反応はSnOの清澄機構として知られているが、反応時に放出されたO2ガスはガラス融液中に存在する微塵な泡を大きくし、ガラス系外に放出させる「脱泡作用」の他に、ガラス融液を混ぜ合わせる「攪拌作用」を有する。本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスにおいては、SiOとAlの含有量が過半数を占めており、これら成分は難溶性であることから、効率的に均質なガラス融液を形成するためには、これら三成分を好適な比率で含有させる必要がある。(SiO+Al)/SnOは44以上、44.3以上、44.7以上、45以上、45.2以上。45.4以上、45.6以上、45.8以上、特に46以上であることが好ましい。
【0046】
Al/(SnO+ZrO)は7.1以下、7.05以下、7.0以下、6.95以下、66.9以下、6.85以下、6.8以下、6.75以下、6.7以下、6.65以下、6.6以下、6.55以下、6.5以下、6.45以下、6.4以下、6.35以下、6.3以下、6.25以下、6 .2以下、6.15以下、6.1以下、6.05以下、6.0以下、5.98以下、5.95以下、5.92以下、5.9以下、5.8以下、5.7以下、5.6以下、特に5.5以下であることが好ましい。Al/(SnO+ZrO)が大きすぎると、核形成が効率的に進まず、効率的に結晶化し難くなる。なお、この傾向はTiOを0.2%未満含有する場合に発現しやすくなる。一方、Al/(SnO+ZrO)が小さすぎると、結晶核が大きくなり、結晶化ガラスが白濁しやすくなる。このため、Al/(SnO+ZrO)の下限は0.01以上であることが好ましい。
【0047】
MgOはLiO-Al-SiO系結晶に固溶し、LiO-Al-SiO系結晶の熱膨張係数を高くする成分である。MgOの含有量は0~10%、0~8%、0~6%、0~5%、0~4.5%、0~4%、0~3.5%、0.02~3.5%、0.05~3.5%、0.08~3.5%、0.1~3.5%、0.1~3.3%、0.1~3%、0.13~3%、0.15~3%、0.17~3%、0.19~3%、0.2~2.9%、0.2~2.7%、0.2~2.5%、0.2~2.3%、0.2~2.2%、0.2~2.1%、特に0.2~2%であることが好ましい。MgOの含有量が少なすぎると、熱膨張係数が低くなり過ぎる傾向がある。また、結晶析出時には体積収縮が起こるが、その体積収縮の量が大きくなりすぎる場合がある。また、結晶化後の結晶相と残存ガラス相との熱膨張係数差が大きくなるため、結晶化ガラスが破損しやすくなる場合がある。MgOの含有量が多すぎると、結晶性が強くなりすぎて失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。また、熱膨張係数が高くなり過ぎる傾向がある。
【0048】
は粗大なZrO結晶の析出を抑制する成分である。Pの含有量は0~10%、0~8%、0~6%、0~5%、0~4%、0~3.5%、0.02~3.5%、0.05~3.5%、0.08~3.5%、0.1~3.5%、0.1~3.3%、0.1~3%、0.13~3%、0.15~3%、0.17~3%、0.19~3%、0.2~2.9%、0.2~2.7%、0.2~2.5%、0.2~2.3%、0.2~2.2%、0.2~2.1%、0.2~2%、特に0.3~1.8%であることが好ましい。Pの含有量が少なすぎると、粗大なZrO結晶が析出しガラスが失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる場合がある。一方、Pの含有量が多すぎると、LiO-Al-SiO系結晶の析出量が少なくなり、熱膨張係数が高くなる傾向がある。
【0049】
TiOは結晶化工程で結晶を析出させるための核形成成分である。一方で、多量に含有するとガラスの着色を著しく強める。特にZrOとTiOを含むジルコニアチタネート系の結晶は結晶核として作用するが、配位子である酸素の価電子帯から中心金属であるジルコニアおよびチタンの伝導帯へと電子が遷移し(LMCT遷移)、結晶化ガラスの着色に関与する。また、残存ガラス相にチタンが残っている場合、SiO骨格の価電子帯から残存ガラス相の4価のチタンの伝導帯へとLMCT遷移が起こりうる。また、残存ガラス相の3価のチタンではd-d遷移が起こり、結晶化ガラスの着色に関与する。更に、チタンと鉄が共存する場合はイルメナイト(FeTiO)様の着色が発現する。また、チタンと錫が共存する場合は黄色が強まることが知られている。このため、TiOの含有量は0~4%、0~3.5%、0~3%、0~2.5%、0~2.2%、0~2.1%、0~2%、0~1.95%、0~1.9%、0~1.8%、0~1.7%、0~1.6%、0~1.5%、0~1.4%、0~1.3%、0~1.2%、0~1.1%、0~1.05%、0~1%、0~0.95%、0~0.9%、0~0.85%、0~0.8%、0~0.75%、0~0.7%、0~0.65%、0~0.6%、0~0.55%、0~0.5%、0~0.48%、0~0.46%、0~0.44%、0~0.42%、0~0.4%、0~0.38%、0~0.36%、0~0.34%、0~0.32%、0~0.3%、0~0.28%、0~0.26%、0~0.24%、0~0.22%、0~0.2%、0~0.18%、0~0.16%、0~0.14%、0~0.12%、特に0~0.1%であることが好ましい。ただし、TiOは不純物として混入し易いため、TiOを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、TiOの含有量の下限は、0.0003%以上、0.0005%以上、0.001%以上、0.005%以上、0.01%以上、特に0.02%以上であることが好ましい。
【0050】
TiOとZrOはそれぞれ結晶核として機能しうる成分である。TiとZrは同族元素であり、電気陰性度やイオン半径等が似ている。このため、酸化物として似たような分子配座を取りやすく、TiOとZrOの共存下で、結晶化初期の分相が発生しやすくなることが判っている。このため、着色が許容される範囲において、TiO/ZrOは0.0001~5.0、0.0001~4.0、0.0001~3.0、0.0001~2.5、0.0001~2.0、0.0001~1.5、0.0001~1.0、0.0001~0.5、0.0001~0.4、特に0.0001~0.3であることが好ましい。TiO/ZrOが小さすぎると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向がある。一方、TiO/ZrOが大きすぎると、結晶核形成速度が遅くなり、製造コストが増加しうる。
【0051】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、上記成分以外にも、ガラス組成中に下記の成分を含有してもよい。
【0052】
NaOはLiO-Al-SiO系結晶に固溶しうる成分であり、結晶性に大きな影響を与えるとともに、ガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性および成形性を向上させる成分である。また、結晶化ガラスの熱膨張係数および屈折率を調整するための成分でもある。NaOの含有量は0~10%、0~8%、0~6%、0~5%、0~4.5%、0~4%、0~3.5%、0~3%、0~2.7%、0~2.4%、0~2.1%、0~1.8%、特に0~1.5%であることが好ましい。NaOの含有量が多すぎると、結晶性が強くなりすぎて、ガラスが失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。また、Naカチオンのイオン半径は、主結晶の構成成分であるLiカチオンやMgカチオンなどよりも大きく、結晶に取り込まれにくいため、結晶化後のNaカチオンは残存ガラス(ガラスマトリックス)に残りやすい。このため、NaOの含有量が多すぎると、結晶相と残存ガラスの屈折率差が生じやすくなり、結晶化ガラスが白濁しやすくなる傾向にある。ただし、NaOは不純物として混入し易いため、NaOを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、NaOの含有量の下限は、0.0003%以上、0.0005%以上、特に0.001%以上であることが好ましい。
【0053】
OはLiO-Al-SiO系結晶に固溶しうる成分であり、結晶性に大きな影響を与えるとともに、ガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性および成形性を向上させる成分である。また、結晶化ガラスの熱膨張係数および屈折率を調整するための成分でもある。KOの含有量は0~10%、0~8%、0~6%、0~5%、0~4.5%、0~4%、0~3.5%、0~3%、0~2.7%、0~2.4%、0~2.1%、0~1.8%、0~1.5%、0~1.4%、0~1.3%、0~1.2%。0~1.1%、0~1%、0~0.9%、特に0.1~0.8%であることが好ましい。KOの含有量が多すぎると、結晶性が強くなりすぎて、ガラスが失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。また、Kカチオンのイオン半径は、主結晶の構成成分であるLiカチオンやMgカチオンなどよりも大きく、結晶に取り込まれにくいため、結晶化後のKカチオンは残存ガラスに残りやすい。このため、KOの含有量が多すぎると、結晶相と残存ガラスの屈折率差が生じやすくなり、結晶化ガラスが白濁しやすくなる傾向にある。ただし、KOは不純物として混入し易いため、KOを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、KOの含有量の下限は、0.0003%以上、0.0005%以上、特に0.001%以上であることが好ましい。
【0054】
LiO、NaO、KOはガラスの溶融性および成形性を向上させる成分であるが、これら成分の含有量が多すぎると低温粘度が下がりすぎ、結晶化時にガラスが流動しすぎてしまう恐れがある。また、LiO、NaO、KOは結晶化前のガラスの対候性、耐水性、耐薬品性等を悪化させうる成分である。結晶化前のガラスが水分等により改悪されると、所望の結晶化挙動、ひいては所望の特性を得られなくなる恐れがある。一方、ZrOは核形成剤として機能する成分であり、結晶化初期に優先的に結晶化し、残存ガラスの流動を抑える効果がある。また、ZrOはSiO骨格を主とするガラスネットワークの空隙部分を効率的に充填し、プロトンや各種薬品成分等のガラスネットワーク内での拡散を阻害する効果を持ち、結晶化前のガラスの対候性、耐水性、耐薬品性等を向上させる。所望の形状、特性の結晶化ガラスを得るためには、(LiO+NaO+KO)/ZrOは好適に制御されるべきである。(LiO+NaO+KO)/ZrOは2.0以下、1.98以下、1.96以下、1.94以下、1.92以下、特に1.90以下であることが好ましい。
【0055】
CaOはガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性および成形性を向上させる成分である。また、結晶化ガラスの熱膨張係数および屈折率を調整するための成分でもある。CaOの含有量は0~10%、0~8%、0~6%、0~5%、0~4.5%、0~4%、0~3.5%、0~3%、0~2.7%、0~2.4%、0~2.1%、0~1.8%、特に0~1.5%であることが好ましい。CaOの含有量が多すぎると、ガラスが失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。また、Caカチオンのイオン半径は、主結晶の構成成分であるLiカチオンやMgカチオンなどよりも大きく、結晶に取り込まれにくいため、結晶化後のCaカチオンは残存ガラスに残りやすい。このため、CaOの含有量が多すぎると、結晶相と残存ガラスの屈折率差が生じやすくなり、結晶化ガラスが白濁しやすくなる傾向にある。ただし、CaOは不純物として混入し易いため、CaOを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、CaOの含有量の下限は0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上であることが好ましい。
【0056】
SrOはガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性および成形性を向上させる成分である。また、結晶化ガラスの熱膨張係数および屈折率を調整するための成分でもある。SrOの含有量は0~10%、0~8%、0~6%、0~5%、0~4.5%、0~4%、0~3.5%、0~3%、0~2.7%、0~2.4%、0~2.1%、0~1.8%、0~1.5%、特に0~1%であることが好ましい。SrOの含有量が多すぎると、ガラスが失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。また、Srカチオンのイオン半径は、主結晶の構成成分であるLiカチオンやMgカチオンなどよりも大きく、結晶に取り込まれにくいため、結晶化後のSrカチオンは残存ガラスに残りやすい。このため、SrOの含有量が多すぎると、結晶相と残存ガラスの屈折率差が生じやすくなり、結晶化ガラスが白濁しやすくなる傾向にある。ただし、SrOは不純物として混入し易いため、SrOを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、SrOの含有量の下限は0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上であることが好ましい。
【0057】
BaOはガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性および成形性を向上させる成分である。また、結晶化ガラスの熱膨張係数および屈折率を調整するための成分でもある。BaOの含有量は0~10%、0~8%、0~6%、0~5%、0~4.5%、0~4%、0~3.5%、0~3%、0~2.7%、0~2.4%、0~2.1%、0~1.8%、0~1.5%、特に0~1%であることが好ましい。BaOの含有量が多すぎると、Baを含む結晶が析出しガラスが失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。また、Baカチオンのイオン半径は、主結晶の構成成分であるLiカチオンやMgカチオンなどよりも大きく、結晶に取り込まれにくいため、結晶化後のBaカチオンは残存ガラスに残りやすい。このため、BaOの含有量が多すぎると、結晶相と残存ガラスの屈折率差が生じやすくなり、結晶化ガラスが白濁しやすくなる傾向にある。ただし、BaOは不純物として混入し易いため、BaOを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、BaOの含有量の下限は0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上であることが好ましい。
【0058】
MgO、CaO、SrO、BaOはガラスの溶融性および成形性を向上させる成分であるが、これら成分の含有量が多すぎると低温粘度が下がりすぎ、結晶化時にガラスが流動しすぎてしまう恐れがある。一方、ZrOは核形成剤として機能する成分であり、結晶化初期に優先的に結晶化し、残存ガラスの流動を抑える効果がある。所望の形状、特性の結晶化ガラスを得るためには、(MgO+CaO+SrO+BaO)/ZrOは好適に制御されるべきである。(MgO+CaO+SrO+BaO)/ZrOは0~3、0~2.8、0~2.6、0~2.4、0~2.2、0~2.1、0~2、0~1.8、0~1.7、0~1.6、特に0~1.5であることが好ましい。NaO、KO、CaO、SrO、BaOは、結晶化後の残存ガラスに残りやすい。このため、これらの合量が多すぎると、結晶相と残存ガラスの屈折率差が生じやすくなり、結晶化ガラスが白濁しやすくなる。このため、NaO+KO+CaO+SrO+BaOは8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4.5%以下、4%以下、3.5%以下、3%以下、2.7%以下、2.42%以下、2.415%以下、2.410%以下、2.405%以下、特に2.4%以下であることが好ましい。
【0059】
LiO、NaO、KO、MgO、CaO、SrO、BaOはガラスの溶 融性および成形性を向上させる成分である。また、MgO、CaO、SrO、BaOを多く含むガラス融液は、温度に対する粘度(粘度カーブ)の変化が緩やかになりやすく、LiO、NaO、KOを多く含むガラス融液は変化が急になりやすい。粘度カーブの変化が緩やかすぎると成形して所定の形状にした後もガラスが流動してしまい、所望の形状を得にくくなる。一方、粘度カーブの変化が急すぎると成形途中にガラス融液が固化してしまい、所望の形状を得にくくなる。このため、(MgO+CaO+SrO+BaO)/(LiO+NaO+KO)は好適に制御されるべきである。(MgO+CaO+SrO+BaO)/(LiO+NaO+KO)は0~2、0~1.8、0~1.5、0~1.2、0~1、0~0.9、0~0.8、0~0.7、0~0.6、0~0.5、特に0~0.45であることが好ましい。
【0060】
ZnOはLiO-Al-SiO系結晶に固溶し、結晶性に大きな影響を与える成分である。また、結晶化ガラスの熱膨張係数および屈折率を調整するための成分でもある。ZnOの含有量は0~10%、0~8%、0~6%、0~5%、0~4.5%、0~4%、0~3.5%、0~3%、0~2.7%、0~2.4%、0~2.1%、0~1.8%、0~1.5%、特に0~1%であることが好ましい。ZnOの含有量が多すぎると、結晶性が強くなりすぎて失透しやすくなり、ガラスが破損しやすくなる。ただし、ZnOは不純物として混入し易いため、ZnOを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、ZnOの含有量の下限は0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上であることが好ましい。
【0061】
LiO-Al-SiO系結晶化ガラスにおいて、Liカチオン、Mgカチオン、Znカチオンはβ-石英固溶体に固溶しやすい成分であり、Baカチオン等と比較して、結晶化後の残存ガラスの屈折率上昇への寄与が小さい成分と考えられる。また、LiO、MgO、ZnOは原料をガラス化する際のフラックスとして機能するため、これらは無色透明な結晶化ガラスを低温で製造するうえで、大切な成分であると言える。LiOは低膨張を達成するうえで必須の成分であり、1%以上含有させる必要がある。所望する熱膨張係数等を達成するためにLiOを必要量含有させなければならないが、これに応じて、MgOとZnOも一緒に含有量を増やすと、ガラスの粘性が下がりすぎる恐れがある。低温粘度が下がりすぎると、焼成時にガラスの軟化流動性が大きくなりすぎ、所望の形状に結晶化することが困難になる場合がある。また、高温粘度が下がりすぎると、製造設備への熱的負荷は下がるものの、加熱時の対流速度が速くなり、耐火物等を物理的に侵食しやすくなる恐れがある。そこで、LiO、MgO、ZnOの含有比を制御するのが好ましく、特に、フラックスとしての機能が高いLiOに対して、MgOとZnOの合量を制御することが好ましい。そこで、(MgO+ZnO)/LiOは質量比で、0.394以下、0.393以下、0.392以下、0.391以下、特に0.390以下と小さくする、又は0.755以上、0.756以上、0.757以上、0.758以上、特に0.759以上と大きくすることが好ましい。
【0062】
はガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性および成形性を向上させる成分である。また、結晶核形成時の分相の起こりやすさに関与しうる成分でもある。Bの含有量は0~10%、0~8%、0~6%、0~5%、0~4.5%、0~4%、0~3.5%、0~3%、0~2.7%、0~2.4%、0~2.1%、0~1.8%、特に0~1.5%であることが好ましい。Bの含有量が多すぎると、溶融時のBの蒸発量が多くなり、環境負荷が高くなる。ただし、Bは不純物として混入し易いため、Bを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、Bは0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上含有しても良い。
【0063】
LiO-Al-SiO系結晶化ガラスにおいては、結晶核形成前にガラス内に分相領域が形成された後、その分相領域内でTiOやZrOなどで構成される結晶核が形成されることが知られている。分相形成にはSnO、ZrO、P、TiO、Bが強く関与していることから、SnO+ZrO+P+TiO+Bは1.5~30%、1.5~26%、1.5~22%、1.5~20%、1.5~18%、1.5~16%、1.5~15%、1.8~15%、2.1~15%、2.4~15%、2.5~15%、2.8~15%、2.8~13%、2.8~12%、2.8~11%、2.8~10%、3~9.5%、3~9.2%、特に3~9%が好ましく、SnO/(SnO+ZrO+P+TiO+B)は0.06以上、0.07以上、0.08以上、0.09以上、0.1以上、0.103以上、0.106以上、0.11以上、0.112以上、0.115以上、0.118以上、0.121以上、0.124以上、0.127以上、0.128以上、特に0.13以上であることが好ましい。P+B+SnO+TiO+ZrOが少なすぎると分相領域が形成されにくくなり、結晶化しにくくなる。一方、P+B+SnO+TiO+ZrOが多すぎる、及び/又はSnO/(SnO+ZrO+P+TiO+B)が小さすぎると、分相領域が大きくなり、結晶化ガラスが白濁しやすくなる。なお、SnO/(SnO+ZrO+P+TiO+B)の上限は特に限定されないが、現実的には0.9以下である。
【0064】
Feはガラスの着色を強める成分、特にTiOやSnOとの相互作用により着色を著しく強める成分でもある。Feの含有量は0.10%以下、0.08%以下、0.06%以下、0.05%以下、0.04%以下、0.035%以下、0.03%以下、0.02%以下、0.015%以下 、0.013%以下、0.012%以下、0.011%以下、0.01%以下、0.009%以下、0.008%以下、0.007%以下、0.006%以下、0.005%以下、0.004%以下、0.003%以下、特に0.002%以下であることが好ましい。ただし、Feは不純物として混入し易いため、Feを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、Feの含有量の下限は0.0001%以上、0.0002%以上、0.0003%以上、0.0005%以上、特に0.001%以上であることが好ましい。
【0065】
チタンと鉄が共存する場合はイルメナイト(FeTiO3)様の着色が発現することがある。特に、LiO-Al-SiO系結晶化ガラスにおいては、結晶化後に結晶核や主結晶として析出しなかったチタンと鉄の成分が残存ガラスに残り、上記着色の発現が促進されうる。設計上、これら成分を減量することがありえるが、TiOとFeは不純物として混入し易いため、完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。このため、製造コストを抑制するためには、前述した範囲においてTiOとFeを含有しても良く、製造コストをより安価にするためには着色が許容される範囲において、両方の成分を含有しても良い。そうした場合、TiO/(TiO+Fe)は0.001~0.999、0.003~0.997、0.005~0.995、0.007~0.993、0.009~0.991、0.01~0.99、0.1~0.9、0.15~0.85、0.2~0.8、0.25~0.25、0.3~0.7、0.35~0.65、特に0.4~0.6であることが好ましい。こうすることで、安価に無色透明度の高い結晶化ガラスを得やすくなる。
【0066】
Ptはイオンやコロイド、金属等の状態でガラスに混入しうる成分であり、黄色~茶褐色の着色を発現させる。また、この傾向は結晶化後に顕著になる。さらに、鋭意検討した所、Ptが混入すると、結晶化ガラスの核形成および結晶化挙動が影響を受け、白濁しやすくなる場合があることが判明した。このため、Ptの含有量は7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1.6ppm以下、1.4ppm以下、1.2ppm以下、1ppm以下、0.9ppm以下、0.8ppm以下、0.7ppm以下、0.6ppm以下、0.5ppm以下、0.45ppm以下、0.40ppm以下、0.35ppm以下、特に0.30ppm以下であることが好ましい。極力Ptの混入は避けるべきであるが、 一般的な溶融設備を用いた場合、均質なガラスを得るためにPt部材の使用 が必要になることがある。このため、Ptを完全に除去しようとすると、製造コストが増加する傾向にある。着色に悪影響を及ぼさない場合においては、製造コストの増加を抑制するために、Ptの含有量の下限は0.0001ppm以上、0.001ppm以上、0.005ppm以上、0.01ppm以上、0.02ppm以上、0.03ppm以上、0.04ppm以上、0.05ppm以上、0.06ppm以上、特に0.07ppm以上であることが好ましい。また、着色が許容される場合においては、PtをZrOやTiOと同様に、主結晶の析出を促進させる核形成剤としても良い。その際、Pt単独で核形成剤としても良く、他の成分と複合で核形成剤としても良い。また、Ptを核形成剤とする場合、特に形態は問わない(コロイド、金属結晶など)。
【0067】
Rhはイオンやコロイド、金属等の状態でガラスに混入しうる成分であり、Ptと同様に黄色~茶褐色の着色を発現させ、結晶化ガラスを白濁させる傾向がある。このため、Rhの含有量は7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1.6ppm以下 、1.4ppm以下、1.2ppm以下、1ppm以下、0.9ppm以下、0.8ppm以下、0.7ppm以下、0.6ppm以下、0.5ppm以下、0.45ppm以下、0.40ppm以下、0.35ppm以下、特に0.30ppm以下であることが好ましい。極力Rhの混入は避けるべきであるが、一般的な溶融設備を用いた場合、均質なガラスを得るためにRh部材の使用が必要になることがある。このため、Rhを完全に除去しようとすると、製造コストが増加する傾向にある。着色に悪影響を及ぼさない場合においては、製造コストの増加を抑制するために、Rhの含有量の下限は0.0001ppm以上、0.001ppm以上、0.005ppm以上、0.01ppm以上、0.02ppm以上、0.03ppm以上、0.04ppm以上、0.05ppm以上、0.06ppm以上、特に0.07ppm以上であることが好ましい。また、着色が許容される場合においては、RhをZrOやTiOと同様に核形成剤としても良い。その際、Rh単独で核 形成剤としても良く、他の成分と複合で核形成剤としても良い。また、Rhを主結晶の析出を促進させる核形成剤とする場合、特に形態は問わない(コロイド、金属結晶など)。
【0068】
また、Pt+Rhは9ppm以下、8ppm以下、7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4.75ppm以下、4.5ppm以下、4.25ppm以下、4ppm以下、3.75ppm以下、3.5ppm以下、3.25ppm以下、3ppm以下、2.75ppm以下、2.5ppm以下、2.25ppm以下、2ppm以下、1.75ppm以下、1.5ppm以下、1.25ppm以下、1ppm以下、0.95ppm以下、0.9ppm以下、0.85ppm以下、0.8ppm以下、0.75ppm以下、0.7ppm以下、0.65ppm以下、0.60ppm以下、0.55ppm以下、0.50ppm以下、0.45ppm以下、0.40ppm以下、0.35ppm以下、特に0.30ppm以下であることが好ましい。なお、極力PtとRhの混入は避けるべきであるが、一般的な溶融設備を用いた場合、均質なガラスを得るためにPtとRh部材の使用が必要になることがある。このため、PtとRhを完全に除去しようとすると、製造コストが増加する傾向にある。着色に悪影響を及ぼさない場合においては、製造コストの増加を抑制するために、Pt+Rhの下限は0.0001ppm以上、0.001ppm以上、0.005ppm以上、0.01ppm以上、0.02ppm以上、0.03ppm以上、0.04ppm以上、0.05ppm以上、0.06ppm以上、特に0.07ppm以上であることが好ましい。
【0069】
なお、ガラス素材を開発するにあたり、様々な組成のガラスを様々な坩堝を用いて作製することは一般的である。このため、溶融に使用する電気炉内部には坩堝から蒸発した白金とロジウムが存在することが多々ある。電気炉内部に存在するPtとRhがガラスに混入することを確認しており、PtとRhの混入量を制御するために、使用する原料や坩堝の材質を選定するだけでなく、石英製の蓋を坩堝に装着する他、溶融温度の低温化や短時間化等を施すことにより、ガラス中のPt、Rhの含有量を制御することが可能である。
【0070】
AsやSBは毒性が強く、ガラスの製造工程や廃ガラスの処理時等に環境を汚染する可能性がある。このため、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスはこれらの成分を実質的に含有しない(具体的には、0.1質量%未満)ことが好ましい。
【0071】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは着色に悪影響が無い限り、上記成分以外にも、例えばH、CO、CO、HO、He、Ne、Ar、N等の微量成分をそれぞれ0.1%まで含有してもよい。また、ガラス中にAg、Au、Pd、Ir、V、Cr、Sc、Ce、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、U等は意図的に添加すると原料コストが高くなり、製造コストが高くなる傾向にある。一方、AgやAuなどを含有させたガラスに光照射や熱処理を行うと、これら成分の凝集体が形成され、それを起点に結晶化を促進することが出来る。また、Pdなどには種々の触媒作用があり、これら含有させることで、ガラスないし結晶化ガラスに特異な機能を付与することが可能となる。こうした事情を鑑みて、結晶化促進やその他の機能の付与を目的とする場合、上記成分をそれぞれ1%以下、0.5%以下、0.3%以下、0.1%以下含有してもよく、そうでない場合は500ppm以下、300ppm以下、100ppm以下、特に10ppm以下であることが好ましい。
【0072】
さらに着色に悪影響が無い限り、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、SO、MnO、Cl、Y、MoO、La、WO、HfO、Ta、Nd、Nb、RfO等を合量で10%まで含有してもよい。ただし、上記成分の原料バッチは高価であり製造コストが増加する傾向にあるため、特段の事情が無い場合は添加しなくても良い。特にHfOは原料費が高く、Taは紛争鉱物になることがあるため、これら成分の合量は質量%で5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、0.1%以下、0.05%以下、0.05%未満、0.049%以下、0.048%以下、0.047%以下、0.046%以下、特に0.045%以下であることが好ましい。
【0073】
すなわち、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスを実施するにあたり好ましい組成範囲は、SiO 50~75%、Al 10~ 30%、LiO 1~8%、SnO 0~5%、ZrO 1~5%、MgO 0~10%、P 0~5%、TiO 0~2%未満、(LiO+ NaO+KO)/ZrO 0~1.5、TiO/(TiO+Fe) 0.01~0.99、(MgO+ZnO)/LiO 0~0.8であり、好ましくは、SiO 50~75%、Al 10~30%、LiO 1~8%、SnO 0超~5%、ZrO 1~5%、MgO 0~10%、P 0~5%、TiO 0~2%未満、(LiO+NaO+KO)/ZrO 0~1.5、TiO/(TiO+Fe) 0.01~0.99、(MgO+ZnO)/LiO 0~0.8、(MgO+CaO+Sr O+BaO)/(LiO+NaO+KO) 0~0.5であり、より好ましくは、SiO 50~75%、Al 10~30%、LiO 1~8%、SnO 0超~5%、ZrO 1~5%、MgO 0~10%、P 0~5%、TiO 0~2%未満、(LiO+NaO+KO)/ZrO 0~1.5、TiO/(TiO+Fe) 0.01~0.99、(MgO+ZnO)/LiO 0~0.8、(MgO+CaO+SrO+BaO)/(LiO+NaO+KO) 0~0.5、(MgO+CaO+SrO+BaO)/ZrO 0~2であり、さらに好ましくは、SiO 50~75%、Al 10~30%、LiO 1~8%、SnO 0超~5%、ZrO 1~5%、MgO 0~10%、P 0~5%、TiO 0~2%未満、(LiO+NaO+KO)/ZrO 0~1.5、TiO/(TiO+Fe) 0.01~0.99、(MgO+ZnO)/LiO 0~0.8、(MgO+CaO+SrO+BaO)/(LiO+NaO+KO) 0~0.5、(MgO+CaO+SrO+BaO)/ZrO 0~2、SnO/(SnO+ZrO+P+TiO+B) 0.06~0.9であり、さらに好ましくは、SiO 50~75%、Al 10~30%、LiO 1~8%、SnO 0超~5%、ZrO 1~5%、MgO 0~10%、P 0~5%、TiO 0~2%未満、(LiO+NaO+KO)/ZrO 0~1.5、TiO/(TiO+Fe) 0.01~0.99、(MgO+ZnO)/LiO 0~0.8、(MgO+CaO+SrO+BaO)/(LiO+NaO+KO) 0~0.5、(MgO+CaO+SrO+BaO)/ZrO 0~2、SnO/(SnO+ZrO+P+TiO+B) 0.06~0.9、Pt+Rh 0~5ppmであり、さらに好ましくは、SiO 50~75%、Al 10~30%、LiO 1~8%、SnO 0超~5%、ZrO 1~5%、MgO 0~10%、P 0~5%、TiO 0~2%未満、(LiO+NaO+KO)/ZrO 0~1.5、TiO/(TiO+Fe) 0.01~0.99、(MgO+Z nO)/LiO 0~0.394、(MgO+CaO+SrO+BaO)/(LiO+NaO+KO) 0~0.5、(MgO+CaO+SrO+BaO)/ZrO 0~2、SnO/(SnO+ZrO+P+TiO+B) 0.06~0.9、Pt+Rh 0~5ppmであり、特に好ましくは、SiO 50~75%、Al 10~30%、LiO 1~8%、SnO 0超~5%、ZrO 1~5%、MgO 0~10%、P 0~5%、TiO 0~2%未満、(LiO+NaO+KO)/ZrO 0~1.5、TiO/(TiO+Fe) 0.01~0.99、(MgO+ZnO)/LiO 0~0.394、(MgO+CaO+SrO+BaO)/(LiO+NaO+KO) 0~0.5、(MgO+CaO+SrO+BaO)/ZrO 0~2、SnO/(SnO+ZrO+P+TiO+B) 0.06~0.9、Pt+Rh 0~5ppm、HfO+Ta 0~0.05%未満である。
【0074】
上記組成を有する本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、外観が無色透明になりやすい。
【0075】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mm、波長200nmにおける透過率が、0%以上、2.5%以上、5%以上、10%以上、12%以上、14%以上、16%以上、18%以上、20%以上、22%以上、24%以上、26%以上、28%以上、30%以上、32%以上、34%以上、36%以上、38%以上、40%以上、40.5%以上、41%以上、41.5%以上、42%以上、42.5%以上、43%以上、43.5%以上、44%以上、44.5%以上、特に45%以上であることが好ましい。紫外光を透過する必要のある用途の場合、波長200nmにおける透過率が低すぎると、所望の透過能を得られなくなる恐れがある。特にオゾンランプ等を用いた光洗浄やエキシマーレーザーを用いた医療用途、露光用途などで使用する場合、波長200nmにおける透過率は高い方が好ましい。
【0076】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mm、波長250nmにおける透過率が、0%以上、1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、10.5%以上、11%以上、11.5%以上、12%以上、12.5%以上、13%以上、13.5%以上、14%以上、14.5%以上、15%以上、15.5%以上、特に16%以上であることが好ましい。紫外光を透過する必要のある用途の場合、波長250nmにおける透過率が低すぎると、所望の透過能を得られなくなる恐れがある。特に低圧水銀灯等を用いた殺菌用途やYAGレーザー等を用いた加工用途などで使用する場合、波長250nmにおける透過率は高い方が好ましい。
【0077】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mm、波長300nmにおける透過率が、0%以上、2.5%以上、5%以上、10%以上、12%以上、14%以上、16%以上、18%以上、20%以上、22%以上、24%以上、26%以上、28%以上、30%以上、32%以 上、34%以上、36%以上、38%以上、40%以上、40.5%以上、41%以上、41.5%以上、42%以上、42.5%以上、43%以上、43.5%以上、44%以上、44.5%以上、特に45%以上であることが好ましい。特にUV硬化・接着・乾燥(UVキュアリング)、印刷物の蛍光検出、誘虫用途などで使用する場合、波長300nmにおける透過率は高い方が好ましい。
【0078】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mm、波長325nmにおける透過率が、0%以上、2.5%以上、5%以上、10%以上、12%以上、14%以上、16%以上、18%以上、20%以上、22%以上、24%以上、26%以上、28%以上、30%以上、32%以上、34%以上、36%以上、38%以上、40%以上、42%以上、44%以上、46%以上、48%以上、50%以上、52%以上、54%以上、56%以上、57%以上、58%以上、59%以上、60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、特に65%以上であることが好ましい。特にUV硬化・接着・乾燥(UVキュアリング)、印刷物の蛍光検出、誘虫用途などで使用する場合、波長325nmにおける透過率は高い方が好ましい。
【0079】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mm、波長350nmにおける透過率が、0%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、特に84%以上であることが好ましい。特にYAGレーザー等を用いた加工などで使用する場合、波長350nmにおける透過率は高い方が好ましい。
【0080】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mm、波長380nmにおける透過率が、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、78%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、特に84%以上であることが好ましい。波長380nmにおける透過率が低すぎると、黄色の着色が強くなるとともに、結晶化ガラスの透明性が低下し所望の透過能を得られなくなる恐れがある。
【0081】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mm、波長800nmにおける透過率が、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、78%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%%以上、85%以上、86%以上、87%以上、特に88%以上であることが好ましい。波長800nmにおける透過率が低すぎると、緑色になりやすくなる。特に静脈認証等の医療用途などで使用する場合、波長800nmにおける透過率は高い方が好ましい。
【0082】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mm、波長1200nmにおける透過率が、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、72%以上、74%以上、76%以上、78%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、特に89%以上であることが好ましい。波長1200nmにおける透過率が低すぎると、緑色になりやすくなる。特に赤外カメラやリモコン等の赤外通信用途などで使用する場合、波長1200nmにおける透過率は高い方が好ましい。
【0083】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mm、波長300nmにおける結晶化前後の透過率変化率が50%以下、48%以下、46%以下、44%以下、42%以下、40%以下、38%以下、37.5%以下、37%以下、36.5%以下、36%以下、35.5%以下、特に35%以下であることが好ましい。結晶化前後の透過率変化率を小さくすれば、結晶化する前に結晶化後の透過率を予測し制御することが可能になり、結晶化後に所望の透過能を得られやすくなる。なお、結晶化前後の透過率変化率は波長300nmのみならず、全波長域において小さい方が好ましい。
【0084】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mmにおける明度Lが50以上、60以上、65以上、70%以上、75以上、80以上、85以上、90以上、91以上、92以上、93以上、94以上、95以上、96以上、96.1以上、96.3以上、特に96.5以上であることが好ましい。明度Lが小さすぎると、色度の大きさに関わらず灰色がかり暗く見える傾向がある。
【0085】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mmにおける色度aが±5.0以内、±4.5以内、±4以内、±3.6以内、±3.2以内、±2.8以内、±2.4以内、±2以内、±1.8以内、±1.6以内、±1.4以内、±1.2以内、±1以内、±0.9以内、±0. 8以内、±0.7以内、±0.6以内、特に±0.5以内であることが好ましい。明度aがマイナス方向に大きすぎると緑色に、プラス方向に大きすぎると赤色に見える傾向がある。
【0086】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mmにおける色度bが±5.0以内、±4.5以内、±4以内、±3.6以内、±3.2以内、±2.8以内、±2.4以内、±2以内、±1.8以内、±1.6以内、±1.4以内、±1.2以内、±1以内、±0.9以内、±0.8以内、±0.7以内、±0.6以内、特に±0.5以内であることが好ましい。明度bがマイナス方向に大きすぎると青色に、プラス方向に大きすぎると黄色に見える傾向がある。
【0087】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、結晶化前のガラスの状態で、歪点(ガラスの粘度が約1014.5dPa・sに相当する温度)が600℃以上、605℃以上、610℃以上、615℃以上、620℃以上、630℃以上、635℃以上、640℃以上、645℃以上、650℃以上、特に655℃以上であることが好ましい。歪点温度が低すぎると、結晶化前のガラスを成形した際に割れやすくなる。
【0088】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、結晶化前のガラスの状態で、徐冷点(ガラスの粘度が約1013dPa・sに相当する温度)が680℃以上、685℃以上、690℃以上、695℃以上、700℃以上、705℃以上、710℃以上、715℃以上、720℃以上、特に725℃以上であることが好ましい。徐冷点温度が低すぎると、結晶化前のガラスを成形した際に割れやすくなる。
【0089】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、熱処理によって結晶化しやすいため、ソーダライムガラスのような一般的なガラスのように軟化点温度(ガラスの粘度が約107.6dPa・sに相当する温度)を測定することが容易でない。そこで、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスにおいては、結晶化前のガラスの熱膨張曲線の傾きが変化する温度をガラス転移点温度とし、軟化点の代替として取り扱う。本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、結晶化前のガラスの状態で、ガラス転移温度が680℃以上、685℃以上、690℃以上、695℃以上、700℃以上、705℃以上、710℃以上、715℃以上、720℃以上、特に725℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度が低すぎると、結晶化の際にガラスが流動しすぎてしまい、所望の形状に成形することが難しくなる。
【0090】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、液相温度が1540℃以下、1535℃以下、1530℃以下、1525℃以下、1520℃以下、1515℃以下、1510℃以下、1505℃以下、1500℃以下、1495℃以下、1490℃以下、1485℃以下、1480℃以下、1475℃以下、1470℃以下、1465℃以下、1460℃以下、1455℃以下、1450℃以下、1445℃以下、1440℃以下、1435℃以下、1430℃以下、1425℃以下、1420℃以下、1415℃以下、特に1410℃以下であることが好ましい。液相温度が高すぎると製造時に失透しやすくなる。一方、1480℃以下であれば、ロール法などでの製造が容易になり、1450℃以下であれば、鋳込み法などでの製造が容易になり、1410℃以下であれば、フュージョン法などでの製造が容易になる。
【0091】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、液相粘度(液相温度に対応する粘度の対数値)が2.70以上、2.75以上、2.80以上、2.85以上、2.90以上、2.95以上、3.00以上、3.05以上、3.10以上、3.15以上、3.20以上、3.25以上、3.30以上、3.35以上、3.40以上、3.45以上、3.50以上、3. 55以上、3.60以上、3.65以上、特に3.70以上であることが好ましい。液相粘度が低すぎると製造時に失透しやすくなる。一方、3.40以上であれば、ロール法などでの製造が容易になり、3.50以上であれば、鋳込み法などでの製造が容易になり、3.70以上であれば、フュージョン法などでの製造が容易になる。
【0092】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、主結晶としてβ-石英固溶体が析出していることが好ましい。β-石英固溶体を主結晶として析出させれば、結晶粒径が小さくなりやすいため結晶化ガラスが可視光を透過しやすく、透明性が高まりやすい。またガラスの熱膨張係数をゼロに近付けることが容易になる。なお、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、β-石英固溶体を析出させる結晶化条件よりも高温で熱処理することでβ-スポジュメン固溶体が析出する。β-スポジュメン固溶体の結晶粒径はβ-石英固溶体よりも大きくなりやすく、一般に結晶化ガラスにした際に白濁する傾向があるが、ガラス組成や焼成条件を好適に調整することで、β-スポジュメン固溶体を含む結晶相と残存ガラス相の屈折率差が小さくなることがあり、この場合においては結晶化ガラスが白濁しにくくなる。本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスにおいては、着色等に悪影響が無い限り、β-スポジュメン固溶体等の結晶が含まれても構わない。
【0093】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、30~380℃における熱膨張係数が、30×10-7/℃以下、25×10-7/℃以下、20×10-7/℃以下、18×10-7/℃以下、16×10-7/℃以下、14×10-7/℃以下、13×10-7/℃以下、12×10-7/℃以下、11×10-7/℃以下、10×10-7/℃以下、9×10-7/℃以下、8×10-7/℃以下、7×10-7/℃以下、6×10-7/℃以下、5×10-7/℃以下、4×10-7/℃以下、3×10-7/℃以下、特に2×10-7/℃以下であることが好ましい。なお、寸法安定性、及び/又は耐熱衝撃性が特に必要とされる場合は、-5×10-7/℃~5×10-7/℃、-3×10-7/℃~3×10-7/℃、-2.5×10-7/℃~2.5×10-7/℃、-2×10-7/℃~2×10-7/℃、-1.5×10-7/℃~1.5×10-7/℃、-1×10-7/℃~1×10-7/℃、特に-0.5×10-7/℃~0.5×10-7/℃であることが好ましい。
【0094】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、30~750℃ における熱膨張係数が、30×10-7/℃以下、25×10-7/℃以下、20×10-7/℃以下、18×10-7/℃以下、16×10-7/℃以下、14×10-7/℃以下、13×10-7/℃以下、12×10-7/℃以下、11×10-7/℃以下、10×10-7/℃以下、9×10-7/℃以下、8×10-7 /℃以下、7×10-7/℃以下、6×10-7/℃以下、5×10-7/℃以下、4×10-7/℃以下、特に3×10-7/℃以下であることが好ましい。なお、寸法安定性、及び/又は耐熱衝撃性が特に必要とされる場合は、-15×10-7/℃~15×10-7/℃、-12×10-7/℃~12×10-7/℃、-10×10-7/℃~10×10-7/℃、-8×10-7/℃~8×10-7/℃、-6×10-7/℃~6×10-7/℃、-5×10-7/℃~5×10-7/℃、-4.5×10-7/℃~4.5×10-7/℃、-4×10-7/℃~4×10-7/℃、-3.5×10-7/℃~3.5×10-7/℃、-3×10-7/℃~3×10-7/℃、-2.5×10-7/℃~2.5×10-7/℃、-2×10-7/℃~2×10-7/℃、-1.5×10-7/℃~1.5×10-7/℃、-1×10-7/℃~1×10-7/℃、特に-0.5×10-7/℃~0.5×10-7/℃であることが好ましい。
【0095】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、ヤング率が60~120GPa、70~110GPa、75~110GPa、75~105GPa、80~105GPa、特に80~100GPaであることが好ましい。ヤング率が低すぎても高すぎても、結晶化ガラスが破損しやすくなる。
【0096】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、剛性率が25~50GPa、27~48GPa、29~46GPa、特に30~45GPaであることが好ましい。剛性率が低すぎても高すぎても、結晶化ガラスが破損しやすくなる。
【0097】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、ポアソン比が0.35以下、0.32以下、0.3以下、0.28以下、0.26以下、特に0.25以下であることが好ましい。ポアソン比が大きすぎると、結晶化ガラスが破損しやすくなる。
【0098】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの結晶化前の結晶性ガラスについては、密度が2.30~2.60g/cm、2.32~2.58g/cm、2.34~2.56g/cm、2.36~2.54g/cm、2.38~2.52g/cm、2.39~2.51g/cm、特に2.40~2.50g/cmであることが好ましい。結晶性ガラスの密度が小さすぎると、結晶化前のガス透過性が悪化し、保管期間中にガラスが汚染される恐れがある。一方、結晶性ガラスの密度が大きすぎると単位面積当たりの重量が大きくなり、取り扱いが困難になる。
【0099】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス(結晶化後)については、密度が2.40~2.80g/cm、2.42~2.78g/cm、2.44~2.76g/cm、2.46~2.74g/cm、特に2.47~2.73g/cmであることが好ましい。結晶化ガラスの密度が小さすぎると、結晶化ガラスのガス透過性が悪化する恐れがある。一方、結晶化ガラスの密度が大きすぎると単位面積当たりの重量が大きくなり、取り扱いが困難になる。
【0100】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの密度変化率は、{(結晶化後の密度(g/cm)-結晶化前の密度(g/cm))/結晶化前の密度(g/cm)}×100(%)で定義されるものであり、結晶化前の密度は溶融後のガラスを700℃で30分保持し3℃/分で室温まで冷却した後の密度であり、結晶化後の密度とは、所定の条件で結晶化処理を行った後の密度である。密度変化率は0.01~10%、0.05~8%、0.1~8%、0.3~8%、0.5~8%、0.9~8%、1~7.8%、1~7.4%、1~7%、1.2~7%、1.6~7%、2~7%、2~6.8%、2~6.5%、2~6.3%、2~6.2%、2~6.1%、2~6%、2.5~5%、2.6~4.5%、2.8~3.8%であることが好ましい。結晶化前後の密度変化率を小さくすれば、結晶化後での破損率を低減することが可能であり、またガラスとガラスマトリクスの散乱が低減され、透過率の高い結晶化ガラスを得ることが可能になる。特にTiO含有量が2%以下(好ましくは1%以下、0.5%以下、特に0.05%以下)の領域で、TiO等の吸収以外の着色要因を低減させるうえで、散乱が顕著に低減させることが可能となり、透過率を向上させることに寄与する。
【0101】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、化学強化等を施しても良い。化学強化処理の処理条件はガラス組成、結晶化度、溶融塩の種類などを考慮して、処理時間や処理温度を適切に選択すればよい。例えば、結晶化後に化学強化しやすくなるように、残存ガラスに含まれうるNaOを多く含んだガラス組成を選択しても良く、結晶化度を意図的に下げても良い。また、溶融塩はLi、Na、K等のアルカリ金属を単独で含んでも良いし、複数含んでも良い。さらに、通常の一段階強化だけでなく、多段階での化学強化を選択しても良い。この他に、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、結晶化前に化学強化等で処理することで、試料表面のLiO含有量を試料内部よりも減らすことができる。こうしたガラスを結晶化させると、試料表面の結晶化度が試料内部よりも低くなり、相対的に試料表面の熱膨張係数が高くなり、熱熱膨張差に起因する圧縮応力を試料表面に入れることができる。また、試料表面の結晶化度が低い場合、表面にガラス相が多くなり、ガラス組成の選択によっては耐薬品性やガスバリア性を向上させることが出来る。
【0102】
次に本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスを製造する方法を説明する。
【0103】
まず、上記組成のガラスとなるように調製した原料バッチを、ガラス溶融炉に投入し、1500~1750℃で溶融した後、成形する。なお、ガラス溶融時はバーナー等を用いた火炎溶融法、電気加熱による電気溶融法などを用いて良い。また、レーザー照射による溶融やプラズマによる溶融も可能である。また、試料形状は板状、繊維状、フィルム状、粉末状、球状、中空状 等にすることができ、特段制限はない。
【0104】
次に得られた結晶性ガラス(結晶化前の結晶化可能なガラス)を熱処理して結晶化させる。結晶化条件としては、まず核形成を700~950℃(好ましくは750~900℃)で0.1~100時間(好ましくは1~60時間)行い、続いて結晶成長を800~1050℃(好ましくは800~1000℃)で0.1~50時間(好ましくは0.2~10時間)行う。このようにしてβ-石英固溶体結晶が主結晶として析出した透明なLiO-Al-SiO系結晶化ガラスを得ることができる。なお、熱処理はある特定の温度のみで行って良く、二水準以上の温度に保持し段階的に熱処理しても良く、温度勾配を与えながら加熱しても良い。
【0105】
また、音波や電磁波を印加、照射することで結晶化を促進しても良い。さらに、高温にした結晶化ガラスの冷却速度はある特定の温度勾配で行って良く、二水準以上の温度勾配で行っても良い。耐熱衝撃性を十分に得たい場合、冷却速度を制御して残存ガラス相の構造緩和を十分に行うことが望まれる。800℃から25℃までの平均冷却速度は、結晶化ガラスの最も表面から遠い肉厚内部の部分において3000℃/分、1000℃/分以下、500℃/分以下、400℃/分以下、300℃/分以下、200℃/分以下、100℃/分以下、50℃/分以下、25℃/分以下、10℃/分以下、特に5℃/分以下であることが好ましい。また、長期間にわたる寸法安定性を得たい場合は、さらに2.5℃/分以下、1℃/分以下、0.5℃/分以下、0.1℃以下/分以下、0.05℃/分以下、0.01℃/分以下、0.005℃/分以下、0.001℃/分以下、0.0005℃/分以下、特に0.0001℃/分以下であることが好ましい。風冷、水冷等による物理強化処理を行う場合を除き、結晶化ガラスの冷却速度は表面~表面から最も遠い肉厚内部の部分における冷却速度は近しいことが望ましい。表面から最も遠い肉厚内部の部分における冷却速度を表面の冷却速度で除した値は、0.0001~1、0.001~1、0.01~1、0.1~1、0.5~1、0.8~1、0.9~1、特に1であることが好ましい。1に近いことで、結晶化ガラス試料の全位置において、残留歪が生じにくく、長期の寸法安定性を得やすくなる。なお、表面の冷却速度は接触式測温や放射温度計で見積もることができ、内部の温度は高温状態の結晶化ガラスを冷却媒体中に置き、冷却媒体の熱量および熱量変化率を計測し、その数値データと結晶化ガラスと冷却媒体の比熱、熱伝導度等から見積もることができる。
【実施例
【0106】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。表1~18には本発明の実施例(試料No.1~5、8~63)、比較例(試料No.6、7)を示している。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
【表4】
【0111】
【表5】
【0112】
【表6】
【0113】
【表7】
【0114】
【表8】
【0115】
【表9】
【0116】
【表10】
【0117】
【表11】
【0118】
【表12】
【0119】
【表13】
【0120】
【表14】
【0121】
【表15】
【0122】
【表16】
【0123】
【表17】
【0124】
【表18】
【0125】
まず各表記載の組成を有するガラスとなるように、各原料を酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等の形態で調合し、ガラスバッチを得た(各表記載の組成は実際に作ったガラスの分析値)。得られたガラスバッチを白金とロジウムを含有する坩堝、ロジウムを含有しない強化白金坩堝、耐火物坩堝、又は石英坩堝に入れ、1600℃で4~100時間溶融後、1650~1680℃に昇温して0.5~20時間溶融し、5mmの厚さにロール成形し、さらに徐冷炉を用いて700℃で30分間熱処理し、徐冷炉を室温まで100℃/hで降温することにより、結晶性ガラスを得た。なお、前記溶融はガラス素材の開発に広く使用される電気溶融法で行った。
【0126】
なお、試料No.29のガラス組成物を用いて、液体ないし固体に接触させた状態のガラス組成物をレーザー照射により溶融できることを確認している。また、ガラス試料の周囲から気体を送り、ガラス試料を浮遊させながら、気体にのみ接触した状態のガラス組成物をレーザー溶融できることも確認した。さらに、電気炉等で予め融液にしてから、プレス法、リドロー法、スプレー法などにより半球状、球状、ファイバー状、粉末状などに成形できることを確認した。さらに、試料No.30~51のガラス組成物を用いて、バーナー加熱および通電加熱を組み合わせた連続炉での溶融が可能であることを確認し、ロール法、フィルム法、誘電加熱を用いたロット法などによりブロック状、剥片状、中空状などに成形できることを確認した。また、試料No.17のガラス組成物を用いて、アップドロー法、ダウンドロー法、スリット法、オーバーフロー(フュージョン)法、手吹き法などにより、薄板状、管状、バルブ状にできることを確認した。さらに、試料No.61のガラス組成物を用いて、試料No.61よりも比重の大きい液体上にガラス融液を流し出し、引き続く冷却によりガラス組成物を板状に固化できることを確認した。なお、いずれの方法で作製したガラスも、表に記載の条件で結晶化できた。
【0127】
試料のPt、Rh含有量はICP-MS装置(AGILEINT TECH NOLOGY製 Agilent8800)を用いて分析した。まず、作製したガラス試料を粉砕し純水で湿潤した後、過塩素酸、硝酸、硫酸、フッ酸などを添加して融解させた。その後、試料のPt、Rh含有量をICP-MSで測定した。予め準備しておいた濃度既知のPt、Rh溶液を用いて作成した検量線に基づき、各測定試料のPt、Rh含有量を求めた。測定モードはPt:Heガス/HMI(低モード)、Rh:HEHeガス/HMI(中モード)とし、質量数はPt:198、Rh:103とした。なお、作製試料のLiO含有量は原子吸光分析装置(アナリティクイエナ製 ContrAA600)を用いて分析した。ガラス試料の融解の流れ、検量線を用いた点などは基本的にPt、Rh分析と同様である。また、その他成分に関しては、Pt、Rh、LiOと同様にICP-MSないし原子吸光分析で測定するか、予めICP-MSもしくは原子吸光分析装置を用いて調べた濃度既知のガラス試料を検量線用試料とし、XRF分析装置(RIGAKU製ZSX PrimusIV)で検量線を作成した後、その検量線に基づき、測定試料のXRF分析値から実際の各成分の含有量を求めた。XRF分析の際、管電圧や管電流、露光時間等は分析成分に応じて随時調整した。
【0128】
各表記載の結晶性ガラスに対して、750~900℃で0.75~60時 間熱処理して核形成を行った後、さらに800~1000℃で0.25~3時間の熱処理を行い結晶化させた。その後、700℃で30分間熱処理し、室温まで100℃/hで降温した。得られた結晶化ガラスについて、透過率、拡散透過率、明度、色度、析出結晶、平均結晶子サイズ、熱膨張係数、密度、ヤング率、剛性率、ポアソン比及び外観を評価した。また、結晶化前の結晶性ガラスについては透過率、明度、色度等は結晶化ガラスと同様の方法で測定した。また、結晶性ガラスについては粘度、液相温度を測定した。
【0129】
透過率、明度及び色度は、肉厚3mmに両面光学研磨した結晶化ガラス板について、分光光度計を用いた測定により評価した。測定には日本分光製分光光度計 V-670を用いた。なお、V-670には積分球ユニットである「ISN-723」を装着しおり、測定した透過率は全光透過率に相当する。また、測定波長域は200~1500nm、スキャンスピードは200nm/分、サンプリングピッチは1nm、バンド幅は200~800nmの波長域で5nm、それ以外の波長域で20nmとした。測定前にはベースライン補正(100%合わせ)とダーク測定(0%合わせ)を行った。ダーク測定時はISN-723に付属された硫酸バリウム板を取った状態で行った。測定した透過率を用い、JISZ8781-42013およびそれに対応 する国際規格に基づいて三刺激値XYZを算出し、各刺激値から明度及び色 度を算出した(光源C/10°)。また、結晶化ガラスの拡散透過率は上記と同一機種を用い、ISN-723に付属された硫酸バリウム板を取った状態で測定試料を設置し、測定を行った。
【0130】
析出結晶はX線回折装置(リガク製 全自動多目的水平型X線回折装置 Smart Lab)を用いて評価した。スキャンモードは2θ/θ測定、スキャンタイプは連続スキャン、散乱および発散スリット幅は1°、受光スリット幅は0.2°、測定範囲は10~60°、測定ステップは0.1°、スキャン速度は5°/分とし、同機種パッケージに搭載された解析ソフトを用いて主結晶および結晶粒径の評価を行った。主結晶として同定された析出結晶種として、β-石英固溶体を「β-Q」として表中に示した。また、主結晶の平均結晶子サイズはデバイ・シェラー(Debeye-Sherrer)法に基づいて、測定したX線回折ピークを用いて算出した。なお、平均結晶子サイズ算出用の測定では、スキャン速度は1°/分とした。
【0131】
熱膨張係数は、20mm×3.8mmφに加工した結晶化ガラス試料を用いて、30~380℃、及び30~750℃の温度域で測定した平均線熱膨張係数により評価した。測定にはNETZSCH製Dilatometerを用いた。また、同一測定器を用いて、30~750℃の温度域の熱膨張曲線を計測し、その変曲点を算出することで結晶化前の結晶性ガラスのガラス転移点を評価した。
【0132】
ヤング率、剛性率、及びポアソン比は、1200番アルミナ粉末を分散させた研磨液で表面を研磨した板状試料(40mm×20mm×20mm)について、自由共振式弾性率測定装置(日本テクノプラス製JE-RT3)を用いて室温環境下にて測定した。
【0133】
密度はアルキメデス法で評価した。
【0134】
歪点、徐冷点はファイバーエロンゲーション法で評価した。なお、結晶性ガラスを手引き法にてファイバー試料を作製した。
【0135】
高温粘度は白金球引き上げ法で評価した。評価の際は塊状のガラス試料を 適正な寸法に破砕し、なるべく気泡が巻き込まれないようにしてアルミナ製坩堝に投入した。続いてアルミナ坩堝を加熱して、試料を融液状態とし、複数の温度におけるガラスの粘度の計測値を求め、Vogel-Fulcher式の定数を算出して粘度曲線を作成し、各粘度における温度を算出した。
【0136】
液相温度は次の方法で評価した。まず、約120×20×10mmの白金ボートに300~500マイクロメートルに揃えたガラス粉末を充填し、電気炉に投入し1600℃で30分間溶融した。その後、線形の温度勾配を有する電気炉に移し替え、20時間投入し、失透を析出させた。測定試料を室温まで空冷した後、白金ボートとガラスの界面に析出した失透を観察し、失透析出箇所の温度を電気炉の温度勾配グラフから算出して液相温度とした。また、得られた液相温度をガラスの高温粘度曲線に内挿し、液相温度に相当する粘度を液相粘度とした。なお、各表記載のガラスの初相はX線回折、組成分析等(日立製走査電子顕微鏡日立製S3400N TyPE2、堀場製 EMAX ENERGY EX250X)の結果から、主にZrOであることが分かった。
【0137】
外観は、目視にて結晶化ガラスの色調を確認することにより評価した。なお、白背景と黒背景で目視を行い、それぞれ室内光下、日光下(1月、4月、7月、10月の快晴日および曇り日の8:00、12:00、16:00に実施)で観察を行った。各目視の結果から総合的に色調の判断をした。
【0138】
表1~12から明らかなように、実施例である試料No.1~5、8~45の結晶化ガラスは外観が無色透明であり透過率が高く、熱膨張係数がほぼ0であった。また、結晶化前後の透過率変化率が小さかった。更に、ヤング率が92~93GPa、剛性率が37~38GPa、ポアソン比が0.22~0.23であった。一方、比較例であるNo.6、7の結晶化ガラスは、外観が黄色であり短波長域での透過率が低く、結晶化前後の透過率変化率が大きかった。
【0139】
図1は試料No.29の結晶化前の透過率曲線、図2は試料No.29の 結晶化後の透過率曲線を示している。図1、2からも結晶化前後の透過率変化率が小さいことが明らかである。
【0140】
表10の試料No.31~36から明らかなように、Pt、Rhの含有量が少ないほど、全光透過率が高く、拡散透過率が低い傾向にあった。これは、試料中にPt、Rhが存在することで、結晶化後に幅広い波長域で吸光が起きやすくなったことと、Pt、Rhによって核形成および結晶成長が影響され、主結晶の偏析、結晶相と残存ガラス相の屈折率差の増大、結晶子サイズないし結晶粒子(結晶子が凝集した多結晶)の肥大化等が結晶化ガラス内部で発生し、光が散乱されやすくなったことを示唆している。
【0141】
表11、12から明らかなように、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは短時間で結晶化した場合でも、高い透過率を得られる。よって、従来から用いられてきたLiO-Al-SiO系結晶化ガラスと遜色ないプロセス速度で結晶化可能であることから、既存設備を使用することができ低コストにて製造することが可能である。また、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは結晶核形成温度、結晶成長温度、それぞれの温度域での保持時間等を変更することにより熱膨張係数等の調整が可能である。
【0142】
ちなみに、PtおよびRhを含有していない試料No.41を825℃で0.75時間核形成させ、935℃で0.25時間結晶成長させたところ、結晶化前後の密度変化率は約3.4%であった。一方、Ptを0.01ppm、Rhを0.03ppm含有した同一組成のNo.40を同じ結晶化条件で処理した所、結晶化前後の密度変化率は約3.7%であった。これはPtやRhが結晶化を促進したことを表している。前述のように、着色が許容される場合であれば、PtやRhを結晶化促進剤として活用しても構わない。
【0143】
また、試料No.27の結晶化ガラスを、KNO3融液に475℃で7時間浸漬させたところ、試料表面に圧縮応力層が形成された(圧縮応力:110MPa、圧縮深さ:10マイクロメートル)。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、石油ストーブ、薪ストーブ等の前面窓、カラーフィルターやイメージセンサー用基板等のハイテク製品用基板、電子部品焼成用セッター、光拡散板、半導体製造用炉心管、半導体製造用マスク、光学レンズ、寸法測定用部材、通信用部材、建築用部材、化学反応用容器、電磁調理用トッププレート、耐熱食器、耐熱カバー、防火戸用窓ガラス、天体望遠鏡用部材、宇宙光学用部材等に好適である。
図1
図2