(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】冷暖房用気体流路形成システム及び冷暖房システム
(51)【国際特許分類】
F24F 5/00 20060101AFI20240904BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20240904BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
F24F5/00 K
E04B1/76 200A
E04B1/76 300
F24F13/02 C
(21)【出願番号】P 2019138898
(22)【出願日】2019-07-29
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】321008734
【氏名又は名称】株式会社ユカリラ
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角田 正
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-028423(JP,A)
【文献】特開2010-112566(JP,A)
【文献】特開2010-223538(JP,A)
【文献】特開2009-036510(JP,A)
【文献】特開2002-161632(JP,A)
【文献】特開2012-097921(JP,A)
【文献】特開2008-309398(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0334811(US,A1)
【文献】特開2020-051080(JP,A)
【文献】特開平08-327128(JP,A)
【文献】特開2009-114658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 5/00
E04B 1/76
F24F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度調節済気体を流す気体流路を形成する気体流路形成部材であって、冷房又は暖房の対象となる冷暖房対象室を区画する板状の区画部材の裏側に、前記区画部材の面に沿って線状に延びると共に環状を形成するように設けられ、前記区画部材と協働して前記気体流路を形成する気体流路形成部材を備え;
前記気体流路形成部材が、前記気体流路の交差点を形成するクロス流路形成部材と、2つの前記クロス流路形成部材の間を連絡するブリッジ流路形成部材とを含んで構成され;
前記クロス流路形成部材が底板を有すると共に、前記ブリッジ流路形成部材が底板を有し;
前記クロス流路形成部材の底板と前記ブリッジ流路形成部材の底板とが、同一仮想平面上に広がっており;
前記ブリッジ流路形成部材は、前記底板と前記底板に直交して延びる側板とを有する開渠で構成され、前記気体流路の内部にある前記温度調節済気体を前記区画部材の裏面に沿って前記気体流路の外部へ放出する放出口が前記側板に形成されている;
冷暖房用気体流路形成システム。
【請求項2】
前記クロス流路形成部材が前記底板に直交して延びる側板を有し;
前記ブリッジ流路形成部材の前記側板は、一対が前記底板に直交して延びており;
前記ブリッジ流路形成部材の側板のそれぞれは一方の端部に係止片が設けられており;
前記気体流路形成部材は、前記クロス流路形成部材の底板の上に前記ブリッジ流路形成部材の底板の一端が載置されて、前記係止片が前記クロス流路形成部材の底板の上に載置されつつ前記クロス流路形成部材の側板に前記気体流路の側から接する態様で、前記クロス流路形成部材に前記ブリッジ流路形成部材が組み込まれて構成されている;
請求項1に記載の冷暖房用気体流路形成システム。
【請求項3】
前記区画部材を支持すると共に前記クロス流路形成部材を支持する支持部材をさらに備える;
請求項1
又は請求項2に記載の冷暖房用気体流路形成システム。
【請求項4】
前記気体流路形成部材は、前記環状の気体流路が複数形成されると共に、前記複数の環状の気体流路のうちの隣接するものの前記気体流路の一部が共有されることで前記複数の環状の気体流路が連通するように構成された;
請求項1
乃至請求項
3のいずれか1項に記載の冷暖房用気体流路形成システム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項
4のいずれか1項に記載の冷暖房用気体流路形成システムと;
前記冷暖房対象室を区画する前記区画部材と;
前記区画部材の裏側かつ前記気体流路の外側の空間を、前記温度調節済気体が供給される供給空間と、前記供給空間に供給された前記温度調節済気体が前記
気体流路を通過してから流入する回収空間と、に仕切る仕切部材と;
前記温度調節済気体を前記供給空間に向けて供給する温度調節機器とを備え;
前記気体流路形成部材は、前記供給空間に位置する部分に、前記供給空間に供給された前記温度調節済気体を前記気体流路に流入させる流入口が形成されて構成された;
冷暖房システム。
【請求項6】
前記気体流路形成部材は、前記回収空間に位置する前記側板の部分に前記放出口が形成されて構成された;
請求項
5に記載の冷暖房システム。
【請求項7】
前記区画部材は、前記回収空間に位置する部分において、前記気体流路の内部から外部へと通じる案内溝が形成されて構成された;
請求項
5又は請求項
6に記載の冷暖房システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷暖房用気体流路形成システム及び冷暖房システムに関し、特に温度むらの発生を抑制する冷暖房用気体流路形成システム及び冷暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大引鋼を複数本平行に配列し、この上に根太鋼を大引鋼に対して交差するように複数本平行に配列して、この根太鋼の上に床材(冷暖房対象室を区画する区画部材に相当)を敷設することで床面を形成する鋼製床がある。このような鋼製床を用いて、鋼製床上の空間の冷暖房を行うものとして、大引鋼及び根太鋼の内部に空気の流路を形成し、この内部の空気流路に温度調節済みの空気を流し、温度調節済みの空気の冷熱又は温熱を床材に伝達して、床材からの輻射熱で冷暖房を行うものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されたシステムでは、その構造上、床材に冷熱又は温熱を伝達できる空気が、主として根太鋼の内部を流れる空気及び根太鋼から床材の面に沿って流出した空気となり、大引鋼の内部を流れる空気の冷熱又は温熱は床材に直接伝達されにくく、床材に温度むらが生じると共に冷暖房室内にも温度むらが生じる可能性がある。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、冷暖房のために温度変化させた区画部材に温度むらが生じることを抑制する冷暖房用気体流路形成システム及び冷暖房システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る冷暖房用気体流路形成システムは、例えば
図1に示すように、温度調節済気体Aを流す気体流路11fを形成する気体流路形成部材11であって、冷房又は暖房の対象となる冷暖房対象室Rを区画する板状の区画部材30の裏側に、区画部材30の面に沿って線状に延びると共に環状を形成するように設けられ、区画部材30と協働して又は単独で気体流路11fを形成する気体流路形成部材11を備える。
【0007】
このように構成すると、温度調節済気体を流す気体流路が区画部材の面に沿って線状に延びつつ環状に形成されているので、環状の気体流路の大きさを適切に形成することで、温度変化させた区画部材に温度むらが生じることを抑制することができる。
【0008】
また、本発明の第2の態様に係る冷暖房用気体流路形成システムは、例えば
図3に示すように、上記本発明の第1の態様に係る冷暖房用気体流路形成システム10において、気体流路形成部材11が、気体流路11fの交差点を形成するクロス流路形成部材12と、2つのクロス流路形成部材12の間を連絡するブリッジ流路形成部材13とを含んで構成され;区画部材30(例えば
図1参照)を支持すると共にクロス流路形成部材12を支持する支持部材15をさらに備える。
【0009】
このように構成すると、共通する部品の組み合わせで気体流路を形成することができると共に、流路形成部材を支持する部材と区画部材を支持する部材との共通化を図ることで部品点数を削減してシステムを簡素化することができる。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る冷暖房用気体流路形成システムは、例えば
図2に示すように、上記本発明の第1の態様又は第2の態様に係る冷暖房用気体流路形成システム10において、気体流路形成部材11は、環状の気体流路11fが複数形成されると共に、複数の環状の気体流路11fのうちの隣接するものの気体流路11fの一部が共有されることで複数の環状の気体流路11fが連通するように構成されている。
【0011】
このように構成すると、環状の気体流路を拡充することができて、区画部材の温度を変化させることが可能な範囲を拡大することができる。
【0012】
また、本発明の第4の態様に係る冷暖房システムは、例えば
図1に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係る冷暖房用気体流路形成システム10と;冷暖房対象室Rを区画する区画部材30と;区画部材30の裏側かつ気体流路の外側の空間Sを、温度調節済気体Aが供給される供給空間SSと、供給空間SSに供給された温度調節済気体Aが冷暖房対象室R内の温度に近づいてから流入する回収空間RSと、に仕切る仕切部材20と;温度調節済気体Aを供給空間SSに向けて供給する温度調節機器61とを備え;気体流路形成部材11は、供給空間SSに位置する部分に、供給空間SSに供給された温度調節済気体Aを気体流路に流入させる流入口121が形成されて構成されている。
【0013】
このように構成すると、供給空間に供給された温度調節済気体を、気体流路を経由して回収空間に流入させることで、区画部材の温度を変化させて冷暖房室の冷暖房を行うことが可能になる。
【0014】
また、本発明の第5の態様に係る冷暖房システムは、例えば
図1、
図3及び
図4(B)に示すように、上記本発明の第4の態様に係る冷暖房システム100において、気体流路形成部材11は、回収空間RSに位置する部分に、気体流路11fに流入した温度調節済気体Aを区画部材30の面に沿って放出する放出口13f(
図3及び
図4(B)参照)が形成されて構成されている。
【0015】
このように構成すると、区画部材の面の広範囲に温度調節済気体を接触させることができ、区画部材の温度を効率よく変化させることができる。
【0016】
また、本発明の第6の態様に係る冷暖房システムは、例えば
図6及び
図7に示すように、上記本発明の第4の態様又は第5の態様に係る冷暖房システムにおいて、区画部材30A、30Bは、回収空間RS(例えば
図1参照)に位置する部分において、気体流路の内部から外部へと通じる案内溝33が形成されて構成されている。
【0017】
このように構成すると、気体流路を流れる温度調節済気体が案内溝を経由して回収空間に至ることとなり、案内溝に沿って流れる温度調節済気体によって区画部材の温度を効率よく変化させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、温度調節済気体を流す気体流路が区画部材の面に沿って線状に延びつつ環状に形成されているので、環状の気体流路の大きさを適切に形成することで、温度変化させた区画部材に温度むらが生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係る冷暖房システムの概略構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る流路部材システムの概略構成斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る流路部材システムの部分斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る流路部材システムの構成部材を示す図であり、(A)はクロス流路部材の斜視図、(B)はブリッジ流路部材の斜視図、(C)は支持脚の分解斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る流路部材システムが備えるブリッジ流路部材の変形例を示す図であり、(A)は連結部を示す部分斜視図、(B)は斜方ノズルの斜視図、(C)は二方ノズルの斜視図、(D)は三方ノズルの斜視図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る冷暖房システムが備える区画部材の第1の変形例を示す図であり、(A)は表面図、(B)は側面図、(C)は裏面図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る冷暖房システムが備える区画部材の第2の変形例を示す図であり、(A)は表面図、(B)は側面図、(C)は裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0021】
まず
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る冷暖房システム100を説明する。
図1は、冷暖房システム100の概略構成を示す斜視図である。冷暖房システム100は、主として冷暖房対象室としての部屋Rの冷房又は暖房(以下「冷暖房」という。)を行うためのシステムである。冷暖房システム100は、部屋Rの輻射冷暖房に適した温度に調節した空気(温度調節済気体に相当し、以下「温調空気A」という。)の流路を部屋Rの裏側の空間Sに形成する本発明の実施の形態に係る流路部材システム10と、裏側空間Sを仕切る仕切部材20と、部屋Rと裏側空間Sとを区画する床パネル30と、温調空気Aを生成する温調機器61と、温調機器61から裏側空間Sへ温調空気Aを案内するダクト63とを備えている。温調空気Aは、典型的には、部屋Rの冷房時は冷やした空気、暖房時は暖めた空気となる。
図1に示す冷暖房システム100は、裏側空間Sの構成を示すために、床パネル30の一部を取り外した状態を示しているが、部屋Rが使用される際(冷暖房システム100が完成した際)には床パネル30が敷き詰められることとなる。以下、冷暖房システム100を構成する各要素を説明する。
【0022】
図2に、流路部材システム10の概略構成を示す。
図3に、
図2に示す流路部材システム10のうちの一部(一区画)を示す。流路部材システム10は、裏側空間Sにおいて温調空気Aの流路を形成するシステムであり、冷暖房用気体流路形成システムに相当する。流路部材システム10は、流路部材11と、支持脚15とを備えている。流路部材11は、温調空気Aの流路11f(気体流路に相当)を、床パネル30の裏面に沿って線状に延びるように形成するための部材であり、気体流路形成部材に相当する。流路11fは、本実施の形態では、正方形の外周を辿るような環状に形成されたものを基本単位として、複数が周囲に隣接して碁盤の目のように配列されつつ、隣接する正方形の辺を共有するようにして形成されている。ここでいう「環状」とは、線状の始点と終点とをつなげて連続させていれば足り、その外形が本実施の形態のように正方形であるもののほか、長方形等の矩形、菱形等の四角形や五角形あるいは六角形等の多角形でもよく、多角形以外の円や楕円であってもよく、典型的には床パネル30の輪郭に合わせた形とするとよい。
【0023】
流路11fは、本実施の形態では、専ら同一仮想平面上に形成されている点で、従来の大引鋼と根太鋼とを用いた場合のような交差する辺が段違いになるものとは異なっている。また、流路11fは、本実施の形態では、内部の温調空気Aの流れ方向に直交する断面形状が矩形になっている。流路部材11は、本実施の形態では開渠として構成されており、開け放たれた部分を床パネル30で塞ぐことによって流路11fが形成されるようになっており、換言すれば床パネル30と協働して流路11fを形成している。本実施の形態では、流路部材11は、基本単位の正方形の角の部分を構成するクロス流路部材12と、正方形の一辺の部分を構成するブリッジ流路部材13とを有している。
【0024】
図4(A)は、クロス流路部材12の斜視図である。クロス流路部材12は、流路11fの交差する部分を形成する部材であり、クロス流路形成部材に相当する。クロス流路部材12は、底板12tと側板12sとが組み合わさって形成されている。底板12t及び側板12sは、典型的には鋼板で形成されているが、樹脂板等で構成されていてもよい。底板12tは、矩形の四隅を小さな矩形で切り欠いて残った十字の形状を有している。底板12tは、十字の中央に、支持脚15が挿通される挿通孔(不図示)が形成されている。側板12sは、矩形の形状を有しており、底板12tを形成する際の大きな矩形から切り欠かれた小さな矩形の辺に対応する部分から、底板12tに直交して延びるように設けられている。側板12sは、合計8枚が、底板12tに対して同じ方向に延びている。クロス流路部材12は、側板12sの高さ(底板12tの面に直交する方向の長さ)であるクロス流路高さ12hが流路11fの高さに相当し、向かい合う側板12sの間の底板12tの幅であるクロス流路幅12wが流路11fの幅に相当することとなる。
【0025】
図4(B)は、ブリッジ流路部材13の斜視図である。ブリッジ流路部材13は、2つのクロス流路部材12の間を連絡する流路を形成する部材であり、ブリッジ流路形成部材に相当する。ブリッジ流路部材13は、底板13tと側板13sとを有している。ブリッジ流路部材13は、典型的にはクロス流路部材12と同じ材料で形成されているが、クロス流路部材12とは異なる材料で形成されていてもよい。底板13tは、細長い長方形に形成されている。側板13sは、細長い長方形に形成されており、底板13の長方形の一対の長辺のそれぞれから、底板13tに直交して延びるように設けられている。側板13sは、合計2枚が、底板13tに対して同じ方向に延びている。各側板13sは、長手方向の一方の端部に、係止片13kが設けられている。係止片13kは、側板13sに直交して外側(流路11fの反対側)に延びている。係止片13kは、クロス流路部材12の側辺12s(
図4(A)参照)の1つと概ね同じ大きさ(同じか一回り小さい大きさ)に形成されている。一対の側板13sにそれぞれ1つずつ設けられた係止片13kは、底板13tの長方形の対角に位置している。ブリッジ流路部材13は、側板13sの高さ(底板13tの面に直交する方向の長さ)であるブリッジ流路高さ13hが流路11fの高さに相当し、向かい合う側板13sの間の底板13tの幅であるブリッジ流路幅13wが流路11fの幅に相当することとなる。
【0026】
ブリッジ流路部材13には、側板13sに吹出口13fが形成されているものもある。吹出口13fは、ブリッジ流路部材13の開放されている上部が床パネル30(
図1参照)で塞がれたときに、流路11fの内部にある温調空気Aを床パネル30の裏面に沿って流路11fの外部へ放出するために形成された開口であり、放出口に相当する。吹出口13fは、本実施の形態では、側板13sの上辺(側板13sの、底板13tに接している長辺に対向する長辺)に、半円形状に切欠かれて形成されている。吹出口13fは、相互に隣接する吹出口13fから放出された温調空気A同士に重なり合う部分が生じる程度の距離を長手方向にあけて複数個(典型的には2個だが3個以上であってもよい)で1組を形成しつつ、ある組の各吹出口13fから放出された温調空気Aとこの組に隣接する組の各吹出口13fから放出された温調空気Aとが干渉しないように長手方向に間隔をあけて形成されている。吹出口13fがブリッジ流路部材13の長手方向の全体に対してどの位置に形成されるかは後述する。
【0027】
図4(C)は、支持脚15の分解斜視図である。なお、
図4(C)では、支持脚15とクロス流路部材12との位置関係を説明するために、支持脚15の構成部材に加えてクロス流路部材12を示している。支持脚15は、クロス流路部材12を支持すると共に床パネル30を支持することができる部材であり、支持部材に相当する。支持脚15は、典型的には建築物の床スラブに載置されて用いられ、全ねじ16と、ゴム17と、受板18と、支持板19とを有している。全ねじ16は、床スラブから床パネル30が設置される高さまでの長さを有しており、床スラブに垂直になるように配置されるものである。ゴム17は、全ねじ16の床スラブ側の一端に取り付けられ、全ねじ16と床スラブとの間のクッションとして機能する。受板18は、クロス流路部材12の底板12tが載置される部材であり、本実施の形態では、矩形の板状に形成されている。受板18は、概ね中央部に全ねじ16が通過できる孔18pが形成されており、受板ナット185に支持されている。受板ナット185は、全ねじ16に螺合されて受板18の下方に位置している。受板18は、全ねじ16に対する受板ナット185の位置を調節することにより、高さを調節することができるようになっている。クロス流路部材12は、受板18の上部で、クロス流路部材12の挿通孔(不図示)に全ねじ16を挿通することにより、支持脚15に取り付けられている。支持板19は、クロス流路部材12の上方に設けられている。支持板19は、概ね中央部に全ねじ16が通過できる孔19pが形成されている。支持板19は、全ねじ16に螺合されて支持板19の下方に位置する支持板ナット(不図示)に支持されている。支持板19は、全ねじ16に対する支持板ナット185の位置を調節することにより、高さを調節することができるようになっている。支持脚15は、全ねじ16を用いていることにより、クロス流路部材12の高さ及び支持板19の高さを、それぞれ、全ねじ16の長さ全体にわたって調節することができるようになっている。
【0028】
図3に示すような環状の流路部材11を構成するには、クロス流路部材12の底板12tの上に、ブリッジ流路部材13の一端の底板13tが載置されるように、クロス流路部材12にブリッジ流路部材13を組み込む。詳細には、ブリッジ流路部材13の一端の係止片13kが、クロス流路部材12の底板12tの上に載置されつつ、そのブリッジ流路部材13を挟んでいるクロス流路部材12の側板12sに連接している側板12sに流路11fの側から接する態様となっている。これを、クロス流路部材12の4つの開口のうちの必要な部分に対して行うと、
図3に示すような1つの正方形の外縁に沿った環状の流路11fを形成することができ、これをさらに拡張することでひいては
図2に示すような碁盤の目のように広がる流路11fの網を形成することができる。このとき、クロス流路部材12の間隔、すなわち支持脚15の間隔は、床パネル30を安定的に支持することができる間隔とするのが好ましく、この間隔に合わせてブリッジ流路部材13の長さを決定するとよい。あるいは、床パネル30の支持には必要であるがブリッジ流路部材13を設ける必要がない部分が存在する場合は、支持脚15から受板18及び受板ナット185を省いたうえで支持脚15にクロス流路部材12を組み込まないようにしてもよい。流路部材システム10では、クロス流路部材12及びブリッジ流路部材13の2種類の部材の組み合わせによって、任意の大きさの流路11fの網を形成することができ、構成を簡便にしつつ生成コストを抑制することができる。また、各クロス流路部材12の間に設置されるブリッジ流路部材13の基本構造が共通であるので、流路11fの幅が各所で均一となり、各所で圧力損失の差が生じることを抑制することができる。また、各所のブリッジ流路部材13が、クロス流路部材12の同じ高さにある4つの開口に組み込まれていることで、流路部材11が同一仮想平面上に広がることとなり、この構成も各所で圧力損失の差が生じることを抑制することに寄与している。
【0029】
流路部材11が床スラブに設置されるのに際し、クロス流路部材12が支持脚15によって床スラブから浮いた位置で支持されているので、流路部材11全体は床スラブから浮いており、換言すれば流路部材11全体と床スラブとの間に空間が形成されていることになる。
図2に示すような碁盤の目のように広がる流路部材11を有する流路部材システム10に、床パネル30を敷設することで、床パネル30と床スラブとの間に、空気等の流体が流通可能で床下チャンバとして機能する裏側空間Sが形成されることとなる。
【0030】
引き続き、
図1を主に参照し、適宜
図2~
図4を参照して、流路部材システム10以外の冷暖房システム100の構成を説明する。仕切部材20は、裏側空間Sを、供給空間SSと回収空間RSとに仕切るための部材である。供給空間SSは、温調機器61から供給された温調空気Aを、流路11fに流入させる前に導入する空間である。回収空間RSは、流路11fから、本実施の形態では吹出口13f(
図4(B)参照)を介して放出された温調空気Aが受け入れられる空間である。本実施の形態では、碁盤の目のように広がった流路部材11全体の、外周部分に供給空間SSが形成され、供給空間SSよりも内側の部分に回収空間RSが形成されている。仕切部材20は、板状の部材で形成されており、床スラブに載置されたときの上端が、支持脚15の支持板19の上面と同じ高さになるように構成されている。仕切部材20は、典型的には、床スラブの面が広がる方向に適宜の大きさで分割されたものがつなげられて構成されている。仕切部材20は、流路11fの内部には入り込んでおらず、流路部材11と干渉する部分は流路部材11を回避するように切り欠かれている。
【0031】
供給空間SSに配置されているクロス流路部材12のうちの最外部のものには、向かい合う側板12sに挟まれて形成された4つの流路11fのうち、ブリッジ流路部材13が組み込まれないで開口となっている部分があり、この開口部分が、供給空間SSから流路部材11に温調空気Aが流入する流入口121となっている。流入口121は、典型的には最外部に配置されているクロス流路部材12のすべてに形成されているが、任意の開口を塞いで流入口121の数を限定することとしてもよい。ブリッジ流路部材13に関し、前述した吹出口13fは、回収空間RSに面している側板13sに形成されている。吹出口13fは、各ブリッジ流路部材13について、長手方向で見たときに中央よりも一方の側に形成されており、本実施の形態では、流路11fから側板13s越しに回収空間RSの方を見たときの中央よりも右側に形成されている。このような構成により、1つのブリッジ流路部材13における吹出口13fを介して流路11f内から回収空間RSに放出された温調空気Aは、平面視における4つのブリッジ流路部材13で囲まれた正方形の回収空間RSの1/4の面積の部分に主として供給されることとなり、回収空間RSの外縁を構成する4つのブリッジ流路部材13の吹出口13fからそれぞれ放出された温調空気Aが協働して、1つの正方形の回収空間RS全体に温調空気Aを供給することとなる。
【0032】
床パネル30は、前述のように部屋Rと裏側空間Sとを区画するものであり、区画部材に相当する。床パネル30は、典型的には、床スラブに設置された流路部材11の隣り合うクロス流路部材12間の長さを一辺の長さとする矩形の板状に形成されている。床パネル30は、典型的には、フローリングやフリーアクセスフロア用のパネルが用いられ、仕上材と下地材とに分割可能に構成されている場合もある。床パネル30は、本実施の形態では、表面及び裏面共に、概ね平坦に形成されている。ここでいう平坦とは、床材として一般に平坦と認識される範囲であれば足り、例えばフローリングにおける複数の板材の接続部分に表れるわずかな隙間がある場合も平坦の範囲に含まれる。部屋Rの床面を構成する各床パネル30は、ほとんどが開口等の形成されていない全体を覆うことができるように構成されたものであるが、いくつかは、供給パネル30pと回収パネル30qとに交換されている。供給パネル30pは、ダクト63が接続されている開口が形成されたものであり、その開口が供給空間SSに連絡する位置に配置されている。回収パネル30qは、回収空間RSの空気を部屋Rに導くことができる開口である還流口30qhが形成されたものであり、その還流口30qhが回収空間RSに連絡する位置に配置されている。回収パネル30qの還流口30qhには、グリル(格子)が設置されている。
【0033】
温調機器61は、部屋Rの輻射冷暖房を行うことができる温度に調節した温調空気Aを生成する機器であり、温度調節機器に相当する。温調機器61は、典型的にはパッケージ型空調機が用いられるが、エアハンドリングユニットやルームエアコン等が用いられることとしてもよい。温調機器61は、本実施の形態では、部屋Rの外に配置されており、温調機器61で生成された温調空気Aがダクト63及び供給パネル30pを介して供給空間SSに導かれるように構成されている。なお、温調機器61は、部屋Rの中の供給パネル30pの近傍に設置されることとしてもよく、このとき、温調機器61から流出した温調空気Aを供給空間SSに直接供給できる場合は、ダクト63を設けなくてもよい。
【0034】
引き続き、
図1乃至
図4を参照して、流路部材システム10及び冷暖房システム100の作用を説明する。以下では、流路部材システム10の作用は、冷暖房システム100の作用の一環として説明する。温調機器61では、部屋Rを輻射冷暖房するのに適した温度(設定温度によるが、例えば、冷房時18~23℃、暖房時30~35℃)に調節された温調空気Aが生成される。輻射冷暖房は、一般に、対流のみによる冷暖房(温度調節された空気を冷暖房室内に供給して行う冷暖房)に比べて、温度調節された空気の温度と外気温との差が小さくなるように設計されるため、温調空気Aを生成するためのエネルギーが少なくて済む。温調機器61で生成された温調空気Aは、ダクト63及び供給パネル30pの開口を介して供給空間SSに流入する。供給パネル30pの開口から供給空間SSに流入した温調空気Aは、供給空間SS全体に拡散して行き、流入口121から流路部材11の内部に形成された流路11f内に流入する。流入口121から流路11f内に流入した温調空気Aは、碁盤の目のように広がる流路部材11を構成する各流路11fの幅が各所で均一で同じ高さにあることで圧力損失の差が生じることを抑制していることから、碁盤の目のように広がる流路部材11の流路11f全体に概ね均一に拡散して行く。
【0035】
流路11f全体に行き渡った温調空気Aは、吹出口13fから流出して回収空間RSに放出される。このとき、吹出口13fは、床パネル30と接する側板13sの上辺に形成されているので、床パネル30の裏面に沿って流れる。このように、温調空気Aが床パネル30の裏面に沿って流れるとき、温調空気Aは床パネル30に接触しながら流れて床パネル30に冷熱(冷房時)又は温熱(暖房時)を伝達する。このことにより、床パネル30は冷やされ又は温められる。ここで、吹出口13fを形成する切欠きの大きさは、流出した温調空気Aが床パネル30との間に形成される境膜(流体が相対運動をしている場合に相境界に存在する、層流状態が保たれている極薄い領域)を破壊する風速で流れる開口面積に形成するのが好ましい。一般に、床パネル30と温調空気Aの流れとの間に空気が滞留する境膜が存在すると表面熱伝達抵抗が大きくなって温調空気Aが保有する冷熱又は温熱が効率よく床パネル30に伝達されなくなるが、境膜を破壊することによって熱伝達率を向上させることができる。また、吹出口13fは、1つの組を構成する相互に隣接するものから放出された温調空気A同士が重なり合うように形成されているので、重なり合う部分の気流の速度が増加して、到達距離が延びると共に強制熱伝達が大きくなり、温調空気Aから床パネル30に伝達する熱量を増加させることができる。温調空気Aによって床パネル30が冷やされ又は温められると、冷やされ又は温められた床パネル30から部屋Rに冷熱又は温熱が輻射され、部屋Rの冷房又は暖房が行われる。
【0036】
床パネル30に冷熱又は温熱を伝達した温調空気Aは、冷房時は温度が上昇して暖房時は温度が低下している。床パネル30と熱交換して回収空間RSに存在する温調空気Aは、回収パネル30qに形成された還流口30qhを介して部屋R内に流入し、部屋R内を対流する。部屋R内に流入した温調空気Aは、床パネル30の温度と同等あるいは冷房時は床パネル30よりも低温で暖房時は床パネル30よりも高温であるので、部屋Rの冷暖房に寄与することとなる。還流口30qhを介して部屋Rに流入した温調空気Aは、その後、ドアガラリ(不図示)等から外部に流出する。外部に流出した分の温調空気Aは、温調機器61からダクト63及び供給パネル30pの開口を介して供給空間SSに流入し、以降、上述の作用を繰り返す。
【0037】
以上で説明したように、本実施の形態に係る冷暖房システムによれば、この冷暖房システムを構成する要素の1つである本実施の形態に係る流路部材システム10の流路11fが、正方形の環状に形成されたものが連なって碁盤の目のように広がると共に各所の幅が均一で同じ高さにあるので、吹出口13fから放出された温調空気Aからの熱伝達によって温度変化する床パネル30に温度むらが生じることを抑制することができ、部屋Rの概ね均一な冷暖房を行うことができる。また、流路部材11は、その構成部材であるクロス流路部材12及びブリッジ流路部材13がそれぞれ基本的に共通の部材で形成されていてこれらを組み合わせて構成されているので、構成を簡便にしつつ生成コストを抑制することができる。
【0038】
次に
図5を参照して、変形例に係るブリッジ流路部材13Aを説明する。
図5(A)は、ブリッジ流路部材13Aの部分斜視図であり、側板13sの一部を示している。ブリッジ流路部材13Aでは、前述のブリッジ流路部材13(
図4(B)参照)において側板13sに半円形状で形成されていた吹出口13f(
図4(B)参照)の代わりに、連結部70が設けられている。連結部70は、側板13sの上辺から底板13tの方に向けて矩形に切り欠いて形成された連結孔71を含んでいる。連結孔71は、本実施の形態では、底板13tまでは到達しておらず、ブリッジ流路高さ13hの概ね1/2~2/3の深さ分が切り込まれている。連結孔71の左右両側(ブリッジ流路部材13Aの長手方向両隣)には、連結ガイド72が形成されている。連結ガイド72は、後述する部品を連結部70に取り付けるためのスリット(細長い切り込み)である。連結ガイド72は、連結孔71と同じ深さに形成されている。連結部70は、前述のブリッジ流路部材13(
図4(B)参照)に形成された吹出口13fの1組が、連結部70の1つに対応するため、
図5(A)では1つの連結部70のみを示しているが、典型的にはブリッジ流路部材13(
図4(B)参照)に形成されている吹出口13fの組の数と同数の連結部70がブリッジ流路部材13Aに形成されている。
【0039】
図5(B)は、連結部70に取り付けられる部品の一例である斜方ノズル73の斜視図である。斜方ノズル73は、ノズル部73nを含む塞板73cと、レール73rとを有している。塞板73cは、斜方ノズル73を連結部70に取り付けたときに連結孔71が塞がるように、連結孔71と概ね同じ大きさに形成されている。塞板73cに設けられているノズル部73nは、塞板73cが切り込まれて形成された矩形の開口を囲む一対の脇板73eと1枚の斜板73sとで構成されている。一対の脇板73eは、塞板73cの左右の辺に平行で、塞板73cの面に直交して延びている。斜板73sは、一対の脇板73eの間の空間の下方に設けられている。ノズル部73nは、典型的には、矩形の薄板に対して、上辺から下方に垂直に延びる切り込みを、水平方向に間隔をあけて一対形成し、この一対の切り込みの下端同士を結んだ仮想直線で切り込みに挟まれた部分を外側に(例えば30°や45°等で)折り曲げ、この折り曲げた部分を斜板73sとし、斜板73sを折り曲げたことによって生じた塞板73cと斜板73cとの隙間を塞ぐように一対の脇板73eを取り付けた態様で構成されている。このように構成されたノズル部73nは、塞板73cの側から先端の側に進むにつれて、断面の開口面積が小さくなるように形成されており、塞板73cに対して最遠部分において吐出口73pが形成されている。吐出口73pは、放出口に相当する。この構成により、ノズル部73nの吐出口73pから放出される気体が噴流となるように構成されている。レール73rは、細長い部材でその断面がL字状に構成され、塞板73cの左右両側にそれぞれ設けられている。塞板73cの左右両側に設けられた一対のレール73rの間隔は、連結部70に設けられている一対の連結ガイド72の間隔に等しい。ここでの斜方ノズル73の説明では、便宜上、塞板73cとレール73rとに分けて説明しているが、典型的には、1枚の薄板が折り曲げられて一体に形成されている。レール73rと塞板73cとの間に形成された隙間は、ブリッジ流路部材13Aの側板13sの厚さと概ね同じになっている。斜方ノズル73を連結部70に取り付けるには、塞板73cの吐出口73pが形成された側とは反対側の辺を、ブリッジ流路部材13Aの側板13sの上辺に対向するように配置し、一対のレール73rを、連結ガイド72の一対のスリットに嵌め込んで、斜方ノズル73を底板13tに近づけていくことで行われる。
【0040】
図5(C)は、連結部70に取り付けられる部品の別の例である二方ノズル75Aの斜視図である。二方ノズル75Aは、ノズル部75nを含む塞板75cと、レール75rとを有している。二方ノズル75Aは、斜方ノズル73(
図5(B)参照)と比較して、斜方ノズル73で設けられていたノズル部73n(
図5(B)参照)に代えて、半割状の短管を複数有するノズル部75nが設けられている点が異なっている。したがって、二方ノズル75Aの塞板75cは斜方ノズル73の塞板73cに相当し、二方ノズル75Aのレール75rは斜方ノズル73のレール73rと同じ構成となっている。二方ノズル75Aの塞板75cは、吹出口13f(
図4(B)参照)と同様の半円状の切欠きが上辺に形成されており、その切欠きから塞板75cの面に垂直に延びるように半割状の短管が取り付けられている。この半割状の短管の先端は、放出口に相当する。このように構成された二方ノズル75Aは、斜方ノズル73(
図5(B)参照)と同様の要領でブリッジ流路部材13Aに取り付けられる。二方ノズル75Aが取り付けられたブリッジ流路部材13Aでは、流路11fから回収空間RSに向けて流出する温調空気Aが、ノズル部75nの半割管によって流路が制限された後に回収空間RSに流出するので、吹出口13fから放出された温調空気Aに比べて、指向性が増し、到達距離が長くなって、効率的な冷暖房を行うことができる。
【0041】
図5(D)は、連結部70に取り付けられる部品のさらに別の例である三方ノズル75Bの斜視図である。三方ノズル75Bは、二方ノズル75A(
図5(C)参照)の構成に加えて、ノズル部75nの下方に斜管75sが加えられている点で、二方ノズル75Aと異なっている。斜管75sは、ノズル部75nを構成する半割管と同程度の直径を有する短管で構成されており、塞板75cから離れるに連れてノズル部75nの半割管に近づくように塞板75cの面に対して斜めに取り付けられている。斜管75sは、塞板75cに対して約30°~45°の角度で傾いている。三方ノズル75Bでは、半割状の短管の先端に加えて斜管75sの先端も放出口に相当する。このように構成された三方ノズル75Bは、斜方ノズル73(
図5(B)参照)及び二方ノズル75A(
図5(C)参照)と同様の要領でブリッジ流路部材13Aに取り付けられる。三方ノズル75Bが取り付けられたブリッジ流路部材13Aでは、流路11fから回収空間RSに向けて流出する温調空気Aが流出する際に、ノズル部75nの半割管から指向性が増加して流出した温調空気Aと、斜管75sから流出した温調空気Aと、に重なりが生じ、指向性を増加させながら強制熱伝達を大きくすることができて、温調空気Aから床パネル30に伝達する熱量を増加させることができる。なお、前述の、斜方ノズル73、二方ノズル75A、三方ノズル75Bは、典型的には、樹脂成型品又は金属プレス品で構成されている。
【0042】
次に
図6を参照して第1の変形例に係る床パネル30Aを説明する。
図6(A)は床パネル30Aの表面図、
図6(A)は床パネル30Aの側面図、
図6(A)は床パネル30Aの裏面図である。床パネル30Aは、典型的には、冷暖房システム100(
図1参照)において床パネル30(
図1参照)の代わりに設置されるものである。床パネル30Aは、床パネル30(
図1参照)の裏面(裏側空間Sに面する面)に、複数の細長い案内溝33を形成して構成されたものとなっている。案内溝33は、本実施の形態では、矩形のパネルの各辺から対向する辺に向かって当該対向する辺までの距離の約半分の位置まで延び、かつ、床パネル30Aを支持脚15に載置した状態で始点となる辺から対向する辺を見たときに当該始点となる辺の中央よりも右側に形成されている。このため、床パネル30Aを側面から見たときに、当該始点となる辺の端面には中央よりも右側に複数の案内溝33の端部が表れていることとなる(
図6(B)参照)。このような構成により、案内溝33は、矩形の床パネル30Aを相似形で4等分したそれぞれに、隣接した部分に対しては直交する方向に延びるように、形成されている。このように構成された床パネル30Aを、床パネル30に代えて冷暖房システム100に組み込んだときは、ブリッジ流路部材13に吹出口13f(
図4(B)参照)が形成されていなくてもよい(し、吹出口13fが形成されていてもよい)。ブリッジ流路部材13に吹出口13fが形成されていない場合でも、床パネル30Aを支持脚15に載置すると、ブリッジ流路部材13の側板13sの上辺とこれに接した床パネル30Aとの間には、案内溝33の部分に隙間が形成されることとなる。冷暖房システム100が作動した際、流路11fを流れる温調空気Aは、案内溝33の部分の隙間を介して流路11fから回収空間RSに流出し、その後、対向する辺に向かって延びる案内溝33を辿って床パネル30Aの裏面に沿って流れることとなる。このように、床パネル30Aが採用されている場合は、温調空気Aが案内溝33を辿って流れるので、温調空気Aが拡散するのが抑制されて速い流速を維持することができ、床パネル30Aへの熱伝達を大きくすることができる。
【0043】
図7(A)は第2の変形例に係る床パネル30Bの表面図、
図7(B)は床パネル30Bの側面図、
図7(C)は床パネル30Bの裏面図である。床パネル30Bは、床材となるパネルが仕上材と下地材とで構成される際の下地材となる部材であり、仕上材39(
図7(B)参照)と接する面(回収空間RSに面する面の裏側の面)に、床パネル30A(
図6参照)に形成されるのと同様の案内溝33の群が形成されている。そして、床パネル30Bでは、案内溝33の始点となる辺の側とは反対側の案内溝33の端部において、裏側の面に貫通する貫通孔33hが形成されている。また、本実施の形態では、始点となる辺の側の案内溝33の端部においても、裏側の面に到達するように案内溝33が延びている。すなわち、本実施の形態では、床パネル30Bを裏側(案内溝33が形成されている面の裏側)から見ると、表面に形成されている案内溝33の両端に対応する位置で、案内溝33に通じる空間(隙間)が表れている。このように構成された床パネル30Bを、床パネル30に代えて冷暖房システム100に組み込んだときは、ブリッジ流路部材13に吹出口13f(
図4(B)参照)が形成されないようにするとよい。吹出口13fが形成されないようにすると、流路11f内の温調空気Aが回収空間RSに流出するために、仕上材39に覆われた案内溝33を通過することになり、温調空気Aが保有する冷熱又は温熱を効率よく部屋Rの床材となるパネルに伝達することができる。
【0044】
以上の説明では、流路部材11が開渠として構成されていて床パネル30と協働して流路11fを形成しているとしたが、流路部材11が暗渠に構成されていて単独で(床パネル30の助けを借りずに)流路11fを形成してもよい。流路部材11が暗渠に構成されている場合、流路部材11を床パネル30に接触させて流路11fを流れる温調空気Aから流路部材11を介して床パネル30に熱伝達させるようにするとよい。また、吹出口13fは、切欠きではなく側板13sを貫通させればよい。
【0045】
以上の説明では、流路部材システム10において、流路部材11を構成する環状の1単位が矩形に形成されていて、これを碁盤の目のように連結させることで流路部材11の全体を構成することとしたが、1単位の環状を六角形で形成して全体として蜂の巣状に形成してもよく、あるいは1単位の環状を菱形や適切な多角形で形成してこれらを各辺を共有させて連結させることとしてもよい。また、以上の説明では、それぞれの環状の1単位が同じ大きさであるとしたが、冷暖房負荷が大きくなるペリメータゾーンや発熱機器が集中する領域には流路11fが比較的密になるように構成し、冷暖房負荷が少ない場合は流路11fが比較的疎になるように構成してもよい。このとき、ブリッジ流路部材13がまったく関与しない支持脚15にはクロス流路部材12を設けなくてよく、ブリッジ流路部材13が例えばクロス流路部材12の4つの端部のうちの2箇所に接続される場合は残りの2箇所の端部を閉塞すればよい。
【0046】
以上の説明では、碁盤の目のように広がった流路部材11全体の、外周部分に供給空間SSが形成され、供給空間SSよりも内側の部分に回収空間RSが形成されていることとしたが、供給空間SS及び回収空間RSの大きさ及び配置は、状況に応じて適宜変更することができる。
【0047】
以上の説明では、供給空間SSから流路部材11内の流路11fに温調空気Aが入るための流入口121が、最外部に配置されているクロス流路部材12に形成されているとしたが、これに限らず、例えば供給空間SSに位置する部分のブリッジ流路部材13の側板13sに形成されていてもよい。
【0048】
以上の説明では、区画部材が床パネル30であるとしたが、床以外の部屋Rを区画する壁や天井等にも採用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 流路部材システム
11 流路部材
11f 流路
12 クロス流路部材
13 ブリッジ流路部材
13f 吹出口
15 支持脚
20 仕切部材
30 床パネル
33 案内溝
61 温調機器
100 冷暖房システム
121 流入口
A 温調空気
R 部室
S 裏側空間
RS 回収空間
SS 供給空間