IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 丸一株式会社の特許一覧

特許7549308配管・配線用カバー及び配管・配線の施工方法
<>
  • 特許-配管・配線用カバー及び配管・配線の施工方法 図1
  • 特許-配管・配線用カバー及び配管・配線の施工方法 図2
  • 特許-配管・配線用カバー及び配管・配線の施工方法 図3
  • 特許-配管・配線用カバー及び配管・配線の施工方法 図4
  • 特許-配管・配線用カバー及び配管・配線の施工方法 図5
  • 特許-配管・配線用カバー及び配管・配線の施工方法 図6
  • 特許-配管・配線用カバー及び配管・配線の施工方法 図7
  • 特許-配管・配線用カバー及び配管・配線の施工方法 図8
  • 特許-配管・配線用カバー及び配管・配線の施工方法 図9
  • 特許-配管・配線用カバー及び配管・配線の施工方法 図10
  • 特許-配管・配線用カバー及び配管・配線の施工方法 図11
  • 特許-配管・配線用カバー及び配管・配線の施工方法 図12
  • 特許-配管・配線用カバー及び配管・配線の施工方法 図13
  • 特許-配管・配線用カバー及び配管・配線の施工方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】配管・配線用カバー及び配管・配線の施工方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 57/00 20060101AFI20240904BHJP
   F16L 5/00 20060101ALI20240904BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
F16L57/00 A
F16L5/00 Z
H02G3/22
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020122525
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2021095992
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2019228087
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】永原 徹
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕史
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-180453(JP,A)
【文献】特開2018-059589(JP,A)
【文献】実開平05-050272(JP,U)
【文献】国際公開第2016/152247(WO,A1)
【文献】特開2000-257755(JP,A)
【文献】米国特許第03351361(US,A)
【文献】特開2017-125585(JP,A)
【文献】実開昭62-069684(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0148654(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 57/00
F16L 5/00
H02G 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁に形成された貫通孔に対して取り付けられて前記貫通孔を閉塞する配管・配線用カバーであって、
配管・配線を覆う、可撓性を有する筒状のシート材からなるカバー部材と、
前記貫通孔に対して前記カバー部材を取り付ける略筒状の固定部材と、
前記カバー部材を締め付ける締結部材とを備え
前記固定部材は前記貫通孔との間を閉塞し、
前記カバー部材は両端が開口されており、一方の開口は前記固定部材に取り付けられて前記貫通孔に固定されるとともに、他方の開口は前記配管又は前記配線が挿通された状態で前記締結部材によって締め付けられることで前記配管又は前記配線との間を閉塞することを特徴とする配管・配線用カバー。
【請求項2】
前記配管・配線用カバーは、
建物の壁面に取り付けられ、
前記カバー部材は前記壁面よりも外側において前記配管・配線を覆うことを特徴とする請求項1に記載の配管・配線用カバー。
【請求項3】
前記配管・配線用カバーは、
建物の壁面に取り付けられ、
前記カバー部材は前記壁面よりも内側において前記配管・配線を覆うことを特徴とする請求項1に記載の配管・配線用カバー。
【請求項4】
前記固定部材は、
端部に前記貫通孔を閉塞する蓋部を取り付け可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の配管・配線用カバー。
【請求項5】
前記固定部材は、
前記貫通孔に対して取り付けられる外管と、
前記外管の内側に配置される内管から成り、
前記カバー部材は前記外管と前記内管によって挟持されることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載の配管・配線用カバー。
【請求項6】
前記カバー部材は、
前記配管又は前記配線が挿通されるまでの間、
端部が前記貫通孔の軸と略同一方向に向けて開口する状態が維持されることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載の配管・配線用カバー。
【請求項7】
請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載の配管・配線用カバーを用いた配管・配線の施工方法であって、
壁に形成された前記貫通孔に対して前記固定部材を取り付け、前記カバー部材の一端を前記貫通孔に固定する工程と、
前記カバー部材の他端を前記貫通孔の軸方向に向けて開口させた状態で前記配管・配線を前記カバー部材に挿通する工程と、
前記カバー部材を前記締結部材によって締め付ける工程を有することを特徴とする配管・配線の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁面に形成された貫通孔に対して取り付けられる配管・配線用カバー、及び配管・配線の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷媒管等の配管や電線等の配線は、建物の内壁・外壁に形成された貫通孔に対して取り付けられることがある。
例えば、エアコンを設置する際には、室内機と室外機を冷媒管で接続するために、建物の内壁と外壁に貫通孔を形成し、当該貫通孔に冷媒管を挿通する。
【0003】
ここで、上記貫通孔に対して配管・配線が取り付けられた際、貫通孔より屋内に雨水や害虫が侵入してしまう恐れがある。特に、貫通孔が屋内側に向けて傾斜するように開口されている場合には、壁面を伝う雨水が貫通孔を通じて屋内側に侵入しやすい。
尚、パテ等によって貫通孔と配管・配線との隙間を埋めることで雨水や害虫の侵入を防ぐ方法が知られているが、当該方法は煩雑であるとともに、貫通孔と配管・配線との間を完全に埋めることは困難であった。又、特許文献2のように、貫通孔に対して保護カバーが設けられている場合があるが、当該保護カバーは基台に対して蓋体が係合することで取り付けられているだけの簡易な構造が多く、貫通孔への雨水の流入を確実に防止することは困難であった。
【0004】
又、建物の屋内が負圧である場合、内壁と外壁の間の空間より、室内に空気が流入することがあり、不快であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-125585号公報
【文献】特開2009-133394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題に鑑み、貫通孔からの雨水や害虫、空気等の侵入を防止する配管・配線用カバーの提供と、配管・配線の施工方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の本発明は、壁に形成された貫通孔に対して取り付けられて前記貫通孔を閉塞する配管・配線用カバーであって、
配管・配線を覆う、可撓性を有する筒状のシート材からなるカバー部材と、
前記貫通孔に対して前記カバー部材を取り付ける略筒状の固定部材と、
前記カバー部材を締め付ける締結部材とを備え
前記固定部材は前記貫通孔との間を閉塞し、
前記カバー部材は両端が開口されており、一方の開口は前記固定部材に取り付けられて前記貫通孔に固定されるとともに、他方の開口は前記配管又は前記配線が挿通された状態で前記締結部材によって締め付けられることで前記配管又は前記配線との間を閉塞することを特徴とする配管・配線用カバーである。

【0008】
尚、「配管」とは給湯用配管やエアコン用の冷媒管等を指し、「配線」とは電線やケーブル等を指す。
【0009】
請求項2に記載の本発明は、前記配管・配線用カバーは、
建物の壁面に取り付けられ、
前記カバー部材は前記壁面よりも外側において前記配管・配線を覆うことを特徴とする請求項1に記載の配管・配線用カバーである。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、前記配管・配線用カバーは、
建物の壁面に取り付けられ、
前記カバー部材は前記壁面よりも内側において前記配管・配線を覆うことを特徴とする請求項1に記載の配管・配線用カバーである。
【0011】
請求項4に記載の本発明は、前記固定部材は、
端部に前記貫通孔を閉塞する蓋部を取り付け可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の配管・配線用カバーである。
【0012】
請求項5に記載の本発明は、前記固定部材は、
前記貫通孔に対して取り付けられる外管と、
前記外管の内側に配置される内管から成り、
前記カバー部材は前記外管と前記内管によって挟持されることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載の配管・配線用カバーである。
【0013】
請求項6に記載の本発明は、前記カバー部材は、
前記配管又は前記配線が挿通されるまでの間、
端部が前記貫通孔の軸と略同一方向に向けて開口する状態が維持されることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載の配管・配線用カバーである。
【0014】
請求項7に記載の本発明は、請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載の配管・配線用カバーを用いた配管・配線の施工方法であって、
壁に形成された前記貫通孔に対して前記固定部材を取り付け、前記カバー部材の一端を前記貫通孔に固定する工程と、
前記カバー部材の他端を前記貫通孔の軸方向に向けて開口させた状態で前記配管・配線を前記カバー部材に挿通する工程と、
前記カバー部材を前記締結部材によって締め付ける工程を有することを特徴とする配管・配線の施工方法である。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明によれば、カバー部材によって貫通孔が覆われることにより、貫通孔に対する防水・防虫等が可能となる。又、カバー部材が締結部材によって締め付けられることによって、確実に防水・防虫等を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の施工状態を示す断面図である。
図2】配管・配線用カバーの構成を示す分解斜視図である。
図3】配管・配線用カバーを示す(a)断面図、(b)(a)のA部拡大図である。
図4】配管・配線の施工過程を示す断面図である。
図5図1のA-A’断面図である。
図6】第二実施形態の施工状態を示す断面図である。
図7】第三実施形態の配管・配線用カバーの施工状態を示す概略図である。
図8】第三実施形態の施工状態を示す断面図である。
図9】配管・配線用カバーの構成を示す分解斜視図である。
図10】配管・配線用カバーを示す(a)断面図、(b)(a)のA部拡大図である。
図11】配管・配線が挿通されていない状態を示す断面図である。
図12】第四実施形態を示す断面図である。
図13】第五実施形態を示す断面図である。
図14】第六実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。尚、以下に記載する説明は実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって発明が制限して理解されるものではない。
【0019】
第一実施形態における配管・配線はエアコンの室内機と室外機を接続する冷媒管1であり、図1に示す壁100に施工されている。
壁100は外側において、室外機が地上に設置されているとともに、屋内側の壁面には室内機が固定されている。当該室外機と室内機は、貫通孔11を通じて冷媒管1によって接続されている。
貫通孔11は壁100を貫通する開口であり、円筒状のスリーブ管2が設置されている。尚、本実施形態において、貫通孔11及びスリーブ管2の軸Cは略水平方向に延びている。
冷媒管1は室内機と室内機を接続すると共に、冷媒を運搬することによって室内の熱を放出、又は室外の熱を室内に取り込む配管であって、2本の銅管がそれぞれ断熱材によって被覆されることで形成されている。又、施工完了時において、冷媒管1の周囲にはパテ3が取り付けられている。
【0020】
上記貫通孔11に取り付けられた、冷媒管1に使用される本発明の配管・配線用カバーは、図1乃至図4に示すように、カバー部材4と、固定部材5と、締結部材6より構成されており、保護カバーとしても機能する化粧部材7によって覆われている。又、本実施形態において、カバー部材4は壁100の壁面よりも外側において配管・配線を覆う。
カバー部材4は可撓性を有する塩ビ製の筒状のシート材であって、図4に示すように、貫通孔11に固定された状態において、端部が貫通孔11と略同一方向に向けて開口する状態が維持される程度の硬度を有している。
固定部材5は上記カバー部材4を貫通孔11に固定する部材であって、貫通孔11に対して取り付けられる外管51と、外管51の内側に配置される内管55から構成されている。外管51は貫通孔11の内径と略同一の外径を有する筒状体であって、外側面の端部には外側に向けて突設された外鍔部52が形成されている。又、外管51の内側面には内側に向けて突出する、係合部としての凸条53が全周に沿って形成されている。内管55は外管51の内径と略同一の外径を有する筒状体であって、内側面の端部には外側に向けて突設された係止部56が形成されている。又、内管55の外側面には内側に向けて陥没する被係合部としての凹溝57が全周に沿って形成されている。
尚、上記凸条53と凹溝57はそれぞれ外管51と内管55の全周に亘って形成されおり、上記外管51と内管55が貫通孔11に取り付けられた状態において、凸条53と凹溝57の間にカバー部材4を挟持しつつ係合している。
締結部材6はカバー部材4を締め付ける結束バンドである。尚、締結部材6は結束バンドの他に、紐や粘着テープ等であっても良い。
【0021】
化粧部材7は硬質の樹脂から形成されており、壁面に固定される基台71と、基台71と係合する蓋体72から構成され、冷媒管1や配管・配線用カバーを内部に収容して保護するとともに、意匠性を向上させる。
【0022】
第一実施形態に係る配管・配線用カバーは、以下のように施工される。
【0023】
最初に、カバー部材4の端部を外管51の内側に配置した状態で、内管55に形成された係止部56が外管51の端部に当接するまで、内管55を外管51に挿入する。この時、外管51に形成された凸条53が内管55に形成された凹溝57に係合するとともに、凸条53と凹溝57の間にカバー部材4が挟持されることによって、固定部材5に対してカバー部材4が水密に取り付けられる。
次に、外管51の外側面に接着剤を塗布し、外鍔部52が壁面に当接するまで、外管51をスリーブ管2に対して挿入する。この時、図4に示すように、カバー部材4の端部は貫通孔11の軸Cに対して略同一方向に向けて開口し、その状態が維持されている。
次に、壁100の内側より貫通孔11に冷媒管1を通し、屋外側へと露出させる。この時、カバー部材4の端部は貫通孔11の軸Cと同一方向に向けて開口していることから、冷媒管1を取り付けた際において、冷媒管1の端部がカバー部材4を突き破ってしまうことを防ぐことが出来る。
次に、冷媒管1の周囲に粘土状のパテ3を取り付ける。
次に、カバー部材4、及び冷媒管1を下方に向けて屈曲させ、パテ3が取り付けられた位置においてカバー部材4を締結部材6によって締め付ける。この時、図5に示すように、締結部材6の締め付けによってパテ3が変形し、冷媒管1同士の隙間や冷媒管1とカバー部材4の間の隙間が埋められる。
最後に、壁面に取り付けられた基台71に対して蓋体72を係合させることによって、冷媒管1及び配管・配線用カバーを化粧部材7内に収納する。
【0024】
以下に、本発明の第二実施形態について説明する。又、上記第一実施形態と同一の部材や構造については、特に断りのない限りにおいて、第一実施形態と同一の番号を付してその説明を省略する。
【0025】
第二実施形態における配管・配線は屋外に配設される照明器具8に接続される電線9であり、図6に示す壁100に施工されている。
壁100は屋外側の壁面において照明器具8が取り付けられているとともに、当該照明器具8との間にはコーキング材(図示せず)が塗布されている。又、壁100には貫通孔11が形成されており、当該貫通孔11にはスリーブ管2が設置されている。
電線9は壁100の内側において、上方から延設されているとともに、貫通孔11にて屈曲し、照明器具8と接続されている。
【0026】
第二実施形態に係る配管・配線用カバーは、以下のように施工される。
【0027】
最初に、カバー部材4の端部を外管51の内側に配置した状態で、内管55に形成された係止部56が外管51の端部に当接するまで、内管55を外管51に挿入する。この時、外管51に成形された凸条53が内管55に形成された凹溝57と係合するとともに、凸条53と凹溝57の間にカバー部材4が挟持されることによって、固定部材5に対してカバー部材4が水密に取り付けられる。
次に、外管51の外側面に接着剤を塗布し、外鍔部52が壁100の内側の壁面に当接するまで、外管51をスリーブ管2に対して挿入する。
次に、壁100の内側より、カバー部材4を通じて貫通孔11に電線9を通し、屋外側へと露出させる。
次に、電線9の周囲に粘土状のパテ3を取り付ける。
次に、パテ3が取り付けられた位置においてカバー部材4を締結部材6によって締め付ける。この時、締結部材6の締め付けによってパテ3が変形し、電線9の隙間や電線9とカバー部材4の間の隙間が埋められる。
最後に、電線9と照明器具8を接続すると共に、照明器具8の周囲の内、下面を除いてコーキング材(図示せず)を塗布する。このようにすることで、照明器具8と壁100の間に雨水が侵入することを更に防ぐことが可能であると共に、もし雨水が流入した場合には、コーキング材が塗布されていない下面より、流入した雨水を排出することが可能となる。尚、上記構成では、貫通孔11内やスリーブ管2内には屋外側から雨水が侵入する場合があるが、発明の目的は雨水が屋内側に侵入することを防止することであって、屋内側に雨水が侵入しないのであれば、貫通孔11内やスリーブ管2内に雨水等が侵入しても何ら問題は無い。
【0028】
次に、本発明の第三実施形態について説明する。尚、上記第一実施形態及び第二実施形態において、配管・配線用カバーは壁100の壁面よりも外側、即ち屋外側の壁面に取り付けられていたが、本実施形態における配管・配線用カバーは壁100の壁面よりも内側、即ち屋内側の壁面に取り付けられて、室内への空気や害虫等の侵入を防ぐことを目的としている。又、上記第一実施形態と同一の部材や構造については、特に断りのない限りにおいて、第一実施形態と同一の番号を付してその説明を省略する。
【0029】
第三実施形態における配管・配線は上記第一実施形態と同様、エアコンの室内機と室外機を接続する冷媒管1であり、図7及び図8に示す壁100に施工されている。
図7に示すように、壁100は内壁100aと外壁100bより構成されており、当該内壁100aと外壁100bの間には冷媒管1が配設される空間が形成されている。又、壁100は外壁100bの外側において、室外機200が地上に設置されているとともに、内壁100aの屋内側の壁面には室内機300が固定されている。当該室外機200と室内機300は、貫通孔11を通じて冷媒管1によって接続されている。
貫通孔11は壁100の内壁100aを貫通する開口であり、円筒状のスリーブ管2が設置されている。尚、本実施形態において、貫通孔11及びスリーブ管2の軸Cは略水平方向に延びている。
【0030】
上記貫通孔11に取り付けられた、冷媒管1に使用される本発明の配管・配線用カバーは、図9及び図10に示すように、カバー部材4と、固定部材501と、締結部材6より構成されており、保護カバーとしても機能する化粧部材7によって覆われている。
カバー部材4は可撓性を有する塩ビ製の筒状のシート材であって、貫通孔11に固定された状態において、端部が貫通孔11と略同一方向に向けて開口する状態が維持される程度の硬度を有している。
固定部材501は上記カバー部材4を貫通孔11に固定する部材であって、貫通孔11に対して取り付けられる外管511と、外管511の内側に配置される内管551から構成されている。外管511は貫通孔11の内径と略同一の外径を有する筒状体であって、外側面の端部には外側に向けて突設された外鍔部521が形成されている。又、外管511の内側面には内側に向けて突出する、係合部としての凸条531が全周に沿って形成されているとともに、内側面の端部には後述する蓋部10と螺合する雌螺子58が形成されている。内管551は外管511の内径と略同一の外径を有する筒状体であって、外側面の端部には外側に向けて突設された係止部561が形成されている。又、内管551の外側面には内側に向けて陥没する被係合部としての凹溝571が全周に沿って形成されている。
尚、上記凸条531と凹溝571はそれぞれ外管511と内管551の全周に亘って形成されている。又、上記外管511と内管551は貫通孔11に取り付けられた状態において、凸条531と凹溝571の間にカバー部材4を挟持しつつ係合している。
締結部材6はカバー部材4を締め付ける結束バンドである。尚、締結部材6は結束バンドの他に、紐や粘着テープ等であっても良い。
【0031】
第三実施形態に係る配管・配線用カバーは、以下のように施工される。
【0032】
最初に、カバー部材4の端部を外管511の内側に配置した状態で、内管551に形成された係止部561が外管511の端部に当接するまで、内管551を外管511に挿入する。この時、外管511に形成された凸条531が内管551に形成された凹溝571に係合するとともに、凸条531と凹溝571の間にカバー部材4が挟持されることによって、固定部材501に対してカバー部材4が取り付けられる。又、カバー部材4の端部を固定部材501の外鍔部521側端部に引き出しておく。
次に、外管511の外側面に接着剤を塗布し、外鍔部521が壁面に当接するまで、外管511をスリーブ管2に対して挿入する。この時、カバー部材4の端部は貫通孔11の軸Cに対して略同一方向に向けて開口し、その状態が維持されている。
次に、貫通孔11に冷媒管1を挿通する。
次に、冷媒管1の周囲に粘土状のパテ3を取り付ける。
次に、パテ3が取り付けられた位置においてカバー部材4を締結部材6によって締め付ける。この時、締結部材6の締め付けによってパテ3が変形し、冷媒管1同士の隙間や冷媒管1とカバー部材4の間の隙間が埋められる。
最後に、壁面に取り付けられた基台71に対して蓋体72を係合させることによって、室内に露出する冷媒管1及び配管・配線用カバーを化粧部材7内に収納し、意匠性を向上させる。
【0033】
上記第三実施形態においては、エアコンの配管が未施工である等、冷媒管1が挿通されていない状態において、図11に示すように、固定部材501の端部を蓋部10によって閉塞することができる。蓋部10は雄螺子101が外周に螺刻されており、内管551の内側に形成された雌螺子58と螺合することで固定部材501の端部に配置されたパッキンと当接し、室内への空気や害虫等の侵入を防ぐと共に、貫通孔11を隠蔽し、意匠性を向上させる。尚、蓋部10と固定部材501との取り付けは螺子に限られるものではなく、係合その他の方法であっても良い。
上記蓋部10によって固定部材501の端部が閉塞されている状態において、カバー部材4は固定部材501内に収納されており、配管時には固定部材501より引き出されて使用可能となっている。尚、蓋部10の裏面に締結部材6や施工説明書を取り付けておいても良い。このようにすることによって、配管・配線の施工を行う際に新たに部材や施工説明書を調達する必要がなく、利便性が向上する。
【0034】
本発明の実施形態は以上であるが、本実施形態においては、貫通孔からの雨水や空気、害虫等の侵入をカバー部材によって防止していることから、パテや化粧部材による水密性に依存しない。従って、確実に貫通孔からの屋内側への雨水等の侵入を防ぐことが可能となる。貫通孔が屋内側に向けて傾斜するように形成されていたとしても、問題なく屋内側への雨水の侵入を防ぐことができる。
更に、粘土質のパテを締結部材によって変形させることにより、確実に配管・配線同士の隙間や配管・配線とカバー部材の隙間を埋め、害虫等の侵入を防ぐことが可能となる。
又、外管と内管に形成された凸条及び凹溝によって、カバー部材が全周に亘って隙間なく挟持されることから、カバー部材と固定部材の間を確実に水密とすることが可能となる。
又、第一実施形態において、カバー部材は貫通孔に取り付けられた状態において、配管・配線が挿通されるまでの間、端部が貫通孔の軸と略同一方向に向けて開口していることにより、配管・配線が挿通される際にカバー部材が破れてしまうことがない。尚、上記第一実施形態においては、カバー部材が破れてしまった場合であっても、壁面を伝う雨水は外鍔部によって堰き止められることから、貫通孔内に侵入する雨水量を低減させることができる。
【0035】
又、本発明は上記各実施形態の他、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えても良い。 例えば、カバー部材の素材は塩ビに限られるものではなく、ゴムその他の素材から構成されていても良い。又、図12に示すカバー部材401のように、材質をゴム等にした場合、端部の径を配管・配線よりも小径とすることにより、締結部材を省略することも可能となる。同様に、固定部材の素材についても樹脂やゴム等、何ら限定されるものでない。又、カバー部材と固定部材の素材が接着や溶着が可能な素材同士であった場合、接着や溶着によって両者を水密的に接続することで、固定部材を外管と内管から構成せず一つの部材にて構成するようにしても良い。また、カバー部材と固定部材の素材が接着の可能な素材同士とした上で、確実性を高めるために、固定部材を外管と内管から構成し、更に外管と内管、及びカバー部材との間で接着を行うようにしても良い。
又、図13に示すように、外管511がアダプター54を有していても良い。当該アダプター54を固定部材501に取り付けることによって、異なる径を有する貫通孔11やスリーブ管4に対応可能となる。
又、図14に示すように、固定部材502が貫通孔11に取り付けられるスリーブ管を兼ねても良い。このようにすることによって、部品点数を削減することで生産性を向上させることができる。
又、雨水の侵入防止の向上を目的として、外管の外鍔部の周囲にコーキング材を塗布しても良い。
又、上記実施形態においては、外管の内側面に係合部としての凸条が形成されており、内管の外側面に被係合部としての凹溝が形成されていたが、外管の内側面に被係合部としての凹溝が形成されており、内管の外側面に係合部としての凸条が形成されていても良い。
又、係合部及び被係合部の形状については凸条や凹溝に限られるものではなく、爪状等その他の形状を採用しても良い。
又、配管・配線の形状や貫通孔の形状ついても円形・非円形等種々の形状を採用しても良い。
又、固定部材を貫通孔に対して取り付けた際、固定部材の屋外側端部が壁面よりも突出するように構成しても良い。このように構成することによって、カバー部材が破損した場合であっても雨水が流入しにくくなる。
又、上記第一実施形態においては、化粧部材内に配管・配線用カバーを収納していたが、本発明の配管・配線用カバーが化粧部材を兼ねても良い。この場合、第一実施形態のように、硬質の固定部材の屋外側に延出し、且つ下方に屈曲させ、下端部分にてカバー体を備えるように構成すると、意匠性も確保できる。
又、本発明において、「配管」としてエアコン用の冷媒管等を、「配線」として電線を例として挙げたが、給湯用配管やケーブル等、実施例以外の配管・配線に用いられても良い。
又、本発明の配管・配線用カバーが取り付けられる壁面は建物の外壁以外にも、部屋同士を繋ぐ壁面、天井面、床面等どのような壁面であっても良い。
【符号の説明】
【0036】
1 冷媒管
11 貫通孔
2 スリーブ管
3 パテ
4、401 カバー部材
5、501、502 固定部材
51、511 外管
52、521 外鍔部
53、531 凸条
54 アダプター
55、551 内管
56、561 係止部
57、571 凹溝
58 雌螺子
6 締結部材
7 化粧部材
71 基台
72 蓋体
8 照明器具
9 電線
10 蓋部
101 雄螺子
100 壁
100a 内壁
100b 外壁
200 室外機
300 室内機
C 軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14