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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】導線の導通確認方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/30 20160101AFI20240904BHJP
   F03D 17/00 20160101ALI20240904BHJP
【FI】
F03D80/30
F03D17/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021041057
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022140959
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500433225
【氏名又は名称】学校法人中部大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 直二
(72)【発明者】
【氏名】山本 和男
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-166382(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0178230(US,A1)
【文献】特開2020-091240(JP,A)
【文献】特開2019-138261(JP,A)
【文献】特開2003-161755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00-80/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雷を受ける受雷部とグランドに接地されている接地部とをつなぐ導線の導通確認方法であって、
前記導線と、前記受雷部に非接触な状態で配置されて前記導線との間の電位差を検出する電位差センサとの何れか一方に電源から電圧を印加する第1工程と、
前記第1工程によって電圧を印加している状態で前記導線と前記電位差センサとの間で発生した電位差を前記電位差センサによって検出する第2工程とを備える導線の導通確認方法。
【請求項2】
前記受雷部は、風力発電装置において風を受けて回転するブレードの表面に設けられ、
前記接地部は、前記風力発電装置において前記ブレードが連結されたナセルを回転可能に支持するとともに地面に立設されているタワーを含んで構成されており、
前記導線は、前記ブレードの内部を通じて前記受雷部から前記接地部まで引き回されており、
前記第1工程では、前記電位差センサを前記接地部に電気的に接続するとともに前記受雷部に非接触な状態で電気的に接続して前記受雷部、前記導線、前記接地部、前記電源、及び前記電位差センサを含む閉回路を構成した上で、前記導線と前記電位差センサとの何れか一方に前記電源から電圧を印加する
請求項1に記載の導線の導通確認方法。
【請求項3】
前記第1工程では、前記電源を前記地面に配置した状態で、前記導線と前記電位差センサとの何れか一方に電圧を印加する
請求項2に記載の導線の導通確認方法。
【請求項4】
前記第1工程では、前記電位差センサを、前記導線における前記接地部側の第1端とは反対側であって前記受雷部に接続されている第2端の周囲に配置し、
前記第2工程では、前記第2端と前記電位差センサとの間で発生する電位差を前記電位差センサによって検出し、
前記第2工程において電位差を検出した後、前記導線の前記第2端から前記第1端側へ前記ブレードに沿って前記電位差センサを移動させることで、前記ブレードの内部に引き回されている前記導線と前記電位差センサとの間で発生する電位差を検出する第3工程を備える
請求項2または3に記載の導線の導通確認方法。
【請求項5】
前記電位差センサ、無人で移動可能な無人移動体に設けられており、
前記第1工程では、前記無人移動体を移動させることにより、該無人移動体に設けられた前記電位差センサを前記導線の前記第2端の周囲に配置し、
前記第3工程では、前記無人移動体を前記ブレードに沿って移動させることにより、該無人移動体に設けられた前記電位差センサによって前記導線と前記電位差センサとの間で発生する電位差を検出する
請求項4に記載の導線の導通確認方法。
【請求項6】
前記第1工程では、前記導線の第1端に前記電源を接続することで該導線に電圧を印加し、
前記第2工程では、前記第1工程によって電圧が印加された状態において前記導線の第2端の周囲に形成された電界を前記電位差センサによって検出することで、前記導線における前記第1端と前記電位差センサとの間で発生した電位差を検出する
請求項1に記載の導線の導通確認方法。
【請求項7】
前記受雷部は、風力発電装置において風を受けて回転するブレードの表面に設けられ、
前記接地部は、前記風力発電装置において前記ブレードが連結されたナセルを回転可能に支持するとともに地面に立設されているタワーを含んで構成されており、
前記導線は、前記ブレードの内部を通じて前記受雷部から前記接地部まで引き回されており、
前記電位差センサは、第1電位差センサ及び第2電位差センサを含み、
前記第1工程では、前記導線における前記接地部側の第1端に電圧を印加し、
前記第2工程では、前記導線における前記受雷部側の第2端の周囲に形成された電界を前記第1電位差センサによって検出するとともに、
前記第1工程によって電圧が印加された状態において前記導線の前記第2端から前記第1端側へ前記ブレードに沿って前記第2電位差センサを移動させることで、前記ブレードの周囲に形成された電界を前記第2電位差センサによって検出する第3工程を備える
請求項6に記載の導線の導通確認方法。
【請求項8】
前記第3工程では、前記第2工程で用いられる前記第1電位差センサよりも高感度な電位差センサを前記第2電位差センサとして用いる
請求項7に記載の導線の導通確認方法。
【請求項9】
前記第1電位差センサ及び前記第2電位差センサは、無人で移動可能な無人移動体に設けられており、
前記第2工程では、前記無人移動体を移動させることにより、該無人移動体に設けられた前記第1電位差センサによって前記第2端の周囲に形成された電界を検出し、
前記第3工程では、前記無人移動体を前記ブレードに沿って移動させることにより、該無人移動体に設けられた前記第2電位差センサによって前記ブレードの周囲に形成された電界を検出する
請求項7または8に記載の導線の導通確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導線の導通確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、風力発電装置に設けられる導線の導通確認方法が開示されている。特許文献1に記載の風力発電装置は、地面に立設されたタワーを有している。タワーは、金属からなり、グランドに接地されている。タワーの上端部には、ナセルが連結されている。ナセルには、風を受けて回転するブレードが連結されている。ブレードは、軽量で腐食等が生じ難い繊維強化プラスチックによって構成されている。ブレードの表面には、雷を受ける金属製の受雷部が設けられている。受雷部には、導線としてのダウンコンダクタの一端が接続されている。ダウンコンダクタは、ブレードの内部に引き回されており、その他端がタワーに接続されている。こうした風力発電装置では、ブレードの受雷部に落雷したときの電流は、ダウンコンダクタを通じてタワーへ流れ、グランドへ放電される。これにより、風力発電装置における落雷に起因した破損を抑制している。
【0003】
特許文献1に記載の導線の導通確認方法では、まず地上に電源を配置するとともに、電極を有する無人飛行体を用意する。電源と電極とは、導電線を介して接続されている。そして、無人飛行体を飛行させて電極をブレードの受雷部に対し接触させる。この状態で、電源から電圧を印加して受雷部に通電する。このときの通電状態を検出することによって、ダウンコンダクタの断線や破損の有無などを確認する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-138261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の導線の導通確認方法は、通電状態を検出するために、電極と受雷部とを接触させる必要が生じる。そのため、こうした構成では、電極と受雷部とが干渉することに起因して、受雷部に傷が生じる虞や、受雷部の表面の塗膜が剥離する虞がある。特許文献1に記載の導通確認方法では、こうした点は考慮されておらず、改善の余地がある。
【0006】
本発明の目的は、受雷部に傷が生じることを抑制できる導線の導通確認方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための導線の導通確認方法は、雷を受ける受雷部とグランドに接地されている接地部とをつなぐ導線の導通確認方法であって、前記導線と、前記受雷部に非接触な状態で配置されて前記導線との間の電位差を検出する電位差センサとの何れか一方に電源から電圧を印加する第1工程と、前記第1工程によって電圧を印加している状態で前記導線と前記電位差センサとの間で発生した電位差を前記電位差センサによって検出する第2工程とを備える。
【0008】
電圧を印加している状態で電位差センサによって検出される導線との間の電位差には、導線の導通状態が反映される。すなわち、導線が断線する等して導通していない場合と、導線が導通している場合とでは、導線と電位差センサとの間に生じる電位差が異なる。したがって、電位差センサによって上記電位差を検出することで、受雷部に非接触の状態で導通確認を行うことが可能になる。したがって、上記構成によれば、導通確認の際に、受雷部に傷が生じることを抑制できる。
【0009】
また、上記導線の導通確認方法では、前記受雷部は、風力発電装置において風を受けて回転するブレードの表面に設けられ、前記接地部は、前記風力発電装置において前記ブレードが連結されたナセルを回転可能に支持するとともに地面に立設されているタワーを含んで構成されており、前記導線は、前記ブレードの内部を通じて前記受雷部から前記接地部まで引き回されており、前記第1工程では、前記電位差センサを前記接地部に電気的に接続するとともに前記受雷部に非接触な状態で電気的に接続して前記受雷部、前記導線、前記接地部、前記電源、及び前記電位差センサを含む閉回路を構成した上で、前記導線と前記電位差センサとの何れか一方に前記電源から電圧を印加することが望ましい。
【0010】
上記構成では、受雷部、導線、接地部、電源、及び電位差センサによって閉回路を構成していることから、導線と電位差センサとの間のノイズを抑制して電位差を検出しやすくできる。したがって、上記構成によれば、導通確認の際に電位差センサによって検出する電位差の検出精度を向上させることができる。
【0011】
また、上記導線の導通確認方法では、前記第1工程では、前記電源を前記地面に配置した状態で、前記導線と前記電位差センサとの何れか一方に電圧を印加することが望ましい。
【0012】
例えば電源をナセルの内部に配置する場合、作業者は、タワーの内部を昇ってナセルまで電源を持って行く必要などが生じる。上記構成では、電源を地面に配置していることから、電源を風力発電装置内で所定位置まで持ち上げるなどの作業が必要なく、導線の導通確認作業にかかる作業者の負荷軽減に貢献できる。
【0013】
また、上記導線の導通確認方法では、前記第1工程では、前記電位差センサを、前記導線における前記接地部側の第1端とは反対側であって前記受雷部に接続されている第2端の周囲に配置し、前記第2工程では、前記第2端と前記電位差センサとの間で発生する電位差を前記電位差センサによって検出し、前記第2工程において電位差を検出した後、前記導線の前記第2端から前記第1端側へ前記ブレードに沿って前記電位差センサを移動させることで、前記ブレードの内部に引き回されている前記導線と前記電位差センサとの間で発生する電位差を検出する第3工程を備えることが望ましい。
【0014】
導線が途中で断線した場合、その断線部分から第2端側の部分には電源から印加される電圧の影響が生じ難い。そのため、導線の第2端と電位差センサとの間で電位差が発生しにくい。こうした場合、電位差センサを移動させて導線の断線部分の周囲に該電位差センサを配置すると、導線の断線部分を介して閉回路が構成される。このとき、導線と電位差センサとの間における電位差は大きくなる。したがって、上記構成のように、第3工程において、電位差センサを移動させて導線の間の電位差を検出することで、ブレードの内部における導線の断線位置を特定することが可能になる。
【0015】
また、上記導線の導通確認方法では、前記電位差センサ、無人で移動可能な無人移動体に設けられており、前記第1工程では、前記無人移動体を移動させることにより、該無人移動体に設けられた前記電位差センサを前記導線の前記第2端の周囲に配置し、前記第3工程では、前記無人移動体を前記ブレードに沿って移動させることにより、該無人移動体に設けられた前記電位差センサによって前記導線と前記電位差センサとの間で発生する電位差を検出することが望ましい。
【0016】
上記構成によれば、作業者は高所にある受雷部やブレードに近づかなくても、無人移動体を移動させることで電位差センサを受雷部やブレードに近づけて導線の導通確認を行うことができる。そのため、作業者が受雷部やブレードに近づいて導通確認を行う場合に比して、導通確認作業にかかる作業者の負荷軽減に貢献できる。
【0017】
また、上記導線の導通確認方法では、前記第1工程では、前記導線の第1端に前記電源を接続することで該導線に電圧を印加し、前記第2工程では、前記第1工程によって電圧が印加された状態において前記導線の第2端の周囲に形成された電界を前記電位差センサによって検出することで、前記導線における前記第1端と前記電位差センサとの間で発生した電位差を検出することが望ましい。
【0018】
上記構成では、導線の第1端に電圧を印加した状態で、導線の第2端の周囲に形成された電界を検出する。導線が導通している場合、該導線の第2端の周囲には、第1端に印加されている電圧に対応した電界が発生する。一方で、導線が断線する等して導通していない場合、該導線の第2端の周囲には上記電界は発生しない。このように、導線に電圧を印加したときに形成された電界を検出する方法では、閉回路を構成しなくても、導線の導通確認を行うことができる。したがって、上記構成によれば、導通確認の際に、閉回路を構成するために電位差センサと接地部とを接続する導電線を引き回す必要がなく、導線の導通確認作業における制約を少なくすることが可能になる。
【0019】
また、上記導線の導通確認方法では、前記受雷部は、風力発電装置において風を受けて回転するブレードの表面に設けられ、前記接地部は、前記風力発電装置において前記ブレードが連結されたナセルを回転可能に支持するとともに地面に立設されているタワーを含んで構成されており、前記導線は、前記ブレードの内部を通じて前記受雷部から前記接地部まで引き回されており、前記電位差センサは、第1電位差センサ及び第2電位差センサを含み、前記第1工程では、前記導線における前記接地部側の第1端に電圧を印加し、前記第2工程では、前記導線における前記受雷部側の第2端の周囲に形成された電界を前記第1電位差センサによって検出するとともに、前記第1工程によって電圧が印加された状態において前記導線の前記第2端から前記第1端側へ前記ブレードに沿って前記第2電位差センサを移動させることで、前記ブレードの周囲に形成された電界を前記第2電位差センサによって検出する第3工程を備えることが望ましい。
【0020】
導線が途中で断線した場合、その断線部分の周囲には、第1端に印加された電圧に対応する電界が形成される。こうした電界は、ブレードの周囲にも形成される。上記構成では、導線が断線することによってブレードの周囲に形成される電界を第2電位差センサによって検出する。これにより、導線がブレードの内部において断線した場合の断線位置を特定することが可能になる。
【0021】
また、上記導線の導通確認方法では、前記第3工程では、前記第2工程で用いられる前記第1電位差センサよりも高感度な電位差センサを前記第2電位差センサとして用いることが望ましい。
【0022】
導線が風力発電装置のブレードの内部に引き回されている場合、受雷部に接続されている導線の第2端は、ブレードの表面に近い位置に配置される。一方で、導線においてブレードの内部に引き回されている部分については、ブレードの表面から遠い位置に配置される。電界の強度は、導線から離れるほど小さくなる。そのため、導線の第2端の周囲に形成される電界の強度よりも、ブレードの内部で導線が断線したときに該ブレードの周囲に形成される電界の強度の方が小さくなる。上記構成では、ブレードの周囲に形成される電界を検出する第2電位差センサの感度を第1電位差センサの感度よりも高めている。そのため、ブレードの周囲に形成される電界を精度良く検出することが可能になる。したがって、上記構成によれば、ブレードの内部における導線の断線位置の特定精度を高めることに貢献できる。
【0023】
また、上記導線の導通確認方法では、前記第1電位差センサ及び前記第2電位差センサは、無人で移動可能な無人移動体に設けられており、前記第2工程では、前記無人移動体を移動させることにより、該無人移動体に設けられた前記第1電位差センサによって前記第2端の周囲に形成された電界を検出し、前記第3工程では、前記無人移動体を前記ブレードに沿って移動させることにより、該無人移動体に設けられた前記第2電位差センサによって前記ブレードの周囲に形成された電界を検出することが望ましい。
【0024】
上記構成によれば、作業者は高所にある受雷部やブレードに近づかなくても、無人移動体を移動させることで電位差センサを受雷部やブレードに近づけて導線の導通確認を行うことができる。そのため、作業者が受雷部やブレードに近づいて導通確認を行う場合に比して、導通確認作業にかかる作業者の負荷軽減に貢献できる。
【発明の効果】
【0025】
上記導線の導通確認方法によれば、受雷部に傷が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】風力発電装置の構成を模式的に示す側面図。
図2】風力発電装置の構成を模式的に示す正面図。
図3】第1実施形態の導線の導通確認方法の手順を示すフローチャート。
図4】第1実施形態の導線の導通確認方法における第1工程及び第2工程の状態を示す模式図。
図5】導線の導通確認方法において導線が導通しているときに閉回路を構成した状態を示す模式図。
図6】導線の導通確認方法において導線が断線しているときに閉回路を構成した状態を示す模式図。
図7】第1実施形態の導線の導通確認方法における第3工程の状態を示す模式図。
図8】導線の導通確認方法において導線の断線部分で閉回路を構成した状態を示す模式図。
図9】第2実施形態の導線の導通確認方法の手順を示すフローチャート。
図10】第2実施形態の導線の導通確認方法における第1工程及び第2工程の状態を示す模式図。
図11】第2実施形態の導線の導通確認方法における第3工程の状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
導線の導通確認方法の第1実施形態について、図1図8を参照して説明する。なお、本実施形態では、風力発電装置に設けられる導線の導通確認方法を例に説明する。
【0028】
図1に示すように、風力発電装置10は、地面Gに立設されたタワー20を有している。タワー20は、中空円筒状に形成されており、地面Gに近い下端部側ほど外径が拡がっている。図示を省略しているが、タワー20の内部には、作業者がメンテナンス時に昇降するための昇降機及び梯子、並びに電力変換装置等の発電に供される各種装置が収容されている。タワー20は、金属からなり、図示しない接地線を地面Gに連結することで全体がグランドに接地されている。そのため、本実施形態では、タワー20が接地部を構成している。タワー20の上端部には、ナセル30が連結されている。
【0029】
ナセル30は、タワー20の延伸方向、すなわち鉛直方向に延びる中心軸を中心として回転可能にタワー20に支持されている。ナセル30は、四角箱状に構成されている。ナセル30の内部には、発電機31が収容されている。発電機31のロータ軸31Aは、ナセル30の一端部(図1の左端部)からナセル30の外部に突出している。ロータ軸31Aにおいてナセル30の外部に突出している先端部には、ハブ40が連結されている。
【0030】
ハブ40には、複数のブレード41が固定されている。ブレード41は、例えば繊維強化プラスチック等の樹脂によって構成されており、中空形状に形成されている。ブレード41が風を受けることで、ロータ軸31Aを中心としてブレード41及びハブ40が回転する。このように、ナセル30は、ハブ40及びブレード41を回転可能に支持している。ハブ40及びブレード41と一体にロータ軸31Aが回転することで発電機31において発電が行われる。
【0031】
図2に示すように、各ブレード41の先端には、受雷部50が設けられている。受雷部50は、金属からなる。受雷部50はブレード41の表面に露出している。受雷部50の表面には、保護塗膜が塗布されている。また、各ブレード41の内部には、導線としてのダウンコンダクタ60が設けられている。ダウンコンダクタ60はブレード41の内部を通じて受雷部50からタワー20まで引き回されており、これら受雷部50とタワー20とをつないでいる。
【0032】
ダウンコンダクタ60は、受雷部50からハブ40の内部に至る複数の分岐線部61と、該ハブ40内において第1連結点C1において各分岐線部61が連結された集合線部62とを有している。集合線部62は、ロータ軸31Aの内部を通じてナセル30内まで至り、第2連結点C2においてタワー20に連結されている。以下では、ダウンコンダクタ60において、集合線部62の第2連結点C2に接続されている端を第1端といい、第1端とは反対側であって受雷部50に接続されている各分岐線部61の端部を第2端という。すなわち、第1端は、ダウンコンダクタ60における接地部側の端であり、第2端は、ダウンコンダクタ60における受雷部50側の端である。
【0033】
次に、本実施形態の導線の導通確認方法について説明する。
図3のフローチャートに示すように、本実施形態では、第1工程(ステップS31)、第2工程(ステップS32)、及び第3工程(ステップS33)を順に行う。
【0034】
ステップS31の第1工程では、ダウンコンダクタ60と、受雷部50に非接触な状態で配置されてダウンコンダクタ60との間の電位差を検出する後述する電位差センサ81とのうち、電位差センサ81に電源75から電圧を印加する。
【0035】
ステップS32の第2工程では、電圧を印加している状態でダウンコンダクタ60と電位差センサ81との間で発生した電位差を電位差センサ81によって検出する。なお、第2工程では、電位差センサ81は、ダウンコンダクタ60における第2端と電位差センサ81との間で発生する電位差を検出する。
【0036】
ステップS33の第3工程では、第2工程において電位差を検出した後、ダウンコンダクタ60の第2端から第1端側へブレード41に沿って電位差センサ81を移動させることで、ブレード41の内部に引き回されているダウンコンダクタ60と電位差センサ81との間で発生する電位差を検出する。
【0037】
すなわち、図4に示すように、ダウンコンダクタ60の導通確認を行う作業者は、第1工程を開始すると、まず電源75を地面Gに配置する。なお、電源75としては、直流電源または交流電源を採用できる。本実施形態では、高電圧を発生させることのできる絶縁抵抗計を採用している。すなわち、以下では直流電源を採用した場合を例に説明する。
【0038】
作業者は、電源75を地上に配置すると、該電源75を第1導電線76を介してタワー20に接続する。これにより、電源75がタワー20に接続される。
その後、作業者は、電源75に、第2導電線77の第1端を接続する。第2導電線77の第2端は、上述した電位差センサ81に接続されている。換言すれば、電位差センサ81は、第2導電線77、電源75、及び第1導電線76を介してタワー20に電気的に接続されている。電位差センサ81は、例えば直流検電器を採用できる。なお、電源75として交流電源を使用する場合には、電位差センサ81として交流検電器を採用すればよい。第2導電線77は、電位差センサ81としての直流検電器の接地線に接続されている。
【0039】
電位差センサ81は、無人で移動可能な無人移動体としてのドローン80に設けられている。ドローン80は、複数のプロペラ80Aを有しており、各プロペラ80Aの駆動を制御することにより無人で自律飛行可能な公知な構成を有している。
【0040】
作業者は、ドローン80と通信可能な公知な構成を備える携帯端末を所持している。携帯端末としては、例えばタブレットPC等を採用できる。接続工程では、作業者が携帯端末を通じて地上に配置したドローン80の飛行開始操作を行うことで、ドローン80を自律飛行させる。ドローン80は自動飛行を開始すると、まずブレード41と同じ高さまで上昇する。これにより、ドローン80に設けられている電位差センサ81は、ブレード41に接近した位置に配置される。本実施形態では、ドローン80はその後、電位差センサ81を受雷部50に非接触な位置であって且つ電気的に接続可能な距離に配置して、この状態を維持するように飛行を継続する。なお、電気的に接続可能な距離とは、例えば数μm~10mm程度であるが、こうした距離は、電源75から印加する電圧に応じて変更が可能である。これにより、電位差センサ81は、ダウンコンダクタ60における第2端の周囲に配置される。
【0041】
このように、電位差センサ81を配置することで、受雷部50、ダウンコンダクタ60、タワー20、電源75、及び電位差センサ81が順に並んだ閉回路が構成される。
図5には、ダウンコンダクタ60が断線していない場合の閉回路を示している。閉回路では、受雷部50と電位差センサ81とによってコンデンサが構成されている。第1工程において、電源75から電位差センサ81に電圧(例えば1kV)を印加すると、受雷部50、すなわちダウンコンダクタ60と、電位差センサ81との間に電源75から印加した電圧に対応した電位差が生じる。なお、図5には、閉回路中のインダクタンスを「L」として示し、抵抗を「R」として示している。
【0042】
その後、作業者は、第2工程に移行して、ダウンコンダクタ60の第2端と電位差センサ81との間で発生する電位差を電位差センサ81によって検出する。
なお、図6に示すように、ダウンコンダクタ60が断線している場合、ダウンコンダクタ60の断線部分がコンデンサとして機能するため、断線部分よりも第2端側には電圧の影響が生じ難い。そのため、この状態で電位差センサ81を第2端の周囲に配置して検出できる電位差は、図5に示すダウンコンダクタ60が断線していない場合に電位差センサ81を第2端の周囲に配置して検出できる電位差に比して小さくなる。したがって、作業者は、第2工程において検出した電位差が予め設定した閾値以上であるか否かを判断することで、ダウンコンダクタ60の導通確認を行うことができる。この場合、閾値としては、ダウンコンダクタ60が断線していない場合に検出できる電位差の最小値などを採用すればよい。こうした構成では、第2端との間で検出した電位差が閾値以上のときにはダウンコンダクタ60は断線していないと判断でき、上記電位差が閾値未満のときにはダウンコンダクタ60は断線していると判断できる。
【0043】
作業者は、こうしてダウンコンダクタ60の第2端と電位差センサ81との間の電位差を検出すると、次に第3工程に移行して、ドローン80に移動指示を出力する。
図7に示すように、第3工程では、ドローン80をブレード41の先端からハブ40側へブレード41に沿って移動させる。これにより、ダウンコンダクタ60の第2端から第1端側へブレード41に沿って電位差センサ81を移動させる。ダウンコンダクタ60がブレード41の内部で断線している場合、この断線部分の周囲に電位差センサ81が配置されると、ダウンコンダクタ60の断線部分を介して電気的に接続されて閉回路が構成される。
【0044】
すなわち、図8に示すように、ダウンコンダクタ60の断線部分を介して、ダウンコンダクタ60、タワー20、電源75、及び電位差センサ81が順に並んだ閉回路が構成される。このとき、断線部分と電位差センサ81とによってコンデンサが構成されることで電気的に接続されている。第1工程において、電源75から電位差センサ81に電圧が印加されていることから、ダウンコンダクタ60の断線部分と、電位差センサ81との間に電源75から印加した電圧に対応した電位差が生じる。この状態で電位差センサ81によって検出できる電位差は、図6に示すように、ダウンコンダクタ60が断線しているときに、ダウンコンダクタ60の第2端と電位差センサ81との間で検出できる電位差に比べて大きくなる。そのため、第3工程において電位差センサ81を移動させてダウンコンダクタ60との間で検出した電位差が、例えば第2工程において検出した第2端との間の電位差よりも大きくなったことに基づいて、ブレード41の内部におけるダウンコンダクタ60の断線位置を特定することが可能になる。
【0045】
作業者は、こうして第1工程、第2工程、及び第3工程を順に行うことにより、ダウンコンダクタ60の導通確認、及び断線位置の特定を行うと、導線の導通確認作業を終了する。
【0046】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1-1)本実施形態では、ダウンコンダクタ60との間で電位差を検出する電位差センサ81を受雷部50に非接触な状態で配置しつつ、該電位差センサ81に電圧を印加する。電圧を印加している状態で電位差センサ81によって検出されるダウンコンダクタ60との間の電位差には、ダウンコンダクタ60の導通状態が反映される。すなわち、ダウンコンダクタ60が断線する等して導通していない場合と、ダウンコンダクタ60が導通している場合とでは、ダウンコンダクタ60と電位差センサ81との間に生じる電位差が異なる。そのため、電位差センサ81によって上記電位差を検出することで、受雷部50に非接触の状態で導通確認を行うことが可能になる。したがって、導通確認の際に、受雷部50に傷が生じることを抑制できる。
【0047】
(1-2)本実施形態では、第1工程では、電位差センサ81をタワー20に電気的に接続するとともに受雷部50に非接触な状態で電気的に接続して、受雷部50、ダウンコンダクタ60、タワー20、電源75、及び電位差センサ81を含む閉回路を構成する。閉回路を構成することで、ダウンコンダクタ60と電位差センサ81との間のノイズを抑制して電位差を検出しやすくできる。したがって、導通確認の際に電位差センサ81によって検出する電位差の検出精度を向上させることができる。
【0048】
(1-3)例えば電源75をナセル30の内部に配置する場合、作業者は、タワー20の内部を昇ってナセル30まで電源75を持って行く必要などが生じる。本実施形態では、第1工程において、電源75を地面Gに配置して電位差センサ81に電圧を印加しているため、電源75を風力発電装置10内で所定位置まで持ち上げるなどの作業が必要なく、導線の導通確認作業にかかる作業者の負荷軽減に貢献できる。
【0049】
(1-4)本実施形態では、第2工程においてダウンコンダクタ60の第2端との間で発生する電位差を電位差センサ81によって検出する。その後、第3工程において、ダウンコンダクタ60の第2端から第1端側へブレード41に沿って電位差センサ81を移動させることで、ブレード41の内部に引き回されているダウンコンダクタ60と電位差センサ81との間で発生する電位差を検出している。
【0050】
ダウンコンダクタ60が途中で断線した場合、その断線部分から第2端側の部分には電源75から印加される電圧の影響が生じ難い。そのため、ダウンコンダクタ60の第2端と電位差センサ81との間で電位差が発生しにくい。こうした場合、電位差センサ81を移動させてダウンコンダクタ60の断線部分の周囲に該電位差センサ81を配置すると、ダウンコンダクタ60の断線部分を介して閉回路が構成される。このとき、ダウンコンダクタ60と電位差センサ81との間における電位差は大きくなる。したがって、第3工程において、電位差センサ81を移動させてダウンコンダクタ60の間の電位差を検出することで、ブレード41の内部におけるダウンコンダクタ60の断線位置を特定することが可能になる。
【0051】
(1-5)本実施形態では、電位差センサ81をドローン80に設け、第1工程では、ドローン80を移動させることにより、該ドローン80に設けられた電位差センサ81をダウンコンダクタ60の第2端の周囲に配置している。また、第3工程では、ドローン80をブレード41に沿ってハブ40側に移動させることにより、ドローン80に設けられた電位差センサ81によってダウンコンダクタ60の断線部分と電位差センサ81との間で発生する電位差を検出している。
【0052】
これにより、作業者は高所にある受雷部50やブレード41に近づかなくてもダウンコンダクタ60の導通確認を行うことができる。そのため、作業者が受雷部50やブレード41に近づいて導通確認を行う場合に比して、導通確認作業にかかる作業者の負荷軽減に貢献できる。
【0053】
(第2実施形態)
導線の導通確認方法の第2実施形態について、図9図11を参照して説明する。本実施形態では、電位差センサとして、導線に電圧が印加された状態で発生する電界を検出する第1電位差センサとしての第1電界センサと、第2電位差センサとしての第2電界センサとを備える点が第1実施形態と異なっている。第1実施形態と同様の構成については、共通の符号を付して説明を省略する。
【0054】
図9フローチャートに示すように、本実施形態では、第1工程(ステップS91)、第2工程(ステップS92)、及び第3工程(ステップS93)を順に行う。
ステップS91の第1工程では、ダウンコンダクタ60の第1端に電圧を印加する。ステップS92の第2工程では、第1工程によって電圧が印加された状態において、ダウンコンダクタ60の第2端の周囲に形成される電界を第1電界センサ181によって検出する。
【0055】
ステップS93の第3工程では、第1工程によって電圧が印加された状態においてダウンコンダクタ60の第2端から第1端側へブレード41に沿って第2電界センサ182を移動させることで、ブレード41の周囲に形成された電界を検出する。
【0056】
すなわち、図10に示すように、導線の導通確認を行う作業者はまず、ダウンコンダクタ60の第1端に電源175を接続した状態とする。この構成は、作業者がタワー20内を昇って第2連結点C2からダウンコンダクタ60を取り外すとともに、該ダウンコンダクタ60の第1端に電源175を接続することで実現できる。電源175としては、例えば、高電圧を発生させることのできる絶縁抵抗計等を採用してもよい。また、作業者は、無人で移動可能な無人移動体としてドローン80を用意する。ドローン80は、複数のプロペラ80Aを有しており、各プロペラ80Aの駆動を制御することにより無人で自律飛行可能な公知な構成を有している。
【0057】
ドローン80には、検電部180Bが設けられている。検電部180Bには、上述した第1電界センサ181と第2電界センサ182とが設けられている。第1電界センサ181及び第2電界センサ182は、公知な構成を備える市販のものであり、電界強度を検出可能な電界強度計だけではなく、電界と相関する例えば磁界強度等の他のパラメータを検出する検出器も含まれる。第2電界センサ182は、第1電界センサ181よりも高感度な電界センサである。すなわち、第2電界センサ182は、第1電界センサ181に比して強度の小さい電界を検出することができる。
【0058】
作業者は、ドローン80と通信可能な公知な構成を備える携帯端末を所持している。携帯端末としては、例えばタブレットPC等を採用できる。作業者は、携帯端末を通じてドローン80の飛行開始操作を行うことで、ドローン80を自律飛行させる。また、ドローン80は、作業者が所持している携帯端末に、第1電界センサ181及び第2電界センサ182が検出した信号を検出信号として送信する。携帯端末は、受信した検出信号を記憶する。
【0059】
第1工程では、上述したようにダウンコンダクタ60に電源175を接続した状態で、該電源175からダウンコンダクタ60の第1端に電圧(例えば1kV)を印加する。
その後、第2工程では、図4に示すようにドローン80を飛行させて、検電部180Bをダウンコンダクタ60の第2端、すなわち受雷部50の周囲に移動させる。この状態では、検電部180Bは、受雷部50には接触していないものの、ダウンコンダクタ60の第2端の周囲に形成される電界を第1電界センサ181によって検出することが可能な距離まで受雷部50に接近している。このように検電部180Bを接近させることで、第1電界センサ181によって第2端の周囲に形成される電界を検出する。ダウンコンダクタ60が断線していない場合、第2端の周囲には電源175によって印加された電圧に対応した電界が発生している。一方で、ダウンコンダクタ60が断線している場合、第2端の周囲には電源175によって印加された電圧に対応した電界は発生していない。
【0060】
そのため、第1電界センサ181によって検出した検出信号に基づけば、作業者はダウンコンダクタ60の導通状態を確認できる。すなわち、第1電界センサ181によって上記電界が検出されたときには、作業者は、ダウンコンダクタ60は断線せずに導通していると判断する。また、第1電界センサ181によって上記電界が検出されないときには、作業者はダウンコンダクタ60に断線が生じていると判断する。
【0061】
作業者は、こうして第1電界センサ181による電界の検出作業を終了すると、次に第3工程に移行して、ドローン80に移動指示を出力する。
図5に示すように、第3工程では、ドローン80をブレード41の先端からハブ40側へブレード41に沿って移動させる。これにより、ダウンコンダクタ60の第1端に電圧が印加された状態において、ダウンコンダクタ60の第2端から第1端側へブレード41に沿って第2電界センサ182を移動させる。ダウンコンダクタ60が、ブレード41の内部で断線している場合、この断線位置の周囲に電源175によって印加された電圧に対応した電界が発生する。こうした電界は、ダウンコンダクタ60における断線部分の周囲に拡がり、ブレード41の周囲にも形成される。
【0062】
第3工程において、第2電界センサ182を移動させる際には、検電部180Bは、受雷部50には接触していないものの、ブレード41の周囲に形成される電界を第2電界センサ182によって検出することが可能な距離までブレード41に接近した状態に維持される。そのため、第2電界センサ182は、移動しながらブレード41の周囲に形成された電界を検出する。このように、第2電界センサ182によってブレード41の周囲に形成される電界を検出することによって、作業者はブレード41の内部におけるダウンコンダクタ60の断線位置を特定する。
【0063】
作業者は、こうして第1工程、第2工程、及び第3工程を順に行うことにより、ダウンコンダクタ60の導通確認、及び断線位置の特定を行うと、導線の導通確認作業を終了する。
【0064】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(2-1)本実施形態では、ダウンコンダクタ60との間で電位差を検出する第1電界センサ181を受雷部50に非接触な状態で配置しつつ、ダウンコンダクタ60に電圧を印加する。電圧を印加している状態で第1電界センサ181によって検出されるダウンコンダクタ60との間の電位差、すなわち電界には、ダウンコンダクタ60の導通状態が反映される。すなわち、ダウンコンダクタ60が導通している場合、該ダウンコンダクタ60の第2端の周囲に、電源175によって印加した電圧に対応した電界が発生する。一方で、ダウンコンダクタ60が断線する等して導通していない場合、該ダウンコンダクタ60の第2端の周囲には上記電界は発生しない。このように、ダウンコンダクタ60に電圧を印加したときに形成される電界を第1電界センサ181によって検出することによって、受雷部50に非接触な状態でダウンコンダクタ60の導通確認を行うことができる。したがって、導通確認の際に、受雷部50に傷が生じることを抑制できる。
【0065】
また、本実施形態では、第1実施形態のように閉回路を構成する場合に比較して電位差の検出精度は低下する可能性はあるものの、電位差センサを接地するために第1導電線76や第2導電線77等の接地導線を持たなくてもよい。そのため、導通確認の際に、閉回路を構成する接地導線の長さを考慮する必要がなく、導線の導通確認における制約を少なくすることが可能になる。なお、ドローン80には、第1電界センサ181及び第2電界センサ182が設けられているが、これら第1電界センサ181及び第2電界センサ182は小型で軽量である。そのため、ドローン80によって接地導線をブレード41の近くまで持ち上げる場合に比してドローン80に必要な駆動出力は小さくできる。したがって、本実施形態によれば、ドローン80を選定するときの制約を緩和することも可能になる。
【0066】
(2-2)本実施形態の第3工程では、第1工程によって電圧が印加された状態においてダウンコンダクタ60の第2端から第1端側へブレード41に沿って第2電界センサ182を移動させている。これにより、ブレード41の周囲に形成された電界を第2電界センサ182によって検出している。
【0067】
ダウンコンダクタ60がブレード41の内部において断線した場合、その断線部分の周囲には、電源175から第1端に印加された電圧に対応する電界が形成される。こうした電界はブレード41の周囲にも形成される。本実施形態によれば、ダウンコンダクタ60が断線することによってブレード41の周囲に形成される電界を第2電界センサ182によって検出することで、ダウンコンダクタ60がブレード41の内部において断線した場合の断線位置を特定することが可能になる。
【0068】
(2-3)本実施形態の第3工程では、第2工程で用いられる第1電界センサ181よりも高感度な電界センサを第2電界センサ182として用いている。風力発電装置10では、受雷部50に接続されているダウンコンダクタ60の第2端はブレード41の表面に近い位置に配置される。一方で、ブレード41は中空形状であって所定の肉厚を有していることから、ダウンコンダクタ60においてブレード41の内部に引き回されている部分についてはブレード41の表面から遠い位置に配置される。ダウンコンダクタ60から発生する電界の強度は、ダウンコンダクタ60から離れるほど小さくなる。そのため、ダウンコンダクタ60の第2端の周囲に形成される電界の強度よりも、ブレード41の内部でダウンコンダクタ60が断線したときに該ブレード41の周囲に形成される電界の強度の方が小さくなる。
【0069】
本実施形態では、ブレード41の周囲に形成される電界を検出する第2電界センサ182の感度を第1電界センサ181の感度よりも高くしている。そのため、ブレード41の周囲に形成される強度の小さい電界であっても精度良く検出することが可能になる。したがって、ブレード41の内部におけるダウンコンダクタ60の断線位置の特定精度を高めることに貢献できる。
【0070】
(2-4)本実施形態では、第1電界センサ181及び第2電界センサ182をドローン80に設け、第2工程では、ドローン80を移動させることにより、該ドローン80に設けられた第1電界センサ181によって第2端の周囲に形成された電界を検出する。また、第3工程では、第2工程において受雷部50の近くまで飛行させたドローン80を、ブレード41に沿ってハブ40側に移動させることにより、ブレード41の周囲に形成された電界を検出している。
【0071】
これにより、作業者は高所にある受雷部50やブレード41に近づかなくてもダウンコンダクタ60の導通確認を行うことができる。そのため、作業者が受雷部50やブレード41に近づいて導通確認を行う場合に比して、導通確認作業にかかる作業者の負荷軽減に貢献できる。
【0072】
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記第1実施形態では、1つの電位差センサ81を設けて、該電位差センサ81によってダウンコンダクタ60の第2端との間に発生する電位差と、断線部分との間に発生する電位差とを検出するようにした。こうした構成に変えて、低感度と高感度の2つの電位差センサを設ける。そして、低感度の電位差センサによって、ダウンコンダクタ60の第2端との間に発生する電位差を検出し、高感度の電位差センサによって、ダウンコンダクタ60の断線部分との間に発生する電位差を検出するようにしてもよい。また、電位差センサには、印加される電圧に対応して検出電圧を可変とするような構成を付加することも可能である。
【0073】
・上記第1実施形態において、電位差センサ81を例えば絶縁紙等を介して受雷部50に重ねることで、該受雷部50に対して非接触な状態としつつも電気的に接続するようにしてもよい。こうした構成であっても、軟らかい絶縁紙が受雷部50に接触することから、金属製の電極を受雷部50に接触させる従来技術の構成に比して、受雷部50に傷が生じにくくすることはできる。
【0074】
・上記第1実施形態では、電源75を地上に配置したが、第2実施形態と同様にタワー20の内部に設けてもよいし、ナセル30やハブ40の内部に設けてもよい。
・上記第1実施形態では、電源75から電位差センサ81に電圧を印加する構成を例に説明した。こうした構成に変えて、電源75からダウンコンダクタ60に電圧を印加するようにしてもよい。こうした構成であっても、ダウンコンダクタ60と電位差センサ81との間に電源75から印加した電圧に対応した電位差が発生する。
【0075】
・上記第2実施形態では、第1工程においてダウンコンダクタ60の第1端に電圧を印加した状態でドローン80の飛行を開始するようにした。こうした構成は適宜変更が可能である。例えば、まずドローン80を飛行させて第1電界センサ181をダウンコンダクタ60の第2端に近づけた状態とした上で、第1工程を実行してダウンコンダクタ60の第1端に電圧を印加するようにしてもよい。こうした構成によれば、ダウンコンダクタ60に電圧を印加している時間を短くすることが可能になる。
【0076】
・上記第2実施形態では、1つのドローン80に第1電界センサ181及び第2電界センサ182の双方を設けるようにしたが、2つのドローン80を用意して、第1電界センサ181及び第2電界センサ182を別々のドローン80に設けるようにしてもよい。こうした構成では、第2工程と第3工程とを同時に行うことが可能になる。
【0077】
・上記第2実施形態の第3工程では、第1電界センサ181よりも高感度の第2電界センサ182を用いて、ブレード41の周囲に形成された電界を検出するようにした。こうした構成に変えて、第1電界センサ181と同程度の感度または低感度の第2電界センサ182を用いてブレード41の周囲に形成された電界を検出するようにしてもよい。
【0078】
また、電位差センサとして第1電界センサ181と第2電界センサ182とを分けて備える必要はなく、電界センサを1つのみ設ける構成とすることも可能である。この場合、1つの電界センサが、第2端の周囲に形成された電界を検出する第1電界センサ181として機能するとともに、ブレード41の周囲に形成された電界を検出する第2電界センサ182としても機能する。
【0079】
・上記第2実施形態では、ダウンコンダクタ60の集合線部62において第2連結点C2に接続されている端をダウンコンダクタ60の第1端として電源175を接続した。ダウンコンダクタ60において電源175を接続する位置はこれに限らない。例えば、ダウンコンダクタ60の分岐線部61における集合線部62側の端に電源175を接続することも可能である。この場合には、ダウンコンダクタ60の接地部側の第1端は、電源175が接続されている分岐線部61の端となる。こうした構成であっても、ダウンコンダクタ60に電圧を印加して導通確認を行うことは可能である。また、ダウンコンダクタ60において、受雷部50に接続されている分岐線部61の端に電源175を接続することも可能である。この場合、集合線部62において第2連結点C2に接続される側の端を第2連結点C2から取り外し、該端の周囲に形成される電界を電界センサによって検出することでダウンコンダクタ60の導通確認を行うことは可能である。この構成では、受雷部50に接続されている分岐線部61の端がダウンコンダクタ60における第1端となり、集合線部62において第2連結点C2に接続される側の端がダウンコンダクタ60における第2端となる。
【0080】
・上記各実施形態では、無人移動体として無人飛行可能なドローン80を用いた例を説明した。無人移動体はドローン80に限らない。例えば、無人移動体として、ブレード41上を這いながら移動可能なロボットを採用することもできる。こうした構成では、ロボットに電位差センサ81、または第1電界センサ181及び第2電界センサ182を設けるとともに、該ロボットをブレード41上に取り付ける。そして、ロボットをブレード41の先端まで無人で移動させることで、第1実施形態の第1工程及び第2実施形態の第2工程を実行する。また、第1実施形態の第1工程または第2実施形態の第2工程において先端に移動させたロボットを、ブレード41に沿ってハブ40側に戻るように移動させることで第3工程を行う。こうした構成であっても、作業者は受雷部50に近づかずにダウンコンダクタ60の導通確認を行うことが可能である。そのため、上記(1-4)または(2-4)に記載の作用及び効果と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0081】
・上記各実施形態では、電位差センサ81、または第1電界センサ181及び第2電界センサ182を有する無人移動体を移動させることによって、第1実施形態の第1工程、第2実施形態の第2工程、及び両実施形態の第3工程を行うようにした。こうした構成は変更が可能である。例えば、第1実施形態の第1工程では、電位差センサ81を所持した作業者が受雷部50に近づくことで、ダウンコンダクタ60の第2端の周囲に電位差センサ81を配置してもよい。また、第2実施形態の第2工程では、第1電界センサ181を所持した作業者が受雷部50に近づくことで、ダウンコンダクタ60の第2端の周囲に形成された電界を第1電界センサ181によって検出するようにしてもよい。また、両実施形態の第3工程では、電位差センサ81または第2電界センサ182を所持する作業者がブレード41に沿って移動することで、これら電位差センサを移動させてもよい。これらの構成によれば、導体の導通確認作業を行うときに無人移動体を用意する必要はない。
【0082】
・上記各実施形態では、風力発電装置10において受雷部50がブレード41の先端に設けられている構成を例に説明したが、受雷部50の位置は適宜変更が可能である。例えば、ブレード41における先端と基端との間の中間位置に受雷部50が設けられている風力発電装置10であっても、上記実施形態と同様の方法によって導線の導通確認を行うことは可能である。また、風力発電装置10において1つのブレード41に設けられる受雷部50の数は1つに限らず複数であってもよい。
【0083】
・上記各実施形態において、ナセル30をタワー20に電気的に接続することで、ナセル30とタワー20との双方によって接地部を構成するようにしてもよい。この構成では、ダウンコンダクタ60をナセル30及びタワー20の何れかに連結することで、受雷部50と接地部とをつなぐことができる。
【0084】
・上記各実施形態における風力発電装置10では、ダウンコンダクタ60を分岐線部61と集合線部62とによって構成したが、ダウンコンダクタ60の構成はこれに限らない。例えば、ダウンコンダクタ60をブレード41の内部に配置された導線部分と、ハブ40の内部に配置された導線部分と、ナセル30の内部に配置された導線部分と、タワー20の内部に配置された導線部分とからなる分割構成とする。そして、各導線部分の接続部分をカーボンブラシ等によって導通する。こうした構成であっても、受雷部50とタワー20とをつなぐ導線を実現することは可能である。なお、上述した導線の構成において、各導線部分の少なくとも2つを1つの導線部として連続した構成とすることも可能である。また、導線が受雷部50から接地部まで一続きの構成をなすのであれば、ナセル30の内部に配置された導線部分と、タワー20の内部に配置された導線部分との少なくとも1つを省略することも可能である。こうした構成では、各導線の接続部分を取り外して、電源75,175を接続することができる。これにより、電源75,175をハブ40の内部や、ナセル30の内部に配置することができる。
【0085】
・上記各実施形態では、導通確認作業において、第2工程を行った後に、引き続き第3工程を行う構成を例示した。こうした構成は適宜変更が可能である。例えば、導通確認作業において、第2工程においてダウンコンダクタ60の導通が確認できた場合、第3工程を行わずに作業を終了するようにしてもよい。すなわち、断線が生じている場合であって第2工程においてダウンコンダクタ60の導通が確認できないときにのみ、その後に第3工程を行うようにしてもよい。
【0086】
また、第3工程を省略して、第2工程までで導通確認作業を終了する構成としてもよい。
・上記各実施形態では、風力発電装置10に設けられる導線の導通確認方法を例に説明した。導線の導通確認方法は、風力発電装置10に設けられる導線以外にも適用可能である。例えば、ビルなどの高層建築物においては、屋上に受雷部50としての避雷針が設けられ、該避雷針と接地部との間をつなぐ導線がビルの内部に引き回されている場合等がある。こうした構成であっても、導線と電位差センサとの何れか一方に電源から電圧を印加する第1工程を実行する。また、第1工程によって電圧を印加している状態で導線と電位差センサとの間で発生した電位差を電位差センサによって検出する第2工程とを実行する。これにより、避雷針に非接触の状態で導通確認を行うことが可能になる。このように、上記各実施形態と同様の導通確認方法を、高層建築物に設けられる導線の導通確認方法に適用することで、上記(1-1)または(2-1)に記載の作用及び効果と同様の作用及び効果を得ることは可能である。
【符号の説明】
【0087】
10…風力発電装置
20…タワー(接地部)
30…ナセル
31…発電機
31A…ロータ軸
40…ハブ
41…ブレード
50…受雷部
60…ダウンコンダクタ(導線)
61…分岐線部
62…集合線部
75…電源
76…第1導電線
77…第2導電線
80…ドローン(無人移動体)
80A…プロペラ
81…電位差センサ
175…電源
180B…検電部
181…第1電界センサ(第1電位差センサ)
182…第2電界センサ(第2電位差センサ)
C1…第1連結点
C2…第2連結点
G…地面
図1
図2
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図5
図6
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図11