(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】マルチセクションの集光モジュールを備えた短波長放射線源
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240904BHJP
H05G 2/00 20060101ALI20240904BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
G03F7/20 503
H05G2/00 K
H05H1/24
(21)【出願番号】P 2023514896
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 RU2021050277
(87)【国際公開番号】W WO2022050875
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-04-11
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521466910
【氏名又は名称】アイエスティーイーキュー ビー.ヴィー.
(73)【特許権者】
【識別番号】323002842
【氏名又は名称】アイエスティーイーキュー グループ ホールディング ビー. ヴィー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】弁理士法人東京UIT国際特許
(72)【発明者】
【氏名】ヴィノクードフ・アレクサンドル・ユリエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】イワノフ・ウラジミール・ヴィタリエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】グルシュコフ・ヂェニース・アレクサンドロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】エルウィー・サミル
(72)【発明者】
【氏名】コシェレブ・コンスタンチン・ニコラエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】クリヴコリトフ・ミハイル・セルゲーヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】クリフツン・ヴラジミル・ミハイロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ラシ・アレクサンドル・アンドレーエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】メドヴェージェフ・ヴャチェスラフ・ヴァレリエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】シデルニコフ・ユーリー・ヴィークトロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフォロヴ・オレーグ・ボリーソヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ヤクーシェフ・オレーグ・フェリクソヴィチ
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-522839(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0163197(US,A1)
【文献】特開2008-166772(JP,A)
【文献】特開2009-267407(JP,A)
【文献】特表2013-526071(JP,A)
【文献】米国特許第05763930(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
H05G 2/00
H05H 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ(2)が短波長放射線を放出する真空チャンバ(1)内に配置される光学集光器(3)を備え,前記光学集光器(3)への前記短波長放射線の経路上にデブリ軽減手段(4)をさらに備え,
前記デブリ軽減手段(4)が,前記光学集光器(3)に至る前記短波長放射線のデブリフリーの共心ビーム(7)を出力するように配置された少なくとも2つのケーシング(6)を含み,
各ケーシングの外面が,前記プラズマ(2)からの短波長放射線伝播方向に対して実質的に平行に延在する2つの第一面(10)を含み,
各ケーシング(6)の外側に,前記ケーシング(6)の内側に磁場を形成する永久磁石(9)があり,前記永久磁石(9)によって形成される磁場が前記共心ビーム(7)からデブリ粒子の荷電部分を除去して前記デブリフリーの共心ビームを提供する,
集光モジュールを備えたプラズマ短波長放射線源。
【請求項2】
各ケーシング(6)が,前記プラズマ(2)からの前記短波長放射線伝播方向に実質的に平行に延在し,かつ前記ケーシングの前記2つの第一面(10)に対して実質的に垂直に延在する2つの第二面(12)を含む,請求項1に記載の放射線源。
【請求項3】
各ケーシング(6)の第一面(10)の面積が前記ケーシング(6)の残りの面の面積よりも大きく,前記永久磁石(9)が各ケーシング(6)の前記第一面(10)と実質的に接触している,請求項1に記載の放射線源。
【請求項4】
各ケーシング(6)の前記第一面(10)の面積が前記ケーシング(6)の残りの面の面積未満であり,前記永久磁石(9)が前記ケーシング(6)の前記第一面(10)以外の面に配置されている,請求項1に記載の放射線源。
【請求項5】
各ケーシング(6)の前記2つの第一面(10)の間の角度が30度未満である,請求項1に記載の放射線源。
【請求項6】
2つの隣り合うケーシング(6)の隣り合う面の間の角度が3~10度である,請求項1に記載の放射線源。
【請求項7】
互いに最も離れたケーシング(6)の互いに最も離れた部分に配置された前記永久磁石(9)が磁心(11)によって接続されている,請求項1に記載の放射線源。
【請求項8】
前記光学集光器(3)は,前記デブリフリーの共心ビーム(7)の各々の経路に据え付けられた複数のミラー(8)を含む,請求項1に記載の放射線源。
【請求項9】
すべてのミラー(8)の反射面が回転楕円面(15)を形成し,その一つの集中点が前記プラズマ(2)であり,もう一つの集中点(16)が光学集光器のすべてのミラーの焦点である,請求項8に記載の
放射線源。
【請求項10】
前記デブリ軽減手段(4)が,各ケーシング(6)と前記光学集光器(3)の間に据え付けられたカーボンナノチューブ(CNT)を主成分とする膜(13)を含む,請求項1に記載の放射線源。
【請求項11】
前記デブリ軽減手段(4)が各ケーシング(6)内において前記プラズマに向かう保護ガス流を含み,各CNT膜(13)が,前記短波長放射線の前記デブリフリーの共心ビーム(7)の出口用のケーシング窓としての役割と,それを通る前記保護ガスの出口を防ぐガスシャッターとしての役割を同時に果たす,請求項10に記載の放射線源。
【請求項12】
前記永久磁石(9)が前記ケーシングの全長に沿って配置されている,請求項1に記載の放射線源。
【請求項13】
前記デブリ軽減手段(4)が,前記ケーシング(6)のそれぞれに設置され,前記プラズマ(2)に対して径方向,かつ磁力線に対して実質的に垂直に向けられたフォイルプレート(22)を含む,請求項1に記載の放射線源。
【請求項14】
前記プラズマが,レーザー生成プラズマ,zピンチプラズマ,プラズマフォーカス,放電生成プラズマ,レーザー誘導放電プラズマからなる群から選択可能なものである,請求項1に記載の放射線源。
【請求項15】
前記プラズマが,回転ターゲットアセンブリ(20)によってレーザービーム(21)の焦点領域に供給される液体金属ターゲット(17)のレーザー生成プラズマである,請求項1に記載の放射線源。
【請求項16】
前記
液体金属ターゲット(17)が,前記回転ターゲットアセンブリ(20)に設けられる環状溝(19)の回転軸(18)に面する表面上に遠心力によって形成される溶融金属層である,請求項15に記載の
放射線源。
【請求項17】
プラズマ形成位置においてプラズマによって放出される放射線を光学集光器によって収集するステップと,前記プラズマによって放出される放射線の少なくとも一部を焦点に案内するステップとを含み,
前記プラズマによって放出される放射線が,デブリ軽減手段に配備され,短波長放射線のデブリフリーの共心ビームを形成するように配置された少なくとも2つのケーシングを通って外へ出て光学集光器に案内され,各ケーシングの外面が,前記プラズマ(2)からの短波長放射線伝播方向に対して実質的に平行に延在する2つの第一面(10)を含
み,
各ケーシングの外側で,前記ケーシングの内側に磁場を形成する永久磁石がデブリ粒子の荷電部分を軽減するために使用される,
放射線の収集方法。
【請求項18】
前記光学集光器が,前記デブリフリーの共心ビームのそれぞれの経路に据え付けられた複数のミラーを含み,すべてのミラーの反射面が楕円面または変形楕円面上にあり,その一つの集中点が前記プラズマである,請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,約0.4~200nmの波長の軟X線(soft X-ray),超紫外線(EUV)(extreme ultraviolet)および真空紫外(VUV)(vacuum ultraviolet)放射を発生(生成)するように設計された高輝度放射線源および放射線の収集方法に関するもので,これらは大きな集束角(large collection angle)において高効率のデブリ軽減を提供し,高出力光源およびその統合機器の長期運用を保証するものである。
【背景技術】
【0002】
高強度の軟X線,超紫外線(EUV)および真空紫外(VUV)領域の放射線源が,顕微ミラー検査,生物医学的および医学的診断,材料試験,原子物理学におけるナノ構造の解析,ならびにリソグラフィといった多くの分野において使用されている。
【0003】
軟X線領域(0.4~10nm),EUV(10~20nm)領域およびVUV(20~120nm)領域において効率的に放出するプラズマは,高出力レーザーの照射をターゲットに集束(集中)させることによっても,放電においても,得ることができる。
【0004】
2013年8月22日にWO/2014/001071の下で公開された国際特許出願PCT/EP2013/061941から,放射生成プラズマによって生成された放射線を収集し,生成された放射線を案内するための集光器を備え,プラズマ放射線のビームにおける赤外レーザー放射線の抑制手段をさらに備える,集光モジュールを備えたレーザー生成プラズマ(LPP)(laser-produced plasma)EUV光源が知られている。
【0005】
LPPEUV光源は高輝度であることを特徴とする。しかしながら,LPPEUV光源の長い寿命を保証するためにデブリから光学集光器を保護する課題がある。
【0006】
放射線源の作動中にプラズマの副生成物として発生するデブリは,プラズマ燃料物質の高エネルギーイオン,中性原子または蒸気およびクラスタの形態をとることがある。デブリ粒子は,放射線源の近くに位置する一または複数の集光ミラーから構成し得る集光光学系を劣化させる。集光ミラーに堆積した微液滴および粒子がその反射係数を低下させるという事実に加え,高速粒子が,集光ミラー,および,場合によっては集光ミラーの背後に位置する光学系のその他の部品に損傷を与えることがある。このため,短波長放射線のデブリフリーの高輝度源を開発することが急務である。
【0007】
2013年8月22日にWO/2013/122505の下で公開された国際特許出願PCT/RU2012/000701から,レーザートリガー放電プラズマEUV光源が知られている。集光レーザービームは,レーザートリガー放電が非対称で大部分が曲がったバナナ状の形状を有するようにして電極のうちの一つに案内される。そのような放電の固有磁場は,より弱い磁場の領域に対する放電プラズマの支配的な運動を決定する勾配を有する。プラズマ流の方向は光学集光器に向かう方向とは著しく異なっている。高放射力(high radiation power)を得るために上記放電は高パルス繰り返し率(high pulse repetition rate)において生成される。この発明は荷電粒子の簡単かつ高効果的な緩和を提供する。
【0008】
もっとも,中性粒子およびクラスタの抑制にはより高度なデブリ軽減技術の使用が必要である。
【0009】
軟X線,EUVおよびVUV領域における発光はレーザー生成プラズマ(laser-produced plasma)の使用によって最も効果的となる。近年のLPP放射線源の開発は,7nmノード以下の集積回路(ICs)の大量生産用の投影極端紫外線リソグラフィの開発によって非常に刺激を受けている。
【0010】
特別に注入されたガス中における短波長放射線ビームの経路に沿って生成された補助プラズマの使用に基づくデブリ軽減技術が,2016年2月23日に公開された米国特許第9268031号に開示されている。補助プラズマに触れる(expose)結果として電荷を得るデブリは,その後にパルス電界によって偏向される。この方法は,たとえばキセノンをプラズマ燃料として用いる線源において,デブリのイオン/蒸発部分に対する光学集光器の保護に効果的である。
【0011】
しかしながら,金属をプラズマ形成材料として用いる線源において,光学集光器の構成要素に対する主な脅威はデブリ粒子の微液滴部分であり,それに対してこの方法は無力である。
【0012】
2013年8月27日に公開された米国特許第8519366号から,Sn液滴ターゲットを用いるLPPEUV放射線源におけるデブリ軽減方法が知られている。この方法は,デブリ粒子の荷電部分の磁気緩和を用いることを含む。これに加えて,上記デブリ技術は,フォイルトラップおよび保護用のバッファガス流を供給するポートを含み,液体金属ターゲット材の中性原子およびクラスタの十分効果的な閉じ込めを提供する。
【0013】
しかしながら,デブリ粒子の微液滴部分を軽減するためにはさらなるかなり複雑な手段が必要である。
【0014】
2007年11月27日に公開された米国特許第7302043号から知られるデブリ軽減方法はこの決定が部分的にない。この方法は高速回転シャッタを利用するもので,このシャッタは1回転周期の間に少なくとも一つの開口を通して短波長放射線を透過させ,シャッタの別の回転周期の間にデブリの通過を阻止することができる。
【0015】
しかしながら,小型の放射線源におけるそのようなデブリ軽減手段の使用は,実現するのが技術的にあまりに困難である。
【0016】
この欠点は,それらの全体を参照することによりこの明細書に援用される,2020年4月28日に公開された米国特許第10638588号,2020年3月10日に公開された米国特許第10588210号,2020年5月5日に公開された米国特許出願第20200163197号から知られる短波長放射線源には全くない。これらの特許文献において開示された線源は,集光レーザービームによって相互作用領域に溶融金属層の形でターゲットを到達させる回転ターゲットアセンブリを備える真空チャンバを含む。デブリ軽減手段の複合体は80m/s以上の速い線速度によるターゲットの回転を含む。デブリのイオン/蒸発部分を抑制するために,フォイルトラップ,磁場および保護用バッファガスの指向性流の利用が提供される。放射線源の実施形態では,カーボンナノチューブの交換可能膜(CNT膜)が短波長放射線ビームの経路中に設置される。また,パルス放出プラズマの領域にレーザービームが入射され,そこから短波長放射線ビームを出るようにした,放出プラズマの領域を取り囲むデブリシールドが固定的に設置される。レーザープレパルスを使用してデブリのイオン部分を抑制することも提案されている。別の提案されたデブリ軽減メカニズムは,たとえば,およそ1MHzの高繰り返し率のレーザーパルスを使用するものであり,後続のパルスの放射およびプラズマによって直前のレーザーパルスから生じる最大0.1μmのサイズの微液滴の蒸発を確実にする。
【0017】
これらの方法はデブリ軽減の効率が十分に高いが,それらは短波長プラズマ放射線の集束角を空間的に比較的小さくすることを目的とした結果,短波長放射線ビームの平均出力が多くの用途に不十分であることが分かったものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって,上述の欠点のうちの少なくともいくつかを排除するニーズがある。特に,小型で,大きな集光角によって非常に強力で,短波長放射線の出力ビームの経路において実質的に完全なデブリ軽減を提供する改善型光源のニーズがある。
【0019】
この発明は,軟X線,EUVおよびVUV放射の純高輝度源の平均出力における多重増加(multiple increase)に関連する技術的課題を解決するとともに,それらの商業利用可能性および経済運用を保証することを目的とする。
【0020】
この発明の技術的結果は,大きな,好ましくは0.25sr以上の立体角において伝播する短波長放射線のビームにおける,高効率のデブリ軽減を伴う非常に強力かつ高輝度の短波長放射線源の作成である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的は,集光モジュールを備えたプラズマ短波長放射線源であって,プラズマが短波長放射線を放出する真空チャンバ内に位置する光学集光器を備え,前記光学集光器への前記短波長放射線の経路上のデブリ軽減手段をさらに備えることによって達成可能である。
【0022】
前記放射線源は,前記光学集光器に至る(到達する)(coming to)前記短波長放射線のデブリフリーの共心ビーム(debris-free homocentric beams)を出力するように配置された少なくとも2つのケーシングを含み,各ケーシングの外側には,前記ケーシングの内側に磁場を形成する永久磁石があり,前記永久磁石によって形成される磁場が前記共心ビームからデブリ粒子の荷電部分(charged fraction)を除去してデブリフリーの共心ビームを提供する前記デブリ軽減手段によって特徴付けられる。
【0023】
好ましくは,各ケーシングの外面は,前記プラズマからの短波長放射線伝播方向に対して実質的に平行に延在し,かつ垂直方向または別の選ばれた方向に対して平行に延在する2つの第一面(two first faces extended substantially parallel to a direction of short-wavelength radiation propagation from the plasma and parallel to a vertical or to another chosen direction)を含む。
【0024】
好ましくは,各ケーシングは,前記プラズマからの前記短波長放射線伝播方向に実質的に平行に延在し,かつ前記ケーシングの前記2つの第一面に対して実質的に垂直に延在する2つの第二面(two second faces extended substantially parallel to the direction of short-wavelength radiation propagation from the plasma and substantially perpendicular to the two first faces of the casing)を含む。
【0025】
この発明の実施形態では,各ケーシングの第一面の面積がケーシングの残りの面の面積よりも大きく,前記永久磁石は各ケーシングの前記第一面と実質的に接触する。
【0026】
この発明の実施形態では,各ケーシングの前記第一面の面積は前記ケーシングの残りの面の面積未満であり,前記永久磁石は前記ケーシングの前記第一面以外の面に配置されている。
【0027】
この発明の実施形態では,各ケーシングの前記2つの第一面の間の角度が30度未満である。
【0028】
この発明の実施形態では,前記2つの隣り合うケーシングの隣り合う面の間の角度が3~10度である。
【0029】
この発明の実施形態では,互いに最も離れたケーシングの互いに最も離れた部分に配置された前記永久磁石(複数)が磁心によって接続されている。
【0030】
この発明の実施形態では,前記光学集光器が,前記短波長放射線の前記デブリフリーの共心ビームのそれぞれの経路に据え付けられた(installed)複数のミラーを含む。
【0031】
好ましくは,すべてのミラーの反射面が回転楕円面(spheroid)を形成し,その一つの集中点(in one focus)がプラズマであり,もう一つの集中点(in another focus)が光学集光器のすべてのミラーの焦点(focal point)である。
【0032】
好ましくは,前記デブリ軽減手段が,短波長放射線のビームの経路(複数)において各ケーシングと前記光学集光器の間に据え付けられたカーボンナノチューブ(CNT)(複数)を主成分(ベース)とする膜(複数)を含む。
【0033】
この発明の実施形態では,前記デブリ軽減手段は,各ケーシング内において前記プラズマに向かう(directed)保護ガス流(複数)を含み,各CNT膜が,前記短波長放射線の前記デブリフリーの共心ビームの出口用のケーシング窓としての役割と,それを通る前記保護ガスの出口を防ぐガスシャッターとしての役割を同時に果たすものである。
【0034】
この発明の実施形態では,前記永久磁石(複数)が前記ケーシングの全長に沿って配置されている。
【0035】
好ましくは,前記デブリ軽減手段は,前記ケーシングのそれぞれに設置され,前記プラズマに対して径方向で,磁力線(magnetic field lines)に対して実質的に垂直に向けられた(配向された)(oriented)フォイルプレート(複数)を含む。
【0036】
この発明の実施形態では,プラズマは,レーザー生成プラズマ(laser-produced plasma),zピンチプラズマ(z-pinch plasma),プラズマフォーカス(plasma focus),放電生成プラズマ(discharge-produced plasma),レーザー誘導放電生成プラズマ(laser-initiated discharge-produced plasma)からなる群から選択することができる。
【0037】
好ましくは,前記プラズマが,回転ターゲットアセンブリによってレーザービームの焦点領域に供給される液体金属ターゲットのレーザー生成プラズマである。
【0038】
好ましくは,前記ターゲットが,前記回転ターゲットアセンブリに設けられる,環状溝の回転面の軸に対向する(面する)面上に遠心力によって形成される溶融金属層である。
【0039】
別の態様においては,この発明は,放射線の収集方法に関するもので,前記方法は,光学集光器によってプラズマ形成位置においてプラズマによって放出される放射線を収集するステップと,前記放射線の少なくとも一部を焦点に案内する(方向づける)(directing)ステップとを含み,前記プラズマによって放出される放射線が,デブリ軽減手段に配備され,短波長放射線のデブリフリーの共心ビームを形成するように配置された少なくとも2つのケーシングを通って外に出て光学集光器に案内される。
【0040】
好ましくは,各ケーシングの外側に,前記ケーシングの内側に磁場を形成する永久磁石があり,前記永久磁石によって形成された磁場はデブリ粒子の荷電部分を軽減し,各ケーシングにおいて保護ガス流,フォイルトラップ,CNT膜を含むその他のデブリ軽減技術も用いて前記デブリフリーの共心ビームを提供する。
【0041】
好ましくは,前記光学集光器は,前記デブリフリーの共心ビームのそれぞれの前記経路に据え付けられた複数のミラーを含み,すべてのミラーの反射面が楕円面または変形楕円面上にあり,その一つの集中点がプラズマであり,もう一つの集中点が光学集光器のすべてのミラーの焦点である。
【0042】
この発明の上述およびその他の目的,効果および特徴は,添付の図面と関連して例示として提供される,その実施形態の以下の非限定的な説明からより明らかとなるであろう。
【0043】
この発明の本質は図面に示されている。
【0044】
これらの図面は,この技術的解決策を実施するための選択肢の全範囲を網羅するものでも,さらに,限定するものでもないが,その実施態様の具体的事例の単なる図示資料を表すものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】この発明によるマルチセクションの集光モジュールを備える短波長放射線源の概略図である。
【
図2】この発明によるマルチセクションの集光モジュールを備える短波長放射線源の概略図である。
【
図3】回転ターゲットアセンブリを備えるレーザー生成プラズマ放射線源の概略図である。
【
図4】回転ターゲットアセンブリを備えるレーザー生成プラズマ放射線源の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1にいくつかの縮尺で示す発明実施形態の一例によると,プラズマ放射線源は,短波長放射線を放出するパルス状高温プラズマ2の領域を有する真空チャンバ1を備えている。副生成物として,プラズマ形成材料の蒸気,イオンおよびクラスタを含むデブリ粒子がプラズマ領域に生成される。プラズマ放射線源はさらに,光学集光器3,およびプラズマ2から光学集光器3に案内される短波長放射線ビーム5の経路上に配置されるデブリ軽減手段4とからなる集光モジュールを備えている。光学集光器は,短波長放射線を,中間焦点,そして次に短波長放射線によって動作する光学システムに再案内する。
【0047】
この発明によると,デブリ軽減手段4は,好ましくは複数のミラー8からなる光学集光器3に入る(至る)(coming to)短波長放射線のデブリフリーの共心ビーム7を出力するように配置された少なくとも2つのケーシング6を含む。特徴的なプラズマサイズは約0.1mmであり(自由電子密度のFWHM(半値全幅)または発光プラズマ領域の輝度プロファイルのFWHMとして測定される),したがってプラズマ放射線源は疑似点(quasi-point)とみなすことができ,そこから出てくる放射線ビームは共心(homocentric)とみなすことができる。
【0048】
各ケーシング6の外側には,ケーシング6の内側に磁場を形成する永久磁石9があり,永久磁石9によって形成された磁場は共心ビーム7からデブリ粒子の荷電部分を除去してデブリフリーの共心ビームを提供する。
【0049】
各ケーシング6の外面は,実質的に前記プラズマ2からの短波長放射線伝播方向に対して平行に,かつ垂直または別の選ばれた方向に対して平行に延在する2つの第一面10を含む。
【0050】
各ケーシング6の外側には,ケーシング6の内側に磁場を生成する永久磁石9があり,その磁気誘導ベクトルはケーシングの光軸に対して実質的に垂直に向けられる。
【0051】
好ましくは,永久磁石9はケーシング6の全長に沿って設けられる。
【0052】
公知の解決法とは対照的に,この発明によるデブリ軽減手段4はマルチセクション(複数の仕切られた場所の)システム(multi-section system)であり,短波長プラズマ放射線の収集の立体角を大幅に増加させることができるとともに,高効率のデブリ軽減を維持することができる。収集立体角の増加によって短波長放射線の収集力(the collected power of short-wavelength radiation)を大幅に(数倍)増加させることができ,それによってほとんどすべての応用分野においてそのようなタイプの放射線源の使用効率を向上させることができる。
【0053】
単一セクションのシステム(single-section system)では,ハウジングの横断寸法の単純な増加が荷電粒子に対する磁気保護の効果の激減を導く。これは,磁場の力線に沿うケーシングの大きさが大きければ大きいほど,ケーシングの容積における磁気誘導の値が低くなるという事実によるもので,これによって短波長3を放出するプラズマの領域から集光ミラー8に向けてケーシングを通って伝播する荷電粒子の横方向速度の減少(a decrease in the transverse velocity of charged particles)につながる。したがって,断面の飛行中,粒子はミラーに衝突するのを回避するために十分な距離を偏向することができない。実験では,磁気保護の有効な動作のためには,短波長を放出するプラズマの領域から約40mmの距離のケーシングの中央における磁気誘導の値が,少なくとも0.5Tであることが必要であることが判明した。また,磁石が配置されるケーシングの側面間の平角(the flat angle between the sides of the casing)は30度を超えてはならないことが実験的に立証された。
【0054】
したがって,ケーシングの面間の平角が30度を超えないマルチセクションのデブリ軽減システムの使用により,各々のケーシングにおいて,荷電粒子の高効果的な磁気緩和に十分な大きさの定磁場を生成することができる。
【0055】
この発明の好ましい実施形態によれば,互いに最も離れたケーシング6の互いに最も離れた第一面10に設けられた永久磁石9が磁心11によって接続される。磁心11は,好ましくは磁気的に軟らかい鋼製のもので,磁場を磁心に集中させることによって散乱による磁場の損失を減少させ,それによって各ケーシングの容積における磁場を増加させることができ,磁場デブリ軽減の効率を向上させる。
【0056】
この発明の実施形態では,各ケーシング6は,プラズマ2からの短波長放射線伝播方向に対して実質的に平行に延在し,かつケーシングの2つの第一面10に対して実質的に垂直に延在する2つの第二面12を含む。
【0057】
プラズマ2に対する径方向における第一および第二面10,12の向きによって,幾何学的に透明度が高いマルチセクションのデブリ軽減システム(high geometric transparency of the multisectional debris mitigation)が提供される。この発明の実施形態では,2つの隣り合うケーシング6の隣り合う面の間の角度が3~10度の範囲であるという事実によって,同目的が果たされている。
【0058】
この発明の好ましい実施形態では,各ケーシング6の第一面10の面積はケーシング6の残りの面の面積よりも大きく,永久磁石9は各ケーシング6の第一面10と実質的に接触する。
【0059】
別の実施形態(図示略)において,各ケーシング6の第一面10の面積はケーシングの残りの面の面積未満であってもよく,永久磁石9はケーシング6の第一面10以外の面,たとえば,各ケーシング6の大きな第二面12に配置してもよい。
【0060】
デブリ軽減手段4は,好ましくは,共心ビーム7の経路において各ケーシング6と光学集光器3のミラー8の間に据え付けられた(installed)カーボンナノチューブ製の膜13を含む。CNT膜は,好ましくは20~100nmの範囲の厚さを有しており,20nmよりも短い波長の範囲においてそれらの高い強度と高い透明度を保証する。すなわち,CNT膜13は20nmよりも短い波長範囲における高い透明度により共心ビーム7の出口を提供する。同時に,CNT膜13はデブリ粒子の通過を防ぎ,短波長放射線のデブリフリーの共心ビーム7を提供する。
【0061】
このように,デブリ軽減手段は,各ケーシング6内においてプラズマに向かう保護ガス流を含むとともに,各CNT膜13が,短波長放射線のデブリフリーの共心ビーム7の出口用のケーシング窓と,そこを通って保護ガスが外に出るのを防ぐガスシャッターとしての役割を同時に果たす。
【0062】
約20Paの保護ガス圧においてケーシングの平均真空度を提供することによって,プラズマ領域から散乱するガス分子とデブリ粒子との間の衝突数を増加させることができ,それによってそれらを直線運動から偏向させることができる。同時に,ガスシールとしてのCNT膜の使用によって,消費者向け光学機器への共心ビーム7の伝播の全経路に沿うのではなく,ケーシング内のみにおける増加した圧力の使用が可能になる。これはガスへの吸収に起因する短波長放射線の損失を減少させる。
【0063】
20nm以上の波長範囲の放射線を得る場合には,その範囲の放射線の透明度が,放射波長が長くなるほどに急激に減少するので,CNT膜13は使用されない。
【0064】
図2に示す好ましい実施形態では,光学集光器3は複数のミラー8を含むととも,すべてのミラーの反射面が回転楕円面(ellipsoid of revolution, spheroid)15に属しており(belongs to),その一つの集中点(focus)はパルス放出プラズマ2の領域であり,もう一つの集中点は光学集光器3のミラー8の焦点(the focus point of the mirrors)16である。このようなミラーの製造にはとても費用がかかるが,それは,集光ミラー基板の粗さがほんの0.2~0.3nmであり,特に非球面形状を有するそのようなミラーの費用はそれらのサイズの増加と共に増大し,面積の増加よりも2~3倍強力な法則に従うからである。そのため,複数の同一のミラー8を使用することにより光学集光器の費用が大幅に減少する。
【0065】
パルス放出プラズマは,レーザー生成プラズマ,zピンチプラズマ,プラズマフォーカス,放電生成プラズマ,レーザー誘導放電プラズマからなる群から選択することができる。
【0066】
好ましい実施形態では,その全体を参照することによりこの明細書に援用される,2020年5月21日に公開された米国特許出願第20200163197号で詳述したように,パルス状高温プラズマは,回転ターゲットアセンブリによってレーザービームの焦点領域に供給される液体金属ターゲット材のレーザープラズマである。
【0067】
図3に概略的に示すこの発明の好ましい実施形態によれば,ターゲット17は,回転軸18に面する回転ターゲットアセンブリ20の環状溝19の表面の遠心力によって形成される溶融金属層である。この発明の好ましい実施形態の等角図を
図4に概略的に示す。
【0068】
図3および
図4に示す液体金属ターゲットのレーザー生成プラズマを用いた好ましい実施形態の高輝度短波長放射線源の操作は次の通りに行われる。真空チャンバ1は,オイルフリーポンプシステムによって10
-5・・・10
-8mbar以下の圧力までポンピングされ,液体金属ターゲット材と相互に作用することがある窒素,酸素,カーボン等のガス状成分が除去される。
【0069】
Sn,Li,In,Ga,Pb,Bi,Znおよびそれらの合金を含む非毒性低融点金属の群に属する材料のターゲット17が,回転ターゲットアセンブリによって集光レーザービーム21とともに相互作用領域に供給される。ターゲットは1kHz~1MHzの範囲の高いパルス繰り返し周波数(率,速度)の集光パルスレーザービーム21にさらされる。ターゲット材およびターゲット上のレーザー出力密度に応じて,レーザープラズマの短波長放射線が,軟X線および/またはEUVおよび/またはVUVスペクトル領域において生成される。
【0070】
プラズマ2によって放出された短波長放射線のビーム5は,ケーシング6および好ましくはCNT膜13を通過してデブリフリーの共心ビームに変換され,光学集光器3のミラー8に案内される。ここで永久磁石9(
図4)が,好ましくは共心ビームの軸に垂直な向きの定磁場(a constant magnetic field, preferably directed perpendicular to the axis of the homocentric beams)を形成する。ローレンツ力の作用の下,共心ビーム7の軸に沿う直線運動から外れたデブリ粒子の荷電部分(主にイオン)が,ケーシング6の内壁またはケーシング内に特別に設置されたプレート22(
図3)のいずれかに衝突し,プレートによってトラップされる(閉じ込められる)。ケーシング6内に搭載されたプレート22は,プラズマ2に対して径方向に,好ましくは磁石9によって形成される磁力線に対して垂直に向けられる(directed)。粒子の速度が速ければ速いほど,磁場の影響を受けてそれらが偏向する横断距離が小さくなるので,プレート22によって高速荷電粒子をより効率的に捕捉することができる。これととも,保護ガス流がデブリ粒子のイオン/蒸気部分の移動を防ぎ,それらをケーシング6およびプレート22の壁に堆積させ,デブリからCNT膜13が保護される。20nmよりも短い波長範囲における高い透明度によりCNT膜は光学集光器3のミラー8への短波長ビームの出口を提供する。同時に,CNT膜13はデブリの通過を防ぎ,各ミラー8の信頼性の高い保護を提供する。さらに,ケーシング6内における効果的なデブリ軽減がガス入口14から供給される保護ガスの指向流(流れの向き)(directed flows)を調整することによって保証される。シールドガス流はデブリのイオン/蒸気部分からCNT膜13を保護し,それらの耐用年数を延ばす。
【0071】
同様のデブリ軽減手段はレーザービーム21の経路にも沿って使用される。
【0072】
上記装置は,その態様の一つにおいて放射線の収集方法に関するこの発明の特定の実施形態を実現する。この方法は,光学集光器3によってプラズマ形成位置においてプラズマ2によって放出される短波長放射線を収集するステップと,放射線の少なくとも一部を焦点16に向けるステップとを含む(
図2)。プラズマ2によって放出される放射線ビーム5は,デブリ軽減手段4と一体化され,短波長放射線のデブリフリーの共心ビーム7を形成するように配置された,少なくとも2つのケーシングを通って外に出て光学集光器3に案内される。
【0073】
各ケーシングの外側では,ケーシング6の内側に磁場を形成する永久磁石9がデブリ粒子の荷電部分を軽減するために使用され,保護ガス流,フォイルトラップ,CNT膜を含むその他のデブリ軽減技術もまた各ケーシングにおいて使用され,デブリフリーの共心ビーム7が提供される。
【0074】
光学集光器3は,好ましくはデブリフリーの共心ビーム7のそれぞれの経路に設けられた複数のミラー8を含み,すべてのミラーの反射面は楕円面15または変形楕円面の表面上にあり,その一つの集中点(焦点)はプラズマ2であり,もう一つの集中点(焦点)16は光学集光器3のすべてのミラー8の焦点である。変形楕円形状を,完全な楕円形状と比較して遠距離場に収集された放射線の強度均一性を向上させるために用いることができる。
【0075】
このようにこの発明は,長寿命と使いやすさを備えた,軟X線,EUVおよびVUV放射線のデブリフリーの強力な高輝度線源を形成することを可能にする。
【産業上の利用可能性】
【0076】
提案された装置は,多くの分野(顕微ミラー検査,材料科学,材料のX線診断,生物医学的および医学的診断,EUVリソグラフィ用の化学マスク欠陥検査を含むナノおよびマイクロ構造の検査)を適用の対象とする。