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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】分注装置及び分注方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20240904BHJP
【FI】
G01N35/10 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020076286
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021173588
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】502338292
【氏名又は名称】ユニバーサル・バイオ・リサーチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 秀二
(72)【発明者】
【氏名】池田 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 保泉
(72)【発明者】
【氏名】平原 善直
(72)【発明者】
【氏名】久保 明
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0219887(US,A1)
【文献】特開2007-327765(JP,A)
【文献】特開2002-048806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分注ヘッドに対して保持される複数の分注チップにより、液体試料を収容する容器内の液体を吸引及び吐出を行う分注装置であって、
先端部に複数のノズルを有し、このノズルにより前記分注チップ内への液体試料の吸引及び吐出を同時に行う吸引・吐出操作部を有する前記分注ヘッドと、
前記複数のノズルに着脱自在に装着される前記複数の分注チップと、を有し、
前記ノズルは、シリンダに連結され、かつ吸引吐出孔を有し、前記シリンダ内を軸線方向に沿って摺動可能に設けられたプランジャの前記軸線方向の後退、前進移動により、前記吸引吐出孔を通して前記液体試料の吸引及び吐出を行うものであり、
前記分注チップは内容量が異なる小容量の第1の分注チップと大容量の第2の分注チップとの複数の分注チップを有し、
前記ノズルは、前記分注チップの頭部内に相対的に挿入されて前記分注チップを着脱自在に保持可能に構成され、
前記第2の分注チップの頭部の開口内に、中心部に装着孔が形成された筒状の装着部材が嵌合され、チップ本体と一体化されて設けられており、前記装着孔は前記第2の分注チップ本体の内部と連通しており、
前記第1の分注チップの頭部の開口内には、前記装着部材が設けられておらず、
前記ノズルは、前記第1の分注チップについては前記装着部材が介在することなく前記第1の分注チップの頭部の開口内に直接、挿入され、前記第2の分注チップについては前記装着部材の装着孔内に相対的に挿入されて、それぞれの分注チップを着脱自在に保持可能に構成され、
前記複数のノズルにおける前記第1の分注チップ及び前記第2の分注チップの保持個所の外径は同一とされている、
ことを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記分注ヘッドにおける吸引・吐出操作部は、前記ノズルを通して液体試料の吸引量及び吐出量を選択可能に構成されている請求項1記載の分注装置。
【請求項3】
分注ヘッドに対して保持される複数の分注チップにより、液体試料を収容する容器内の液体を吸引及び吐出を行う分注装置を使用して分注を行う方法であって、
前記分注装置は、
先端部に複数のノズルを有し、このノズルにより前記分注チップ内への液体試料の吸引及び吐出を行う吸引・吐出操作部を有する前記分注ヘッドと、
前記複数のノズルに着脱自在に装着される前記複数の分注チップと、を有し、
前記ノズルは、シリンダに連結され、かつ吸引吐出孔を有し、前記シリンダ内を軸線方向に沿って摺動可能に設けられたプランジャの前記軸線方向の後退、前進移動により、前記吸引吐出孔を通して前記液体試料の吸引及び吐出を同時に行うものであり、
前記分注チップは内容量が異なる小容量の第1の分注チップと大容量の第2の分注チップとの複数の分注チップを有し、
前記ノズルは、前記分注チップの頭部内に相対的に挿入されて前記分注チップを着脱自在に保持可能に構成され、
前記第2の分注チップの頭部の開口内に、中心部に装着孔が形成された筒状の装着部材が嵌合され、チップ本体と一体化されて設けられており、前記装着孔は前記第2の分注チップ本体の内部と連通しており、
前記第1の分注チップの頭部の開口内には、前記装着部材が設けられておらず、
前記ノズルは、前記第1の分注チップについては前記装着部材が介在することなく前記第1の分注チップの頭部の開口内に直接、挿入され、前記第2の分注チップについては前記装着部材の装着孔内に相対的に挿入されて、それぞれの分注チップを着脱自在に保持可能に構成され、
前記複数のノズルにおける前記第1の分注チップ及び前記第2の分注チップの保持個所の外径は同一とされており、
前記容器は複数の液体試料を収容する収容部を有し、
前記分注ヘッドを前記容器に対して相対的に昇降及び水平移動させて、前記第1の分注チップ及び前記第2の分注チップにより前記液体試料の吸引及び吐出を同時に行う、
ことを特徴とする分注方法。
【請求項4】
前記分注ヘッドにおける吸引・吐出操作部は、前記ノズルを通して液体試料の吸引量及び吐出量を選択可能に構成されている請求項記載の分注方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注装置及び分注方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
検体の分析を行うための前処理として、検体及び試薬の分注、または試料の配合等のために液体試料の分注処理に際し、分注装置が用いられる。
分注装置は、外部に設けられ検体、種々の試薬などの液体試料を収容する複数の容器からなる容器群と、容器内に挿入して、容器内部に液体試料を流入させて貯留させ、また、容器から流出可能な使い捨ての分注チップと、その分注チップを着脱可能に装着されるノズルとを構成要素として含んでいる。
近年、前記容器群に換えて、複数の液体試料の液収容部を有する一体型のカートリッジ容器が用いられることが多い。
【0003】
前記ノズルと連通し、気体の吸引吐出を行うための分注シリンダが設けられる。
そして、時間あたりの処理量を高めるために、分注ヘッドに、多数のノズルと分注用シリンダの組みを配列し、分注ヘッドを前記容器群(液収容部群)に対して昇降可能にしておき、前記容器群(液収容部群)に対して、所定量の液体試薬を一斉に吸引及び吐出を行うように構成してある。
【0004】
このような分注装置においては、処理対象によっては、分注処理される液体試料の種類等によって必要とされる分注量が大きく異なる。例えば、1の分注装置を用いて、サンプルから核酸を抽出して、核酸の塩基配列を決定する処理を行う場合における、核酸の抽出処理には、大量、例えば1000μL程度の液量が使用されるのに対して、核酸の増幅処理には、微小量、例えば5μL程度の液量が使用されるにすぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-102836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、必要な分注液量に対応して分注容量が異なる複数の分注チップを用意することが考えられる。
【0007】
そこで、分注容量に応じて分注チップの長さを変えることが考えられるが、分注チップ群を同時的に昇降させて容器内の液体試薬の吸引・吐出を行うには不向きである。
【0008】
したがって、分注チップの径を大径のものと小径のものとに分けて用意するのが適している。
しかし、この場合には、小径の分注チップにノズルの外径が対応するのであれば、そのノズルは大径の分注チップとの関係ではすき間が生じ、大径の分注チップを保持できない。
【0009】
また、小径の分注チップ用の小径ノズルと、大径の分注チップ用の大径ノズルとの両者を分注ヘッドに装備させることも考えられるが、所定数の共通の外径のノズル群で、所定数の分注チップ群を着脱しながら分注操作を行えるようにすることが、分注装置のスペース、製作コストなどの点で望ましい。
【0010】
したがって、本発明の主たる課題は、所定数の共通の外径のノズル群で、所定数の分注チップ群を着脱しながら分注操作を行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決した本発明の代表的態様は次記のとおりである。
<分注装置の代表的態様>
分注装置の代表的態様は次のとおりである。
分注ヘッドに対して保持される複数の分注チップにより、液体試料を収容する容器内の液体を吸引及び吐出を行う分注装置であって、
先端部に複数のノズルを有し、このノズルにより前記分注チップ内への液体試料の吸引及び吐出を同時に行う吸引・吐出操作部を有する前記分注ヘッドと、
前記複数のノズルに着脱自在に装着される前記複数の分注チップと、を有し、
前記ノズルは、シリンダに連結され、かつ吸引吐出孔を有し、前記シリンダ内を軸線方向に沿って摺動可能に設けられたプランジャの前記軸線方向の後退、前進移動により、前記吸引吐出孔を通して前記液体試料の吸引及び吐出を行うものであり、
前記分注チップは内容量が異なる小容量の第1の分注チップと大容量の第2の分注チップとの複数の分注チップを有し、
前記ノズルは、前記分注チップの頭部内に相対的に挿入されて前記分注チップを着脱自在に保持可能に構成され、
前記第2の分注チップの頭部内に、中心に装着孔が形成された装着部材がチップ本体と一体化されて設けられており、前記装着孔は前記第2の分注チップ本体の内部と連通しており、
前記ノズルは、前記第1の分注チップについては前記装着部材が介在することなく前記第1の分注チップの頭部内に直接、挿入され、前記第2の分注チップについては前記装着孔内に相対的に挿入されて、それぞれの分注チップを着脱自在に保持可能に構成され、
前記複数のノズルにおける前記第1の分注チップ及び前記第2の分注チップの保持個所の外径は同一とされている、
ことを特徴とする分注装置。
【0012】
<分注方法の代表的態様>
分注方法の代表的態様は次のとおりである。
分注ヘッドに対して保持される複数の分注チップにより、液体試料を収容する容器内の液体を吸引及び吐出を行う分注装置を使用して分注を行う方法であって、
前記分注装置は、
先端部に複数のノズルを有し、このノズルにより前記分注チップ内への液体試料の吸引及び吐出を行う吸引・吐出操作部を有する前記分注ヘッドと、
前記複数のノズルに着脱自在に装着される前記複数の分注チップと、を有し、
前記ノズルは、シリンダに連結され、かつ吸引吐出孔を有し、前記シリンダ内を軸線方向に沿って摺動可能に設けられたプランジャの前記軸線方向の後退、前進移動により、前記吸引吐出孔を通して前記液体試料の吸引及び吐出を同時に行うものであり、
前記分注チップは内容量が異なる小容量の第1の分注チップと大容量の第2の分注チップとの複数の分注チップを有し、
前記ノズルは、前記分注チップの頭部内に相対的に挿入されて前記分注チップを着脱自在に保持可能に構成され、
前記第2の分注チップの頭部内に、中心に装着孔が形成された装着部材がチップ本体と一体化されて設けられており、前記装着孔は前記第2の分注チップ本体の内部と連通しており、
前記第1の分注チップの頭部の開口内には、前記装着部材が設けられておらず、
前記ノズルは、前記第1の分注チップについては前記装着部材が介在することなく前記第1の分注チップの頭部の開口内に直接、挿入され、前記第2の分注チップについては前記装着部材の装着孔内に相対的に挿入されて、それぞれの分注チップを着脱自在に保持可能に構成され、
前記複数のノズルにおける前記第1の分注チップ及び前記第2の分注チップの保持個所の外径は同一とされており、
前記容器は複数の液体試料を収容する収容部を有し、
前記分注ヘッドを前記容器に対して相対的に昇降及び水平移動させて、前記第1の分注チップ及び前記第2の分注チップにより前記液体試料の吸引及び吐出を同時に行う、
ことを特徴とする分注方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、所定数の共通の外径のノズル群で、所定数の分注チップ群を着脱しながら分注操作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の分注装置の概要説明図である。
図2】分注チップを示し、(a)は使用状態斜視図、(b)は分解状態斜視図である。
図3】分注チップと液体試料の容器(カートリッジ)との関係を示す概要斜視図である。
図4】仮定で挙げた分注チップの保持状態縦断面図である。
図5】小容量の注チップの保持状態縦断面図である。
図6】大容量の分注チップの保持状態縦断面図である。
図7】吸引・吐出操作部の例を示すもので、(a)は斜視図。(b)は縦断斜視図である。
図8】吸引・吐出操作部の例の動作例の縦断面で示す説明図である。
図9】分注装置例の全体例を示す斜視図である。
図10】分注装置を利用した測定システムの第1の概要斜視図である。
図11】分注装置を利用した測定システムの第2の概要斜視図である。
図12】分注装置を利用した測定システムの第3の概要斜視図である。
図13】分注装置を利用した測定システムの第4の概要斜視図である。
図14】分注装置を利用した測定システムの第5の概要斜視図である。
図15】分注装置を利用した測定システムにおける測定レーンを平面で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ詳説する。
【0016】
図1及び図9を参照すれば、実施の形態の分注装置Mは、
分注ヘッド50に対して保持される複数の分注チップにより、液体試料を収容する容器内の液体を吸引及び吐出を行う分注装置であって、
先端部に複数のノズル13を有し、このノズル13を通して液体の吸引及び吐出を行う吸引・吐出操作部を有する前記分注ヘッド50と、
前記ノズル13に着脱自在に装着される前記分注チップ1、1Sと、を有し、
前記ノズル13は、前記分注チップ1、1Sの頭部内に相対的に挿入されて前記分注チップ1、1Sを着脱自在に保持し、前記ノズル13における前記分注チップ1、1Sの保持個所の外径は同一とされ、
前記分注チップは内容量が異なる複数種の分注チップ1、1Sを有し、
内容量が異なる小容量の第1の分注チップ1Sと大容量の第2の分注チップ1とは、前記ノズル13に着脱自在に装着可能とされ、
前記第2の分注チップ1の前記頭部に装着部材3が設けられ、その装着部材3の中心部には、前記ノズル13が挿入される装着孔3cが形成され、この装着孔3cは前記第2の分注チップ1の内部(チップ本体2)と連通している、構成を有する。
【0017】
大容量の第2の分注チップ1は、大容量のチップ本体2の上部に装着部材3が設けられるのに対し、小容量の第1の分注チップ1Sは、第2の分注チップ1のような装着部材3を備えておらず、小容量のチップ本体2Sの上部の頭部の開口内に直接、ノズル13が挿入され、分注ヘッド50のノズル13に着脱自在に装着されるようになっている。
【0018】
実施の形態における大容量の第2の分注チップ1は、大容量のチップ本体2の上部が大径とされ、その頭部に筒状の装着部材3が嵌合して設けられているものである。装着部材3の下部は嵌合部3aとされ、中央部には鍔部3bを有し、嵌合部3aが、チップ本体2の頭部の開口2a内に挿入され、鍔部3bがチップ本体2の頭部の開口端に係合し、装着部材3がチップ本体2に連結又は一体化されている。
【0019】
分注チップ1、1Sは、ノズル13を通して液体試料を吸引及び吐出を行う。この前吸引及び吐出のために、分注ヘッド50における吸引・吐出操作部が設けられる。
【0020】
実施の形態では、小容量の第1の分注チップ1Sでは、少量の液体試料を吸引及び吐出を行い、大容量の第2の分注チップ1では、多量の液体試料を吸引及び吐出を行う。
液体試料の吸引量及び吐出量に応じて、専用の吸引・吐出操作部を設けることが考えられるが、第1の分注チップ1S及び第2の分注チップ1に対して、共用できる吸引・吐出操作部とすることが、装置のコスト及びハンドリングの多様性を確保するうえで、望ましい態様である。
【0021】
そこで、例えば図7及び図8の吸引・吐出操作部10の構成とすることができる。
吸引・吐出操作部10は、内部に空洞(18、19、16)を有するシリンダ11と、前記空洞(18、19、16)内を前記軸線方向に沿って摺動可能に設けられ、シリンダ11の外部側端部にステッピングモータ等の駆動部と連結するためのフランジ12aを有するプランジャ12とを有する。
【0022】
シリンダ11の一端に連結部11bを介してノズル13が設けられている。ノズル13は吸引吐出口13aを有し、空洞(18、19、16)と連通し前記空洞の軸線方向に沿って延びる貫通孔13bが形成されている。ノズル13の先端部には、嵌合部13cが形成され、この嵌合部に、分注チップ(1、1S)が装着される。
【0023】
空洞(18、19、16)は、大径の内周面を有する大径領域18、およびその大径領域のノズル13側に設けられ小径の内周面を有する小径領域16を有する。ここで、本実施の形態では、貫通孔13bの内径は、小径領域16の内径よりも大きいが、大径領域18の内径よりも小さい。
【0024】
プランジャ12は、シリンダ11の他端に設けられた開口部11aを貫通してシリンダ11の空洞(16、18、19)の軸線方向に沿って設けられたロッド12bと、該ロッド12bに同軸に設けられ該ロッド12bの外径よりも大きい外径を有する円柱状に形成され、大径領域18を摺動可能に設けられた太軸部15と、太軸部15またはロッド12bの先端面から軸線方向に沿って突出しかつ小径領域16を摺動可能に設けられた細軸部14とを有する。
細軸部14の軸線方向に沿った長さ(d3)は、太軸部15の行程(D)よりも短く形成されている。
【0025】
さらに、本実施の形態に係る吸引・吐出操作部10にあっては、小径領域16の上端部(位置はほぼd5=0である)の内周面に周方向に沿って軸線を囲むように気密シール部材としてのO-リング17aが設けられ、太軸部15にはその外周面に周方向に沿って軸線を囲むように他の気密シール部材としてのO-リング17bが設けられている(気密シール部材までの距離はd1)。
【0026】
また、吸引・吐出操作部10にあっては、大径領域18と小径領域16との間に、太軸部15が軸線方向に沿って遊動可能な遊動領域19を大径領域18および小径領域16と同軸に設け、遊動領域19の長さ(d0)は軸線方向に沿って細軸部14の軸線方向に沿った長さ(d3)に太軸部の長さ(d1)を足したもの以上の長さを有する。
遊動領域19は、太軸部15と摺動しない内周面を有する領域であって、大径よりも大きい極大径の内径を有する。したがって、大径領域18との境界には、ノズル13に向かって先太りの傾斜面が形成され、小径領域16との間には、空洞の内壁面を仕切るように、ノズルの先端方向に向かって、内側方向に突設した少なくとも1の段差が設けられている。
【0027】
図8は、本実施の形態に係る吸引・吐出操作部10の動作を示すものである。
図8(1)および(2)は、微小量の液体の吸引動作を示すものである。図8(1)にあっては、前記プランジャ12の下死点を遊動領域19の最下端、すなわち小径領域16の上端として、下死点に前記太軸部15が位置し、したがって、細軸部14は小径領域16内に挿入されている。この状態で、ノズル13に装着した分注チップの先端を液体が収容されている容器内に挿入する。
【0028】
なお、太軸部15の行程をD、太軸部15の先端の最下端からの軸線方向に沿った距離をd、前記細軸部14の長さをd3、太軸部15の先端から気密シール部材17bまでの距離をd1としている。したがって、遊動領域19の長さd0は、d3+d1以上であり、小径領域とノズルの貫通孔の長さの和をd2とすると、前述したように、0≦d≦D、d3<d2、d3<Dである。
【0029】
図8(2)にあっては、プランジャ12を下死点から距離d(<d3)だけ上昇させると、細軸部14が小径領域16を摺動して距離dだけ上昇し、太軸部15は遊動領域19内をdだけ移動し、ノズル13に装着された分注チップ内に液体がS2×dだけ流入する。
この図8(1)と図8(2)のd<d3が微小量吸引吐出区間に相当する。
【0030】
図8(3)にあっては、前記プランジャ12を前記下死点から距離d=d3だけ移動させると、前記細軸部14が前記小径領域16の抜出を開始し、前記太軸部15が前記大径領域18への進入により、前記ノズル13の開口部13aを通る気体の前記遊動領域19および大径領域18への吸引が開始されることになる。
【0031】
図8(4)にあっては、プランジャ12を下死点から距離d(>d3)だけ移動させると、細軸部14は遊動領域19内を移動した後、太軸部15が大径領域18内を摺動し、ノズル13に装着した分注チップ内に液体が一般に(上記(2)の場合)、S1×{d-(d0-d1)}、図8では、S1×(d-d3)吸引されることになる。ここで、S1、S2は各々大径領域18、小径領域16について前記軸線方向に垂直に切断した各断面積である。
【0032】
以上の実施の形態によって、分注ヘッド50における吸引・吐出操作部10は、ノズル13を通して液体試料の吸引量及び吐出量を選択可能に構成されているものである。
【0033】
上記の吸引・吐出操作部10は例示であり、公知の吸引・吐出操作部を使用してもよい。例えば、ノズル13を通して液体試料の吸引量及び吐出量を選択可能に構成されている形態として、特開2011-163771号などの形態を挙げることができる。
【0034】
他方、分注装置Mは、複数の液体試料を収容する収容部群に対し、分注ヘッド50を昇降及び水平移動させて、分注チップにより液体試料の吸引及び吐出を行うものである。
分注ヘッド50と液体試料を収容する収容部群との相関を図9に示した。
【0035】
分注装置Mは、縦方向(HY軸方向)、横方向(HX軸方向)、高さ方向(V軸方向)の移動機構を備えている。
また、多数の液収容部を有するカートリッジ容器20~20(図示例ではn=8)が、ステージ20S上に、HY軸方向に沿い、HX軸方向に並んで配置されている。
【0036】
分注ヘッド50は保持体5に保持され、この保持体5をHY軸方向に移動させる分注ヘッド移動機構51が設けられている。分注ヘッド移動機構51は、HY軸移動用モータ511と、HY軸移動用モータ511により駆動されるタイミングベルト515の移動によってHY軸方向に沿って移動する移動枠513と、タイミングベルト515と噛み合う回転可能な2つのプーリ514とを有する。移動枠513の移動と一体となって保持体5がHY軸方向に移動する、
【0037】
分注ヘッド50は、シリンダ10~10およびシリンダと連通するノズル13を配列するように支持するノズル配列支持部70を有する。このノズル配列支持部70は、保持体5に対して高さ方向(V軸方向)に移動可能に支持される。ノズル配列部70をV軸方向に移動させるためのV軸移動用モータ(図示せず)が保持体5に設けられている。
【0038】
ノズル配列部70に配列された分注用シリンダ10~10内を摺動可能な8本のプランジャ12を上下方向に駆動するプランジャ駆動板532と、プランジャ駆動板532を駆動するための吸引吐出駆動用のモータ531が設けられている。ここで、プランジャ駆動板532およびモータ531は、吸引・吐出操作部10の吸引・吐出駆動部53を構成する。
【0039】
ノズル配列部70の下方にチップ脱着部材591が設けられている。チップ脱着部材591はその両端部において、ノズル配列部70に支持された上方向に付勢されながら下方向に移動可能な2本のシャフト592の下端に取り付けられることにより、ノズル配列部70に水平に支持されている。
【0040】
分注用シリンダ10~10の上端よりも上方であるが、プランジャ駆動板532の通常の吸引吐出の行程(D)の下死点よりも下方に、シャフト592の上端593が位置している。そのシャフト592の長さは前述した「r0(≠0)」に関係し、プランジャ駆動板532が行程(D)を超えて、分注用シリンダ10~10の上端近くまで下降することによって、シャフト592の上端が下方向に押されて、分注用シリンダ10~10の上端近くまでシャフト592が下降することで下方向に押されてチップ脱着部材591を下降させるチップ脱着機構59が設けられている。
ここで、チップ脱着部材591には、ノズル13の嵌合部13cの外径よりも大きいが、分注チップ1の最大外径よりも小さな内径を持つ8個の孔が有し、ノズル13が貫通するように形成されている。
【0041】
本発明に係る分注装置は、種々の形態に利用できる。その一例について以下説明する。
【0042】
すなわち、検体を収容するための収容部、夾雑物を検体から取り除くための磁性粒子を予め収容しておくための収容部、検体中の抗原の標識化用の抗体が結合した磁性粒子を予め収容しておくための収容部、基質液を予め収容した収容部などを予め一体化した、カートリッジ20、180を用いて検体の前処理を含む一連の工程を実施するのに分注装置Mを使用できる。また、カートリッジを用いた検体の処理システムは、夾雑物の除去処理工程だけでなく、この夾雑物の除去処理工程に続く標識化反応工程やこの標識化反応工程を含む測定工程を一貫して実行できるようにしてもよい。
カートリッジ20は液収容部20A,20B……20Nを有する。試薬を含む場合、その開口部はアルミのシートなどにより予め覆われる。
【0043】
このようなカートリッジ180を用いた測定システムについて以下に説明する(カートリッジ20についても同様である。)。
図10は、前処理用の磁性粒子や基質液を予め収容したカートリッジ180を利用する測定システムの概略を示す図である。図11は、カートリッジを利用する測定システムの作動形態について概略的に説明する図である。図10図11に示すように、測定システム150は、磁石151、分注装置M、ヒートブロック153、検出装置154、配置制御装置、中央制御装置などを備える。
【0044】
分注装置Mは吸引・吐出操作部10、ノズル13を備え、ノズル13には分注チップ1(1S)を着脱自在にマウントすることができる。検出装置154は光電子増倍管(以降、PMTという)172、光源170を備え、光源170からの光をPMT172で受光しこれに応答してPMT172から信号が出力される。
図11に示すように、例えば、ノズル13、後述するPMT172、および光源170は中央制御装置によって垂直方向で移動制御され、磁石151や試薬カートリッジであるカートリッジ180は中央制御装置によって水平方向で移動制御される。
【0045】
カートリッジ180は、細長く形成されたベースパネル181と複数の収容部182とを備え、パネル181の長手方向の一端から他端に向かって複数の収容部182が配列されている。カートリッジ180は、ベースパネル上に形成されたベース181と複数の収容部182とが一体に形成されている。各収容部182はベースパネル上に開口し、分注チップ1(1S)の受け入れが可能となっている。
【0046】
カートリッジ180に備えられる収容部182として、前処理用の磁性粒子液が収容された収容部、検体を収容するための収容部、標識化用の抗体が結合した磁性粒子液を収容した収容部、標識化用の磁性粒子に結合した抗原を洗浄するための洗浄液が収容された収容部、発色反応を引き起こすための基質液を収容した収容部などを備える。
なお、カートリッジ180に備えられる収容部として上記を例示したが、収容部の種類はこれに限らない。例えば、前処理だけを実行できるようにカートリッジに収容部を備えてもよい。
【0047】
ベースパネル181(例えばその中央部)には吸光度を測定するための収容部182aが設けられ、この収容部182aの上側にはPMT172を装着するためのマウント18が配置されている。ベースパネル181や収容部182はアルミのシール等によって遮光
され、PMT172はマウント184に光密に嵌合される。検出用の収容部182aの底部は光源170と光密に嵌合可能であり、検出用の収容部182aの底部に嵌合した光源170から放射される照射光をPMTで受光してフォトンを計数することができる。
【0048】
カートリッジ180は図示しないカートリッジコントローラによってノズル13やPMT172に対する位置が決められる。カートリッジコントローラはカートリッジ180を水平方向に移動させて分注装置Mや検出装置154に対するカートリッジ180の位置を決定する。カートリッジ180の配置が制御されることで、例えば分注チップに対して適切にカートリッジ180を配置させることができ、夾雑物の除去処理工程、標識化反応工程、検出工程におけるピッペッティングや吸光度測定をスムーズに実行することができる。
【0049】
カートリッジ180の収容部182は、例えば、夾雑物の除去処理を行うための第1部187と、標識化反応工程や検出工程を行うための第2部188とを有する。なお、カートリッジ180にインキュベーションを行うためヒータ153の装着が可能な収容部を設けたが、このヒータ用の収容部は測定システムの目的に応じて適宜省略してよい。
【0050】
カートリッジ180を利用する測定システム150の作用について以下に説明する。カートリッジ180のマウント後、予めカートリッジ180の第1の収容部に収容された磁性粒子液が分注チップ1(1S)内に吸い上げられて第2の収容部内に排出され、ポンピングされる。
【0051】
図12は、カートリッジを利用する測定システムの前処理工程について示した図である。図12に示すように、ポンピング後、第2の収容部内の液体が分注チップ1(1S)内に吸い上げられて夾雑物が結合した磁性粒子が磁石151によって分離され、夾雑物が除去された測定サンプルが第3の収容部に排出される。
第3の収容部には、標識化用の磁性粒子と測定サンプルとの混合液が収容され、この混合液がポンピングされ、分注チップ内に吸い上げられる。混合液の吸引後、磁石によって抗原が一体となった磁性粒子が分離され、第4の収容部に投入される。
磁性粒子と一体となった抗原は、第4の収容部内に予め収容された洗浄液によって洗浄され、洗浄液と抗原との混合液はピペットップ内に吸い上げられる。分注チップ内に吸い上げられたこの混合液から抗原と一体となった磁性粒子が磁石151によって分離され、抗原が検出用の第5の収容部182aに投入される。
【0052】
図13はカートリッジ180を利用する測定システムの測定工程について示した図である。図13に示すように、第5の収容部182a内には基質液が予め収容されており、この基質液と抗原とが反応して発色し吸光度が検出される。
なお、検体中の夾雑物を除去処理する際、メンブレン、アフィニティカラム、あるいは還元剤が固定されたゲルを用いて検体に含まれる夾雑物を除去処理したい場合には、ノズル13にメンブレンを備えた分注チップ、アフィニティカラムを含有する分注チップ、あるいは還元剤が固定されたゲルを含有する分注チップを取り付けて検体を処理する。
例えば図13に示すように、メンブレンを備えた分注チップ190を用いて検体に含まれる夾雑物を除去処理する場合は、ノズル13にメンブレンを備えた分注チップ190を装着して検体を処理する。これにより、測定システム150における夾雑物の除去処理手法のバリエーションを確保でき、システムの利便性を高めることができる。
【0053】
以上のように、検体の前処理工程を含む一連の工程で必要となる収容部を予めカートリッジ180に設け、このカートリッジ180を測定システム150にマウントして使用することにより、ユーザは磁性粒子液や洗浄液等の調製に係る手間を省くことができ、測定システム150の運用における利便性を高めることができる。
【0054】
上記の態様では、分注チップを垂直方向で移動させカートリッジを水平方向で移動させて前処理を実行したが、前処理の実行手法はこれに限らない。例えば、カートリッジを固定し、分注チップを水平方向および垂直方向に移動させて検体の前処理を実行してもよい。カートリッジを固定することで、ウェル内の液体が外部に飛び出ないようにシステムを設計する手間が省け、より簡便な測定システムの提供が可能となる。
【0055】
上記の実施態様では、中央部に基質液が予め収容された収容部182aを設け、端部に培養用のヒータ153の装着が可能な収容部を設けたカートリッジ180を例示したが、カートリッジにおける収容部の配列順序はこれに限らない。図14は、別形態のカートリッジ200について概略的に示した図である。例えば、図14に示すように、カートリッジがマウントされる測定システム本体の構成に合わせて適宜変更してよい。図14に図示した形態では、カートリッジ200の中央部にヒータ153の装着が可能な収容部202aを設け、端部に基質液が予め収容された収容部202bを設けた。このように収容部の配列順序を処理内容に鑑みて適宜変更することでより効率的な検体の処理を行うことができる。
【0056】
また、上記の実施態様では、磁性粒子液を収容部182に予め収容させたが、磁性粒子液を予め保持した分注チップを用いる、あるいは、検体中の夾雑物を吸着する担体を備えた分注チップを用いて検体の前処理を実行してもよい。この場合、このような分注チップに合わせてカートリッジの収容部の構成を適宜変更する必要がある。
【0057】
さらに、上記の実施態様では、第1部187と第2部188とが一体形成されたカートリッジ180を例示したが、第1部187と第2部188とを組み合わせ自在に構成してもよい。第1部187と第2部188とを組み合わせ自在な構成とすることで、検体について、夾雑物の除去処理だけを実行したい場合、前処理工程を除く標識化反応工程から検出工程までだけを実行したい場合、あるいは全工程を実行したい場合に、ユーザはそれぞれの場合に応じて第1部、第2部、第1部と第2部との組み合わせのいずれかを選択することができ、より利便性の高い測定システムを提供することができる。
【0058】
上記の実施態様では、検出対象の抗原としてCA19-9を用いたものを例示したが、検出対象はこれに限らず、例えば、リウマチ因子、遊離サイロキシン(F-T4)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、インスリン、α胎児性タンパク(AFP)などの単純タンパクまたは複合タンパク、ステロイドホルモン、ペプチドホルモン等への適用もできる。
【0059】
別の実施の形態として、分注装置を核酸検出分野に用いた態様がある。これにについて以下に説明する。
検体から核酸を抽出しこの抽出された核酸を増幅して測定する場合、第1担体として標的核酸に対して親和性を有する物質が固定されたものを用いて検体から標的核酸を抽出し、第2担体として標的核酸の検出用試薬を固相化してなるものを用いて標的核酸を測定することができる。この測定システムでは、検体中の標的核酸を検出する工程の前に、第1担体を用いて核酸を抽出する工程が実行される。さらに、この測定システムでは、生体関連物質と親和性を有する、および/または生体関連物質を標識化する物質が固定された第2担体を調製する工程を含む。
このような第1担体を用いた核酸の抽出工程および第2担体の調製工程を含む前処理を1つのシステムで一貫して行うことができる。
【0060】
図15は、検体からの核酸の抽出から第2担体の調製までの前処理工程、並びに検出工程を概略的に示した図である。図15に示すように、標的核酸の測定システムでは、(i)標的核酸に対して親和性を有する物質が固定された担体(第1担体)を用いて検体から標的核酸を抽出する工程、(ii)生体関連物質と親和性を有するかあるいは生体関連物質を標識化する少なくともいずれかの機能を有する担体(第2担体)を調製する工程、(iii)調製された第2担体を用いて標的核酸を標識化して検出する工程、が行われ、好ましくは、前処理(i)~(iii)を一貫して行うものである。検体は、ユーザによって測定システムに備えられたウェル502に収容される。
【0061】
(6-1 検体から標的核酸を抽出する工程)
標的核酸を取得するため、核酸捕捉用のプローブが固定された第1担体である磁性粒子(以降、核酸捕捉用磁性粒子という)が備えられた分注チップ(分注チップともいう)がノズルに装着される。ウェルに収容された検体が分注チップに吸い上げられ、核酸捕捉用磁性粒子と混合される。混合後、核酸捕捉用磁性粒子に固定されたプローブに標的核酸が特異的に結合して核酸捕捉用磁性粒子に捕捉される。
【0062】
標的核酸が結合した核酸捕捉用磁性粒子が分注チップ内に吸い上げられた状態で、分注チップに磁石が近づけられ核酸捕捉用磁性粒子が分注チップ内に拘束される。核酸捕捉用磁性粒子が磁石によって拘束された分注チップがウェルから離れ、洗浄液を収容したウェルに移動して磁石が遠ざかることで、核酸捕捉用磁性粒子が洗浄液内に解放される。洗浄液によって核酸捕捉用磁性粒子を洗浄した後、試薬などを加えて標的核酸を磁性粒子から分離して標的核酸を取得することができる。
【0063】
(6-2 取得された標的核酸を検出するための担体を調製する工程)
他方、抽出された標的核酸を検出するために、生体関連物質と親和性を有しかつ生体関連物質を標識化する物質が固定された担体が調製される。標的核酸の検出では標的核酸の標識化および増幅が行われ、標識化法および増幅法としては、PCR法、PT-PCR法、リアルタイムPCR法、LAMP法、RT―LAMP法、ICAN法、SDA法、RCA法、NASBA法など公知の方法を用いることができる。リアルタイムPCR法は様々な手法が存在するが、例えばインターカレーション法、ハイブリダイゼーション法、LUX法などが可能である。
【0064】
核酸の標識化および増幅には、核酸の標識化および増幅用のプローブやプライマーを含有する固相化されたマスターミクスチャ(MMX)を用いることができる。リアルタイムPCR法を用いる場合、増幅処理する核酸の種類に合わせて核酸増幅用のプライマーやプローブを適宜選択することが好ましい。プローブ、プライマーとしては、例えば、TaqMan(登録商標)プローブ、FRETプローブ、LUXプライマーなど種々のものを用いることができる。プローブは標的核酸を標識化するための標識を備えており、この標識を備えたプローブが標的核酸とハイブリダイズすることで標的核酸が標識化される。プライマーおよびプローブは検出対象の核酸の種類に応じて適宜設計することができる。例えば、リアルタイムPCR法としてハイブリダイゼーション法を用いる場合、標的核酸は、熱変性、アニーリング、および伸長反応が行われ、標的核酸が標識化される。
【0065】
本発明においては、標的核酸の検出を実行する前に、核酸の増幅に用いられる試薬を予め調製し、これを固相化してウェル内に収容することで、固相化された試薬(以降、固相化試薬という)を固定したウェル(第2担体)が作製される。核酸の増幅時にはこの固相化試薬に緩衝液、核酸等を注入することで標的核酸の標識化および増幅が開始される。大容量のマスターミクスチャを用いることにより、測定工程時、測定用サンプルを収容するためのウェルに分注することが可能となり、作業効率を向上させることができる。試薬を固相化する方法については特に限定しないが、試薬を凍結乾燥すると利便性が高まり、作業効率の改善が期待できる。
【0066】
マスターミクスチャの試薬を凍結乾燥する場合は、例えば、標的核酸を増幅するためのプライマーおよびプローブ、およびその保護安定させるためのサッカライド類やポリビニルピロリドンなどの保護安定化剤を混合させ、所定温度で冷却して減圧することで作製できる。調整時の圧力、冷却温度、および冷却時間は、目的とするマスターミクスチャの性質に合わせて適宜変更してよい。また、本発明においては、凍結乾燥したときに凍結乾燥品が容器内に固相として(第2担体として)固定化されるように、スクロース、ラクトース、またはトレハロース等を混合することが好ましい。これにより、例えば凍結乾燥された試薬を容器内壁に膜状に層設して固定することができる。
【0067】
(6-3 標的核酸を検出する工程)
標的核酸の検出は、固相化試薬を備えたウェルに標的核酸を注入して行われる。標的核酸の注入後、標的核酸が固相化試薬に含まれるプローブとハイブリダイズして検出が可能となり、例えば、発光、蛍光などを測定することで標的核酸を検出することができる。検出デバイスとして、例えば、イメージセンサを搭載した蛍光レーザ顕微鏡を用いることで標的核酸の画像データを取得でき、この画像データを適宜解析することで蛍光強度などを算出することができる。このように蛍光強度を算出することで標的核酸の検出を行うことができる。
【0068】
次に上記の各工程を自動的に実行するシステムについて説明する。上記の手順を自動的に実行する測定システムは、検体を収容し標的核酸を取得する測定サンプルの取得装置、取得された測定サンプルを、PCR法等を用いて増幅して検出する検出装置を備える。
【0069】
測定サンプルの取得装置は、例えば、検体を収容するウェルや試薬を収容するウェルを有し、検体を収容するウェルには、組織、細胞、体液などユーザによって取得された検体が収容される。なお、検体が組織や細胞片の場合は、予め細かくしておくことが好ましい。
【0070】
試薬を収容するウェルは、複数のウェル、分注チップ、検体を溶解するための試薬、溶解された検体に投入され標的核酸と特異的に結合するプローブが固定された磁性粒子、磁性粒子を分注チップ内に拘束するための磁石、標的核酸とこの核酸とプローブを介して特異的に結合した磁性粒子とを分離して溶出する溶出試薬などを備え、検体を収容するウェルに収容された検体から、DNAやRNAなどの標的核酸を抽出する。
【0071】
さらに、試薬を収容するウェルは、検体から抽出された標的核酸を標識化および増幅するための固相化された試薬を収容するウェルを備え、ウェル内には、例えば、緩衝液、プライマー、プローブ、核酸ポリメラーゼ、蒸留水、洗浄液などを固相化して収容する。固相化された試薬は、例えば、各試薬を一体に混合しさらに凍結乾燥することで作製できる(凍結乾燥マスターミクスチャ)。
【0072】
標的核酸の抽出は、検体を溶解しこの溶液と、標的核酸と特異的に結合するプローブが固定された磁性粒子とを混合し、混合後に磁石を用いて標的核酸が結合した磁性粒子を分注チップ内に拘束して分離し、この分離した磁性粒子を洗浄した後に標的核酸を溶出することで実行することができる。
【0073】
検出装置は検体から抽出された標的核酸を増幅して検出する動作を実行する。核酸の増幅手法としては、例えばリアルタイムPCR法が挙げられる。標的核酸の増幅は、試薬を収容するウェルに収容された凍結乾燥マスターミクスチャを用いてリアルタイムPCR法に従って実行することができる。検出装置は核酸増幅用の反応容器とこの反応容器の温度を調節する温度調節部などを備え、核酸の熱変性、アニーリング、伸長反応の各工程を繰り返し実行することができる。標的核酸の増幅後、標識化された標的核酸に、例えば、励起用の電磁波を照射する、蛍光反応用の基質液を添加してから標的核酸をスキャナなどでスキャンすることで標的核酸を検出することができる。
【0074】
上記システムをより具体化したものについて以下に説明する。図15は標的核酸の抽出から検出まで実行するためのウェルを上部から示した図である。図15に示すように、標的核酸の測定システム480は処理ラインを備え、図15は第1処理ライン500Aから第12処理ライン500Lまでの12列の処理ラインを例示した図である。各処理ライン500A~500Lでは、例えば、検体を収容するウェル502、溶解液を収容するウェル504、緩衝液を収容するウェル506、磁性粒子を収容するウェル508、検体から抽出された核酸を洗浄するための洗浄液や分注チップを洗浄するための洗浄液が収容されたウェル510、磁性粒子と標的核酸とを分離する溶出液を収容したウェル512、検体から核酸を抽出してなる測定サンプルを一時的に収容するウェル514、測定サンプルを標識化して標的核酸を検出するための固相化されたマスターミクスチャを収容したウェル516が、配列されている。
【0075】
第1~第12処理ライン500A~500Lの上方には、各処理ライン500A~500Lに対応して12個のノズルがライン方向P(図示省略)に移動自在に設けられ、各ノズルに分注チップが適宜装着される。測定システム480は、例えば、ウェルを配置するスペースを外部から隔離するための遮蔽扉を備え、これら第1~第12処理ラインに設けられたウェルは、この隔離扉によって外部から遮断することができる。上記では12列の処理ラインを備えた装置を例示したが、処理ラインの本数はこれに限らず、例えば、1本や2本でもよく、また、さらに処理能を高めるために20本、30本としてもよい。
【0076】
(分注チップについて)
以上のように、本発明に係る分注装置Mは多様な使用態様を有する。
また、分注装置Mにおける分注チップ1(1S)について検討する。
分注チップ内には、吸引(ポンピング)の過程で液体試料中の微成分をノズル13を通して吸引してしまう可能性がある。
【0077】
そこで、液体試料中の微成分をノズル13を通して吸引してしまうことを防止するために、フィルタを分注チップの頭部に内装させることが有効である。
しかし、図4に示すように、分注チップ2Aの径を大きくし、大容量の液体試料の吸引及び吐出が可能としようとする場合、ノズル13として、外径を大きくし基部13Aと、少容量の分注チップ本体2Sを保持できる小外径の先端部13Bとを有する2段ノズル13とし、基部13Aで分注チップ2Aを保持する構成が考えられる。
しかし、これに伴って、フィルタ4の外径を大きくする必要があるとともに、不必要なデッドスペースを生じさせてしまう。
【0078】
また、2段ノズル13で、小径の分注チップと大径の分注チップとを、選択的に脱着を行う場合には、2段ノズル13の昇降長が大きくなり、分注チップとノズル13の高さ方向位置を制御する必要がある。また、脱着性が良好でなくなる。この脱着を図るための、追加的な脱着機構が必要となる。
【0079】
これに対して、本発明に係る第2の分注チップ1は、頭部に装着部材3が設けられ、その装着部材3の中心部には、ノズル13の小径部が挿入される装着孔3cが形成されており、ノズル13の小径部が装着孔3cに挿入されて、第2の分注チップ1を保持できるので、小外径のフィルタ4で足りるとともに、デッドスペースを生じさせることを防止できる。
【0080】
要約すれば、本発明に係る、図6に概略的に図示した大容量の第2の分注チップ2によれば、図5に示す小容量の第1の分注チップ1Sに対して、共通にノズル13の小径部で保持でき、フィルタ4が小さいもので足りるとともに、既存の機構をそのまま利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の分注装置は、各種の液体試料の分注に利用できる。
【符号の説明】
【0082】
1…第2の分注チップ、1S…第1の分注チップ、2…大容量のチップ本体、2S…小容量のチップ本体、3…装着部材、3c…装着孔、10…吸引・吐出操作部、13…ノズル、20、180…カートリッジ、50…分注ヘッド、M…分注装置。




図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15