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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】薬液の吹付け方法
(51)【国際特許分類】
   D21F 1/32 20060101AFI20240904BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20240904BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240904BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20240904BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20240904BHJP
   B05B 13/04 20060101ALN20240904BHJP
【FI】
D21F1/32
B05D1/02 Z
B05D3/00 D
B05D7/00 F
B05D7/00 A
B05D1/28
B05B13/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020086744
(22)【出願日】2020-05-18
(65)【公開番号】P2021181637
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】594020802
【氏名又は名称】株式会社メンテック
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【弁理士】
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【弁理士】
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(74)【代理人】
【識別番号】100211753
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 紳吾
(72)【発明者】
【氏名】関谷 宏
(72)【発明者】
【氏名】長塚 智彦
(72)【発明者】
【氏名】遊佐 和之
(72)【発明者】
【氏名】菅 綾乃
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-193957(JP,A)
【文献】特開2005-314814(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189713(WO,A1)
【文献】特開平10-310990(JP,A)
【文献】特開平11-012976(JP,A)
【文献】特開2004-332198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21F 1/32
B05D 1/02
B05D 3/00
B05D 7/00
B05D 1/28
B05B 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙機のドライパートにおいて、側面視でループ状のカンバスに対し、2基のノズル装置を、該カンバスの幅方向に延びるレールに沿って同じ速度で往復移動させながら、該カンバスに薬液を吹付ける薬液の吹付け方法であって、
前記カンバスが、湿紙に接した状態でドライヤーロールにより案内された後、前記湿紙と乖離した状態でカンバスロールにより案内されるものであり、
前記カンバスが前記湿紙と接している時間Tcが0.03秒以上であり、
前記時間Tcにおける前記カンバスの走行距離が0.5~16mであり、
前記ノズル装置が片道移動するのに要する時間Tnが0.5~10分であり、
前記カンバスの走行速度Vpが500m/分以上であり、
前記カンバスの長さKが20~80mであり、
前記カンバス表面の任意の点が前記時間Tnの間に前記湿紙と接する接触回数Nと、前記時間Tn、前記走行速度Vp及び前記長さKとが、
N=(Tn・Vp)/K
の関係を満たし、且つ、前記接触回数Nが、20~80回であり、
前記薬液の吹付け量が有効成分量として0.1~500mg/mであり、
前記カンバスの通気度が2000~50000cm /cm ・minであり、
前記カンバスロールが、前記カンバスの外側に位置する外側カンバスロールと、前記カ ンバスの内側に位置する内側カンバスロールとを有し、
前記カンバスが前記湿紙と乖離した後、前記外側カンバスロールに接するまでの間に、 前記ノズル装置が該カンバスに前記薬液を吹付ける薬液の吹付け方法。
【請求項2】
前記カンバスが、縦糸と横糸とにモノフィラメント、マルチフィラメント、又はスパン 糸を用いた織カンバス、若しくは、合成樹脂の複数のスパイラルコイルとマルチフィラメ ントの芯線とを用いたスパイラルカンバスである請求項1記載の薬液の吹付け方法。
【請求項7】
前記カンバスの材質がポリエチレンであり、
前記薬液のゼータ電位の絶対値が3~100mVであり、
前記薬液の吹付けが30~130度の温度条件下で行われる請求項1~6のいずれか1項に記載の薬液の吹付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液の吹付け方法に関し、更に詳しくは、抄紙機のカンバスに薬液を吹き付ける際の薬液の吹付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙を製造するための抄紙機は、湿紙を加熱乾燥するためのドライパートを備えている。
抄紙機においては、湿紙がドライパートに供給されてくると、湿紙は、カンバスによって、ドライヤーロールの表面に押し付けられながら搬送される。そして、湿紙は、ドライヤーロールにより乾燥されることになる。
【0003】
ところで、ドライパートにおいては、各部品に、湿紙に含まれる紙粉やピッチが付着しやすいという問題がある。その中でも、カンバスは、湿紙を乾燥させる間、当該湿紙に接触し続けるため、特に、紙粉やピッチが付着し易い傾向にある。仮に、カンバスに、紙粉やピッチが付着すると、それが湿紙に転移することにより、紙の歩留まりを大きく低下させる原因となる。
これに対し、液体を噴霧するための噴霧ノズルと、気流を噴射するための気流噴射口とを備えた液体吹付付与装置を用い、噴霧ノズルから噴霧された液体に対して、該気流噴射口から気流を噴射し、噴霧された液体を該気流で加速してカンバスに吹き付ける液体の吹付け方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、カンバスの外面とアウトロールとの接触開始部位に向けて散布ノズルから汚染防止剤を散布し、アウトロールに汚染防止剤を付着させ、該アウトロールを介してカンバスに汚染防止剤を転移させて付与する汚染防止剤の吹付付与方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、噴射ノズルによりドライパートの走行部品の表面に汚染防止剤を塗布するに際して、複数の噴射ノズルを使う走行部品の表面の汚染防止方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
ちなみに、出願人は、抄紙機のドライパートにおいて、湿紙を案内するドライヤーロールを回転させた状態で、一定の間隔を於いて配置した2基のノズル装置を前記ドライヤーロールの幅方向に延びるレールに沿って往復移動させながら、該2基のノズル装置が前記ドライヤーロールに薬液を吹付ける薬液の吹付け方法を出願している(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-58031号公報
【文献】特開2004-218186号公報
【文献】特開2005-314814号公報
【文献】国際公開第2019/189712号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1~3に記載の吹付け方法によれば、薬液をカンバスに吹き付けることができるものの、カンバスに対して薬液を均一に付与できるとは必ずしもいえない。
また、カンバスは湿紙と接触するため、カンバスの表面に付与された薬液が湿紙に吸い取られ易い。特に、カンバスの走行速度が高速になる程、ループ状になっているカンバスの表面の任意の点が、湿紙と接触する回数が増えることになるため、薬液が湿紙に吸い取られる頻度が多くなる。そうすると、カンバスの表面の任意の点における薬液量が不足することになるため、結果として、薬液に基づく効果が十分に発揮できないことになる。
【0007】
上記特許文献4記載の吹付け方法は、湿紙と接する時間が比較的短いドライヤーロールに対する薬液の吹付け方法の発明である。なお、これをカンバスに援用することも可能であるが、本発明のように、湿紙と接する時間が比較的長い場合のカンバスは、上記特許文献4に記載の吹付け方法では、上記課題が十分に解決できるとはいえない。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、湿紙と接している時間Tcが0.03秒以上のカンバスに対して、ノズル装置を幅方向に往復移動させながら、カンバスの表面に薬液を極力均一に付与すると共に、十分な量の薬液を残存させることができる薬液の吹付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、薬液の吹付け量、2基のノズル装置が片道移動するのに要する時間Tn、カンバスの走行速度Vp、カンバスの長狭K及び接触回数Nを特定し、その範囲の中で、これらが一定の関係を満たすように調整することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、(1)抄紙機のドライパートにおいて、側面視でループ状のカンバスに対し、2基のノズル装置を、該カンバスの幅方向に延びるレールに沿って同じ速度で往復移動させながら、該カンバスに薬液を吹付ける薬液の吹付け方法であって、カンバスが、湿紙に接した状態でドライヤーロールにより案内された後、湿紙と乖離した状態でカンバスロールにより案内されるものであり、カンバスが湿紙と接している時間Tcが0.03秒以上であり、時間Tcにおけるカンバスの走行距離が0.5~16mであり、ノズル装置が片道移動するのに要する時間Tnが0.5~10分であり、カンバスの走行速度Vpが500m/分以上であり、カンバスの長さKが20~80mであり、カンバス表面の任意の点が時間Tnの間に湿紙と接する接触回数Nと、時間Tn、走行速度Vp及び長さKとが、
N=(Tn・Vp)/K
の関係を満たし、且つ、接触回数Nが、20~80回であり、薬液の吹付け量が有効成分量として0.1~500mg/m2であり、カンバスの通気度が2000~50000c /cm ・minであり、カンバスロールが、カンバスの外側に位置する外側カンバ スロールと、カンバスの内側に位置する内側カンバスロールとを有し、カンバスが湿紙と 乖離した後、外側カンバスロールに接するまでの間に、ノズル装置が該カンバスに薬液を 吹付ける薬液の吹付け方法に存する。
【0011】
本発明は、(2)カンバスが、縦糸と横糸とにモノフィラメント、マルチフィラメント 、又はスパン糸を用いた織カンバス、若しくは、合成樹脂の複数のスパイラルコイルとマ ルチフィラメントの芯線とを用いたスパイラルカンバスである上記(1)記載の薬液の吹付け方法に存する。
【0012】
本発明は、(3)2基のノズル装置の平均移動速度Vaが共に0.5~6m/分であり、湿紙の紙幅Rが5~13mであり、平均移動速度Va、紙幅R及び時間Tnが、
Tn=R/2Va
の関係を満たす上記(1)又は(2)に記載の薬液の吹付け方法に存する。
【0013】
本発明は、(4)2基のノズル装置が同じ構造のものであり、ノズル装置がカンバスに対し、正面視で幅方向に広がる扇状に薬液を吹き付けるものであり、ノズル装置が瞬間的に吹き付ける薬液のカンバスにおける吹付け幅が1.5~15cmである上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の薬液の吹付け方法に存する。
【0014】
本発明は、(5)湿紙が、古紙パルプを50質量%以上含有する上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の薬液の吹付け方法に存する。
【0015】
本発明は、(6)薬液が、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリブテン、植物油及び合成エステルオイルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する汚染防止剤組成物である上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の薬液の吹付け方法に存する。
【0016】
本発明は、(7)カンバスの材質がポリエチレンであり、薬液のゼータ電位の絶対値が3~100mVであり、薬液の吹付けが30~130度の温度条件下で行われる上記(1)~(6)のいずれか1つに記載の薬液の吹付け方法に存する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の薬液の吹付け方法においては、同じ速度で往復移動する2基のノズル装置を用いるので、各ノズル装置が担当する吹付け領域を小さくすることができる。これにより、幅が広いカンバスであっても、当該カンバスに効率良く薬液を付与することが可能となる。
【0018】
本発明の薬液の吹付け方法においては、カンバスの走行速度Vp及びカンバスの長さKを上記範囲内とすることにより、生産性が向上し、紙製品をより安価に製造することが可能となる。
これに加え、カンバスの湿紙と接している時間Tcが0.03秒以上である場合、薬液の吹付け量、ノズル装置が片道移動するのに要する時間Tn、及び、カンバス表面の任意の点が時間Tnの間に湿紙と接触する接触回数N、を上記範囲内とし、更に、その範囲の中で、これらが
N=(Tn・Vp)/K
の関係を満たすように調整することにより、高速で走行するカンバスに対して、ノズル装置を幅方向に往復移動させながら、カンバスの表面に極力均一に薬液を付与することができ、且つ、十分な量の薬液を残存させることが可能となる。
このことから、上記接触回数の範囲内において、搬送される湿紙が、カンバスに接触する毎に、当該カンバスの表面に付与された薬液を吸い取ったとしても、十分な量の薬液が残存しているので、カンバスが部分的に薬液量不足となることを防止できる。その結果、薬液に基づく効果を十分に発揮させることが可能となる。
【0019】
本発明の薬液の吹付け方法においては、カンバスが湿紙と乖離した後、最初の外側カンバスロールに接するまでの間に、ノズル装置が該カンバスに薬液を吹付けるようにすることにより、カンバスの表側(湿紙と接する側)と接する外側カンバスロールにも薬液を転移させることが可能となる。その結果、外側カンバスロールにも薬液に基づく効果を付与することができる。なお、外側カンバスロールへの薬液の転移が飽和することにより、かかる転移が行われなくなるので、カンバスの表面に十分な量の薬液を残存させることが可能となる。
【0020】
本発明の薬液の吹付け方法においては、2基のノズル装置の平均移動速度Vaを上記範囲内とすることにより、ノズル装置による安定した薬液の吹付けが可能となり、湿紙の紙幅Rを上記範囲内とすることにより、本発明の効果を確実に発揮することができる。
また、平均移動速度Va及び湿紙の紙幅Rから、2基のノズル装置が片道移動するのに要する時間Tnを算出することができるので、例えば、湿紙の段取り変えで紙幅が変わった場合であっても、ノズル装置の移動速度等を調整することにより、カンバスの表面に十分な量の薬液を残存させることが可能となる。
【0021】
本発明の薬液の付与方法においては、同じ構造の2基のノズル装置がカンバスに対し、正面視で幅方向に広がる扇状に薬液を吹き付けるものであり、ノズル装置が瞬間的に吹き付ける薬液のカンバスにおける吹付け幅を上記範囲内とすることにより、十分な量の薬液を効率良く付与することが可能となる。
【0022】
本発明の薬液の付与方法においては、湿紙が、古紙パルプを50質量%以上含有するものである場合、当該湿紙が薬液を吸い取る量が多くなる傾向にあるため、本発明の効果をより発揮することができる。
【0023】
本発明の薬液の付与方法においては、薬液が、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリブテン、植物油及び合成エステルオイルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する汚染防止剤組成物である場合、湿紙に含まれる紙粉やピッチがカンバスに付着することを抑制することができる。このことから、当該カンバスから、湿紙やカンバスロールに紙粉やピッチが転移することも抑制できる。
【0024】
本発明の薬液の付与方法においては、カンバスの材質がポリエチレンであり、薬液のゼータ電位の絶対値が3~100mVであると、薬液がカンバスに付着し易くなるため、カンバスの表面により十分な量の薬液を残存させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本実施形態に係る薬液の吹付け方法が用いられる抄紙機のドライパートを示す概略図である。
図2図2は、本実施形態に係る薬液の吹付け方法において、カンバスにノズル装置が薬液を吹付けている状態を示す概略斜視図である。
図3図3の(a)及び図3の(b)は、本実施形態に係る薬液の吹付け方法においてカンバスに薬液を吹付けた場合のカンバス1回転分の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0027】
本実施形態に係る薬液の吹付け方法は、抄紙機のドライパートで用いられる。
図1は、本実施形態に係る薬液の吹付け方法が用いられる抄紙機のドライパートを示す概略図である。
図1に示すように、抄紙機のドライパートDPは、湿紙Xを加熱乾燥するための複数の円筒状のドライヤーロール(ヤンキードライヤー)D1,D2,D3,D4,D5,D6,D7,D8及びD9(以下「D1~D9」という。)と、任意のドライヤーロールD1,D3,D5,D7,D9に当接されたドクターブレードDKと、湿紙XをドライヤーロールD1~D9の表面に押し付けるためのカンバスK1と、ドライヤーロールD1~D9により加熱乾燥された湿紙Xを仮押圧しながら回転するブレーカースタックロールBと、ブレーカースタックロールBにより仮押圧された湿紙Xを押圧しながら回転するカレンダーロールCと、を備える。すなわち、ドライパートDPは、部品として、少なくとも、ドライヤーロールD1~D9、カンバスK1、ブレーカースタックロールB及びカレンダーロールCを備えている。
【0028】
ここで、湿紙Xとしては、従来のものを適宜採用可能であるが、その中でも、古紙パルプを50質量%以上含有するものが好適に用いられ、90質量%以上含有するものがより好適に用いられる。この場合、湿紙Xが薬液を吸い取る量が多くなる傾向にあるため、本発明の効果をより発揮することができる。
また、湿紙Xの搬送速度(抄速)は、500m/分以上であり、500~1800m/分であることが好ましく、500~1300m/分であることがより好ましい。この場合、生産性が向上し、紙製品をより安価に製造することが可能となる。
【0029】
本実施形態に係る薬液の吹付け方法は、ドライパートDPの中でも、カンバスK1に対して好適に用いられる。
ドライパートDPにおいて、カンバスK1は、走行する湿紙Xに接すると、湿紙Xと同じ速度で共に走行し、各ドライヤーロールD1~D9により案内される(以下「第1案内」ともいう。)。すなわち、カンバスK1が、湿紙Xに接した状態でドライヤーロールD1~D9により案内される。このとき、カンバスK1は、湿紙XをドライヤーロールD1~D9の表面に順次圧接する。このため、カンバスK1表面の薬液が経時的に湿紙Xに吸い取られると共に、湿紙XがドライヤーロールD1~D9により加熱乾燥される。
湿紙X及びカンバスK1がドライヤーロールD1~D9を通過すると、湿紙Xは、カンバスK1から乖離され、ブレーカースタックロールBに案内される。
また、湿紙Xから乖離したカンバスK1は、カンバスK1の外側に位置するカンバスロール(以下「外側カンバスロールOR」ともいう。)、及び、カンバスK1の内側に位置するカンバスロール(以下「内側カンバスロールIR」ともいう。)により案内される(以下「第2案内」ともいう。)。
このとき、カンバスK1は、側面視でループ状となっている。このため、カンバスK1表面の任意の点は、第1案内及び第2案内を交互に経ることになる。
【0030】
カンバスK1は、上述したように、湿紙XをドライヤーロールD1~D9にぞれ押圧しながら、当該湿紙Xと一体となって、当該湿紙の搬送速度と同じ速度で走行する。ちなみに、湿紙Xの搬送速度とカンバスK1の走行速度Vpとが異なる場合、湿紙Xの表面が擦れて毛羽立つ恐れがある。
したがって、カンバスK1の走行速度Vpは、湿紙Xの搬送速度と同様に、500m/分以上であり、500~1800m/分であることが好ましく、500~1300m/分であることがより好ましい。
【0031】
また、カンバスK1の長さKは、20~80mであり、40~70mであることが好ましい。
カンバスK1の長さKが20m未満であると、カンバスK1が消耗し易くなる恐れがあり、カンバスK1の長さKが80mを超えると、装置が巨大化するためスペースを要するという欠点がある。
なお、薬液の吹付け方法においては、カンバスの走行速度Vp及びカンバスの長さKを共に上記範囲内とすることにより、生産性が向上し、紙製品をより安価に製造することが可能となる。
【0032】
第1案内において、カンバスK1表面の任意の点が湿紙Xと接している時間Tcは0.03秒以上であり、好ましくは0.05秒以上、更に好ましくは0.05~5秒である。
カンバスK1が湿紙Xと接している時間Tcが0.03秒未満であると、従来技術との差異は小さく、本発明による格別な効果は得られない。
なお、第2案内において、カンバスK1表面の任意の点が走行する時間は、特に限定されない。
【0033】
第1案内において、カンバスK1表面の任意の点が湿紙Xと接しながら走行する距離は0.5~16mであることが好ましい。
カンバスK1表面の任意の点が湿紙Xと接しながら走行する距離が0.5m未満であると、距離が上記範囲内にある場合と比較して、湿紙Xの乾燥がドライヤーロールの一部に依存することになるので、乾燥ムラが生じ易いという欠点があり、カンバスK1表面の任意の点が湿紙Xと接しながら走行する距離が16mを超えると、距離が上記範囲内にある場合と比較して、装置が大型化するという欠点がある。
【0034】
第2案内においては、カンバスK1に対して、図1に示す矢印Pの位置でノズル装置Sにより薬液が吹付けられるようになっている。すなわち、カンバスK1が湿紙Xと乖離した後、最初の外側カンバスロールORに接するまでの間に、ノズル装置SがカンバスK1に薬液を吹付けるようになっている。
これにより、カンバスK1の表側と接する外側カンバスロールORにも薬液を転移させることが可能となる。その結果、外側カンバスロールORにも薬液に基づく効果を付与することができる。なお、外側カンバスロールORへの薬液の転移が飽和することにより、カンバスK1表面の薬液の外側カンバスロールORへの転移量が軽減されるので、カンバスK1の表面に十分な量の薬液を残存させることが可能となる。
【0035】
ここで、上述したように、カンバスK1は、ループ状であるため、カンバスK1を走行させることにより、カンバスK1の表面における任意の点は、一定時間経過後に、第1案内及び第2案内を経て、同じ位置に戻ることになる。すなわち、第1案内及び第2案内を経ることにより1サイクルとなる。このことから、カンバスK1においては、当該カンバスK1が1サイクルの分を走行する毎に、繰り返して湿紙Xと接触することになる。
このとき、後述するノズル装置Sが片道移動するのに要する時間Tnの間に、カンバスK1の任意の点が湿紙Xと接触する接触回数Nは、
N=(Tn・Vp)/K
の関係を満たす。
これにより、高速で走行するカンバスK1に対して、ノズル装置Sを幅方向に往復運動させながら薬液を吹き付ける場合においても、カンバスK1の表面に薬液を極力均一に付与することができ、且つ、十分な量の薬液を残存させることができる。
なお、接触回数Nとは、時間Tnの間に、1サイクルが繰り返される回数である。
【0036】
具体的には、接触回数Nは、20~80回であり、30~60回であることがより好ましい。
接触回数Nが20回未満であると、湿紙Xが吸い取る薬液の量が少なくなり、一方で、カンバスD1に残存する薬液量が多くなるため、薬液自体に含まれる固形分によりカンバスK1が汚染される場合があり、接触回数Nが80回を超えると、湿紙が吸い取る薬液の量が多くなり、カンバスK1が部分的に薬液量不足となる恐れがある。
【0037】
カンバスK1の材質としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリル、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ノーメックス、これらの共重合体、又は、これらのポリマーアロイ等が好適に用いられる。
また、カンバスK1の組織は、織物、不織布、組物等を適宜採用できる。
【0038】
カンバスK1の種類としては、特に限定されないが、例えば、縦糸と横糸に、モノフィラメント、マルチフィラメント又はスパン糸を用いた織カンバス、合成樹脂製の複数のスパイラルコイルとマルチフィラメントの芯線とを用いたスパイラルカンバス等が好適に用いられる。
【0039】
カンバスK1の通気度は、2000~50000cm/cm・minであることが好ましい。
カンバスK1の通気度が2000cm/cm・min未満であると、通気度が上記範囲内にある場合と比較して、汚染物が詰まり易くなり、通常の洗浄ではその汚染物を除去できない場合が生じ、カンバスK1の通気度が50000cm/cm・minを超えると、通気度が上記範囲内にある場合と比較して、第1案内において、湿紙Xをドライヤーロール側に十分に圧接させることができない場合が生じ得る。
【0040】
図2は、本実施形態に係る薬液の吹付け方法において、カンバスにノズル装置が薬液を吹付けている状態を示す概略斜視図である。
図2に示すように、薬液の吹付け方法においては、カンバスK1を走行させた状態で、一定の間隔を於いて配置した2基のノズル装置Sを、カンバスK1の幅方向に延びるレールLに沿って同じ速度で往復移動させながら、当該2基のノズル装置SがカンバスK1に薬液を吹付ける。
【0041】
薬液の吹付け方法においては、2基のノズル装置Sを用いるので、各ノズル装置Sが担当する吹付け領域を小さくすることができる。これにより、カンバスK1に対して、効率良く薬液を付与することが可能となる。
このとき、薬液の吹付け方法において、稼働時にドライヤーロール表面に維持される薬液の吹付け量が有効成分量として0.1~500mg/mであり、0.3~500mg/mであることが好ましく、1~250mg/mであることがより好ましく、1.5~95mg/mであることが更に好ましい。
なお、「有効成分量」とは、薬液において、水以外の、油、界面活性剤、樹脂、無機塩等の成分の総量を意味する。すなわち、かかる吹付け量は、1mあたりのカンバスK1に付与された薬液に含まれる有効成分量を意味する。
薬液の吹付け量が有効成分量として0.3mg/m未満であると、薬液が湿紙Xに吸い取られ、薬液に基づく効果を十分に発揮できない。また、薬液の吹付け量が有効成分量として500mg/mを超えると、薬液自体に含まれる固形分が汚染の原因となる恐れがある。
【0042】
薬液の吹付け方法において、2基のノズル装置Sは同じ構造となっており、共に、レールLに内蔵されたベルト(図示しない)により、レールLに沿って幅方向に往復移動するようになっている。
このとき、一方側のノズル装置Sは、湿紙Xの一端に相当するレールLの位置P1から、湿紙Xの中央に相当するレールLの位置P3までの間を往復移動するようになっている。
また、他方側のノズル装置Sは、湿紙Xの中央に相当するレールLの位置P3から、湿紙Xの他端に相当するレールLの位置P2までの間を往復移動するようになっている。
なお、これらの移動制御は、レールLに取り付けられた複数のセンサー(図示しない)を用いて行われる。
これにより、薬液の吹付け方法においては、薬液の付与効率が向上し、カンバスK1全体に対して、より均一に薬液を付与することが可能となる。
【0043】
ノズル装置Sは、カンバスK1に対し、正面視で薬液を瞬間的に扇状に吹き付けるようになっている。なお、正面視とは、カンバスK1の走行方向における上流側又は下流側から見ることを意味する。
したがって、かかるノズル装置Sは、カンバスK1の幅方向に広がる扇状、又は、放射状に薬液を吹き付けている。
ノズル装置Sが瞬間的に薬液をカンバスK1に吹き付けた場合のカンバスK1における薬液の吹付け幅Wは、1.5~15cmであることが好ましく、3~9mであることがより好ましい。
吹付け幅Wが1.5cm未満であると、吹付け幅Wが上記範囲内にある場合と比較して、ノズル装置Sが往復して再散布するまでの時間が長く、湿紙の接触回数Nが多くなる欠点があり、吹付け幅Wが15cmを超えると、吹付け幅Wが上記範囲内にある場合と比較して、インパクトが弱いスプレー幅端部が飛散して対象への付着効率が低下するという欠点がある。なお、かかる吹付け幅Wは、カンバスK1の幅方向における薬液の吹付け部分の最大幅を意味する。
【0044】
薬液の吹付け方法において、各ノズル装置Sが移動する片道の距離は、湿紙Xの紙幅Rの半分に相当する。すなわち、ノズル装置Sが移動する往復の距離は、湿紙Xの紙幅Rに相当する。
そして、湿紙Xの紙幅Rは、生産性の観点から、5m以上のものが好適に用いられ、歩留まりの観点から、5~13mのものがより好適に用いられる。
【0045】
図3の(a)及び図3の(b)は、本実施形態に係る薬液の吹付け方法においてカンバスに薬液を吹付けた場合のカンバス1回転分の展開図である。
薬液の吹付け方法においては、カンバスK1が1回転する間にノズル装置Sが幅方向に移動しながら連続的に薬液を吹付ける。このため、図3の(a)及び図3の(b)に示すように、薬液は、カンバス1回転分の展開図において、平行四辺形状の吹付け部分を形成することになる。
【0046】
例えば、図3の(a)に示すように、薬液の吹付け幅Wが、カンバスK1が1回転する間におけるノズル装置Sの移動距離Hよりも大きい場合、吹付け部分同士が重なり合うことになる。一方、図3の(b)に示すように、薬液の吹付け幅Wが、カンバスK1が1回転する間におけるノズル装置Sの移動距離Hよりも小さい場合、吹付け部分同士の間に隙間が生じることになる。
したがって、カンバスK1に対して、吹付け部分間に隙間が生じないように薬液を付与するためには、
H≦W
となるように、カンバスK1が1回転する間におけるノズル装置Sの移動距離H及び薬液の吹付け幅Wを設定することが好ましい。
これにより、隙間が生じないように薬液を付与可能なノズル装置Sの一定速度Vaを算出することができる。
【0047】
ここで、ノズル装置Sは、レールLに沿って一定速度Vcで往復移動するようになっている。なお、両側の折り返し部分では、減速及び加速を伴うものの、上記一定速度Vcは超えないようになっている。
なお、一定速度Vcは、ノズル装置Sの移動距離Hを、カンバスK1が1回転する時間(カンバスK1の長さK/走行速度Vp)で除することにより設定することができる。
【0048】
カンバスK1が1回転する間におけるノズル装置Sの移動距離Hは、0.5~45cmであることが好ましく、0.5~30cmであることがより好ましい。
移動距離Hが0.5cm未満であると、移動距離Hが上記範囲内にある場合と比較して、ノズル装置Sが往復して再散布するまでの時間が長く、後述する湿紙Xの接触回数が多くなるという欠点があり、移動距離Hが45cmを超えると、移動距離Hが上記範囲内にある場合と比較して、インパクトが弱いスプレー幅端部が飛散して対象への付着効率が低下する欠点がある。
【0049】
ノズル装置Sの平均移動速度Vaは、上述した一定速度Vc並びに折り返し部分の減速及び加速を加味して設定される。
具体的には、ノズル装置Sの平均移動速度Vaは、0.5~6m/分であることが好ましい。この場合、ノズル装置Sによる安定した薬液の吹付けが可能となる。
そして、ノズル装置Sが片道移動するのに要する時間Tnは、
Tn=R/2Va
の関係を満たすように、湿紙の紙幅R及びノズル装置Sの平均移動速度Vaから算出される。なお、片道移動するのに要する時間とは、ノズル装置Sが往復移動するのに要する時間を半分にした時間であり、片道が往路であるか復路であるかは問わない。
このように、時間Tnを算出することができるので、例えば、湿紙の段取り変えで紙幅が変わった場合であっても、ノズル装置の移動速度等を調整することにより、カンバスの表面に十分な量の薬液を残存させることが可能となる。
【0050】
具体的には、ノズル装置Sが片道移動するのに要する時間Tnは、0.5~10分であることが好ましく、1~8分であることがより好ましい。
時間Tnが0.5分未満であると、ノズル装置SとレールLとの摩擦が大きく故障の原因となる恐れがあり、時間Tnが10分を超えると、ノズル装置Sが往復して薬液を再散布するまでの時間が長く、薬液に基づく効果が得られ難くなる傾向にある。
なお、ノズル装置Sが片道移動するのに要する時間Tnをこの範囲に固定し、上記式を満たすように、湿紙の紙幅R又はノズル装置Sの平均移動速度Vaを変更することも可能である。
【0051】
カンバスK1がポリエチレンからなる織物であり、且つ、薬液の吹付けが30~130度の温度条件下で行われる場合、薬液のゼータ電位の絶対値が3~100mVであることが好ましく、20~80mVであることがより好ましい。
ゼータ電位の絶対値が3mV未満であると、ゼータ電位の絶対値が上記範囲内にある場合と比較して、薬液のカンバスK1への吸着力が小さいため、カンバスK1に残存する薬液量が不十分となる恐れがあり、ゼータ電位の絶対値が100mVを超えると、ゼータ電位の絶対値が上記範囲内にある場合と比較して、薬液のカンバスK1への吸着力が大きいため、カンバスK1に残存する薬液量が多くなり過ぎ、その結果、薬液自体に含まれる固形分により当該カンバスK1が汚染される恐れがある。
【0052】
薬液の吹付け方法で用いられる薬液としては、汚染防止剤組成物、剥離剤組成物、洗浄剤組成物等が挙げられる。
これらの中でも、薬液は、少なくとも、汚染防止剤と水とを含む汚染防止剤組成物であることが好ましい。この場合、湿紙に含まれる紙粉やピッチがカンバスK1に付着することを抑制することが可能となる。
汚染防止剤は、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリブテン、植物油及び合成エステルオイルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、アミノ変性シリコーンオイル、合成エステルオイル又は植物油を含有することがより好ましい。
【0053】
ここで、汚染防止剤が、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル及びポリエーテル変性シリコーンオイルからなる群より選ばれる少なくとも1種のシリコーン系オイルを含有する場合は、pHが3.0~6.0であることが好ましく、メジアン径が0.05~1.2μmであることが好ましく、粘度が100mPa・s以下であることが好ましく、ゼータ電位が23~80mVであることが好ましい。
また、汚染防止剤が、ポリブテン、植物油及び合成エステルオイルからなる群より選ばれる少なくとも1種の非シリコーン系オイルを含有する場合は、pHが8.5~10.5であることが好ましく、メジアン径が0.05~1.2μmであることが好ましく、粘度が100mPa・s以下であることが好ましく、ゼータ電位が-80~-15mVであることが好ましい。
【0054】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0055】
本実施形態に係る薬液の吹付け方法においては、カンバスK1が湿紙Xと乖離した後、最初の外側カンバスロールORに接するまでの間に、ノズル装置Sが該カンバスK1に薬液を吹付けているが、これ以外にも、更にノズル装置Sを増やして、カンバスK1に薬液を吹き付けてもよい。
この場合、追加するノズル装置Sの位置は、カンバスK1の走行に対して、外側カンバスロールORの上流側であっても下流側であってもよい。
【0056】
本実施形態に係る薬液の吹付け方法においては、カンバスK1に対して、吹付け部分間に隙間が生じないように薬液を付与するため、
H≦W
となるように、カンバスK1が1回転する間におけるノズル装置Sの移動距離H及び薬液の吹付け幅Wを設定しているが、この算出方法は必須ではない。すなわち、吹付け部分間に隙間が生じる条件として、ノズル装置Sの一定速度Vcを算出してもよい。なお、仮に、吹付け部分間に隙間が生じる場合であっても、ノズル装置Sは、繰り返し往復移動しながら薬液を吹付けるものであるため、隙間はいずれ解消されることになる。
【0057】
本実施形態に係る薬液の吹付け方法においては、2基のノズル装置Sを用いて薬液を吹き付けているが、3基以上のノズル装置Sで薬液を吹き付ける場合に援用することも可能である。
【実施例
【0058】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
(実施例1~14及び比較例1~24)
図1に示すような抄紙機の実機において、図2に示すようにカンバスK1に対し、2基のノズル装置Sを用いて、薬液を吹き付けた。
このとき用いた湿紙の紙幅Rは6mであり、薬液の吹付け幅Wは8cmであった。
また、薬液として、実施例1~10及び比較例1~16ではゼータ電位56.8mVの汚染防止剤組成物(クリーンキーパーPBS0304D(アミノ変性シリコーンオイル)、株式会社メンテック製)を用い、実施例11,12及び比較例17~20ではゼータ電位0mVの汚染防止剤組成物(ポリエーテル変性シリコーンオイルを主成分)を用い、実施例13,14及び比較例21~24ではゼータ電位-64.0mVの汚染防止剤組成物(主成分:合成エステルオイル)を用い、これらの薬液の吹付け量が有効成分量として20mg/mとなるようにカンバスK1に付与した。
カンバスと湿紙との接触時間Tc(秒)、ノズル装置が片道移動するのに要する時間Tn(分)、カンバスの走行速度Vp(m/分)、及び、カンバスの長さK(m)の条件は、表1に示すように調整し、その値から接触回数Nを算出した。
【0060】
(表1)
【0061】
[評価方法]
実施例1~14及び比較例1~24において、5日経過後のカンバスK1の表面に付着したピッチや紙粉等による汚染の状況について目視にて評価した。
評価は、カンバスK1表面に汚れが付着していない状態を「◎」とし、カンバスK1表面の全体の1割程度に汚れが付着している状態を「〇」とし、カンバスK1表面の全体の1~3割程度に汚れが付着している状態を「△」とし、カンバスK1表面の全体の3割以上に汚れが付着している状態を「×」とした。なお、かかる評価が「◎」、「〇」又は「△」であれば、汚染防止剤組成物に基づく汚染防止効果が発揮されているといえる。
得られた結果を表2に示す。
【0062】
(表2)
【0063】
表2に示した結果から明らかなように、実施例1~14の薬液の吹付け方法によれば、比較例1~24の薬液の吹付け方法と比較して、カンバスK1の汚染を十分に抑制できているので、カンバスK1表面に汚染防止剤組成物が十分に残存しており、それによる効果を発揮していると言える。
また、ゼータ電位の絶対値が56.8mVである汚染防止剤組成物を用いた実施例1~10、及び、ゼータ電位の絶対値が64.0mVである汚染防止剤組成物を用いた実施例13,14、においては、汚染防止効果がより優れるものであった。さらに、その中でも、接触回数を33~50回とした場合に汚染防止効果がより一層優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る薬液の吹付け方法は、抄紙機におけるドライパートにおけるカンバスに薬液を吹付ける場合の吹付け方法として好適に用いられる。本発明によれば、湿紙と接している時間Tcが0.03秒以上のカンバスに対して、ノズル装置を幅方向に往復移動させながら、カンバスの表面に薬液を極力均一に付与すると共に、十分な量の薬液を残存させることができる。
【符号の説明】
【0065】
B・・・ブレーカースタックロール
C・・・カレンダーロール
D1,D2,D3,D4,D5,D6,D7,D8,D9・・・ドライヤーロール
DK・・・ドクターブレード
DP・・・ドライパート
H・・・移動距離
IR・・・内側カンバスロール
K1・・・カンバス
L・・・レール
OR・・・外側カンバスロール
P1,P2,P3・・・位置
R・・・紙幅
S・・・ノズル装置
W・・・吹付け幅
X・・・湿紙
図1
図2
図3