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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】蓋付き構造体、蓋体および蓋受け体
(51)【国際特許分類】
   E03B 9/10 20060101AFI20240904BHJP
   E02D 29/14 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
E03B9/10 A
E02D29/14 B
E03B9/10 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020194413
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022083138
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000227593
【氏名又は名称】日之出水道機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】立石 栄一
(72)【発明者】
【氏名】古賀 英浩
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-236470(JP,A)
【文献】特開2013-032658(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01154080(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0186381(US,A1)
【文献】特開2017-197924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 9/10
E02D 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋体と、
前記蓋体を支持する蓋受け体と、
前記蓋体および前記蓋受け体の一方に設けられた軸部と、
前記蓋体および前記蓋受け体の他方に設けられ、前記軸部を前記軸部の軸線周りに回転可能に支持する軸受け部とを備え、
前記軸受け部は、前記軸部が前記軸線に交差する第1の方向に通過可能な通路部と、
前記通路部の通路幅を変えるように前記通路部の第1の位置に形成された通路幅可変部とを含み、
前記通路幅可変部は、前記通路部の前記第1の位置において前記軸線および前記第1の方向の両方に直交する第2の方向に窪むように形成された切欠きを有する取付部と、
前記切欠きに嵌め込まれることにより前記第2の方向に延びた姿勢で前記取付部に取り付けられる第1の部材とを含み、
前記第1の部材は、前記切欠きから前記通路部に露出する先端部であって、前記軸部と接触して変形することにより、前記軸部と前記軸受け部とを互いに取り付ける際の前記通路幅よりも、前記軸部と前記軸受け部とを互いに取り外す際の前記通路幅を狭める先端部を含む、蓋付き構造体。
【請求項2】
前記第1の部材は、前記軸部と接触することにより変形する弾性部を含み、
前記取付部は、前記軸部と前記軸受け部とを互いに取り付ける際に、前記通路幅が第1の幅だけ広がるように前記弾性部を変形させる第1の部分と、
前記軸部と前記軸受け部とを互いに取り外す際に、前記通路幅が前記第1の幅よりも小さい第2の幅だけ広がるように前記弾性部を変形させる第2の部分とを含む、請求項1に記載の蓋付き構造体。
【請求項3】
前記第1の部材は、前記軸部と接触することにより変形する弾性部を含み、
前記弾性部は、前記軸部と前記軸受け部とを互いに取り付ける際に、前記通路幅が第1の幅だけ広がるように変形する第1の変形性能と、
前記軸部と前記軸受け部とを互いに取り外す際に、前記通路幅が前記第1の幅よりも小さい第2の幅だけ広がるように変形する第2の変形性能とを含む、請求項1に記載の蓋付き構造体。
【請求項4】
蓋受け体に設けられた軸部を、前記軸部の軸線周りに回転可能に支持する軸受け部を備え、
前記軸受け部は、前記軸部が前記軸線に交差する第1の方向に通過可能な通路部と、
前記通路部の通路幅を変えるように前記通路部の第1の位置に形成された通路幅可変部とを含み、
前記通路幅可変部は、前記通路部の前記第1の位置において前記軸線および前記第1の方向の両方に直交する第2の方向に窪むように形成された切欠きを有する取付部と、
前記切欠きに嵌め込まれることにより前記第2の方向に延びた姿勢で前記取付部に取り付けられる第1の部材とを含み、
前記第1の部材は、前記切欠きから前記通路部に露出する先端部であって、前記軸部と接触して変形することにより、前記軸部と前記軸受け部とを互いに取り付ける際の前記通路幅よりも、前記軸部と前記軸受け部とを互いに取り外す際の前記通路幅を狭める先端部を含む、蓋体。
【請求項5】
蓋体に設けられた軸部を、前記軸部の軸線周りに回転可能に支持する軸受け部を備え、
前記軸受け部は、前記軸部が前記軸線に交差する第1の方向に通過可能な通路部と、
前記通路部の通路幅を変えるように前記通路部の第1の位置に形成された通路幅可変部とを含み、
前記通路幅可変部は、前記通路部の前記第1の位置において前記軸線および前記第1の方向の両方に直交する第2の方向に窪むように形成された切欠きを有する取付部と、
前記切欠きに嵌め込まれることにより前記第2の方向に延びた姿勢で前記取付部に取り付けられる第1の部材とを含み、
前記第1の部材は、前記切欠きから前記通路部に露出する先端部であって、前記軸部と接触して変形することにより、前記軸部と前記軸受け部とを互いに取り付ける際の前記通路幅よりも、前記軸部と前記軸受け部とを互いに取り外す際の前記通路幅を狭める先端部を含む、蓋受け体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋付き構造体、蓋体および蓋受け体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に設置されている上水道、電力、電気通信用のメータやバルブ等を内部に収容して保護する地下構造物用きょう(筐)枠体が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
このきょう(筐)枠体は、受枠の内側の左右の側面後部に、相互に対向する位置に突出する一対の枢着ピンを設け、受枠の開放部を開閉可能に閉塞する蓋本体には一方の枢着ピンを嵌め込む第1窪部と、他方の枢着ピンを嵌め込む第2窪部を設け、第2窪部には、蓋本体の後縁に開口して枢着ピンを通過させる連通部を設けている。
【0003】
蓋本体と受枠とを互いに取り付けるには、第1窪部に一方の枢着ピンを嵌め込んだ後、蓋本体を受枠に対して僅かに開いた位置において、連通部を経由して他方の枢着ピンを第2窪部内に配置する。これにより、蓋本体の第1窪部と第2の窪部は、受枠の一対の枢着ピンの共通の軸線周りに回転可能に支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平4-61156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のきょう(筐)枠体においては、蓋本体を受枠に対して僅かに開いた状態にすると、枢着ピンが連通部を通過し易く、蓋本体と受枠との着脱が容易である反面、蓋本体と受枠とが外れ易いという不都合がある。
したがって、蓋本体と受枠との取付容易性を確保しつつ、蓋本体と受枠とが容易に外れることを防止することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、蓋体と、該蓋体を支持する蓋受け体と、前記蓋体および前記蓋受け体の一方に設けられた軸部と、前記蓋体および前記蓋受け体の他方に設けられ、前記軸部を該軸部の軸線周りに回転可能に支持する軸受け部とを備え、該軸受け部は、前記軸部が前記軸線に交差する方向に通過可能な通路部と、該通路部の通路幅を変える通路幅可変部とを含み、該通路幅可変部は、前記軸部と接触することにより変形可能な第1の部材であって、前記軸部と前記軸受け部とを互いに取り付ける際の前記通路幅よりも、前記軸部と前記軸受け部とを互いに取り外す際の前記通路幅を狭めるように変形する第1の部材を含む、蓋付き構造体である。
【0007】
本態様によれば、
第1の部材が、軸部と軸受け部とを互いに取り付ける際の通路部の通路幅よりも、軸部と軸受け部とを互いに取り外す際の通路部の通路幅を狭めるように変形する。このため、
軸部と軸受け部とを互いに取り付ける際よりも取り外す際に、第1の部材を、軸部が通路部を通過する際の通過抵抗として機能させやすい。したがって、軸部と軸受け部とを互いに、取り付けやすく取り外しにくい蓋付き構造体を提供することができる。
【0008】
上記態様においては、前記第1の部材は、前記軸部と接触することにより変形する弾性部を含み、前記軸受け部は、前記軸部と前記軸受け部とを互いに取り付ける際に、前記通路幅が第1の幅だけ広がるように前記弾性部を変形させる第1の部分と、前記軸部と前記軸受け部とを互いに取り外す際に、前記通路幅が前記第1の幅よりも小さい第2の幅だけ広がるように前記弾性部を変形させる第2の部分とを含んでいてもよい。
【0009】
この構成により、軸部と軸受け部とを互いに取り付ける際には、第1の部分が弾性部に接触することにより、通路幅を第1の幅だけ広げる。
また、軸部と軸受け部とを互いに取り外す際には、第2の部分が弾性部に接触することにより、通路幅を第1の幅よりも小さい第2の幅だけ広げる。
このように、弾性部に対して第1の部分と第2の部分とを直接接触させることにより、第1の幅と第2の幅とを制御しやすい。
【0010】
また、上記態様においては、前記第1の部材は、前記軸部と接触することにより変形する弾性部を含み、前記弾性部は、前記軸部と前記軸受け部とを互いに取り付ける際に、前記通路幅が第1の幅だけ広がるように変形する第1の変形性能と、前記軸部と前記軸受け部とを互いに取り外す際に、前記通路幅が前記第1の幅よりも小さい第2の幅だけ広がるように変形する第2の変形性能とを含んでいてもよい。
【0011】
この構成により、軸部と軸受け部とを互いに取り付ける際には、第1の部材の弾性部が有する第1の変形性能により、通路幅を第1の幅だけ広げる。
また、軸部と軸受け部とを互いに取り外す際には、第1の部材の弾性部が有する第2の変形性能により、通路幅を第1の幅よりも小さい第2の幅だけ広げる。
このように、弾性部が第1の変形性能と第2の変形性能により変形するので、軸受け部の形状からの影響を受けにくく、第1の幅と第2の幅とを制御しやすい。また、軸受け部の形状をシンプルにすることも可能となる。
【0012】
また、本発明の他の態様は、蓋受け体に設けられた軸部を、該軸部の軸線周りに回転可能に支持する軸受け部を備え、該軸受け部は、前記軸部が前記軸線に交差する方向に通過可能な通路部と、該通路部の通路幅を変える通路幅可変部とを含み、該通路幅可変部は、前記軸部と接触することにより変形可能な第1の部材であって、前記軸部と前記軸受け部とを互いに取り付ける際の前記通路幅よりも、前記軸部と前記軸受け部とを互いに取り外す際の前記通路幅を狭めるように変形する第1の部材を含む、蓋体である。
【0013】
また、本発明の他の態様は、蓋体に設けられた軸部を、該軸部の軸線周りに回転可能に支持する軸受け部を備え、該軸受け部は、前記軸部が前記軸線に交差する方向に通過可能な通路部と、該通路部の通路幅を変える通路幅可変部とを含み、該通路幅可変部は、前記軸部と接触することにより変形可能な第1の部材であって、前記軸部と前記軸受け部とを互いに取り付ける際の前記通路幅よりも、前記軸部と前記軸受け部とを互いに取り外す際の前記通路幅を狭めるように変形する第1の部材を含む、蓋受け体である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る蓋付き構造体を示す分解斜視図である。
図2図1の蓋付き構造体の第2軸部および第2軸受け部を示す部分的な縦断面図である。
図3図2の蓋付き構造体における蓋体の第2軸受け部を示す部分的な拡大図である。
図4図1の蓋付き構造体において蓋受け体に蓋体を取り付ける作業を説明する部分的な縦断面図である。
図5図1の蓋付き構造体において蓋受け体から蓋体を取り外す作業を説明する部分的な縦断面図である。
図6図2の第2軸受け部における第1の部材の変形例を説明する部分的な拡大図である。
図7図2の第2軸受け部における第1の部材の他の変形例を説明する部分的な拡大図である。
図8図2の第2軸受け部における第1の部材の他の変形例を説明する部分的な分解斜視図である。
図9図2の第2軸受け部における第1の部材の他の変形例を説明する部分的な分解斜視図である。
図10図2の第2軸受け部における第1の部材の他の変形例を説明する部分的な分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る蓋付き構造体100、蓋体1および蓋受け体2について、図面を参照して以下に説明する。
本発明の説明において、「蓋付き構造体」とは、下水道における地下埋設物,地下構造施設等と地上とを通じる開口部を閉塞するマンホール蓋,大型鉄蓋,汚水桝蓋、電力・通信の分野における地下施設機器や地下ケーブル等を保護する開閉可能な共同溝用鉄蓋,送電用鉄蓋,配電用鉄蓋、上水道やガス配管における路面下の埋設導管およびその付属機器と地上とを結ぶ開閉扉としての機能を有する消火栓蓋,制水弁蓋,仕切弁蓋,空気弁蓋,ガス配管用蓋,量水器蓋等のほか、コンクリート製の雨水桝や道路側溝を蓋受け体、該蓋受け体に取り付けるグレーチング(格子)蓋等を蓋体として備えるものを総称する。
【0016】
本実施形態に係る蓋付き構造体100は、地中に配置される上水道のメータあるいはバルブ等(図示しない)を内部に収容して保護する量水器蓋である。蓋付き構造体100は、図1に示されるように、蓋体1と、蓋体1を支持する蓋受け体2と、蓋体1および蓋受け体2の一方に設けられた軸部6a,6bと、蓋体1および蓋受け体2の他方に設けられ、軸部6a,6bを該軸部6a,6bの軸線A周りに回転可能に支持する軸受け部7a,7bとを備える。
なお、本発明の説明において、「回転可能に支持する」とは、回転する際に軸部6a,6bと軸受け部7a,7bとが接触する場合のほか、非接触状態である場合を含む概念である。
蓋受け体2は、地下構造物である上水道のメータあるいはバルブ等を取り囲むことができる大きさを有し、地中に埋設された状態で上方に開口し地中と地上とを通じる長方形状の開口部4を備えている。
【0017】
蓋体1は開口部4を閉塞可能な長方形の平板状に形成されている。以下の説明においては、図1に矢印によって示すように、開口部4の一方の長辺側を前方、他方の長辺側を後方、一対の短辺側を左右方向とする。
蓋受け体2の開口部4の周囲の内周面には、開口部4の各辺に沿って、開口部4を閉じた状態の蓋体1の下面を支える棚部5が設けられている。
【0018】
本実施形態において、蓋受け体2は2つの軸部6a,6bを備え、蓋体1は2つの軸受け部7a,7bを備えている。
2つの軸部6a,6bは、図1に示す例では、それぞれ、円柱または円錐台の斜め下方の一部に平坦面6cを有する柱状に形成されている。2つの軸部6a,6bは、同一形状を有し、それらの中心軸(軸線)Aを一致させて、蓋受け体2の左右の棚部5の後方の左右の内周面から、それぞれ片持ち梁状に突出している。
【0019】
図2に、第2軸部6bおよび第2軸受け部7bの横断面形状を図示する。第2軸部6bの横断面形状は、円の外周の一部を切り欠いた形状であり、平坦面6cに沿う方向の寸法が最大寸法d1となり、平坦面6cに直交する方向の寸法が最小寸法d2となっている。
【0020】
軸受け部7a,7bは、蓋体1の左右の短辺の後部に位置する両側面に蓋体1の長辺に平行な方向に窪んだ凹部8を備えている。各凹部8は、蓋体1の長辺に平行な方向に対向する位置に配置され、収容する各軸部6a,6bの横断面形状に対して十分に大きな横断面形状を有し、一定の遊びを伴って各軸部6a,6bを内側に収容することができる。
【0021】
一方の軸部である第1軸部6aを収容する第1軸受け部7aは、凹部8の周囲が全周にわたって閉じている。他方の軸部である第2軸部6bを収容する第2軸受け部7bは、図2に示されるように、凹部8の周囲の一部に、第2軸部6bの横断面形状の最小寸法d2よりも大きく、最大寸法d1よりも小さい開口幅を有する通路部9を備えている。第2軸部6bは、その中心軸Aに直交する方向に、通路部9を通過させられて、第2軸受け部7bの外側から凹部8内に挿入され、あるいは、凹部8内から第2軸受け部7bの外側に取り出される。
【0022】
また、第2軸受け部7bは、図2および図3に示されるように、通路部9の通路幅を変える通路幅可変部10を備えている。通路幅可変部10は、第2軸部6bと接触することにより変形可能な第1の部材11であって、第2軸部6bと第2軸受け部7bとを互いに取り付ける際の通路部9の通路幅よりも、第2軸部6bと第2軸受け部7bとを互いに取り外す際の通路部9の通路幅を狭めるように変形する第1の部材11を備えている。
【0023】
本実施形態において第1の部材11は、例えば、ゴム製の弾性部材11であり、長方形の平板状の弾性部12と、弾性部12の一端に接続し弾性部12に直交する方向に延びる長方形の平板状の固定部13とを備え、全体としてT字状の一定の縦断面形状を有している。
なお、本発明において「第1の部材」は、弾性変形するものに限定されず、弾性変形以外の変形をするものも包括的に含む概念である。以下の説明においては、第1の部材が弾性部材11である場合について説明する。
【0024】
本実施形態において第2軸受け部7bの凹部8と通路部9との境界位置には、弾性部材11と等しいまたは若干大きなT字状の縦断面の切欠きを有する第1の部材取付部14が設けられている。弾性部材11は、部分的に第1の部材取付部14に嵌め込まれ、例えば、固定部13を第1の部材取付部14の内面に接着することにより、弾性部12の先端を通路部9の通路幅方向の一側から通路部9を部分的に閉塞するように突出させた片持ち梁状に固定されている。
【0025】
これにより、弾性部材11は、第1の部材取付部14に取り付けた状態において、弾性部12を真っ直ぐに延ばして、通路部9の通路幅を第2軸部6bの最小寸法d2よりも小さく狭めている。そして、弾性部材11は、弾性部12の先端を通路部9側または凹部8側に曲げ変形可能に配置され、第2軸部6bと接触することによって曲げ変形させられることにより、通路部9の通路幅を広げることができる。
【0026】
図3に示されるように、弾性部材11の弾性部12の通路部9側の側面は、弾性部12の先端から距離L2の位置で第2軸受け部7bに設けた第2の部分A2と接触する接触点P2までの比較的短い領域のみが通路部9内に露出し、接触点P2よりも固定部13側は第1の部材取付部14の内面が近接して配置されている。一方、弾性部12の凹部8側の側面は、弾性部12の先端から接触点P2よりも遠い距離L1の位置で第2軸受け部7bに設けた第1の部分A1と接触する接触点P1までの比較的長い領域が凹部8内に露出している。
【0027】
これにより、弾性部材11は、第2軸部6bの接触によって、弾性部12が通路部9側に変形するときには、接触点P2よりも先端側の比較的短い距離L2の領域が通路部9側に曲げ変形可能である。一方、第2軸部6bの接触によって、弾性部12が凹部8側に変形するときには、接触点P2よりも固定部13側の比較的長い距離L1の領域が通路部9から離れる方向に曲げ変形可能である。
【0028】
すなわち、蓋受け体2と蓋体1とを互いに取り付けるときには、第2軸受け部7bの通路部9に挿入した第2軸部6bを弾性部12の先端に接触させて弾性部12を凹部8側に押圧するので、第1の部分A1との接触によって弾性部12が大きく曲げ変形させられて、通路部9の通路幅が第1の幅W1だけ大きく広げられる。その一方で、蓋受け体2と蓋体1とを互いに取り外すときには、第2軸受け部7bの凹部8内に配置されている第2軸部6bを弾性部12の先端に接触させて弾性部12を通路部9側に押圧するので、第2の部分A2との接触によって弾性部12の先端が通路部9内に配置されるように小さく曲げ変形させられて、通路部9の通路幅が第1の幅W1よりも小さい第2の幅W2だけ広げられる。その結果、第2軸部6bと第2軸受け部7bとを互いに取り付ける際の通路部9の通路幅よりも、第2軸部6bと第2軸受け部7bとを互いに取り外す際の通路部9の通路幅が狭められる。
【0029】
このように構成された本実施形態に係る蓋付き構造体100、蓋体1および蓋受け体2の作用について、以下に説明する。
まず、地中に埋設された状態の蓋受け体2の開口部4と、蓋体1とを互いに取り付ける場合について説明する。
【0030】
蓋受け体2と蓋体1とを互いに取り付けるには、最初に、第1軸部6aを第1軸受け部7aの凹部8内に挿入し、次いで、第2軸部6bを第2軸受け部7bの凹部8内に挿入する。
第1軸部6aを第1軸受け部7aの凹部8内に挿入するには、第1軸部6aの先端側から第1軸部6aの中心軸Aに沿って第1軸受け部7aを近接させるように、蓋受け体2に対して蓋体1を移動させる。これにより、第1軸部6aが第1軸受け部7aの凹部8内に挿入され、第1軸受け部7aの凹部8の内周面が第1軸部6aの周囲を全周にわたって取り囲む位置に配置される。
【0031】
第2軸部6bを第2軸受け部7bの凹部8内に収容するには、第1軸部6aを第1軸受け部7aの凹部8内に配置した状態で、第2軸部6bの最小寸法d2方向を通路部9の通路幅方向に一致させるように、蓋体1の前側を少し持ち上げて、蓋受け体2に対して蓋体1を傾斜させる。この状態で、蓋体1を前側から後側に押す。
【0032】
これにより、図4に示されるように、通路部9内に配置された第2軸部6bが弾性部材11の弾性部12の先端を凹部8側に押して、第1の部分A1によって弾性部12を接触点P1の位置で曲げ変形させ、通路部9の通路幅を第1の幅W1だけ押し広げる。その結果、第2軸部6bを、通路部9を経由して第2軸受け部7bの凹部8内に配置することができる。
この状態で、2つの軸部6a,6bがそれぞれ軸受け部7a,7b内に配置されるので、蓋体1と蓋受け体2とが互いに取り付けられ、蓋体1を軸部6a,6bの中心軸A周りに回転させることにより、開口部4を開閉することができる。
【0033】
次に、蓋受け体2と蓋体1とを互いに取り外す場合について説明する。蓋受け体2と蓋体1とを互いに取り外すには、最初に第2軸部6bを第2軸受け部7bの凹部8の外に取り出し、次いで、第1軸部6aを第1軸受け部7aの凹部8の外に取り出す。
【0034】
第2軸部6bを第2軸受け部7bの凹部8の外に取り出すには、凹部8内に挿入したときと同じ角度に、蓋受け体2に対して蓋体1を傾斜させ、図5に示されるように、蓋体1を後側から前側に向けて引っ張る。これにより、弾性部12の先端に接触した凹部8内の第2軸部6bによって弾性部12の先端が通路部9側に押され、第2の部分A2によって弾性部12が接触点P2の位置で通路部9側に曲げ変形させられる。
【0035】
その結果、通路部9の通路幅が第2の幅W2だけ押し広げられて、第2軸部6bが通路部9を経由して第2軸受け部7bの外に取り出される。第2軸部6bを第2軸受け部7bの凹部8の外に取り出すことにより、蓋体1の左端が蓋受け体2から外れるので、蓋体1の右端の第1軸受け部7aと第1軸部6aとを互いに容易に取り外すことができる。これにより、蓋受け体2と蓋体1とを互いに取り外すことができる。
【0036】
この場合において、本実施形態に係る蓋付き構造体100および蓋体1によれば、蓋体1と蓋受け体2とを互いに取り付ける際には、第2軸部6bと接触することにより弾性部材11の弾性部12を容易に曲げ変形させて、通路部9の通路幅を第1の幅W1だけ大きく広げ、容易に取り付けることができる。一方、蓋体1と蓋受け体2とを互いに取り外す際には、蓋体1と蓋受け体2とを互いに取り付ける際よりも弾性部材11の弾性部12の曲げ変形を小さく制限して、通路部9の通路幅を第1の幅W1よりも小さい第2の幅W2だけ広がりを小さく制御し、弾性部材11の弾性部12を、第2軸部6bが通路部9を通過する際の通過抵抗として機能させることにより、蓋体1と蓋受け体2とが互いに簡単に外れてしまうことをし難くすることができる。
【0037】
上述したように、蓋体1は、蓋受け体2に対して前側を若干持ち上げた角度に傾斜させた位置で蓋受け体2との取り付けおよび取り外しを行うことができる。蓋体1と蓋受け体2との取り付けおよび取り外しを、いずれも容易に行うことができることとすると、冠水等によって蓋体1が蓋受け体2に対して持ち上がった場合に、蓋体1と蓋受け体2とが簡単に外れてしまうことが起こり得る。特に、蓋体1の材料が樹脂あるいは軽金属等の軽量の材料により構成されている場合には、蓋体1が簡単に開いて外れてしまうことが起こり得る。
【0038】
本実施形態によれば、第2軸受け部7bと第2軸部6bとの相対的な移動方向によって通路部9の通路幅の広がり方を異ならせるという簡単な方法により、蓋体1と蓋受け体2との互いの取り付けを容易にしつつ、蓋受け体2と蓋体1とが簡単に外れてしまうことを効果的に抑制することができる。そして、弾性部材11の弾性部12の変形方向によって、弾性部12の変形量を異ならせるという簡易な構成により、第2軸受け部7bと第2軸部6bとの相対的な移動方向によって通路部9の通路幅の広がり方を容易に異ならせることができるという利点がある。
【0039】
本実施形態に係る蓋体1によれば、2つの軸部6a,6bが備えられた既存の蓋受け体に組み合わせて、本実施形態に係る蓋付き構造体100を容易に構成することができる。したがって、既存の蓋体を本実施形態に係る蓋体1に置き換えることにより、取付容易でありながら簡単に外れることを抑制できるという利点がある。
【0040】
なお、本実施形態においては、蓋受け体2に2つの軸部6a,6bを設け、蓋体1に2つの軸受け部7a,7bを設けたが、これに代えて、蓋体1に2つの軸部6a,6bを設け、蓋受け体に2つの軸受け部7a,7bを設けてもよい。このような構成の本発明の一実施形態に係る蓋受け体2によれば、2つの軸部6a,6bを有する既存の蓋体と組み合わせて、既存の蓋体の取付を容易にしつつ、簡単に外れることを防止可能な蓋付き構造体100を構成することができるという利点がある。
【0041】
また、蓋体1には、第1軸部6aと第2軸受け部7bとを設け、蓋受け体2には、第1軸部6aに対向する位置に第1軸受け部7aを、第2軸受け部7bに対向する位置には第2軸部6bを設けてもよい。
【0042】
また、本実施形態においては、弾性部材11の弾性部12の両側面と第2軸受け部7bに設けた第1の部分A1および第2の部分A2との接触点P1,P2の、弾性部12の先端からの距離L1,L2を異ならせることにより、弾性部材11の弾性部12の変形量を変形方向に応じて異ならせた。このことは、言い換えると、弾性部材11の変形し易さを変形方向に応じて異ならせたとも言える。
【0043】
弾性部材11の弾性部12の変形し易さを変形方向に応じて異ならせる構造としては、上記構造に代えて、弾性部12自体の曲げ易さを曲げ方向によって異ならせてもよい。例えば、図6に示されるように、弾性部12の通路部9側の側面のみに、弾性部12の幅方向(中心軸Aに平行な方向)に延びる1以上のスリット15を設けてもよい。このように構成することにより、弾性部12は、図6に鎖線で示されるように、通路部9側には曲げ変形され難く、凹部8側には容易に曲げ変形することができる。このように、第1の部材(弾性部材)11に、第2軸部6bと接触することにより、通路幅が第1の幅W1だけ広がるように変形する第1の変形性能と、通路幅が前記第1の幅W1よりも小さい第2の幅W2だけ広がるように変形する第2の変形性能を持たせるようにしてもよい。
【0044】
また、図7に示されるように、弾性部12の通路部9側の側面には、弾性部12の固定部13側に、第2軸部6bと第2軸受け部7bとを互いに取り付ける際に、通路幅が第1の幅W1だけ広がるように変形する第1スリット(第1の変形性能)16を設け、弾性部12の凹部8側の側面には、弾性部12の先端側に、第2軸部6bと第2軸受け部7bとを互いに取り外す際に、通路幅が第1の幅W1よりも小さい第2の幅W2だけ広がるように変形する第2スリット(第2の変形性能)17を設けてもよい。このように構成することにより、弾性部12は、図7に鎖線で示されるように、通路部9側には第2スリット17において先端のみが屈曲して通路部9の通路幅を第2の幅W2だけ小さく広げ、凹部8側には第1スリット16において、大きく屈曲して通路部9の通路幅を第1の幅W1だけ大きく広げることができる。
【0045】
本実施形態において、第1の部材としてT字状の縦断面を有するゴム製の弾性部材11を例示したが、全てが弾性部材であるものに限定されず一部が変形可能な弾性部12を有しているものでもよい。また、材料はゴムに限定されるものではなく、また、形状も限定されるものではない。
例えば、図8に示されるように、平板状の弾性部材11を第1の部材取付部14内に嵌め込み、金具(固定部)18によって第2軸受け部7bに固定してもよい。また、図9に示されるように、第1の部材取付部14内に嵌め込んだ平板状の弾性部材(第1の部材)11を折り曲げて、ネジ19によって蓋体1に固定してもよい。また、図10に示されるように、固定される部分を金具(固定部)20にして、平板状の弾性部材(第1の部材)11と金具20とを加硫接着等により接着し、金具20をネジ21により蓋体1に固定してもよい。
【0046】
また、本実施形態においては、第1軸部6aと第2軸部6bとを同一の縦断面形状を有する柱状または錐台状に構成したが、これに代えて、通路部9を有しない第1軸受け部7aに取り付けられる第1軸部6aについては、第2軸部6bとは異なる縦断面形状を備えていてもよい。最も簡易には、第1軸部6aは、平担面6cを有しない円柱状または円錐台状に構成されていてもよい。
【0047】
また、本実施形態においては、蓋受け体として、長方形状の蓋受け体2を例示したが、これに代えて、例えば円形などの他の任意の形状の蓋受け体を採用してもよい。また、例えばU字側溝(道路側溝)などの任意の構造の蓋受け体を採用してもよい。
【0048】
また、本実施形態においては、蓋受け体2に2つの軸部6a,6bを設け、蓋体1に2つの軸受け部7a,7bを設けたが、これに代えて、蓋体1および蓋受け体2の一方に1つの第2軸部6bを設け、蓋体1および蓋受け体2の他方に1つの第2軸受け部7bを設けてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 蓋体
2 蓋受け体
6a 第1軸部(軸部)
6b 第2軸部(軸部)
7a 第1軸受け部(軸受け部)
7b 第2軸受け部(軸受け部)
9 通路部
10 通路幅可変部
11 弾性部材(第1の部材)
16 第1スリット(第1の変形性能)
17 第2スリット(第2の変形性能)
100 蓋付き構造体
A 中心軸(軸線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10