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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】流路切換弁、及び流路切換弁の組立方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 27/06 20060101AFI20240904BHJP
   F16K 27/00 20060101ALI20240904BHJP
   F16K 11/087 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
F16K27/06 C
F16K27/00 D
F16K11/087 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022007452
(22)【出願日】2022-01-20
(65)【公開番号】P2023106239
(43)【公開日】2023-08-01
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大介
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0393053(US,A1)
【文献】特開2009-287358(JP,A)
【文献】特開2020-112165(JP,A)
【文献】特開2020-51547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/00-11/24
F16K 27/00-27/12
F16K 5/00- 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に弁室が形成されると共に、前記弁室を構成する4つの側板に流体が通る流路口がそれぞれ形成され、互いに対向する2つの前記側板が2組設けられ、前記弁室を構成する底板と対向する部分が開放口とされた弁本体と、
前記弁室に回転可能に配置されると共に空洞部が内部に形成され、外表面に中心及び直径が一定の球面を有し、前記空洞部に流入又は前記空洞部から流出する流体が通る流通孔が前記外表面に形成されている弁体と、
環状に形成され、前記流路口を囲むようにそれぞれ配置され、前記球面と接触して前記球面と前記側板との間を封止する封止部と、
を備え、
前記弁体及び前記封止部は、前記開放口から前記弁室に配置可能とされ、
前記弁体の前記外表面のうち、前記底板と対向する部分と、前記球面の直径方向において該部分の反対側に位置する部分とには、互いに平行な一対の第1組の平面部が形成され、
前記平面部同士の最短距離である二面幅の方向と異なる方向における前記弁体の外寸は、前記二面幅よりも大きく、かつ前記球面の直径以下であり、
前記二面幅は、相対する前記封止部同士の離間距離よりも小さく、かつ該二面幅の方向における前記弁体の外寸に等しく、
一対の前記平面部を前記弁本体の互いに対向する前記側板にそれぞれ対向させたときに一対の前記平面部と対向しない前記側板にそれぞれ対向した状態となり、前記弁体の直径方向において互いに反対側に位置する前記流通孔の部分に、互いに平行な第2組の平面部がそれぞれ形成されている、流路切換弁。
【請求項2】
一対の前記平面部を前記弁本体の互いに対向する前記側板にそれぞれ対向させたときに一対の前記平面部と対向しない前記側板に対向した状態となる少なくとも1つの前記流通孔には、前記弁体を回転させるための工具を係合させることが可能に構成されている、請求項1に記載の流路切換弁。
【請求項3】
内部に弁室が形成されると共に、前記弁室を構成する4つの側板に流体が通る流路口がそれぞれ形成され、互いに対向する2つの前記側板が2組設けられ、前記弁室を構成する底板と対向する部分が開放口とされた弁本体と、
前記弁室に回転可能に配置されると共に空洞部が内部に形成され、外表面に中心及び直径が一定の球面を有し、前記空洞部に流入又は前記空洞部から流出する流体が通る流通孔が前記外表面に形成されている弁体と、
環状に形成され、前記流路口を囲むようにそれぞれ配置され、前記球面と接触して前記球面と前記側板との間を封止する封止部と、
を備え、
前記弁体及び前記封止部は、前記開放口から前記弁室に配置可能とされ、
前記弁体の前記外表面のうち、前記底板と対向する部分と、前記球面の直径方向において該部分の反対側に位置する部分とには、互いに平行な一対の第1組の平面部が形成され、
前記平面部同士の最短距離である二面幅の方向と異なる方向における前記弁体の外寸は、前記二面幅よりも大きく、かつ前記球面の直径以下であり、
前記二面幅は、相対する前記封止部同士の離間距離よりも小さく、かつ該二面幅の方向における前記弁体の外寸に等しく、
一対の前記平面部を前記弁本体の互いに対向する前記側板にそれぞれ対向させたときに一対の前記平面部と対向しない前記側板にそれぞれ対向した状態となり、前記弁体の直径方向において互いに反対側に位置する前記流通孔の部分に、互いに平行な第2組の平面部がそれぞれ形成されている流路切換弁の組立方法であって、
前記開放口を通じて、前記弁体を前記弁室に配置し、一対の第1組の前記平面部を、前記弁本体の互いに対向する第1組の前記側板にそれぞれ対向させた状態とする弁体配置工程と、
前記開放口を通じて、前記封止部を一対の第1組の前記平面部と第1組の前記側板の間の隙間にそれぞれ挿入して配置する封止部第1組配置工程と、
一対の第1組の前記平面部と、前記弁本体の互いに対向する第2組の前記側板とが対向するように前記弁体を回転させる第1回転工程と、
前記開放口を通じて、前記封止部を一対の第1組の前記平面部と第2組の前記側板の間の隙間にそれぞれ挿入して配置する封止部第2組配置工程と、
すべての前記封止部が前記弁体に接触すると共に、第1組の前記平面部の一方と前記底板とが対向するように前記弁体を回転させる第2回転工程と、
を備える流路切換弁の組立方法。
【請求項4】
一対の前記平面部を前記弁本体の互いに対向する前記側板にそれぞれ対向させたときに一対の前記平面部と対向しない前記側板と対向した状態となる少なくとも1つの前記流通孔は、前記弁体を回転させるための工具を係合させることが可能に構成され、
前記第2回転工程において、前記流路口を通じて前記工具を前記弁体の前記流通孔に係合させて、前記弁体を回転させる、請求項3に記載の流路切換弁の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流路切換弁、及び流路切換弁の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の切換弁は、弁室を有し、この弁室から外部に通じる複数の開口穴が形成された弁ケースと、開口穴に選択的に繋がる流路を有し弁室に収容されるボール状の弁体と、開口穴に通じる流出入口を有し弁ケースに取り付けられる複数の弁カバーと、弁体を回転駆動させる駆動源と、弁軸と、弁体と弁カバーの間に配置されて弁体が回転駆動する際に弁体に摺接すると共に複数の開口穴の相互間を非連通にする滑り材と、滑り材を弁体に押し付ける弾性部材と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-138626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流路切換弁は、内部に弁室が形成される弁本体と、弁室に配置される球状の弁体と、弁室に配置される環状の封止部とを備えている。具体的には、弁本体には、流体が通る流路口が複数成されており、環状の封止部は弾性シールであるOリングを備え、流路口を囲むように配置されている。そして、環状の封止部は、弁体の外表面と接触し、弁体の外表面と流路口との間を封止している。
【0005】
従来、弁が弁室に配置された状態では、作業者は封止部を弁室に配置することができなかった。また、全ての封止部が弁室に配置された状態では、作業者は弁を弁室に配置することができなかった。このため、上記文献に記載の従来例では、弁本体を弁ケースと複数の弁カバーとに分割している。弁ケース内に弁体を配置し、弁ケースの流路口を通じて封止部を挿入してから弁カバーを弁ケースに取り付けることにより、封止部を弁体に接触させている。
【0006】
弁の性能は、封止部におけるOリングの圧縮率に左右されるところ、このような構成では、弁本体において弁ケースと弁カバーとの間に相対的な位置ばらつきが生じることで、Oリングの圧縮率の管理が難しかった。
【0007】
そこで、弁本体と弁ケースとが分割されていない構造としつつ、弁室に弁体弁及び封止部を配置することが望まれる。しかしながら、このような構成に対しては、予め封止部と弁とを組み合させたユニットを弁室に配置しなければならなかった。このため、作業が困難となっていた。
【0008】
本開示の課題は、同一面内に4つの流路口が形成されている弁本体を有する流路切換弁において、弁性能を確保しつつ、弁体及び封止部を容易に配置できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様に係る流路切換弁は、内部に弁室が形成されると共に、前記弁室を構成する4つの側板に流体が通る流路口がそれぞれ形成され、互いに対向する2つの前記側板が2組設けられ、前記弁室を構成する底板と対向する部分が開放口とされた弁本体と、前記弁室に回転可能に配置されると共に空洞部が内部に形成され、外表面に中心及び直径が一定の球面を有し、前記空洞部に流入又は前記空洞部から流出する流体が通る流通孔が前記外表面に形成されている弁体と、環状に形成され、前記流路口を囲むようにそれぞれ配置され、前記球面と接触して前記球面と前記側板との間を封止する封止部と、を備え、前記弁体及び前記封止部は、前記開放口から前記弁室に配置可能とされ、前記弁体の前記外表面のうち、前記底板と対向する部分と、前記球面の直径方向において該部分の反対側に位置する部分とには、互いに平行な一対の平面部が形成され、前記平面部同士の最短距離である二面幅の方向と異なる方向における前記弁体の外寸は、前記二面幅よりも大きく、かつ前記球面の直径以下であり、前記二面幅は、相対する前記封止部同士の離間距離よりも小さく、かつ該二面幅の方向における前記弁体の外寸に等しい。
【0010】
この流路切換弁では、弁体における一対の平面部の二面幅が、相対する封止部同士の離間距離よりも小さく、かつ該二面幅の方向における弁体の外寸に等しいので、弁体を弁室に挿入し、平面部が側板に対向するように配置すると、一対の平面部と側板の間に、封止部の厚さよりも大きな隙間が形成される。したがって、封止部をこの隙間に容易に挿入して配置することができる。
【0011】
また、弁体における一対の平面部の二面幅の方向と異なる方向における弁体の外寸が、二面幅よりも大きく、かつ球面の直径以下であるので、使用状態においては封止部が弁体の球面に接触し、弁性能が発揮される。
【0012】
このように、弁体及び封止部が、弁本体の開放口から弁室に配置可能とされているので、弁本体が弁ケースと弁カバーとに分割される構成と比較して、弁本体の側板と封止部との相対的な位置ばらつきが抑制される。このため、弁性能が確保される。
【0013】
第2の態様は、第1の態様に係る流路切換弁において、一対の前記平面部を前記弁本体の互いに対向する前記側板にそれぞれ対向させたときに一対の前記平面部と対向しない前記側板に対向した状態となる少なくとも1つの前記流通孔には、前記弁体を回転させるための工具を係合させることが可能に構成されている。
【0014】
この流路切換弁では、弁体を回転させるための工具を流通孔に係合させることができる。したがって、流路切換弁の組立時において、弁室に弁体と封止部を配置した後に、弁本体の流路口から工具を差し込んで弁体の流通孔に係合させて弁体を回転させ、すべての封止部が弁体に接触すると共に、平面部と底板とが対向する状態にでき、流路切換弁を使用可能な状態にすることができる。
【0015】
第3の態様に係る流路切換弁の組立方法は、内部に弁室が形成されると共に、前記弁室を構成する4つの側板に流体が通る流路口がそれぞれ形成され、互いに対向する2つの前記側板が2組設けられ、前記弁室を構成する底板と対向する部分が開放口とされた弁本体と、前記弁室に回転可能に配置されると共に空洞部が内部に形成され、外表面に中心及び直径が一定の球面を有し、前記空洞部に流入又は前記空洞部から流出する流体が通る流通孔が前記外表面に形成されている弁体と、環状に形成され、前記流路口を囲むようにそれぞれ配置され、前記球面と接触して前記球面と前記側板との間を封止する封止部と、を備え、前記弁体及び前記封止部は、前記開放口から前記弁室に配置可能とされ、前記弁体の前記外表面のうち、前記底板と対向する部分と、前記球面の直径方向において該部分の反対側に位置する部分とには、互いに平行な一対の平面部が形成され、前記平面部同士の最短距離である二面幅の方向と異なる方向における前記弁体の外寸は、前記二面幅よりも大きく、かつ前記球面の直径以下であり、前記二面幅は、相対する前記封止部同士の離間距離よりも小さく、かつ該二面幅の方向における前記弁体の外寸に等しい、流路切換弁の組立方法であって、前記開放口を通じて、前記弁体を前記弁室に配置し、一対の前記平面部を、前記弁本体の互いに対向する第1組の前記側板にそれぞれ対向させた状態とする弁体配置工程と、前記開放口を通じて、前記封止部を一対の前記平面部と第1組の前記側板の間の隙間にそれぞれ挿入して配置する封止部第1組配置工程と、一対の前記平面部と、前記弁本体の互いに対向する第2組の前記側板とが対向するように前記弁体を回転させる第1回転工程と、前記開放口を通じて、前記封止部を一対の前記平面部と第2組の前記側板の間の隙間にそれぞれ挿入して配置する封止部第2組配置工程と、すべての前記封止部が前記弁体に接触すると共に、前記平面部と前記底板とが対向するように前記弁体を回転させる第2回転工程と、を備える。
【0016】
この流路切換弁の組立方法では、弁体における一対の平面部の二面幅が、相対する封止部同士の離間距離よりも小さく、かつ該二面幅の方向における弁体の外寸に等しいので、弁体配置工程において弁体を弁室に挿入し、平面部が側板に対向するように配置すると、一対の平面部と第1組の側板の間に、封止部の厚さよりも大きな隙間が形成される。封止部第1組配置工程では、この隙間に封止部を容易に挿入して配置することができる。第1回転工程で弁体を回転させると、一対の平面部と第2組の側板の間に、封止部の厚さよりも大きな隙間が形成される。封止部第2組配置工程では、この隙間に封止部を容易に挿入して配置することができる。
【0017】
そして、第2回転工程において、すべての封止部が弁体に接触すると共に、平面部と底板とが対向するように弁体を回転させることで、弁性能が発揮されるようになる。
【0018】
第4の態様は、第3の態様に係る流路切換弁の組立方法において、一対の前記平面部を前記弁本体の互いに対向する前記側板にそれぞれ対向させたときに一対の前記平面部と対向しない前記側板と対向した状態となる少なくとも1つの前記流通孔は、前記弁体を回転させるための工具を係合させることが可能に構成され、前記第2回転工程において、前記流路口を通じて前記工具を前記弁体の前記流通孔に係合させて、前記弁体を回転させる。
【0019】
この流路切換弁の組立方法では、少なくとも一部の流通孔に工具を係合させることができるので、第2回転工程において、弁本体の流路口から工具を差し込んで弁体の流通孔に係合させて弁体を回転させることができる。これにより、すべての封止部が弁体に接触すると共に、平面部と底板とが対向する状態にでき、流路切換弁を使用可能な状態にすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、同一面内に4つの流路口が形成されている弁本体を有する流路切換弁において、弁性能を確保しつつ、弁体及び封止部を容易に配置できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係る流路切換弁において、弁体と1つのシート部材が弁室に配置された状態を示す部分破断斜視図である。
図2】弁体と2つのシート部材が弁室に配置された状態を示す平面図である。
図3】弁体と2つのシート部材が配置された弁室に、更に2つのシート部材が配置される直前の状態を示す斜視図である。
図4図3における弁室の状態を示す平面図である。
図5】弁体と4つのシート部材が弁室に配置された状態を示す部分破断斜視図である。
図6図5における弁室の状態を示す平面図である。
図7図5の状態から弁体を回転させることで差込み穴を有する平面部が開放口に向いた状態を示す部分破断斜視図である。
図8図7における弁室の状態を示す平面図である。
図9図7における9-9矢視断面図である。
図10図7における10-10矢視断面図である。
図11図7の状態から弁体を回転させた状態示す部分破断斜視図である。
図12】弁体を示す拡大斜視図である。
図13】弁体を示す拡大斜視図である。
図14】弁体を示す六面図である。
図15】本実施形態に係る流路切換弁の全体を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0023】
各図に示す矢印Hは上下方向を示し、矢印Wは左右方向を示し、矢印Dは前後方向を示す。また、上下方向、幅方向、及び前後方向は、互いに直交する。なお、本発明における上下方向、幅方向、及び前後方向は、流路切換弁の使用状態の方向と異なる場合がある。
【0024】
[流路切換弁]
図7図9図10において、本実施形態に係る流路切換弁10は、例えば自動車のエンジンルーム内を流れる流体の一例である液体の流路を多方向に切り換えるロータリー形の四方弁である。この流路切換弁10は、弁本体14と、弁体16と、封止部18を備えている。また、図15において、流路切換弁10は、駆動部86を備えている。
【0025】
(弁本体)
弁本体14は、例えば樹脂材料を用いて一体的に形成されている。弁本体14における基体部材20の内部には、弁室12が形成されている。弁室12を構成する4つの側板12A,12B,12C,12Dには、流体が通る流路口31,32,33,34がそれぞれ形成され、互いに対向する2つの側板が2組設けられている。本実施形態では、左右の側板12A,12Cを第1組とし、前後の側板12B,12Dを第2組とする。図10において、基体部材20において、弁室12を構成する底板12Eと対向する部分は、開放口12Uとされている。一例として、底板12Eは、後述する球面16Sを有する弁体16との干渉を避けるために、部分的に球面状とされている。干渉が生じない構成であれば、底板12Eの一部を球面状としなくてもよい。
【0026】
図7図9図10において、弁本体14における基体部材20の外面には、流路口31,32,33,34にそれぞれ連通する管継手としてのポート31A,32A,33A,34Aが一体的に設けられている。図2図4の平面図において、側板12A,12B,12C,12Dの弁室12側には、封止部18を開放口12Uから挿入するための隙間24がそれぞれ設けられている。平面視での隙間24の長さは、封止部18の外径よりもわずかに大きく設定されている。具体的には、基体部材20には、隙間24の長さを定める規制部26が設けられている。この規制部26により、隙間24に挿入された封止部38が安定的に位置決めされるようになっている。
【0027】
(弁体)
図1から図14において、弁体16は、例えば合成樹脂から作製されたボール状の部材であり、外表面に中心及び直径が一定の球面16Sを有し、弁室12内に回転自在に配置されている。弁本体14に設けられた流路口31,32,33,34を選択的に連通させるべく、言い換えれば、流路口31,32,33,34の連通状態を選択的に切り換えるべく、弁体16の内部には、空洞部36が内部に形成され、弁体16の外表面には、空洞部36に流入又は空洞部36から流出する流体が通る流通孔16A,16B,16Cが形成されている。
【0028】
(封止部)
封止部18は、環状に形成され、流路口31,32,33,34を囲むようにそれぞれ配置され、球面16Sと接触して球面16Sと側板との間を封止する部材であり、例えばシート部材40とOリング42とを有している。シート部材40は、例えば合成樹脂から作製され、各流路口31,32,33,34にそれぞれ対応する開口を持つ円環状に形成されている。シート部材40には、傾斜シール面40Aが形成されている。傾斜シール面40Aは、例えば円錐内面であり、弁体16の球面16Sと接触する部位である。弁体16は、4つのシート部材40に挟まれており、各々の傾斜シール面40Aに接触しながら回転摺動自在に配置されている。
【0029】
図10において、Oリング42は、シート部材40の凹部40Bに一部が挿入されている。そして、Oリング42は、シート部材40が弁室12に配置された状態で、弁本体14の側板12A,12B,12C,12Dとそれぞれ接触して弾性変形するようになっている。このOリング42により、シート部材40と弁本体14との間が、例えば気密的、水密的にシールされている。そして、シート部材40の傾斜シール面40Aが弁体16の球面16Sと接触することで、シート部材40が側板12A,12B,12C,12D側へ押され、Oリング42が圧縮される。そして、Oリング42が圧縮されることで、弁体16の球面16Sとシート部材40の傾斜シール面40Aとの接触圧力が強くなる。
【0030】
一例として、弁本体14、及び弁体16にPPS(ポリフェニレンサルファイド)を使用し、シート部材40にPTFE(フッ素樹脂)を使用し、Oリング42にエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等の合成ゴムを使用することができる。
【0031】
(弁体の詳細)
図1図3において、弁体16及び封止部18は、弁本体14の開放口12Uから弁室12に配置可能とされている。
【0032】
図10において、弁体16の外表面のうち、底板12Eと対向する部分と、球面16Sの直径方向において該部分の反対側に位置する部分とには、互いに平行な一対の平面部16U,16Lが形成されている(図14も参照)。平面部16Lは、流路切換弁10の使用状態において下面となる部分である。また、平面部16Uは、流路切換弁10の使用状態において上面となる部分である。
【0033】
平面部16U,16L同士の最短距離である二面幅Tの方向と異なる方向における弁体16の外寸は、二面幅Tよりも大きく、かつ球面16Sの直径以下である。二面幅Tは、相対する封止部18同士の離間距離Kよりも小さく、かつ該二面幅Tの方向における弁体16の外寸に等しい。換言すれば、弁体16の最大外寸は、球面16Sの直径に等しく、球面16Sでない部分の外寸は、球面16Sの直径よりも小さい。弁体16の外寸は、二面幅Tの方向で測定したときに最も小さくなる。後述する流通孔16A,16Cの部分には、それぞれ平面部16Pが形成されている。この2つの平面部16Pは互いに平行であるが、その最短距離である二面幅Lは、平面部16U,16Lの二面幅Tよりも大きく、球面16Sの直径より小さい。
【0034】
図9において、流通孔16A,16B,16Cは、平面部16U,16Lの二面幅Tの方向と直交する方向に3箇所形成されている。このうち流通孔16A,16Bは、二面幅Tの方向から見て互いに直交する方向に配置されている。流通孔16B,16Cについても、同様である。流通孔16A,16Cは、弁体16の直径方向において互いに反対側に位置している。
【0035】
一対の平面部16U,16Lを弁本体14の互いに対向する側板、例えば側板12A,12Cにそれぞれ対向させたときに一対の平面部16U,16Lと対向しない側板12B,12Dに対向した状態となる少なくとも1つの流通孔、本実施形態では2つの流通孔16A,16Cには、弁体16を回転させるための工具50を係合させることが可能に構成されている(図12図13)。例えば、流通孔16A,16Cは、六角形等の多角形で構成されている。なお、流通孔16A,16Cの形状は、多角形に限られず、工具50の回転トルクを伝達できる形状であればよい。例えば流通孔16A,16Cを円形とし、弁体16の空洞部36に工具50を係合させるための部位を設けてもよい。
【0036】
図7図11図12図13において、弁体16のうち、使用時に上方を向く部位には、例えば矩形状の差込み穴16Hが形成されている。この差込み穴16Hは、上記した弁軸の下端の嵌合部が差し込まれる部位であり、弁軸からの回転力を弁体16に伝達する役割を有する(図示せず)。なお、差込み穴16Hは外表面から空洞部36まで貫通していなくてもよい。つまり、差込み穴16Hは凹部であってもよい。
【0037】
流通孔16Bの奥に位置する空洞部36の内壁には、工具30(図3)を係合させるための例えば六角形の凹部16Dが設けられている。工具30は、後述する第1回転工程S3において弁体16を回転させる際に使用される(図3)。凹部16Dが位置する部分には、空洞部36と外表面を連通させる貫通部が形成されておらず、その外表面は、他の部分と比較して広い球面16Sとされている(図13)。
【0038】
(カバー)
図15に示されるように、弁室12の開放口12Uにはカバー80が取り付けられる。カバー80には弁軸(図示せず)が貫通すると共に回転支持される。カバー80の上には、弁軸を回転させるための駆動部86が配置される。
【0039】
カバー80は、樹脂材料を用いて一体的に形成されている。本実施形態では、カバー80は、一例として、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を用いて形成されている。カバー80は、部品上下方向を板厚方向とする板状で、弁本体14における弁室12の開放口12U(図7)を上方から閉じるようになっている。
【0040】
また、カバー80には、駆動部86を取り付けるための円筒部82が形成されている。さらに、駆動部86をカバー80に取り付けるために用いるスクリュー90のネジ部が、円筒部82の内周面に噛合うようになっている。この構成において、カバー80が、弁本体14における弁室12の開放口12Uを閉じ、弁本体14に融着される。これにより、弁室12の開放口12Uが閉塞される。
【0041】
[流路切換弁の組立方法]
本実施形態に係る流路切換弁の組立方法は、上記した流路切換弁10の組立方法であって、弁体配置工程S1と、封止部第1組配置工程S2と、第1回転工程S3と、封止部第2組配置工程S4と、第2回転工程S5と、を備える。
【0042】
図1図2において、弁体配置工程S1では、開放口12Uを通じて、弁体16を弁室12に配置し、一対の平面部16U,16Lを、弁本体14の互いに対向する第1組の側板12A,12Cにそれぞれ対向させた状態とする。そうすると、一対の平面部16U,16Lと第1組の側板12A,12Cの間に、封止部18の厚さよりも大きな隙間24が形成される。
【0043】
封止部第1組配置工程S2では、開放口12Uを通じて、第1組の封止部18を一対の平面部16U,16Lと第1組の側板12A,12Cの間の隙間24にそれぞれ挿入して配置する。弁体16における一対の平面部16U,16Lの二面幅Tが、相対する封止部18同士の離間距離Kよりも小さく、かつ該二面幅Tの方向における弁体16の外寸に等しいので、隙間24は、封止部18の厚さよりも大きい。このため、隙間24に封止部18を容易に挿入して配置することができる。挿入後も、封止部18と一対の平面部16U,16Lとは、わずかに離れている。更に、基体部材20には、隙間24の長さを定める規制部26が設けられているので、封止部18は、該規制部26により安定的に位置決めされる。
【0044】
図3図4において、第1回転工程S3では、一対の平面部16U,16Lと、弁本体14の互いに対向する第2組の側板12B,12Dとが対向するように弁体16を図2の状態から例えば矢印A方向に90°回転させる。この際、図2図3において、開放口12Uを通じて工具30を弁体16の流通孔16Bに差し込み、凹部16Dに係合させることで、弁体16を回転させることができる。そうすると、図4において、弁体16の一部は、封止部第1組配置工程S2で配置された封止部18に接触する。また、弁体16の二面幅Tと封止部18同士の離間距離Kとの大小関係より、一対の平面部16U,16Lと第2組の側板12B,12Dの間に、封止部18の厚さよりも大きな隙間24が形成される。
【0045】
図5図6において、封止部第2組配置工程S4では、開放口12Uを通じて、封止部18を一対の平面部16U,16Lと第2組の側板12B,12Dの間の隙間24にそれぞれ挿入して配置する。隙間24は、封止部18の厚さよりも大きいので、隙間24に第2組の封止部18を容易に挿入して配置することができる。更に、基体部材20には、隙間24の長さを定める規制部26が設けられているので、封止部18は、該規制部26により安定的に位置決めされる。このようにして、4つの封止部18の配置が完了する。この状態では、封止部18と一対の平面部16U,16Lとは、わずかに離れている。
【0046】
図7図8において、第2回転工程S5では、すべての封止部18が弁体16に接触すると共に、平面部16U,16Lと底板12Eとが対向するように弁体16を回転させる。本実施形態では、少なくとも一部の流通孔、例えば流通孔16A,16Cに工具50を係合させることができるので、図5において、弁本体14の例えば流路口33から工具50を差し込んで弁体16の流通孔16Cに係合させて弁体16を回転させることができる。流通孔16Cの反対側の流通孔16Aに工具50を差し込んでもよい。
【0047】
弁体16を矢印B方向に90°回転させると、平面部16Uが開放口12U側に向き、平面部16Lと底板12Eとが対向する。これにより、弁体16のうち最も幅が狭い二面幅Tを構成する平面部16U,16Lが封止部18と対向しなくなる。
【0048】
二面幅Tの方向と異なる方向における弁体16の外寸は、二面幅Tよりも大きく、かつ球面16Sの直径以下であるので、平面部16U,16Lが封止部18と対向しなくなることで、図9図10に示されるように、すべての封止部18が弁体16の球面16Sに接触する。これにより、弁性能が発揮されるようになる。
【0049】
この後、図示は省略するが、弁室12の開放口12Uには、カバー80が取り付けられる。カバー80には弁軸が貫通すると共に回転支持され、弁軸の下端の嵌合部は、弁体16の平面部16Uに形成された差込み穴16Hに差し込まれる。カバー80の上には弁軸を回転させるための駆動部86が配置される。これにより、流路切換弁10が使用可能となる。
【0050】
そして、本実施形態に係る流路切換弁10では、弁体16及び封止部18が、弁本体14の開放口12Uから弁室12に配置可能とされているので、弁本体14が弁ケースと弁カバーとに分割される構成と比較して、弁本体14の側板12A,12B,12C,12Dと封止部18との相対的な位置ばらつきが抑制される。このため、弁性能が確保される。
【0051】
弁体16が3箇所の流通孔16A,16B,16Cを有する場合、4つの流路口31,32,33,34のうち3つの流路口を連通させ、1つの流路口を閉止することができる。そして、弁体16を、例えば図7の状態から図11の状態に矢印C方向に回転させることで、流路を切り換えることができる。
【0052】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0053】
少なくとも1つの流通孔、例えば流通孔16A,16Cに、弁体16を回転させるための工具50を係合させることが可能であるものとしたが、他の手段により弁体16を回転させることができることが可能であれば、流通孔16A,16C等に工具50を係合させない構成であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 流路切換弁
12 弁室
12A 側板
12B 側板
12C 側板
12D 側板
12E 底板
12U 開放口
14 弁本体
16 弁体
16A 流通孔
16B 流通孔
16C 流通孔
16H 差込み穴
16L 平面部
16U 平面部
16S 球面
18 封止部
24 隙間
31 流路口
32 流路口
33 流路口
34 流路口
36 空洞部
50 工具
K 離間距離
T 二面幅
S1 弁体配置工程
S2 封止部第1組配置工程
S3 第1回転工程
S4 封止部第2組配置工程
S5 第2回転工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15