(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】流体用減速排出装置及びこれを内部に備えた流体貯留槽
(51)【国際特許分類】
B65D 90/00 20060101AFI20240904BHJP
E03B 11/00 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
B65D90/00 J
B65D90/00 K
E03B11/00 Z
(21)【出願番号】P 2022033761
(22)【出願日】2022-03-04
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】308038495
【氏名又は名称】株式会社ベルテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100094156
【氏名又は名称】稲葉 民安
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】上平 健次
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-026414(JP,A)
【文献】特開2003-232544(JP,A)
【文献】特開2002-005524(JP,A)
【文献】特開2018-054199(JP,A)
【文献】特開平01-193537(JP,A)
【文献】中国実用新案第210602093(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 90/00
E03B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入管を介して内部に流体が貯留されるとともに、この貯留された流体を外部に排出させる排出管等の排出手段が形成された流体貯留槽内に配置される流体用減速排出装置であって、
上記流入管の先端側から所定間隔を隔てて互いに平行に配置され、それぞれ円盤状に成形されてなる複数の減速用円盤体と、
これらの減速用円盤体であって上記流入管とは最も離間した位置に配置された特定の減速用円盤体を除く他の減速用円盤体の中央にそれぞれ形成された流通用開口と、を備え、
上記他の減速用円盤体のそれぞれに形成された流通用開口の内径は、上記流入管に最も近接した他の減速用円盤体から離間するにつれて徐々に短い内径とされてな
るとともに、
上記それぞれの他の減速用円盤体は、該他の減速用円盤体全体が互いに平行とされ、
上記流入管から流入した流体は、該流入管に最も近接した流通用開口から順番に上記他の減速用円盤体側に通過するとともに、該流体の一部は、上記他の減速用円盤体同士が対向して形成された流通空間及び上記特定の減速用円盤体と上記他の減速用円盤体とが対向して形成された流通空間を上記流通用開口の中心から放射状に
上記他の減速用円盤体同士が対向して形成された流通空間を通過する流体及び上記特定の減速用円盤体と上記他の減速用円盤体とが対向して形成された流通空間を通過する流体が互いに混ざり合うことなく減速しながら通過し、上記減速用円盤体の外側に排出されるように構成されてなることを特徴とする流体用減速排出装置。
【請求項2】
前記特定の減速用円盤体の中央には、該特定の減速用円盤体に対向する他の減速用円盤体に形成された流通用開口の内径より内径が短くされた流通用開口が形成されてなることを特徴とする請求項1記載の流体用減速排出装置。
【請求項3】
前記他の減速用円盤体のそれぞれに形成された流通用開口の内径、又はこれらの流通用開口及び上記特定の減速用円盤体に形成された流通用開口の内径は、上記他の減速用円盤体同士が対向して形成された流通空間及び上記特定の減速用円盤体と上記他の減速用円盤体とが対向して形成された流通空間を上記流通用開口の中心から放射状に減速しながら通過し、上記減速用円盤体の外側に排出される流体の排出速度が略均一となる寸法に設定されてなることを特徴とする請求項1又は2記載の何れかの流体用減速排出装置。
【請求項4】
流体用減速排出装置を備えた流体貯留槽であって、この流体貯留槽は、天板と底板と側板とを備えてなるとともに、上記底板又は側板の下端側近傍に、内部に貯留された流体を外部に排出する排出管等の排出手段が形成されてなるものであり、
前記請求項1,2又は3記載の何れかの流体用減速排出装置が、前記特定の減速用円盤体が上記流体貯留槽の天板又は側板の上端側若しくは該天板と側板とが接合された角部に近接した状態で支持されてなることを特徴とする流体貯留槽。
【請求項5】
流体用減速排出装置を備えた流体貯留槽であって、この流体貯留槽は、天板と底板と側板とを備えてなるとともに、上記天板又は側板の上端側近傍に、内部に貯留された流体を外部に排出する排出管等の排出手段が形成されてなるものであり、
前記請求項1,2又は3記載の何れかの流体用減速排出装置が、前記特定の減速用円盤体が上記流体貯留槽の底板又は側板の下端側若しくは該底板と側板とが接合された角部に近接した状態で支持されてなることを特徴とする流体貯留槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、流入管を介して流体貯留槽内に流入する液体や気体の流入速度を減速して当該流体貯留槽内に流入させる流体用減速排出装置及びこの流体用減速排出装置を内部に備えた流体貯留槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで液体を内部に一時的に貯留する目的で使用される物としては、例えば給水タンク、給水槽、貯水槽等の容器や貯留用の構造物等が使用されている。
【0003】
さて、こうした流体貯留槽には、上記流入管(上流側の管体)を介して流体が流入するように構成されており、この流体貯留槽内に流入した流体は、排出管(下流側の管体)を介して該流体貯留槽から排出されるように構成されている。したがって、上記流体貯留槽内に何らかの構成が施されていない場合には、該流体貯留槽内の流体は、上記流入管の先端から排出管方向に流れる。しかしながら、この流体が例えば飲料水である場合には、先に流入した飲料水が該流体貯留槽内の所定領域で滞留(停滞)し、後から流入した飲料水が先に排出され場合が多い。
【0004】
例えば、特許第5226574号公報(特許文献1)に開示されたものは、非常用貯水槽に係る技術であり、貯水槽の一部に水が滞留し、当該滞留した部分の水の劣化を防止することを目的とするものである。また、特許第5427146号公報(特許文献2)に開示された技術は、貯水槽に係る技術であって、内部の水の流れを最適化することによって供給される水の滞留を防止し、貯水槽の中の水が効率よく入れ替わる貯水槽を提供することを目的としたものである。
【0005】
このように、これらの特許文献に開示された非常用貯水槽又は貯水槽(すなわち、流体貯留槽)の構造は、流体である水の滞留を防止し、ひいては水(飲料用の水)の劣化を防止しようとするものであるが、これらと同じ液体の流れをコントロールする場合、液体の温度変化に着目し、所定の温度とは異なる温度の液体が流入管を介して流体貯留槽内に流入するといった言わば異常事態が発生した場合、この異なる温度の液体が該流体貯留槽から排出管等を介して下流側内に流れることによって不具合が生ずる設備又は構造物も存在する。例えば、内部を液体が流通する流入管と、この流入管が接続された所定の貯留タンク(流体貯留槽)と、この液体タンク内の液体を下流側に流す排出管と、この排出管の下流側に配置され、サーバーコンピュータ等の特定の物(被冷却体)の温度を低温に維持する水冷式冷却装置(温度維持装置)とを構成要素とする水冷設備では、例えば地震等の自然災害や誤操作等のような何らかの原因に伴う停電により上記水冷式冷却装置により冷却されない高温の液体が、上記流入管から上記液体タンク内に流入した場合(異常事態が発生した場合)には、その高温の液体が、既に液体タンクに貯留されている正常な温度の液体(低温の液体)よりも先に上記排出管から流出した場合には、上記水冷式冷却装置の機能が阻害されることとなる。したがって、上述した何らかの原因によって、所定の温度とは異なる温度の液体(上記所定の温度よりも高い温度の液体又は該所定の温度よりも低い温度の液体)が流入管を介して流体貯留槽内に流入した場合には、この異常な温度の液体が排出管から排出されてしまう時間を可能な限り遅延させ、ひいては上記不具合を防止したいとの課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5226574号公報
【文献】特許第5427146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、こうした各課題を解決するために先に挙げた各特許文献に開示された技術を適用することが考えられる。しかしながら、こうした各特許文献に開示された技術では、上記非常用貯水槽又は貯水槽内において未だに十分に液体が滞留を防止することができないし、また、こうした技術を、先に説明したように、流入管から流入した流体が、既に貯留されている流体よりも先に上記液体タンク等の流体貯留槽から外部に流出したり、該流体貯留槽内で流体全体が混合され、この混合された流体が排出管から下流側に流れたりすることを防止することには大きな限界があることを否めない。
【0008】
そこで、本発明は、上述した非常用水槽等の流体貯留槽内に流入管を介して流入した流体が、該流体貯留槽内において滞留することがないばかりではなく、上記流入管から先に流入した流体から可能な限り順番に流体貯留槽から下流側に排出することができる流体用減速排出装置及びこの流体用減速排出装置を備えた新規な流体貯留槽を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、第1の発明(請求項1記載の発明)は、流入管を介して内部に流体が貯留されるとともに、この貯留された流体を外部に排出させる排出管等の排出手段が形成された流体貯留槽内に配置される流体用減速排出装置であって、上記流入管の先端側から所定間隔を隔てて互いに平行に配置され、それぞれ円盤状に成形されてなる複数の減速用円盤体と、これらの減速用円盤体であって上記流入管とは最も離間した位置に配置された特定の減速用円盤体を除く他の減速用円盤体の中央にそれぞれ形成された流通用開口と、を備え、上記他の減速用円盤体のそれぞれに形成された流通用開口の内径は、上記流入管に最も近接した他の減速用円盤体から離間するにつれて徐々に短い内径とされてなるとともに、上記それぞれの他の減速用円盤体は、該他の減速用円盤体全体が互いに平行とされ、上記流入管から流入した流体は、該流入管に最も近接した流通用開口から順番に上記他の減速用円盤体側に通過するとともに、該流体の一部は、上記他の減速用円盤体同士が対向して形成された流通空間及び上記特定の減速用円盤体と上記他の減速用円盤体とが対向して形成された流通空間を上記流通用開口の中心から放射状に上記他の減速用円盤体同士が対向して形成された流通空間を通過する流体及び上記特定の減速用円盤体と上記他の減速用円盤体とが対向して形成された流通空間を通過する流体が互いに混ざり合うことなく減速しながら通過し、上記減速用円盤体の外側に排出されるように構成されてなることを特徴とするものである。
【0010】
上記第1の発明に係る流体用減速排出装置では、上述したように、上記流入管から流入した流体は、該流入管に最も近接した流通用開口から順番に上記他の減速用円盤体側に通過するとともに、該流体の一部は、上記他の減速用円盤体同士が対向して形成された流通空間及び上記特定の減速用円盤体と上記他の減速用円盤体とが対向して形成された流通空間を上記流通用開口の中心から放射状に減速しながら通過し、上記減速用円盤体の外側に排出される。例えば、上記他の減速用円盤体が、上記流入管側から、(中央には第1の流通用開口が形成された)第1の減速用円盤体、(中央には第2の流通用開口が形成された)第2の減速用円盤体、(中央には第3の流通用開口が形成された)第3の減速用円盤体及び該第3の減速用円盤体に対向した他の減速用円盤体としての第4の減速用円盤体、と言う順序で配置されている場合には、上記流入管から流入した流体は、以下に説明する順序でこの流体用減速排出装置の外側に排出される。すなわち、先ず、所定の流速で流入管から流入した流体の一部は、上記第1の減速用円盤体の中央に形成された第1の流通用開口を通過して上記第2の流通用開口方向に流れ、残りの流体は、上記第1の減速用円盤体の表面(第2の減速用円盤体側とは反対の面)に衝突し、その後該第1の減速用円盤体の外周側に放射状に移動し最終的には該減速用円盤体の外側に排出される。また、上記第1の流通用開口を通過し第2の流通用開口方向に移動した流体の一部は、上記第3の流通用開口方向に移動し、残りの流体は、上記第2の減速用円盤体に衝突し、その後上記第1の減速用円盤体と第2の該減速用円盤体との間に形成された流通空間内に流入し、徐々にその流速が減速されながら外側に(放射状に)排出される。こうした流体の流れは、上記第2の流通用開口の内径よりも第3の流通用開口の内径の方が短いからである。そして、上記第3の流通用開口を通過した流体は、上記特定の減速用円盤体である第4の減速用円盤体の中央に衝突し、その後該第3の減速用円盤体と第4の減速用円盤体との間に形成された流通空間内に流入し、徐々にその流速が減速されながら外側に(放射状に)排出される。
【0011】
こうした例からも明らかなように、この第1の発明に係る流体用減速排出装置では、上記各流通用開口を通過するにつれて、上記流入管から流入した流体の速度は徐々に減速されるとともに、(上述したように)各流通空間を放射状に移動する流体の速度も徐々に減速され、該第1ないし第4の減速用円盤体の側方から排出されることから、該流体用減速排出装置が流体貯留槽内に配置された場合には、該流体貯留槽内における流体が一部偏って滞留する事態を有効に防止することができ、この流体貯留槽内に飲料水が貯留される場合には、流体貯留槽内に滞留した飲料水が劣化する危険性を効果的に防止することができる。また、この第1の発明に係る流体用減速排出装置によれば、流体貯留槽内に流入した流体を流体貯留槽内において流体全体が混合されるものではなく、この流体用減速排出装置全体からは、上記流入管から流入した流体を言わば塊のような状態で徐々に排出(放出)するものであり、該流入管からの流入が継続されることにより、この流入した流体の分布範囲を徐々に増大させながら流体貯留槽内における占有領域を次第に増大させて行くことができる(押し出し流又はピストン流を実現することができる)。このため、既に貯留されていた流体(以下、初期流体と言う。)に対して後から流入した流体(以下、新規流体と言う。)と広い範囲で混合されることにより流体貯留槽内の流体全体の温度が急速に上昇し又は下降することを防止することができるとともに、上記商標暉流体が流体貯留槽から排出された後に、上記新規流体を該流体貯留槽から排出することが可能となる。
【0012】
なお、上記第1の発明に係る流体用減速排出装置では、上記特定の減速用円盤体に流通用開口が形成されていなくても良いし、該流通用開口が形成されていても良い(請求項2記載の発明参照)。また、上記減速用円盤体(他の減速用円盤体及び特定の減速用円盤体)のそれぞれの形状は円盤状に成形されているが、これらの部材の外径が同一に成形されているものばかりではなく、例えば上記流入管に最も近接した減速用円盤体から上記特定の減速用円盤体に至るまで徐々に外径が大径とされているものであっても良い。
【0013】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、上記第1の発明において、前記特定の減速用円盤体の中央には、該特定の減速用円盤体に対向する他の減速用円盤体に形成された流通用開口の内径よりも内径が短くされた流通用開口が形成されてなることを特徴とするものである。
【0014】
この第2の発明に係る流体用減速排出装置では、前記特定の減速用円盤体の中央には、該特定の減速用円盤体に対向する他の減速用円盤体に形成された流通用開口の内径よりも内径が短くされた流通用開口が形成されていることから、該特定の減速用円盤体に対向する他の減速用円盤体に形成された流通用開口を通過した流体の一部は、該特定の減速用円盤体に形成された流通用開口を通過して外部に排出され、残りの流体は、該特定の減速用円盤体に衝突し、その後該特定の減速用円盤体に対向した他の減速用円盤体と該特定の減速用円盤体との間に形成された流通空間内に流入し、徐々にその流速が減速されながら外側に(放射状に)排出される。したがって、この第2の発明に係る流体用減速排出装置によれば、上記特定の減速用円盤体の中央からも流体が排出されることから、該特定の減速用円盤体の外側(上記他の減速用円盤体側とは反対側)に流体が滞留したり、この流体用減速排出装置の側方から放射状に排出された上記新規流体と上記初期流体とが互いに広い範囲で混ざり合ったりする等の事態を一層抑制することが可能となる。
【0015】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)は、上記第1又は第2の発明において、前記他の減速用円盤体のそれぞれに形成された流通用開口の内径、又はこれらの流通用開口及び上記特定の減速用円盤体に形成された流通用開口の内径は、上記他の減速用円盤体同士が対向して形成された流通空間及び上記特定の減速用円盤体と上記他の減速用円盤体とが対向して形成された流通空間を上記流通用開口の中心から放射状に減速しながら通過し、上記減速用円盤体の外側に排出される流体の排出速度が略均一となる寸法に設定されてなることを特徴とするものである。
【0016】
上記第3の発明に係る流体用減速排出装置では、上記他の減速用円盤体のそれぞれに形成された流通用開口の内径、又は該それぞれの流通用開口と上記特定の減速用円盤体に形成された流通用開口の内径は、上記他の減速用円盤体同士が対向して形成された流通空間及び上記特定の減速用円盤体と上記他の減速用円盤体とが対向して形成された流通空間を上記流通用開口の中心から放射状に減速しながら通過し、上記減速用円盤体の外側に排出される流体の排出速度が略均一となる寸法に設定されてなることから、上記第1又は第2の発明に係る流体用減速排出装置と比較した場合、より高精度に各流通空間から均一に流体を排出することができ、この結果、流体貯留槽内の流体の滞留を一層防止することができるばかりではなく、流体貯留槽内において、上記新規流体に対して、相当高い精度で先に記載した押し出し流又はピストン流を付与することができる。
【0017】
なお、上記第1、第2又は第3の何れかの流体用減速排出装置は、前記他の減速用円盤体及び前記特定の減速用円盤体は、多数の透孔が形成された側板により覆われ、該他の減速用円盤体及び前記特定の減速用円盤体は、この側板により支持されてなる物であっても良い。こうした流体用減速排出装置では、上記側板により上記それぞれの減速用円盤体(他の減速用円盤体及び特定の減速用円盤体)がそれぞれ支持されていることから、流体の温度その他によりそれぞれの減速用円盤体(他の減速用円盤体及び特定の減速用円盤体)が変形する等により流体の速度や排出量が変化する危険性が回避されるとともに、流入管から流入する流体に異物が混入している場合には、上記側板によりその内側で捕捉することも可能となる。
【0018】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)は、流体用減速排出装置を備えた流体貯留槽に係るものであって、流体用減速排出装置を備えた流体貯留槽であって、この流体貯留槽は、天板と底板と側板とを備えてなるとともに、上記底板又は側板の下端側近傍に、内部に貯留された流体を外部に排出する排出管等の排出手段が形成されてなるものであり、前記第1、第2又は第3の発明に係る何れかの流体用減速排出装置が、前記特定の減速用円盤体が上記流体貯留槽の天板又は側板の上端側若しくは該天板と側板とが接合された角部に近接した状態で支持されてなることを特徴とするものである。
【0019】
この第4の発明に係る流体貯留槽では、上記流体用減速排出装置は、前記特定の減速用円盤体が上記流体貯留槽の天板又は側板の上端側若しくは該天板と側板とが接合された角部に近接した状態で支持されてなることから、該流体用減速排出装置から先に説明した動作により流入管から上記新規流体が排出されると、上記特定の減速用円盤体が上記流体貯留槽の天板に近接した状態で支持されている場合には、この天板に近い位置から上記新規流体が排出され、この排出された流体は既に貯留されている上記初期流体とが広い範囲で混ざり合うことなく、該新規流体の分布範囲が徐々に下方に向けて増大し、こうした増大の程度に応じて、上記初期流体は、上記底板又は側板の下端側近傍に形成された排出手段を介してこの流体貯留槽の外部に流出する。また、上記特定の減速用円盤体が上記流体貯留槽の側板の上端側若しくは該天板と側板とが接合された角部に近接した状態で支持されている場合であっても、その支持位置辺りから排出された上記新規流体は、上記初期流体と広い範囲で混ざり合うことなく、該新規流体の分布範囲が徐々に下方に向けて増大し、こうした増大の程度に応じて、該初期流体は、上記底板又は側板の下端側近傍に形成された排出手段を介してこの流体貯留槽の外部に流出される。
【0020】
特に、上記流体貯留槽内に支持された流体用減速排出装置が、第2の発明(請求項2記載の発明)に係る流体用減速排出装置である場合には、上記特定の減速用円盤体にも流通用開口が形成されていることから、この流通用開口から排出された上記新規流体は、天板又は側板若しくは上記角部に接近した位置に滞留していた流体方向に排出される。そしてさらに、上記第2の発明(請求項2記載の発明)に係る流体用減速排出装置を備えた流体貯留槽を構成する上記天板の形状が凹面状に成形され該天板の中央が最も高い所に位置する場合であって、上記流体用減速排出装置を構成する特定の減速用円盤体の中心が該天板の中央に対応している場合には、上記流通用開口から排出された上記新規流体は、上記凹面状の天板方向に流れるとともに該天板の形状に沿って放射状に流れ、またこうした新規流体は、上記各減速用円盤体(他の減速用円盤体及び特定の減速用円盤体)の外周側から放射状に排出された流体に合流することから、より一層流体貯留槽内の上方において新規流体の塊が形成されるとともにその流体の流入量が増加することにより、該新規流体の分布範囲(容積)が増大しながら徐々に下方(排出手段側)に移動させることができる。したがって、例えば、内部に貯留される流体が、該流体貯留槽よりも下流側において、特定の被冷却体を冷却する際に使用される冷却媒体として利用される場合においては、適正な冷却温度とされた流体(冷却媒体)が該流体貯留槽内を通過して下流側に排出されている状態中に、異常に高い温度の新規流体が該流体貯留槽内に流入した場合(異常事態が発生した場合)には、この第4の発明に係る構成により、所定時間に亘って既に貯留されていた適正な冷却温度の流体(初期流体)を下流側に先行して排出することができ、上記異常に高い温度の新規流体やこれと混ざり合った流体が下流側に排出されてしまう時間を遅延させることができる。
【0021】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)は、流体用減速排出装置を備えた流体貯留槽であって、この流体貯留槽は、天板と底板と側板とを備えてなるとともに、上記天板又は側板の上端側近傍に、内部に貯留された流体を外部に排出する排出管等の排出手段が形成されてなるものであり、前記第1、第2又は第3の発明に係る何れかの流体用減速排出装置が、特定の減速用円盤体が上記流体貯留槽の底板又は側板の下端側若しくは該底板と側板とが接合された角部に近接した状態で支持されてなることを特徴とするものである。
【0022】
この第5の発明に係る流体貯留槽は、上記第4の発明に係る流体貯留槽と比較した場合、流体を該流体貯留槽の外部に排出する排出管等の排出手段の配置位置と、上記流体用減速排出装置の配置位置がそれぞれ逆とされたものである。したがって、例えば、内部に貯留される流体が、該流体貯留槽よりも下流側において、特定の被加熱体を加熱する際に使用される加熱媒体として利用される場合においては、適正な加熱温度とされた流体(加熱媒体)が該流体貯留槽内を通過して下流側に排出されている状態中に、異常に低い温度の新規流体が該流体貯留槽内に流入した場合(異常事態が発生した場合)には、この第5の発明に係る構成により、所定時間に亘って既に貯留されていた適正な加熱温度の初期流体を下流側に先行して排出することができ、上記異常に低い温度の新規流体やこれと混ざり合った流体が下流側に排出されてしまう時間を遅延させることができる。
【発明の効果】
【0023】
第1の発明(請求項1記載の発明)に係る流体用減速排出装置によれば、流体貯留槽内における流体が一部偏って滞留する事態を有効に防止することができ、例えばこの流体貯留槽内に飲料水が貯留される場合には、流体貯留槽内に滞留した飲料水が劣化する危険性を効果的に防止することができる。また、この第1の発明に係る流体用減速排出装置によれば、流体貯留槽内に流入した新規流体が、流体貯留槽内において上記初期流体に混合されるものではなく、この流体用減速排出装置全体からは、上記流入管から流入した新規流体を言わば塊のような状態で徐々に排出(放出)するものであり、該流入管からの流入が継続されることにより、この流入した新規流体の分布範囲を徐々に増大させながら流体貯留槽内における占有領域を次第に増加させて行くことができる(押し出し流又はピストン流を実現することができる)ため、既に貯留されていた上記初期流体と広い範囲で混合されることにより流体貯留槽内の流体全体の温度が急速に上昇し又は下降することを防止することができるとともに、先に貯留されていた上記初期流体が流体貯留槽から排出された後に、後から流入した上記新規流体を該流体貯留槽から排出することが可能となる。
【0024】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)に係る流体用減速排出装置によれば、上記特定の減速用円盤体の中央からも流体が排出されることから、該特定の減速用円盤体の外側(上記他の減速用円盤体側とは反対側)に流体が滞留したり、この流体用減速排出装置の側方から放射状に排出された上記新規流体と滞留していた上記初期とが互いに広い範囲で混ざり合ったりする等の事態を一層抑制することが可能となる。
【0025】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)に係る流体用減速排出装置によれば、上記第1又は第2の発明に係る流体用減速排出装置と比較した場合、より高精度に各流通空間から均一に流体を排出することができ、この結果、流体貯留槽内の流体の滞留を一層防止することができるばかりではなく、流体貯留槽内において、新たに流入管から流入した上記新規流体に対して、相当高い精度で先に記載した押し出し流又はピストン流を付与することができる。
【0026】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)に係る流体貯留槽によれば、先に記載した流体用減速排出装置により奏することができる効果ばかりではなく、該流体貯留槽を構成する上記排出手段の形成位置と該流体貯留槽内における流体用減速排出装置の配置位置との相互関係により、例えば、内部に貯留される流体が、該流体貯留槽よりも下流側において、特定の被冷却体を冷却する際に使用される冷却媒体として利用される場合においては、適正な冷却温度とされた流体(冷却媒体)が該流体貯留槽内を通過して下流側に排出されている状態中に、異常に高い温度の新規流体(既に貯留されていた流体と比較して比重が低く、自然に下降しない流体)が該流体貯留槽内に流入した場合(異常事態が発生した場合)には、この第4の発明に係る構成により、所定時間に亘って既に貯留されていた適正な冷却温度の初期流体を下流側に先行して排出することができ、上記異常に高い温度の新規流体やこれと混ざり合った流体が下流側に排出されてしまう時間を遅延させることができる。
【0027】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)に係る流体貯留槽によれば、先に記載した流体用減速排出装置により奏することができる効果ばかりではなく、該流体貯留槽を構成する上記排出手段の形成位置と該流体貯留槽内における流体用減速排出装置の配置位置との相互関係により、例えば、内部に貯留される流体が、該流体貯留槽よりも下流側において、特定の被加熱体を加熱する際に使用される加熱媒体として利用される場合においては、適正な加熱温度とされた初期流体(加熱媒体)が該流体貯留槽内を通過して下流側に排出されている状態中に、異常に低い温度の新規流体(既に貯留されていた流体と比較して比重が高く、自然に上昇しない流体)が該流体貯留槽内に流入した場合(異常事態が発生した場合)には、この第5の発明に係る構成により、所定時間に亘って既に貯留されていた適正な加熱温度の初期流体を下流側に先行して排出することができ、上記異常に低い温度の新規流体やこれと混ざり合った流体が下流側に排出されてしまう時間を遅延させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】
図1に示す流体用減速排出装置の斜視図である。
【
図3】水冷設備全体の構成を模式的に示す回路図である。
【
図4】バッファータンクを一部破断して示す正面図である。
【
図6】減速用円盤体を示すものであって、(A)は第1の減速用円盤体を、(B)は第2の減速用円盤体を、(C)は第3の減速用円盤体を、(D)は第4の減速用円盤体を、(E)は第5の減速用円盤体を示す平面図である。
【
図7】(A)は流体用減速排出装置から高温冷却水がバッファータンク内に流入した後の状態を示す模式図であり、(B)はその後の高温冷却水の状態を模式的に示す模式図である。
【
図8】加熱設備全体の構成を模式的に示す回路図である。
【
図9】バッファータンクを一部破断して示す正面図である。
【
図10】(A)は流体用減速排出装置から低温加熱水がバッファータンク内に流入した後の状態を示す模式図であり、(B)はその後の低温加熱水の状態を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係る流体用減速排出装置及びこの流体用減速排出装置を備えた流体貯留槽に係る実施の形態ついて、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
先ず、この実施の形態に係る流体用減速排出装置1について
図1及び
図2を参照しながら説明する。この実施の形態に係る流体用減速排出装置1は、流体を貯留する流体貯留槽内に配置されるものであって、
図1に示すように、円筒部2と、この円筒部2の下方に配置された第1の減速用円盤体3と、この第1の減速用円盤体3の下方に配置された第2の減速用円盤体4と、この第2の減速用円盤体4の下方に配置された第3の減速用円盤体5と、この第3の減速用円盤体5の下方に配置された第4の減速用円盤体6とを備えている。上記円筒部2は、図示しない流入管が内部に挿入されるものである。なお、この流入管は、上流側の流体が内部を流通する部材であるとともに、この円筒部2内に先端側が挿入される図示しない管路の先端側中途部の外周には図示しない管路側フランジ部が形成され、この円筒部2の外周には、上記管路側フランジ部に接合され固定されるフランジ部2aが固定されている。また、上記第4の減速用円盤体6は、本発明を構成する特定の減速用円盤体であり、上記第1ないし第4の減速用円盤体3,4,5は、本発明を構成する他の減速用円盤体である。
【0031】
また、上記第1ないし第4の減速用円盤体3,4,5,6は、何れも円盤状に成形され、それぞれの(第1ないし第4の)減速用円盤体3,4,5,6同士の間隔は同一のものとされてそれぞれ平行に配置されている一方、該第1ないし第4の減速用円盤体3,4,5,6の外径は、徐々に長い(太い)ものとされている。また、上記第1の減速用円盤体3の中央には第1の流通用開口3aが、第2の減速用円盤体4の中央には第2の流通用開口4aが、第3の減速用円盤体5の中央には、第3の流通用開口5aが、第4の減速用円盤体6の中央には第4の流通用開口6aが形成されている。そして、これら第1ないし第4の流通用開口3a,4a,5a,6aの内径は、上記円筒部2から離間するに従ってそれぞれ短い(細い)ものとされている。
【0032】
また、この実施の形態に係る流体用減速排出装置1では、上記円筒部2の先端から上記第4の減速用円盤体6の外周端に亘って側板7が固定され、上記第1ないし第4の減速用円盤体3,4,5,6は、この側板7により固定されている。この側板7はパンチングメタルであり、多数の透孔(符号は省略する。)が穿設されている。
【0033】
したがって、上記実施の形態に係る流体用減速排出装置1が図示しない流体貯留槽内に配置された状態において、上記流入管からの流体が上記円筒部2を介してこの流体用減速排出装置1内に流入すると、該流体の一部は、上記第1の流通用開口3aを通過して第2の流通用開口4a方向に流れ、残りの流体は、上記第1の減速用円盤体3に衝突して、該第1の減速用円盤体3の
図1中の上面上(上記第1の流通空間)を該第1の流通用開口3aを中心に放射状に流れ、徐々にその流速が減速されながら、上記側板7に形成された透孔を通過して放射状に排出される。また、上記第2の流通用開口4a方向に流れた流体の一部は、上記第3の流通用開口5a方向に流れ、残りの流体は、該第2の減速用円盤体4に衝突して、該第1の減速用円盤体3と第2の減速用円盤体4との間に形成された第2の流通空間を通過して徐々に減速されながら、上記側板7に形成された透孔を通過して放射状に排出される。また、上記第3の流通用開口5a方向に流れた流体の一部は、更に第4の流通用開口6a方向に流れ、残りの流体は、該第4の減速用円盤体6に衝突して、該第3の減速用円盤体5と第4の減速用円盤体6との間に形成された第3の流通空間を徐々に減速されながら通過し、上記側板7に形成された透孔を通過して該第3の流通空間の外側に放射状に排出される。また、上記第4の流通用開口6a方向に流れた流体は、該第4の流通用開口6aからこの流体用減速排出装置1の外部に排出される。なお、上記円筒部2を介して流入した流体は、上記第1、第2、第3及び第4の流通用開口3a,4a,5a,6aを通過する過程で徐々にその流速は減速される。
【0034】
したがって、上述した流体用減速排出装置1が、流体貯留槽としての貯水槽内に配置された場合には、該流体用減速排出装置1内から外部に排出される新規液体は、上記側板7に形成された透孔を通過して該流体用減速排出装置1の外側から、また、その一部は上記第4の流通用開口6aからそれぞれ徐々に外部に排出されることから、貯水槽内に予め流入していた初期流体と該流体用減速排出装置1から排出された流体とが該貯水槽内において混合されたり、該貯水槽内に予め流入し内部で滞留していた初期流体に先んじて下流側に排水されたりする危険性を有効に防止することができる。このことは、流体が気体である場合も同じである。
【0035】
なお、上記流体用減速排出装置1により上記作用効果を一層高めるためには、少なくとも上記第1ないし第4の流通空間から外部に排出されるそれぞれの排出速度が一定であることが望ましい。そこで、設計段階においては、以下に説明するように、複数の変数(パラメータ)及び計算式をそれぞれ表計算プログラムに入力するとともに、上記それぞれの排出速度が略一定となるように、それぞれの変数を適宜変更し、最終的には、上記第1、第2、第3及び第4の流通用開口3a,4a,5a,6aの内径を決定する手法を採用することができる。以下、上記計算式の一例を説明する。
【0036】
(1)交差面積の総和
ここで、交差面積とは、(例えば上下に)隣り合う流通用開口の面積の差を言う。
(円筒部2の面積-第1の流通用開口3aの面積)+(第1の流通用開口3aの面積-第2の流通用開口4aの面積)+(第2の流通用開口4aの面積-第3の流通用開口5aの面積)+(第3の流通用開口5aの面積-第4の流通用開口6aの面積)+第4の流通用開口6aの面積
(2)単位面積流量と各流通空間の流量
「単位面積流量(A)」=流量/交差面積の総和
第1の流通空間の流量(B1)=第1の減速用円盤体3の交差面積×(A)
第2の流通空間の流量(B2)=第2の減速用円盤体4の交差面積×(A)
第3の流通空間の流量(B3)=第3の減速用円盤体5の交差面積×(A)
第4の流通空間の流量(B4)=第4の減速用円盤体6の交差面積×(A)
(3)各流通空間の側面積
第1の流通空間の側面積(C1)=第1の流通空間の周長×母線の長さ
第2の流通空間の側面積(C2)=第2の流通空間の周長×母線の長さ
第3の流通空間の側面積(C3)=第3の流通空間の周長×母線の長さ
第4の流通空間の側面積(C4)=第4の流通空間の周長×母線の長さ
(4)流速
第1の流通空間の流速(D1)=(B1)/(C1)
第2の流通空間の流速(D2)=(B2)/(C2)
第3の流通空間の流速(D3)=(B3)/(C3)
第4の流通空間の流速(D4)=(B4)/(C4)
【0037】
上記実施の形態に係る流体用減速排出装置1においては、上記「単位面積流量」を求める要素である円筒部2の面積及びこの円筒部2内から流入する流体の「流量」は一定であり、それぞれの交差面積は、上記第1の流通用開口3a、第2の流通用開口4a、第3の流通用開口5a及び第4の流通用開口6aに係るそれぞれの内径に比例する。また、第1の流通空間の流量、第2の流通空間の流量、第3の流通空間の流量及び第4の流通空間の流量を求める要素である上記第1~第4の流通空間のそれぞれの周長は、上記第1ないし第4の減速用円盤体3,4,5,6の外径がそれぞれ決定されていれば特定の数値を入力することとなり、また、上記母線の長さもそれぞれ決定されていれば、それぞれの数値を変更する必要性はない。したがって、この例では、上記計算式によって得られる各流通空間の流速(D1)、(D2)、(D3)及び(D4)が略一定となるように、上記第1の流通用開口3a、第2の流通用開口4a、第3の流通用開口5a及び第4の流通用開口6aに係るそれぞれの内径を変更すれば良く、この結果、該第1の流通用開口3a、第2の流通用開口4a、第3の流通用開口5a及び第4の流通用開口6aに係るそれぞれの内径が決定されば、これらを製造することができる。言うまでもなく、上記流体の「流量」が異なる場合には、それを適宜変更した上で、上記操作を繰り返し、第1の流通用開口3a、第2の流通用開口4a、第3の流通用開口5a及び第4の流通用開口6aに係るそれぞれの内径を決定すれば良い。
【0038】
したがって、上述した表計算プログラムを利用することにより、第1の流通用開口3a、第2の流通用開口4a、第3の流通用開口5a及び第4の流通用開口6aに係るそれぞれの内径が決定された場合には、高精度に各流通空間から均一の流速で流体を排出することができ、この結果、流体貯留槽内の流体の滞留を一層防止することができるばかりではなく、流体貯留槽内において、新たに円筒部2から流入した流体に対して、相当高い精度で先に記載した押し出し流又はピストン流を付与することができる。
【0039】
なお、上記実施の形態に係る流体用減速排出装置1では、全部で4つの(第1ないし第4の)減速用円盤体3,4,5,6を構成要素としたが、本発明に係る流体用減速排出装置1は、少なくとも複数の減速用円盤体を構成要素とされていれば良い。また、それぞれの減速用円盤体(符号は省略する。)同士の間隔は、それぞれ一定である必要性はなく、互いに異なるものであっても良い。またさらに、上記第1ないし第4の減速用円盤体3,4,5,6の外径は、徐々に長いものとしたが、後述する第2の実施の形態に係る流体貯留槽内に配置された流体用減速排出装置11のように、それぞれの減速用円盤体が全て同じ外径とされたものであっても良いばかりではなく、上記複数の(第1ないし第4の)減速用円盤体3,4,5,6の内、何れかの減速用円盤体が他の減速用円盤体の外径よりも短いもの、又は長いものであっても良い。例えば、全ての減速用円盤体の側面形状が糸巻状又は紡錘状であっても良い。
【0040】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る流体用減速排出装置11が、
図3に示す水冷設備12を構成するバッファータンク13(本発明を構成する流体貯留槽)内に配置された例を説明する。この水冷設備12は、冷却水により所定温度に冷却されるサーバーコンピュータ等の被冷却体14と、この被冷却体14を冷却する冷却水を冷却する冷却装置15とを備えている。そして、上記被冷却体14と上記冷却装置15とは、該冷却装置15からの冷却水を被冷却体14側に流通させる第1の管路16により接続され、また、この被冷却体14と上記冷却装置15とは、該被冷却体14を通過することにより加熱された冷却水(以下、高温冷却水と言う。)を該冷却装置15側に流通させる第2の管路17に接続されている。そして、上記第1の管路16の中途部には、手動バルブ18が配置されているとともに、この手動バルブ18を通過することなく該手動バルブ18を迂回する一方のバイパス管路21aと他方のバイパス管路21bとからなるバイパス管路21が設けられ、該一方のバイパス管路21aと他方のバイパス管路21bとの間には、上記バッファータンク13が配置されている。なお、上記冷却装置15には、この冷却装置15を駆動する主電源19と、バックアップ電源20が接続されている。なお、上記冷却装置15内又はその近傍には、該冷却装置15により冷却された冷却水を上記被冷却体14側に送る図示しないポンプが配置されている。
【0041】
したがって、この水冷設備12は、通常運転時においては、上記主電源19により上記冷却装置15及びポンプがそれぞれ駆動し、該冷却装置15で冷却された冷却水は、上記第1の管路16及び上記一方及び他方のバイパス管路21a,21bを通過して、上記被冷却体14に送られる。そして、この被冷却体14を通過した高温冷却水は、上記冷却装置15に戻る。このように、この水冷設備12では、通常運転時においては、冷却水は
図3中矢印で示すように時計回り方向に循環する。以下、上記水冷設備12を構成する上記バッファータンク13と、このバッファータンク13内に配置された流体用減速排出装置11について詳細に説明し、次いで、この水冷設備12の駆動中に上記主電源19からの電力供給が停止した状態(異常事態が発生した場合)の動作について説明する。
【0042】
上記バッファータンク13は、本発明に係る流体貯留槽であり、
図4に示すように、鉛直方向に長さを有するものであり、内部には流体としての上記冷却水が貯留されるものである。また、このバッファータンク13は円筒状に成形された円筒状側板部22と、この円筒状側板部22の上端に外周端が固定されてなるとともに中央が最も高い位置に成形された凸状天板部23と、円盤状に成形された底板部24とから概ね構成されている。そして、上記円筒状側板部22の下端側中途部には、上記他方のバイパス管路21bに接続される排出管25の基端が固定されている。
【0043】
そして、上記バッファータンク13を構成する上記円筒状側板部22の上端側中途部には、図示しない開口が形成され、この開口には上記一方のバイパス管路21aの中途部が挿通・固定され、該一方のバイパス管路21aの中途部には湾曲部(符号は省略する。)が形成され、その先端が上方を向いた状態とされている。そして、この一方のバイパス管路21aの先端には管路側フランジ部26が形成されている。そして、上記管路側フランジ部26には、円筒部27が接続されている。この円筒部27の一端には、上記管路側フランジ部26に接続される流入管側フランジ部28が形成されている。したがって、上記一方のバイパス管路21aから流通した冷却水は、上記円筒部27に流入する。
【0044】
そして、この円筒部27には、本発明である上記流体用減速排出装置11が接続されている。この流体用減速排出装置11は、
図5に示すように、それぞれ同一の外径に成形された第1の減速用円盤体31と、第2の減速用円盤体32と、第3の減速用円盤体33と、第4の減速用円盤体34と、第5の減速用円盤体35とを備えている。上記第1の減速用円盤体31は、上記円筒部27に固定されてなるものであり、上記第2の減速用円盤体32は、該第1の減速用円盤体31に平行に対向してなり、上記第3の減速用円盤体33は、該第2の減速用円盤体32に平行に対向してなり、上記第4の減速用円盤体34は、該第3の減速用円盤体33に平行に対向してなり、上記第5の減速用円盤体35は、上記第4の減速用円盤体34に平行に対向している。したがって、上記第1の減速用円盤体31と第2の減速用円盤体32との間には第1の流通空間が形成され、上記第2の減速用円盤体32と第3の減速用円盤体33との間には第2の流通空間が形成され、上記第3の減速用円盤体33と第4の減速用円盤体34との間には第3の流通空間が形成され、上記第4の減速用円盤体34と第5の減速用円盤体35との間には第4の流通空間が形成され、これら第1ないし第5の流通空間の容積は、全て同じものとされている。そして、これら第1ないし第5の減速用円盤体31,32,33,34,35は、それぞれ等間隔に配置されている。なお、上記第5の減速用円盤体35は、本発明を構成する特定の減速用円盤体であり、上記第1ないし第4の減速用円盤体31,32,33,34は、それぞれ本発明を構成する他の減速用円盤体である。そして、上記第1の減速用円盤体31の中央には、
図6の(A)に示すように、上記円筒部27の開口面積と略同じ開口面積とされた第1の流通用開口31aが形成され、上記第2の減速用円盤体32の中央には、
図6の(B)に示すように、第2の流通用開口32aが形成され、上記第3の減速用円盤体33の中央には、
図6の(C)に示すように、第3の流通用開口33aが形成され、上記第4の減速用円盤体34の中央には、
図6の(D)に示すように、第4の流通用開口34aが形成され、
図6の(E)に示すように、第5の流通用開口35aが形成されている。上記
図6(A)~
図6(E)からも明らかなように、上記第1の流通用開口31aから第5の流通用開口35aの内径は、徐々に短いものとされている。また、上記第1ないし第5の減速用円盤体31,32,33,34,35のそれぞれには、後述する固定ボルト38の軸部38bが挿通する複数の挿通穴31b,32b,33b,34b,35bが形成されている。そして、
図5に示すように、これらの挿通穴31b,32b,33b,34b,35bには、それぞれ固定ボルト38が挿通され、それぞれの固定ボルト38の頭部38aは、上記第5の減速用円盤体35の上面に位置し、上記第1の減速用円盤体31の下面側に位置する該固定ボルト38の軸部38bの先端には、固定ナット39が螺着されている。また、上記第1の減速用円盤体31と第2の減速用円盤体32との間、上記第2の減速用円盤体32と第3の減速用円盤体33との間、第3の減速用円盤体34と第4の減速用円盤体34との間及び第4の減速用円盤体34と第5の減速用円盤体35との間には、それぞれ同一の長さに成形された円筒状のスペーサ40が配置され、これらのスペーサ40内には、上記それぞれの固定ボルト38の軸部38aが挿通されている。すなわち、上記第1ないし第5の減速用円盤体31,32,33,34,35は、上記それぞれの固定ボルト38に上記固定ナット39を螺着し締結することにより、上記複数のスペーサ40を介して等間隔に固定され一体化されている。なお、上記第1ないし第5の減速用円盤体31,32,33,34,35の外側には、多数の透孔(符号は省略する。)が穿設されたパンチングメタルからなる側板41が固定されている。
【0045】
以下、上述した流体減速排出装置11を備えた上記バッファータンク13を構成要素とする上記水冷設備12の駆動中に、地震等の自然災害やご操作或いは人為的な破壊行為等のような何らかの原因に伴って、上記主電源19からの電力供給が停止した状態(異常事態が発生した場合)の動作について説明する。なお、このように上記電力供給が停止した場合においては、上記バックアップ電源20に切り替えられ、上記冷却装置15及び図示しないポンプは、それぞれ上記バックアップ電源から供給された電源により駆動が開始されるが、上記主電源19からの電力供給が停止した後に即時にバックアップ電源20から電力供給が開始されることはなく、数分に亘るタイムラグが生ずる。しかしその一方で、上記電力供給が停止されると同時に、これまで循環していた冷却水の循環状態が即時に停止されることはなく、そのタイムラグの間、言わば冷却水は惰性で循環することになる。なお、上記主電源19からの電力供給が停止した場合には、即時に上記手動バルブ18を操作し、上記冷却装置15からの冷却水を専ら上記バイパス管路21(一方のバイパス管路21aと他方のバイパス管路21b)に流通させることは可能である。換言すれば、この水冷設備12は、こうした事情から上記バイパス管路21を設けるとともに、このバイパス管路21の中途部に上記バッファータンク13が配置されている。なお、上記手動バルブ18を電気で駆動する電磁バルブに変更し、この電磁バルブには該電磁バルブ専用の図示しないバッテリーを接続させ、上記電力供給が停止した場合には、この電磁バルブが駆動して上記第1の管路16の中途部を遮断させ、この結果上記冷却水を専ら上記バイパス回路21に流通させても良い。
【0046】
そこで、主電源19からの電力供給が停止し手動バルブ18が操作されて、上記一方のバイパス管路21a内を通過した冷却水(高温冷却水)が上記円筒部27を介して上記流体用減速排出装置11内に流入すると、該冷却水(高温冷却水)の一部は、先に説明した実施の形態に係る流体用減速排出装置1と略同様に、上記第1ないし第4の流通用開口31a,32a,33a,34aを通過して第5の流通用開口35aから外部に排出される。これら第1ないし第5の流通用開口31a,32a,33a,34a,35aの内径は、徐々に短いものとされていることから、該第1ないし第5の流通用開口31a,32a,33a,34a,35aを通過するに連れて冷却水(高温冷却水)の速度は減速される。また、上記第1ないし第5の流通用開口31a,32a,33a,34a,35aを通過する冷却水(高温冷却水)は、上下に隣り合う流通用開口(符号は省略する。)同士の交差面積に相当する部位に衝突し、上記第1ないし第5の流通空間を通過しながら徐々に減速されて、この流体用減速排出装置11の側方から排出される。
【0047】
特に、上記第1ないし第5の流通用開口31a,32a,33a,34a,35aの内径が、先に説明した表計算プログラムを使用して算出されたものである場合には、第1ないし第5の流通空間を通過する冷却水(高温冷却水)のそれぞれの速度は略均一となされ、この流体用減速排出装置11の側方からは、略均一に冷却水(高温冷却水)が排出される。更に、上記流体用減速装置11は、上記バッファータンク13内において、上記第5の減速用円盤体35が上記凹状天板部23に近接した位置とされた状態で配置されているばかりではなく、該第5の減速用円盤体34に形成された第4の流通用開口34aからも冷却水(高温冷却水)が排出される。したがって、上述した異常事態が発生し、それまでこのバッファータンク13内を流通していた適正温度の冷却水よりも高温とされた高温冷却水が、(駆動が停止した)冷却装置15側から上記流入菅27を介して流入すると、この高温冷却水は、第5の流通用開口35aから流出し、上記凹状天板部23に衝突するものも含めて該第5の流通用開口35aから放射方向に排出される。また、上記高温冷却水の多くは、上記流体用減速装置11の側方から排出される。言うまでもなく、この高温冷却水は、適正温度の冷却水よりも比重が低いことから、温度差によって高温冷却水が下降することもない。すなわち、上述した位置に流体用減速装置11が配置されている結果、上記高温冷却水は、既に貯留されていた適正な温度の冷却水と混ざり合うことなく、また上記温度差により自然に混ざり合うこともなく、
図7の(A)に示すように、上記バッファータンク13の上方において言わば塊のようになるとともに、この塊が徐々に下方に膨張して行く。換言すれば、上記流体用減速装置11を上述した位置及び姿勢で上記バッファータンク13内に配置することにより、上記高温冷却水からなる上層と適正温度の冷却水からなる下層とに二分された状態が形成され、高温冷却水の排出が継続されることにより、
図7の(B)に示すように、この高温冷却水からなる上層の領域が徐々に増加して、両者の境界が徐々に下降する間、上記排出管25からは適正温度の冷却水を下流側に流すことができる。
【0048】
なお、上述したバッファータンク13やこのバッファータンク13内に配置された流体用減速排出装置11の配置位置又はその姿勢は、上記被冷却体14を冷却する水冷設備12に本発明を適用したものであるが、この水冷設備12とは逆に、後述する被加熱体54を加熱水により加熱する加熱設備51に配置されるバッファータンク53である場合には、そのバッファータンク53の構成及びこのバッファータンク53内に配置される流体用減速排出装置52の配置位置又はその姿勢も異なる。以下、こうした加熱設備に本発明を適用したものを第3の実施の形態として説明する。
【0049】
この加熱設備51は、
図8に示すように、加熱水により所定温度に加熱される被加熱体54と、この被加熱体54を加熱する加熱水を加熱する加熱装置55とを備えている。そして、上記被加熱体54と上記加熱装置55とは、該加熱装置55からの加熱水を被加熱体54側に流通させる第1の管路56により接続され、また、この被加熱体54と上記加熱装置55とは、該被加熱体54を通過することにより温度が低下した加熱水(以下、低温加熱水と言う。)を該加熱装置55側に流通させる第2の管路57に接続されている。そして、上記第1の管路56の中途部には、手動バルブ58が配置されているとともに、この手動バルブ58を通過することなく該手動バルブ58を迂回する一方のバイパス管路59aと他方のバイパス管路59bとからなるバイパス管路59が設けられ、該一方のバイパス管路59aと他方のバイパス管路16bとの間には、上記バッファータンク53が配置されている。なお、上記加熱装置55には、この加熱装置55を駆動する主電源60と、バックアップ電源61が接続されている。なお、上記加熱装置55内又はその近傍には、該加熱装置55により加熱された加熱水を上記被加熱体64側に送る図示しないポンプが配置されている。
【0050】
したがって、この加熱設備51は、通常運転時においては、上記主電源60により上記加熱装置55及びポンプがそれぞれ駆動し、該加熱装置55で加熱された加熱水(以下、低温加熱水と言う。)は、上記第1の管路56及び上記一方及び他方のバイパス管路59a,59bを通過して、上記被加熱体54に送られる。そして、この被加熱体54を通過した低温加熱水は上記加熱装置55に戻る。このように、この加熱設備51では、通常運転時においては、上述したように加熱水は
図8中反時計回り方向に循環する。以下、上記加熱設備51を構成する上記バッファータンク53と、このバッファータンク53内に配置された流体用減速排出装置52について詳細に説明し、次いで、この加熱設備51に主電源60からの電力供給が停止した状態(異常事態が発生した場合)の動作について説明する。
【0051】
上記バッファータンク53は、本発明に係る流体貯留槽であり、
図9に示すように、鉛直方向に長さを有するものであり、内部には流体としての上記加熱水が貯留されるものである。また、このバッファータンク53は円筒状に成形された円筒状側板部62と、この円筒状側板部62の下端に外周端が固定されてなるとともに中央が最も低い位置に成形された凹状底板部63と、円盤状に成形された天板部64とから概ね構成されている。そして、上記円筒状側板部62の上端側中途部には、上記他方のバイパス管路59aに接続される排出管65の基端が固定されている。
【0052】
そして、上記バッファータンク53を構成する上記円筒状側板部62の下端側中途部には、図示しない開口が形成され、この開口には上記一方のバイパス管路59aの中途部が挿通・固定され、該一方のバイパス管路59aの中途部には湾曲部(符号は省略する。)が形成され、その先端が下方を向いた状態とされている。そして、この一方のバイパス管路59aの先端には管路側フランジ部66が形成されている。そして、上記管路側フランジ部66には、流入管67が接続されている。この流入管67の一端には、上記管路側フランジ部66に接続される流入管側フランジ部68が形成されている。したがって、上記一方のバイパス管路59aから流通した加熱水は、上記流入管67に流入する。そして、この流入管67には、本発明である上記流体用減速排出装置52が接続されている。この流体用減速排出装置52は、先に説明した第2の実施の形態に係る流体用減速排出装置11と同様の構成からなることから、その詳細な説明は省略する。
【0053】
以下、上記流体減速排出装置52を備えた上記バッファータンク53を構成要素とする上記加熱設備51の駆動中に上記主電源60からの電力供給が停止した状態(異常事態が発生した場合)の動作について説明する。なお、このように上記電力供給が停止後に上記バックアップ電源に切り替える際にタイムラグが発生する事情は、先に説明した通りである。そこで、主電源60からの電力供給が停止し手動バルブ58が操作されて、上記一方のバイパス管路59a内を通過した低温加熱水が上記流入管67を介して上記流体用減速排出装置52内に流入すると、該低温加熱水の一部は、先に説明した第2の実施の形態に係る流体用減速排出装置11と同様に、上記第1ないし第3の流通用開口(符号は省略する。)を通過して第4の流通用開口(符号は省略する。)から外部に排出され、残りの低温加熱水は、上記第1ないし第4の流通空間を通過しながら徐々に減速されて、この流体用減速排出装置52の側方から排出される。
【0054】
そして、この加熱設備51を構成するバッファータンク53内においては、上記流体用減速装置52は、上記第4の減速用円盤体(符号は省略する。)が上記凹状底板部63に近接した位置とされた状態で配置されているばかりではなく、該第4の減速用円盤体(符号は省略する。)に形成された第4の流通用開口(符号は省略する。)からも低温加熱水が排出される。したがって、上述した異常事態が発生し、それまでこのバッファータンク53内を流通していた適正温度の加熱水よりも高温とされた低温加熱水が、(駆動が停止した)加熱装置55側から上記流入菅67を介して該バッファータンク53内に流入すると、この低温冷却水の一部は、上記第4の流通用開口(符号は省略する。)から流出してその一部は上記凹状底板部63に衝突し、残りの低温加熱水は該第4の流通用開口(符号は省略する。)から放射方向に排出される。また、上記低温加熱水の多くは、上記流体用減速装置52の側方から排出される。すなわち、上述した位置に流体用減速装置52が配置されている結果、上記低温加熱水は、既に貯留されていた適正な温度の加熱水と混ざり合うことなく、また上記温度差により自然対流により混ざり合うこともなく、
図10の(A)に示すように、上記バッファータンク53の下方において言わば塊のようになるとともに、この塊が徐々に上方に膨張して行く。換言すれば、上記流体用減速排出装置52を上述した位置及び姿勢で上記バッファータンク53内に配置することにより、上記低温加熱水からなる上層と適正温度の冷却水からなる下層とに二分された状態が形成され、低温加熱水の排出が継続されることにより、
図10の(B)に示すように、この低温加熱水からなる上層の領域が徐々に増加して、両者の境界が徐々に上昇する間に亘って、上記排出管65からは適正温度の加熱水を下流側に流すことができる。
【0055】
また、上記第1又は第2の実施の形態に係る流体減速排出装置11,52の何れかを、図示しない直方体状に成形された流体貯留槽内の上方角部と、この上方角部と対角線上に位置する下方角部とにそれぞれ配置し、該上方角部に配置された流体減速排出装置内には上流側からの液体を流入させ該流体貯留槽内に排出させるものとして使用し、上記下方角部には、該流体減速排出装置と同様の構造・構成であるも側方から液体を内部に流入させるとともに該流体貯留槽から下流側に排出させるものとして使用しても良い。
【符号の説明】
【0056】
1 流体用減速排出装置
2 円筒部
3 第1の減速用円盤体
3a 第1の流通用開口
4 第2の減速用円盤体
4a 第2の流通用開口
5 第3の減速用円盤体
5a 第3の流通用開口
6 第4の減速用円盤体
6a 第4の流通用開口
11 体用減速排出装置
13 バッファータンク(流体貯留槽)
25 排出管(排出手段)
27 流入管
31 第1の減速用円盤体
31a 第1の流通用開口
32 第2の減速用円盤体
32a 第2の流通用開口
33 第3の減速用円盤体
33a 第3の流通用開口
34 第4の減速用円盤体
34a 第4の流通用開口
35 第5の減速用円盤体
52 流体用減速排出装置
53 バッファータンク(流体貯留槽)
65 排出管
67 流入管