IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社不二工機の特許一覧

<>
  • 特許-流路切換弁 図1
  • 特許-流路切換弁 図2
  • 特許-流路切換弁 図3
  • 特許-流路切換弁 図4
  • 特許-流路切換弁 図5
  • 特許-流路切換弁 図6
  • 特許-流路切換弁 図7
  • 特許-流路切換弁 図8
  • 特許-流路切換弁 図9
  • 特許-流路切換弁 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】流路切換弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/085 20060101AFI20240904BHJP
【FI】
F16K11/085 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022036647
(22)【出願日】2022-03-09
(65)【公開番号】P2023131737
(43)【公開日】2023-09-22
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北林 勇人
(72)【発明者】
【氏名】原 聖一
(72)【発明者】
【氏名】北條 嵩
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-196913(JP,A)
【文献】特開昭61-256069(JP,A)
【文献】国際公開第2015/016380(WO,A1)
【文献】実開昭60-147864(JP,U)
【文献】特開2021-046875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に弁室が形成されると共に、前記弁室を形成する壁面に流体の入出口が形成された弁本体と、
前記弁室内に回転可能に配置され、かつ前記壁面に対向する外周面に複数の開口部を有する流路が形成された弁体と、
前記弁体の前記開口部の周囲を囲むように設けられ、前記開口部と前記入出口が対向した状態で該入出口と前記弁体との間を封止する封止部と、
複数の前記入出口の連通状態が前記弁体の前記流路を通じて選択的に切り換わるように、弁軸を介して前記弁体を回転させると共に、前記弁体の角度位置を検出可能な回転駆動部と、
を備え、
前記壁面により前記弁体の前記複数の開口部を同時に封止し、かつこのとき封止されない前記入出口を弁体の外側で互いに連通した状態とするモードを有している、流路切換弁。
【請求項2】
弁体回転範囲の上限及び下限の少なくとも一方において前記弁体のそれ以上の回転を制限するストッパが、前記弁本体に設けられている、請求項1に記載の流路切換弁。
【請求項3】
前記ストッパは、前記回転駆動部の初期キャリブレーションでの位置検知に用いられ、
前記弁体には、該弁体の径方向外側に突出し、前記弁体回転範囲の上限及び下限の双方において前記ストッパに当接する突出部が設けられている、請求項2に記載の流路切換弁。
【請求項4】
前記ストッパは、前記弁体回転範囲の上限及び下限の双方に設けられている、請求項2又は請求項3に記載の流路切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路切換弁に係り、弁体を弁室内で回転摺動させることにより流路を切り換える流路切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒状やボール状の弁体の回転動作によって、流路を切り換えるタイプの流路切換弁が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の流路切換弁では、モータ、駆動ギヤ等からなる回転駆動部を用いて弁体を回転駆動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-115691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来例に係る流路切換弁は、流路切換えのバリエーションをいくつか有しているが、このバリエーションを更に増加させることが望まれている。
【0006】
本発明は、流路切換えのバリエーションを更に増加させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る流路切換弁は、内部に弁室が形成されると共に、前記弁室を形成する壁面に流体の入出口が形成された弁本体と、前記弁室内に回転可能に配置され、かつ前記壁面に対向する外周面に複数の開口部を有する流路が形成された弁体と、前記弁体の前記開口部の周囲を囲むように設けられ、前記開口部と前記入出口が対向した状態で該入出口と前記弁体との間を封止する封止部と、複数の前記入出口の連通状態が前記弁体の前記流路を通じて選択的に切り換わるように、弁軸を介して前記弁体を回転させると共に、前記弁体の角度位置を検出可能な回転駆動部と、を備え、前記壁面により前記弁体の前記複数の開口部を同時に封止し、前記流路における流体の流れを停止させるモードを有している。
【0008】
この流路切換弁では、回転駆動部により弁体の角度位置を検出することができ、該回転駆動部により弁軸を介して弁体を回転させることで、弁体の複数の開口部と弁本体の入出口の組み合わせを変えて、弁本体の流路を切り換えることができる。また、弁本体の壁面により弁体の複数の開口部を同時に封止し、流路における流体の流れを停止させるモードを有しているので、流路切換えのバリエーションを更に増加させることができる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に係る流路切換弁において、弁体回転範囲の上限及び下限の少なくとも一方において前記弁体のそれ以上の回転を制限するストッパが、前記弁本体に設けられている。
【0010】
この流路切換弁では、弁本体に設けられたストッパにより、弁体回転範囲の上限及び下限の少なくとも一方において、弁体のそれ以上の回転を制限することができる。回転駆動部は、弁体の角度位置を検出可能であるため、ストッパにより弁体の回転が止められた位置を、弁体回転範囲の上限又は下限として検出し、弁体回転範囲のキャリブレーションを行うことができる。上限と下限の角度差がわかっている場合には、検出した上限から下限を求めることができ、同様に下限から上限を求めることができる。このため、キャリブレーションに絶対角センサを用いる場合と比較して、コスト増を抑制しつつ、回転駆動部における弁体回転範囲のキャリブレーションを行うことができる。
【0011】
第3の態様は、第2の態様に係る流路切換弁において、前記弁体には、該弁体の径方向外側に突出し、前記弁体回転範囲の上限及び下限の少なくとも一方において前記ストッパに当接する突出部が設けられている。
【0012】
この流路切換弁では、弁体回転範囲の上限及び下限の少なくとも一方において、弁体に設けられた突出部がストッパに当接するという簡易な構成により、より低コストで弁体回転範囲のキャリブレーションを行うことができる。
【0013】
第4の態様は、第1の態様又は第2の態様に係る流路切換弁において、前記ストッパが、前記弁体回転範囲の上限及び下限の双方に設けられている。
【0014】
この流路切換弁では、ストッパが弁体回転範囲の上限及び下限の双方に設けられているので、上限と下限の角度差がわかっていなくても、上限及び下限を検出することで弁体回転範囲のキャリブレーションを行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る流路切換弁によれば、コスト増を抑制しつつ、回転駆動部における弁体回転範囲のキャリブレーションが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る流路切換弁を示す斜視図である。
図2】本実施形態に係る流路切換弁を示す底面図である。
図3図2における3-3矢視断面図である。
図4】本実施形態に係る流路切換弁を示す分解斜視図である。
図5】弁体を示す斜視図である。
図6】上下反転させた弁本体と、ホルダ部材とを示す分解斜視図である。
図7】弁体の突出部が弁体回転範囲の下限を定めるストッパに当接している状態を示す断面図である。
図8】弁体の突出部が弁体回転範囲の上限を定めるストッパに当接している状態を示す断面図である。
図9図8に対応する弁体の状態を示す横断面図である。
図10図7に対応する弁体の状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1図3を用いて、本発明の一の実施形態に係る流路切換弁10について説明する。なお、各図において、部材間に形成される隙間や部材間の離隔距離等は、発明の理解を容易にするため、また、作図上の便宜を図るため、誇張して描かれている場合がある。また、本明細書において、上下、左右、前後等の位置、方向を表わす記述は、図1の方向矢印表示を基準としており、実際の使用状態での位置、方向を指すものではない。図1において、「UP」は上方向(上側)、「DOWN」は下方向(下側)、「LH」は左方向(左側)、「RH」は右方向(右側)、「FR」は前方向(前側)、「RR」は後方向(後側)を示している。なおこれらの方向は便宜的なものであり、自動車等に取り付けられた状態での方向と異なる場合がある。
【0018】
(流路切換弁の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る流路切換弁10の全体構成を示す斜視図である。図2は、流路切換弁10を示す平面図である。図3は、図2における3-3矢視断面図である。
【0019】
流路切換弁10は、例えば自動車のエンジンルーム内等を流れる流体の流路を切り換えるロータリー形の四方弁として使用されるものである。流路切換弁10は、弁本体14と、弁体16と、封止部38と、回転駆動部18とを有している。
【0020】
(弁本体)
図2において、弁本体14は、例えば合成樹脂製とされた基体部材20とホルダ部材21とで構成されている。基体部材20は、下側が開口しており、その開口部分にホルダ部材21が内嵌固定されている。基体部材20とホルダ部材21の間は、例えばOリング54によりシールされている。図6図9に示されるように、弁本体14の内部には、例えば筒状の弁室12が形成されている。弁室12の壁面のうち円筒状の内壁12Aには、流体の入出口24,26,28が形成されている。入出口24,26は、弁室12に対して互いに対向するように開口している。入出口28は、入出口24,26を結ぶ方向に対して水平面内で直交する方向に開口している。
【0021】
図1図2において、弁本体14における基体部材20の外面には、入出口24,26,28に連通する管継手としてのポート24A,26A,28Aが一体的に設けられている。また、基体部材20の外面には、流路切換弁10を自動車のエンジンルーム内等に取り付けるための取付け部32が複数設けられている。図6において、ホルダ部材21には、弁室12への入出口29と、該入出口29に連通する管継手としてのポート29Aが一体的に設けられている。
【0022】
図3図6において、ホルダ部材21と基体部材20との嵌合部は、例えばOリング54により例えば気密的、水密的にシールされている。Oリング54は、例えばホルダ部材21に設けられた溝56に取り付けられている。
【0023】
なお、本実施形態では、Oリング54を挟んでホルダ部材21と基体部材20とをねじ25で結合しているが、ホルダ部材21と基体部材20とを溶着で結合してもよい。溶着でシール性も確保する構造を採用する場合には、Oリング54は不要である。
【0024】
ホルダ部材21はフランジ21Aを有しており、フランジ21Aには4つの貫通孔21Bが形成されている。貫通孔21Bには、例えばねじ25が通される。基体部材20のうちフランジ21Aが当接する端面20Aには、ねじ25と螺合するねじ穴20Bが形成されている。ねじ25により、ホルダ部材21が基体部材20に締結固定されている。
【0025】
また、フランジ21Aには、例えば2つの貫通孔21Cが形成されている。この貫通孔21Cには、位置決めを行うためのピン52(図6)が通されるようになっている。基体部材20の端面20Aには、ピン52と嵌合する穴20Cが形成されている。ピン52は、基体部材20に対するホルダ部材21の組付けの際に用いられる治具である。フランジ21Aの貫通孔21Cに挿通したピン52を基体部材20の穴20Cに差し込むことで、基体部材20の弁室12の中心とホルダ部材21の中心の位置決めを行うことができる。後述するように、弁室12内で回転する弁体16の下端部が、ホルダ部材21の内周面21Eにより回転支持される構成となっているためである。
【0026】
更に、フランジ21Aには、弁本体14側に突出する例えば2つの突起21Dが設けられている。基体部材20の端面20Aには、突起21Dと嵌合する穴20Dが形成されている。突起21Dと穴20Dが嵌合することで、基体部材20の弁室12の中心とホルダ部材21の中心の経時的なアライメント変化を抑制できるようになっている。
【0027】
図3に示されるように、弁室12の上側の壁面には、弁体16の弁軸48が回転可能に挿通される嵌挿穴30が設けられている。また、基体部材20には、ポート28Aと反対側に延びる支持部15が例えば一体的に設けられている。基体部材20及び支持部15の上には、回転駆動部18が例えばねじ22を用いて固定されている。
【0028】
(弁体)
図3から図5において、弁体16は、例えば合成樹脂から作製された部材であり、弁室12内に上下方向に延びる軸線O1を中心として回転可能に配置されている。弁体16の上部は、弁室12の上側の壁面に設けられた嵌挿穴30にOリング34を介して枢支されている。Oリング34は、例えば弁体16の上部外周面に形成された溝16A1に取り付けられている。一方、弁体16の下部は、ホルダ部材21の内周面21EにOリング35を介して枢支されている(図10も参照)。Oリング35は、例えば弁体16の下部外周面16Bに形成された溝16B1に取り付けられている。
【0029】
弁体16は、軸線O1を中心とした略円筒状の外周面16Cを有している。外周面16Cは、概ね180°の範囲に設けられている。換言すれば、外周面16Cは、軸線O1の方向から見て略半円形に形成されている。この外周面16Cは、弁室12の内壁12Aに対向する。外周面16Cの曲率半径は、弁室12の半径よりも若干小さく設定されている。弁室12の壁面のうち円筒状の内壁12Aと、弁体16の外周面16Cとの間には隙間S1が形成されている(図7図8)。この隙間S1は、後述する突出部16Gの先端と弁室12の内壁12Aとの間にも形成されている。なお、隙間S1の大きさが場所によって異なっていてもよい。
【0030】
弁本体14に設けられた入出口24,26,28,29を選択的に連通させるべく、言い換えれば、入出口24,26,28,29の連通状態を選択的に切り換えるべく、弁体16の内部には流路(内部流路)36が設けられている。詳細には、弁体16の外周面16Cには、弁体16の軸線O1方向に直交する方向に形成された複数の開口部、例えば2つの開口部36A,36Bが形成されている。図9に示されるように、開口部36A,36Bは、互いに直交している。また、弁体16には、軸線O1の下方に形成された開口部36Cが形成されている。開口部36A,36B,36Cは、流路36と連通している。
【0031】
弁体16の外周面16Cにおける開口部36A,36Bの周囲には、後述するシート部材40,42が取り付けられる環状凹部16Dがそれぞれ形成されている。開口部36A,36Bの周囲における環状凹部16Dの内側の例えば2箇所若しくは1箇所には、シート部材40,42の位置決めを行うための突起16Eが設けられている。
【0032】
弁体16の上部には、弁軸48が例えば一体的に設けられている。弁軸48の中心軸は、弁体16の軸線O1と同軸とされている。弁軸48には、周方向に凹凸を有するギヤ部48Aが設けられており、このギヤ部48Aが回転駆動部18の出力部と係合している。弁体16の上部外周面16Aと外周面16Cとの間には、上部外周面16Aよりも大径で外周面16Cより小径な中径部16Fが設けられている。中径部16Fと、後述するストッパ44,46を構成する突起部との間には、隙間S2が形成されている。この隙間S2と、上記した隙間S1が形成されていることにより、弁室12内での異物の滞留が抑制されるようになっている。なお、弁軸48が弁体16とは別の部品であってもよい。
【0033】
(封止部)
図4図9において、封止部38は、弁体16における流路36の開口部36A,36Bの周囲を囲むように設けられ、開口部36A,36Bと入出口24,26,28が対向した状態で該入出口24,26,28と弁体16との間を封止する部材であり、例えばシート部材40とOリング42とを有している。シート部材40及びOリング42は、弁体16の2つの環状凹部16Dにそれぞれ配置されている。シート部材40は、例えば合成樹脂から作製され、弁体16における流路36の開口部36A,36Bに対応する開口を持つ円環状に形成されている。シート部材40の内径は、例えば入出口24,26,28の内径と等しく設定されている。
【0034】
シート部材40のうち、弁室12の内壁12Aと摺動する面は、該内壁12Aに沿う円筒面で構成されている。これにより、弁体16は、シート部材40が弁室12の内壁12Aに接触した状態で、弁室12内で円滑に回転摺動可能とされ、また開口部36A,36Bと入出口24,26,28が対向した状態で該入出口24,26,28と弁体16との間を封止できるようになっている。一方、シート部材40の背面は、例えば略平面状とされている。この背面には、弁体16の突起16Eと嵌合する凹部40Aが形成されている。Oリング42は、環状凹部16Dの底部に配置され、Oリング42の上からシート部材40が嵌め込まれている。つまり、シート部材40と弁体16との間は、Oリング42により例えば気密的、水密的にシールされている。
【0035】
一例として、弁本体14、及び弁体16にPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の吸水性の低い樹脂を使用し、シート部材40にPTFE(フッ素樹脂)等の自己潤滑性樹脂を使用し、Oリング42に合成ゴムを使用することができる。
【0036】
(回転駆動部)
図1から図3において、回転駆動部18は、複数の入出口24,26,28,29の連通状態が弁体16の流路36を通じて選択的に切り換わるように、弁軸48を介して弁体16を回転させると共に、弁体16の角度位置を検出可能とされている。この回転駆動部18は、弁軸48を回転させるためのモータ、駆動ギヤ等を有し、弁軸48を介して弁体16を回転軸線(中心線)O1周りで回転させるべく、弁本体14の上方に配置されている。弁体16の弁軸48は、回転駆動部18と軸線O1周りに係合している。回転駆動部18には、例えば制御部との通信及び電力供給のための配線が接続されるコネクタ50が設けられている。モータは、弁体16の角度位置を検出できるように、ステッピングモータであってもよく、またDCモータ等のモータと磁気センサ(例えば、ホール素子)を組み合わせたものであってもよい。
【0037】
図6図7図8において、弁体16は、所定の弁体回転範囲の範囲内で回転駆動されるようになっている。この弁体回転範囲の上限及び下限の少なくとも一方、例えば双方には、弁体16のそれ以上の回転を制限するストッパ44,46が、弁本体14の内側に設けられている。具体的には、ストッパ44,46は、弁室12の上側の壁面における嵌挿穴30(図2)の周囲に一体的に設けられている。ストッパ44は上限を定め、ストッパ46は下限を定めている。上限の下限を、一端と他端と言い換えることもできる。また、ストッパ44,46を弁本体14の内側、すなわち弁室12の上側壁面に設けたことで、弁室12の下方側から弁体16を配置できる。
【0038】
弁体16には、該弁体16における例えば中径部16Fから径方向外側に突出し、弁体回転範囲の上限及び下限の少なくとも一方、本実施形態では双方においてストッパ44,46に当接する突出部16Gが設けられている。突出部16Gは、例えば平面視で扇形の凸部であり、1箇所設けられている。この突出部16Gは、弁体回転範囲の上限でストッパ44に当接し、下限でストッパ46に当接する。ストッパ44,46の配置と、弁体16の周方向における突出部16Gの大きさは、弁体回転範囲に応じて適宜変更される。換言すれば、ストッパ44,46の位置は、この角度差と、弁体16の突出部16Gの形状を考慮して定められる。
【0039】
なお、本実施形態における弁体回転範囲の上限と下限の角度差θは315°である(図7)。このように弁体回転範囲の上限と下限の角度差が既知である場合、キャリブレーションのプログラムにより、上限から下限を算出することができ、また下限から上限を算出することができる。したがって、上限のストッパ44又は下限のストッパ46の一方のみが設けられる構成であってもよい。また、上限のストッパ44に当接する突出部と、下限のストッパ46に当接する突出部とが別々に設けられていてもよい。
【0040】
図9に示されるように、流路切換弁10は、弁室12の壁面としての内壁12Aにより弁体16の2つの開口部36A,36Bを同時に封止し、流路36における流体の流れを停止させるモードを有している。
【0041】
(作用、効果)
次に、本実施形態の流路切換弁10の作用、効果について説明する。図1図3において、本実施形態では、モータ、駆動ギヤ等からなる回転駆動部18により弁軸48を介して弁体16を回転させることで、弁本体14の流路36を切り換えることができる。具体的には、弁体16の流路36を通じて、弁本体14に設けられた入出口24,26,28,29の連通状態の組合せを変えて、流体の流れのモードを選択的に切り換えることができる。
【0042】
例えば、図7図10においては、弁体16が弁体回転範囲の下限にあり、入出口26,29が連通し、入出口24,28が連通している。図7の状態から弁体16を時計回りに90°回転させると、入出口26,28,29が連通し、入出口24が閉じた状態となる(図示せず)。更に、弁体16を時計回りに90°回転させると、入出口24,28,29が連通し、入出口26が閉じた状態となる。更に弁体16を時計回りに90°回転させると、入出口24,29が連通し、入出口26,28が連通した状態となる。
【0043】
更に、図8図9に示されるように、弁体16を弁体回転範囲の上限まで時計回りに回転させると、弁本体14の内壁12Aにより弁体16の2つの開口部36A,36Bが同時に封止され、流路における流体の流れを停止させるモード、具体的には入出口29が閉じた状態となる。このとき、入出口24,26,28は弁体16の外側で連通した状態となる。このように、本実施形態では、流路切換えのバリエーションを更に増加させることができる。
【0044】
また、本実施形態では、弁本体14の外側に設けられたストッパ44,46により、弁体回転範囲の上限及び下限の双方において、弁体16のそれ以上の回転を制限することができる。具体的には、弁体16の突出部16Gがストッパ44,46にそれぞれ当接することで、弁体16のそれ以上の回転が制限される。
【0045】
回転駆動部18は、弁体16の角度位置を検出可能であるため、突出部16Gがストッパ44,46により弁体16の回転が止められた位置を、弁体回転範囲の上限又は下限として検出し、弁体回転範囲のキャリブレーションを行うことができる。キャリブレーションは、流路切換弁10の使用の都度、又は月に1度等、不定期又は定期的に行われることが望ましい。ここで、弁体16の突出部16Gとストッパ44,46を用いたキャリブレーションの手順の一例を、図7図8を用いて説明する。
【0046】
弁体16が弁体回転範囲の上限と下限の間にあるところから、回転駆動部18(図1)により弁体16を左回りに回転させると、図7において、突出部16Gが下限のストッパ46に当接し、それ以上の弁体16の回転が制限される。このとき回転駆動部18のモータの停止を検出することで、弁体16が弁体回転範囲の下限に達したことを検知できる。次に、回転駆動部18(図1)により弁体16を右回転させると、図8において、突出部16Gが上限のストッパ44に当接し、それ以上の弁体16の回転が制限される。このとき回転駆動部18のモータの停止を検出することで、弁体16が弁体回転範囲の上限に達したことを検知できる。
【0047】
なお、回転駆動部18のモータの回転位置は、例えば、ホール素子などのセンサーを用いて検出してもよいし、ステッピングモータやブラシレスモータの逆起電力から検出してもよい。突出部16Gが下限のストッパ46又は上限のストッパ44に当接した状態からのモータの回転数(つまり弁体の角度位置)は、センサーを用いて検出できるが、ステッピングモータの場合は入力したパルス数からモータの回転数(つまり弁体の角度位置)を検出してもよい。突出部16Gが下限のストッパ46又は上限のストッパ44に当接した状態(基準位置、モータの停止状態)もセンサーや逆起電力から検出できる。
【0048】
これにより、弁体回転範囲の上限における回転駆動部18での弁体16の角度位置と、弁体回転範囲の下限における回転駆動部18での弁体16の角度位置がそれぞれ対応付けられるので、弁体回転範囲のキャリブレーションが完了する。これにより、弁体16の角度位置を弁体回転範囲内で任意に変更することができる。
【0049】
本実施形態では、ストッパ44,46が弁体回転範囲の上限及び下限の双方に設けられているので、上限と下限の角度差がわかっていなくても、上限及び下限を検出することで弁体回転範囲のキャリブレーションを行うことができる。弁体回転範囲の上限と下限の角度差が既知である場合には、キャリブレーションのプログラムにより、上限から下限を算出することができ、また下限から上限を算出することができる。したがって、上限のストッパ44又は下限のストッパ46の一方が設けられる構成であっても、キャリブレーションを行うことができる。
【0050】
このように、本実施形態では、弁体回転範囲の上限及び下限の少なくとも一方において、弁体16に設けられた突出部16Gがストッパ44,46に当接するという簡易な構成により、キャリブレーションに絶対角センサを用いる場合と比較して、コスト増を抑制しつつ、回転駆動部18における弁体回転範囲のキャリブレーションを行うことができる。
【0051】
[その他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0052】
弁本体14に形成される入出口の数や配置構成は、当該流路切換弁10の適用箇所等に応じて、適宜に変更できることは言うまでも無い。上記実施形態では、流路切換弁10として四方弁を例にとって説明したが、例えば、二方弁、三方弁としても良いことは言うまでも無い。三方弁としては、例えば下側の入出口29(ポート29A)を省略した構成が考えられる。
【0053】
また、上記実施形態の流路切換弁10は、車両におけるエンジンルーム内等(エンジン冷却用回路や電子機器冷却用回路等)の流路切換用に使用されるものとしているが、用途はこれに限らず、例えば給湯設備における流路切換用に使用しても良いことは勿論である。
【0054】
弁体16に、ストッパ44,46に当接する突出部16Gが設けられるものとしたが、これに限られず、ストッパ44,46により弁体回転範囲の上限及び下限の少なくとも一方において弁体16のそれ以上の回転を制限することができる構成であればよい。また、ストッパ44,46が弁室12の内側に設けられるものとしたが、ストッパ44,46が弁室12の外側に設けられていてもよい。この場合、弁体16の突出部16Gも弁室12の外側に設けられる。
【符号の説明】
【0055】
10 流路切換弁
12 弁室
12A 内壁(壁面)
14 弁本体
16 弁体
16C 外周面
16G 突出部
18 回転駆動部
24 入出口
26 入出口
28 入出口
29 入出口
36 流路
36A 開口部
36B 開口部
38 封止部
44 ストッパ
46 ストッパ
48 弁軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10