(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】獣医科用ケージ
(51)【国際特許分類】
A01K 1/02 20060101AFI20240904BHJP
【FI】
A01K1/02 Z
(21)【出願番号】P 2022064127
(22)【出願日】2022-04-07
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】591160707
【氏名又は名称】株式会社東京メニックス
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【氏名又は名称】横田 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】福田 恒二
(72)【発明者】
【氏名】福田 耕三
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-165689(JP,A)
【文献】特開2002-112655(JP,A)
【文献】特開2020-141654(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0026902(US,A1)
【文献】特開2006-125069(JP,A)
【文献】登録実用新案第3011995(JP,U)
【文献】特開2001-323685(JP,A)
【文献】登録実用新案第3202748(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/00- 3/00
A01K 31/00-31/24
A61D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者動物の収容空間の上面側、左面側、右面側、下面側及び背面側に、金属からなると共に略矩形板状に形成された上面板、左面板、右面板、下面板及び背面板が前記
収容空間を囲むように、かつ、一体的に設けられ、前記収容空間の前面側が開口部とされた筐体と、前記筐体の前記開口部に開閉可能に設けられた扉とを備えた第1のケージユニット及び第2のケージユニットを有し、
前記第1のケージユニットは、前記第2のケージユニットの上に載置されると共に、樹脂から形成され、前記上面板と前記左面板、前記上面板と前記右面板、前記下面板と前記左面板、及び、前記下面板と前記右面板との外側面に跨がるように配置された第1の枠部材、第2の枠部材、第3の枠部材及び第4の枠部材を備え、前記第3の枠部材及び前記第4の枠部材が前記筐体の前記前面側から前記背面側に向かって伸びると共に、下方に開口し、かつ、開口側から内奥側に向かって漸次幅広となる下側溝部を備え、
前記第2のケージユニットは、樹脂から形成されると共に、前記上面板と前記左面板、前記上面板と前記右面板、前記下面板と前記左面板、及び、前記下面板と前記右面板との外側面に跨がるように配置された第1の枠部材、第2の枠部材、第3の枠部材及び第4の枠部材を備え、前記第1の枠部材及び前記第2の枠部材が前記筐体の前記前面側から前記背面側に向かって伸びると共に、上方に開口し、かつ、開口側から内奥側に向かって漸次幅広となる上側溝部を備え、
前記第1のケージユニットの前記第3の枠部材の前記下側溝部と前記第2のケージユニットの前記第1の枠部材の前記上側溝部、及び、前記第1のケージユニットの前記第4の枠部材の前記下側溝部と前記第2のケージユニットの前記第2の枠部材の前記上側溝部とにそれぞれ挿入されると共に、前記第1のケージユニットの移動を規制する第1のレール部材と第2のレール部材をさらに有することを特徴とする獣医科用ケージ。
【請求項2】
患者動物の収容空間の上面側、左面側、右面側、下面側及び背面側に、金属からなると共に略矩形板状に形成された上面板、左面板、右面板、下面板及び背面板が前記
収容空間を囲むように、かつ、一体的に設けられ、前記収容空間の前面側が開口部とされた筐体と、前記筐体の前記開口部に開閉可能に設けられた扉とを備えた第3のケージユニット及び第4のケージユニットをさらに有し、
前記第1のケージユニットは、前記第2の枠部材及び前記第4の枠部材が右方に開口し、かつ、開口側から内奥側に向かって漸次幅広となる右側溝部を備え、
前記第2のケージユニットは、前記第2の枠部材及び前記第4の枠部材が右方に開口し、かつ、開口側から内奥側に向かって漸次幅広となる右側溝部を備え、
前記第3のケージユニットは、前記第4のケージユニットの上に載置され、かつ、前記筐体の前記左面板が前記第1のケージユニットの前記筐体の前記右面板に対向するように配置されると共に、樹脂から形成され、前記上面板と前記左面板、前記上面板と前記右面板、前記下面板と前記左面板、及び、前記下面板と前記右面板との外側面に跨がるように配置された第1の枠部材、第2の枠部材、第3の枠部材及び第4の枠部材を備え、前記第3の枠部材及び前記第4の枠部材が前記筐体の前記前面側から前記背面側に向かって伸びると共に、下方に開口し、かつ、開口側から内奥側に向かって漸次幅広となる下側溝部を備え、前記第1の枠部材及び前記第3の枠部材が前記筐体の前記前面側から前記背面側に向かって伸びると共に、左方に開口し、かつ、開口側から内奥側に向かって漸次幅広となる左側溝部を備え、
前記第4のケージユニットは、前記筐体の前記左面板が前記第2のケージユニットの前記筐体の前記右面板に対向するように配置されると共に、樹脂から形成され、前記上面板と前記左面板、前記上面板と前記右面板、前記下面板と前記左面板、及び、前記下面板と前記右面板との外側面に跨がるように配置された第1の枠部材、第2の枠部材、第3の枠部材及び第4の枠部材を備え、前記第1の枠部材及び前記第2の枠部材が前記筐体の前記前面側から前記背面側に向かって伸びると共に、上方に開口し、かつ、開口側から内奥側に向かって漸次幅広となる上側溝部を備え、前記第1の枠部材及び前記第3の枠部材が前記筐体の前記前面側から前記背面側に向かって伸びると共に、左方に開口し、かつ、開口側から内奥側に向かって漸次幅広となる左側溝部を備え、
前記第3のケージユニットの前記第3の枠部材の前記下側溝部と前記第4のケージユニットの前記第1の枠部材の前記上側溝部、及び、前記第3のケージユニットの前記第4の枠部材の前記下側溝部と前記第4のケージユニットの前記第2の枠部材の前記上側溝部とにそれぞれ挿入されると共に、前記第1のケージユニットの水平方向の移動を規制する第3のレール部材と第4のレール部材、前記第1のケージユニットの前記第2の枠部材の前記右側溝部と前記第3のケージユニットの前記第1の枠部材の前記左側溝部、及び、前記第1のケージユニットの前記第4の枠部材の前記右側溝部と前記第3のケージユニットの前記第3の枠部材の前記左側溝部とにそれぞれ挿入されると共に、前記第1のケージユニットと前記第3のケージユニットとが互いに離隔することを規制する第1のジョイント部材と第2のジョイント部材、並びに、前記第2のケージユニットの前記第2の枠部材の前記右側溝部と前記第4のケージユニットの前記第1の枠部材の前記左側溝部、及び、前記第2のケージユニットの前記第4の枠部材の前記右側溝部と前記第4のケージユニットの前記第3の枠部材の前記左側溝部とにそれぞれ挿入されると共に、前記第2のケージユニットと前記第4のケージユニットとが互いに離隔することを規制する第3のジョイント部材と第4のジョイント部材をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の獣医科用ケージ。
【請求項3】
前記第1のケージユニットは、発泡プラスチックから形成され、前記第1の枠部材と前記第2の枠部材、前記第3の枠部材と前記第1の枠部材、前記第2の枠部材と前記第4の枠部材、及び、前記第4の枠部材と前記第3の枠部材との間隙にそれぞれ配置され、かつ、前記上面板、前記左面板、前記右面板及び前記下面板に対してそれぞれ接するように設けられた上面制振板、左面制振板、右面制振板及び下面制振板を備え、
前記第2のケージユニットは、発泡プラスチックから形成され、前記第1の枠部材と前記第2の枠部材、前記第3の枠部材と前記第1の枠部材、前記第2の枠部材と前記第4の枠部材、及び、前記第4の枠部材と前記第3の枠部材との間隙にそれぞれ配置され、かつ、前記上面板、前記左面板、前記右面板及び前記下面板に対してそれぞれ接するように設けられた上面制振板、左面制振板、右面制振板及び下面制振板を備えていることを特徴とする請求項2に記載の獣医科用ケージ。
【請求項4】
前記第1のケージユニットの前記下面制振板と前記第2のケージユニットの前記上面制振板とが互いに接していることを特徴とする請求項3に記載の獣医科用ケージ。
【請求項5】
前記第2のケージユニットの前記第1の枠部材と前記第2の枠部材との背面側の端部及び
該端部の近傍部分に固定されると共に、前記第1のケージユニットの前記第3の枠部材の前記下側溝部と前記第4の枠部材の下側溝部に背面側からそれぞれ挿入されることによって、前記第1のケージユニットの移動を規制する第1のクリップと第2のクリップとを有することを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の獣医科用ケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、獣医科用ケージに関し、特に、複数のケージユニットを集合させて1つの獣医科用ケージを構成しているものに関する。
【背景技術】
【0002】
獣医科用ケージ、つまり、患者動物を療養させるための入院ケージは、一般的に、ケージユニットを、上下方向に2段又は3段、左右方向に2列乃至数列程度配置した集合型のケージとしての構成を持っている。各々のケージユニットの筐体は、衛生管理の観点からステンレス鋼などの金属から形成されている筐体と、筐体の手前側の開口部に設けられ、この開口部を閉止可能な扉から構成されている。このような獣医科用ケージにおいては、例えば扉の開閉時に発生する音や振動が獣医科用ケージ全体に伝わり、患者動物にとって不快な音や振動となることが大きな課題となっている。
【0003】
図11は、従来技術に係る獣医科用ケージの一例を示す斜視図であり、特開2012-90909公報において開示されている獣医科用ケージである。
図11において、100はケージユニット、110は筐体、111は背面板、112は上面板、113は下面板、114は左面板、115は右面板、116は化粧枠、120は扉である。
【0004】
図11は、特開2012-090909公報に開示された獣医科用ケージである。ケージユニット100において、患者動物を収容し、療養させる筐体110は、背面側、上面側、下面側、右面側及び左面側に、金属製の背面板111、上面板112、下面板113、左面板114及び右面板115を一体的に設けることによって構成されている。また、筐体110は、前面側の化粧枠116に囲まれた開口部に扉120が設けられている。扉120は、患者動物の入退室やペットシーツの交換時などに適宜開閉される。さらに、
図11においては、図示されていないが、ケージユニット100は、上下方向及び左右方向に複数個配置されている。
【0005】
以上のような獣医科用ケージでは、例えば、いずれかのケージユニット100の扉120を開閉したときや、簀の子を交換したとき、あるいは、患者動物が扉120を揺らしたときなどに発生する振動は騒音を発生させる。さらに、筐体110が金属製であることから、振動が発生したケージユニット100から周囲のケージユニット100に振動が伝わりやすい上に、筐体110は、6面のうち前面側のみが開口した太鼓の胴に近い構造であるので、周囲のケージユニットから伝わった振動が音として響きやすい構造と言える。患者動物は、通常の生活環境にあるとき、すなわち、健康で飼い主と共に生活している状態であれば、筐体110のような金属板に囲まれた空間に収容されることはない。したがって、患者動物にとって、いずれかのケージユニット100で発生した振動に起因する金属特有の音を常に聞かされることは、通常の生活空間とは大きく異なる空間に収容されていることと相まって、ストレスの原因となる。振動を低減する対策として筐体110を樹脂製とすることは技術的に可能ではある。しかし、衛生管理を徹底しなければならない動物病院において、樹脂製のものを使用することは、好ましい対策とは言えない。さらに、ケージユニット100をステンレス鋼などから形成すると、筐体110の上面板112などの各面板や縁辺部などが設計通りの平面や直線にならず、僅かな歪みを生じてしまうことが多い。このような歪みは、ケージユニット100を販売する者が上下方向や左右方向に組み上げる際に、ケージユニット100の傾きなどを生じ、組み上げ作業を妨げる要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、ケージユニットを複数個集合させた獣医科用ケージにおいて、扉の開閉などに伴って発生した振動が低減され、かつ、ケージユニットを正確に組み上げることが容易な獣医科用ケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、患者動物の収容空間の上面側、左面側、右面側、下面側及び背面側に、金属からなると共に略矩形板状に形成された上面板、左面板、右面板、下面板及び背面板が前記収容空間を囲むように、かつ、一体的に設けられ、前記収容空間の前面側が開口部とされた筐体と、前記筐体の前記開口部に開閉可能に設けられた扉とを備えた第1のケージユニット及び第2のケージユニットを有し、前記第1のケージユニットは、前記第2のケージユニットの上に載置されると共に、樹脂から形成され、前記上面板と前記左面板、前記上面板と前記右面板、前記下面板と前記左面板、及び、前記下面板と前記右面板との外側面に跨がるように配置された第1の枠部材、第2の枠部材、第3の枠部材及び第4の枠部材を備え、前記第3の枠部材及び前記第4の枠部材が前記筐体の前記前面側から前記背面側に向かって伸びると共に、下方に開口し、かつ、開口側から内奥側に向かって漸次幅広となる下側溝部を備え、前記第2のケージユニットは、樹脂から形成されると共に、前記上面板と前記左面板、前記上面板と前記右面板、前記下面板と前記左面板、及び、前記下面板と前記右面板との外側面に跨がるように配置された第1の枠部材、第2の枠部材、第3の枠部材及び第4の枠部材を備え、前記第1の枠部材及び前記第2の枠部材が前記筐体の前記前面側から前記背面側に向かって伸びると共に、上方に開口し、かつ、開口側から内奥側に向かって漸次幅広となる上側溝部を備え、前記第1のケージユニットの前記第3の枠部材の前記下側溝部と前記第2のケージユニットの前記第1の枠部材の前記上側溝部、及び、前記第1のケージユニットの前記第4の枠部材の前記下側溝部と前記第2のケージユニットの前記第2の枠部材の前記上側溝部とにそれぞれ挿入されると共に、前記第1のケージユニットの移動を規制する第1のレール部材と第2のレール部材をさらに有することを特徴とする獣医科用ケージである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、患者動物の収容空間の上面側、左面側、右面側、下面側及び背面側に、金属からなると共に略矩形板状に形成された上面板、左面板、右面板、下面板及び背面板が前記収容空間を囲むように、かつ、一体的に設けられ、前記収容空間の前面側が開口部とされた筐体と、前記筐体の前記開口部に開閉可能に設けられた扉とを備えた第3のケージユニット及び第4のケージユニットをさらに有し、前記第1のケージユニットは、前記第2の枠部材及び前記第4の枠部材が右方に開口し、かつ、開口側から内奥側に向かって漸次幅広となる右側溝部を備え、前記第2のケージユニットは、前記第2の枠部材及び前記第4の枠部材が右方に開口し、かつ、開口側から内奥側に向かって漸次幅広となる右側溝部を備え、前記第3のケージユニットは、前記第4のケージユニットの上に載置され、かつ、前記筐体の前記左面板が前記第1のケージユニットの前記筐体の前記右面板に対向するように配置されると共に、樹脂から形成され、前記上面板と前記左面板、前記上面板と前記右面板、前記下面板と前記左面板、及び、前記下面板と前記右面板との外側面に跨がるように配置された第1の枠部材、第2の枠部材、第3の枠部材及び第4の枠部材を備え、前記第3の枠部材及び前記第4の枠部材が前記筐体の前記前面側から前記背面側に向かって伸びると共に、下方に開口し、かつ、開口側から内奥側に向かって漸次幅広となる下側溝部を備え、前記第1の枠部材及び前記第3の枠部材が前記筐体の前記前面側から前記背面側に向かって伸びると共に、左方に開口し、かつ、開口側から内奥側に向かって漸次幅広となる左側溝部を備え、前記第4のケージユニットは、前記筐体の前記左面板が前記第2のケージユニットの前記筐体の前記右面板に対向するように配置されると共に、樹脂から形成され、前記上面板と前記左面板、前記上面板と前記右面板、前記下面板と前記左面板、及び、前記下面板と前記右面板との外側面に跨がるように配置された第1の枠部材、第2の枠部材、第3の枠部材及び第4の枠部材を備え、前記第1の枠部材及び前記第2の枠部材が前記筐体の前記前面側から前記背面側に向かって伸びると共に、上方に開口し、かつ、開口側から内奥側に向かって漸次幅広となる上側溝部を備え、前記第1の枠部材及び前記第3の枠部材が前記筐体の前記前面側から前記背面側に向かって伸びると共に、左方に開口し、かつ、開口側から内奥側に向かって漸次幅広となる左側溝部を備え、前記第3のケージユニットの前記第3の枠部材の前記下側溝部と前記第4のケージユニットの前記第1の枠部材の前記上側溝部、及び、前記第3のケージユニットの前記第4の枠部材の前記下側溝部と前記第4のケージユニットの前記第2の枠部材の前記上側溝部とにそれぞれ挿入されると共に、前記第1のケージユニットの水平方向の移動を規制する第3のレール部材と第4のレール部材、前記第1のケージユニットの前記第2の枠部材の前記右側溝部と前記第3のケージユニットの前記第1の枠部材の前記左側溝部、及び、前記第1のケージユニットの前記第4の枠部材の前記右側溝部と前記第3のケージユニットの前記第3の枠部材の前記左側溝部とにそれぞれ挿入されると共に、前記第1のケージユニットと前記第3のケージユニットとが互いに離隔することを規制する第1のジョイント部材と第2のジョイント部材、並びに、前記第2のケージユニットの前記第2の枠部材の前記右側溝部と前記第4のケージユニットの前記第1の枠部材の前記左側溝部、及び、前記第2のケージユニットの前記第4の枠部材の前記右側溝部と前記第4のケージユニットの前記第3の枠部材の前記左側溝部とにそれぞれ挿入されると共に、前記第2のケージユニットと前記第4のケージユニットとが互いに離隔することを規制する第3のジョイント部材と第4のジョイント部材をさらに有することを特徴とする獣医科用ケージである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記第1のケージユニットは、発泡プラスチックから形成され、前記第1の枠部材と前記第2の枠部材、前記第3の枠部材と前記第1の枠部材、前記第2の枠部材と前記第4の枠部材、及び、前記第4の枠部材と前記第3の枠部材との間隙にそれぞれ配置され、かつ、前記上面板、前記左面板、前記右面板及び前記下面板に対してそれぞれ接するように設けられた上面制振板、左面制振板、右面制振板及び下面制振板を備え、前記第2のケージユニットは、発泡プラスチックから形成され、前記第1の枠部材と前記第2の枠部材、前記第3の枠部材と前記第1の枠部材、前記第2の枠部材と前記第4の枠部材、及び、前記第4の枠部材と前記第3の枠部材との間隙にそれぞれ配置され、かつ、前記上面板、前記左面板、前記右面板及び前記下面板に対してそれぞれ接するように設けられた上面制振板、左面制振板、右面制振板及び下面制振板を備えていることを特徴とする獣医科用ケージである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記第1のケージユニットの前記下面制振板と前記第2のケージユニットの前記上面制振板とが互いに接していることを特徴とする獣医科用ケージである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4に記載の発明において、前記第2のケージユニットの前記第1の枠部材と前記第2の枠部材との背面側の端部及び該端部の近傍部分に固定されると共に、前記第1のケージユニットの前記第3の枠部材の前記下側溝部と前記第4の枠部材の下側溝部に背面側からそれぞれ挿入されることによって、前記第1のケージユニットの移動を規制する第1のクリップと第2のクリップとを有することを特徴とする獣医科用ケージである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、第1の枠部材、第2の枠部材、第3の枠部材及び第4の枠部材が樹脂製であるので、第1のケージユニットを第2のケージユニットの上に直接載置する、又は、第1のケージユニット及び第2のケージユニットに、前後方向における角部に樹脂製の第1の枠部材、第2の枠部材、第3の枠部材及び第4の枠部材を設けたので、第1のケージユニットと第2のケージユニットとを金属部材で接続する従来の構成と比べて、第1の枠部材、第2の枠部材、第3の枠部材及び第4の枠部材を伝わる振動が低減される。ひいては、第1のケージユニットから第2のケージユニットへ、又は、この逆方向に伝達する振動が低減されるので、獣医科用ケージ全体の静音性が向上する。くわえて、第1のレール部材と第2のレール部材とによって、第1のケージユニットを所定位置に簡単に載置することができる。また、第1のケージユニットと第2のケージユニットとを第1の枠部材、第2の枠部材、第3の枠部材及び第4の枠部材をよって接続するので、多数のケージユニットを正確に組み上げることが容易になる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、第1のケージユニット及び第2のケージユニットの右側方に第3のケージユニット及び第4のケージユニットを簡単に設置できる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、第1のケージユニット及び第2のケージユニットに対して、上面制振板、左面制振板、右面制振板及び下面制振板を設けたことによって、筐体で発生した振動の減衰を早めることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、第1のケージユニットの下面制振板が下面板を軽く押圧し、と第2のケージユニットの上面制振板が上面板を軽く押圧した状態となるので、筐体で発生した振動を吸収し、減衰をさらに早めることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、第1のケージユニットを第2のケージユニットの上に置いてから背面側に押し込むことによって、第1のケージユニットを所定位置に配置することができ、獣医科用ケージの設置が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る獣医科用ケージのケージユニットを示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る獣医科用ケージのケージユニットを示す拡大切断部端面図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る獣医科用ケージの枠部材を示し、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係る獣医科用ケージを示す斜視図である。
【
図5】第1のケージユニットを第2のケージユニット上に載置する方法を示す拡大切断部端面図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態に係る獣医科用ケージのレール部材を示し、(a)は断面図、(b)は右側面図である。
【
図7】第1のケージユニットを第2のケージユニット上に載置した状態を示す拡大切断部端面図である。
【
図8】第1のケージユニットを第2のケージユニット上に載置した状態を示す部分背面図である。
【
図9】本発明の第1の実施の形態に係る獣医科用ケージのクリップを示し、(a)は背面図、(b)は右側面図である。
【
図10】本発明の第2の実施の形態に係る獣医科用ケージを示す斜視図である。
【
図11】本発明の第2の実施の形態に係る獣医科用ケージのジョイント部材を示し、(a)は断面図、(b)は右側面図である。
【
図12】従来技術に係る獣医科用ケージの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る獣医科用ケージのケージユニットを示す斜視図である。
図1において、10は第1の枠部材、20は第2の枠部材、40は第4の枠部材、51は上面制振板、53は右面制振板、70は筐体、76は化粧枠部材、80は扉、81はハンドル、82は上側貫抜棒、83は下側貫抜棒、84はロック部材、85は上側掛け金、86は下側掛け金、87は上側蝶番、88は下側蝶番、90はケージユニットである。また、
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る獣医科用ケージを示す斜視図である。
図4において、91は第1のケージユニット、92は第2のケージユニット、95は獣医科用ケージであり、その他の符号は
図1と同じものを示す。さらに、
図10は、本発明の第2の実施の形態に係る獣医科用ケージを示す斜視図である。
図10において、93は第3のケージユニット、94は第4のケージユニット、96は獣医科用ケージであり、その他の符号は
図4と同じものを示す。なお、
図1などの各図面において、天板や側板の取付け用ネジ孔など、本発明との関連性が薄い細部の構成は記載を省略している。
【0020】
本発明の第1の実施の形態に係る獣医科用ケージは、
図1に示すように、外形がほぼ直方体をなすように形成されたケージユニット90を一単位とするケージである。ケージユニット90は、単体で使用することも可能であるが、通常は、
図4に示すように、第1のケージユニット91と第2のケージユニット92とを上下方向に2段重ねて使用したり、
図10に示すように、第1のケージユニット91と第2のケージユニット92、及び、第3のケージユニット93と第4のケージユニット94とを上下方向に2段重ねると共に、第1のケージユニット91及び第2のケージユニット92と、第3のケージユニット93及び第4のケージユニット94とを左右方向に2列に配置したりする。すなわち、ケージユニット90を複数段又は複数列に配置して獣医科用ケージ95又は獣医科用ケージ96のように集合型ケージとして使用する。また、第1のケージユニット91及び第2のケージユニット92の内部には、通常、簀の子やマットを敷いた状態で患者動物を収容している。
【0021】
なお、ケージユニット90は、
図1に示した幅(間口)又は高さに限られるものではなく、収容する患者動物の種類などに応じて適宜変更することが可能である。また、幅(間口)が同じであれば、高さが異なるものを上下方向に2段あるいは3段以上重ねて使用することも可能である。また、上下方向又は左右方向に隣接しているケージユニット90同士に対して、左右方向及び前後方向、又は、上下方向及び前後方向において同じ位置となる部位に開口部を設けて、患者動物が上下又は左右に隣接するケージユニット90同士を行き来できるようにすることも可能である。さらに、外観を向上するための天板や側板、さらには作業性を向上するための架台又は移動用キャスタ、患者動物の快適性を向上するための内棚や仕切り板などを設けてもよいが、本件発明との関連性が薄いので、具体的な説明は省略する。
【0022】
続けて、ケージユニット90及び獣医科用ケージ95の構成について詳細に説明する。
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る獣医科用ケージのケージユニットを示す拡大切断部端面図である。
図2において、11は上側溝部、12は左側溝部、13は上面制振板押さえ部、14は左面制振板押さえ部、21は上側溝部、22は右側溝部、23は上面制振板押さえ部、24は右面制振板押さえ部、30は第3の枠部材、31は下側溝部、32は左側溝部、33は下面制振板押さえ部、34は左面制振板押さえ部、41は下側溝部、42は右側溝部、43は下面制振板押さえ部、44は右面制振板押さえ部、52は左面制振板、54は下面制振板、71は上面板、72は左面板、73は右面板、74は下面板であり、その他の符号は
図1と同じものを示す。また、
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る獣医科用ケージの枠部材を示し、(a)は断面図、(b)は平面図である。
図3において、11aは右側壁部、11bは左側壁部、12aは上側壁部、12bは下側壁部、15は上側平坦面、15aは圧入領域上側面、16は左側平坦面、16aは圧入領域左側面、17は補強部、18は内周面、19aは背面側端面、19bは前面側端面であり、その他の符号は
図1及び
図2と同じものを示す。くわえて、
図7は、第1のケージユニットを第2のケージユニット上に載置した状態を示す拡大切断部端面図である。
図7において、60は第1のレール部材、61は固定部、62は挿入部、63は第2のレール部材、64は挿入部、65は固定部を示し、その他の符号は
図1及び
図2と同じものを示す。また、
図8は、第1のケージユニットを第2のケージユニット上に載置した状態を示す部分背面図である。
図8において、35は下側板部、55は第1のクリップ、59は第2のクリップ、75は背面板であり、その他の符号は
図1、
図2及び
図7と同じものを示す。
【0023】
ケージユニット90は、前述したように、略直方体の外形を有しており、筐体70と扉80によって患者動物の収容空間が形成されている。すなわち、
図1及び
図8に示すように、患者動物の収容空間は、その上面側、左面側、右面側、下面側及び背面側に、筐体70の上面板71、左面板72、右面板73、下面板74及び背面板75が配置されており、この
収容空間を囲んでいる。さらに、この収容空間の前面側は、患者動物を入退室させるための開口部となっており、患者動物の収容時には開閉可能な扉80がこの開口部を閉止している。また、ケージユニット90は、
図4及び
図10に示したように、通常は上下方向又は左右方向に複数配列して集合型ケージとして設置されるので、ケージユニット90の個数に応じて複数の患者動物を同時に収容した状態で使用される。
【0024】
筐体70は、鍛造によって上面板71、左面板72、右面板73、下面板74及び背面板75が一体になるように形成されている。また、筐体70は、後述する理由から軽量化を図るために、アルミニウム合金から形成されている。さらに、上面板71、左面板72、右面板73及び下面板74の前面側端部には、化粧枠部材76を備えている。化粧枠部材76は、化粧枠としての役割を持つものであり、上面板71、左面板72、右面板73及び下面板74の前面側端部に連続するように、つまり、上面板71、左面板72、右面板73及び下面板74と一体に設けられている。なお、従来技術に係る獣医科用ケージの筐体のように、ステンレス鋼から形成することも可能であるが、後述するように振動を低減する効果を得る上ではアルミニウム合金を採用する方が好ましい。また、筐体70は、同じ形状に形成できるのであれば、鍛造以外の方法によって形成してもよい。
【0025】
扉80は、格子板とこの格子板を囲む枠から形成され、ハンドル81を握って手前側又は奥側に動かしたときに、上側蝶番87及び下側蝶番88を回転軸として回動するように設けられている。なお、特に図示はしないが、上側蝶番87及び下側蝶番88は、扉80に固定された軸と、筐体70に固定された軸受が分離可能であり、扉80を筐体70から離脱させることが容易にできる。さらに、扉80は、ロック部材84側に突出するように設けられた上側貫抜棒82及び下側貫抜棒83を備えている。なお、扉80は、上側蝶番87及び下側蝶番88の回転軸と、上側貫抜棒82及び下側貫抜棒83とを固定することが可能であれば、透明なアクリル樹脂製の矩形板を利用するなど他の材質のものを使用することも可能である。また、扉の一部のみを開閉可能、つまり、扉の中に扉が設けられたような構成にしてもよい。
【0026】
ロック部材84は、手前に突出するように設けられると共に、筐体70に対して上下方向に摺動可能な状態で取り付けられた上側掛け金85及び下側掛け金86を備えている。上側貫抜棒82及び下側貫抜棒83は、扉80を閉止しているときにはロック部材84の上側掛け金85及び下側掛け金86によって上から押さえつける。さらに、ロック部材84は、サルやネコなどの相対的に高い巧緻性を持つ患者動物がロックを解除することを防止するために、患者動物が簡単に持ち上げられない程度の重量を持つものとしている。したがって、獣医師などがハンドル81を握ってそのまま手前側に引いても扉80が簡単には開かないように構成されている。扉80を開く場合には、ロック部材84を持ち上げながら扉80を手前に引くことによって簡単に開くことができる。なお、ロック部材84は、前述のように、扉80などと比較した場合、その大きさに対して相対的に重くなるようにしているので、騒音となる振動を発生しやすい。なお、獣医師や動物看護師がロック部材84を持ち上げたときに筐体70の左面板72又は右面板73の表面上を摺動すると、摩擦によって騒音を発生することになる。そこで、特に図示していないが、ケージユニット90では、ロック部材84を樹脂板を介して筐体70に取り付けており、摩擦音の低減を図っている。
【0027】
また、ケージユニット90は、
図2に示すように、筐体70の上面板71と左面板72、上面板71と右面板73、下面板74と左面板72、及び、下面板74と右面板73との外側面に跨がるように配置された第1の枠部材10、第2の枠部材20、第3の枠部材30及び第4の枠部材40を備えている。第1の枠部材10、第2の枠部材20、第3の枠部材30及び第4の枠部材40は、筐体70に対して固定されるものであり、振動が発生した筐体70から周辺の筐体70に伝達される振動を低減する目的から、ステンレス鋼などから形成されている従来品とは異なり樹脂から形成されている。また、第1の枠部材10、第2の枠部材20、第3の枠部材30及び第4の枠部材40は、筐体70に対して固定されたときの向きは互いに異なりが、全て同じ形状及び大きさを有している。なお、第1の枠部材10、第2の枠部材20、第3の枠部材30及び第4の枠部材40を全て同じ形状及び大きさとせずに、例えば最下段となるケージユニット90において、第3の枠部材30及び第4の枠部材40に相当する位置に固定されるものを架台に対して取り付け易くするために一部の形状を変更した架台取り付け用枠部材としてもよい。
【0028】
ここで、第1の枠部材10、第2の枠部材20、第3の枠部材30及び第4の枠部材40の細部の構成について第1の枠部材10に基づいて説明する。第1の枠部材10は、長手方向に対して直交する方向における断面形状が切断位置に関係なく同一となる、いわゆる長尺材である。また、第1の枠部材10は、内周面18が筐体70の外周面に接した状態で筐体70に対して固定され、水平方向に配置された上側平坦面15が上方に位置するケージユニット90に接する面となる。さらに、第1の枠部材10は、上側平坦面15の外縁側端部から垂下するように設けられた左側平坦面16を備えている。左側平坦面16は、第1の枠部材10が上側平坦面15を側面側、つまり垂直方向に向くように固定されたときに、上方に位置するケージユニット90に接する面となる。くわえて、第1の枠部材10は、上側平坦面15の内縁側端部に隣接するように設けられた上側溝部11を備えている。
【0029】
上側溝部11は、
図8に示すように、第1のレール部材60を固定するために設けられており、右側壁部11aと左側壁部11bとが底面側から開口側に向かって狭まるように形成されることによって、第1のレール部材60の離脱が規制されるようにしている。同様に、左側平坦面16側にも、左側平坦面16に隣接するように設けられた左側溝部12を備えている。左側溝部12もまた、上側壁部12aと下側壁部12bとが底面側から開口側に向かって狭まるように形成されている。また、
図3に示している補強部17は、上段に配置したケージユニット90を支持するために、第1の枠部材10の剛性を高めるものであるが、同時にケージユニット90を積み重ねて集合型ケージを組み立てる作業を容易にする役割も持つ。すなわち、
図8に示すように、第2のクリップ59を背面側端面19aの側から右側壁部11aと補強部17との間隙であり、圧入領域上側面15aに接する、又は、極めて近接する位置に圧入し、さらに第1のクリップ55も同様に圧入し、後述する手順によって上段となるケージユニット90を下段となるケージユニット90の上に載置したときに、上段のケージユニット90と下段のケージユニット90との前後方向の位置を簡単に揃えることができる、つまり、上段のケージユニット90と下段のケージユニット90との第1の枠部材10の前面側端面19bが奥行き方向において同じ位置になるという利点がある。なお、第1の枠部材10は、圧入領域左側面16aも全く同じ形状に形成されている。以上述べたように、第1の枠部材10は、補強部17を含む仮想的平面を境界面として面対称となるように形成されているので、第2の枠部材20、第3の枠部材30及び第4の枠部材40と共通性があり、4種類の枠部材を製造する構成よりも製造コストを低減できる。
【0030】
また、第1の枠部材10には、左側壁部11bに連続するように形成されると共に筐体70の上面板71に対して平行に延びるように設けられた上面制振板押さえ部13と、に連続するように形成されると共に筐体70の左面板72に対して平行に延びるように設けられた左面制振板押さえ部14とを備えている。上面制振板押さえ部13は、
図2に示すように、上面制振板押さえ部13と上面板71の間隙に挿入された上面制振板51の左端部の近傍部分を保持している。同様に、左面制振板押さえ部14は、左面制振板押さえ部14と左面板72との間隙に挿入された左面制振板52の近傍部分を保持している。さらに、第2の枠部材20、第3の枠部材30及び第4の枠部材40も同様に、上面制振板押さえ部23及び右面制振板押さえ部24、下面制振板押さえ部33及び左面制振板押さえ部34、並びに、下面制振板押さえ部43及び右面制振板押さえ部44も同様の役割を持つ。
【0031】
上面制振板51、左面制振板52、右面制振板53及び下面制振板54は、騒音の原因となるケージユニット90にいずれかの部位で発生した振動を吸収し、つまり、振動の減衰を早めることによって、騒音の低減を図るために設けられるものである。すなわち、上面制振板51、左面制振板52、右面制振板53及び下面制振板54は、発泡プラスチックを材料とし、矩形板形状に形成されている。また、上面制振板51、左面制振板52、右面制振板53及び下面制振板54は、
図2に示すように、第1の枠部材10の上面制振板押さえ部13と第2の枠部材20の上面制振板押さえ部23、第1の枠部材10の左面制振板押さえ部14と第3の枠部材30の左面制振板押さえ部34、第2の枠部材20の右面制振板押さえ部24と第4の枠部材40の右面制振板押さえ部44、及び、第3の枠部材30の下面制振板押さえ部33と第4の枠部材40の下面制振板押さえ部43によって、筐体70の上面板71、左面板72、右面板73及び下面板74の外側面にそれぞれ接するように設けられている。
【0032】
また、上面制振板51、左面制振板52、右面制振板53及び下面制振板54は、ケージユニット90を積み上げたときに、対向する物同士が接するような厚さに形成されている。すなわち、第1のケージユニット91を第2のケージユニット92の上に載置し、
図4に示すような獣医科用ケージ95を組み立てると、
図7に示すように、第1のケージユニット91の下面制振板54は、第2のケージユニット92の上面制振板51に接した状態となる。よって、下面制振板54は、第1の枠部材10及び第2の枠部材20のような積み上げ構造を支持することを第1の目的とするものではないが、第2のケージユニット92の第1の枠部材10及び第2の枠部材20と共に第1のケージユニット91から加わる荷重をある程度支えている状態になる。したがって、第1のケージユニット91の下面制振板54、及び、第2のケージユニット92の上面制振板51の厚さに多少のばらつきが存在していても、第1のケージユニット91、第1のケージユニット91の下面制振板54、第2のケージユニット92の上面制振板51、及び、第2のケージユニット92が第1のケージユニット91から加わる荷重によって互いに接した状態となり、振動を低減する効果が確実に得られる。
【0033】
以上の構成によれば、筐体70で発生した、又は、筐体70へ伝達した振動は、上面制振板51、左面制振板52、右面制振板53及び下面制振板54が振動を吸収することによって、騒音が低減され、かつ、騒音の持続時間が短縮される。さらに、例えば第2のケージユニット92から第1のケージユニット91へ伝達される振動は、第2のケージユニット92の第1の枠部材10及び第2の枠部材20から、第1のケージユニット91の第3の枠部材30及び第4の枠部材40において減衰する。同時に、第1のケージユニット91を囲んでいる上面制振板51、左面制振板52、右面制振板53及び下面制振板54、特に、第1のケージユニット91の自重によって筐体70の下面板74に押し当てられた下面制振板54によって、第1のケージユニット91の筐体70へ伝わった振動の減衰が促進されるという効果が得られる。また、騒音対策とは関係がないが、上面制振板51、左面制振板52、右面制振板53及び下面制振板54が発泡プラスチックから形成されているので、隣接するケージユニット90同士を連結する連絡通路を設ける場合などに、カッターなどで簡単に加工できるという利点もある。なお、上面制振板51、左面制振板52、右面制振板53及び下面制振板54の材料としては、安価で入手が非常に容易な発泡ポリスチレンが特に好ましいが、発泡ポリウレタンなど他の発泡プラスチックを用いてもよい。
【0034】
ところで、この実施の形態に係る獣医科用ケージは、例えば
図7に示すように、第1のケージユニット91と第2のケージユニット92との間に下面制振板54と上面制振板51とが介在しているので、第1のケージユニット91を第2のケージユニット92の上に載置する際に従来製品において使用されているような金属製の接続部材を使用することが難しい構成となっている。この金属製の接続部材は、比較的重量がある第2のケージユニット92を第1のケージユニット91上の正確な位置に載置する上で重要な役割を果たしている。そこで、この実施の形態に係る獣医科用ケージでは、
図8に示すように、第1のレール部材60及び第2のレール部材63、並びに、第1のクリップ55及び第2のクリップ59を設けることによって、第1のケージユニット91を第2のケージユニット92の上に簡便に、かつ、正確に載置されるようにしている。
【0035】
図5は、第1のケージユニットを第2のケージユニット上に載置する方法を示す拡大切断部端面図である。
図5において用いた符号は、全て
図2及び
図7と同じものを示す。
図6は、本発明の第1の実施の形態に係る獣医科用ケージのレール部材を示し、(a)は断面図、(b)は右側面図である。
図6において用いた符号は、全て
図7と同じものを示す。また、
図9は、本発明の第1の実施の形態に係る獣医科用ケージのクリップを示し、(a)は背面図、(b)は右側面図である。
図9において、56は圧入部、57は湾曲部、58は挿入部であり、その他の符号は
図7と同じものを示す。なお、第2のレール部材63の固定部64及び挿入部65は、第1のレール部材60の固定部61及び挿入部62と同じ形状及び大きさであるので、第2のレール部材63に関する説明は省略する。
【0036】
第1のレール部材60は、
図6に示すように、長手方向に対して直交する方向における断面形状が切断位置に関係なく同一となる、いわゆる長尺材である。また、第1のレール部材60と第1の枠部材10とは、共に樹脂製であるので、上側溝部11の前面側端部又は背面側端部から第1のレール部材60を手作業によって挿入することが可能であり、簡便に設置できる。その一方、第1のレール部材60は、下側部分である固定部61が略台形状の断面系を持つように形成されているので、第1の枠部材10の上側溝部11に挿入されると、上側溝部11の右側壁部11aと左側壁部11bとが底面側から開口側に向かって狭まるように形成されているので、第1のレール部材60は上方には離脱しない。さらに、第1のケージユニット91を第2のケージユニット92の上に載置すると、固定部61が第1のケージユニット91からの加重によって上側溝部11に押え付けられた状態になる。したがって、第1のケージユニット91の設置後には、上側溝部11から第1のレール部材60を容易に引き出せなくなる。
【0037】
また、第1のレール部材60の上側部分である挿入部62は、略矩形状の断面形状を持つように形成されており、、第1のケージユニット91を第2のケージユニット92の上に載置する際に位置合わせを容易にする役割を持つ。すなわち、第2のレール部材63に基づいて説明すると、
図5に示すように、あらかじめ固定部64を第2の枠部材20の上側溝部21に挿入して所定位置に取り付けておく。次に、第2のレール部材63を第1のケージユニット91の第2のケージユニット92の上方まで持ち上げながら、第1のケージユニット91の第4の枠部材40の下側溝部41に挿入部65を挿入することによって、
図7に示すように、第1のケージユニット91を左右方向において正確な位置に配置することができる。また、第1のケージユニット91を第1のレール部材60及び第2のレール部材63に載せた後は、第1のケージユニット91を第1のレール部材60及び第2のレール部材63上を摺動させることができるので、前後方向の位置調整作業が極めて容易になるという利点もある。
【0038】
さらに、前後方向の位置合わせの方法について説明する。第1のクリップ55は、
図9に示すように、圧入部56、湾曲部57及び挿入部58を備えている。圧入部56は、矩形板状に形成されており、
図8に示すように、第2のケージユニット92の第1の枠部材10の上側溝部11に圧入される部分である。挿入部58は、圧入部56と共に、第2のケージユニット92の第1の枠部材10と、第1のケージユニット91の第3の枠部材30の下側板部35とを挟み込んで保持するために形成されている。すなわち、挿入部58は、第1のケージユニット91の第3の枠部材30の背面側の開口部に挿入するときに、下側板部35を誘い込みやすくするために、圧入部56と平行に近く、かつ、先端側に向かって僅かに上り勾配に形成されている。また、湾曲部57は、圧入部56と挿入部58との開いた角度を保持するバネとしての役割を持つと共に、第2のケージユニット92の第1の枠部材10と、第1のケージユニット91の第3の枠部材30との背面側端部に当接させることによって、前後方向において第2のケージユニット92の位置に第1のケージユニット91の位置が揃うという位置合わせの機能を持つ。なお、第2のクリップ59は、第1のクリップ55と同じ形状及び大きさであるので、第2のクリップ59に関する説明は省略する。
【0039】
また、第1のケージユニット91の前後方向の位置合わせする際には、まず第1のクリップ55及び第2のクリップ59を第2のケージユニット92の第1の枠部材10及び第3の枠部材30に圧入した後、第1の枠部材10に固定された第1のレール部材60、及び、第2の枠部材20に固定された第2のレール部材63の上に上段となるケージユニット90を載置する。さらに、第1のケージユニット91を背面側に押し込んで行くと、第1のケージユニット91の第3の枠部材30及び第4の枠部材40が第1のクリップ55及び第2のクリップ59に当接したところで停止する。
【0040】
続けて、本発明の第2の実施の形態に係る獣医科用ケージについて、特徴点のジョイント部材のみ説明する。
図11は、本発明の第2の実施の形態に係る獣医科用ケージのジョイント部材を示し、(a)は断面図、(b)は右側面図である。
図11において、66はジョイント部材、67は第1の固定部、68は第2の固定部である。
【0041】
本発明の第2の実施の形態に係る獣医科用ケージでは、例えば
図10の獣医科用ケージ96に示すように、第1のケージユニット91及び第2のケージユニット92の左側に隣接して第3のケージユニット93及び第4のケージユニット94を設置する際に、例えば床面の僅かな凹凸や傾斜によって、第1のケージユニット91及び第2のケージユニット92と第3のケージユニット93及び第4のケージユニット94との間に間隙を生じることを防止するものである。すなわち、
図11に示すように、ジョイント部材66は、第1の固定部67及び第2の固定部68を備えた構成としている。第1の固定部67及び第2の固定部68は、第1のレール部材60の固定部61に相当するものであり、互いに背向するような形状に形成されている。したがって、一部の符号を記入していないが、例えば
図10において、第1のケージユニット91の第2の枠部材20の右側溝部22に第1の固定部67を挿入し、同時に、第3のケージユニット93の第1の枠部材10の左側溝部12に第2の固定部68を挿入し、他の枠部材についても同様にジョイント部材66を挿入することによって、第1のケージユニット91及び第2のケージユニット92と第3のケージユニット93及び第4のケージユニット94との間に間隙を生じることを防止でき、天板などの取り付け作業が容易になる。な以上のように、ジョイント部材66は、ケージユニット90の左右方向に複数列のケージユニット90を配列するときに非常に有用である。
【0042】
以上のように、本発明の第1及び第2の実施の形態に係る獣医科用ケージによれば、ケージユニット90の前後方向における角部に設けた第1の枠部材10、第2の枠部材20、第3の枠部材30及び第4の枠部材40を樹脂から形成しているので、従来技術に係る金属製の枠部材よりも、これらの枠部材に伝わる振動が低減される。ひいては、第1のケージユニット91から第2のケージユニット92へ、又は、この逆方向に伝達する振動が低減されるので、獣医科用ケージ全体の静音性が向上する。くわえて、第1のレール部材60と第2のレール部材63とによって、第1のケージユニット91を所定位置に簡単に載置することができる。さらに、第1のケージユニット91、第2のケージユニット92、第3のケージユニット93及び第4のケージユニット94を上下方向及び左右方向に組み上げる際に、各々の第1の枠部材10、第2の枠部材20第3の枠部材30及び第4の枠部材40
また、ジョイント部材66を利用することによって、第1のケージユニット91及び第2のケージユニット92の右側方に第3のケージユニット及び第4のケージユニットを簡単に設置できる。さらに、第1のケージユニット91及び第2のケージユニット92に対して、上面制振板51、左面制振板52、右面制振板53及び下面制振板54を設けたことによって、筐体で発生した振動の減衰を早めることができる。くわえて、第1のケージユニット91の下面制振板54が筐体70の下面板74を軽く押圧し、第2のケージユニット92の上面制振板51が筐体70の上面板71を軽く押圧した状態となるので、第1のケージユニット91及び第2のケージユニット92の筐体70で発生した振動の減衰をさらに早めて低減効果を向上できる。また、第1のケージユニット91を第2のケージユニット92の上に載置してから背面側に押し込むことによって、第1のケージユニット91を所定位置に配置することができ、獣医科用ケージ95及び96の設置が容易になる。
【0043】
なお、本発明は、以上に説明した各実施の形態の説明内容に限定されるものではなく、請求項に記載した範囲を逸脱しない限りにおいて種々の変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 第1の枠部材
11 上側溝部
11a 右側壁部
11b 左側壁部
12 左側溝部
12a 上側壁部
12b 下側壁部
13 上面制振板押さえ部
14 左面制振板押さえ部
15 上側平坦面
15a 圧入領域上側面
16 左側平坦面
16a 圧入領域左側面
17 補強部
18 内周面
19a 背面側端面
19b 前面側端面
20 第2の枠部材
21 上側溝部
22 右側溝部
23 上面制振板押さえ部
24 右面制振板押さえ部
30 第3の枠部材
31 下側溝部
32 左側溝部
33 下面制振板押さえ部
34 左面制振板押さえ部
35 下側板部
40 第4の枠部材
41 下側溝部
42 右側溝部
43 下面制振板押さえ部
44 右面制振板押さえ部
51 上面制振板
52 左面制振板
53 右面制振板
54 下面制振板
55 第1のクリップ
56 圧入部
57 湾曲部
58 挿入部
59 第2のクリップ
60 第1のレール部材
61 固定部
62 挿入部
63 第2のレール部材
64 挿入部
65 固定部
66 ジョイント部材
67 第1の固定部
68 第2の固定部
70 筐体
71 上面板
72 左面板
73 右面板
74 下面板
75 背面板
76 化粧枠部材
80 扉
81 ハンドル
82 上側貫抜棒
83 下側貫抜棒
84 ロック部材
85 上側掛け金
86 下側掛け金
87 上側蝶番
88 下側蝶番
90 ケージユニット
91 第1のケージユニット
92 第2のケージユニット
93 第3のケージユニット
94 第4のケージユニット
95 獣医科用ケージ
96 獣医科用ケージ
100 ケージユニット
110 筐体
111 背面板
112 上面板
113 下面板
114 左面板
115 右面板
116 化粧枠
120 扉