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特許7549403塗布状態検査装置、塗布装置、及び塗布状態検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】塗布状態検査装置、塗布装置、及び塗布状態検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/892 20060101AFI20240904BHJP
【FI】
G01N21/892 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023503926
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2022008973
(87)【国際公開番号】W WO2022186301
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2021033176
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】305024547
【氏名又は名称】有限会社イグノス
(74)【代理人】
【識別番号】100142734
【弁理士】
【氏名又は名称】安 裕 希
(72)【発明者】
【氏名】大和田 功
(72)【発明者】
【氏名】寒川 陽美
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-1046(JP,A)
【文献】特開2018-84550(JP,A)
【文献】特開2017-196570(JP,A)
【文献】特開2019-66309(JP,A)
【文献】特開平7-333156(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0189940(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布対象物を所定の方向に搬送する搬送手段と、搬送される前記塗布対象物に糊を所定の幅で塗布する塗布手段と、が設けられた塗布装置において、前記塗布対象物に塗布された糊の塗布状態を検査する塗布状態検査装置であって、
前記塗布対象物の搬送方向における前記塗布手段の下流側に設けられ、前記塗布対象物に800nm以上950nm以下の波長域を含む近赤外線を照射する光源と、
CMOSイメージセンサを備え、800nm以上950nm以下の波長域を含む近赤外線に対する感度を有し、前記光源により近赤外線が照射された前記塗布対象物を動画で撮像することにより、画像データを順次生成するカメラと、
前記カメラにより生成された画像データを取得し、該画像データに基づいて、前記塗布対象物が写った動画像を構成するモノクロの複数のフレーム画像を生成すると共に、前記複数のフレーム画像の各々に基づいて、前記塗布対象物の前記搬送方向と直交する方向である幅方向において糊が塗布されている領域を検出する画像処理部と、
前記画像処理部により検出された前記領域に基づいて、前記塗布対象物における糊の塗布状態を判定する判定部と、
を備え、
前記画像処理部は、
前記複数のフレーム画像の各々に対して二値化処理を施すことにより二値画像を生成する二値化処理部と、
前記二値画像に対してブロブ解析を施すことにより、前記領域の幅方向における長さを計測するブロブ解析部と、
を有し、
前記判定部は、予め設定された糊の塗布幅に対する前記領域の幅方向における長さの比率に基づいて、糊の塗布状態を判定する、
塗布状態検査装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記比率が所定の閾値以下になった場合、塗布状態が不良と判定する、請求項に記載の塗布状態検査装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記比率が、前記閾値よりも大きい第2の閾値以下になった場合、塗布状態の不良を予告する、請求項に記載の塗布状態検査装置。
【請求項4】
前記光源が出射する近赤外光は、少なくとも、850nmにピーク波長を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の塗布状態検査装置。
【請求項5】
前記光源は、矩形の発光面を有する面照明である、請求項1~に記載の塗布状態検査装置。
【請求項6】
前記カメラは、少なくとも60fpsで動作する、請求項1~のいずれか1項に記載の塗布状態検査装置。
【請求項7】
前記搬送手段は、前記塗布対象物を少なくとも2m/秒で搬送する、請求項1~のいずれか1項に記載の塗布状態検査装置。
【請求項8】
前記塗布手段は、前記塗布対象物に前記糊を100μm以下の厚さで塗布するように設定されている、請求項1~のいずれか1項に記載の塗布状態検査装置。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の塗布状態検査装置と、
前記搬送手段と、
前記塗布手段と、
を備える塗布装置。
【請求項10】
塗布対象物を所定の方向に搬送する搬送手段と、搬送される前記塗布対象物に糊を所定の幅で塗布する塗布手段と、が設けられた塗布装置において、前記塗布対象物に塗布された糊の塗布状態を検査する塗布状態検査方法であって、
前記塗布対象物の搬送方向における前記塗布手段の下流側において、前記塗布対象物に800nm以上950nm以下の波長域を含む近赤外線を照射する照射ステップと、
CMOSイメージセンサを備え、800nm以上950nm以下の波長域を含む近赤外線に対する感度を有するカメラにより、前記光源により近赤外線が照射された前記塗布対象物を動画で撮像することにより、画像データを順次生成する撮像ステップと、
前記カメラにより生成された画像データを取得し、該画像データに基づいて、前記塗布対象物が写った動画像を構成するモノクロの複数のフレーム画像を生成すると共に、前記複数のフレーム画像の各々に基づいて、前記塗布対象物の前記搬送方向と直交する方向である幅方向において糊が塗布されている領域を検出する画像処理ステップと、
前記画像処理ステップにおいて検出された前記領域に基づいて、前記塗布対象物における糊の塗布状態を判定する判定ステップと、
を含み、
前記画像処理ステップは、
前記複数のフレーム画像の各々に対して二値化処理を施すことにより二値画像を生成することと、
前記二値画像に対してブロブ解析を施すことにより、前記領域の幅方向における長さを計測することと、を含み、
前記判定ステップは、予め設定された糊の塗布幅に対する前記領域の幅方向における長さの比率に基づいて、糊の塗布状態を判定することを含む、
塗布状態検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布対象物を搬送しながら糊を塗布する塗布装置において糊の塗布状態を検査する塗布状態検査装置、塗布装置、及び塗布状態検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糊の塗布状態を検査する技術として、例えば、特許文献1には、所定方向に所定速度で搬送される糊付け対象物の糊の塗布面に対して、糊に吸収されない基準用赤外線(例えば波長1300nm)と糊に一部吸収される測定用赤外線(例えば波長1450nm)を交互に照射し、基準用赤外線の反射光の光量と測定用赤外線の反射光の光量の比較に基づいて糊の糊付けの状態を検査する糊付け検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-84550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塗布対象物を搬送しながら、刷毛やスポンジやローラ等の塗布手段を用いて連続的に糊を塗布する塗布装置において糊の塗布状態の良・不良を判定する場合、高速な判定処理が要求される。また、塗布手段の種類やサイズに応じて、ある程度幅広い領域について判定を実行する必要もある。
【0005】
さらに、塗布対象物と糊が同色の場合、非常に視認し難いため、可視光の下で撮像された画像に基づいて塗布状態を判定することは困難である。特に、糊をごく薄く塗布する場合に、糊のかすれや途切れを不良として精度良く検出することは非常に難しい。
【0006】
糊に照射する光の波長に関し、特許文献1のように、糊に吸収されない基準用赤外線と糊に一部吸収される測定用赤外線とを用いる場合、2種類の光源を設ける必要があるため、装置構成が煩雑になってしまう。また、特許文献1においては、赤外線のスポット光を拡大レンズにより拡大して糊に照射するので、トータルでも数mm~数十mm程度(引用文献1の段落0025参照)の糊の幅しかカバーすることができない。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、塗布対象物を搬送しながら、刷毛やスポンジやローラ等の塗布手段を用いて所定の幅で糊を塗布する際に、糊の塗布状態の良・不良を、高速に且つ精度良く、簡素な構成で判定することができる塗布状態検査装置、塗布装置、及び塗布状態検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様である塗布状態判定装置は、塗布対象物を所定の方向に搬送する搬送手段と、搬送される前記塗布対象物に糊を所定の幅で塗布する塗布手段と、が設けられた塗布装置において、前記塗布対象物に塗布された糊の塗布状態を検査する塗布状態検査装置であって、前記塗布対象物の搬送方向における前記塗布手段の下流側に設けられ、前記塗布対象物に近赤外線を照射する光源と、近赤外線に対する感度を有し、前記光源により近赤外線が照射された前記塗布対象物を動画で撮像することにより、画像データを順次生成するカメラと、前記カメラにより生成された画像データを取得し、該画像データに基づいて、前記塗布対象物が写った動画像を構成する複数のフレーム画像を生成すると共に、前記複数のフレーム画像の各々に基づいて、前記塗布対象物の前記搬送方向と直交する方向である幅方向において糊が塗布されている領域を検出する画像処理部と、前記画像処理部により検出された前記領域に基づいて、前記塗布対象物における糊の塗布状態を判定する判定部と、を備えるものである。
【0009】
上記塗布状態検査装置において、前記画像処理部は、前記複数のフレーム画像の各々に対して二値化処理を施すことにより二値画像を生成する二値化処理部と、前記二値画像に対してブロブ解析を施すことにより、前記領域の幅方向における長さを計測するブロブ解析部と、を有し、前記判定部は、予め設定された糊の塗布幅に対する前記領域の幅方向における長さの比率に基づいて、糊の塗布状態を判定しても良い。
【0010】
上記塗布状態検査装置において、前記判定部は、前記比率が所定の閾値以下になった場合、塗布状態が不良と判定しても良い。
【0011】
上記塗布状態検査装置において、前記判定部は、前記比率が、前記閾値よりも大きい第2の閾値以下になった場合、塗布状態の不良を予告しても良い。
【0012】
上記塗布状態検査装置において、前記光源は、800nm以上950nm以下の波長域を含む近赤外線を出射し、前記カメラは、800nm以上950nm以下の波長域に感度を有しても良い。
【0013】
上記塗布状態検査装置において、前記光源が出射する近赤外光は、少なくとも、850nmにピーク波長を有しても良い。
【0014】
上記塗布状態検査装置において、前記光源は、矩形の発光面を有する面照明であっても良い。
【0015】
上記塗布状態検査装置において、前記カメラは、少なくとも60fpsで動作しても良い。
【0016】
上記塗布状態検査装置において、前記カメラは、CMOSイメージセンサを備えても良い。
【0017】
上記塗布状態検査装置において、前記搬送手段は、前記塗布対象物を少なくとも2m/秒で搬送しても良い。
【0018】
上記塗布状態検査装置において、前記塗布手段は、前記塗布対象物に前記糊を100μm以下の厚さで塗布するように設定されていても良い。
【0019】
本発明の別の態様である塗布装置は、前記塗布状態検査装置と、前記搬送手段と、前記塗布手段と、を備えるものである。
上記塗布装置において、前記塗布手段は、刷毛、スポンジ、又はローラであっても良い。
【0020】
本発明のさらに別の態様である塗布状態検査方法は、塗布対象物を所定の方向に搬送する搬送手段と、搬送される前記塗布対象物に糊を所定の幅で塗布する塗布手段と、が設けられた塗布装置において、前記塗布対象物に塗布された糊の塗布状態を検査する塗布状態検査方法であって、前記塗布対象物の搬送方向における前記塗布手段の下流側において、前記塗布対象物に近赤外線を照射する照射ステップと、近赤外線に対する感度を有するカメラにより、前記光源により近赤外線が照射された前記塗布対象物を動画で撮像することにより、画像データを順次生成する撮像ステップと、前記カメラにより生成された画像データを取得し、該画像データに基づいて、前記塗布対象物が写った動画像を構成する複数のフレーム画像を生成すると共に、前記複数のフレーム画像の各々に基づいて、前記塗布対象物の前記搬送方向と直交する方向である幅方向において糊が塗布されている領域を検出する画像処理ステップと、前記画像処理ステップにおいて検出された前記領域に基づいて、前記塗布対象物における糊の塗布状態を判定する判定ステップと、を含むものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、塗布対象物を搬送しながら、刷毛やスポンジやローラ等の塗布手段を用いて所定の幅で糊を塗布する際に、糊の塗布状態の良・不良を、高速に且つ精度良く、簡素な構成で判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る塗布装置の概略構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る塗布装置の概略構成を示す模式図である。
図3図1に示す検査ユニットの概略構成を示すブロック図である。
図4図1に示す検査ユニットの動作を示すフローチャートである。
図5】近赤外線により撮像されたフレーム画像の模式図である。
図6図4に示すフレーム画像の二値画像の模式図である。
図7】塗布検出幅の計測方法を説明するための模式図である。
図8】塗布状態の判定方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係る塗布状態検査装置、塗布装置、及び塗布状態検査方法について、図面を参照しながら説明する。なお、これらの実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0024】
以下の説明において参照する図面は、本発明の内容を理解し得る程度に形状、大きさ、及び位置関係を概略的に示しているに過ぎない。即ち、本発明は各図で例示された形状、大きさ、及び位置関係のみに限定されるものではない。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0025】
(実施形態)
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る塗布装置の概略構成を示す模式図である。このうち、図1は、塗布対象物を側面から見た状態を示し、図2は、塗布対象物を上面から見た状態を示す。図1及び図2に示すように、本実施形態に係る塗布装置1は、塗布対象物2を所定の方向に搬送する搬送部3と、塗布対象物2に糊を所定の幅で塗布する塗布部4と、塗布対象物2における糊の塗布状態を検査する塗布状態検査装置としての検査ユニット5とを備える。以下、水平方向のうち、塗布対象物2の搬送方向をx方向、搬送方向と直交する方向、即ち、塗布対象物2の幅方向をy方向とも記す。
【0026】
塗布対象物2は、例えば長尺の紙であり、搬送部3によって搬送されながら、塗布部4によって糊を塗布された後、折り畳み、重ね合わせ、切断といった加工が施される。もっとも、塗布対象物2は長尺の紙には限定されず、予め所定形状に切断された紙や段ボールのほか、織布、不織布、樹脂シートなどのシート状又は板状の部材であっても良い。
【0027】
搬送部3は、搬送ベルト31及び2つの回転ドラム32を有する搬送手段である。2つの回転ドラム32が各々の回転軸回りに回転することにより、これらの回転ドラム32の外周面に配置された搬送ベルト31が駆動される。それにより、搬送ベルト31上の塗布対象物2が搬送される。もっとも、搬送部3の構成は、シート状又は板状の部材を所定の方向に所定の速度で搬送可能な構成であれば、図1に示すものに限定されない。
【0028】
塗布部4は、例えば塗布ローラ及び糊を収容する容器を含む塗布手段である。塗布部4には、塗布部4を鉛直方向(図1の上下方向)において移動させる移動手段が設けられており、塗布部4を鉛直方向において移動させることにより、塗布ローラを塗布対象物2に接触させたり離したりすることができる。搬送される塗布対象物2に対し、糊に浸された塗布ローラを接触させることにより、糊を塗布することができる。もっとも、塗布部4の構成は、例えば刷毛や塗布スポンジなど、所定の幅で連続的に塗布可能な塗布手段であれば、図1に示すものに限定されない。
【0029】
ここで、本実施形態において、糊を「連続的に塗布する」とは、搬送される塗布対象物2に対して塗布手段を所定時間接触させることにより、ある程度の長さ(例えば、数cm以上)の領域にわたって糊を塗布することを意味する。従って、糊を塗布対象物に滴下することによりスポット的に塗布することは、「連続的に塗布」には含まれない。反対に、刷毛やスポンジやローラ等の塗布手段を用いて所定の長さずつ間欠的に糊を塗布する場合、当該所定の長さの領域においては糊が連続的に塗布されていると理解することができる。
【0030】
搬送部3及び塗布部4は、塗布装置1の動作を統括的に制御する制御装置の制御の下で動作する。詳細には、制御装置は、予め設定された糊の塗布パターンや糊の厚さに基づいて、塗布対象物2の搬送速度や、塗布部4を上下させるタイミングや、塗布部4を設置する幅方向における位置等を調整する。一例として、搬送部3は、塗布対象物2に塗布される糊の厚さが100μm以下となるように、少なくとも2m/秒の速度で塗布対象物2を搬送しても良い。
【0031】
検査ユニット5は、塗布対象物2に塗布された糊の塗布状態を検査する塗布状態検査装置であり、近赤外線を出射する光源11と、近赤外線が照射された塗布対象物2を撮像するカメラ12と、演算装置13とを備える。図3は、検査ユニット5の概略構成を示すブロック図である。
【0032】
光源11は、塗布対象物2の搬送方向における塗布部4の下流側に設けられ、塗布対象物2に近赤外線11aを照射する。光源11が出射する近赤外線11aは、800nm以上950nm以下の波長域を含む。この近赤外線11aのピーク波長は850nm近傍であることが好ましい。また、光源11としては、矩形の発光面を有する面照明を用いることが好ましい。面照明を用いることにより、ある程度の幅のある塗布領域2aに対しても、均一な照度で照明することができる。光源11による塗布対象物2への近赤外線11aの照射領域は、予め設定された糊の塗布領域2aの幅をカバーできていれば良い。光源11として、例えば、シーシーエス株式会社製のLED照明(型番:LDL-74X27IR2-850、ピーク発光波長:850nm)を用いることができる。
【0033】
カメラ12は、近赤外線に対する感度を有し、光源11により近赤外線が照射された塗布対象物2を所定のフレームレート以上の動画で撮像することにより、画像データを順次生成する。詳細には、カメラ12として、CMOSイメージセンサを備え、800nm以上950nm以下の波長域に対する感度を有するカメラを用いることができる。この波長域に対するカメラ12の感度特性はそれほど高いものは要求されず、例えば30%~40%程度であっても良い。
【0034】
カメラ12のフレームレートは、少なくとも60fpsであり、84fps以上であることが好ましく、167fps以上であることがより好ましい。このように高速で動作するカメラ12を用いることにより、塗布対象物2の搬送速度が速い場合(例えば、2m/秒以上)であっても、塗布状態を精度良く判定することができる。このようなカメラ12の具体例としては、オムロン センテック株式会社製のカメラ(型番:STC-MBCMU3V-NIR)が挙げられる。
【0035】
ここで、本実施形態において、近赤外線及び赤外線の波長域において一般的に使用されるInGaAsイメージセンサを備えるカメラを使用しないのは、InGaAsイメージセンサは、十分なフレームレートで撮像することが困難であると共に、レアメタルを使用するカメラは高価であるため、検査ユニット全体の製造コストが上昇してしまうからである。
【0036】
カメラ12は、近赤外線11aが照射された糊の塗布領域2a(図2参照)に視野12aを向けて設置される。この際、カメラの視野12aが塗布領域2aの幅をカバーするように、カメラ12と塗布対象物2との距離が調節される。
【0037】
演算装置13は、パーソナルコンピュータ等の汎用の演算処理装置によって構成される。図3に示すように、演算装置13は、外部インタフェース14と、記憶部15と、プロセッサ16とを備える。
【0038】
外部インタフェース14は、当該演算装置13を外部機器と接続し、演算装置13と外部機器との間で信号を送受信するインタフェースである。演算装置13に接続される外部機器としては、光源11と、カメラ12と、塗布装置1の各部(搬送部3、塗布部4等)の動作を制御する制御装置とが挙げられる。
【0039】
記憶部15は、例えばROMやRAMといった半導体メモリやハードディスク等のコンピュータ読取可能な記憶媒体を用いて構成され、プログラム記憶部151と、画像データ記憶部152と、閾値記憶部153とを含む。
【0040】
プログラム記憶部151は、オペレーティングシステムプログラム及びドライバプログラムに加えて、各種機能を実行するアプリケーションプログラムや、これらのプログラムの実行中に使用される各種パラメータ等を格納する。具体的には、プログラム記憶部151は、カメラ12から入力された画像データに基づいて、塗布対象物2における糊の塗布状態の良・不良を判定するための判定プログラムを記憶する。
【0041】
画像データ記憶部152は、カメラ12から入力され、後述する画像生成部164により画像処理が施された画像データを記憶する。
【0042】
閾値記憶部153は、後述する判定部167において塗布状態の判定に用いられる閾値を記憶する。閾値は、塗布対象物2の材料、塗布対象物2が加工された後の製品、糊の種類や濃度、塗布対象物2の搬送速度等の塗布条件に応じて適宜設定されており、閾値記憶部153にこれらの塗布条件と関連付けて記憶されている。
【0043】
プロセッサ16は、例えばCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)を用いて構成され、プログラム記憶部151に記憶された各種プログラムを読み込むことにより、検査ユニット5の各部を統括的に制御すると共に、塗布対象物2における糊の塗布状態を判定するための各種演算処理を実行する。詳細には、プロセッサ16により実現される機能部には、光源制御部161と、撮像制御部162と、画像処理部163と、判定部167とが含まれる。これらの各部は、一又は複数のプロセッサとコンピュータープログラム、或いはその組み合わせによって構成されても良い。
【0044】
光源制御部161は、光源11における近赤外線の出力動作を制御する。
撮像制御部162は、カメラ12における撮像動作を制御する。詳細には、撮像制御部162は、カメラ12に対して所定のフレームレートで撮像を実行させると共に、撮像の開始及び終了のタイミングを制御する。
【0045】
画像処理部163は、カメラ12により生成された画像データを取得し、該画像データに基づいて、塗布対象物2が写った動画像を構成する複数のフレーム画像を生成すると共に、各フレーム画像に基づいて、塗布対象物の幅方向において糊が塗布されている領域を検出する処理を実行する。
【0046】
詳細には、画像処理部163は、画像生成部164と、二値化処理部165と、ブロブ解析部166とを含む。画像生成部164は、カメラ12から入力される画像データに基づいて、モノクロのフレーム画像を順次生成する。二値化処理部165は、画像生成部164により生成された各フレーム画像に対して二値化処理を施すことにより二値画像を生成する。ブロブ解析部166は、二値化処理部165により生成された二値画像に対してブロブ解析を実行する。
【0047】
判定部167は、ブロブ解析の結果に基づいて、塗布対象物2における糊の塗布状態を判定する。
【0048】
この他、演算装置13に、当該演算装置13に対する命令や情報を入力するための操作入力部や、判定部167による判定結果を表示するための表示装置や、判定部167による判定結果に基づいてアラーム音を出力するスピーカ等を接続しても良い。
【0049】
次に、本実施形態に係る塗布状態検査方法について説明する。図4は、検査ユニット5の動作を示すフローチャートである。
まず、画像生成部164は、カメラ12により順次生成される動画像の画像データを取得し(ステップS101)、動画像を構成する複数のフレーム画像を順次生成する(ステップS102)。
【0050】
図5は、近赤外線により撮像され、ステップS102において生成されたフレーム画像の模式図である。図5に示すフレーム画像M1においては、予め設定されている糊の塗布幅W0に対し、糊が塗布された領域m11,m13,m15(濃いグレーの領域)と、糊が掠れて塗布されていない領域m12,m14(薄いグレーの領域)とが、異なるグレーのトーンで写っている。なお、図5に示すx方向は、塗布装置1における塗布対象物2の搬送方向(図2参照)に対応し、図5に示すy方向は、塗布対象物2の幅方向(同上)に対応している。
【0051】
続いて、二値化処理部165は、フレーム画像M1に対して二値化処理を施す(ステップS103)。図6は、図5に示すフレーム画像M1に二値化処理を施すことによって得られた二値画像の模式図である。図6に示すように、フレーム画像M1において糊が塗布されている領域m11,m13,m15は、二値画像M2において輝度値ゼロ(黒色)の領域m21,m23,m25として示され、糊が塗布されていない領域m12,m14は、二値画像M2において輝度値が最大(白色)の領域m22,m24として示されている。
【0052】
続いて、ブロブ解析部166は、二値画像M2に対してブロブ解析を実行する(ステップS104)。詳細には、ブロブ解析部166は、二値画像M2から、糊が塗布された領域に対応する輝度値ゼロの領域m21,m23,m25を検出し、検出された領域(以下、塗布検出領域ともいう)m21,m23,m25の幅方向(y方向)における長さ(以下、塗布検出幅ともいう)を計測し、これらの塗布検出幅のトータルの値を算出する。
【0053】
図7は、塗布検出幅の計測方法を説明するための模式図である。ブロブ解析部166は、二値画像M2のx方向における所定の位置(例えば中央の位置)での塗布検出領域を抽出し、各塗布検出領域の両端の長さを計測する。例えば、塗布検出領域m21については、図6に示す破線で囲まれた領域内の塗布検出幅w1(図7参照)が計測される。
【0054】
続いて、判定部167は、ブロブ解析により計測された塗布検出幅に基づいて、塗布対象物2における糊の塗布状態を判定する(ステップS105)。図8は、塗布状態の判定方法を説明するための模式図である。詳細には、判定部167は、計測された塗布検出幅の合計値を算出し、さらに、予め設定されている糊の塗布幅に対する塗布検出幅の合計値の比率を算出する。例えば、図8に示す二値画像M2の場合、塗布検出領域m21,m23,25の各々の塗布検出幅w1,w2,w3の合計値の塗布幅W0に対する比率v=(w1+w2+w3)/W0×100が算出される。
【0055】
そして、判定部167は、算出した比率vを、閾値記憶部153から読み出した閾値と比較し、比率vが閾値を超える場合に、塗布状態は良好であると判定し、比率vが閾値以下である場合に、塗布状態は不良であると判定する。ここで、判定部167は、塗布条件に応じた閾値(例えば、80%など)を閾値記憶部153から予め読み出しておく。
【0056】
判定部167が塗布状態は良好であると判定した場合(ステップS106:Yes)、処理はステップS109に移行する。他方、判定部167が塗布状態は不良であると判定した場合(ステップS106:No)、演算装置13はエラー信号を出力する(ステップS107)。これに応じて、塗布装置1の制御装置は、演算装置13からエラー信号を受信し、搬送部3を停止させて塗布処理を一時中止したり、塗布対象物2において不良のあった部分を特定して除去したりするといった対応を取ることができる。また、演算装置13においては、塗布状態が不良である旨を表示装置に表示しても良いし、警告音を発するようにしても良い。
【0057】
続いて、画像処理部163は、塗布状態が不良と判定されたフレーム画像の画像データを、画像データ記憶部152に記憶させる(ステップS108)。このように画像データを保存しておくことにより、不良と判定された塗布状態を後で調査分析することが可能となる。
【0058】
演算装置13は、塗布装置1における塗布処理が終了したか否かを判定する。塗布処理が終了していない場合(ステップS109:No)、処理はステップS101に戻る。他方、塗布処理が終了した場合(ステップS109:Yes)、検査ユニット5の動作は終了する。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、近赤外線を出射する光源11、近赤外線に対する感度を有するカメラ12、及び演算装置13という簡素な構成で検査ユニット5を構成することができる。また、塗布対象物2の照明光として800nm~950nmの波長域を含む近赤外線を用いることにより、CMOSイメージセンサを備えるカメラ12を使用できるようになるので、検査ユニット5のコストを低減することが可能となる。
【0060】
また、本実施形態によれば、カメラ12で塗布対象物2における糊の塗布領域2a(図2参照)を撮像することにより得られたフレーム画像に基づいて塗布状態を判定するので、刷毛やスポンジやローラ等の塗布手段を用いて所定の幅で糊を塗布する場合であっても、糊の塗布幅全体における塗布状態を判定することが可能となる。
【0061】
また、本実施形態によれば、CMOSイメージセンサを備えるカメラ12を用いることにより、高フレームレートでの撮像が可能となる。そのため、塗布対象物2の搬送速度が速い場合であっても、ブレの少ないフレーム画像を生成することができる。従って、そのようなフレーム画像に基づいて、塗布状態を精度良く且つ連続的に判定することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態によれば、塗布対象物2の照明光として近赤外線を用いるので、塗布対象物と糊が同色の場合であっても、糊が塗布された領域を明瞭に判別可能なモノクロのフレーム画像を生成することができる。そのため、そのようなフレーム画像に対して二値化処理及びブロブ解析を施すことにより、糊が塗布された領域を精度良く検出することができる。言い換えると、本実施形態によれば、このような画像処理を用いることにより、近赤外線の波長域(800nm~950nm程度)に対する感度がそれほど高くない(例えば30%~40%)カメラ12を用いた場合であっても、フレーム画像から糊が塗布された領域を精度良く検出することができる。従って、本実施形態によれば、高速に且つ精度良く、糊の塗布状態を判定することが可能となる。
【0063】
(変形例)
上記実施形態においては、1つの閾値に基づいて、塗布状態の良・不良を判定することとしたが、2つ以上の閾値を用いて、塗布状態をさらに細かく判定することとしても良い。例えば、第1の閾値t1(例えば50%)と、第1の閾値t2よりも大きい第2の閾値t2(例えば60%)とを予め設定しておき、予め設定されている糊の塗布幅に対する塗布検出幅の合計値の比率vが閾値t2以下になった場合に、塗布状態の不良を予告するように、演算装置13に動作させる。この場合、塗布状態が完全な不良状態(比率が閾値t1以下)になる前に、糊の補充や塗布ローラの交換といった対策を取ることができるので、塗布対象物2の歩留まり低下を抑制することが可能となる。塗布状態の不良の予告は、表示装置に表示するようにしても良いし、予告用の警告音を発するようにしても良い。
【0064】
本発明は、以上説明した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。例えば、実施形態及び変形例に示した全構成要素からいくつかの構成要素を除外して形成しても良いし、上記実施形態及び変形例に示した構成要素を適宜組み合わせて形成しても良い。
【符号の説明】
【0065】
1…塗布装置、2…塗布対象物、2a…塗布領域、3…搬送部、4…塗布部、5…検査ユニット、11…光源、11a…近赤外線、12…カメラ、12a…視野、13…演算装置、14…外部インタフェース、15…記憶部、16…プロセッサ、31…搬送ベルト、32…回転ドラム、151…プログラム記憶部、152…画像データ記憶部、153…閾値記憶部、161…光源制御部、162…撮像制御部、163…画像処理部、164…画像生成部、165…二値化処理部、166…ブロブ解析部、167…判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8