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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】シンプルクーラー
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20240904BHJP
【FI】
F24F5/00 102K
F24F5/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024060294
(22)【出願日】2024-04-03
【審査請求日】2024-04-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502193565
【氏名又は名称】小畑 隆治
(74)【代理人】
【識別番号】100121371
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 和人
(72)【発明者】
【氏名】小畑 隆治
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-174171(JP,A)
【文献】特表2011-521137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平に設置される回転軸を中心に、回転自在に配設された回転体と、
前記回転体に、前記回転軸に対して回転対称な位置に2つ以上配設され、氷及び水を収容可能に構成された氷嚢容器と、
前記氷嚢容器に開口形成され、回転体の周方向乃至半径方向外向きの間の何れかの向きに、回転軸に対し相対的に全て同向きとなるように開口する排水口と、
を備えたことを特徴とするシンプルクーラー。
【請求項2】
前記回転体は、前記回転体の回転軸の両端に連結された、該回転軸を中心とする円環状の円環状フレームを備え、
前記各氷嚢容器は、一端側に前記排水口を有する有底筒状容器であり、前記円環状フレームの内側に、筒の中心軸が前記円環状フレームの円周方向に向くように配置され、
すべての前記氷嚢容器は、前記回転体の回転軸に対して回転対称に配置されたことを特徴とする、請求項1記載のシンプルクーラー。
【請求項3】
前記回転体は、前記回転体の回転軸の両端に連結された、該回転軸を中心とする円環状の円環状フレームを備え、
前記各氷嚢容器は、側面に前記排水口を有する有底筒状容器であり、前記円環状フレームの内側に、筒の中心軸が前記回転体の回転軸と平行な方向に向くように配置され、
すべての前記氷嚢容器は、前記排水口の向きが前記回転体の半径方向外向き乃至前記回転体の周方向の間の向きとなり、且つ前記回転体の回転軸に対して回転対称に配置されたことを特徴とする、請求項1記載のシンプルクーラー。
【請求項4】
前記回転体は、前記回転体の回転軸の両端に連結された、該回転軸を中心とする円環状の円環状フレームを備え、
前記各氷嚢容器は、一端側に前記排水口を有する有底筒状容器であり、前記円環状フレームの内側に、筒の中心軸が前記回転体の半径方向で且つ前記排水口が前記回転体の中心から外向きの方向を向くように配置され、
すべての前記氷嚢容器は、前記回転体の回転軸に対して回転対称に配置されたことを特徴とする、請求項1記載のシンプルクーラー。
【請求項5】
前記回転体は、該回転体の回転軸を中心として回転するブレードを備えたことを特徴とする、請求項1記載のシンプルクーラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷の融解とその水の排出によって起こる上下バランスの逆転現象を利用して回転トルクを生み出し、自然と生じる冷風によって、周辺空間の冷房を行うシンプルクーラーに関する。
【背景技術】
【0002】
他で多く見られる氷の潜熱を利用して周辺空間の冷房を行う技術としては、特許文献1~10に記載の技術が公知である。
【0003】
特許文献1~7に記載の冷房技術は、いずれも、製氷装置で製氷して得られた氷群の潜熱により、冷水貯水槽内に貯溜された水(又はブライン)を冷却するとともに、この冷水貯水槽内の冷却された水(又はブライン)を、ポンプによって熱交換器に循環させることで冷房を行うというものである。
【0004】
特許文献8に記載の冷房技術は、断熱室内に水を貯めた水槽を設け、冬季に気温が氷点下となったときに断熱室内に外気を導入して水槽内の水を凍結させて製氷し、水槽内で製氷した氷を冷房期まで断熱保存し、冷房期には水槽内の氷上に散水部から熱源水をポンプを用いて散水して融解させるとともに、ポンプによって取水部から取水して熱源水循環系統を循環させて空調用熱交換部により空調用冷熱源として利用するというものである。
【0005】
特許文献9に記載の冷房技術は、外気を取り入れて除湿冷却処理を行い外部に除湿された冷却空気を排出する冷風機に関するものである。この冷風機は、除湿冷却処理を行う除湿冷却処理室、除湿冷却処理室内に配置され-4~-21℃の範囲の冷媒を収納する冷媒収納容器、冷媒収納容器の下部に配設され結露した水滴を回収する水滴回収手段、除湿冷却処理室の下部に設けられた外気を取り入れる外気取入口、除湿冷却処理室の上部に設けられた排出口、除湿冷却処理室内に取り入れられ冷却・除湿処理された空気を排出口から外部に排出する送風ファンを備えている(仝文献図1図5参照)。また、冷媒収納容器には、アルミ製やペットボトル製の容器が使用され、冷媒収納容器に入れる冷媒には、塩分濃度を3%以上加えた塩水の氷が使用されている。
【0006】
特許文献10に記載の冷房技術は、深夜電力を利用して個別冷房を行うパーソナル氷蓄熱冷房システムに関するものである。この氷蓄熱冷房システムは、断熱箱(19)の内部に氷蓄熱箱(3)を設け、該氷蓄熱箱と熱交換する空気を吸排気する開口及び送風ファン(31)を断熱箱に設けてパーソナル氷蓄熱冷房ユニット(5)とし、該パーソナル氷蓄熱冷房ユニットを室内の各個人ブースに配置し、室外に設けた一つの吸熱機(9)を氷蓄熱箱に配管接続したものである(仝文献図1図2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平03-075428号公報
【文献】特開昭50-038348号公報
【文献】特開昭57-210228号公報
【文献】実開昭47-030949号公報
【文献】実開昭57-201434号公報
【文献】実開昭57-201436号公報
【文献】特開2005-300043号公報
【文献】特開2002-228207号公報
【文献】特開2023-061856号公報
【文献】特開平06-257799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1~7に記載の冷房技術では、何れも、冷水貯水槽内の水を製氷機の氷群の潜熱で冷却する機構と、冷水貯水槽内の冷却された水(又はブライン)を、ポンプによって熱交換器に循環させる機構が必要とされ、設備が大掛りとなるために一般の家庭やその他の場所(例えば、遊園地、店舗前等など。)で手軽に導入することが困難である。
【0009】
また、特許文献8に記載の冷房技術も、断熱貯水槽、ポンプ、熱源水循環系統、空調用熱交換部などの大掛りな設備が必要とされて手軽な導入は困難であると共に、冬季に水槽内の水を外気で氷結させる必要があり、寒冷地以外で適用することは困難である。
【0010】
また、上記従来の冷房技術は、何れも、空調を行う際にはポンプを駆動する必要があるため、駆動電力を必要とし、省エネルギー性に欠けるという問題がある。
【0011】
また、特許文献9,10の冷房技術においても、除湿冷却処理室や断熱箱内の氷によって冷却された空気を、電気駆動式の送風ファンを用いて冷房対象空間へと送風を行っており、やはり冷房時には駆動電力を必要とし、省エネルギー性に欠けるという問題がある。
【0012】
そこで、本発明の目的は、作動に於いて電力等の外部エネルギーを必要とせず、メンテナンスが簡単で、一般の家庭やその他の場所(例えば、遊園地、店舗前等など。)でも手軽に導入することが可能であり、長時間に亘って効率的な周辺空気の冷房効果を維持することが可能なシンプルクーラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るシンプルクーラーの第1の構成は、水平に設置される回転軸を中心に、回転自在に配設された回転体と、
前記回転体に、前記回転軸に対して回転対称な位置に2つ以上配設され、氷及び水を収容可能に構成された氷嚢容器と、
前記氷嚢容器に開口形成され、回転体の周方向乃至半径方向外向きの間の何れかの向きに、回転軸に対し相対的に全て同向きとなるように開口する排水口と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、氷嚢容器内の氷が融解することにより生じる回転体の回転によって、融解により氷嚢容器内に生じた溶融水は、逐次、氷嚢容器の外へと排水される。従って、空気より比熱が大きく(空気の比熱の約4倍)、熱伝導率も大きい(空気の約14倍)溶融水が、未溶融の氷から分離される。これにより、氷の溶融潜熱はもっぱら周囲の空気の冷却に使用され、効率的な周辺空気の冷却を達成できるとともに、水(溶融水)と空気の熱伝導率の違いにより、氷嚢容器内から溶融水を抜かない場合よりも氷は溶け難くなり、長時間に亘って冷房効果を維持することができる。


【0016】
また、上記従来の氷の潜熱を利用した冷房技術と異なり、この装置の作動には、電力などの外部エネルギーを必要としないので、省エネルギーに寄与する。さらに、構造が簡単なため、メンテナンスが簡単であり、また一般の家庭やその他の場所で手軽に導入することが可能である。
【0017】
本発明に係るシンプルクーラーの第2の構成は、前記第1の構成に於いて、前記回転体は、前記回転体の回転軸の両端に連結された、該回転軸を中心とする円環状の円環状フレームを備え、
前記各氷嚢容器は、一端側に前記排水口を有する有底筒状容器であり、前記円環状フレームの内側に、筒の中心軸が前記円環状フレームの円周方向に向くように配置され、
すべての前記氷嚢容器は、前記回転体の回転軸に対して回転対称に配置されたことを特徴とする。
【0018】
本発明に係るシンプルクーラーの第3の構成は、前記第1の構成に於いて、前記回転体は、前記回転体の回転軸の両端に連結された、該回転軸を中心とする円環状の円環状フレームを備え、
前記各氷嚢容器は、側面に前記排水口を有する有底筒状容器であり、前記円環状フレームの内側に、筒の中心軸が前記回転体の回転軸と平行な方向に向くように配置され、
すべての前記氷嚢容器は、前記排水口の向きが前記回転体の半径方向外向き乃至前記回転体の周方向の間の向きとなり、且つ前記回転体の回転軸に対して回転対称に配置されたことを特徴とする。
【0019】
本発明に係るシンプルクーラーの第4の構成は、前記第1の構成に於いて、前記回転体は、前記回転体の回転軸の両端に連結された、該回転軸を中心とする円環状の円環状フレームを備え、
前記各氷嚢容器は、一端側に前記排水口を有する有底筒状容器であり、前記円環状フレームの内側に、筒の中心軸が前記回転体の半径方向で且つ前記排水口が前記回転体の中心から外向きの方向を向くように配置され、
すべての前記氷嚢容器は、前記回転体の回転軸に対して回転対称に配置されたことを特徴とする。
【0020】
本発明に係るシンプルクーラーの第5の構成は、前記第1の構成に於いて、前記回転体は、該回転体の回転軸を中心として回転するブレードを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、作動に於いて電力等の外部エネルギーを必要とせず、メンテナンスが簡単で、一般の家庭やその他の場所(例えば、遊園地、店舗前等など。)でも手軽に導入することが可能であり、長時間に亘って効率的な周辺空気の冷房効果を維持することが可能なシンプルクーラーを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例1に係るシンプルクーラーの全体斜視図である。
図2図1の(a)回転体アセンブリの斜視図,(b)氷嚢容器,及び(c)水受皿の各部品の斜視図である。
図3図1の回転体アセンブリの(a)正面図及び(b)右側面図である。
図4】実施例1のシンプルクーラー1の冷房動作を説明する図である。
図5】本発明の実施例2に係るシンプルクーラーの全体斜視図である。
図6】本発明の実施例3に係るシンプルクーラーの全体斜視図である。
図7】本発明の実施例3に係るシンプルクーラーの全体斜視図である。
図8】(a)氷嚢容器4を外した状態に於ける図7のシンプルクーラーの斜視図、(b)図7のシンプルクーラーの正面図、(c)図7のシンプルクーラーの右側面図である。
図9】本発明の実施例5に係る(a)シンプルクーラーの全体斜視図及び(b)回転体アセンブリ(回転体2及び支持台5の組立体)の全体斜視図である。
図10図9のシンプルクーラーの回転体アセンブリの(a)正面図及び(b)右側面図である。
図11】本発明の実施例6に係るシンプルクーラーの全体斜視図である。
図12図11のシンプルクーラーの(a)正面図、(b)右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の実施例1に係るシンプルクーラーの全体斜視図である。図2は、図1の(a)回転体アセンブリの斜視図,(b)氷嚢容器,及び(c)水受皿の各部品の斜視図である。図3は、図1の回転体アセンブリの(a)正面図及び(b)右側面図である。
【0025】
本実施例1のシンプルクーラー1は、大きく分けて、回転体アセンブリ(回転体2及び支持台5の組立体)、氷嚢容器4、及び水受皿6の3種の部品に分けられる。ここで、回転体アセンブリは、回転体2及び支持台5の2つのパーツで構成されている。
【0026】
氷嚢容器4は、冷房用の氷を収容するための、伝熱材により構成された瓶状の容器であり、一端に排水口(瓶口)が開口形成されている。伝熱材は、熱をある程度よく伝導する素材(外気の熱を内部に伝達可能な素材)であればよく、金属、樹脂、ガラスなどを問わない。また、氷嚢容器4としては、特に、水を満水にして冷凍庫内で氷結させた際に、氷の膨張によっても破裂しない容器(ステンレス缶やペットボトル等)が使用される。尚、4つの氷嚢容器4は、其々、同型である。
【0027】
水受皿6は、氷嚢容器4内に収容される氷が融解する際に生じる溶融水や、氷嚢容器4の表面に結露する結露水を受けて一時的に溜めておく深皿状(盥状)の容器である。
【0028】
回転体2は、鋼材,アルミ材,硬質樹脂等の剛性部材により形成された枠体(フレーム)であり、中心軸2a、8本の放射状フレーム2b、2つの環状フレーム2c、及び4つの連結フレーム2dにより構成されている。中心軸2aは、回転体2の枠体が規定する仮想ドーナツ円盤(枠体の枠間を仮想面で補間して成る仮想ドーナツ円盤)の中心軸に沿って配設された筒状部材である。放射状フレーム2bは、中心軸2aの両端に接続し、中心軸2aを中心として4回対称な方向に放射状に配設された棒状部材である。環状フレーム2cは、仮想ドーナツ円盤の下底及び上底の円周部に当たる部位にそれぞれ配設された一対の円環状部材である。其々の環状フレーム2cは、4本の放射状フレーム2bの外端側に連結されており、これらの放射状フレーム2bによって中心軸2aと連結されている。また、中心軸2aの両端は、前後2つの環状フレーム2cにより規定される仮想ドーナツ円盤の下底面及び上底面の中心よりも外側(前方及び後方)に突き出している。この前方及び後方に突き出した中心軸2aの両端に、円環状の軸受3,3が緩装されている。これら軸受3には、玉軸受やころ軸受を用いることが出来る。連結フレーム2dは、2つの環状フレーム2c,2cを連結する棒状部材である。4本の連結フレーム2dは、其々、両端部が、環状フレーム2cと各放射状フレーム2bとの連結部分に連結されている。
【0029】
前後2つの環状フレーム2cの間には、中心軸2aに対して回転対称な位置に、4つの保持部7が配設されている。保持部7は、氷嚢容器4を回転体2の環状フレーム2cに着脱自在に保持するための取り付け部材である。各保持部7は、環状フレーム2cと放射状フレーム2bの4つの連結部のうち、隣り合う2つの連結部の中間位置に、其々、配設されている。各保持部7は、一対のU字型金具等によって構成されており、クリップや溶接等によって前後の環状フレーム2c,2cに挾持固定されている。氷嚢容器4は、側面を2つのU字型金具等の谷内で挟み込むことによって保持される。また、回転体2の回転時に氷嚢容器4がU字型金具等の谷内から抜け落ちるのを防止するために、谷内で挟み込まれた氷嚢容器4の側面中央部を、環状フレーム2cの外側から押さえて固定するための押え部材8が着脱自在に設けられている。
【0030】
図1の右側枠内の部分分解図に示したように、押え部材8は、凵字状部材の両端に折り返してクリップ8a,8aが設けられ、これらのクリップ8a,8aで環状フレーム2cを挟み込むことにより、氷嚢容器4を外側から押さえ込んで保持部7の凹溝内に保持する。各氷嚢容器4が保持部7の凹溝内に保持された状態では、図1(又は図4)に示すように、各氷嚢容器4は、全体が回転体2の環状フレーム2cよりも円周外側に飛び出さない位置に固定される。また、この保持された状態に於いては、氷嚢容器4の中心軸は、氷嚢容器4の中心点を通る環状フレーム2cと同心の円の接線方向と略同方向となり、従って、氷嚢容器4の排水口4aの向きは、回転体の接線方向よりも外向きとなる。また、図1に示すように、すべての氷嚢容器4は、排水口4aの向きが、中心軸2a(回転軸)に対し相対的に全て同向き、即ち、回転体の周方向に全て同回り向き(図1の例では、正面から視て左回り向き。)となるように取り付けられる。
【0031】
支持台5は、回転体2を、中心軸2aを水平にした状態で回転自在に軸支する脚台である。支持台5は、1つのベース5a、4つの脚杆5b、及び2つの軸承部5cを備えている。ベース5aは、円板状の支持板である。図1では円板状としているが、この形状は、回転体2及び各氷嚢容器4を取り付けた際に転倒しなければ、どのような形状でもよい。
脚杆5bは、ベース5aの上面の前側2箇所及び後側2箇所から、左右一対として、ベース5aの中心に向かって上向きに傾斜した状態に立設された棒状部材である。前側及び後側に配設された左右一対の脚杆5bの先端には、其々、軸承部5cが同じ高さとなるように連結されている。軸承部5cは、軸受3の周囲を固定するための円環状の部材であり、前後の軸承部5cの円環の中心軸は同軸で水平(ベース5aの上下面と平行)となるように配設されている。
【0032】
支持台5のベース5aを水平な面上に載置した状態に於いて、2つの軸受3,3は、この軸承部5cの円管内に、中心軸が水平となるように固定され、この軸受3,3によって、回転体2は、水平な中心軸2aを中心として回転自在に設置される。
【0033】
尚、本実施例では、回転体2に4つの同型の氷嚢容器4を着脱可能に配設した例を示しているが、本発明では、回転体2に取り付ける同型の氷嚢容器4の数は2つ以上であれば何個であってもよい。その場合、回転体2の放射状フレーム2bの数と保持部7の数とは、取り付けられる氷嚢容器4の数と同数となり、各放射状フレーム2b及び各保持部7の位置は、中心軸2aに対して回転対称な位置とされる。
【0034】
また、回転体2、支持台5、水受皿6の素材は特に限定されない。例えば、金属製でも、プラスチックでも、木製でも、竹製でもよく、強度さえ満たせば何でも良い。
【0035】
また、本実施例に於いて、回転体2は、対をなすリング状の枠体としているが、これ以外にも、保持部7で保持された氷嚢容器4を回転可能な形状であれば、球状の枠体とすることもできる。
【0036】
以上のように構成された本実施例のシンプルクーラー1について、以下、その動作を説明する。
【0037】
まず準備として、各氷嚢容器4に、其々、同量の水を入れて、冷凍庫に入れて内部の水を氷結させる。この際、氷嚢容器4に満杯に水を入れると、氷結時の水の体積膨張(約9%増加)によって氷嚢容器4が破裂するため、氷嚢容器4に入れる水の量は、通常は満水量の9割以下とされる。
【0038】
次に、冷房を行う空間内に、図1に示したように、シンプルクーラー1を設置する。このとき、回転体2にセットする各氷嚢容器4は、先に説明した内部の水を氷結させた氷嚢容器4を使用する。この状態でシンプルクーラー1を空間内に設置すれば、後は、氷の融解に伴って、図4に示すように、自然に回転し、氷の融解潜熱による冷房動作を行う。
【0039】
本発明の冷風を起こす仕組みは、回転体に取り付けられた氷が溶ければ、必然、上下のバランスが崩れ、回転軸を中心にしたトルク差が生じ、ブレード等により、自然と冷気を帯びた風が生じるものと考えられる。
【0040】
また、図1に示す如く、背景技術で説明した従来の氷潜熱を利用する冷房装置と比べて極めて簡単な構造であるため、メンテナンスが簡単で、一般の家庭やその他の場所でも手軽に導入することが可能である。
【実施例2】
【0041】
図5は、本発明の実施例2に係るシンプルクーラーの全体斜視図である。図5に於いて、実施例1の図1と同様の部分については同符号を付している。回転体2及び氷嚢容器4は、実施例1と同じであるが、本実施例に於いては、支持台5及び水受皿6の代わりに、スロープ支持台9を備えた点が異なる。
【0042】
スロープ支持台9は、内部が空洞の(正面から視て)左右に長い函体であり、前後方向の幅は、回転体2の前後の環状フレーム2cよりも大きい幅に形成されている。スロープ支持台9の上面には、中央部が最も低く傾斜が緩やかな弧状曲面である傾斜面9aが形成されている。傾斜面9aは、前後方向にも緩やかな弧状曲面を成しており、長尺方向の中央線に沿った各点が、前後方向の弧状曲面の最低地点となっている。傾斜面9aの中央には、スロープ支持台9の函内空間まで貫通する排水孔9bが形成されている。また、傾斜面9aの左右端付近の中央には、回転体2の左右方向の転がり範囲を規制するストッパ9cが突設されている。ストッパ9cには、ゴムやバネ等の弾性体が用いられる。傾斜面9aの前後端には、回転体2が傾斜面9aから転がり落ちるのを防止するためのガイド柵体9d,9dが立設されている。ガイド柵体9dは、左右水平に設けられた頭貫(かしらぬき)9d-1と、頭貫9d-1と傾斜面9aの間に一定の間隔で複数本渡設された柵柱9d-2により構成されており、頭貫9d-1の左右両端は傾斜面9aの左右端部に連結されている。また、スロープ支持台9の函内底部には、排水孔9bを通って函内に流入する水を受けて一時的に溜める水受皿9eが設けられている。スロープ支持台9の前面下部には、水受皿9eの前側面と略同サイズの開口部が形成されており、水受皿9eはこの開口部から出し入れ可能とされている。
【0043】
本実施例によれば、回転体2に取り付けられた各氷嚢容器4内の氷の溶解に伴い回転体2がスロープ支持台9の傾斜面9a上を転がり、ストッパ9cに当たると転がり向きを反転するという運動を繰り返す。この際、各氷嚢容器4内の氷が溶解して生じる溶解水は、回転体2の回転に伴い傾斜面9a上に流れ落ちるが、傾斜に沿って傾斜面9aの中央の排水孔9bへと流れ、排水孔9bを通って水受皿9e内へと流れる。
【実施例3】
【0044】
図6は、本発明の実施例3に係るシンプルクーラーの全体斜視図である。図6に於いて、実施例1の図1と同様の部分については同符号を付している。実施例1と比較すると、本実施例のシンプルクーラー1は、新たに、4枚の同型のブレード10を備えた点が相違する。
【0045】
各ブレード10は、台形平板状に構成されている。其々のブレード10は、回転体2の8本の放射状フレーム2bのうち、前後に向かい合った放射状フレーム2b,2bの間に架け渡すように設けられており、台形の上底辺(幅の狭い辺)が内側、下底辺(幅の広い辺)が外側となるように設けられている。また、各ブレード10の幅は、回転体2の回転時に支持台5の脚杆5bと干渉しない程度の幅とされている。
【0046】
尚、各ブレード10の素材は、特に限定されない。例えば、金属製でも、プラスチックでも、木製でも、ゴム製でも、帆布でもよく何でもよい。
【0047】
このように、回転体2にブレード10を設けることにより、回転体2の回転時に、回転体2の周辺の空気が拡散され、冷気が拡散し易くなるため、冷房効果をより高めることが出来る。
【0048】
尚、本実施例に於いて、支持台5及び水受皿6の代わりに、実施例2で説明したスロープ支持台9を用いることもできる。
【実施例4】
【0049】
図7は、本発明の実施例4に係るシンプルクーラーの全体斜視図である。図8は、(a)氷嚢容器4を外した状態に於ける図7のシンプルクーラーの斜視図、(b)図7のシンプルクーラーの正面図、(c)図7のシンプルクーラーの右側面図である。図7図8に於いて、実施例1の図1と対応する部分については同符号を付している。尚、図7及び図8に於いては、水受皿6は図示されていないが、実際の使用時には、実施例1と同様に、支持台5の下に水受皿6を設置して使用される。
【0050】
実施例1と比較すると、本実施例のシンプルクーラー1は、主に、円筒状の氷嚢容器4の円筒中心軸の方向が回転体2の中心軸2aと平行に配置されている点、氷嚢容器4の数を8個として、回転体2の周に沿って対称に配置した点、氷嚢容器4の排水口4aの位置を氷嚢容器4の円筒側面中央として、排水口4aが回転体2の外向きとなるように氷嚢容器4が回転体2に取り付けられている点、回転体2の環状フレームを、外側に位置する外環状フレーム2eと内側に位置する幅広の内環状フレーム2fとの二重構造とし、前後の内環状フレーム2fの内側側面に外開きの円弧面状の保持部7,7を取り付けた点、が相違している。尚、図7図8では、回転体2の環状フレームを、外環状フレーム2eと内環状フレーム2fの二重構造とした例を示しているが、内環状フレーム2fについては省略してもよい。その場合、各保持部7は実施例1のようなU字型として、外環状フレーム2eに直接連結するようにすればよい。
【0051】
各氷嚢容器4を回転体2の保持部7に取り付ける際には、基本的には、中心軸2aから半径方向外向き乃至回転体2の周方向の間の向きを向くように取り付けられ、すべての氷嚢容器4が、回転体2の中心軸2a(回転軸)に対して回転対称となるように取り付けられる。特に、回転の安定性を良好とするためには、各氷嚢容器4を回転体2の保持部7に取り付ける際に、中心軸2aから外向きの方向よりも、反回転方向にやや傾けた向きに取り付けることが好ましい(図8(b)参照)。このような構成としても、実施例1で説明したものと同様の動作によって、高効率な冷房効果を得ることが出来る。
【0052】
尚、本実施例に於いて、支持台5及び水受皿6の代わりに、実施例2で説明したスロープ支持台9を用いることもできる。
【実施例5】
【0053】
図9は、本発明の実施例5に係る(a)シンプルクーラーの全体斜視図及び(b)回転体アセンブリ(回転体2及び支持台5の組立体)の全体斜視図である。図10は、図9のシンプルクーラーの回転体アセンブリの(a)正面図及び(b)右側面図である。図9図10に於いて、実施例4の図7図8と同様の部分については同符号を付している。尚、図9及び図10に於いては、水受皿6は図示されていないが、実際の使用時には、実施例1と同様に、支持台5の下に水受皿6を設置して使用される。
【0054】
実施例4と比較すると、本実施例のシンプルクーラー1は、新たに、4枚の同型のブレード10を備えた点が相違する。各ブレード10は、素材の硬軟を問わず(金属、ゴム、帆布等が使用できる)、螺線板状に構成されている。なお、図9では螺線板状の例を示したが、平板状とすることもできる。其々のブレード10は、前後の回転体2の放射状フレーム2bの間を架け渡すように連設されている。前後の回転体2に、其々、4本ずつ設けられた放射状フレーム2bを区別するため、前側の回転体2の放射状フレーム2bを、其々、正面視で左回りに放射状フレームF1,F2,F3,F4と附号し、後側の回転体2の放射状フレーム2bを、其々、正面視で左回りに放射状フレームB1,B2,B3,B4と附号する。また、放射状フレームFi(i=1,2,3,4)と放射状フレームBiとが、其々、対向する位置(正面視で同じ位置)にあるように附号する(図9(b),図10(a)参照)。然らば、4つのブレード10は、其々、放射状フレームF1,B4の間、放射状フレームF2,B1の間、放射状フレームF3,B2の間、放射状フレームF4,B3の間に、正面視で右向きに捻回するように架設されている。
【0055】
尚、各ブレード10の素材は、特に限定されない。例えば、金属製でも、プラスチックでも、木製でも、ゴム製でも、帆布でもよく何でもよい。
【0056】
また、8つの氷嚢容器4は、実施例4と同様、回転体2の中心軸2aから外向きの方向(半径方向外向き)に取り付けられている(図8(b)参照)。これにより、氷嚢容器4内部の氷の溶解に伴って、回転体2は、正面視で右回りであろうと、左回りであろうと回転する。
【0057】
本実施例では、上述のように、回転体2に螺旋状のブレード10を設けることにより、回転体2の回転時(正面視で右回りの回転時)に、回転体2の周辺の空気が正面方向に流動されて、冷気が四方八方に拡散し易くなるため、周囲の冷房効果をより高めることが出来る。
【0058】
尚、本実施例に於いて、支持台5及び水受皿6の代わりに、実施例2で説明したスロープ支持台9を用いることもできる。
【実施例6】
【0059】
図11は、本発明の実施例6に係るシンプルクーラーの全体斜視図である。図12は、図11のシンプルクーラーの(a)正面図、(b)右側面図である。図11図12に於いて、実施例1の図1と同様の部分については同符号を付している。尚、図11及び図12に於いては、水受皿6は図示されていないが、実際の使用時には、実施例1と同様に、支持台5の下に水受皿6を設置して使用される。
【0060】
実施例1と比較すると、本実施例のシンプルクーラー1は、主に、4つの氷嚢容器4を、其々、排水口4aが回転体2の半径方向外向きに開口するように、着脱可能に設けた点が異なっている。尚、各氷嚢容器4は、実施例1と同様、伝熱材により構成された瓶状の容器とされている。
【0061】
各氷嚢容器4は、前後の回転体2の対向する2本の放射状フレーム2bの間に架設されたU字型金具等の保持部7,7によって回転体2に保持されている。また、回転体2の回転時に氷嚢容器4が脱落するのを防止するため、保持部7,7によって回転体2に保持された氷嚢容器4の排水口4a付近の側面を、押え部材8により押さえる構造とされている。図11の右側枠内の部分分解図に示したように、押え部材8は、凵字状の板状部材の両端にクリップ等で固定保持する。各氷嚢容器4が保持部7の凹溝内に保持された状態では、図12(a)に示すように、各氷嚢容器4は、全体が回転体2の環状フレーム2cよりも円周外側に飛び出さない位置に固定される。また、この保持された状態に於いては、氷嚢容器4の中心軸は、氷嚢容器4の中心から外側に向かう半径方向と略平行な方向となり、従って、氷嚢容器4の排水口4aの向きは、回転体の半径方向外向きとなる。
【0062】
このような構成としても、実施例1で説明した動作と同様に、回転体2に取り付けられた各氷嚢容器4内の氷の溶解に伴い回転体2が回転し、長時間持続して高効率な冷房効果を得ることができる。
【0063】
尚、本実施例に於いて、支持台5及び水受皿6の代わりに、実施例2で説明したスロープ支持台9を用いることもできる。
【符号の説明】
【0064】
1 シンプルクーラー
2 回転体
2a 中心軸
2b 放射状フレーム
2c 環状フレーム
2d 連結フレーム
2e 外環状フレーム
2f 内環状フレーム
3 軸受
4 氷嚢容器
4a 排水口
5 支持台
5a ベース
5b 脚杆
5c 軸承部
6 水受皿
7 保持部
8 押え部材
8a クリップ
9 スロープ支持台
9a 傾斜面
9b 排水孔
9c ストッパ
9d ガイド柵体
9e 水受皿
10 ブレード
【要約】
【課題】外部エネルギーを必要とせず、メンテナンスが簡単で、長時間に亘り効率的な冷房効果を維持できるシンプルクーラーの提供。
【解決手段】水平の回転軸(2a)を中心に回転自在な回転体(2)と、回転体に、中心軸に対して回転対称な位置に2つ以上配設された氷及び水を収容可能な氷嚢容器(4)と、氷嚢容器に開口形成され、回転体の周方向に全て同向きに開口又は半径方向外向きに開口する排水口(4a)とを備えたシンプルクーラー。氷嚢容器内の氷潜熱により容器周囲が空気され、排水口が下向きに位置する氷嚢容器からは、排水口から水が排水され氷嚢容器の質量が減少し、未排水の氷嚢容器に比べて軽量となり、排水済氷嚢容器が上方へ、未排水氷嚢容器が下方へ移動するよう回転体が回転するという動作を連鎖的に繰返し、この回転により気流が生じ氷嚢容器の周囲の冷気が周辺へ拡散され、冷房効果が生じる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12