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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】極低温デバイス用の熱平衡化構造体
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/81 20230101AFI20240904BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
H10N60/81
H01L23/36 D
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021567778
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-29
(86)【国際出願番号】 EP2020063358
(87)【国際公開番号】W WO2020254040
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】16/447,017
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】レワンドウスキ、エリック、ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ウェブ、バックネル
(72)【発明者】
【氏名】ハーツバーグ、ジャレッド、バーニー
(72)【発明者】
【氏名】サンドバーグ、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ジンカ、オブレシュ
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-073846(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0186667(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0159799(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0005944(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/81
H01L 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱平衡化構造体であって、
第1の材料の第1の層を備える第1の箔と、
低温デバイス(LTD)であり、前記LTDの熱がそこから運び去られる表面を備える前記低温デバイス(LTD)と、
結合部と
を備え、前記結合部が、前記第1の箔と前記表面との間に形成された接合を含み、前記接合が、前記接合の形成が、ライン・タックが交差することにより、一組のリッジを前記第1の箔に形成するような態様で形成されたものであり、前記一組のリッジの中のリッジが前記熱を放散させるように機能する、
熱平衡化構造体。
【請求項2】
前記第1の箔が一組の層を備え、前記一組の層が、前記第1の層および第2の層を含む、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記第2の層が第2の材料を含み、前記第2の材料が、極低温範囲で使用されたときに、少なくとも、前記LTDの表面の第3の材料とのしきい接合能力レベルの接合能力を示す、請求項2に記載の構造体。
【請求項4】
前記第1の材料が、極低温範囲で使用されたときに、前記LTDの前記表面の前記第3の材料とのしきい接合能力レベルよりも低い接合能力を示す、請求項3に記載の構造体。
【請求項5】
前記第1の材料が、極低温範囲で使用されたときに、少なくとも、しきい熱伝導率レベルの熱伝導率を示す、請求項1に記載の構造体。
【請求項6】
前記第1の材料が、極低温範囲で使用されたときに、少なくとも、デバイスの表面の第3の材料とのしきい接合能力レベルの接合能力を示す、請求項1に記載の構造体。
【請求項7】
前記第1の箔内のパターンをさらに備え、前記パターンが、前記第1の箔上の3次元突出部を含む、
請求項1に記載の構造体。
【請求項8】
前記第1の箔内のパターンをさらに備え、前記パターンが、前記第1の箔内の3次元凹部を含む、
請求項1に記載の構造体。
【請求項9】
第2の箔をさらに備え、前記第1の箔と前記第2の箔がともに前記LTDに結合されている、
請求項1に記載の構造体。
【請求項10】
第2のLTDをさらに備え、前記第1の箔が、前記LTDおよび前記第2のLTDに結合されている、
請求項1に記載の構造体。
【請求項11】
前記第1の箔と前記LTDの前記表面との間の前記結合部が、前記第1の箔が前記LTDに結合された後に前記第1の箔が前記LTDから分離可能であるような態様の除去可能な接合である、請求項1に記載の構造体。
【請求項12】
第2の箔をさらに備え、前記第2の箔が前記第1の箔の面に結合されており、前記第1の箔の前記面が、前記LTDの前記表面に結合された第2の面とは異なる、請求項1に記載の構造体。
【請求項13】
前記接合の前記形成がさらに一組のポケットを形成し、1つのポケットは前記リッジの下に形成されており、前記1つのポケットによって、前記第1の箔が、前記LTDに加えられた機械力の吸収装置として機能する、請求項1に記載の構造体。
【請求項14】
前記結合部が、超音波熱溶接部として形成された、請求項1に記載の構造体。
【請求項15】
前記結合部が、レーザ溶接部として形成された、請求項1に記載の構造体。
【請求項16】
前記結合部が、熱圧縮溶接部として形成された、請求項1に記載の構造体。
【請求項17】
前記結合部が一組のタックとして形成されており、前記一組のタックの中のタックがスポット・タックとして形づくられている、請求項1に記載の構造体。
【請求項18】
前記結合部が一組のタックとして形成されており、前記一組のタックの中のタックがライン・タックとして形づくられている、請求項1に記載の構造体。
【請求項19】
前記結合部が一組のタックとして形成されており、前記一組のタックの中のタックがパターンとして形づくられている、請求項1に記載の構造体。
【請求項20】
熱平衡化構造体を製造するためのコンピュータ実施方法であって、前記コンピュータ実施方法が、
第1の材料の第1の層を備える箔を形成すること、および
前記箔を低温デバイス(LTD)の上に浮かせること
を含み、前記LTDが、前記LTDの熱がそこから運び去られる表面を備え、前記コンピュータ実施方法がさらに、
結合部を形成すること
を含み、前記結合部が、前記箔と前記表面との間に形成された接合を含み、前記接合が、前記接合の形成が、ライン・タックが交差することにより、一組のリッジを前記箔に形成するような態様で形成されたものであり、前記一組のリッジの中のリッジが前記熱を放散させるように機能する、
コンピュータ実施方法。
【請求項21】
超伝導フリップチップ・デバイスであって、
低温デバイス(LTD)と、
請求項1ないし19のいずれかに記載の熱平衡化構造体と
を備える超伝導フリップチップ・デバイス。
【請求項22】
しきい力よりも大きな機械力を前記LTDに加えたときにクリープを生じやすい冷間圧接材料をさらに含み、前記クリープが、前記超伝導フリップチップ・デバイス内に設定された分離距離の低減を引き起こし、前記結合部が、しきい力を超える前記機械力なしで形成されたものである、
請求項21に記載の超伝導フリップチップ・デバイス。
【請求項23】
量子データ処理システムであって、
低温デバイス(LTD)を備える量子プロセッサと、
請求項1ないし19のいずれかに記載の熱平衡化構造体と
を備える量子データ処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、半伝導(semiconducting)または超伝導チップ(superconducting chip)用の冷却装置に関する。より詳細には、本発明は、極低温デバイス(cryogenic temperature device)用の熱平衡化構造体(thermalization structure)に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で使用される「低温」範囲は、約77ケルビン(K)以下の温度または約77K以下の温度付近から始まり、少なくとも1ミリケルビン(0.001K)まで、場合によっては現在使用可能な技術を使用して実施可能な低温、例えば0.000001Kまでの極低温範囲(cryogenic temperature)を指す。「低温」は、極低温範囲の温度である。本明細書では、極低温範囲で動作する半導体または超伝導体デバイスを低温デバイス(low temperature device)(LTD)と称する。半伝導デバイスもしくは超伝導デバイスまたはその両方は、動作しているときに熱を生み出す。極低温範囲で動作しているLTDも動作中に熱を生み出すが、その熱の除去は、低温動作に特有の課題を提示する。
【0003】
極低温で動作する大部分のデバイスは、極低温で超伝導特性を示す材料に依存している。大部分の超伝導体は良好な熱伝導体ではない。構造体からの除熱を可能にするためには、材料が良好な熱伝導体でなければならない。材料が良好な熱伝導体とみなされるためには、その材料が、少なくとも、しきい熱伝導率レベルの熱伝導率を示すものでなければならない。例えば、例示的な実施形態によれば、4ケルビンにおいて1ワット/(センチメートル・K)よりも大きな熱伝導率は、良好な熱伝導率の受け入れ可能なしきいレベルである。
【0004】
構造体の熱平衡化は、構造体へまたは構造体から熱を伝導する過程および機構である。構造体の熱平衡化にはしばしば、必要に応じてその構造体へ/から熱を伝導するためにその構造体に物理的に取り付けられた良好な熱伝導体が必要となる。例えば、熱を生み出すLTDを熱平衡化しなければならないときには、LTDから熱を除去するため、LTDに、良好な熱伝導体、例えば銅、銀、金または別の知られている良好な熱伝導体から製作されたヒート・シンクが物理的に取り付けられる。
【0005】
本発明の実施形態は、構造体が圧縮金属-金属接触した状態で熱伝導体に取り付けられているときに良好な熱平衡化が達成されることを認識している。したがって、良好な熱平衡化には、圧縮ばめ(compression-fitting)ヒート・シンクをデバイス上に取り付けるためのかなりの機械力も必要となる。
【0006】
多くの低温デバイス(LTD)は、各辺に沿ってわずか数マイクロメートルから数ミリメートルの寸法を有し、基板材料上/内に製造された壊れやすいチップを備える。現在使用可能な解決策の下では、力を加えてLTD上にヒート・シンクをはめることが必要だが、これには問題もある。多くの場合、締りばめヒート・シンクをはめるためにデバイスに加えられた力はデバイスを損傷する原因となりえ、またはさらに悪いことにはデバイスを破壊しうる。
【0007】
一部のLTDは、もろい冷間圧接部(cold weld)、例えば軟質はんだ(soft solder)材料を使用したもろい冷間圧接部を介して互いに結合された2つ以上のチップを備える。例えば、1つのチップ、すなわち接続ポイントを有する読出し回路を備えるインタポーザ・チップ(interposer chip)が、第2のチップ、すなわちキュービット(qubit)およびコンタクト・パッドを備えるキュービット・チップの上に、接続ポイントとコンタクト・パッドとが互いに整列し、向かい合わせになるようにひっくり返された、フリップチップ構成の量子プロセッサを製造することができる。インタポーザ上の接続ポイントは、キュービット・チップ上のコンタクト・パッドに、軟質はんだ材料を使用して冷間圧接される。結果として得られる量子プロセッサ内においてある電気特性を生み出すため、この冷間圧接は、キュービット・チップから所定の距離のところにインタポーザを保持する。フリップチップ構成にあるチップ間の距離は、フリップチップ構成の適正な動作の重要な因子である。
【0008】
本発明の実施形態は、圧縮力を加えること、例えば、一定の力で装着するヒート・シンクをフリップチップ・デバイスに押しつけるために圧縮力を加えることが、チップの機能にとって破壊的となりうることを認識している。2つのチップを互いに対して適当な位置に保持している軟質はんだ材料は柔軟であるように設計されているため、一方のチップに力を加えると、軟質はんだのクリーピング(creeping)または変形が生じうる。その結果、チップ間の分離距離が意図せずに変化しうる。このタイプの損傷はフリップチップでかなり容易に起こりうるが、フリップチップ構成のチップは、ヒート・シンクをチップ上にはめるための力に起因する物理的損傷を受けやすいままとなっている。
【0009】
本発明の実施形態はさらに、チップをあまり損傷することなくチップにヒート・シンクが圧縮ばめされるときでも、ヒート・シンクの材料、もしくはチップ上の熱伝導構造体の材料、またはそれらの両方の材料は、ヒート・シンクがはめられた後に、ヒート・シンクが一定の高さに装着された場合に、はんだ材料のクリープが、それによってヒート・シンクがチップに取り付けられる接触力の低減を引き起こすような材料であることを認識している。したがって、例示的な実施形態は、一定の力で装着する配置と一定の高さに装着する配置の両方で熱平衡化構造体がLTDに結合される場合、現在使用可能な方法を用いてデバイスの良好な熱平衡化を維持することには問題があることを認識している。
【0010】
キュービット、量子プロセッサおよびある種の低温フリップチップ・アセンブリなどのLTDデバイスは、超伝導材料および半導体材料を使用して、知られている半導体製造技術で製造される。LTDは一般に、異なる材料の1つまたは複数の層を使用して、デバイス特性およびデバイス機能を実装する。材料層は、超伝導性、伝導性、半伝導性、絶縁性、抵抗性、誘導性、容量性の層であることができ、または任意の数の他の特性を有することができる。材料の性質、材料の形状、サイズまたは配置、材料に隣接した他の材料、および他の多くの考慮事項が与えられた場合、異なる材料層は、異なる方法を使用して形成されなければならないことがある。
【0011】
半伝導または超伝導LTDの製造プロセスは、ドージング、ならびにさまざまな電気特性もしくは機械特性またはその両方を有する材料を堆積させもしくは除去する他の方法、またはそのような材料を堆積させ除去する他の方法を含む。超伝導デバイスはしばしば平面デバイス、すなわち1つの平面上に複数の超伝導構造体が製造されたデバイスである。非平面デバイスは、一部の構造体が所与の製造平面よりも上または下に形成された3次元(3D)デバイスである。
【0012】
一部のLTDは、フリップチップ・ジオメトリ(flip-chip geometry)を使用して製造される。フリップチップ・ジオメトリでは、いくつかの個々のデバイスを有する第1のチップ(例えばフリップチップ量子プロセッサ内のキュービット・チップの非限定的な一例)が、1つの基板上に製造され、別個の基板上に、1つまたは複数の接続を有する第2のチップ(例えばインタポーザ・チップの非限定的な一例)が製造される。第1のチップの第1の表面のチップ・パッド上、もしくは第2のチップの第1の表面のチップ・パッド上、または両方のチップ・パッド上にはんだバンプ(solder bump)を堆積させ、第1のチップまたは第2のチップをひっくり返して、そのチップの第1の面が下を向くようにする。第1のチップと第2のチップとを整列させ、次いで、はんだバンプのはんだが、第1のチップと第2のチップとの電気接続を完成させるように、それらのチップをバンプ接合する。
【0013】
極低温動作条件および他の動作条件において所望の電気、熱、延性、展性および冷間圧接特性を有する、はんだ付け材料などの適当な材料のバンプを、第1のチップの第1の表面のチップ・パッド上、もしくは第2のチップの第1の表面のチップ・パッド上、または両方のチップ・パッド上に堆積させる。一般に、はんだバンプへの言及は、これらの要件を満たす材料でできたバンプを含むと解釈すべきである。
【発明の概要】
【0014】
本発明の実施形態は、極低温デバイス用の熱平衡化構造体、ならびに該熱平衡化構造体の製造方法および製造システムを提供する。本発明の一実施形態は熱平衡化構造体を提供する。この実施形態は、第1の材料の第1の層を備える箔(foil)を含む。この実施形態は、低温デバイス(LTD)を含み、この低温デバイス(LTD)は、このLTDの熱がそこから運び去られる表面を備える。この実施形態は、結合部(coupling)を含み、この結合部は、箔とこの表面との間に形成された接合を含み、この接合は、接合の形成が一組のリッジ(ridge)を箔に形成するような態様で形成されたものであり、この一組のリッジの中のリッジは熱を放散させるように機能する。この実施形態は、LTD上へのヒート・シンクの機械的装着により生じる問題を回避する熱平衡化構造体を提供する。
【0015】
この箔は一組の層を備えることができ、この一組の層は、第1の層および第2の層を含むことができる。この実施形態は、特定の熱特性、機械特性および他の特性を有するようにカスタマイズすることができる構造体を提供する。
【0016】
第2の層は第2の材料を含むことができ、第2の材料は、極低温範囲で使用されたときに、少なくとも、LTDの表面の第3の材料とのしきい接合能力レベルの接合能力を示す。この実施形態は、特定の層が特定の目的向けに特化された構造体を提供する。
【0017】
第1の材料は、極低温範囲で使用されたときに、LTDの表面の第3の材料とのしきい接合能力レベルよりも低い接合能力を示すものであってもよい。この実施形態は、構造体の全体よりも小さな構造体部分が所望の特性を有することができる構造体を提供する。
【0018】
第1の材料は、極低温範囲で使用されたときに、少なくとも、しきい熱伝導率レベルの熱伝導率を示すものであってもよい。この実施形態は、所望の熱特性を有するように層をカスタマイズすることができる構造体を提供する。
【0019】
第1の材料は、極低温範囲で使用されたときに、少なくとも、デバイスの表面の第3の材料とのしきい接合能力レベルの接合能力を示すものであってもよい。この実施形態は、所望の接着特性を有するように層をカスタマイズすることができる構造体を提供する。
【0020】
本発明の別の実施形態は、箔内のパターンをさらに含み、このパターンは、箔上の3次元突出部(three-dimensional protrusion)を含む。この実施形態は、LTDまたはその構成要素の形状またはパターンと整合するように構成することができる構造体を提供する。
【0021】
本発明の別の実施形態は、箔内のパターンをさらに含み、このパターンは、箔内の3次元凹部(three-dimensional recess)を含む。この実施形態は、LTDまたはその構成要素の形状またはパターンと整合するように構成することができる構造体を提供する。
【0022】
本発明の別の実施形態は、第2の箔をさらに含み、前記箔と第2の箔はともにLTDに結合されている。この実施形態は、複数の区画に分けて形成することができる構造体を提供する。
【0023】
本発明の別の実施形態は、第2のLTDをさらに含み、箔は、LTDおよび第2のLTDに結合されている。この実施形態は、多数のLTDを同時に熱平衡化することができる構造体を提供する。
【0024】
箔とLTDの表面との間の結合部は、箔がLTDに結合された後に箔がLTDから分離可能であるような態様の除去可能な接合とすることができる。この実施形態は、例えば再構成のためにLTDから除去することができる構造体を提供する。
【0025】
本発明の別の実施形態は、第2の箔をさらに含み、第2の箔は前記箔の面に結合されており、前記箔のこの面は、LTDの表面に結合された第2の面とは異なる。この実施形態は、積み重ねることができる構造体を提供する。
【0026】
接合の形成がさらに一組のポケットを形成してもよく、1つのポケットはリッジの下に形成されていてもよく、その1つのポケットによって、箔が、LTDに加えられた機械力の吸収装置(absorber)として機能してもよい。この実施形態は、衝撃または力の機械式吸収装置の役目も果たす構造体を提供する。
【0027】
結合部は、超音波熱溶接部(thermosonic weld)として形成することができる。この実施形態は、構造体内に接合を形成するための特定の方法を提供する。
【0028】
結合部は、レーザ溶接部として形成することができる。したがって、この実施形態は、構造体内に接合を形成するための特定の方法を提供する。
【0029】
結合部は、熱圧縮(thermocompression)溶接部として形成することができる。この実施形態は、構造体内に接合を形成するための特定の方法を提供する。
【0030】
結合部は一組のタック(tack)として形成することができ、その一組のタックの中のタックはスポット・タック(spot tack)として形づくることができる。この実施形態は、構造体内に接合を形成するための特定の方法を提供する。
【0031】
結合部は一組のタックとして形成することができ、その一組のタックの中のタックはライン・タック(line tack)として形づくることができる。この実施形態は、構造体内に接合を形成するための特定の方法を提供する。
【0032】
結合部は一組のタックとして形成することができ、その一組のタックの中のタックはパターンとして形づくることができる。この実施形態は、構造体内に接合を形成するための特定の方法を提供する。
【0033】
本発明の一実施形態は、熱平衡化構造体を製造するコンピュータ実施方法(computer-implemented method)を提供する。
【0034】
本発明の一実施形態は、本明細書に開示された熱平衡化構造体を使用して形成することができる超伝導フリップチップ・デバイスを提供する。
【0035】
本発明の一実施形態は、本明細書に開示された熱平衡化構造体を使用して形成することができる量子データ処理システムを提供する。
【0036】
添付の特許請求の範囲には、本発明に特有の特徴と考えられる新規の特徴が記載されている。しかしながら、本発明自体、ならびに本発明の好ましい使用形態、さらに本発明の目的および利点は、例示的な実施形態の以下の詳細な説明を添付図面とともに読んだときに、その説明を参照することによって最もよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の実施形態を実施することができるデータ処理システムのネットワークのブロック図である。
図2】本発明の実施形態を使用して解決することができる課題を示す、フリップチップ量子コンピューティング・デバイスの断面図である。
図3】本発明の一実施形態による、熱平衡化構造体を形成するプロセスの一ステップを示す図である。
図4】構造体を形成するプロセスの別のステップを示す図である。
図5】構造体を形成するプロセスの別のステップを示す図である。
図6】本発明の一実施形態による、箔の構造を示す図である。
図7】本発明の一実施形態による、箔がタック留めされた(foil-tacked)LTDデバイスの概略図である。
図8】本発明の一実施形態による、箔がタック留めされたLTDデバイスの別の概略図である。
図9】本発明の一実施形態による、箔がタック留めされたLTDデバイスの別の概略図である。
図10】本発明の一実施形態による、極低温デバイス用の熱平衡化構造体を形成するためのプロセスの流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明を説明するために使用される実施形態は一般に、極低温デバイス用の熱平衡化構造体を提供することによって、上述の課題または必要性および他の関連する課題または必要性に対処し、それらの課題または必要性を解決する。それらの実施形態はさらに、極低温デバイス用の熱平衡化構造体を製造するための方法およびシステム、ならびに極低温デバイス用の上述の熱平衡化構造体を使用して形成された量子プロセッサを提供する。
【0039】
本発明の一実施形態は、極低温範囲において良好な熱伝導率を示す1種または数種の材料を使用して箔を形成する。一実施形態では、この箔が単一の材料、例えば銅を含む。別の実施形態では、この箔が、2種類以上の材料、例えば銅、白金、金、チタン、あるいはこれらの材料のある組合せもしくは他の適当な材料のある組合せ、またはこれらの材料および他の適当な材料のある組合せを含む。箔を形成するために多数の材料が使用されるとき、一実施形態は、1つの材料の層を、別の材料の別の層の上に形成する。記載された箔の形成において、1つの材料の層の数、層の総数、互いに対する層の配置、箔の中の材料の近接性(adjacency)、または層の順序に制限はない。異なる実施態様は、箔の中の異なる材料および層から利益を得ることができ、そのような変動は、本発明の範囲内で企図される。
【0040】
一実施形態は、LTDの表面に箔を接合する。一実施形態は、LTDの表面に箔を非連続に接合する。すなわち、箔上のいくつかのスポットだけをLTDの表面に接合し、箔上の他のスポットは、LTDの表面に接合しないでおく。このようなスポット接合方式または「タック留め」(すなわちスポット接合または「タック」を使用した接合方式)は、LTDの表面に面した面とは反対側の面にリッジまたはひだが形成された表面を有する箔を備える構造体を与える。箔のひだが形成された表面は、チップに対する箔の横方向のコンプライアンス(compliance)の増大を容易にする。一実施形態では、LTDの表面に箔をタック留めする前に箔にひだを形成することができる。例えば、予め形成された型またはパターンを使用して、鶏卵用クレート(egg-crate)の形状またはリッジを有する他のある形状に箔を成形し、次いで、成形した箔をLTDの表面にタック留めすることができる。箔を予め成形するこのような方式は、単独のタック留めプロセスの結果として形成されるひだと比較して、ひだの形状、サイズ、位置またはこれらのある組合せをより広範に制御することを可能にすることができる。タック留めだけによってひだを形成する方式は、追加の事前成形ステップを省くが、ひだの幾何形状の同程度の制御を提供しないことがある。
【0041】
ひだが形成された表面はリッジの下にポケットを形成する。柔軟な箔材料のこれらのポケットは、箔で覆われたLTDに物理的な力が加えられたときに変形し、衝撃吸収装置の役目を果たし、大部分の力を放散させ、それによりその力が冷間圧接材料を変形させることを許さない。一実施形態では、このポケットの変形が、加えられた力が除去されたときに元に戻ることができる。
【0042】
別の実施形態は、箔の1つの長さをLTDの表面に連続的に接合するが、箔の全体をLTDの表面の全体に接合することはしない。言い換えると、この実施形態は、スポット接合の代わりにライン接合を実行する。ライン接合では、タックの代わりにラインが形成され、ラインのところで箔がLTDの表面と接合する。このような接合方式も、LTDの表面に面した面とは反対側の箔の面にリッジまたはひだが形成された表面を与える。このようにして生み出された箔のひだが形成された表面はさらに、熱放散に使用可能な箔の表面積の増大を容易にする。
【0043】
スポットおよびライン非連続接合方式のこれらの例は限定を意図したものではない。この開示から、当業者は、他の多くの非連続接合方式を思いつくことができ、それらの方式は、例示的な実施形態の範囲内で企図される。例えば、一実施態様は、例示的な実施形態の範囲を逸脱することなく、ジグザグ・パターン、ランダム・パターン、または異なる形状およびサイズの組合せパターンを使用して箔を表面に接合することができる。説明を明瞭にするためだけに、また、説明の限定を暗示することなしに、この開示において実施形態または特徴を説明するときに、スポット接合またはタック留めは、LTDの表面に箔を接合する非限定的で例示的な方法として使用される。
【0044】
さまざまな接合方法が、例示的な実施形態とともに使用可能である。例えば、一実施形態は、超音波熱溶接技術を使用してタックを形成する。超音波熱溶接は、基板の全面的な加熱を必要とせず、先端を用いて超音波エネルギーを箔のスポット上に集中して、その点にスポット接合を生じさせる。このプロセスで箔またはLTDが経験する機械力は、あったとしてもごくわずかであり、これにより前述のはんだクリープが回避される。超音波熱溶接ツールに使用される先端を変更することにより、形状、サイズ、位置ならびに超音波力および超音波パワーは制御可能および構成可能である。
【0045】
別の実施形態は、レーザ溶接技術を使用してタックを形成する。レーザ溶接も、基板の全面的な加熱を必要とせず、レーザ・エネルギーを箔のスポット上に集中してそのスポットを局所的に加熱し、その点にスポット接合を生じさせる。このプロセスで箔またはLTDが経験する機械力は、あったとしてもごくわずかであり、これにより前述のはんだクリープが回避される。溶接に使用される直接書込みパターンを変更することにより、形状、サイズ、位置およびパワーは制御可能および構成可能である。
【0046】
他のスポット接合方法は、限定はされないが、はんだリフロー(solder reflow)または熱圧縮を含む。熱圧縮などのいくつかの方法は、例えば超音波熱溶接またはレーザ溶接よりもわずかに多くの機械圧縮力を必要とするが、リフローを用いた熱圧縮では、バンプ・ボンド(bump bond)はんだのクリープを制御することができる。このような方法では、LTD内のバンプ下の金属層の幾何形状またはバンプの幾何形状に応じて、スポット接合のサイズおよび位置を選択することができる。さらに、本発明の範囲内で、記載された方法または他の方法を組み合わせて、いくつかのスポットで並行して、一度にまたは逐次的に使用することができる。
【0047】
単一の箔が多数のLTDにまたがることができる。単一のLTDが多数の箔にまたがることができる。異なる箔は、異なる厚さもしくは異なる層組成またはその両方を有することができる。例えば、箔は、適当な順序で配置された適当な数の接着層、濡れ性層(wettable layer)、非酸化可能層、バリア層、および超伝導体層を含むことができる。箔をスポット接合してパッケージにすること、すなわち半導体/超伝導体回路をカプセル封入した硬質プラスチックまたは積層品にすることができる。
【0048】
箔は、1つまたは複数の平らな層またはパターンを含まない層を使用して形成することができる。突出部もしくは凹部またはその両方を含む3次元構造体を含むように、箔の1つの層、いくつかの層または全ての層にパターンを形成することができる。除去可能スポット接合方法および除去可能スポット接合材料を使用して、箔をLTDに一時的に取り付けることができる。箔が接合されるLTDの表面に面した層が、LTD表面の材料と接合する接合特性を示す材料を含む限り、箔の全ての層が接合可能な材料である必要はない。ある種の状況下では、第1の箔をLTDの表面にタック留めすることができ、第2の箔を第1の箔にタック留めことができ、複数の箔の積層を形成することができる。箔がタック留めされる表面が、箔とのスポット接合を受け入れることができる限りにおいて、本明細書で企図されるLTDは、基板上もしくは基板内の電子構造体、その基板、またはこれらの組合せとすることができる。
【0049】
一実施形態のフリップチップ量子コンピューティング・デバイスを製造する製造方法は、ソフトウェア・アプリケーションとして実施することができる。製造方法を実施するこのアプリケーションを、リソグラフィ・システムなどの既存の超伝導体製造システムと連携して機能するように構成することができる。
【0050】
説明を明瞭にするためだけに、また、説明の限定を暗示することなしに、例示的な実施形態は、例示的なLTD内のチップ上の例示的ないくつかの構成要素を使用して説明される。一実施形態は、任意の数、タイプまたは組合せのLTDまたはLTD構成要素によって実施することができ、LTD構成要素は、限定はされないが、フリップチップ配置のキュービット・チップ、インタポーザ・チップ、量子プロセッサ、および他の半伝導または超伝導デバイスを含む。
【0051】
さらに、図および例示的な実施形態では、非限定的で例示的なフリップチップ・ジオメトリの単純化された図が使用されている。フリップチップの実際の製造では、例示的な実施形態の範囲を逸脱しない範囲で、本明細書に示されていないもしくは本明細書で説明されていない追加の構造体、または本明細書に示された構造体および本明細書で説明された構造体とは異なる構造体が存在してもよい。同様に、本明細書に記載された同様の動作または結果を得るために、例示的な実施形態の範囲内で、例示的なフリップチップ内の示された構造体または記載された構造体を異なる態様で製造することができる。
【0052】
例示的な構造体、層および形成物の2次元図中の異なる陰影が付けられた部分は、本明細書に記載された例示的な製造における異なる構造体、層、材料および形成物を表していることが意図されている。これらの異なる構造体、層、材料および形成物は、当業者に知られている適当な材料を使用して製造することができる。
【0053】
本明細書に示された特定の形状、場所、位置または形状の寸法が、一実施形態の特徴であると明示的に記述されていない場合、そのような特性が、例示的な実施形態を限定することは意図されていない。それらの形状、場所、位置、寸法、数またはそれらのある組合せは、図面および説明を明瞭にするためだけに選択されたものであり、それらは、本発明に基づく目的を達成するために、実際のリソグラフィで使用される可能性がある実際の形状、場所、位置または寸法から誇張され、軽視され、または他の形で変更されていることがある。
【0054】
さらに、実際のまたは仮定に基づく特定の半伝導または超伝導デバイス、例えば現在実行可能なキュービットに関して、本発明の実施形態は単なる例として記載されている。説明されたステップを、さまざまなLTDを同様の方式で製造する目的に適合させることができ、そのような適合は、本発明の範囲に含まれることが企図される。
【0055】
アプリケーション中に実装されているとき、一実施形態は、製造プロセスに、本明細書に記載されたある種のステップを実行させる。製造プロセスのそれらのステップはいくつかの図に示されている。特定の1つの製造プロセスにおいて全てのステップが必要であるというわけではない。いくつかの製造プロセスは、本発明の範囲を逸脱することなく、これらのステップを異なる順序で実施すること、ある種のステップを結合すること、ある種のステップを除きもしくは取り換えること、またはステップのこれらの操作およびその他の操作のある組合せを実行することができる。
【0056】
実施形態は、単なる例として、あるタイプの材料、電気特性、熱特性、機械特性、構造体、形成物、形状、層、向き、方向、ステップ、動作、平面、寸法、数、データ処理システム、環境、構成要素および用途に関して説明される。これらのアーチファクトおよび他の同様のアーチファクトの特定の顕現物(manifestation)が、本発明を限定することは意図されていない。本発明の範囲内で、これらのアーチファクトおよび他の同様のアーチファクトの適当な顕現物を選択することができる。
【0057】
実施形態は、特定の設計、アーキテクチャ、レイアウト、概略図およびツールを単なる例として使用して説明され、本発明を限定するものではない。実施形態は、匹敵する他の設計、アーキテクチャ、レイアウト、概略図およびツール、または同様の目的の他の設計、アーキテクチャ、レイアウト、概略図およびツールとともに使用することができる。
【0058】
本明細書の例は、説明を明瞭にするためだけに使用され、本発明を限定しない。本明細書に挙げられた利点は単なる例であり、それらの利点が本発明を限定することは意図されていない。特定の実施形態によって、追加の利点または異なる利点が実現される可能性がある。さらに、特定の実施形態は、上に挙げられた利点の一部もしく全部を有することがあり、またはそれらの利点を全く持たないこともある。
【0059】
図1は、本発明の実施形態を実施することができるデータ処理環境の図である。図1は単なる例であり、この図が、このような環境に関する限定を主張または暗示することは意図されていない。特定の実施態様は、以下の説明に基づいて図示の環境に多くの変更を加えることができる。
【0060】
図1を参照すると、データ処理環境100はネットワーク102を含む。ネットワーク102は、データ処理環境100内で一緒に接続されたさまざまなデバイスおよびコンピュータ間の通信リンクを提供するために使用される媒体である。ネットワーク102は、有線通信リンク、無線通信リンクまたは光ファイバ・ケーブルなどの接続を含むことができる。
【0061】
クライアントまたはサーバは、ネットワーク102に接続されたある種のデータ処理システムの役割の単なる例であり、クライアントまたはサーバが、これらのデータ処理システムの他の構成または役割を排除することは意図されていない。ネットワーク102には、ストレージ・ユニット108とともにサーバ104およびサーバ106が結合している。データ処理環境100内のコンピュータ上でソフトウェア・アプリケーションを実行することができる。ネットワーク102にはさらにクライアント110、112および114が結合されている。サーバ104もしくは106またはクライアント110、112もしくは114などのデータ処理システムは、データを含むことができ、その上で実行するソフトウェア・アプリケーションまたはソフトウェア・ツールを有することができる。
【0062】
デバイス132は、モバイル・コンピューティング・デバイスの例である。例えば、デバイス132は、スマートフォン、タブレット・コンピュータ、ラップトップ・コンピュータ、固定もしくは携帯可能形式のクライアント110、ウェアラブル・コンピューティング・デバイス、または他の適当なデバイスの形態をとることができる。図1の別のデータ処理システム内で実行されると記載されたソフトウェア・アプリケーションはいずれも、デバイス132内で同様に実行されるように構成することができる。図1の別のデータ処理システム内に記憶された、または図1の別のデータ処理システム内で生成されたデータまたは情報はいずれも、デバイス132内に同様に記憶されるように、またはデバイス132内で同様に生成されるように構成することができる。
【0063】
アプリケーション105は、本明細書に記載された実施形態を実施する。製造システム107は、量子コンピューティング・デバイス内で使用されるジョセフソン接合、キュービットおよび他の超伝導構造体などのLTDを製造するための適当なシステムのソフトウェア構成要素である。一般に、量子コンピューティングで使用するためのデバイスを含むLTDを製造するための製造システム、およびそれらの製造システムの対応するソフトウェア構成要素は知られている。実施形態で企図される極低温デバイス用の新規の熱平衡化構造体を本明細書に記載された方式で組み立てることを実行させるため、アプリケーション105は、そのような知られている製造システムに、製造アプリケーション107を介して命令を提供する。
【0064】
図2を参照すると、フリップチップ量子コンピューティング・デバイス200は、基板203を有するキュービット・チップ202を含む。基板203は、ジョセフソン接合をその上に形成することができる適当な材料であるように選択されており、結局、その材料は、ジョセフソン接合を使用してキュービットを形成するのに適している。基板203は、基板203の第1の表面に形成されたジョセフソン接合204を含む。
【0065】
基板203は、極低温範囲で動作したときに少なくとも100の残留抵抗比(Residual Resistance Ratio)(RRR)、および4ケルビンにおいて1W/(cm・K)よりも大きな熱伝導率を示す材料を含む。RRRは、室温における材料の抵抗率と0Kにおける材料の抵抗率の比である。実際には0Kには到達し得ないため、4Kにおける近似値が使用される。例えば、基板203は、77Kから0.01Kの温度範囲で動作するために、サファイヤ、シリコン、石英、ヒ化ガリウム、溶融シリカ、非晶質シリコンまたはダイヤモンドを使用して形成されたものとすることができる。
【0066】
デバイス200はさらに、インタポーザ基板207を含むインタポーザ・チップ206を含む。インタポーザ基板207は、少なくとも100のRRRおよび4ケルビンにおいて1W/(cm・K)よりも大きな熱伝導率を示す材料を含む。特定の実施形態では、基板203とインタポーザ基板207のうちの1つまたは複数の基板が、シリコンまたは別の適当な基板材料で形成されている。基板材料のこれらの例は限定を意図したものではない。この開示から、当業者は、基板203もしくは基板207またはその両方を形成するのに適した他の多くの材料を思いつくことができ、それらの材料は、本発明の範囲内で企図される。
【0067】
インタポーザ・チップ206は、インタポーザ基板207の第1の表面に形成された接続ポイント(パッド)208を含む。特定の実施形態では、パッド208が、超伝導材料、複数の超伝導材料、金属材料またはこれらの組合せで形成されている。
【0068】
キュービット・チップ202は、基板203の第1の表面に形成されたコンタクト・パッド212Aおよび212Bを含む。特定の実施形態では、コンタクト・パッド212A~Bが、超伝導材料、複数の超伝導材料、金属材料またはこれらの組合せで形成されている。
【0069】
インタポーザ・チップ206のパッド208は、第1のバンプ・ボンド210Aおよび第2のバンプ・ボンド210Bによってキュービット・チップ202に結合されている。いくつかの実施形態では、単一のバンプ・ボンドまたは2つ以上のバンプ・ボンドを使用して、インタポーザ206のパッド208をキュービット・チップ202のパッドに接合することもできる。接合は、インタポーザ・チップ206とキュービット・チップ202との間に、第1のバンプ・ボンド210Aおよびコンタクト・パッド212Aならびに第2のバンプ・ボンド210Bおよびコンタクト・パッド212Bを介した電気接続を形成する。一実施形態では、77Kから0.01Kの温度範囲で動作するために、パッド208およびパッド212A~Bが、アルミニウム、ニオブ、チタン、窒化チタン、パラジウム、金、銀、銅および白金のうちの少なくとも1つを使用して形成される。一実施形態では、77Kから0.01Kの温度範囲で動作するために、バンプ・ボンド210A、210Bが、インジウム、スズ、およびビスマスの合金を使用して形成される。基板材料、バンプ・ボンド材料およびコンタクト・パッド材料のこれらの例は限定を意図したものではない。この開示から、当業者は、これらの構造体を形成するのに適した他の多くの材料を思いつくことができ、それらの材料は、本発明の範囲内で企図される。
【0070】
キュービット共振周波数が、インタポーザ・チップとキュービット・チップとの間の分離ギャップ距離(separation gap distance)の関数である場合、設計/製造システムはさらに、所望の周波数調節、周波数調整範囲および感度に基づいて、インタポーザ・チップとキュービット・チップとの間の適当な分離ギャップ距離を決定する。設計/製造システムは、そのフリップチップ配置の所望のキュービット周波数を達成するように、この分離ギャップ距離を置いてインタポーザ・チップとキュービット・チップとを接合する。設計/製造システムは、バンプ・ボンド・プロセスまたはフリップチップ・アセンブリを接合する他の適当な方法を使用して、インタポーザ・チップとキュービット・チップとを接合する。
【0071】
図3を参照すると、LTDフリップチップ302の非限定的な例は、キュービット・チップ304およびインタポーザ・チップ306を備える。示されているように、キュービット・チップ304とインタポーザ・チップ306は、はんだ材料308を使用して一体に冷間圧接されている。キュービット・チップ304は複数のキュービット310を備え、インタポーザ・チップ306は、キュービット310に対して配された読出し回路(図示せず)を備える。
【0072】
一実施形態は、本明細書に記載された1つまたは複数の材料の1つまたは複数の層を使用して箔312を構築する。この例では、箔312が、ある熱平衡化要件を満たすために互いに対して配された層314、316および318を備える。例えば、1つの熱平衡化要件は、(フリップチップ・アセンブリ302のチップ304に箔312を取り付けるようとしたときに)箔312の層318がチップ304の表面の層320とスポット接合することができなければならないというものであることがある。同様の方式で、フリップチップ・アセンブリ302のチップ306に箔312を取り付けることもできる。
【0073】
図3と4に共通する参照符号は、図3に関して説明したアーチファクトと同じアーチファクトまたは同様のアーチファクトを示している。
【0074】
LTD302の表面320に箔312をタック留めする例示的な超音波熱溶接方法が示されている。先端402は、スポット406と同様のスポットに超音波エネルギー404を集中させて、スポット406のところにスポット接合を形成する。スポット406間には、本明細書に記載されたポケット408が形成されている。スポット406間には、タック留め操作の結果として、本明細書に記載されたリッジ410も形成されている。
【0075】
図3、4および5に共通する参照符号は、図3および4に関して説明したアーチファクトと同じアーチファクトまたは同様のアーチファクトを示している。
【0076】
本明細書に記載されたタック留め方法のうちの任意の方法を使用して、一実施形態は、2つ以上のタック406からなる一組のタック406、1つまたは複数のポケット408からなる一組のポケット408、および1つまたは複数のリッジ410からなる一組のリッジ410を、箔312およびLTD302の表面320を使用して形成する。一実施形態は、タック留めされた箔312を、1つまたは複数の外部構造体、例えば構造体502もしくは構造体504またはその両方に熱的に結合する。一実施形態では、箔312から構造体502(もしくは504またはその両方)への(あるいは必要ならば構造体502(もしくは504またはその両方)から箔312への)熱エネルギーの伝達を生じさせるために、構造体502(もしくは構造体504またはその両方)が箔312に物理的および熱伝導的に結合される。別の実施形態では、箔312とLTD302の組合せの配置にさらに機械的安定性または剛性を与えるために、構造体502(もしくは構造体504またはその両方)が箔312に物理的および熱伝導的に結合される。別の実施形態では、分離可能な方式で構造体502(もしくは504またはその両方)が箔312に結合する。別の実施形態では、LTD302からクリアランス距離(clearance distance)のところにある箔312の部分に圧縮力が加えられたときにだけ、構造体502(もしくは構造体504またはその両方)と箔312との間の分離可能な結合が実行される。別の実施形態では、LTD302からクリアランス距離のところにある箔312の部分上の分離可能な接着材料を使用して、構造体502(もしくは構造体504またはその両方)と箔312との間の分離可能な結合が実行される。一実施形態では、構造体502(もしくは504またはその両方)が、LTD302上に直接には装着されていないヒート・シンクの部分であり、またはそのようなヒート・シンクに結合されており、またはそのようなヒート・シンクとして実行される。
【0077】
図6を参照すると、箔612は、図3を参照して説明した箔312と同様の箔であり、図4および5を参照して説明した方式で使用可能である。
【0078】
箔612は、図3~5の層314と同様の1つまたは複数の層614を備える。図示の例では、層614が銅を使用して形成されている。これは、極低温における銅の望ましい熱伝導率のためである。箔612はさらに、図3~5の層318と同様の1つまたは複数の層618を備える。層618は、金を使用して形成されている。これは、組み立てる前の金の望ましい酸化抵抗性のためである。
【0079】
基板604は、図3~5のLTD302の基板304と同様の基板である。図示の例では、基板604がシリコンを使用して形成されている。層614は、図3~5の箔312の層314と同様の層である。層618は、図3~5の箔312の層318と同様の層である。層620は、図3~5のLTD320の層320と同様の層である。図示の例では、層620が、金を使用して形成されている。これは、層618の金とスポット接合することができる金の望ましい品質のためである。金は、知られている良好な極低温熱伝導体であり、例示的な実施形態に従って熱を横方向に放散させるのに役立つ。
【0080】
一実施形態では、示されているように、接合金層と基板との間にバリア/濡れ層(wetting layer)(例えば白金またはパラジウム)が形成される。その機能の1つとして、このバリア層は、金がシリコンを汚染するのを防ぎ、さらに、超音波接合中に金がデウェット(de-wet)しないことを保証する。
【0081】
別の実施形態は、濡れ/バリア層の下にさらに接着層を追加する。チタンは、この層のための知られている良好な接着材料である。この層は、シリコンと濡れ層との間の接着層の役目を果たすだけでなく、薄い超伝導体でもある。この薄い超伝導体は、受け入れ可能な許容差まで熱伝達を妨げるが、その受け入れ可能な熱伝達の損失と引きかえに、この接着層は、損失の大きい熱平衡化金属から活性面を分離するという利点を提供する。最適な厚さの接着層として形成されたチタンは、その層の厚さが、その層が超伝導である第1のしきい厚さよりも厚く、その層が受け入れ可能な許容差までしか熱伝達に影響を与えない第2の薄さしきい値よりも薄いときに、このトレードオフを達成することができる。
【0082】
図7を参照すると、例示的な箔712は、本明細書に記載された箔である。LTD702は、限定はされないが図3のLTD302を含む、本明細書に記載された任意のLTDとすることができる。構成要素710は、限定はされないが図3のキュービット310を含む、LTD302に形成された任意の構成要素とすることができる。構造体704および706は、図5の構造体502および504と同様の構造体である。
【0083】
この例示的な図では、スポット・タック722の方式でスポット接合を形成することにより、箔712がLTD702にタック留めされている。異なるスポット・タック722間に1つまたは複数のリッジおよびポケットが存在し、本明細書に記載されたとおりに機能する。
【0084】
図8を参照すると、例示的な箔812は、本明細書に記載された箔である。LTD802は、限定はされないが図3のLTD302を含む、本明細書に記載された任意のLTDとすることができる。構成要素810は、限定はされないが図3のキュービット310を含む、LTD302に形成された任意の構成要素とすることができる。構造体804および806は、図5の構造体502および504と同様の構造体である。
【0085】
この例示的な図では、ライン・タック822の方式でライン接合を形成することにより、箔812がLTD802にタック留めされている。一実施形態では、ライン・タックが、箔812上を異なる方向に走ることができる。例えば、ライン・タック824がライン・タック822と交差する。異なるライン・タック822間にだけ、またはライン・タック822と824の間に1つまたは複数のリッジおよびポケットが存在し、本明細書に記載されたとおりに機能する。
【0086】
図9を参照すると、例示的な箔912は、本明細書に記載された箔である。LTD902は、限定はされないが図3のLTD302を含む、本明細書に記載された任意のLTDとすることができる。構成要素910は、限定はされないが図3のキュービット310を含む、LTD302に形成された任意の構成要素とすることができる。構造体904および906は、図5の構造体502および504と同様の構造体である。
【0087】
この例示的な図では、さまざまな形状の接合を組み合わせて、さまざまな位置および方向に形成することにより、箔912がLTD902にタック留めされている。非限定的な例として、一実施形態では、スポット・タック926、ライン・タック924およびランダム・パターンまたは幾何学的パターンのタック922の組合せを使用して、箔912がLTD902にタック留めされ、この組合せの中のタックはいずれも、箔912上の他のタックから独立した場所および方向に配置することができる。さらに、本明細書に記載された異なるタック留め方法を使用して異なるタックを形成することもできる。異なるタック922、924および926間に1つまたは複数のリッジおよびポケットが存在し、本明細書に記載されたとおりに機能する。
【0088】
図10を参照すると、プロセス1000を図1のアプリケーション105で実施して、箔がタック留めされたLTDを本明細書に記載された方式で形成することができる。
【0089】
このアプリケーションは、極低温範囲で動作している間、所望の熱伝導率レベルを示す材料もしくは材料の組合せの箔を形成し、または形成させる(ブロック1002)。このアプリケーションは、この箔を浮かせもしくは浮かばせ、または他のやり方で操作して、この箔を、そこから熱エネルギーが引き出されるLTDの表面に対する1つの位置に置く(ブロック1004)。箔を浮かせるまたは浮かばせる操作は、箔が表面にタック留めされたときに本明細書に記載されたポケットが形成しうる方式で実行される。いくつかのケースでは、箔を浮かせるまたは浮かばせる操作が、LTDの表面に対してある距離を置いて実行される。別のケースでは、本明細書に記載されたタックなしではLTDの表面に箔が張り付かないまたは接合しないような形で、LTDの表面に箔を弛緩した状態で置くことによって、箔を浮かせることができる。
【0090】
アプリケーションは、箔の表面に一組のリッジが形成されるような態様で、LTDの表面に箔を、例えば一組のタックを使用して接合し、または接合させる(ブロック1006)。いくつかのケースでは、その後、アプリケーションは、例えばヒート・シンクまたは安定装置(stabilizer)へのさらなる結合を必要とすることなくLTDによって生み出された熱を放散させるのに、リッジおよびタックが形成された箔が十分であるときに、プロセス1000を終了させる。任意選択で、装着されていない外部ヒート・シンクを、箔がタック留めされたLTDとともに使用しなければならないとき、もしくは箔-LTDアセンブリの位置を物理的に安定させなければならないとき、またはその両方のときに、アプリケーションは、箔の部分を外部構造体に熱的および機械的に結合する(ブロック1008)。その後、アプリケーションは、プロセス1000を終了させる。
【0091】
本明細書では、本発明のさまざまな実施形態が関連図を参照して説明される。本発明の範囲を逸脱することなく代替実施形態を考案することができる。以下の説明および図面には、要素間のさまざまな接続および位置関係(例えば頂部、底部、上、下、隣など)が示されているが、向きが変更されても記載された機能が維持されるとき、本明細書に記載された位置関係の多くは向きとは無関係であることを当業者は理解するであろう。これらの接続もしくは位置関係またはその両方は、特に指定されていない限り、直接的なものであることまたは間接的なものであることができ、本発明は、この点に関して限定を意図したものではない。したがって、実体(entity)の結合は、直接結合または間接結合であることができ、実体間の位置関係は、直接的位置関係または間接的位置関係であることができる。間接的位置関係の一例として、本明細書の説明の中での層「B」の上に層「A」を形成することに関する言及は、層「A」および層「B」の関連特性および機能が中間層によって実質的に変更されない限りにおいて、層「A」と層「B」の間に1つまたは複数の中間層(例えば層「C」)がある状況を含む。
【0092】
特許請求の範囲および本明細書の解釈のために、以下の定義および略語が使用される。本明細書で使用されるとき、用語「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」、「含有する(contains)」もしくは「含有している(containing)」、またはこれらの用語の他の変異語は、非排他的包含(non-exclusive inclusion)をカバーすることが意図されている。例えば、要素のリストを含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品または装置は、必ずしもそれらの要素だけに限定されるわけではなく、明示的にはリストに入れられていない他の要素、あるいはこのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品または装置に固有の他の要素を含みうる。
【0093】
さらに、本明細書では、用語「例示的な」が、「例、事例または実例として役立つ」ことを意味するものとして使用されている。本明細書に「例示的」として記載された実施形態または設計は必ずしも、他の実施形態または設計よりも好ましいまたは有利であるとは解釈されない。用語「少なくとも1つの」および「1つまたは複数の」は、1以上の任意の整数、すなわち1、2、3、4などを含むと理解される。用語「複数の」は、2以上の任意の整数、すなわち2、3、4、5などを含むと理解される。用語「接続」は、間接「接続」および直接「接続」を含みうる。
【0094】
本明細書において「1つの実施形態」、「一実施形態」、「例示的な実施形態」などに言及されているとき、それは、記載されたその実施形態は特定の特徴、構造もしくは特性を含みうるが、全ての実施形態がその特定の特徴、構造もしくは特性を含むことがあり、またはそうではないこともあることを示す。さらに、このような句が、同じ実施形態を指しているとは限らない。さらに、一実施形態に関して特定の特徴、構造または特性が記載されているとき、明示的に記載されているか否かを問わず、他の実施形態に関してそのような特徴、構造または特性に影響を及ぼすことは、当業者の知識の範囲内にあると考えられる。
【0095】
用語「約」、「実質的に」、「およそ」およびこれらの用語の変異語は、特定の数量の大きさに関連した、本出願の提出時に利用可能な機器に基づく誤差の程度を含むことが意図されている。例えば、「約」は、所与の値の±8%または5%または2%の範囲を含みうる。
【0096】
本発明のさまざまな実施形態の以上の説明は例示のために示したものであり、以上の説明が網羅的であること、または、以上の説明が、開示された実施形態だけに限定されることは意図されていない。当業者には、記載された実施形態の範囲を逸脱しない多くの変更および変形が明らかとなろう。本明細書で使用されている用語は、実施形態の原理、実用的用途、もしくは市販されている技術にはない技術的改善点を最もよく説明するように、または本明細書に開示された実施形態を当業者が理解できるように選択した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10