(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】瓶口用キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 41/58 20060101AFI20240904BHJP
【FI】
B65D41/58
(21)【出願番号】P 2020130252
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100165607
【氏名又は名称】渡辺 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100196690
【氏名又は名称】森合 透
(72)【発明者】
【氏名】小賀坂 優太
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-090544(JP,U)
【文献】特開昭55-116560(JP,A)
【文献】特開2020-104911(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0303632(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 41/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面に瓶口部(21)に密嵌合する栓体部(13)を備えた上蓋部(2)と、該上蓋部(2)の外周面の下端に水平弱化部(5)を介して分離可能に連設された囲繞筒部(6)と、該囲繞筒部(6)の下端に折り曲げ可能に連設された複数の被覆片(7a~7f)から成る被覆部材(7)と、を有して構成された瓶口用キャップであって、
前記栓体部(13)が瓶口部(21)内に密嵌合される際に、前記瓶口部(21)によって前記囲繞筒部(6)の内面に向けて折り返されると共に前記瓶口部(21)の外周面に設けられた被係止部(22)を係止する係止部(10)が前記複数の被覆片(7a~7f)の内面に設けられており、
前記係止部(10)が前記被係止部(22)を係止すると同時に、前記
係止部(10)が前記
囲繞筒部(6)の内面に向
けて折り返されることで前記
複数の被覆片(7a~7f)が径方向内側に向かって引っ張られて広がる状態から閉塞状態に遷移し、前記被覆部材(7)の下端
内面が瓶口部(21)の外周面に当接可能に設定されることを特徴とする瓶口用キャップ。
【請求項2】
複数の被覆片(7a~7f)は、被覆部材(7)に複数のスリット(11)が形成されることで構成されている請求項1記載の瓶口用キャップ。
【請求項3】
被覆部材(7)は、瓶口部(21)の外周面に当接する部分が肉薄で形成されている請求項1又は2記載の瓶口用キャップ。
【請求項4】
被覆部材(7)が瓶口部(21)の外周面に当接した状態において、被覆部材(7)が径方向内側に傾斜する状態に設定される請求項1乃至3のいずれか一項に記載の瓶口用キャップ。
【請求項5】
被覆部材(7)と囲繞筒部(6)との境目に円環状の薄肉部(8)が形成されている請求項1乃至4のいずれか一項に記載の瓶口用キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瓶体の瓶口部を封止する瓶口用キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、瓶口内に着脱自在に嵌合される栓体と、この栓体から下方に延び、瓶口の外周面を囲い且つ径方向に貫く窓孔を形成された囲繞筒と、窓孔に内側に配設された被係止片とを備え、被係止片は、窓孔の内面に、弾性変形可能に形成された連結片を介して連結され、囲繞筒の内側に向けて折り返し可能に配設され、被係止片が、囲繞筒の内側に向けて折り返され、瓶口の外周面に形成された係止部に係止されることにより、瓶口に対する栓体の上方移動が規制される瓶口用キャップが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な日本酒の製造ラインでは、高温充填を行うと、香気成分が抜けてしまうことから、冷酒(例えば5℃前後)の状態で瓶詰めした後、高温(例えば70前後の)の温水シャワーを瓶体にかける加熱殺菌処理が行われる。
上記特許文献1に記載の発明では、被係止片が、囲繞筒の内側に向けて折り返され、瓶口の外周面に形成された係止部に係止されることにより、瓶口に対する栓体の上方移動が規制されるため、加熱殺菌処理中に、温水シャワーの熱による変形及び内圧上昇によってキャップが瓶口から外れてしまう問題については改善されたものの、囲繞筒に切欠き状の窓孔を複数有することからデザイン性の面で採用されにくいという問題があった。
【0005】
また加熱殺菌処理中におけるキャップ外れの問題についても更なる改善が求められている。
【0006】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、加熱殺菌処理中におけるキャップ外れの問題を改善すると共にデザイン性に優れた瓶口用キャップを創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の主たる手段は、
下面に瓶口部に密嵌合する栓体部を備えた上蓋部と、上蓋部の外周面の下端に水平弱化部を介して分離可能に連設された囲繞筒部と、囲繞筒部の下端に折り曲げ可能に連設された複数の被覆片から成る被覆部材と、を有して構成された瓶口用キャップであって、
栓体部が瓶口部内に密嵌合される際に、瓶口部によって囲繞筒部の内面に向けて折り返されると共に瓶口部の外周面に設けられた被係止部を係止する係止部が前記複数の被覆片の内面に設けられており、
係止部が被係止部を係止すると同時に、前記係止部が前記囲繞筒部の内面に向けて折り返されることで前記複数の被覆片が径方向内側に向かって引っ張られて広がる状態から閉塞状態に遷移し、被覆部材の下端内面が瓶口部の外周面に当接可能に設定されることを特徴とする、と云うものである。
本発明の主たる発明では、加熱殺菌処理中における瓶口部からの瓶口用キャップの外れを防止することが可能になると共に、窓孔を有しないことからデザイン性を向上させることができる。
【0008】
本発明の他の手段は、上記主たる手段に、複数の被覆片は、被覆部材に複数のスリットが形成されることで構成されている、との手段を加えたものである。
上記手段では、被覆部材を複数の被覆片で構成できることから、折り曲げ線を起点とする被覆部材の折り曲げ変形を容易とすることができる。
【0009】
また本発明の他の手段は、上記手段に、被覆部材は、瓶口部の外周面に当接する部分が肉薄で形成されている、との手段を加えたものである。
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、被覆部材が瓶口部の外周面に当接した状態において、被覆部材が径方向内側に傾斜する状態に設定される、との手段を加えたものである。
上位手段では、各被覆部材の下端内面が瓶口部の外周面を径方向内側に向かって押圧し易くなることから、瓶口用キャップの抜け止めを補強し得る。
【0010】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、被覆部材と囲繞筒部との境目に円環状の薄肉部が形成されているとの手段を加えたものである。
上位手段では、被覆部材が折り曲げ線を起点とする折れ曲が変形をし易くできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、加熱殺菌処理中の温水シャワーの熱による変形及び内圧上昇によってキャップが瓶口部から外れてしまう問題を改善できる。
また瓶口用キャップのデザイン性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例として装着前の瓶口用キャップを示す斜視図である。
【
図5】瓶口に装着した状態を示す瓶口用キャップの正面図である。
【
図6】(a)は装着前の瓶口用キャップと瓶口の状態を示す半断面図、(b)は装着後の瓶口用キャップと瓶口の状態を示す半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施例として装着前の瓶口用キャップを示す斜視図、
図2は
図1に示す瓶口用キャップの平面図、
図3は
図1に示す瓶口用キャップの底面図、
図4は
図1に示す瓶口用キャップの半断面図である。尚、
図1~
図3は被覆部材を径方向外側に折り曲げた状態を示している。
【0014】
本発明の瓶口用キャップは、例えば一升瓶や四合瓶などの瓶口部に装着されて封止するものである。
本発明の瓶口用キャップ1は、上蓋部2と、この上蓋部2の外周端に垂下設された外周壁3の下端に連設された封緘筒部4と、上蓋部2の下面に設けられて閉栓時に瓶口部内に挿入される栓体部13とを有して合成樹脂製材料により一体に形成されている。外周壁3の周囲には複数の縦溝からなり、特に周方向における滑り止め効果を発揮するローレット3aが刻設されている。
【0015】
封緘筒部4は、外周壁3の下端に薄肉部を水平に周設して成る水平弱化部5を介して分離可能に連設された囲繞筒部6と、この囲繞筒部6の下端に折り曲げ可能に連設された複数(本実施例では6枚)の被覆片7a,7b,7c,7d,7e及び7fから成る被覆部材7とを有して形成されている。
【0016】
被覆部材7を構成する個々の被覆片7a~7fは垂れ形状の部材で構成されている。すなわち、被覆片7a~7fは、周方向に一定の間隔で配置された複数(本実施例では6個)のスリット11によって円筒状の部材の下半分を分割したような構成である(
図5参照)。個々の被覆片7a~7fは、その肉厚寸法が上方の基端から下端に向かって徐々に薄くなる形状で形成されている。
【0017】
封緘筒部4の内面側で且つ囲繞筒部6と被覆部材7との境目の位置には円環状の薄肉部8(
図4参照)が形成されており、個々の被覆片7a~7fは、薄肉部8の逆側となる封緘筒部4の表面側で且つ囲繞筒部6と被覆部材7との境目となる位置にリング状に形成された折り曲げ線9を起点に径方向外側に向かって夫々折り曲げ可能に構成されている。
【0018】
図3及び
図4に示すように、各被覆片7a~7fの上方基端側の内面には、薄肉部8の下部位置から径方向内側に向かって延びると共に弾性変形可能に形成された連結部10aと、下方に向けて凸曲面状に突出する係止凸部10bとを備えて成る複数(本実施例では6個)の係止部10が夫々設けられている。また囲繞筒部6の内面には、折り返し後の係止部10を収容する段差凹部6aが形成されている。
【0019】
囲繞筒部6には、周方向の少なくとも一箇所の位置に、スリット11の上端の位置から水平弱化部5に向かって傾斜状に延びる薄肉部を配設して成る傾斜弱化部12が設けられている。傾斜弱化部12は、その下端が被覆片7aと被覆片7fの間に形成されているスリット11に連続する位置に形成されている。
【0020】
また傾斜弱化部12の下端のスリット11の両側に設けられた2つの被覆片7a、7fのうち、開栓方向下流側(
図5では右側)となる位置に設けた被覆片7aの表面には、開栓方向を示す矢印αが表示されている。そして、被覆片7a及び被覆片7fの下端の両角部うち、スリット11を挟んで互いに隣り合う側の角部は凸湾曲状に丸められている。また
図3に示すように、被覆片7aの裏面には、径方向内側に向かって突出する突起7Aが形成されている。
【0021】
更に
図3に示すように、被覆片7aと被覆片7fとに対応して夫々設けられた2つの係止部10は、共に傾斜弱化部12の下端に連続するスリット11(被覆片7aと被覆片7fの間のスリット11)を避けた位置で、且つその他の係止部10よりも周方向に短い形状を有して形成されている。この構成では、後述する打栓時において、大きな衝撃が各係止部10に作用した際に、傾斜弱化部12が誤まって破断してしまうことを防止することができる。
【0022】
図3及び
図4に示すように、栓体部13は内部に空洞が形成された円筒状の部材であり、その外周面は上蓋部2の下面2Aから下端にかけて径寸法が異なる径寸法を有して形成されている。すなわち、上蓋部2の下面2Aから軸方向の略中間位置までの上端部13Aは、略中間位置から下端までの下端部13Bよりも太い径寸法で形成されている。そして、上端部13Aの外周面には、補強用の縦リブ13aが周方向に所定の間隔を有して複数形成されている。縦リブ13aの軸方向の長さ寸法は、上端部13Aの軸方向の長さ寸法よりも短く形成されており、縦リブ13aの下端は瓶体20の瓶口部21の上端に当接可能である。上端部13Aのうち、上端部13Aの下部(縦リブ13aの下端よりも下方に位置する部分)は、瓶口部21の内周面よりも僅かに大きな寸法で形成されており、瓶口部21の上部内周面に密嵌合することで封止を行うシール部14として機能する。
【0023】
上記構成からなる瓶口用キャップ1を瓶体20の瓶口部21に装着するには、まず、
図6(a)に示すように、折り曲げ線9において各被覆片7a~7fの下端を径方向外側に広げた状態に被覆部材7を設定する。
【0024】
次に、瓶口用キャップ1を打栓し、栓体部13側のシール部14を瓶口部21内に密嵌合させて閉栓させる。この際、瓶口部21の上端が係止凸部10bに当接するため、係止部10は弾性変形可能に設けられた連結部10aにおいて上方の囲繞筒部6の内面に向けて折り返され、段差凹部6a内に収容される。そして、係止部10は係止凸部10bの裏面が囲繞筒部6の内周面に対向すると共に係止凸部10bが径方向内側に向く状態に設定される。更に係止凸部10bが、瓶口部21の外周面を摺動しながら被係止部22に侵入して係止する同時に、栓体部13側の縦リブ13aの下端が瓶口部21の上端に当接するため、瓶口部21に対する瓶口用キャップ1のこれ以上の下方への移動が規制される。
【0025】
また
図6(b)に示すように、係止部10が連結部10aにおいて囲繞筒部6の内面に向けて折り返されると、各
被覆片7a~7fが径方向内側に向かって引っ張られて閉じるため、被覆部材7が広がる状態から閉塞状態に設定される。
この際、各
被覆片7a~7fの下端内面が、瓶口部21の外周面に当接すると共に、下端が薄肉で形成されている被覆部材7は、その下端が径方向内側に傾斜する状態に設定される。
【0026】
そして、係止部10が被係止部22に係止される作用と被覆部材7の下端が瓶口部21の外周面に当接する作用とが相まって、瓶口部21に対する瓶口用キャップ1の上方への移動が規制され、結果として加熱殺菌処理中における瓶口部21からの瓶口用キャップ1の外れを防止することが可能となる(抜け止め効果)。
尚、被覆部材7aは、その内面に形成された突起7Aが瓶口部21の外周面に当接するため、被覆片7aと瓶口部21の外周面との間に隙間が形成される。
【0027】
次に、上記構成からなる瓶口用キャップの瓶口部からの開栓方法について説明する。
指先で被覆片7aを摘持し、引っ張りながら矢印αで示される開栓方向に周回させることにより、まず傾斜弱化部12を破断させる。続いて被覆片7aを開栓方向に引っ張って水平弱化部5を破断させることにより、囲繞筒部6の下端から被覆部材7を分離させる。
尚、瓶口部21の外周面と被覆片7aとの間には隙間が形成されているため、この隙間内に指先又は爪等を挿入することで被覆片7aを容易に摘持することができる。
【0028】
被覆部材7を取り外した後においても栓体部13は瓶口部21内に密嵌合して強固にシールし、且つ上蓋部2は瓶口部21の上に露出した状態にある。よって、上蓋部2の外周壁3に形成されているローレット3aを把持しながら栓体部13を引き抜くことで開栓することができ、開栓後においては瓶口部21を通じて瓶体20内の内容液を注出させることが可能となる。
また開栓後は、栓体部13を瓶口部21内に密嵌合させることにより再閉栓(リキャップ)することが可能である。
【0029】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
例えば、上記実施例では、被覆部材7の肉厚寸法が上方の基端から下端に向かって徐々に薄くなる形状で形成されている場合を示して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、瓶口部21の外周面に当接する被覆部材7の下端部分のみを肉薄に形成した構成としてもよい。
【0030】
また上記実施例では、被覆部材7にスリット11を有する構成を示して説明したが、スリット11を有しない構成であってもよい。
【0031】
また上記実施例では、被覆部材7が6枚の被覆片7a~7bを有する構成を示して説明したが、被覆片の枚数は上記実施例に限るものではない。
【0032】
また上記実施例では、上蓋部2と封緘筒部4が一体成形された瓶口用キャップを示して説明したが、上蓋部2と封緘筒部4とが夫々別体に形成され、使用に際して組み合わされる構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は瓶口用キャップの分野における用途展開を更に広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 : 瓶口用キャップ
2 : 上蓋部
2A : 上蓋部の下面
3 : 外周壁
3a : ローレット
4 : 封緘筒部
5 : 水平弱化部
6 : 囲繞筒部
6a : 段差凹部
7 : 被覆部材7
7a,7b,7c,7d,7e,7f : 被覆片
7A : 突起
11 : スリット
8 : 薄肉部
9 : 折り曲げ線
10 : 係止部
10a: 連結部
10b: 係止凸部
12 : 傾斜弱化部
13 : 栓体部
13A: 栓体部の上端部
13B: 栓体部の下端部
13a: 縦リブ
14 : シール部
20 : 瓶体
21 : 瓶口部
22 : 被係止部