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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】ロータリーダンパー
(51)【国際特許分類】
   F16F 7/06 20060101AFI20240904BHJP
   F16F 15/12 20060101ALI20240904BHJP
   F16F 7/04 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
F16F7/06
F16F15/12 Z
F16F7/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021142962
(22)【出願日】2021-09-02
(65)【公開番号】P2023036128
(43)【公開日】2023-03-14
【審査請求日】2024-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100102417
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】飯山 俊男
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-340076(JP,A)
【文献】特開平08-233011(JP,A)
【文献】実開昭62-170843(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0017113(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0221376(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 7/00- 7/14
F16F 15/00- 15/36
E05F 1/00- 13/04
E05F 17/00
A47K 13/00- 17/02
F16C 11/00- 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定のハウジング及び前記ハウジングの内側において中心軸の周りを回転する回転体を具備し、
前記ハウジングの内側には更に、固定で且つ周方向に延在する無端状の内周面及び外周面が設けられ、前記内周面及び前記外周面は夫々対向又は背中合わせに配置されて環状路を規定し、前記内周面及び前記外周面には夫々凹凸が周方向に繰り返し多数形成されており、
前記回転体には作動子が組み合わされて、前記作動子は前記環状路と係合し、
前記回転体が回転すると、前記作動子は前記環状路に沿って前記回転体と共に前記中心軸の周りを周方向に移動しながら径方向に往復移動して前記内周面及び前記外周面に交互に繰り返し衝突せしめられる、ロータリーダンパー。
【請求項2】
前記作動子には軸方向に延びる作動軸が設けられている、請求項1に記載のロータリーダンパー。
【請求項3】
前記回転体は前記中心軸に対して垂直な回転板を備え、前記回転板には径方向に延びて前記作動軸が挿通せしめられる回転長穴が形成されている、請求項2に記載のロータリーダンパー。
【請求項4】
前記ハウジングの内側には前記中心軸の周りを回転可能であって且つ制動トルク付与手段によって所要制動トルクが付与されている制動板が配置され、前記制動板は前記ハウジングによって軸方向に支持されており、前記制動板には径方向に延びて前記作動軸が挿通せしめられる制動長穴が形成されている、請求項2又は3に記載のロータリーダンパー。
【請求項5】
軸方向に見ると、前記内周面に形成された前記凹凸の凸及び前記外周面に形成された前記凹凸の凹の変曲点の周方向位置が整合すると共に、前記内周面に形成された前記凹凸の凹及び前記外周面に形成された前記凹凸の凸の変曲点の周方向位置が整合する、請求項1乃至4のいずれかに記載のロータリーダンパー。
【請求項6】
前記内周面に形成された前記凹凸はエピトロコイド形状である、請求項1乃至5のいずれかに記載のロータリーダンパー。
【請求項7】
前記環状路は溝形状であって前記内周面及び前記外周面は対向して配置され、前記作動子は前記内周面と前記外周面との間に配置される係合部を備えている、請求項1乃至6のいずれかに記載のロータリーダンパー。
【請求項8】
前記係合部は周方向に間隔をおいて2つ設けられており、2つの前記係合部は周方向に延びる接続部によって接続されている、請求項7に記載のロータリーダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーダンパー殊にメカニカル(機械式)ロータリーダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば炊飯器には、ヒンジ手段によって釜の上面を覆う閉位置と釜の上面を露呈せしめる開位置との間を旋回自在な蓋が設けられている。蓋はばねの如き適宜の付勢部材によって付勢された状態でロック機構により閉位置でロックされており、所要操作によって上記ロックが解除されると付勢して閉位置から開位置へ旋回せしめられる。付勢して旋回せしめられた蓋の旋回速度(運動エネルギ)は蓋の回転軸に接続されたロータリーダンパーの作用によって減衰せしめられ、蓋は開位置において衝撃を生じることなく停止する。かようなロータリーダンパーは炊飯器の蓋以外にもトイレの便座やブラインドの巻き取り機構等に設けられることもある。
【0003】
ロータリーダンパーとしては、内部にシリコンオイル等の比較的粘性の高い流体が封入されたハウジングと、ハウジングに回転自在に装着された回転部材とを備える形式の所謂オイルダンパーが広く実用に供されている。オイルダンパーにおいては、流体の粘性抵抗により回転部材の回転に対して逆向きのトルクを回転部材に作用させることで、入力回転部材又は出力回転部材の回転速度を低減させる。下記特許文献1には、オイルダンパーの一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-12166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、特許文献1に開示されたオイルダンパーにあっては、ハウジング内に封入された流体が外部に漏洩する虞がある。また、一般的に流体の粘性抵抗は温度によって変化することから、気温の高い夏場と気温の低い冬場とではオイルダンパーが付与する上記逆向きのトルクが変化してしまい、これにより制限される入力部材又は出力部材の回転速度も異なってしまう。
【0006】
ところで、本発明者は本願に先立って出願した特願2020-165789の明細書及び図面において、流体の粘性抵抗を利用することなく機械的に回転体の回転速度を減衰させることが可能なロータリーダンパー(以下「先行ロータリーダンパー」という)を提案した。このロータリーダンパーは固定のハウジング及び前記ハウジングの内側において中心軸の周りを回転する回転体を具備している。前記ハウジングの内側には更に、固定で且つ周方向に延在する無端状の内周面及び外周面が設けられ、前記内周面及び前記外周面は夫々対向して配置されて溝形状の環状路を規定している。また、前記内周面及び前記外周面には夫々凹凸が周方向に繰り返し多数形成されている。前記回転体には作動子が組み合わされ、前記作動子は前記環状路と係合する。そして、前記回転体が回転すると、前記作動子は前記環状路に沿って前記回転体と共に前記中心軸の周りを周方向に移動しながら径方向に往復移動する。この先行ロータリーダンパーによれば、回転体が回転した際に作動子を周方向に移動させながら径方向に往復移動させることで回転体の運動エネルギが作動子の運動エネルギに変換され、これにより回転体の回転速度が減衰せしめられる。
【0007】
而して、本発明者によれば、上記先行ロータリーダンパーも充分に満足し得るものではなく、回転体の回転速度をより効果的に減衰させることが要求されている。
【0008】
本発明は上記事実及び要求に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、流体の粘性抵抗を利用することなく機械的に回転体の回転速度を効率よく減衰させることが可能な新規のダンパーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討の結果、回転体が回転すると、作動子は回転体と共に中心軸の周りを周方向に移動しながら径方向に往復移動して固定の内周面及び外周面に交互に繰り返し衝突せしめられるように構成することで、上記主たる技術的課題を解決することができることを見出した。
【0010】
ここで、本明細書における「衝突」なる語は、2つの異なる物体が相対的に移動した際に、一方の物体と他方の物体とが離隔した状態から当接すること、より好ましくは勢いをもって当接すること、を意味する。
【0011】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を解決するロータリーダンパーとして、固定のハウジング及び前記ハウジングの内側において中心軸の周りを回転する回転体を具備し、
前記ハウジングの内側には更に、固定で且つ周方向に延在する無端状の内周面及び外周面が設けられ、前記内周面及び前記外周面は夫々対向又は背中合わせに配置されて環状路を規定し、前記内周面及び前記外周面には夫々凹凸が周方向に繰り返し多数形成されており、
前記回転体には作動子が組み合わされて、前記作動子は前記環状路と係合し、
前記回転体が回転すると、前記作動子は前記環状路に沿って前記回転体と共に前記中心軸の周りを周方向に移動しながら径方向に往復移動して前記内周面及び前記外周面に交互に繰り返し衝突せしめられる、ロータリーダンパーが提供される。
【0012】
好ましくは、前記作動子には軸方向に延びる作動軸が設けられている。この場合には、前記回転体は前記中心軸に対して垂直な回転板を備え、前記回転板には径方向に延びて前記作動軸が挿通せしめられる回転長穴が形成されているのがよい。さらに、前記ハウジングの内側には前記中心軸の周りを回転可能であって且つ制動トルク付与手段によって所要制動トルクが付与されている制動板が配置され、前記制動板は前記ハウジングによって軸方向に支持されており、前記制動板には径方向に延びて前記作動軸が挿通せしめられる制動長穴が形成されているのが好ましい。好適には、軸方向に見ると、前記内周面に形成された前記凹凸の凸及び前記外周面に形成された前記凹凸の凹の変曲点の周方向位置が整合すると共に、前記内周面に形成された前記凹凸の凹及び前記外周面に形成された前記凹凸の凸の変曲点の周方向位置が整合する。前記内周面に形成された前記凹凸はエピトロコイド形状であるのがよい。好適には、前記環状路は溝形状であって前記内周面及び前記外周面は対向して配置され、前記作動子は前記内周面と前記外周面との間に配置される係合部を備えている。この場合には、前記係合部は周方向に間隔をおいて2つ設けられており、2つの前記係合部は周方向に延びる接続部によって接続されているのがよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のロータリーダンパーによれば、回転体が回転すると、作動子は回転体と共に中心軸の周りを周方向に移動しながら径方向に往復移動することから、回転体の運動エネルギは作動子に吸収されるため、回転体の回転速度を減衰させることができる。本発明のロータリーダンパーにあっては更に、作動子が上記のとおりに作動する際には内周面及び外周面に交互に繰り返し衝突せしめられ、上記衝突が生じると作動子の運動エネルギは消失せしめられることから、作動子は回転体の運動エネルギを吸収し続けることができ、回転体の回転速度を効果的に減衰させることができる。従って、本発明のロータリーダンパーによれば流体の粘性を利用することなく機械的に回転体の回転速度を減衰させることが可能となり、流体の外部への流出や気温差による制動トルクの変化は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に従って構成されたロータリーダンパーの全体的な構造を示す図。
図2図1に示すロータリーダンパーのハウジングを単体で示す図。
図3図1に示すロータリーダンパーの回転体を単体で示す図。
図4図1に示すロータリーダンパーの作動子を単体で示す図。
図5図1に示すロータリーダンパーの制動板を単体で示す図。
図6-1】図1に示すロータリーダンパーの作動を説明するための図。
図6-2】図1に示すロータリーダンパーの作動を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に従って構成されたロータリーダンパーの好適実施形態を示す添付図面を参照して、更に詳細に説明する。なお、以下の説明における「軸方向片側」及び「軸方向他側」とは、特に指定しない限り、図1の中央縦断面図に示される状態を基準として、「軸方向片側」とは同図において左側を、「軸方向他側」とは同図において右側のことを言う。
【0016】
図1を参照して説明すると、全体を番号2で示すロータリーダンパーは、ハウジング4及びハウジング4の内側において中心軸oの周りを回転する回転体6を具備している。
【0017】
図1と共に図2を参照して説明すると、ハウジング4は図2(a)に示すハウジング主部8及び図2(b)に示すシールド板10を含んでいる。ハウジング主部8は正方形の端板12と端板12の外周縁から軸方向他側に延出する筒状の外側壁14とを有しており、外側壁14の内側には断面円形の内側空間部16が設けられている。端板12の中央には軸方向に貫通する円形の貫通穴18が形成されており、貫通穴18には回転体6における後述する軸部40の軸方向片側端部が挿通されている。端板12の軸方向他側面には、有底溝形状で所要溝幅を有する環状路20が貫通穴18を囲繞して中心軸oと同軸上に設けられている。このことから、図示の実施形態においては、端板12は環状路20の内周縁を規定して径方向外側を向く無端状の内周面22及び環状路20の外周縁を規定して径方向内側を向く無端状の外周面24を有し、内周面22及び外周面24は対向して位置している。そして、内周面22及び外周面24には夫々凹凸が周方向に繰り返し多数形成されている。図示の実施形態においては、軸方向に見ると、内周面22に形成された凹凸の凸22a及び外周面24に形成された凹凸の凹24bの変曲点の周方向位置が整合すると共に、内周面22に形成された凹凸の凹22b及び外周面24に形成された凹凸の凸24aの変曲点の周方向位置が整合している。そして、内周面22に形成された凹凸はエピトロコイド形状である。一方、外周面24に形成された凹凸は、内周面22に形成された凹凸の凸22aの曲率よりも小さい曲率を有する弧状内面(つまり凹24b)を周方向に連続して配置した形状である。外側壁14の軸方向他側端部の内径は幾分拡径せしめられており、外側壁14の軸方向他側端部には中心軸oに対して垂直で且つ軸方向他側を向く円環形状の肩面30が設けられている。外側壁14の軸方向他側端面の角部には、軸方向片側に向かって直線状に延びるボルト穴32が形成されている。ハウジング主部8の下部にはフランジ部33も設けられており、フランジ部33をボルトなどの図示しない適宜の締結具で壁(これも図示せず)に固定することで、ハウジング4は固定される。
【0018】
シールド板10は外側壁14の軸方向他側に配置されている。シールド板10はハウジング主部8の端板12と対応する正方形である。シールド板10の中央には軸方向に貫通する円形の貫通穴34が形成されており、貫通穴34には回転体6における後述する軸部40の軸方向他側端部が挿通されている。シールド板10の軸方向片側面には貫通穴34を囲繞して軸方向片側に僅かに突出する円環形状の突出部36が形成されている。突出部36の外径は外側壁14の軸方向他側端部の内径と実質上同一又はこれよりも僅かに小さく、図1の中央縦断面図に示すとおり、突出部36は内側空間部16に進入せしめられる。シールド板10の角部には、軸方向に貫通する固定穴38が形成されており、固定穴38に図示しないボルトを挿通せしめてこれをハウジング主部8のボルト穴32に締結させることで、シールド板10はハウジング主部8に固定される。
【0019】
図1と共に図3を参照して説明すると、回転体6は中心軸oに沿って軸方向に延びる断面円形の軸部40及び中心軸oに対して垂直な円形の回転板42を備えている。軸部40の中央には軸方向に延びる接続軸穴44が形成されている。接続軸穴44の断面形状は略六角星形状であって、接続軸穴44には外部機器の回転軸が挿通されて連結せしめられる。軸部40の軸方向片側端部がハウジング主部8の貫通穴18に挿通されると共に軸部40の軸方向他側端部がシールド板10の貫通穴34に挿通されることで、回転体6はハウジング4の内側において中心軸oの周りを回転可能となる。回転板42は軸部40の軸方向中間位置に設けられており、回転板42の中心は軸部40の中心軸(つまり中心軸o)と同軸に位置する。回転板42の径方向中間部には径方向に直線状に延びて軸方向に貫通する回転長穴46が周方向に等角度間隔をおいて4つ形成されている。
【0020】
図1に示すとおり、回転体6には全体を番号48で示す作動子が組み合わされる。図1(並びに図6-1及び図6-2)では、容易に理解できるように、作動子48の断面については薄墨を付して示している。図1と共に図4を参照して説明すると、作動子48は扇形状の作動板50を備えている。作動板50は、図1の中央縦断面図に示されるとおり、ハウジング主部8の内側空間部16において端板12と回転体6の回転板42との間で、軸方向に対して垂直に配置される。作動板50の軸方向片側面の外周縁部には、軸方向に延出してハウジング主部8の端板12に設けられた内周面22と外周面24との間つまり環状路20内に進入する係合部52が設けられている。軸方向に見ると係合部52は略円形であって、周方向に間隔をおいて2つ設けられており、2つの係合部52は周方向に延びる接続部54によって接続されている。作動板50の軸方向他側面の中央には軸方向に延出する断面円形の作動軸56が設けられており、作動軸56は回転体6の回転板42に形成された回転長穴46に挿通せしめられる。
【0021】
図示の実施形態においては、ハウジング4の内側には更に中心軸oの周りを回転可能であって且つ制動トルク付与手段によって所要制動トルクが付与されている制動板58も配置されている。図1と共に図5を参照して説明すると、制動板58は円板であってハウジング主部8の外側壁14の軸方向他側端部の内側に配置されている。制動板58の中央には軸方向に貫通する円形の貫通穴60が形成されており、貫通穴60には回転体6の軸部40の軸方向他側端部が挿通せしめられている。制動板58の径方向中間部には径方向に直線状に延びて軸方向に貫通する制動長穴62が周方向に等角度間隔をおいて4つ形成されており、制動長穴62には作動子48の作動軸56が挿通せしめられる。制動長穴62に作動軸56が挿通せしめられていることで、制動板58は作動子48と共につまり回転体6と共に中心軸oの周りを回転する。上記制動トルク付与手段は、図示の実施形態においては波ばね64であって、これは制動板58とシールド板10との間に配置されている。制動板58は波ばね64によって軸方向片側に押圧され、制動板58の軸方向片側面の外周縁部がハウジング主部8の肩面30と当接することで、制動板58には摩擦に起因した上記所要制動トルクが付与される。このとき、制動板58は肩面30によって軸方向に支持されるため、制動板58が作動子48を軸方向に押圧することはない。つまり、制動板58はハウジング4によって軸方向に支持されている。
【0022】
続いて、図1と共に図6-1及び図6-2を参照して、ロータリーダンパー2の作動について説明する。回転体6が中心軸oの周りを回転すると、回転体6の回転板42に形成された回転長穴46には作動子48の作動軸56が挿通せしめられているため、作動子48も回転体6と共に中心軸oの周りを回転する。このとき、図示の実施形態においては、作動軸56が挿通せしめられる回転長穴46は径方向に延在しているため作動子48は径方向にも移動自在であること、及び作動子48の係合部52が進入するハウジング主部8の環状路20の内周面22及び外周面24には夫々凹凸が周方向に繰り返し多数形成されていることに起因して、回転体6が回転すると、作動子48は環状路20に沿って回転体6と共に中心軸oの周りを周方向に移動しながら径方向に往復移動して内周面22及び外周面24に交互に繰り返し衝突せしめられる。
【0023】
図6-1及び図6-2を参照して更に詳細に説明すると、図6-1(a)は図1に示す状態の部分拡大図である。この状態にあっては、同図の左側図に示すとおり、係合部52は環状路20内において内周面22から離隔するが外周面24とはここに形成された凹凸の凹24bにおいて当接している。このとき、同図の右側図に示すとおり、作動軸56は回転長穴46内の径方向外側端に位置している。図1図6-1(a))に示す状態から、回転体6が回転して作動子が図6-1(a)において反時計方向に移動すると、係合部52は外周面24に形成された凹凸の凸24aと衝突すると共にその跳ね返りによって径方向内側に強制せしめられる。そして、係合部52は、図6-1(b)に示すとおり外周面24から離隔した後に、図6-2(c)に示すとおり内周面22に形成された凹凸と衝突する。図6-2(c)に示す状態にあっては、作動軸56は回転長穴46内の径方向内側端に位置する。係合部52が内周面22に形成された凹凸と衝突すると、その跳ね返りによって係合部52は径方向外側に強制せしめられるため、図6-2(c)に示す状態から回転体6が更に回転すると、図6-2(d)に示すとおり、係合部52は再び外周面24に衝突することとなる。つまり、回転体6が回転すると、係合部52は内周面22に形成された凹凸及び外周面24に形成された凹凸に起因して上記衝突を繰り返しながら周方向に移動する。
【0024】
本発明のロータリーダンパーによれば、回転体6が回転すると、作動子48は回転体6と共に中心軸oの周りを周方向に移動しながら径方向に往復移動することから、回転体6の運動エネルギは作動子48に吸収されるため、回転体6の回転速度を減衰させることができる。本発明のロータリーダンパーにあっては更に、作動子48が上記のとおりに作動する際には内周面22及び外周面24に交互に繰り返し衝突せしめられ、上記衝突が生じると作動子48の運動エネルギは消失せしめられることから、作動子48は回転体6の運動エネルギを吸収し続けることができ、回転体6の回転速度を効果的に減衰させることができる。従って、本発明のロータリーダンパーによれば流体の粘性を利用することなく機械的に回転体の回転速度を減衰させることが可能となり、流体の外部への流出や気温差による制動トルクの変化は生じない。図示の実施形態においては、ハウジング4の内側に配置された制動板58の存在に起因して、作動子48は周方向への移動に対してのみ波ばね64(制動トルク付与手段)による所要制動トルクの作用(つまり抵抗)を受けるが、径方向への移動に対しては上記所要制動トルクの作用(つまり抵抗)を受けない。これにより、作動子48(図示の実施形態においては、作動子48の係合部52)と内周面22及び外周面24との衝突の頻度を低下させることなく作動子48に抵抗を付与することができ、回転体6の運動エネルギを効果的に減衰せしめることができる。図示の実施形態においては更に、係合部52が周方向に間隔をおいて2つ設けられており、2つの係合部52は周方向に延びる接続部54によって接続されているため、作動子48が周方向及び径方向に移動する際の姿勢が安定する。
【0025】
以上、本発明に従って構成されたロータリーダンパーについて、添付した図面を参照して詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲内において適宜の修正や変更が可能である。例えば、図示の実施形態においては、回転体6の回転板42に形成された回転長穴46に作動子48の作動軸56が挿通せしめられることで回転体6から作動子48に回転が伝達されていたが、作動軸56を用いることなく先行ロータリーダンパーのように、作動子に軸穴を形成してかかる軸穴に回転体と一体回転するキャリアから延びるキャリア軸を挿通するようにしてもよい。この場合には、作動子に形成される上記軸穴が径方向に延びる長穴となる。また、図示の実施形態においては、内周面22に形成された凹凸はエピトロコイド形状であったが、内周面及び外周面に形成される凹凸は、回転体が回転した際に作動子が交互に繰り返し衝突する形状であれば任意であってよく、内周面及び外周面に形成される上記凹凸はエピトロコイド形状やハイポトロコイド形状等の任意形状であって良い。更に、図示の実施形態においては、環状路20は有底溝形状であったが必ずしも有底でなくてもよく、また、環状路を溝形状に替えて筒形状とすることもできる。環状路を筒形状とした場合には、内周面及び外周面は夫々背中合わせに配置され、作動子の係合部は筒形状の環状路を径方向で挟み込むU字形状となる。つまり、U字形状をなす係合部の内側面が内周面及び外周面と対向する。更にまた、図示の実施形態においてはハウジング4の端板12に環状路20は形成されていたが、環状路をハウジングとは別個に形成された板円板形状の部材に形成すると共に個の部材を端板12に替えてハウジングに固定することもできる。制動トルク付与手段は必ずしも波ばね64である必要はなく、制動板58にのみ所要制動トルクを付与することができるのであれば板ばねやトレランスリング等任意の手段であってよい。各構成部品は金属又は合成樹脂等適宜の材質によって構成することができる。
【符号の説明】
【0026】
2:ロータリーダンパー
4:ハウジング
6:回転体
20:環状路
22:内周面
22a:内周面に形成された凹凸の凸
22b:内周面に形成された凹凸の凹
24:外周面
24a:外周面に形成された凹凸の凸
24b:外周面に形成された凹凸の凹
48:作動子
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】