(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】回転ロック装置及び巻上機
(51)【国際特許分類】
B66D 5/06 20060101AFI20240904BHJP
B66D 3/14 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
B66D5/06
B66D3/14 A
(21)【出願番号】P 2021159862
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000129367
【氏名又は名称】株式会社キトー
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河西 貴幸
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-230726(JP,A)
【文献】特開2004-231306(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0315483(US,A1)
【文献】特開2009-018908(JP,A)
【文献】国際公開第2009/107672(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/00- 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸状部材の一方向への急激な回転をロックする回転ロック装置であって、
前記軸状部材の軸方向に沿った突起を有するストッパ部材と、
前記軸状部材の軸心側から外方に向かってスライド可能な状態で前記ストッパ部材を支持し、前記軸状部材と一体的に回転するストッパ支持部材と、
前記軸状部材の周方向に沿って円弧状に延びる第1溝部と、前記第1溝部の前記一方向における側端部で、前記軸状部材の径方向において前記第1溝部よりも外方に位置する第2溝部とを含むガイド溝を備え、前記ストッパ部材の前記突起が前記ガイド溝に挿入された状態で、前記ストッパ支持部材に対して回転可能に取り付けられる保持プレートと、
前記保持プレートを前記ストッパ支持部材に対して前記一方向に向けて付勢して、前記ストッパ部材の前記突起を前記ガイド溝の前記第1溝部又は前記第2溝部のいずれかの溝部に保持する付勢手段と、
所定の加速度を超えて前記軸状部材が前記一方向に回転したときに、前記軸状部材とともに回転する前記ストッパ支持部材の前記保持プレートに対する相対位置の変化と、前記ストッパ支持部材とともに回転する前記ストッパ部材の遠心力とにより、前記第1溝部に挿入された状態で保持された前記突起が前記第2溝部へと移動することに伴って、前記ストッパ支持部材の外周縁から突出する前記ストッパ部材が衝突することで、前記軸状部材の前記一方向への回転を停止させる係止壁を有するストッパ係止手段と、
前記ストッパ支持部材の外周面から外方に突出する前記ストッパ部材を前記軸状部材の軸心側に押し込み、前記第2溝部に挿入された前記ストッパ部材の前記突起を前記第1溝部へと移動させることで、前記軸状部材の前記一方向への回転停止を解除する解除手段と、
を有することを特徴とする回転ロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転ロック装置において、
前記第1溝部は、前記ストッパ部材が前記ストッパ支持部材とともに回転したときに前記ストッパ部材に作用する遠心力により前記ストッパ部材の前記突起が当接する第1壁面を有し、
前記第2溝部は、前記ストッパ部材の前記突起が前記第2溝部に保持された状態で、前記付勢手段による付勢により前記保持プレートが前記一方向に回転したときに、前記第2溝部に保持された前記ストッパ部材の前記突起が当接する第2壁面を有し、
前記軸方向に直交する平面において、前記第1壁面と前記第2壁面との交点は、前記ストッパ部材の外周面が前記ストッパ支持部材の外周面とを同一面となるときの前記ストッパ部材の前記突起の中心よりも前記軸状部材の軸心側に位置し、
前記解除手段は、前記平面において、前記突起の中心が前記交点の位置よりも前記軸状部材の軸心側となる位置まで前記ストッパ部材を前記軸状部材の軸心側に押し込む
ことを特徴とする回転ロック装置。
【請求項3】
請求項2に記載の回転ロック装置において、
前記解除手段は、
前記軸状部材を前記一方向とは反対方向となる他方向へ回転させたときに、前記ストッパ支持部材の外周面から外方に突出する前記ストッパ部材に摺接され、前記ストッパ部材の外周面が前記ストッパ支持部材の外周面とを同一面となる位置まで、前記ストッパ部材を前記軸状部材の軸心方向に移動させる摺接面と、
前記ストッパ部材の前記突起の中心が前記交点の位置よりも前記軸状部材の軸心側となる位置まで前記ストッパ部材を前記軸状部材の軸心側に押し込む押込部と、
を有する
ことを特徴とする回転ロック装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回転ロック装置において、
前記解除手段は、前記保持プレートから離れる方向に付勢された状態で前記ストッパ係止手段に回動自在に取り付けられ、
前記解除手段は、前記保持プレートに向けた押圧を受けて前記ストッパ支持部材の外周面から外方に突出する前記ストッパ部材を前記軸状部材の軸心側に押し込む
ことを特徴とする回転ロック装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の回転ロック装置と、
一対のフレームに軸支され、荷を吊り上げるチェーンが掛け回されているロードシーブと、
前記ロードシーブと減速ギヤを介して連結されると共に、前記軸状部材に対応する駆動軸と、
前記ロードシーブを前記一方向に対応する巻下げ方向又は前記巻下げ方向とは反対方向となる巻上げ方向のいずれか一方の方向に回転させる操作レバーと、
前記軸状部材の周囲に取り付けられると共に外周側にラチェット歯を有する爪車と、前記ラチェット歯に係合する爪部材と、前記爪部材の回動を軸支する爪軸とを備え、前記ラチェット歯と前記爪部材との係合によって爪車の前記巻上げ方向への回転は許容すると共に前記巻下げ方向への回転は不可とするラチェット機構を備えたブレーキ装置と、
を備える
ことを特徴とする巻上機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ロック装置及び巻上機に関する。
【背景技術】
【0002】
荷物を昇降する、荷物を引き寄せる、或いは荷物をスリング等で固定する(荷締めする)等の作業のために、レバーホイストが広く用いられている。レバーホイストは、手で操作レバーを駆動操作することで、チェーンの巻上げ(巻取り)や巻下げ(巻戻し)を行うことができる。レバーホイストとしては、例えば特許文献1に示すものがある。特許文献1に示すレバーホイストは、従来からあるブレーキ機構(メカニカルブレーキ)の他に、ドライブシャフト(10)に取り付けられる1以上の遠心力部材(31)と、遠心力部材(31)を収納するハウジングリング(35)を備えている。遠心力部材(31)は、ドライブシャフト(10)が回転すると、ドライブシャフト(10)とともに回転し、回転により作用する遠心力によって、ハウジングリング(35)の内周面に押し付けられる。それにより、荷が落下する速度を低下させるようにしている。
【0003】
また、従来からあるブレーキ機構(メカニカルブレーキ)としては、特許文献2に示すものがある。特許文献2に示すブレーキ機構は、駆動軸(4)に回転不能に取り付けられた受圧部材(7)と、駆動軸(4)に螺合する駆動部材(8)と、一対のブレーキ板(10a,10b)と、逆転防止用爪車(11)と、爪軸(15)に取り付けられたラチェット爪(12)とを備えている。そして、ラチェット爪(12)がバネ(13)によって付勢されることで、ラチェット爪(12)は爪車(11)の係止歯(11a)に係合されている。ラチェット爪(12)と爪車(11)の係止歯(11a)との係合により、爪車(11)の逆転が防止され、それによって駆動軸(4)は巻下げ方向に回転できない構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】DE102015121581A1号公報
【文献】特開2008-230726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ホイスト類(レバーホイストやチェーンブロック)の巻上げに際して、外周に多数のラチェット歯が形成された爪車と、このラチェット歯と噛み合う爪部材と、を備えたラチェット機構を有するブレーキ機構(メカニカルブレーキ)において、爪車及び爪部材の噛み合いの不具合や、これら部材の損傷が発生すると、ブレーキ機構が正常に機能しなくなり、吊り荷の荷重によってチェーンを巻き取るロードシーブが勢い良く巻下げ方向に回転し始め、荷を落下させてしまう。
【0006】
例えば特許文献1に開示の構成では、遠心力部材(31)が遠心力の作用によりハウジングリング(35)の内周面に押し付けられ、荷の落下速度(すなわち、ピニオンの回転速度)を遅くするものであるが、荷の落下を停止させるものではない。そこで、ブレーキ装置が故障した場合など、荷の荷重によって巻下げ方向へ急加速で回転する駆動軸をロックして駆動軸の回転を停止させる装置(以下、回転ロック装置)が必要となる。このような回転ロック装置は、荷が再度落下することを防止するため、上述した駆動軸を一旦ロックすると駆動軸のロックを容易には解除することができない。また、上述したレバーホイストなどを用いた作業では、チェーンの無負荷側を勢い良く引っ張るといった巻上げ動作を行ってチェーンの弛みを一気に無くすなどの操作を行なうことがある。このような想定外の操作は、回転ロック装置を意図せず作動させ、駆動軸を回転不能にする恐れがある。このように、回転ロック装置が作動すると、回転ロック装置を復旧するのに手間が生じるという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、誤操作により回転ロック装置が作動して駆動軸が回転不能となったときに、駆動軸の回転不能となる状態を容易に解除することができる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の回転ロック装置は、軸状部材の一方向への急激な回転をロックする回転ロック装置であって、前記軸状部材の軸方向に沿った突起を有するストッパ部材と、前記軸状部材の軸心側から外方に向かってスライド可能な状態で前記ストッパ部材を支持し、前記軸状部材と一体的に回転するストッパ支持部材と、前記軸状部材の周方向に沿って円弧状に延びる第1溝部と、前記第1溝部の前記一方向における側端部で、前記軸状部材の径方向において前記第1溝部よりも外方に位置する第2溝部とを含むガイド溝を備え、前記ストッパ部材の前記突起が前記ガイド溝に挿入された状態で、前記ストッパ支持部材に対して回転可能に取り付けられる保持プレートと、前記保持プレートを前記ストッパ支持部材に対して前記一方向に向けて付勢して、前記ストッパ部材の前記突起を前記ガイド溝の前記第1溝部又は前記第2溝部のいずれかの溝部に保持する付勢手段と、所定の加速度を超えた加速度で前記軸状部材が前記一方向に回転したときに、前記軸状部材とともに回転する前記ストッパ支持部材の前記保持プレートに対する相対位置の変化と、前記ストッパ支持部材とともに回転する前記ストッパ部材の遠心力とにより、前記第1溝部に挿入された状態で保持された前記突起が前記第2溝部へと移動することに伴い、前記ストッパ支持部材の外周縁から突出する前記ストッパ部材が衝突することで、前記軸状部材の前記一方向への回転を停止させる係止壁を有するストッパ係止手段と、前記ストッパ支持部材の外周面から外方に突出する前記ストッパ部材を前記軸状部材の軸心側に押し込んで前記第2溝部に挿入された前記ストッパ部材の前記突起を前記第1溝部へと移動させることで、前記軸状部材の前記一方向への回転停止を解除する解除手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、前記第1溝部は、前記ストッパ部材が前記ストッパ支持部材とともに回転したときに前記ストッパ部材に作用する遠心力により前記ストッパ部材の前記突起が当接する第1壁面を有し、前記第2溝部は、前記ストッパ部材の前記突起が前記第2溝部に保持された状態で、前記付勢手段による付勢により前記保持プレートが前記一方向に回転したときに、前記第2溝部に保持された前記ストッパ部材の前記突起が当接する第2壁面を有し、前記軸方向に直交する平面において、前記第1壁面と前記第2壁面との交点は、前記ストッパ部材の外周面が前記ストッパ支持部材の外周面と同一面となるときの前記ストッパ部材の前記突起の中心よりも前記軸状部材の軸心側に位置し、前記解除手段は、前記ストッパ部材を前記軸状部材の軸心側に押圧することで、前記平面において、前記ストッパ部材の前記突起の中心が前記交点の位置よりも前記軸状部材の軸心側となる位置まで移動させるものである。
【0010】
また、前記解除手段は、前記軸状部材を前記一方向とは反対方向となる他方向へ回転させたときに、前記ストッパ支持部材の外周面から外方に突出する前記ストッパ部材に摺接され、前記ストッパ部材の外周面が前記ストッパ支持部材の外周面とを同一面となる位置まで、前記ストッパ部材を前記軸状部材の軸心方向に移動させる摺接面と、前記ストッパ部材の前記突起の中心が前記交点の位置よりも前記軸状部材の軸心側となる位置まで前記ストッパ部材を前記軸状部材の軸心側に押し込む押込部と、を有するものである。
【0011】
また、前記解除手段は、前記保持プレートから離れる方向に付勢された状態で前記ストッパ係止手段に回動自在に取り付けられ、前記解除手段は、前記保持プレートに向けた押圧を受けて前記ストッパ支持部材の外周面から外方に突出する前記ストッパ部材を前記軸状部材の軸心側に押し込むものである。
【0012】
また、本発明の巻上機は、一対のフレームに軸支され、荷を吊り上げるチェーンが掛け回されているロードシーブと、前記ロードシーブと減速ギヤを介して連結されると共に、前記軸状部材に対応する駆動軸と、前記ロードシーブを前記一方向に対応する巻下げ方向又は前記巻下げ方向とは反対方向となる巻上げ方向のいずれか一方の方向に回転させる操作レバーと、前記軸状部材の周囲に取り付けられると共に外周側にラチェット歯を有する爪車と、前記ラチェット歯に係合する爪部材と、前記爪部材の回動を軸支する爪軸とを備え、前記ラチェット歯と前記爪部材との係合によって爪車の前記巻上げ方向への回転は許容すると共に前記巻下げ方向への回転は不可とするラチェット機構を備えたブレーキ装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、駆動軸が回転不能となったときに、駆動軸の回転不能となる状態を容易に解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施の形態に係るレバーホイストの構成の一例を示す正面図である。
【
図2】
図1に示すレバーホイストの構成を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示すレバーホイストの構成を示す、XZ平面における断面図である。
【
図4】レバーホイストが有する回転ロック装置の構成を示す正面図である。
【
図5】回転ロック装置の構成を分解して示す斜視図である。
【
図6】ストッパ係止部材及びロック解除部材の背面側の構成を示す斜視図である。
【
図8】ストッパ部材の外周面が保持プレートの外周面と一致するときの、ストッパ突起と保持プレートに設けたガイド溝の凸部先端部との位置関係を示す図である。
【
図10】ストッパ支持部材が巻下げ方向に回転する状態を示す図である。
【
図11】ストッパ部材が保持プレートの外周面から突出して、ストッパ係止部材の係止面に衝突した状態を示す図である。
【
図12】ロック解除部材が押圧されて、押込突起が保持プレートの間に入り込んだ状態を示す図である。
【
図13】押込突起がストッパ支持部材の幅広片部の外周面に乗り上げた状態を示す図である。
【
図14】押込突起がストッパ部材を押し込み、ストッパ部材のストッパ突起がガイド溝の遊間溝部に入り込んだ状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る巻上機の一例であるレバーホイスト10について、図面に基づいて説明する。以下の説明においては、X軸方向は、駆動軸25の軸線方向とし、X1側は遊転ニギリ60が取り付けられる側とし、X2側はそれとは逆の、減速ギヤ30が取り付けられる側とする。また、Z軸方向はレバーホイスト10の懸吊状態における鉛直方向(懸吊方向;巻上げ又は巻下げ方向)とし、Z1側は懸吊状態における上側とし、Z2側は懸吊状態における下側とする。また、X軸方向及びZ軸方向に直交する方向をY軸方向とし、Y1側は
図1において右側とし、Y2側は
図1において左側とする。また、以下の説明では、ロードシーブ20の回転方向は、巻下げ方向を一方の回転方向とし、巻上げ方向を他方の回転方向としている。また、ロードシーブ20に連結する軸回りの回転方向は、ロードシーブ20を回転させる方向を基準としている。
【0016】
<レバーホイストの全体構成について>
図1は、本実施の形態に係るレバーホイスト10の構成の一例を示す正面図である。
図2は、
図1に示すレバーホイスト10の斜視図である。
図3は、
図1に示すレバーホイスト10の構成を示す、XY平面における断面図である。
【0017】
図1から
図3に示すように、レバーホイスト10が備える一対のフレーム11,12の間には、チェーンCHを掛け回すロードシーブ20が回転自在な状態で支持されている。ロードシーブ20は、後述する減速ギヤ30の小径ギヤ部32と噛み合うロードギヤ21がX2側の端部に設けられている。
【0018】
また、ロードシーブ20は、軸方向(X軸方向)に貫く挿通孔20aを有し、そのロードシーブ20の挿通孔20aには駆動軸25が挿通されている。駆動軸25の中途の外周側には後述するブレーキ装置70を構成するメネジ部材35と噛み合う雄ネジ部26が設けられるとともに、駆動軸25の他端側(X2側)には減速ギヤ30の大径ギヤ部31に噛み合うピニオンギヤ27が設けられている。また、減速ギヤ30には、上述したロードギヤ21と噛み合う小径ギヤ部32も一体的に設けられている。なお、駆動軸25は、請求項に記載の軸状部材に相当する。
【0019】
なお、フレーム11にはケーシング13が取り付けられ、上述した減速ギヤ30やロードギヤ21等の駆動部位を保護している。また、上述した雄ネジ部26は、メネジ部材35の雌ネジ部36と噛み合っている。このメネジ部材35には、雌ネジ部36の他に、操作レバー50に配置された切換爪40と噛み合い可能な切換歯車37も設けられている。切換爪40は、例えば一方側と他方側に1つずつ設けられているラチェット爪であり、切換爪40が切換歯車37と噛み合った状態で操作レバー50を揺動させることで、メネジ部材35に駆動力を伝達させる。
【0020】
また、切換爪40に同軸で切換ツマミ45が固定される。切換ツマミ45は、その操作により、メネジ部材35への駆動力の伝達を巻上げ方向とする巻上げ位置、当該伝達を巻下げ方向とする巻下げ位置、或いはメネジ部材35への駆動力の伝達を行わないニュートラル位置のいずれかの位置に切り換えることができる。
【0021】
図1において、切換ツマミ45の下側が、Z2方向に平行となる位置にあるとき、手でチェーンCHを引き出すことができる遊転状態(このときロードシーブ20及び駆動軸25も回転する)となる。この状態が、上述したニュートラル位置となる。また、切換ツマミ45の下側を、
図1に示すニュートラル位置から左側に回動させると、巻上げ用の切換爪40が切換歯車37と噛み合う。それにより、操作レバー50を
図1中R1方向に回動させた後、
図1中R2方向に戻す動作を繰り返すと、切換歯車37は巻上げ方向には回転するが巻下げ方向には回転しない。この状態は、チェーンCHの巻上げ状態に対応し、このときの切換ツマミ45の位置が巻き上げ位置となる。
【0022】
一方、切換ツマミ45の下側を、
図1に示すニュートラル位置から右側に回動させると、巻下げ用の切換爪40が切換歯車37と噛み合う。それにより、操作レバー50を
図1中R3方向に回動させた後、
図1中R4方向に戻す動作を繰り返すと、切換歯車37は巻下げ方向には回転するが巻上げ方向には回転しない。この状態は、チェーンCHの巻下げ状態に対応し、このときの切換ツマミ45の位置が巻下げ位置となる。
【0023】
駆動軸25には、例えばスプライン結合やキー結合といった回転不能な状態でカム部材55が取り付けられている。さらに、カム部材55には、遊転ニギリ60と呼ばれる部材がカム部材55に対し軸方向(X軸方向)に所定量スライド可能に取り付けられている。
図3の位置では、遊転ニギリ60は、カム部材55に対し回転不能に係合されているが、X1方向に遊転ニギリ60をスライドさせると、遊転ニギリ60はカム部材55に対し一定の範囲で回転可能となっている。遊転ニギリ60は、カム部材55を介して駆動軸25と共に回転可能な略円筒形のノブ状の部分であり、作業者が手で握ることが可能となっている。
【0024】
遊転ニギリ60は、図示しない第1ねじりばねでメネジ部材35と連結され、さらに図示しない第2ねじりばねで駆動軸25の一端に連結されている。切換ツマミ45がニュートラル位置にあるとき、遊転ニギリ60を
図3のX1方向にスライドさせると遊転ニギリ60は第2ねじりばね(遊転ばね)の付勢力で巻下げ方向に所定量回転する。所定量回転した遊転ニギリ60に取り付けられた第1ねじりばねも巻下げ方向に回転し、それまでメネジ部材35を巻き上げ方向に回転付勢していた付勢力が解除され、遊転モードに切り替わる。ここで、遊転モードか否かに拘わらず、作業者が遊転ニギリ60を手で握って巻上げ方向に回転させると、駆動軸25に回転力を伝達することができる。したがって、遊転ニギリ60を回転させることで、チェーンCHの長さ調整を素早く行うことや、スライドさせることで遊転モードへの切り替えが可能となっている。また、遊転モードにおいても、チェーンCHに規定以上の張力が巻下げ方向に作用すると、メネジ部材35は駆動軸25に対し締まり方向である巻上げ方向に相対的に回転し、後述するブレーキ装置70が作動する。
【0025】
<ブレーキ装置70について>
図3に示すように、ロードシーブ20に歯車を介して連結された駆動軸25には、ブレーキ装置70が配置されている。ブレーキ装置70は、ブレーキ受け71、ブレーキ板72a,72b、爪車80、爪部材90、爪軸91、ブッシュ92、メネジ部材35等を主要な構成要素としている。また、爪車80、爪部材90及び爪軸91は、ラチェット機構の主な構成要素に対応する。
【0026】
ブレーキ受け71は、フランジ部71aと、中空ボス部71bとを有している。フランジ部71aは、中空ボス部71bよりも大径に設けられている部分であり、ブレーキ板72aを受け止めることが可能となっている。
【0027】
中空ボス部71bは、フランジ部71aよりもメネジ部材35側(X1側)に位置し、ブッシュ92を介して爪車80を軸支する。なお、中空ボス部71bの内周側は、スプライン結合等によって駆動軸25と噛み合うことで、駆動軸25とブレーキ受け71とが一体的に回転する。
【0028】
また、フランジ部71aと爪車80との間、及びメネジ部材35と爪車80との間には、それぞれブレーキ板72a,72bが中空ボス部71bに軸支されている。ブレーキ板72a,72bは、例えば所定の摩擦材料を板状に形成された摩擦材であり、又は、爪車80の両面に焼結成形するなどして配置されている。
【0029】
メネジ部材35を巻上げ方向に回転させると、駆動軸25の雄ネジ部26との作用によりメネジ部材35は爪車80をブレーキ板72a,72bと共にブレーキ受け71に向けて(X2方向)に押圧し、駆動力を駆動軸25に伝達する。この状態で、駆動軸25を巻下げ方向に回転させても、メネジ部材35は爪車80をブレーキ板72a,72bとともにブレーキ受け71に向けて押圧する。このとき、爪車80は爪部材90により巻下げ方向に回転不能となっているので、ブレーキ装置70には摩擦力によるブレーキ力が働く。これによって、駆動軸25の巻下げ方向への回転は停止させることが可能となっている。反対に、メネジ部材35を巻下げ方向に回動させると、その分だけメネジ部材35による押圧力が緩みブレーキ装置70のブレーキ力が減じ、巻下げ方向に回転することが可能となる。
【0030】
また、後述するストッパ係止部材110,120には爪軸91が一体的に設けられていて、その爪軸91には爪部材90が回動可能に支持されている。また、爪軸91には、ねじりばね93のコイル部93aが取り付けられていて、爪部材90が爪車80のラチェット歯83に押し付けられる向きの付勢力をねじりばね93が与えている。このようにして、爪車80は、巻上げ方向には回転可能で巻下げ方向には爪車80の歯数で分割されるピッチ角度毎に回転が規制されるようになっている。なお、爪部材90は一対設けられていて、爪車80の周方向において、180度離れて配置されている。
【0031】
上記のブレーキ装置70は、操作レバー50の回動中心側となる一端の内部に収納され、ブレーキ装置70側に塵埃や雨水等が侵入するのを防止している。操作レバー50は、意匠面となる前部カバー50aと、前部カバー50aの背面側に位置して、ロックカバー14に回転可能に保持される背部カバー50bとを有し、これらカバーとの間に設けられる中空空間に上記のブレーキ装置70が配置される。
【0032】
ロックカバー14は、後述する回転ロック装置100の外周を被覆する外周カバー15に当接された状態で、ロックカバー14の前面から露呈される、後述のステイボルトB1にナット(袋ナット)N1(
図2参照)を捻じ込むことで締め付け固定される。
【0033】
<回転ロック装置(荷落下防止装置)100について>
次に、回転ロック装置100について説明する。
図4は、回転ロック装置100の構成を示す説明図である。
図5は、
図4に示す回転ロック装置100の構成を解して示す斜視図である。
図4及び
図5に示すように、回転ロック装置100は、ストッパ係止部材110,120、ストッパ支持部材130、ストッパ部材140、2つの保持プレート150,150及びロック解除部材170を含む。ここで、ストッパ係止部材110は、請求項に記載のストッパ係止手段に相当する。また、ロック解除部材170は、請求項に記載の解除手段に相当する。
【0034】
図4及び
図5に示すように、本実施の形態では、フレーム12の爪車80側には、ストッパ係止部材110,120が取り付けられている。ストッパ係止部材110,120は、一例として、Y軸方向に長い長片状の部材であり、ストッパ係止部材110,120の間に、スペースSP1が形成されている。このため、ストッパ係止部材が、ストッパ支持部材130及び保持プレート150の外周側の全周に亘るように設けられている場合と比較して、回転ロック装置100の軽量化が可能となっている。
【0035】
ストッパ係止部材110は、フレーム12の挿通孔12aに挿通されたステイボルトB1を、Y軸方向における両端部に設けた取付孔111に挿通することで、フレーム12の上端側(Z1側)に取り付けられる。また、ストッパ係止部材120は、フレーム12の挿通孔12bに挿通されたステイボルトB1を、Y軸方向における両端部に設けた取付孔121に挿通することで、フレーム12の下端側(Z2側)に取り付けられる。なお、本実施の形態では、ストッパ係止部材110,120に、2つの取付孔を設けた場合を示しているが、取付孔を3つ以上設けてもよい。
【0036】
ストッパ係止部材110は、ストッパ係止部材120に対峙する下端部で、Y軸方向における中央部分に、ストッパ係止部材110の上端面に向かって凹む凹状部112を有する。凹状部112には、ねじりばね93の図示しない一方のフック部が係合される。ねじりばね93の図示しない一方のフック部が凹状部112に係合される状態では、ストッパ部材140とねじりばね93のフック部とは、接触しないようになっている。
【0037】
ストッパ係止部材110は、凹状部112の壁面112aと、
図5中左端側で連なる係止壁113と、壁面112aの図中右端側で連なる円弧状の湾曲面114と、を有する。係止壁113は、ロードシーブ20が巻下げ方向に回転したときに、ストッパ支持部材130から径方向外側に突出したストッパ部材140に衝突する壁面であり、その衝突によって、ロードシーブ20の巻下げ方向への回転を停止させる。なお、ストッパ係止部材110の下面において、凹状部112が設けられる位置よりも左側において、後述する保持プレート150の外周面との間に隙間が設けられている。この隙間を設けることで、ストッパ支持部材130のストッパ収納部133に対してストッパ部材140が収納位置に保持された状態では、保持プレート150の回転が支障なく行われる。
【0038】
湾曲面114は、ロードシーブ20が巻下げ方向、又は巻上げ方向に回転したときに、ストッパ支持部材130から径方向外側に突出したストッパ部材140の先端面140aが当該湾曲面114に好ましくは摺接しないように、ストッパ支持部材130から径方向外側に突出したストッパ部材140の先端面140aに対して若干の隙間を開けて配置される壁面である。
【0039】
また、ストッパ係止部材110は、ストッパ係止部材110の下面において、凹状部112よりも左側(
図4中Y2側)に位置する部分に、略平坦な壁115を有する。略平坦な壁(以下、押戻壁と称する)115には、レバーホイスト10の誤操作によってロードシーブ20が巻上げ方向に回転したときに、ストッパ支持部材130からストッパ支持部材130の径方向外側に突出するストッパ部材140が摺接して、その摺接とともに、ストッパ部材140がストッパ支持部材130のストッパ収納部133の内部へと押し戻される。なお、押戻壁115によってストッパ収納部133の内部に押し戻されるストッパ部材140の突出量が、ストッパ支持部材130とストッパ係止部材110との最小隙間以下となると、ストッパ部材140によるストッパ係止部材110の押戻壁115への摺接が解除されて、ストッパ支持部材130とストッパ部材140とが係止壁113を越えてさらに回転する。このとき、図示は省略するが、ストッパ部材140のストッパ突起141は、後述する保持プレート150のガイド溝154に設けた凸部先端部155aよりも保持プレート150の径方向外方に位置して、ガイド溝154の内側壁154c1に当接された状態で保持される。
【0040】
なお、押戻壁115を略平坦な壁としているが、ロードシーブ20が巻上げ方向に回転したときに、ストッパ支持部材130からストッパ支持部材130の径方向外側に突出するストッパ部材140が摺接して、ストッパ部材140がストッパ支持部材130のストッパ収納部133の内部へと押し戻すことができればよいので、押戻壁115は、略平坦な壁に限定されるものではない。
【0041】
また、ストッパ係止部材110は、上述した爪軸91を有する。本実施の形態では、爪軸91は、ストッパ係止部材110の他の部分と一体化されている。ストッパ係止部材110と爪軸91とを一体化するために、ストッパ係止部材110は、鋳造(例えばロストワックス法)によって形成されるのが好ましい。また、この他に、爪軸91を別体的に形成して、ストッパ係止部材110に存在する取付穴等に爪軸91を圧入して取り付けるようにしてもよい。
【0042】
図6に示すように、ストッパ係止部材110は、フレーム12と対峙する面110b側に収納凹部116を有する。収納凹部116は、収納凹部116の底面116aから、上述した爪軸91が設けられる前面110aに向けて貫通する挿通孔117を備えている。この挿通孔117には、後述するロック解除部材170の枢軸172が挿通している。この挿通孔117にロック解除部材170の枢軸172が挿通していることで、収納凹部116には、ロック解除部材170の連結部173が入り込んでいる。収納凹部116は、ロック解除部材170の連結部173が干渉しない位置に掛止ピン118を有する。掛止ピン118は、ロック解除部材170に取り付けられた引っ張りばね187の一端を掛止する。
【0043】
また、ストッパ係止部材110は、収納凹部116が設けられる面110bで、収納凹部116の上方となる位置に、凹部119を有する。この凹部119は、フレーム12の前面から、X1方向に突出する保持軸180(
図5参照)の一端側が入り込む。保持軸180は、フック22の一端に設けた挿通孔(不図示)に挿通された状態で、フレーム11,12に跨って取り付けられる。
【0044】
図4又は
図5に戻って説明すると、ストッパ係止部材120は、ストッパ係止部材110と対峙する側に、突出部122が設けられている。突出部122は、ストッパ支持部材130に向けて突出している。突出部122は、後述するストッパ支持部材130及びストッパ支持部材130に回転可能に保持された保持プレート150の外周面に対して若干の隙間を有する状態で対向しており、ストッパ部材140が収納位置に保持されているときに、ストッパ支持部材130及び保持プレート150の回転に干渉しないようになっている。
【0045】
ストッパ係止部材120は、ストッパ係止部材110に対向する上端部で、Y軸方向における中央部分に、ストッパ係止部材120の下端面に向かって凹む凹状部123を有する。凹状部123には、ねじりばね(図示省略)の図示しない一方のフック部が係合される。なお、ねじりばね(図示省略)の図示しない一方のフック部が凹状部123に係合される状態では、ストッパ部材140とねじりばね(図示省略)のフック部とが接触しないようになっている。
【0046】
また、突出部122は、凹状部123に連なる係止壁124を有する。係止壁124は、ロードシーブ20が巻下げ方向に回転したときに、ストッパ支持部材130から径方向外側に突出するストッパ部材140に衝突する壁面であり、その衝突によって、ロードシーブ20の回転を停止させる。
【0047】
突出部122の係止壁124の反対側の壁面(以下、係止壁)125には、ストッパ部材140がストッパ支持部材130から径方向外側に突出した状態で、ストッパ支持部材130が巻上げ方向に回転したときに、該ストッパ部材140が当接する。
【0048】
このように、ストッパ部材140がストッパ支持部材130からストッパ支持部材130の径方向外側に突出した状態でロードシーブ20が巻下げ方向に回転すると、ストッパ部材140は、ストッパ係止部材110の係止壁113、又はストッパ係止部材120の係止壁124のいずれか一方の係止壁に当接する。そのため、ロードシーブ20の巻下げ方向への回転が停止される。一方、ロードシーブ20が巻上げ方向に回転すると、ストッパ部材140は上述した係止壁125に当接する。そのため、ロードシーブ20の巻上げ方向への回転が停止される。
【0049】
例えば、作業者がレバーホイスト10を誤操作したとき、作業者は、ストッパ部材140がストッパ支持部材130から突出していることに気が付かないことがある。上述したように、チェーンCHを繰り出す、すなわちロードシーブ20を巻下げ方向に回転させると、径方向外側に突出したストッパ部材140がストッパ係止部材110の係止壁113、又はストッパ係止部材120の係止壁124のいずれかに当接される。また、チェーンCHを巻き取る、すなわちロードシーブ20を巻上げ方向に回転させると、径方向外側に突出したストッパ部材140がストッパ係止部材120の係止壁125に当接される。そのため、チェーンCHの繰り出し、又は巻取りの過程でロードシーブ20の回転が停止されることになるので、作業者は、回転ロック装置100が作動していることを認識することができる。また、この他に、例えば荷を吊り上げているときに、ブレーキ装置70が壊れたとき、チェーンCHが繰り出されて荷が落下することになるが、回転ロック装置100が作動してチェーンCHの繰り出し及び荷の落下が停止されるので、作業者は、回転ロック装置100が作動したこと、また、ブレーキ装置70が壊れたことを認識することができる。
【0050】
また、ストッパ係止部材120は、上述した爪軸91を有する。なお、爪軸91は、ストッパ係止部材110に設けた爪軸91と同様に、一体化されていてもよいし、ストッパ係止部材120と別体とし、ストッパ係止部材120に存在する取付穴等に圧入等により取り付けてもよい。
【0051】
ストッパ支持部材130は、中心孔131を有する。このストッパ支持部材130は、中心孔131において駆動軸25に取り付けられていて、ストッパ支持部材130と駆動軸25とは一体的に回転する。なお、ストッパ支持部材130の駆動軸25に対する取り付けは、例えば止めねじ、キー結合、スプライン結合等、必要なトルクを伝達できればどのようなものであってもよい。
【0052】
ストッパ支持部材130は、軸受ボス部132を有する。軸受ボス部132は、軸方向(X軸方向)に突出する中空軸状の部分であり、2つの保持プレート150の各々に設けられた中心孔152に回転可能な状態で嵌め込まれる。
【0053】
また、ストッパ支持部材130は、その中心孔131側から外周側に向かうストッパ収納部133を有する。ストッパ収納部133は、後述するストッパ部材140を収納する部分であり、その外周側が開放している。したがって、ストッパ収納部133に収納されたストッパ部材140は、外周側に向かって突出することが可能である。
【0054】
ストッパ収納部133は、幅狭片部130aと幅広片部130bとで挟まれることで形成されている。ストッパ部材140がストッパ係止部材110の係止壁113又はストッパ係止部材120の係止壁124のいずれかに衝突する場合、幅広片部130bは、ストッパ収納部133を挟んで、ストッパ係止部材120の周方向において、係止壁113又は係止壁124から離れる部位に位置している。
図5に示す構成では、幅狭片部130aはストッパ収納部133の左側に位置し、幅広片部130bはストッパ収納部133の右側に位置している。ここで、幅広片部130bは、幅狭片部130aよりも周方向の幅が広く設けられている。したがって、ストッパ部材140が係止壁113又は係止壁124のいずれかに衝突した場合であっても、その衝撃を幅広片部130bで受け止めるだけの強度が確保されている。
【0055】
また、ストッパ支持部材130は、ストッパ支持部材130の外周面のうち中心孔131およびストッパ収納部133と干渉しない部位に差込穴(図示省略)を有しており、この差込穴には、後述する掛止ピン181の一端が差し込まれて、掛止ピン181を支持する。なお、掛止ピン181には、引っ張りばね(コイルばね)186の一端が掛止される。なお、引っ張りばね186は、請求項に記載の付勢手段に相当する。
【0056】
上述したように、ストッパ支持部材130のストッパ収納部133には、ストッパ部材140が収納されている。ストッパ部材140は、ストッパ収納部133に対し、収納位置から遠心方向にスライド可能な状態で収納されている。なお、収納位置は、ストッパ部材140が、ストッパ支持部材130のストッパ収納部133の底面に当接される位置である。
【0057】
なお、
図4に示すように、ストッパ部材140がストッパ収納部133の収納位置に収納された状態では、ストッパ部材140の外周面(径方向中心から離れる側の面)142は、ストッパ支持部材130の半径方向において、ストッパ支持部材130の外周面よりも内側に(ストッパ支持部材130の回転中心側に)位置している。なお、ストッパ支持部材130の外周面の距離は、保持プレート150の回転軸中心から外周面までの距離と同程度に設けられている。
【0058】
ここで、ストッパ部材140には、円柱状のストッパ突起141が設けられている。ストッパ突起141は、ストッパ部材140のうち保持プレート150と対向する面(表面および裏面)から、軸受ボス部132の軸方向における両端部の各々に軸支された保持プレート150に向かって(X軸方向に)突出している。
図4に示すように、ストッパ突起141は、ストッパ部材140の深さ方向(ストッパ支持部材130の径方向)の中央よりも、駆動軸25(ストッパ部材140)の軸心側に設けられている。ストッパ突起141は、ストッパ部材140と一体成形するようにしてもよいが、ストッパ部材140に取り付け孔を設け、軸状部材やピン等を取り付け孔に嵌合させてストッパ突起141を構成するようにしてもよい。
【0059】
ストッパ突起141は、軸受ボス部132の軸方向における両端部の各々に軸支された保持プレート150に設けたガイド溝154に各々入り込む。それにより、駆動軸25の回転方向において、ストッパ支持部材130と保持プレート150との位置が相対的に変化した場合に、ストッパ突起141がガイド溝154内を摺動する。そして、ストッパ突起141が、後述する許容溝部154aに位置する場合には、ストッパ部材140に作用する遠心力に応じて、ストッパ部材140が保持プレート150の外径側に飛び出すことが可能となる。
【0060】
ここで、ストッパ部材140の径方向の最も外側に位置する外周面142は、上述したストッパ支持部材130の外周面や保持プレート150の外周面と同様に円弧状に設けられている。しかしながら、外周面142は直線状に設けられていても良く、その他の形状に設けられていても良い。
【0061】
次に、保持プレート150について説明する。
図6及び
図7に示すように、保持プレート150は円盤状に設けられていて、その径方向の中央には、中心孔152が設けられている。この中心孔152に軸受ボス部132が嵌め込まれることで、保持プレート150は、ストッパ支持部材130に対して同軸で回動可能に支持されている。なお、回転中心から保持プレート150の最外周までの距離(すなわち半径)は、ストッパ支持部材130の最外周までのそれと同程度となっている。しかしながら、ストッパ支持部材130と保持プレート150のうちのいずれか一方の半径が大きく設けられていてもよい。
【0062】
本実施の形態では、保持プレート150は一対設けられていて、その一対の保持プレート150の間に、ストッパ支持部材130が挟み込まれている。一対の保持プレート150は、保持プレート150同士を連結部材で連結している。例えば、連結部材は、リベット183とカラー(スペーサ)184,185から構成され、一対の保持プレート150の間にカラー184,185を配置し、保持プレート150に形成された孔部151およびカラー184,185にリベット183を各々挿通させる。その後に、リベット183の他端側を塑性変形させることで、一対の保持プレート150が連結される。なお、
図5に示す構成では、一対の保持プレート150は、4箇所で連結される場合を説明しているが、連結される箇所は、2箇所または3箇所であってもよいし、5箇所以上であってもよい。また、連結部材をリベット及びカラーとしているが、一対の保持プレート150の間隔を維持しつつ連結するものであれば、ビスとナット等、どのようなものを用いても良い。
【0063】
上述したカラー185には、引っ張りばね186の他端側が掛止される。引っ張りばね186は、保持プレート150に挟持されるカラー185を掛止ピン181に向けて(巻下げ方向に)付勢する。なお、引っ張りばね186の代わりに、圧縮バネやねじりバネを含む構成により、保持プレート150に挟持されるカラー185を掛止ピン181に向けて付勢するものであってもよい。
【0064】
保持プレート150には、ガイド溝154が設けられている。このガイド溝154は、ストッパ部材140のストッパ突起141が入り込んで、そのストッパ突起141の移動をガイドする。ガイド溝154は、略三角形状の部位の径方向中心側に、円弧状に長く伸びている溝を加えた形状となっている。具体的には、ガイド溝154は、
図7に示すような略三角形状の保持凸部155が入り込んでいて、その入り込みにより、ガイド溝154には、許容溝部154aと、遊間溝部154bと、戻り規制溝部154cの3つの溝が設けられている。ここで、遊間溝部154bは請求項に記載の第1溝部に、戻り規制溝部154cは請求項に記載の第2溝部に相当する。
【0065】
許容溝部154aは、ストッパ突起141が径方向に移動するのを許容する溝部である。そのため、
図7において許容溝部154aの下側に位置する内側壁154a1は、径方向(中心孔152の中心から延びる一つの放射線の方向)に平行となるように設けられている。なお、許容溝部154aの幅は、保持凸部155のうち最も内側壁154a1に向かって突出している凸部先端部155aと、上述した内側壁154a1の間によって規定される。なお、凸部先端部155aは、請求項に記載において交点に相当する。
【0066】
また、遊間溝部154bは、凸部先端部155aから、中心孔152の外周に沿って、許容溝部154aから遠ざかる方向に(
図7において右側に)延びる溝である。この遊間溝部154bは、ストッパ突起141を、遊びをもって位置させることを可能としている。ここで、遊間溝部154bの外径側の内側壁154b1は、ストッパ突起141に当接(摺接)して、ストッパ部材140を収納位置に保持するための壁面である。ここで、内側壁154b1は、請求項に記載の第1壁面に相当する。なお、ストッパ突起141が遊間溝部154bに位置する(入り込んだ)状態では、ストッパ部材140の外径側は、ストッパ支持部材130又は保持プレート150の外周面よりも外方に突出しない状態でストッパ収納部143に収納されている。
【0067】
保持プレート150の周方向における遊間溝部154bの長さは、次に述べる角度γにより定まる長さより長くなるように形成される。上述した爪車80は、巻上げ操作途中で操作を中断すると、最大で一周を歯数で分割した角度(ピッチ角度)分だけ、巻下げ方向に空転する。この角度を角度γ(図示省略)とする。上述したように、回転ロック装置100において、保持プレート150は、ストッパ支持部材130に対して回転自在となることから、ストッパ支持部材130が巻下げ方向に回転すると、保持プレート150は、引っ張りばね186によって角度γ遅延して作動する。したがって、保持プレート150の周方向における遊間溝部154bの長さを、少なくとも角度γにより定まる長さ以上に設定することで、ストッパ支持部材130が巻下げ方向に空転しても、ストッパ部材140が保持プレート150の外周面から外方に突出しない状態を維持する。
【0068】
本実施の形態では、遊間溝部154bは、角度γよりも十分に長くしている。ここで、遊間溝部154bの長さが短い場合には、切換ツマミ45をニュートラル位置に切り換えて遊転ニギリ60を操作して遊転モードとした後、巻下げ方向にチェーンCHを素早く引き出す遊転操作中に、回転ロック装置100が作動し易い状態となってしまい、チェーンCHの引き出しの利便性が低下してしまう。そこで、切換ツマミ45をニュートラル位置に切り換えて遊転モードとした後、チェーンCHを手で引き出す遊転操作中に、回転ロック装置100が直ぐには作動しないように、遊間溝部154bの長さを、角度γよりも十分に長くしている。それにより、上記のような遊転操作中に、回転ロック装置100が作動して回転ロック状態となってしまうのを防止している。
【0069】
戻り規制溝部154cは、許容溝部154aから、周方向において許容溝部154aから遠ざかるように(
図7において上側に)凹んだ溝部である。遊間溝部154bは、ストッパ突起141を、遊びをもって位置させることを可能としている。戻り規制溝部154cは、内側壁154c1を有する。内側壁154c1は、ストッパ突起141と係合することにより、ストッパ部材140の外径側がストッパ支持部材130の外周面よりも突出した状態を維持する。すなわち、内側壁154c1は、ストッパ部材140がストッパ収納部133に完全に収納されるのを規制するための壁面である。ここで、内側壁154c1は、請求項に記載の第2壁面に相当する。したがって、内側壁154c1は、保持プレート150の周方向において、保持プレート150の中心側(中心孔152)が許容溝部154aに近接するように傾斜している。
【0070】
上述したガイド溝154の凸部先端部155aは、
図8に示すように、XZ平面において、例えばストッパ部材140の外周面142が保持プレート150の外周面に一致した状態となるとき、ストッパ突起141の中心C5の位置が、ガイド溝154の凸部先端部155aよりも外側となる位置となるように配置される。したがって、ストッパ部材140は、外周面142が保持プレート150の外周面に一致した状態となるまで押し込まれたとしても、ストッパ部材140のストッパ突起141は、戻り規制溝部154cの内部に位置して、許容溝部154aまで戻ることができないようになっている。なお、一点鎖線T1は、駆動軸25の軸心を中心とし、凸部先端部155aを通る円、一点鎖線T2は、駆動軸25の軸心を中心とし、ストッパ部材140の外周面142が保持プレート150の外周面に一致したときのストッパ突起141の中心を通る円である。
【0071】
次に、ロック解除部材170について説明する。
図6及び
図9に示すように、ロック解除部材170は、ストッパ支持部材130のストッパ収納部133から突出したストッパ部材140を、上述した収納位置へと移動させる(戻す)部材である。ロック解除部材170は、ストッパ係止部材110に対して回転可能に取り付けられる。ロック解除部材170は、ストッパ係止部材110との間に跨って配置される引っ張りばね187により、後述する本体171の上面がストッパ係止部材110の下面に当接する初期位置(
図5参照)に保持される。
【0072】
ロック解除部材170が初期位置にあるとき、ロック解除部材170の本体171の側方に設けた押圧部177は、
図2に示すように、外周カバー15と略同一面となる。そして、回転ロック装置100によるロック解除を行う際に、作業者によってロック解除部材170の押圧部177が押圧されると、ロック解除部材170は引っ張りばね187の付勢に抗して、保持プレート150に向けて(外周カバー15の内部に向けて)移動する。このとき、後述する押込突起195が、保持プレート150間に入り込み、ストッパ支持部材130から突出するストッパ部材140をストッパ支持部材130のストッパ収納部133へと移動させる(
図14参照)。
【0073】
図6及び
図9に戻って説明すると、ロック解除部材170は、本体171、枢軸172を有し、これらが連結部173によって連結される。本体171は、フレーム12に対峙する背面側に、表面から凹んでいる中空部分174を有する。この中空部分174には、下端部において、中空部分174の底面174aから突出する掛止ピン175が設けられる。掛止ピン175は、引っ張りばね187の他端を掛止する。なお、掛止ピン175に他端が掛止された引っ張りばね187は、上述した中空部分174に収納され、本体171の上面171aに設けた凹部176からストッパ係止部材110の収納凹部116へと入り込み、上述したストッパ係止部材110の掛止ピン118に、その一端が掛止される。
【0074】
本体171の側面には、押圧部177が設けられる。押圧部177は、例えば上下方向に一定間隔を空けて配置された4つの突起177aを有する。4つ突起177aを押圧部177に設けることで、作業者が指でロック解除部材170の押圧部177を押圧したときに、指が滑ることを防止する。なお、押圧部177に設けた突起177aの数は4つに限定されるものではない。また、突起177aを設ける代わりに、押圧部177の表面に指の滑りを防止するための表面処理(表面加工)を行うことも可能である。
【0075】
本体171は、前面171bのY2側の端部に、隆起部178を有する。隆起部178は、本体171の前面171bから突出している。また、隆起部178は、本体171の左側の側面171cにおいて外側に突出している。側面171cは、例えば円弧状の湾曲面191,192,193が上下方向に並ぶように配置されることで構成されている。また、湾曲面191,192,193の配列において、その中央に位置する湾曲面192は保持プレート150に近接している。
【0076】
湾曲面191は、ロック解除部材170が押圧されたときに保持プレート150の外周面からストッパ部材140が突出する状態でロードシーブ20が巻上げ方向に回転すると、ストッパ部材140の外周面142が摺接し、ストッパ部材140の外周面142が保持プレート150の外周面と一致する位置まで、ストッパ部材140を移動させる。ここで、湾曲面191は、請求項に記載の摺接面に相当する。
【0077】
湾曲面192は、ロック解除部材170を押圧したときに、保持プレート150の外周面に当接される。したがって、湾曲面192は、YZ平面における半径は、保持プレート150の外周面の半径と同一の半径となる円弧であるが、同一の半径ではなく異なる半径とすることで、湾曲面192の一部のみが保持プレート150の外周面に当接するようにしてもよい。
【0078】
ここで、側面171cは、湾曲面191,192,193を組み合わせて形成しているが、摺接されるストッパ部材140が、ストッパ支持部材130のストッパ収納部133に向けて移動すればよいので、湾曲面191,193の代わりに、2つの平面を用いてもよい。
【0079】
湾曲面192には、保持プレート150に向けて突出する押込突起195が設けられている。押込突起195は、請求項に記載の押込部に相当する。押込突起195は、ロック解除部材170が初期位置にあるとき、保持プレート150の外周面から離れた位置に保持される。押込突起195は、ロック解除部材170が押圧されて、ロック解除部材170が保持プレート150に向けて移動すると、2つの保持プレート150間の隙間に入り込む。そして、外周面142が保持プレート150の外周面と一致する位置まで移動したストッパ部材140をストッパ支持部材130の回転中心側、すなわち、駆動軸25の軸心側に押し込む(
図14参照)。なお、押込突起195は、ロック解除部材170が押圧されて、2つの保持プレート150間の隙間に入り込んだときに、ストッパ部材140のストッパ突起の中心C5が凸部先端部155aよりも駆動軸25の軸心側に位置するまで、ストッパ部材140をストッパ支持部材130のストッパ収納部133の内部に押し込める形状であればよい。
【0080】
したがって、押込突起195の高さ(湾曲面192からの突出量)は、例えば、ストッパ部材140の外周面142が保持プレート150の外周面と一致するときの、保持プレート150の中心からストッパ突起141の中心C5までの距離と、保持プレート150の中心から凸部先端部155aまでの距離との差分D1(
図8参照)よりも長く設定される。これにより、押込突起195によりストッパ部材140が押し込まれると、保持プレート150の径方向において、ストッパ部材140のストッパ突起141の中心は、凸部先端部155aよりも保持プレート150の中心側に押し込まれる。これにより、ストッパ突起141は、許容溝部154aから遊間溝部154bへと移動することが可能となる。
【0081】
枢軸172は、ストッパ係止部材110の収納凹部116側から収納凹部116に設けた挿通孔117に挿通される。枢軸172がストッパ係止部材110の挿通孔117に挿通された状態で保持されることで、上述した押圧部177が押圧されたときに、ロック解除部材170は、枢軸172を軸として、初期位置から保持プレート150に向けて傾動する。
【0082】
<作用について>
以上に説明した回転ロック装置100を搭載したレバーホイスト10の巻き上げ操作において、ブレーキ装置70が破損するなどして、駆動軸25が吊り荷重などによるチェーンCHに係る張力によって巻下げ方向に加速回転を開始する場合を考える。
【0083】
ブレーキ装置70が破損すると、ブレーキ力を失った駆動軸25及びストッパ支持部材130は、チェーンCHに掛かる張力により巻下げ方向(
図10矢印方向)に急激な加速度で回転し始める。このとき、引っ張りばね186の付勢力は、遊間溝部154bの最も端部(許容溝部154aから離れる側の端部)にストッパ部材140のストッパ突起141が位置する状態で、保持プレート150をストッパ部材140の回転に追従させようと働く。しかし、保持プレート150に働く慣性力が引っ張りばね186の付勢力を上回ると、ストッパ突起141は、遊間溝部154bの最も端部(許容溝部154aから離れる側の端部)から離れる。さらに、この端部からストッパ突起141が離れる(追従できない)向きの加速度で駆動軸25がストッパ支持部材130とストッパ部材140と共に加速回転すると、保持プレート150に働く慣性力により引っ張りばね186が伸びて、ストッパ部材140のストッパ突起141は、遊間溝部154b内を許容溝部154aに向かって摺動する。
【0084】
なお、ストッパ支持部材130とストッパ部材140の回転に伴って生じる遠心力により、ストッパ部材140が外径側に飛び出そうとしても、許容溝部154aにストッパ突起141が到達するまでは、ストッパ突起141が内側壁154b1に規制されることで、ストッパ部材140の外径側への飛び出しが規制される。
【0085】
そして、
図10に示す位置まで、遊間溝部154b内をストッパ突起141が相対的に移動すると、ストッパ部材140が外径側に飛び出すことが可能となる。すなわち、ストッパ突起141と内側壁154b1との間での係合(保持)状態が解除されたストッパ部材140は、遠心力によってストッパ収納部133から外径側に飛び出す。ただし、外径側への飛び出しは、ガイド溝154の最外周側までの範囲内となっている。また、ストッパ部材140が所定の位置から遠心方向にスライドし、ストッパ突起141が凸部先端部155aを越えた後に、駆動軸25の巻下げ方向への回転加速度が減少しても、引っ張りばね186の付勢力によりストッパ突起141が内側壁154c1により押圧される。この押圧により、ストッパ部材140はストッパ係止部材110の係止壁113と確実に係合する位置まで突出し、駆動軸25に巻下げ方向への負荷が継続する間は、その係合を維持する。
【0086】
そして、ストッパ収納部133から突出したストッパ部材140が巻下げ方向に回転を継続すると、
図11に示すように、ストッパ係止部材110の係止壁113に衝突する。それにより、ストッパ支持部材130および駆動軸25の巻下げ方向への回転は停止させられ、荷の落下が停止する。
【0087】
ストッパ部材140がストッパ係止部材110の係止壁113に衝突した後、ストッパ突起141は戻り規制溝部154cに入り込む。それにより、駆動軸25が停止した後に、引っ張りばね186の付勢力によって、ストッパ突起141が内側壁151c1から巻下げ方向への付勢力を受けるので、ストッパ突起141が戻り規制溝部154cに係合された状態が維持される。このとき、ストッパ部材140がストッパ収納部133に不用意に戻ろうとしても、ストッパ突起141が内側壁154c1に係合を維持することで、ストッパ部材140のストッパ収納部133への戻りが規制される。このため、駆動軸25の回転停止状態が維持、すなわち、荷が再び落下し始めるのが防止される。
【0088】
一方、レバーホイスト10は、操作レバー50や遊転ニギリ60を操作してチェーンCHを巻上げ、又は巻下げしてチェーンCHの繰り出し長さを調節する以外に、チェーンCHを直接操作して繰り出し長さを調節することができる遊転機構を有している。本実施の形態では、切換ツマミ45をニュートラル位置に切り替えて、遊転ニギリ60を引き出すことで遊転モードに切り替えることが可能となっている。この状態では勢いよく巻下げ方向にチェーンCHを引き出すことが可能となっており、その結果、回転ロック装置100が作動することがある。
【0089】
また、荷をチェーンCHの下端部に設けたフック(図示省略)にかけた状態で、チェーンCHが弛んでいるときに、チェーンCHの弛みが解消されるようにチェーンCHのフックとはロードシーブ20を挟んで反対側を勢いよく引っ張り続けると、チェーンCHの弛みがなくなることで、巻上げ方向に回転していた駆動軸25、ロードシーブ20及びストッパ支持部材130の巻き上げ方向の回転が急停止することになる。これら部材の回転が急停止される一方で、保持プレート150は、巻上げ方向に回転を継続して、保持プレート150とストッパ支持部材130の周方向における相対位置が変化する。この相対位置の変化により、ストッパ部材140のストッパ突起141が遊間溝部154bから許容溝部154aを介してストッパ突起141が戻り規制溝部154cの内部に移動し、回転ロック装置100がロックされる。
【0090】
駆動軸25の巻下げ方向への回転停止状態を解除する場合には、切換ツマミ45を巻下げ位置から例えば巻上げ位置へと切り替える。そして、初期位置にあるロック解除部材170の押圧部177を押圧する。ロック解除部材170の押圧部177が押圧されると、ロック解除部材170は、ストッパ係止部材110との間に跨って配置された引っ張りばね187の付勢力に抗して、保持プレート150に向けて傾動する。
図12に示すように、ロック解除部材170が保持プレート150に向けて傾動すると、押込突起195が保持プレート150間に入り込む。そして、湾曲面192が保持プレート150の外周面に当接される。
【0091】
この状態で、遊転ニギリ60を巻上げ方向に回転させるか、操作レバー50を用いて巻上げ操作を行なう。その操作に合わせて、駆動軸25が巻上げ方向(
図12中矢印方向)に回転する。駆動軸25の巻上げ方向への回転に伴なって、ストッパ支持部材130及びストッパ部材140も同方向に回転する。このとき、ストッパ部材140のストッパ突起141は、戻り規制溝部154cに係合している。したがって、巻上げ方向に回転するストッパ部材140のストッパ突起141は、戻り規制溝部154cの内側壁154c1を押圧する。これにより、保持プレート150もストッパ支持部材130及びストッパ部材140とともに、巻上げ方向に回転する。
【0092】
巻上げ方向に回転するストッパ部材140が所定量回転すると、ロック解除部材170の湾曲面191に摺接されながら移動する。このとき、初期位置にあるロック解除部材170が押圧されると、押込突起195は保持プレート150の間に入り込んだ状態で保持される。
図13に示すように、ストッパ支持部材130が巻き上げ方向に回転すると、押込突起195は、初期位置に向かって移動しながらストッパ支持部材130の幅広片部130bに乗り上げる。このとき、ストッパ部材140は、ロック解除部材170の湾曲面191に摺接されながら回転し、同時に、ストッパ部材140は、ストッパ支持部材130のストッパ収納部133の内部に向けて(駆動軸25の軸心側に)移動する。
【0093】
さらに、遊転ニギリ60を巻上げ方向に回転させると、ストッパ部材140の外周面は湾曲面191に摺接されながら回転する。それにより、ストッパ部材140は、ストッパ支持部材130のストッパ収納部133へと移動する。すなわち、湾曲面191に摺接されることで、ストッパ部材140は、保持プレート150の外周面からの突出量が減少する。
【0094】
図14に示すように、引き続き実行されるストッパ支持部材130の回転により、押込突起195とストッパ支持部材130の幅広片部130bとの摺接が解除されると、押込突起195は、再び保持プレート150の隙間に入り込む。押込突起195とストッパ支持部材130の幅広片部130bとの摺接が解除される位置は、ストッパ支持部材130のストッパ収納部133の位置である。押込突起195が保持プレート150の隙間に入り込むと、押込突起195はストッパ部材140をストッパ収納部133へと押し込む。上述したように、押込突起195の高さは、例えば、ストッパ部材140の外周面142が保持プレート150の外周面と一致するときの、保持プレート150の中心からストッパ突起141の中心C5までの距離と、保持プレート150の中心から凸部先端部155aまでの距離との差分D1よりも長く設定されている。したがって、押込突起195によって押し込まれるストッパ部材140は、ストッパ突起141が保持プレート150のガイド溝154の凸部先端部155aよりも内側、すなわち、ストッパ突起141が遊間溝部154bの内部に入り込む位置まで移動する。
【0095】
このとき、引っ張りばね186には、カラー185を掛止ピン181に向けて引っ張る付勢力が働いている。したがって、押込突起195によって押圧されるストッパ部材140のストッパ突起141が遊間溝部154bの内部に入り込む位置まで移動すると、保持プレート150が巻上げ方向とは反対側の方向に回転する。そして、ストッパ部材140のストッパ突起141が遊間溝部154bの時計回り側の端部に当接されると、その回転が停止される。それにより、ストッパ部材140は、収納位置に保持される。ストッパ部材140が収納位置に保持されると、駆動軸25の回転停止状態が解除される。そして、ロック解除部材170の押圧部177に対する押圧も解除され、ロック解除部材160が引っ張りばね187の付勢により初期位置に復帰する。このように、ロック解除部材160を押圧操作した状態で、ロードシーブ20を巻上げ方向に約半周回転させることで、回転ロック装置100の回転ロック状態を解除することができる。
【0096】
なお、上記の説明では、切換ツマミ46を巻上げ位置に切り替えた後で、駆動軸25の回転停止状態を解除する動作を行っているが、遊転ニギリ60をニュートラル位置に切り替えた後で駆動軸25の回転停止状態を解除する動作を行ってもよい。
【0097】
上記の説明では、突出部122を設けたストッパ係止部材120をストッパ係止部材110に対向する位置に設けている。したがって、保持プレート150の外径側に突出するストッパ部材140がストッパ係止部材120の係止壁124に衝突する場合もある。このような場合には、ストッパ支持部材130を巻上げ方向に回転させると、ストッパ係止部材110の押戻壁115にストッパ部材140が摺接する。この摺接により、ストッパ部材140はストッパ支持部材130のストッパ収納部133に向けて移動しながら巻上げ方向への回転を、係止壁113を超えて継続できるようになっている。したがって、ロック解除部材170を押圧操作した状態で、ロードシーブ20を巻上げ方向に約1周回転させることで、回転ロック装置100の回転ロック状態を解除することができる。
【0098】
上記の説明では、ストッパ係止部材110と、突出部122を設けたストッパ係止部材120とを対向する位置に設けた回転ロック装置100を例示しているが、駆動軸25が1回転するまでの間に駆動軸25を回転停止状態にすることができればよいので、ストッパ係止部材110又はストッパ係止部材120のいずれかのストッパ係止部材を、対向する位置に2個配置した回転ロック装置としてもよい。この場合、配置されたストッパ係止部材120の各々にロック解除部材を設けれることで、誤作動による回転ロック装置の回転ロック状態を解除することができる。
【0099】
上記の説明では、ロック解除部材をストッパ係止部材110にのみ設けた場合を説明しているが、ロック解除部材は、ストッパ係止部材120にも設ける、すなわち、ロック解除部材を180°の間隔を空けて設けることも可能である。
<効果について>
【0100】
以上のような、駆動軸25の一方向への急激な回転をロックする回転ロック装置100においては、駆動軸25の軸方向に沿ったストッパ突起141を有するストッパ部材140と、駆動軸25の軸心側から外方に向かってスライド可能な状態でストッパ部材140を支持し、駆動軸25と一体的に回転するストッパ支持部材130と、駆動軸25の周方向に沿って円弧状に延びる遊間溝部154bと、遊間溝部154bの巻下げ方向における側端部で、駆動軸25の径方向において遊間溝部154bよりも外方に位置する戻り規制溝部154cと、を含むガイド溝154を備え、ストッパ部材140のストッパ突起141がガイド溝154に挿入された状態で、ストッパ支持部材130に対して回転可能に取り付けられる保持プレート150と、保持プレート150をストッパ支持部材130に対して巻下げ方向に向けて付勢して、ストッパ部材140のストッパ突起141をガイド溝154の遊間溝部154b又は戻り規制溝部154cのいずれかの溝部に保持する引っ張りばね186と、所定の加速度を超えた加速度で駆動軸25が巻下げ方向に回転したときに、駆動軸25とともに回転するストッパ支持部材130の保持プレート150に対する相対位置の変化と、ストッパ支持部材130とともに回転するストッパ部材140の遠心力とにより、遊間溝部154bに挿入された状態で保持されたストッパ突起141が戻り規制溝部154cへと移動することに伴い、ストッパ支持部材130の外周縁から突出するストッパ部材140が衝突することで、駆動軸25の巻下げ方向への回転を停止させる係止壁113を有するストッパ係止部材110と、ストッパ支持部材130の外周面から外方に突出するストッパ部材140を駆動軸25の軸心側に押し込んで戻り規制溝部154cに挿入されたストッパ部材140のストッパ突起141を遊間溝部154bへと移動させることで、駆動軸25の巻下げ方向への回転停止を解除するロック解除部材170と、を有することを特徴とする。
【0101】
これによれば、駆動軸25が吊り荷重などによるチェーンCHに掛かる張力によって巻下げ方向に加速回転したとき、又は、例えばチェーンCHを手で引いて巻き下げ方向に引き出すことが可能な遊転モードの際に、チェーンCHを巻下げ方向に必要以上の速さで引き出したとき、或いは、チェーンCHを巻上げ方向に巻き上げてチェーンCHの弛みを解消するときに、回転ロック装置100が作動して、ストッパ部材140がストッパ支持部材130から突出してストッパ係止部材110の係止壁113に当接して、駆動軸25の巻下げ方向への回転が停止される。ロック解除部材170により、ストッパ支持部材130から突出したストッパ部材140は、駆動軸25の軸心側に移動してストッパ支持部材130から突出した状態が解除される。すなわち、ロック解除部材170によって、回転ロック装置100のロックを容易に解除することができる。
【0102】
また、本実施の形態の回転ロック装置100では、遊間溝部154bは、ストッパ部材140がストッパ支持部材130とともに回転したときにストッパ部材140に作用する遠心力によりストッパ部材140のストッパ突起141が当接する内側壁154b1を有し、戻り規制溝部154cは、ストッパ部材140のストッパ突起141が戻り規制溝部154cに保持された状態で、引っ張りばね186による付勢により保持プレート150が巻下げ方向に回転したときに、戻り規制溝部154cに保持されたストッパ部材140のストッパ突起141が当接する内側壁154c1を有し、駆動軸25の軸方向に直交するYZ平面において、内側壁154b1と内側壁154c1とが連なる凸部先端部155aは、ストッパ部材140の外周面がストッパ支持部材130の外周面とを同一面となるときのストッパ部材140のストッパ突起141の中心C5よりも駆動軸25の軸心側に位置し、ロック解除部材170は、ストッパ部材140を駆動軸25の軸心側に押圧することで、YZ平面において、ストッパ部材140のストッパ突起141の中心C5が凸部先端部155aの位置よりも駆動軸25の軸心側となる位置まで移動させるものである。
【0103】
これによれば、ストッパ突起141がストッパ支持部材130の外周面から一旦突出すると、ストッパ突起141の外周面142をストッパ支持部材の外周面と同一面となる位置までストッパ収納部133に押し込んだだけでは、回転ロック装置100のロックは解除されないようになっている。すなわち、回転ロック装置100のロックを誤って解除することを防止することができる。その一方で、ロック解除部材170を用いてストッパ部材140を駆動軸25の軸心側に向けて押圧することができ、それによって、ストッパ部材140のストッパ突起141の中心C5を、凸部先端部155aの位置よりも駆動軸25の軸心側となる位置まで容易に移動させることができる。
【0104】
また、本実施の形態の回転ロック装置100においては、ロック解除部材170は、駆動軸25を巻下げ方向とは反対方向となる巻上げ方向へ回転させたときに、ストッパ支持部材130の外周面から外方に突出するストッパ部材140に摺接され、ストッパ部材140の外周面がストッパ支持部材130の外周面とを同一面となる位置まで、ストッパ部材140を駆動軸25の軸心方向に移動させる湾曲面191と、ストッパ部材140のストッパ突起141の中心C5が凸部先端部155aの位置よりも駆動軸25の軸心側となる位置までストッパ部材140を駆動軸25の軸心側に押し込む押込突起195を有するものである。
【0105】
これによれば、駆動軸25を巻上げ方向に回転させると、ストッパ部材140は、連結部173及び湾曲面191に摺接されながら、ストッパ部材140の外周面がストッパ支持部材130の外周面と同一面となる位置まで、ストッパ支持部材130のストッパ収納部133に向けて移動する。その後、ロック解除部材170の押込突起195により、ストッパ部材140がストッパ支持部材130のストッパ収納部133に押し込まれる。したがって、押込突起195の高さは、駆動軸25の軸心を中心とした円のうち、ストッパ部材140の外周面がストッパ支持部材130の外周面と同一面となるときのストッパ突起141の中心C5を通る円の半径と、凸部先端部155aを通る円の半径との差分D1よりも高ければよく、例えば巻上げ方向に回転するストッパ部材140が押込突起195に衝突したときの衝撃により、押込突起195を破損させることを防止できる。
【0106】
また、本実施の形態の回転ロック装置100においては、ロック解除部材170は、ストッパ係止部材110に向けて付勢された状態でストッパ係止部材110に回動自在に取り付けられ、ロック解除部材170は、保持プレート150に向けた押圧を受けてストッパ支持部材130の外周面から外方に突出するストッパ部材140を駆動軸25の軸心側に押し込むものである。
【0107】
これによれば、ロック解除部材170を押圧しない限りは、ロック解除部材170は、保持プレート150に向けて回動することはないので、ロック解除部材170を誤って押圧操作して、回転ロック装置100のロックを解除させることが防止される。
【0108】
本実施の形態において説明した巻上機は、上述した回転ロック装置100と、一対のフレーム11,12に軸支され、荷を吊り上げるチェーンCHが掛け回されているロードシーブ20と、ロードシーブ20と減速ギヤ30を介して連結される駆動軸25と、ロードシーブ20を巻下げ方向又は巻下げ方向とは反対方向となる巻上げ方向のいずれか一方の方向に回転させる操作レバー50と、駆動軸25の周囲に取り付けられると共に外周側にラチェット歯を有する爪車80と、ラチェット歯に係合する爪部材90と、爪部材90の回動を軸支する爪軸91とを備え、ラチェット歯と爪部材90との係合によって爪車80の巻上げ方向への回転は許容すると共に巻下げ方向への回転は不可とするラチェット機構を備えたブレーキ装置70と、を備えることを特徴とする。
【0109】
これによれば、例えばブレーキ装置70が破損するなどして、駆動軸25が吊り荷重などによるチェーンCHに係る張力によって巻下げ方向に加速回転したとき、又は、例えばチェーンCHを手で引いて巻き下げ方向に引き出すことが可能な遊転モードの際に、チェーンCHを巻下げ方向に必要以上の速さで引き出したときに、回転ロック装置100が作動して、ストッパ部材140がストッパ支持部材130から突出してストッパ係止部材110の係止壁113に衝突して、駆動軸25の巻下げ方向への回転が停止される。ロック解除部材170により、ストッパ支持部材130から突出したストッパ部材140は、駆動軸25の軸心側に移動してストッパ支持部材130から突出した状態が解除される。すなわち、ロック解除部材170によって、回転ロック装置100のロックを容易に解除することができる。
【符号の説明】
【0110】
10…レバーホイスト(巻上機)
11,12…フレーム
20…ロードシーブ
25…駆動軸(軸状部材)
30…減速ギヤ
50…操作レバー
70…ブレーキ装置
80…爪車
90…爪部材
91…爪軸
100…回転ロック装置
110…ストッパ係止部材(ストッパ係止手段)
113…係止壁
130…ストッパ支持部材
140…ストッパ部材
141…ストッパ突起(突起)
150…保持プレート
154…ガイド溝
154b…遊間溝部(第1溝部)
154b1…内側壁(第1壁面)
154c…戻り規制溝部(第2溝部)
154c1…内側壁(第2壁面)
155a…凸部先端部(交点)
170…ロック解除部材(解除部材)
186…引っ張りばね(付勢手段)
191…湾曲面(摺接面)
195…押込突起(押込部)