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▶ 花王株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/898 20060101AFI20240904BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240904BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240904BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240904BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20240904BHJP
   A61K 8/43 20060101ALI20240904BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240904BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
A61K8/898
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/49
A61K8/41
A61K8/43
A61K8/44
A61Q5/00
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019137958
(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公開番号】P2020023485
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2018141495
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 良輔
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03281623(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03295820(EP,A1)
【文献】特表2011-503059(JP,A)
【文献】特表2018-517750(JP,A)
【文献】理美容教育出版株式会社,朝の新習慣『CHIARO HAIRWATER』。フィヨーレコスメティクスが4月24日に発売,[online],2018年04月06日,Internet:<URL;http://www.hbnews.ribiyo.co.jp/2018/04/06/fiole-3/>,[検索日 2024.02.29]
【文献】フィヨーレ(FIOLE) キアロ ヘアウォーターの解析結果,[online],Internet:<URL;https://www.ishampoo.jp/kaiseki/product/fiolechiarohairwater>,[検索日 2024.02.29]
【文献】Splash Corporation, Philippines,Hair Freshener,Mintel GNPD [online],2017年10月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#5203015, [検索日:2024.02.29], 表題部分及び成分
【文献】Anne Marie Exportacao Industria e Comercio de Cosmeticos, Brazil,Liquid Umbrella Waterproofing Strands,Mintel GNPD [online],2016年11月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#4436531, [検索日:2019.09.10], 表題部分及び成分
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)~(C)を含有し、成分(A)の含有量が0.01質量%以上5.00質量%以下、成分(B)の含有量が6.00質量%以上96.77質量%以下であり、pHが1以上5以下である毛髪化粧料(但し、水、エタノール、ハチミツ、γ-ドコサラクトン、ワサビノキ種子エキス、キウイエキス、アセロラ果実エキス、サトウキビエキス、ジラウロイルグルタミン酸リシンNa、ブチレングリコール(BG)、プロパンジオール、グリセリン、ジプロピレングリコール(DPG)、ダイズステロール、加水分解シルク、白金、ポリクオタリウム-10、セトリモニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド、ステアリルトリモニウムクロリド、カプリルヒドロキサム酸、ポリクオタニウム-6、セテス-20、PEG-50水添ヒマシ油、炭酸水素Na、ポリシリコーン-29、ジメチコン、フェノキシエタノール及び香料を含む場合を除く)
(A)以下の化合物(a)~(d)の反応産物であるエポキシアミノシランコポリマー
(a)少なくとも二つのオキシラニル基を有するポリシロキサン
(b)少なくとも二つのオキシラニル基を有するポリエーテル
(c)アミノプロピルトリアルコキシシラン
(d)以下の第一級アミンから選択される化合物
・第一級アミン:メチルアミン、エチルアミン、プロピレンアミン、エタノールアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ヘキシルアミン、ドデシルアミン、オレイルアミン、アニリン、アミノプロピルトリメチルシラン、アミノプロピルトリエチルシラン、アミノモルホリン、アミノプロピルジエチルアミン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、3-アミノ-9-エチルカルバゾール、1-アミノヘプタフロロヘキサン、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ペンタデカフルオロ-1-オクタンアミン
(B)以下の(b1)~(b3)から選ばれる少なくとも1種からなるミセル形成阻害剤
(b1):ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項が10.0MPa1/2以上15.8MPa1/2以下である有機化合物(ただし、(b3)に該当するものを除く)であって、低級アルカノール、芳香族アルコール、N-アルキルピロリドン及び非環状エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の有機化合物
(b2):エタノール及びジエタノールアミンから選ばれる化合物
(b3):グアニジニウム基を有するグアニジン塩又はアルギニン塩から選ばれる少なくとも1種の有機塩
(C)水
【請求項2】
成分(B)が、(b1):ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項が10.0MPa 1/2 以上15.8MPa 1/2 以下である有機化合物(ただし、(b3)に該当するものを除く)であって、低級アルカノール、芳香族アルコール、N-アルキルピロリドン及び非環状エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の有機化合物である請求項1に記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
成分(A)に対する成分(B)の質量比(B)/(A)が、1以上2000以下である請求項1又は2に記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
化合物(a)が次の一般式(1)で表される化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【化1】
〔式中、Rは末端にオキシラニル基を有する、ヘテロ酸素原子を含んでもよい炭素数1~6の炭化水素基を示し、xは1~1000の数を示す。〕
【請求項5】
化合物(b)が次の一般式(2)で表される化合物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【化2】
〔式中、Rは前記と同じ意味を示し、yは1~100、zは0~100であってy+zが1~200となる数を示す。〕
【請求項6】
化合物(c)におけるアルコキシ基が炭素数1~6のものである、請求項1~5のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項7】
化合物(c)が、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリプロポキシシラン、アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、アミノプロピルトリブトキシシラン及びアミノプロピルトリtert-ブトキシシランから選ばれる少なくとも1種である、請求項1~6のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項8】
成分(A)がポリシリコーン-29である、請求項1~7のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項9】
(b1)が、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、2-フェニル-1-プロパノール、2-プロパノール、N-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン及び乳酸エチルから選ばれる少なくとも1種である、請求項1~8のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項10】
(b3)が、グアニジン塩酸塩、グアニジン硝酸塩、グアニジンリン酸塩、グアニジンチオシアン酸塩、グアニジン炭酸塩、グアニジン酢酸塩、グアニジン硫酸塩、グアニジンスルファミン酸塩、アミノグアニジン塩酸塩、アミノグアニジン硫酸塩、アルギニン塩酸塩、アルギニン硝酸塩、アルギニンリン酸塩、アルギニンチオシアン酸塩、アルギニン炭酸塩、アルギニン酢酸塩、アルギニン硫酸塩、アルギニンスルファミン酸塩、アルギニングルタミン酸塩、及びアルギニンアスパラギン酸塩から選ばれる少なくとも1種である請求項1~9のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項11】
成分(B)が、ベンジルアルコールとフェネチルアルコールとの組合せ、又はベンジルアルコールとエタノールとの組合せを含む、請求項1、310のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項12】
毛髪に適用後、洗い流さずに乾燥させるものである、請求項1~11のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の毛髪化粧料を毛髪に適用後、洗い流さずに乾燥させる、毛髪化粧料の使用方法。
【請求項14】
毛髪に適用する毛髪化粧料の量が、毛髪の質量に対する浴比で0.001以上100以下である、請求項13に記載の毛髪化粧料の使用方法。
【請求項15】
以下の成分(A)~(C)を含有し、成分(A)の含有量が0.01質量%以上5.00質量%以下、成分(B)の含有量が5.00質量%以上96.77質量%以下であり、成分(A)に対する成分(B)の質量比(B)/(A)が1以上200以下であり、pHが1~5である毛髪化粧料。
(A)ポリシリコーン-29
(B)グアニジン塩酸塩
(C)水
【請求項16】
以下の成分(A)~(C)を含有し、成分(A)の含有量が0.01質量%以上5.00質量%以下、成分(B)の含有量が6.00質量%以上96.77質量%以下であり、成分(A)に対する成分(B)の質量比(B)/(A)が1以上200以下であり、pHが1~5である毛髪化粧料(但し、水、エタノール、ハチミツ、γ-ドコサラクトン、ワサビノキ種子エキス、キウイエキス、アセロラ果実エキス、サトウキビエキス、ジラウロイルグルタミン酸リシンNa、ブチレングリコール(BG)、プロパンジオール、グリセリン、ジプロピレングリコール(DPG)、ダイズステロール、加水分解シルク、白金、ポリクオタリウム-10、セトリモニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド、ステアリルトリモニウムクロリド、カプリルヒドロキサム酸、ポリクオタニウム-6、セテス-20、PEG-50水添ヒマシ油、炭酸水素Na、ポリシリコーン-29、ジメチコン、フェノキシエタノール及び香料を含む場合を除く)
(A)ポリシリコーン-29
(B)エタノール
(C)水
【請求項17】
以下の成分(A)~(C)を含有し、成分(A)の含有量が0.01質量%以上5.00質量%以下、成分(B)の含有量が5.00質量%以上96.77質量%以下である毛髪化粧料。
(A) 以下の化合物(a)~(d)の反応産物であるエポキシアミノシランコポリマー
(a) 少なくとも二つのオキシラニル基を有するポリシロキサン
(b) 少なくとも二つのオキシラニル基を有するポリエーテル
(c) アミノプロピルトリアルコキシシラン
(d) 以下の第一級アミンから選択される化合物
・第一級アミン:メチルアミン、エチルアミン、プロピレンアミン、エタノールアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ヘキシルアミン、ドデシルアミン、オレイルアミン、アニリン、アミノプロピルトリメチルシラン、アミノプロピルトリエチルシラン、アミノモルホリン、アミノプロピルジエチルアミン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、3-アミノ-9-エチルカルバゾール、1-アミノヘプタフロロヘキサン、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ペンタデカフルオロ-1-オクタンアミン
(B) 以下の(b3)からなるミセル形成阻害剤
(b3):グアニジニウム基を有するグアニジン塩又はアルギニン塩から選ばれる少なくとも1種の有機塩
(C) 水
【請求項18】
(b3)が、グアニジン塩酸塩、グアニジン硝酸塩、グアニジンリン酸塩、グアニジンチオシアン酸塩、グアニジン炭酸塩、グアニジン酢酸塩、グアニジン硫酸塩、グアニジンスルファミン酸塩、アミノグアニジン塩酸塩、アミノグアニジン硫酸塩、アルギニン塩酸塩、アルギニン硝酸塩、アルギニンリン酸塩、アルギニンチオシアン酸塩、アルギニン炭酸塩、アルギニン酢酸塩、アルギニン硫酸塩、アルギニンスルファミン酸塩、アルギニングルタミン酸塩、及びアルギニンアスパラギン酸塩から選ばれる少なくとも1種である請求項17に記載の毛髪化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘアカラー、パーマ等の化学施術に加え、若年層の女性を中心に習慣化してきているヘアアイロン、ドライヤー等の熱を利用したヘアセットなどにより、特に毛先部分におけるダメージが深刻化している。毛髪ダメージは、毛髪表面を覆う脂肪酸である18-MEA(18-メチルエイコサン酸)の喪失を伴い、毛髪表面の親水化と共に、表面摩擦が増大することが報告されている。そのようなダメージが蓄積することで引き起こされる、スタイリング時に毛先が絡まり、思い通りのヘアスタイルが作りにくい、指通りが悪いなどの症状は、消費者の大きな悩みとなっている。
【0003】
このため、健常毛が本来的に有する疎水性や、低摩擦性を回復する技術が求められていた。そのような技術の一つとして、損傷して親水化した毛髪の表面に堅牢性のあるポリマー被膜を形成させ、失われた疎水性を回復させることができる毛髪化粧料がいくつか提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、反応性官能基が結合したシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを構成モノマーとする共重合体を毛髪上で加水分解して架橋することにより耐洗浄性に優れる架橋性被膜を形成する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、特定のオキシラン又はオキセタン化合物と特定のアミノシラン化合物との反応産物(エポキシアミノシランコポリマー)を含有するパーソナルケア組成物によって、洗髪に対し堅牢性のある疎水性被膜を形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第98/54255号パンフレット
【文献】特表2011-503059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、保存中における共重合体の架橋を防ぐため、使用するまでは水から離しておく必要があり、このため、架橋のための加水分解ステップは使用の直前に実施されなければならず、消費者にとって使い勝手が良いといえるものではなかった。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術は、より簡便な方法ではあるが、高い浴比で毛髪を浸漬処理し、十分な乾燥時間をおいたプロセスにおいて初めて洗浄に対する堅牢性が発揮されるものであり、浴比の低いリーブオン処理で効果が得られるものではなかった。このため、簡便で、短時間かつ少量の処理で効果が得られるという、昨今の消費者の要求に適うものではなかった。
【0009】
したがって本発明は、毛髪に対し低浴比かつ短時間の施術を行うことで十分な疎水性付与と低摩擦化効果が得られ、しかも処理後の長期にわたりこれらの効果が持続される毛髪化粧料に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、エポキシアミノシランコポリマーを含有する毛髪化粧料をミセル形成が抑制された状態とすることで前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
本発明は、以下の成分(A)~(C)を含有し、成分(A)の含有量が0.01質量%以上5.00質量%以下、成分(B)の含有量が5.00質量%以上96.77質量%以下である毛髪化粧料を提供するものである。
(A) 以下の化合物(a)~(d)の反応産物であるエポキシアミノシランコポリマー
(a) 少なくとも二つのオキシラニル基又はオキセタニル基を有するポリシロキサン
(b) 少なくとも二つのオキシラニル基又はオキセタニル基を有するポリエーテル
(c) アミノプロピルトリアルコキシシラン
(d) 以下の第一級及び第二級アミンからなる群より選択される化合物
・第一級アミン:メチルアミン、エチルアミン、プロピレンアミン、エタノールアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ヘキシルアミン、ドデシルアミン、オレイルアミン、アニリン、アミノプロピルトリメチルシラン、アミノプロピルトリエチルシラン、アミノモルホリン、アミノプロピルジエチルアミン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、3-アミノ-9-エチルカルバゾール、1-アミノヘプタフロロヘキサン、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ペンタデカフルオロ-1-オクタンアミン
・第二級アミン:メチルエチルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジエタノールアミン、ジベンジルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピペリジン、ピロリジンフタルイミド、ポリマーアミン
(B) 以下の(b1)~(b3)から選ばれる少なくとも1種からなるミセル形成阻害剤
(b1):ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項が10.0MPa1/2以上15.8MPa1/2以下である有機化合物(ただし、(b3)に該当するものを除く)
(b2):エタノール、トリエチレングリコール、ペンチレングリコール、メチルプロパンジオール、ジエタノールアミン、及びN-メチルジエタノールアミンから選ばれる化合物
(b3):有機塩
(C) 水
【発明の効果】
【0012】
本発明の毛髪化粧料は、毛髪に対し低浴比かつ短時間の施術を行うことで十分な疎水性付与と低摩擦化効果が得られ、しかも処理後の長期にわたってこれらの効果を持続することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔成分(A):エポキシアミノシランコポリマー〕
成分(A)のエポキシアミノシランコポリマーは、以下に示す化合物(a)~(d)の反応産物である。
【0014】
<化合物(a)、(b)>
化合物(a)は、少なくとも二つのオキシラニル基又はオキセタニル基を含有するポリシロキサンであり、例えば、次の一般式(1)で表されるものが挙げられる。
【0015】
【化1】
【0016】
〔式中、Rは末端にオキシラニル基又はオキセタニル基を有する、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~6の炭化水素基を示し、xは1~1000の数を示す。
【0017】
化合物(b)は、少なくとも二つのオキシラニル基又はオキセタニル基を含有するポリエーテルであり、例えば、次の一般式(2)で表されるものが挙げられる。
【0018】
【化2】
【0019】
〔式中、Rは前記と同じ意味を示し、yは1~100、zは0~100であってy+zが1~200となる数を示す。〕
【0020】
一般式(1)及び(2)において、Rが含んでもよいヘテロ原子としては酸素原子が好ましい。Rとしてはオキシラニルメチル基(グリシジル基)、オキシラニルメトキシ基(グリシジルオキシ基)、オキシラニルメトキシプロピル基(グリシジルオキシプロピル基)、オキセタニルメチル基、オキセタニルメトキシ基、オキセタニルメトキシプロピル基、3-エチルオキセタニルメチル基等が挙げられ、なかでも、オキシラニル基を有する、ヘテロ酸素原子を含んでもよい炭素数1~4の炭化水素基が好ましく、オキシラニルメチル基(グリシジル基)、オキシラニルメトキシ基(グリシジルオキシ基)、オキシラニルメトキシプロピル基(グリシジルオキシプロピル基)から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
【0021】
<化合物(c)>
化合物(c)は、アミノプロピルトリアルコキシシランである。化合物(c)におけるアルコキシ基としては、炭素数1~6のものが挙げられ、炭素数2~4のもの、更には炭素数3のものが好ましく、なかでもイソプロポキシ基が好ましい。化合物(c)としては、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリプロポキシシラン、アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、アミノプロピルトリブトキシシラン、アミノプロピルトリtert-ブトキシシランが挙げられ、なかでもアミノプロピルトリイソプロポキシシランが好ましい。化合物(c)は、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
<化合物(d)>
化合物(d)は、以下の第一級及び第二級アミンからなる群より選択される化合物である。
・第一級アミン:メチルアミン、エチルアミン、プロピレンアミン、エタノールアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ヘキシルアミン、ドデシルアミン、オレイルアミン、アニリン、アミノプロピルトリメチルシラン、アミノプロピルトリエチルシラン、アミノモルホリン、アミノエチルジメチルアミン、アミノエチルジエチルアミン、アミノエチルジブチルアミン、アミノプロピルジメチルアミン、アミノプロピルジエチルアミン、アミノプロピルジブチルアミン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、3-アミノ-9-エチルカルバゾール、1-アミノヘプタフロロヘキサン、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ペンタデカフルオロ-1-オクタンアミン
・第二級アミン:メチルエチルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジエタノールアミン、ジベンジルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピペリジン、ピロリジンフタルイミド、ポリマーアミン
【0023】
これらのうち、第一級アミンが好ましく、アミノプロピルジエチルアミン、アミノプロピルジメチルアミン、アミノプロピルジブチルアミンから選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。化合物(d)は、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
化合物(a)~(d)の反応は、例えば、イソプロパノール等の溶媒中で一定時間還流することによって行われる。ここで、化合物(a)及び(b)のオキシラニル基又はオキセタニル基の化合物(c)のアミノ基に対するモル比は、好ましくは1以上、より好ましくは1.1以上、更に好ましくは1.2以上であり、また、好ましくは4以下、より好ましくは3.9以下、更に好ましくは3.8以下である。
【0025】
成分(A)としては、ポリシリコーン-29のINCI名を有するものが挙げられ、その市販品の例としては、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社のSilsoft CLX-E(有効分15質量%、ジプロピレングリコール及び水を含む)が挙げられる。
【0026】
成分(A)のエポキシアミノシランコポリマーには、二つの特徴がある。第1には疎水部であるポリシロキサン部と親水部であるポリエーテル部を有する結果、ミセル形成能を有するため、当該化合物は水中で分子集合体(ミセル)を形成すること、第2はその構成単位として、アミノプロピルトリアルコキシシラン由来の構成単位を含むことである。
【0027】
本発明者は、エポキシアミノシランコポリマーの第1の特徴であるミセル形成能をあえて抑制したところ、すなわち、そのミセル形成能を阻害する剤(成分(B))を入れて毛髪化粧料として使用したところ、驚くべきことに、毛髪に対し低浴比かつ短時間の施術を行うことで十分な疎水性付与と低摩擦化効果が得られ、しかも処理後の長期にわたってこれらの効果を持続することができることを見出した。
【0028】
その詳細な理由は不明であるが、本発明者は以下のように推定している。すなわち、成分(A)を含有する水溶液のミセル形成を抑制することで、成分(A)のエポキシアミノシランコポリマーの溶解性が高くなり、毛髪への吸着が促進され均一に付着するため、乾燥時間も短くなると考えられる。更に、吸着後の乾燥過程で、毛髪に吸着したエポキシアミノシランポリマー同士が、それぞれのアミノプロピルトリアルコキシシラン由来の構成単位のシラノールの反応によって架橋するため、毛髪上には高分子量のシリコーンが付着された状態となる。このような高分子のシリコーンは、毛髪との相互作用により複数の箇所で毛髪に吸着しているため、毛髪に疎水性が付与されるものと考えられる。
【0029】
本発明の毛髪化粧料中における成分(A)の含有量は、毛髪に十分な疎水性を与える観点から、0.01質量%以上であって、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.20質量%以上であり、また、べたついた感触を与えない観点から、5.00質量%以下であって、好ましくは4.00質量%以下、より好ましくは3.00質量%以下、更に好ましくは2.00質量%以下である。
【0030】
〔成分(B):ミセル形成阻害剤〕
本発明において用いる成分(B)のミセル形成阻害剤は、成分(A)を含有する水溶液のミセル形成を抑制する能力のある化合物である。化合物のミセル形成阻害効果は、The Journal of Physical Chemistry B, 2002, 106, 10845-10853, Self-Assembly of an Amphiphilic Siloxane Graft Copolymer in Waterに記載の方法により測定する。ただし、使用試薬は後述のポリエーテル変性シリコーンを使用する。すなわち、ある化合物のミセル形成阻害効果は、ポリエーテル変性シリコーンの水溶液に一定濃度の当該化合物を加えた際の臨界ミセル濃度(CMC)を実測することで判別が可能である。成分(A)のエポキシアミノシランコポリマーもポリエーテル変性シリコーン誘導体の一種であるから、この方法によって測定されるポリエーテル変性シリコーン水溶液のCMCを、化合物未添加の場合より上昇させる化合物は、成分(A)の水溶液のミセル形成を抑制するということができる。すなわち、本発明において成分(B)のミセル形成阻害剤とは、以下の手順に従って測定されるポリエーテル変性シリコーン水溶液のCMCを、化合物未添加の場合のCMC(0.13質量%)より高くする化合物、好ましくは0.20質量%以上とする化合物をいうものとする。
【0031】
成分(A)のエポキシアミノシランコポリマーのミセル形成を抑制し、毛髪への吸着を促進し、短時間で十分な疎水性付与と低摩擦化効果を発揮させ、しかも処理後の長期にわたってこれらの効果を持続させる観点から、前記ポリエーテル変性シリコーン水溶液のCMCの値は高い方が好ましい。
【0032】
(使用試薬)
・ポリエーテル変性シリコーン:KF-6011(PEG-11メチルエーテルジメチコン、HLB 14.5、信越化学工業社製)
・標識化合物:1,6-ジフェニルヘキサ-1,3,5-トリエン(関東化学社製)
【0033】
(実験手順)
1.ミセル形成阻害効果を判別したい化合物を、その溶解度に応じて1質量%、5質量%又は10質量%(これらのうち溶解可能な最高濃度)と、ポリエーテル変性シリコーンを0.01~0.80質量%含む水溶液を調製する。
2.別途0.4mMの濃度の標識化合物のメタノール溶液を調製する。
3.1の水溶液5.0mLと2のメタノール溶液50μLを混合し、一晩放置する。
4.紫外可視吸光度測定を行う。
5.354nmでの吸光度を縦軸、ポリエーテル変性シリコーンの濃度を横軸としてプロットする。
6.吸光度が増大し始めるポリエーテル変性シリコーンの濃度を臨界ミセル濃度(CMC)とする。
【0034】
(測定機器)
JASCO V-560 UV-VIS Spectrometer、日本分光社製
(測定条件)
測定範囲:300nm~400nm
温度:25℃
セル:PMMAディスポーザブルセル 外寸(mm) 12.5×12.5×45H(Brand社製)
【0035】
前記条件を満たす成分(B)のミセル形成阻害剤としては、(b1)ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項が10.0MPa1/2以上15.8MPa1/2以下である有機化合物(ただし、(b3)に該当するものを除く)、(b2)エタノール、トリエチレングリコール、ペンチレングリコール、メチルプロパンジオール、ジエタノールアミン、及びN-メチルジエタノールアミンから選ばれる化合物、(b3)有機塩が挙げられる。本発明において、ハンセン溶解度パラメータの水素結合項とは、Hansen Solubility Parameters: A User’s Handbook, CRC Press, Boca Raton FL, 2007を元にしたソフトウェアパッケージHSPiP 4th Edition 4.1.07を用いて、DIYプログラムにおいて25℃で計算されるδH(MPa1/2)(分子間の水素結合によるエネルギー項)をいう。
【0036】
成分(B)のうち(b1)のハンセンの溶解度パラメータの水素結合項が10.0MPa1/2以上15.8MPa1/2以下である有機化合物としては、炭素数2以上8以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基と1つ以上の水酸基を持つ脂肪族アルコール、芳香族アルコール、エーテルアルコール、N-アルキルピロリドン、非環状エステル、水酸基を有してもよいアルキルアミン等の有機化合物が挙げられる。
【0037】
以下に、ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項が10.0MPa1/2以上15.8MPa1/2以下である化合物の具体例を挙げる。各例示中のかっこ内の数値は、前述の方法で計算される水素結合項である。
・炭素数2以上8以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基と1つ以上の水酸基を持つ脂肪族アルコールの例: 1-プロパノール(14.7)、2-プロパノール(14.3)、1-ブタノール(15.2)、2-ブタノール(12.4)等の低級アルカノール;へキシレングリコ―ル(15.0)、オクタンジオール(14.5)、デカンジオール(12.8)等の多価アルコール
・芳香族アルコールの例: ベンジルアルコール(12.4)、シンナミルアルコール(10.9)、フェネチルアルコール(11.4)、p-アニシルアルコール(12.1)、p-メチルベンジルアルコール(11.2)、フェノキシエタノール(12.2)、2-ベンジルオキシエタノール(10.8)、2-フェニル-1-プロパノール(10.2)
・エーテルアルコールの例: エチレングリコールモノエチルエーテル(15.7)、エチレングリコールモノブチルエーテル(13.0)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(13.1)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(11.9)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(11.7)、エチルヘキシルグリセリルエーテル(13.1)
・N-アルキルピロリドンの例: N-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン(13.5)
・非環状エステルの例: 乳酸エチル(14.4)、乳酸ブチル(11.9)
・水酸基を有してもよいアルキルアミンの例: メチルアミン(13.0)、エチルアミン(10.2)、N,N-ジメチルモノエタノールアミン(13.1)、アミノメチルプロパノール(14.4)
【0038】
これらのうち、ミセル形成阻害能を発現させる観点から、ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項が15.5MPa1/2以下であるものが好ましく、15.0MPa1/2以下であるものがより好ましく、13.0MPa1/2以下であるものが更に好ましく、12.5MPa1/2以下であるものが更により好ましい。同様の観点から、10.5MPa1/2以上であるものが好ましく、11.0MPa1/2以上であるものがより好ましく、11.5MPa1/2以上であるものが更に好ましく、12.0MPa1/2以上であるものが更により好ましい。なかでも芳香族アルコール及びエーテルアルコールが好ましく、ベンジルアルコール(12.4)、フェネチルアルコール(11.4)、フェノキシエタノール(12.2)及び2-ベンジルオキシエタノール(10.8)から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0039】
成分(B)のうち(b2)のエタノール、トリエチレングリコール、ペンチレングリコール、メチルプロパンジオール、ジエタノールアミン、及びN-メチルジエタノールアミンから選ばれる化合物は、ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項が15.8 MPa1/2を超えるものの、ミセル形成阻害能を有する化合物である。
【0040】
成分(B)のうち(b3)の有機塩としてはグアニジニウム基を有するグアニジン塩、アルギニン塩から選ばれる少なくとも1種が好ましい。例えばグアニジン塩としては、グアニジン塩酸塩、グアニジン硝酸塩、グアニジンリン酸塩、グアニジンチオシアン酸塩、グアニジン炭酸塩、グアニジン酢酸塩、グアニジン硫酸塩、グアニジンスルファミン酸塩、アミノグアニジン塩酸塩、アミノグアニジン硫酸塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。例えばアルギニン塩としては、アルギニン塩酸塩、アルギニン硝酸塩、アルギニンリン酸塩、アルギニンチオシアン酸塩、アルギニン炭酸塩、アルギニン酢酸塩、アルギニン硫酸塩、アルギニンスルファミン酸塩、アルギニングルタミン酸塩、及びアルギニンアスパラギン酸塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0041】
成分(B)は、いずれかを単独で又は2以上を組み合わせて使用することができる。例えば、(b1)の中から、ベンジルアルコールとフェネチルアルコールとを組み合わせて使用したり、(b1)からベンジルアルコールを、(b2)からエタノールを選んで組み合わせて使用したりすることもできる。なお、使用感を向上させる観点から、成分(B)中の(b1)と(b2)の総量は90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましく、実質100質量%が更により好ましい。
【0042】
さらに、より具体的には、成分(A)のエポキシアミノシランコポリマーのミセル形成を抑制し、毛髪への吸着を促進し、短時間で十分な疎水性付与と低摩擦化効果を発揮させ、しかも処理後の長期にわたってこれらの効果を持続させる観点から、成分(B)は、エタノール、ベンジルアルコール、トリエチレングリコール、ペンチレングリコール、メチルプロパンジオール、フェノキシエタノール、乳酸エチル、ジエタノールアミン、グアニジン塩から選ばれる少なくとも1種が好まく、エタノール、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、乳酸エチル、ジエタノールアミン、グアニジン塩から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、エタノール、ベンジルアルコール、フェノキシエタノールから選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
【0043】
本発明の毛髪化粧料中における成分(B)の含有量は、毛髪に対する疎水性付与効果と低摩擦化効果を長期間持続させる観点から、5.00質量%以上であって、好ましくは6.00質量%以上、より好ましくは7.00質量%以上、更に好ましくは10.0質量%以上、更により好ましくは12.0質量%以上、更にまた好ましくは15.0質量%以上であり、また、保存安定性を高める観点から、96.77質量%以下であって、好ましくは95.0質量%以下、より好ましくは90.0質量%以下、更に好ましくは80.0質量%以下、更により好ましくは70.0質量%以下、更にまた好ましくは60.0質量%以下である。
【0044】
また、成分(A)に対する成分(B)の質量比(B)/(A)は、ミセル形成阻害効果を十分に発揮させる観点から、好ましくは1以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは6以上、更により好ましくは7以上であり、また、保存安定性を高める観点から、好ましくは2000以下、より好ましくは1000以下、更に好ましくは500以下、更により好ましくは200以下である。
【0045】
〔成分(C):水〕
本発明の毛髪化粧料中における成分(C)の水の含有量は、毛髪への塗布を容易にする観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、また、塗布後の毛髪の乾燥を容易にする観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
【0046】
〔増粘剤〕
本発明の毛髪化粧料には、増粘剤を含有させてもよい。増粘剤としては、アニオン性増粘剤、カチオン性増粘剤、ノニオン性増粘剤等が挙げられる。
【0047】
アニオン性増粘剤の具体例としては、ポリアクリル酸(Noveon社:カーボポール941、同981)、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(Noveon社:カーボポールETD2020)、低級アルキルビニルエ―テル/無水マレイン酸共重合体の末端不飽和ジエン化合物による部分架橋ポリマーの加水分解物又はそのモノアルキルエステル(ASHLAND社:スタビリーゼ06、同QM)、カラギーナン(例えば、三菱レーヨン社:ソアギーナLX22、同ML210)、キサンタンガム(例えば、大日本住友製薬社:エコーガムT)、ウェランガム(例えば、三晶社:K1C376、K1A96)、ヒドロキシプロピルキサンタンガム(例えば、大日本住友製薬社:ラボールガムEX)、テアロキシPGヒドロキシエチルセルローススルホン酸ナトリウム、アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー(例えば、セピック社:シマルゲルNS,セピノブEMT10)等が挙げられる。
【0048】
カチオン性増粘剤としては、天然又は半合成のカチオン性多糖類、ポリマー鎖の側鎖にアミノ基若しくはアンモニウム基を含むか、又はジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含む合成系ポリマー等が挙げられる。
【0049】
カチオン性多糖類の具体例としては、カチオン化セルロース誘導体(例えば、ライオン社:レオガードG、同GP,ダウケミカル社:ユーケア ポリマーJR-125、同JR-400、同JR-30M、同LR-400、同LR-30M,アクゾノーベル社:セルコートH-100、同L-200)、カチオン化グアーガム誘導体(例えば、ソルベイ社:ジャガーC-13S、同C-17,DSP五協フード&ケミカル社:ラボールガムCG-M、同CG-M7、同CG-M8M)、ヒドロキシプロピルキトサン(例えば、一丸ファルコス社:キトフィルマーHV-10)、キトサン・dl-ピロリドンカルボン酸塩(例えば、ユニオン・カーバイド社:カイトマーPC)等が挙げられる。
【0050】
ポリマー鎖の側鎖にアミノ基又はアンモニウム基を含む合成系カチオン性ポリマーとしては、トリアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、トリアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、ビニルアミン等を構成単位として含む合成系カチオン性ポリマーが挙げられ、具体例としては、ポリメタクリル酸エチルトリモニウムクロリド(INCI名:ポリクオタニウム-37、例えばBASF社:Cosmedia Ultragel 300)、(アクリル酸/アクリル酸メチル/3-メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド)コポリマー(INCI名:ポリクオタニウム-47、例えばルーブリゾール社:マーコート2201)、(アクリル酸/アクリルアミド/メチルメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド)コポリマー(INCI名:ポリクオタニウム-53、例えばルーブリゾール社:マーコート2003)、(ジメチルアクリルアミド/メタクリル酸エチルトリモニウムクロリド)コポリマー(例えば、BASF社:Tinobis CD)、(ビニルアミン/ビニルアルコール)コポリマー(例えば、積水スペシャリティケミカル社:SEVOL ULTALUX AD、三菱化学社:Diafix C-601)等が挙げられる。
【0051】
ジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含む合成系カチオン性ポリマーの具体例としては、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドの重合体(INCI名:ポリクオタニウム-6、例えばルーブリゾール社:マーコート100)、(ジメチルジアリルアンモニウムクロリド/アクリルアミド)コポリマー(INCIポリクオタニウム-7、例えばルーブリゾール社:マーコート550、同740)、(アクリル酸/ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)コポリマー(INCI名:ポリクオタニウム-22、例えばルーブリゾール社:マーコート280、同295)、(アクリルアミド/アクリル酸/ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)コポリマー(INCI名:ポリクオタニウム-39、例えばルーブリゾール社:マーコートプラス3330、同3331)等が挙げられる。
【0052】
ノニオン性の増粘ポリマーとしては、天然又は半合成のノニオン性多糖類、ビニルアルコール又はオキシアルキレンを構成単位として含む合成系ノニオン性ポリマー等が挙げられる。
【0053】
天然又は半合成のノニオン性多糖類の具体例としては、デンプン、グアーガム、ローカストビーンガム、グルコマンナン等の水溶性天然多糖類、及びセルロース、デンプン、グアーガム、ローカストビーンガム等にアルキレンオキサイドを反応させてなる水溶性ヒドロキシアルキル化多糖類等が挙げられる。具体例としては、グアーガム(例えば、DSP五協フード&ケミカル:ファイバロンS)、プルラン(例えば、林原社:プルランPI-20)等が挙げられる。ヒドロキシエチルセルロース(例えば、ダイセルファインケム社:SE-850,ダウケミカル社:セロサイズHEC QP-52000-H)、メチルヒドロキシエチルセルロース(アクゾノーベル社:STRUCTURE CELL 12000M)、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、日本曹達社:HPC-H、同HPC-M、同HPC-L)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、信越化学工業社:メトローズ60SH-10000)等が挙げられる。
【0054】
ビニルアルコール又はオキシアルキレンを構成単位として含む合成系ノニオン性増粘ポリマーの具体例としては、ポリビニルアルコール(例えば、日本合成化学社:ゴーセノールEG-40、同GH-05、同KH-20、同NH-26)、高重合度ポリエチレングリコール(例えばダウケミカル社:ポリオックスWSR N-60K、同WSR301、WSR303)、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー(例えば、ADEKA社:アデカノールGT-700)等が挙げられる。
【0055】
これらの増粘剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明の毛髪化粧料中における増粘剤の含有量は、毛髪への適切な塗布しやすさの観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.10質量%以上であり、かつ、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下である。
【0056】
〔pH調整剤〕
本発明の毛髪化粧料のpHは、酸性領域又は塩基性領域において成分(A)のトリアルコキシシラン部の反応速度を高める観点から、以下の範囲が好ましい。本発明の毛髪化粧料を酸性領域とする場合は、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは2以上であって、好ましくは5以下、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは3.5以下である。また、本発明の毛髪化粧料を塩基性領域とする場合は、好ましくは7以上、より好ましくは7.5以上、更に好ましくは8.0以上であって、好ましくは11以下、より好ましくは10.5以下、更に好ましくは10以下である。本発明の毛髪化粧料のpHを上記範囲に調整するために、本発明の毛髪化粧料には、適宜pH調整剤を含有することができる。pH調整剤としては、アルカリ剤として、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノブタノール等のアルカノールアミン又はその塩;1,3-プロパンジアミン等のアルカンジアミン又はその塩;炭酸グアニジン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物等を使用することができる。また、酸剤として、塩酸、リン酸等の無機酸、塩酸モノエタノールアミン等の塩酸塩;リン酸二水素一カリウム、リン酸一水素二ナトリウム等のリン酸塩、乳酸、リンゴ酸等の有機酸等を使用することができる。
【0057】
〔任意成分〕
その他、本発明の毛髪化粧料には、以上の成分のほか、通常毛髪化粧料に配合される成分を適宜含有させることができる。例えば、抗フケ剤;ビタミン剤;殺菌剤;抗炎症剤;防腐剤;キレート剤;保湿剤;染料、顔料等の着色剤;エキス類;パール化剤;香料;紫外線吸収剤;酸化防止剤;光触媒;シアバター;ローズ水;ヒマワリ油;オレンジ油;ユーカリ油;界面活性剤等が挙げられる。光触媒としては、酸化チタン、酸化タングステン等の金属酸化物、8-ヒドロキシキノリン、7-シアノ-2-ナフトール、8-キノリノール-1-オキシド等の芳香族ヒドロキシ化合物、その他スルホン化ピレン化合物、オニウム塩、ジアゾメタン誘導体、ビススルホン誘導体、ジスルホノ誘導体、ニトロベンジルスルホネート誘導体、スルホン酸エステル誘導体、N-ヒドロキシイミドのスルホン酸エステルなどが挙げられる。界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれを使用することもでき、カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、アルキル第4級アンモニウム塩等が挙げられ、アニオン性界面活性剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルカルボン酸塩、アルキルエーテルスルホン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等が挙げられ、両性界面活性剤としては、イミダゾリン、カルボベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン、ヒドロキシスルホベタイン、アミドスルホベタイン等が挙げられ、ノニオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステル等のエステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル等のエーテル類などが挙げられる。
【0058】
具体的には、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等のポリオールを例えば保湿目的で使用することができる。本発明の毛髪化粧料中におけるこれらの成分の含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。また、本発明の毛髪化粧料中における光触媒の量は、化粧料の保存安定性を維持する観点から、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.1重量%以下、更により好ましくは実質0質量%である。また、本発明の毛髪化粧料中における界面活性剤の量は、効果の持続性を維持する観点から、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.1重量%以下、更により好ましくは実質0質量%である。
【0059】
〔剤型等〕
本発明の毛髪化粧料の剤型は、例えば、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、ムース状、エアゾールなどの形態にすることができるが、乾燥速度を高め被膜形成を促進する観点から、液状、ゲル状、ペースト状、ムース状、エアゾールであることが好ましい。なお、エアゾールとする場合、ここまでに述べた各成分の含有量、毛髪化粧料のpHは、噴射剤を含まない原液中の含有量、原液のpHである。
【0060】
〔使用方法〕
本発明の毛髪化粧料は、毛髪に適用後、洗い流す方法で使用しても、洗い流さずに乾燥させる方法で使用してもよいが、毛髪に適用後、洗い流さずに乾燥させる方法で使用することが、本発明の効果をより発揮するうえで好ましい。
【0061】
毛髪に適用する本発明の毛髪化粧料の量は、毛髪の質量に対する浴比(毛髪化粧料の質量/毛髪の質量)で、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上であり、また好ましくは100以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは1以下である。
【0062】
以上述べた実施形態に関し、以下に本発明の好ましい態様を更に開示する。
【0063】
<1>
以下の成分(A)~(C)を含有し、成分(A)の含有量が0.01質量%以上5.00質量%以下、成分(B)の含有量が5.00質量%以上96.77質量%以下である毛髪化粧料。
(A) 以下の化合物(a)~(d)の反応産物であるエポキシアミノシランコポリマー
(a) 少なくとも二つのオキシラニル基又はオキセタニル基を有するポリシロキサン
(b) 少なくとも二つのオキシラニル基又はオキセタニル基を有するポリエーテル
(c) アミノプロピルトリアルコキシシラン
(d) 以下の第一級及び第二級アミンからなる群より選択される化合物
・第一級アミン:メチルアミン、エチルアミン、プロピレンアミン、エタノールアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ヘキシルアミン、ドデシルアミン、オレイルアミン、アニリン、アミノプロピルトリメチルシラン、アミノプロピルトリエチルシラン、アミノモルホリン、アミノプロピルジエチルアミン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、3-アミノ-9-エチルカルバゾール、1-アミノヘプタフロロヘキサン、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ペンタデカフルオロ-1-オクタンアミン
・第二級アミン:メチルエチルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジエタノールアミン、ジベンジルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピペリジン、ピロリジンフタルイミド、ポリマーアミン
(B) 以下の(b1)~(b3)から選ばれる少なくとも1種を含有するミセル形成阻害剤
(b1):ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項が10.0MPa1/2以上15.8MPa1/2以下である有機化合物(ただし、(b3)に該当するものを除く)
(b2):エタノール、トリエチレングリコール、ペンチレングリコール、メチルプロパンジオール、ジエタノールアミン、及びN-メチルジエタノールアミンから選ばれる化合物
(b3):有機塩
(C) 水
【0064】
<2>
好ましくは、化合物(a)が次の一般式(1)で表される化合物である<1>に記載の毛髪化粧料。
【0065】
【化3】
【0066】
〔式中、Rは末端にオキシラニル基又はオキセタニル基を有する、ヘテロ酸素原子を含んでもよい炭素数1~6の炭化水素基を示し、xは1~1000の数を示す。〕
【0067】
<3>
好ましくは、化合物(b)が次の一般式(2)で表される化合物である<1>又は<2>に記載の毛髪化粧料。
【0068】
【化4】
【0069】
〔式中、Rは前記と同じ意味を示し、yは1~100、zは0~100であってy+zが1~200となる数を示す。〕
【0070】
<4>
Rが、好ましくはオキシラニルメチル基(グリシジル基)、オキシラニルメトキシ基(グリシジルオキシ基)、オキシラニルメトキシプロピル基(グリシジルオキシプロピル基)、オキセタニルメチル基、オキセタニルメトキシ基、オキセタニルメトキシプロピル基及び3-エチルオキセタニルメチル基から選ばれる少なくとも1種、より好ましくはオキシラニルメチル基(グリシジル基)、オキシラニルメトキシ基(グリシジルオキシ基)、オキシラニルメトキシプロピル基(グリシジルオキシプロピル基)から選ばれる少なくとも1種である<2>又は<3>に記載の毛髪化粧料。
【0071】
<5>
化合物(c)におけるアルコキシ基が、好ましくは炭素数1~6のもの、より好ましくは炭素数2~4のもの、更に好ましくは炭素数3のもの、更に好ましくはイソプロポキシ基である<1>~<4>のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【0072】
<6>
化合物(c)が、好ましくはアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリプロポキシシラン、アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、アミノプロピルトリブトキシシラン及びアミノプロピルトリtert-ブトキシシランから選ばれ、より好ましくはアミノプロピルトリイソプロポキシシランである<1>~<4>のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【0073】
<7>
化合物(d)が、好ましくは第一級アミン、より好ましくはアミノプロピルジエチルアミン、アミノプロピルジメチルアミン及びアミノプロピルジブチルアミンから選ばれる少なくとも1種である<1>~<6>のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【0074】
<8>
成分(A)が、好ましくはポリシリコーン-29である<1>~<7>のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【0075】
<9>
毛髪化粧料中における成分(A)の含有量が、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.20質量%以上であり、また、好ましくは4.00質量%以下、より好ましくは3.00質量%以下、更に好ましくは2.00質量%以下である<1>~<8>のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【0076】
<10>
(b1)が、ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項が好ましくは15.5MPa1/2以下、より好ましくは15.0MPa1/2以下、更に好ましくは13.0MPa1/2以下、更により好ましくは12.5MPa1/2以下であり、また、好ましくは10.5MPa1/2以上、より好ましくは11.0MPa1/2以上、更に好ましくは11.5MPa1/2以上、更により好ましくは12.0MPa1/2以上である有機化合物から選ばれる少なくとも1種を含む<1>~<9>のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【0077】
<11>
(b1)が、好ましくは炭素数2以上8以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基と1つ以上の水酸基を有する脂肪族アルコール、芳香族アルコール、エーテルアルコール、N-アルキルピロリドン、非環状エステル、及び水酸基を有してもよいアルキルアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の有機化合物である<10>に記載の毛髪化粧料。
【0078】
<12>
(b1)が、好ましくは芳香族アルコール又はエーテルアルコール、より好ましくはベンジルアルコール、フェネチルアルコール、フェノキシエタノール及び2-ベンジルオキシエタノールから選ばれる少なくとも1種である<10>又は<11>に記載の毛髪化粧料。
【0079】
<13>
成分(B)が、好ましくは(b3)有機塩を含み、より好ましくはグアニジニウム基を有するグアニジン塩又はアルギニン塩を含み、更に好ましくはグアニジン塩酸塩、グアニジン硝酸塩、グアニジンリン酸塩、グアニジンチオシアン酸塩、グアニジン炭酸塩、グアニジン酢酸塩、グアニジン硫酸塩、グアニジンスルファミン酸塩、アミノグアニジン塩酸塩、アミノグアニジン硫酸塩、アルギニン塩酸塩、アルギニン硝酸塩、アルギニンリン酸塩、アルギニンチオシアン酸塩、アルギニン炭酸塩、アルギニン酢酸塩、アルギニン硫酸塩、アルギニンスルファミン酸塩、アルギニングルタミン酸塩及びアルギニンアスパラギン酸塩から選ばれる少なくとも1種を含み、更に好ましくはグアニジン塩酸塩を含む<1>~<9>のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【0080】
<14>
成分(B)が、好ましくはベンジルアルコールとフェネチルアルコールとの組合せ、又はベンジルアルコールとエタノールとの組合せを含む<1>~<9>のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【0081】
<15>
毛髪化粧料中における成分(B)の含有量が、好ましくは6.00質量%以上、より好ましくは7.0質量%以上、更に好ましくは10.0質量%以上、更により好ましくは12.0質量%以上、更にまた好ましくは15.0以上であり、また、好ましくは95.0質量%以下、より好ましくは90.0質量%以下、更に好ましくは80.0質量%以下、更により好ましくは70.0質量%以下、更にまた好ましくは60.0質量%以下である<1>~<14>のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【0082】
<16>
成分(A)に対する成分(B)の質量比(B)/(A)が、好ましくは1以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは6以上、更により好ましくは7以上であり、また、好ましくは2000以下、より好ましくは1000以下、更に好ましくは500以下、更により好ましくは200以下である<1>~<15>のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【0083】
<17>
毛髪化粧料中における成分(C)の含有量が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である<1>~<16>のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【0084】
<18>
好ましくは、毛髪に適用後、洗い流さずに乾燥させるものである<1>~<17>のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【0085】
<19>
以下の成分(A)~(C)を含有し、成分(A)の含有量が0.01質量%以上5.00質量%以下、成分(B)の含有量が5.00質量%以上96.77質量%以下であり、成分(A)に対する成分(B)の質量比(B)/(A)が1以上200以下であり、pHが1~5である毛髪化粧料。
(A) ポリシリコーン-29
(B) ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項が15.8 MPa1/2以下の有機化合物から選ばれる少なくとも1種の有機化合物
(C) 水
【0086】
<20>
成分(B)が、好ましくは炭素数2以上8以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基と1つ以上の水酸基を有する脂肪族アルコール、芳香族アルコール、エーテルアルコール、N-アルキルピロリドン、非環状エステル、及び水酸基を有してもよいアルキルアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の有機化合物を含む、<19>に記載の毛髪化粧料。
【0087】
<21>
成分(B)が、好ましくは芳香族アルコール又はエーテルアルコールを含む、<20>に記載の毛髪化粧料。
【0088】
<22>
成分(B)が、好ましくはベンジルアルコール、フェネチルアルコール、フェノキシエタノール及び2-ベンジルオキシエタノールから選ばれる少なくとも1種を含む、<21>に記載の毛髪化粧料。
【0089】
<23>
成分(B)の含有量が、好ましくは7.00質量%以上95.00質量%以下である、<22>に記載の毛髪化粧料。
【0090】
<24>
毛髪に適用後、洗い流さずに乾燥させる、<23>に記載の毛髪化粧料の使用方法。
【0091】
<25>
以下の成分(A)~(C)を含有し、成分(A)の含有量が0.01質量%以上5.00質量%以下、成分(B)の含有量が5.00質量%以上96.77質量%以下であり、成分(A)に対する成分(B)の質量比(B)/(A)が1以上200以下であり、pHが1~5である毛髪化粧料。
(A) ポリシリコーン-29
(B) グアニジン塩
(C) 水
【0092】
<26>
成分(B)の含有量が、好ましくは7.00質量%以上95.00質量%以下である、<25>に記載の毛髪化粧料。
【0093】
<27>
成分(A)に対する成分(B)の質量比(B)/(A)が、好ましくは1.67~120以下である、<26>に記載の毛髪化粧料。
【0094】
<28>
グアニジン塩が、グアニジン塩酸塩、グアニジン硝酸塩、グアニジンリン酸塩、グアニジンチオシアン酸塩、グアニジン炭酸塩、グアニジン酢酸塩、グアニジン硫酸塩、グアニジンスルファミン酸塩、アミノグアニジン塩酸塩及びアミノグアニジン硫酸塩から選ばれる少なくとも1種である、<27>に記載の毛髪化粧料。
【0095】
<29>
毛髪に適用後、洗い流さずに乾燥させる、<28>に記載の毛髪化粧料の使用方法。
【0096】
<30>
<1>~<23>、<25>~<28>のいずれか1項に記載の毛髪化粧料の、毛髪に対する疎水性付与と低摩擦化のための使用。
【実施例
【0097】
試験例1 ミセル形成阻害効果の測定
前述の方法に従って、ポリエーテル変性シリコーンの水溶液に各種の化合物を加えた際の臨界ミセル濃度(CMC)を測定した。この結果を表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
表1に示すように、ハンセンの溶解度パラメーターの水素結合項が10.0MPa1/2以上15.8MPa1/2以下である化合物のほか、エタノール、ジエタノールアミン及びグアニジン塩酸塩にミセル形成阻害効果が認められた。
【0100】
実施例1~15、比較例1~10
表2~4に示す組成の水溶液(毛髪化粧料)を調製し、これらの水溶液を用いて毛髪を処理した毛髪について、水に対する毛髪の前進接触角及びコーミングフォースの測定と各種官能評価を行った。
表中のpHは、室温(25℃)において、組成物を希釈等することなくそのまま、堀場製作所社製のpHメーター F-52を用いて測定した値である。
【0101】
(各水溶液の製造方法)
撹拌子を入れた200 mLビーカーに、蒸留水と各成分を表中の所定量計量し、スリムスターラー(アズワン社製)を用いて、300 rpmにて均一になるまで12時間以上撹拌混合する。
【0102】
(処理方法)
評価用毛髪には全て健常な日本人毛5.0gトレスに1回ブリーチ処理と360回洗髪を繰り返したダメージ毛を用いた
各実施例、比較例の水溶液を表中の浴比に従い毛髪に塗布(比較例9では毛髪を水溶液に浸漬)した後、洗い流さずに、ドライヤーを用いて完全に乾燥させた。その後、以下のプレーンシャンプーを用いて1度洗浄後、乾燥したものを洗髪1回後とし、洗浄と乾燥を20回繰り返したものを洗髪20回後とした。
なお、比較例6は、未処理のダメージ毛をプレーンシャンプーを用いて1度洗浄後、乾燥したものを評価に用いた(洗髪20回後の評価は行っていない)。
【0103】
・プレーンシャンプー(pH6.9)の組成
(質量%)
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸Na
(エマール170J、花王社製、有効分70質量%) 13.0
ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド
(アミゾールCME、川研ファインケミカル社製) 0.6
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルカルボベタイン
(アンヒトール55AB、花王社製、有効分30質量%) 1.41
クエン酸 pH調整量
安息香酸ナトリウム 0.3
精製水 残量
【0104】
(毛髪の前進接触角)
水に対する毛髪の前進接触角を測定し、接触角の値とした。水として蒸留水、測定装置としてKRUSS GmbHのProcessor Tensiometer K100を用いて、水の表面張力:72.8mN/m、水の密度: 0.998g/cm3、Maximum Immersion Depth:4mm、Minimum Immersion Depth:1mm、測定スピード:2mm/minの条件下で測定した。毛髪は各処理を施した毛髪トレスから5本採取し、根本から5cmの部位を測定に用い、5本の平均値を接触角の値とした。この値が90°を超える場合はより高いほど疎水的であることを示し、90°未満である場合はより低いほど親水的であることを示している。すなわち、数値が90°を超えて高いほど、疎水性に優れた処理ができていることを示す。
【0105】
(コーミングフォース)
毛髪を40℃の温水で15秒すすいだ後のコーミングフォースを、ダイナミックコーミングフォース法(鈴木ら; J. Soc. Cosmet. Chem. Japan. Vol. 27, No.1, P11-13 1993)により測定した。10回の測定値(最大値)の平均を用いた。この値が小さいほど櫛通りが良く、滑らかであることを示している。
【0106】
(官能評価)
「乾燥過程の毛束のばらけの良さ」、「乾燥中の指通りの良さ」、「乾燥後の髪の手指へのべたつきの少なさ」、「毛髪の乾燥の速さ」の各項目について、7名の専門パネリストによる評価を行った。評価は、各パネリストがブリーチと洗髪を行う前の健常な毛髪の状態を「5:良い」として「5:良い」~「1:悪い」の5段階評価を行い、その合計点を用いて判定した。
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
【表4】
【0110】
処方例1(洗い流さないヘアローション)
(質量%;全て有効分)
エポキシアミノシランコポリマー
(Silsoft CLX-Eを使用、モメンティブ社製、有効分15質量%) 1.0
エタノール 25.0
ヒドロキシエチルセルロース(SE-850、ダイセル社製) 0.05
乳酸 pH調整量
水 残部(*6)
pH 3.5
*6:Silsoft CLX-E由来の水とジプロピレングリコールを含む
【0111】
処方例2(ブロードライスプレー)
(質量%;全て有効分)
エポキシアミノシランコポリマー
(Silsoft CLX-Eを使用、モメンティブ社製、有効分15質量%) 1.0
エタノール 20.0
ベンジルアルコール 5.0
フェノキシエタノール 2.0
乳酸 pH調整量
水 残部(*6)
pH 3.5
*6:Silsoft CLX-E由来の水とジプロピレングリコールを含む
【0112】
処方例3(洗い流さないヘアローション)
(質量%;全て有効分)
エポキシアミノシランコポリマー
(Silsoft CLX-Eを使用、モメンティブ社製、有効分15質量%) 1.0
エタノール 25.0
ポリクオタニウム-37(Cosmedia Ultragel 300、BASF社製) 0.25
乳酸 pH調整量
水 残部(*6)
pH 3.5
*6:Silsoft CLX-E由来の水とジプロピレングリコールを含む