(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】冷蔵パスタ類の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20240904BHJP
【FI】
A23L7/109 C
A23L7/109 E
(21)【出願番号】P 2020100812
(22)【出願日】2020-06-10
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000178594
【氏名又は名称】山崎製パン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091328
【氏名又は名称】岡村 信一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 淳
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊雄
【審査官】天野 皓己
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-051163(JP,A)
【文献】特開平09-075023(JP,A)
【文献】特開2002-345424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109 - 7/113
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥したパスタ類若しくは生のパスタ類を、食塩を使用せずに茹でることにより若しくは蒸すことによりα化するα化工程と、
該α化工程でα化したパスタ類を冷水に浸漬して冷却する冷却工程と、
該冷却工程で冷水に浸漬したパスタ類を冷水から取出し冷やされた状態で液切りする第1液切工程と、
該第1液切工程で液切りしたパスタ類を冷やされた状態で食塩水に浸漬する食塩水浸漬工程と、
該食塩水浸漬工程で食塩水に浸漬したパスタ類を食塩水から取出して液切りする第2液切工程と、
該第2液切工程で液切りしたパスタ類を冷蔵する冷蔵工程とを備え
、
上記食塩水浸漬工程における、食塩水の食塩濃度が、2.5重量%~7.0重量%である、
冷蔵パスタ類の製造方法。
【請求項2】
上記第1液切工程後のパスタ類の温度が10℃以下になるように調整することを特徴とする請求項1記載のパスタ類の製造方法。
【請求項3】
上記冷却工程後のパスタ類の歩留が、乾燥したパスタ類にあっては200重量%~300重量%、生のパスタ類にあっては120重量%~220重量%になるように調整することを特徴とする請求項1または2記載のパスタ類の製造方法。
【請求項4】
上記冷却工程後のパスタ類の水分率が、50重量%~75重量%になるように調整することを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載のパスタ類の製造方法。
【請求項5】
上記第1液切工程後、上記食塩水浸漬工程に移行する時間を、15分以下にしたことを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載のパスタ類の製造方法。
【請求項6】
上記第1液切工程後、上記食塩水浸漬工程に移行する時間を、5分以下にしたことを特徴とする請求項5記載のパスタ類の製造方法。
【請求項7】
上記食塩水浸漬工程において、パスタ類の食塩水への浸漬時間を、5秒~10分にしたことを特徴とする請求項1乃至6何れかに記載のパスタ類の製造方法。
【請求項8】
上記食塩水浸漬工程において、パスタ類の食塩水への浸漬時間を、10秒~1分にしたことを特徴とする請求項7記載のパスタ類の製造方法。
【請求項9】
上記食塩水浸漬工程において、食塩水の温度を10℃以下としたことを特徴とする請求項1乃至8何れかに記載のパスタ類の製造方法。
【請求項10】
上記食塩水浸漬工程において、食塩水の食塩濃度を3
.0重量%~5
.0重量%としたことを特徴とする請求項
1記載のパスタ類の製造方法。
【請求項11】
上記パスタ類の厚さを、2.5mm以下にしたことを特徴とする請求項1乃至
10何れかに記載のパスタ類の製造方法。
【請求項12】
上記パスタ類として棒状のものを用い、該パスタ類の最大外径を1.0mm~2.5mmにしたことを特徴とする請求項
11記載のパスタ類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パスタ類を予め茹でてから冷蔵する冷蔵パスタ類の製造方法に係り、特に、電子レンジで再加熱して食するに適した冷蔵パスタ類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に乾燥パスタを茹でる場合には、水1リットルに10グラム程度の塩を入れることが行われており、この場合の塩にはパスタに下味をつける、パスタを引き締める、表面がうどんのようにぬるぬるするのを防ぐ(澱粉の糊化を阻害する)といった役割があるとされている。
従来から、冷蔵パスタ類を製造する方法としては、例えば、
図13に示すように、パスタ類を食塩水に入れて茹でてα化し、次に、茹でたパスタ類を水洗し、その後、脱水して冷凍するようにした方法が知られている(例えば、特許第3101269号公報,特許第4201409号公報等に掲載)。これを食するときには、例えば、電子レンジにより加熱して行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3101269号公報
【文献】特許第4201409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本願発明者の長年の研究により、この従来の冷蔵パスタ類の製造方法にあっては、
図2(b)に示すように、パスタ類を食塩水に入れて茹ると、パスタ類の内部に水が入っていきにくく、塩分がパスタ類の表面付近に多く付着する傾向にあり、そのため、塩分がパスタ類の中心部分まで十分に浸透しないで局在化し、レンジ加熱した際に外側に加熱が集中し、パスタ類の中心部分のα化が阻害されるという事象があることが分かった。そのため、この塩分の分布に起因して食感を損ねることがあるという問題があった。また、パスタ類を食塩水に入れて茹でているので、パスタ類内部へ食塩を浸透させるコントロールができにくくなっているという問題もある。更に、茹で槽が塩害を受け故障の原因となっていた。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、塩分をパスタ類内部に良く浸透させることができるようにして、電子レンジによるレンジ加熱効率を向上させ、レンジ加熱中のパスタ類のα化を促進して、食感の向上を図った冷蔵パスタ類の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは、上述もした通り、長年の研究により、パスタ類を食塩水に入れて茹ることが、食感を阻害する要因になっていることに着目し、パスタ類を食塩を使用せずに茹でて、食塩を使用せずに冷却し、その後、茹でて冷却した後のパスタ類を食塩水に浸漬することにより塩分を浸透させる方法を発明した。
即ち、このような目的を達成するための本発明の冷蔵パスタ類の製造方法は、
図1に示すように、
乾燥したパスタ類若しくは生のパスタ類を、食塩を使用せずに茹でることにより若しくは蒸すことによりα化するα化工程と、
該α化工程でα化したパスタ類を冷水に浸漬して冷却する冷却工程と、
該冷却工程で冷水に浸漬したパスタ類を冷水から取出し冷やされた状態で液切りする第1液切工程と、
該第1液切工程で液切りしたパスタ類を冷やされた状態で食塩水に浸漬する食塩水浸漬工程と、
該食塩水浸漬工程で食塩水に浸漬したパスタ類を食塩水から取出して液切りする第2液切工程と、
該第2液切工程で液切りしたパスタ類を冷蔵する冷蔵工程とを備え構成とした。
【0007】
ここで、第1液切工程及び第2液切工程における「液切り」とは、パスタ類の表面に付着した余分な液を、例えば、脱水機を用いて遠心分離し、あるいは、笊や籠を用いて分離することにより取り除くことをいう。また、冷蔵工程における「冷蔵」とは、パスタ類を10℃以下の環境に置くことを言う。
【0008】
これにより、冷蔵パスタ類を製造するときは、
図1に示すように、先に、パスタ類を食塩を使用せずに茹でることにより若しくは蒸すことによりα化する。次に、α化したパスタ類を冷水に浸漬して冷却してから液切りし、それから、食塩水浸漬工程で、液切りしたパスタ類を冷やされた状態で食塩水に浸漬する。その後、液切りしてから冷蔵する。この場合、
図2(b)に示すように、従来の食塩水で茹でる場合においては、パスタ類の内部に水が入っていきにくく、塩分がパスタ類の表面付近に多く付着し、塩分がパスタ類の中心部分まで十分に浸透しないで局在化することがあったが、
図2(a)に示すように、本発明では、食塩水浸漬工程で、パスタ類が冷やされた状態で食塩水に浸漬されるので、塩分がパスタ類の内部に良く浸透して分散していく。また、パスタ類の表面に直接食塩や食塩水を付着させる場合に比較しても、塩分がパスタ類の内部に良く浸透していく。
更に、食塩水を加熱しないので茹で槽の金属を腐食させるなどの悪影響を防止することができるという効果も奏する。
【0009】
また、本発明では、パスタ類を一度冷却工程で冷却してから食塩水に浸漬するので、水と食塩の移動が緩やかとなり、パスタ類中の食塩濃度の調節を容易に行うことができる。例えば、パスタ類を茹でた直後に冷たい食塩水に浸漬することも考えられるが、この場合には、一気にパスタ類中に塩水が入り込むので、食塩濃度の調節が行いにくくなり好ましくない。即ち、本発明では、茹で上げたパスタ類を冷却した後、塩水浸漬するので、パスタ類の水分量と塩分濃度をコントロールし易くなるという効果を奏する。
【0010】
そして、この冷蔵パスタ類を食するときには、例えば、電子レンジにより加熱して行う。この場合、塩分がパスタ類の中心部分まで均一かつ十分に浸透しているので、レンジ加熱した際には、水と比較して塩水はマイクロ波を吸収しやすいため、パスタ類内部におけるレンジ加熱効率が向上し、そのため、レンジ加熱中のパスタ類を均一かつ十分にα化させることができる。そのため、従来に比較して、締まりがあり、シコシコとしていて、弾力に富み、歯ごたえ良好な食感を向上させることができる。
【0011】
そして、必要に応じ、上記第1液切工程後のパスタ類の温度が10℃以下になるように調整する構成としている。10℃以下に調整するので、その後の食塩水浸漬工程において、パスタ類に吸収させる食塩濃度のコントロールがしやすくなる。また、衛生的にも細菌類の発生・増殖を抑制できる。
【0012】
また、必要に応じ、上記冷却工程後のパスタ類の歩留が、乾燥したパスタ類にあっては200重量%~300重量%、生のパスタ類にあっては120重量%~220重量%になるように調整する構成としている。ここで、「歩留」とは、原材料の投入量に対して製品として実際に活用される分量のことをいう。尚、その数値は茹でる前の原料麺重量を100とし、茹でた後の麺重量を測定することによって求めることができる。歩留の調整は、例えば、α化工程での茹で時間や冷却工程での冷却時間を調整することで実施することができる。
これにより、食感を確実に向上させることができる。乾燥したパスタ類にあっては、歩留が200重量%より小さいと麺食感が硬すぎ、300重量%より大きいと麺食感が軟らかすぎて好ましくない。一方、生のパスタ類にあっては、120重量%より小さいと麺食感が硬すぎ、220重量%より大きいと麺食感が軟らかすぎて好ましくない。
【0013】
更に、必要に応じ、上記冷却工程後のパスタ類の水分率が、50重量%~75重量%になるように調整する構成としている。ここで、「水分率」とは、茹で麺における水分含有率のことである。その数値は乾燥減量法によって求めることができる。「乾燥減量法」とは、試料を乾燥させ、その減量を測定する方法のことで、乾燥によって失われた重量分を水分量として算出する方法である。水分率の調整は、例えば、α化工程での茹で時間や冷却工程での冷却時間を調整することで実施することができる。
これにより、食感を確実に向上させることができる。水分率が50重量%より小さいと麺食感が硬すぎ、75重量%より大きいと麺食感が軟らかすぎ好ましくない。
【0014】
また、必要に応じ、上記第1液切工程後、上記食塩水浸漬工程に移行する時間を、15分以下にした構成としている。実験の結果、パスタ類を15分を超えてそのまま置いておくと食塩水浸漬工程でパスタ類が塩分を吸収しにくくなり好ましくない。
【0015】
この場合、上記第1液切工程後、上記食塩水浸漬工程に移行する時間を、5分以下にしたことが有効である。食塩水浸漬工程で、パスタ類が塩分を確実に吸収できるようにすることができる。
【0016】
更に、必要に応じ、上記食塩水浸漬工程において、パスタ類の食塩水への浸漬時間を、5秒~10分にした構成としている。塩分の吸収を適正なものにすることができる。食塩水への浸漬時間が、5秒より短かいと塩分の吸収が不十分となり本発明の効果が得られにくく、一方、10分を超えると長すぎて麺食感の軟化が起こり好ましくない。
【0017】
この場合、上記食塩水浸漬工程において、パスタ類の食塩水への浸漬時間を、10秒~1分にしたことが有効である。この範囲で、塩分の吸収を適正なものにすることができる。
【0018】
更にまた、必要に応じ、上記食塩水浸漬工程において、食塩水の温度を10℃以下とした構成としている。10℃以下であればパスタ類に吸収させる塩濃度のコントロールがしやすくなる。
【0019】
また、必要に応じ、上記食塩水浸漬工程において、食塩水の食塩濃度を1重量%~7重量%とした構成としている。塩分量を適正なものにすることができる。食塩水の食塩濃度が1重量%に満たないと食塩濃度が低すぎて塩分の吸収が不十分となり本発明の効果が得られにくく、また、7重量%を超えると最終製品の塩味が強くなり過ぎ、食味が悪くなって好ましくない。
【0020】
この場合、上記食塩水浸漬工程において、食塩水の食塩濃度を3重量%~5重量%としたことが有効である。この範囲で塩分量を適正なものにすることができる。
【0021】
そしてまた、必要に応じ、上記パスタ類の厚さを、2.5mm以下にした構成としている。2.5mmを超えると厚すぎて塩分の吸収が不十分となり、本発明の効果が得られにくく好ましくない。
【0022】
この場合、上記パスタ類として棒状のものを用い、該パスタ類の最大外径を1.0mm~2.5mmにしたことが有効である。1.0mmに満たない太さではα化工程での茹でによる麺食感のコントロールや衛生面での維持が難しく好ましくない。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、冷却工程でパスタ類を冷やし、食塩浸漬工程で冷やされたパスタ類を食塩水に浸漬するので、塩分をパスタ類の内部に良く浸透させて分散させることができる。また、パスタ類を一度冷却してから食塩水に浸漬するので、水と食塩の移動が緩やかとなり、パスタ類中の食塩濃度の調節を容易に行うことができる。これにより、この冷凍パスタ類を食するときには、例えば、電子レンジにより加熱して行う。この場合、塩分がパスタ類の中心部分まで十分に浸透しているので、レンジ加熱した際には、水と比較して塩水はマイクロ波を吸収しやすいため、パスタ類内部におけるレンジ加熱効率が向上し、そのため、レンジ加熱中のパスタ類のα化を促進させることができる。そのため、従来に比較して、締まりがあり、シコシコとしていて、弾力に富み、歯ごたえ良好な食感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の冷蔵パスタ類の製造方法を示す工程図である。
【
図2】本発明の冷蔵パスタ類の製造方法と従来の製造方法とを比較して示し、(a)は本発明の冷蔵パスタ類の製造方法においてパスタ類に生じる現象を模式的に示す図、(b)は従来の冷蔵パスタ類の製造方法においてパスタ類に生じる現象を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の実施例1及び比較例1におけるレンジ加熱後の性状を比較して示す表図である。
【
図4】本発明の実施例1及び比較例1におけるレンジ加熱後の性状に係る破断曲線を示すグラフ図である。
【
図5】本発明の実施例2乃至7及び比較例2におけるレンジ加熱後の性状を比較して示す表図である。
【
図6】本発明の実施例5及び比較例2におけるレンジ加熱後の断面の状態を示す写真であり、(a)は実施例5の断面写真、(b)は比較例2の断面写真である。
【
図7】本発明の実施例5及び比較例2におけるレンジ加熱前とレンジ加熱後の糊化エンタルピー変化を比較して示す表図である。
【
図8】本発明の実施例5及び比較例3のレンジ加熱後におけるパスタ類を比較した表図である。
【
図9】本発明の実施例に係り塩水浸漬したパスタ類の利点を、塩水無しで製造したパスタ類及び塩水茹でしたパスタ類と比較して示す表図である。
【
図10】本発明の実施例8乃至16及び比較例4乃至12におけるレンジ加熱後の性状を比較して示す表図である。
【
図11】本発明の実施例17及び比較例13におけるレンジ加熱後の性状を比較して示す表図である。
【
図12】本発明の実施例18乃至24及び比較例14乃至20におけるレンジ加熱後の性状を比較して示す表図である。
【
図13】従来の冷蔵パスタ類の製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る冷蔵パスタ類の製造方法について詳細に説明する。
実施の形態に係る冷蔵パスタ類の製造方法は、
図1に示すように、乾燥したパスタ類若しくは生のパスタ類を、食塩を使用せずに茹でることにより若しくは蒸すことによりα化するα化工程(1)と、α化工程でα化したパスタ類を冷水に浸漬して冷却する冷却工程(2)と、冷却工程で冷水に浸漬したパスタ類を冷水から取出し冷やされた状態で液切りする第1液切工程(3)と、第1液切工程で液切りしたパスタ類を冷やされた状態で食塩水に浸漬する食塩水浸漬工程(4)と、食塩水浸漬工程で食塩水に浸漬したパスタ類を食塩水から取出して液切りする第2液切工程(5)と、第2液切工程で液切りしたパスタ類を冷蔵する冷蔵工程(6)とを備えて構成されている。
【0026】
パスタ類としては、小麦粉(一般的にはデュラム小麦粉)を混捏して作成され、例えば、スパゲッティ,マカロニ,ラビオリ,カネロニ,フェットチーネ,リングイネ,ペンネ,ラザニア等、棒状,管状や長板状のもの等を挙げることができる。乾燥したパスタ類とは、生のパスタ類を乾燥させたものである。
【0027】
実施の形態では、パスタ類の厚さを、2.5mm以下にしたものを用いる。2.5mmを超えると厚すぎて食塩水浸漬工程での塩分の吸収が不十分となり、本発明の効果が得られにくく好ましくない。パスタ類としてスパゲッティのような棒状のものを用いるときは、その最大外径を1.0mm~2.5mmにしたものを用いる。1.0mmに満たない太さではα化工程での茹でによる麺食感のコントロールや衛生面での維持が難しく好ましくない。
【0028】
実施の形態においては、冷却工程後のパスタ類の歩留が、乾燥したパスタ類にあっては200重量%~300重量%、生のパスタ類にあっては120重量%~220重量%になるように調整する。ここで、「歩留」とは、原材料の投入量に対して製品として実際に活用される分量のことをいう。なお、その数値は茹でる前の原料麺重量を100とし、茹でた後の麺重量を測定することによって求めることができる。歩留の調整は、例えば、α化工程での茹で時間や冷却工程での冷却時間を調整することで実施することができる。
【0029】
また、実施の形態では、冷却工程後のパスタ類の水分率が、50重量%~75重量%になるように調整する。ここで、「水分率」とは、茹で麺における水分含有率のことである。その数値は乾燥減量法によって求めることができる。「乾燥減量法」とは、試料を乾燥させ、その減量を測定する方法のことで、乾燥によって失われた重量分を水分量として算出する方法である。水分率の調整は、例えば、α化工程での茹で時間や冷却工程での冷却時間を調整することで実施することができる。
【0030】
更に、実施の形態では、第1液切工程後、食塩水浸漬工程に移行する時間を、15分以下にしている。望ましくは、第1液切工程後、食塩水浸漬工程に移行する時間を、5分以下にしている。
以下、各工程について説明する。
【0031】
(1)α化工程
乾燥したパスタ類若しくは生のパスタ類を、食塩を使用せずに茹でることにより若しくは蒸すことによりα化する。例えば、周知の茹で麺機でパスタ類を茹でる。茹でる温度は、98.5℃以上が望ましい。98.5℃未満では十分な効果が得られない。茹で時間は、パスタの種類により、上記の「歩留」及び「水分率」を考慮して定めた適宜の時間行う。尚、茹で湯の量の目安は、乾燥したパスタの場合その約10倍になる。
【0032】
(2)冷却工程
α化工程でα化したパスタ類を冷水に浸漬して冷却する。冷却は、水を供給,排出する配管が設けられた冷却槽において行う。茹で麺機から取出したパスタ類を冷却槽に入れ、冷却後のパスタ類の温度が10℃以下になるように調整する。冷却時間は、パスタの種類により、上記の「歩留」及び「水分率」を考慮して定めた適宜の時間行う。
【0033】
(3)第1液切工程
冷却工程で冷水に浸漬したパスタ類を冷水から取出し冷やされた状態で液切りする。例えば、脱水機にパスタ類を入れて行う。これにより、パスタ類の表面に付着した余分な液が、脱水機の遠心分離により取り除かれる。
【0034】
(4)食塩水浸漬工程
第1液切工程で液切りしたパスタ類を冷やされた状態で食塩水に浸漬する。食塩水を入れた食塩水槽にパスタ類を投入する。塩水は冷却機を通って食塩水槽に供給され、水温や塩濃度が保持される。食塩水の温度は、10℃以下に設定する。食塩水槽の食塩水の食塩濃度は、1重量%~7重量%に設定する。望ましくは、3重量%~5重量%に設定する。食塩水の食塩濃度が1重量%に満たないと食塩濃度が低すぎて塩分の吸収が不十分となり本発明の効果が得られにくく、また、7重量%を超えると最終製品の塩味が強くなり過ぎ、食味が悪くなって好ましくない。この範囲で塩分量を適正なものにすることができる。
【0035】
更に、この食塩水浸漬工程においては、パスタ類の食塩水への浸漬時間は、5秒~10分に設定する。望ましくは、10秒~1分に設定する。食塩水への浸漬時間が、5秒より短かいと塩分の吸収が不十分となり本発明の効果が得られにくく、一方、10分を超えると長すぎて麺食感の軟化が起こり好ましくない。この範囲で、塩分の吸収を適正なものにすることができる。
【0036】
詳しくは、上述もしたように、第1液切工程後、15分以下、望ましくは、5分以下の時間内に、冷却槽から取出されたパスタ類が食塩水槽に投入される。実験の結果、第1液切工程後、パスタ類を15分を超えてそのまま置いておくとこの食塩水浸漬工程でパスタ類が塩分を吸収しにくくなり好ましくない。5分以下にしたことが有効である。この食塩水浸漬工程で、パスタ類が塩分を確実に吸収できるようにすることができる。
【0037】
この場合、
図2(b)に示すように、従来の食塩水で茹でる場合においては、パスタ類の内部に水が入っていきにくく、塩分がパスタ類の表面付近に多く付着し、塩分がパスタ類の中心部分まで十分に浸透しないで局在化することがあったが、
図2(a)に示すように、実施の形態では、食塩水浸漬工程において、パスタ類が冷やされた状態で食塩水に浸漬されるので、塩分がパスタ類の内部に良く浸透して分散していく。また、パスタ類の表面に直接食塩や食塩水を付着させる場合に比較しても、塩分がパスタ類の内部に良く浸透していく。
【0038】
また、食塩水の温度を10℃以下に設定したので、冷却の温度と同様に設定されることから、パスタ類に温度変化がなく、また、10℃以下なので、パスタ類に吸収させる塩濃度のコントロールがしやすくなる。即ち、パスタ類を一度冷却工程で冷却してから食塩水に浸漬するので、水と食塩の移動が緩やかとなり、パスタ類中の食塩濃度の調節を容易に行うことができる。そのため、食塩濃度を、1重量%~7重量%、望ましくは、3重量%~5重量%に設定し、パスタ類の食塩水への浸漬時間を、5秒~10分、望ましくは、10秒~1分に設定してパスタ類への塩分の吸収を行わせることができるので、極めてコントロールを行い易くなる。
【0039】
(5)第2液切工程
食塩水浸漬工程で食塩水に浸漬したパスタ類を食塩水から取出して液切りする。例えば、脱水機にパスタ類を入れて行う。これにより、パスタ類の表面に付着した余分な液が、脱水機の遠心分離により取り除かれる。
【0040】
(6)冷蔵工程
第2液切工程で液切りしたパスタ類を冷蔵する。例えば、パスタ類の所要量を袋詰めし、例えば、5℃以下の温度の冷蔵庫に入れる。この状態で保存し、流通させることができる。
【0041】
そして、このように製造された冷蔵パスタ類を食するときには、例えば、電子レンジにより加熱して行う。この場合、塩分がパスタ類の中心部分まで均一かつ十分に浸透しているので、レンジ加熱した際には、水と比較して塩水はマイクロ波を吸収しやすいため、パスタ類内部におけるレンジ加熱効率が向上し、そのため、レンジ加熱中のパスタ類を均一かつ十分にα化させることができる。即ち、
図2(a)に示すように、パスタ類において中心部側(点線内)の未糊化澱粉の多い箇所に、糊化に必要な水分とレンジ加熱効率を上げる適度な塩分が含まれ、糊化が進み、食感改良効果が現れることになる。一方、
図2(b)に示すように、従来の塩水茹ででは、中心部側(点線内)の未糊化澱粉の多い箇所に、十分な水と塩分がなく、α化が不十分になり食感効果が劣る。そのため、従来に比較して、締まりがあり、シコシコとしていて、弾力に富み、歯ごたえ良好な食感を向上させることができる。即ち、後述の実施例に係るパスタ類の物性測定結果を見てもわかるように、硬さ・噛み応え・コシ・もちもち感や、粘りの指標として用いる破断圧縮率の全てにおいて向上する傾向となり、麺食感の改善効果を得ることができる。
【実施例】
【0042】
次に、実施例について説明する。
<実施例1>
図3に示すように、乾燥したパスタ類として、スパゲッティ(外径1.6mm)を用意した。そして、このスパゲッティを以下のように処理した。
(1)α化工程
スパゲッティを、周知の茹で麺機で食塩を使用せずに茹でてα化した。茹でる温度は、100℃とし、茹で時間は、7分40秒とした。
(2)冷却工程
α化したスパゲッティを、冷却槽に入れて冷却した。水の温度を10℃に調整し、冷却時間を7分40秒とした。これにより、スパゲッティの歩留を、240重量%、水分率を、64重量%とした。
(3)第1液切工程
スパゲッティを冷水から取出して脱水機に入れ、液切りした。
【0043】
(4)食塩水浸漬工程
冷却したスパゲッティを脱水機から取出し、直ちに(5分以下の時間内)に、食塩水槽に投入した。食塩水槽においては、食塩水の温度を、10℃に設定し、食塩濃度を4重量%に設定し、浸漬時間は、10秒にした。
(5)第2液切工程
スパゲッティを食塩水から取出して脱水機に入れ、液切りした。
(6)冷蔵工程
第2液切工程で液切りしたパスタ類を、冷蔵庫に入れ、10℃で冷蔵した。
【0044】
このように製造した実施例1に係るスパゲッティについて、比較例1とともに試験を行った。比較例1は、食塩水浸漬工程を行わずに液切りを行って実施例1と同様に冷蔵した。そして、実施例1及び比較例1のスパゲッティ30gを、電子レンジ(SHARP社製RE-SS10B-R)において、200W、40秒加熱し、この加熱処理したスパゲッティについて、全体硬さ(N/m2)、噛み応え(J/m2)、コシ、もちもち感、破断圧縮率(%)の各項目について測定した。
【0045】
各項目の測定は、有限会社タケトモ電機製テンシプレッサーMy BoyII、プレート型(厚さ1mm)プランジャーを用いた。測定方法は、低・高圧縮測定解析プログラムを用い、プランジャーを麺1本に対して垂直方向に2mm/sの速度で進入させ、圧縮率30%で麺表面、圧縮率99%で麺全体の応力測定を行い、波形データを得た(n=10)。得られた波形の最大高さを全体硬さ、応力波形面積を噛み応え、表面硬さと全体硬さの比をコシ、麺の破断時の圧縮率を破断圧縮率と定義し、加えて官能評価によるもちもち感評価と相関性のある回帰式を用いて算出したもちもち感を比較に用いた。
【0046】
結果を
図3及び
図4に示す。この結果から、いずれの項目においても、スパゲッティの弾力感を増強するような物性改良効果が確認できた。また、塩水浸漬には下味付けによる食味向上効果もある。
【0047】
<実施例2~7>
次に、実施例2~7について説明する。
図5に示すように、乾燥したパスタ類として、スパゲッティ(外径1.6mm)を用意した。そして、このスパゲッティを以下のように処理した。
(1)α化工程
スパゲッティを、周知の茹で麺機で食塩を使用せずに茹でてα化した。茹でる温度は、100℃とし、茹で時間は、7分40秒とした。
(2)冷却工程
α化したスパゲッティを、冷却槽に入れて冷却した。水の温度を10℃に調整し、冷却時間7分40秒とした。これにより、スパゲッティの歩留を、240重量%、水分率を、64重量%とした。
(3)第1液切工程
スパゲッティを冷水から取出して脱水機に入れ、液切りした。
【0048】
(4)食塩水浸漬工程
冷却したスパゲッティを脱水機から取出し、直ちに(5分以下の時間内)に、食塩水槽に投入した。食塩水槽においては、食塩水の温度を、10℃に設定し、浸漬時間は、10秒にした。また、食塩水槽においては、食塩濃度を1.5重量%,2.0重量%,2.5重量%,3.0重量%,5.0重量%,7.0重量%の6種類用意し、それぞれに、スパゲッティを浸漬し、各スパゲッティを、夫々、実施例2~7とした。
(5)第2液切工程
スパゲッティを食塩水から取出して脱水機に入れ、液切りした。
(6)冷蔵工程
第2液切工程で液切りしたパスタ類を、冷蔵庫に入れ、10℃で冷蔵した。
【0049】
このように製造した実施例2~7に係るスパゲッティについて、比較例2とともに試験を行った。比較例2は、食塩水浸漬工程を行わずに液切りを行って各実施例2~7と同様に冷蔵した。そして、実施例2~7及び比較例2のスパゲッティ30gを、電子レンジ(SHARP社製RE-SS10B-R)において、200W、40秒加熱し、この加熱処理したスパゲッティについて、噛み応え(J/m2)、破断圧縮率(%)の各項目について測定した。測定は上記と同様に行った。
【0050】
結果を
図5に示す。この結果から、実施例2~7は、比較例2に対して、破断圧縮率において多少低いものもあるが、スパゲッティの弾力感を増強するような物性改良効果が確認できた。特に、実施例4,5,6は良好な数値を示した。
【0051】
また、実施例5と比較例2とで、レンジで加熱した後の断面写真を撮影し、塩水浸漬効果の要因について確認した。結果を
図6に示す。実施例5においては、比較例2と比較して、中央部が濃くなっており、これは、透明度が高くなっていることを示し、未糊化澱粉がレンジ加熱により大きく減少していることが分かる。実施例5の方が全体的に光沢があり、比較例2の方が光沢が弱い。このことから比較例2より実施例5の方が均一に糊化が促進されていることが分かる。
【0052】
更に、実施例5と比較例2とで、第2液切工程直後の糊化エンタルピー(J/g)と、第2液切工程後冷蔵を24時間行ってからレンジ加熱したときの糊化エンタルピー(J/g)と、第2液切工程後冷蔵を72時間行ってからレンジ加熱したときの糊化エンタルピー(J/g)とを測定した。結果を
図7に示す。糊化エンタルピーとは、澱粉が糊化するために必要なエネルギーの総量であり、温度上昇エネルギーと仕事エネルギーの和である。
この結果から、塩水浸漬で茹で後に残っていた未糊化澱粉がレンジ加熱により大きく減少していることが分かる。即ち、塩水浸漬によって麺のレンジ加熱効率が向上し、レンジ加熱中の未糊化澱粉の糊化が促進することで食感の改良効果を奏することが分かる。
【0053】
次に、比較例3を作成し、実施例5と上記の物性改良効果を比較した。比較例3は、実施例5と同じスパゲッティを用い、これを2.5重量%の塩水で茹でたもので、実施例5と同様の塩濃度・歩留となるように茹で時間を調整した。茹でた後は、冷水で冷却し、液切りして実施例5と同様に冷蔵した。麺の食塩含有量は、0.5重量%、歩留は、235重量%であった。茹で時間は実施例5より長くなった。
そして、実施例5と比較例3とで、官能試験を行った。
結果を
図8に示す。塩水で茹でた麺は物性改良効果が見られなかった。
【0054】
以上の結果をまとめると、
図9に示すようになる。これによれば、塩水茹では、内側に水分と塩が十分なく、物性改良効果がなく、茹で時間や槽の管理等、製造効率が悪いということが言える。一方、塩水浸漬は、内側に水分と塩が均一に分散するため、レンジ加熱による糊化促進を行うことができ、味の調節が簡易で、製造効率が良いということが言える。
【0055】
<実施例8~17>
次に、実施例8~17について説明する。
図10に示すように、実施例8~10として、乾燥したパスタ類としてのスパゲッティ(外径1.6mm,1.9mm,2.2mm)、実施例11~14として、乾燥したパスタ類としてのスパゲッティ(外径1.0mm,1.4mm,1.7mm,1.9mm)、実施例15として、乾燥したパスタ類としてのフェットチーネ(厚さ1.0mm、幅4.7mm)、実施例16として、乾燥したパスタ類としてのマカロニ(外径4.5mm,内径2.0mm)を用意した。また、
図11に示すように、実施例17として、生パスタとしてのフェットチーネ(厚さ2mm、幅8mm)を用意した。そして、これらを以下のように処理した。
【0056】
(1)α化工程
パスタ類を、周知の茹で麺機で食塩を使用せずに茹でてα化した。茹でる温度は、100℃とし、茹で時間は、7分40秒とした。
(2)冷却工程
α化したパスタ類を、冷却槽に入れて冷却した。水の温度を10℃に調整し、冷却時間 分間とした。これにより、パスタ類の歩留を、240重量%、水分率を、64重量%とした。
(3)第1液切工程
パスタ類を冷水から取出して脱水機に入れ、液切りした。
【0057】
(4)食塩水浸漬工程
冷却したパスタ類を脱水機から取出し、直ちに(5分以下の時間内)に、食塩水槽に投入した。食塩水槽においては、食塩水の温度を、10℃に設定し、食塩濃度を3重量%に設定し、浸漬時間は、10秒にした。
(5)第2液切工程
パスタ類を食塩水から取出して脱水機に入れ、液切りした。
(6)冷蔵工程
第2液切工程で液切りしたパスタ類を、冷蔵庫に入れ、10℃で冷蔵した。
【0058】
このように製造した実施例8~17に係るパスタ類について、比較例4~13とともに試験を行った。比較例4~13は、夫々、実施例8~17に対応しており、食塩水浸漬工程を行わずに液切りを行って実施例8~17と同様に冷蔵した。そして、実施例8~17及び比較例4~13のパスタ類30gを、上記の電子レンジにおいて、200W、40秒加熱し、この加熱処理したパスタ類について、実施例8~15及び比較例4~11にあっては、噛み応え(J/m2)、コシ、破断圧縮率(%)の各項目について、実施例17及び比較例13にあっては、噛み応え(J/m2)、コシ、もちもち感の各項目について、上記と同様に測定した。また、実施例16及び比較例12にあっては、食味による評価を行い、弾力感増強等の効果を確認した。
【0059】
結果を
図10及び
図11に示す。
図10及び
図11の数値欄において、左が比較例の数値、右が実施例の数値である。この結果から、実施例11においてはその改善度は少なかったが、いずれもスパゲッティの弾力感を増強するような物性改良効果が確認できた。
【0060】
<実施例18~24>
次に、実施例18~24について説明する。
図12に示すように、実施例18~20として、乾燥したパスタ類としてのスパゲッティ(外径1.6mm)、実施例21~24として、乾燥したパスタ類としてのスパゲッティ(外径1.9mm)を用意した。
【0061】
(1)α化工程
スパゲッティを、周知の茹で麺機で食塩を使用せずに茹でてα化した。茹でる温度は、100℃とした。
(2)冷却工程
α化したスパゲッティを、冷却槽に入れて冷却した。水の温度を5~8℃に調整した。このα化工程の茹で時間と冷却工程の冷却時間を適宜調整し、実施例18として歩留が240重量%(水分率64.0重量%)、実施例19として歩留が250重量%(水分率65.8重量%)、実施例20として歩留が260重量%(水分率67.5重量%)、実施例21として歩留が240重量%(水分率64.6重量%)、実施例22として歩留が250重量%(水分率66.0重量%)、実施例23として歩留が260重量%(水分率67.4重量%)、実施例24として歩留が270重量%(水分率68.7重量%)のものを作成した。
(3)第1液切工程
パスタ類を冷水から取出して脱水機に入れ、液切りした。
【0062】
(4)食塩水浸漬工程
冷却したスパゲッティを脱水機から取出し、直ちに(5分以下の時間内)に、食塩水槽に投入した。食塩水槽においては、食塩水の温度を、10℃以下に設定し、食塩濃度を3重量%に設定し、浸漬時間は、10秒にした。
(5)第2液切工程
スパゲッティを食塩水から取出して脱水機に入れ、液切りした。
(6)冷蔵工程
第2液切工程で液切りしたパスタ類を、冷蔵庫に入れ、10℃で冷蔵した。
【0063】
このように製造した実施例18~24に係るスパゲッティについて、比較例14~20とともに試験を行った。比較例14~20は、夫々、実施例18~24に対応しており、食塩水浸漬工程を行わずに液切りを行って実施例18~24と同様の歩留にして冷蔵した。そして、実施例18~24及び比較例14~20のスパゲッティ30gを、上記の電子レンジにおいて、200W、40秒加熱し、この加熱処理したスパゲッティについて、噛み応え(J/m2)、コシ、破断圧縮率(%)の各項目について上記と同様に測定した。
【0064】
結果を
図12に示す。
図12の数値欄において、左が比較例の数値、右が実施例の数値である。この結果から、実施例23,24においてはその改善度は少なかったが、いずれもスパゲッティの弾力感を増強するような物性改良効果が確認できた。実施例としては挙げなかったが、歩留が225重量%のものではその改善度は少なく、歩留が230重量%~260重量%(水分率が61.5重量%~67.5重量%)の範囲のものが優れていることが分かった。
【0065】
尚、本発明は、上述した本発明の実施の形態に限定されず、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施の形態に多くの変更を加えることが容易であり、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
(1)α化工程
(2)冷却工程
(3)第1液切工程
(4)食塩水浸漬工程
(5)第2液切工程
(6)冷蔵工程