(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】移動体の運航管理システム
(51)【国際特許分類】
G08G 5/04 20060101AFI20240904BHJP
B64F 1/36 20240101ALI20240904BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240904BHJP
G05D 1/46 20240101ALI20240904BHJP
【FI】
G08G5/04 A
B64F1/36
B64C39/02
G05D1/46
(21)【出願番号】P 2020162949
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】笹本 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】中里 展之
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-165869(JP,A)
【文献】特開2020-144870(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0140851(US,A1)
【文献】特開2020-154762(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0300495(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0131121(US,A1)
【文献】特開2012-131484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/46
G08G 5/04
B64F 1/36
B64C 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の運航を管理する複数の運航管理装置を備える移動体の運航管理システムにおいて、
前記運航管理装置は、互いに、他の前記運航管理装置に、自らが運航を管理する対象の前記移動体の飛行情報を送信して共有するように構成されており、
自律式の移動体の運航を管理する前記運航管理装置は、
当該自律式の移動体との通信が途絶していない場合、前記自律式の移動体の位置情報を取得し、当該位置情報を前記飛行情報として他の前記運航管理装置に送信し、
当該自律式の移動体との通信が途絶した場合、通信途絶後も飛行を継続する前記自律式の移動体が現在飛行していると予想される現在の予想存在範囲を算出し、算出した前記現在の予想存在範囲を当該自律式の移動体の前記飛行情報として他の前記運航管理装置に送信することを特徴とする移動体の運航管理システム。
【請求項2】
さらに、前記複数の運航管理装置との間で送受信可能な管理統合装置を備え、
前記運航管理装置は、他の前記運航管理装置に前記飛行情報を送信する代わりに、前記管理統合装置に前記飛行情報を送信し、
前記管理統合装置は、前記運航管理装置から前記飛行情報が送信されてくると、前記飛行情報を他の全ての前記運航管理装置に送信することで、全ての前記運航管理装置が、互いに、前記移動体の前記飛行情報を共有するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の移動体の運航管理システム。
【請求項3】
前記運航管理装置は、互いに、他の前記運航管理装置に、自らが運航を管理する対象の前記移動体の飛行計画を送信して共有するように構成されており、
自律式の移動体の運航を管理する前記運航管理装置は、当該自律式の移動体との通信が途絶した場合、通信途絶後も飛行を継続する前記自律式の移動体が今後飛行すると予想される未来の予想存在範囲を算出し、算出した前記未来の予想存在範囲を当該自律式の移動体の前記飛行計画として他の前記運航管理装置に送信することを特徴とする請求項1に記載の移動体の運航管理システム。
【請求項4】
さらに、前記複数の運航管理装置との間で送受信可能な管理統合装置を備え、
前記運航管理装置は、他の前記運航管理装置に前記飛行計画を送信する代わりに、前記管理統合装置に前記飛行計画を送信し、
前記管理統合装置は、前記運航管理装置から前記飛行計画が送信されてくると、前記飛行情報を他の全ての前記運航管理装置に送信することで、全ての前記運航管理装置が、互いに、前記移動体の前記飛行計画を共有するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の移動体の運航管理システム。
【請求項5】
前記予想存在範囲は、前記自律式の移動体が他の移動体等との衝突を回避しながら飛行計画に沿って飛行している場合の第1の予想存在範囲と、所定の緊急着陸点に向かって飛行している場合の第2の予想存在範囲を含むことを特徴とする請求項1に記載の移動体の運航管理システム。
【請求項6】
移動体の運航を管理する複数の運航管理装置を備える移動体の運航管理システムにおいて、
前記運航管理装置は、互いに、他の前記運航管理装置に、自らが運航を管理する対象の前記移動体の飛行情報を送信して共有するように構成されており、
自律式の移動体の運航を管理する前記運航管理装置は、
当該自律式の移動体との通信が途絶していない場合、前記自律式の移動体の位置情報を取得し、当該位置情報を前記飛行情報として他の前記運航管理装置に送信し、
当該自律式の移動体との通信が途絶した場合、通信途絶後も飛行を継続する前記自律式の移動体が今後飛行すると予想される未来の予想存在範囲を算出し、算出した前記未来の予想存在範囲を当該自律式の移動体の
飛行計画として他の前記運航管理装置に送信することを特徴とすることを特徴とする移動体の運航管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の運航管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローン等を含む移動体を用いた撮影や物流等への活用が進み、移動体同士の衝突回避等を目的として、C2リンク(Communication and Control Link)等の通信を通して移動体と運航管理装置(地上局)とが通信を行いながら移動体の飛行を管理する技術の開発が進められている(例えば特許文献1等参照)。
一方で、例えば目的地を設定されると、移動体が他の移動体との衝突を自らの判断で回避するなどして自律的に目的地まで飛行する自律式の移動体の飛行管理等の技術の開発も進められている(例えば特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-232361号公報
【文献】国際公開第2019/159420号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の移動体を飛行させる際に、例えば、移動体の運航を管理する各運航管理装置同士が、自らが管理する移動体の位置情報等を互いに共有しあうような運航管理システムを構築すれば、各運航管理装置で、自らが管理する移動体が他の移動体と衝突しないように飛行計画を作成するなどすることが可能となり、移動体同士の衝突をより確実に回避することができる。
そして、その場合、移動体が自律式ではない場合、すなわち移動体が運航管理装置からの指示に従って飛行する場合、運航管理装置と移動体との間の通信が途絶した際には、コントロールを失った移動体が飛行を続けると危険であるため、すぐに飛行禁止にして着陸させるように構成することが考えられる。
【0005】
しかし、移動体が自律式である場合に、運航管理装置と移動体との間の通信が途絶したからといってすぐに飛行禁止にしてしまうのでは、移動体が自律的に飛行することができる自律式の移動体のメリットが失われてしまう。
そのため、自律式の移動体の場合には、運航管理装置との通信が途絶した後も飛行を継続できるように構成することが望ましい。そして、その場合、他の移動体がこの自律式の移動体との衝突を回避して安全に飛行できるように運航管理システムを構築することが必要になる。
【0006】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、自律式の移動体が運航管理装置との通信が途絶した後も飛行を継続可能で、しかも、他の移動体がこの自律式の移動体との衝突を回避して安全に飛行することが可能な移動体の運航管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
移動体の運航を管理する複数の運航管理装置を備える移動体の運航管理システムにおいて、
前記運航管理装置は、互いに、他の前記運航管理装置に、自らが運航を管理する対象の前記移動体の飛行情報を送信して共有するように構成されており、
自律式の移動体の運航を管理する前記運航管理装置は、
当該自律式の移動体との通信が途絶していない場合、前記自律式の移動体の位置情報を取得し、当該位置情報を前記飛行情報として他の前記運航管理装置に送信し、
当該自律式の移動体との通信が途絶した場合、通信途絶後も飛行を継続する前記自律式の移動体が現在飛行していると予想される現在の予想存在範囲を算出し、算出した前記現在の予想存在範囲を当該自律式の移動体の前記飛行情報として他の前記運航管理装置に送信することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の移動体の運航管理システムにおいて、
さらに、前記複数の運航管理装置との間で送受信可能な管理統合装置を備え、
前記運航管理装置は、他の前記運航管理装置に前記飛行情報を送信する代わりに、前記管理統合装置に前記飛行情報を送信し、
前記管理統合装置は、前記運航管理装置から前記飛行情報が送信されてくると、前記飛行情報を他の全ての前記運航管理装置に送信することで、全ての前記運航管理装置が、互いに、前記移動体の前記飛行情報を共有するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の移動体の運航管理システムにおいて、
前記運航管理装置は、互いに、他の前記運航管理装置に、自らが運航を管理する対象の前記移動体の飛行計画を送信して共有するように構成されており、
自律式の移動体の運航を管理する前記運航管理装置は、当該自律式の移動体との通信が途絶した場合、通信途絶後も飛行を継続する前記自律式の移動体が今後飛行すると予想される未来の予想存在範囲を算出し、算出した前記未来の予想存在範囲を当該自律式の移動体の前記飛行計画として他の前記運航管理装置に送信することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の移動体の運航管理システムにおいて、
さらに、前記複数の運航管理装置との間で送受信可能な管理統合装置を備え、
前記運航管理装置は、他の前記運航管理装置に前記飛行計画を送信する代わりに、前記管理統合装置に前記飛行計画を送信し、
前記管理統合装置は、前記運航管理装置から前記飛行計画が送信されてくると、前記飛行情報を他の全ての前記運航管理装置に送信することで、全ての前記運航管理装置が、互いに、前記移動体の前記飛行計画を共有するように構成されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の移動体の運航管理システムにおいて、
前記予想存在範囲は、前記自律式の移動体が他の移動体等との衝突を回避しながら飛行計画に沿って飛行している場合の第1の予想存在範囲と、所定の緊急着陸点に向かって飛行している場合の第2の予想存在範囲を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、
移動体の運航を管理する複数の運航管理装置を備える移動体の運航管理システムにおいて、
前記運航管理装置は、互いに、他の前記運航管理装置に、自らが運航を管理する対象の前記移動体の飛行情報を送信して共有するように構成されており、
自律式の移動体の運航を管理する前記運航管理装置は、
当該自律式の移動体との通信が途絶していない場合、前記自律式の移動体の位置情報を取得し、当該位置情報を前記飛行情報として他の前記運航管理装置に送信し、
当該自律式の移動体との通信が途絶した場合、通信途絶後も飛行を継続する前記自律式の移動体が今後飛行すると予想される未来の予想存在範囲を算出し、算出した前記未来の予想存在範囲を当該自律式の移動体の飛行計画として他の前記運航管理装置に送信することを特徴とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自律式の移動体が運航管理装置との通信が途絶した後も飛行を継続することが可能となるとともに、他の移動体がこの自律式の移動体との衝突を回避して安全に飛行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る移動体の運航管理システムの構成等を表す図である。
【
図2】複数の移動体のうちの一部が同じ事業者により運航が管理される場合の移動体の運航管理システムの構成例を表す図である。
【
図3】通信途絶後の自律式の移動体の現在の予想存在範囲を説明する図である。
【
図4】通信途絶後の自律式の移動体の未来の予想存在範囲を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る移動体の運航管理システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下では、
図1に示すように、移動体の運航管理システム1が、それぞれ移動体2の運航を管理する複数の運航管理装置3との間で飛行に関する情報を送受信可能な管理統合装置4を備え、管理統合装置4が、各運航管理装置3からそれぞれ個別に送信されてきた情報を、他の全ての運航管理装置3に送信することで、全ての運航管理装置3が、互いに、各移動体2の飛行に関する各情報を共有することができるように構成されている場合について説明する。
そして、以下では、便宜上、
図1に示すように、各運航管理装置3がそれぞれ1機の移動体2の運航を管理する最も単純な構成の場合について説明する。
【0015】
しかし、
図2に示すように、複数の移動体2のうちの一部(図中の破線内の移動体2参照)が例えば同じ事業者により運航が管理されるなどして、それらの移動体2の運航を管理する各運航管理装置3からの情報が管理装置3Aに集められる場合がある。このような場合には、本発明に係る移動体の運航管理システム1上では、管理装置3Aが他の個々の運航管理装置3(図中の破線外の運航管理装置3)と同等に扱われる。
そのため、以下の説明で、運航管理装置3として説明されるものの中には
図2中の管理装置3Aも含まれる。
【0016】
なお、
図1や
図2に示すように移動体の運航管理システム1中に管理統合装置4を設けずに、各運航管理装置3(管理装置3Aを含む。以下同じ。)同士が、直接に(すなわち管理統合装置4を介さずに)、互いに他の全ての運航管理装置3に自らが運航を管理する対象の移動体2に関する情報を送信しあって共有するように構成することも可能であり、この場合も本発明に係る移動体の運航管理システム1に含まれる。
【0017】
[移動体の運航管理システム1の構成例]
以下、本実施形態に係る移動体の運航管理システム1の構成例について説明する。
すなわち、本発明に係る移動体の運航管理システム1は、後述するように、自律式の移動体2Aとその運航を管理する運航管理装置3との間の通信が途絶した場合の処理の仕方に特徴を有するものであるが、ここでは、その前提となる、通信が途絶していない状態での移動体の運航管理システム1の構成例について説明する。
【0018】
本実施形態では、
図1に示すように、各移動体2はそれぞれ運航管理装置3により運航が管理されるようになっている。そのため、本実施形態に係る移動体の運航管理システム1は、複数の移動体2と複数の運航管理装置3とを備えている。
そして、管理統合装置4と複数の運航管理装置3とが通信ネットワーク等で接続されている。
【0019】
移動体2は、航空機型やヘリコプタ型、ドローン型等で構成され、本実施形態では、複数の移動体2の中に、少なくとも1機の自律式の移動体2Aが含まれている。
自律式ではない移動体2は、ユーザが、運航管理装置3や、運航管理装置3に付随する図示しないリモートコントローラ、あるいは運航管理装置3を内蔵するリモートコントローラ等を操縦するとその操縦に応じて飛行する。
【0020】
それに対し、自律式の移動体2Aは、飛行計画が入力されるとそれに従って自律的に飛行するなど、ユーザが操縦することなく自律的に目的地まで飛行するように構成される。
本実施形態では、自律式の移動体2Aが有する自律的な機能として、
図1に示すように、
(A)飛行計画に従って飛行することは勿論であるが、その他に、例えば、
(B)他の移動体(移動体の運航管理システム1に所属する移動体2以外の無人機や有人機を含む。)に対する衝突回避行動を行う、
(C)予期しない悪天候や障害物に対する回避行動を行う、
(D)飛行継続可能な故障が生じた場合に予め定められた緊急着陸点(離陸点に帰投する場合を含む。)に飛行して着陸する、
(E)飛行継続不可能な故障が生じた場合にその場に緊急着陸する、
などの自律的な機能を有するように構成することが可能である。
【0021】
また、本実施形態では、自律式の移動体2Aは、定期的に(例えば数秒ごとに)自身の現在の位置情報(すなわち現在の緯度、経度、高度の情報)を運航管理装置3に送信するように構成される。位置情報の他に、速度ベクトル(速度の大きさと向き)や迎え角等の情報も送信するように構成してもよい。
また、自律式の移動体2Aは、上記の衝突回避行動等の非常行動を行った場合に、非常行動を行ったことやその内容(すなわち上記の(B)~(E)等の内容)を運航管理装置3に送信するようになっている。
【0022】
なお、以下では、単に移動体2という場合、自律式の移動体2Aと自律式ではない移動体2の両方を含む。
そして、運航管理装置3と移動体2との間の通信は、例えばC2リンク(Command and Control link)を用いて行うように構成することが可能であるが、通信の方式等は必ずしもこれに限定されない。
【0023】
運航管理装置3や管理統合装置4は、汎用コンピュータや専用装置等で構成される。また、それらを組み合わせたシステムとして構成することも可能である。
本実施形態では、運航管理装置3は、自律式の移動体2A用のものも自律式ではない移動体2用のものも、いずれも、移動体2の飛行前に、管理統合装置4に移動体2の飛行計画を送信する。そして、管理統合装置4は、運航管理装置3から飛行計画が送信されてくると、それを他の全ての運航管理装置3に送信するようになっている。
【0024】
前述したように、管理統合装置4を設けず、各運航管理装置3同士が、直接に、互いに他の全ての運航管理装置3に自らの移動体2に関する飛行計画や後述する飛行情報を送信しあうように構成することも可能であるが、管理統合装置4を設ければ、各運航管理装置3は管理統合装置4に飛行計画等の情報を送信するだけで各運航管理装置3間で情報が共有されるようになるため、情報送信の処理構成が簡便になる。
【0025】
なお、ユーザが移動体2の飛行計画を作成する際、飛行計画の作成前に管理統合装置4から他の移動体2に関する飛行計画(すなわち他の各運航管理装置3から管理統合装置4に送信されている他の移動体2に関する各飛行計画)の情報を取り寄せ、それらを参照するなどして、他の移動体2との衝突等が生じないように飛行計画を作成する。
【0026】
また、管理統合装置4は、何らかの原因で運航管理装置3で飛行計画が変更され、変更された飛行計画が送信されてきた場合も、それを他の全ての運航管理装置3に送信する。
このように、管理統合装置4は、ある運航管理装置3から飛行計画(変更された飛行計画を含む。)が送信されてくるごとに、他の全ての運航管理装置3にその飛行計画を送信するように構成される。
【0027】
なお、管理統合装置4が、運航管理装置3から送信されてきた飛行計画(変更された飛行計画を含む。)に従って移動体2が飛行した場合に他の移動体2と衝突(あるいはニアミス等)が生じる可能性があると判断した場合などに、当該運航管理装置3に対して、飛行計画の変更を指示したり、飛行を禁止したりすることができるように構成することも可能である。
【0028】
一方、本実施形態では、運航管理装置3は、移動体2が飛行を開始した後は、管理統合装置4に定期的に(例えば数秒ごとに)自らが運航を管理している移動体2の現在の位置情報を送信するように構成される。
移動体2の位置情報の他に速度ベクトルや迎え角等の情報も管理統合装置4に送信するように構成してもよい。
【0029】
なお、位置情報だけでなく速度ベクトル等の情報も送信する場合を考慮して、運航管理装置3から管理統合装置4に送信する移動体2の飛行に関する情報を、以下、飛行情報という。すなわち、飛行情報には移動体2の位置情報も含まれる。
そして、管理統合装置4は、運航管理装置3から移動体2の飛行情報が送信されてくると、それを他の全ての運航管理装置3に送信する。
運航管理装置3から飛行計画や飛行情報以外の情報も管理統合装置4に送信して、各運航管理装置3同士でその情報を共有するように構成することも可能である。
【0030】
このように、本実施形態に係る移動体の運航管理システム1では、管理統合装置4が、各運航管理装置3から移動体2の飛行計画と飛行情報とが送信されてくると、それらを他の全ての運航管理装置3に送信することで(管理統合装置4を設けない場合は各運航管理装置3が互いに飛行計画と飛行情報とを送信しあうことで)、全ての運航管理装置3が、互いに、移動体2の飛行計画と飛行情報とを共有するように構成されている。
そして、各運航管理装置3がそれらの情報を監視しあうことで、移動体2同士の衝突を回避するようになっている。
【0031】
[移動体と運航管理装置との通信が途絶した場合の処理について]
次に、本発明に係る移動体の運航管理システム1での、自律式の移動体2Aとその運航を管理する運航管理装置3との間で通信が途絶した場合の処理の仕方について説明する。
なお、自律式ではない移動体2と運航管理装置3との通信が途絶した場合は、移動体2は飛行禁止にされ、その場で着陸するなどの行動をとるように構成される。
【0032】
本実施形態では、自律式の移動体2Aは、運航管理装置3との間で通信が途絶しても、そのまま自律的に飛行を継続するように構成される。
しかし、運航管理装置3は、自律式の移動体2Aから飛行情報が送信されてこなくなるため、自律式の移動体2Aが現在どこを飛行しているか分からなくなり、管理統合装置4や他の運航管理装置3に、自らが運航を管理する自律式の移動体2Aの飛行情報を送信することができなくなる。
【0033】
そのため、この状態のままでは、他の運航管理装置3は、この自律式の移動体2Aと自らが運航を管理する移動体2との衝突を回避することができなくなる。
そこで、本実施形態では、自律式の移動体2Aの運航を管理する運航管理装置3は、自律式の移動体2Aとの通信が途絶した場合、通信途絶後も飛行を継続している自律式の移動体2Aが現在飛行していると予想される現在の予想存在範囲を算出する。そして、算出した現在の予想存在範囲を当該自律式の移動体2Aの飛行情報として管理統合装置4(あるいは他の運航管理装置3)に送信するようになっている。
【0034】
この場合、自律式の移動体2Aが、例えば前述した(A)~(E)の自律的な機能を有しているとすると、通信途絶後、自律式の移動体2Aは、飛行計画通り飛行しているか、他の移動体との衝突や悪天候、障害物を回避する行動をとったか、緊急着陸点に向かって飛行しているか、緊急着陸点に着陸したか、あるいはその場に緊急着陸している途中か、緊急着陸したかのいずれかの状態にあると考えられる。
このうち、自律式の移動体2Aが緊急着陸点やその場に緊急着陸したのであれば、他の移動体と衝突する可能性はないが、まだ空中を飛行しているのであれば他の移動体と衝突する可能性がある。
【0035】
そこで、本実施形態では、自律式の移動体2Aとの通信が途絶した運航管理装置3は、通信が途絶する直前の自律式の移動体2Aの位置(あるいは位置と速度ベクトル等)を出発点Sとして、その時点からの経過時間や、当該自律式の移動体2Aの自律飛行アルゴリズム(通常の飛行アルゴリズムのほか、回避行動をとる際の経路変更アルゴリズムや飛行計画から経路が逸脱し過ぎないようにするための逸脱防止アルゴリズム等)に基づいて、
図3に示すように、当該自律式の移動体2Aが現在飛行していると予想される現在の予想存在範囲Rcを算出する。
【0036】
その際、当該自律式の移動体2Aを飛行誘導している場合は飛行誘導の誤差や、当該自律式の移動体2Aが慣性航法等で自律飛行している場合は航法誤差等も考慮して現在の予想存在範囲Rcを算出する。
また、
図3では、自律式の移動体2Aが現在飛行していると予想される現在の予想存在範囲Rcとして、他の移動体等との衝突を回避しながら飛行計画に沿って飛行している場合(上記の(A)~(C)の場合)の予想存在範囲Rc1と、所定の緊急着陸点に向かって飛行している場合(上記の(D)の場合)の予想存在範囲Rc2とが示されている。
【0037】
なお、
図3では、現在の予想存在範囲Rcを円柱状の範囲として示したが、必ずしも円柱状の範囲になるとは限らず、楕円柱状等の他の形状になることもあり得る。
また、後述する
図4に示す未来の予想存在範囲Rfも同様に、必ずしも円柱状の範囲になるとは限らず、楕円柱状等の他の形状になることもあり得る。
【0038】
運航管理装置3は、このようにして算出した自律式の移動体2Aの現在の予想存在範囲Rcを、当該自律式の移動体2Aの飛行情報として管理統合装置4(あるいは他の運航管理装置3)に送信する。
そして、他の運航管理装置3のユーザは、自らが運航を管理する移動体2がその予想存在範囲Rc内を飛行している場合には、自らの移動体2が予想存在範囲Rcの外に出るように進行方向を変更したり、自らの移動体2が予想存在範囲Rcの方向に飛行している場合には、進行方向を変更して予想存在範囲Rcを避けるなどすることで、自らの移動体2と自律式の移動体2Aとの衝突を回避することが可能となる。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る移動体の航空管理システム1によれば、運航管理装置3と自律式の移動体2Aとの通信が途絶した後も自律式の移動体2Aは飛行を継続することができる。
そして、自律式の移動体2Aとの通信が途絶した場合に、運航管理装置3は、自律式の移動体2Aが現在飛行していると予想される現在の予想存在範囲Rcを算出し、算出した現在の予想存在範囲Rcを当該自律式の移動体2Aの飛行情報として他の運航管理装置3に直接、あるいは管理統合装置4を介して送信するため、自律式の移動体2Aが運航管理装置3との通信が途絶した後も飛行を継続する場合でも、他の移動体2がこの自律式の移動体2Aとの衝突を回避して安全に飛行することが可能となる。
【0040】
一方、上記と同様にして、自律式の移動体2Aとの通信が途絶した運航管理装置3は、通信が途絶する直前の自律式の移動体2Aの位置(あるいは位置と速度ベクトル等)を出発点Sとして、当該自律式の移動体2Aの自律飛行アルゴリズムや誤差等に基づいて、例えば
図4に示すように、その時点から5分後や10分後等に当該自律式の移動体2Aが飛行していると予想される未来の予想存在範囲Rfを算出することができる。
なお、
図4では、自律式の移動体2Aの未来の予想存在範囲Rfとして、他の移動体等との衝突を回避しながら飛行計画に沿って飛行している場合(上記の(A)~(C)の場合)の予想存在範囲Rf1と、所定の緊急着陸点に向かって飛行している場合(上記の(D)の場合)の予想存在範囲Rf2とが示されている。
【0041】
そして、このようにして算出された未来の予想存在範囲Rfは、運航管理装置3との通信が途絶した自律式の移動体2Aの新たな飛行計画として利用することができる。
そのため、本実施形態では、運航管理装置3は、このようにして算出した自律式の移動体2Aの未来の予想存在範囲Rfを、当該自律式の移動体2Aの飛行計画として管理統合装置4(あるいは他の運航管理装置3)に送信するようになっている。
【0042】
そして、他の運航管理装置3のユーザは、自律式の移動体2Aの新たな飛行計画(すなわち未来の予想存在範囲Rf)に基づいて、自ら運航を管理する移動体2とこの自律式の移動体2Aとの衝突を回避するように自らの移動体2を操縦することが可能となる。
そのため、このように、運航管理装置3と自律式の移動体2Aとの通信が途絶した後も自律式の移動体2Aが飛行を継続する場合に、運航管理装置3は、自律式の移動体2Aが飛行していると予想される未来の予想存在範囲Rfを算出し、算出した未来の予想存在範囲Rfを当該自律式の移動体2Aの新たな飛行計画として他の運航管理装置3に直接、あるいは管理統合装置4を介して送信するように構成すれば、自律式の移動体2Aが運航管理装置3との通信が途絶した後も飛行を継続する場合でも、他の移動体2がこの自律式の移動体2Aとの衝突を回避して安全に飛行することが可能となる。
【0043】
なお、自律式の移動体2Aの運航を管理する運航管理装置3は、自律式の移動体2Aとの通信が途絶した際に(管理統合装置4を介して)他の運航管理装置3に警告を発するように構成してもよい。
また、運航管理装置3は、自律式の移動体2Aとの通信が回復した場合には、他の運航管理装置3に、予想存在範囲Rcではなくピンポイントの位置情報を含む飛行情報を送信する元の状態に戻る。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明が、上記の実施形態等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
例えば、上記の移動体の運航管理システム1をエリアごとに設け、移動体2がエリアを跨いで飛行する場合は、各運航管理システム1の管理統合装置4同士が必要に応じて情報をやり取りするなどして移動体2の運航を管理するように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 移動体の運航管理システム
2 移動体
2A 自律式の移動体
3 運航管理装置
4 管理統合装置
Rc 現在の予想存在範囲
Rf 未来の予想存在範囲