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特許7549506火災検出装置、防災設備及び火災検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】火災検出装置、防災設備及び火災検出方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/107 20060101AFI20240904BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20240904BHJP
   G01N 21/53 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
G08B17/107 A
G08B17/00 A
G08B17/00 B
G01N21/53 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020173941
(22)【出願日】2020-10-15
(65)【公開番号】P2022065389
(43)【公開日】2022-04-27
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】松熊 秀成
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-151680(JP,A)
【文献】特開平6-282776(JP,A)
【文献】特開2009-288896(JP,A)
【文献】特開昭61-148597(JP,A)
【文献】特開平5-20563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の監視領域から検煙空間に流入した煙に検出光を照射して生ずる散乱光又は減衰光を受光して煙濃度を観測する観測部と、
前記検出光を連続発光して前記煙濃度を観測し、所定時間のあいだごとに、連続して時系列に得られた複数の観測値を含む観測データを生成する処理部と、
前記観測データに基づいて火災を検出する検出部と、
を設けたことを特徴とする火災検出装置。
【請求項2】
所定の監視領域から検煙空間に流入した煙に検出光を照射して生ずる散乱光又は減衰光を受光して煙濃度を観測する観測部と、
前記検出光を所定周期で間欠発光して観測された前記煙濃度が所定の閾値条件を充足した場合に、前記検出光を連続発光して前記煙濃度を観測し、所定時間のあいだごとに、連続して時系列に得られた複数の観測値を含む観測データを生成する処理部と、
前記観測データに基づいて火災を検出する検出部と、
を設けたことを特徴とする火災検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の火災検出装置に於いて、
前記検出部は、
前記観測データに含まれる複数の前記観測値を対象に所定の特徴量を検出し、当該特徴量が所定の火災判断条件を充足した場合に火災と検出する、
ことを特徴とする火災検出装置。
【請求項4】
請求項3記載の火災検出装置に於いて、
前記検出部は、前記所定時間ごとに検出される前記特徴量が所定の閾値以上又は前記閾値を超えた場合に火災と判断する、
ことを特徴とする火災検出装置。
【請求項5】
請求項3記載の火災検出装置に於いて、
前記検出部は、前記所定時間ごとに検出される前記特徴量が所定回数連続して所定の閾値以上又は前記閾値を超えた場合に火災と判断する、
ことを特徴とする火災検出装置。
【請求項6】
請求項3記載の火災検出装置に於いて、
前記検出部は、前記所定時間ごとに検出される前記特徴量について、現在の特徴量と前回の特徴量の比率が所定の閾値以上又は前記閾値を超えた場合に火災と判断する、
ことを特徴とする火災検出装置。
【請求項7】
請求項3記載の火災検出装置に於いて、
前記検出部は、前記所定時間ごとに検出される前記特徴量について、現在の特徴量と前回の特徴量の比率が所定回数連続して所定の閾値以上又は前記閾値を超えた場合に火災と判断する、
ことを特徴とする火災検出装置。
【請求項8】
請求項3記載の火災検出装置に於いて、
前記検出部は、前記所定時間ごとに検出される前記特徴量について、現在の特徴量と前回の特徴量の差分が所定の閾値以上又は前記閾値を超えた場合に火災と判断する、
ことを特徴とする火災検出装置。
【請求項9】
請求項3記載の火災検出装置に於いて、
前記検出部は、前記所定時間ごとに検出される前記特徴量について、現在の特徴量と前回の特徴量の差分が所定回数連続して所定の閾値以上又は前記閾値を超えた場合に火災と判断する、
ことを特徴とする火災検出装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れかに記載の火災検出装置に於いて、
前記検出部は、前記観測データの特徴量として、前記観測データに含まれる複数の観測値の積分値、平均値又はピーク値を検出することを特徴とする火災検出装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れかに記載の火災検出装置を用いた防災設備に於いて、
受信機と、火災を検出して前記受信機に火災信号を送信する感知器とを備え、
前記感知器に、前記観測部、前記処理部及び前記検出部を設けたことを特徴とする防災設備。
【請求項12】
請求項1乃至10の何れかに記載の火災検出装置を用いた防災設備に於いて、
受信機と、火災を検出して前記受信機に火災信号を送信する感知器とを備え、
前記感知器に、前記観測部及び前記処理部を設け、
前記受信機に、前記検出部を設けたことを特徴とする防災設備。
【請求項13】
観測部により、所定の監視領域から検煙空間に流入した煙に検出光を照射して生ずる散乱光又は減衰光を受光して煙濃度を観測し、
処理部により、前記検出光を連続発光して前記煙濃度を観測し、所定時間のあいだごとに、連続して時系列に得られた複数の観測値を含む観測データを生成し、
検出部により、前記観測データに基づいて火災を検出する、
ことを特徴とする火災検出方法。
【請求項14】
観測部により、所定の監視領域から検煙空間に流入した煙に検出光を照射して生ずる散乱光又は減衰光を受光して煙濃度を観測し、
処理部により、前記検出光を所定周期で間欠発光して観測された前記煙濃度が所定の閾値条件を充足した場合に、前記検出光を連続発光して前記煙濃度を観測し、所定時間のあいだごとに、連続して時系列に得られた複数の観測値を含む観測データを生成し、
検出部により、前記観測データに基づいて火災を検出する、
ことを特徴とする火災検出方法。
【請求項15】
請求項13又は14記載の火災検出方法に於いて、
前記検出部は、
前記観測データに含まれる複数の前記観測値を対象に所定の特徴量を検出し、当該特徴量が所定の火災判断条件を充足した場合に火災と検出する、
ことを特徴とする火災検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災による煙を観測して火災を検出する光電式の火災検出装置、防災設備及び火災検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災検出装置である光電式の煙感知器は、検煙空間に流入した煙に発光素子から光を照射したときに生ずる散乱光を受光素子で受光して煙濃度を観測し、観測した煙濃度が所定の火災判断条件を充足したときに火災と検出し、例えば受信機で火災警報動作を行わせている。
【0003】
また、煙感知器は、消費電流を低減するために所定周期ごとに発光素子を発光駆動して煙濃度を観測する間欠発光としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平5-30990号公報
【文献】特開昭63-167242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の煙感知器にあっては、火災により発生した煙による煙濃度の時間的な変化を、間欠発光の周期に対応して離散的に観測しており、間欠発光の周期が長くなると煙濃度の時間変化を正確に観測することができず、火災判断の精度が低下する。
【0006】
また、観測した煙濃度から高い精度で火災を検出するためには、時間的に連続して変化する複数の煙濃度を含む観測データから、火災に固有な煙の特徴量を算出して判断する必要があるが、間欠発光により離散的に観測される複数の煙濃度では、各煙濃度の時間間隔が離れすぎで、その間における煙濃度の時間的変化が失われており、火災固有の煙の特徴量を捉えることが困難な場合がある。
【0007】
本発明は、煙濃度の時間変化を正確に観測することで精度の高い火災検出を可能とする煙検出装置、防災設備及び火災検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(火災検出装置1)
本発明は、火災検出装置であって、
所定の監視領域から検煙空間に流入した煙に検出光を照射して生ずる散乱光又は減衰光を受光して煙濃度を観測する観測部と、
検出光を連続発光して煙濃度を観測し、所定時間のあいだごとに、連続して時系列に得られた複数の観測値を含む観測データを生成する処理部と、
観測データに基づいて火災を検出する検出部と、
を設けたことを特徴とする。
【0009】
(火災検出装置2)
本発明の別形態として、火災検出装置であって、
所定の監視領域から検煙空間に流入した煙に検出光を照射して生ずる散乱光又は減衰光を受光して煙濃度を観測する観測部と、
検出光を間欠発光して観測された煙濃度が所定の閾値条件を充足した場合に、検出光を連続発光して煙濃度を観測し、所定時間のあいだごとに、連続して時系列に得られた複数の観測値を含む観測データを生成する処理部と、
観測データに基づいて火災を検出する検出部と、
を設けたことを特徴とする。
【0010】
(検出部による火災検出)
検出部は、
観測データに含まれる複数の観測値を対象に所定の特徴量を検出し、当該特徴量が所定の火災判断条件を充足した場合に火災と検出する。
【0011】
(特徴量に基づく火災判断1)
検出部は、所定時間ごとに検出される特徴量が所定の閾値以上又は閾値を超えた場合に火災と判断する。
【0012】
(特徴量に基づく火災判断2)
検出部は、所定時間ごとに検出される特徴量が所定回数連続して所定の閾値以上又は閾値を超えた場合に火災と判断する。
【0013】
(特徴量に基づく火災判断3)
検出部は、所定時間ごとに検出される特徴量について、現在の特徴量と前回の特徴量の比率が所定の閾値以上又は閾値を超えた場合に火災と判断する。
【0014】
(特徴量に基づく火災判断4)
検出部は、所定時間ごとに検出される特徴量について、現在の特徴量と前回の特徴量の比率が所定回数連続して所定の閾値以上又は閾値を超えた場合に火災と判断する。
【0015】
(特徴量に基づく火災判断5)
検出部は、所定時間ごとに検出される特徴量について、現在の特徴量と前回の特徴量の差分が所定の閾値以上又は閾値を超えた場合に火災と判断する。
【0016】
(特徴量に基づく火災判断6)
検出部は、所定時間ごとに検出される特徴量について、現在の特徴量と前回の特徴量の差分が所定回数連続して所定の閾値以上又は閾値を超えた場合に火災と判断する。
【0017】
(特徴量)
検出部は、観測データの特徴量として、観測データに含まれる複数の観測値の積分値、平均値又はピーク値を検出する。
【0018】
(防災設備1)
前述した火災検出装置を用いた防災設備に於いて、
受信機と、火災を検出して受信機に火災信号を送信する感知器とを備え、
感知器に、観測部、処理部及び検出部を設けたことを特徴とする。
【0019】
(防災設備2)
前述した火災検出装置を用いた防災設備に於いて、
受信機と、火災を検出して受信機に火災信号を送信する感知器とを備え、
感知器に、観測部及び処理部を設け、
受信機に、検出部を設けたことを特徴とする。
【0020】
(火災検出方法1)
本発明は、火災検出方法であって、
観測部により、所定の監視領域から検煙空間に流入した煙に検出光を照射して生ずる散乱光又は減衰光を受光して煙濃度を観測し、
処理部により、検出光を連続発光して煙濃度を観測し、所定時間のあいだごとに、連続して時系列に得られた複数の観測値を含む観測データを生成し、
検出部により、観測データに基づいて火災を検出する、
ことを特徴とする。
【0021】
(火災検出方法2)
本発明は、火災検出方法であって、
観測部により、所定の監視領域から検煙空間に流入した煙に検出光を照射して生ずる散乱光又は減衰光を受光して煙濃度を観測し、
処理部により、検出光を間欠発光して観測された煙濃度が所定の閾値条件を充足した場合に、検出光を連続発光して煙濃度を観測し、所定時間のあいだごとに、連続して時系列に得られた複数の観測値を含む観測データを生成し、
検出部により、観測データに基づいて火災を検出する、
ことを特徴とする。
【0022】
(検出部による火災検出方法)
火災検出方法に於いて、
検出部は、
観測データに含まれる複数の観測値を対象に所定の特徴量を検出し、当該特徴量が所定の火災判断条件を充足したときに火災と検出する。
【発明の効果】
【0023】
(火災検出装置1の基本的な効果)
本発明の火災検出装置によれば、検出光を連続発光して煙濃度を観測することで、時系列に連続する複数の煙濃度を含む観測データを生成し、煙濃度の時間的な変化を正確に示す観測データに基づいて、高い精度で火災を検出すること可能とする。
【0024】
(火災検出装置2の基本的な効果)
本発明の火災検出装置によれば、検出光の間欠発光して観測された煙濃度が所定の閾値条件を充足した場合、例えば、火災予兆といえるような所定の閾値以上の煙濃度に増加した場合に、検出光を連続発光して煙濃度を観測することで、時系列に連続する複数の煙濃度を含む観測データを生成し、煙濃度の時間的な変化を正確に示す観測データに基づいて、高い精度で火災を検出すること可能とする。
【0025】
また、煙濃度が閾値を下回っている通常監視状態では検出光を間欠発光しており、検出光を連続光する煙濃度が所定の閾値条件を充足した状態の発生頻度は極めて少なく例外的なものであることから、運用期間を全体的にみると、検出光の発光に必要な消費電流を、検出光の間欠発光のみの場合と略同等に低減できる。
【0026】
(検出部による火災検出の効果)
また、検出部は、観測データに含まれる時系列に連続する複数の煙濃度を対象に所定の特徴量を検出し、当該特徴量が所定の火災判断条件を充足した場合に火災と検出することで、より精度の高い火災検出を可能とする。
【0027】
(特徴量に基づく火災判断の効果)
検出部は、観測データに基づき所定時間ごとに検出される特徴量、現在の特徴量と前回の特徴量の比率、或いは、現在の特徴量と前回の特徴量の差分が、それぞれ、所定の火災判断条件を充足した場合、例えば、所定の閾値以上又は閾値を超えた場合、もしくは、所定回数連続して所定の閾値以上又は閾値を超えた場合に、火災と判断することで、火災に固有な煙濃度の時間的変化の特徴量を捉えた判断により、より精度の高い火災検出を可能とする。
【0028】
(特徴量の効果)
また、検出部は、観測データに含まれる時系列に連続する複数の煙濃度から積分値、平均値又はピーク値を検出して一つの特徴量を求めることで、簡単な処理により精度の高い火災検出を可能とする。
【0029】
(防災設備1の効果)
本発明は、前述した火災検出装置を用いた防災設備であって、感知器に、観測部、処理部及び検出部の全てを設けることで、感知器側の変更のみで対処でき、既設の設備であっても、ベースに装着している感知器を外し、観測部、処理部及び検出部の全てを設けた感知器に交換することで、簡単に対処できる。
【0030】
(防災設備2の効果)
本発明は、前述した火災検出装置を用いた防災設備であって、感知器に観測部と処理部を設け、受信機に検出部を設けることで、感知器側の変更を少なくし、設備全体としてのコストを低減可能とする。
【0031】
(火災検出方法1及び2の効果)
本発明は、火災検出方法であっては、前述した火災検出装置1及び2と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の火災検出装置、防災設備及び火災検出方法の基本的な概念を示した説明図である。
図2図1に対応するP型の防災設備を対象とした本発明の具体的な実施形態を示した防災設備の説明図である。
図3図2の感知器の実施形態による制御動作を示したフローチャートである。
図4】受信機側で火災を判断する本発明の火災検出装置、防災設備及び火災検出方法の他の基本的な概念を示した説明図である。
図5図4に対応するR型の防災設備を対象とした本発明の具体的な実施形態を示した防災設備の説明図である。
図6図5のR型の防災設備の実施形態による制御動作をタイムチャート形式で示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明に係る火災検出装置、防災設備及び火災検出方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により、この発明が限定されるものではない。
【0034】
[実施形態の基本的な概念]
図1は防災設備1に対応した本発明による実施形態の基本的な概念を示した説明図であり、図1を参照して実施形態の基本的な概念について説明する。本実施形態は、概略的に、火災検出装置、防災設備、及び火災検出方法に関するものである。尚、防災設備2に対応した実施形態については別途説明する。
【0035】
「火災検出装置」とは、監視領域の火災を検出する手段であり、例えば、煙感知器、火災感知器、火災警報器等を含む概念である。
【0036】
ここで、「監視領域」とは、火災検出装置により監視の対象となる領域であり、一定の広がりをもった屋外或いは屋内の空間であり、例えば、建物の部屋、廊下、階段等の空間を含む概念である。
【0037】
火災検出装置は、一例として受信機10と感知器12で構成される防災設備の感知器12であり、観測部16、処理部18及び検出部20を備える。
【0038】
「観測部16」とは、所定の監視領域から検煙空間に流入した煙に検出光を照射して生ずる散乱光又は減衰光を受光して煙濃度を観測するものである。ここで「検煙空間」とは、外部からの煙は流入するが光の入射は遮られた煙を検出するための空間であり、発光素子と受光素子が設置され、流入した煙に発光素子からの検出光を照射したときに生ずる散乱光又は減衰光を受光素子で受光して煙濃度を観測するものであり、散乱式検煙部又は減光式検煙部を含む概念である。
【0039】
また、「処理部18」とは、検出光を間欠発光することにより観測された煙濃度が所定の閾値条件を充足した場合、一例として、煙濃度が閾値以上又は閾値を超えた場合に、検出光を連続発光して煙濃度を観測し、所定時間のあいだごとに、連続して時系列に得られた複数の観測値を含む観測データを生成するものである。ここで、「間欠発光」とは、発光素子を所定周期ごとに所定時間のあいだ発光駆動することで検出光を間欠的に発光することを意味する。また、「連続発光」とは、発光素子を駆動し続けることで検出光を連続的に発光することを意味する。また、「所定時間のあいだごとに、連続して時系列に得られた複数の観測値を含む観測データ」とは、検出光を連続発光したときに、所定時間のあいだに連続して観測されるアナログ観測値(アナログ煙濃度)を所定周波数でサンプリングしてA/D変換した複数のデジタル観測値(デジタル煙濃度)を含む時系列データを含む概念である。また、処理部18は間欠発光から連続発光に切り替えを行わず、常に検出光を連続発光としても良い。
【0040】
また、「検出部20」とは、処理部18で生成された観測データに基づいて火災を検出する処理を行うものであり、例えば、観測データに含まれる複数の観測値を対象に所定の特徴量を検出し、当該特徴量が所定の火災判断条件を充足した場合に火災と検出するものである。
【0041】
ここで「特徴量」とは、観測データに含まれる複数の観測値から算出される例えば積分値、平均値又はピーク値等を含む概念である。また「特徴量が所定の火災判断条件を充足する」とは、例えば、観測データに基づき所定時間ごとに検出される特徴量、現在の特徴量と前回の特徴量の比率、或いは、現在の特徴量と前回の特徴量の差分が、それぞれ、所定の閾値以上又は閾値を超えた場合、もしくは、所定回数連続して所定の閾値以上又は閾値を超えた場合に火災と判断することを含む概念である。
【0042】
以下の説明では、「監視領域」が「建物の部屋」であり、「観測部」が「散乱光式煙検出部を備えた観測部」であり、「煙の観測値」が「煙濃度」であり、「観測データの特徴量」が「複数の煙濃度の積分値」である場合について説明する。
【0043】
[実施形態の具体的内容]
火災検出装置、防災設備及び火災検出方法の実施形態の具体的内容について、より詳細に説明する。その内容については以下のように分けて説明する。
a. P型の防災設備
b. 受信機
c. 感知器
c1. 観測部
c2. 処理部
c3. 検出部
c4. 感知器の制御動作
d. 他の実施形態の基本的な概念
e. R型の防災設備
e1. 感知器
e2. 受信機
e3. 伝送制御
e4. R型防災設備の制御動作
f. 本発明の変形例
【0044】
[a.P型の防災設備]
図2図1に対応するP型(Proprietary-type)の防災設備を対象とした本発明の具体的な実施形態を示した説明図である。ここで、「P型の防災設備」とは、受信機10が感知器12を接続した信号線ごと(信号線単位に)に火災を監視する設備である。
【0045】
図2に示すように、本実施形態のP型の防災設備は、受信機10と複数の感知器12を備える。なお、図2では1台の感知器12を代表して示している。受信機10は管理人室や防災センター等に設置され、受信機10から建物の部屋等の監視領域に引き出された信号線14に、複数の感知器12を接続している。受信機10から引き出された信号線14はプラス信号線14aとマイナス信号線(コモン信号線)14bを備え、受信機10から感知器12へ電源を供給すると共に感知器12から受信機10へ火災発報信号を送信する。
【0046】
[b.受信機]
受信機10は、受信機制御部40、回線受信部42、表示部44、操作部46、警報部48及び移報部50を備える。回線受信部42は監視領域、例えば建物の階別に分けて引き出された信号線14毎に設けられ、感知器12からの火災発報信号を受信して受信機制御部40に出力する。
【0047】
受信機制御部40は、CPU、メモリ及び各種の入出力ポートを備えたコンピュータ回路で構成され、回線受信部42の何れかによる火災発報信号(火災信号)の受信を検出すると火災警報動作を行う。受信機制御部40の火災警報動作は、表示部44の火災代表灯を作動すると共に火災発生地区を示す地区表示灯を作動し、また、警報部48により警報音声メッセージを含む主音響警報を出力すると共に火災が発生した監視領域に設置している地区音響装置の作動による地区音響警報を行い、また、移報部50に指示して防排煙機器の連動制御等を行う。
【0048】
[c.感知器]
火災検出装置として機能する感知器12の構成を、より詳細に説明する。感知器12は、火災検出装置の構成要素となる観測部16、感知器制御部24、発報回路部26、電源部28を備える。観測部16には、検煙部25、発光駆動部34、受光増幅部36が設けられる。また、感知器制御部24は、CPU、メモリ及び各種の入出力ポートを備えたコンピュータ回路で構成され、プログラムの実行により実現される機能として、火災検出装置の構成要素となる処理部18と検出部20の機能が設けられる。
【0049】
(c1.観測部)
観測部16に設けられた検煙部25は散乱光式検煙部を構成するものであり、外部からの煙が流入する遮光された感知器内の検煙空間に、発光素子30と受光素子32がそれぞれの光軸が所定の鋭角となる散乱角で交差するように配置され、光軸の交点を含む領域を検煙領域とし、検煙領域に流入した煙に発光素子30から検出光を照射したときに散乱する光、所謂前方散乱光を受光素子32で受光するように構成している。なお、散乱角は任意であり、また、散乱角を、直角を超える所定の鈍角とすることで後方散乱光を受光することも可能である。
【0050】
発光素子30は例えば発光ダイオードであるが任意の発光素子としても良く、また、受光素子32は例えばフォトダイオードであるが任意の受光素子としても良い。発光素子30は発光駆動部34により発光駆動され、検出光を検煙領域に照射する。受光素子32は検出光による煙の散乱光を受光し、散乱光の受光量に応じて例えば1~10μAの受光電流を出力する。受光増幅部36は受光素子32からの受光電流を入力して増幅し、例えば1~5mVの受光電圧を出力し、この受光電圧が煙濃度に対応している。
【0051】
(c2.処理部)
処理部18は、観測部16の検出光を所定周期で間欠発光して観測された所定の閾値条件を充足した場合、例えば煙濃度が所定の閾値以上又は閾値を超えた場合に、検出光を連続発光して煙濃度を観測し、所定時間のあいだごとに、連続して時系列に得られた複数の観測値を含む観測データを生成するものであり、具体的には、次の手順となる。
【0052】
第1に、処理部18は、煙濃度が所定の閾値となる火災予兆レベル(予備的な火災の判断レベル)、例えば3(%/m)未満の場合、検出光を間欠発光して煙濃度を観測している。この場合の間欠発光の周期は、感知器12の消費電流を低減するために例えば1分周期とする。即ち、処理部18は、1分周期ごとに、発光駆動部34からマイクロ秒オーダーの周期となる数パルス程度のパルス駆動信号を発光素子30へ出力してパルス的に発光駆動する検出光の間欠発光を行い、この間欠発光に伴い受光増幅部36から出力された煙濃度検出信号(アナログ信号)をパルス発光に同期したA/D変換により読み込み、平均した煙濃度を観測値として取得する。
【0053】
第2に、処理部18は、検出光の間欠発光で観測された煙濃度が所定の閾値となる火災予兆レベル、例えば3(%/m)以上となった場合、発光駆動部34に一定レベルの駆動信号を連続して入力し、発光素子30を常時オン状態に駆動して検出光を連続的に出力し、受光増幅部36から出力されている煙濃度検出信号(アナログ信号)を、所定のサンプリング周波数でサンプリングしてA/D変換し、所定時間のあいだごとに、例えば2秒間のあいだごとに、時系列に連続する複数の観測値、即ち複数の煙濃度を含む観測データを生成し、メモリに記憶保持する。
【0054】
A/D変換のサンプリング周波数を例えば16Hzとすると、2秒間では32点の煙濃度を含む観測データが生成される。ここで、観測データを生成する所定時間およびサンプリング周波数は任意であり、観測データを生成する所定時間は、火災に固有な煙の時間的変化を捉えるに十分な時間とし、また、サンプリング周波数は、火災による煙濃度の時間変化が失われることのない時間間隔(サンプリング周期)となるようにする。
【0055】
なお、検出光の連続発光は、観測データのA/D変換に用いられるサンプリング周波数の連続パルス信号を発光駆動部34に入力して発光素子30を連続的にパルス駆動してもよい。
【0056】
(c3.検出部)
感知器制御部24に設けられた検出部20は、処理部18で生成された観測データに基づいて火災を検出するものであり、その機能や構成は任意であるが、例えば、観測データに含まれる時系列に連続する複数の煙濃度を対象に、所定の特徴量、例えば複数の煙濃度の積分値を検出し、この積分値が所定の火災判断条件を充足したときに火災と検出するものである。ここで、複数の煙濃度の積分値とは、複数の煙濃度を積算した値を意味する。検出部20により火災と検出するための火災判断条件は任意であるが、その例を次に列挙する。
【0057】
(第1火災判断条件)
検出部20は、所定時間ごとに検出される煙濃度の積分値が所定の閾値以上又は閾値を超えた場合に火災と判断する。
【0058】
(第2火災判断条件)
検出部20は、所定時間ごとに検出される煙濃度の積分値が所定回数連続して所定の閾値以上又は閾値を超えた場合に火災と判断する。これは第1火災判断条件に蓄積条件を加えたものである。
【0059】
(第3火災判断条件)
検出部20は、所定時間ごとに検出される煙濃度の積分値について、現在の煙濃度の積分値と前回の煙濃度の積分値の比率が所定の閾値以上又は閾値を超えた場合に火災と判断する。
【0060】
(第4火災判断条件)
検出部20は、所定時間ごとに検出される煙濃度の積分値について、現在の煙濃度の積分値と前回の煙濃度の積分値の比率が所定回数連続して所定の閾値以上又は閾値を超えた場合に火災と判断する。これは第3火災判断条件に蓄積条件を加えたものである。
【0061】
(第5火災判断条件)
検出部20は、所定時間ごとに検出される煙濃度の積分値について、現在の煙濃度の積分値と前回の煙濃度の積分値の差分が所定の閾値以上又は閾値を超えた場合に火災と判断する。
【0062】
(第6火災判断条件)
検出部20は、所定時間ごとに検出される煙濃度の積分値について、現在の煙濃度の積分値と前回の煙濃度の積分値の差分が所定回数連続して所定の閾値以上又は閾値を超えた場合に火災と判断する。これは第5火災判断条件に蓄積条件を加えたものである。
【0063】
このような第1乃至第6火災判断条件について、検出部20は、観測データの特徴量として検出した煙濃度の積分値が、いずれかの火災判断条件又は複数の火災判条件の組み合わせを充足したときに火災と判断する。
【0064】
また、検出部20は、観測データの特徴量として、煙濃度の積分値以外に、例えば、煙濃度の平均値やピーク値を特徴量として検出し、前述した第1乃至第6火災判断条件と同様にして火災と判断しても良い。
【0065】
ここで、第1乃至第6火災判断条件における特徴量の閾値は、感知器12として1種感度、2種感度、又は3種感度が法的に定められていることから、各感度における作動試験及び不作動試験を充足するように、所定の閾値を決めればよい。
【0066】
例えば、「2種感度の感知器」とは、法令で定められた公称作動濃度Kを10(%/m)の感知器のことであり、作動試験として、(公称作動濃度K)×1.5=10(%/m)×1.5=15(%/m)の濃度の煙を含む風速20cm~40cm/secの気流に投入したとき、30秒以内に作動し、且つ、不作動試験として、(公称作動濃度)×0.5=10(%/m)×0.5=5(%/m)の濃度の煙を含む風速20cm~40cm/secの気流に投入したとき、例えば非蓄積型の場合、5分以内に作動しない感知器を意味する。従って、作動試験及び不作動試験を満足するように、第1乃至第6火災判断条件における特徴量の閾値を設定することで、本実施形態の火災検出装置を備えた感知器12を、2種感度の検定品として実現することができる。
【0067】
このような公称作動濃度K=10(%/m)とする2種感度の感知器以外に、公称作動濃度K=5(%/m)の「1種感度の感知器」、或いは、公称作動感度K=15(%/m)の「3種感度の感知器」の場合も同様となる。
【0068】
(c4.感知器の制御動作)
図3図2の感知器の実施形態による制御動作を示したフローチャートであり、感知器制御部24に設けた処理部18と検出部20による制御動作となる。
【0069】
図3に示すように、処理部18は、ステップS1で所定周期、例えば1分周期ごとに検出光を間欠発光し、ステップS2で散乱光の受光に基づき煙濃度を観測している。即ち、発光駆動部34で発光素子30を間欠的に発光駆動した検出光による煙等による散乱光を受光素子32で受光し、受光増幅部36で増幅された煙濃度検出信号を間欠発光に同期したA/D変換により読み込んで煙濃度を観測している。
【0070】
続いて、処理部18は、ステップS3で観測した間欠発光による煙濃度を所定の閾値となる火災予兆レベルと比較しており、火災予兆レベルを超えるとステップS4に進み、検出光の連続発光に切り替え、ステップS5で所定時間ごとの観測データを生成する。即ち、発光駆動部34で発光素子30を連続的に発光駆動した検出光による煙等による散乱光を受光素子32で受光し、受光増幅部36で増幅された煙濃度検出信号を、所定のサンプリング周波数、例えば16Hzのサンプリング周波数でサンプリングしてA/D変換し、所定時間のあいだごと、例えば2秒間のあいだごとに時系列に連続するに例えば32点の煙濃度を読み込んで観測データを生成し、メモリに記憶保持する。
【0071】
続いて、検出部20はステップS6に進み、ステップS5で生成された観測データに含まれる32点の煙濃度を対象に所定の特徴量、例えば32点の煙濃度の積分値(積算値)を検出する。続いて、検出部20はステップS7に進み、ステップS6で検出した特徴量、例えば32点の煙濃度の積分値が所定の火災判断条件を充足するか否か判別し、火災条件の充足を判別するとステップS8に進み、発報回路部26を作動して受信機10に火災発報信号を送信する。
【0072】
続いて、感知器制御部24はステップS9で受信機10での復旧操作に伴う信号線14に対する電源供給の遮断等から復旧を判別し、ステップS1の最初の感知器制御に戻る。
【0073】
一方、検出部20は、ステップS7で特徴量が火災判断条件を充足しない場合はステップS10に進み、例えば、そのときの観測データ中の煙濃度のピーク値を抽出し、ピーク値が火災予兆レベルを超えていればステップS4からの処理を繰り返すが、火災予兆レベル以下の場合は、火災の可能性がなくなったことからステップS1に戻り、検出光の間欠発光により煙濃度を観測する通常監視状態に戻る。なお、ステップS10では、観測データの平均値を求めて火災予兆レベルと比較しても良い。
【0074】
[d.他の実施形態の基本的な概念]
図4は防災設備2に対応した火災検出装置、防災設備及び火災検出方法の実施形態の他の基本的な概念を示した説明図であり、受信機10と感知器12を備えた防災設備の一例としての火災報知設備において、感知器12に火災検出装置の構成要素となる観測部16と処理部18を設け、受信機10に火災検出装置の構成要素となる検出部20を設けたことを特徴とする。
【0075】
感知器12に設けた観測部16と処理部18、及び、受信機10に設けた検出部20は、図1の感知器12に設けた観測部16、処理部18及び検出部20と基本的に同じであるが、感知器12の処理部18で生成した観測部16の連続発光で観測した所定時間のあいだごとの複数の観測値を含む観測データを信号線14により受信機10に送信し、受信機10の検出部20で、観測データに含まれる複数の煙濃度の特徴量を検出し、検出した特徴量が所定の火災判断条件を充足したときに火災と検出して火災警報を出力する点で相違する。
【0076】
次に図4に対応する実施形態の具体的内容について、より詳細に説明する。
【0077】
[e.R型の防災設備]
図5図4に対応する実施形態の具体的内容を示したR型(Record-type)の防災設備の説明図である。ここで、「R型の防災設備」とは、受信機10と感知器12の間で伝送を行うことにより、感知器12毎に(感知器単位に)火災を監視する設備である。
【0078】
図5に示すように、本実施形態のR型の防災設備は、受信機10と感知器12を備え、受信機10から建物の部屋等の監視領域に引き出された伝送線114に、複数の感知器12を接続している。受信機10から引き出された伝送線114はプラス伝送線114aとマイナス伝送線(コモン伝送線)114bを備え、受信機10から感知器12へ電源を供給すると共に受信機10と感知器12の間で所定の伝送方式により信号を送受信する。なお、専用の電源供給線を設けても良い。
【0079】
(e1.感知器)
感知器12は、図2の実施形態と同様に、火災検出装置の構成要素となる観測部16、感知器制御部24、電源部28を備えるが、受信機10との間で所定の伝送方式により信号を送受信することから伝送部60を設けた点で相違する。また、感知器12の感知器制御部24には、本発明の火災検出装置の構成要素となる処理部18の機能が設けられるが、検出部20の機能は設けられておらず、これは受信機10側に設けられている。
【0080】
(e2.受信機)
受信機10は、図2の実施形態と同様に、受信機制御部40、表示部44、操作部46、警報部48及び移報部50を備えるが、感知器12との間で所定の伝送方式により信号を送受信することから伝送部62が設けられた点で相違し、また、受信機制御部40に、プログラムの実行により実現される機能として、本発明の火災検出装置の構成要素となる検出部20の機能を設けた点で相違する。受信機10に設けた検出部20は、図2の実施形態で感知器12に設けた場合と基本的に同様となる。
【0081】
(e3.伝送制御)
R型の防災設備では、感知器12に固有のアドレスが設定され、受信機10は所定周期、例えば1分周期で一括A/D変換コマンド信号を送信する。全ての感知器12は、受信機12からの一括A/D変換コマンド信号を受信すると、処理部18が観測部16での間欠発光により煙濃度を観測する処理を行い、間欠発光により観測した煙濃度をA/D変換して記憶保持する。受信機10は、一括A/Dコマンド信号に続いて感知器アドレスを順次指定した呼出信号を送信し、各感知器12で観測した煙濃度を含む応答信号を返送させるポーリングを行う。
【0082】
感知器12の処理部18は間欠発光により観測している煙濃度が、所定の閾値となる火災予兆レベル、例えば3(%/m)に達したときに火災予兆と判断し、火災割込信号を受信機10に送信する。また、感知器12は、火災予兆と判断すると、観測部16を連続発光による煙濃度の観測に切替え、これに伴い処理部18は、所定時間のあいだごと、例えば2秒間のあいだごとに、所定のサンプリング周波数によるA/D変換で、時系列に連続する複数の観測値を含む観測データを生成して記憶保持する処理を行う。
【0083】
感知器12からの火災割込信号を受信した受信機10は、グループアドレスを指定したグループ検索コマンド信号を送信し、これに対し火災割込信号を応答した感知器12の属するグループアドレスを特定するグループ検索を行い、続いて、検索したグループアドレス内の感知器アドレスを順次指定したグループ内検索コマンド信号を送信し、これに対し火災割込信号を応答した感知器12、即ち火災予兆と判断した感知器12のアドレスを特定する。
【0084】
続いて、受信機10は、1分周期のA/D変換コマンド信号の送信を基準に、例えば2秒周期で、火災予兆と判断した感知器12のアドレスを指定した呼出信号を送信し、火災予兆と判断した感知器12から観測データを取得し、受信機制御部40に設けた検出部20により観測データから特徴量を検出し、検出した特徴量が所定の火災判断条件を充足したときに火災と検出し、火災警報を出力する処理を行う。
【0085】
(e4.R型の防災設備の制御動作)
図6図5のR型の防災設備の実施形態による制御動作をタイムチャート形式で示したフローチャートである。
【0086】
図6に示すように、受信機10は、ステップS11で火災監視伝送処理として、所定周期例えば1分周期で一括A/D変換コマンド信号を送信し、続いて感知器アドレスを指定した呼出信号を送信し、感知器12から観測された煙濃度を含む応答信号を受信している。一方、感知器12はステップS12で火災監視応答処理として、受信機10からの一括A/D変換コマンド信号を受信すると、処理部18が観測部16の間欠発光によりそのときの煙濃度を観測して記憶保持し、続いて受信する自己アドレスを指定した呼出信号を受信し、煙濃度を含む応答信号を送信している。
【0087】
続いて、ステップ13で感知器12は間欠発光により観測している煙濃度が所定の閾値となる火災予兆レベル、例えば3(%/m)以上となったことを判別するとステップS14に進み、火災予兆送信処理として火災割込信号を受信機10に送信する。受信機10はステップS15で火災予兆受信処理として、感知器12からの火災割込信号の受信に基づき、火災割込信号を送信した感知器アドレスを検索して特定する。
【0088】
続いて、感知器12は、ステップS16で処理部18により観測部16を連続発光に切替えで煙濃度を観測し、ステップS17で所定時間のあいだごと、例えば2秒間のあいだごとに、所定のサンプリング周波数によるA/D変換で、時系列に連続する複数の煙濃度を含む観測データを生成して記憶保持する。
【0089】
続いて、受信機10は、ステップS19で観測データ受信処理として、火災割込信号を送信した感知器12のアドレスを指定した呼出信号を、一括A/Dコマンド信号の送信周期より短い例えば2秒周期で繰り返し送信し、感知器12にステップS18で記憶保持している観測データを送信する観測データ送信処理を行わせ、火災予兆と判断した感知器12から集中的に観測データを受信する。
【0090】
続いて、受信機10はステップS20に進んで観測データの受信を判別するとステップS21に進み、観測データに含まれる複数の煙濃度から特徴量を検出し、ステップS22で特徴量が所定の火災判断条件を充足した場合に火災と検出し、ステップS23で主音響警報および地区音響警報の鳴動、火災と判断した感知器アドレスに基づく火災発生場所の表示、防排煙機器の連動制御等を含む火災警報処理を行う。
【0091】
続いて、受信機10はステップS24で火災の鎮火に伴う復旧操作による復旧を判別するとステップS25で感知器12に復旧信号を送信し、ステップS11の火災監視伝送処理に戻る。また、感知器12はステップS27で復旧信号の受信を判別するとステップS12の火災監視応答処理に戻る。
【0092】
一方、感知器12は、ステップS18で観測データ送信処理を行った後にステップS26に進み、観測部16の連続発光により観測している煙濃度が所定の閾値となる火災予兆レベル以上であれば、ステップS27を経由したステップS17からの処理を繰りし返しているが、煙濃度が火災予兆レベル未満となった場合には、ステップS12に戻り、受信機10からの一括A/D変換コマンド信号の受信により間欠発光して煙濃度を観測する通常監視状態の動作に戻る。なお、ステップS26にあっては、例えば、ステップS17で生成された観測データに含まれる複数の煙濃度の中からピーク値を抽出するか、又は、平均値を求めて、火災予兆レベル未満か否か判別する。
【0093】
なお、上述したR型の防災設備では、受信機10に検出部20を設け、感知器12から受信した観測データに含まれる複数の煙濃度から特徴量を検出し、特徴量が所定の火災判断条件を充足したときに火災と検出しているが、検出部20における観測データから特徴量を検出する機能を感知器12側に設け、感知器12側で観測データから特徴量を検出して受信機10へ送信し、受信機10側で受信した特徴量が火災判断条件を充足したときに火災と検出しても良い。これにより感知器12から受信器10へ送信するデータ量を低減できる。
【0094】
[f.本発明の変形例]
本発明の変形例となる実施形態について、より詳細に説明する。
【0095】
(間欠発光と連続発光の切替え)
上記の実施形態は、煙濃度が所定の閾値となる火災予兆レベル以上又は超えたときに、間欠発光から連続発光に切り替えているが、間欠発光と連続発光の間の切替条件や切替タイミングは任意であり、例えば、受信機からの切替コマンド信号により、必要に応じて間欠発光から連続発光に切替え、また、連続発光から間欠発光に切替えるようにしても良い。
【0096】
(常に連続発光とする火災検出装置)
上記の実施形態は、煙濃度が所定の閾値となる火災予兆レベル以上又は超えたときに、間欠発光から連続発光に切り替えているが、間欠発光と連続発光の間での切替えを行わず、常に検出光を連続発光して煙濃度を観測し、所定時間のあいだごとに、連続して時系列に得られた複数の観測値を含む観測データを生成し、当該観測データに基づいて火災を検出する火災検出装置としても良い。
【0097】
(減光式の煙感知器)
上記の実施形態は、散乱光式の煙感知器を例にとっているが、これに限定されない。例えば、減光式の煙感知器としてもよい。減光式の煙感知器は、発光部からの光を検煙空間に円環状に配置した複数のミラーで反射して受光部までの光路長を煙による減光が十分に得られる程度に長くした公知の減光式検煙構造を備える。また、散乱光式の検煙構造と減光式の検煙構造を一体に備える公知の複合検煙構造とした煙感知器としてもよい。
【0098】
(2波長式の煙感知器)
また、上記の実施形態の散乱光式煙感知器としては、異なる波長の光の散乱特性の相違による散乱光を受光して煙の種類を識別する2波長式の煙感知器としてもよい。2波長式の煙感知器は、例えば、白色発光ダイオードを用いた発光素子又は発光波長の異なる第1及び第2発光素子から、検煙空間に向けて、第1波長と第2波長の光を発し、発光素子から発せられる光を直接受光しない異なる交差角の位置に、第1波長の光に感度をもつ第1受光素子と第2波長の光に感度を持つ第2受光素子を設け、第1受光素子で受光された第1波長の光による小さい錯乱角による煙散乱光の受光出力と、第2受光素子で受光された大きい散乱角による煙散乱光の受光出力とを比較することにより、煙の種類を識別し、煙の種類に応じた判断基準により火災判断を行う。
【0099】
この場合にも、通常監視状態では、間欠発光による煙濃度の観測で消費電流を低減し、一方、間欠発光により観測している煙濃度が所定閾値以上となったときに連続発光による煙濃度の観測に切替え、所定時間のあいだごとに時系列に連続する複数の煙濃度を含む観測データを生成し、観測データに含まれる複数の煙濃度から特徴量を検出し、特徴量が火災判断条件を充足したときに火災と検出する。
【0100】
(火災警報器)
上記の実施形態は、受信機と感知器を備えた防災設備を対象とした火災検出装置の構成を例にとっているが、煙濃度を観測して火災を判断する手段と火災を警報する手段を備えた例えば住宅用の火災警報器を火災検出装置として構成しても良い。火災警報器の場合には、図1及び図2に示した防災設備の感知器12と同様に、火災警報器に本発明の火災検出装置を構成する観測部16、処理部18及び検出部20の機能を設ける。
【0101】
(その他)
また、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0102】
10:受信機
12:感知器
14:信号線
16:観測部
18:処理部
20:検出部
24:感知器制御部
25:検煙部
26:発報回路部
28:電源部
30:発光素子
32:受光素子
34:発光駆動部
36:受光増幅部
40:受信機制御部
42:回線受信部
44:表示部
46:操作部
48:警報部
50:移報部
60,62:伝送部
114:伝送線
図1
図2
図3
図4
図5
図6