(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】採取装置及び採取システム
(51)【国際特許分類】
G01N 1/04 20060101AFI20240904BHJP
B01D 24/00 20060101ALI20240904BHJP
B01D 29/00 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
G01N1/04 Z
B01D29/00 D
(21)【出願番号】P 2020174925
(22)【出願日】2020-10-16
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000205535
【氏名又は名称】株式会社 商船三井
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 敦行
(72)【発明者】
【氏名】菊地 将司
(72)【発明者】
【氏名】善万 泰朋
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-115500(JP,A)
【文献】特開2005-088835(JP,A)
【文献】特開2007-263893(JP,A)
【文献】特開2020-163872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/04
B01D 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に取り付けられ、当該船舶に取り入れられる環境水に含まれる
マイクロプラスチックを含む対象物質を採取する採取装置であって、
前記環境水をろ過するろ過装置のフィルタ
を逆洗する逆洗処理において、前記ろ過装置のフィルタに捕捉された前記対象物質を含むろ過物が、逆洗ラインでろ過方向と逆方向に流れる処理水によって前記フィルタから押し流され、前記フィルタを逆洗した後の逆洗排水
とともに流通する逆洗排水ラインに配置され、
前記逆洗排水の一部から前記対象物質を採取する採取装置。
【請求項2】
前記逆洗排水ラインが備える直線状に延びた円管状の直管部の内部に該直管部と同軸に配置され、一端側が前記逆洗排水ラインの上流側を向いて開口し該逆洗排水ラインの下流側に延びる直線部、及び該直線部の他端側に連続し直線部に対して屈曲して延びる屈曲部を有する採水部を備える請求項1に記載の採取装置。
【請求項3】
前記採水部は、前記逆洗排水ラインにおける前記直線部の外側を流れる水流の速度と、前記直線部内の水流の速度が等速になるように構成される請求項2に記載の採取装置。
【請求項4】
前記直線部の内径は、前記直管部の内径の2分の1から3分の2である請求項3に記載の採取装置。
【請求項5】
前記直線部の長さは、前記直管部の内径よりも長い請求項3又は4に記載の採取装置。
【請求項6】
前記屈曲部の下流側に配置され採水部により採取された逆洗排水をろ過する回収フィルタを更に備える請求項2~5のいずれかに記載の採取装置。
【請求項7】
前記回収フィルタのろ過精度は、粒子径が200μm~800μmである請求項6に記載の採取装置。
【請求項8】
前記船舶の航行情報を取得する航行情報取得部と、
採水情報を取得する採水情報取得部と、
前記航行情報と前記採水情報とを関連付けて記憶する記憶部と、を備える請求項1~6のいずれかに記載の採取装置。
【請求項9】
船舶に取得される環境水に含まれる対象物質を採取する採取システムであって、
環境水を前記船舶に取り入れる取水ラインと、
前記取水ラインに配置される取水ポンプと、
前記取水ラインの下流側に配置され、該取水ラインを流通する環境水をろ過するフィルタを有するろ過装置と、
前記ろ過装置においてろ過された処理水を貯留する処理水貯留タンクと、
前記ろ過装置と前記処理水貯留タンクとを接続する処理水ラインと、
前記ろ過装置に前記フィルタのろ過方向と逆方向から処理水を供給する逆洗ラインと、
上流側が前記ろ過装置における前記フィルタよりも上流側に接続され、前記逆洗ラインから前記ろ過装置に供給された処理水を排出する逆洗排水ラインと、
前記逆洗排水ラインに取り付けられ、該逆洗排水ラインを流通する逆洗排水の一部を採取する採取装置と、
を備える採取システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境水から対象物質を採取する採取装置及び採取システムに関する。
【背景技術】
【0002】
貨物船やタンカー等の船舶にバラスト水として取り込まれる環境水には、そこに生息する水生生物が含まれる。船舶のバラスト水等を通じて、外来性有害水生生物の移動により発生する環境及び資源等への危険性を防ぐために、バラスト水に含まれる水生生物を除去及び/或いは殺滅する水処理装置が知られている。この種の水処理に関する技術が記載されているものとして特許文献1や特許文献2がある。
【0003】
特許文献1には、バラスト水処理システムの構成とは独立したモジュールで構成されるバラスト水濾過処理装置により、逆洗水を船外に排出することが可能なバラスティング時の1次濾過だけでなく、逆洗水を船外に排出することができないデバラスティングの際にも2次濾過及び差圧解消のための逆洗が行われるようにして海洋微生物の最終濾過率を高めることができることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、大きな貯留タンクを設ける必要がなく、容易にかつ連続してバラスト水を採取し、バラスト水中に含まれる水生生物を生きたままサンプリングできるとする、船舶バラスト水のサンプリングシステムが記載されている。
【0005】
特許文献3には、試料水を貯水する貯水部を前記試料水の供給側と排出側に仕切るフィルタが、前記供給側の面に鉛直方向下向きの力が作用しない配置とすることにより、微生物が大きなダメージを受けることがなく、該微生物の多くを生きたまま回収できるとする、微生物濃縮器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-153795号公報
【文献】特開2009-115500号公報
【文献】特開2015-14516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、マイクロプラスチック等による海洋の汚染状況を把握することが喫緊の課題となっている。マイクロプラスチック等による海洋汚染のモニタリングに移動範囲の広い貨物船やタンカー等の船舶を利用することができれば、様々な海域及び時期の情報を入手できると考えられる。しかしながら、海洋におけるマイクロプラスチック等の対象物資の採取には、ニューストンネット等の曳網による採取方法が一般的に用いられており、貨物船やタンカー等の船舶では、その大きさや航行速度のため、航海中にこうした採取方法をとることは困難であった。
【0008】
本発明は、貨物船やタンカー等の船舶でも、当該船舶に取り入れられる環境水からマイクロプラスチック等の対象物質を効率的かつ適切に採取できる採取装置及び採取システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、船舶に取り付けられ、当該船舶に取り入れられる環境水に含まれる対象物質を採取する採取装置であって、環境水をろ過するろ過装置のフィルタを逆洗した後の逆洗排水が流通する逆洗排水ラインに配置され、逆洗排水の一部から前記対象物質を採取する採取装置に関する。
【0010】
前記採取装置は、前記逆洗排水ラインが備える直線状に延びた円管状の直管部の内部に該直管部と同軸に配置され、一端側が前記逆洗排水ラインの上流側を向いて開口し該逆洗排水ラインの下流側に延びる直線部、及び該直線部の他端側に連続し直線部に対して屈曲して延びる屈曲部を有する採水部を備えることが好ましい。
【0011】
前記採水部は、前記逆洗排水ラインにおける前記直線部の外側を流れる水流の速度と、前記直線部内の水流の速度が等速になるように構成されることが好ましい。
【0012】
前記直線部の内径は、前記直管部の内径の2分の1から3分の2であることが好ましい。
【0013】
前記直線部の長さは、前記直管部の内径よりも長いことが好ましい。
【0014】
前記採取装置は、前記屈曲部の下流側に配置され採水部により採取された逆洗排水をろ過する回収フィルタを更に備えることが好ましい。
【0015】
前記回収フィルタのろ過精度は、粒子径が200μm~800μmであることが好ましい。
【0016】
前記採取装置は、前記船舶の航行情報を取得する航行情報取得部と、採水情報を取得する採水情報取得部と、前記航行情報と前記採水情報とを関連付けて記憶する記憶部と、を備えることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、船舶に取得される環境水に含まれる対象物質を採取する採取システムであって、環境水を前記船舶に取り入れる取水ラインと、前記取水ラインに配置される取水ポンプと、前記取水ラインの下流側に配置され、該取水ラインを流通する環境水をろ過するフィルタを有するろ過装置と、前記ろ過装置においてろ過された処理水を貯留する処理水貯留タンクと、前記ろ過装置と前記処理水貯留タンクとを接続する処理水ラインと、前記ろ過装置に前記フィルタのろ過方向と逆方向から処理水を供給する逆洗ラインと、上流側が前記ろ過装置における前記フィルタよりも上流側に接続され、前記逆洗ラインから前記ろ過装置に供給された処理水を排出する逆洗排水ラインと、前記逆洗排水ラインに取り付けられ、該逆洗排水ラインを流通する逆洗排水の一部を採取する採取装置と、を備える採取システムに関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、貨物船やタンカー等の船舶でも、当該船舶に取り入れられる環境水からマイクロプラスチック等の対象物質を効率的かつ適切に採取できる採取装置及び採取システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る採取システムを示す模式図である。
【
図2】本実施形態の採水部の構成の第1の例を示す模式図である。
【
図3】本実施形態の採水部の構成の第2の例を示す模式図である。
【
図4】本実施形態の採取装置が備える制御装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図5】本実施形態の採取装置の管理処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る採取システム1を示す模式図である。
【0021】
採取システム1は、船舶2に取り付けられる。採取システム1は、船舶2が海、河川、湖、沼等の環境から取得するバラスト水等の水(以下、環境水)から対象物質を採取する機能を有する。対象物質は、例えば、マイクロプラスチックや微小な海洋生物(水生生物)等の固形物である。本実施形態において、マイクロプラスチックは、ろ過残差やろ過残渣を含むもの等であるマイクロプラスチック試料として取得される。マイクロプラスチック試料は、ろ過残差やろ過残渣を含むものであってもよいし、ろ過残差から所定の分別手法に基づいて分別されたものであってもよい。
【0022】
<全体構成>
採取システム1の全体的な構成について説明する。なお、以下の説明において「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0023】
図1に示すように、採取システム1は、取水ラインL1と、取水ポンプ11と、ろ過装置12と、処理水ラインL2と、処理水貯留タンク13と、逆洗ラインL3と、逆洗用開閉弁31と、逆洗ポンプ32と、逆洗排水ラインL4と、採取装置40と、制御装置100と、を備える。
【0024】
取水ラインL1は、船舶2の外側にある環境水(例えば、海水、汽水、淡水)を船舶2の内側に取り入れるラインである。取水ラインL1の一側の端部(上流側の端部)に配置される取水口は、環境水を取得できる位置、例えば海面よりも下側に位置する。取水ラインL1の他側の端部(下流側の端部)は、ろ過装置12に接続される。
【0025】
取水ポンプ11は、取水ラインL1に配置される。取水ポンプ11が駆動することにより、環境水が取水ラインL1を通じて船舶2の外側から内側に取り入れられる。
【0026】
ろ過装置12は、取水ラインL1を流通する環境水をろ過するフィルタ120と、当該フィルタ120を保持するろ過塔本体121と、を有する。環境水は、ろ過装置12を通過することによりろ過処理された処理水となる。なお、ろ過装置12がバラスト水をろ過処理するバラスト水処理装置の場合、処理水は図示省略のバラストタンクに貯留され、一部が逆洗用の処理水として処理水貯留タンク13に貯留されることになる。また、ろ過装置12には、種々の方式のものを採用することができる。例えば、ろ過装置12は、ろ過処理とともに逆洗処理を並行して行ってフィルタ120の目詰まりを解消する方式のバラスト水処理装置であってもよい。このように、ろ過装置12の逆洗機能は連続的に逆洗処理を実行するものでもよいし、間欠的に逆洗処理を実行するものでもよい。
【0027】
処理水ラインL2は、ろ過装置12で処理された処理水が流通するラインである。処理水ラインL2の一側の端部(上流側の端部)はろ過装置12に接続され、処理水ラインL2の他側の端部(下流側の端部)は処理水貯留タンク13に接続される。
【0028】
処理水貯留タンク13は、ろ過装置12でろ過処理された処理水を貯留する。この処理水貯留タンク13には、ろ過装置12のフィルタ120を逆洗処理するための逆洗ラインL3が接続されている。なお、処理水貯留タンク13には、船舶2の外側に処理水を排出する処理水排出ラインが接続されていてもよい。
【0029】
逆洗ラインL3は、ろ過装置12のフィルタ120のろ過方向の逆方向に当該フィルタ120に処理水を供給するラインである。逆洗ラインL3の一側の端部(上流側の端部)は、処理水貯留タンク13に接続される。逆洗ラインL3の一側の端部は、処理水貯留タンク13に接続されているということから処理水側の端部ということもできる。逆洗ラインL3の他側の端部(下流側の端部)は、ろ過装置12において、環境水をろ過するろ過方向の流れにおいてフィルタ120よりも下流側(処理水の出口側)に接続される。
【0030】
逆洗用開閉弁31は、逆洗ラインL3に配置される。逆洗用開閉弁31は、フィルタ120の逆洗処理を行わない場合は閉状態である。フィルタ120の逆洗処理を行う場合は、逆洗用開閉弁31が閉状態から開状態に移行する。
【0031】
逆洗ポンプ32は、逆洗ラインL3に配置される。逆洗ポンプ32が駆動することにより、ろ過方向と逆方向から当該フィルタ120に逆洗ラインL3を通じて処理水が供給される。
【0032】
逆洗排水ラインL4は、フィルタ120を逆洗した後の処理水である逆洗排水が流通するラインである。逆洗排水ラインL4の一側の端部(上流側の端部)は、ろ過装置12において、環境水をろ過するろ過方向の流れにおいてフィルタ120よりも上流側(取水ラインL1側、環境水入口側)に接続される。逆洗排水ラインL4の一側の端部は、取水ラインL1側に接続されているということから原水側の端部ということもできる。この逆洗排水ラインL4を通じてろ過装置12を逆洗した後の処理水(逆洗排水)が船舶2の外側に排出される。
【0033】
ろ過装置12のフィルタ120には通常のろ過処理の過程でマイクロプラスチック等の対象物質を含むろ過物(又は固形物)が捕捉されている。逆洗処理では、フィルタ120に捕捉されたろ過物(又は固形物)が、ろ過方向と逆方向に流れる処理水によってフィルタ120から押し流される。フィルタ120から押し流されたろ過物(又は固形物)は、フィルタ120の逆洗を行った処理水(逆洗排水)とともに逆洗排水ラインL4を流通する。この逆洗排水の一部を採取装置40が採取する。
【0034】
<採取装置の構成>
採取装置40は、逆洗排水ラインL4に配置され、当該逆洗排水ラインL4を流通する逆洗排水の一部をサンプリングする。本実施形態の採取装置40は、採水部41と、採水部41の逆洗排水の流量を調整する流量調整部42と、採水部41の逆洗排水の流量を検出する流量検出部43と、逆洗排水の水質を検出する水質検出部44と、逆洗排水ラインL4を流通する逆洗排水の流量を検出する流量検出部45と、を備える。
【0035】
採水部41は、逆洗排水ラインL4を流通する逆洗排水の一部を等速吸引により採取する。採水部41の詳細な構成については後述する。
【0036】
流量調整部42は、採水部41の下流側に配置される。流量調整部42は、例えば、流量変更可能な制御弁によって構成される。採水部41の環境水のサンプリングが適切に行われるように、逆洗排水の流量を調整する。なお、流量調整部42は、サンプリングが実行されないときは閉鎖状態に制御される。
【0037】
流量検出部43は、採水部41に採取される逆洗排水の流量を検出するセンサである。当該検出値は制御装置100に送信される。本実施形態では、流量調整部42の下流側に配置される。
【0038】
水質検出部44は、逆洗排水の水質を検出するセンサ(電気伝導率センサや濁度センサ等)である。水質検出部44が検出した水質情報は制御装置100に送信される。環境水の水質を検出するという観点から取水ラインL1に配置する構成としてもよい。
【0039】
流量検出部45は、逆洗排水ラインL4における採水部41の近傍に配置される。流量検出部45は、逆洗排水ラインL4を流れる逆洗排水の流量を検出し、当該検出値を制御装置100に送信する。
【0040】
<採水部の第1の例>
次に、
図2を参照して本実施形態の採水部41の構成について説明する。
図2は、本実施形態の採水部41の構成の第1の例を示す模式図である。なお、
図2において流量調整部42、流量検出部43、水質検出部44、流量検出部45等の図示は省略している。
【0041】
図2に示すように、逆洗排水ラインL4は、円管状の配管である直管部L40を備えており、採水部41は当該直管部L40に配置される。本実施形態の採水部41は、採水口56を有する直線部50と、直線部50から屈曲して逆洗排水ラインL4の外側に延び出る屈曲部51と、ろ過装置46と、排水部55と、を備える。
【0042】
直線部50の延びる方向と直管部L40の延びる方向は一致し、かつ直線部50は直管部L40の中心に位置している。採水部41の直線部50と逆洗排水ラインL4の直管部L40のそれぞれが同軸P上に配置される位置関係である。直線部50の上流側(ろ過装置12側)の端部には、採水口56が形成されており、当該採水口56が逆洗排水ラインL4を流れる逆洗排水の採水部41への入口となる。なお、採水口56は、その端部が直線部50の外側から内側への逆洗排水の移動を円滑かつ緩やかにするために、面取りされていることが好ましい。
【0043】
屈曲部51は、その上流側の端部が直線部50の下流側の端部に接続される略L字状の配管である。本実施形態の屈曲部51は、直線部50の延びる方向に対して略直交する方向で屈曲し、逆洗排水ラインL4(直管部L40)の外側に延び出ている。
【0044】
ろ過装置46は、回収フィルタ53と、回収フィルタ53を保持するハウジング54と、を備える。直線部50から屈曲部51を通過した逆洗排水の一部は、ろ過装置46のハウジング54に到達し、逆洗排水に含まれる対象物質を含む固形物は内側に保持される回収フィルタ53で捕捉される。
【0045】
本実施形態のハウジング54は、屈曲部51の下流側に配置されており、採水部41から回収フィルタ53を内部に保持した状態で外すことができる。着脱自在の構成としては、例えばカートリッジ形式等、適宜の方式を採用できる。
【0046】
なお、採水部41から取り外した状態でハウジング54に取り付ける専用蓋を用意しておいてもよい。この構成では、ハウジング54に専用蓋を固定することにより、対象物質を含む固形物を捕捉した回収フィルタ53を外部から隔絶した状態に容易にすることができる。当該専用蓋又はハウジング54に、マイクロプラスチック試料を識別する試料識別情報204を表示する表示部を追加してもよい。
【0047】
回収フィルタ53について説明する。回収フィルタ53は、マイクロプラスチック等の対象物質を回収可能なろ過精度のものが使用される。例えば、回収フィルタ53のろ過精度は、粒子径が200μm~800μmであることが好ましい。
【0048】
本実施形態では、300μm~500μmの金属製のメッシュフィルタが回収フィルタ53に用いられる。なお、当該構成に限定されるわけではなく、スプリングフィルタや他の方式のフィルタを回収フィルタ53に用いることができる。例えば、ろ過装置12のフィルタ120のろ過精度が粒子径で50μmの場合は回収フィルタ53のろ過精度の粒子径が50μmとしてもよい。例えば、直径が5mm以下又は1mm以下等を対象とするマイクロプラスチックの定義に基づいてろ過精度を1000μmとしてもよい。本実施形態において、ろ過精度は、表示孔径値の粒子の粒子除去効率が99%以上捕集できることを示すものとする。
【0049】
排水部55は、ハウジング54の下流側(出口側)に配置される。ハウジング54内部で回収フィルタ53によってろ過された逆洗排水の一部は、排水部55を通じて船舶2の外側に排水される。回収フィルタ53には対象物質を含む固形物が捕捉されているので、回収フィルタ53から対象物質を含む固形物を回収することができる。例えば、回収フィルタ53を実験室に持ち帰り、回収フィルタ53から固形物を洗い落とし、マイクロプラスチックの分析を行うことができる。この時、マイクロプラスチックを採取したろ過海水量は、直線部50の流路断面積と速度U1とから算出することができる。
【0050】
また、直線部50は、採水部41において等速吸引による試料採取をより確実に実現するために、その内径a2が、直管部L40の内径a1の2分の1から3分の2の範囲に収まるように構成されるとともに、直線部50の直線部分の長さdが、直管部L40の内径a1よりも長く構成される。
【0051】
本実施形態では、逆洗排水ラインL4における直線部50の外側を流れる水流の速度U0と、直線部50内の水流の速度U1が等速になるように、流量調整部42の開度が制御される。例えば、速度U0は流量検出部45の検出値に基づいて取得することができ、速度U1は流量検出部43の検出値に基づいて取得することができるので、これらの検出値を監視しながら流量調整部42を制御することで、速度U0と速度U1が略一致する状態となって等速吸引による試料採取が実現される。
【0052】
<採水部の第2の例>
採水部41の構成は、上述の構成に限定されるわけではなく、適宜変更することができる。次に、
図3を参照して
図2の採水部41とは異なる構成の採水部41aについて説明する。
図3は、本実施形態の採水部41aの構成の第2の例を示す模式図である。なお、上記実施形態で説明した構成と共通又は同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する場合がある。
【0053】
図3の例の採水部41aは、屈曲部51の下流側の端部に回収容器60が配置される点が
図2の例の採水部41と異なっている。回収容器60は、直線部50の採水口56から回収された逆洗排水の一部を液体の状態で保存するためのものである。回収容器60は、採水部41から取り外すことができるように構成されており、対象物質を含んだ対象物質含有水を採取装置40から回収容器60ごと取り出すことが可能になっている。
【0054】
回収容器60には、採水部41aから取り外した状態で取り付ける専用の蓋を用意し、当該蓋によって回収容器60内のマイクロプラスチック試料(対象物質を含む逆洗排水)を外部から隔絶した状態で保管できるようにしてもよい。また、蓋又は回収容器60が、マイクロプラスチック試料を識別する試料識別情報204を表示する表示部を備える構成としてもよい。
【0055】
以上説明した採水部41aの第2の例においても、上述の採水部41と同様の効果を奏することができる。この構成では、対象物質を含んだ液体(逆洗排水、環境水)の状態でマイクロプラスチック試料を保管することができる。
【0056】
<制御装置>
次に、制御装置100について説明する。制御装置100は、CPU、ROM、RAM及び記憶装置等からなるコンピュータである。制御装置100は、採取装置40に電気的に接続されており、各種のデータ収集及び制御を行う。本実施形態の制御装置100は、分析用のマイクロプラスチック試料を採取し、採取時の記録(サンプリングデータ)を作成し、マイクロプラスチック試料を識別・管理するサンプリングに関する一連の管理処理を行うように構成される。
【0057】
本実施形態の制御装置100は、回収した対象物質を管理する情報管理装置としても機能する。次に、
図4を参照して制御装置100の構成について説明する。
図4は、本実施形態の採取装置40が備える制御装置100の機能的構成を示すブロック図である。なお、
図4において管理処理に直接関係のない構成については、その図示を省略している場合がある。
【0058】
制御装置100は、制御部110と、記憶部200と、入力部250と、表示部251と、測位情報取得部210と、プリンタ252と、を備える。以下、各構成について説明する。
【0059】
制御部110は、管理機能を実現するための各種の機能を実行する。制御部110は、例えば、ROMに記録されているプログラム又はRAMにロードされたプログラムに従って各種の処理を実行するCPU等によって構成される。
【0060】
制御部110は、マイクロプラスチック試料を採取し、採取時の記録(サンプリングデータ)を作成し、サンプルを識別・管理するサンプリングに関する一連の管理処理を実行させる機能部として、流量制御部111、航行情報取得部112、採水情報取得部113、試料情報作成部114及び試料識別情報出力部115を有する。
【0061】
流量制御部111は、流量調整部42を制御しサンプリングの開始及び終了を制御する。また、流量制御部111は、流量検出部43と流量検出部45の検出値に基づいて、直線部50の外側の流速を示す速度U0と直管内の流速を示す速度U1とが等速となるように、流量調整部42を制御する。
【0062】
航行情報取得部112は、測位情報取得部210からマイクロプラスチック試料の採取開始及び終了時の船舶2の位置を含む航行情報201を取得して記憶部200に航行情報201を記憶させる。
【0063】
採水情報取得部113は、採水量を含む採水情報202を取得して記憶部200に記憶させる。
【0064】
試料情報作成部114は、航行情報201と採水情報202に基づいて試料情報203を作成し、この試料情報203を記憶部200に記憶させる。航行情報201及び採水情報202はサンプリング中でも採取が継続される。このため、これらの情報をサンプリング終了時或いは終了後に処理して、採取場所、年月日と時刻、採取水量等のデータを試料情報203として管理する。また、試料情報作成部114は、採取したマイクロプラスチック試料ごとの識別を行うための試料識別情報204を作成し、試料情報203に試料識別情報204を関連付けて記憶部200に記憶させる。
【0065】
試料識別情報出力部115は、表示部251及びプリンタ252に試料識別情報204を出力させる処理を実行する。試料識別情報204は、例えば、管理番号とマイクロプラスチック試料の採取日時と採取経緯度の情報を含んだQRコードでもよい。
【0066】
記憶部200は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の半導体メモリで構成され、採取システム1の種々のデータを保存する。記憶部200には、管理情報としての航行情報201、採水情報202、試料情報203及び試料識別情報204が記憶される。なお、
図4では、記憶部200に記憶される情報の一例という意味で航行情報201、採水情報202、試料情報203及び試料識別情報204を図示している。
【0067】
航行情報201には、環境水の採水を行ったときの船舶2の位置を示す位置情報や、位置情報に対応する年月日や時間等を示す時間情報が含まれる。なお、航行情報201には、これ以外の航行に関する情報を含めることができる。例えば、天候、海況或いは海岸からの距離を示す距離情報を航行情報に含めてもよい。
【0068】
なお、ここで述べた航行情報201は例示であり、航行に関する情報であれば、ここで述べた情報の一部を省略したり、例示した以外の情報を付加したり、別の組み合わせを航行情報としてもよい。
【0069】
採水情報202には、採水深度、採水量、水質情報、試料時間情報、船舶識別情報等が含まれる。採水深度は、採水を行った位置の海表面からの深度や水深を示す情報であり、例えば、取水ラインL1の取水口(例えば、シーチェスト)の位置に基づく深度情報や、適宜の場所に配置した深度センサが取得した深度情報等に基づいて算出できる。採水量は、マイクロプラスチックを含む環境水を採取するために用いた水量であり、例えば、直線部50の流路断面積と速度U1から算出することができる。採水量は、水量センサを採水部41に配置し、直接的に採水量を検出することもできる。水質情報は、船舶2が取得した環境水の海水温度や塩分濃度等の水質情報である。本実施形態では、水質検出部44の検出値に基づいて水質情報が取得される。試料時間情報は、マイクロプラスチック試料を取得するのに要した時間や、試料取得時の年月日や時間等を示す情報である。
【0070】
船舶識別情報は、採取システム1が適用される船舶2に関する情報である。例えば、船舶識別情報には、船舶2の船種、船体形状、船舶の大きさ(全長、国際総トン数)海水を取り込むシーチェストの形状や構成、取水ポンプ11の種類や能力等が含まれてもよい。このような船舶識別情報は、マイクロプラスチック試料を分析することで得られるマイクロプラスチックの分析結果と関連づけて解析され、船舶の種類や大きさ等が試料採取(ひいてはマイクロプラスチックの分析結果)に及ぼす影響を評価することができる。また、船舶識別情報には、船舶2を特定するための船名、船舶番号、識別符号、IMO(International Maritime Organization)番号等の情報が含まれていてもよい。
【0071】
なお、ここで述べた採水情報202も例示であり、少なくともマイクロプラスチック取得時の時間情報(年月日時間等)、場所情報及びろ過装置46によるろ過水量を含む採水に関する情報を含むものであれば、ここで述べた情報の一部を省略したり、例示した以外の情報を付加したり、別の組み合わせを採水情報202としてもよい。
【0072】
試料情報203は、航行情報201と採水情報202に基づいて作成される。試料情報203に含まれるデータはマイクロプラスチック試料の分析結果とともに環境中でのマイクロプラスチックの分布状態や動態の予測等に使われる重要なものである。
【0073】
試料識別情報204は、マイクロプラスチック試料を区別するための一意に決まる数値や文字等の情報である。試料識別情報204は、例えば、マイクロプラスチック試料を識別するための管理番号(数字、文字、記号等)や管理番号を示す識別子(QRコード(登録商標))等である。試料識別情報204には、管理番号の他、採水を行った位置を示す採取地点情報、採水行った日時を示す採取時間情報、ろ過水量、船舶識別情報、天候、海況、海流、航行速度(対水速力、対地速力)、水質情報としての海水温度、塩分濃度等の情報を含めてもよい。
【0074】
上述の通り、記憶部200には、航行情報201と採水情報202が関連付けてマイクロプラスチック試料ごとに記憶され、航行情報201と採水情報202に基づいて作成された試料情報203が記憶される。試料情報203は、更に試料識別情報204に関連付けて記憶される。採水情報202は、試料情報203を介して試料識別情報204に関連付けられるともいえる。
【0075】
入力部250は、ユーザが制御装置100の操作及びマイクロプラスチック試料の採取に関する情報入力を行うためのボタンやキーボード等の入力インターフェースである。表示部251は、制御装置100が出力する各種の情報を出力するディスプレイ等の表示装置である。入力部250と表示部251は、タッチパネル等の一体的な構成であってもよい。
【0076】
測位情報取得部210は、GPS等の測位衛星から船舶2の現在の位置情報を含む測位情報を取得する受信部である。
【0077】
プリンタ252は、マイクロプラスチック試料に関する情報である試料識別情報を印刷する印刷装置である。プリンタ252は、紙やシール等のシート状の媒体に試料識別情報を印刷する構成であってもよいし、ハウジング54や回収容器60に、マイクロプラスチック試料に関する情報を直接印刷する構成であってもよい。
【0078】
<管理処理>
図5を参照して管理処理の流れと各機能部について説明する。
図5は、本実施形態の採取装置40の管理処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5のフローは、ろ過装置12の逆洗処理が開始されるとともに、予め設定されるスケジュールによって自動サンプリングが行われるタイミングに合致する場合に開始される処理である。
【0079】
図5のフローが開始されると、流量制御部111は、流量検出部43及び流量検出部45の検出値に基づいて流量調整部42の流量を調整する制御を実行する(ステップS1)。流量調整制御では、上述の通り、逆洗排水ラインL4の直管部L40内の速度U0と、採水部41の直線部50内の速度U1と、を一致させて採水部41での等速吸引を実現する。
【0080】
次に、航行情報取得部112が測位情報取得部210から今回取得されるマイクロプラスチック試料に対応する航行情報201の取得を開始し、記憶部200に航行情報201を記憶させる処理を実行する(ステップS2)。航行情報201は、少なくとも試料採取開始時の位置情報を含み、定期的に位置情報を取得、或いは採水部41のイベント(一定の採水量に到達、速度U0の変化等)をトリガとして取得しても良い。また、採水情報取得部113は、今回取得するマイクロプラスチック試料に対応する採水情報を取得し、採水情報202を記憶部200に記憶させる処理を実行する(ステップS3)。採水情報202は、航行情報201に関連付けて採水情報202を記憶部200に記憶させるか、採水情報202と航行情報201を関係付ける情報、例えば、採水情報202と航行情報201が時刻(グリニッジ標準時等)を含んでも良い。
【0081】
次に、流量制御部111が試料採取を終了する条件を満たすか否か判定する(ステップS4)。例えば、流量制御部111は、マイクロプラスチック試料の採水量が所定基準に達したか否かを判定し、所定基準に達していた場合は終了条件を満たした場合は、航行情報取得部112は試料採取終了時の位置情報を取得する。流量制御部111は流量制御を終了し、処理はステップS5に進む(ステップS4:Yes)。終了条件を満たしていない場合は、試料採取が終了条件を満たすまで継続される(ステップS4:No)。
【0082】
ステップS5では、試料情報作成部114は、記憶部200に記憶された航行情報201及び採水情報202に基づいて試料情報203を作成し、記憶部200に記憶する。また、試料情報作成部114は、試料識別情報204を作成し、試料情報203と試料識別情報204を関係付けて記憶部200に記憶する。これにより、試料識別情報204を検索キー(検索に用いるための記号)として、マイクロプラスチック試料の分析結果と試料情報を容易に紐づけることができ、環境中でのマイクロプラスチックの分布状態や動態の予測や現象の解明等を効果的に行うことができる。
【0083】
ステップS6では、試料識別情報出力部115が、記憶部200から試料識別情報204を取得し、当該試料識別情報204をプリンタ252に送信する(ステップS6)。これによってユーザは、回収した試料(ハウジング54又は回収容器60)にプリンタ252によって印刷された試料識別情報204を付すことができる。例えば、管理番号、航行情報及び採水情報を含む試料識別情報204をQRコード(登録商標)で生成し、当該QRコード(登録商標)をシールに印刷してハウジング54又は回収容器60の本体や専用蓋に貼り付けることで、マイクロプラスチック試料等の対象物質を適切かつ効率的に管理できる。
【0084】
なお、ステップS5及びステップS6では、試料情報作成部114が自ら試料識別情報204を作成する例を説明したが、この例に限定されるわけではない。例えば、予め試料識別情報が付与されている場合(回収容器60等に刻印やQRコードシールの貼付等)は、上記実施形態のステップS5及びステップS6の処理を実行する代わりに、試料情報作成部114が回収容器60等に付与された試料識別情報204を作業者の入力作業等を通じて取得し、試料情報203に取得した試料識別情報204を関係付けて記憶部200に記憶する処理としてもよい。
【0085】
以上説明したように、本実施形態の採取装置40は、環境水をろ過するろ過装置12のフィルタ120を逆洗した後の逆洗排水が流通する逆洗排水ラインL4に配置され、逆洗排水の一部から対象物質を採取する。
【0086】
また、採取システム1は、環境水を船舶2に取り入れる取水ラインL1と、取水ラインL1に配置される取水ポンプ11と、取水ラインL1の下流側に配置され、該取水ラインL1を流通する環境水をろ過するフィルタ120を有するろ過装置12と、ろ過装置12においてろ過された処理水を貯留する処理水貯留タンク13と、ろ過装置12と処理水貯留タンク13とを接続する処理水ラインL2と、ろ過装置12にフィルタ120のろ過方向と逆方向から処理水を供給する逆洗ラインL3と、上流側がろ過装置12におけるフィルタ120よりも上流側(取水側)に接続され、逆洗ラインL3からろ過装置12に供給された逆洗後の処理水である逆洗排水を排出する逆洗排水ラインL4と、逆洗排水ラインL4に取り付けられ、該逆洗排水ラインL4を流通する逆洗排水の一部を採取する採取装置40と、を備える。
【0087】
本実施形態の採取装置40又は採取システム1により、バラスト水等の船舶に取り入れられる環境水をろ過したろ過装置12を逆洗する逆洗排水を利用してマイクロプラスチック等の対象物質を効率的にサンプリング採取することができる。ニューストンネットを使用することが難しい大型の貨物船やタンカー等の船舶でも、当該船舶に取り入れられる環境水からマイクロプラスチック等の対象物質を効率的かつ適切に採取できるのである。
【0088】
また、採水口56と逆洗排水ラインL4の流れ方向が平行ではない場合、或いは採水部41の吸い込み速度(直線部50内の流速(逆洗排水の速度U1))と逆洗排水ラインL4の流速(逆洗排水の速度U0)が等速ではない場合に、質量の大きい粒子ほど慣性力で採水口56を通り過ぎてしまう確率が高くなる。この点、本実施形態の採取装置40は、逆洗排水ラインL4が備える直線状に延びた円管状の直管部L40の内部に該直管部L40と同軸Pに配置され、一端側が逆洗排水ラインL4の上流側を向いて開口し該逆洗排水ラインL4の下流側に延びる直線部50、及び該直線部50の他端側に連続し直線部50に対して屈曲して延びる屈曲部51を有する採水部41を備える。これにより、逆洗排水ラインL4の直管部L40の内の流体の流れ方向と、採水部41の直線部50内の流体の流れ方向と、が一致するようになる。更に、本実施形態の採水部41は、逆洗排水ラインL4における直線部50の外側を流れる水流の速度U0と、直線部50内の水流の速度U1が等速になるように構成される。このようにすることで、対象物質(例えば、マイクロプラスチック)の粒子数及び粒径分布がより適切な状態の環境水を取得でき、より誤差の少ない正確な試料採取方法を実現できる。
【0089】
また、本実施形態では、直線部50の内径a2は、直管部L40の内径a1の2分の1から3分の2である。
【0090】
これにより、環境水のサンプルとして必要かつ好ましい量の逆洗排水を採水部41で取得することができる。
【0091】
本実施形態では、直線部50の直線部分の長さdは、直管部L40の内径a1よりも長く構成される。
【0092】
これにより、採水部41の入口付近に位置する直線部50の形状が、理想的な等速吸引を実現する長さを確保したものとなるので、より正確に環境水に含まれる対象物質を逆洗排水から採取することができる。
【0093】
本実施形態では、屈曲部51の下流側に配置され採水部41により採取された逆洗排水をろ過する回収フィルタ53を更に備える。
【0094】
本実施形態の回収フィルタ53のろ過精度の粒子径は、200μm~800μmである。
【0095】
これにより、自然由来の生物や有機物等によるフィルタ目詰まりを抑制しつつ、採取する対象物質(例えば、マイクロプラスチック)を確実に回収することができる。
【0096】
また、本実施形態の採取装置40は、船舶2の航行情報201を取得する航行情報取得部112と、採水情報を取得する採水情報取得部113と、航行情報201と採水情報202とを関連付けて記憶する記憶部200と、を備える。
【0097】
これにより、海洋環境でのマイクロプラスチック分布及び動態の解明に役立つ多くのデータを得ることができるとともに、船舶2の航海中に取得された対象物質を含んだ環境水(逆洗排水)の管理を確実かつ容易に行うことができる。ユーザが海洋調査の専門分野の人間ではない場合でも、様々な領域(海域)でのサンプルの取得及び管理を容易に実現できる。
【0098】
また、本実施形態では、採水情報には、船舶に基づく船舶識別情報が含まれる。これにより、取得したサンプルに対して船舶識別情報を関連付けて保管することができる。サンプル採取後に、マイクロプラスチック等の対象物質の採取に影響する可能性がある船舶に関する情報(シーチェストの形状や位置或いは船体の形状等)を確認できるので、当該船舶識別情報と対象物質の分析結果と関連づけて解析することができ、船舶の種類や大きさ等がサンプル採取に及ぼす影響を評価することもできる。
【0099】
また、本実施形態では、制御装置100は、流量調整部42を制御することにより、採水部41による採水の開始及び終了を制御する流量制御部111を更に備える。これにより、サンプリングを自動化することができ、ユーザの専門知識によらず、より確実かつ適切なタイミングでサンプルを採取することができる。
【0100】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0101】
例えば
図5に示すフローはあくまで一例であり、処理の順番が入れ替わる等適宜変更することができる。また、
図5に示すフローの例において、制御装置100が自動サンプリングを行う例を説明したが、この構成に限定されるわけではない。ユーザの操作によってサンプリングが開始される構成(マニュアルサンプリング)としてもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、流量調整部42は、サンプリングが実行されないときは閉鎖状態に制御される構成であるが、この構成に限定されない。流量調整部をサンプリング開始時に全開となり終了時に全閉となる開閉弁と、サンプリング時に採水部41の直線部50を通過する逆洗排水の速度U0と、逆洗排水ラインL4の直管部L40の流速と、が等しくなるよう調整する調整弁とを別々に設けてもよい。また、流量検出部43によって等速吸引を自動制御する構成であるが、ユーザが流量調整部42をマニュアル操作することによって等速吸引を実現する構成としてもよい。場合によっては、配管構成のみによって等速吸引を実現してもよい。
【0103】
また、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。また、制御装置100は、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、制御装置100は、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【符号の説明】
【0104】
1 採取システム
2 船舶
11 取水ポンプ
12 ろ過装置
13 処理水貯留タンク
40 採取装置
41,41a 採水部
50 直線部
51 屈曲部
53 回収フィルタ
54 ハウジング
60 回収容器
100 制御装置
120 フィルタ
L1 取水ライン
L2 処理水ライン
L3 逆洗ライン
L4 逆洗排水ライン