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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】シート搬送装置及び画像読取装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/06 20060101AFI20240904BHJP
   B65H 7/14 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
B65H3/06 350A
B65H7/14
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020189629
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2022078743
(43)【公開日】2022-05-25
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂根 康太
(72)【発明者】
【氏名】中山 美里
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-095228(JP,A)
【文献】特開平05-027509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00-3/68,7/00-7/20,
43/00-43/08
G07D 1/00-3/16,9/00-13/00
G07F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが積載される積載部と、
前記積載部に積載されたシートを給送する給送回転体と、
前記給送回転体と共に分離ニップを形成し、前記分離ニップにおいてシートを1枚ずつに分離する分離回転体と、
シート搬送方向において前記分離ニップの下流に配置され、前記給送回転体によって給送されたシートを排出する排出ニップを有する排出回転体対と、
前記給送回転体を駆動可能な駆動源と、
綴じ代部を有する冊子状のシートを開いた状態で搬送する際に、前記給送回転体を駆動させることによって前記積載部に積載されたシートを給送し、該シートの前記綴じ代部が前記排出回転体対の前記排出ニップを通過し且つ該シートが前記排出ニップによって挟持された状態で前記給送回転体への前記駆動源からの駆動を切断する搬送モードを有する、
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
シートが積載される積載部と、
前記積載部に積載されたシートを給送する給送回転体と、
前記給送回転体と共に分離ニップを形成し、前記分離ニップにおいてシートを1枚ずつに分離する分離回転体と、
シート搬送方向において前記分離ニップの下流に配置され、前記給送回転体によって給送されたシートを排出する排出ニップを有する排出回転体対と、
前記給送回転体を駆動可能な駆動源と、を備え、
綴じ代部を有する冊子状のシートを開いた状態で搬送する際に、前記給送回転体を駆動させることによって前記積載部に積載されたシートを給送し、該シートの後端が前記分離ニップを通過し且つ該シートが前記排出ニップによって挟持された状態で前記給送回転体への前記駆動源からの駆動を切断する搬送モードを有する、
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項3】
前記給送回転体で給送されたシートを検知する検知部を更に備え、
前記搬送モードにおいて、前記検知部がシートの先端を検知したことに基づいて、前記給送回転体への前記駆動源からの駆動を切断するタイミングを判断する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記搬送モードにおいて、前記排出回転体対のシート搬送速度に基づいて、前記検知部が前記給送回転体で給送されたシートの先端を検知してから、所定時間後に前記給送回転体への前記駆動源からの駆動を切断する、
ことを特徴とする請求項3に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記搬送モードにおいて、前記検知部がシートの後端を検知したことに基づいて、前記給送回転体へ前記駆動源からの駆動を伝達する、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記搬送モードにおいて、前記排出回転体対は、前記分離ニップにおけるシートの搬送速度と同じ速度でシートを搬送する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記搬送モードにおいて、ホルダに収容された、冊子状のICチップ内蔵のパスポートを搬送可能である、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
前記パスポートの前記ICチップから国籍情報を取得可能な取得部を更に備え、
前記搬送モードにおいて、前記取得部が取得した国籍情報から前記パスポートの前記シート搬送方向における長さを求め、前記給送回転体への前記駆動源からの駆動を切断するタイミングを決定する、
ことを特徴とする請求項7に記載のシート搬送装置。
【請求項9】
ユーザからの操作を受け付ける操作部を更に備え、
前記搬送モードにおいて、前記操作部におけるユーザの操作から前記パスポートの前記シート搬送方向における長さを求め、前記給送回転体への前記駆動源からの駆動を切断するタイミングを決定する、
ことを特徴とする請求項7に記載のシート搬送装置。
【請求項10】
搬送されるシートの厚さを検知する厚さ検知部を更に備え、
前記厚さ検知部によって検知されたシートの厚さが所定の厚さ以上の場合、前記搬送モードを実行する、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項11】
シートが積載される積載部と、
前記積載部に積載されたシートを給送する給送回転体と、
前記給送回転体と共に分離ニップを形成し、前記分離ニップにおいてシートを1枚ずつに分離する分離回転体と、
シート搬送方向において前記分離ニップの下流に配置され、前記給送回転体によって給送されたシートを排出する排出ニップを有する排出回転体対と、
前記給送回転体を駆動可能な駆動源と、
前記シート搬送方向における異なる位置において、第1の厚さを有する第1部分と、前記第1の厚さよりも厚い第2の厚さを有する第2部分と、を有するシートを搬送する際に、前記給送回転体を駆動させることによって前記積載部に積載されたシートを給送し、該シートの前記第2部分が前記排出回転体対の前記排出ニップを通過し且つ該シートが前記排出ニップによって挟持された状態で前記給送回転体への前記駆動源からの駆動を切断する搬送モードを有する、
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項12】
前記駆動源は、第1の駆動源であり、
前記排出回転体対を駆動可能な第2の駆動源を更に備え、
前記搬送モードにおいて、前記第1の駆動源が停止することで、前記給送回転体への前記第1の駆動源からの駆動が切断される、
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項13】
前記駆動源は、前記給送回転体及び前記排出回転体対を駆動可能であり、
前記搬送モードにおいて、前記駆動源から前記前記給送回転体への駆動を切断可能なクラッチを更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項14】
請求項1乃至1のいずれか1項に記載のシート搬送装置と、
前記シート搬送装置によって搬送されるシートの画像を読み取る読取部と、を備える、
ことを特徴とする画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送するシート搬送装置及びこれを備える画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図24に示すように、給紙ローラ1011で原稿Sを給紙し、搬送ローラ1021で原稿Sを搬送し、読取センサ1070で原稿Sの画像を読み取る原稿搬送装置が知られている。この原稿搬送装置は、特許文献1において従来例として説明されている。給紙ローラ1011及び搬送ローラ1021は、それぞれ給紙モータ1003及び搬送モータ1004により駆動されている。シート搬送方向において搬送ローラ1021の下流かつ読取センサ1070の上流には、媒体検出センサ1060が配置されている。読取センサ1070で搬送される原稿の先端から後端まで確実に読取るために、原稿Sは所定の間隔(以下、紙間とする)を空けて搬送する必要がある。
【0003】
具体的には、上記原稿搬送装置は、搬送ローラ1021を常に回転した状態にして、給紙ローラ1011を回転させることで原稿Sを給送し、原稿Sの先端が媒体検出センサ1060を通過したら給紙ローラ1011の駆動を停止する。そして、搬送ローラ1021によって搬送される原稿の後端が媒体検出センサ1060を通過したら、再び給紙ローラ1011を駆動し、給紙ローラ1011によって次に原稿が給送される。
【0004】
また、特許文献1には、給紙ローラの回転と停止を繰り返して原稿を搬送する通常モードと、給紙ローラを低速で回転させ続けることによって原稿を搬送する厚紙モードと、を有する画像読取装置が提案されている。給紙ローラは、厚紙モードにおいて、給紙ローラよりもシート搬送方向における下流に配置される第2搬送部及び第3搬送部よりも遅い速度で回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-95228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図24を用いて説明した上記従来例では、厚い原稿を搬送すると、原稿の先端が媒体検出センサ1060に掛かった状態で、原稿の搬送が停止してしまうことがある。原因は、原稿の先端が媒体検出センサ1060に掛かると給紙ローラ1011を停止することにより、厚い原稿を搬送する力が低下し、搬送ローラ1021が原稿に対して滑ってしまうためか、または搬送モータ1004が脱調するためである。
【0007】
また、上記特許文献1の画像読取装置は、厚紙モードにおいて、常に給紙ローラは回転し続けるため、給紙モータが昇温してしまい、仕様のモータ特性が得られなくなることや、給紙モータの寿命が短くなるといった問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、駆動源の昇温を抑えると共に、安定したシート搬送が可能なシート搬送装置及びこれを備えた画像読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シート搬送装置において、シートが積載される積載部と、前記積載部に積載されたシートを給送する給送回転体と、前記給送回転体と共に分離ニップを形成し、前記分離ニップにおいてシートを1枚ずつに分離する分離回転体と、シート搬送方向において前記分離ニップの下流に配置され、前記給送回転体によって給送されたシートを排出する排出ニップを有する排出回転体対と、前記給送回転体を駆動可能な駆動源と、綴じ代部を有する冊子状のシートを開いた状態で搬送する際に、前記給送回転体を駆動させることによって前記積載部に積載されたシートを給送し、該シートの前記綴じ代部が前記排出回転体対の前記排出ニップを通過し且つ該シートが前記排出ニップによって挟持された状態で前記給送回転体への前記駆動源からの駆動を切断する搬送モードを有する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、シート搬送装置において、シートが積載される積載部と、前記積載部に積載されたシートを給送する給送回転体と、前記給送回転体と共に分離ニップを形成し、前記分離ニップにおいてシートを1枚ずつに分離する分離回転体と、シート搬送方向において前記分離ニップの下流に配置され、前記給送回転体によって給送されたシートを排出する排出ニップを有する排出回転体対と、前記給送回転体を駆動可能な駆動源と、を備え、綴じ代部を有する冊子状のシートを開いた状態で搬送する際に、前記給送回転体を駆動させることによって前記積載部に積載されたシートを給送し、該シートの後端が前記分離ニップを通過し且つ該シートが前記排出ニップによって挟持された状態で前記給送回転体への前記駆動源からの駆動を切断する搬送モードを有する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、シート搬送装置において、シートが積載される積載部と、前記積載部に積載されたシートを給送する給送回転体と、前記給送回転体と共に分離ニップを形成し、前記分離ニップにおいてシートを1枚ずつに分離する分離回転体と、シート搬送方向において前記分離ニップの下流に配置され、前記給送回転体によって給送されたシートを排出する排出ニップを有する排出回転体対と、前記給送回転体を駆動可能な駆動源と、前記シート搬送方向における異なる位置において、第1の厚さを有する第1部分と、前記第1の厚さよりも厚い第2の厚さを有する第2部分と、を有するシートを搬送する際に、前記給送回転体を駆動させることによって前記積載部に積載されたシートを給送し、該シートの前記第2部分が前記排出回転体対の前記排出ニップを通過し且つ該シートが前記排出ニップによって挟持された状態で前記給送回転体への前記駆動源からの駆動を切断する搬送モードを有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、駆動源の昇温を抑えると共に、安定してシートを搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係る画像読取装置を示す全体概略図。
図2】上部ユニットを閉じた状態の画像読取装置を示す断面図。
図3】上部ユニットを開いた状態の画像読取装置を示す断面図。
図4】画像読取装置の分離機構を示す断面図。
図5】ホルダを搬送した際の分離機構を示す断面図。
図6】給紙部の原稿検知構造を示す断面図。
図7】給紙部の原稿検知構造を示す断面図。
図8】給紙部の原稿検知構造を示す斜視図。
図9】原稿ストッパーを示す断面図。
図10】原稿ストッパーを示す断面図。
図11】制御部のブロック図。
図12】給紙・搬送制御を示すフローチャート。
図13】給紙ローラの近傍を示す断面図。
図14】給紙ローラの近傍を示す断面図。
図15】給紙ローラの近傍を示す断面図。
図16】ホルダにパスポートを収容する様子を示す斜視図。
図17】第2の実施形態に係る給紙・搬送制御を示すフローチャート。
図18】第3の実施形態に係る画像読取装置を示す全体概略図。
図19】画像読取装置の給紙駆動系を示す断面図。
図20】画像読取装置の搬送駆動系を示す断面図。
図21】ピックアップ駆動ユニットを示す正面図。
図22】駆動部を逆転させた際の画像読取装置の搬送駆動系を示す断面図。
図23】画像読取装置の給紙動作を示すフローチャート。
図24】従来の原稿搬送装置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施形態>
第1の実施形態を図1~16を参照して説明する。図1は第1の実施形態に係る画像読取装置Aの概略図である。
【0015】
[装置の構成]
画像読取装置Aは、積載部としての載置台1に積載された1つ又は複数の原稿Sを1つずつ装置内に搬送路RTにて搬送してその画像を読み取り、排出トレイ2に排出する装置である。読み取る原稿Sは、例えば、OA紙、チェック、小切手、名刺、カード類等のシートであり、厚手のシートであっても、薄手のシートであってもよい。カード類は、例えば、保険証、免許証、クレジットカード等を挙げることができる。原稿Sには、また、ICチップ内蔵のパスポートなどの冊子も含まれる。
【0016】
冊子を対象とする場合、後述するホルダ100を用いることができる。ホルダ100に見開き状態の冊子を収容して載置台1に載置することで、冊子がホルダ100と共に搬送され、その画像を読み取ることができる。
【0017】
[上部ユニット]
図2は第1の実施形態に係る画像読取装置Aの概略断面図である。画像読取装置Aは、上部ユニット103と下部ユニット104とから構成され、上部ユニット103は下部ユニット104に対し、本体ヒンジ105を支点として回動可能に取り付けられている。図3は、上部ユニット103を回転させ図1における搬送路RTを解放した状態を示す。この状態の時に、ユーザが原稿のジャム処理やローラの清掃等を行う。
【0018】
[第1搬送部]
図1に示すように、搬送路RTに沿って原稿Sを給送する第1搬送部10が設けられている。第1搬送部10は、給送回転体としての給紙ローラ11と、給紙ローラ11に対向配置される分離回転体としての分離ローラ12と、を備える。分離ローラ12は、給紙ローラ11と共に分離ニップN1を形成し、分離ニップN1において載置台1上の原稿Sをシート搬送方向D1に1枚ずつ順次搬送する。給紙ローラ11には、駆動部3から伝達部5を介して駆動力が伝達され、図中矢印方向(搬送路RTに沿って原稿Sを搬送させる正方向)に回転駆動される。駆動源としての駆動部3は、例えば給紙ローラ11を駆動可能なモータからなる。伝達部5は、例えば電磁クラッチであり、駆動部3からの給紙ローラ11への駆動力を断接する。
【0019】
[駆動部]
駆動部3と給紙ローラ11とを接続する伝達部5は、例えば、本実施形態では、通常時において駆動力が伝達される状態(以下、ON)とし、後述する重送リトライ時において原稿Sの逆送の場合に駆動力を遮断された状態(以下、OFF)とする。給紙ローラ11は伝達部5により駆動力の伝達が遮断されると、自由回転可能な状態となる。なお、このような伝達部5は、給紙ローラ11を一方向のみに駆動させる場合には設けなくてもよい。
【0020】
[分離機構]
給紙ローラ11に対向配置される分離ローラ12は、原稿Sを1枚ずつ分離するためのローラであり、給紙ローラ11に対して一定圧で圧接している。図4に示すように分離ローラ12は、分離フロート121に回転可能に支持され、分離フロート121は、軸部121aを中心に回転可能に支持されている。圧縮バネ122は、分離ローラ12が給紙ローラ11に圧接するように分離フロート121に付勢力を与えており、分離ローラ12は給紙ローラ11に対して圧接状態が維持されている。
【0021】
図1に示すように、分離ローラ12はトルクリミッタ12aを介して駆動部3から駆動力が伝達され、実線矢印方向(給紙ローラ11の正方向とは逆方向)に回転駆動される。分離ローラ12はトルクリミッタ12aにより駆動力伝達が規制されるため、給紙ローラ11と当接している際は給紙ローラ11に連れ回りする方向(破線矢印方向)に回転する。これにより、複数の原稿Sが給紙ローラ11と分離ローラ12との圧接部に搬送されてきた際には、1つを残して2つ以上の原稿Sが下流に搬送されないようにせき止められる。
【0022】
なお、本実施形態では分離ローラ12と給紙ローラ11とで分離機構を構成したが、このような分離機構は必ずしも設けなくてもよく、搬送路RTに原稿Sを1枚ずつ順次給送する給送機構であればよい。また、分離機構を設ける場合においては、分離ローラ12のような構成の代わりに、原稿Sに摩擦力を付与する分離パッドを給紙ローラ11に圧接させて、同様の分離機能を持たせるようにしてもよい。
【0023】
[厚さ検知センサ]
本構成では原稿Sの厚さを検知する厚さ検知部としての厚さ検知センサ123を用いて、原稿Sの厚さを検出する。図4に示すように、分離フロート121にはフラッグ部121bが設けられ、その近傍に原稿Sの厚さ検知センサ123が設けられている。本実施形態では原稿厚さ検知センサとしてフォトインタラプタを用いる。他の例としてフォトインタラプタの替わりにエンコーダを用いた構成であってもよい。
【0024】
分離フロート121は、給紙した原稿Sの厚さに追従して給紙ローラ11から離れる方向に軸部121aを中心にして揺動する。ある所定の厚さ以上の原稿Sが給送された場合、フラッグ部121bが厚さ検知センサ123に入り込むことで、所定量以上の変位量であることが検知され、パスポートと判断される。図5では後述するホルダ100を給紙した時の状態を示している。ホルダ100が給紙ローラ11と分離ローラ12の圧接部に入り込んだ時にホルダ100の厚さに追従して分離ローラ12が軸部121aを中心に回転して持ち上がり、フラッグ部121bが厚さ検知センサ123に入り込んだ状態になる。これにより、厚さ検知センサ123が所定量以上の変位量を検知し、パスポートと判断され、パスポートモードでの搬送に切り替えられる。厚さ検知センサ123による厚紙の検知の結果において、厚さ検知センサ123の変位量が所定量未満である状態にあると、通常モードでの搬送に切り替えられる。
【0025】
本実施形態では給紙された原稿Sの厚さを検知して搬送制御を切り替えるが、原稿Sの厚さの検知を行わず、2つの搬送制御手段を設けて、原稿Sの厚さに応じてユーザがどちらかの搬送制御手段を選択してから、給紙を行ってもよい。この2つの搬送制御手段を、通常モードとパスポートモードとする。通常モードで搬送する原稿Sは、例えばOA紙、雑誌、チェック、小切手、名刺等の原稿である。
【0026】
[パスポートの長さ検出]
パスポートは製造国によって冊子の寸法が異なる。本構成ではパスポート内のICチップを読み込み、製造国の情報を基にあらかじめ登録してあるデータベースと照合し、パスポートの寸法を特定する。図1に示すように、載置台1には、ICチップから国籍情報を取得可能な取得部としての近距離無線リーダーユニット130が配置されている。後述する制御部80は、近距離無線リーダーユニット130がパスポートのICチップから国籍情報を読み取ることでパスポートの長さを取得する。なお、パスポートに関する情報が格納されたデータベースは画像読取装置の内部に設けられても良いし、外部に設けられたサーバ上に設けられても良い。
【0027】
本実施形態では近距離無線リーダーユニット130を用いてパスポートの長さを検出して駆動部3の停止タイミングを切り替えるが、これに限定されない。例えば、原稿Sの長さの検知を行わず、ドライバ設定上などにパスポートの製造国の選択項目を設けて、搬送するパスポートの製造国に応じてユーザが選択してから、給紙を行ってもよい。また、後述する操作部83におけるユーザの操作からパスポートのシート搬送方向D1における長さを求めてもよい。また、製品の出荷国ごとに応じて予め設定されるなどであっても良い。
【0028】
[給紙部の原稿検知構造]
載置台1上の原稿Sの有無を検知するため、給紙ローラ11の上流部には原稿検知センサ90が設けられている。原稿検知センサ90は、レバー式のセンサである。他の例として後述の媒体検出センサ50,60のような光学式のセンサであっても構わない。
【0029】
図6は、載置台1上の原稿Sが無い状態を示し、図7は、載置台1上の原稿Sが有る状態を示す。原稿検知センサ90のレバー部90aは、軸部90bを中心に回転可能に上部ユニット103に支持されている。図7に示すように、原稿S先端が原稿ストッパー15の爪部15aに突き当るように原稿Sを給紙トレイにセットすると、原稿先端がレバー部90aを押し込むことで、原稿Sが有ることが検知される。
【0030】
給紙ローラ11の周囲には、給紙ローラ11を覆うローラカバー13が設けられている。ローラカバー13には、原稿Sを給紙トレイにセットするときに原稿S先端が給紙ローラ11に引っ掛からないようにガイドするために、ガイド14が設けられている。ガイド14は、軸部14aを中心に回転可能に支持され、原稿Sを持ち上げて給紙ローラ11から離す方向にバネ(不図示)で付勢され、先端部14bをローラカバー13の受け部13aに突き当てて回転が留まっている。軸部14aから遠い位置にある先端部14bを受け部13aで位置決めすることでガイド14の姿勢を精度良く保持することができる。
【0031】
図8に示すように、ガイド14は3本の腕14cを有し、腕14cは2つの給紙ローラ11の中間と両脇に配置されている。2つ給紙ローラ11の中間にも腕14cを設けることで、薄紙等の腰が弱い原稿Sをセットする時、原稿Sが撓んで給紙ローラに当たってしまうことを防ぐ。
【0032】
原稿ストッパー15は、図8に示すように3箇所の爪部15aを備え、軸部15bを中心に回転可能に支持される。不図示の駆動機構によって原稿ストッパー15が駆動され原稿S搬送時には搬送路を解放するように移動することにより、原稿Sの搬送が可能となる。
【0033】
原稿ストッパー15の爪部15aには図7のようにセットされた原稿Sの先端が突き当たる。原稿Sの突き当たる力によって原稿ストッパー15の爪部15aが撓まないようにするため、図9のように、ローラカバー13のリブ形状部13bが設けられている。リブ形状部13bが爪部15aの先端部15cの下流側を受けることで、爪部15aの撓みを防止する。
【0034】
図9及び図10に示すように、原稿検知センサ90のレバー部90aの先端部90cは給紙ローラ11の中心と分離ローラ12の中心を結んだ線より搬送方向下流側に配置される。これにより、ジャム処理後等で上部ユニット103を開いた状態(図3の状態)から閉じる時に、もし原稿Sが搬送路にあった場合、原稿検知センサ90の先端部90cがその原稿Sに当たりながら下流側に移動する。よって、先端部90cが原稿Sを突き破る事を防止できる。
【0035】
[第2搬送部]
図1に示すように、第1搬送部10の搬送方向下流側にある第2搬送部20は、駆動ローラ21と、駆動ローラ21に従動する従動ローラ22とを備え、第1搬送部10から搬送されてきた原稿Sをその下流側へ搬送可能である。駆動ローラ21にはモータ等の駆動部4から駆動力が伝達され、図中矢印方向に回転駆動される。従動ローラ22は駆動ローラ21に対して一定圧で圧接し、駆動ローラ21に連れ回る。この従動ローラ22は、バネ等の付勢ユニット(不図示)によって駆動ローラ21に対して付勢された構成としてもよい。
【0036】
[第3搬送部]
このような第2搬送部20よりもシート搬送方向D1における下流にある排出回転体対としての第3搬送部30は、駆動ローラ31と、駆動ローラ31に従動する従動ローラ32とを備える。これら駆動ローラ31及び従動ローラ32は、排出ニップN2を形成しており、排出ニップN2は、第2搬送部20から搬送されてきた原稿Sを排出トレイ2へ排出する。つまり、この第3搬送部30は排出機構として機能する。駆動ローラ31にはモータ等の駆動部4から駆動力が伝達され、図中矢印方向に回転駆動される。従動ローラ32は駆動ローラ31に対して一定圧で圧接し、駆動ローラ31に連れまわる。この従動ローラ32は、バネ等の付勢ユニット(不図示)によって駆動ローラ31に対して付勢された構成としてもよい。
【0037】
[重送検出]
重送検出センサ40は、静電気等で紙などの原稿S同士が密着し、第1搬送部10を通過してきた場合(つまり重なって搬送される重送状態の場合)に、これを検出するための検出センサ(原稿の挙動や状態を検出するセンサ)の一例である。重送検出センサ40は、搬送方向において第1搬送部10と第2搬送部20との間に配置される。重送検出センサ40としては、種々のものが利用可能であるが本実施形態の場合には超音波センサであり、超音波の発信部41とその受信部42とを備えている。紙等の原稿Sが重送されている場合と1つずつ搬送されている場合とで、発信部41から発信され原稿Sを通過する超音波の減衰量は異なり、重送検出センサ40は、このことを原理として重送を検出する。
【0038】
[媒体検出センサ]
このような重送検出センサ40よりも搬送方向下流側に配置される媒体検出センサ50は、第2搬送部20よりも上流側で、第1搬送部10よりも下流側に配置された上流側の検出センサ(原稿の挙動や状態を検出するセンサ)としての一例である。そして、媒体検出センサ50は、第1搬送部10により搬送される原稿Sの位置、詳細には、媒体検出センサ50の検出位置に原稿Sの端部が到達又は通過したか否かを検出する。媒体検出センサ50としては、種々のものが利用可能であるが、本実施形態の場合には光学センサであり、発光部51とその受光部52とを備え、原稿Sの到達又は通過により受光強度(受光量)が変化することを原理として原稿Sを検出する。
【0039】
本実施形態の場合、原稿Sの先端が媒体検出センサ50で検出されると、原稿Sが重送検出センサ40により重送を検出可能な位置に到達しているように、上記の媒体検出センサ50は重送検出センサ40の近傍においてその下流側に設けられている。なお、この媒体検出センサ50は、上記の光学センサに限定されず、例えば、原稿Sの端部が検知できるセンサ(イメージセンサ等)を用いてもよいし、搬送路RTに突出したレバー型のセンサでもよい。
【0040】
媒体検出センサ50とは別の媒体検出センサ60が画像読取ユニット70よりも上流側に配置されている。媒体検出センサ60は、第2搬送部20よりも下流側に配置された下流側の検出センサとしての一例であり、第2搬送部20により搬送される原稿Sの位置を検出する。媒体検出センサ60としては、種々のものが利用可能であるが、本実施形態の場合、媒体検出センサ50と同様に光センサであり、発光部61と受光部62とを備えている。そして、検知部としての媒体検出センサ60は、原稿Sの到達又は通過により受光強度(受光量)が変化することを原理として原稿Sの位置を検出する。
【0041】
[画像読取ユニット]
媒体検出センサ60よりも下流側にある読取部としての画像読取ユニット70は、例えば、光学的に走査し、電気信号に変換して画像データとして読み取るものであり、内部にLED等の光源、イメージセンサ、レンズアレー等を備えている。本実施形態では、画像読取ユニット70にコンタクトイメージセンサが用いられ、搬送路RTの両側に一つずつ配置されており、原稿Sの表裏面を読み取る。しかし、搬送路RTの片側にのみ一つ配置して、原稿Sの片面のみを読み取る構成としてもよい。また、本実施形態では、画像読取ユニット70を搬送路RTの両側に対向配置した構造としているが、例えば、搬送路RTに沿った方向に間隔をあけて配置してもよい。
【0042】
また、2つの画像読取ユニット70のうち少なくとも一方を原稿Sの厚さ方向に揺動可能に支持した構成であってもよい。例えば、一方の画像読取ユニット70は下部ユニット104に固定し、もう一方の画像読取ユニットは上部ユニット103の中で、搬送面に対して垂直な方向に揺動可能に支持し、バネ等で付勢し対向の画像読取ユニット70に突き当てる。この構成にすることで、原稿Sが通過するとき上部ユニット103側の画像読取ユニット70が原稿Sの厚さに応じてフロートするので、薄紙から厚紙までの画像読取が可能になる。
【0043】
[制御部]
次に、本実施の形態における制御部80について説明する。図11は、制御部80を示すブロック図である。制御部80は、図11に示すように、CPU81、記憶部82、操作部83、通信部84及びインターフェース部85を有している。CPU81は、記憶部82に記憶されたプログラムを実行することにより、画像読取装置A全体の制御を行う。記憶部82は、例えば、RAM,ROM等から構成される。操作部83は、例えばスイッチやタッチパネル等で構成され、ユーザからの操作を受け付ける。
【0044】
通信部84は、外部装置との情報通信を行うインターフェースである。外部装置としてPC(パソコン)を想定した場合、通信部84としては例えば、USBインターフェースやSCSIインターフェースを上げることができる。また、このような有線通信のインターフェースの他、通信部84は無線通信のインターフェースとしてもよく、有線通信、無線通信の両方のインターフェースを備えていてもよい。
【0045】
インターフェース部85は、アクチュエータ86やセンサ87とのデータの出入力を行うI/Oインターフェースである。アクチュエータ86には、駆動部3,4や、後述するタイミングベルトや歯車を介して駆動される部材である原稿ストッパー、駆動ローラ、カム部材等が含まれる。センサ87には、重送検出センサ40、媒体検出センサ50,60、画像読取ユニット70、原稿検知センサ90及び厚さ検知センサ123等が含まれる。
【0046】
[PCからの開始指示受信による駆動]
次に、画像読取装置Aの基本的な動作について説明する。制御部80は、例えば画像読取装置Aが接続された外部パソコンから画像読み取りの開始指示を受信すると、第1搬送部10~第3搬送部30の駆動を開始する。載置台1に積載された原稿Sはその最も下に位置する原稿Sから1枚ずつ搬送される。
【0047】
[重送時の制御]
搬送の途中で原稿Sは重送検出センサ40により重送の有無が判定され、重送が無いと判定されると搬送が継続される。なお、重送があると判定された場合には、後述の重送リトライを行うか、搬送を停止するか、第1搬送部10による後続の原稿Sの取り込みを停止して、重送状態にある原稿Sをそのまま排出するようにしてもよい。重送リトライとは、重送と検知した原稿を逆走させてから再度給紙を行う機能である。重送を検知した時、伝達部5をOFFにすると、給紙ローラ11が自由回転可能な状態となって分離ローラ12の回転に連れ回り、原稿Sを逆走させることができる。
【0048】
[媒体検出センサの出力に応じた読取開始]
制御部80は、媒体検出センサ60の検出結果に基づくタイミングで、第2搬送部20により搬送されてきた原稿Sの、画像読取ユニット70による画像の読み取りを開始し、読み取った画像を一時記憶して順次外部パソコンへ送信する。画像が読み取られた原稿Sは第3搬送部30により排出トレイ2に排出されてその原稿Sの画像読取処理が終了する。
【0049】
[給紙・搬送制御]
ここで、本実施形態の画像読取装置Aでは、第2搬送部20と第3搬送部30との間に配置される画像読取ユニット70によって画像の読み取りを行うため、第2搬送部20及び第3搬送部30は原稿Sを定速搬送する。第1搬送部10の搬送速度は、第2搬送部20及び第3搬送部30の速度より速い速度に設定すると、原稿Sを第1搬送部10と第2搬送部20の両方でニップした状態の時に原稿Sが撓んでしまう。このため、第1搬送部10の搬送速度は、第2搬送部20及び第3搬送部30の速度と同じがそれ以下の設定であればよい。本実施形態の場合、第1搬送部10の搬送速度は第2搬送部20及び第3搬送部30の搬送速度と同じとする。
【0050】
次に、図12を参照して画像読取装置Aの給紙・搬送制御の動作フローについて説明する。給紙・搬送制御が開始されると、制御部80は、例えば画像読取装置Aが接続された外部パソコンから画像読み取りの開始指示を受信する(ステップS11)。次に、制御部80は、原稿検知センサ90の検知結果に応じて、載置台1に原稿Sがあるか否かを判断する(ステップS12)。
【0051】
載置台1に原稿Sが無いと判断された場合(ステップS12:No)、制御部80は、原稿Sが無い旨のメッセージ等を外部パソコンや操作部83の表示パネル等に表示し(ステップS13)、給紙・搬送制御を終了する。載置台1に原稿Sがあると判断された場合(ステップS12:Yes)、制御部80は、近距離無線リーダーユニット130の検知結果に応じて、載置台1上の原稿SがICチップ付きパスポートか否かを判断する(ステップS14)。載置台1上の原稿がICチップ付きパスポートではないと判断された場合(ステップS14:No)、ステップS16に進む。
【0052】
載置台1上の原稿SがICチップ付きパスポートであると判断された場合(ステップS14:Yes)、制御部80は、パスポートのICチップから国籍情報を取得し、駆動部4を駆動させる(ステップS15,S16)。更に、制御部80は、伝達部5をONにすると共に、駆動部3を駆動する(ステップS17,S18)。すると、駆動部3からの駆動力によって駆動される給紙ローラ11及び分離ローラ12によって原稿Sが給送され、原稿Sの先端が媒体検出センサ50を通過する(ステップS19)。なお、この時の分離ニップN1におけるシートの搬送速度を搬送速度V1とする。本実施の形態では、第2搬送部20及び第3搬送部30の搬送速度も、分離ニップN1におけるシートの搬送速度V1に設定されている。
【0053】
次に、制御部80は、厚さ検知センサ123の検知結果に応じて、原稿Sの厚さが所定厚さ以上か否かを判断する(ステップS20)。原稿Sの厚さが所定厚さ未満の場合(ステップS20:No)、制御部80は、通常モードで画像読取装置Aを搬送制御する。すなわち、ステップS11~24は、通常モードにおける搬送制御に相当する。原稿Sの厚さが所定厚さ以上の場合(ステップS20:Yes)、制御部80は、パスポートモードで画像読取装置Aを搬送制御する。すなわち、ステップS11~S18,S25~S28は、パスポートモードにおける搬送制御に相当する。通常モードは、普通紙等の原稿Sの搬送に適した搬送モードであり、パスポートモードは、綴じ代部Sa(図16参照)を有する冊子状のパスポート等の原稿Sを開いた状態で搬送するのに適した搬送モードである。なお、ステップS14においてICカード付きパスポートであることを検知した場合に、ステップS20の判定を飛ばしてステップS25へ遷移しても良い。
【0054】
通常モード(ステップS11~S24)において、原稿Sの先端が媒体検出センサ60を通過すると(ステップS21)、制御部80は、駆動部3を停止する(ステップS22)。これにより、原稿Sは、第2搬送部20及び第3搬送部30によって搬送され、給紙ローラ11及び分離ローラ12によって構成される第1搬送部10は、原稿Sに従動回転する。このとき、原稿Sの先端を媒体検出センサ60が検知してから所定時間後に、画像読取ユニット70による画像の読み取りを開始する。
【0055】
そして、原稿Sの後端が媒体検出センサ60を通過すると(ステップS23)、所定時間後に画像読取ユニット70による画像の読み取りを終了すると共に、制御部80は、原稿検知センサ90の検知結果に基づいて載置台1上に原稿Sがあるか否かを判断する(ステップS24)。載置台1上に原稿Sがあると判断された場合(ステップS24:Yes)、ステップS18に戻る。載置台1上に原稿Sが無いと判断された場合(ステップS24:No)、ステップS29に進む。
【0056】
一方、パスポートモード(ステップS11~S18,S25~S28)において、原稿Sの先端が媒体検出センサ60を通過すると(ステップS25)、制御部80は、駆動部3を所定のパルス数だけ駆動後、駆動部3を停止する(ステップS26)。言い換えれば、制御部80は、媒体検出センサ60がシートの先端(例えばホルダ100の先端SL(図16参照))を検知したことに基づいて、駆動部3を停止するタイミングを判断する。この所定のパルス数とは、原稿Sであるパスポートの綴じ代部Sa(図16参照)が第3搬送部30の排出ニップN2を通過するタイミングまで原稿Sを搬送するのに必要な駆動部3の駆動パルス数である。すなわち、第3搬送部30のシート搬送速度に基づいて、媒体検出センサ60が給紙ローラ11で給送されたシートの先端を検知してから、所定時間後に給紙ローラ11への駆動部3からの駆動を切断する。なお、通常モード同様、原稿Sの先端を媒体検出センサ60が検知してから所定時間後に、画像読取ユニット70による画像の読み取りを開始する。
【0057】
本実施形態では、図16に示すように、ホルダ100に冊子状のパスポートを入れて搬送してもよい。ホルダ100に入った冊子状のパスポートを搬送する場合にも、パスポートの綴じ代部が最も搬送負荷が大きくなる。パスポートは、国ごとに冊子の大きさが違うため、ホルダ100の先端からパスポートの綴じ代部までの距離も国ごとに異なる。ホルダ100の搬送方向における長さや搬送方向に対する幅は、収容されるパスポート等の種類に合わせて予め所定の長さに定められている。
【0058】
例えば、日本国のパスポートを搬送する場合を考える。日本国のパスポートの場合、ホルダ100の先端からパスポートの綴じ代部Sa(図16参照)までの距離は88mmであり、本実施形態の画像読取装置Aにおける媒体検出センサ60から第3搬送部30の排出ニップN2までは41.8mmに設定されている。よって制御部80は、ホルダ100の先端が媒体検出センサ60を通過してからホルダ100を129.8mmだけ搬送した後、すなわち綴じ代部Saが排出ニップN2を通過し且つホルダ100が排出ニップN2によって挟持された状態で駆動部3を停止する。これにより、給紙ローラ11への駆動部3からの駆動が切断される。媒体検出センサ60によるホルダ100の先端の検知から駆動部3を停止するまでにホルダ100を搬送する距離、すなわち駆動部3を停止するタイミングは、近距離無線リーダーユニット130を用いて取得したパスポートの国籍情報から決定される。なお、ホルダ100の先端SLにのり代部などの原稿Sを内包しない部分が設けられている場合には、その搬送方向における長さの分だけ余分に上記の搬送量に加えてホルダ100を搬送してから駆動部3の駆動を停止することが好ましい。また、例えば媒体検出センサ60が光学式のセンサであって、ホルダ100が透明である場合には媒体検出センサ60によってはホルダ100が検知されないが、その場合でも媒体検出センサ60は原稿Sの先端を検知することとなるため、上述の搬送量だけホルダ100を搬送することで、パスポートの綴じ代部Saを排出ニップN2に到達させることができる。
【0059】
そして、原稿Sの後端(例えばホルダ100の後端ST(図16参照))が媒体検出センサ60を通過すると(ステップS27)、所定時間後に画像読取ユニット70による画像の読み取りを終了すると共に、制御部80は、原稿検知センサ90の検知結果に基づいて載置台1上に原稿Sがあるか否かを判断する(ステップS28)。載置台1上に原稿Sがあると判断された場合(ステップS28:Yes)、ステップS18に戻る。すなわち、制御部80は、媒体検出センサ60が原稿Sの後端を検知したことに基づいて、給紙ローラ11へ駆動部3からの駆動を伝達させる。載置台1上に原稿Sが無いと判断された場合(ステップS28:No)、ステップS29に進む。なお、ステップS28で載置台1上に原稿Sがあると判断された場合、ステップS14に戻るように構成しても良い。
【0060】
ステップS29では、制御部80は、駆動部3を停止すると共に、伝達部5をOFFにする(ステップS29)。次に、制御部80は、駆動部4を停止し(ステップS30)、給紙・搬送制御を終了する。ところで、上述した特許文献1の厚紙モードは、通常モードに比べて重送等の搬送エラーが発生しやすいという問題がある。
【0061】
その搬送エラーについて図13図15を参照して説明する。理想的な原稿搬送では、図13に示すように、n枚目の原稿dを給紙している時、次の原稿である原稿dn+1の先端は給紙ローラ11と分離ローラ12とによるローラニップの略中心の点Pに停止している。しかし、紙同士の密着力が強い原稿束を給紙すると、原稿dを給紙している時、図14に示すように、原稿dn+1の先端は、点Pより下流側に入ったところで停止している。これは原稿dn+1が原稿dに密着していて、原稿dに連れられて入り込むこと(以下、連れ入り)が原因である。この連れ入りの位置から原稿dn+1の給紙を始めると紙間が短くなり、所定の紙間より小さくなった場合、紙詰まりエラーとして搬送が停止される。特許文献1の厚紙モードで搬送を行った場合、この連れ入りの位置から原稿dn+1の給紙を始める時、図15のように、原稿dn+1の先端部は原稿dの後端部と重なっている。この原稿の重なった部分が重送検出センサ40を通過した場合重送エラーとなる。
【0062】
しかし、通常モードでは、原稿の後端が媒体検出センサ60を通過してから停止していた給紙ローラ11を回転して次の原稿を給紙する。このため、上記のような原稿dの後端部と原稿dn+1の先端部が重なった状態で原稿dn+1の給紙が始まることはなく、充分紙間を設けられるので重送エラーや紙詰まりエラーが厚紙モードに比べて少ない。また、通常モードでは、原稿dの後端が点Pを通過した時、分離ローラ12のゴムの歪みや分離ローラ12のトルクリミッタにチャージされた力が解放され、その力により原稿dn+1以降の原稿束が上流方向に戻される。この時、連れ入りした原稿も戻される。これによって、紙詰まりエラーや重送エラーが厚紙モードに比べて少ない。
【0063】
一方、本実施形態のパスポートモードは、原稿dの後端が点Pを通過するタイミングでは給紙ローラ11の回転が止まっており、原稿dの後端が媒体検出センサ60を通過したら給紙ローラ11が回転して次の原稿を給紙する。そして、上記の通常モードと同様に、原稿dの後端部と原稿dn+1の先端部が重なった状態で原稿dn+1の給紙が始まることはなく、充分に紙間を設けられるので特許文献1の厚紙モードに比べて、重送エラーや紙詰まりエラーが少ない。そのため、パスポートを安定的に連続して搬送できる。
【0064】
ホルダ100は、それら冊子を搬送する時の紙の捲れ・折れを防止するためのものであり、図16のように冊子を見開き状態にしてホルダ100に収容させる。パスポートを入れたホルダ100等の厚い原稿は、原稿の先端が媒体検出センサ60に掛かっても給紙ローラ11の駆動を継続されることにより、搬送する力が低下しないため、安定して搬送される。
【0065】
以上より、本実施の形態では、制御部80は、給紙された原稿の厚さを検知して、所定の厚さ未満であることを判定した場合、通常モードで搬送を行い、所定の厚さ以上であることを判定した場合、搬送モードとしてのパスポートモードで搬送を行う。パスポートモードにおいては、例えばホルダ100に収容された見開き状態のパスポートの綴じ代部Saが排出ニップN2を通過し且つホルダ100が排出ニップN2によって挟持された状態で駆動部3が停止され、給紙ローラ11への駆動が切断される。
【0066】
よって、特に厚みがあって搬送負荷が大きくなる綴じ代部Saが排出ニップN2を通過するまでは、給紙ローラ11が駆動部3によって駆動されており、第2搬送部20及び第3搬送部30によるホルダ100の搬送を給紙ローラ11がアシストする。このため、第2搬送部20及び第3搬送部30とホルダ100との間のスリップや、駆動部4の脱調が抑制され、ホルダ100がジャムしてしまうといった搬送不良を低減できる。
【0067】
また、ホルダ100の後端STが媒体検出センサ60を通過したことに基づいて、駆動部3の駆動が再開され、後続の原稿(例えば他のホルダ)が給送される。このように、パスポートモードでは、駆動部3が駆動され続けるわけではなく、駆動部3が停止するタイミングがあるため駆動部3の昇温を抑え、仕様のモータ特性を確実に得ることができ、かつ駆動部3を長寿命化できる。よって、駆動部3の昇温を抑えると共に、安定したシート搬送が可能なシート搬送装置及び画像読取装置Aを提供することができる。
【0068】
なお、シート搬送装置は、画像読取装置Aから画像読取ユニット70を省いた部分から構成され、言い換えれば、画像読取装置Aは、シート搬送装置と、シート搬送装置によって搬送されるシートを読み取る画像読取ユニット70と、を有する。
【0069】
また、本実施の形態では、ホルダ100に収容された綴じ代部Saを有するパスポートを搬送する場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、シート搬送方向D1における異なる位置において、第1の厚さを有する第1部分(例えば綴じ代部Sa以外の部分)と、第1の厚さよりも厚い第2の厚さを有する第2部分(例えば綴じ代部Sa)と、を有するシートを搬送する場合を想定する。
【0070】
この場合、給紙ローラ11を駆動させることによってシートを給送し、該シートの第2部分が排出ニップN2を通過し且つ該シートが排出ニップN2によって挟持された状態で駆動部3を停止する搬送モードを実行してもよい。このように、ホルダ100に開いた状態のパスポートを収容したものを搬送する場合に限らず、例えば、ホルダ100に収容されていない冊子状の開かれたパスポートを搬送する際に、本発明の搬送モードを適用してもよい。また、パスポート以外の開かれた状態の冊子や、上記第2部分として折られて重なった状態の蓋部を有する封筒を搬送する際に、本発明の搬送モードを適用してもよい。
【0071】
また、給紙された原稿の厚さを検知して、所定の厚さ以上であることを判定した場合、搬送モードとしてのパスポートモードで搬送を行うと説明したが、これに限られず、パスポートモードや厚紙モードなどが選択されたことに基づいて図12におけるステップS25以降のフローを実行するように構成しても良い。その場合、パスポートモードや厚紙モードなどが選択されなかった場合にステップS21以降の制御を実行すれば良い。パスポートモードや厚紙モードの選択は、画像読取装置Aに設けられた操作部や外部パソコンからユーザによって選択入力されても良いし、何らかの条件に基づいて制御部80などが自動的に実行するかどうかの判定を行っても良い(図12のステップS20における原稿Sの厚さの判定はその一例である)。
【0072】
<第2の実施形態>
次いで、本発明の第2の実施形態について説明するが、第2の実施形態は、第1の実施形態のパスポートモードにおいて、駆動部3を停止させるタイミングのみが異なる。このため、第1の実施の形態と同様の構成については、図示および説明を省略、又は図に同一符号を付して説明する。
【0073】
図17は、第2の実施形態に係る給紙・搬送制御を示すフローチャートである。図17は、上述した図12に対して、図12のステップS26をステップS40に代えたのみである。よって、以下では、図17のステップS40を主に説明する。
【0074】
パスポートモード(ステップS11~S18,S25,S40,S27,S28)において、原稿の先端が媒体検出センサ60を通過すると(ステップS25)、制御部80は、駆動部3を所定のパルス数だけ駆動後、駆動部3を停止する(ステップS40)。この所定のパルス数とは、原稿であるホルダ100の後端ST(図16参照)が第1搬送部10の分離ニップN1を通過するタイミングである。
【0075】
そして、原稿の後端が媒体検出センサ60を通過すると(ステップS27)、制御部80は、原稿検知センサ90の検知結果に基づいて載置台1上に原稿があるか否かを判断する(ステップS28)。載置台1上に原稿があると判断された場合(ステップS28:Yes)、ステップS18に戻る。載置台1上に原稿が無いと判断された場合(ステップS28:No)、ステップS29に進む。
【0076】
以上より、本実施の形態では、制御部80は、給紙された原稿の厚さを検知して、所定の厚さ未満であることを判定した場合、通常モードで搬送を行い、所定の厚さ以上であることを判定した場合、搬送モードとしてのパスポートモードで搬送を行う。パスポートモードにおいては、ホルダ100の後端STが分離ニップN1を通過し且つホルダ100が排出ニップN2によって挟持された状態で駆動部3が停止され、給紙ローラ11への駆動が切断される。
【0077】
よって、特に厚みがあって搬送負荷が大きいホルダ100の後端STを分離ニップN1が通過するまでは、給紙ローラ11が駆動部3によって駆動されており、第2搬送部20及び第3搬送部30によるホルダ100の搬送を給紙ローラ11がアシストする。このため、第2搬送部20及び第3搬送部30とホルダ100との間のスリップや、駆動部4の脱調が抑制され、ホルダ100がジャムしてしまうといった搬送不良を低減できる。
【0078】
また、ホルダ100の後端STが媒体検出センサ60を通過したことに基づいて、駆動部3の駆動が再開され、後続の原稿(例えば他のホルダ)が給送される。このように、パスポートモードでは、駆動部3が駆動され続けるわけではなく、駆動部3が停止するタイミングがあるため駆動部3の昇温を抑え、仕様のモータ特性を確実に得ることができ、かつ駆動部3を長寿命化できる。よって、駆動部3の昇温を抑えると共に、安定したシート搬送が可能なシート搬送装置及び画像読取装置Aを提供することができる。
【0079】
<第3の実施形態>
以下、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態においては、第1の実施形態と同等の構成を有しており、以下ではその相違点についてのみ説明する。
【0080】
なお、第1の実施形態においては、パスポートなどの厚い冊子状の原稿の搬送において、充分な搬送力が得られ、画像の伸びやブレなく原稿を安定して搬送することを目的とした発明を説明した。それに対し本実施形態は、載置台1に載置された原稿の先端が原稿ストッパー15に当接した原稿の積載状態において、載置台1に積載された原稿の重みによって原稿ストッパー15が搬送路から退避できない状況における発明である。
【0081】
従来、載置台に積載したシートを1枚ずつ給紙するシート給送装置では、シート束が載置台より奥に押し込まれてセットされないよう、シート束をせき止めるための原稿ストッパー15のようなストッパーが設けられている。このようなシート給送装置では、給紙動作開始と同時にストッパーが退避するようになっているが、特にシート束が強く押し込まれたときやシート束の端面が粗いときは、ストッパーが退避せずに給紙動作ができなくなる場合がある。
【0082】
そのため、給紙動作ができなかった場合、給紙部にある給紙ローラ11の回転を停止、または低速回転し、ストッパーにかかる負荷を減らすことでシートの給紙動作を続けられるようにする技術が従来提案されている。
【0083】
しかしながら給紙ローラ11の回転を停止、または給紙ローラ11を低速回転することでストッパーにかかる負荷を低減しているが、シートの種類や状態によっては負荷を十分に低減できず、ストッパーが退避しないことによる給紙不良が発生することがある。
【0084】
それに対し、本実施形態においては、
相互に向き合って配置される上部ユニット及び下部ユニットの間に形成される搬送路と、
前記下部ユニットの上面から前記搬送路に部分的に露出した部分でシートを給紙する給紙ローラと、
前記給紙ローラの露出面と交差する方向に移動した閉状態でシート束の先端部を突き当てることによってシート束の前記搬送路への進入を停止するストッパーと、
少なくとも前記給紙ローラ及び前記ストッパーを駆動する駆動部と、
シートが前記給紙ローラを通過したことを検出する検出手段と、
前記給紙ローラがシートの給紙を開始してから前記検出手段によりシートが検出されるまでの時間が所定時間を超えたとき、シートの給紙を停止させて再度給紙を開始するリトライ制御を実行する制御手段を有するシート給送装置において、
前記制御手段は、
前記リトライ制御を実行したリトライ回数を計測するリトライ回数計測手段を有し、
前記リトライ回数計測手段で計測されたリトライ回数に基づいて、前記リトライ制御で給紙を停止させる時間を変更する、ことを特徴とする。
【0085】
この構成によれば、給紙ローラの回転停止時間を制御することで、ばねで退避する方向に付勢されているストッパーが退避する方向に移動しやすくする。その結果、ストッパーにかかる負荷を十分に低減することができるため、給紙不良の発生回数を低減し、無駄なジャム処理を不要としたシート給送装置を提供することが可能になる。
【0086】
以下、本実施形態に係る画像読取装置A3について詳細に説明する。図18に示すように、第1搬送部10は、相互に向き合って配置される上側の搬送路を構成する上部ユニット103と下側の搬送路を構成する下部ユニット104から成る。上部ユニット103と下部ユニット104に挟まれた空間(隙間)に原稿Sの搬送路RTが形成される。搬送路RTは、図中右上方から左下方に傾斜している。
【0087】
上部ユニット103は、給紙ローラ11に対向配置される分離ローラ12、原稿ストッパー15、ピックアップユニットとして例示されるピックアップコロ8及びピックアップアーム9を有する。下部ユニット104は載置台1、給紙ローラ11を有する。
【0088】
原稿ストッパー15は、第1搬送部10の通路を開閉する機能を有し、閉状態で載置台1に載置された原稿Sの先端部を給紙ローラ11と分離ローラ12の押圧面(分離ニップN1)に入る直前でせき止める。ピックアップコロ8は、ピックアップアーム9の先端部に回転自在に軸支されると共に、原稿Sに対して出没可能に支持されており、原稿ストッパー15による抑止が解かれた原稿Sを最上層から給紙ローラ11側に押圧する。
【0089】
図19に示すように、下部ユニット104にはモータ等の駆動部3が設けられている。駆動部3はタイミングベルト6と歯車14dを介して給紙ローラ11をシート搬送方向D1に回転駆動する。同時に、駆動部3は、タイミングベルト6と歯車列15f~15jを介して分離ローラ12を回転駆動する。ここで、給紙ローラ11をシート搬送方向D1に回転駆動する方向を正転、その反対方向を逆転とする。
【0090】
図20は、図19とは異なる断面を示しており、図20に示すように、下部ユニット104には更にモータ等の駆動部4が設けられている。駆動部4はタイミングベルト16と歯車17a,17bを介して駆動ローラ21,31をシート搬送方向D1に回転駆動する。ここで、駆動部4をシート搬送方向D1に回転駆動する方向を正転、その反対方向を逆転とする。同時に、歯車17a,18を介してピックアップ駆動ユニット106へ動力が伝達される。ピックアップ駆動ユニット106は、図21に示すように、歯車18と噛み合う歯車19と、ワンウェイクラッチ23と、ワンウェイクラッチ23から延びる軸24と、軸24の端部に取り付けられたカム部材25とを備える。
【0091】
図22に示すように、駆動部4を逆転させて、歯車18を介してピックアップ駆動ユニット106の歯車19が矢印w1方向に回転する場合、ワンウェイクラッチ23がロック状態となって軸24を介してカム部材25を回転させる。すると、カム部材25の作用により原稿ストッパー15とピックアップアーム9がそれぞれ矢印w2,w3とは反対方向に連動する。そして、原稿ストッパー15は搬送路RTを閉じた状態(閉状態)、ピックアップアーム9は給紙ローラ11から退避した状態(退避状態)となる。
【0092】
一方、駆動部4を正転させて、歯車18を介してピックアップ駆動ユニット106の歯車19が矢印w1とは反対方向に回転する場合には、ワンウェイクラッチ23がアンロック状態となって軸24からカム部材25へ動力が伝達されない。これにより、原稿ストッパー15とピックアップアーム9は、ばね26、27の付勢力によりそれぞれ矢印w2,w3の方向に移動する。そして、図20のように原稿ストッパー15は第1搬送部10の通路を開いた状態(開状態)、ピックアップアーム9は給紙ローラ11に圧接した状態(圧接状態)となる。
【0093】
なお、本実施形態において、図11におけるアクチュエータ86には、上述した以外にも、ピックアップアーム9等が含まれる。
【0094】
[給紙機構の動作フロー]
次に、図1図19図20図23を参照して、本実施形態に係る画像読取装置A3の給紙動作について説明する。
【0095】
図23は、本実施形態に係る画像読取装置A3の給紙動作を示すフローチャートである。図19に示す原稿Sの給紙前の待機状態では、原稿ストッパー15は搬送路RTを閉じた状態(閉状態)、ピックアップアーム9は給紙ローラ11から退避した状態で保持される。ユーザは原稿Sの先端部が原稿ストッパー15に突き当たるようにして原稿Sを載置台1にセットする。
【0096】
ここで、図23を参照して、図19の状態からの給紙動作について説明する。ステップS101では、操作部83、または通信部84からの給紙動作開始の要求を検出する。ステップS102では、制御部80は原稿検知センサ90の出力によって載置台1に積載された原稿Sの有無を検知する。
【0097】
原稿検知センサ90によって原稿Sが検出されない場合は、ステップS103で制御部80は、原稿Sが載置されていないことを知らせるメッセージを表示パネル93の表示部94に表示させる。これにより、ユーザに給紙エラーを報知し、給紙動作を行うことなく処理を終了させる。原稿検知センサ90によって原稿Sが検出された場合は、ステップS105で制御部80はリトライ設定カウンタに任意の回数が設定されていることを検出する。
【0098】
ステップS105で、制御部80はリトライ設定カウンタに任意の回数が設定されていない、もしくは0が設定されていることを検出した場合は、ステップS201からステップS206のリトライ給紙なしの給紙動作を行う。すなわち、ステップS201で給紙ローラ11を回転して原稿Sの給紙を開始する。原稿ストッパー15が第1搬送部10の通路を開いた状態(開状態)になると、ステップS202で、原稿検知センサ90よりシート搬送方向下流に位置する媒体検出センサ50が原稿Sの先端を検知する。そして、ステップS203で、給紙ローラ11の回転を停止し、ステップS204で給紙動作が正常終了したと判断される。一方、原稿ストッパー15が搬送路RTを閉じた状態(閉状態)から開いた状態(開状態)にならない場合、ステップS202で、原稿検知センサ90によって原稿Sの先端が検出されず、ステップS205で遅延ジャム検出タイマが終了すると、制御部80は、ステップS206で給紙エラーを知らせるメッセージを表示パネル93の表示部94に表示させ、給紙エラーをユーザに報知し、給紙動作を終了する。
【0099】
ステップS105で、リトライ設定カウンタに任意の回数が設定されていることを検出した場合、ステップS106で給紙実行回数nを0に設定する。
【0100】
リトライ設定カウンタは、リトライ動作を何回行うか予め設定する値を格納するカウンタである。リトライ設定カウンタの設定回数は、2回、または原稿Sの状態を考慮して、それ以上の任意の値を設定することができる。
【0101】
ステップS107で、制御部80は給紙動作を開始させる。このとき、制御部80は駆動部3を正転させて給紙ローラ11を回転させてから、または同時に、駆動部4を正転させて駆動ローラ21,31を回転する処理を開始する。なお、駆動部3を駆動した時点では原稿ストッパー15に原稿Sの先端が突き当たった状態となり、載置台1上の原稿の逆捌き状態を矯正し、最下部の原稿を先に給紙しやすくすることができる。
【0102】
ステップS108で遅延ジャムを検出するためのタイマをスタートさせる。ステップS107で、駆動部3、4の正転処理が開始すると、ステップS109で給紙ローラ11が回転し、原稿Sが給紙される。図20のように原稿ストッパー15は第1搬送部10の通路を開いた状態(開状態)になる。このとき、原稿Sが強く押し込まれたときや原稿Sの端面が粗いと、原稿ストッパー15は原稿Sによる摩擦などの力を受けて搬送路を開くことができずに搬送路RTを閉じた状態(閉状態)のままとなることがある。
【0103】
原稿ストッパー15が第1搬送部10の通路を開いた状態(開状態)になると、ステップS110で、原稿検知センサ90よりシート搬送方向下流に位置する媒体検出センサ50が原稿Sの先端を検知する。そして、ステップS111で、給紙ローラ11の回転を停止し、ステップS112で給紙動作が正常終了したと判断される。
【0104】
原稿ストッパー15が搬送路RTを閉じた状態(閉状態)から開いた状態(開状態)にならない場合、ステップS110で、原稿検知センサ90によって原稿Sの先端が検出されず、ステップS113で遅延ジャム検出タイマが終了する。ステップS113で遅延検出タイマが終了するまでステップS110での原稿Sの検出を行う。ステップS113で遅延ジャム検出タイマが終了すると、ステップS114で給紙実行回数nをインクリメントし、給紙実行回数をカウントする。
【0105】
ステップS115で、リトライ設定カウンタと給紙実行回数カウンタの回数を比較する。ステップS115の結果、給紙実行回数nがリトライ設定カウンタの値以下であるとき、ステップS118で、給紙実行回数に基づき、給紙停止時間を設定する。
【0106】
給紙停止時間は、給紙動作が正常終了しない場合に再度給紙動作する前に給紙動作を一時的に停止する時間のことである。給紙停止時間中は、制御部80は駆動部3を停止し、給紙ローラ11の正転を停止させる。
【0107】
ステップS119で、ステップS118で設定された時間だけ給紙を停止する。原稿ストッパー15が搬送路RTを閉じた状態(閉状態)から移動しないとき、給紙ローラ11が正転すると原稿Sはシート搬送方向D1に進もうとするため、原稿ストッパー15に負荷がかかる。その結果、原稿ストッパー15は搬送路RTを開いた状態(開状態)へ移動しにくくなっている。給紙ローラ11の正転を停止させると、原稿ストッパー15にかかる負荷が減り、搬送路RTを開いた状態(開状態)に移動しやすくなる。この時点で原稿ストッパー15は駆動部4による閉状態への付勢は解除されているため、開状態へ移動し易い状態である。
【0108】
ステップS119の給紙停止時間は、給紙実行回数が多いほど長くなるように設定する。給紙停止時間を長くすると、原稿ストッパー15が退避するまでにかかる時間を長く設けることができるため、原稿ストッパー15が退避している途中で、遅延ジャム検出タイマが終了し、遅延ジャムと判断されることを防ぐことができる。
【0109】
ステップS119の後、ステップS107からステップS114までに行った給紙動作を再度行う。ステップS107からステップS114の給紙動作を繰り返し、ステップS115で給紙実行回数カウンタ≦リトライ設定カウンタの条件が満たされなくなった時、制御部80は遅延ジャムと判断する。そして、制御部80は、ステップS116で、給紙エラーを知らせるメッセージを表示パネル93の表示部94に表示させ、給紙エラーをユーザに報知し、給紙動作を終了する。
【0110】
なお、ステップS119では、給紙ローラ11の正転を停止することで原稿ストッパー15にかかる負荷を減らしているが、給紙ローラ11の正転を逆転させてもよい。給紙ローラ11を逆転させると、原稿ストッパー15にかかる負荷が短時間で減らせるため、給紙ローラ11を停止するよりも短い時間で搬送路RTを開いた状態(開状態)にすることができる。
【0111】
上述したように本実施形態によれば、給紙実行回数をカウントし、給紙実行回数が多くなるにつれ、給紙停止時間が長くなるため、繰り返すにつれて原稿ストッパー15の退避を成功する確率が高くなる。従来に比べ、給紙不良の発生回数が減るため、無駄なジャム処理が不要となり、ユーザビリティを向上することができる。
【0112】
なお、第3の実施形態においては、駆動部3、4を用いて構成したが、単一の駆動部を用いても良く、その場合には、駆動部と給紙ローラ11と原稿ストッパー15の動きが連動することとなる。
【0113】
<その他の実施形態>
また、第1の実施形態では、綴じ代部Saが排出ニップN2を通過したタイミングで、駆動部3を停止していたが、これに限定されない。例えば、ホルダ100を排出ニップN2が挟持している状態であれば、綴じ代部Saが排出ニップN2を通過してから所定時間後に駆動部3を停止してもよい。
【0114】
また、第2の実施形態では、ホルダ100の後端STが分離ニップN1を通過したタイミングで、駆動部3を停止していたが、これに限定されない。例えば、ホルダ100を排出ニップN2が挟持している状態であれば、後端STが分離ニップN1を通過してから所定時間後に駆動部3を停止してもよい。
【0115】
なお、既述の何れの形態においても、給紙ローラ11のよって原稿を給送していたが、これに限定されない。例えば、シート搬送方向D1において給紙ローラ11の上流にピックアップローラを配置し、該ピックアップローラによってシートを給送してもよい。また、給紙ローラ11及び分離ローラ12の一方及び両方は、ローラに限らず、ベルト等の他の回転体であってもよい。
【0116】
また、既述の何れの形態においても、第2搬送部20及び第3搬送部30におけるシートの搬送速度を、分離ニップN1におけるシートの搬送速度と同じ搬送速度V1に設定したが、これに限定されない。例えば、第2搬送部20及び第3搬送部30におけるシートの搬送速度を、搬送速度V1よりも速い搬送速度に設定してもよい。
【0117】
また、第1及び第2の実施形態では、駆動部3を停止することで給紙ローラ11への駆動部3からの駆動を切断していたが、これに限定されない。例えば、駆動部3を駆動した状態で、電磁クラッチ等からなる伝達部5によって給紙ローラ11への駆動を切断してもよい。また、駆動部3及び駆動部4の2つのモータではなく、1つのモータによって第1搬送部10、第2搬送部20及び第3搬送部30を駆動するように構成してもよい。
【0118】
また、既述のいずれの形態においても、画像読取装置を用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、インクジェット方式や電子写真方式の画像形成装置や、画像形成装置に接続される給送デッキやオプションのフィーダにも本発明を適用することが可能である。
【0119】
また、既述のいずれの形態においても、媒体検出センサ60を原稿の先端又は後端が通過するタイミングに基づいて、駆動部3の駆動又は停止のタイミングを制御していたが、これに限定されない。例えば、媒体検出センサ60の検知結果に基づかずに、外部パソコンからの画像読み取りの開始指示(給送開始指示)に基づいて、駆動部3の駆動又は停止のタイミングを制御してもよい。
【0120】
本発明は上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0121】
1:積載部(載置台)/3:駆動源(駆動部)/11:給送回転体(給紙ローラ)/12:分離回転体(分離ローラ)/30:排出回転体対(第3搬送部)/60:検知部(媒体検出センサ)/70:読取部(読取ユニット)/83:操作部/100:ホルダ/123:厚さ検知部(厚さ検知センサ)/130:取得部(近距離無線リーダーユニット)/A:画像読取装置/D1:シート搬送方向/N1:分離ニップ/N2:排出ニップ/Sa:綴じ代部/V1:搬送速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24