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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】橋梁用伸縮装置
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/06 20060101AFI20240904BHJP
   E01C 11/02 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
E01D19/06
E01C11/02 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020198703
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086601
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-02-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】福山 敦士
(72)【発明者】
【氏名】川西 康之
【審査官】小林 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】実公昭48-020923(JP,Y1)
【文献】特開2017-179865(JP,A)
【文献】特開平11-264106(JP,A)
【文献】特開2012-012766(JP,A)
【文献】特開2011-012447(JP,A)
【文献】実開昭56-138906(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00-17/00
E01D 1/00-24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向位置する橋梁構造物の夫々に対応するよう固定される支持部と、前記支持部の間を繋ぐように設けられて当該支持部の間隔の変化に応じて伸縮可能なゴムシール材とを有する橋梁用伸縮装置であって、
前記ゴムシール材は、
前記支持部の夫々に対応するよう固定されて、固定された支持部から対向する支持部側に延在する第1のシール部と、
前記第1のシール部の延出端の間を繋ぐように設けられて当該第1のシール部より下方に延在する折り返し形状の第2のシール部と、を有し、
前記第1のシール部は、前記支持部に取り付けられる基端部側の剛性より、前記第2のシール部に接続する延出端側の剛性が低下するよう、当該第1のシール部の下面側にのみ溝または非貫通状の孔が複数形成されていることを特徴とする橋梁用伸縮装置。
【請求項2】
対向位置する橋梁構造物の夫々に対応するよう固定される支持部と、前記支持部の間を繋ぐように設けられて当該支持部の間隔の変化に応じて伸縮可能なゴムシール材とを有する橋梁用伸縮装置であって、
前記ゴムシール材は、
前記支持部の夫々に対応するよう固定されて、固定された支持部から対向する支持部側に延在する第1のシール部と、
前記第1のシール部の延出端の間を繋ぐように設けられて当該第1のシール部より下方に延在する折り返し形状の第2のシール部と、を有し、
前記第1のシール部は、前記支持部に取り付けられる基端部側の剛性より、前記第2のシール部に接続する延出端側の剛性が低下するよう、当該第1のシール部の前記基端部側から前記延出端側への延在方向に離間して非貫通状の孔が複数形成されていることを特徴とする橋梁用伸縮装置。
【請求項3】
対向位置する橋梁構造物の夫々に対応するよう固定される支持部と、前記支持部の間を繋ぐように設けられて当該支持部の間隔の変化に応じて伸縮可能なゴムシール材とを有する橋梁用伸縮装置であって、
前記ゴムシール材は、
前記支持部の夫々に対応するよう固定されて、固定された支持部から対向する支持部側に延在する第1のシール部と、
前記第1のシール部の延出端の間を繋ぐように設けられて当該第1のシール部より下方に延在する折り返し形状の第2のシール部と、を有し、
前記第1のシール部は、前記支持部に取り付けられる基端部側の剛性より、前記第2のシール部に接続する延出端側の剛性が低下するよう、当該第1のシール部の前記基端部側から前記延出端側への延在方向に離間して溝または非貫通状の孔が複数形成されていると共に、前記溝または非貫通状の孔は、前記第1のシール部の前記基端部側から前記延出端側に向かうにつれて連続的または段階的に深さが増すように形成されていることを特徴とする橋梁用伸縮装置。
【請求項4】
対向位置する橋梁構造物の夫々に対応するよう固定される支持部と、前記支持部の間を繋ぐように設けられて当該支持部の間隔の変化に応じて伸縮可能なゴムシール材とを有する橋梁用伸縮装置であって、
前記ゴムシール材は、
前記支持部の夫々に対応するよう固定されて、固定された支持部から対向する支持部側に延在する第1のシール部と、
前記第1のシール部の延出端の間を繋ぐように設けられて当該第1のシール部より下方に延在する折り返し形状の第2のシール部と、を有し、
前記第1のシール部は、前記支持部に取り付けられる基端部側の剛性より、前記第2のシール部に接続する延出端側の剛性が低下するよう、当該第1のシール部の前記基端部側から前記延出端側への延在方向に離間して溝が複数形成されていると共に、前記第1のシール部の前記基端部側から前記延出端側に向かうにつれて前記溝を形成する間隔を小さくするように形成されていることを特徴とする橋梁用伸縮装置。
【請求項5】
対向位置する橋梁構造物の夫々に対応するよう固定される支持部と、前記支持部の間を繋ぐように設けられて当該支持部の間隔の変化に応じて伸縮可能なゴムシール材とを有する橋梁用伸縮装置であって、
前記ゴムシール材は、
前記支持部の夫々に対応するよう固定されて、固定された支持部から対向する支持部側に延在する第1のシール部と、
前記第1のシール部の延出端の間を繋ぐように設けられて当該第1のシール部より下方に延在する折り返し形状の第2のシール部と、を有し、
前記第1のシール部は、前記支持部に取り付けられる基端部側の剛性より、前記第2のシール部に接続する延出端側の剛性が低下するよう、当該第1のシール部の前記基端部側から前記延出端側への延在方向に離間して溝が複数形成されていると共に、前記第1のシール部の前記基端部側から前記延出端側に向かうにつれて前記溝の幅を広くするように形成されていることを特徴とする橋梁用伸縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路橋等の継目部に設置される橋梁用伸縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路橋等の橋梁は、橋脚や橋台などの下部構造物の上部に、床版や橋桁などを有する上部構造物が掛け渡されて、橋梁の端側で取り付け道路に接続している。このような橋梁の上部構造物は、床版などの交通荷重によるたわみや温度変化に伴う伸縮等により生じる動きを吸収するために、床版と道路との継目部や床版同士の継目部に橋梁用伸縮装置(例えば、特許文献1参照)を設置している。特許文献1に開示の橋梁用伸縮装置は、床版や道路に接続して所定間隔で離間する一対の支持部と、両支持部の間に架設するように接着されたゴムシール材とを有し、床版や道路の伸縮を一対の支持部の隙間(遊間)により許容すると共に、遊間から雨水や砂石等が落下するのをゴムシール材によって防いでいる。
【0003】
図7は、特許文献1に開示の橋梁用伸縮装置の要部を概略的に示すものであって、図7(a)に示すように、ゴムシール材31は、一方の支持部32に接続されて他方の支持部32に向けて延在する一対の張出し部34,34と、一対の張出し部34,34の延出端間に設けられて略U字状に垂下する伸縮部36とを有し、一対の支持部32,32の遊間の変化に追従して伸縮部36が変形するよう構成されている。このような橋梁用伸縮装置は、図7(b)、図7(c)に示すように、支持部32,32間の遊間が狭くなった場合に、一対の張出し部34,34の延出端同士が当接するように伸縮部36が変形することで、遊間の幅の変化を吸収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-12766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ゴムシール材は、橋梁の上面に暴露するよう設けられていることから、風雨により運ばれた砂や小石、或いは走行する車両等から落下した金属やプラスチック片などの落下物など、様々な物が経時的に堆積する。このような堆積物は、走行する車両等との接触によりゴムシール材に対して局所的過大な負荷を与え、ゴムシール材の亀裂や擦過痕といった劣化を引き起こす原因となることから、ゴムシール材上に堆積物が極力堆積し難くすることが望まれる。しかしながら、図7(c)に示すように、夏期などの支持部32,32の遊間が極端に狭くなるような場合は、張出し部34,34が当接した当接部位38が張出し部34,34の長さに応じた撓み量に応じて下がり、凹状の大きな空間Sが形成され、多量の堆積物が堆積することに繋がる問題がある。
【0006】
すなわち本発明は、ゴムシール材上に堆積物が堆積し難くすることができる橋梁用伸縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の第1の発明は、
対向位置する橋梁構造物の夫々に対応するよう固定される支持部と、前記支持部の間を繋ぐように設けられて当該支持部の間隔の変化に応じて伸縮可能なゴムシール材とを有する橋梁用伸縮装置であって、
前記ゴムシール材は、
前記支持部の夫々に対応するよう固定されて、固定された支持部から対向する支持部側に延在する第1のシール部と、
前記第1のシール部の延出端の間を繋ぐように設けられて当該第1のシール部より下方に延在する折り返し形状の第2のシール部と、を有し、
前記第1のシール部は、前記支持部に取り付けられる基端部側の剛性より、前記第2のシール部に接続する延出端側の剛性が低下するよう形成されていることを要旨とする。
このように、第1のシール部は、基端部側の剛性より延出端側の剛性が低下するよう形成されているので、支持部の間隔が縮まる場合に、両第1のシール部における剛性の低い延出端同士が当接すると、延出端側が折れ曲がるように変形することで、延出端同士の当接部位の最上位の位置が大きく下がるのを抑えることができる。すなわち、第1のシール部の上方における堆積物が堆積可能な空間を小さく抑えることができ、第1のシール部上に多量の堆積物が堆積することに起因してゴムシール材が劣化するのを抑制することができる。
【0008】
第2の発明は、
前記第1のシール部は、前記基端部側から前記延出端側に向かうにつれて連続的または段階的に剛性が低下するよう形成されていることを要旨とする。
このように、第1のシール部は、延出端側から基端部側に連続的または段階的に剛性が低下するよう形成されているので、支持部の間隔が縮まる場合に、延出端同士が当接した第1のシール部が延出端側から基端部側に順に円滑に折れ曲がる。
【0009】
第3の発明は、
前記第1のシール部は、当該第1のシール部の前記基端部側から前記延出端側への延在方向に離間して溝または非貫通状の孔が複数形成されていることを要旨とする。
このように、第1のシール部に、溝や非貫通状の孔を形成する簡単な構成によって、第1のシール部の剛性を、基端部側より延出端側を低下させることができる。
【0010】
第4の発明は、
前記溝または非貫通状の孔は、前記第1のシール部の前記基端部側から前記延出端側に向かうにつれて連続的または段階的に深さが増すように形成されていることを要旨とする。
このように、溝や非貫通状の孔の深さを変えることで、第1のシール部の剛性差を顕在化させることができ、第1のシール部の上方に形成される空間をより小さくすることができる。
【0011】
第5の発明は、
前記第1のシール部は、前記基端部側から前記延出端側に向かうにつれて連続的または段階的に厚みが薄くなるよう形成されていることを要旨とする。
このように、第1のシール部の厚みを変化させる簡単な構成によって、第1のシール部の剛性を変化させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る橋梁用伸縮装置によれば、ゴムシール材上に堆積可能な堆積物の量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1に係る橋梁用伸縮装置を示す概略平面図である。
図2図1のA-A線断面図であって、(a)は隙間(遊間)が縮む前の状態を示し、(b)は隙間(遊間)が縮んで第1のシール部の延出端同士が当接した状態で一部を拡大して示し、(c)は(b)の状態から更に隙間(遊間)が縮んだ状態で一部を拡大して示す。
図3】実施例2に係る橋梁用伸縮装置を示す概略縦断面図である。
図4】実施例3に係る橋梁用伸縮装置を示す概略縦断面図である。
図5】各実施例および比較例の隙間(遊間)の変化に応じた空間の断面積の変化を示すグラフである。
図6】各実施例および比較例の隙間(遊間)の変化に応じた当接部位の最上位の位置(沈み深さ)の変化を示すグラフである。
図7】従来技術に係る橋梁用伸縮装置において、一対の支持部の遊間の変化に追従してゴムシール材が変形する状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る橋梁用伸縮装置につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例1】
【0015】
実施例1の橋梁用伸縮装置は、橋梁を構成する橋梁構造物である床版同士または床版と道路との継目部に設置されるものであって、図1図2に示すように、該橋梁用伸縮装置は、継目部に設置したときに、車両の通行方向に所定間隔離して対向配置される一対の継手部材10,10と、該継手部材10,10の間の隙間(以後、遊間という)12内に設けられて、雨水や砂石等の遊間12からの落下を阻止するゴムシール材14と、を備える。継手部材10は、短手が上下方向に延在すると共に、長手が通行方向と交差する道幅方向に延在する板状の支持部16と、該支持部16の下端に設けられて他方の継手部材10から離間する外方に向けて延出する底板18と、支持部16における他方の継手部材10から離間する外側面から外方に向けて延出すると共に長手方向に離間して設けられた複数の異径筋棒20と、を備え、一対の継手部材10,10は、一対の支持部16,16が通行方向に離間して内側面を対向する状態で、底板18および異径筋棒20によって橋梁構造物である床版または道路に固定される。支持部16は、凹部と凸部とが長手方向で反復するよう形成された波状に形成されているが、屈曲状であってもよく、また平板状であってもよい。
【0016】
前記ゴムシール材14は、例えば、クロロプレンゴム(CR)を材質として、一対の支持部16,16に加硫接着されたものであって、図2に示すように、各支持部16に沿って上下方向に延在する脚部22,22と、両脚部22,22の上端間に連設されて支持部16,16の間を繋ぐように設けられて当該支持部16,16の遊間12の変化に応じて伸縮可能な伸縮部24と、を備え、両脚部22,22の外側面が対応する支持部16,16の内側面に加硫接着されている。すなわち、伸縮部24における支持部16,16の離間方向の端部に脚部22,22が対向するよう連設されて、支持部16,16の路面側の端側をゴムシール材14で繋ぐようにして遊間12を塞いでいる。また、伸縮部24は、支持部16の夫々に対応するよう脚部22を介して固定されて、固定された支持部16から対向する支持部側に延在する第1のシール部24aと、該第1のシール部24aの延出端の間を繋ぐように設けられて当該第1のシール部24aより下方に延在する折り返し形状の第2のシール部24bと、から構成される。第2のシール部24bは、遊間12が規定幅でゴムシール材14に負荷が加わっていない初期状態(図2(a)参照)で、略U字状となっている。また、第2のシール部24bの厚みは、第1のシール部24aの厚みより薄く設定されて、第1のシール部24aより弾性変形し易いよう構成される。
【0017】
前記ゴムシール材14は、支持部16,16の長手方向の全長に亘って設けられ、一対の支持部16,16の間の遊間12を長手方向の全長に亘って塞ぐと共に、該遊間12が伸縮する際には伸縮部24が伸縮(弾性変形)して、支持部16,16の移動に追従する。なお、ゴムシール材14の材質としては、多孔質でなく、雨水等が浸透しない材質であれば、クロロプレンゴム以外のゴムを採用することができる。
【0018】
実施例1の前記第1のシール部24aは、脚部22に対する連設部(基端部)の厚みは他の部分に比して大きいものの、該第1のシール部24aの全体の厚みは、支持部16からの延在方向において略同一に設定される。また、第1のシール部24aには、図2に示すように、当該第1のシール部24aにおける支持部16に取り付けられる基端部側(脚部22の連設側)から第2のシール部24bに接続する延出端側への延在方向に一定間隔で離間して、幅および深さが同じ溝26が複数形成されている。溝26は、第1のシール部24aにおける下面側に開口すると共に、延在方向と交差する長手方向の全長に亘って延在するように形成されている。実施例1では、第1のシール部24aに形成した溝26によって、当該第1のシール部24aの剛性を、基端部側より延出端側が低下するよう構成される。また、前記延在方向に離間する溝26,26間の離間幅を調節することで、実施例1の第1のシール部24aは、基端部側から延出端側に向かうにつれて連続的または段階的に剛性が低下する構成されている。なお、実施例1では、第1のシール部24aに4つの溝26を形成したが、該溝26の形成数は任意に設定可能である。
【0019】
〔実施例1の作用〕
実施例1に係る橋梁用伸縮装置では、前記ゴムシール材14における第1のシール部24a,24aについて、基端部側の剛性より延出端側の剛性が低下するよう構成したので、支持部16,16の遊間12が縮む場合に、図2(b)に示すように、第1のシール部24a,24aの延出端同士が当接した以後は、剛性の低い延出端側から基端部側に順に折れ曲がるように弾性変形するので、両延出端同士の当接部位28が下方に変位する量が少なくなる。具体的に、第1のシール部24a,24aの延出端同士が当接した状態で、更に遊間12が縮むと、ゴムシール材14は、図2(c)に示すように、第1のシール部24aにおける剛性の低い延出端側が折れ曲がるように変形することで、当接部位28の最上位の位置Tが大きく下がるのを抑えることができる。すなわち、ゴムシール材14の上側の空間Sが第1のシール部24a,24aの変形によって大きくなるのを抑制できる。ここで、空間Sは、ゴムシール材14の上面から、図2(c)に示すように支持部16,16における内側の上端間を結んだ線分(二点鎖線)で囲まれた領域である。これにより、空間Sに堆積可能な砂石等の堆積物の量を低減することができ、堆積物による負荷によってゴムシール材14が劣化するのを抑制することができる。また、第1のシール部24aは、基端端側から延出部側に連続的または段階的に剛性が低下するよう形成されているので、第1のシール部24aが延出端側から基端部側に順に円滑に折れ曲がる。更に、溝26を形成するだけの簡単な構成によって剛性を変えているので、構成が複雑化したり製造コストが上昇するのを抑えることができる。
【実施例2】
【0020】
図3は、実施例2に係る橋梁用伸縮装置を示すものであって、実施例1と異なる部分について説明し、既出の同一部材には同じ符号を付すものとする。
【0021】
実施例2に係る橋梁用伸縮装置では、ゴムシール材29における第1のシール部24aに形成される溝26の深さを、基端部側から延出端側へ向かうにつれて増すようにすることで、第1のシール部24aの剛性を、基端部側より延出端側が低下するよう構成してある。また、実施例2では、各溝26の深さを調節することで、第1のシール部24aは、基端部側から延出端側に向かうにつれて連続的または段階的に剛性が低下するよう構成される。すなわち、実施例2の橋梁用伸縮装置においても、実施例1と同様の作用効果を奏する。また、実施例2では、溝26の深さを変えることで、第1のシール部24aにおける延在方向での剛性差を顕在化させ、延出端側が撓むことなく容易に折れ曲がって、第1のシール部24aの上方に形成される空間Sをより小さくすることができる。なお、実施例2における溝26の形成数は、任意に設定可能である。
【実施例3】
【0022】
図4は、実施例3に係る橋梁用伸縮装置を示すものであって、実施例1と異なる部分について説明し、既出の同一部材には同じ符号を付すものとする。
【0023】
実施例3に係る橋梁用伸縮装置では、ゴムシール材30における第1のシール部24aに溝26を形成するのに代えて、該第1のシール部24aの厚みを、基端部側から延出端側へ向かうにつれて薄くすることで、第1のシール部24aの剛性を、基端部側より延出端側が低下するよう構成してある。また、実施例3では、第1のシール部24aの厚みが基端部側から延出端側に向かうにつれて連続的に薄くなるよう構成されて、当該第1のシール部24aは、基端部側から延出端側に向かうにつれて連続的に剛性が低下するよう構成される。すなわち、実施例3の橋梁用伸縮装置においても、実施例1と同様の作用効果を奏する。また、実施例3では、第1のシール部24aの厚みを変化するだけの簡単な構成によって剛性を変えているので、構成が複雑化したり製造コストが上昇するのを抑えることができる。更に、実施例3では、第1のシール部24aに溝を形成していないので、該第1シール部24aの機械的強度を維持しつつ第1のシール部24aの剛性を変化させることができる。
【0024】
(検証)
本発明の効果を検証するため、比較例および実施例1~3について、コンピュータを用いたシミュレーションにより、ゴムシール材14,29,30の脚部間(遊間12に相当)の幅の変化に伴う空間Sの変化および当接部位28の最上位の位置Tの変化を測定した。シミュレーションでは、橋梁用伸縮装置の縦断面において、ゴムシール材14,29,30と、支持部16,16における内側の上端間を結ぶ線分とで囲まれた空間Sの断面積の変化を、空間Sの変化の指標として評価した。
シミュレーションでは、比較例および実施例1~3に相当するゴムシール材14,29,30について、各部位の厚みや溝26の形成条件等を、以下のように設定した。
比較例は、第1のシール部24aにおける脚部22に対する連設部の厚みを11mmとし、第1のシール部24aのその他の厚みを延在方向において同一で5mmとし、第2のシール部24bの厚みを3mmとした。
実施例1は、第1のシール部24aおよび第2のシール部24bの厚みに関しては比較例と同一とし、第1のシール部24aに、延在方向の幅が2mmで深さが1.5mmの溝26を、延在方向に2mm離間して4つ設けた。
実施例2は、第1のシール部24aおよび第2のシール部24bの厚みに関しては比較例と同一とし、第1のシール部24aに、延在方向の幅が2mmで深さが異なる溝26を、延在方向に2mm離間して4つ設けた。また、溝26の深さは、最も基端部側の溝26を1.0mmとし、他の溝26は延出端側に向かうにつれて徐々に深くなり、最も延出端側の溝26を2.5mmとした。
実施例3は、第1のシール部24aについて、脚部22に対する連設部の厚みを23mmとし、該連設部から延出端側に向かうにつれて厚みが5mmまで徐々に薄くなるようにし、第2のシール部24bの厚みを3mmとした。
【0025】
空間Sの断面積を測定するシミュレーションでは、初期状態におけるゴムシール材14,29,30の脚部間の幅を基準(0mm)とすると共に、脚部間が縮まる方向に脚部22,22が移動する距離を移動距離として、10mmづつ脚部22,22が移動した状態での空間Sの断面積を測定した結果を、図5に示している。図5に示す結果から明らかな如く、空間Sの断面積は、実施例1~3の何れにおいても、比較例より小さくなっている。
【0026】
当接部位28の最上位の位置Tを測定するシミュレーションでは、支持部16,16の上端の位置から当接部位28の最上位の位置Tまでの距離を沈み深さとし、初期状態におけるゴムシール材14,29,30の脚部間の幅を基準(0mm)とすると共に、脚部間が縮まる方向に脚部22,22が移動する距離を移動距離として、基準から脚部22,22が10mm移動した位置(第1のシール部の延出端同士が当接した位置に相当)から10mmづつ脚部22,22が移動した状態での沈み深さを測定した結果を、図6に示している。図6に示す結果から明らかな如く、当接部位28の最上位の位置Tは、実施例1~3の何れにおいても、比較例より小さくなっている。
【0027】
また、図5および図6の結果から、空間Sの断面積および沈み深さは、実施例1および2より実施例3の方が小さくなっており、第1のシール部24aの厚みを変化する構成による効果が高いことが分かる。
【0028】
〔変更例〕
本願は、前述した各実施例の構成に限定されるものでなく、その他の構成を適宜に採用することができる。
1.溝を形成することなく第1のシール部の厚みを変化させたが、実施例3の構成に加えて、実施例1の同一深さの溝を形成する構成や、実施例2の深さが異なる溝を形成する構成を組み合わせることができる。
2.剛性を変化させるために溝を形成したが、該溝に代えて、第1のシール部における下面側に開口する非貫通の孔を形成する構成を採用することができる。非貫通の孔を形成する場合は、第1のシール部の長手方向に所定間隔離間して非貫通の孔を複数形成すればよい。
3.第1のシール部の剛性を変化させるための溝や非貫通の孔は、該第1のシール部の延在方向において少なくとも一箇所に形成し、該溝や非貫通の孔の形成箇所において基端部側より延出端側の剛性が低下するようになっていればよい。
4.第1のシール部において溝を形成する延在方向の間隔を一定としたが、例えば基端部側から延出端側に向かうにつれて溝を形成する間隔を小さくする構成を採用することで、第1のシール部の剛性を、基端部側より延出端側で低下させることができる。
5.第1のシール部において各溝の幅を同じとしたが、該溝の幅を、例えば基端部側から延出端側に向かうにつれて広くする構成を採用することで、第1のシール部の剛性を、基端部側より延出端側で低下させることができる。
6.第1のシール部に形成する溝は、ゴムシール材の長手方向の全長に亘って形成する構成に限らず、長手方向に断続的に溝を形成する構成を採用することができる。
7.第1のシール部の厚みを、基端部側から延出端側に向かうにつれて連続的に薄くなるよう構成したが、基端部側から延出端側に向かうにつれて段階的に厚みが薄くなるように第1のシール部を形成し、該第1のシール部の剛性が、基端部側から延出端側に向かうにつれて段階的に小さくなるよう構成することでも、実施例3と同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0029】
12 遊間(隙間),14 ゴムシール材,16 支持部,24a 第1のシール部
24b 第2のシール部,26 溝,29 ゴムシール材,30 ゴムシール材

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7