(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240904BHJP
【FI】
B41J2/01 213
B41J2/01 129
(21)【出願番号】P 2020200174
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100169199
【氏名又は名称】石本 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】樋口 崇
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-123217(JP,A)
【文献】特開2001-058427(JP,A)
【文献】特開2010-076216(JP,A)
【文献】特開2006-082548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数のノズルを有し、前記ノズルの配列方向と略垂直な
主走査方向に移動しながらインクを前記ノズルから吐出する印刷ヘッドと、
記録媒体が載置され、前記印刷ヘッドに対して前記配列方向で
ある副走査方向に相対移動可能に設けられたテーブルと、を備え
複数回の印刷パスによって前記記録媒体上に画像を形成するための単位領域を設定し、単位領域ごとのラスタデータに基づき前記記録媒体にインクを吐出するインクジェット記録装置であって、
前記配列方向における始端に位置する始端ノズルが記録媒体の始端に位置した単位領域に対向する位置と、終端に位置する終端ノズルが記録媒体の終端に位置した単位領域に対向する位置との間で前記テーブルに対する前記印刷ヘッドの配置を前記
副走査方向で制御する配置制御手段と、
前記配置制御手段によって前記
副走査方向における前記印刷ヘッド
及び前記テーブルの相対的な位置を固定し、始端に位置する単位領域に対して設定された全ての印刷パスを前記始端ノズルによって実行し、終端に位置する単位領域に対して設定された全ての印刷パスを前記終端ノズルによって実行してそれぞれの単位領域に画像を形成する第1印刷制御手段と、
前記配置制御手段によって前記テーブルを前記
副走査方向に
相対移動させながら、始端に位置した単位領域に隣接する単位領域から終端に位置した単位領域に隣接する単位領域まで複数の印刷パスを実行して画像を形成する第2印刷制御手段と、
を備え
、
前記画像は、前記複数回の印刷パスを所定回数であるN回、同一の前記単位領域に重畳させて形成するものであり、
前記印刷ヘッドは、前記副走査方向において前記N回に対応したN個の単位ノズル列に分割され、
前記第1印刷制御手段は、前記副走査方向における前記画像の始端の前記単位領域において、前記副走査方向における前記印刷ヘッド及び前記テーブルの相対的な位置を固定しつつ前記始端側の単位ノズル列のみを用いて前記N回の印刷パスの重畳を行い、
前記始端側の単位ノズル列による前記N回の印刷パスの重畳が完了した後、前記第2印刷制御手段による制御に移行することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
インクを吐出する複数のノズルを有し、前記ノズルの配列方向と略垂直な
主走査方向に移動しながらインクを前記ノズルから吐出する印刷ヘッドと、
記録媒体が載置され、
前記印刷ヘッドに対して
前記配列方向で
ある副走査方向に相対移動可能に設けられたテーブルと、を備え
複数回の印刷パスによって
前記記録媒体上に画像を形成するための単位領域を記録媒体上に設定し、単位領域ごとのラスタデータに基づき記録媒体にインクを吐出するインクジェット記録装置であって、
前記ノズルの配列方向における一端に位置する端部ノズルが記録媒体の一端に位置した単位領域に対向する位置と、前記端部ノズルが記録媒体の他端に位置した単位領域に対向する位置との間で前記テーブルに対する前記印刷ヘッドの配置を前記
副走査方向で制御する配置制御手段と、
前記配置制御手段によって前記
副走査方向における前記印刷ヘッド
及び前記テーブルの相対的な位置を固定し、一端に位置する単位領域に対して設定された全ての印刷パスを前記端部ノズルに実行させて画像を形成する第1印刷制御手段と、
前記配置制御手段によって前記テーブルを前記
副走査方向に相対移動させながら、前記第1印刷制御手段によって画像が形成される単位領域を除いたそれぞれの単位領域に対して複数の印刷パスを実行して画像を形成する第2印刷制御手段と、
を備え
、
前記画像は、前記複数回の印刷パスを所定回数であるN回、同一の前記単位領域に重畳させて形成するものであり、
前記印刷ヘッドは、前記副走査方向において前記N回に対応したN個の単位ノズル列に分割され、
前記第1印刷制御手段は、前記副走査方向における前記画像の終端の前記単位領域において、前記副走査方向における前記印刷ヘッド及び前記テーブルの相対的な位置を固定しつつ前記終端側の単位ノズル列のみを用いて前記N回の印刷パスの重畳を行い、
前記終端側の印刷パスを開始する前の印刷パスでは、前記第2印刷制御手段による制御を行うことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記インクは光硬化型インクであり、
前記印刷ヘッドに一体的に組み込まれ、記録媒体上に吐出された光硬化型インクに向けて光硬化型インクを硬化するための光線を照射する光照射器を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記テーブルに載置された記録媒体の端部位置を情報入力するための入力手段を備え、
前記配置制御手段は、前記入力手段からの位置情報に基づき前記テーブルを前記印刷ヘッドに対して印刷開始前に予め相対移動させて頭出しする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記第1印刷制御手段は、印刷パスにおいて光硬化型インクを吐出しない非記録領域があるときに、前記非記録領域に対応して光照射器からの光線照射を遮断もしくはオフする請求項3に記載のインクジェット記憶装置。
【請求項6】
前記光照射器は、複数のノズルに合わせて配置された複数の光照射素子を備え、
前記第1印刷制御手段は、前記非記録領域に対応してそれぞれの光照射素子の照射を遮断もしくはオフする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化型インクを吐出するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録媒体が載置される載置台と、載置台に載置された記録媒体に光硬化型インクを吐出するノズルを有するノズルヘッドと、ノズルから記録媒体へ吐出された光硬化型インクに光を照射して固化させる光照射器とを備えたインクジェット記録装置が広く普及している。
光照射器は例えばノズルヘッドと一体化されてヘッドユニットを形成し、このヘッドユニットを記録媒体に対して走査させながらノズルから光硬化型インクを吐出し、当該インクを吐出した直後に光照射器から光照射することにより、良好な画像を記録媒体上に固定することができる。光硬化型インクとしては紫外線によって硬化可能な紫外線硬化型のインクがよく知られており、これに対応して紫外線照射器が用いられる。
【0003】
近頃では記録媒体を載置するためのテーブル(載置台)を備えたインクジェット印刷装置も多く考案されている。例えば特許文献1には、載置台に置かれた記録媒体上にマルチパス方式で光硬化型インクを吐出して画像を形成するインクジェット記録装置が開示されている。このインクジェット記録装置では、印刷ヘッドの両側に光照射器を一体的に組み付けており、これらノズルヘッドと光照射器とを走査方向に移動させながらマルチパス印刷を行っている。マルチパス印刷ではノズルヘッドおよび光照射器が載置台の外部から徐々に載置台に近接して記録媒体の一端から1パス目の記録を開始しており、特許文献1では不要な光照射を極力抑えるように工夫がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなテーブルを備えたインクジェット印刷装置では印刷ヘッドをテーブルに対して相対的に移動させなければならず、このためにどうしても装置サイズが大型化してしまい、設置できる環境が限られてしまうという問題がある。
また、このようなテーブルを備えたインクジェット印刷装置が備え付けられる床面やテーブルは光照射器から放射された光を反射することがあり、特に反射率が比較的高い材質で床面やテーブルが形成されている場合はより多くの反射光が発生してしまう。
この反射光が印刷ヘッドに備えられたノズル周辺に入射してしまうと、ノズル先端部の光硬化型インクを硬化させてしまい、これにより光硬化型インクの吐出不良が引き起こされることがあった。
【0006】
本発明は上記の事情に端を発してなされたものであり、よりコンパクトなインクジェット印刷装置を提供し、さらには、インクジェット印刷装置が設置される床面やテーブルからの反射光がノズルに入射することを低減ないし防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明のインクジェット印刷装置は、
インクを吐出する複数のノズルを有し、ノズルの配列方向(副走査方向)と略垂直な走査方向に移動しながらインクをノズルから吐出する印刷ヘッドと、
媒体が載置され、印刷ヘッドに対してノズルの配列方向で相対移動可能に設けられたテーブルと、を備え
複数回の印刷パスによって記録媒体上に画像を形成するための単位領域を設定し、単位領域ごとのラスタデータに基づき記録媒体にインクを吐出するインクジェット記録装置であって、
配列方向における始端に位置する始端ノズルが記録媒体の始端に位置した単位領域に対向する位置と、終端に位置する終端ノズルが記録媒体の終端に位置した単位領域に対向する位置との間でテーブルに対する印刷ヘッドの配置を配列方向で制御する配置制御手段と、
配置制御手段によって配列方向における印刷ヘッドに対するテーブルの相対的な位置を固定し、始端に位置する単位領域に対して設定された全ての印刷パスを始端ノズルによって実行し、終端に位置する単位領域に対して設定された全ての印刷パスを終端ノズルによって実行してそれぞれの単位領域に画像を形成する第1印刷制御手段と、
配置制御手段によってテーブルを配列方向に移動させながら、始端に位置した単位領域に隣接する単位領域から終端に位置した単位領域に隣接する単位領域まで複数の印刷パスを実行して画像を形成する第2印刷制御手段と、
を備えることを特徴とする。
この構成により、印刷ヘッドに対するテーブルの相対的な移動範囲が、始端に位置する単位領域が始端ノズルに対向する位置から、終端に位置する単位領域が終端ノズルに対向する位置までに抑えることができ、従来よりも移動範囲を小さくすることができる。
このように印刷ヘッドに対するテーブルの相対的な移動範囲を従来よりも小さくすることで、インクジェット印刷装置のサイズをよりコンパクトにすることができる。
【0008】
また、本発明のインクジェット印刷装置は、
インクを吐出する複数のノズルを有し、ノズルの配列方向(副走査方向)と略垂直な走査方向に移動しながらインクをノズルから吐出する印刷ヘッドと、
記録媒体が載置され、印刷ヘッドに対してノズルの配列方向で相対移動可能に設けられたテーブルと、を備え
複数回の印刷パスによって画像を形成するための単位領域を記録媒体上に設定し、単位領域ごとのラスタデータに基づき記録媒体にインクを吐出するインクジェット記録装置であって、
ノズルの配列方向における一端に位置する端部ノズルが記録媒体の一端に位置した単位領域に対向する位置と、端部ノズルが記録媒体の他端に位置した単位領域に対向する位置との間でテーブルに対する印刷ヘッドの配置を配列方向で制御する配置制御手段と、
配置制御手段によって配列方向における印刷ヘッドに対するテーブルの相対的な位置を固定し、一端に位置する単位領域に対して設定された全ての印刷パスを端部ノズルに実行させて画像を形成する第1印刷制御手段と、
配置制御手段によってテーブルを配列方向に相対移動させながら、第1印刷制御手段によって画像が形成される単位領域を除いたそれぞれの単位領域に対して複数の印刷パスを実行して画像を形成する第2印刷制御手段と、を備えることを特徴とする。
この構成により、一端に位置する単位領域が一端に位置する端部ノズルと対向する位置と、他端に位置する単位領域が一端に位置する端部ノズルと対向する位置との間でテーブルが相対移動するため、従来よりもテーブルの移動範囲を小さくすることができる。
一端を始端とすることもできるし、もしくは終端とすることもできる。一端が始端であるときは、テーブルの相対的な移動範囲は、始端に位置する単位領域が始端に位置する端部ノズルと対向する位置と、終端に位置する単位領域が始端に位置する端部ノズルと対向する位置との間でる。また、一端が終端であるときは、テーブルの相対的な移動範囲は、終端に位置する単位領域が終端に位置する端部ノズルと対向する位置と、始端に位置する単位領域が終端に位置する端部ノズルと対向する位置との間である。
このように印刷ヘッドに対するテーブルの相対的な移動範囲を従来よりも小さくすることで、インクジェット印刷装置のサイズをよりコンパクトにすることができる。
【0009】
また、本発明のインクジェット印刷装置は、
インクが光硬化型インクであり、
印刷ヘッドに一体的に組み込まれ、媒体上に吐出された光硬化型インクに向けて光硬化型インクを硬化するための光線を照射する光照射器を備えることを特徴とする。
このようにテーブルに対して相対的な移動距離を従来よりも抑えた印刷ヘッドに光照射器を備えることで、例えば、始端に位置する単位領域に対して始端に位置するノズルを用いて全ての印刷パスを実行する場合や、終端に位置する単位領域に対して終端に位置するノズルを用いて全ての印刷パスを実行する場合では、テーブル外部に印刷ヘッドが位置することがなく、これによりテーブル外部やインクジェット印刷装置の外部から反射される光線量を従来よりも低減することができる。このためノズルに入射する不要な光線量を抑えて光硬化型インクの吐出不良の発生を低減することができる。
なお、光硬化型インクとしては例えば特定波長域の紫外線で硬化する紫外線硬化型インク等を用いることができ、光照射器としては特定波長域の紫外線を放射する紫外線照射器などを用いることができる。
【0010】
また、本発明のインクジェット印刷装置は、
テーブルに載置された記録媒体の端部位置を情報入力するための入力手段を備え、
配置制御手段は、入力手段からの位置情報に基づきテーブルを印刷ヘッドに対して印刷開始前に予め相対移動させて頭出しするようにしてもよい。
この構成により、テーブルの始端から記録媒体の始端が比較的離れている場合でも、これに合わせて印刷ヘッドユニットをテーブルに対してノズルの配列方向に相対移動させて適切に頭出ししてから印刷を開始するため、例えば、始端に位置する単位領域に対して始端に位置するノズルを用いて全ての印刷パスを実行する場合では、余計な光線がノズルに入射することを更に抑えることができ、テーブル外部から入射する光線量をより確実に抑えることができる。
【0011】
また、本発明のインクジェット印刷装置では、
印刷パスにおいて光硬化型インクを吐出しない非記録領域があるときに、第1印刷制御手段が、非記録領域に対応して光照射器からの光線照射を遮断もしくはオフするように制御してもよい。
切り欠きを有する記録媒体や離間して配置された記録媒体など、非記録領域に対応して光線照射を遮断もしくはオフすることで、テーブルによって反射される光線量を低減でき、ノズルに入射する不要な光線量をさらに抑えることができる。
【0012】
また、本発明のインクジェット印刷装置では、
光照射器は、複数のノズルに合わせて配置された複数の光照射素子を備え、
第1印刷制御手段は、非記録領域に対応してそれぞれの光照射素子の照射を遮断もしくはオフするようにしてもよい。
この構成によって、より細やかな光線照射が可能となり、不要な光線がノズルに入射することを更に低減することができる。
なお、ノズルの配列に合わせて配置される紫外線照射素子の個数はノズルの数と同数でもよいが、同数である必要はなく、例えば紫外線照射素子の照射強度、光硬化型インクの硬化特性などに基づいて適宜定めればよい。
【発明の効果】
【0013】
印刷ヘッドに対するテーブルの相対的な移動範囲を従来よりも小さくでき、これによりインクジェット印刷装置のサイズをよりよりコンパクトにすることができる。
また、テーブルや装置外部の環境といった記録媒体の外部から反射される光線量を従来よりも低減ないし防止することができ、これによりノズルやその周辺で光硬化型インクが硬化してしまうことを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のインクジェット印刷装置を説明する概略図である。
【
図2】ノズルおよび光照射素子(UV-LED)の配置を示す平面図である。
【
図3】インクジェット印刷装置の機能ブロック図である。
【
図4】テーブルの始端および終端、ならびに印刷ヘッドユニットを載置面と略垂直であって副走査方向に平行な平面で切断した断面図である。
【
図5】記録媒体の始端部の印刷態様を説明する説明図である。
【
図6】記録媒体の終端部の印刷態様を説明する説明図である。
【
図8】記録媒体の始端および終端に位置する単位領域の印刷に関して説明する説明図である。
【
図9】離間して配置された複数の記録媒体に印刷する場合について説明する説明図である。
【
図10】本発明の別の態様を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、本発明のインクジェット印刷装置1はユーザによって操作されるコンピュータ装置17と有線もしくは無線で接続され、インクジェット印刷装置1はコンピュータ装置17から送られる後述する画像データに基づき印刷を実行する。インクジェット印刷装置1は、テーブル5、印刷ヘッドユニット7、ガイドレール10を備える。テーブル5上にはフラットな載置面6が形成され、この載置面6に記録媒体が載置される。ガイドレール10は印刷ヘッドユニット7を走査方向(以降、主走査方向という)で移動可能に保持し、これにより印刷ヘッドユニット7は載置面6に対して一定間隔を保ちながら主走査方向に移動することができる。
テーブル5は図示しない駆動機構によって保持されており、この駆動機構は主走査方向と垂直をなす副走査方向にテーブル5を移動させる。テーブル5の位置は後述するテーブル配置制御部によって制御されており、テーブル5はマルチパス印刷におけるそれぞれの印刷パスに合わせて配置が制御される。
【0016】
図示しない駆動機構はテーブル5の始端部5aが印刷ヘッドユニット7に対向する位置からテーブル5の終端部5bが印刷ヘッドユニット7に対向する位置の間で距離Dだけテーブル5を移動させることができる。このためテーブル5の移動範囲Lは従来よりも狭いものとなる。これに合わせてマルチパス印刷における初期および終期の印刷態様を従来ものから変更する必要があり、これについては以下で説明する。
【0017】
印刷ヘッドユニット7は複数のノズルを備えたノズルヘッド12と、紫外線硬化型インクを硬化させるための光線を照射する紫外線照射器15とが一体的にユニット化されている。この構成により紫外線照射器15はノズルヘッド12とともに主走査方向に移動することができ、記録媒体に吐出された紫外線硬化型インクに紫外線を浴びせることができる。
なお、ここでは光硬化型インクとして紫外線硬化型インクを例示し、光照射器として紫外線照射器15を例示するが、本発明はこれに限らず例えば、可視光領域の波長で硬化するインクや可視光を照射する光照射器を用いてもかまわない。インクや光照射器は目的に応じて適宜変更するとよい。
【0018】
図2に示すように、ノズルヘッド12は複数のノズル21~26を備え、それぞれのノズル21~26は並べられている。例えばノズル21は16個のノズル21a~21d(8個のノズルを2列)を有し、CMYK色のうちシアン色の紫外線硬化型インクをノズル先端から吐出する。ノズル21a~21dは一列に並んでおり、その配列方向は副走査方向と一致している。
ノズル22~24もそれぞれ16個のノズルを有し、マゼンタ色、イエロー色、ブラック色の紫外線硬化型インクをそれぞれのノズル先端から吐出する。また、ノズル25a~25dはホワイト色の紫外線硬化型インクを吐出し、ノズル26a~26dは透明なクリア色の外線硬化型インクを吐出する。ノズル22~24のそれぞれが有する16個のノズルの配列方向もまた副走査方向と一致する。
このようなノズルレイアウトにより、印刷初期では、ノズル21a~26a(始端ノズル)がテーブル5の始端に最も近く、印刷の最後では、ノズル21d~26d(終端ノズル)がテーブル5の終端に最も近くなる。なお、ここではわかりやすく説明するためにノズル数を16個にしているが後述するようにノズル数はこれに限らない。
【0019】
ノズルヘッド12に隣接して紫外線照射器15が組み合わされており、紫外線照射器15は複数の紫外線照射型発光ダイオード(以降、UV―LEDという)30v~30yを有する。それぞれのUV―LED30v~30yは紫外線硬化型インクを硬化させるに十分な強度で紫外線を照射する。それぞれのUV―LED30v~30yの周囲には図示しないリフレクタやシャッタ機構32を備えており、シャッタ機構32によってそれぞれのUV―LED30v~30yから放たれる紫外線を遮断することができる。これにより紫外線の照射が不要なときにはUV―LED30v~30yからの紫外線を確実にカットすることができる。
なお、紫外線をカットする手段は上記のシャッタに限らず、例えばそれぞれのUV―LED30v~30yを消灯してもよい。シャッタ機構32を用いるかUV―LED30v~30yのオン/オフ制御を用いるかはそれぞれの特性に鑑みて決めるとよい。例えば紫外線の迅速な遮断が必要な場合はシャッタ機構32を採用し、印刷ヘッドユニット7の軽量化を優先する場合はUV―LED30v~30yのオン/オフ制御を採用するなどが可能である。
また、ここでは紫外線照射素子としてUV―LED30v~30yを例示したが、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ、冷陰極管などを使用してもよい。
【0020】
UV―LED30vは、シアン色を吐出するノズル21a~21dのうちの21a、マゼンタ色を吐出するノズル22a~22dのうちの22a、イエロー色を吐出するノズル23a~23dのうちの23a、ブラック色を吐出するノズル24a~24dのうちの24a、ホワイト色を吐出するノズル25a~25dのうちの25a、クリア色を吐出するノズル26a~26dのうちの26aに対応しており、これらのノズル21a~26aから吐出された紫外線硬化型インクに紫外線を照射することができる。
【0021】
同様に、UV―LED30w、30x、30yはそれぞれノズル21b~26b、21c~26c、21d~26dから吐出された紫外線硬化型インクに紫外線を照射することができる。このような構成により、例えば、第1印刷パスをノズル21a~26aおよびUV―LED30vに割り当て、第1印刷パスに続く第2印刷パスをノズル21b~26bおよびUV―LED30wに割り当てることができる。また、第2印刷パスに続く第3印刷パス、この第3印刷パスに続く第4印刷パスをそれぞれ、ノズル21c~26cおよびUV―LED30x、ノズル21d~26dおよびUV―LED30yに割り当てることが可能となる。
上記のように、この実施形態で例示する印刷ヘッドユニット7は4つの印刷パスを一括実行することができるが、ノズル数やUV-LED30v~30y数は適宜変更するとよい。例えばより高精細な8パスや16パスに高速対応するためにはノズル数やLED数を増やすことが望ましい。また例えばもっと細かく紫外線照射を制御したい場合は、ノズル数はそのままにUV-LED30v~30yの個数を増やすこともできる。例えば上記では8つのUV-LED30v~30yを備えたがもっと細やかに制御できるように16個などに増やしたり、あるいは4つにしてもよい。
また、インク構成もここではCMYKにホワイト色、透明なクリア色の計6色を例示したが、適宜変更してかまわない。
【0022】
図3に示すように、インクジェット印刷装置1は、データ受送信部38、マルチパス処理部40、印刷制御部50、始端部印刷制御部(第1印刷制御手段)51、中央部印刷制御部(第2印刷制御手段)52、終端部印刷制御部(第1印刷制御手段)53、ヘッド移動制御部60、テーブル配置制御部(配置制御手段)62、ノズル制御部64、LED制御部67、ユーザ入力部(入力手段)72等を備える。
【0023】
データ受送信部38は、ユーザが操作するコンピュータ装置17から送られるラスター化された2値画像データ等を受信し、受信したデータを他の各部に伝送する。
なお、コンピュータ装置17上で行われる処理について本明細書では詳しく説明しないが、コンピュータ上では例えば、ユーザが作成したRGB画像データが色分解されて、CMYK各色のインク値を示すインク値データに変換される。インク値データは適宜ガンマ補正され、さらにディザマトリクスなどを用いてハーフトーン処理され2値画像データを生成する。
【0024】
マルチパス処理部40は、マスク選択部45、パス設定部46、マスク格納部47を有し、パスごとの2値印刷データを生成する。
マスク選択部45は、コンピュータ装置17からの2値画像データに基づき、適用するパスマスクを選択する。マスク格納部47は、内容の異なる複数のマスクパタンを格納しており、マスク選択部45は、マスク格納部47に格納された複数のマスクパタンの中から適宜1つを選択し読み出す。
パス設定部46は、マスク選択部45によって読み出されたマスクパタンを用いてそれぞれの単位領域におけるパスごとのラスタデータである2値印刷データを生成する。なおここでは4回の印刷パス(以降、4パスという)によって単位領域内の画像を完成する4パスを例示する。
【0025】
始端部印刷制御部51、中央部印刷制御部52、終端部印刷制御部53は、パスごとの2値印刷データ(以降、パス印刷データという)に基づいて、ヘッド移動制御部60、テーブル配置制御部62、ノズル制御部64、LED制御部67を制御し、記録媒体上に画像を形成し固定する。
【0026】
ヘッド移動制御部60は、始端部印刷制御部51、中央部印刷制御部52、終端部印刷制御部53からの命令に基づき、主走査方向での印刷ヘッドユニット7の動きを制御する。
テーブル配置制御部62は、始端部印刷制御部51、中央部印刷制御部52、終端部印刷制御部53からの命令に基づき、テーブル5を副走査方向に移動させる、もしくは動かないようにホールドする。
ノズル制御部64は、始端部印刷制御部51、中央部印刷制御部52、終端部印刷制御部53からの命令に基づき、ノズル21~26の駆動を制御する。
LED制御部67は、始端部印刷制御部51、中央部印刷制御部52、終端部印刷制御部53からの命令に基づき、LED30v~30yの点灯/消灯およびシャッタ機構32の作動を制御する。
【0027】
始端部印刷制御部51は、最初のスキャンから4スキャン目まで、パス印刷データを基にしてノズル制御部64を介して各ノズル21~26の駆動を制御し、さらにLED制御部67を介してLED30v~30yの点灯を制御して記録媒体Mの始端に画像を固定する。詳細は後述するがこのときテーブル配置制御部62はテーブル5が動かないようにホールドする。
【0028】
中央部印刷制御部52は、4パスの場合では、5スキャン目から最終スキャンから4スキャン前までの間で、パス印刷データを基にしてヘッド移動制御部60、テーブル配置制御部62、ノズル制御部64、LED制御部67を制御して記録媒体Mの始端部および終端部を除く中央部に画像を形成し固定する。
5スキャン目以降において中央部印刷制御部52は、印刷ヘッドユニット7が印刷動作のために往復するごとにテーブル配置制御部62を介してテーブル5を1スキャンぶん移動させ、最後のスキャンから4スキャン前から3スキャン前に移行する際にテーブル5を1スキャンぶん副走査方向に移動させることでテーブル5の移動は終了する。
【0029】
終端部印刷制御部53は、最後のスキャンから3スキャン前までの2値印刷データを基にしてノズル制御部64を介してノズル21~26の駆動を制御し、LED制御部67を介してLED30v~30yの点灯を制御して記録媒体Mの終端部に画像を固定する。ここも詳細は後述するがこのときテーブル配置制御部62はテーブル5が動かないようにホールドする。
【0030】
ユーザ入力部72は、ユーザによって操作される図示しないポインタやキーボード等を備え、これによりユーザはテーブル5上の記録媒体Mの始端位置情報を入力することができる。ユーザによって入力された始端位置情報はテーブル配置制御部62に伝送され、テーブル配置制御部62はこの始端位置情報に基づいてテーブル5を副走査方向に移動させてノズルヘッド12が記録媒体Mの始端に対向するようにテーブル5を頭出しする。
【0031】
図4(a)に示すように、記録媒体Mの始端に位置する単位領域M1に4パス分の画像を形成し固定するとき、テーブル5はホールドされて動くことはなく、このためノズル21~26のそれぞれのノズルはパス印刷データに基づいて同じ単位領域に対してインクを吐出し、UV-LED30v~30yもそれぞれ同じ単位領域M1~M4に対して紫外線を照射する。単位領域M1~M4に対する画像の形成/固定プロセス、例えばどのノズルがどの単位領域に対応するかなどについては
図5を用いて後述する。
なお、ポインタ等を用いてテーブル5の配置を頭出しするとき、UV-LED30vが記録媒体Mの始端に吐出されたインクを確実に硬化させるためにマージンが形成されるように記録媒体Mを配置するとよい。
【0032】
図4(b)に示すように、記録媒体Mの終端に位置する単位領域M24に4パス分の画像を固定するとき、テーブル5はホールドされて動くことはなく、このためノズル21~26のそれぞれのノズルはパス印刷データに基づいて同じ単位領域M21~24に対してインクを吐出し、UV-LED30v~30yもそれぞれ同じ単位領域に対して紫外線を照射する。単位領域M21~M24に対する画像の形成/固定プロセスについては
図6を用いて後述する。
【0033】
図5(a)に示すように第1回目のスキャン(第1スキャン)では、テーブル5の始端に最も近いノズル21a~26aから記録媒体M上に設定された単位領域M1にインクを吐出して画像を形成する。単位領域M1に着弾した紫外線硬化型インクはUV-LED30vによって硬化され単位領域M1上に固定される。
【0034】
図5(b)に示すように第1スキャンから第2スキャンに移行するときにテーブル5はホールドされており、ノズル21a~26aから単位領域M1に対して2パス目のパス印刷データに基づきインクが吐出される。このとき同時に単位領域M1に隣接した単位領域M2に対して1パス目の印刷データに基づきノズル21b~26bからインクが吐出され画像が形成される。単位領域M2に吐出された紫外線硬化型インクはUV-LED30wからの紫外線によって硬化され画像が固定される。
【0035】
図5(c)に示すように第2スキャンから第3スキャンに移行するときもテーブル5はホールドされており、ノズル21a~26aから単位領域M1に対して3パス目のパス印刷データに基づき紫外線硬化型インクが吐出され固定される。このとき同時に単位領域M2に対して2パス目のパス印刷データに基づきノズル21b~26bからインクが吐出され画像が形成固定される。さらに同時に、単位領域M2に隣接した単位領域M3に対して1パス目のパス印刷データに基づきノズル21c~26cから紫外線硬化型インクが吐出され画像が形成される。単位領域M3に吐出された紫外線硬化型インクはUV-LED30xからの紫外線によって硬化され画像が固定される。
【0036】
図5(d)に示すように第3スキャンから第4スキャンに移行するときもテーブル5はホールドされており、ノズル21a~26aから単位領域M1に対して4パス目のパス印刷データに基づき紫外線硬化型インクが吐出され固定される。これにより単位領域M1は全ての印刷パスが完了し画像が完成する。
このとき同時に単位領域M2に対して3パス目のパス印刷データに基づきノズル21b~26bからインクが吐出され画像が形成固定される。さらに同時に、単位領域M3に対して2パス目のパス印刷データに基づきノズル21c~26cから紫外線硬化型インクが吐出され画像が形成固定される。また同時に単位領域M3に隣接した単位領域M4に対して1パス目のパス印刷データに基づきノズル21d~26dから紫外線硬化型インクが吐出され画像が形成される。単位領域M4に吐出された紫外線硬化型インクはUV-LED30yからの紫外線によって硬化され画像が固定される。
【0037】
図5(e)に示すように、第4スキャンから第5スキャンに移行するときにテーブル5は1スキャン分だけ副走査方向に沿って始端側に移動する。これ以降のスキャンではスキャンごとにテーブル5は始端側に移動し、パス印刷データに応じてそれぞれのノズル21~26から紫外線硬化型インクが記録媒体Mに吐出され、UV-LED30v~30yによって固定される。
【0038】
図6(a)に示すように最終スキャンから4スキャン前では、ノズル21b~26bから記録媒体M上の単位領域M21に向けて3パス目のパス印刷データに基づいて紫外線硬化型インクを吐出して画像を形成する。単位領域M21に着弾した紫外線硬化型インクはUV-LED30vによって硬化され単位領域M21上に固定される。
またこのとき同時に、ノズル21c~26cから単位領域M22に向けて2パス目のパス印刷データに基づいて紫外線硬化型インクを吐出し、ノズル21d~26dから単位領域M23に向けて1パス目のパス印刷データに基づいて紫外線硬化型インクを吐出し、画像を形成し固定する。
【0039】
図6(b)に示すように最終スキャンの4スキャン前から3スキャン前に移行するとき、テーブル5は始端側に1スキャン分だけ移動する。この後、テーブル5はホールドされ始端側に移動することはない。
ノズル21a~26aから単位領域M21に対して4パス目のパス印刷データに基づき紫外線硬化型インクが吐出され固定される。同時に単位領域M22に対して3パス目のパス印刷データに基づきノズル21b~26bからインクが吐出され画像が固定される。
またこのとき同時に、ノズル21c~26cから単位領域M23に向けて2パス目のパス印刷データに基づいて紫外線硬化型インクを吐出し、ノズル21d~26dから単位領域M24に向けて4パス中の1パス目のパス印刷データに基づいて紫外線硬化型インクを吐出し固定する。
【0040】
図6(c)に示すように最終スキャンの3スキャン前から2スキャン前に移行するときテーブル5はホールドされている。
単位領域M22に対して4パス目の印刷データに基づきノズル21b~26bからインクが吐出され画像が固定される。
またこのとき同時に、ノズル21c~26cから単位領域M23に向けて3パス目のパス印刷データに基づいて紫外線硬化型インクを吐出し、ノズル21d~26dから単位領域M24に向けて2パス目のパス印刷データに基づいて紫外線硬化型インクを吐出し固定する。
単位領域M21に対向したノズル21a~26aは吐出駆動を停止し、UV-LED30vは消灯もしくは図示しないシャッタによって遮光される。
【0041】
図6(d)に示すように最終スキャンの2スキャン前から1スキャン前に移行するときもテーブル5はホールドされている。
ノズル21c~26cから単位領域M23に向けて4パス目のパス印刷データに基づいて紫外線硬化型インクを吐出し、ノズル21d~26dから単位領域M24に向けて3パス目のパス印刷データに基づいて紫外線硬化型インクを吐出し固定する。
単位領域M21、M22に対向したノズル21a~26a、ノズル21b~26bは駆動を停止し、UV-LED30v、30wは消灯もしくは図示しないシャッタによって遮光される。
【0042】
図6(e)に示すように最終スキャンの1スキャン前から最終スキャンに移行するときもテーブル5はホールドされている。ノズル21d~26dからは単位領域M24に向けて4パス目のパス印刷データに基づいて紫外線硬化型インクを吐出し固定することで全ての印刷が完了する。
単位領域M21、M22、M23に対向したノズル21a~26a、ノズル21b~26b、ノズル21c~26cは駆動を停止し、UV-LED30v、30w、30xは消灯もしくは図示しないシャッタによって遮光される。
【0043】
図7を用いて本発明の作用を説明する。ユーザによって操作されるコンピュータ装置17によってRGB画像データが形成され(S201)、このRGB画像データはコンピュータ装置17にインストールされた印刷処理プログラム等によってS203のハーフトーン処理を経て2値画像データに変換される(S205)。生成された2値画像データはインクジェット印刷装置1に送信される(S207)。
インクジェット印刷装置1はデータ受送信部38を介して2値画像データを受信し(S301)、受信した2値画像データを基にマルチパス処理部40においてマスクパタンを選択するなどして4パスに対応した単位領域ごとのパス印刷データを生成する(S303、S305、S307)。生成されたパス印刷データは始端部印刷制御部51、中央部印刷制御部52、終端部印刷制御部53に送られる。
【0044】
パス印刷データを受けた始端部印刷制御部51はヘッド移動制御部60、ノズル制御部64、LED制御部67を制御して記録媒体Mの始端部への画像の形成および固定を開始する(S310)。
[始端部の印刷]
図8に示すように第1スキャンでは、1パス目のパス印刷データに基づきノズル21a~26aから始端部に位置する単位領域M1にインクを吐出し、単位領域M1に着弾した紫外線硬化型インクはUV-LED30vによって硬化され単位領域M1上に固定される(S312)。
第2スキャンに移行するときテーブル5はホールドされており、ノズル21a~26aから単位領域M1に対して2パス目のパス印刷データに基づきインクが吐出され、単位領域M2に対して1パス目のパス印刷データに基づきノズル21b~26bからインクが吐出され画像が形成される。単位領域M2にはUV-LED30wから紫外線が照射され画像が固定される。
【0045】
第3スキャンに移行するときもテーブル5はホールドされ、ノズル21a~26aから単位領域M1に対して3パス目のパス印刷データに基づき紫外線硬化型インクが吐出され、単位領域M2に対して2パス目のパス印刷データに基づきノズル21b~26bからインクが吐出され、単位領域M3に対して1パス目のパス印刷データに基づきノズル21c~26cから紫外線硬化型インクが吐出され画像が形成される。単位領域M3にはUV-LED30xから紫外線が照射され画像が固定される。
【0046】
第4スキャンに移行するときもテーブル5はホールドされ、ノズル21a~26aから単位領域M1に対して4パス目のパス印刷データに基づき紫外線硬化型インクが吐出され、単位領域M2に対して3パス目のパス印刷データに基づきノズル21b~26bからインクが吐出され画像が形成固定される。このようにして始端に位置した単位領域M1の画像が完成する。
また単位領域M3に対して2パス目のパス印刷データに基づきノズル21c~26cから紫外線硬化型インクが吐出され、単位領域M4に対して1パス目のパス印刷データに基づきノズル21d~26dから紫外線硬化型インクが吐出され画像が形成される。単位領域M4にはUV-LED30yから紫外線が照射され画像が固定される(S315)。次いで、始端に位置した単位領域M1に隣接した単位領域M2およびその内側である中央部の印刷に移行する(S320)。
【0047】
[中央部の印刷]
第4スキャンから第5スキャンに移行するときにテーブル5は1スキャン分だけ副走査方向に沿って始端側に移動する(S322)。第5スキャン以降では各スキャン終了後にテーブル5が始端側に1スキャン分のピッチで移動し、スキャンごとのパス印刷データに応じてそれぞれのノズル21~26から対応する単位領域に紫外線硬化型インクが吐出されUV-LED30v~30yによって画像が固定されてゆく(S324)。
【0048】
[終端部の印刷]
最終スキャンの4スキャン前から3スキャン前に移行するとき(S326)、テーブル5は始端側に1スキャン分だけ移動する。この後、テーブル5はホールドされ始端側に移動することはない(S328)。
最終スキャンから3スキャン前では、ノズル21a~26aから単位領域M21に対して4パス目のパス印刷データに基づき紫外線硬化型インクが吐出され、単位領域M22に対して3パス目のパス印刷データに基づきノズル21b~26bからインクが吐出され画像が固定される。
またノズル21c~26cから単位領域M23に向けて2パス目のパス印刷データに基づいて紫外線硬化型インクが吐出され、ノズル21d~26dから終端部に位置する単位領域M24に向けて4パス中の1パス目のパス印刷データに基づいて紫外線硬化型インクが吐出される画像が固定される(S330、S334)。
【0049】
最終スキャンの2スキャン前では、単位領域M22に対して4パス目のパス印刷データに基づきノズル21b~26bからインクが吐出され、ノズル21c~26cから単位領域M23に向けて3パス目のパス印刷データに基づいて紫外線硬化型インクが吐出され、ノズル21d~26dから単位領域M24に向けて2パス目のパス印刷データに基づいて紫外線硬化型インクが吐出され画像が固定される。単位領域M21に対向したノズル21a~26aは駆動を停止し、UV-LED30vは消灯もしくはシャッタ機構32によって遮光される。
【0050】
最終スキャンの1スキャン前では、ノズル21c~26cから単位領域M23に向けて4パス目のパス印刷データに基づいて紫外線硬化型インクが吐出され、ノズル21d~26dから単位領域M24に向けて3パス目のパス印刷データに基づいて紫外線硬化型インクが吐出され画像が固定される。単位領域M21、M22に対向したノズル21a~26a、ノズル21b~26bは駆動を停止し、UV-LED30vに加えて30wも消灯もしくはシャッタ機構32によって遮光される。
【0051】
最終スキャンでは、ノズル21d~26dからは単位領域M24に向けて4パス目のパス印刷データに基づいて紫外線硬化型インクを吐出固定し、全ての印刷が完了する(S3337)。
このとき、単位領域M21、M22、M23に対向したノズル21a~26a、ノズル21b~26b、ノズル21c~26cは駆動を停止しており、UV-LED30v、30wに加えて30xも消灯もしくはシャッタ機構32によって遮光される。
【0052】
以上のように、本発明のインクジェット印刷装置1は、紫外線硬化型インクを吐出する複数のノズル21~26を有し、主走査方向に移動しながら紫外線硬化型インクをノズルから吐出する印刷ヘッドユニット7と、記録媒体Mが載置され、印刷ヘッドユニット7に対して副走査方向(ノズルの配列方向)で相対移動可能に設けられたテーブル5と、印刷ヘッドユニット7に一体的に組み込まれたUV-LED30とを備えており、複数回の印刷パスによって画像を形成するための単位領域を記録媒体M上に設定し、単位領域ごとのパス印刷データに基づき記録媒体Mに吐出された紫外線硬化型インクに紫外線を照射して画像を固定する。
さらに本発明のインクジェット印刷装置1は、副走査方向における始端ノズル21a~26aが記録媒体Mの始端に位置する単位領域M1に対向する位置と、終端ノズル21d~26dが記録媒体Mの終端に位置する単位領域M24に対向する位置との間で、テーブル5に対する印刷ヘッドユニット7の配置を副走査方向で制御するテーブル配置制御部62と、
テーブル配置制御部62によってテーブル5を印刷ヘッドユニット7に対して相対的に位置を固定しつつ、単位領域M1に対して設定された全ての印刷パスを、始端ノズル21a~26aを用いて実行して画像を形成する始端部印刷制御部51と、
テーブル5をノズル21~26に対して副走査方向に沿って始端側から終端側に走査ごとに相対的に移動させながら、単位領域M1に隣接した単位領域M2から、単位領域M24に隣接した単位領域M23まで印刷パスを実行して画像を形成する中央部印刷制御部52と、
テーブル5を印刷ヘッドユニット7に対して相対的に位置を固定しつつ、単位領域M24に対して設定された全ての印刷パスを、終端ノズル21d~26dを用いて実行して画像を形成する終端部印刷制御部53と、を備える。
これにより、始端部印刷制御部51が単位領域M1に対して設定された全ての印刷パスを始端ノズル21a~26aに実行させ、終端部印刷制御部53が終端に位置する単位領域M24に対して設定された全ての印刷パスを終端ノズル21d~26dおよびUV-LED30yに実行させるため、印刷ヘッドユニット7に対するテーブル5の移動範囲Lを従来よりも狭くすることができる。また、インクジェット印刷装置1の外部から入射する紫外線量を従来よりも低減することができる。
これによりノズル21~26に入射する不要な紫外線量を抑えてノズル21~26における紫外線硬化型インクの吐出不良の発生を低減することができる。また、テーブル5の移動範囲Lを従来よりも狭くできることでインクジェット印刷装置1のサイズをコンパクト化でき、ユーザの利便性を高めることもできる。
【0053】
なお、上記実施形態では、印刷ヘッドユニット7に対して副走査方向にテーブル5が移動する態様について説明したが、テーブル5に対して副走査方向に印刷ヘッドユニット7を移動させてもよい。
このような態様でも上記の実施形態と同様、始端に位置した単位領域に対して設定された全ての印刷パスをノズルヘッド12の始端側端部ノズルに実行させ、終端に位置した単位領域に対して設定された全ての印刷パスをノズルヘッド12の終端側端部ノズルに実行させることができる。
【0054】
また、上記では両端部が凹凸なくライン状に形成された記録媒体Mを例示したが、記録媒体Mの端部が凹凸形状であったり、間欠的に複数の記録媒体Mがテーブル5上に載置される場合など、記録媒体Mに非記録領域があっても本発明を実施することができる。
図9(a)~(d)に示すように例えば、間欠的にテーブル5上に複数の記録媒体ML、MRが載置される場合では、記録媒体ML、MRの配置に合わせてUV-LEDをオン/オフ制御する、シャッタでUV-LEDからの紫外線を遮光する、の少なくともどちらかを実行することでテーブル5や外部環境への紫外線の照射を回避でき、無用な光がノズルに入射することを防止することができる。
このように離間させて複数の記録媒体Mをテーブル5上に配置する場合など、テーブル5上に載置される記録媒体Mに欠損があるときでも、印刷ヘッドユニット7を動かさずに例えば4パスでそれぞれの単位領域ML1~ML4、MR1~MR4に画像を形成し紫外線で固定することもできる。
なお、UV-LEDのオン/オフやシャッタの開閉にあたり、ある程度の照射マージンを確保する必要があるが、インクを確実に固化できる照射強度を得られる範囲で可能な限りそれぞれのマージンを小さくすると無用な紫外線の反射を低減でき好ましい。
【0055】
なお、上記の実施形態では、記録媒体Mの始端に位置した単位領域M1と終端に位置した単位領域M24との両方で画像を4スキャンで形成固定する際に印刷ヘッドユニット7がテーブル5に対して副走査方向に動かないようにしたが、始端側の単位領域M1と終端側の単位領域M24のどちらか一方に画像を形成固定するときに印刷ヘッドユニット7がテーブル5に対して副走査方向に動かないようにしてもよい。
単位領域M1と単位領域M24との両方に画像を形成固定する際に印刷ヘッドユニット7がテーブル5に対して副走査方向に動かないようにする場合と比較して、単位領域M1と単位領域M24のどちらかに画像を形成固定する際に印刷ヘッドユニット7がテーブル5に対して副走査方向に動かないようにする場合では、テーブル5の移動範囲Lが大きくなるために装置全体のサイズが大きくなるが、各ノズルの駆動制御やテーブル5の移動制御などをより簡素化できる。これについては次に詳述する。
【0056】
上記の実施形態では、印刷ヘッドユニット7に対するテーブル5の相対的な移動範囲Lを、始端に位置する単位領域が始端ノズルに対向する位置から、終端に位置する単位領域が終端ノズル21dに対向する位置までだったが、本発明はこの態様に限らず、どちらか一方を従来のマルチパス印刷と同様の印刷態様にしてもよい。
例えば
図10(a)に示すように、記録媒体Mの始端に位置する単位領域に設定された全ての印刷パスを始端ノズルで実行できるように印刷ヘッドユニット107を配置して印刷を開始する。始端に位置する単位領域に隣接した単位領域から終端に位置する単位領域、言い換えると始端に位置した単位領域以外の単位領域、については従来のマルチパス印刷と同様に、印刷パスごとにテーブル105を印刷ヘッドユニット107に対して副走査方向で移動させて印刷をすすめる。このため、終端に位置する単位領域の最後の印刷パスは始端ノズルによって行うことになり、テーブル105上に記録媒体Mが最大限に載置された場合では、印刷ヘッドユニット107の一部がテーブル105の終端からはみ出すことがあるが、印刷を開始する当初では印刷ヘッドユニット107はテーブル105からはみ出すことはない。
このように、テーブル105の相対的な移動範囲Lを、記録媒体Mの始端に位置する単位領域が始端ノズルと対向する位置と、記録媒体Mの終端に位置する単位領域が始端ノズルと対向する位置との間の範囲L2にすることで、従来よりもテーブル105の移動範囲Lを小さくすることができる。また始端に位置した単位領域を印刷する際に、ノズルに余計な紫外線が入射することも低減できる。
図10(b)では
図10(a)の例とは対称的に、記録媒体Mの終端に位置する単位領域に設定された全ての印刷パスを始端ノズルで実行できるように印刷ヘッドユニット107を配置して印刷を完了する。終端に位置する単位領域に隣接した単位領域、言い換えると終端に位置した単位領域以外の単位領域、については従来のマルチパス印刷と同様に、印刷パスごとにテーブル105を印刷ヘッドユニット107に対して副走査方向に移動させて印刷を行う。このため、始端に位置する単位領域の最初の印刷パスは終端ノズルによって行うことになり、テーブル105上に記録媒体Mが最大限に載置された場合では、印刷ヘッドユニット107の一部がテーブル105の始端からはみ出すことがあるが、印刷を完了したときに印刷ヘッドユニット107がテーブル105からはみ出すことはない。このような態様によっても従来よりもテーブルの移動範囲Lを小さくすることができる。また終端に位置した単位領域を印刷する際に、ノズルに余計な紫外線が入射することも低減できる。
【0057】
また、
図10を参照して説明した実施形態でも、印刷ヘッドユニット7に対して副走査方向にテーブル5が移動する態様について説明したが、テーブル5に対して副走査方向に印刷ヘッドユニット7を移動させてもよい。
【0058】
また、上記の実施形態では、光照射器を備え、光照射器からの紫外線で紫外線硬化型インクを硬化するインクジェットプリンタを例示したが、本発明はこれに限らず、光硬化型ではないインクを記録媒体上に吐出して画像を形成するインクジェット印刷装置に適用することもできる。この場合では、印刷ヘッドユニットに対するテーブルの相対的な移動範囲を従来よりも小さくできるため、よりコンパクトなインクジェット印刷装置を提供することができるメリットがある。
【符号の説明】
【0059】
1 インクジェット印刷装置
5 テーブル
6 載置面
7 印刷ヘッドユニット
10 ガイドレール
12 ノズルヘッド
15 紫外線照射器(光照射器)
17 コンピュータ装置
21~26 ノズル
21a~26a 始端ノズル
21d~26d 終端ノズル
30 紫外線照射型発光ダイオード(光照射素子)
32 シャッタ機構
40 マルチパス処理部
51 始端部印刷制御部(第1印刷制御手段)
52 中央部印刷制御部(第2印刷制御手段)
53 終端部印刷制御部(第1印刷制御手段)
60 ヘッド移動制御部
62 テーブル配置制御部(配置制御手段)
64 ノズル制御部
67 LED制御部
72 ユーザ入力部(入力手段)
M 記録媒体