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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/06 20060101AFI20240904BHJP
   B29C 59/04 20060101ALI20240904BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20240904BHJP
   C08F 2/00 20060101ALI20240904BHJP
   C08F 2/44 20060101ALN20240904BHJP
【FI】
C08J7/06 Z CEY
B29C59/04 Z ZNM
C08F2/50
C08F2/00 C
C08F2/44 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020211440
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022098091
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】芝井 康博
(72)【発明者】
【氏名】河合 英嗣
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-284843(JP,A)
【文献】特開2010-125357(JP,A)
【文献】国際公開第2012/105407(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/001847(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/039129(WO,A1)
【文献】特開2019-059907(JP,A)
【文献】国際公開第2012/077738(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/04- 7/06
C08F 2/00- 2/60
B29C 59/00-59/18
B05D 1/00- 7/26
C08J 5/00-5/02;5/12-5/22
B32B 1/00-43/00
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の凸部を有する表面を備える合成高分子膜と、
前記合成高分子膜の前記表面に担持される光触媒粒子とを備え、
前記合成高分子膜を法線方向から見たとき、前記複数の凸部の2次元的な大きさは、20nm超500nm未満であり、
前記合成高分子膜は、表面調整剤を含有する、フィルム。
【請求項2】
前記光触媒粒子の平均粒子径は、20nm以上1000nm以下である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記光触媒粒子の平均粒子径は、20nm以上35nm以下である、請求項2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記光触媒粒子は、酸化タングステンを含む、請求項1~3の何れか一項に記載のフィルム。
【請求項5】
前記合成高分子膜の前記表面において、前記光触媒粒子の担持量は、0.01g/m2以上1.0g/m2以下である、請求項1~4の何れか一項に記載のフィルム。
【請求項6】
前記合成高分子膜は、有機カルボン酸を含有する、請求項1~5の何れか一項に記載のフィルム。
【請求項7】
前記合成高分子膜は、光重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物の硬化物であり、
前記有機カルボン酸は、前記光重合開始剤の光分解生成物である、請求項6に記載のフィルム。
【請求項8】
前記光重合開始剤は、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドを含む、請求項7に記載のフィルム。
【請求項9】
前記合成高分子膜は、架橋構造を有する合成高分子を含有し、
前記架橋構造は、エチレンオキサイド単位を含む、請求項1~8の何れか一項に記載のフィルム。
【請求項10】
前記フィルムにおいて、前記合成高分子膜側の表面の水に対する接触角は、40°以下である、請求項1~の何れか一項に記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ブラックシリコン、セミやトンボの羽が有するナノ表面構造が殺菌作用を有するという知見が報告されている。報告によれば、ブラックシリコン、セミやトンボの羽が有するナノピラーの物理的な構造が、殺菌作用を発現するとされている。
【0003】
そこで、このようなナノピラーの物理的な構造を利用した殺菌性又は抗菌性を有する物品が提案されている。例えば、複数の微小突起が密接して配置され、隣接する前記微小突起間の距離dの平均dAVGが30nm~90nmであり、前記微小突起の高さHの平均HAVGと、前記微小突起間の距離dの平均dAVGとの比で規定される前記微小突起の平均アスペクト比(HAVG/dAVG)が3.0~6.25である微小突起構造体を表面に有することを特徴とする抗菌性物品が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-093939号公報
【文献】特開2009-166502号公報
【文献】国際公開第2011/125486号
【文献】国際公開第2013/183576号
【文献】国際公開第2015/163018号
【文献】国際公開第2016/080245号
【文献】国際公開第2016/208540号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ブラックシリコンは、その殺菌作用を利用しようとしても、量産性に乏しい。また、ブラックシリコンは、硬く脆いので、形状加工性及び耐擦過性が低い。更に、特許文献1に記載の抗菌性物品は、殺菌作用において向上の余地がある。更に、殺菌作用を有している部材は、消臭作用も有していることが望ましい。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐擦過性、消臭作用及び殺菌作用に優れるフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係るフィルムは、複数の凸部を有する表面を備える合成高分子膜と、前記合成高分子膜の前記表面に担持される光触媒粒子とを備える。前記合成高分子膜を法線方向から見たとき、前記複数の凸部の2次元的な大きさは、20nm超500nm未満である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフィルムは、耐擦過性、消臭作用及び殺菌作用に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るフィルムの一例を示す図である。
図2図1において、合成高分子膜が有機カルボン酸(CA)を含有する場合の殺菌作用を説明する図である。
図3図2の次の段階を示す図である。
図4図3の次の段階を示す図である。
図5図4の次の段階を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るフィルムの図1とは別の一例を示す図である。
図7図1のモスアイ構造を形成するために用いるモスアイ用型の製造方法の一工程を示す図である。
図8図7の次の工程を示す図である。
図9図8の次の工程を示す図である。
図10図9の次の工程を示す図である。
図11図10の次の工程を示す図である。
図12図6のモスアイ構造を形成するために用いるモスアイ用型の製造方法の一工程を示す図である。
図13図12の次の工程を示す図である。
図14図13の次の工程を示す図である。
図15図14の次の工程を示す図である。
図16図1のフィルムの製造方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。但し、本発明は、実施形態に何ら限定されず、本発明の目的の範囲内で適宜変更を加えて実施できる。なお、図中、同一又は相当部分については、同一の参照符号を付して説明を省略することがある。また、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。更に、アクリレート及びメタクリレートを包括的に「(メタ)アクリレート」と総称する場合がある。本発明の実施形態において説明する各材料は、特に断りのない限り、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0011】
また、本明細書において、「殺菌(sterilization(microbicidal))」は、物体や液体といった対象物や、限られた空間に含まれる増殖可能な微生物(microorganism)の数を、有効数減少させることをいう。「微生物」は、ウィルス、細菌(バクテリア)、真菌(カビ)を包含する。「抗菌(antimicrobial)」は、微生物の繁殖を抑制・防止することを広く含み、微生物に起因する黒ずみやぬめりを抑制することを含む。
【0012】
<フィルム>
本発明のフィルムは、複数の凸部を有する表面を備える合成高分子膜と、合成高分子膜の表面に担持される光触媒粒子とを備える。合成高分子膜を法線方向から見たとき、複数の凸部の2次元的な大きさは、20nm超500nm未満である。以下、複数の凸部を有し、法線方向から見たときに複数の凸部の2次元的な大きさが20nm超500nm未満である構造を「モスアイ構造」と記載することがある。本発明のフィルムは、耐擦過性、消臭作用及び殺菌作用に優れるため、室内において人が接触する場所の部材として好適に用いることができる。具体的には、本発明のフィルムは、電子機器のタッチパネル、モニター及びインタラクティブホワイトボードの表面を被覆するフィルムなどに好適に用いることができる。
【0013】
本出願人は、陽極酸化ポーラスアルミナ層を用いて、モスアイ構造を有する反射防止膜(反射防止表面)を製造する方法を開発した。陽極酸化ポーラスアルミナ層を用いることによって、反転されたモスアイ構造を有する型を高い量産性で製造することができる。
【0014】
本発明者は、上記の技術を応用することによって、表面が殺菌効果を有する合成高分子膜を開発するに至った(例えば、特許文献5、6及び7参照)。参考のために、上記特許文献5、6及び7の開示内容の全てを本明細書に援用する。
【0015】
本発明のフィルムは、上述の表面が殺菌効果を有する合成高分子膜を更に発展させたフィルムである。本発明のフィルムは、上述の構成を有することにより、耐擦過性、消臭作用及び殺菌作用に優れる。その理由を以下に説明する。本発明のフィルムは、モスアイ構造を有する合成高分子膜と、光触媒粒子とを備える。合成高分子膜は、モスアイ構造を有するため、一定の殺菌作用を有する。また、光触媒粒子は、消臭作用及び殺菌作用を有する。そのため、本発明のフィルムは、モスアイ構造及び光触媒粒子に起因する優れた殺菌作用と、光触媒粒子に起因する消臭作用とを有する。また、合成高分子膜は、複雑な凹凸構造であるモスアイ構造を有するため、光触媒粒子を強固に担持できる。そのため、本発明のフィルムは、耐擦過性に優れ、合成高分子膜側の表面を擦ったとしても光触媒粒子が容易には脱落しない。
【0016】
なお、光触媒粒子の消臭作用の対象となる有機物としては、例えば、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds、VOC)が挙げられ、より具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びアンモニアが挙げられる。
【0017】
複数の凸部の2次元的な大きさは、上述の通り20nm超500nm未満であり、100nm以上300nm以下が好ましく、150nm以上250nm以下がより好ましい。複数の凸部の2次元的な大きさを20nm超とすることで、合成高分子膜から光触媒粒子が脱落することを抑制できる。複数の凸部の2次元的な大きさが500nm未満とすることで、凸部の強度を向上できる。
【0018】
本発明のフィルムにおいて、合成高分子膜側の表面の水に対する接触角としては、40°以下が好ましく、30°以下がより好ましく、20°以下が更に好ましい。上述の水に対する接触角を40°以下とすることで、微生物を含む液が合成高分子膜の表面に付着したときに、微生物を含む液が合成高分子膜の表面に濡れ広がり易くなり、かつ合成高分子膜のモスアイ構造の内部に浸透し易くなる。その結果、液に含まれる微生物が光触媒粒子に接触し易くなる。これにより、本発明のフィルムの殺菌作用を更に向上できる。なお、上述の水に対する接触角は、実施例に記載の方法により測定される。
【0019】
図1を参照して、本発明のフィルムの構造の一例を説明する。図1は、本発明のフィルムの一例であるフィルム1の模式的な断面図を示す。フィルム1は、ベースフィルム2と、ベースフィルム2上に形成される合成高分子膜3と、合成高分子膜3の表面に担持される光触媒粒子4とを備える。ここで例示するフィルム1が備える合成高分子膜3は、ベースフィルム2上に形成されているが、もちろんこれに限られない。合成高分子膜3は、任意の物体の表面に直接形成され得る。つまり、フィルム1において、ベースフィルム2は、省略可能である。
【0020】
[ベースフィルム]
ベースフィルム2としては、特に限定されず、例えば、樹脂製ベースフィルムを用いることができる。ベースフィルム2の厚さとしては、例えば、20μm以上1000μm以下である。
【0021】
[合成高分子膜]
合成高分子膜3は、表面に複数の凸部3aを有している。複数の凸部3aは、モスアイ構造を構成している。合成高分子膜3の法線方向から見たとき、凸部3aの2次元的な大きさDpは、20nm超500nm未満の範囲内にある。ここで、凸部3aの「2次元的な大きさ」とは、表面の法線方向から見たときの凸部3aの面積円相当径を指す。例えば、凸部3aが円錐形の場合、凸部3aの2次元的な大きさは、円錐の底面の直径に相当する。また、凸部3aの典型的な隣接間距離Dintは20nm超1000nm以下である。図1に例示するように、凸部3aが密に配列されており、隣接する凸部3a間に間隙が存在しない(例えば、円錐の底面が部分的に重なる)場合には、凸部3aの2次元的な大きさDpは隣接間距離Dintと等しい。凸部3aの典型的な高さDhは、50nm以上500nm未満である。後述するように、凸部3aの高さDhが150nm以下であっても殺菌作用を発現する。合成高分子膜3の厚さtsに特に制限はなく、凸部3aの高さDhより大きければよい。
【0022】
(合成高分子)
合成高分子膜3は、合成高分子を含有する。合成高分子としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びポリスチレン樹脂が挙げられる。合成高分子としては、アクリル樹脂が好ましい。合成高分子膜3における合成高分子の含有割合としては、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
【0023】
合成高分子膜3は、架橋構造を有する合成高分子を含有することが好ましい。架橋構造は、エチレンオキサイド単位を含むことが好ましい。このような構成とすることで、合成高分子膜3に形成されたモスアイ構造の耐久性を向上できる。エチレンオキサイド単位を含む架橋構造を有する合成高分子としては、例えば、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位を有する合成高分子が挙げられる。ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレート及びポリプロピレングリコールジアクリレートが挙げられる。
【0024】
合成高分子膜3は、例えば、モノマー又はオリゴマーと重合開始剤(例えば、光重合開始剤)とを含有する硬化性樹脂組成物の硬化物である。硬化性樹脂組成物としては、モノマー又はオリゴマーと光重合開始剤とを含有する光硬化性樹脂組成物が好ましい。合成高分子膜3が光硬化性樹脂組成物の硬化物である場合、後述するように、フィルム1をロール・ツー・ロール方式で容易に製造することができる。
【0025】
(有機カルボン酸)
合成高分子膜3は、有機カルボン酸を含有することが好ましい。有機カルボン酸としては、例えば、酢酸、酪酸、乳酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、アルキル安息香酸(例えば、2,4,6-トリメチル安息香酸)、スベリン酸、セバシン酸、サリチル酸、シュウ酸及びコハク酸が挙げられる。有機カルボン酸としては、2,4,6-トリメチル安息香酸又はコハク酸が好ましい。
【0026】
ここで、ある種の有機カルボン酸は、殺菌作用(又は抗菌作用)を有しており、例えば、食品の保存料として用いられている。有機カルボン酸は、種々のメカニズムで、殺菌作用(抗菌作用)を発現すると考えられている。メカニズムには、(1)周囲のpHを低下させることによるもの、及び(2)非解離の酸が細胞膜を通過し、細胞内のpHを低下させることによるものがある。メカニズム(2)は、弱酸(解離定数が小さい)ほど寄与が大きくなる。例えば、Rosa M. Raybaudi-Massilia他、“Control of Pathogenic and Spoilage Microorganisms in Fresh-cut Fruits and Fruit Juices by Traditional and Alternative Natural Antimicrobials“,COMPREHENSIVE REVIEWS IN FOOD SCIENCE AND FOOD SAFETY,Vol.8,pp.157-180,2009(特にp.162)を参照。
【0027】
後に実施例を示して説明するように、有機カルボン酸を含有する合成高分子膜を備える本発明のフィルムの殺菌作用は、上記のメカニズム(1)及び(2)によって向上させられたと考えられる。
【0028】
図2~5を参照して、合成高分子膜3が有機カルボン酸(CA)を含有する場合の殺菌作用を説明する。図2において、フィルム1の備える合成高分子膜3は、有機カルボン酸(CA)を含有する。合成高分子膜3の表面には、微生物を含む液Lの液滴が付着している。図3は、図2の次の段階を示す。図3に示すように、微生物を含む液Lは、合成高分子膜3の表面に徐々に濡れ広がると共に、モスアイ構造の内部に徐々に浸透する(毛細管現象)。ここで、光触媒粒子4は、親水性が高い。そのため、光触媒粒子4は、微生物を含む液Lが合成高分子膜3の表面に濡れ広がる現象と、モスアイ構造の内部に浸透する現象(毛細管現象)とを促進する。図4は、図3の次の段階を示す。図4に示すように、微生物を含む液Lは、合成高分子膜3の表面に濡れ広がると共に、モスアイ構造の内部に完全に浸透し、合成高分子膜3を被覆する液膜を形成する。これにより、合成高分子膜3及び微生物を含む液Lの接触面積が大きくなる。それに伴い、合成高分子膜3が含有する有機カルボン酸(CA)の一部は、微生物を含む液Lに浸透する。有機カルボン酸(CA)は、光触媒粒子4と共に、上述の殺菌作用を発揮する。図5は、図4の次の段階を示す。図5に示すように、微生物を含む液Lは、蒸発によって体積が減り、有機カルボン酸(CA)の濃度が増大する。これにより、有機カルボン酸(CA)による殺菌作用が向上する。最終的には、微生物を含む液Lは完全に蒸発する。それに伴って、微生物を含む液Lに含まれていた有機カルボン酸(CA)は、合成高分子膜3に吸収される。合成高分子膜3は、凸部3aによって微生物の膜を破壊することで、更なる殺菌作用を発揮する。以上、図2~5を参照して、合成高分子膜3が有機カルボン酸(CA)を含有する場合の殺菌作用を説明した。
【0029】
有機カルボン酸を合成高分子膜3に添加する方法としては、例えば、上述の光硬化性樹脂組成物に予め有機カルボン酸を添加する方法、及び光分解生成物又は熱分解生成物として有機カルボン酸を発生する成分(以下、酸発生剤と記載することがある)を上述の光硬化性樹脂組成物に添加する方法が挙げられる。ここで、後述するように、フィルム1は、ロール・ツー・ロール方式で製造することができる。この製造方法では、光硬化性樹脂組成物により形成される未硬化合成高分子膜を、円筒状のモスアイ用型と接触させる。この場合、光硬化性樹脂組成物に予め有機カルボン酸が添加されていると、未硬化合成高分子膜及びモスアイ用型の離型性が低下することがある。そのため、有機カルボン酸を合成高分子膜3に添加する方法としては、酸発生剤を上述の光硬化性樹脂組成物に添加する方法が好ましい。
【0030】
酸発生剤としては、例えば、重合開始剤(特に、光重合開始剤)、及び重合開始剤として機能しない化合物が挙げられる。酸発生剤としては、光重合開始剤が好ましい。上述の未硬化合成高分子膜に光重合開始剤を添加することで、未硬化合成高分子膜の硬化と、有機カルボン酸の添加とを同時に行うことができる。以上をまとめると、合成高分子膜3としては、光重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物の硬化物が好ましい。有機カルボン酸としては、光重合開始剤の光分解生成物が好ましい。
【0031】
光重合開始剤としては、例えば、p-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2’-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のアセトフェノン系光重合開始剤;ベンゾフェノン、4,4’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン等のケトン系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のベンジルケタール系光重合開始剤;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ジフェニル(2,4,6-トリメトキシベンゾイル)フォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤;1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン等のアルキルフェノン系光重合開始剤などが挙げられる。
【0032】
光重合開始剤としては、殺菌作用を高める観点から、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が好ましく、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドがより好ましい。ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドの光分解生成物は、2,4,6-トリメチル安息香酸である。
【0033】
合成高分子膜3における有機カルボン酸の含有割合としては、0.1質量%以上10.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。有機カルボン酸の含有割合を0.1質量%以上とすることで、フィルム1の殺菌作用をより向上できる。有機カルボン酸の含有割合を10.0質量%以下とすることで、有機カルボン酸のブリードアウトを抑制できる。
【0034】
フィルム1において、合成高分子膜3側の表面に200μLの水を滴下して5分後に回収される水溶液のpHは、7.0以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましく、4.5以下であることが更に好ましい。光触媒(例えば、酸化タングステン)は、高pH環境では不安定になる場合がある。そのため、上述のpHが7.0以下であることで、光触媒粒子による殺菌作用及び消臭作用を向上できる。また、低pH環境を苦手とする微生物は比較的多いため、上述のpHが5.0以下であることで、フィルム1の殺菌作用を更に向上できる。上述のpHを調整する方法としては、例えば、合成高分子膜3に酸(特に、有機カルボン酸)を添加する方法、及び合成高分子膜3が含有する合成高分子に酸基を導入する方法が挙げられる。なお、上述のpHは、フィルム1による腐食を抑制する観点から、3.0以上が好ましく、4.0以上がより好ましい。
【0035】
(表面調整剤)
合成高分子膜3は、表面調整剤を含有することが好ましい。表面調整剤は、合成高分子膜3の表面の親水性を向上させる。合成高分子膜3が表面調整剤を含有することで、微生物を含む液が合成高分子膜3の表面に付着したときに、微生物を含む液が合成高分子膜3の表面に濡れ広がり易くなり、かつモスアイ構造の内部に浸透し易くなる。その結果、液に含まれる微生物が光触媒粒子4に接触し易くなる。これにより、フィルム1の殺菌作用を更に向上できる。表面調整剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びアリルアミン重合体が挙げられる。
【0036】
合成高分子膜3における表面調整剤の含有割合としては、0.1質量%以上10.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上3.0質量%以下がより好ましい。表面調整剤の含有割合を0.1質量%以上とすることで、合成高分子膜3の表面の親水性を十分に向上させることができる。表面調整剤の含有割合を10.0質量%以下とすることで、表面調整剤のブリードアウトを抑制できる。
【0037】
(他の成分)
なお、合成高分子膜3は、合成高分子、有機カルボン酸及び表面調整剤以外の他の成分(例えば、有機カルボン酸以外の殺菌作用を有する成分、レベリング剤及び離型剤)を含有しても良い。
【0038】
[光触媒粒子]
光触媒粒子4は、合成高分子膜3の表面に担持される。光触媒粒子4及び合成高分子膜3の間には、化学結合(例えば、イオン結合及び共有結合)が存在していないことが好ましい。合成高分子膜3に形成されているモスアイ構造は表面積が大きい。そのため、光触媒粒子4及び合成高分子膜3は、化学結合が存在していなくても十分に吸着することができる。
【0039】
光触媒粒子4は、光触媒を主成分とする粒子である。光触媒としては、例えば、酸化チタン及び酸化タングステンが挙げられる。この中で、酸化タングステンは、可視光において光触媒活性を発揮する。フィルム1は、例えば、室内において使用することが想定される。そのため、光触媒としては、酸化タングステンが好ましい。光触媒粒子4における酸化タングステンの含有割合としては、90質量%以上が好ましく、97質量%以上がより好ましい。
【0040】
酸化タングステンとしては、例えば、WO3(三酸化タングステン)、WO2、WO、W23、W45、W411、W2573、W2058、及びW2468、並びにこれらの混合物が挙げられる。フィルム1の消臭作用及び殺菌作用を更に向上させる観点から、酸化タングステンとしては、WO3が好ましい。
【0041】
光触媒粒子4に含有される酸化タングステンの結晶構造は、特に限定されない。酸化タングステンの結晶構造としては、例えば、単斜晶、三斜晶、斜方晶、及びこれらのうち少なくとも2種の混晶が挙げられる。
【0042】
光触媒粒子4は、実質的に酸化タングステンのみを含有する酸化タングステンコア粒子と、この酸化タングステンコア粒子が担持する助触媒とを備える複合粒子であってもよい。このような複合粒子を用いることで、フィルム1の消臭作用及び殺菌作用を更に向上できる。酸化タングステンコア粒子は、1種の助触媒のみを担持していてもよく、2種以上の助触媒を担持していてもよい。
【0043】
助触媒に含有される金属としては、例えば、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、パラジウム、鉄、ニッケル、ルテニウム、イリジウム、ニオブ、ジルコニウム、及びモリブデンが挙げられる。これらの金属は、例えば、錯体、塩化物、臭化物、沃化物、酸化物、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、燐酸塩、又は有機酸塩の形態で、助触媒に含有されていてもよい。助触媒の好適な例としては、白金が挙げられる。光触媒粒子4は、酸化タングステンコア粒子と、酸化タングステンコア粒子に担持される助触媒としての白金とを備える複合粒子が好ましい。
【0044】
光触媒粒子4における助触媒の含有割合(以下、助触媒担持率と記載することがある)としては、0.01質量%以上3質量%以下が好ましい。助触媒担持率を0.01質量%以上3質量%以下とすることで、フィルム1の消臭作用及び殺菌作用を更に向上できる。
【0045】
光触媒粒子4の平均粒子径としては、20nm以上1000nm以下が好ましく、30nm以上500nm以下がより好ましく、40nm以上200nm以下が更に好ましい。光触媒粒子4の平均粒子径を20nm以上とすることで、光触媒粒子4の光触媒活性を更に向上させることができ、その結果、フィルム1の消臭作用及び殺菌作用を更に向上できる。光触媒粒子4の平均粒子径を1000nm以下とすることで、光触媒粒子4が合成高分子膜3から脱落することを抑制できる。
【0046】
また、光触媒粒子4の平均粒子径を35nm以下(好ましくは、30nm以下)とすることで、フィルム1は優れた反射防止効果を有する反射防止膜として使用できる。ここで、モスアイ構造は、元々は優れた反射防止効果を付与する構造として発見された。そのため、モスアイ構造が形成されている合成高分子膜3は、優れた反射防止効果を有する。一方で、光触媒粒子4は、隠ぺい性を示す傾向があり、フィルム1を不透明にする。そのため、フィルム1を反射防止膜として使用するためには、光触媒粒子4の隠ぺい性を低下させる必要がある。光触媒粒子4の隠ぺい性は、光触媒粒子4の粒子径が可視光の波長の半分程度である場合(つまり、粒子径が200~300nm程度の場合)に最大となる。光触媒粒子4は、粒子径が可視光の波長の半分を下回ると、優れた透明性を示す傾向がある。通常、粒子径が100nm以下の光触媒粒子4は、透明である。但し、光触媒粒子4の粒子径には分布がある。粒子径が100nm超の光触媒粒子4を含まない光触媒粒子4を得るためには、光触媒粒子4の平均粒子径を35nm以下に調整する必要がある。
【0047】
合成高分子膜3の表面において、光触媒粒子4の担持量としては、0.01g/m2以上1.0g/m2以下が好ましく、0.05g/m2以上0.5g/m2以下がより好ましく、0.1g/m2以上0.3g/m2以下が更に好ましい。光触媒粒子4の担持量を0.01g/m2以上とすることで、フィルム1の消臭作用及び殺菌作用を更に向上できる。光触媒粒子4の担持量を1.0g/m2以下とすることで、フィルム1から光触媒粒子4が脱落して周囲に付着することを抑制できる。
【0048】
図6は、本発明のフィルムの別の一例であるフィルム11の模式的な断面図を示す。図6に示すフィルム11は、ベースフィルム12と、ベースフィルム12上に形成された合成高分子膜13と、合成高分子膜13の表面に担持される光触媒粒子14とを備える。合成高分子膜13は、表面に複数の凸部13aを有している。複数の凸部13aは、モスアイ構造を構成している。図6のフィルム11は、図1のフィルム1と比較し、合成高分子膜13が有する凸部13aの構造が異なっている。フィルム1と共通の特徴については説明を省略することがある。
【0049】
合成高分子膜13の法線方向から見たとき、凸部13aの2次元的な大きさDpは20nm超500nm未満の範囲内にある。また、凸部13aの典型的な隣接間距離Dintは20nm超1000nm以下であり、かつ、Dp<Dintである。すなわち、合成高分子膜13では、隣接する凸部13aの間に平坦部が存在する。凸部13aは、空気側に円錐形の部分を有する円柱状であり、凸部13aの典型的な高さDhは、50nm以上500nm未満である。また、凸部13aは、規則的に配列されていてもよいし、不規則に配列されていてもよい。凸部13aが規則的に配列されている場合、Dintは配列の周期をも表すことになる。このことは、当然ながら、図1の合成高分子膜13についても同じである。
【0050】
なお、本明細書において、「モスアイ構造」は、図1に示した合成高分子膜3の凸部3aの様に、断面積(膜面に平行な断面)が増加する形状の凸部で構成される、優れた反射機能を有するナノ表面構造だけでなく、図6に示した合成高分子膜13の凸部13aの様に、断面積(膜面に平行な断面)が一定の部分を有する凸部で構成されるナノ表面構造も包含する。なお、微生物の細胞壁及び/又は細胞膜を破壊するためには、円錐形の部分を有することが好ましい。但し、円錐形の先端は、ナノ表面構造である必要は必ずしもなく、セミの羽が有するナノ表面構造を構成するナノピラー程度の丸み(約60nm)を有していてもよい。
【0051】
[フィルムの製造方法]
本発明のフィルムは、例えば、モスアイ構造が形成された合成高分子膜を用意する工程と、合成高分子膜の表面(上述の複数の凸部を有する表面)に、光触媒粒子を担持させる工程とを備える方法により製造できる。
【0052】
合成高分子膜の表面に、光触媒粒子を担持させる方法としては、例えば、光触媒粒子を含有する光触媒粒子組成物を合成高分子膜の表面に塗布する方法が挙げられる。光触媒粒子組成物は、分散媒として水を含有することが好ましい。光触媒粒子組成物を合成高分子膜の表面に塗布した後は、合成高分子膜を加熱して分散媒を蒸発させることが好ましい。
【0053】
以下では、モスアイ構造が形成された合成高分子膜を用意する方法の一例を説明する。
【0054】
図1及び図6に例示したようなモスアイ構造が形成された合成高分子膜は、例えば、反転されたモスアイ構造を有する型(以下、「モスアイ用型」という)を用いることで得られる。反転されたモスアイ構造を有する陽極酸化ポーラスアルミナ層をそのまま型として利用すると、モスアイ構造を安価に製造することができる。特に、円筒状のモスアイ用型を用いると、ロール・ツー・ロール方式によりモスアイ構造を効率良く製造することができる。このようなモスアイ用型は、特許文献2~4に記載されている方法で製造することができる。
【0055】
図7~11を参照して、図1の合成高分子膜3を形成するための、モスアイ用型26の製造方法を説明する。
【0056】
まず、図7に示すように、型基材21を用意する。型基材21は、アルミニウム基材22と、アルミニウム基材22の表面に形成された無機材料層23と、無機材料層23の上に堆積されたアルミニウム膜24とを有する。
【0057】
アルミニウム基材22としては、アルミニウムの純度が99.50質量%以上99.99質量%未満である比較的剛性の高いアルミニウム基材を用いる。アルミニウム基材22に含まれる不純物としては、鉄(Fe)、ケイ素(Si)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、スズ(Sn)及びマグネシウム(Mg)からなる群から選択された少なくとも1つの元素を含むことが好ましく、特にMgが好ましい。エッチング工程におけるピット(窪み)が形成されるメカニズムは、局所的な電池反応であるので、理想的にはアルミニウムよりも貴な元素を全く含まず、卑な金属であるMg(標準電極電位が-2.36V)を不純物元素として含むアルミニウム基材22を用いることが好ましい。アルミニウムよりも貴な元素の含有割合が10ppm以下であれば、電気化学的な観点からは、上述の貴な元素を実質的に含んでいないと言える。Mgの含有割合は、全体の0.1質量%以上であることが好ましく、約3.0質量%以下の範囲であることが更に好ましい。Mgの含有割合が0.1質量%未満では十分な剛性が得られない。一方、含有割合が大きくなると、Mgの偏析が起こり易くなる。モスアイ用型を形成する表面付近に偏析が生じても電気化学的には問題とならないが、Mgはアルミニウムとは異なる形態の陽極酸化膜を形成するので、不良の原因となる。不純物元素の含有割合は、アルミニウム基材22の形状、厚さ及び大きさに応じて、必要とされる剛性に応じて適宜設定すればよい。例えば圧延加工によって板状のアルミニウム基材22を作製する場合には、Mgの含有割合は約3.0質量%が適当であるし、押出加工によって円筒などの立体構造を有するアルミニウム基材22を作製する場合には、Mgの含有割合は2.0質量%以下であることが好ましい。Mgの含有割合が2.0質量%を超えると、一般に押出加工性が低下する。
【0058】
アルミニウム基材22として、例えば、JIS-A1050、Al-Mg系合金(例えばJIS-A5052)、又はAl-Mg-Si系合金(例えばJIS-A6063)で形成された円筒状のアルミニウム管を用いる。
【0059】
アルミニウム基材22の表面は、バイト切削が施されていることが好ましい。アルミニウム基材22の表面に、例えば砥粒が残っていると、砥粒が存在する部分において、アルミニウム膜24とアルミニウム基材22との間で導通しやすくなる。砥粒以外にも、凹凸が存在するところでは、アルミニウム膜24とアルミニウム基材22との間で局所的に導通しやすくなる。アルミニウム膜24とアルミニウム基材22との間で局所的に導通すると、アルミニウム基材22内の不純物とアルミニウム膜24との間で局所的に電池反応が起こる可能性がある。
【0060】
無機材料層23の材料としては、例えば酸化タンタル(Ta25)又は二酸化シリコン(SiO2)を用いることができる。無機材料層23は、例えばスパッタ法により形成することができる。無機材料層23として、酸化タンタル層を用いる場合、酸化タンタル層の厚さは、例えば、200nmである。
【0061】
無機材料層23の厚さは、100nm以上500nm未満であることが好ましい。無機材料層23の厚さが100nm未満であると、アルミニウム膜24に欠陥(主にボイド、すなわち結晶粒間の間隙)が生じることがある。また、無機材料層23の厚さが500nm以上であると、アルミニウム基材22の表面状態によって、アルミニウム基材22とアルミニウム膜24との間が絶縁されやすくなる。アルミニウム基材22側からアルミニウム膜24に電流を供給することによってアルミニウム膜24の陽極酸化を行うためには、アルミニウム基材22とアルミニウム膜24との間に電流が流れる必要がある。円筒状のアルミニウム基材22の内面から電流を供給する構成を採用すると、アルミニウム膜24に電極を設ける必要がないので、アルミニウム膜24を全面にわたって陽極酸化できると共に、陽極酸化の進行に伴って電流が供給され難くなるという問題も起こらず、アルミニウム膜24を全面にわたって均一に陽極酸化することができる。
【0062】
また、厚い無機材料層23を形成するためには、一般的には成膜時間を長くする必要がある。成膜時間が長くなると、アルミニウム基材22の表面温度が不必要に上昇し、その結果、アルミニウム膜24の膜質が悪化し、欠陥(主にボイド)が生じることがある。無機材料層23の厚さが500nm未満であれば、このような不具合の発生を抑制することもできる。
【0063】
アルミニウム膜24は、例えば、特許文献3に記載されているように、純度が99.99質量%以上のアルミニウムで形成された膜(以下、「高純度アルミニウム膜」ということがある。)である。アルミニウム膜24は、例えば、真空蒸着法又はスパッタ法を用いて形成される。アルミニウム膜24の厚さは、約500nm以上約1500nm以下の範囲にあることが好ましく、例えば、約1μmである。
【0064】
また、アルミニウム膜24として、高純度アルミニウム膜に代えて、特許文献4に記載されている、アルミニウム合金膜を用いてもよい。特許文献4に記載のアルミニウム合金膜は、アルミニウムと、アルミニウム以外の金属元素と、窒素とを含む。本明細書において、「アルミニウム膜」は、高純度アルミニウム膜だけでなく、特許文献4に記載のアルミニウム合金膜を含むものとする。
【0065】
上記アルミニウム合金膜を用いると、反射率が80%以上の鏡面を得ることができる。アルミニウム合金膜を構成する結晶粒の、アルミニウム合金膜の法線方向から見たときの平均粒子径は、例えば、100nm以下であり、アルミニウム合金膜の最大表面粗さRmaxは60nm以下である。アルミニウム合金膜に含まれる窒素の含有割合は、例えば、0.5質量%以上5.7質量%以下である。アルミニウム合金膜に含まれるアルミニウム以外の金属元素の標準電極電位とアルミニウムの標準電極電位との差の絶対値は0.64V以下であり、アルミニウム合金膜中の金属元素の含有割合は、1.0質量%以上1.9質量%以下であることが好ましい。金属元素は、例えば、Ti又はNdである。但し、金属元素はこれに限られず、金属元素の標準電極電位とアルミニウムの標準電極電位との差の絶対値が0.64V以下である他の金属元素(例えば、Mn、Mg、Zr、V及びPb)であってもよい。更に、金属元素は、Mo、Nb又はHfであってもよい。アルミニウム合金膜は、これらの金属元素を2種類以上含んでもよい。アルミニウム合金膜は、例えば、DCマグネトロンスパッタ法で形成される。アルミニウム合金膜の厚さも約500nm以上約1500nm以下の範囲にあることが好ましく、例えば、約1μmである。
【0066】
次に、図8に示すように、アルミニウム膜24の表面24aを陽極酸化することによって、複数の凹部(細孔)25aを有するポーラスアルミナ層25を形成する。ポーラスアルミナ層25は、凹部25aを有するポーラス層と、バリア層(凹部(細孔)25aの底部)とを有している。隣接する凹部25aの間隔(中心間距離)は、バリア層の厚さのほぼ2倍に相当し、陽極酸化時の電圧にほぼ比例することが知られている。この関係は、図11に示す最終的なポーラスアルミナ層25についても成立する。
【0067】
ポーラスアルミナ層25は、例えば、酸性の電解液中で表面24aを陽極酸化することによって形成される。ポーラスアルミナ層25を形成する工程で用いられる電解液は、例えば、蓚酸、酒石酸、燐酸、硫酸、クロム酸、クエン酸、リンゴ酸からなる群から選択される酸を含む水溶液である。例えば、アルミニウム膜24の表面24aを、蓚酸水溶液(濃度0.3質量%、液温10℃)を用いて、印加電圧80Vで55秒間陽極酸化を行うことにより、ポーラスアルミナ層25を形成する。
【0068】
次に、図9に示すように、ポーラスアルミナ層25をアルミナのエッチャントに接触させることによって所定の量だけエッチングすることにより凹部25aの開口部を拡大する。エッチング液の種類・濃度、及びエッチング時間を調整することによって、エッチング量(すなわち、凹部25aの大きさ及び深さ)を制御することができる。エッチング液としては、例えば10質量%の燐酸や、蟻酸、酢酸、クエン酸などの有機酸や硫酸の水溶液やクロム酸燐酸混合水溶液を用いることができる。例えば、燐酸水溶液(10質量%、30℃)を用いて20分間エッチングを行う。
【0069】
次に、図10に示すように、再び、アルミニウム膜24を部分的に陽極酸化することにより、凹部25aを深さ方向に成長させると共にポーラスアルミナ層25を厚くする。ここで凹部25aの成長は、既に形成されている凹部25aの底部から始まるので、凹部25aの側面は階段状になる。
【0070】
更にこの後、必要に応じて、ポーラスアルミナ層25をアルミナのエッチャントに接触させることによって更にエッチングすることにより凹部25aの孔径を更に拡大する。エッチング液としては、ここでも上述したエッチング液を用いることが好ましく、現実的には、同じエッチング浴を用いればよい。
【0071】
このように、上述した陽極酸化工程及びエッチング工程を交互に複数回(例えば5回:陽極酸化を5回とエッチングを4回)繰り返すことによって、図11に示すように、反転されたモスアイ構造を有するポーラスアルミナ層25を有するモスアイ用型26が得られる。陽極酸化工程で終わることによって、凹部25aの底部を点にできる。すなわち、先端が尖った凸部を形成することができる型が得られる。
【0072】
図11に示すポーラスアルミナ層25(厚さtp)は、ポーラス層(厚さは凹部25aの深さDdに相当)とバリア層(厚さtb)とを有する。ポーラスアルミナ層25は、合成高分子膜3が有するモスアイ構造を反転した構造を有するので、その大きさを特徴づける対応するパラメータに同じ記号を用いることがある。
【0073】
ポーラスアルミナ層25が有する凹部25aは、例えば円錐形であり、階段状の側面を有してもよい。凹部25aの二次元的な大きさ(表面の法線方向から見たときの凹部の面積円相当径)Dpは20nm超500nm未満で、深さDdは50nm以上1000nm(1μm)未満程度であることが好ましい。また、凹部25aの底部は尖っている(最底部は点になっている)ことが好ましい。凹部25aは密に充填されている場合、ポーラスアルミナ層25の法線方向から見たときの凹部25aの形状を円と仮定すると、隣接する円は互いに重なり合い、隣接する凹部25aの間に鞍部が形成される。なお、略円錐形の凹部25aが鞍部を形成するように隣接しているときは、凹部25aの二次元的な大きさDpは隣接間距離Dintと等しい。ポーラスアルミナ層25の厚さtpは、例えば、約1μm以下である。
【0074】
なお、図11に示すポーラスアルミナ層25の下には、アルミニウム膜24のうち、陽極酸化されなかったアルミニウム残存層24bが存在している。必要に応じて、アルミニウム残存層24bが存在しないように、アルミニウム膜24を実質的に完全に陽極酸化してもよい。例えば、無機材料層23が薄い場合には、アルミニウム基材22側から容易に電流を供給することができる。
【0075】
ここで例示したモスアイ用型の製造方法は、特許文献2~4に記載の反射防止膜を作製するための型を製造することができる。高精細な表示パネルに用いられる反射防止膜には、高い均一性が要求されるので、上記のようにアルミニウム基材の材料の選択、アルミニウム基材の鏡面加工、アルミニウム膜の純度や成分の制御を行うことが好ましいが、殺菌作用に高い均一性は求められないので、上記の型の製造方法を簡略化することができる。例えば、アルミニウム基材の表面を直接、陽極酸化してもよい。また、このときアルミニウム基材に含まれる不純物の影響でピットが形成されても、最終的に得られる合成高分子膜3のモスアイ構造に局所的な構造の乱れが生じるだけで、殺菌作用に与える影響はほとんどないと考えられる。
【0076】
また、上述の型の製造方法によると、反射防止膜の作製に好適な、凹部の配列の規則性が低い型を製造することができる。モスアイ構造の殺菌作用を利用する場合には、凸部の配列の規則性は影響しないと考えられる。規則的に配列された凸部を有するモスアイ構造を形成するための型は、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0077】
例えば厚さが約10μmのポーラスアルミナ層を形成した後、生成されたポーラスアルミナ層をエッチングにより除去してから、上述のポーラスアルミナ層を生成する条件で陽極酸化を行えばよい。厚さが10μmのポーラスアルミナ層は、陽極酸化時間を長くすることによって形成される。このように比較的厚いポーラスアルミナ層を生成し、このポーラスアルミナ層を除去すると、アルミニウム膜又はアルミニウム基材の表面に存在するグレインによる凹凸や加工ひずみの影響を受けることなく、規則的に配列された凹部を有するポーラスアルミナ層を形成することができる。なお、ポーラスアルミナ層の除去には、クロム酸と燐酸との混合液を用いることが好ましい。長時間にわたるエッチングを行うとガルバニック腐食が発生することがあるが、クロム酸と燐酸との混合液はガルバニック腐食を抑制する効果がある。
【0078】
図6に示した合成高分子膜13を形成するためのモスアイ用型も、基本的に、上述した陽極酸化工程とエッチング工程とを組み合わせることによって製造することができる。図12~15を参照して、合成高分子膜13を形成するための、モスアイ用型36の製造方法を説明する。
【0079】
まず、図12に示すように、型基材31を用意する。型基材31は、アルミニウム基材32と、アルミニウム基材32の表面に形成された無機材料層33と、無機材料層33の上に堆積されたアルミニウム膜34とを有する。次に、アルミニウム膜34の表面34aを陽極酸化することによって、複数の凹部(細孔)35aを有するポーラスアルミナ層35を形成する。
【0080】
次に、図13に示すように、ポーラスアルミナ層35をアルミナのエッチャントに接触させることによって所定の量だけエッチングすることにより凹部35aの開口部を拡大する。このとき、図9を参照して説明したエッチング工程よりも、エッチング量を少なくする。すなわち、凹部35aの開口部の大きさを小さくする。例えば、燐酸水溶液(10質量%、30℃)を用いて10分間エッチングを行う。
【0081】
次に、図14に示すように、再び、アルミニウム膜34を部分的に陽極酸化することにより、凹部35aを深さ方向に成長させると共にポーラスアルミナ層35を厚くする。このとき、図10を参照して説明した陽極酸化工程よりも、凹部35aを深く成長させる。例えば、蓚酸水溶液(濃度0.3質量%、液温10℃)を用いて、印加電圧80Vで165秒間陽極酸化を行う(図10では55秒間)。
【0082】
その後、図11を参照して説明したのと同様に、エッチング工程及び陽極酸化工程を交互に複数回くり返す。例えば、エッチング工程を3回、陽極酸化工程を3回、交互に繰り返すことによって、図15に示すように、反転されたモスアイ構造を有するポーラスアルミナ層35を有するモスアイ用型36が得られる。このとき、凹部35aの二次元的な大きさDpは隣接間距離Dintより小さい(Dp<Dint)。
【0083】
微生物の大きさはその種類によって異なる。例えば緑膿菌の大きさは約1μmであるが、細菌には、数100nm~約5μmの大きさのものがあり、真菌は数μm以上である。例えば、2次元的な大きさが約200nmの凸部は、約0.5μm以上の大きさの微生物に対しては殺菌作用を有すると考えられるが、数100nmの大きさの細菌に対しては、凸部が大きすぎるために十分な殺菌作用を発現しない可能性がある。また、ウィルスの大きさは数10nm~数100nmであり、100nm以下のものも多い。なお、ウィルスは細胞膜を有しないが、ウィルス核酸を取り囲むカプシドと呼ばれるタンパク質の殻を有している。ウィルスは、この殻の外側に膜状のエンベロープを有するウィルスと、エンベロープを有しないウィルスとに分けられる。エンベロープを有するウィルスにおいては、エンベロープは主として脂質からなるので、エンベロープに対して凸部が同様に作用すると考えられる。エンベロープを有するウィルスとして、例えば、インフルエンザウィルスやエボラウィルスが挙げられる。エンベロープを有しないウィルスにおいては、このカプシドと呼ばれるタンパク質の殻に対して凸部が同様に作用すると考えられる。
【0084】
上述のようにして、種々のモスアイ構造を形成することができるモスアイ用型を製造することができる。
【0085】
次に、図16を参照して、モスアイ用型101を用いた合成高分子膜3の製造方法を説明する。図16は、ロール・ツー・ロール方式により合成高分子膜3を製造する方法を説明するための模式的な断面図である。以下では、上記のモスアイ用型101を用い、被加工物としてのベースフィルム2の表面に合成高分子膜を製造する方法を説明するが、合成高分子膜を製造する方法は、これに限られず、他の形状の形を用いて種々の被加工物の表面上に合成高分子膜3を製造することができる。
【0086】
まず、円筒状のモスアイ用型101を用意する。なお、円筒状のモスアイ用型101は、例えば図7~11を参照して説明した製造方法で製造されるモスアイ用型26である。
【0087】
次に、光硬化性樹脂組成物(図16では、紫外線硬化性樹脂組成物)をベースフィルム2の表面に付与する。これにより、光硬化性樹脂組成物を含有する未硬化合成高分子膜3bをベースフィルム2上に形成する。ベースフィルム2は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム又はTAC(トリアセチルセルロース)フィルムである。ベースフィルム2は、図示しない巻き出しローラから巻き出され、その後、表面に、例えばスリットコータ等により紫外線硬化性樹脂組成物が付与される。
【0088】
次に、未硬化合成高分子膜3bが表面に形成されたベースフィルム2を、モスアイ用型101に押し付けた状態で、未硬化合成高分子膜3bに光(図16では紫外線(UV))を照射する。これにより、未硬化合成高分子膜3bが含有する紫外線硬化性樹脂組成物を硬化する。ベースフィルム2は、図16に示すように、2個の支持ローラ102によって支持されている。支持ローラ102は、回転機構を有し、ベースフィルム2を搬送する。また、円筒状のモスアイ用型101は、ベースフィルム2の搬送速度に対応する回転速度で、図16に矢印で示す方向に回転される。
【0089】
その後、ベースフィルム2からモスアイ用型101を分離することによって、モスアイ用型101の反転されたモスアイ構造が転写された合成高分子膜3がベースフィルム2の表面に形成される。表面に合成高分子膜3が形成されたベースフィルム2は、図示しない巻き取りローラにより巻き取られる。
【0090】
合成高分子膜3の表面は、モスアイ用型101のナノ表面構造を反転したモスアイ構造を有する。用いるモスアイ用型101のナノ表面構造に応じて、図6に示した合成高分子膜13を作製することもできる。合成高分子膜3及び合成高分子膜13を形成する材料は、紫外線硬化性樹脂組成物に限られず、可視光で硬化可能な光硬化性樹脂組成物を用いることもできる。
【実施例
【0091】
以下、実施例を示して本発明を更に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0092】
なお、本実施例において、酸化タングステン粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ株式会社製「S-4700」)を用いて測定した100個の酸化タングステン粒子の粒子径の平均値である。
【0093】
<フィルムの準備>
以下の方法により、実施例1~15、参考例1~2及び比較例1~6のフィルムを製造した。まず、各フィルムの製造に用いたモノマー、表面調整剤、重合開始剤、有機酸及び光触媒水分散体を下記表1に示す。下記表1において、EO基は、エチレンオキサイド基を示す。EOモル数は、エチレンオキサイド基のモル数を示す。
【0094】
【表1】
【0095】
表1に記載の各成分のメーカー及び品番を以下に示す。
M280:MIWON社製「M280」
M282:MIWON社製「M282」
M300:MIWON社製「M300」
APG400:新中村化学工業株式会社製「APG400」
DL100:理研ビタミン株式会社製「ポエムDL100」
PAA03:ニットーボーメディカル株式会社製「PAA03」
819:IGM Resins社製「Omnirad(登録商標)819」
2959:IGM Resins社製「Omnirad(登録商標)2959」
コハク酸:東京化成工業株式会社製「S0100(製品コード)」
光触媒水分散体:後述する調製品
【0096】
重合開始剤(819)は、光分解生成物として遊離有機カルボン酸(2,4,6-トリメチル安息香酸)を発生する重合開始剤である。重合開始剤(2959)は、光分解生成物として遊離有機カルボン酸をほとんど発生しない重合開始剤である。なお、重合開始剤(2959)は、光分解生成物として有機カルボン酸を発生している可能性自体はある。しかし、重合開始剤(2959)から発生した有機カルボン酸は、樹脂等の他の成分に取り込まれ易い構造をしているため、遊離有機カルボン酸としてはほとんど存在できない。そのため、重合開始剤(2959)は、光分解生成物として遊離有機カルボン酸をほとんど発生しないと推察される。
【0097】
下記反応式は、重合開始剤(819)が光反応によって遊離有機カルボン酸を発生する反応を示す。下記反応式において、化合物(A)は、重合開始剤(819)を示す。hvは、光エネルギー(紫外線エネルギー)を示す。
【0098】
【化1】
【0099】
反応式が示すように、化合物(A)は光エネルギーによって分解され、ラジカル化合物である化合物(B)及び化合物(C)を発生する(反応(a))。次に、化合物(C)は、光エネルギーによって更に分解され、ラジカル化合物である化合物(B)及び化合物(C-1)を発生する(反応(b))。これにより、2分子の化合物(B)及び1分子の化合物(C-1)が生じる。次に、化合物(B)は、水酸基ラジカル(・OH)と反応し、遊離有機カルボン酸である化合物(B-1)(2,4,6-トリメチル安息香酸)を発生する(反応(c))。また、化合物(C-1)は、水酸基ラジカル(・OH)と反応し、化合物(C-2)(フェニルリン酸)を発生する(反応(c))。
【0100】
なお、水酸基ラジカル(・OH)は、以下の反応により生じる。まず、紫外線照射により、オゾンが発生する。発生したオゾンは、長波長(例えば、波長240nm以上340nm以下)の紫外線の影響で酸素分子と酸素原子とに分解される(O3+紫外線→O+O2)。酸素原子のうちの一部は、オゾンと反応し、安定な酸素分子を発生する(O+O3→2O2)。一方、酸素原子の一部は、空気中の水分子との反応によって、水酸基ラジカル(・OH)を発生する(O+H2O→2(・OH))。なお、水酸基ラジカル(・OH)は、オゾン分解にも関与する(O3+2(・OH)→H2O+2O2)。
【0101】
(光触媒水分散体)
光触媒水分散体(酸化タングステン粒子水分散体)として、平均粒子径の異なる以下の4種の酸化タングステン粒子水分散体を用意した。酸化タングステン粒子水分散体の調製方法を以下に示す。
酸化タングステン粒子水分散体(15):酸化タングステン粒子の平均粒子径15nm
酸化タングステン粒子水分散体(40):酸化タングステン粒子の平均粒子径40nm
酸化タングステン粒子水分散体(1000):酸化タングステン粒子の平均粒子径1000nm
酸化タングステン粒子水分散体(1200):酸化タングステン粒子の平均粒子径1200nm
【0102】
(一次粉砕)
ビーズミル(日本コークス工業株式会社製メディア攪拌型湿式超微粉砕・分散機「MSC50」)を用いて、酸化タングステンの原料粒子(詳しくはWO3、キシダ化学株式会社製)200gと、イオン交換水800gとの混合物を湿式粉砕することで、粉砕された酸化タングステンの原料粒子を含有する分散液を得た。ビーズミルには、ビーズ(株式会社ニッカトー製、直径:0.1mm)を使用した。得られた上述の分散液をそのまま助触媒担持工程の原料として使用した。
【0103】
(助触媒担持)
一次粉砕で得られた上述の分散液に、ヘキサクロロ白金(IV)酸・6水和物(キシダ化学株式会社製、固形分濃度:98.5%)を溶解させた。ヘキサクロロ白金(IV)酸・6水和物の添加量は、形成される酸化タングステン粒子において、白金単体の含有割合が0.025質量%となる量とした。これにより、酸化タングステン粒子水分散体(15)、(40)、(1000)及び(1200)(何れも有効成分濃度:20質量%)をそれぞれ得た。なお、酸化タングステン粒子水分散体(15)、(40)、(1000)及び(1200)は、一次粉砕における湿式粉砕の条件を適宜変更することにより、酸化タングステン粒子の平均粒子径を調整した。
【0104】
(基材)
ベースフィルムとして、厚さ50μmのPETフィルム(東洋紡株式会社製「A4300」)を用意した。
【0105】
(モスアイ用型)
反転されたモスアイ構造を有する円筒状のモスアイ用型(1)~(3)と、平坦な表面を有する円筒状の平板用型とを準備した。各モスアイ用型により形成されるモスアイ構造のDp及びDintは、以下の通りであった。各モスアイ用型は、図7~11に示す方法と同様の方法により製造した。
モスアイ用型(1):Dp:200nm、Dint:200nm
モスアイ用型(2):Dp:100nm、Dint:100nm
モスアイ用型(3):Dp:300nm、Dint:300nm
【0106】
[実施例1]
(未硬化合成高分子膜形成)
モノマー(M280)50.0質量部と、モノマー(M282)50.0質量部と、重合開始剤(2959)2.0質量部とを混合し、光硬化性樹脂組成物を得た。得られた光硬化性樹脂組成物を、ベースフィルムの表面に付与した。これにより、ベースフィルム上に未硬化合成高分子膜を形成した。
【0107】
(モスアイ構造形成)
次に、図16を参照して説明したのと同様の方法で、上述の未硬化合成高分子膜3bにモスアイ構造を形成した。詳しくは、ベースフィルム2上の未硬化合成高分子膜3bにモスアイ用型101(モスアイ用型(2))を押し付けた。次に、未硬化合成高分子膜3bにモスアイ用型101を押し付けた状態で、未硬化合成高分子膜3bに紫外線を照射して露光した。紫外線の露光量は、約200mJ/cm2(波長が375nmの紫外線を基準とする露光量)とした。これにより、ベースフィルム2と、ベースフィルム2上に積層される合成高分子膜3とを備える積層体を得た。合成高分子膜3は、モスアイ構造(Dp:100nm、Dint:100nm)を備えていた。以上、図16を参照してモスアイ構造の形成方法を説明した。
【0108】
(光触媒粒子担持)
次に、酸化タングステン粒子水分散体(40)を水で希釈し、光触媒粒子組成物を調製した。次に、上述の積層体を50mm×70mmにカットした。次に、カットされた積層体の表面(合成高分子膜側の表面)に、フィルムアプリケーター(アズワン株式会社製「アプリケーターNo.11」、ウェット膜厚25μm)を用いて、光触媒粒子組成物を塗布した。光触媒粒子組成物を調製する際の酸化タングステン粒子水分散体(40)の希釈倍率は、積層体に塗布される酸化タングステン粒子の塗布量が0.2g/m2になる希釈倍率に調整した。次に、塗布後の積層体を80℃のホットプレートに1分間載せ、水分を蒸発させた。これにより、合成高分子膜の表面に光触媒粒子(酸化タングステン粒子)を担持した(担持量0.2g/m2)。その結果、実施例1のフィルムを得た。実施例1のフィルムは、ベースフィルムと、ベースフィルム上に積層され、表面にモスアイ構造を有する合成高分子膜と、合成高分子膜の表面に担持される光触媒粒子とを備えていた。
【0109】
[実施例2~15]
以下の点を変更した以外は、実施例1のフィルムの製造と同様の方法により、実施例2~15のフィルムを得た。実施例2~15のフィルムの製造では、光硬化性樹脂組成物の調製において、添加する成分の種類及び添加量を下記表2~3に示す通りに変更した。また、実施例2~15のフィルムの製造では、モスアイ構造形成に使用するモスアイ用型の種類を下記表2~3に示す通りに変更した。更に、実施例2~15のフィルムの製造では、光触媒粒子の担持に使用する光触媒水分散体の種類と、光触媒粒子の担持量とを下記表2~3に示す通りに変更した。下記表2~3において、「部」及び「%」は、それぞれ、質量部及び質量%を示す。
【0110】
[参考例1]
上述のベースフィルム(厚さ50μmのPETフィルム(東洋紡株式会社製「A4300」))を、そのまま参考例1のフィルムとして用いた。
【0111】
[参考例2]
酸化タングステン粒子水分散体(40)を水で希釈した。次に、上述のベースフィルム(厚さ50μmのPETフィルム(東洋紡株式会社製「A4300」))を50mm×70mmにカットした。次に、カットされたベースフィルムの表面に、フィルムアプリケーター(アズワン株式会社製「アプリケーターNo.11」、ウェット膜厚25μm)を用いて、水で希釈された酸化タングステン粒子水分散体(40)を塗布した。酸化タングステン粒子水分散体(40)の希釈倍率は、ベースフィルムに塗布される酸化タングステン粒子の塗布量が0.2g/m2になる希釈倍率に調整した。次に、80℃のホットプレートに塗布後のベースフィルムを1分間載せ、水分を蒸発させた。これにより、合成高分子膜の表面に光触媒粒子(酸化タングステン粒子)を担持した(担持量0.2g/m2)。その結果、参考例2のフィルムを得た。参考例2のフィルムは、ベースフィルムと、ベースフィルムの表面に担持される光触媒粒子とを備えていた。
【0112】
[比較例1~6]
以下の点を変更した以外は、実施例1のフィルムの製造と同様の方法により、比較例1~6のフィルムを得た。比較例1~6のフィルムの製造では、光硬化性樹脂組成物の調製において、添加する成分の種類及び添加量を下記表4に示す通りに変更した。また、比較例1~6のフィルムの製造では、モスアイ構造形成に使用するモスアイ用型の種類を下記表4に示す通りに変更した。更に、比較例1~4のフィルムの製造では、光触媒粒子の担持に使用する光触媒水分散体の種類と、光触媒粒子の担持量とを下記表4に示す通りに変更した。更に、比較例5~6のフィルムの製造では、光触媒粒子の担持を行わなかった。下記表4において、「部」及び「%」は、それぞれ、質量部及び質量%を示す。
【0113】
即ち、比較例1のフィルムは、ベースフィルムと、ベースフィルム上に積層され、表面が平坦な合成高分子膜とを備えていた。
【0114】
比較例2のフィルムは、ベースフィルムと、ベースフィルム上に積層され、表面が平坦な合成高分子膜と、合成高分子膜の表面に担持される光触媒粒子とを備えていた。
【0115】
比較例3及び4のフィルムは、ベースフィルムと、ベースフィルム上に積層され、表面にモスアイ構造を有する合成高分子膜とを備えていた。
【0116】
比較例5及び6においては、樹脂組成物の調製において、下記表4に示す量の酸化タングステン粒子水分散体(40)を添加した(内添)。比較例5及び6のフィルムは、ベースフィルムと、ベースフィルム上に積層され、表面にモスアイ構造を有する合成高分子膜とを備えていた。合成高分子膜は、光触媒粒子を含有していた。比較例5のフィルムにおいて、光触媒粒子の含有量は、フィルムの面積1m2当たり0.5gであった(表4では担持量を0.5g/m2とする)。比較例6のフィルムにおいて、光触媒粒子の含有量は、フィルムの面積1m2当たり1.0gであった(表4では担持量を1.0g/m2とする)。
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【0119】
【表4】
【0120】
以下、実施例1~15及び比較例1~6のフィルムの「表面」とは、特に断りがない限り、合成高分子膜側の表面を示す。参考例1のフィルムの「表面」とは、特に断りがない限り、任意の表面を示す。参考例2のフィルムの「表面」とは、特に断りがない限り、光触媒粒子が担持されている側の表面を示す。
【0121】
[接触角]
実施例1~15、比較例1~6及び参考例1~2のフィルムについて、表面の水に対する接触角を測定した。測定は、温度23℃において行った。まず、各フィルムの表面に、水(純水)の液滴を約10μL滴下した。滴下から10秒後、接触角計(協和界面科学株式会社製「PCA-1」)を用いて、各フィルムの表面の水に対する接触角を測定した。測定は、各フィルムについて5回ずつ行い、その平均値を各フィルムの接触角とした。測定結果を下記表5に示す。
【0122】
(pH)
実施例1~15、比較例1~6及び参考例1~2のフィルムについて、表面に水を接触させて5分後に回収される水溶液のpH(以下、表面pHと記載することがある)を測定した。測定は、温度23℃において行った。まず、脱イオン水に対して0.01mol/Lの塩酸及び0.011mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加することで、pH=7.0±0.1に調整した。次に、マイクロピペットを用いて、各フィルムの表面に上述のpH調整後の水を200μL滴下した。滴下から5分経過後、各フィルムの表面の水溶液(合成高分子に含有されていた成分が水に溶解したもの)のpHを、以下のpH電極に平板用電極を装着した測定機を用いて測定を行った。測定は、各フィルムについて5回ずつ行い、その平均値を各フィルムの接触角とした。但し、滴下した水があまり濡れ広がらなかったフィルム(液滴の直径20mm未満のフィルム)は、以下のサンプリングシートでふき取って回収した後に、上述の測定機を用いてpHを測定した。測定結果を下記表5~7に示す。
pH測定機:株式会社堀場製作所製「ISFET(半導体センサ)pH電極0040N-10D」
サンプリングシート:株式会社堀場製作所製「サンプリングシートB Y011A」
【0123】
<評価>
以下の方法により、実施例1~15、比較例1~6及び参考例1~2のフィルムについて、耐擦過性、消臭作用及び殺菌作用を評価した。評価結果を下記表5に示す。
【0124】
[耐擦過性]
実施例1~15、参考例1~2及び比較例1~6のフィルムをそれぞれ3枚ずつ用意し、N=3で以下の試験を行った。各フィルムの表面に対して、摩耗試験機(テスター産業株式会社製「AB-301」)を用いて、加重2N(200g)を加えながら、毎分30往復の速度で100往復の摩擦試験を行った。摩擦試験において、対象材(摩擦相手材)としては、不織布ワイパー(旭化成株式会社製BENCOT)を用いた。
【0125】
摩擦試験の前後で、各フィルムに担持又は内添される光触媒粒子の量を測定した。これにより、各フィルムについて、摩擦試験前の光触媒粒子量及び摩擦試験後の光触媒粒子量を測定した。次に、下記式により、各フィルムについて、摩擦試験後の光触媒粒子の残存率を算出した。次に、実施例1~15、参考例1~2及び比較例1~6のフィルムについて、N=3にするために用いた3枚のフィルムのそれぞれの残存率の平均値を算出した。これを、実施例1~15、参考例1~2及び比較例1~6のフィルムの残存率とした。
残存率[%]=100×摩擦試験後の光触媒粒子量/摩擦試験前の光触媒粒子
【0126】
各フィルムに担持又は内添される光触媒粒子の量は、蛍光X線分析装置(理学電気工業株式会社製「ZSX PrimusII」)にて測定した。測定においては、まず、光触媒粒子(酸化タングステン粒子)の担持量を変えた検量線作成用サンプルを複数種作製した。そして、検量線作成用サンプルにおける酸化タングステンのピーク強度を上述の蛍光X線分析装置で測定し、検量線を作製した。その後、各フィルムにおける酸化タングステンのピーク強度を上述の蛍光X線分析装置で測定した。測定されたピーク強度を検量線に当てはめることで、各フィルムに担持又は内添される光触媒粒子(酸化タングステン粒子)の量を求めた。
【0127】
実施例1~15、参考例1~2及び比較例1~6のフィルムの耐擦過性は、下記基準に沿って判定した。
A(特に良好):残存率が90%以上
B(良好):残存率が70%超90%未満
C(やや良好):残存率が50%以上70%未満
D(不良):残存率が50%未満
【0128】
[消臭作用]
実施例1~15、参考例1~2及び比較例1~6のフィルムの何れかを、容量0.5Lの透明なガスバッグ内に投入した。このガスバッグ内に測定用ガス(アセトアルデヒドを15ppm含む空気)を充填した後、ガスバッグを密封した。次いで、青色LEDを用いて、ガスバッグの外からのフィルムの表面に青色光(照度:22000ルクス)を16時間照射した。照射開始から16時間後に、ガスバッグ内の測定用ガスのアセトアルデヒド濃度(試験後アセトアルデヒド濃度)を測定した。アセトアルデヒド濃度の測定には、アセトアルデヒド用ガス検知管(株式会社ガステック製「92L」)を用いた。なお、酸化タングステン粒子は、光を吸収することで光触媒活性を発揮し、アセトアルデヒドを二酸化炭素に分解する。そのため、各フィルムの光触媒活性が高いほど、ガスバッグ内のアセトアルデヒド濃度は低下する。下記式によって、各フィルムの試験後のガス残存率を算出した。
ガス残存率[%]=100×試験後アセトアルデヒド濃度/試験前アセトアルデヒド濃度(15ppm)
【0129】
実施例1~15、参考例1~2及び比較例1~6のフィルムの消臭作用は、以下の基準に沿って判定した。
A(特に良好):ガス残存率が1%未満
B(良好):ガス残存率が1%超20%未満
C(やや良好):ガス残存率が20%未満50%未満
D(不良):ガス残存率が50%以上
【0130】
[殺菌作用]
実施例1~15、参考例2及び比較例1~6のフィルムをそれぞれ3枚ずつ用意し、N=3で以下の試験を行った。エタノールを含ませたベンコットン(旭化成株式会社製「キュプラ長繊維不織布」)で各フィルムの表面を拭き取り、清掃した。次に、1×106CFU/mLの黄色ブドウ球菌を含む菌液(培地:1/500NB培地)を用意した。次に、各フィルムの表面に、菌液10μLを滴下した。なお、各フィルムの表面とは、合成高分子膜側の表面(参考例1のフィルムでは任意の面、参考例2のフィルムでは光触媒粒子が担持されている側の表面)を示す。次に、室温(約25℃)で各フィルムを大気中に15分間静置した。次に、SCDLP培地を各フィルムにかけ流し、菌を洗い出した。洗い出したSCDLP培地を適宜PBSで希釈した後、標準寒天培地で培養を行った。標準寒天培地に生じたコロニーの数に基づいて、洗い出したSCDLP培地に含まれていた菌数(生菌数)をカウントした。実施例1~15、参考例2及び比較例1~6のフィルムについて、N=3にするために用いた3枚のフィルムのそれぞれの生菌数の平均値を算出した。これを、実施例1~15、参考例1~2及び比較例1~6のフィルムの生菌数とした。
【0131】
参考例1のフィルムは、一般的なPETフィルムであるため、殺菌作用はほぼないと判断される。そのため、参考例1のフィルムは、生菌率(100×生菌数/処理前の菌液に含まれていた菌数)を100.0%とした。次に、参考例1のフィルムの生菌率を基準として、各フィルム(実施例1~15、参考例2及び比較例1~6のフィルム)の生菌率を、下記式によって算出した。
生菌率[%]=100×各フィルムの生菌数/参考例1のフィルムの生菌数
【0132】
実施例1~15、参考例1~2及び比較例1~6のフィルムの殺菌作用は、以下の基準に沿って判断した。
A(特に良好):生菌率が0.0%
B(良好):生菌率が0.0%超10.0%未満
C(やや良好):生菌率が10.0%超50.0%未満
D(不良):生菌率が50.0%超
【0133】
[総合評価]
実施例1~15、参考例1~2及び比較例1~6のフィルムについて、以下の基準に沿って総合評価を行った。
A(特に良好):耐擦過性、消臭作用及び殺菌作用の全ての評価がB以上(A又はB)
B(良好):耐擦過性、消臭作用及び殺菌作用の全ての評価がC以上(A~C)であり、かつ少なくとも1つの評価がC
C(不良):耐擦過性、消臭作用及び殺菌作用の少なくとも1つの評価がD
【0134】
【表5】
【0135】
実施例1~15のフィルムは、モスアイ構造を有する合成高分子膜と、合成高分子膜の表面に担持される光触媒粒子とを備えていた。合成高分子膜を法線方向から見たとき、複数の凸部の2次元的な大きさは、20nm超500nm未満であった。実施例1~15のフィルムは、耐擦過性、消臭作用及び殺菌作用に優れていた。
【0136】
一方、参考例1、比較例1、比較例3及び比較例4のフィルムは、光触媒粒子を備えなかった。そのため、参考例1、比較例1、比較例3及び比較例4のフィルムは、消臭作用及び殺菌作用のうち少なくとも一方が不十分であった。
【0137】
参考例2のフィルムは、PETフィルムの平坦な表面に光触媒粒子が担持されていた。比較例2のフィルムは、合成高分子膜の平坦な表面に光触媒粒子が担持されていた。そのため、参考例2及び比較例2のフィルムは、耐擦過性が不十分であった。
【0138】
比較例5及び比較例6のフィルムは、光触媒粒子が合成高分子膜に内添されていた。そのため、比較例5及び比較例6のフィルムは、消臭作用及び殺菌作用が不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明のフィルムは、電子機器のタッチパネル、モニター及びインタラクティブホワイトボードの表面を被覆するフィルムなどに利用できる。
【符号の説明】
【0140】
1、11 フィルム
2、12 ベースフィルム
3、13 合成高分子膜
3a、13a 凸部
4、14 光触媒粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16