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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】チェーンソー
(51)【国際特許分類】
   B27B 17/12 20060101AFI20240904BHJP
   B27B 17/02 20060101ALI20240904BHJP
   B27G 19/06 20060101ALI20240904BHJP
   B23D 57/02 20060101ALI20240904BHJP
   B23D 59/04 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
B27B17/12
B27B17/02
B27G19/06 Z
B23D57/02
B23D59/04 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020214589
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022100551
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 晃平
(72)【発明者】
【氏名】砂塚 亮
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 義文
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-279884(JP,A)
【文献】特開2019-123104(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0031793(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27B 17/12
B27B 17/02
B27G 19/06
B23D 57/02
B23D 59/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーチェーンと、
前記ソーチェーンが取り付けられたガイドバーと、
前記ソーチェーンを前記ガイドバーの周縁に沿って走行させるスプロケットと、
前記スプロケットを回転させる原動機と、
前記ソーチェーンに供給するオイルを収容するオイルタンクと、
前記原動機と前記オイルタンクとを収容するハウジングと、
前記ハウジングから突出しており、前記ガイドバーに設けられた孔を貫通するボルトと、
前記ボルトに螺合して前記ガイドバーを前記ハウジングに固定するナットと、
前記ボルトから前記オイルタンク内の前記オイルに放熱する放熱構造と、を備えており、
前記放熱構造は、
前記ボルトに接触しており、少なくとも一部が前記オイルタンクの内部に配置されている放熱部材を備えている、チェーンソー。
【請求項2】
前記放熱部材は、金属製の放熱フィンを備えている、請求項に記載のチェーンソー。
【請求項3】
前記放熱部材は、前記チェーンソーの姿勢によらず、重力方向に垂れ下がる金属製のフレキシブル部材を備えている、請求項に記載のチェーンソー。
【請求項4】
前記オイルタンクの容量の第1割合に相当する量の前記オイルが前記オイルタンクに収容されている場合、前記チェーンソーが地面に載置された状態において、前記オイルの液面が前記放熱部材の前記少なくとも一部の下端部よりも上側に位置する、請求項からのいずれか一項に記載のチェーンソー。
【請求項5】
前記第1割合は、前記オイルタンクの容量の50%以下である、請求項に記載のチェーンソー。
【請求項6】
前記放熱部材の前記少なくとも一部が、前記オイルタンクの内部において、前記ボルトが延びる方向に関して、前記オイルタンクの内面から前記オイルタンクの長さの10%以上離れた位置に配置された部分を含む、請求項からのいずれか一項に記載のチェーンソー。
【請求項7】
ソーチェーンと、
前記ソーチェーンが取り付けられたガイドバーと、
前記ソーチェーンを前記ガイドバーの周縁に沿って走行させるスプロケットと、
前記スプロケットを回転させる原動機と、
前記ソーチェーンに供給するオイルを収容するオイルタンクと、
前記原動機と前記オイルタンクとを収容するハウジングと、
前記ハウジングから突出しており、前記ガイドバーに設けられた孔を貫通するボルトと、
前記ボルトに螺合して前記ガイドバーを前記ハウジングに固定するナットと、
前記ボルトから前記オイルタンク内の前記オイルに放熱する放熱構造と、を備えており、
前記ボルトが、前記オイルタンクを外側から内側まで貫通しており、
前記ボルトの前記オイルタンクの内側の部分が、前記放熱構造を構成しており、
前記ボルトの前記オイルタンクの内側の前記部分が、前記オイルタンクの内部において、前記ボルトが延びる方向に関して、前記オイルタンクの内面から前記オイルタンクの長さの10%以上離れた位置に配置された部分を含む、チェーンソー。
【請求項8】
前記オイルタンクの容量の第1割合に相当する量の前記オイルが前記オイルタンクに収容されている場合、前記チェーンソーが地面に載置された状態において、前記オイルの液面が前記ボルトの前記オイルタンクの内側の前記部分の下端部よりも上側に位置する、請求項に記載のチェーンソー。
【請求項9】
前記第1割合は、前記オイルタンクの容量の50%以下である、請求項に記載のチェーンソー。
【請求項10】
前記ガイドバーは、前記ガイドバーの長手方向に関して、前記ハウジングよりも前記ガイドバーの先端部側に位置する切削部を備えており、
前記切削部の長さは、前記長手方向に関して、250mm以下である、請求項1からのいずれか一項に記載のチェーンソー。
【請求項11】
前記原動機は、モータである、請求項1から10のいずれか一項に記載のチェーンソー。
【請求項12】
前記ハウジングに着脱可能なバッテリパックをさらに備えており、
前記モータは、前記バッテリパックからの電力により駆動する、請求項11に記載のチェーンソー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、チェーンソーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、チェーンソーが開示されている。チェーンソーは、ソーチェーンと、ソーチェーンが取り付けられたガイドバーと、ソーチェーンをガイドバーの周縁に沿って走行させるスプロケットと、スプロケットを回転させる原動機と、ソーチェーンに供給するオイルを収容するオイルタンクと、原動機とオイルタンクとを収容するハウジングと、前記ハウジングから突出しており、ガイドバーに設けられた孔を貫通するボルトと、ボルトに螺合してガイドバーをハウジングに固定するナットと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-279884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チェーンソーを使用して被切削物を切削する場合、走行するソーチェーンとガイドバーとの摩擦熱により、ガイドバーは高温となる。上記の構成では、ガイドバーの熱がナットに伝わり、ナットが高温となる。高温となったナットに作業者が触れてしまうおそれがある。本明細書では、ナットが高温となることを抑制することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書は、チェーンソーを開示する。チェーンソーは、ソーチェーンと、ソーチェーンが取り付けられたガイドバーと、ソーチェーンをガイドバーの周縁に沿って走行させるスプロケットと、スプロケットを回転させる原動機と、ソーチェーンに供給するオイルを収容するオイルタンクと、原動機とオイルタンクとを収容するハウジングと、ハウジングから突出しており、ガイドバーに設けられた孔を貫通するボルトと、ボルトに螺合してガイドバーをハウジングに固定するナットと、ボルトからオイルタンク内のオイルに放熱する放熱構造と、を備えている。
【0006】
上記の構成では、ナットの熱がボルトに伝わり、放熱構造がボルトの熱をオイルタンク内のオイルに放熱するので、ボルトが高温となることを抑制することができる。これにより、ナットが高温となることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施例のチェーンソー2を後方左側から見た斜視図である。
図2】第1実施例のチェーンソー2を前方右側から見た斜視図である。
図3】第1実施例のチェーンソー2について、スプロケットカバー20を外した状態の右側面図である。
図4】第1実施例のチェーンソー2の右側面図である。
図5】第1実施例のチェーンソー2について、サイドハンドル14と左側ハウジング10を外した状態の左側面図である。
図6】第1実施例のチェーンソー2の水平断面図である。
図7】第1実施例のチェーンソー2について、スプロケットカバー20と、ガイドバー6と、ブレーキカバー18を外した状態の右側面図である。
図8】第1実施例のチェーンソー2の縦断面図である。
図9】第2実施例のチェーンソー2の縦断面図である。
図10】第2実施例のチェーンソー2の水平断面図である。
図11】第3実施例のチェーンソー2の縦断面図である。
図12】第3実施例のチェーンソー2の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の代表的かつ非限定的な具体例について、図面を参照して以下に詳細に説明する。この詳細な説明は、本発明の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。また、開示された追加的な特徴ならびに発明は、さらに改善されたチェーンソーを提供するために、他の特徴や発明とは別に、又は共に用いることができる。
【0009】
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本発明を実施する際に必須のものではなく、特に本発明の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、以下の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、特許請求の範囲に記載されるものの様々な特徴は、本発明の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
【0010】
本明細書及び/又は特許請求の範囲に記載された全ての特徴は、実施例及び/又は特許請求の範囲に記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびに特許請求の範囲に記載された特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲及びグループ又は集団に関する記載は、出願当初の開示ならびに特許請求の範囲に記載された特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
【0011】
1つまたはそれ以上の実施形態において、放熱構造は、ボルトに接触しており、少なくとも一部がオイルタンクの内部に配置されている放熱部材を備えていてもよい。
【0012】
上記の構成では、放熱部材の少なくとも一部がオイルタンク内のオイルに接触することにより、放熱部材の熱がオイルに放熱される。このため、ナットが高温となることを抑制することができる。
【0013】
1つまたはそれ以上の実施形態において、放熱部材は、金属製の放熱フィンを備えていてもよい。
【0014】
上記の構成では、放熱部材が放熱フィンを備えていない場合と比較して、放熱部材がオイルタンク内のオイルに接触する面積を増大させることができるので、放熱部材の熱がオイルに放熱されやすくなる。このため、ナットが高温となることをより抑制することができる。
【0015】
1つまたはそれ以上の実施形態において、放熱部材は、チェーンソーの姿勢によらず、重力方向に垂れ下がる金属製のフレキシブル部材を備えていてもよい。
【0016】
上記の構成では、フレキシブル部材は、チェーンソーの姿勢によらず、オイルタンク内のオイルに接触することができるので、放熱部材の熱がオイルに放熱されやすくなる。このため、ナットが高温となることをより抑制することができる。
【0017】
1つまたはそれ以上の実施形態において、オイルタンクの容量の第1割合に相当する量のオイルがオイルタンクに収容されている場合、チェーンソーが地面に載置された状態において、オイルの液面が放熱部材の少なくとも一部の下端部よりも上側に位置していてもよい。
【0018】
上記の構成では、オイルタンクの容量の第1割合に相当する量のオイルがオイルタンクに収容されていれば、チェーンソーを地面に載置したときと同じ姿勢とした場合に、放熱部材は、オイルタンク内のオイルと接触することができるので、放熱部材の熱をオイルに放熱しやすくすることができる。このため、ナットが高温となることをより抑制することができる。
【0019】
1つまたはそれ以上の実施形態において、第1割合は、オイルタンクの容量の50%以下であってもよい。
【0020】
チェーンソーを使用して作業している間に、オイルタンク内のオイルが不足することを抑制するために、通常、オイルタンクには、十分量のオイルが収容されている。しかしながら、チェーンソーを長期間連続して使用する場合、オイルタンク内のオイルの量が、オイルタンクの容量の50%以下に相当する量まで減少することがある。上記の構成では、チェーンソーを長期間連続して使用する場合であっても、チェーンソーを地面に載置したときと同じ姿勢とした場合に、放熱部材をオイルタンク内のオイルと接触させることができ、放熱部材の熱をオイルに放熱しやすくすることができる。このため、ナットが高温となることをより抑制することができる。
【0021】
1つまたはそれ以上の実施形態において、放熱部材の少なくとも一部が、オイルタンクの内部において、ボルトが延びる方向に関して、オイルタンクの内面からオイルタンクの長さの10%以上離れた位置に配置された部分を含んでいてもよい。
【0022】
上記の構成では、放熱部材の少なくとも一部をオイルタンクの内部の深い位置まで配置することにより、放熱部材がオイルタンク内のオイルに接触する面積を増大させることができるので、放熱部材の熱をオイルに放熱しやすくすることができる。このため、ナットが高温となることをより抑制することができる。
【0023】
1つまたはそれ以上の実施形態において、ボルトが、オイルタンクを外側から内側まで貫通していてもよい。ボルトのオイルタンクの内側の部分が、放熱構造を構成していてもよい。ボルトのオイルタンクの内側の部分が、オイルタンクの内部において、ボルトが延びる方向に関して、オイルタンクの内面からオイルタンクの長さの10%以上離れた位置に配置された部分を含んでいてもよい。
【0024】
上記の構成では、ボルトをオイルタンクの内部の深い位置まで配置することにより、ボルトがオイルタンク内のオイルと接触する面積を増大させることができるので、ボルトの熱をオイルに放熱しやすくすることができる。これにより、ナットが高温となることをより抑制することができる。
【0025】
1つまたはそれ以上の実施形態において、オイルタンクの容量の第1割合に相当する量のオイルがオイルタンクに収容されている場合、チェーンソーが地面に載置された状態において、オイルの液面がボルトのオイルタンクの内側の部分の下端部よりも上側に位置していてもよい。
【0026】
上記の構成では、オイルタンクの容量の第1割合に相当する量のオイルがオイルタンクに収容されていれば、チェーンソーを地面に載置したときと同じ姿勢とした場合に、ボルトは、オイルタンク内のオイルと接触することができるので、ボルトの熱をオイルに放熱しやすくすることができる。これにより、ナットが高温となることをより抑制することができる。
【0027】
1つまたはそれ以上の実施形態において、第1割合は、オイルタンクの容量の50%以下であってもよい。
【0028】
上記の構成では、チェーンソーを長期間連続して使用して、オイルタンク内のオイルの量が、オイルタンクの容量の50%以下の量まで減少する場合であっても、チェーンソーを地面に載置したときと同じ姿勢とした場合に、ボルトをオイルと接触させることができ、ボルトの熱をオイルに放熱しやすくすることができる。これにより、ナットが高温となることをより抑制することができる。
【0029】
1つまたはそれ以上の実施形態において、ガイドバーは、ガイドバーの長手方向に関して、ハウジングよりもガイドバーの先端部側に位置する切削部を備えていてもよい。切削部の長さは、長手方向に関して、250mm以下であってもよい。
【0030】
一般的に、切削部の長さが短くなるにつれて、ガイドバーの周縁の湾曲がきつくなる。このため、ソーチェーンとガイドバーとの摩擦熱が大きくなり、ガイドバーがより高温となりやすい。上記の構成では、より高温となったガイドバーからボルトに伝わった熱を、放熱構造を介して、オイルタンク内のオイルに放熱することができる。これにより、ナットが高温となることを抑制することができる。
【0031】
1つまたはそれ以上の実施形態において、原動機は、モータであってもよい。
【0032】
上記の構成では、原動機がエンジンである場合と比較して、ハウジングに高温となる部位が発生し難いので、作業者が注意を払わずに、ナットに触れてしまうおそれが大きい。上記の構成では、放熱構造がボルトの熱をオイルタンク内のオイルに放熱するので、ナットが高温となることを抑制することができる。
【0033】
1つまたはそれ以上の実施形態において、チェーンソーは、ハウジングに着脱可能なバッテリパックをさらに備えていてもよい。モータは、バッテリパックからの電力により駆動してもよい。
【0034】
上記の構成では、電源コードが不要となるため、チェーンソーの取り回しが良い一方、作業者が注意を払わずに、ナットに触れてしまうおそれが大きい。上記の構成では、放熱構造がボルトの熱をオイルタンク内のオイルに放熱するので、ナットが高温となることを抑制することができる。
【0035】
(第1実施例)
図1から図8を参照して、第1実施例のチェーンソー2を説明する。チェーンソー2は、本体4と、ガイドバー6と、ソーチェーン8と、を備えている。ガイドバー6は、細長い板形状を有する。ガイドバー6は、本体4から前側に向かって突出するように本体4に取り付けられている。ソーチェーン8は、相互に連結された複数のカッタを備えている。ソーチェーン8は、ガイドバー6の周縁に沿って取り付けられている。本体4には、バッテリパックBが取り付けられている。チェーンソー2は、バッテリパックBから供給される電力により、ソーチェーン8をガイドバー6の周縁に沿って回転駆動させ、木材等の被切削物を切削する。以下の説明では、図3に示すように、チェーンソー2を地面等の載置面Pに載置したときに、載置面Pに直交する方向を、上下方向と呼び、載置面Pにガイドバー6の長手方向を投影した方向を、前後方向と呼び、上下方向および前後方向に直交する方向を左右方向と呼ぶ。なお、図1図2、および図4以外の図面では、図示の明瞭化のため、ソーチェーン8の図示が省略されている。
【0036】
図1および図2に示すように、本体4は、左側ハウジング10と、右側ハウジング12と、サイドハンドル14と、ハンドガード16と、ブレーキカバー18と、スプロケットカバー20と、を備えている。左側ハウジング10と右側ハウジング12により、本体ハウジング22と、トップハンドル24が形成されている。左側ハウジング10は、本体ハウジング22とトップハンドル24の左半面の外形形状を規定しており、右側ハウジング12は、本体ハウジング22とトップハンドル24の右半面の外形形状を規定している。
【0037】
図3に示すように、ガイドバー6は、右側ハウジング12に取り付けられている。ガイドバー6は、右側ハウジング12に面している取付部7aと、右側ハウジング12よりも前側に向かって突出している切削部7bと、を備えている。ガイドバー6の長手方向に関して、切削部7bの長さLgは、200mmである。ここで、長さLgは、取付部7aと切削部7bとの境界から、切削部7bの先端部までの長さをいう。また、ガイドバー6の長手方向に関して、取付部7aと切削部7bとの境界の位置は、右側ハウジング12の先端部の位置と等しい。なお、変形例では、ガイドバー6の長手方向に関して、切削部7bの長さLgは、250mm以下の任意の値であってもよい。
【0038】
図4に示すように、本体ハウジング22は、本体4の前後方向に長手方向を有する略直方体形状の前側本体ハウジング28と、前側本体ハウジング28の後面上部から後側に向かって延びる後側本体ハウジング30と、を備えている。後側本体ハウジング30の下面には、バッテリパックBが着脱可能に取り付けられている。チェーンソー2にバッテリパックBが取り付けられた状態で、チェーンソー2が載置面Pに載置された場合、前側本体ハウジング28の下面が載置面Pに当接するとともに、バッテリパックBの下面も載置面Pに当接する。
【0039】
図1に示すように、トップハンドル24は、略角柱形状の支持部32と、略円柱形状の把持部34と、を備えている。支持部32は、前側本体ハウジング28の上面前部から上側に向かって延びている。支持部32の上面には、凹部36が形成されている。凹部36の内部には、作業者がチェーンソー2の電源のオンとオフとを切り替えるための電源スイッチ38と、チェーンソー2の電源のオンとオフの状態を表示する電源ランプ40が配置されている。把持部34は、支持部32の後面上部から後側に向かって延び、下側に湾曲して、後側本体ハウジング30の上面に接続している。把持部34の下面前部には、作業者がソーチェーン8の回転駆動を操作するためのトリガスイッチ42が配置されている。把持部34の上部には、作業者によるトリガスイッチ42の操作を許可する状態と禁止する状態との間で切り替わるトリガロックレバー44が配置されている。
【0040】
サイドハンドル14は、トップハンドル24の支持部32の左面上部と、前側本体ハウジング28の左面後部との間を接続する略U字形状の外形形状を有する。サイドハンドル14の断面形状は、略円形状である。作業者は、チェーンソー2を使用するときに、右手でトップハンドル24を把持し、左手でサイドハンドル14を把持して、チェーンソー2を保持する。この状態から、作業者がトップハンドル24のトリガロックレバー44を右手の掌で押し下げると、作業者によるトリガスイッチ42の操作が許可された状態となる。この状態で作業者がトリガスイッチ42を右手の人差し指で押し上げることにより、ソーチェーン8が回転駆動する。
【0041】
図5に示すように、チェーンソー2は、モータ48と、オイルタンク50と、オイルポンプ52と、コントロールユニット54と、を備えている。モータ48と、オイルタンク50と、オイルポンプ52は、前側本体ハウジング28の内部に配置されている。コントロールユニット54は、後側本体ハウジング30の内部に配置されている。
【0042】
図6に示すように、モータ48は、アウタロータ型のDCブラシレスモータである。モータ48は、コイル56が巻回されたステータ58と、ステータ58の外側に配置されたロータ60と、ロータ60に嵌合された冷却ファン62と、ステータ58とロータ60の中央を貫通するように配置されており、冷却ファン62に嵌合されたシャフト64と、を備えている。ステータ58は、本体ハウジング22に対して固定されている。コイル56は、コントロールユニット54(図5参照)に電気的に接続されている。シャフト64は、チェーンソー2の左右方向に沿って配置されており、ベアリング66、68を介して、本体ハウジング22に対して回転可能に支持されている。ベアリング66は、ステータ58よりも右側に配置されており、ベアリング68は、ステータ58と冷却ファン62よりも左側に配置されている。シャフト64の右端部近傍には、スプロケット70とブレーキベース72が固定されている。スプロケット70とブレーキベース72は、ベアリング66よりも右側に配置されている。ブレーキベース72には、ブレーキドラム74が嵌合している。
【0043】
図3に示すように、スプロケット70は、右側ハウジング12の外側に露出している。スプロケット70には、ガイドバー6からソーチェーン8(図1図2、および図4参照)が架け渡されている。モータ48が駆動すると、シャフト64とともにスプロケット70が回転する。これにより、ソーチェーン8がスプロケット70とガイドバー6の周りを回転する。
【0044】
ガイドバー6は、内側ガイドプレート76と外側ガイドプレート78に挟持された状態で、右側ハウジング12に固定されている。内側ガイドプレート76は、上端部近傍と下端部近傍が左側に向かって湾曲した形状を有する。外側ガイドプレート78は、上端部近傍と下端部近傍が右側に向かって湾曲した形状を有する。ガイドバー6の取付部7aには、ガイドバー6の長手方向に沿って延びる長孔6aが形成されている。ガイドバー6は、長孔6aを貫通する支持ピン80とボルト82とを介して、本体ハウジング22に支持されている。図2および図4に示すように、ボルト82には、スプロケットカバー20と外側ガイドプレート78の外側から締結されたナット84が取り付けられる。作業者は、ナット84を緩めた状態で、長孔6aに沿ってガイドバー6をスライドさせることにより、ガイドバー6とスプロケット70との距離を変化させて、ソーチェーン8の張り具合を調整することができる。
【0045】
図3に示すように、ガイドバー6には、係合爪86と係合する係合孔88が形成されている。図7に示すように、係合爪86は、回転直動変換機構90を介して調整ネジ92に連結している。回転直動変換機構90は、調整ネジ92の回転運動を、係合爪86の長孔6aに沿った方向の直線運動に変換する。図6に示すように、調整ネジ92は、長孔6aの内周面に接することなく長孔6aを貫通している。作業者が、調整ネジ92を回転させると、係合爪86がガイドバー6の長孔6aに沿った方向に移動し、ガイドバー6が長孔6aに沿った方向にスライドする。
【0046】
図2および図4に示すように、スプロケット70と、内側ガイドプレート76と、外側ガイドプレート78と、支持ピン80は、スプロケットカバー20により覆われている。スプロケットカバー20には、外側カバー94が取り付けられている。外側カバー94には、ボルト82に締結されたナット84に外部からアクセスするための締結用開口94aと、調整ネジ92に外部からアクセスするための調整用開口94bが形成されている。作業者は、スプロケットカバー20を取り付けた状態で、ナット84を締めたり緩めたりすることができる。また、作業者は、スプロケットカバー20を取り付けた状態で、調整ネジ92を回転させて、ソーチェーン8の張り具合を調整することができる。
【0047】
図7に示すように、ハンドガード16は、リンク機構96を介して、ブレーキシュー98と連結されている。ハンドガード16は、左右方向に沿った揺動軸の周りに揺動可能である。ブレーキシュー98は、ブレーキドラム74の周囲を囲うように配置されている。リンク機構96は、ハンドガード16が前側に向かって倒されたときに、ブレーキシュー98を縮径させ、ハンドガード16が後側に向かって戻されたときに、ブレーキシュー98を拡径させる。ブレーキシュー98が縮径すると、ブレーキシュー98の内周面とブレーキドラム74の外周面が当接して、両者間の摩擦力によりシャフト64の回転が制動される。
【0048】
図5に示すオイルタンク50は、ソーチェーン8を潤滑するためのオイルを収容する。オイルタンク50は、モータ48とオイルポンプ52よりも前側に配置されている。図6に示すように、オイルタンク50は、左右方向に長手方向を有する。オイルタンク50は、樹脂材料から成る。オイルタンク50の右端部は、右側ハウジング12の内面に溶着されている。これにより、オイルタンク50の内面と右側ハウジング12の内面との間にオイルを収容するための空間が画定される。右側ハウジング12は、オイルタンク50の一部を形成している。以下では、右側ハウジング12のうちオイルタンク50内部の空間を画定している部分を、オイルタンク50の一部として説明することもある。また、オイルタンク50の右端部が右側ハウジング12の内面により閉じられるため、オイルがオイルタンク50の外部に漏れ出ない。なお、変形例では、オイルタンク50は、右側ハウジング12と一体的に成形されてもよい。オイルタンク50の左側面には、オイルタンク50にオイルを補充するための補充用開口100が形成されている。補充用開口100には、着脱可能なキャップ102が設けられている。図1に示すように、オイルタンク50のキャップ102は、左側ハウジング10の外部に露出しており、前側本体ハウジング28の左面下部に配置されている。なお、左側ハウジング10には、キャップ102よりも前側に、外側からオイルタンク50の液位を視認可能な確認用開口104が形成されている。
【0049】
図5に示すオイルポンプ52は、モータ48の回転に連動して、導入管106を介して、オイルタンク50の内部のオイルを吸い出すとともに、導出管108を介してガイドバー6に向けてオイルを送り出す。図8に示すように、導入管106の先端部には、オイルタンク50の内部のオイルを吸い出すための導入開口(図示省略)が設けられており、その導入開口は、オイルタンク50の内部において、オイルタンク50の下面近傍に配置されている。図5に示すように、モータ48のシャフト64の左端部近傍には、オイルポンプ52を駆動するためのウォームギア110が嵌合している。図6に示すように、ウォームギア110は、ステータ58と冷却ファン62よりも左側であって、ベアリング68よりも右側に配置されている。オイルポンプ52によりオイルタンク50からガイドバー6に供給されるオイルの吐出量は、調整ピン112(図5参照)を介して調整可能である。
【0050】
図1に示すように、本体ハウジング22の上面には、外部から調整ピン112にアクセスするための調整用開口114が形成されている。作業者は、調整用開口114から工具を差し込んで、調整ピン112を回転させることにより、オイルポンプ52におけるオイルの吐出量を調整することができる。
【0051】
次に、図6に示すボルト82を詳細に説明する。ボルト82は、金属材料から成る。金属材料は、例えば、鉄である。ボルト82は、インサート成形により、右側ハウジング12に固定されている。ボルト82は、左右方向に延びる円柱形状を有する。ボルト82は、外側部分120と、固定部分122と、内側部分124と、を備えている。外側部分120は、右側ハウジング12の右面から右側に向かって突出している。外側部分120は、ガイドバー6に設けられた長孔6aを貫通している。外側部分120の右端部近傍の外周面には、雄ねじ部120aが形成されている。ナット84の内周面に形成されている雌ねじ部84aが雄ねじ部120aに螺合することにより、ナット84が外側部分120に取り付けられる。ナット84が外側部分120に取り付けられると、スプロケットカバー20と、外側ガイドプレート78と、ガイドバー6と、内側ガイドプレート76と、ワッシャ118が、ナット84と右側ハウジング12との間に挟み込まれて固定される。
【0052】
固定部分122は、外側部分120の左側に配置されている。固定部分122は、右側ハウジング12を右面から内面まで(即ち、オイルタンク50を外側から内側まで)貫通している。固定部分122は、右側ハウジング12と隙間なく接触している。固定部分122は、左右方向の中央近傍において、外周面から固定部分122の半径方向の内側に向かって凹む凹部128を有する。インサート成形により、ボルト82と一体的に右側ハウジング12を成形するとき、樹脂材料が凹部128に入り込むため、固定部分122は、右側ハウジング12に嵌合して強固に固定される。作業者が右側ハウジング12にガイドバー6を固定するときに、レンチ等の治具を用いてナット84に過度な力を加える場合でも、ボルト82が右側ハウジング12から外れてしまうことを抑制することができる。
【0053】
内側部分124は、固定部分122の左側に配置されている。内側部分124は、オイルタンク50の内部に配置されている。内側部分124は、左右方向に関して、オイルタンク50の内面から第1距離L1だけ離れた位置まで延びている。本実施例では、第1距離L1は、オイルタンク50の左右方向の長さLoの5%以上であり、10%以下である。ここで、オイルタンク50の左右方向の長さLoは、オイルタンク50の右端部と右側ハウジング12との溶着箇所からオイルタンク50の左端部までの長さである。内側部分124は、前後方向に関して、オイルタンク50の中央近傍に配置されている。図8に示すように、内側部分124は、オイルタンク50の下面から上側に離れており、導入管106の先端部よりも上側に配置されている。内側部分124の上端部は、オイルタンク50の補充用開口100の上端部よりも上側に配置されており、内側部分124の下端部は、補充用開口100の上端部よりも下側で、補充用開口100の下端部よりも上側に配置されている。なお、内側部分124の左端面には、右側に向かって凹んでいる固定孔126が形成されている。
【0054】
チェーンソー2は、放熱構造130をさらに備えている。放熱構造130は、放熱部材132と、固定ボルト142と、を備えている。本実施例では、放熱部材132は、放熱フィンから構成されている。以下では、放熱フィンに、放熱部材132と同様の符号を付して説明する。放熱フィン132は、金属材料から成る。金属材料として、例えば、アルミ等の伝熱性能の高い材料が用いられる。放熱フィン132は、オイルタンク50の内部に配置されている。放熱フィン132は、基部134と、複数(本実施例では3つ)の上側フィン136と、複数(本実施例では4つ)の下側フィン138と、を備えている。基部134は、上下方向に延びる平板形状を有する。基部134は、左右方向に貫通する固定孔140を有する。基部134の固定孔140と内側部分124の固定孔126に固定ボルト142が差し込まれた状態では、固定ボルト142は、基部134と内側部分124に螺合している。これにより、基部134は、内側部分124に接触し固定される。基部134の上端部は、補充用開口100よりも上側に配置されており、基部134の下端部は、補充用開口100よりも下側に配置されている。
【0055】
上側フィン136は、平板形状を有する。3つの上側フィン136は、固定孔140よりも上側に配置されている。3つの上側フィン136は、上下方向に並んで配置されている。上側フィン136の幅広面は、隣接する上側フィン136の幅広面と対向している。3つの上側フィン136は、オイルタンク50の補充用開口100よりも上側に配置されている。3つの上側フィン136は、基部134の左面から左側に向かって延びている。3つの上側フィン136は、左右方向に関して、オイルタンク50の内面から第2距離L2だけ離れた位置まで延びている。第2距離L2は、第1距離L1よりも長い。第2距離L2は、オイルタンク50の左右方向の長さLoの10%以上であり、本実施例では、第2距離L2は、オイルタンク50の左右方向の長さLoの40%である。また、本実施例では、3つの上側フィン136のすべてが、ボルト82が延びる左右方向に関して、オイルタンク50の内面からオイルタンク50の左右方向の長さLoの10%以上離れた位置に配置されている。
【0056】
下側フィン138は、平板形状を有する。4つの下側フィン138は、固定孔140よりも下側に配置されている。4つの下側フィン138は、上下方向に並んで配置されている。下側フィン138の幅広面は、隣接する下側フィン138の幅広面と対向している。最も下側に配置されている下側フィン138は、補充用開口100よりも下側に配置されている。4つの下側フィン138は、基部134の左面から左側に向かって延びている。4つの下側フィン138は、左右方向に関して、オイルタンク50の内面から第2距離L2だけ離れた位置まで延びている。本実施例では、第2距離L2は、オイルタンク50の左右方向の長さLoの40%である。また、本実施例では、3つの上側フィン136のすべてが、ボルト82が延びる左右方向に関して、オイルタンク50の内面からオイルタンク50の左右方向の長さLoの10%以上離れた位置に配置されている。
【0057】
次に、オイルタンク50内のオイルの液面と放熱構造130との位置関係を説明する。作業者は、チェーンソー2を使用して作業している間、チェーンソー2を載置面Pに載置したときと同じ姿勢にする。この状態では、オイルタンク50内のオイルの量が多いほど、オイルの液面は、オイルタンク50の下面から離れる。図8に示すように、オイルタンク50内のオイルの量がオイルタンク50の容量の90%に相当する量である場合、オイルの液面LH90は、最も上側に配置されている上側フィン136の上端部よりも上側に位置している。3つの上側フィン136と4つの下側フィン138のすべてが、オイル内に配置される。また、オイルの量がオイルタンク50の容量の50%に相当する量である場合、オイルの液面LH50は、固定ボルト142よりも下側であり、かつ、最も上側に配置されている下側フィン138の上端部よりも上側に位置している。4つの下側フィン138は、オイル内に配置されている一方、3つの上側フィン136は、オイル内に配置されない。また、オイルの量がオイルタンク50の容量の10%に相当する量である場合、オイルの液面LH10は、最も下側に配置されている下側フィン138の上端部と下端部との間に位置している。最も下側に配置されている下側フィン138の一部は、オイル内に配置されている一方、他の3つの下側フィン138と3つの上側フィン136は、オイルタンク50内に配置されない。
【0058】
また、作業者は、チェーンソー2を使用して作業している間に、チェーンソー2を、左側ハウジング10が下側を向いた姿勢(即ち、補充用開口100が下側を向いた姿勢)にすることがある。この状態では、オイルタンク50内のオイルの量が多いほど、オイルの液面は、補充用開口100から離れる。図6に示すように、オイルタンク50内のオイルの量がオイルタンク50の容量の50%に相当する量である場合、オイルの液面LS50は、3つの上側フィン136の先端部と4つの下側フィン138の先端部よりも補充用開口100から離れた位置に位置している。また、オイルの量がオイルタンク50の容量の40%に相当する量であれば、オイルの液面LS40は、3つの上側フィン136の先端部と4つの下側フィン138の先端部よりも補充用開口100から離れた位置に位置し、フィン136、138の一部がオイル内に配置される状態を維持することができる。なお、変形例では、オイルの量がオイルタンク50の容量の10%に相当する量である場合に、3つの上側フィン136と4つの下側フィン138は、オイルの液面よりも補充用開口100側まで延びていてもよい。
【0059】
チェーンソー2を使用して被切削物を切削するときに、ガイドバー6とソーチェーン8との摩擦熱により、ガイドバー6が高温となる。その後、ガイドバー6の熱は、ナット84とボルト82に伝わる。上述したように、チェーンソー2が載置面Pに載置されたときと同じ姿勢にある状態や、左側ハウジング10が下側を向いた状態では、3つの上側フィン136と4つの下側フィン138の少なくとも一部がオイルタンク50内のオイルの内部に配置されている。このため、ボルト82の熱は、3つの上側フィン136と4つの下側フィン138を介して、オイルに放熱される。これにより、ナット84が高温となることが抑制される。また、ボルト82の熱がオイルに伝わることにより、オイルの温度が上昇し、オイルの粘度が低下する。例えば、冬場等の外気温が低い環境下でチェーンソー2を使用する場合であっても、粘度が低下したオイルをソーチェーン8に供給することができる。
【0060】
(効果)
本実施例のチェーンソー2は、ソーチェーン8と、ソーチェーン8が取り付けられたガイドバー6と、ソーチェーン8をガイドバー6の周縁に沿って走行させるスプロケット70と、スプロケット70を回転させるモータ48と、ソーチェーン8に供給するオイルを収容するオイルタンク50と、モータ48とオイルタンク50とを収容する本体ハウジング22と、本体ハウジング22から突出しており、ガイドバー6に設けられた長孔6aを貫通するボルト82と、ボルト82に螺合してガイドバー6を本体ハウジング22に固定するナット84と、ボルト82からオイルタンク50内のオイルに放熱する放熱構造130と、を備えている。
【0061】
上記の構成では、ナット84の熱がボルト82に伝わり、放熱構造130がボルト82の熱をオイルタンク50内のオイルに放熱するので、ボルト82が高温となることを抑制することができる。これにより、ナット84が高温となることを抑制することができる。
【0062】
また、図8に示すように、放熱構造130は、ボルト82に接触しており、少なくとも一部がオイルタンク50の内部に配置されている放熱部材132を備えている。
【0063】
上記の構成では、放熱部材132の少なくとも一部がオイルタンク50内のオイルに接触することにより、放熱部材132の熱がオイルに放熱される。このため、ナット84が高温となることを抑制することができる。
【0064】
また、放熱部材132は、金属製の放熱フィン132である。
【0065】
上記の構成では、放熱部材132が放熱フィンを備えていない場合と比較して、放熱部材132がオイルタンク50内のオイルに接触する面積を増大させることができるので、放熱部材132の熱がオイルに放熱されやすくなる。このため、ナット84が高温となることをより抑制することができる。
【0066】
また、オイルタンク50の容量の第1割合(例えば50%)に相当する量のオイルがオイルタンクに収容されている場合、チェーンソー2が地面に載置された状態において、オイルの液面が放熱部材132の少なくとも一部の下端部よりも上側に位置している。
【0067】
上記の構成では、オイルタンク50の容量の第1割合に相当する量のオイルがオイルタンク50に収容されていれば、チェーンソー2を載置面Pに載置したときと同じ姿勢とした場合に、放熱部材132は、オイルタンク50内のオイルと接触することができるので、放熱部材132の熱をオイルに放熱しやすくすることができる。このため、ナット84が高温となることをより抑制することができる。
【0068】
また、オイルの量が、オイルタンク50の容量の50%以下に相当する量である場合でも、チェーンソー2が地面に載置された状態において、オイルの液面が放熱部材132の少なくとも一部の下端部よりも上側に位置している。
【0069】
チェーンソー2を使用して作業している間に、オイルタンク50内のオイルが不足することを抑制するために、通常、オイルタンク50には、十分量のオイルが収容されている。しかしながら、チェーンソー2を長期間連続して使用する場合、オイルタンク50内のオイルの量が、オイルタンク50の容量の50%以下に相当する量まで減少することがある。上記の構成では、チェーンソー2を長期間連続して使用する場合であっても、チェーンソー2を載置面Pに載置したときと同じ姿勢とした場合に、放熱部材132をオイルタンク50内のオイルと接触させることができ、放熱部材132の熱をオイルに放熱しやすくすることができる。このため、ナット84が高温となることをより抑制することができる。
【0070】
また、放熱部材132の少なくとも一部が、オイルタンク50の内部において、ボルト82が延びる方向に関して、オイルタンク50の内面からオイルタンク50の長さLoの10%以上離れた位置に配置された部分を含んでいる。
【0071】
上記の構成では、放熱部材132の少なくとも一部をオイルタンク50の内部の深い位置まで配置することにより、放熱部材132がオイルタンク50内のオイルに接触する面積を増大させることができるので、放熱部材132の熱をオイルに放熱しやすくすることができる。このため、ナット84が高温となることをより抑制することができる。
【0072】
また、図3に示すように、ガイドバー6は、ガイドバー6の長手方向に関して、本体ハウジング22よりもガイドバー6の先端部側に位置する切削部7bを備えている。切削部7bの長さLgは、長手方向に関して、250mm以下である。
【0073】
一般的に、切削部7bの長さLgが短くなるにつれて、ガイドバー6の周縁の湾曲がきつくなる。このため、ソーチェーン8とガイドバー6との摩擦熱が大きくなり、ガイドバー6がより高温となりやすい。上記の構成では、より高温となったガイドバー6からボルト82に伝わった熱を、放熱構造130を介して、オイルタンク50内のオイルに放熱することができる。これにより、ナット84が高温となることを抑制することができる。
【0074】
モータ48は、原動機として機能してもよい。
【0075】
上記の構成では、原動機がエンジンである場合と比較して、本体ハウジング22に高温となる部位が発生し難いので、作業者が注意を払わずに、ナット84に触れてしまうおそれが大きい。上記の構成では、放熱構造130がボルト82の熱をオイルタンク50内のオイルに放熱するので、ナット84が高温となることを抑制することができる。
【0076】
図1に示すように、チェーンソー2は、本体ハウジング22に着脱可能なバッテリパックBをさらに備えている。モータ48は、バッテリパックBからの電力により駆動する。
【0077】
上記の構成では、電源コードが不要となるため、チェーンソー2の取り回しが良い一方、作業者が注意を払わずに、ナット84に触れてしまうおそれが大きい。上記の構成では、放熱構造130がボルト82の熱をオイルタンク50内のオイルに放熱するので、ナット84が高温となることを抑制することができる。
【0078】
(第2実施例)
図9および図10を参照して、第2実施例を説明する。第2実施例では、第1実施例と異なる点のみを説明し、第1実施例と同様の点については、同様の符号を付して説明を省略する。第2実施例では、放熱構造230の構成が、第1実施例の放熱構造130と異なる。図9に示すように、放熱構造230は、放熱部材232と、固定ボルト242と、を備えている。放熱部材232は、フレキシブル部材から構成されている。以下では、フレキシブル部材に、放熱部材232と同様の符号を付して説明する。フレキシブル部材232は、金属材料から成る。金属材料として、例えば、アルミ等の伝熱性能の高い材料が用いられる。フレキシブル部材232は、オイルタンク50の内部に配置されている。フレキシブル部材232は、基部234と、チェーン部236と、を備えている。基部234は、上下方向の中央部分に、左右方向に貫通する固定孔240を有する。基部234の固定孔240と内側部分124の固定孔126に固定ボルト242が差し込まれた状態では、固定ボルト242は、基部234と内側部分124に螺合している。これにより、基部234は、内側部分124に接触して固定される。
【0079】
チェーン部236は、基部234の下部に固定されている。チェーン部236は、複数の金属リングが連結した形状を有する。チェーン部236は、チェーンソー2の姿勢によらず、重力方向に垂れ下がる。例えば、図9に示すように、チェーンソー2が載置面Pに載置されたときと同じ姿勢にある場合、チェーン部236は、オイルタンク50の下面に向かって垂れ下がっており、チェーン部236の一部は、オイルタンク50の下面に接触している。この状態では、オイルタンク50内のオイルの量がオイルタンク50の容量の10%に相当する量である場合であっても、オイルの液面LH10は、チェーン部236の一部よりも上側に位置している。このため、チェーン部236の一部は、オイル内に配置される。この結果、ボルト82の熱が、チェーン部236を介してオイルに放熱され、ナット84が高温となることを抑制することができる。
【0080】
また、図10に示すように、補充用開口100が下側を向いている場合、チェーン部236は、補充用開口100に向かって垂れ下がっており、チェーン部236の一部は、オイルタンク50の補充用開口100側の内面に接触している。このため、オイルタンク50内のオイルの量がオイルタンク50の容量の10%に相当する量である場合でも、オイルの液面LS10は、チェーン部236の一部よりも補充用開口100から離れた位置に位置している。この結果、ボルト82の熱が、オイル内に配置されているチェーン部236を介してオイルに放熱され、ナット84が高温となることを抑制することができる。
【0081】
(効果)
放熱部材232は、チェーンソー2の姿勢によらず、重力方向に垂れ下がる金属製のフレキシブル部材232である。
【0082】
上記の構成では、フレキシブル部材232は、チェーンソー2の姿勢によらず、オイルタンク50内のオイルに接触することができるので、放熱部材232の熱がオイルに放熱されやすくなる。このため、ナット84が高温となることをより抑制することができる。
【0083】
(第3実施例)
図11および図12を参照して、第3実施例を説明する。第3実施例では、第1実施例と異なる点のみを説明し、第1実施例と同様の点については、同様の符号を付して説明を省略する。図11に示すように、第3実施例では、ボルト82の内側部分124が放熱構造130を構成している。内側部分124は、ボルト82の固定部分122が延びる左右方向に関して、オイルタンク50の内面から第1距離L1だけ離れた位置まで延びている。ここで、第1距離L1は、オイルタンク50の左右方向の幅Wの10%以上であり、本実施例では、長さLo40%である。内側部分124の上端部は、オイルタンク50の補充用開口100の上端部よりも上側に配置されており、内側部分124の下端部は、補充用開口100の上端部よりも下側で、補充用開口100の下端部よりも上側に配置されている。
【0084】
チェーンソー2が載置面Pに載置されたときと同じ姿勢にある状態では、オイルタンク50内のオイルの量がオイルタンク50の容量の50%に相当する量である場合、オイルの液面LH50は、内側部分124の下端部よりも上側に配置されている。このため、内側部分124の一部がオイルの内部に配置される。この結果、ボルト82の熱が、内側部分124を介してオイルに放熱され、ナット84が高温となることを抑制することができる。
【0085】
また、図12に示すように、補充用開口100が下側を向いている状態では、オイルタンク50内のオイルの量がオイルタンク50の容量の50%に相当する量である場合、オイルの液面LS50は、内側部分124の先端部よりも補充用開口100から離れた位置に位置している。また、オイルの量がオイルタンク50の容量の40%に相当する量であれば、オイルの液面LS40は、内側部分124の先端部よりも補充用開口100から離れた位置に位置しており、内側部分124の一部がオイル内に配置される状態を維持することができる。なお、変形例では、オイルの量がオイルタンク50の容量の10%に相当する量である場合に、内側部分124がオイルの液面の下側の位置まで延びていてもよい。
【0086】
(効果)
ボルト82が、オイルタンク50を外側から内側まで貫通している。ボルト82のオイルタンク50の内側の部分124が、放熱構造130を構成している。ボルト82のオイルタンク50の内側の部分124が、オイルタンク50の内部において、ボルト82が延びる方向に関して、オイルタンク50の内面からオイルタンク50の長さLoの10%以上離れた位置に配置された部分を含んでいる。
【0087】
上記の構成では、ボルト82をオイルタンク50の内部の深い位置まで配置することにより、ボルト82がオイルタンク50内のオイルと接触する面積を増大させることができるので、ボルト82の熱をオイルに放熱しやすくすることができる。これにより、ナット84が高温となることをより抑制することができる。
【0088】
また、オイルタンク50の容量の第1割合(例えば50%)に相当する量のオイルがオイルタンク50に収容されている場合、チェーンソー2が地面に載置された状態において、オイルの液面がボルト82のオイルタンク50の内側の部分の下端部よりも上側に位置している。
【0089】
上記の構成では、オイルタンク50の容量の第1割合に相当する量のオイルがオイルタンク50に収容されていれば、チェーンソー2を載置面Pに載置したときと同じ姿勢とした場合に、ボルト82は、オイルタンク50内のオイルと接触することができるので、ボルト82の熱をオイルに放熱しやすくすることができる。これにより、ナット84が高温となることをより抑制することができる。
【0090】
また、オイルの量が、オイルタンク50の容量の50%以下に相当する量である場合でも、チェーンソー2が地面に載置された状態において、オイルの液面が放熱部材232の少なくとも一部の下端部よりも上側に位置している。
【0091】
上記の構成では、チェーンソー2を長期間連続して使用して、オイルタンク50内のオイルの量が、オイルタンク50の容量の50%以下の量まで減少する場合であっても、チェーンソー2を載置面Pに載置したときと同じ姿勢とした場合に、ボルト82をオイルと接触させることができ、ボルト82の熱をオイルに放熱しやすくすることができる。これにより、ナット84が高温となることをより抑制することができる。
【0092】
また、本実施例では、ボルト82のみにより、ボルト82の熱をオイルに放熱することができる。これにより、部品点数を少なくすることができる。
【0093】
一実施形態に係るボルト82の固定部分122は、外側部分120から左側に向かって延びた後、屈曲して下側に向かって延び、その後さらに屈曲して左側に向かって延びていてもよい。この場合、内側部分124は、オイルタンク50の下面近傍を左右方向に延びていてもよい。
【0094】
一実施例に係るボルト82は、外側部分120と、固定部分122のみを備えていてもよい。この場合、放熱構造130、230が固定部分122に直接固定されていてもよい。また、インサート成形により、ボルト82と放熱構造130、230がともに、右側ハウジング12に固定されていてもよい。この場合、放熱構造130、230の一部は、右側ハウジング12の内部に埋まっていてもよい。
【0095】
一実施形態に係るチェーンソー2は、エンジン駆動式のチェーンソーであってもよい。
【0096】
一実施形態に係るチェーンソー2は、バッテリパックBを備えていなくてもよい。この場合、チェーンソー2は、外部電源から電源コードを介してモータ48に電力を供給する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0097】
2 :チェーンソー
4 :本体
6 :ガイドバー
6a :長孔
7a :取付部
7b :切削部
8 :ソーチェーン
22 :本体ハウジング
48 :モータ
50 :オイルタンク
52 :オイルポンプ
70 :スプロケット
82 :ボルト
84 :ナット
84a :雌ねじ部
100 :補充用開口
102 :キャップ
118 :ワッシャ
120 :外側部分
120a :雄ねじ部
122 :固定部分
124 :内側部分
126 :固定孔
128 :凹部
130、230:放熱構造
132、232:放熱部材
132 :放熱フィン
134、234:基部
136 :上側フィン
138 :下側フィン
140、240:固定孔
142、242:固定ボルト
232 :フレキシブル部材
236 :チェーン部
B :バッテリパック

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12