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特許7549533キメラ貪食受容体のための発現ベクター、遺伝子改変宿主細胞およびそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】キメラ貪食受容体のための発現ベクター、遺伝子改変宿主細胞およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240904BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240904BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240904BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20240904BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240904BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20240904BHJP
   C12N 15/86 20060101ALN20240904BHJP
   C12N 15/867 20060101ALN20240904BHJP
【FI】
C12N5/10
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/13
C12N5/0783
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
C12N15/867 Z
【請求項の数】 52
(21)【出願番号】P 2020552225
(86)(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 US2019024441
(87)【国際公開番号】W WO2019191339
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】62/649,499
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519106736
【氏名又は名称】セロ・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CERO Therapeutics, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・マーク・コリー
(72)【発明者】
【氏名】イングリッド・イバラ
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/184228(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/019848(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/064076(WO,A1)
【文献】Williamson A. et al.,Engineering approaches to uncover the mechanism of apoptotic cell clearance by a conserved signaling system,Cancer Immunol Res,2016年,Vol. 4 (1), Supplement,Abstract No. A165
【文献】Miyanishi M. et al.,Identification of Tim4 as a phosphatidylserine receptor,Nature,2007年,Vol. 450,pp. 435-439
【文献】引頭 毅 ほか,免疫系を調節するToll様受容体のリガンド認識とシグナル伝達機構,岐歯学誌,2011年,Vol. 37,pp. 138-158
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
A61K38/00-39/44
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ホスファチジルセリンに結合するTim4結合ドメインを含む細胞外ドメインと;
TLRシグナル伝達ドメイン、Traf2シグナル伝達ドメイン、Traf3シグナル伝達ドメイン、Traf6シグナル伝達ドメイン、DAP12シグナル伝達ドメイン、NFAM1シグナル伝達ドメイン、BAFF-Rシグナル伝達ドメイン、CD79bシグナル伝達ドメイン、MERTKシグナル伝達ドメイン、Tyro3シグナル伝達ドメイン、Axlシグナル伝達ドメイン、MyD88シグナル伝達ドメイン、またはFcεR1γシグナル伝達ドメインを含む貪食シグナル伝達ドメインと;
細胞外ドメインと貪食シグナル伝達ドメインとの間に位置し、かつこれらを接続する膜貫通ドメインと;
を含むキメラ貪食受容体(CER)をコードするポリヌクレオチド;および
(b)第2の標的抗原に結合する結合ドメインを含む細胞外ドメインと;
細胞内シグナル伝達ドメインと;
細胞外ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとの間に位置し、かつこれらを接続する膜貫通ドメインと
を含むキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド
を含む発現カセットを含むベクターを含む、T細胞。
【請求項2】
(a)ホスファチジルセリンに結合するTim4結合ドメインを含む細胞外ドメインと;
TLRシグナル伝達ドメイン、Traf2シグナル伝達ドメイン、Traf3シグナル伝達ドメイン、Traf6シグナル伝達ドメイン、DAP12シグナル伝達ドメイン、NFAM1シグナル伝達ドメイン、BAFF-Rシグナル伝達ドメイン、CD79bシグナル伝達ドメイン、MERTKシグナル伝達ドメイン、Tyro3シグナル伝達ドメイン、Axlシグナル伝達ドメイン、MyD88シグナル伝達ドメイン、またはFcεR1γシグナル伝達ドメインを含む貪食シグナル伝達ドメインと;
細胞外ドメインと貪食シグナル伝達ドメインとの間に位置し、かつこれらを接続する膜貫通ドメインと
を含むキメラ貪食受容体(CER)をコードするポリヌクレオチド;
(b)T細胞受容体(TCR)ベータ可変領域とTCRベータ定常領域とを含む組換えTCR結合タンパク質ベータ鎖をコードするポリヌクレオチド;および
(c)TCRアルファ可変領域とTCRアルファ定常領域とを含む組換えTCRアルファ鎖をコードするポリヌクレオチド
を含む発現カセットを含むベクターを含むT細胞であって、TCR結合タンパク質アルファ鎖およびTCR結合タンパク質ベータ鎖が、第2の標的抗原に結合するTCR結合タンパク質を形成する、T細胞。
【請求項3】
(a)CERの細胞外ドメインが、結合ドメインと膜貫通ドメインとの間のスペーサードメインをさらに含む、請求項1または2に記載のT細胞。
【請求項4】
CERのスペーサードメインが、免疫グロブリンヒンジ領域、1型膜タンパク質ヒンジ領域、II型Cレクチンの柄領域、免疫グロブリン定常領域ドメイン、およびTLR膜近傍ドメインからなる群から選択される、請求項3に記載のT細胞。
【請求項5】
免疫グロブリンヒンジ領域が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgDヒンジ領域からなる群から選択される、請求項4に記載のT細胞。
【請求項6】
IgG4ヒンジ領域が、配列番号63で示されるアミノ酸配列を含む、請求項5に記載のT細胞。
【請求項7】
CERの膜貫通ドメインが、Tim1、Tim4、Tim3、FcR、CD8、CD28、MERTK、Axl、Tyro3、BAI1、CD4、DAP12、MRC1、FcR、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8またはTLR9膜貫通ドメインを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項8】
CERの膜貫通ドメインが、配列番号36のアミノ酸配列を含むTim1膜貫通ドメイン、配列番号37または38のアミノ酸配列を含むTim4膜貫通ドメイン、配列番号39のアミノ酸配列を含むTim3膜貫通ドメイン、配列番号40のアミノ酸配列を含むFcγR1膜貫通ドメイン、配列番号41のアミノ酸配列を含むFcγR2A膜貫通ドメイン、配列番号42のアミノ酸配列を含むFcγR2B2膜貫通ドメイン、配列番号43のアミノ酸配列を含むFcγR2C膜貫通ドメイン、配列番号44のアミノ酸配列を含むFcγR3A膜貫通ドメイン、配列番号45のアミノ酸配列を含むFcεRIγ膜貫通ドメイン、配列番号46のアミノ酸配列を含むFcαR1膜貫通ドメイン、配列番号47のアミノ酸配列を含むCD8a膜貫通ドメイン、配列番号107のアミノ酸配列を含むCD28膜貫通ドメイン、配列番号48のアミノ酸配列を含むMERTK膜貫通ドメイン、配列番号49のアミノ酸配列を含むAxl膜貫通ドメイン、配列番号50のアミノ酸配列を含むTyro3膜貫通ドメイン、配列番号51のアミノ酸配列を含むCD4膜貫通ドメイン、配列番号52のアミノ酸配列を含むDAP12膜貫通ドメイン、配列番号53のアミノ酸配列を含むMRC1膜貫通ドメイン、配列番号54のアミノ酸配列を含むTLR1膜貫通ドメイン、配列番号55のアミノ酸配列を含むTLR2膜貫通ドメイン、配列番号56のアミノ酸配列を含むTLR3膜貫通ドメイン、配列番号57のアミノ酸配列を含むTLR4膜貫通ドメイン、配列番号58のアミノ酸配列を含むTLR5膜貫通ドメイン、配列番号59のアミノ酸配列を含むTLR6膜貫通ドメイン、配列番号60のアミノ酸配列を含むTLR7膜貫通ドメイン、配列番号61のアミノ酸配列を含むTLR8膜貫通ドメイン、または配列番号62のアミノ酸配列を含むTLR9膜貫通ドメインを含む、請求項7に記載のT細胞。
【請求項9】
TLRシグナル伝達ドメインが、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、またはTLR9シグナル伝達ドメインである、請求項1~8のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項10】
CERの貪食シグナル伝達ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列を含むMERTKシグナル伝達ドメイン、配列番号5のアミノ酸配列を含むTyro3シグナル伝達ドメイン、配列番号6のアミノ酸配列を含むAxlシグナル伝達ドメイン、配列番号8または配列番号34のアミノ酸配列を含むTraf6シグナル伝達ドメイン、配列番号10、配列番号106、または配列番号33のアミノ酸配列を含むMyD88シグナル伝達ドメイン、配列番号12のアミノ酸配列を含むFcεRIγシグナル伝達ドメイン、配列番号17のアミノ酸配列を含むBAFF-Rシグナル伝達ドメイン、配列番号18のアミノ酸配列を含むDAP12シグナル伝達ドメイン、配列番号19または配列番号35のアミノ酸配列を含むNFAM1シグナル伝達ドメイン、配列番号21または配列番号20のアミノ酸配列を含むCD79bシグナル伝達ドメイン、配列番号22のアミノ酸配列を含むTLR1シグナル伝達ドメイン、配列番号23のアミノ酸配列を含むTLR2シグナル伝達ドメイン、配列番号24のアミノ酸配列を含むTLR3シグナル伝達ドメイン、配列番号25のアミノ酸配列を含むTLR4シグナル伝達ドメイン、配列番号26のアミノ酸配列を含むTLR5シグナル伝達ドメイン、配列番号27のアミノ酸配列を含むTLR6シグナル伝達ドメイン、配列番号28のアミノ酸配列を含むTLR7シグナル伝達ドメイン、配列番号29のアミノ酸配列を含むTLR8シグナル伝達ドメイン、配列番号30のアミノ酸配列を含むTLR9シグナル伝達ドメイン、配列番号31のアミノ酸配列を含むTraf2シグナル伝達ドメイン、または配列番号32のアミノ酸配列を含むTraf3シグナル伝達ドメインを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項11】
CERの貪食シグナル伝達ドメインが、一次貪食シグナル伝達ドメインおよび二次貪食シグナル伝達ドメインを含み、ここで一次貪食シグナル伝達ドメインが、TLR1シグナル伝達ドメイン、TLR2シグナル伝達ドメイン、TLR3シグナル伝達ドメイン、TLR4シグナル伝達ドメイン、TLR5シグナル伝達ドメイン、TLR6シグナル伝達ドメイン、TLR7シグナル伝達ドメイン、TLR8シグナル伝達ドメイン、TLR9シグナル伝達ドメイン、Traf2シグナル伝達ドメイン、Traf3シグナル伝達ドメイン、Traf6シグナル伝達ドメイン、DAP12シグナル伝達ドメイン、NFAM1シグナル伝達ドメイン、BAFFRシグナル伝達ドメイン、CD79bシグナル伝達ドメイン、MERTKシグナル伝達ドメイン、Tyro3シグナル伝達ドメイン、Axlシグナル伝達ドメイン、MyD88シグナル伝達ドメイン、またはFcεR1γシグナル伝達ドメインである、請求項1~10のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項12】
CER二次貪食シグナル伝達ドメインは、TLR1シグナル伝達ドメイン、TLR2シグナル伝達ドメイン、TLR3シグナル伝達ドメイン、TLR4シグナル伝達ドメイン、TLR5シグナル伝達ドメイン、TLR6シグナル伝達ドメイン、TLR7シグナル伝達ドメイン、TLR8シグナル伝達ドメイン、TLR9シグナル伝達ドメイン、Traf2シグナル伝達ドメイン、Traf3シグナル伝達ドメイン、Traf6シグナル伝達ドメイン、DAP12シグナル伝達ドメイン、NFAM1シグナル伝達ドメイン、BAFFRシグナル伝達ドメイン、CD79bシグナル伝達ドメイン、MERTKシグナル伝達ドメイン、Tyro3シグナル伝達ドメイン、Axlシグナル伝達ドメイン、MyD88シグナル伝達ドメイン、またはFcεR1γシグナル伝達ドメインである、請求項11に記載のT細胞。
【請求項13】
CERの一次貪食シグナル伝達ドメインおよび二次貪食シグナル伝達ドメインが各々独立して、配列番号3のアミノ酸配列を含むMERTKシグナル伝達ドメイン、配列番号5のアミノ酸配列を含むTyro3シグナル伝達ドメイン、配列番号6のアミノ酸配列を含むAxlシグナル伝達ドメイン、配列番号8または配列番号34のアミノ酸配列を含むTraf6シグナル伝達ドメイン、配列番号10、配列番号106、または配列番号33のアミノ酸配列を含むMyD88シグナル伝達ドメイン、配列番号12のアミノ酸配列を含むFcεRIγシグナル伝達ドメイン、配列番号17のアミノ酸配列を含むBAFF-Rシグナル伝達ドメイン、配列番号18のアミノ酸配列を含むDAP12シグナル伝達ドメイン、配列番号19または配列番号35のアミノ酸配列を含むNFAM1シグナル伝達ドメイン、配列番号21のアミノ酸配列を含むCD79bシグナル伝達ドメイン、配列番号22のアミノ酸配列を含むTLR1シグナル伝達ドメイン、配列番号23のアミノ酸配列を含むTLR2シグナル伝達ドメイン、配列番号24のアミノ酸配列を含むTLR3シグナル伝達ドメイン、配列番号25のアミノ酸配列を含むTLR4シグナル伝達ドメイン、配列番号26のアミノ酸配列を含むTLR5シグナル伝達ドメイン、配列番号27のアミノ酸配列を含むTLR6シグナル伝達ドメイン、配列番号28のアミノ酸配列を含むTLR7シグナル伝達ドメイン、配列番号29のアミノ酸配列を含むTLR8シグナル伝達ドメイン、配列番号30のアミノ酸配列を含むTLR9シグナル伝達ドメイン、配列番号31のアミノ酸配列を含むTraf2シグナル伝達ドメイン、および配列番号32のアミノ酸配列を含むTraf3シグナル伝達ドメインから選択される、請求項12に記載のT細胞。
【請求項14】
Tim4結合ドメインが、配列番号96のアミノ酸配列または配列番号96のアミノ酸25~314を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項15】
(a)CARの結合ドメインが、scFvを含む;および/または
(b)CARの細胞外ドメインが、結合ドメインと膜貫通ドメインとの間のスペーサードメインをさらに含む、請求項1および3~14のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項16】
CARのスペーサードメインが、免疫グロブリンヒンジ領域、1型膜タンパク質ヒンジ領域、II型Cレクチンの柄領域、免疫グロブリン定常領域ドメイン、およびTLR膜近傍ドメインからなる群から選択される、請求項15に記載のT細胞。
【請求項17】
免疫グロブリンヒンジ領域が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgDヒンジ領域からなる群から選択される、請求項16に記載のT細胞。
【請求項18】
IgG4ヒンジ領域が、配列番号63で示されるアミノ酸配列を含む、請求項17に記載のT細胞。
【請求項19】
CARの膜貫通ドメインが、CD28、CD2、CD4、CD8、CD3ε、CD3δ、CD3ζ、CD25、CD27、CD40、CD79A、CD79B、CD80、CD86、CD95(Fas)、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD200R、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD272(BTLA)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、CD279(PD-1)、CD300、CD357(GITR)、A2aR、DAP10、FcRα、FcRβ、FcRγ、Fyn、GAL9、KIR、Lck、LAT、LRP、NKG2D、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、PTCH2、ROR2、Ryk、Slp76、SIRPα、pTα、TCRα、TCRβ、TIM3、TRIM、LPA5またはZap70膜貫通ドメインを含む、請求項1および3~18のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項20】
CD28膜貫通ドメインが、配列番号107のアミノ酸配列を含む、請求項19に記載のT細胞。
【請求項21】
CARの細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ζ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD278(ICOS)、DAP10、DAP12、CD79b、FcRおよびCD66dシグナル伝達ドメインから選択されるITAM含有活性化シグナル伝達ドメインを含む、請求項1および3~20のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項22】
CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号166または167のアミノ酸配列を含む、請求項21に記載のT細胞。
【請求項23】
CARの細胞内シグナル伝達ドメインが、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2CおよびB7-H3シグナル伝達ドメインから選択される第1の共刺激性シグナル伝達ドメインを含む、請求項1および3~22のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項24】
第1の共刺激性シグナル伝達ドメインが、配列番号169または170のアミノ酸配列を含むCD28共刺激性シグナル伝達ドメインまたは配列番号168のアミノ酸配列を含む4-1BB共刺激性シグナル伝達ドメインを含む、請求項23に記載のT細胞。
【請求項25】
CARの細胞内シグナル伝達ドメインが、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2CおよびB7-H3シグナル伝達ドメインから選択される第2の共刺激性シグナル伝達ドメインを含む、請求項1および3~24のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項26】
CARが、第1世代CAR、第2世代CAR、第3世代CARまたはTCR-CARである、請求項1および3~25のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項27】
CARの第2の標的抗原が、腫瘍抗原、ウイルス抗原または寄生生物抗原である、請求項1および3~26のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項28】
CARの第2の標的抗原が、CD138、CD38、CD33、CD123、CD72、CD79a、CD79b、メソテリン、PSMA、BCMA、ROR1、MUC-16、L1CAM、CD22、CD19、CD20、CD23、CD24、CD37、CD30、CA125、CD56、c-Met、EGFR、GD-3、HPV E6、HPV E7、MUC-1、HER2、葉酸受容体α、CD97、CD171、CD179a、CD44v6、WT1、VEGF-α、VEGFR1、IL-13Rα1、IL-13Rα2、IL-11Rα、PSA、FcRH5、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、TAG-72、CEA、エフリンA2、エフリンB2、ルイス式A抗原、ルイス式Y抗原、MAGE、MAGE-A1、RAGE-1、葉酸受容体β、EGFRviii、VEGFR-2、LGR5、SSX2、AKAP-4、FLT3、フコシルGM1、GM3、o-アセチル-GD2およびGD2から選択される腫瘍抗原である、請求項27に記載のT細胞。
【請求項29】
組換えTCRの第2の標的抗原が、WT-1、メソテリン、MART-1、NY-ESO-1、MAGE-A3、HPV E7、サバイビン、αフェトプロテインまたは腫瘍新生抗原である、請求項2~14のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項30】
(a)TCRアルファ鎖が、12、14および15位におけるLVL置換を含む;および/または
(b)TCRベータ鎖定常領域が56位におけるシステイン置換を含むか、TCRアルファ鎖定常領域が48位におけるシステイン置換を含むか、またはこれらの両方である、
請求項2~14および29のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項31】
CERをコードするポリヌクレオチドが、CARまたはTCRをコードするポリヌクレオチドの上流に存在する、請求項1~30のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項32】
CERをコードするポリヌクレオチドとCARをコードするポリヌクレオチドとの間にIRESエレメントまたは2Aペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含む、請求項1、3~28および31のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項33】
CERをコードするポリヌクレオチド、TCRアルファ鎖をコードするポリヌクレオチドおよびTCRベータ鎖をコードするポリヌクレオチドが、IRESエレメントまたは2Aペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドおよびIRESエレメントまたは2Aペプチドをコードする第2のポリヌクレオチドによって互いに分離されている、請求項2~14および29~31のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項34】
2Aペプチドが、T2A、P2A、E2AまたはF2Aペプチドを含む、請求項32または33のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項35】
各2Aペプチドが、
(i)配列番号67、68、69および75のいずれか1つのアミノ酸配列を含むT2Aペプチド;
(ii)配列番号70または71のアミノ酸配列を含むP2Aペプチド;
(iii)配列番号72のアミノ酸配列を含むE2Aペプチド配列;または
(iv)配列番号73のアミノ酸配列を含むF2Aペプチド配列
を含む、請求項34に記載のT細胞。
【請求項36】
(a)CERが、配列番号97-103、109-115、118-134、136-165、171-175、および183-195のいずれか1つのアミノ酸配列を含む;および
(b)TCRが、配列番号90のアミノ酸配列を含む、
請求項2に記載のT細胞。
【請求項37】
プロモーターが、発現カセットに作動可能に連結される、請求項1~36のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項38】
ウイルスベクターである、請求項1~37のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項39】
ウイルスベクターが、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターである、請求項38に記載のベクター。
【請求項40】
ベクターが、形質導入マーカータンパク質をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、請求項1~39のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項41】
形質導入マーカータンパク質が、蛍光タンパク質、CD2の細胞外ドメイン、または切断型EGFRを含む、請求項40に記載のT細胞。
【請求項42】
切断型EGFRが、配列番号82のアミノ酸配列を含む、請求項41に記載のT細胞。
【請求項43】
(a)T細胞が、CD4 T細胞、CD8 T細胞、またはこれらの両方である;および/または
(b)T細胞が、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターT細胞、またはそれらの任意の組合せである、請求項1~42のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項44】
T細胞が、ヒトT細胞である、請求項1~43のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項45】
CARまたはTCRによってターゲティングされる抗原を発現する細胞に対する細胞溶解活性、および細胞表面上にホスファチジルセリンを発現する細胞に対する食作用活性を示す、請求項1~44のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項46】
対象において疾患を治療する方法における使用のための請求項1~44のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項47】
疾患が、がん、ウイルス感染、細菌感染または寄生生物感染である、請求項46に記載の使用のためのT細胞。
【請求項48】
がんが、固形腫瘍、黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞癌、腎がん、血液がん、前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、結腸がん、直腸がん、胃がん、食道がん、膀胱がん、頭頸部がん、甲状腺がん、乳がん、三種陰性乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、肺がん、尿路上皮がん、膵がん、神経膠芽腫、肝細胞がん、骨髄腫、多発性骨髄腫、白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群、脳がん、CNSがんまたは悪性神経膠腫である、請求項47に記載の使用のためのT細胞。
【請求項49】
宿主細胞が、該対象にとって自家または同種異系である、請求項46~48のいずれか一項に記載の使用のためのT細胞。
【請求項50】
T細胞が、追加の治療剤と組み合わせて対象に投与される、請求項46~49のいずれか一項に記載の使用のためのT細胞。
【請求項51】
追加の治療剤が、抗体、放射線療法、化学療法剤、小分子療法、細胞免疫療法、腫瘍溶解性ウイルス、電気パルス療法、UV光療法、高周波数超音波療法、抗生物質、抗真菌剤または抗ウイルス剤である、請求項50に記載の使用のためのT細胞。
【請求項52】
追加の治療剤が、治療用量未満の用量において該対象に投与される、請求項50または51に記載の使用のためのT細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列リストについての申告
本出願に伴う配列リストを、用紙複写物の代わりにテキスト形式において提供し、これによって参照により本明細書に組み込む。配列リストを含有するテキストファイルの名称は、200265_406WO_SEQUENCE_LISTING.txtである。テキストファイルは539KBであり、2019年3月26日に創出され、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
【背景技術】
【0002】
がん抗原に対してターゲティングした遺伝子操作した受容体により改変したT細胞の使用は、血液系腫瘍において臨床的成功を実証した(例えば白血病におけるCD19特異的キメラ抗原受容体療法)。少数の例を挙げると、CEA、GD2、メソテリン、IL13Rα、HER2、FAPおよびL1CAMをターゲティングする、操作した受容体を使用する、固形腫瘍の治療における養子細胞免疫療法についてのいくつかの臨床治験が進行中である。操作した受容体には、キメラ抗原受容体(CAR:chimeric antigen receptor)および高親和性T細胞受容体(TCR:T cell receptor)が含まれる。しかしながら、固形腫瘍の治療は、腫瘍部位への輸送、腫瘍微小環境への物理的障壁、ストレス性代謝状勢および免疫抑制機構(例えば免疫チェックポイント分子の発現、阻害性サイトカインの産生)を含む独特な問題を提示する。養子免疫療法治療におけるT細胞の持続性および活性を増強する努力は現在進行中である。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1図1A~Gは、例示的なタンデム発現カセットについてのベクターマップを示す。タンデム発現カセットは、腫瘍(例えば子宮頸部の腫瘍)特異的細胞溶解応答を誘導するためのヒトパピローマウイルス16(HPV16)E7タンパク質特異的TCR、および細胞溶解により誘導されたホスファチジルセリン曝露に際して腫瘍特異的食作用活性を誘発するためのホスファチジルセリン特異的キメラ貪食受容体(CER:chimeric engulfment receptor)の両方を宿す。図1Aは、キメラ貪食受容体5(CER5)コンストラクトをコードするポリヌクレオチドとHPV16 E7特異的TCRをコードするポリヌクレオチドとを含む例示的なタンデム発現カセットを示す。CER5は、HPV16 E7特異的TCRの上流に位置する。CER5およびHPV16 E7 TCRをコードする配列は、EF-1αプロモーターに作動可能に連結されており、T2Aペプチドによって分離されている。CER5は、Tim4結合ドメインと、Tim4膜貫通ドメインと、TLR4貪食シグナル伝達ドメインとを含む。図1Bは、CER19コンストラクトをコードするポリヌクレオチドとHPV16 E7特異的TCRをコードするポリヌクレオチドとを含む例示的なタンデム発現カセットを示す。CER19は、HPV16 E7特異的TCRの上流に位置する。CER19およびHPV16 E7 TCRをコードする配列は、EF-1αプロモーターに作動可能に連結されており、T2Aペプチドによって分離されている。CER19は、Tim4結合ドメインと、Tim4膜貫通ドメインと、TLR5シグナル伝達ドメインとを含む。図1Cは、CER21コンストラクトをコードするポリヌクレオチドとHPV16 E7特異的TCRをコードするポリヌクレオチドとを含む例示的なタンデム発現カセットを示す。CER21は、HPV16 E7特異的TCRの上流に位置する。CER21およびHPV16 E7 TCRをコードする配列は、EF-1αプロモーターに作動可能に連結されており、T2Aペプチドによって分離されている。CER21は、Tim4結合ドメインと、Tim4膜貫通ドメインと、TLR8シグナル伝達ドメインとを含む。図1Dは、CER25コンストラクトをコードするポリヌクレオチドとHPV16 E7特異的TCRをコードするポリヌクレオチドとを含む例示的なタンデム発現カセットを示す。CER25は、HPV16 E7特異的TCRの上流に位置する。CER25およびHPV16 E7 TCRをコードする配列は、EF-1αプロモーターに作動可能に連結されており、T2Aペプチドによって分離されている。CER25は、Tim4結合ドメインと、Tim4膜貫通ドメインと、NFAM1シグナル伝達ドメインとを含む。図1Eは、CER27コンストラクトをコードするポリヌクレオチドとHPV16 E7特異的TCRをコードするポリヌクレオチドとを含む例示的なタンデム発現カセットを示す。CER27は、HPV16 E7特異的TCRの上流に位置する。CER27およびHPV E7 TCRをコードする配列は、EF-1αプロモーターに作動可能に連結されており、T2Aペプチドによって分離されている。CER27は、Tim4結合ドメインと、Tim4膜貫通ドメインと、TLR2シグナル伝達ドメインとを含む。図1Fは、CER29コンストラクトをコードするポリヌクレオチドとHPV16 E7特異的TCRをコードするポリヌクレオチドとを含む例示的なタンデム発現カセットを示す。CER29は、HPV16 E7特異的TCRの上流に位置する。CER29およびHPV16 E7 TCRをコードする配列は、EF-1αプロモーターに作動可能に連結されており、T2Aペプチドによって分離されている。CER29は、Tim4結合ドメインと、Tim4膜貫通ドメインと、Traf6シグナル伝達ドメインとを含む。図1Gは、CER31コンストラクトをコードするポリヌクレオチドとHPV16 E7特異的TCRをコードするポリヌクレオチドとを含む例示的なタンデム発現カセットを示す。CER31は、HPV16 E7特異的TCRの上流に位置する。CER31およびHPV16 E7 TCRをコードする配列は、EF-1αプロモーターに作動可能に連結されており、T2Aペプチドによって分離されている。CER31は、Tim4結合ドメインと、Tim4膜貫通ドメインと、Traf3シグナル伝達ドメインとを含む。
図2図2は、CER21-HPV16 E7 TCRを含むタンデム発現コンストラクトにより改変したヒト初代CD8+T細胞の細胞傷害性を示す。画像は、様々な時点(2時間、4時間および6時間)において採取したHPV16 E7+頭頸部扁平上皮癌(SCC152)細胞から放射されたカスパーゼ3/7蛍光指示色素を示す。SCC152細胞との定時共培養実験において、CER21-HPV16 E7 TCRタンデム発現カセットを形質導入したCD8+T細胞(上部の行)を、HPV16 E7 TCR単独を形質導入したCD8+T細胞(下部の行)と比較した。タンデム発現コンストラクトは、CD8+T細胞において細胞溶解活性および食作用活性の両方を与え、死滅させる能力を向上させる。エフェクターCD8+T細胞:標的SCC152細胞を、1:1の比においてインキュベートした。
図3図3は、T2A配列により分離されたタンデムカセットHPV16 E7 TCRおよびキメラ貪食受容体21(CER21)を含むレンチウイルスベクターを形質導入したヒト初代CD8+T細胞との共培養に際しての、HPV16 E7+SCC152細胞における経時的なカスパーゼ3/7誘導を示す線グラフである。HPV16 E7 TCRとCER21とをコードするタンデム発現コンストラクトは、HPV16 E7 TCR単独を含む宿主CD8+T細胞と比較して、宿主CD8+T細胞に高い標的細胞死滅能力を与える。エフェクターCD8+T細胞を、標的SCC152細胞と1:1の比においてインキュベートした。全カスパーゼ3/7蛍光を経時的に定量した。
図4図4は、T2A配列により分離されたタンデムカセットHPV16 E7 TCRおよびCERを含むレンチウイルスベクターを形質導入したCD8+T細胞との共培養に際しての、HPV16 E7+SCC152細胞におけるカスパーゼ3/7誘導を示す棒グラフである。模擬形質導入細胞を、陰性対照として使用した。SCC152細胞のIncuCyte(登録商標)カスパーゼ3/7赤色アポトーシス試薬による標識によって、アポトーシスを受ける細胞の検出(赤色蛍光)が可能になる。タンデムCER-HPV16 E7 TCRカセットを形質導入したCD8+T細胞をHPV16 E7 TCR対照を形質導入したCD8+T細胞と比較する共培養実験から、経時的に測定を取った。
図5図5は、共培養の開始6時間後に採取したHPV+頭頸部扁平上皮癌(SCC152)細胞から放射されたカスパーゼ3/7蛍光指示色素の画像を示す。CER-HPV16 E7 TCRタンデム発現カセットを形質導入したCD8+T細胞との共培養を、HPV16 E7 TCR単独を形質導入したCD8+T細胞との共培養(上から2番目)と比較した。CER-HPV16 E7 TCRタンデム発現カセットを形質導入したCD8+T細胞は、対照CD8+T細胞よりも高いカスパーゼ誘導を示す。
図6図6は、HPV16 E7 TCR、CER21-HPV16 E7 TCRタンデム発現カセット、CER29-HPV16 E7 TCRタンデム発現カセットまたはCER31-HPV16 E7 TCRタンデム発現カセットを形質導入したCD8+T細胞の共培養の6時間後の食作用の定量を示す棒グラフである。食作用の定量は、Keyence BZ-X710画像化系においてハイブリッドキャプチャーソフトウェアによって行い、食作用%を、青色染色されたエフェクター細胞の内側の赤色蛍光標的(SCC152細胞)数を特定することによって決定した(cell trace violet標識したCER-HPV16 E7 TCRタンデム発現カセットを形質導入したCD8+T細胞-内部移行された赤色の数/青色の数)x100。
図7図7は、SCC152標的細胞(pHrodo Red標識)を貪食するCER21-HPV16 E7 TCRタンデム発現カセットを形質導入したCD8+T細胞(violet着色)を示す蛍光顕微鏡写真である。CER21-HPV16 E7 TCRタンデム発現カセット形質導入CD8+T細胞対SCC152標的細胞の1:1混合物を、6時間共培養し、その後画像化した。矢印は、violet着色したCD8+T細胞エンドソーム区画内のSCC152細胞(赤色)の内部移行の代表的な画像を示す(左画像=明視野オーバーレイ、右画像=蛍光オーバーレイ)。タンデムカセットにより操作したCD8+T細胞は、SCC152腫瘍細胞株を明らかに貪食する。
図8図8は、CER21-HPV16 E7 TCRタンデム発現カセットを形質導入したCD8+T細胞が、Rac1依存的様式において標的細胞を貪食したことを示す。小GTPアーゼRac1の活性化および膜動員は、食作用を誘発する。左画像は、青色標識したCER21-HPV16 E7 TCRを形質導入したCD8+細胞の内側のpH rodo red標識標的細胞の貪食を示す。Rac1阻害剤NSC23766(50μM)を、共培養実験に添加し(右画像)、インビトロ(in vitro)食作用/貪食を定量した。蛍光顕微鏡写真は、小分子によるRac1の阻害が、CER21-HPV16 E7 TCRタンデム発現カセットを形質導入したCD8+T細胞におけるインビトロ貪食を無効にすることを示す(右)。
図9図9は、CER29-HPV16 E7 TCRタンデム発現カセットを形質導入したCD8+T細胞が、Rac1依存的様式において標的細胞を貪食することを示す。小GTPアーゼRac1の活性化および膜動員は、食作用を誘発する。左画像は、青色標識したCER29-HPV16 E7 TCRを形質導入したCD8+細胞の内側のpH rodo red標識標的細胞の貪食を示す。Rac1阻害剤NSC23766(50μM)を、共培養実験に添加し(右画像)、インビトロ食作用を定量した。蛍光顕微鏡写真は、小分子によるRac1の阻害が、CER29-HPV16 E7 TCRタンデム発現カセットを形質導入したCD8+T細胞におけるインビトロ食作用を無効にすることを示す(右)。
図10図10は、CER31-HPV16 E7 TCRタンデム発現カセットを形質導入したCD8+T細胞が、Rac1依存的様式において標的細胞を貪食することを示す。小GTPアーゼRac1の活性化および膜動員は、食作用を誘発する。左画像は、青色標識したCER31-HPV16 E7 TCRを形質導入したCD8+細胞の内側のpH rodo red標識標的細胞の貪食を示す。Rac1阻害剤NSC23766(50μM)を、共培養実験に添加し(右)、インビトロ食作用を定量した。蛍光顕微鏡写真は、小分子阻害剤によるRac1の阻害が、CER31-HPV16 E7 TCRタンデム発現カセットを形質導入したCD8+T細胞におけるインビトロ食作用/貪食を無効にすることを示す(右)。
図11図11は、CER21-HPV16 E7 TCRを含むタンデム発現カセットを形質導入したCD8+T細胞が、細胞溶解および食作用の二重の機能性を有することを示す。CER21-HPV16 E7 TCR形質導入CD8+T細胞は、インビトロでホスファチジルセリンコーティングしたビーズの食作用取り込みを示す。ストレプトアビジンコーティングしたラテックスビーズをビオチン-ホスファチジルセリンと結合し、食作用アッセイに使用した。30分間のインキュベーション後、CER21-HPV16 E7 TCR形質導入CD8+T細胞は、ホスファチジルセリンコーティングしたビーズの取り込みを示した(白色矢印は、貪食事象の代表的な画像を示す)。
図12図12は、インビトロでのホスファチジルセリンコーティングしたビーズの食作用取り込みを示すCER21-HPV16 E7 TCR形質導入CD8+T細胞の高拡大画像を示す。
図13図13は、ホスファチジルセリンによりコーティングしたラテックスビーズと共培養したHPV16 E7 TCR形質導入CD8+T細胞のインキュベーション30分後における光学顕微鏡写真を示す。HPV16 E7 TCR単独を形質導入したCD8+T細胞は、ホスファチジルセリンによりコーティングしたラテックスビーズの取り込みを示さない。
図14図14は、CER21-HPV16 E7 TCRタンデム発現カセットまたはHPV16 E7 TCR単独を形質導入し、かつSCC152標的細胞と共培養したCD8+T細胞のサイトカイン分泌パターンを示す3D棒グラフである。サイトカイン分泌パターンを決定するために、CER21-HPV16 E7 TCR改変CD8+T細胞を、SCC152標的細胞と共培養した。メソスケールマルチアレイサイトカインプレートを使用して、各共培養物からの細胞上清中のサイトカイン濃度を測定することによって抗原特異的サイトカイン分泌を決定した。アッセイにおいて以下のサイトカイン:IFNγ、IL-2、TNFα、IL-4、IL-6、IL-12b、IL-13、IL-1bおよびIL-10を測定した。CER21-HPV16 E7 TCRタンデム発現カセットを形質導入したCD8+T細胞は、サイトカイン分泌、例えばIFNγによって示される通り、抗原特異的エフェクター機能を示す。
図15A図15A~15Bは、T細胞の食作用活性がCERによって特異的に誘導されることを示す。図15Aは、食作用アッセイのFACS分析を示す。CellTrace-violet標識模擬形質導入T細胞、HPV E7-TCR形質導入T細胞、およびHPV E7-TCR/CER29タンデム発現カセット形質導入T細胞を、pHrodo-red標識HPV+SCC152頭頸部がん細胞と共培養した。図15Bは、FACSデータの定量を示し、模擬形質導入T細胞とE7 TCR形質導入T細胞との間に食作用における差がないことを示す。T細胞においてE7 TCRと共にCER29を共発現したT細胞は、食作用活性を示した。
図15B図15A~15Bは、T細胞の食作用活性がCERによって特異的に誘導されることを示す。図15Aは、食作用アッセイのFACS分析を示す。CellTrace-violet標識模擬形質導入T細胞、HPV E7-TCR形質導入T細胞、およびHPV E7-TCR/CER29タンデム発現カセット形質導入T細胞を、pHrodo-red標識HPV+SCC152頭頸部がん細胞と共培養した。図15Bは、FACSデータの定量を示し、模擬形質導入T細胞とE7 TCR形質導入T細胞との間に食作用における差がないことを示す。T細胞においてE7 TCRと共にCER29を共発現したT細胞は、食作用活性を示した。
【発明を実施するための形態】
【0004】
一態様においては、本開示は、同じ宿主細胞における、第1の養子免疫療法分子をコードする第1の導入遺伝子と第2の養子免疫療法分子をコードする第2の導入遺伝子との共発現のためのタンデム発現カセットを提供する。本明細書において説明するタンデム発現カセットの実施形態は、キメラ貪食受容体(CER)をコードするポリヌクレオチドと、キメラ抗原受容体(CAR)または組換えT細胞受容体(TCR)をコードするポリヌクレオチドとを含む。本開示のタンデム発現カセットは、同じ宿主細胞においてタンデム細胞溶解性表現型および貪食表現型を与えるために使用され得る。ある特定の実施形態においては、第1の標的抗原に特異的なCARまたはTCRの細胞傷害活性は、第1の標的抗原を発現する標的細胞のアポトーシスを誘導し、それによって、第2の標的抗原を曝露し;第2の標的抗原に特異的である共発現されたCERは、第2の標的抗原を発現する標的細胞または粒子の貪食を誘導する。この相互作用は、標的細胞の貪食と関連付けられる環境/ホスファチジルセリン発現を産生する遺伝子操作細胞を、規定の腫瘍または腫瘍細胞との様々な相互作用を有する同じ細胞から分離することに関連し得る。
【0005】
加えて、本開示のタンデム発現カセットを発現するように改変された細胞、ならびにそのような改変細胞のそれを必要とする対象へのデリバリーのための方法および組成物が提供される。
【0006】
本開示をより詳細に示す前に、本明細書において使用されるある特定の用語の定義を提供することは本開示の理解に役立ちうる。
【0007】
本説明において、任意の濃度範囲、割合範囲、比の範囲または整数範囲は、別に示されない限り、列挙される範囲内の任意の整数の値、および適切な場合、その分数(例として整数の10分の1および100分の1)を含むと理解されるべきである。また、任意の物理的特色、例としてポリマーサブユニット、サイズまたは厚さに関する本明細書において列挙される任意の数値範囲は、別に示されない限り、列挙される範囲内の任意の整数を含むと理解されるべきである。本明細書において使用されるとき、「約」という用語は、別に示されない限り、示される範囲、値または構造の±20%を意味する。「a」および「an」という用語は、本明細書において使用されるとき、列挙される成分のうちの「1つまたは複数」を指すことが理解されるべきである。選択肢(例えば「または(or)」)の使用は、選択肢のいずれか1つ、両方またはその任意の組合せを意味すると理解されるべきである。本明細書において使用されるとき、「~を含む(include)」、「~を有する(have)」および「~を含む(comprise)」という用語は、同義的に使用され、その用語およびその変形は、非限定的であると解釈されることが意図される。
【0008】
抗体技術の分野における当業者によって理解される用語は各々、本明細書において明確に異なって定義されない限り、当該技術分野において得られる意味を与えられる。「抗体」という用語は、最も広範な意味において使用され、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含む。「抗体」とは、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重鎖(H)および2つの軽鎖(L)を含むインタクトな抗体、および標的分子を結合する能力を有するか、または保持するインタクトな抗体の抗原結合性部分(または抗原結合性ドメイン)を指し得る。抗体は、免疫グロブリンの天然、組換え産生、遺伝子操作または改変形態、例えばイントラボディ、ペプチボディ(peptibody)、ナノボディ、単一ドメイン抗体、SMIP、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体、ディアボディ、トリアボディ、テトラボディ、タンデムジ-scFv、タンデムトリ-scFv、ADAPTIR)であり得る。モノクローナル抗体またはその抗原結合性部分は、非ヒト、キメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性部分、好ましくはヒト化またはヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性部分であり得る。免疫グロブリン構造および機能は、例えばHarlow et al., Eds., Antibodies: A Laboratory Manual, Chapter 14 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, 1988)において概略されている。インタクトな抗体の「抗原結合性部分」または「抗原結合性ドメイン」は、「抗体断片」を包含することを意味し、これは、インタクトな抗体の一部を示し、インタクトな抗体の抗原性決定可変領域または相補性決定領域を指す。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)およびFv断片、Fab’-SH、F(ab’)、ディアボディ、線形抗体、scFv抗体、VHならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれるが、これらに限定されない。「Fab(fragment antigen binding)」は、抗原に結合する抗体の一部であり、可変性領域と鎖間ジスルフィド結合を介して軽鎖に連結された重鎖のCH1とを含む。抗体は、IgGおよびそのサブクラス(IgG、IgG、IgG、IgG)、IgM、IgE、IgAならびにIgDを含む任意のクラスまたはサブクラスの抗体であり得る。
【0009】
抗体に関する「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体の抗原への結合に関与する抗体重鎖または軽鎖のドメインを指す。ネイティブ抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VHおよびVL)は一般的に、同様の構造を有し、各ドメインは4つの保存されたフレームワーク領域(FR:framework region)および3つの相補性決定領域(CDR:complementary determining region)を含む(例えばKindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007)を参照のこと)。単一のVHまたはVLドメインは、抗原結合特異性を与えるために十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、抗原に結合する抗体からのVHまたはVLドメインを使用して単離され、それぞれ、相補的VLまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングしてもよい。例えばPortolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991)を参照されたい。
【0010】
「超可変領域」または「HVR」と同義である「相補性決定領域」および「CDR」という用語は、抗原特異性および/または結合親和性を与える、抗体可変領域内のアミノ酸の非連続配列を指すことが当該技術分野において公知である。一般的に、各重鎖可変領域における3つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3)および各軽鎖可変領域における3つのCDR(LCDR1、LCDR2、LCDR3)が存在する。
【0011】
本明細書において使用されるとき、「結合ドメイン」、「結合領域」および「結合部分」という用語は、標的分子(例えば腫瘍抗原)と特異的かつ非共有結合的に結合、会合、合体、認識または合同する能力を有する分子、例としてペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を指す。結合ドメインは、目的の生体分子または他の標的についての任意の天然、合成、半合成または組換え産生結合パートナーを含む。一部の実施形態においては、結合ドメインは、抗原結合性ドメイン、例として抗体またはその機能的結合ドメインもしくは抗原結合性部分である。例示的な結合ドメインには、単鎖抗体可変領域(例えばドメイン抗体、sFv、scFv、Fab)、受容体外部ドメイン(例えばTNF-α)、リガンド(例えばサイトカイン、ケモカイン)または生体分子に結合する特異的能力について選択される合成ポリペプチドが含まれる。
【0012】
「T細胞受容体」(TCR:T cell receptor)とは、一般的に主要組織適合抗原複合体(MHC:major histocompatibility complex)分子に結合した抗原を認識することの原因である、T細胞(Tリンパ球とも呼ばれる)の表面上に見られる分子を指す。TCRは一般的に、ほとんどのT細胞において高度に可変性のαおよびβ鎖(それぞれ、TCRαおよびTCRβとしても公知)のジスルフィド結合ヘテロ二量体からなる。T細胞の小サブセットにおいては、TCRは、γおよびδ鎖(それぞれ、TCRγおよびTCRδとしても公知)のヘテロ二量体からなる。TCRの各鎖は、免疫グロブリンスーパーファミリーの一員であり、1つのN末端免疫グロブリン可変ドメイン、1つの免疫グロブリン定常ドメイン、膜貫通領域およびC末端の短い細胞質尾部を有する(Janeway et al., Immunobiology: The Immune System in Health and Disease, 3rd Ed., Current Biology Publications, p. 4:33, 1997を参照のこと)。本開示のTCRは、ヒト、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ヤギ、ウマまたは他の哺乳動物を含む様々な動物種からのTCRであり得る。TCRは、細胞結合性(すなわち、膜貫通領域またはドメインを有する)であっても、可溶性形態であってもよい。TCRには、例えばscTCR、可溶性TCR、TCR融合コンストラクト[TRuC(商標);米国特許出願公開第2017/0166622号を参照のこと]を含むTCRの組換え産生、遺伝子操作、融合または改変形態が含まれる。
【0013】
TCR α鎖(Vα)およびβ鎖(Vβ)、またはγδTCRのVγおよびVδの「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、TCRの抗原への結合に関与する。ネイティブTCRのVαおよびVβは一般的に、同様の構造を有し、各可変ドメインは4つの保存されたFRおよび3つのCDRを含む。Vαドメインは、2つの別々のDNAセグメントである、可変遺伝子セグメント(V遺伝子)および接合遺伝子セグメント(J遺伝子)によってコードされ;Vβドメインは、3つの別々のDNAセグメントである、可変遺伝子セグメント(V遺伝子)、多様性遺伝子セグメント(D遺伝子)および接合遺伝子セグメント(J遺伝子)によってコードされる。単一のVαまたはVβドメインは、抗原結合特異性を与えるために十分であり得る。
【0014】
「主要組織適合抗原複合体分子(MHC分子)」とは、ペプチド抗原を細胞表面へデリバリーする糖タンパク質を指す。MHCクラスI分子は、膜貫通α鎖(3つのαドメインを有する)および非共有結合的に会合したβ2ミクログロブリンからなるヘテロ二量体である。MHCクラスII分子は、2つの膜貫通糖タンパク質、αおよびβからなり、その両方は膜を貫通している。各鎖は、2つのドメインを有する。MHCクラスI分子は、細胞質ゾルに起源を有するペプチドを細胞表面へデリバリーし、細胞表面においてペプチド:MHC複合体は、CD8T細胞によって認識される。MHCクラスII分子は、小胞系に起源を有するペプチドを細胞表面へデリバリーし、細胞表面においてそれらは、CD4T細胞によって認識される。MHC分子は、ヒト、マウス、ラットまたは他の哺乳動物を含む様々な動物種からのMHC分子であり得る。
【0015】
「キメラ抗原受容体」(CAR)とは、2つまたはそれよりも多い別個のドメインを含むキメラタンパク質を指し、細胞表面上に発現した場合、受容体として機能し得る。CARは一般的に、標的抗原に結合する結合ドメインを含む細胞外ドメイン、適宜の細胞外スペーサードメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメイン[例えば免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM:immunoreceptor tyrosine-based activation motif)含有T細胞活性化モチーフ、および適宜、細胞内共刺激性ドメイン]からなる。ある特定の実施形態においては、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、ITAM含有T細胞活性化ドメイン(例えばCD3ζ)および細胞内共刺激性ドメイン(例えばCD28)を有する。ある特定の実施形態においては、CARは、単一のポリペプチド鎖として合成されるか、または単鎖ポリペプチドとして核酸分子によってコードされる。
【0016】
特定の標的に特異的に結合する本開示の結合ドメインを特定するため、および結合ドメイン親和性を決定するための様々なアッセイ、例としてウェスタンブロット、ELISA、分析用超遠心法、分光学、表面プラズモン共鳴[BIACORE(登録商標)]分析およびMHC四量体分析が公知である(また、例えばScatchard et al., Ann. N.Y. Acad. Sci. 51:660, 1949;Wilson, Science 295:2103, 2002;Wolff et al., Cancer Res. 53:2560, 1993;Altman et al., Science 274:94-96, 1996;および米国特許第5,283,173号、同第5,468,614号またはその均等物を参照のこと)。本明細書において使用されるとき、「特異的に結合する」とは、結合ドメインまたはその融合タンパク質の、標的分子への、10-1に等しいか、またはそれよりも大きい親和性またはK(すなわち、1/Mの単位による特定の結合相互作用の平衡会合定数)による会合または合体であって、一方で、試料中の他の任意の分子または成分とは顕著に会合または合体しないことを指す。
【0017】
「抗原」および「Ag」という用語は、免疫応答を誘導することができる分子を指す。誘導される免疫応答は、抗体産生、特異的免疫学的コンピテント細胞の活性化またはこの両方を含み得る。タンパク質、糖タンパク質および糖脂質を含む高分子は、抗原として働き得る。抗原は、組換えまたはゲノムDNAに由来し得る。本明細書において企図されるとき、抗原は、(i)遺伝子の全長ヌクレオチド配列によって単独で、または(ii)「遺伝子」によって、コードされる必要は全くない。抗原は生成されても、合成されてもよく、または抗原は生体試料に由来してもよい。そのような生体試料は、組織試料、腫瘍試料、細胞または生体体液を含み得るが、これらに限定されない。
【0018】
「エピトープ」または「抗原性エピトープ」という用語には、同族免疫結合分子、例として抗体もしくはその断片(例えばscFv)、T細胞受容体(TCR)、CAR、キメラ貪食受容体または他の結合分子、ドメインもしくはタンパク質が特異的に結合する任意の分子、構造、アミノ酸配列または抗原内のタンパク質決定基が含まれる。エピトープ決定基は一般的に、分子の化学的活性表面群、例としてアミノ酸または糖側鎖を含有し、特異的三次元構造特徴および特異的電荷特徴を有し得る。エピトープは、線形エピトープまたはコンフォメーションエピトープであり得る。
【0019】
本明細書において使用されるとき、「エフェクタードメイン」は、適切なシグナルを受容した場合エフェクタードメインを発現する細胞内の生物応答または生理応答を直接的または間接的に促進し得る融合タンパク質またはキメラ受容体の細胞内部分である。ある特定の実施形態においては、エフェクタードメインは、結合した場合シグナルを受容するタンパク質またはタンパク質複合体の部分である。他の実施形態においては、エフェクタードメインは、エフェクタードメインからのシグナルを誘発する標的分子に直接的に結合するタンパク質またはタンパク質複合体の部分である。例えば、CERの標的分子への結合に応答して、エフェクタードメインは、シグナルを宿主細胞の内部へ伝達し、エフェクター機能、例えば貪食、ファゴリソソーム成熟または抗炎症性サイトカインおよび/または免疫抑制性サイトカインの分泌を誘発し得る。エフェクタードメインは、それが1つまたは複数のシグナル伝達ドメインまたはモチーフを含有する場合、細胞応答を直接的に促進し得る。他の実施形態においては、エフェクタードメインは、細胞応答を直接的に促進する1つまたは複数の他のタンパク質と会合することによって細胞応答を間接的に促進する。
【0020】
「貪食シグナル伝達ドメイン」とは、宿主細胞が発現するCERの細胞外ドメインによってターゲティングされる標的分子(例えばホスファチジルセリン)の結合に際して、宿主細胞において1つまたは複数のシグナル伝達経路を活性化し、特定の実施形態においては、宿主細胞の細胞骨格再配置、および標的細胞または標的抗原と会合する粒子の内部移行を含む貪食をもたらす細胞内エフェクタードメインを指す。ある特定の実施形態においては、貪食シグナル伝達ドメインは、1つまたは複数のシグナル伝達経路を活性化し、標的細胞または粒子の食作用をもたらす。さらなる実施形態においては、貪食シグナル伝達ドメインは、一次貪食シグナル伝達ドメインおよび二次貪食シグナル伝達ドメインを含む。
【0021】
「接合部アミノ酸」または「接合部アミノ酸残基」とは、ポリペプチドの2つの隣接モチーフ、領域またはドメイン間の1つまたは複数の(例えば約2~20個の)アミノ酸残基を指す。接合部アミノ酸は、キメラタンパク質のコンストラクト設計から生じ得る(例えば融合タンパク質をコードする核酸分子の構築中の制限酵素部位の使用から生じるアミノ酸残基)。
【0022】
「疾患」は、対象が恒常性を維持することができない、かつ疾患が改善しない場合その後、対象の健康が悪化し続ける、対象の健康状態である。対照的に、対象における「障害」または「望ましくない状態」は、対象が恒常性を維持することができるが、対象の健康状態が、それが障害または望ましくない状態の非存在下にある場合よりも好ましくない、健康状態である。処置されないままの場合、障害または望ましくない状態は、対象の健康状態のさらなる減少を必ずしももたらさない。
【0023】
「核酸分子」および「ポリヌクレオチド」は、RNA、またはcDNA、ゲノムDNAおよび合成DNAを含むDNAの形態であり得る。核酸分子は、天然ヌクレオチド(例としてデオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチド)、天然ヌクレオチドのアナログ(例えば天然ヌクレオチドのα-エナンチオマー形態)またはその両方の組合せからなり得る。修飾ヌクレオチドは、糖部分、またはピリミジンもしくはプリン塩基部分における修飾またはこれらの部分の置換を有し得る。核酸モノマーは、ホスホジエステル結合またはそのような結合のアナログによって連結され得る。ホスホジエステル結合のアナログには、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート(phosphoroselenoate)、ホスホロジセレノエート(phosphorodiselenoate)、ホスホロアニロチオエート(phosphoroanilothioate)、ホスホラニリデート(phosphoranilidate)、ホスホラミデート(phosphoramidate)等が含まれる。核酸分子は、二本鎖であっても、一本鎖であってもよく、一本鎖の場合、コード鎖であっても、非コード(アンチセンス鎖)であってもよい。コード分子は、当該技術分野において公知のコード配列と同一のコード配列を有してもよく、または遺伝子コードの重複または縮重の結果として、またはスプライシングによって、同じポリペプチドをコードし得る異なるコード配列を有してもよい。
【0024】
「コードする」とは、特定のポリヌクレオチド配列、例としてDNA、cDNAおよびmRNA配列の、生物学的プロセスにおいて規定のヌクレオチド配列(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)または規定のアミノ酸配列のいずれかを有する他のポリマーおよび高分子の合成のための鋳型として働く固有の特性、およびそれから生じる生物学的特性を指す。したがって、ポリヌクレオチドは、細胞または他の生体系においてそのポリヌクレオチドに対応するmRNAの転写および翻訳がタンパク質を産生する場合、タンパク質をコードする。コード鎖および非コード鎖の両方は、タンパク質またはポリヌクレオチドの他の生成物をコードすると言及され得る。別に指定しない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、互いの縮重型であり、同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列が含まれる。
【0025】
本明細書において使用されるとき、「内因性」または「ネイティブ」という用語は、遺伝子、タンパク質、化合物、分子または活性の天然変異型を含む、宿主または宿主細胞に通常存在する遺伝子、タンパク質、化合物、分子または活性を指す。
【0026】
本明細書において使用されるとき、「同種の」または「ホモログ」とは、宿主細胞からの、例えば同じ宿主細胞からの、異なる宿主細胞からの、異なる生物からの、異なる系統からの、異なる種からの、第2の遺伝子または活性に祖先によって関連する分子または活性を指す。例えば、異種の分子、または分子をコードする異種の遺伝子は、それぞれ、ネイティブ宿主細胞分子または分子をコードする遺伝子と同種である場合があり、変更された構造、配列、発現レベルまたはその任意の組合せを有してもよい。
【0027】
本明細書において使用されるとき、「異種の」核酸分子、コンストラクトまたは配列とは、宿主細胞にとってネイティブではないが、宿主細胞からの核酸分子または核酸分子の部分にとって同種であり得る核酸分子または核酸分子の部分を指す。異種の核酸分子、コンストラクトまたは配列の供給源は、異なる属または種からの供給源であり得る。一部の実施形態においては、異種の核酸分子は、天然ではない。ある特定の実施形態においては、異種の核酸分子は、例えばコンジュゲーション、形質転換、トランスフェクション、形質導入、エレクトロポレーションその他によって、宿主細胞または宿主ゲノムに添加され(すなわち、内因性またはネイティブではなく)、添加された分子は、宿主細胞ゲノムに統合されても、染色体外遺伝子材料として(例えばプラスミドまたは自己複製ベクターの他の形態として)存在してもよく、多数のコピーにおいて存在してもよい。加えて、「異種の」とは、宿主細胞が同種のタンパク質または活性をコードするとしても、宿主細胞に導入された非内因性核酸分子によってコードされる非ネイティブ酵素、タンパク質または他の活性を指す。
【0028】
本明細書において使用されるとき、「操作した」、「組換え」、「改変」または「非天然」という用語は、異種の核酸分子の導入によって改変された生物、微生物、細胞、核酸分子またはベクターを指すか、またはヒトの介入によって遺伝子操作された、すなわち、異種の核酸分子の導入によって改変された細胞または微生物を指すか、または内因性核酸分子または遺伝子の発現が制御されるか、調節解除されるか、または構成的であるように変更され、そのような変更または改変が遺伝子操作によって導入され得る細胞または微生物を指す。ヒトが生成した遺伝子変更は、例えば、1つまたは複数のタンパク質、キメラ受容体または酵素をコードする核酸分子(プロモーター等の発現制御エレメントを含み得る)を導入する改変;または他の核酸分子の付加、欠失、置換;または細胞の遺伝子材料の他の機能的破壊もしくは細胞の遺伝子材料への付加を含み得る。例示的な改変は、コード領域またはその機能的断片における改変、参照分子または親分子とは異種の、または同種のポリペプチドを含む。追加の例示的な改変には、例えば、改変が遺伝子またはオペロンの発現を変更する、非コード調節領域における改変が含まれる。
【0029】
ここで使用されるとき、「導入遺伝子」という用語は、発現が宿主細胞において所望され、遺伝子操作技術によって細胞に移行された、目的のタンパク質(例えばCER、CAR、TCR)をコードする遺伝子またはポリヌクレオチドを指す。導入遺伝子は、治療目的のタンパク質、およびレポーター、タグ、マーカー、自殺タンパク質等であるタンパク質をコードし得る。導入遺伝子は、天然供給源からの導入遺伝子、天然遺伝子の改変であってもよく、組換えまたは合成分子であってもよい。ある特定の実施形態においては、導入遺伝子は、ベクターの成分である。
【0030】
「過剰発現した」抗原または抗原の「過剰発現」という用語は、細胞における異常に高レベルの抗原を指す。過剰発現した抗原または抗原の過剰発現は多くの場合、血液系腫瘍、および対象の特定の組織または器官内の固形腫瘍を形成する細胞における疾患状態等の、疾患状態と関連付けられる。腫瘍抗原の過剰発現によって特徴付けられる固形腫瘍または血液系腫瘍は、当該技術分野において公知の標準のアッセイによって決定することができる。
【0031】
本明細書において使用されるとき、「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、互換的に使用され、ペプチド結合によって共有結合されたアミノ酸残基からなる化合物を指す。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならず、タンパク質の配列またはペプチドの配列を構成し得るアミノ酸の最大数について限定はない。ポリペプチドには、ペプチド結合によって互いに接合された2つまたはそれよりも多いアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質が含まれる。本明細書において使用されるとき、この用語は、当該技術分野において例えばペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーとも通常呼ばれる短鎖、および一般的に当該技術分野においてタンパク質と呼ばれ、多くの種類がある長鎖の両方を指す。「ポリペプチド」には、中でも、例えば生物活性断片、実質的同種ポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドの変異型、改変ポリペプチド、誘導体、アナログ、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチドまたはそれらの組合せが含まれる。
【0032】
本明細書において使用されるとき、「成熟ポリペプチド」または「成熟タンパク質」という用語は、分泌されるか、または細胞膜に、またはある特定の細胞小器官(例えば小胞体、ゴルジ体またはエンドソーム)内に局在化し、かつN末端シグナルペプチドを含まないタンパク質またはポリペプチドを指す。
【0033】
「シグナルペプチド」は、「シグナル配列」、「リーダー配列」、「リーダーペプチド」、「局在化シグナル」または「局在化配列」とも呼ばれ、分泌経路に運命付けられた新規合成タンパク質のN末端に存在する短いペプチド(長さが通常15~30個のアミノ酸)である。シグナルペプチドは典型的に、N末端における短い範囲の親水性正電荷アミノ酸、5~15個の残基の中心疎水性ドメインおよびシグナルペプチダーゼのための切断部位を有するC末端領域を含む。真核生物においては、シグナルペプチドは、新規合成タンパク質の小胞体への移行を誘発し、小胞体においてそれはシグナルペプチダーゼによって切断され、成熟タンパク質を創出し、その後成熟タンパク質はその適切な目的地へ進行する。
【0034】
2つまたはそれよりも多い核酸またはアミノ酸配列間の「同一性パーセント」は、2つまたはそれよりも多い配列の整列を最適化するために導入する必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れた、それらの配列によって共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、同一性%=同一の位置の数/位置の総数x100)。2つまたはそれよりも多い配列間の配列の比較および同一性パーセントの決定は、BLASTおよびGapped BLASTプログラム等の数学的アルゴリズムをそれらのデフォルトパラメータを用いて使用して達成することができる(例えばAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403, 1990;また、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLASTのBLASTNを参照のこと)。
【0035】
「保存的置換」は、当該技術分野において、1つのアミノ酸の、同様の特性を有する別のアミノ酸への置換として認識されている。例示的な保存的置換は、当該技術分野において周知である(例えば1997年3月13日公開のWO97/09433、10ページ;Lehninger, Biochemistry, Second Edition; Worth Publishers, Inc. NY:NY (1975), pp.71-77;Lewin, Genes IV, Oxford University Press, NY and Cell Press, Cambridge, MA (1990), p. 8を参照のこと)。
【0036】
「キメラ」という用語は、内因性ではなく、かつ天然に見られない本質的に共に接合または連結された、共に接合または連結された配列の組合せを含む任意の核酸分子またはタンパク質を指す。例えば、キメラ核酸分子は、多数の異なる遺伝子からの様々なドメインをコードする核酸を含み得る。別の例においては、キメラ核酸分子は、異なる供給源に由来する調節配列およびコード配列、または同じ供給源に由来するが、天然に見られる様式とは異なる様式において配置されている調節配列およびコード配列を含み得る。
【0037】
「プロモーター」という用語は、本明細書において使用されるとき、細胞の合成機構によって認識されるか、または合成機構に導入される、ポリヌクレオチド配列の特異的転写を開始するために必要とされるDNA配列として定義される。
【0038】
本明細書において使用されるとき、「プロモーター/調節配列」という用語は、プロモーター/調節配列に作動可能に連結された遺伝子産物の発現に必要とされる核酸配列を意味する。一部の場合、この配列は、コアプロモーター配列であってもよく、他の場合、また、この配列は、エンハンサー配列、および遺伝子産物の発現に必要とされる他の調節エレメントを含んでもよい。プロモーター/調節配列は、例えば、組織特異的様式において遺伝子産物を発現するプロモーター/調節配列であってもよい。
【0039】
「構成的」プロモーターは、遺伝子産物をコードするか、または特定するポリヌクレオチドと作動可能に連結された場合、細胞のほとんどまたは全ての生理学的条件下において遺伝子産物が細胞内で産生されることをもたらすヌクレオチド配列である。
【0040】
「誘導性」プロモーターは、遺伝子産物をコードするか、または特定するポリヌクレオチドと作動可能に連結された場合、実質的にプロモーターに対応するインデューサーが細胞内に存在する場合のみ、遺伝子産物が細胞内で産生されることをもたらすヌクレオチド配列である。
【0041】
「組織特異的」プロモーターは、遺伝子をコードするか、または遺伝子によって特定されるポリヌクレオチドと作動可能に連結された場合、実質的に細胞がプロモーターに対応する組織タイプの細胞である場合のみ、遺伝子産物が細胞内で産生されることをもたらすヌクレオチド配列である。
【0042】
「転写制御下」または「作動可能に連結された」という句は、本明細書において使用されるとき、プロモーターが、RNAポリメラーゼによる転写の開始およびポリヌクレオチドの発現を制御するためにポリヌクレオチドに関して正しい場所および方向において存在することを意味する。
【0043】
「ベクター」は、別の核酸を輸送することができる核酸分子である。ベクターは、例えばプラスミド、コスミド、ウイルスまたはファージであり得る。また、この用語は、核酸の細胞への移行を促進する非プラスミドおよび非ウイルス化合物を含むと解釈されるべきである。「発現ベクター」は、ベクターが適切な環境に存在する場合、ベクターが有する1つまたは複数の遺伝子によってコードされるタンパク質の発現を方向付けることができるベクターである。
【0044】
ある特定の実施形態においては、ベクターは、ウイルスベクターである。ウイルスベクターの例には、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ガンマレトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターが含まれるが、これらに限定されない。「レトロウイルス」は、RNAゲノムを有するウイルスである。「ガンマレトロウイルス」とは、レトロウイルス科ファミリーの属を指す。ガンマレトロウイルスの例には、マウス幹細胞ウイルス、マウス白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ肉腫ウイルスおよび鳥類細網内皮症ウイルスが含まれる。「レンチウイルス」とは、分裂細胞および非分裂細胞に感染することができるレトロウイルスの属を指す。レンチウイルスの例には、HIV(human immunodeficiency virus)(HIV1型およびHIV2型を含むヒト免疫不全ウイルス)、ウマ伝染性貧血ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス(FIV:feline immunodeficiency virus)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV:bovine immune deficiency virus)およびサル免疫不全ウイルス(SIV:simian immunodeficiency virus)が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
他の実施形態においては、ベクターは、非ウイルスベクターである。非ウイルスベクターの例には、脂質ベースのDNAベクター、修飾mRNA(modRNA)、自己増幅mRNA、閉鎖末端直鎖状二本鎖(CELiD:closed-ended linear duplex)DNAおよびトランスポゾン媒介遺伝子移行(PiggyBac、Sleeping Beauty)が含まれる。非ウイルスデリバリー系が使用される場合、デリバリー媒体は、リポソームであり得る。脂質製剤は、インビトロ、エクスビボまたはインビボで核酸を宿主細胞に導入するために使用され得る。核酸は、リポソームの内部に封入されていてもよく、リポソームの脂質二重層内に散在していてもよく、リポソームおよび核酸の両方と会合する連結分子を介してリポソームに結合していてもよく、ミセルに含有されるか、もしくはミセルと複合体形成していてもよく、別の方法で脂質と会合していてもよい。
【0046】
本明細書において使用されるとき、「発現カセット」という用語は、少なくとも1つの導入遺伝子と宿主細胞においてその発現を制御する調節配列(例えばプロモーター、3’UTR)とを含むベクター核酸の特徴的な成分を指す。タンデム発現カセットとは、少なくとも2つの導入遺伝子のタンデム発現のための同じ組の調節配列の制御下の少なくとも2つの導入遺伝子を含むベクター核酸の成分を指す。ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセットは、同じプロモーターの制御下の少なくとも2つの導入遺伝子を含む。ある特定の実施形態においては、第1の導入遺伝子および第2の導入遺伝子は、単一のmRNAからの2つのタンパク質の共発現を可能にするために、配列内リボソーム進入部位(IRES:internal ribosome entry site)、フューリン切断部位または自己切断ウイルス2Aペプチドによって分離されている。
【0047】
「粒子」とは、直径が少なくとも10nm~最大で50μmの細胞の断片または小物体を指す。粒子は、生細胞または生物、環境に由来してもよく、合成であってもよい。粒子は、ウイルス粒子、プリオン粒子、タンパク質粒子、合成粒子、小鉱物粒子または細胞片であり得る。
【0048】
本明細書において使用されるとき、「貪食」という用語は、直径が10nmを超える内因性または外因性細胞または粒子が、本開示の食細胞または宿主細胞によって内部移行される、受容体媒介プロセスを指す。貪食は典型的に、多ステップ:(1)貪食受容体の、標的細胞または粒子上のプロ貪食マーカーまたは抗原性マーカーへの直接的または間接的(架橋分子を介する)結合を介する標的細胞または粒子の繋留;および(2)標的細胞全体もしくは粒子全体またはそれらの部分の内部移行または貪食からなる。ある特定の実施形態においては、内部移行は、食細胞または宿主細胞の細胞骨格再配置を介して起こり、内部移行された標的を含有する膜結合区画であるファゴソームを形成し得る。貪食は、ファゴソームがますます酸性になり、リソソームと融合する(ファゴリソソームを形成する)ファゴソームの成熟をさらに含む場合があり、これに際して、貪食された標的は分解される(例えば「食作用」)。あるいは、ファゴソーム-リソソーム融合は、貪食において観察されない場合がある。また別の実施形態においては、ファゴソームは、その内容物を、完全な分解前に細胞外環境へ吐き戻すか、または排出し得る。一部の実施形態においては、貪食とは、食作用を指す。一部の実施形態においては、貪食は、本開示の宿主細胞の食細胞による標的細胞または粒子の繋留を含むが、内部移行は含まない。一部の実施形態においては、貪食は、本開示の宿主細胞の食細胞による標的細胞または粒子の繋留、および標的細胞または粒子の部分の内部移行を含む。
【0049】
本明細書において使用されるとき、「食作用」という用語は、標的細胞または粒子の繋留、標的細胞または粒子の貪食および内部移行された標的細胞または粒子の分解が起こる、細胞または大粒子(0.5μm以上)の貪食プロセスを指す。ある特定の実施形態においては、食作用は、内部移行された標的細胞または粒子を包含するファゴソームの形成、および中の内容物が分解されるファゴリソソームを形成するリソソームとのファゴソーム融合を含む。ある特定の実施形態においては、本開示の宿主細胞上に発現するCERの、標的細胞または粒子によって発現される標的抗原への結合後、食作用シナプスが形成され;食作用シナプスにおいてアクチンリッチ食作用カップが生成し;細胞骨格再配置を通して食作用アームが標的細胞または粒子の周囲に伸長し;最終的に、モータータンパク質によって生成した力を通して標的細胞または粒子が食細胞または宿主細胞に引き込まれる。本明細書において使用されるとき、「食作用」には、非炎症様式におけるアポトーシス細胞または壊死細胞の食作用を特に指す「エフェロサイトーシス」のプロセスが含まれる。
【0050】
「免疫系細胞」または「免疫細胞」という用語は、骨髄の造血幹細胞に由来する免疫系の任意の細胞を意味する。造血幹細胞は、2つの主要な系統:骨髄系前駆細胞(骨髄細胞、例として単球、マクロファージ、樹状細胞、巨核球および顆粒球を生じる)およびリンパ球前駆細胞[リンパ球細胞、例としてT細胞、B細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞を生じる]を生じる。例示的な免疫系細胞には、CD4+T細胞、CD8+T細胞、CD4-CD8-二種陰性T細胞、γδT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラー細胞および樹状細胞が含まれる。マクロファージおよび樹状細胞は、「抗原提示細胞」または「APC(antigen presenting cell)」とも呼ばれる場合があり、これらは、ペプチドと複合体形成したAPCの表面上の主要組織適合抗原複合体(MHC)受容体が、T細胞の表面上のTCRと相互作用するとき、T細胞を活性化し得る特殊化細胞である。
【0051】
「T細胞」という用語は、T細胞系統の細胞を指す。「T細胞系統の細胞」とは、細胞を他のリンパ球および赤血球系統または骨髄系統の細胞から区別する、T細胞またはその前駆体もしくは前駆細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示す細胞を指す。そのような表現型特徴は、T細胞に特異的な1つまたは複数のタンパク質(例えばCD3、CD4、CD8)の発現、またはT細胞に特異的な生理学的、形態学的、機能的または免疫学的特色を含み得る。例えば、T細胞系統の細胞は、T細胞系統にコミットされた前駆細胞もしくは前駆体細胞;CD25未成熟かつ不活性化T細胞;CD4またはCD8系統コミットメントを受けた細胞;CD4CD8二種陽性である胸腺前駆細胞;単一陽性CD4もしくはCD8;TCRαβもしくはTCRγδ;または成熟かつ機能的もしくは活性化T細胞であり得る。「T細胞」という用語は、ナイーブT細胞(CD45 RA+、CCR7+、CD62L+、CD27+、CD45RO-)、セントラルメモリーT細胞(CD45RO、CD62L、CD8)、エフェクターメモリーT細胞(CD45RA+、CD45RO-、CCR7-、CD62L-、CD27-)、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、Treg、ナチュラルキラーT細胞および組織レジデントT細胞を包含する。
【0052】
「B細胞」という用語は、B細胞系統の細胞を指す。「B細胞系統の細胞」とは、細胞を他のリンパ球および赤血球系統または骨髄系統の細胞から区別する、B細胞またはその前駆体もしくは前駆細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示す細胞を指す。そのような表現型特徴は、B細胞に特異的な1つまたは複数のタンパク質(例えばCD19、CD72+、CD24+、CD20)の発現、またはB細胞に特異的な生理学的、形態学的、機能的または免疫学的特色を含み得る。例えば、B細胞系統の細胞は、B細胞系統にコミットされた前駆細胞もしくは前駆体細胞(例えばプレプロB細胞、プロB細胞およびプレB細胞);未成熟かつ不活性化B細胞;または成熟かつ機能的もしくは活性化B細胞であり得る。したがって、「B細胞」は、ナイーブB細胞、形質細胞、制御性B細胞、辺縁帯B細胞、濾胞性B細胞、リンパ形質細胞性細胞、形質芽細胞およびメモリーB細胞(例えばCD27、IgD)を包含する。
【0053】
表面上に免疫受容体(例えばTCR)を発現する細胞(例えばT細胞)についての「細胞傷害活性」という用語は、「細胞溶解活性」とも呼ばれ、細胞が、抗原特異的シグナル伝達に際して(例えばTCRを介して)、標的細胞がアポトーシスを受けるように誘導することを意味する。一部の実施形態においては、細胞傷害性細胞は、顆粒からの細胞毒、例としてパーフォリン、グランザイムおよびグラニュライシンの放出を介して標的細胞においてアポトーシスを誘導し得る。パーフォリンは、標的細胞膜に挿入し、水および塩が標的細胞に迅速に入ることを可能にする孔を形成する。グランザイムは、標的細胞においてアポトーシスを誘導するセリンプロテアーゼである。また、グラニュライシンは、標的細胞膜において孔を形成することができ、炎症促進性分子である。一部の実施形態においては、細胞傷害性細胞は、抗原特異的シグナル伝達後にT細胞上でアップレギュレートされるFasリガンドと、標的細胞上に発現されるFas分子との相互作用を介して、標的細胞においてアポトーシスを誘導し得る。Fasは、いくつかの異なる細胞の表面上のアポトーシスシグナル伝達受容体分子である。
【0054】
「疾患」は、対象が恒常性を維持することができない、かつ疾患が改善しない場合その後、対象の健康が悪化し続ける、対象の健康状態である。対照的に、対象における「障害」または「望ましくない状態」は、対象が恒常性を維持することができるが、対象の健康状態が、それが障害または望ましくない状態の非存在下にある場合よりも好ましくない、健康状態である。処置されないままの場合、障害または望ましくない状態は、対象の健康状態のさらなる減少を必ずしももたらさない。
【0055】
「がん」という用語は、本明細書において使用されるとき、異常な細胞の迅速かつ制御されていない増殖によって特徴付けられる疾患として定義される。異常な細胞は、固形腫瘍を形成するか、または血液系腫瘍を構成し得る。がん細胞は、局所的に、または血流およびリンパ系を通して身体の他の部分に広がり得る。様々ながんの例には、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、皮膚がん、膵がん、結腸直腸がん、腎がん、肝がん、脳がん、リンパ腫、白血病、肺がん等が含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
「対象」、「患者」および「個体」という用語は、本明細書において互換的に使用され、免疫応答が誘発され得る生存生物(例えば哺乳動物)を含むと意図される。対象の例には、ヒト、霊長類、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタおよびそのトランスジェニック種が含まれる。
【0057】
「養子細胞免疫療法」または「養子免疫療法」は、天然の、または遺伝子操作した、疾患抗原特異的免疫細胞(例えばT細胞)の投与を指す。養子細胞免疫療法は、自家(免疫細胞が受容者からの細胞である)、同種異系(免疫細胞が同じ種のドナーからの細胞である)または同系(免疫細胞が受容者と遺伝的に同一のドナーからの細胞である)であり得る。
【0058】
「自家」とは、グラフトが後に再導入される同じ対象に由来するグラフト(例えば器官、組織、細胞)を指す。
【0059】
「同種異系」とは、同じ種の異なる対象に由来するグラフトを指す。
【0060】
本開示のキメラタンパク質またはキメラタンパク質を発現する細胞(例えばタンデム発現カセットまたはタンデム発現カセットを発現する細胞)の「治療有効量」または「有効量」とは、治療される疾患、障害または望ましくない状態の1つまたは複数の症状の改善をもたらすために十分なタンパク質または細胞の量を指す。単独で投与される、個々の活性成分、または単一の活性成分を発現する細胞について言及する場合、治療有効用量とは、その成分またはその成分を発現する細胞の単独の効果を指す。組合せについて言及する場合、治療有効用量とは、連続投与されるか、同時投与されるかにかかわらず、治療効果をもたらす、活性成分または組み合わせた付属の活性成分の、活性成分を発現する細胞と組み合わせた量を指す。
【0061】
「治療する」または「治療」または「改善する」とは、対象の疾患、障害または望ましくない状態の医療管理を指す。一般的に、本開示のキメラタンパク質を発現する宿主細胞を含む適切な用量または治療レジメンは、治療利益または予防利益を誘発するために十分な量において投与される。治療利益または予防/防止利益には、臨床アウトカムの改善;疾患、障害または望ましくない状態と関連付けられる症状の減少または軽減;症状の発生の減少;クオリティ・オブ・ライフの改善;より長い無疾患状態;疾患、障害または望ましくない状態の程度の縮減;疾患状態の安定化;疾患進行の遅延;寛解;生存;生存延長;またはそれらの任意の組合せが含まれる。
【0062】
「抗腫瘍効果」という用語は、腫瘍容量における減少、腫瘍細胞数の減少、転移数の減少、平均余命の増加またはがん性状態と関連付けられる様々な生理学的症状の改善によって証明され得る生物学的効果を指す。また、「抗腫瘍効果」は、血液系腫瘍または腫瘍形成の予防によって証明され得る。
【0063】
追加の定義は、本開示全体を通して提供される。
【0064】
導入遺伝子
本開示のタンデム発現カセットは、キメラ貪食受容体(CER)およびキメラ抗原受容体(CAR)/またはT細胞受容体(TCR)をコードする少なくとも2つの導入遺伝子を含む。本明細書において提供されるタンデム発現カセットのある特定の実施形態は、(a)標的抗原に結合する結合ドメインを含む細胞外ドメインと、貪食シグナル伝達ドメインと、細胞外ドメインと貪食シグナル伝達ドメインとの間に位置し、かつこれらを接続する膜貫通ドメインとを含むCERをコードするポリヌクレオチド;および(b)標的抗原に結合する結合ドメインを含む細胞外ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインと、細胞外ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとの間に位置し、かつこれらを接続する膜貫通ドメインとを含むCARをコードするポリヌクレオチドを含む。本明細書において提供されるタンデム発現カセットの他の実施形態は、(a)標的抗原に結合する結合ドメインを含む細胞外ドメインと、貪食シグナル伝達ドメインと、細胞外ドメインと貪食シグナル伝達ドメインとの間に位置し、かつこれらを接続する膜貫通ドメインとを含むCERをコードするポリヌクレオチド;および(b)組換えTCR結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態においては、CERをコードするポリヌクレオチドは、CARまたはTCRをコードするポリヌクレオチドに対して5’に位置する。他の実施形態においては、CERをコードするポリヌクレオチドは、CARまたはTCRをコードするポリヌクレオチドに対して3’に位置する。
【0065】
導入遺伝子およびそれらのコードされる細胞免疫療法分子のさらなる態様は、以下の通りに提供される。
【0066】
I.キメラ貪食受容体(CER)
本開示のタンデム発現カセットは、CERをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む。キメラ貪食受容体は一般的に、(a)標的抗原に結合する結合ドメインを含む細胞外ドメイン、(b)貪食シグナル伝達ドメイン、および(c)細胞外ドメインと貪食シグナル伝達ドメインとの間に位置し、かつこれらを接続する膜貫通ドメインを含む。ある特定の実施形態においては、本明細書において説明するキメラ貪食受容体の細胞外ドメインは、結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置し、かつこれらを接続する細胞外スペーサードメインを含んでもよい。
【0067】
本明細書において説明するキメラ貪食受容体は、前記キメラ貪食受容体を発現するように改変された宿主細胞に、標的抗原に特異的な貪食表現型を与えることができる。ある特定の実施形態においては、本明細書において説明するCERの発現は、天然には貪食表現型を示さない宿主細胞に、貪食表現型を与える。ある特定の実施形態においては、貪食活性は、食作用活性である。本開示のCERは、貪食特異性を、ターゲティングされた抗原を発現する標的細胞に再方向付けするために使用され得る。
【0068】
細胞外ドメイン
本明細書において説明する通り、CERは、標的抗原に特異的な細胞外ドメインを含む。ある特定の実施形態においては、細胞外ドメインは、標的抗原(例えばホスファチジルセリン)に特異的に結合する結合ドメインを含む。結合ドメインによる標的分子の結合は、標的分子(例えば受容体またはリガンド)と別の分子との間の相互作用を遮断し、かつ例えば、標的分子のある特定の機能(例えばシグナル伝達)を妨害、低減または除去し得る。一部の実施形態においては、標的分子の結合は、除去のために、ある特定の生物学的経路を誘導するか、または標的分子または標的分子を発現する細胞を特定し得る。
【0069】
本開示のCERにおける使用のために好適な結合ドメインは、目的の標的分子、例えばホスファチジルセリンに特異的に結合する任意のポリペプチドまたはペプチドであり得る。結合ドメインの供給源には、様々な種からの受容体の細胞外ドメイン、細胞表面受容体または分子のリガンド、および抗体または抗原結合部分、例として抗体可変領域が含まれる。例えば、結合ドメインは、sFv、scFv、Fab、scFvベースのgrababody、VHドメイン、VLドメイン、単一ドメインラクダ抗体(VHH)またはドメイン抗体を含み得る。結合ドメインは、ヒト、霊長類、げっ歯類、鳥類またはヒツジに由来し得る。結合ドメインの追加の供給源には、他の種、例としてラクダ(ラクダ、ヒトコブラクダまたはラマから;Ghahroudi et al., FEBS Lett. 414:521, 1997;Vincke et al., J. Biol. Chem. 284:3273, 2009;Hamers-Casterman et al., Nature 363:446, 1993およびNguyen et al., J. Mol. Biol. 275:413, 1998)、コモリザメ(Roux et al., Proc. Nat'l. Acad. Sci. (USA) 95:11804, 1998)、スポッティドラットフィッシュ(Nguyen et al., Immunogen. 54:39, 2002)またはヤツメウナギ(Herrin et al., Proc. Nat'l. Acad. Sci. (USA) 105:2040, 2008およびAlder et al. Nat. Immunol. 9:319, 2008)からの抗体の可変領域が含まれる。これらの抗体は、重鎖可変領域のみを使用する抗原結合領域を形成し得る、すなわち、これらの機能的抗体は、重鎖のみのホモ二量体(「重鎖抗体」と呼ばれる)である(Jespers et al., Nat. Biotechnol. 22:1161, 2004;Cortez-Retamozo et al., Cancer Res. 64:2853, 2004;Baral et al., Nature Med. 12:580, 2006;およびBarthelemy et al., J. Biol. Chem. 283:3639, 2008)。ある特定の実施形態においては、結合ドメインは、マウス、キメラ、ヒトまたはヒト化結合ドメインである。
【0070】
ある特定の実施形態においては、CER結合ドメインは、標的疾患抗原に特異的な抗体またはその抗原結合性断片、例として、VHおよびVL領域を含む単鎖Fv断片(scFv)を含む。ある特定の実施形態においては、抗体または抗原結合性断片は、キメラ、ヒトまたはヒト化抗体または抗原結合性断片である。さらなる実施形態においては、VおよびV領域は、ヒトまたはヒト化VおよびV領域である。
【0071】
本開示のCERの細胞外ドメインが結合する標的分子は、目的の細胞(「標的細胞」)において見られるか、または目的の細胞と関連付けられ得る。例示的な標的細胞には、がん細胞;自己免疫疾患もしくは障害と、または炎症性疾患もしくは障害と関連付けられる細胞;感染性微生物(例えば細菌、ウイルスまたは真菌);および感染した細胞(例えばウイルス感染細胞)が含まれる。感染性生物、例として哺乳動物寄生生物の細胞もまた、標的細胞として企図される。
【0072】
ある特定の実施形態においては、細胞外ドメインは、プロ貪食マーカーに結合する。本明細書において使用されるとき、プロ貪食マーカーは、アポトーシス細胞、壊死細胞、ピロトーシス細胞または感染細胞がその表面上に示し、それぞれ、その細胞を非アポトーシス細胞、非壊死細胞、非ピロトーシス細胞、腫張(oncotic)細胞または非感染細胞から区別する部分(例えばタンパク質、脂質または多糖)である。プロ貪食マーカーは、アポトーシス細胞または壊死細胞上に表面曝露される細胞内部分、アポトーシス細胞または壊死細胞上の糖鎖付加の変更または表面電荷の変更を有する部分、またはアポトーシス細胞、壊死細胞、ピロトーシス細胞または腫張細胞に結合した血清部分であり得る。アポトーシス細胞についてのプロ貪食マーカーの例には、ホスファチジルセリン(PtdSer)、ICAM-3、酸化型低密度リポタンパク質、カルレティキュリン、アネキシンI、補体C1qおよびトロンボスポンジンが含まれる。また、壊死細胞、腫張細胞およびピロトーシス細胞は、細胞表面上にPtdSerプロ貪食マーカーを曝露する。貪食受容体は、直接的に、またはプロ貪食マーカーに結合する中間体として可溶性架橋分子を使用して間接的に標的細胞(例えば損傷細胞、感染細胞、アポトーシス細胞、壊死細胞、ピロトーシス細胞または腫張細胞)上のプロ貪食マーカーを検出(または結合)し得る。ある特定のそのような実施形態においては、細胞外ドメインによってターゲティングされるプロ貪食マーカーは、ホスファチジルセリン(PtdSer)、ICAM-3、酸化型低密度リポタンパク質、カルレティキュリン、アネキシンI、補体C1qまたはトロンボスポンジンである。ホスファチジルセリンに結合する例示的なTim4結合ドメインは、配列番号91、配列番号96、配列番号91のアミノ酸23~279または配列番号96のアミノ酸25~314を含むアミノ酸配列を含む。
【0073】
ある特定の実施形態においては、細胞外ドメインは、腫瘍抗原に結合する。例示的な腫瘍抗原には、CD138、CD38、CD33、CD123、CD72、CD79a、CD79b、メソテリン、PSMA、BCMA、ROR1、MUC-16、L1CAM、CD22、CD19、CD20、CD23、CD24、CD37、CD30、CA125、CD56、c-Met、EGFR、GD-3、HPV E6、HPV E7、MUC-1、HER2、葉酸受容体α、CD97、CD171、CD179a、CD44v6、WT1、VEGF-α、VEGFR1、IL-13Rα1、IL-13Rα2、IL-11Rα、PSA、FcRH5、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、TAG-72、CEA、エフリンA2、エフリンB2、ルイス式A抗原、ルイス式Y抗原、MAGE、MAGE-A1、RAGE-1、葉酸受容体β、EGFRviii、VEGFR-2、LGR5、SSX2、AKAP-4、FLT3、フコシルGM1、GM3、o-アセチル-GD2およびGD2が含まれる。
【0074】
ある特定の実施形態においては、細胞外ドメインは、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、原生動物抗原または寄生生物抗原に結合する。
【0075】
ある特定の実施形態においては、細胞外ドメインは、細胞外非シグナル伝達スペーサーまたはリンカードメインを含んでもよい。含まれる場合、そのようなスペーサーまたはリンカードメインは、結合ドメインを宿主細胞表面から離れるように位置させて、適切な細胞-細胞接触、結合および活性化をさらに可能にし得る。細胞外スペーサードメインは一般的に、CERの細胞外結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置する。細胞外スペーサーの長さは、選択された標的分子、選択された結合エピトープ、結合ドメインサイズおよび親和性に基づいて、標的分子結合を最適化するために変動し得る(例えばGuest et al., J. Immunother. 28:203-11, 2005;PCT公開公報WO2014/031687号を参照のこと)。ある特定の実施形態においては、細胞外スペーサードメインは、免疫グロブリンヒンジ領域(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgD)である。免疫グロブリンヒンジ領域は、野生型免疫グロブリンヒンジ領域、または変更された野生型免疫グロブリンヒンジ領域であり得る。変更されたIgGヒンジ領域は、PCT公開公報WO2014/031687号において説明されており、当該ヒンジ領域は、その全体を参照により本明細書に組み込む。特定の実施形態においては、細胞外スペーサードメインは、ESKYGPPCPPCP(配列番号63)のアミノ酸配列を有する改変IgGヒンジ領域を含む。
【0076】
本明細書において説明するCERにおいて使用され得るヒンジ領域の他の例には、野生型またはその変異型であり得る1型膜タンパク質、例としてCD8a、CD4、CD28およびCD7の細胞外領域からのヒンジ領域が含まれる。さらなる実施形態においては、細胞外スペーサードメインは、CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメインまたはそれらの組合せから選択される免疫グロブリンFcドメインの全てまたは一部を含む(例えばPCT公開公報WO2014/031687号を参照されたく、当該スペーサーは、その全体を参照により本明細書に組み込む)。またさらなる実施形態においては、細胞外スペーサードメインは、II型Cレクチンの柄領域(C型レクチンドメインと膜貫通ドメインとの間に位置する細胞外ドメイン)を含み得る。II型Cレクチンには、CD23、CD69、CD72、CD94、NKG2AおよびNKG2Dが含まれる。またさらなる実施形態においては、細胞外スペーサードメインは、Toll様受容体(TLR:toll-like receptor)膜近傍ドメインに由来し得る。TLR膜近傍ドメインは、TLRのロイシンリッチ反復配列(LRR:leucine rich repeat)と膜貫通ドメインとの間にある酸性アミノ酸を含む。ある特定の実施形態においては、TLR膜近傍ドメインは、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8またはTLR9膜近傍ドメインである。例示的なTLR膜近傍ドメインは、配列番号1のアミノ酸配列を含むTLR4膜近傍ドメインである。
【0077】
細胞外ドメインは、ヒト、霊長類、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタおよびそれらのトランスジェニック種を含む任意の哺乳動物種に由来し得る。ある特定の実施形態においては、細胞外ドメインは、マウス、キメラ、ヒトまたはヒト化細胞外ドメインである。
【0078】
貪食シグナル伝達ドメイン
CERの貪食シグナル伝達ドメインは、細胞内エフェクタードメインであり、CERの細胞外ドメインの標的分子への結合に応答して、機能的シグナルを細胞に伝達することができる。貪食シグナル伝達ドメインは、十分なシグナル伝達活性を保持する貪食シグナル伝達分子の任意の部分であり得る。一部の実施形態においては、貪食シグナル伝達分子の全長または全長細胞内成分が使用される。一部の実施形態においては、貪食シグナル伝達分子または貪食シグナル伝達分子の細胞内成分の切断部分が使用され、但し、その切断部分は十分なシグナル伝達活性を保持する。さらなる実施形態においては、貪食シグナル伝達ドメインは、貪食シグナル伝達分子の全部分または切断部分の変異型であり、但し、その変異型は十分なシグナル伝達活性を保持する(すなわち、機能的変異型である)。
【0079】
CERにおいて使用され得る例示的な貪食シグナル伝達ドメインには、MRC1シグナル伝達ドメイン、MERTKシグナル伝達ドメイン、Tyro3シグナル伝達ドメイン、Axlシグナル伝達ドメイン、ELMOシグナル伝達ドメイン、Traf6シグナル伝達ドメイン、Sykシグナル伝達ドメイン、MyD88シグナル伝達ドメイン、PI3Kシグナル伝達ドメイン、FcRシグナル伝達ドメイン(例えばFcγR1、FcγR2A、FcγR2C、FcγR2B2、FcγR3A、FcγR2C、FcγR3A、FcεR1またはFcαR1シグナル伝達ドメイン)、B細胞活性化因子受容体(BAFF-R:B-cell activating factor receptor)シグナル伝達ドメイン、DAP12[TYROタンパク質チロシンキナーゼ結合タンパク質(TYROBP:TYRO Protein Tyrosine Kinase Binding Protein)とも呼ばれる]シグナル伝達ドメイン、ITAMモチーフ1を伴うNFAT活性化タンパク質(NFAM1:NFAT Activating Protein With ITAM Motif 1)シグナル伝達ドメイン、CD79bシグナル伝達ドメイン、TLRシグナル伝達ドメイン(例えばTLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8またはTLR9シグナル伝達ドメイン)、Traf2シグナル伝達ドメインまたはTraf3シグナル伝達ドメインが含まれる。
【0080】
ある特定の実施形態においては、貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号2のアミノ酸配列を含むMRC1シグナル伝達ドメイン、配列番号3のアミノ酸配列を含むMERTKシグナル伝達ドメイン、配列番号5のアミノ酸配列を含むTyro3シグナル伝達ドメイン、配列番号6のアミノ酸配列を含むAxlシグナル伝達ドメイン、配列番号7のアミノ酸配列を含むELMOシグナル伝達ドメイン、配列番号8のアミノ酸配列を含むTraf6シグナル伝達ドメイン、配列番号9のアミノ酸配列を含むSykシグナル伝達ドメイン、配列番号10のアミノ酸配列を含むMyD88シグナル伝達ドメイン、配列番号11のアミノ酸配列を含むPI3Kシグナル伝達ドメイン、配列番号12のアミノ酸配列を含むFcεRIγシグナル伝達ドメイン、配列番号13のアミノ酸配列を含むFcγR1シグナル伝達ドメイン、配列番号14のアミノ酸配列を含むFcγR2Aシグナル伝達ドメイン、配列番号15のアミノ酸配列を含むFcγR2Cシグナル伝達ドメイン、配列番号16のアミノ酸配列を含むFcγR3Aシグナル伝達ドメイン、配列番号17のアミノ酸配列を含むBAFF-Rシグナル伝達ドメイン、配列番号18のアミノ酸配列を含むDAP12シグナル伝達ドメイン、配列番号19のアミノ酸配列を含むNFAM1シグナル伝達ドメイン、配列番号21のアミノ酸配列を含むCD79bシグナル伝達ドメイン、配列番号22のアミノ酸配列を含むTLR1シグナル伝達ドメイン、配列番号23のアミノ酸配列を含むTLR2シグナル伝達ドメイン、配列番号24のアミノ酸配列を含むTLR3シグナル伝達ドメイン、配列番号25のアミノ酸配列を含むTLR4シグナル伝達ドメイン、配列番号26のアミノ酸配列を含むTLR5シグナル伝達ドメイン、配列番号27のアミノ酸配列を含むTLR6シグナル伝達ドメイン、配列番号28のアミノ酸配列を含むTLR7シグナル伝達ドメイン、配列番号29のアミノ酸配列を含むTLR8シグナル伝達ドメイン、配列番号30のアミノ酸配列を含むTLR9シグナル伝達ドメイン、配列番号31のアミノ酸配列を含むTraf2シグナル伝達ドメイン、または配列番号32のアミノ酸配列を含むTraf3シグナル伝達ドメインについて少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または100%の同一性を有する配列を含む。
【0081】
一部の実施形態においては、貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号2のアミノ酸配列を含むかまたはからなるMRC1シグナル伝達ドメイン、配列番号3のアミノ酸配列を含むかまたはからなるMERTKシグナル伝達ドメイン、配列番号5のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTyro3シグナル伝達ドメイン、配列番号6のアミノ酸配列を含むかまたはからなるAxlシグナル伝達ドメインまたは配列番号7のアミノ酸配列を含むかまたはからなるELMOシグナル伝達ドメイン、配列番号8のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTraf6シグナル伝達ドメイン、配列番号9のアミノ酸配列を含むかまたはからなるSykシグナル伝達ドメイン、配列番号10のアミノ酸配列を含むかまたはからなるMyD88シグナル伝達ドメイン、配列番号11のアミノ酸配列を含むかまたはからなるPI3Kシグナル伝達ドメイン、配列番号12のアミノ酸配列を含むかまたはからなるFcεRIγシグナル伝達ドメイン、配列番号13のアミノ酸配列を含むかまたはからなるFcγR1シグナル伝達ドメイン、配列番号14のアミノ酸配列を含むかまたはからなるFcγR2Aシグナル伝達ドメイン、配列番号15のアミノ酸配列を含むかまたはからなるFcγR2Cシグナル伝達ドメイン、配列番号16のアミノ酸配列を含むかまたはからなるFcγR3Aシグナル伝達ドメイン、配列番号17のアミノ酸配列を含むかまたはからなるBAFF-Rシグナル伝達ドメイン、配列番号18のアミノ酸配列を含むかまたはからなるDAP-12シグナル伝達ドメイン、配列番号19のアミノ酸配列を含むかまたはからなるNFAM1シグナル伝達ドメイン、配列番号21のアミノ酸配列を含むかまたはからなるCD79bシグナル伝達ドメイン、配列番号22のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTLR1シグナル伝達ドメイン、配列番号23のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTLR2シグナル伝達ドメイン、配列番号24のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTLR3シグナル伝達ドメイン、配列番号25のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTLR4シグナル伝達ドメイン、配列番号26のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTLR5シグナル伝達ドメイン、配列番号27のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTLR6シグナル伝達ドメイン、配列番号28のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTLR7シグナル伝達ドメイン、配列番号29のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTLR8シグナル伝達ドメイン、配列番号30のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTLR9シグナル伝達ドメイン、配列番号31のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTraf2シグナル伝達ドメイン、または配列番号32のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTraf3シグナル伝達ドメインである。
【0082】
切断型貪食シグナル伝達ドメインは、そのN末端、そのC末端において、N末端およびC末端の両方において切断され得る。ある特定の実施形態においては、MRC1貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号2のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;MERTK貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;Tyro3貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号5のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;Axl貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号6のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;ELMO貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号7のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;Traf6貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号8のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;Syk貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;MyD88貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号10のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;PI3K貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号11のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;FcεRIγ貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号12のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;FcγR1貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号13のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;FcγR2A貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号14のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;FcγR2C貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号15のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;FcγR3A貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号16のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;BAFF-R貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号17のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;DAP-12貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号18のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;NFAM1貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号19のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;CD79b貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号21のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;TLR1貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号22のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;TLR2貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号23のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;TLR3貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号24のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;TLR4貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号25のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;TLR5貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号26のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;TLR6貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号27のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;TLR7貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号28のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;TLR8貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号29のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;TLR9貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号30のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;Traf2貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号31のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;またはTraf3貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号32のアミノ酸配列に対応するそのN末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されている。
【0083】
ある特定の実施形態においては、MRC1貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号2のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;MERTK貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;Tyro3貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号5のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;Axl貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号6のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;ELMO貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号7のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;Traf6貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号8のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;Syk貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;MyD88貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号10のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;PI3K貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号11のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;FcεRIγ貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号12のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;FcγR1貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号13のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;FcγR2A貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号14のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;FcγR2C貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号15のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;FcγR3A貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号16のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;BAFF-R貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号17のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;DAP-12貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号18のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;NFAM1貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号19のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;CD79b貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号21のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;TLR1貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号22のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;TLR2貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号23のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;TLR3貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号24のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;TLR4貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号25のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;TLR5貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号26のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;TLR6貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号27のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;TLR7貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号28のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;TLR8貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号29のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;TLR9貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号30のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;Traf2貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号31のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されており;またはTraf3貪食シグナル伝達ドメインは、配列番号32のアミノ酸配列に対応するそのC末端において1、2、3、4、5つまたはそれよりも多いアミノ酸切断されている。
【0084】
ある特定の実施形態においては、切断型MyD88貪食シグナル伝達ドメインは、デスドメインを含むが、Toll/インターロイキン1受容体(TIR:Toll/interleukin-1 receptor)ホモロジードメインを欠く。そのような切断型MyD88貪食シグナル伝達ドメインの例は、配列番号33のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態においては、切断型MyD88貪食シグナル伝達ドメインは、TIRドメインを含む。TIRドメインを含む切断型MyD88貪食シグナル伝達ドメインの例は、配列番号106のアミノ酸配列を含む。例示的な切断型Traf6シグナル伝達ドメインは、配列番号34のアミノ酸配列を含む。例示的な切断型NFAM1シグナル伝達ドメインは、配列番号35のアミノ酸配列を含む。例示的な切断型CD79bシグナル伝達ドメインは、配列番号20のアミノ酸配列を含む。
【0085】
ある特定の実施形態においては、CERは、第1の貪食シグナル伝達ドメインおよび第2の貪食シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態においては、CERは、同じ分子からの第1の貪食シグナル伝達ドメインおよび第2の貪食シグナル伝達ドメインを含む。他の実施形態においては、第1の貪食シグナル伝達ドメインおよび第2の貪食シグナル伝達ドメインは、異なる分子からのドメインである。
【0086】
貪食シグナル伝達ドメインは、ヒト、霊長類、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタおよびそれらのトランスジェニック種を含む哺乳動物種に由来し得る。
【0087】
膜貫通ドメイン
本開示のCERは、細胞外ドメインと貪食シグナル伝達ドメインとを接続し、かつこれらの間に位置する膜貫通ドメインを含む。膜貫通ドメインは、宿主細胞膜を横断し、かつ宿主細胞膜においてCERを固定する疎水性アルファヘリックスである。膜貫通ドメインは、結合ドメインに、または存在する場合細胞外スペーサードメインに直接的に融合され得る。ある特定の実施形態においては、膜貫通ドメインは、膜内在性タンパク質[例えば受容体、表面抗原分類(CD:cluster of differentiation)分子、酵素、トランスポーター、細胞接着分子その他]に由来する。膜貫通ドメインは、細胞外ドメインまたは貪食シグナル伝達ドメインと同じ分子から選択され得る(例えばTLR4貪食シグナル伝達ドメインおよびTLR4膜貫通ドメインを含むCER、またはTim4結合ドメインおよびTim4膜貫通ドメインを含むCER)。ある特定の実施形態においては、膜貫通ドメインおよび細胞外ドメインは各々、異なる分子から選択される。他の実施形態においては、膜貫通ドメインおよび貪食シグナル伝達ドメインは各々、異なる分子から選択される。また他の実施形態においては、膜貫通ドメイン、細胞外ドメインおよび貪食シグナル伝達ドメインは各々、異なる分子から選択される。
【0088】
ある特定の実施形態においては、膜貫通ドメインは、Tim1、Tim4、Tim3、FcR(例えばFcγR1、FcγR2A、FcγR2B2、FcγR2C、FcγR3A、FcεR1またはFcαR1)、CD8a、CD28、MERTK、Axl、Tyro3、CD4、DAP12、MRC1、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8またはTLR9膜貫通ドメインを含む。
【0089】
ある特定の実施形態においては、膜貫通ドメインは、配列番号36のアミノ酸配列を含むTim1膜貫通ドメイン、配列番号37または38のアミノ酸配列を含むTim4膜貫通ドメイン、配列番号39のアミノ酸配列を含むTim3膜貫通ドメイン、配列番号40のアミノ酸配列を含むFcγR1膜貫通ドメイン、配列番号41のアミノ酸配列を含むFcγR2A膜貫通ドメイン、配列番号42のアミノ酸配列を含むFcγR2B2膜貫通ドメイン、配列番号43のアミノ酸配列を含むFcγR2C膜貫通ドメイン、配列番号44のアミノ酸配列を含むFcγR3A膜貫通ドメイン、配列番号45のアミノ酸配列を含むFcεR1膜貫通ドメイン、配列番号46のアミノ酸配列を含むFcαR1膜貫通ドメイン、配列番号47のアミノ酸配列を含むCD8a膜貫通ドメイン、配列番号107のアミノ酸配列を含むCD28膜貫通ドメイン、配列番号48のアミノ酸配列を含むMERTK膜貫通ドメイン、配列番号49のアミノ酸配列を含むAxl膜貫通ドメイン、配列番号50のアミノ酸配列を含むTyro3膜貫通ドメイン、配列番号51のアミノ酸配列を含むCD4膜貫通ドメイン、配列番号52のアミノ酸配列を含むDAP12膜貫通ドメイン、配列番号53のアミノ酸配列を含むMRC1膜貫通ドメイン、配列番号54のアミノ酸配列を含むTLR1膜貫通ドメイン、配列番号55のアミノ酸配列を含むTLR2膜貫通ドメイン、配列番号56のアミノ酸配列を含むTLR3膜貫通ドメイン、配列番号57のアミノ酸配列を含むTLR4膜貫通ドメイン、配列番号58のアミノ酸配列を含むTLR5膜貫通ドメイン、配列番号59のアミノ酸配列を含むTLR6膜貫通ドメイン、配列番号60のアミノ酸配列を含むTLR7膜貫通ドメイン、配列番号61のアミノ酸配列を含むTLR8膜貫通ドメイン、または配列番号62のアミノ酸配列を含むTLR9膜貫通ドメインについて少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または100%の同一性を有する配列を含む。
【0090】
ある特定の実施形態においては、膜貫通ドメインは、配列番号36のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTim1膜貫通ドメイン、配列番号37または38のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTim4膜貫通ドメイン、配列番号39のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTim3膜貫通ドメイン、配列番号40のアミノ酸配列を含むかまたはからなるFcγR1膜貫通ドメイン、配列番号41のアミノ酸配列を含むかまたはからなるFcγR2A膜貫通ドメイン、配列番号42のアミノ酸配列を含むかまたはからなるFcγR2B2膜貫通ドメイン、配列番号43のアミノ酸配列を含むかまたはからなるFcγR2C膜貫通ドメイン、配列番号44のアミノ酸配列を含むかまたはからなるFcγR3A膜貫通ドメイン、配列番号45のアミノ酸配列を含むかまたはからなるFcεR1膜貫通ドメイン、配列番号46のアミノ酸配列を含むかまたはからなるFcαR1膜貫通ドメイン、配列番号47のアミノ酸配列を含むかまたはからなるCD8a膜貫通ドメイン、配列番号107のアミノ酸配列を含むかまたはからなるCD28膜貫通ドメイン、配列番号48のアミノ酸配列を含むかまたはからなるMERTK膜貫通ドメイン、配列番号49のアミノ酸配列を含むかまたはからなるAxl膜貫通ドメイン、配列番号50のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTyro3膜貫通ドメイン、配列番号51のアミノ酸配列を含むかまたはからなるCD4膜貫通ドメイン、配列番号52のアミノ酸配列を含むかまたはからなるDAP12膜貫通ドメイン、配列番号53のアミノ酸配列を含むかまたはからなるMRC1膜貫通ドメイン、配列番号54のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTLR1膜貫通ドメイン、配列番号55のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTLR2膜貫通ドメイン、配列番号56のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTLR3膜貫通ドメイン、配列番号57のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTLR4膜貫通ドメイン、配列番号58のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTLR5膜貫通ドメイン、配列番号59のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTLR6膜貫通ドメイン、配列番号60のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTLR7膜貫通ドメイン、配列番号61のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTLR8膜貫通ドメイン、または配列番号62のアミノ酸配列を含むかまたはからなるTLR9膜貫通ドメインである。
【0091】
膜貫通ドメインは、ヒト、霊長類、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタおよびそれらのトランスジェニック種を含む任意の哺乳動物種に由来し得る。
【0092】
ある特定の実施形態においては、キメラ貪食受容体は、ヒト、霊長類、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタ、それらのトランスジェニック種またはそれらの任意の組合せを含む任意の哺乳動物種に由来するポリヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態においては、キメラ貪食受容体は、マウス、キメラ、ヒトまたはヒト化貪食受容体である。
【0093】
本明細書において説明するCERの1つのドメインの別のドメインへの直接的融合は、介在性接合部アミノ酸の存在を排除しないと理解される。接合部アミノ酸は、天然または非天然(例えばキメラタンパク質のコンストラクト設計から生じる)であり得る。
【0094】
本開示のタンデム発現カセットにおける使用のためのCERの実施形態は、表1において提供され、また、PCT出願PCT/2017/053553号および同PCT/US2018/52297号において説明されており、当該出願の各々は、その全体を参照により組み込む。
【0095】
【表1-1】
【表1-2】
【0096】
II.キメラ抗原受容体
ある特定の実施形態においては、本開示のタンデム発現カセットは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする導入遺伝子を含む。キメラ抗原受容体は、一般的に:標的抗原に結合する結合ドメインを含む細胞外ドメイン;細胞内シグナル伝達ドメイン;および細胞外ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとの間に位置し、かつこれらを接続する膜貫通ドメインを含む組換え受容体である。
【0097】
本開示のCARにおける使用のために好適な結合ドメインには、任意の抗原結合性ポリペプチドが含まれる。結合ドメインは、例えば全長重鎖、Fab断片、Fab’、F(ab’)、sFv、VHドメイン、VLドメイン、dAb、VHH、CDRおよびscFvを含む抗体またはその抗原結合性断片を含み得る。ある特定の実施形態においては、CAR結合ドメインは、マウス、キメラ、ヒトまたはヒト化CAR結合ドメインである。
【0098】
ある特定の実施形態においては、本開示において提供されるCARの細胞外ドメインは、細胞外非シグナル伝達スペーサーまたはリンカードメインを含んでもよい。含まれる場合、そのようなスペーサーまたはリンカードメインは、結合ドメインを、宿主細胞表面から離れるように位置させて、適切な細胞-細胞接触、結合および活性化をさらに可能にし得る。細胞外スペーサードメインは一般的に、CARの細胞外結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置する。細胞外スペーサーの長さは、選択された標的分子、選択された結合エピトープ、結合ドメインサイズおよび親和性に基づいて、標的分子結合を最適化するために変動し得る(例えばGuest et al., J. Immunother. 28:203-11, 2005;PCT公開公報WO2014/031687号を参照のこと)。ある特定の実施形態においては、細胞外スペーサードメインは、免疫グロブリンヒンジ領域(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgD)である。免疫グロブリンヒンジ領域は、野生型免疫グロブリンヒンジ領域または変更された野生型免疫グロブリンヒンジ領域であり得る。変更されたIgGヒンジ領域は、PCT公開公報WO2014/031687号において説明されており、当該ヒンジ領域は、その全体を参照により本明細書に組み込む。特定の実施形態においては、細胞外スペーサードメインは、ESKYGPPCPPCP(配列番号63)のアミノ酸配列を有する改変IgGヒンジ領域を含む。
【0099】
本明細書において説明するCARにおいて使用され得るヒンジ領域の他の例には、野生型またはその変異型であり得る1型膜タンパク質、例としてCD8a、CD4、CD28およびCD7の細胞外領域からのヒンジ領域が含まれる。さらなる実施形態においては、細胞外スペーサードメインは、CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメインまたはそれらの組合せから選択される免疫グロブリンFcドメインの全てまたは一部を含む(例えばPCT公開公報WO2014/031687号を参照されたく、当該スペーサーは、その全体を参照により本明細書に組み込む)。またさらなる実施形態においては、細胞外スペーサードメインは、II型Cレクチンの柄領域(C型レクチンドメインと膜貫通ドメインとの間に位置する細胞外ドメイン)を含み得る。II型Cレクチンには、CD23、CD69、CD72、CD94、NKG2AおよびNKG2Dが含まれる。
【0100】
本開示のCARは、細胞外ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとを接続し、かつこれらの間に位置する膜貫通ドメインを含む。膜貫通ドメインは、宿主細胞膜を横断し、かつ宿主細胞膜においてCARを固定する疎水性アルファヘリックスである。膜貫通ドメインは、結合ドメインに、または存在する場合細胞外スペーサードメインに直接的に融合され得る。ある特定の実施形態においては、膜貫通ドメインは、膜内在性タンパク質[例えば受容体、表面抗原分類(CD)分子、酵素、トランスポーター、細胞接着分子その他]に由来する。膜貫通ドメインは、細胞外ドメインまたは細胞内シグナル伝達ドメインと同じ分子から選択され得る(例えば、CARはCD28共刺激性シグナル伝達ドメインおよびCD28膜貫通ドメインを含む)。ある特定の実施形態においては、膜貫通ドメインおよび細胞外ドメインは各々、異なる分子から選択される。他の実施形態においては、膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインは各々、異なる分子から選択される。また他の実施形態においては、膜貫通ドメイン、細胞外ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインは各々、異なる分子から選択される。
【0101】
本開示のCARにおける使用のための例示的な膜貫通ドメインには、CD28、CD2、CD3ε、CD3δ、CD3ζ、CD25、CD27、CD40、CD79A、CD79B、CD80、CD86、CD95(Fas)、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD200R、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD272(BTLA)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、CD279(PD-1)、CD300、CD357(GITR)、A2aR、DAP10、FcRα、FcRβ、FcRγ、Fyn、GAL9、KIR、Lck、LAT、LRP、NKG2D、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、PTCH2、ROR2、Ryk、Slp76、SIRPα、pTα、TCRα、TCRβ、TIM3、TRIM、LPA5およびZap70が含まれる。例示的なCD28膜貫通ドメインは、配列番号107のアミノ酸配列を含む。
【0102】
CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、細胞内エフェクタードメインであり、CARの細胞外ドメインの標的分子への結合に応答して、機能的シグナルを細胞に伝達することができる。細胞内シグナル伝達ドメインは、十分なシグナル伝達活性を保持する細胞内シグナル伝達分子の任意の部分であり得る。一部の実施形態においては、細胞内シグナル伝達分子の全長または全長細胞内成分が使用される。一部の実施形態においては、細胞内シグナル伝達分子または細胞内シグナル伝達分子の細胞内成分の切断部分が使用され、但し、その切断部分は十分なシグナル伝達活性を保持する。さらなる実施形態においては、細胞内シグナル伝達ドメインは、細胞内シグナル伝達分子の全部分または切断部分の変異型であり、但し、その変異型は十分なシグナル伝達活性を保持する(すなわち、機能的変異型である)。
【0103】
ある特定の実施形態においては、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)含有シグナル伝達ドメインを含む。ITAM含有シグナル伝達ドメインは一般的に、少なくとも1つの(1、2、3、4つまたはそれよりも多い)ITAMを含有し、これは、YXXL/I-X6-8-YXXL/Iの保存されたモチーフを指す。ITAM含有シグナル伝達ドメインは、抗原結合またはリガンド係合後、T細胞活性化シグナル伝達を開始し得る。ITAMシグナル伝達ドメインには、例えばCD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD5、CD22、CD79a、CD278(ICOS)、DAP10、DAP12およびCD66dの細胞内シグナル伝達ドメインが含まれる。本開示のCARにおいて使用され得る例示的なCD3ζシグナル伝達ドメインは、配列番号166または167のアミノ酸配列を含む。
【0104】
CAR細胞内シグナル伝達ドメインは、主要な、または古典的な(例えばITAM駆動)活性化シグナルと共に活性化された場合、T細胞応答、例としてT細胞活性化、サイトカイン産生、増殖、分化、生存、エフェクター機能またはそれらの組合せを促進する、または向上させる共刺激性シグナル伝達ドメインを含んでもよい。CARにおける使用のための共刺激性シグナル伝達ドメインには、例えばCD27、CD28、CD40L、GITR、NKG2C、CARD1、CD2、CD7、CD27、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX-40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD223(LAG3)、CD226、CD270(HVEM)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、LFA-1、LIGHT、NKG2C、SLP76、TRIM、ZAP70またはそれらの任意の組合せが含まれる。特定の実施形態においては、共刺激性シグナル伝達ドメインは、OX40、CD2、CD27、CD28、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)または4-1BB(CD137)シグナル伝達ドメインを含む。本開示のCARにおいて使用され得る例示的なCD28共刺激性シグナル伝達ドメインは、配列番号169または170のアミノ酸配列を含む。例示的な4-1BB共刺激性シグナル伝達ドメインは、配列番号168のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態においては、CARは、1、2つまたはそれよりも多い共刺激性シグナル伝達ドメインを含む。
【0105】
ある特定の実施形態においては、キメラ抗原受容体は、ヒト、霊長類、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタ、それらのトランスジェニック種またはそれらの任意の組合せを含む任意の哺乳動物種に由来するポリヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態においては、キメラ抗原受容体は、マウス、キメラ、ヒトまたはヒト化抗原受容体である。
【0106】
ある特定の実施形態においては、CARは、第1世代CAR、第2世代CARまたは第3世代CARである。第1世代CARは一般的に、CD3ζ、FcγRIの細胞内シグナル伝達ドメインまたは他のITAM含有活性化ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを有して、T細胞活性化シグナルを提供する。第2世代CARは、共刺激性シグナル伝達ドメイン(例えば内因性T細胞共刺激性受容体、例としてCD28、4-1BBまたはICOSからの共刺激性シグナル伝達ドメイン)をさらに含む。第3世代CARは、ITAM含有活性化ドメイン、第1の共刺激性シグナル伝達ドメインおよび第2の共刺激性シグナル伝達ドメインを含む。
【0107】
ある特定の実施形態においては、CARは、T細胞受容体ベースのキメラ抗原受容体(TCR-CAR)である。TCR-CARは、可溶性TCRを一般的に含むヘテロ二量体融合タンパク質であり(VαドメインおよびCαドメインを含むポリペプチド鎖、およびVβドメインおよびCβドメインを含むポリペプチド鎖)、VβCβポリペプチド鎖は、膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達成分(例えばITAM含有活性化ドメインおよび適宜、共刺激性シグナル伝達ドメイン)に連結されている(例えばWalseng et al., 2017 Scientific Reports 7:10713を参照のこと)。
【0108】
本開示のCARは、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、寄生生物抗原、腫瘍抗原、自己免疫疾患抗原を含む様々な抗原をターゲティングし得る。CARがターゲティングし得る例示的な腫瘍抗原には、CD138、CD38、CD33、CD123、CD72、CD79a、CD79b、メソテリン、PSMA、BCMA、ROR1、MUC-16、L1CAM、CD22、CD19、CD20、CD23、CD24、CD37、CD30、CA125、CD56、c-Met、EGFR、GD-3、HPV E6、HPV E7、MUC-1、HER2、葉酸受容体α、CD97、CD171、CD179a、CD44v6、WT1、VEGF-α、VEGFR1、IL-13Rα1、IL-13Rα2、IL-11Rα、PSA、FcRH5、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、TAG-72、CEA、エフリンA2、エフリンB2、ルイス式A抗原、ルイス式Y抗原、MAGE、MAGE-A1、RAGE-1、葉酸受容体β、EGFRviii、VEGFR-2、LGR5、SSX2、AKAP-4、FLT3、フコシルGM1、GM3、o-アセチル-GD2およびGD2が含まれる。
【0109】
III.T細胞受容体結合タンパク質
ある特定の実施形態においては、本開示のタンデム発現カセットは、組換えTCR結合タンパク質をコードする導入遺伝子を含む。組換えTCR結合タンパク質には、α鎖ポリペプチドとβ鎖ポリペプチドとのヘテロ二量体またはγ鎖ポリペプチドとδ鎖ポリペプチドとのヘテロ二量体からなる「伝統的な」TCR;例えば単鎖TCR、単一ドメインTCR、可溶性TCR融合TCRタンパク質およびTCR融合コンストラクト[TRuC(商標)]を含む、その結合性断片および融合タンパク質が含まれる。ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセットは、TCRベータ可変領域およびTCRベータ定常領域を含む組換えTCRベータ鎖をコードするポリヌクレオチドと、TCRアルファ可変領域およびTCRアルファ定常領域を含む組換えTCRアルファ鎖をコードするポリヌクレオチドとを含む。ある特定の実施形態においては、組換えTCRは、高親和性TCRである。
【0110】
ある特定の実施形態においては、組換えTCR結合タンパク質は、フレキシブルリンカーによってVβに接合されたVαを含む単鎖TCR(scTCR:single chain TCR)である。一部の実施形態においては、scTCRは、Vα-リンカー-Vβポリペプチドを含む。他の実施形態においては、scTCRは、Vβ-リンカー-Vαポリペプチドを含む。
【0111】
ある特定の実施形態においては、組換えTCR結合タンパク質は、単一ドメインTCR(例えばVβ)である。
【0112】
ある特定の実施形態においては、組換えTCR結合タンパク質は、単鎖TCR(scTCR)融合タンパク質である。scTCR融合タンパク質は、scTCRを含む結合ドメイン(TCR Vβドメインに連結したTCR Vαドメイン)と、適宜の細胞外スペーサーと、膜貫通ドメインと、CD3ζ ITAM含有活性化ドメインおよび適宜の共刺激性シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含む(Aggen et al., 2012, Gene Ther. 19:365-374;Stone et al., Cancer Immunol. Immunother. 2014, 63:1163-76を参照のこと)。
【0113】
ある特定の実施形態においては、組換えTCR結合タンパク質は、TCR融合コンストラクト[TRuC(商標)コンストラクト]である(米国特許公開公報第2017/0166622号を参照のこと)。TRuC(商標)コンストラクトは、TCR複合体の少なくとも1つの成分(CD3γ、CD3εまたはCD3δ)に融合した抗原特異的結合ドメイン(例えばscFv)を含み、TCR複合体成分融合タンパク質を形成する。ヒトTCR複合体は、CD3εポリペプチド、CD3γポリペプチド、CD3δポリペプチド、CD3ζポリペプチド、TCR α鎖ポリペプチドおよびTCR β鎖ポリペプチドを含有する。TCR複合体成分融合タンパク質は、TCR複合体の他の成分と会合して機能的完全TCR融合複合体を形成することができる。TCRとは異なって、TRuC(商標)コンストラクトは、MHC独立様式において標的抗原に結合することができる。
【0114】
ある特定の実施形態においては、TCR結合タンパク質は、ヒト、霊長類、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタ、それらのトランスジェニック種またはそれらの任意の組合せを含む任意の哺乳動物種に由来するポリヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態においては、TCR結合タンパク質は、マウス、キメラ、ヒトまたはヒト化TCR結合タンパク質である。
【0115】
本開示のTCR結合タンパク質は、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、寄生生物抗原および自己免疫疾患抗原を含む様々な抗原に結合し得る。組換えTCR結合タンパク質がターゲティングし得る例示的な腫瘍抗原には、WT-1、メソテリン、MART-1、NY-ESO-1、MAGE-A3、HPV E7、サバイビン、α-フェトプロテインおよび腫瘍特異的新生抗原が含まれる。本開示のタンデム発現カセットにおいて使用され得る例示的なHPV16 E7特異的TCRは、PCT出願公開公報WO2015/184228号(その全体を参照により組み込む)において提供される。ある特定の実施形態においては、HPV16 E7特異的TCRは、配列番号90のアミノ酸配列を含む。配列番号90のアミノ酸配列は、TCRβ鎖配列とTCRα鎖配列との間にP2A自己切断ペプチドを含有し、これは、宿主細胞において切断されて、2つのポリペプチド鎖を形成し得る。したがって、ある特定の実施形態においては、配列番号90によって表されるTCRは、二量体化してαβTCRを形成することができる別々のTCRβおよびTCRαポリペプチド鎖を含む。ある特定の実施形態においては、HPV16 E7特異的TCRは、配列番号92のアミノ酸配列を含むVβを含む。ある特定の実施形態においては、HPV16 E7特異的TCRは、配列番号94のアミノ酸配列を含むVαを含む。さらなる実施形態においては、HPV16特異的E7 TCRは、配列番号92のアミノ酸配列を含むVβと、配列番号94のアミノ酸配列を含むVαとを含む。
【0116】
ある特定の実施形態においては、TCR Cαドメイン、Cβドメインまたはこれらの両方は、非改変TCRには存在しない、2つの定常ドメインシステイン残基間の鎖間ジスルフィド結合を創出するシステイン置換を含む。そのような改変TCRは、より安定なヘテロ二量体を形成し得る。特定の実施形態においては、Cαドメインは、野生型タンパク質配列の48位におけるThr→Cys置換を含み、Cβドメインは、野生型タンパク質配列の56位におけるSer→Cys置換を含む(PCT出願公開WO2015/184228号を参照のこと)。例示的なシステイン改変TCR Cβ定常領域は、配列番号93のアミノ酸配列を含む。
【0117】
ある特定の実施形態においては、TCRは、膜貫通ドメインの疎水性を増大させるための、αおよびβ鎖のうちの1つまたは両方の定常領域の膜貫通ドメインにおける1、2または3つのアミノ酸の、疎水性アミノ酸による置換を含む。ある特定の実施形態においては、TCRα鎖のSer112、Met114およびGly115から選択される残基のうちの1、2または3つは、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、MetまたはTrpにより置換される。例示的なシステイン改変「LVL」置換TCR Cα領域は、配列番号95のアミノ酸配列を含む。
【0118】
ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセットによってコードされるCERおよびCAR/またはTCR結合タンパク質は、同じ抗原をターゲティングする。他の実施形態においては、タンデム発現カセットによってコードされるCERおよびCAR/またはTCR結合タンパク質は各々、異なる抗原をターゲティングする。
【0119】
ポリヌクレオチド、発現カセット、ベクターおよび改変宿主細胞
ある特定の態様においては、本開示は、本明細書において説明する受容体(例えばCER、CARおよびTCR結合タンパク質)のうちの任意の1つまたは複数をコードする核酸分子を提供する。核酸とは、一本鎖または二本鎖DNA、cDNAまたはRNAを指す場合があり、アンチセンスDNA、cDNAおよびRNAを含む互いに相補する核酸の正の鎖および負の鎖を含み得る。核酸は、DNAまたはRNAの天然形態または合成形態であり得る。所望の受容体をコードする核酸配列は、例えばSambrook et al. (1989 and 2001 editions; Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY)およびAusubel et al. (Current Protocols in Molecular Biology, 2003)において説明される通り、標準技術を使用する当該技術分野において公知の組換え法を使用して、例として所望の配列またはその一部を発現する細胞からのライブラリーをスクリーニングすることによって、所望の配列またはその一部を含むことが公知のベクターからの配列を派生させることによって、または所望の配列またはその一部を含有する細胞または組織から直接的に配列またはその一部を単離することによって、取得または産生することができる。あるいは、目的の配列は、クローニングするのではなく、合成産生することができる。
【0120】
本明細書において提供される受容体組成をコードするポリヌクレオチドは、任意の動物、例としてヒト、霊長類、ウシ、ウマ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタまたはそれらの組合せに由来し得る。ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセットに含有される少なくとも1つの受容体または両方の受容体をコードするポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが挿入される宿主細胞と同じ動物種からのポリヌクレオチドである。
【0121】
ある特定の実施形態においては、受容体をコードするポリヌクレオチドは、前駆体タンパク質の分泌経路へのターゲティングのための5’末端におけるシグナルペプチド(リーダーペプチドまたはシグナル配列とも呼ばれる)をコードする配列を含む。シグナルペプチドは、細胞プロセシングおよび受容体の宿主細胞膜への局在化中に細胞外ドメインのN末端から切断されてもよい。シグナルペプチド配列が切断または除去されたポリペプチドは、成熟ポリペプチドとも呼ばれ得る。本開示の受容体において使用され得るシグナルペプチドの例には、例えばGM-CSF(配列番号64のアミノ酸配列)またはTim4(配列番号65のアミノ酸配列)を含む、内因性分泌タンパク質由来のシグナルペプチドが含まれる。本明細書において使用されるとき、本明細書において提供される受容体、例えばCER、CARまたはTCR結合タンパク質のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列についての言及は、シグナル配列を含んでもよく、除外してもよい。シグナルペプチド配列を含む本明細書において開示される配列について、シグナルペプチド配列は、コードされるタンパク質を細胞外膜へ輸送することができる別のシグナルペプチドで置き換えてもよいことが当業者によって理解される。
【0122】
ある特定の実施形態においては、本開示のポリヌクレオチドをコードする受容体は、ポリヌクレオチドを含む標的宿主細胞における効率的な発現のためにコドン最適化される(例えばScholten et al., Clin. Immunol. 119:135-145 (2006)を参照のこと)。本明細書において使用されるとき、「コドン最適化した」ポリヌクレオチドは、目的の宿主細胞におけるtRNAの存在量に対応するサイレント変異により改変したコドンを有する異種のポリヌクレオチドを含む。
【0123】
本開示において提供される少なくとも2つの導入遺伝子(例えばCERおよびCAR、CERおよびTCR結合タンパク質)をコードするポリヌクレオチドは、タンデム発現カセットを構成するために使用され得る。タンデム発現カセットとは、少なくとも2つの導入遺伝子のタンデム発現または共発現のための、同じ組の調節配列の制御下の、または同じ組の調節配列に作動可能に連結された少なくとも2つの導入遺伝子を含むベクター核酸の成分を指す。本開示のタンデム発現カセットにおいて使用され得る調節配列には、適切な転写開始、終止、プロモーターおよびエンハンサー配列;効率的なRNAプロセシングシグナル、例としてスプライシングおよびポリアデニル化シグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を向上させる配列(すなわち、コザックコンセンサス配列);タンパク質安定性を向上させる配列;タンパク質分泌を向上させる配列;またはそれらの任意の組合せが含まれる。
【0124】
ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセットは、空間的制御および時間的制御を最適化するように構築され得る。例えば、タンデム発現カセットは、空間的制御および時間的制御を最適化するプロモーターエレメントを含み得る。一部の実施形態においては、タンデム発現カセットは、タンデム発現カセットの器官、細胞種(例えば免疫細胞)または病理学的微小環境、例として腫瘍または感染組織への特異的誘導を可能にする組織特異的プロモーターまたはエンハンサーを含む。「エンハンサー」は、協同的に、または独立して機能して転写を活性化し得る追加のプロモーターエレメントである。ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセットは、構成的プロモーターを含む。本開示のタンデム発現カセットにおける使用のための例示的な構成的プロモーターは、EF-1αプロモーターである。ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセットは、誘導性プロモーターを含む。ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセットは、組織特異的プロモーターを含む。
【0125】
タンデム発現カセット内に含有される少なくとも2つの導入遺伝子は、任意の順序で存在し得る。例えば、ポリヌクレオチドCERおよびCARをコードするポリヌクレオチドを含むタンデム発現カセットは、5’~3’へ:CER-CARまたはCAR-CERのように配置され得る。別の例においては、ポリヌクレオチドCERおよびTCRをコードするポリヌクレオチドを含むタンデム発現カセットは、5’~3’へ:CER-TCRまたはTCR-CERのように配置され得る。
【0126】
ある特定の実施形態においては、会合して多量体または複合体を形成する2つまたはそれよりも多いポリペプチド鎖を含む受容体は、タンデム発現コンストラクト内の2つまたはそれよりも多いポリヌクレオチド分子によってコードされ得る。本開示のタンデム発現コンストラクトにおいて発現のために企図される例示的な多量体受容体には、多重鎖CAR、TCR、TCR-CARおよびTRuC(商標)コンストラクトが含まれる。したがって、CERおよびTCRをコードする例示的なタンデム発現カセット実施形態は、CERをコードするポリヌクレオチド、TCRα鎖ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドおよびTCRβ鎖ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み得る。
【0127】
ある特定の実施形態においては、本開示のタンデム発現カセットは、単一のmRNAからの多数のタンパク質の共発現を可能にするために、タンデム発現カセット内に含有される各ポリヌクレオチド間に配置される配列内リボソーム進入部位(IRES)またはペプチド切断部位、例としてフューリン切断部位またはウイルス2Aペプチドを含み得る。例えば、IRES、フューリン切断部位またはウイルス2Aペプチドは、タンデム発現カセット内のCERをコードするポリヌクレオチドとCARをコードするポリヌクレオチドとの間に配置され得る。別の例においては、IRES、フューリン切断部位またはウイルス2Aペプチドは、CERをコードするポリヌクレオチド、TCRα鎖ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドおよびTCRβ鎖ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの各々の間に配置され得る。ある特定の実施形態においては、ウイルス2Aペプチドは、ブタテッショウウイルス-1(P2A)、トセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス(T2A)、ウマ鼻炎Aウイルス(E2A)、口蹄疫ウイルス(F2A)またはそれらの変異型である。例示的なT2Aペプチドは、配列番号67、68、69および75のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。例示的なP2Aペプチドは、配列番号70または71のアミノ酸配列を含む。例示的なE2Aペプチド配列は、配列番号72のアミノ酸配列を含む。例示的なF2Aペプチド配列は、配列番号73のアミノ酸配列を含む。
【0128】
本開示のタンデム発現カセットのある特定の実施形態は、標的抗原(例えば腫瘍抗原)に特異的なCAR/またはTCRをコードするポリヌクレオチドと、プロ貪食マーカー(例えばアポトーシスマーカー、例としてホスファチジルセリン)に結合するCERをコードするポリヌクレオチドとを含む。CAR/またはTCRによる標的抗原を発現する標的細胞の結合に際して、そのようなタンデム発現カセットを発現するように改変した細胞は、標的細胞のアポトーシスを誘導する。アポトーシスは、標的細胞上のプロ貪食マーカー、例としてホスファチジルセリンの曝露を誘導し、その後、ホスファチジルセリンは、損傷細胞またはアポトーシス細胞をCERによる貪食にターゲティングし得る。
【0129】
本開示の例示的なタンデム発現カセットは、(a)ホスファチジルセリンに結合するTim4結合ドメインを含む細胞外ドメインと、TLR4貪食シグナル伝達ドメインと、細胞外ドメインと貪食シグナル伝達ドメインとの間に位置し、かつこれらを接続するTim4膜貫通ドメインとを含むCERをコードするポリヌクレオチド;(b)TCRベータ可変領域とTCRベータ定常領域とを含むHPV-E7特異的組換えT細胞受容体(TCR)ベータ鎖をコードするポリヌクレオチド;および(c)TCRアルファ可変領域とTCRアルファ定常領域とを含むHPV-E7特異的組換えTCRアルファ鎖をコードするポリヌクレオチドを含む(図1Aを参照のこと)。ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセットは、CERをコードするポリヌクレオチド、TCRβ鎖をコードするポリヌクレオチドおよびTCRα鎖をコードするポリヌクレオチドの間に散在する2Aペプチド配列を含む。ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセットは、CERおよびTCRポリヌクレオチドに作動可能に連結されたEF-1αプロモーターを含む。ある特定の実施形態においては、そのような例示的なタンデム発現カセット(「CER5-HPV16 E7 TCR」)は、配列番号97のアミノ酸配列を含むCER5と、配列番号90のアミノ酸配列を含むHPV16 E7 TCRとを含む。
【0130】
本開示の別の例示的なタンデム発現カセットは、(a)ホスファチジルセリンに結合するTim4結合ドメインを含む細胞外ドメインと、TLR5貪食シグナル伝達ドメインと、細胞外ドメインと貪食シグナル伝達ドメインとの間に位置し、かつこれらを接続するTim4膜貫通ドメインとを含むCERをコードするポリヌクレオチド;(b)TCRベータ可変領域とTCRベータ定常領域とを含むHPV-E7特異的組換えT細胞受容体(TCR)ベータ鎖をコードするポリヌクレオチド;および(c)TCRアルファ可変領域とTCRアルファ定常領域とを含むHPV-E7特異的組換えTCRアルファ鎖をコードするポリヌクレオチドを含む(図1Bを参照のこと)。ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセットは、CERをコードするポリヌクレオチド、TCRβ鎖をコードするポリヌクレオチドおよびTCRα鎖をコードするポリヌクレオチドの間に散在する2Aペプチド配列を含む。ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセットは、CERおよびTCRポリヌクレオチドに作動可能に連結されたEF-1αプロモーターを含む。ある特定の実施形態においては、そのような例示的なタンデム発現カセット(「CER19-HPV16 E7 TCR」)は、配列番号98のアミノ酸配列を含むCER19と、配列番号90のアミノ酸配列を含むHPV16 E7 TCRとを含む。
【0131】
本開示の別の例示的なタンデム発現カセットは、(a)Tim4結合ドメインを含む細胞外ドメインと、TLR8貪食シグナル伝達ドメインと、細胞外ドメインと貪食シグナル伝達ドメインとの間に位置し、かつこれらを接続するTim4膜貫通ドメインとを含むCERをコードするポリヌクレオチド;(b)TCRベータ可変領域とTCRベータ定常領域とを含むHPV-E7特異的組換えT細胞受容体(TCR)ベータ鎖をコードするポリヌクレオチド;および(c)TCRアルファ可変領域とTCRアルファ定常領域とを含むHPV-E7特異的組換えTCRアルファ鎖をコードするポリヌクレオチドを含む(図1Cを参照のこと)。ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセットは、CERをコードするポリヌクレオチド、TCRβ鎖をコードするポリヌクレオチドおよびTCRα鎖をコードするポリヌクレオチドの間に散在する2Aペプチド配列を含む。ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセットは、CERおよびTCRポリヌクレオチドに作動可能に連結されたEF-1αプロモーターを含む。ある特定の実施形態においては、そのような例示的なタンデム発現カセット(「CER21-HPV16 E7 TCR」)は、配列番号99のアミノ酸配列を含むCER21と、配列番号90のアミノ酸配列を含むHPV16 E7 TCRとを含む。
【0132】
本開示の別の例示的なタンデム発現カセットは、(a)ホスファチジルセリンに結合するTim4結合ドメインを含む細胞外ドメインと、NFAM1貪食シグナル伝達ドメインと、細胞外ドメインと貪食シグナル伝達ドメインとの間に位置し、かつこれらを接続するTim4膜貫通ドメインとを含むCERをコードするポリヌクレオチド;(b)TCRベータ可変領域とTCRベータ定常領域とを含むHPV-E7特異的組換えT細胞受容体(TCR)ベータ鎖をコードするポリヌクレオチド;および(c)TCRアルファ可変領域とTCRアルファ定常領域とを含むHPV-E7特異的組換えTCRアルファ鎖をコードするポリヌクレオチドを含む(図1Dを参照のこと)。ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセットは、CERをコードするポリヌクレオチド、TCRβ鎖をコードするポリヌクレオチドおよびTCRα鎖をコードするポリヌクレオチドの間に散在する2Aペプチド配列を含む。ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセットは、CERおよびTCRポリヌクレオチドに作動可能に連結されたEF-1αプロモーターを含む。ある特定の実施形態においては、そのような例示的なタンデム発現カセット(「CER25-HPV16 E7 TCR」)は、配列番号100のアミノ酸配列を含むCER25と、配列番号90のアミノ酸配列を含むHPV16 E7 TCRとを含む。
【0133】
本開示の別の例示的なタンデム発現カセットは、(a)ホスファチジルセリンに結合するTim4結合ドメインを含む細胞外ドメインと、TLR2貪食シグナル伝達ドメインと、細胞外ドメインと貪食シグナル伝達ドメインとの間に位置し、かつこれらを接続するTim4膜貫通ドメインとを含むCERをコードするポリヌクレオチド;(b)TCRベータ可変領域とTCRベータ定常領域とを含むHPV-E7特異的組換えT細胞受容体(TCR)ベータ鎖をコードするポリヌクレオチド;および(c)TCRアルファ可変領域とTCRアルファ定常領域とを含むHPV-E7特異的組換えTCRアルファ鎖をコードするポリヌクレオチドを含む(図1Eを参照のこと)。ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセットは、CERをコードするポリヌクレオチド、TCRβ鎖をコードするポリヌクレオチドおよびTCRα鎖をコードするポリヌクレオチドの間に散在する2Aペプチド配列を含む。ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセットは、CERおよびTCRポリヌクレオチドに作動可能に連結されたEF-1αプロモーターを含む。ある特定の実施形態においては、そのような例示的なタンデム発現カセット(「CER27-HPV16 E7 TCR」)は、配列番号101のアミノ酸配列を含むCER27と、配列番号90のアミノ酸配列を含むHPV16 E7 TCRとを含む。
【0134】
本開示の別の例示的なタンデム発現カセットは、(a)ホスファチジルセリンに結合するTim4結合ドメインを含む細胞外ドメインと、Traf6貪食シグナル伝達ドメインと、細胞外ドメインと貪食シグナル伝達ドメインとの間に位置し、かつこれらを接続するTim4膜貫通ドメインとを含むCERをコードするポリヌクレオチド;(b)TCRベータ可変領域とTCRベータ定常領域とを含むHPV-E7特異的組換えT細胞受容体(TCR)ベータ鎖をコードするポリヌクレオチド;および(c)TCRアルファ可変領域とTCRアルファ定常領域とを含むHPV-E7特異的組換えTCRアルファ鎖をコードするポリヌクレオチドを含む(図1Fを参照のこと)。ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセットは、CERをコードするポリヌクレオチド、TCRβ鎖をコードするポリヌクレオチドおよびTCRα鎖をコードするポリヌクレオチドの間に散在する2Aペプチド配列を含む。ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセットは、CERおよびTCRポリヌクレオチドに作動可能に連結されたEF-1αプロモーターを含む。ある特定の実施形態においては、そのような例示的なタンデム発現カセット(「CER29-HPV16 E7 TCR」)は、配列番号102のアミノ酸配列を含むCER29と、配列番号90のアミノ酸配列を含むHPV16 E7 TCRとを含む。
【0135】
本開示のまた別の例示的なタンデム発現カセットは、(a)ホスファチジルセリンに結合するTim4結合ドメインを含む細胞外ドメインと、Traf3貪食シグナル伝達ドメインと、細胞外ドメインと貪食シグナル伝達ドメインとの間に位置し、かつこれらを接続するTim4膜貫通ドメインとを含むCERをコードするポリヌクレオチド;(b)TCRベータ可変領域とTCRベータ定常領域とを含むHPV-E7特異的組換えT細胞受容体(TCR)ベータ鎖をコードするポリヌクレオチド;および(c)TCRアルファ可変領域とTCRアルファ定常領域とを含むHPV-E7特異的組換えTCRアルファ鎖をコードするポリヌクレオチドを含む(図1Gを参照のこと)。ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセットは、CERをコードするポリヌクレオチド、TCRβ鎖をコードするポリヌクレオチドおよびTCRα鎖をコードするポリヌクレオチドの間に散在する2Aペプチド配列を含む。ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセットは、CERおよびTCRポリヌクレオチドに作動可能に連結されたEF-1αプロモーターを含む。ある特定の実施形態においては、そのような例示的なタンデム発現カセット(「CER31-HPV16 E7 TCR」)は、配列番号103のアミノ酸配列を含むCER31と、配列番号90のアミノ酸配列を含むHPV16 E7 TCRとを含む。
【0136】
所望のタンデム発現カセットをコードするポリヌクレオチドは、目的の宿主細胞(例えば免疫細胞)への導入のために、適切なベクター、例えばウイルスベクター、非ウイルスプラスミドベクターおよび非ウイルスベクター、例として脂質ベースのDNAベクター、修飾mRNA(modRNA)、自己増幅mRNA、CELiDおよびトランスポゾン媒介遺伝子移行(PiggyBac、Sleeping Beauty)に挿入され得る。本開示のタンデム発現カセットをコードするポリヌクレオチドは、任意の好適なベクター、例として発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクターまたはシークエンシングベクターにクローニングされ得る。ある特定の実施形態においては、CERをコードするポリヌクレオチドおよびCARまたはTCR結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、共に接合されて単一のポリヌクレオチドになり、その後、ベクターに挿入される。他の実施形態においては、CERをコードするポリヌクレオチドおよびCARまたはTCR結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、発現されるアミノ酸配列が機能的CERおよびCAR/またはTCRを産生するように、ベクターに別々に挿入され得る。タンデム発現カセットをコードするベクターは、「タンデム発現ベクター」と本明細書において呼ばれる。
【0137】
ある特定の実施形態においては、ベクターは、タンデム発現カセットをコードするポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態においては、ベクターは、CERおよびCAR/またはTCR結合タンパク質をコードするタンデム発現カセットを含む。
【0138】
ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセットの長期統合および娘細胞への伝播を可能にするベクターが利用される。例には、ウイルスベクター、例として、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、ポックスウイルスまたはレトロウイルス、例としてレンチウイルスベクターが含まれる。レンチウイルスに由来するベクターは、長期遺伝子移行を達成するために使用され、非増殖細胞、例として肝細胞に形質導入する能力、および低免疫原性を含む、ベクターに優る付加利益を有し得る。
【0139】
ある特定の実施形態においては、エピソーム性を保持する非統合ベクターは、本開示のタンデム発現カセットのために使用される。非統合ウイルスベクターの例には、アデノウイルスベクター、および非統合性になるように変異させた統合ウイルスベクター、例として非統合レンチウイルスベクターおよび非統合フォーミーウイルスベクターが含まれる。
【0140】
コアウイルスをコードするベクターは、「ウイルスベクター」と本明細書において呼ばれる。ヒト遺伝子療法適用のために特定されたウイルスベクターを含む、本開示の組成物との使用のために好適な多数の使用可能なウイルスベクターがある(Pfeifer and Verma, Ann. Rev. Genomics Hum. Genet. 2:177, 2001を参照のこと)。好適なウイルスベクターには、RNAウイルスに基づくベクター、例としてレトロウイルス由来ベクター、例えばモロニーマウス白血病ウイルス(MLV:Moloney murine leukemia virus)由来ベクターが含まれ、より複雑なレトロウイルス由来ベクター、例えばレンチウイルス由来ベクターが含まれる。HIV-1由来ベクターは、このカテゴリーに属する。他の例には、HIV-2、FIV、ウマ伝染性貧血ウイルス、SIVおよびマエディビスナウイルス(ヒツジレンチウイルス)に由来するレンチウイルスベクターが含まれる。レトロウイルス性およびレンチウイルス性ウイルスベクターを使用する方法、および哺乳動物宿主細胞にキメラ受容体導入遺伝子を含有するウイルス粒子を形質導入するための細胞をパッケージングする方法は、当該技術分野において公知であり、例えば米国特許第8,119,772号;Walchli et al., PLoS One 6:327930, 2011;Zhao et al., J. Immunol. 174:4415, 2005;Engels et al., Hum. Gene Ther. 14:1155, 2003;Frecha et al., Mol. Ther. 18:1748, 2010;Verhoeyen et al., Methods Mol. Biol. 506:97, 2009において以前に説明されている。また、レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターのコンストラクトおよび発現系は、市販されている。
【0141】
ある特定の実施形態においては、ウイルスベクターは、タンデム発現カセットをコードする非内因性ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するために使用される。ウイルスベクターは、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターであり得る。また、ウイルスベクターは、形質導入についてのマーカーをコードする核酸配列を含み得る。ウイルスベクターのための形質導入マーカーは、当該技術分野において公知であり、薬物抵抗性を与え得る選択マーカー、または検出可能なマーカー、例として蛍光マーカー、もしくはフローサイトメトリー等の方法によって検出され得る細胞表面タンパク質を含む。特定の実施形態においては、ウイルスベクターは、蛍光タンパク質(例えば緑色、黄色)を含む形質導入についての遺伝子マーカー、ヒトCD2の細胞外ドメインまたは切断型ヒトEGFR(EGFRtまたはtEGFR;Wang et al., Blood 118:1255, 2011を参照のこと)をさらに含む。例示的なtEGFR配列は、配列番号82のアミノ酸配列を含む。
【0142】
また、ポリヌクレオチドデリバリーのために、例えばアデノウイルスベースのベクターおよびアデノ随伴ウイルス(AAV:adeno-associated virus)ベースのベクター;アンプリコンベクター、複製欠損HSVおよび弱毒化HSVを含む単純ヘルペスウイルス(HSV:herpes simplex virus)由来のベクターを含むDNAウイルスベクターを含む他のウイルスベクターを使用することができる(Krisky et al., Gene Ther. 5: 1517, 1998)。
【0143】
また、遺伝子療法のために最近開発された他のウイルスベクターは、本開示の組成物および方法と共に使用することができる。そのようなベクターには、バキュロウイルスおよびα-ウイルス由来のベクター(Jolly, D J. 1999. Emerging Viral Vectors. pp 209-40, Friedmann T. ed. The Development of Human Gene Therapy. New York: Cold Spring Harbor Lab)またはプラスミドベクター(例としてsleeping beautyまたは他のトランスポゾンベクター)が含まれる。
【0144】
時間的な制御が所望される場合、タンデム発現カセットベクターは、形質導入された細胞の誘導性枯渇を可能にするエレメントを含み得る。例えば、そのようなベクターは、誘導性自殺遺伝子を含み得る。自殺遺伝子は、アポトーシス遺伝子または剤(例えば薬物)への感受性を与える遺伝子であり得る。例示的な自殺遺伝子には、化学誘導性カスパーゼ9(iCASP9)(米国特許公開公報第2013/0071414号)、化学誘導性Fas、またはガンシクロビルへの感受性を与える単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)が含まれる。さらなる実施形態においては、タンデム発現カセットベクターは、関連抗体の注入に際して、形質導入された細胞の枯渇を可能にする公知の細胞表面抗原を発現するように設計され得る。形質導入された細胞の枯渇のために使用され得る細胞表面抗原およびそれらの関連抗体の例には、CD20およびリツキシマブ、RQR8(CD34選択および抗CD20枯渇を可能にする混合CD34およびCD20エピトープ)およびリツキシマブ、ならびにEGFRおよびセツキシマブが含まれる。
【0145】
また、誘導性ベクター系、例として、ドキシサイクリンにより導入遺伝子発現を活性化するテトラサイクリン(Tet)-Onベクター系(Heinz et al., Hum. Gene Ther. 2011, 22:166-76)は、タンデム発現カセットの誘導性発現のために使用され得る。また、小分子応答転写因子は、発現を調節するために使用され得る。また、タンデム発現カセットの誘導性発現は、CERおよびCAR/またはTCR構造に導入したフックおよびストレプトアビジン結合タンパク質を通して小胞体膜に固定したストレプトアビジンに基づく選択フック(RUSH)系を使用する保持を介して達成することができ、ここでは、ビオチンの系への添加は、小胞体からのCERおよびCAR/またはTCRの放出をもたらす(Agaugue et al., 2015, Mol. Ther. 23(Suppl. 1):S88)。
【0146】
ある特定の実施形態においては、また、タンデム発現カセット改変宿主細胞は、1つまたは複数の小GTPアーゼを共発現するように改変され得る。Rho GTPアーゼ、小(約21kDa)シグナル伝達Gタンパク質のファミリーおよびまた、Rasスーパーファミリーのサブファミリーは、様々な細胞種におけるアクチン細胞骨格組織化を調節し、食作用中の偽足伸長およびファゴソーム閉鎖を促進する(例えばCastellano et al., 2000, J. Cell Sci. 113:2955-2961を参照のこと)。貪食は、繋ぎ止められた細胞または粒子の下のF-アクチン動員、および細胞または粒子内部移行をもたらす膜伸長を可能にするF-アクチン再配置を必要とする。Rho GTPアーゼには、RhoA、Rac1、Rac2、RhoGおよびCDC42が含まれる。他の小GTPアーゼ、例としてRap1は、補体媒介食作用の調節に関与する。小GTPアーゼとCERをコードするタンデム発現カセットとの共発現は、宿主細胞による標的細胞または粒子内部移行および/またはファゴソーム形成を促進し、または向上させ得る。一部の実施形態においては、GTPアーゼをコードする組換え核酸分子は、タンデム発現カセット含有ベクターとは別々のベクターにコードされる。他の実施形態においては、GTPアーゼをコードする組換え核酸分子は、タンデム発現カセットと同じベクターにコードされる。GTPアーゼおよびタンデム発現は、同じベクターの異なるプロモーターの調節下で(例えば異なるマルチクローニング部位において)発現され得る。あるいは、タンデム発現カセットおよびGTPアーゼは、マルチシストロン性ベクターにおいて1つのプロモーターの調節下で発現され得る。
【0147】
タンデム発現カセットと共に共発現され得るGTPアーゼの例には、Rac1、Rac2、Rab5(Rab5aとも呼ばれる)、Rab7、Rap1、RhoA、RhoG、CDC42またはそれらの任意の組合せが含まれる。特定の実施形態においては、GTPアーゼは、配列番号83のRac1アミノ酸配列、配列番号84のRab5アミノ酸配列、配列番号85のRab7アミノ酸配列、配列番号86のRap1アミノ酸配列、配列番号87のRhoAアミノ酸配列、配列番号108のCDC42アミノ酸配列またはそれらの任意の組合せと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%または100%同一である配列を含むか、またはその配列である。ある特定の実施形態においては、GTPアーゼの発現は、タンデム発現カセットによってコードされるCERがその標的抗原に結合するために十分な時間後、GTPアーゼの発現が作動されるように、宿主細胞において誘導または調節される。さらなる実施形態においては、GTPアーゼの発現は、標的抗原を発現する細胞のCER媒介貪食に十分な時間後、作動解除され得る。
【0148】
ある特定の実施形態においては、対象から得られた免疫細胞等の細胞は、本明細書において説明するタンデム発現カセットを導入することによって、非天然または組換え細胞(例えば非天然または組換え免疫細胞)に遺伝子改変される場合があり、それによって、細胞は、細胞表面局在化CERおよびCAR/またはTCRを発現する。ある特定の実施形態においては、宿主細胞は、免疫細胞、例として骨髄系前駆細胞またはリンパ球前駆細胞である。タンデム発現カセットまたはタンデム発現カセットを含むベクターを含むように改変され得る例示的な免疫細胞には、T細胞、ナチュラルキラー細胞、B細胞、リンパ球前駆体細胞、抗原提示細胞、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、骨髄系前駆体細胞、成熟骨髄細胞、単球またはマクロファージが含まれる。
【0149】
ある特定の実施形態においては、B細胞は、本開示のタンデム発現カセットを発現するように遺伝子改変される。B細胞は、炎症部位への輸送、抗原を内部移行および提示することができること、T細胞を共刺激することができること、高増殖性および自己再生性(生涯持続する)を含む宿主細胞として有益であり得るある特定の特性を有する。ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセット改変B細胞は、貪食された標的細胞または貪食された標的粒子をより小さいペプチドに消化し、それらを、MHC分子を介してT細胞に提示することができる。タンデム発現カセット改変B細胞による抗原提示は、免疫応答の非ターゲティング抗原への抗原拡張に寄与し得る。B細胞は、B細胞系統にコミットされた前駆細胞もしくは前駆体細胞(例えばプレプロB細胞、プロB細胞およびプレB細胞);未成熟かつ不活性化B細胞;または成熟かつ機能的もしくは活性化B細胞を含む。ある特定の実施形態においては、B細胞は、ナイーブB細胞、形質細胞、制御性B細胞、辺縁帯B細胞、濾胞性B細胞、リンパ形質細胞性細胞、形質芽細胞、メモリーB細胞またはそれらの任意の組合せであり得る。メモリーB細胞は、ナイーブB細胞においては非存在であるCD27の発現によってナイーブB細胞から区別され得る。ある特定の実施形態においては、B細胞は、ヒト、マウス、ラットまたは他の哺乳動物由来の初代細胞または細胞系であり得る。B細胞系は、当該技術分野において周知である。哺乳動物から得られる場合、B細胞は、血液、骨髄、脾臓、リンパ節または他の組織もしくは体液を含む多くの供給源から得ることができる。B細胞組成物は、富化または精製され得る。
【0150】
ある特定の実施形態においては、T細胞は、本開示のタンデム発現カセットを発現するように遺伝子改変される。例示的なT細胞には、CD4ヘルパー、CD8エフェクター(細胞傷害性)、ナイーブ(CD45 RA+、CCR7+、CD62L+、CD27+、CD45RO-)、セントラルメモリー(CD45RO、CD62L、CD8)、エフェクターメモリー(CD45RA+、CD45RO-、CCR7-、CD62L-、CD27-)、Tメモリー幹、制御性、粘膜関連インバリアント(MAIT)、γδ(gd)、組織レジデントT細胞、ナチュラルキラーT細胞またはそれらの任意の組合せが含まれる。ある特定の実施形態においては、T細胞は、ヒト、マウス、ラットまたは他の哺乳動物由来の初代細胞または細胞系であり得る。哺乳動物から得られる場合、T細胞は、血液、骨髄、リンパ節、胸腺または他の組織もしくは体液を含む多くの供給源から得ることができる。T細胞組成物は、富化または精製され得る。T細胞系は、当該技術分野において周知であり、それらのうちの一部は、Sandberg et al., Leukemia 21:230, 2000において説明されている。ある特定の実施形態においては、T細胞は、TCRα遺伝子、TCRβ遺伝子またはそれらの両方の内因性発現を欠く。そのようなT細胞は、TCRαおよびβ鎖の内因性発現を天然に欠いていてもよく、発現を遮断するように(例えば、TCRαおよびβ鎖を発現しないトランスジェニックマウスからのT細胞、またはTCRαおよびβ鎖の発現を阻害するように操作された細胞)、またはTCRα鎖、TCRβ鎖またはそれらの両方の遺伝子をノックアウトするように改変されていてもよい。
【0151】
ある特定の実施形態においては、本開示のタンデム発現カセットを発現する宿主細胞は、T細胞またはT細胞系統の細胞ではないが、細胞表面抗CD3を発現するように改変された前駆細胞、幹細胞または細胞である、細胞である。
【0152】
ある特定の実施形態においては、宿主細胞ゲノムを本開示のタンデム発現カセットを含むように改変するために、遺伝子編集法が使用される。遺伝子編集またはゲノム編集は、遺伝子操作エンドヌクレアーゼを使用してDNAが挿入されるか、置き換えられるか、または宿主細胞のゲノムから除去される遺伝子操作法である。ヌクレアーゼは、ゲノムにおけるターゲティングされた遺伝子座において特異的二本鎖切断を創出する。その後、宿主細胞の内因性DNA修復経路は、例えば非相同末端結合(NHEJ:non-homologous ending joining)および相同組換えによって、誘導された切断(複数可)を修復する。遺伝子編集に有用な例示的なエンドヌクレアーゼには、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN:zinc finger nuclease)、転写アクチベーター様エフェクター(TALE:transcription activator-like effector)ヌクレアーゼ、CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats:クラスター化規則的配置短回文反復配列)/Casヌクレアーゼ系(例えばCRISPR-Cas9)、メガヌクレアーゼまたはそれらの組合せが含まれる。遺伝子編集エンドヌクレアーゼを使用して、B細胞およびT細胞を含む免疫細胞において遺伝子または遺伝子発現を破壊する方法は、当該技術分野において公知であり、例えばPCT公開公報WO2015/066262号;WO2013/074916号;WO2014/059173号;Cheong et al., Nat. Comm. 2016 7:10934;Chu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2016 113:12514-12519において説明されており、そのうちの各々からの方法は、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0153】
ある特定の実施形態においては、宿主細胞の内因性遺伝子の発現は、阻害、ノックダウンまたはノックアウトされる。B細胞において阻害、ノックダウンまたはノックアウトされ得る内因性遺伝子の例には、IGH、IGκ、IGλまたはそれらの任意の組合せが含まれる。T細胞において阻害、ノックダウンまたはノックアウトされ得る内因性遺伝子の例には、TCR遺伝子(TRAまたはTRB)、HLA遺伝子(HLAクラスI遺伝子またはHLAクラスII遺伝子)、免疫チェックポイント分子(PD-L1、PD-L2、CD80、CD86、B7-H3、B7-H4、HVEM、アデノシン、GAL9、VISTA、CEACAM-1、CEACAM-3、CEACAM-5、PVRL2、PD-1、CTLA-4、BTLA、KIR、LAG3、TIM3、A2aR、CD244/2B4、CD160、TIGIT、LAIR-1またはPVRIG/CD112R)またはそれらの任意の組合せが含まれる。内因性遺伝子の発現は、遺伝子レベル、転写レベル、翻訳レベルまたはそれらの組合せにおいて阻害、ノックダウンまたはノックアウトされ得る。内因性遺伝子を阻害、ノックダウンまたはノックアウトする方法は、例えばRNA干渉剤(例えばsiRNA、shRNA、miRNA等)もしくは操作されたエンドヌクレアーゼ[例えばCRISPR/Casヌクレアーゼ系、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ]またはそれらの任意の組合せによって達成され得る。ある特定の実施形態においては、内因性B細胞遺伝子(例えばIGH、IGκまたはIGλ)は、操作されたエンドヌクレアーゼを介する等の、本開示のタンデム発現カセットの内因性B細胞遺伝子の遺伝子座への挿入によってノックアウトされる。ある特定の実施形態においては、内因性T細胞遺伝子(例えばTCR遺伝子、HLA遺伝子または免疫チェックポイント分子遺伝子)は、操作されたエンドヌクレアーゼを介する等の、本開示のタンデム発現カセットをコードするポリヌクレオチドの内因性T細胞遺伝子の遺伝子座への挿入によってノックアウトされる。
【0154】
また、本開示は、タンデム発現カセット改変宿主細胞の集団を含む組成物を提供する。ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセット改変宿主細胞の集団は、B細胞集団、T細胞集団、ナチュラルキラー細胞集団、リンパ球前駆体細胞集団、抗原提示細胞集団、樹状細胞集団、ランゲルハンス細胞集団、骨髄前駆体細胞集団、成熟骨髄細胞集団またはそれらの任意の組合せであり得る。さらに、特定の細胞種のタンデム発現カセット改変宿主細胞の集団は、1つまたは複数のサブタイプからなり得る。例えば、B細胞集団は、タンデム発現カセット改変ナイーブB細胞、形質細胞、制御性B細胞、辺縁帯B細胞、濾胞性B細胞、リンパ形質細胞性細胞、形質芽細胞、メモリーB細胞またはそれらの任意の組合せからなり得る。別の例においては、T細胞集団は、タンデム発現カセット改変CD4ヘルパーT細胞、CD8エフェクター(細胞傷害性)T細胞、ナイーブ(CD45 RA+、CCR7+、CD62L+、CD27+、CD45RO-)T細胞、セントラルメモリー(CD45RO、CD62L、CD8)T細胞、エフェクターメモリー(CD45RA+、CD45RO-、CCR7-、CD62L-、CD27-)T細胞、Tメモリー幹細胞、制御性T細胞、粘膜関連インバリアントT細胞(MAIT)、γδ(gd)、組織レジデントT細胞、ナチュラルキラーT細胞またはそれらの任意の組合せからなり得る。
【0155】
ある特定の実施形態においては、宿主細胞集団は、各々が同じタンデム発現カセットを発現する細胞からなる。他の実施形態においては、宿主細胞集団は、宿主細胞の2つまたはそれよりも多いサブ集団の混合物からなり、各サブ集団は、異なるタンデム発現カセットを発現する。
【0156】
ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセット改変宿主細胞、例えばB細胞またはT細胞を調製する場合、宿主細胞、例えばB細胞またはT細胞の増殖を促進する1つまたは複数の増殖因子サイトカインが、細胞培養物に添加され得る。サイトカインは、ヒトまたは非ヒトサイトカインであり得る。T細胞増殖を促進するために使用され得る例示的な増殖因子サイトカインには、IL-2、IL-15その他が含まれる。B細胞増殖を促進するために使用され得る例示的な増殖因子サイトカインには、CD40L、IL-2、IL-4、IL-15、IL-21、BAFFその他が含まれる。
【0157】
宿主細胞のタンデム発現カセットベクターによる遺伝子改変の前に、宿主細胞(例えばT細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞等)の供給源は、対象から得られ(例えば全血、末梢血単核球、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織)、これらから宿主細胞が、当該技術分野において公知の方法を使用して単離される。特定の宿主細胞サブセットは、抗体への親和性結合、フローサイトメトリーおよび/または免疫磁気選択等の公知の技術に従って収集され、公知の技術によって富化または枯渇され得る。富化および/または枯渇工程ならびにタンデム発現カセットの導入後、公知の技術または当業者に明らかであるその変形に従って、所望の改変宿主細胞のインビトロ拡大増殖を行ってもよい。
【0158】
宿主細胞におけるタンデム発現カセットによってコードされる受容体の発現は、T細胞結合、活性化または誘導の決定を含む、およびまた、抗原特異的であるT細胞応答の決定を含む、宿主細胞(例えばT細胞)活性をアッセイするための多数の当該技術分野において許容される方法のいずれかに従って機能的に特徴付けてもよい。例は、T細胞増殖、T細胞サイトカイン放出、抗原特異的T細胞刺激、CTL活性(例えば、事前にロードした標的細胞からの51Crまたはユーロピウム放出、標的細胞におけるカスパーゼ活性の誘導、標的細胞による乳酸デヒドロゲナーゼの細胞外放出を検出することによって)、T細胞表現型マーカー発現の変化およびT細胞機能の他の測定値の決定を含む。これらおよび同様のアッセイを行うための手技は、例えばLefkovits (Immunology Methods Manual: The Comprehensive Sourcebook of Techniques, 1998)において見出すことができる。また、Current Protocols in Immunology; Weir, Handbook of Experimental Immunology, Blackwell Scientific, Boston, MA (1986);Mishell and Shigii (eds.) Selected Methods in Cellular Immunology, Freeman Publishing, San Francisco, CA (1979);Green and Reed, Science 281:1309 (1998)およびそれらの中で引用される参考文献を参照されたい。サイトカインレベルは、例えばELISA、ELISPOT、細胞内サイトカイン染色、フローサイトメトリーおよびそれらの任意の組合せ(例えば細胞内サイトカイン染色およびフローサイトメトリー)を含む当該技術分野において公知の方法に従って決定され得る。免疫応答の抗原特異的誘発または刺激から生ずる免疫細胞増殖およびクローン拡大増殖は、末梢血細胞またはリンパ節からの細胞の試料中の循環リンパ球等のリンパ球を単離し、細胞を抗原により刺激し、トリチウム化チミジンの組込みまたはMTTアッセイ等の非放射性アッセイ等による等、サイトカイン産生、細胞増殖および/または細胞生存率を測定することによって決定され得る。
【0159】
ある特定の実施形態においては、CERを含むタンデム発現カセット改変宿主細胞は、標的細胞について約20~約1,500の食作用指数を有する。「食作用指数」は、培地中の標的細胞または粒子とタンデム発現カセット改変宿主細胞との懸濁液のインキュベーションの設定期間中の、タンデム発現カセット改変宿主細胞当たりの摂取された標的細胞または粒子の数をカウントすることによって決定される、形質導入された宿主細胞の食作用活性の測定値である。食作用指数は、[貪食された標的細胞の総数/カウントされたタンデム発現カセット改変細胞の総数(例えば食作用頻度)]x[タンデム発現カセット宿主細胞当たりの標的細胞または粒子染色の平均面積x100(例えばハイブリッドキャプチャー)]または[貪食された粒子の総数/カウントされたタンデム発現カセット改変宿主細胞の総数]x[貪食された粒子を含有するタンデム発現カセット改変宿主細胞数/カウントされたタンデム発現カセット細胞の総数]x100を掛けることによって計算され得る。ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセット改変細胞は、約30~約1,500;約40~約1,500;約50~約1,500;約75~約1,500;約100~約1,500;約200~約1,500;約300~約1,500;約400~約1,500;約500~約1,500;約20~約1,400;約30~約1,400;約40~約1,400;約50~約1,400;約100~約1,400;約200~約1,400;約300~約1,400;約400~約1,400;約500~約1,400;約20~約1,300;約30~約1,300;約40~約1,300;約50~約1,300;約100~約1,300;約200~約1,300;約300~約1,300;約400~約1,300;約500~約1,300;約20~約1,200;約30~約1,200;約40~約1,200;約50~約1,200;約100~約1,200;約200~約1,200;約300~約1,200;約400~約1,200;約500~約1,200;約20~約1,100;約30~約1,100;約40~約1,100;約50~約1,100;約100~約1,100;約200~約1,100;約300~約1,100;約400~約1,100;または約500~約1,100;約20~約1,000;約30~約1,000;約40~約1,000;約50~約1,000;約100~約1,000;約200~約1,000;約300~約1,000;約400~約1,000;または約500~約1,000;約20~約750;約30~約750;約40~約750;約50~約750;約100~約750;約200~約750;約300~約750;約400~約750;または約500~約750;約20~約500;約30~約500;約40~約500;約50~約500;約100~約500;約200~約500;または約300~約500の食作用指数を有する。さらなる実施形態においては、インキュベーション時間は、約2時間~約4時間、例えば約2時間、約3時間または約4時間である。またさらなる実施形態においては、タンデム発現カセット改変細胞は、切断型EGFRを形質導入した対照細胞よりも統計的に有意に高い食作用指数を示す。食作用指数は、フローサイトメトリーまたは蛍光顕微鏡による定量を含む、当該技術分野において公知の、かつ実施例およびPCT出願PCT/US2017/053553号(その全体を参照により本明細書に組み込む)においてさらに説明される方法を使用して計算され得る。
【0160】
宿主細胞は、動物、例としてヒト、霊長類、ウシ、ウマ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタまたはそれらの組合せからの宿主細胞であり得る。好ましい実施形態においては、動物は、ヒトである。宿主細胞は、健康な対象、または抗原の発現または過剰発現と関連付けられる疾患を有する対象から得てもよい。
【0161】
使用方法
一態様においては、本開示は、本明細書において説明する実施形態のいずれかに記載のタンデム発現カセットを宿主細胞に導入することと、宿主細胞においてCERおよびCAR/またはTCR結合タンパク質を発現することとを含む抗原特異的細胞溶解活性および貪食活性を細胞に与えるための方法を提供する。ある特定の実施形態においては、CERおよびCAR/またはTCR結合タンパク質は、同じ標的抗原に結合する。一部の実施形態においては、CERおよびCAR/またはTCRは、異なる標的抗原に結合する。ある特定の実施形態においては、本開示のタンデム発現カセットにより改変した宿主細胞は、標的細胞または標的細胞の部分を貪食することができる。したがって、本開示のタンデム発現カセットにより改変した細胞は、多数の様式:標的細胞の細胞溶解、標的細胞全体の貪食、標的細胞の部分の貪食またはそれらの任意の組合せを介するターゲティング細胞死滅能力を有し得る。
【0162】
別の態様においては、本開示は、本明細書において説明する実施形態のいずれかに記載のタンデム発現カセットを宿主細胞に導入することと、宿主細胞においてCERおよびCAR/またはTCR結合タンパク質を発現することとを含む細胞の抗原特異的細胞傷害活性を向上させるための方法であって、タンデム発現カセットの発現が、CAR/またはTCR結合タンパク質単独を発現する宿主細胞と比較して宿主細胞の細胞傷害活性を向上させる、方法を提供する。ある特定の実施形態においては、宿主細胞の細胞傷害活性は、CAR/またはTCR単独を発現する宿主細胞と比較して、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%またはそれよりも多く増大する。さらなる実施形態においては、タンデム発現カセットは、相乗的細胞傷害応答を与える。一部の実施形態においては、宿主細胞は、T細胞またはNK細胞である。宿主細胞、特にT細胞およびNK細胞等の免疫細胞の細胞傷害活性を測定する方法には、標的細胞死およびエフェクター細胞活性を測定する、クロミウム(51Cr)放出アッセイ、β-galまたはホタルルシフェラーゼ放出アッセイ、フローサイトメトリー法が含まれる(例えばExpert Rev. Vaccines, 2010, 9:601-616を参照のこと)。ある特定の実施形態においては、宿主細胞の細胞傷害活性は、宿主細胞への曝露後の標的細胞アポトーシス、例えばカスパーゼ3/7活性、乳酸デヒドロゲナーゼ放出を検出することによって測定され得る。
【0163】
別の態様においては、本明細書において提供される実施形態のいずれかに記載のタンデム発現カセットは、疾患、障害または望ましくない状態を患う対象を治療する方法において使用され得る。これらの方法の実施形態は、治療有効量の、本説明に記載の1つまたは複数のタンデム発現カセットを含む医薬組成物、1つまたは複数のタンデム発現カセットをコードするポリヌクレオチド、1つまたは複数のタンデム発現カセットを含むベクターまたは1つまたは複数のタンデム発現カセットを発現するように遺伝子改変された宿主細胞集団を対象に投与することを含む。
【0164】
本開示において提供されるタンデム発現カセットを発現する細胞により治療され得る疾患は、がん、自己免疫疾患および感染性疾患(ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、原生動物感染)を含む。養子免疫療法および遺伝子療法は、様々な種類のがん(Morgan et al., Science 314:126, 2006;Schmitt et al., Hum. Gene Ther. 20:1240, 2009;June, J. Clin. Invest. 117:1466, 2007)および感染性疾患(Kitchen et al., PLoS One 4:38208, 2009;Rossi et al., Nat. Biotechnol. 25:1444, 2007;Zhang et al., PLoS Pathog. 6:e1001018, 2010;Luo et al., J. Mol. Med. 89:903, 2011)のための有望な治療である。
【0165】
固形腫瘍および白血病を含む多種多様ながんは、本明細書において提供されるタンデム発現カセット組成物を使用する治療に適している。本明細書において説明する受容体、改変宿主細胞および組成物を使用して治療され得る例示的ながんには、乳房、前立腺および結腸の腺癌;全ての形態の気管支原性肺癌;骨髄性白血病;黒色腫;肝細胞腫;神経芽細胞腫;乳頭腫;アプドーマ;分離腫;鰓腫;悪性カルチノイド症候群;カルチノイド心疾患;ならびに癌腫(例えば、ウォーカー癌腫、基底細胞癌、基底扁平細胞癌、ブラウン・ピアース癌、腺管癌、エールリッヒ癌、クレブス2癌、メルケル細胞癌、粘液性癌、非小細胞肺癌、燕麦細胞癌、乳頭癌、硬性癌、細気管支癌、気管支原性肺癌、扁平上皮癌および移行上皮癌)が含まれる。本明細書において説明する受容体、改変宿主細胞および組成物を使用して治療され得る追加のがんの種類は、組織球性障害;悪性組織球症;白血病;ホジキン病;免疫増殖性小(immunoproliferative small);非ホジキンリンパ腫;形質細胞腫;多発性骨髄腫;形質細胞腫;細網内皮症;黒色腫;軟骨芽細胞腫;軟骨腫;軟骨肉腫;線維腫;線維肉腫;巨細胞腫;組織球腫;脂肪腫;脂肪肉腫;中皮腫;粘液腫;粘液肉腫;骨腫;骨肉腫;脊索腫;頭蓋咽頭腫;未分化胚細胞腫;過誤腫;間葉腫;中腎腫;筋肉腫;エナメル上皮腫;セメント質腫;歯牙腫;奇形腫;胸腺腫;絨毛性腫瘍を含む。さらに、また、以下の種類のがん:腺腫;胆管腫;真珠腫;円柱腫(cyclindroma);嚢胞腺癌;嚢胞腺腫;顆粒膜細胞腫;男性胚腫;肝細胞腫;汗腺腫;膵島腫瘍;ライディッヒ細胞腫;乳頭腫;セルトリ細胞腫;莢膜細胞腫;平滑筋腫(leimyoma);平滑筋肉腫;筋芽細胞腫;筋腫(myomma);筋肉腫;横紋筋腫;横紋筋肉腫;上衣腫;神経節腫;神経膠腫;髄芽腫;髄膜腫;神経鞘腫;神経芽細胞腫;神経上皮腫;神経線維腫;神経腫;傍神経節腫;非クローム親和性傍神経節腫は、本明細書において説明する受容体、改変宿主細胞および組成物を使用する治療に適することが企図される。また、治療され得るがんの種類は、被角血管腫;好酸球増加症を伴う血管リンパ様過形成;硬化性血管腫;血管腫症;グロムス血管腫;血管内皮腫;血管腫;血管外皮腫;血管肉腫;リンパ管腫;リンパ管筋腫;リンパ管肉腫;松果体腫;癌肉腫;軟骨肉腫;葉状嚢胞肉腫;線維肉腫;血管肉腫;平滑筋肉腫;白血肉腫;脂肪肉腫;リンパ管肉腫;筋肉腫;粘液肉腫;卵巣癌;横紋筋肉腫;肉腫;新生物;神経線維腫症(nerofibromatosis);および子宮頸部異形成を含む。
【0166】
本明細書において説明するタンデム発現カセット組成物を使用する治療に適する高増殖性障害の例には、B細胞リンパ腫[例として様々な形態のホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL:non-Hodgkins lymphoma)または中枢神経系リンパ腫]を含むB細胞がん、白血病[例として急性リンパ芽球性白血病(ALL:acute lymphoblastic leukemia)、慢性リンパ性白血病(CLL:chronic lymphocytic leukemia)、有毛細胞白血病、慢性骨髄性白血病のB細胞芽細胞化]および骨髄腫(例として多発性骨髄腫)が含まれる。本明細書において説明する受容体、改変宿主細胞および組成物を使用して治療され得る追加のB細胞がんには、小リンパ球性リンパ腫、B細胞性前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、脾性辺縁帯リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫、骨外性形質細胞腫、粘膜関連リンパ組織(MALT:mucosa-associated lymphoid tissue)の節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、結節性辺縁帯B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病、悪性化の可能性をもつB細胞増殖、リンパ腫様肉芽腫症および移植後リンパ増殖性障害が含まれる。
【0167】
感染性疾患は、感染病原体と関連付けられる感染性疾患を含み、様々な細菌[例えば病原性大腸菌(E. coli)、ネズミチフス菌(S. typhimurium)、緑膿菌(P. aeruginosa)、炭疽菌(B. anthracis)、ボツリヌス菌(C. botulinum)、ディフィシル菌(C. difficile)、ウェルシュ菌(C. perfringens)、ピロリ菌(H. pylori)、コレラ菌(V. cholerae)、リステリア属種(Listeria spp.)、リケッチア属種(Rickettsia spp.)、クラミジア属種(Chlamydia spp.)等]、マイコバクテリアおよび寄生生物(公知の任意の原生動物寄生性メンバーを含む)のいずれかを含む。感染性ウイルスには、真核細胞ウイルス、例としてアデノウイルス、ブニヤウイルス、ヘルペスウイルス、パポーバウイルス、パピローマウイルス(例えばHPV)、パラミクソウイルス、ピコルナウイルス、ラブドウイルス(例えば狂犬病)、オルトミクソウイルス(例えばインフルエンザ)、ポックスウイルス(例えばワクシニア)、レオウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス(例えばHIV)、フラビウイルス(例えばHCV、HBV)その他が含まれる。ある特定の実施形態においては、本開示に記載のタンデム発現カセットを含む組成物は、対象において持続的感染を確立することができる微生物による感染を治療するために使用される。
【0168】
対象を治療する方法は、有効量のタンデム発現カセット改変細胞(すなわち、タンデム発現カセットを発現する組換え細胞)を投与することを含む。タンデム発現カセット改変細胞は、対象にとって異種、同系、同種異系または自家であり得る。
【0169】
タンデム発現カセット改変細胞を含む医薬組成物は、医療分野の熟練者によって決定される通り、治療(または予防)されるべき疾患または状態に適切な様式において投与され得る。組成物の適切な用量、好適な持続期間および投与頻度は、患者の状態、サイズ、体重、体表面積、年齢、性別、疾患の種類および重症度、投与される特定の治療、活性成分の特定の形態、投与時間および方法ならびに同時に投与される他の薬物等の因子によって決定される。本開示は、タンデム発現カセット改変細胞および薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物を提供する。好適な賦形剤には、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロールその他およびそれらの組合せが含まれる。他の好適な点滴媒体は、生理食塩水、Normosol R(Abbott)、Plasma-Lyte A(Baxter)、水中の5%デキストロースまたは乳酸リンゲル液を含む任意の等張媒体製剤であり得る。
【0170】
医薬組成物中の治療有効量の細胞は、少なくとも1つの細胞(例えば1つのタンデム発現カセット改変T細胞)であるか、またはより典型的には10個の細胞よりも多く、例えば最高で10個、最高で10個、最高で10個の細胞、最高で10個の細胞、最高で1010個の細胞もしくは最高で1011個の細胞またはそれよりも多い。ある特定の実施形態においては、細胞は、約10個~約1010個の細胞/mの範囲内、好ましくは約10個~約10個の細胞/mの範囲内で投与される。特定の実施形態においては、タンデム発現カセット改変細胞は、少なくとも約1x10個の細胞、2x10個の細胞、3x10個の細胞、4x10個の細胞、5x10個の細胞、6x10個の細胞、7x10個の細胞、8x10個の細胞、9x10個の細胞、1x10個の細胞、2x10個の細胞、3x10個の細胞、4x10個の細胞、5x10個の細胞、6x10個の細胞、7x10個の細胞、8x10個の細胞、9x10個の細胞、1x10個の細胞、2x10個の細胞、3x10個の細胞、4x10個の細胞、5x10個の細胞、6x10個の細胞、7x10個の細胞、8x10個の細胞、9x10個の細胞、1x10個の細胞、2x10個の細胞、3x10個の細胞、4x10個の細胞、5x10個の細胞、6x10個の細胞、7x10個の細胞、8x10個の細胞、9x10個の細胞、1x1010個の細胞、2x1010個の細胞、3x1010個の細胞、4x1010個の細胞、5x1010個の細胞、6x1010個の細胞、7x1010個の細胞、8x1010個の細胞、9x1010個の細胞、1x1011個の細胞、2x1011個の細胞、3x1011個の細胞、4x1011個の細胞、5x1011個の細胞、6x1011個の細胞、7x1011個の細胞、8x1011個の細胞または9x1011個の細胞の量において投与される。細胞数は、組成物に含まれる細胞種はもちろん、組成物が意図される最終使用に依存する。例えば、タンデム発現カセットを含有するように改変された細胞を含む組成物は、約5%~約95%またはそれよりも多くのそのような細胞を含有する細胞集団を含む。ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセット改変細胞を含む組成物は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれよりも多くのそのような細胞を含む細胞集団を含む。本明細書において提供される使用のために、細胞は一般的に、1リットルもしくはそれ未満、500mlもしくはそれ未満、250mlもしくはそれ未満、または100mlもしくはそれ未満の容量において存在する。それゆえ、所望の細胞の密度は典型的に、10個の細胞/mlよりも高く、一般的には10個の細胞/mlよりも高く、一般的に10個の細胞/mlまたはそれよりも高い。細胞は、1回の点滴として、またはある時間範囲にわたる多数回の点滴において投与され得る。タンデム発現カセット改変細胞の反復点滴は、日、週、月またはさらには疾患または疾患活性の再発が存在する場合には年単位で分離され得る。臨床関連免疫細胞数は、累積的に10、10、10、10、1010または1011個の細胞に等しいか、またはこれを超える多数回点滴に配分され得る。本明細書において説明する組換え発現ベクターを含む宿主細胞の投与のために好ましい用量は、約10個の細胞/m、約5x10個の細胞/m、約10個の細胞/m、約5x10個の細胞/m、約10個の細胞/m、約5x10個の細胞/m、約1010個の細胞/m、約5x1010個の細胞/mまたは約1011個の細胞/mである。
【0171】
本明細書において説明するタンデム発現カセットを含む組成物、タンデム発現カセットを含むベクターまたはタンデム発現カセット改変細胞は、静脈内に、腹腔内に、鼻内に、腫瘍内に、骨髄中に、リンパ節中に、および/または脳脊髄液中に投与され得る。
【0172】
タンデム発現カセット組成物は、1つまたは複数の追加の治療剤と組み合わせて対象に投与され得る。本説明に記載のタンデム発現カセット組成物と組み合わせて投与され得る治療剤の例には、放射線療法、遺伝子操作細胞免疫療法(例えばT細胞、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、キメラ抗原受容体療法)、抗体療法、免疫チェックポイント分子阻害剤療法、UV光療法、電気パルス療法、高密度焦点式超音波療法、腫瘍溶解性ウイルス療法または医薬療法、例として化学療法剤、治療用ペプチド、ホルモン、アプタマー、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗炎症剤、小分子療法が含まれる。
【0173】
放射線療法には、体外照射療法(例えば従来型体外照射療法、定位放射線、3次元原体照射療法、強度変調放射線療法、強度変調振子照射療法、粒子線療法、陽子線療法およびオーガー療法)、近接照射療法、体系的放射性同位体療法、手術中の放射線療法またはそれらの任意の組合せが含まれる。
【0174】
本明細書において説明するタンデム発現カセット組成物と組み合わせた使用のための例示的な抗体には、リツキシマブ(rituxmab)、ペルツズマブ、トラスツズマブ、アレムツズマブ、イブリツモマブチウキセタン、ブレンツキシマブベドチン、セツキシマブ、ベバシズマブ、アブシキシマブ、アダリムマブ、アレファセプト、バシリキシマブ(basilizimab)、ベリムマブ、ベズロトクスマブ、カナキヌマブ、セルトリズマブペゴル、ダクリズマブ、デノスマブ、エファリズマブ、ゴリムマブ、オララツマブ、パリビズマブ、パニツムマブおよびトシリズマブが含まれる。
【0175】
本明細書において説明するタンデム発現カセット組成物と組み合わせた使用のためであり得る例示的な免疫チェックポイント分子の阻害剤には、PD-L1、PD-L2、CD80、CD86、B7-H3、B7-H4、HVEM、アデノシン、GAL9、VISTA、CEACAM-1、CEACAM-3、CEACAM-5、PVRL2、PD-1、CTLA-4、BTLA、KIR、LAG3、TIM3、A2aR、CD244/2B4、CD160、TIGIT、LAIR-1、PVRIG/CD112Rまたはそれらの任意の組合せをターゲティングするチェックポイント阻害剤が含まれる。ある特定の実施形態においては、免疫チェックポイント阻害剤は、抗体、ペプチド、RNAi剤または小分子であり得る。CTLA-4に特異的な抗体は、イピリムマブまたはトレメリムマブであり得る。PD-1に特異的な抗体は、ピディリズマブ、ニボルマブまたはペンブロリズマブであり得る。PD-L1に特異的な抗体は、デュルバルマブ、アテゾリズマブまたはアベルマブであり得る。
【0176】
化学療法剤には、有糸分裂または細胞分裂を阻害する非特異的細胞傷害剤、および腫瘍増殖、進行および転移に関与する特定の分子(例えば癌遺伝子)をターゲティングすることによってがん細胞の増殖および広がりを遮断する分子ターゲティング療法が含まれる。本明細書において説明するタンデム発現カセット組成物と組み合わせた使用のための例示的な非特異的化学療法剤は、アルキル化剤、プラチナベースの剤、細胞傷害剤、クロマチン機能の阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管阻害薬、DNA損傷剤、代謝拮抗薬(例として葉酸アンタゴニスト、ピリミジンアナログ、プリンアナログおよび糖修飾アナログ)、DNA合成阻害剤、DNA相互作用剤(例として挿入剤)およびDNA修復阻害剤を含み得る。
【0177】
本明細書において企図される組合せ療法における使用のために考えられる化学療法剤の例には、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、コビメチニブ、アナストロゾール[アリミデックス(登録商標)]、ビカルタミド[カソデックス(登録商標)]、硫酸ブレオマイシン[ブレノキサン(Blenoxane)(登録商標)]、ブスルファン[ミレラン(登録商標)]、ブスルファン注射[ブスルフェクス(登録商標)]、カペシタビン[ゼローダ(登録商標)]、N4-ペントキシカルボニル-5-デオキシ-5-フルオロシチジン、カルボプラチン[パラプラチン(登録商標)]、カルムスチン[BiCNU(登録商標)]、クロラムブシル[ロイケラン(登録商標)]、シスプラチン[プラチノール(登録商標)]、クラドリビン[ロイスタチン(登録商標)]、シクロホスファミド[シトキサン(登録商標)またはネオサル(Neosar)(登録商標)]、シタラビン、シトシンアラビノシド[シトサル(Cytosar)-U(登録商標)]、シタラビンリポソーム注射[デポサイト(登録商標)]、ダカルバジン[DTIC-Dome(登録商標)]、ダクチノマイシン[アクチノマイシンD、コスメゲン(Cosmegan)]、ダウノルビシン塩酸塩[セルビジン(登録商標)]、クエン酸ダウノルビシンリポソーム注射[ダウノゾーム(DaunoXome)(登録商標)]、デキサメタゾン、ドセタキセル[タキソテール(登録商標)]、ドキソルビシン塩酸塩[アドリアマイシン(登録商標)、ルベックス(Rubex)(登録商標)]、エトポシド[ベプシド(登録商標)]、リン酸フルダラビン[フルダラ(登録商標)]、5-フルオロウラシル[アドルシル(Adrucil)(登録商標)、エフデックス(Efudex)(登録商標)]、フルタミド[ユーレキシン(Eulexin)(登録商標)]、テザシチビン(tezacitibine)、ゲムシタビン(ジフルオロデオキシシチジン)、ヒドロキシ尿素[ハイドレア(登録商標)]、イダルビシン[イダマイシン(登録商標)]、イホスファミド[IFEX(登録商標)]、イリノテカン[カンプト(Camptosar)(登録商標)]、L-アスパラギナーゼ[ELSPAR(登録商標)]、ロイコボリンカルシウム、メルファラン[アルケラン(登録商標)]、6-メルカプトプリン[ピュリネソール(登録商標)]、メトトレキセート[フォレックス(Folex)(登録商標)]、ミトキサントロン[ノバントロン(登録商標)]、マイロターグ、パクリタキセル[タキソール(登録商標)]、フェニックス(イットリウム90/MX-DTPA)、ペントスタチン、ポリフェプロザン20カルムスチンインプラント[ギリアデル(登録商標)]、fdabraクエン酸タモキシフェン[ノルバデックス(登録商標)]、テニポシド[ブモン(Vumon)(登録商標)]、6-チオグアニン、チオテパ、チラパザミン[チラゾン(Tirazone)登録商標)]、トポテカン塩酸塩注射[ハイカムチン(Hycamptin)(登録商標)]、ビンブラスチン[ベルバン(登録商標)]、ビンクリスチン[オンコビン(登録商標)]、イブルチニブ、ベネトクラクス、クリゾチニブ、アレクチニブ、ブリガチニブ、セリチニブおよびビノレルビン[ナベルビン(登録商標)]が含まれる。
【0178】
本明細書において企図される組合せ療法における使用のための例示的なアルキル化剤には、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホネート、ニトロソ尿素およびトリアゼン:ウラシルマスタード[アミノウラシルマスタード(登録商標)、クロレタミナシル(Chlorethaminacil)(登録商標)、デメチルドパン(Demethyldopan)(登録商標)、デスメチルドパン(Desmethyldopan)(登録商標)、ヘマンタミン(Haemanthamine)(登録商標)、ノルドパン(Nordopan)(登録商標)、ウラシルナイトロジェンマスタード(登録商標)、ウラシロスト(Uracillost)(登録商標)、ウラシルモスタザ(Uracilmostaza)(登録商標)、ウラムスチン(Uramustin)(登録商標)、ウラムスチン(Uramustine)(登録商標)]、クロルメチン[マスタージェン(Mustargen)(登録商標)]、シクロホスファミド[シトキサン(登録商標)、ネオサル(登録商標)、クラフェン(Clafen)(登録商標)、エンドキサン(登録商標)、プロサイトクス(Procytox)(登録商標)、レビミューン(Revimmune)(商標)]、イホスファミド[ミトキサナ(Mitoxana)(登録商標)]、メルファラン[アルケラン(登録商標)]、クロラムブシル[ロイケラン(登録商標)]、ピポブロマン[アメデール(登録商標)、バーサイト(Vercyte)(登録商標)]、トリエチレンメラミン[ヘメル(登録商標)、ヘキサレン(Hexalen)(登録商標)、ヘキサスタット(Hexastat)(登録商標)]、トリエチレンチオホスホラミン、テモゾロミド[テモダール(登録商標)]、チオテパ[チオプレックス(Thioplex)(登録商標)]、ブスルファン[ブシルベックス(Busilvex)(登録商標)、ミレラン(登録商標)]、カルムスチン[BiCNU(登録商標)]、ロムスチン[CeeNU(登録商標)]、ストレプトゾシン[ザノサー(Zanosar)(登録商標)]およびダカルバジン[DTIC-Dome(登録商標)]が含まれる。本明細書において企図される組合せ療法における使用のための追加の例示的なアルキル化剤には、オキサリプラチン[エロキサチン(登録商標)];テモゾロミド[テモダール(Temodar)(登録商標)およびテモダール(Temodal)(登録商標)];ダクチノマイシン[アクチノマイシン-Dとしても公知、コスメゲン(登録商標)];メルファラン[L-PAM、L-サルコリシンおよびフェニルアラニンマスタードとしても公知、アルケラン(登録商標)];アルトレタミン[ヘキサメチルメラミン(HMM:hexamethylmelamine)としても公知、ヘキサレン(登録商標)];カルムスチン[BiCNU(登録商標)];ベンダムスチン[トレアンダ(登録商標)];ブスルファン[ブスルフェクス(登録商標)およびミレラン(登録商標)];カルボプラチン[パラプラチン(登録商標)];ロムスチン[CCNUとしても公知、CeeNU(登録商標)];シスプラチン[CDDPとしても公知、プラチノール(登録商標)およびプラチノール(登録商標)-AQ];クロラムブシル[ロイケラン(登録商標)];シクロホスファミド[シトキサン(登録商標)およびネオサル(登録商標)];ダカルバジン[DTIC、DICおよびイミダゾールカルボキサミドとしても公知、DTIC-Dome(登録商標)];アルトレタミン[ヘキサメチルメラミン(HMM)としても公知、ヘキサレン(登録商標)];イホスファミド[イフェクス(Ifex)(登録商標)];プレドニムスチン(Prednumustine);プロカルバジン[マチュレーン(Matulane)(登録商標)];メクロレタミン[ナイトロジェンマスタード、ムスチンおよびメクロレタミン塩酸塩としても公知、マスタージェン(登録商標)];ストレプトゾシン[ザノサー(登録商標)];チオテパ[チオホスホアミド(thiophosphoamide)、TESPAおよびTSPAとしても公知、チオプレックス(Thioplex)(登録商標)];シクロホスファミド[エンドキサン(登録商標)、シトキサン(登録商標)、ネオサル(登録商標)、プロシトクス(登録商標)、レビミューン(登録商標)];およびベンダムスチンHCl[トレアンダ(登録商標)]が含まれるが、これらに限定されない。
【0179】
本明細書において企図される組合せ療法における使用のための例示的なプラチナベースの剤には、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン、フェナントリプラチン(phenanthriplatin)およびトリプラチン四硝酸塩(triplatin tetranitrate)が含まれる。
【0180】
本明細書において説明するタンデム発現カセット組成物と組み合わせた使用のための例示的な分子ターゲティング阻害剤には、例えばホルモンアンタゴニスト、シグナル伝達阻害剤、遺伝子発現阻害剤(例えば翻訳阻害剤)、アポトーシスインデューサー、血管新生阻害剤(例えばVEGF経路阻害剤)、チロシンキナーゼ阻害剤(例えばEGF/EGFR経路阻害剤)、増殖因子阻害剤、GTPアーゼ阻害剤、セリン/トレオニンキナーゼ阻害剤、転写因子阻害剤、がんと関連付けられるドライバー変異の阻害剤、B-Raf阻害剤、MEK阻害剤、mTOR阻害剤、アデノシン経路阻害剤、EGFR阻害剤、PI3K阻害剤、BCL2阻害剤、VEGFR阻害剤、MET阻害剤、MYC阻害剤、BCR-ABL阻害剤、HER2阻害剤、H-RAS阻害剤、K-RAS阻害剤、PDGFR阻害剤、ALK阻害剤、ROS1阻害剤およびBTK阻害剤を含むがん細胞増殖および生存に関与する分子をターゲティングする小分子が含まれる。ある特定の実施形態においては、分子ターゲティング療法の使用は、分子標的に特異的な分子ターゲティング療法を、分子標的(例えばドライバー癌遺伝子)を有する腫瘍を有すると特定された対象に投与することを含む。ある特定の実施形態においては、分子標的は、活性化変異を有する。ある特定の実施形態においては、分子ターゲティング阻害剤と組み合わせたタンデム発現カセット改変細胞の使用は、抗腫瘍応答の大きさ、抗腫瘍応答の持続力またはこれらの両方を増大する。ある特定の実施形態においては、典型的な用量よりも低い分子ターゲティング療法が、タンデム発現カセット改変細胞と組み合わせて使用される。
【0181】
本明細書において説明するタンデム発現カセット組成物と組み合わせた使用のための例示的な血管新生阻害剤は、A6(Angstrom Pharmaceuticals)、ABT-510(Abbott Laboratories)、ABT-627(アトラセンタン)(Abbott Laboratories/Xinlay)、ABT-869(Abbott Laboratories)、アクチミド(Actimid)(CC4047、ポマリドマイド)(Celgene Corporation)、AdGVPEDF.11D(GenVec)、ADH-1[エキセリン(Exherin)](Adherex Technologies)、AEE788(Novartis)、AG-013736(アキシチニブ)(Pfizer)、AG3340(プリノマスタット)(Agouron Pharmaceuticals)、AGX1053(AngioGenex)、AGX51(AngioGenex)、ALN-VSP(ALN-VSP O2)(Alnylam Pharmaceuticals)、AMG386(Amgen)、AMG706(Amgen)、アパチニブ(Apatinib)(YN968D1)(Jiangsu Hengrui Medicine)、AP23573(リダフォロリムス/MK8669)(Ariad Pharmaceuticals)、AQ4N(Novavea)、ARQ197(ArQule)、ASA404(Novartis/Antisoma)、アチプリモド(Callisto Pharmaceuticals)、ATN-161(Attenuon)、AV-412(Aveo Pharmaceuticals)、AV-951(Aveo Pharmaceuticals)、アバスチン(ベバシズマブ)(Genentech)、AZD2171[セディラニブ/レセンチン(Recentin)](AstraZeneca)、BAY 57-9352[テラチニブ(Telatinib)](Bayer)、BEZ235(Novartis)、BIBF1120(Boehringer Ingelheim Pharmaceuticals)、BIBW2992(Boehringer Ingelheim Pharmaceuticals)、BMS-275291(Bristol-Myers Squibb)、BMS-582664(ブリバニブ)(Bristol-Myers Squibb)、BMS-690514(Bristol-Myers Squibb)、カルシトリオール、CCI-779(トーリセル)(Wyeth)、CDP-791(ImClone Systems)、セフラトニン(Ceflatonin)(ホモハリントニン/HHT)(ChemGenex Therapeutics)、セレブレックス(セレコキシブ)(Pfizer)、CEP-7055(Cephalon/Sanofi)、CHIR-265(Chiron Corporation)、NGR-TNF、COL-3[メタスタット(Metastat)](Collagenex Pharaceuticals)、コンブレタスタチン(Oxigene)、CP-751,871(フィギツムマブ)(Pfizer)、CP-547,632(Pfizer)、CS-7017(第一三共)、CT-322[アンジオセプト(Angiocept)](Adnexus)、クルクミン、ダルテパリン(フラグミン)(Pfizer)、ジスルフィラム(Antabuse)、E7820(エーザイ株式会社)、E7080(エーザイ株式会社)、EMD 121974(シレンジタイド)(EMD Pharmaceuticals)、ENMD-1198(EntreMed)、ENMD-2076(EntreMed)、エンドスター(Endostar)(Simcere)、アービタックス(ImClone/Bristol-Myers Squibb)、EZN-2208(Enzon Pharmaceuticals)、EZN-2968(Enzon Pharmaceuticals)、GC1008(Genzyme)、ゲニステイン、GSK1363089[フォレチニブ(Foretinib)](GlaxoSmithKline)、GW786034(パゾパニブ)(GlaxoSmithKline)、GT-111(Vascular Biogenics Ltd.)、IMC-1121B(ラムシルマブ)(ImClone Systems)、IMC-18F1(ImClone Systems)、IMC-3G3(ImClone LLC)、INCB007839(Incyte Corporation)、INGN 241(Introgen Therapeutics)、イレッサ(ZD1839/ゲフィチニブ)、LBH589[ファリダク(Faridak)/パノビノスタット(Panobinostst)](Novartis)、ルセンティス(ラニビズマブ)(Genentech/Novartis)、LY317615(エンザスタウリン)(Eli Lilly and Company)、マクジェン(ペガプタニブ)(Pfizer)、MEDI522[アベグリン(Abegrin)](MedImmune)、MLN518(タンデュチニブ)(Millennium)、ネオバスタット(Neovastat)(AE941/ベネフィン)(Aeterna Zentaris)、ネクサバール(Bayer/Onyx)、NM-3(Genzyme Corporation)、ノスカピン(Cougar Biotechnology)、NPI-2358(Nereus Pharmaceuticals)、OSI-930(OSI)、パロミド(Palomid)529(Paloma Pharmaceuticals,Inc.)、パンゼム(Panzem)カプセル(2ME2)(EntreMed)、パンゼムNCD(2ME2)(EntreMed)、PF-02341066(Pfizer)、PF-04554878(Pfizer)、PI-88(Progen Industries/Medigen Biotechnology)、PKC412(Novartis)、ポリフェノンE(緑茶抽出物)(Polypheno E International,Inc)、PPI-2458(Praecis Pharmaceuticals)、PTC299(PTC Therapeutics)、PTK787(バタラニブ)(Novartis)、PXD101(ベリノスタット)(CuraGen Corporation)、RAD001(エベロリムス)(Novartis)、RAF265(Novartis)、レゴラフェニブ(BAY73-4506)(Bayer)、レブリミド(Celgene)、レタアネ(Retaane)(Alcon Research)、SN38(リポソーム製剤)(Neopharm)、SNS-032(BMS-387032)(Sunesis)、SOM230(パシレオチド)(Novartis)、スクアラミン(Genaera)、スラミン、スーテント(Pfizer)、タルセバ(Genentech)、TB-403(Thrombogenics)、テムポスタチン(Tempostatin)(Collard Biopharmaceuticals)、テトラチオモリブデート(Sigma-Aldrich)、TG100801(TargeGen)、サリドマイド(Celgene Corporation)、チンザパリンナトリウム、TKI258(Novartis)、TRC093(Tracon Pharmaceuticals Inc.)、VEGF Trap(アフリバーセプト)(Regeneron Pharmaceuticals)、VEGF Trap-Eye(Regeneron Pharmaceuticals)、ベグリン(Veglin)(VasGene Therapeutics)、ボルテゾミブ(Millennium)、XL184(Exelixis)、XL647(Exelixis)、XL784(Exelixis)、XL820(Exelixis)、XL999(Exelixis)、ZD6474(AstraZeneca)、ボリノスタット(Merck)およびZSTK474を含み得るが、これらに限定されない。
【0182】
本明細書において説明するタンデム発現カセット組成物と組み合わせた使用のための例示的な血管内皮増殖因子(VEGF:Vascular Endothelial Growth Factor)受容体阻害剤は、ベバシズマブ[アバスチン(登録商標)]、アキシチニブ[インライタ(登録商標)];ブリバニブアラニネート[BMS-582664、(S)-((R)-1-(4-(4-フルオロ-2-メチル-1H-インドール-5-イルオキシ)-5-メチルピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-6-イルオキシ)プロパン-2-イル)2-アミノプロパノエート];ソラフェニブ[ネクサバール(登録商標)];パゾパニブ[ヴォトリエント(登録商標)];リンゴ酸スニチニブ[スーテント(登録商標)];セディラニブ(AZD2171、CAS 288383-20-1);バラガテフ(Vargatef)(BIBF1120、CAS 928326-83-4);フォレチニブ(GSK1363089);テラチニブ(BAY57-9352、CAS 332012-40-5);アパチニブ(YN968D1、CAS 811803-05-1);イマチニブ[グリベック(登録商標)];ポナチニブ(AP24534、CAS 943319-70-8);チボザニブ(AV951、CAS 475108-18-0);レゴラフェニブ(BAY73-4506、CAS 755037-03-7);バタラニブ二塩酸塩(PTK787、CAS 212141-51-0);ブリバニブ(BMS-540215、CAS 649735-46-6);バンデタニブ[カプレルサ(登録商標)またはAZD6474];モテサニブ二リン酸塩[AMG706、CAS 857876-30-3、PCT公開公報WO02/066470号において説明されているN-(2,3-ジヒドロ-3,3-ジメチル-1H-インドール-6-イル)-2-[(4-ピリジニルメチル)アミノ]-3-ピリジンカルボキサミド];ドビチニブ二乳酸(Dovitinib dilactic acid)(TKI258、CAS 852433-84-2);リンファニブ(Linfanib)(ABT869、CAS 796967-16-3);カボザンチニブ(XL184、CAS 849217-68-1);レスタウルチニブ(CAS 111358-88-4);N-[5-[[[5-(1,1-ジメチルエチル)-2-オキサゾリル]メチル]チオ]-2-チアゾリル]-4-ピペリジンカルボキサミド(BMS38703、CAS 345627-80-7);(3R,4R)-4-アミノ-1-((4-((3-メトキシフェニル)アミノ)ピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-5-イル)メチル)ピペリジン-3-オール(BMS690514);N-(3,4-ジクロロ-2-フルオロフェニル)-6-メトキシ-7-[[(3aα,5β,6aα)-オクタヒドロ-2-メチルシクロペンタ[c]ピロール-5-イル]メトキシ]-4-キナゾリンアミン(XL647、CAS 781613-23-8);4-メチル-3-[[1-メチル-6-(3-ピリジニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル]アミノ]-N-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-ベンザミド(BHG712、CAS 940310-85-0);およびアフリバーセプト[アイリーア(登録商標)]を含み得るが、これらに限定されない。
【0183】
本明細書において説明するタンデム発現カセット組成物と組み合わせた使用のための例示的なEGF経路阻害剤は、チルホスチン46、EKB-569、エルロチニブ[タルセバ(登録商標)]、ゲフィチニブ[イレッサ(登録商標)]、アービタックス、ニモツズマブ、ラパチニブ[タイケルブ(登録商標)]、セツキシマブ(抗EGFR mAb)、188Re-標識ニモツズマブ(抗EGFR mAb)およびWO97/02266、EP0564409、WO99/03854、EP0520722、EP0566226、EP0787722、EP0837063、米国特許第5,747,498号、WO98/10767、WO97/30034、WO97/49688、WO97/38983およびWO96/33980において一般的かつ特異的に開示されている化合物を含み得るが、これらに限定されない。例示的なEGFR抗体には、セツキシマブ[アービタックス(登録商標)];パニツムマブ[ベクチビックス(登録商標)];マツズマブ(EMD-72000);トラスツズマブ[ハーセプチン(登録商標)];ニモツズマブ(hR3);ザルツムマブ;TheraCIM h-R3;MDX0447(CAS 339151-96-1);およびch806(mAb-806、CAS 946414-09-1)が含まれるが、これらに限定されない。例示的な上皮増殖因子受容体(EGFR:Epidermal growth factor receptor)阻害剤には、オシメルチニブ[タグリッソ(登録商標)]、エルロチニブ塩酸塩[タルセバ(登録商標)]、ゲフィチニブ[イレッサ(登録商標)];N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[[(3’’S’’)-テトラヒドロ-3-フラニル]オキシ]-6-キナゾリニル]-4(ジメチルアミノ)-2-ブテンアミド、トボック(Tovok)(登録商標);バンデタニブ[カプレルサ(登録商標)];ラパチニブ[タイケルブ(登録商標)];(3R,4R)-4-アミノ-1-((4-((3-メトキシフェニル)アミノ)ピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-5-イル)メチル)ピペリジン-3-オール(BMS690514);カネルチニブ二塩酸塩(CI-1033);6-[4-[(4-エチル-1-ピペラジニル)メチル]フェニル]-N-[(1R)-1-フェニルエチル]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン(AEE788、CAS 497839-62-0);ムブリチニブ(TAK165);ペリチニブ(Pelitinib)(EKB569);アファチニブ(BIBW2992);ネラチニブ(HKI-272);N-[4-[[1-[(3-フルオロフェニル)メチル]-1H-インダゾール-5-イル]アミノ]-5-メチルピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-6-イル]-カルバミン酸、(3S)-3-モルホリニルメチルエステル(BMS599626);N-(3,4-ジクロロ-2-フルオロフェニル)-6-メトキシ-7-[[(3aα,5β,6aα)-オクタヒドロ-2-メチルシクロペンタ[c]ピロール-5-イル]メトキシ]-4-キナゾリンアミン(XL647、CAS 781613-23-8);および4-[4-[[(1R)-1-フェニルエチル]アミノ]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-イル]-フェノール(PKI166、CAS 187724-61-4)が含まれるが、これらに限定されない。
【0184】
本明細書において説明するタンデム発現カセット組成物と組み合わせた使用のための例示的なmTOR阻害剤は、ラパマイシン[ラパミューン(登録商標)]ならびにそのアナログおよび誘導体;SDZ-RAD;テムシロリムス[トーリセル(登録商標);CCI-779としても公知];リダフォロリムス[デフォロリムス(deferolimus)として以前に公知、(1R,2R,4S)-4-[(2R)-2[(1R,9S,12S,15R,16E,18R,19R,21R,23S,24E,26E,28Z,30S,32S,35R)-1,18-ジヒドロキシ-19,30-ジメトキシ-15,17,21,23,29,35-ヘキサメチル-2,3,10,14,20-ペンタオキソ-11,36-ジオキサ-4-アザトリシクロ[30.3.1.04,9]ヘキサトリアコンタ-16,24,26,28-テトラエン-12-イル]プロピル]-2-メトキシシクロヘキシルジメチルホスフィネート、AP23573およびMK8669としても公知であり、PCT公開公報WO03/064383号において説明されている];エベロリムス[アフィニトール(登録商標)またはRAD001];ラパマイシン[AY22989、シロリムス(登録商標)];シマピモド(Simapimod)(CAS 164301-51-3);(5-{2,4-ビス[(3S)-3-メチルモルホリン-4-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-イル}-2-メトキシフェニル)メタノール(AZD8055);2-アミノ-8-[トランス-4-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル]-6-(6-メトキシ-3-ピリジニル)-4-メチル-ピリド[2,3-d]ピリミジン-7(8H)-オン(PF04691502、CAS 1013101-36-4);およびN-[1,4-ジオキソ-[[4-(4-オキソ-8-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-2-イル)モルホリニウム-4-イル]メトキシ]ブチル]-L-アルギニルグリシル-L-α-アスパルチルL-セリン-,分子内塩(SF1126、CAS 936487-67-1)を含み得るが、これらに限定されない。
【0185】
本明細書において説明するタンデム発現カセット組成物と組み合わせた使用のための例示的なホスホイノシチド3キナーゼ(PI3K:Phosphoinositide 3-kinase)阻害剤は、4-[2-(1H-インダゾール-4-イル)-6-[[4-(メチルスルホニル)ピペラジン-1-イル]メチル]チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル]モルホリン(GDC 0941としても公知であり、PCT公開公報WO09/036082号およびWO09/055730号において説明されている);2-メチル-2-[4-[3-メチル-2-オキソ-8-(キノリン-3-イル)-2,3-ジヒドロイミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]フェニル]プロピオニトリル(BEZ 235またはNVP-BEZ 235としても公知であり、PCT公開公報WO06/122806号において説明されている);4-(トリフルオロメチル)-5-(2,6-ジモルホリノピリミジン-4-イル)ピリジン-2-アミン(BKM120またはNVP-BKM120としても公知であり、PCT公開公報WO2007/084786号において説明されている);トザセルチブ(Tozasertib)(VX680またはMK-0457、CAS 639089-54-6);(5Z)-5-[[4-(4-ピリジニル)-6-キノリニル]メチレン]-2,4-チアゾリジンジオン(GSK1059615、CAS 958852-01-2);(1E,4S,4aR,5R,6aS,9aR)-5-(アセチルオキシ)-1-[(ジ-2-プロペニルアミノ)メチレン]-4,4a,5,6,6a,8,9,9a-オクタヒドロ-11-ヒドロキシ-4-(メトキシメチル)-4a,6a-ジメチル-シクロペンタ[5,6]ナフト[1,2-c]ピラン-2,7,10(1H)-トリオン(PX866、CAS 502632-66-8);および8-フェニル-2-(モルホリン-4-イル)-クロメン-4-オン(LY294002、CAS 154447-36-6)を含み得るが、これらに限定されない。例示的なタンパク質キナーゼB(PKB:Protein Kinase B)またはAKT阻害剤には、8-[4-(1-アミノシクロブチル)フェニル]-9-フェニル-1,2,4-トリアゾロ[3,4-f][1,6]ナフチリジン-3(2H)-オン(MK-2206、CAS 1032349-93-1);ペリホシン(KRX0401);4-ドデシル-N-1,3,4-チアジアゾール-2-イル-ベンゼンスルホンアミド(PHT-427、CAS 1191951-57-1);4-[2-(4-アミノ-1,2,5-オキサジアゾール-3-イル)-1-エチル-7-[(3S)-3-ピペリジニルメトキシ]-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-4-イル]-2-メチル-3-ブチン-2-オール(GSK690693、CAS 937174-76-0);8-(1-ヒドロキシエチル)-2-メトキシ-3-[(4-メトキシフェニル)メトキシ]-6H-ジベンゾ[b,d]ピラン-6-オン(パロミド529、P529またはSG-00529);トリシルビン(Tricirbine)(6-アミノ-4-メチル-8-(β-D-リボフラノシル)-4H,8H-ピロロ[4,3,2-デ]ピリミド[4,5-c]ピリダジン);(αS)-α-[[[5-(3-メチル-1H-インダゾール-5-イル)-3-ピリジニル]オキシ]メチル]-ベンゼンエタンアミン(A674563、CAS 552325-73-2);4-[(4-クロロフェニル)メチル]-1-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジンアミン(CCT128930、CAS 885499-61-6);4-(4-クロロフェニル)-4-[4-(1Hピラゾール-4-イル)フェニル]-ピペリジン(AT7867、CAS 857531-00-1);およびアルケキシン(Archexin)(RX-0201、CAS 663232-27-7)が含まれるが、これらに限定されない。
【0186】
ある特定の実施形態においては、CER改変細胞と組み合わせて使用されるチロシンキナーゼ阻害剤は、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK:anaplastic lymphoma kinase)阻害剤である。例示的なALK阻害剤には、クリゾチニブ、セリチニブ、アレクチニブ、ブリガチニブ、ダランテルセプト(dalantercept)、エントレクチニブ(entrectinib)およびロルラチニブが含まれる。
【0187】
タンデム発現カセット改変細胞が1つまたは複数の追加の療法と組み合わせて投与されるある特定の実施形態においては、1つまたは複数の追加の療法は、別の方法で単独療法として投与された場合に治療量未満であると考えられ得る用量において投与され得る。そのような実施形態においては、1つまたは複数の追加の療法がより低い用量において投与され得るように、タンデム発現カセットは、相加的または相乗的効果を提供し得る。組合せ療法は、追加の療法の前(例えば追加の療法の1日~30日前またはそれよりも前)の、追加の療法と同時(同日)の、または追加の療法の後(例えば追加の療法の1日~30日後またはそれよりも後)の本明細書において説明するタンデム発現カセット組成物の投与を含む。ある特定の実施形態においては、タンデム発現カセット改変細胞は、1つまたは複数の追加の療法の投与後に投与される。さらなる実施形態においては、タンデム発現カセット改変細胞は、1つまたは複数の追加の療法の投与の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30日後に投与される。またさらなる実施形態においては、タンデム発現カセット改変細胞は、1つまたは複数の追加の療法の投与後4週間以内、3週間以内、2週間以内または1週間以内に投与される。1つまたは複数の追加の療法が多数の用量を含む場合、タンデム発現カセット改変細胞は、1つまたは複数の追加の療法の初回用量後に、1つまたは複数の追加の療法の最終用量後に、または1つまたは複数の追加の療法の多数の用量間において投与され得る。
【0188】
ある特定の実施形態においては、本開示の方法は、枯渇工程を含む。タンデム発現カセット改変細胞を対象から除去するための枯渇工程は、対象への毒性を軽減するために、治療利益に十分な時間後に行い得る。そのような実施形態においては、タンデム発現カセットを含むベクターは、誘導性自殺遺伝子、例としてiCASP9、誘導性FasまたはHSV-TKを含み得る。同様に、ベクターは、関連付けられるモノクローナル抗体(mAb)、例えばCD20についてのリツキシマブまたはEGFRについてのセツキシマブの点滴を通して、形質導入された細胞の枯渇を促進する公知の細胞表面抗原、例としてCD20または切断型EGFR(配列番号82)の発現のために設計され得る。また、成熟リンパ球の表面上に存在するCD52をターゲティングするアレムツズマブは、形質導入されたB細胞、T細胞またはナチュラルキラー細胞を枯渇するために使用され得る。
【0189】
本開示の組成物および方法によって治療され得る対象には、動物、例としてヒト、霊長類、ウシ、ウマ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、モルモットまたはブタが含まれる。対象は、男性であっても、女性であってもよく、幼児、若年、青年、成人および老年の対象を含む任意の好適な年齢であり得る。
【実施例
【0190】
実施例1
タンデム発現カセットの構築
ホスファチジルセリン結合タンパク質Tim4の細胞外ドメインとTim4膜貫通ドメインとを含むポリヌクレオチドを、TLR4の細胞内シグナル伝達ドメインに融合して、配列番号97のアミノ酸配列をコードするキメラ貪食受容体「CER5」を創出した。ホスファチジルセリン結合タンパク質Tim4の細胞外ドメインとTim4膜貫通ドメインとを含むポリヌクレオチドを、TLR5の細胞内シグナル伝達ドメインに融合して、配列番号98のアミノ酸配列をコードするキメラ貪食受容体「CER19」を創出した。ホスファチジルセリン結合タンパク質Tim4の細胞外ドメインを含むポリヌクレオチドは、配列番号99のアミノ酸配列をコードするキメラ貪食受容体「CER21」が創出されるように、Tim4膜貫通ドメインおよびTLR8細胞内シグナル伝達ドメインであった。ホスファチジルセリン結合タンパク質Tim4の細胞外ドメインとTim4膜貫通ドメインとを含むポリヌクレオチドを、NFAM1の細胞内シグナル伝達ドメインに融合して、配列番号100のアミノ酸配列をコードするキメラ貪食受容体「CER25」を創出した。ホスファチジルセリン結合タンパク質Tim4の細胞外ドメインとTim4膜貫通ドメインとを含むポリヌクレオチドを、TLR2の細胞内シグナル伝達ドメインに融合して、配列番号101のアミノ酸配列をコードするキメラ貪食受容体「CER27」を創出した。ホスファチジルセリン結合タンパク質Tim4の細胞外ドメインとTim4膜貫通ドメインとを含むポリヌクレオチドを、Traf6の細胞内シグナル伝達ドメインに融合して、配列番号102のアミノ酸配列をコードするキメラ貪食受容体「CER29」を創出した。ホスファチジルセリン結合タンパク質Tim4の細胞外ドメインとTim4膜貫通ドメインとを含むポリヌクレオチドを、Traf3の細胞内シグナル伝達ドメインに融合して、配列番号103のアミノ酸配列をコードするキメラ貪食受容体「CER31」を創出した。
【0191】
HPV16 E7特異的TCRのTCRβ鎖をコードするポリヌクレオチドおよびTCRαをコードするポリヌクレオチド(PCT公開公報WO2015/184228号を参照のこと)を、それらの間にP2A自己切断ペプチドの配列を使用して融合した。TCR Vαドメインは、配列番号94のアミノ酸配列を含み、TCR Vβ領域は、配列番号92のアミノ酸配列を含む。Cαドメインは、システイン置換、および12、14および15位におけるLVL置換を含み、配列番号95のアミノ酸配列を含む。また、Cβは、システイン置換を含み、配列番号93のアミノ酸配列を含む。コードされるHPV16 E7特異的TCRは、配列番号90のアミノ酸配列を含む。この実施例において説明するタンデム発現コンストラクトのアミノ酸配列を、表2に提供する。
【0192】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【0193】
選択されたCERポリヌクレオチドおよびHPV16 E7 TCRポリヌクレオチドを、それらの間にT2A配列(配列番号68のアミノ酸配列をコードする)を伴って同じpLentiレンチウイルスベクターに挿入した(図1A~1Gを参照のこと)。ヒトドナーから静脈穿刺により末梢血を収集し、リンパ球分離媒体を使用する密度勾配遠心分離によってヒト末梢血単核球(PBMC:peripheral blood mononuclear cell)を単離した。市販されている単離キットを使用してPBMCからCD8+T細胞を富化し、完全細胞増殖培地において抗CD3および抗CD28により活性化した。CER-HPV16 E7 TCRの組合せを発現する50μlのウイルスベクターを、0.5mlの完全細胞増殖培地中に希釈し、CD8+T細胞に添加した。その後、形質導入したCD8+T細胞を、32℃の事前に温めた遠心分離機において270xg rpmにて1時間遠心分離した。CD8+T細胞を37℃において24時間インキュベートした。T細胞を完全細胞増殖培地においてさらなる72時間拡大増殖させ、ビーズを除去し、5日間拡大増殖させ、その後、機能アッセイに利用した。
【0194】
実施例2
CER-TCRタンデム発現カセットを形質導入したCD8 T細胞は抗原特異的細胞溶解活性および食作用活性を示す
活性化カスパーゼ3/7認識モチーフを切断に際して蛍光を発する赤色試薬とカップリングするカスパーゼ3/7アポトーシス試薬[IncuCyte(登録商標)]を使用して、タンデム発現カセット形質導入CD8+T細胞の細胞傷害活性を検出した。蛍光顕微鏡を使用して蛍光シグナルを測定した。形質導入CD8+T細胞を、HPV16 E7+頭頸部扁平上皮癌細胞(SCC152)と1:1の比において共培養し、カスパーゼ3/7アポトーシス試薬を共培養物に添加した。CER21-HPV16 E7 TCRタンデム発現カセットを含むCD8+T細胞は、SCC152細胞に対する細胞傷害活性を示す(図2を参照のこと)。CER21-HPV16 E7 TCRタンデム発現カセットを形質導入したCD8+T細胞による細胞傷害応答は、6時間まででHPV16 E7 TCR単独を含むCD8+T細胞よりも指数関数的に高いように見える(図3を参照のこと)。CER21-HPV16 E7 TCRタンデム発現カセット、CER29-HPV16 E7 TCRタンデム発現カセットまたはCER31-HPV16 E7 TCRタンデム発現カセットを形質導入したCD8+T細胞を、1:1の標的:エフェクター細胞比においてSCC152細胞と共培養した。カスパーゼ3/7アポトーシス試薬を、共培養物に添加し、蛍光を測定することによって細胞傷害活性を経時的に測定した(図4および5を参照のこと)。対照試料は、HPV16 E7 TCR単独を形質導入したCD8+T細胞または模擬形質導入T細胞であった。
【0195】
タンデム発現カセット形質導入CD8+T細胞の食作用活性を、タンデム発現カセット形質導入CD8+T細胞をSCC152細胞と1:1の比において6時間共培養することによって検出した。KEYENCE BZ-X710蛍光顕微鏡、20X対物レンズおよびハイブリッドキャプチャーソフトウェアを使用して、食作用事象を可視化および定量した。CER21-HPV16 E7 TCR、CER29-HPV16 E7 TCRまたはCER31-HPV16 E7 TCRタンデムカセットを形質導入したCD8+T細胞は、SCC152細胞に対して食作用を示すことができた(図6および7を参照のこと)。また、Rac1阻害剤NSC23766(50μM)を、共培養実験に添加し、インビトロ食作用を測定した。Rac1阻害剤による処理は、CER21-HPV16 E7 TCR、CER29-HPV16 E7 TCRまたはCER31-HPV16 E7 TCR形質導入T細胞によるSCC152細胞の貪食が、Rac1依存的様式において起こったことを明らかにした(図8~10を参照のこと)。図11および12は、CER21-HPV16 E7 TCRタンデム発現カセットを形質導入したCD8+T細胞が、ビオチンをコンジュゲートしたホスファチジルセリンによりコーティングされたストレプトアビジンコーティングしたラテックスビーズを貪食したことを示す。約30分間のインキュベーション後、ホスファチジルセリンコーティングしたビーズは、CER21-HPV16 E7 TCR+T細胞の内側で可視化され得る。
【0196】
CER21-HPV16 E7 TCRタンデム発現カセットを形質導入したCD8+T細胞のサイトカイン応答を、SCC152細胞との共培養実験中に細胞上清を試料採取することによって測定し、CER21-HPV16 E7 TCR+T細胞が、IFNγ応答によって測定される抗原特異的エフェクター機能を示すことを示した(図14を参照のこと)。
【0197】
実施例3
CERによって特異的に誘導されるT細胞の食作用活性
CER改変T細胞の標的細胞を貪食し、貪食シグナル伝達事象を総括する能力を、共培養アッセイにおいて査定した。T細胞に、HPV E7特異的TCR(配列番号158を含むポリペプチド配列)をコードする核酸、またはHPV E7特異的TCR+CER29(配列番号169を含むポリペプチド配列)をコードするタンデム発現カセットを形質導入した。pHrodo標識HPV+SCC152頭頸部がん細胞を、模擬形質導入T細胞、HPV E7 TCR形質導入T細胞またはHPV E7 TCR/CER29形質導入T細胞とコインキュベートした。食作用をFACSにより分析し、これは、pHrodo陽性により二重に染色されたcell-trace violet標識E7 TCR/CER29-T細胞の大集団が存在することを示した(図15Aを参照のこと)。FACSデータの定量により、模擬形質導入T細胞とE7 TCR形質導入T細胞との間に差は示されなかった(図15Bを参照のこと)。
【0198】
上記に説明する様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を提供することができる。非限定的に2018年3月28日出願の米国仮特許出願第62/649,499号を含む、本明細書において参照および/または出願データシートに列挙される全ての米国特許、米国特許出願公開公報、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許刊行物は、その全体を参照により本明細書に組み込む。実施形態の態様は、様々な特許、出願および刊行物の概念を用いて、またさらなる実施形態を提供するために必要な場合、改変され得る。
【0199】
これらおよび他の変化は、上記に詳述される説明に照らして実施形態についてなされ得る。一般的に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を、明細書および特許請求の範囲において開示されている特定の実施形態に限定すると解釈されるべきではないが、そのような特許請求の範囲が権利を与える均等物の全範囲に沿った全ての可能な実施形態を含むと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
【配列表】
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