(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】単一サンプル中の低濃度及び高濃度タンパク質の濃度を決定する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20240904BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20240904BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
G01N33/53 D
G01N33/543 501A
G01N33/543 501D
C12Q1/06
(21)【出願番号】P 2020573136
(86)(22)【出願日】2019-08-28
(86)【国際出願番号】 US2019048456
(87)【国際公開番号】W WO2020047026
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-05-27
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520431409
【氏名又は名称】ザルトリウス バイオアナリティカル インストゥルメンツ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リュー,ジャオピン
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/067680(WO,A2)
【文献】国際公開第2014/107480(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/106482(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/012505(WO,A2)
【文献】特表2015-514992(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0273667(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0312506(US,A1)
【文献】特表2016-503172(JP,A)
【文献】特表2007-535669(JP,A)
【文献】Valikangas et al.,A systematic evaluation of normalization methods in quantitative label-free proteomics,Briefings in Bioinformatics,2016年10月02日,19,P1-11
【文献】Ara et al.,Interleukin-6 in the Bone Marrow Microenvironment Promotes the Growth and Survial of Neuroblastoma Cells,Cancer Res,2009年01月01日,P329-337
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 -33/98
C12Q 1/00 - 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的サンプル中の少なくとも1種の低濃度タンパク質及び少なくとも1種の高濃度タンパク質の濃度を決定するための方法であって、前記方法が、
(a)アッセイプレート中の複数のサンプルウェルにおいて、(i)第1の捕捉試薬及び(ii)生物学的サンプルをインキュベートすることであって、前記第1の捕捉試薬が表面に結合した第1の結合分子を含み、前記第1の結合分子が前記少なくとも1種の低濃度タンパク質に選択的に結合し、前記インキュベートすることが、前記生物学的サンプル中の前記少なくとも1種の低濃度タンパク質の前記第1の結合分子への結合を促進して、前記サンプルウェルの各々において第1の結合混合物を生成する時間及び条件下であり、各サンプルウェルが第1のサンプルウェルの容積を有する、インキュベートすることと、
(b)前記サンプルウェルの各々において、前記第1の結合混合物を第2の捕捉試薬と混合することであって、前記第2の捕捉試薬が表面に結合した第2の結合分子を含み、前記第2の結合分子が前記少なくとも1種の高濃度タンパク質に選択的に結合し、前記混合することが、前記生物学的サンプル中の前記少なくとも1種の高濃度タンパク質の前記第2の結合分子への結合を促進して、前記サンプルウェルの各々において第2の結合混合物を生成する時間及び条件下であり、前記混合することが、各サンプルウェルの容積を増加させて、前記第1のサンプルウェルの容積よりも少なくとも10倍大きい第2のサンプルウェルの容積を生成し、前記少なくとも1種の高濃度タンパク質が、前記少なくとも1種の低濃度タンパク質の予想濃度よりも、少なくとも10倍高い濃度で前記生物学的サンプル中に存在すると予想される、混合することと、
(c)前記生物学的サンプル中の前記少なくとも1種の低濃度タンパク質及び前記少なくとも1種の高濃度タンパク質の濃度を決定することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記アッセイプレートが2つ以上の対照ウェルを含み、前記方法が、
(d)前記2つ以上の対照ウェル中で、(i)前記第1の捕捉試薬ならびに(ii)既知量の前記少なくとも1種の低濃度タンパク質及び前記少なくとも1種の高濃度タンパク質を含むタンパク質標準をインキュベートすることであって、前記インキュベートすることが、前記タンパク質標準中の前記低濃度タンパク質の前記第1の結合分子への結合を促進して、前記対照ウェルの各々において第1の対照結合混合物を生成する時間及び条件下であり、各対照ウェルは第1の対照ウェルの容積を有する、インキュベートすることと、
(e)前記2つ以上の対照ウェルの各々において、前記タンパク質標準中の前記高濃度タンパク質の前記第2の結合分子への結合を促進して、前記対照ウェルの各々において第2の対照結合混合物を生成する時間及び条件下で前記第1の対照結合混合物を前記第2の捕捉試薬とインキュベートすることであって、前記混合することが、各対照ウェルの容積を増加させて、前記第1の対照ウェルの容積より少なくとも10倍大きい第2の対照ウェルの容積を生成する、インキュベートすることと、
(f)各対照ウェルの前記第2の対照結合混合物中の前記少なくとも1種の低濃度タンパク質及び前記少なくとも1種の高濃度タンパク質の濃度を決定することと、
(g)各対照ウェルの前記第2の対照結合混合物中の前記少なくとも1種の低濃度タンパク質及び前記少なくとも1種の高濃度タンパク質の濃度に基づいて、各サンプルウェル中の前記第2の結合混合物中の前記少なくとも1種の低濃度タンパク質及び前記少なくとも1種の高濃度タンパク質の前記決定された濃度を正規化することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2つ以上の対照ウェルの異なる対照ウェルが、異なる濃度の前記低濃度タンパク質及び異なる濃度の前記高濃度タンパク質を有するタンパク質サンプルを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
各サンプルウェルの前記第2の結合混合物中の前記少なくとも1種の低濃度タンパク質及び前記少なくとも1種の高濃度タンパク質の量を決定することが、
(i)各サンプルウェルの前記第2の結合混合物を検出試薬と接触させることであって、前記検出試薬が、前記第1の捕捉試薬に存在する前記結合分子及び前記第2の捕捉試薬の前記結合分子に結合し、前記接触させることは、前記検出試薬が前記第1の捕捉試薬に存在する前記結合分子及び前記第2の捕捉試薬中の前記結合分子へ結合し、検出可能なタンパク質混合物を生成する時間及び条件下で行われる、接触させることと、
(ii)各サンプルウェル中で前記検出可能なタンパク質混合物を検出して、前記少なくとも1種の低濃度タンパク質及び前記少なくとも1種の高濃度タンパク質の量を決定することと、を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記生物学的サンプルが細胞培養培地中の細胞を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記生物学的サンプルが細胞タンパク質抽出物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の低濃度タンパク質が、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン17A(IL-17A)、可溶性Fas、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)からなる群から選択される1つ以上のタンパク質である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種の高濃度タンパク質が、インターフェロンガンマ(INF-ガンマ)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-アルファ)、グランザイムB、インターロイキン2(IL-2)、及びインターロイキン(IL-6)からなる群から選択される1つ以上のタンパク質である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1種の低濃度タンパク質がIL-17Aを含み、前記少なくとも1種の高濃度タンパク質がIFNガンマを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記生物学的サンプルが、細胞培養培地中のT細胞、又はT細胞タンパク質抽出物を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1種の低濃度タンパク質がIL-6を含み、前記少なくとも1種の高濃度タンパク質がIFNガンマ及びTNFアルファを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記生物学的サンプルが、細胞培養培地中のT細胞、又はT細胞タンパク質抽出物を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1種の低濃度タンパク質が
可溶性Fasを含み、前記少なくとも1種の高濃度タンパク質がグランザイムBを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記生物学的サンプルが、細胞培養培地中のT細胞、又はT細胞タンパク質抽出物を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1種の低濃度タンパク質がIL-4を含み、前記少なくとも1種の高濃度タンパク質がIL-2及びTNFアルファを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記生物学的サンプルが、細胞培養培地中のB細胞、又はB細胞タンパク質抽出物を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1種の低濃度タンパク質がIL-12を含み、前記少なくとも1種の高濃度タンパク質がTNFアルファを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記生物学的サンプルが、細胞培養培地中のマクロファージ、又はマクロファージタンパク質抽出物を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1種の低濃度タンパク質がGM-CSFを含み、前記少なくとも1種の高濃度タンパク質がIL-6を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記生物学的サンプルが、細胞培養培地中の骨髄細胞、又は骨髄細胞タンパク質抽出物を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の結合分子及び前記第2の結合分子が、抗体を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の捕捉試薬の前記表面がビーズを含み、前記第2の捕捉試薬の前記表面がビーズを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記混合することが、各サンプルウェルの容積を増加させて、前記第1のサンプルウェルの容積よりも10倍~100倍大きな第2のサンプルウェルの容積を生成することを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
各サンプルウェルの前記第2の結合混合物中の前記少なくとも1種の低濃度タンパク質及び前記少なくとも1種の高濃度タンパク質の量を決定することが、フローサイトメトリーによって実行される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
キットであって、
(a)請求項1~24のいずれかに記載の第1の捕捉試薬と、
(b)請求項1~24のいずれかに記載の第2の捕捉試薬と、
(c)請求項4~24のいずれか一項に記載の検出試薬と、を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2018年8月30日に出願された米国仮特許出願第62/725007号に対する優先権を主張する。
【0002】
大きく異なるレベル(すなわち、少なくとも10倍)で発現される同じサンプル中のタンパク質の濃度を決定するための現在の方法は不十分である。現在の方法では、分泌量の多いタンパク質が検出の直線範囲内にあることを確認するためにサンプル希釈を必要とするが、このような希釈により、多くの低濃度分析物の濃度が検出下限を下回る。
[先行技術文献]
[特許文献1]特表2015-514992号公報
[特許文献2]米国特許出願公開第2013/0273667号明細書
[特許文献3]米国特許出願公開第2011/0312506号明細書
【発明の概要】
【0003】
第1の態様では、本開示は、生物学的サンプル中の少なくとも1種の低濃度タンパク質及び少なくとも1種の高濃度タンパク質の濃度を決定するための方法を提供し、この方法は、
(a)アッセイプレート中の複数のサンプルウェルにおいて、(i)第1の捕捉試薬及び(ii)生物学的サンプルをインキュベートすることであって、第1の捕捉試薬は表面に結合した第1の結合分子を含み、第1の結合分子は少なくとも1種の低濃度タンパク質に選択的に結合し、インキュベートすることは、生物学的サンプル中の少なくとも1種の低濃度タンパク質の第1の結合分子への結合を促進して、サンプルウェルの各々において第1の結合混合物を生成する時間及び条件下であり、各サンプルウェルが第1のサンプルウェルの容積を有する、インキュベートすることと、
(b)サンプルウェルの各々において、第1の結合混合物を第2の捕捉試薬と混合することであって、第2の捕捉試薬は表面に結合した第2の結合分子を含み、第2の結合分子は少なくとも1種の高濃度タンパク質に選択的に結合し、混合することは、生物学的サンプル中の少なくとも1種の高濃度タンパク質の第2の結合分子への結合を促進して、サンプルウェルの各々において第2の結合混合物を生成する時間及び条件下であり、混合することは、各サンプルウェルの容積を増加させて、第1のサンプルウェルの容積よりも少なくとも10倍大きい第2のサンプルウェルの容積を生成し、少なくとも1種の高濃度タンパク質は、少なくとも1種の低濃度タンパク質の予想濃度よりも、少なくとも10倍高い濃度で生物学的サンプル中に存在すると予想される、混合することと、
(c)生物学的サンプル中の少なくとも1種の低濃度タンパク質及び少なくとも1種の高濃度タンパク質の濃度を決定することと、を含む。
【0004】
一実施形態では、アッセイプレートは、2つ以上の対照ウェルを含み、この方法は、
(d)2つ以上の対照ウェル中で、(i)第1の捕捉試薬ならびに(ii)既知量の少なくとも1種の低濃度タンパク質及び少なくとも1種の高濃度タンパク質を含むタンパク質標準をインキュベートすることであって、インキュベートすることは、タンパク質標準中の低濃度タンパク質の第1の結合分子への結合を促進して、対照ウェルの各々において第1の対照結合混合物を生成する時間及び条件下であり、各対照ウェルは第1の対照ウェルの容積を有する、インキュベートすることと、
(e)2つ以上の対照ウェルの各々において、タンパク質標準中の高濃度タンパク質の第2の結合分子への結合を促進して、対照ウェルの各々において第2の対照結合混合物を生成する時間及び条件下で第1の対照結合混合物を第2の捕捉試薬とインキュベートすることであって、混合することは、各対照ウェルの容積を増加させて、第1の対照ウェルの容積より少なくとも10倍大きい第2の対照ウェルの容積を生成する、インキュベートすることと、
(f)各対照ウェルの第2の対照結合混合物中の少なくとも1種の低濃度タンパク質及び少なくとも1種の高濃度タンパク質の濃度を決定することと、
(g)各対照ウェルの第2の対照結合混合物中の少なくとも1種の低濃度タンパク質及び少なくとも1種の高濃度タンパク質の濃度に基づいて、各サンプルウェル中の第2の結合混合物中の少なくとも1種の低濃度タンパク質及び少なくとも1種の高濃度タンパク質の決定された濃度を正規化することと、をさらに含む。
【0005】
別の実施形態では、2つ以上の対照ウェルの異なる対照ウェルは、異なる濃度の低濃度タンパク質及び異なる濃度の高濃度タンパク質を有するタンパク質サンプルを含む。
【0006】
さらなる実施形態では、各サンプルウェルの第2の結合混合物中の少なくとも1種の低濃度タンパク質及び少なくとも1種の高濃度タンパク質の量を決定することは、
(i)各サンプルウェルの第2の結合混合物を検出試薬と接触させることであって、検出試薬は第1の捕捉試薬に存在する結合分子及び第2の捕捉試薬の結合分子に結合し、接触させることは、検出試薬の第1の捕捉試薬に存在する結合分子及び第2の捕捉試薬中の結合分子への結合し、検出可能なタンパク質混合物を生成する時間及び条件下で行われる、接触させることと、
(ii)各サンプルウェル中で検出可能なタンパク質混合物を検出して、少なくとも1種の低濃度タンパク質及び少なくとも1種の高濃度タンパク質の量を決定することと、を含む。
【0007】
様々な実施形態では、生物学的サンプルは、細胞培養培地中の細胞又は細胞タンパク質抽出物を含む。別の実施形態では、少なくとも1種の低濃度タンパク質は、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン17A(IL-17A)、可溶性Fas、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)からなる群から選択される1つ以上のタンパク質である。さらなる実施形態では、少なくとも1種の高濃度タンパク質は、インターフェロンガンマ(INF-ガンマ)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-アルファ)、グランザイムB、インターロイキン2(IL-2)、及びインターロイキン(IL-6)からなる群から選択される1つ以上のタンパク質である。
【0008】
一実施形態では、少なくとも1種の低濃度タンパク質はIL-17Aを含み、少なくとも1種の高濃度タンパク質はIFNガンマを含む。別の実施形態では、生物学的サンプルは、細胞培養培地中のT細胞、又はT細胞タンパク質抽出物を含む。
【0009】
別の実施形態では、少なくとも1種の低濃度タンパク質はIL-6を含み、少なくとも1種の高濃度タンパク質はIFNガンマ及びTNFアルファを含む。さらなる実施形態では、生物学的サンプルは、細胞培養培地中のT細胞、又はT細胞タンパク質抽出物を含む。
【0010】
一実施形態では、少なくとも1種の低濃度タンパク質はsFasを含み、少なくとも1種の高濃度タンパク質はグランザイムBを含む。別の実施形態では、生物学的サンプルは、細胞培養培地中のT細胞、又はT細胞タンパク質抽出物を含む。
【0011】
一実施形態では、少なくとも1種の低濃度タンパク質はIL-4を含み、少なくとも1種の高濃度タンパク質はIL-2及びTNFアルファを含む。別の実施形態では、生物学的サンプルは、細胞培養培地中のB細胞、又はB細胞タンパク質抽出物を含む。
【0012】
一実施形態では、少なくとも1種の低濃度タンパク質はIL-12を含み、少なくとも1種の高濃度タンパク質はTNFアルファを含む。別の実施形態では、生物学的サンプルは、細胞培養培地中のマクロファージ、又はマクロファージタンパク質抽出物を含む。
【0013】
一実施形態では、少なくとも1種の低濃度タンパク質はGM-CSFを含み、少なくとも1種の高濃度タンパク質はIL-6を含む。別の実施形態では、生物学的サンプルは、細胞培養培地中の骨髄細胞、又は骨髄細胞タンパク質抽出物を含む。
【0014】
一実施形態では、第1の結合分子及び第2の結合分子は抗体を含む。別の実施形態では、第1の捕捉試薬の表面はビーズを含み、第2の捕捉試薬の表面はビーズを含む。さらなる実施形態では、混合することは、各サンプルウェルの容積を増加させて、第1のサンプルウェルの容積よりも10倍~100倍の間の大きな第2のサンプルウェルの容積を生成することを含む。別の実施形態では、各サンプルウェルの第2の結合混合物中の少なくとも1種の低濃度タンパク質及び少なくとも1種の高濃度タンパク質の量の決定は、フローサイトメトリーによって実行される。
【0015】
別の態様では、本開示は、任意の実施形態又は実施形態の組み合わせにおいて本明細書に開示されるような第1の捕捉試薬、第2の捕捉試薬、及び検出試薬を含むキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】96ウェルプレートにおける標準ウェルの左から右への配置(低濃度から高濃度へ)の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
引用されるすべての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0018】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈からそうでないことが明確に示されない限り、複数の指示対象を含む。本明細書で使用される「及び」は、そうでないことが明確に言及されない限り、「又は」と交換可能に使用される。
【0019】
本開示の任意の態様のすべての実施形態は、文脈からそうでないことが明確に示されない限り、組み合わせて使用することができる。
【0020】
文脈上明らかに別段に必要でない限り、発明を実施するための形態及び特許請求の範囲全体を通して、「comprise(備える)」、「comprising(備えている)」などの語は、排他的意味の対語としての包括的意味、又は網羅的意味で、すなわち、「including、but not limited to(含むがそれらに限定されない)」の意味で解釈される。単数又は複数を使用する単語は、それぞれ、複数及び単数も含む。さらに、「本明細書における(herein)」、「上に(above)」、及び「以下に(below)」という単語、ならびに類似の趣旨の単語は、本出願で使用される場合、全体としての本出願を指すものであり、本出願のいずれの特定の部分を指すものではない。
【0021】
本開示の実施形態の説明は、網羅的であるようにも、本開示を、開示された正確な形態に限定するようにも意図されていない。本開示の特定の実施形態及び実施例が例証目的で本明細書に記載されているが、当業者であれば認識するであろうように、様々な同等の修正が本開示の範囲内で可能である。
【0022】
第1の態様では、生物学的サンプル中の少なくとも1種の低濃度タンパク質及び少なくとも1種の高濃度タンパク質の濃度を決定するための方法が提供され、この方法は、
(a)アッセイプレート中の複数のサンプルウェルにおいて、(i)第1の捕捉試薬及び(ii)生物学的サンプルをインキュベートすることであって、第1の捕捉試薬は表面に結合した第1の結合分子を含み、第1の結合分子は少なくとも1種の低濃度タンパク質に選択的に結合し、インキュベートすることは、生物学的サンプル中の少なくとも1種の低濃度タンパク質の第1の結合分子への結合を促進して、サンプルウェルの各々において第1の結合混合物を生成する時間及び条件下であり、各サンプルウェルが第1のサンプルウェルの容積を有する、インキュベートすることと、
(b)サンプルウェルの各々において、第1の結合混合物を第2の捕捉試薬と混合することであって、第2の捕捉試薬は表面に結合した第2の結合分子を含み、第2の結合分子は少なくとも1種の高濃度タンパク質に選択的に結合し、混合することは、生物学的サンプル中の少なくとも1種の高濃度タンパク質の第2の結合分子への結合を促進して、サンプルウェルの各々において第2の結合混合物を生成する時間及び条件下であり、混合することは、各サンプルウェルの容積を増加させて、第1のサンプルウェルの容積よりも少なくとも10倍大きい第2のサンプルウェルの容積を生成し、少なくとも1種の高濃度タンパク質は、少なくとも1種の低濃度タンパク質の予想濃度よりも、少なくとも10倍高い濃度で生物学的サンプル中に存在すると予想される、混合することと、
(c)生物学的サンプル中の少なくとも1種の低濃度タンパク質及び少なくとも1種の高濃度タンパク質の濃度を決定することと、を含む。
【0023】
大きく異なるレベル(すなわち、少なくとも10倍)で発現される同じサンプル中のタンパク質の濃度を決定するための現在の方法は不十分である。本明細書に開示される方法は、以前の方法に比べて大幅な改善を提供し、追加の多重分析を可能にする。これらの方法は、単一のアッセイを使用して広い濃度範囲で分泌タンパク質を測定し、試薬の消費量を削減することでワークフローを大幅に加速することによって、使いやすさに貢献する。タンパク質の捕捉、検出、及び定量は、同じサンプルウェル中で行うことができる。
【0024】
生物学的サンプルは、低レベル及び高レベルで発現されると予想されるタンパク質を含み、少なくとも1種の高濃度タンパク質が、少なくとも1種の低濃度タンパク質の予想濃度よりも少なくとも10倍高い濃度で、生物学的サンプルに存在する(すなわち、細胞から分泌されるか、または細胞/タンパク質抽出物に存在する)と予想される。様々な実施形態では、少なくとも1種の高濃度タンパク質は、少なくとも1種の低濃度タンパク質の濃度よりも少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、225、又は250倍高い濃度で、生物学的サンプル中に存在する。少なくとも1種の低濃度タンパク質は、1種、2種、3種、4種、5種、又はそれ以上の低濃度タンパク質であり得る。同様に、少なくとも1種の高濃度タンパク質は、1種、2種、3種、4種、5種、又はそれ以上の高濃度タンパク質であり得る。少なくとも1種の低濃度タンパク質及び少なくとも1種の高濃度タンパク質は、ユーザーが濃度を決定したい低濃度タンパク質及び高濃度タンパク質についての本明細書の要件を満たす任意のタンパク質であり得る。様々な非限定的な実施形態では、少なくとも1種の低濃度タンパク質は、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン17A(IL-17A)、可溶性Fas、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)からなる群から選択される1つ以上のタンパク質である。様々なさらなる実施形態では、少なくとも1種の高濃度タンパク質は、インターフェロンガンマ(INF-ガンマ)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-アルファ)、グランザイムB、インターロイキン2(IL-2)、及びインターロイキン(IL-6)からなる群から選択される1つ以上のタンパク質である。
【0025】
単離された細胞(B細胞、T細胞、マクロファージ、及び骨髄細胞を含むがこれらに限定されない)、細胞上清、その細胞抽出物、血清、血清抽出物、生体液(血液を含むがこれに限定されない)、及び生体液抽出物(血液抽出物を含むがこれに限定されない)を含むがこれらに限定されない、低濃度と高濃度の両方のタンパク質(本明細書で定義される)を発現する任意の適切な生物学的サンプルを使用することができる。1つの特定の実施形態では、生物学的サンプルは、細胞培養培地中の細胞を含む。別の特定の実施形態では、生物学的サンプルは、細胞タンパク質抽出物を含む。
【0026】
組み合わせるか、又は分離したりすることができる様々な特定の実施形態では、
(a)少なくとも1種の低濃度タンパク質がIL-17Aを含み、少なくとも1種の高濃度タンパク質がIFNガンマを含み、そのような一実施形態では、生物学的サンプルは、細胞培養培地中のT細胞、又はT細胞タンパク質抽出物を含み、
(b)少なくとも1種の低濃度タンパク質はIL-6を含み、少なくとも1種の高濃度タンパク質はIFNガンマ及びTNFアルファを含み、そのような一実施形態では、生物学的サンプルは、細胞培養培地中のT細胞、又はT細胞タンパク質抽出物を含み、
(c)少なくとも1種の低濃度タンパク質はsFasを含み、少なくとも1種の高濃度タンパク質はグランザイムBを含み、そのような一実施形態では、生物学的サンプルは、細胞培養培地中のT細胞、又はT細胞タンパク質抽出物を含み
(d)少なくとも1種の低濃度タンパク質はIL-4を含み、少なくとも1種の高濃度タンパク質はIL-2及びTNFアルファを含み、そのような一実施形態では、生物学的サンプルは、細胞培養培地中のB細胞、又はB細胞タンパク質抽出物を含み、
(e)少なくとも1種の低濃度タンパク質はIL-12を含み、少なくとも1種の高濃度タンパク質はTNFアルファを含み、そのような一実施形態では、生物学的サンプルは、細胞培養培地中のマクロファージ、又はマクロファージタンパク質抽出物を含み、
(f)少なくとも1種の低濃度タンパク質はGM-CSFを含み、少なくとも1種の高濃度タンパク質はIL-6を含み、そのような一実施形態では、生物学的サンプルは、細胞培養培地中の骨髄細胞、又は骨髄細胞タンパク質抽出物を含む。
【0027】
生物学的サンプルは、ヒト、げっ歯類(すなわち、マウス、ラット、ハムスターなど)、ウサギ、ブタ、ヤギ、サル、ヒツジ、ウマ、ウシなどを含むがこれらに限定されない任意の起源のものであり得る。1つの特定の実施形態では、生物学的サンプルはヒト由来である。
【0028】
この方法は、アッセイプレート(マイクロタイタープレートを含むがこれに限定されない)上の複数のサンプルウェルで実施される。したがって、これらの方法は、ユーザーによって適切と見なされるように、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、24、30、36、40、48、50、60、70、75、80、90、96、又は以上のウェル中にて、実行することができる。
【0029】
この方法は、捕捉試薬を使用して、生物学的サンプル中に存在する低濃度タンパク質(第1の捕捉試薬)又は高濃度タンパク質(第2の捕捉試薬)に結合させる。捕捉試薬は、少なくとも1種の低濃度タンパク質(第1の結合分子)又は少なくとも1種の高濃度タンパク質(第2の結合分子)に選択的に結合する結合分子を含む。所与の生物学的サンプルから2つの異なる低濃度タンパク質を測定する場合、第1の結合分子の2つの異なる集団(すなわち、低濃度タンパク質1の第1の結合分子及び低濃度タンパク質2の第1の結合分子)が存在することが理解される。同様に、所与の生物学的サンプルから2つの異なる高濃度タンパク質を測定する場合、第2の結合分子の2つの異なる集団(すなわち、高濃度タンパク質1の第2の結合分子及び高濃度タンパク質2の第2の結合分子)が存在する。低濃度タンパク質又は高濃度タンパク質に選択的に結合する任意の適切な結合分子を使用することができる。様々な非限定的な実施形態では、結合分子は、抗体、アフィマー、アプタマー、又は他のタンパク質/糖/脂質又は組み合わせ分子を含む。1つの特定の実施形態では、第1及び第2の結合分子は、低濃度タンパク質又は高濃度タンパク質に選択的に結合する抗体を含む。このような選択的抗体は、BD Biosciences、Sigma Chemical Company、Millipore、ThermoFisher Scientificを含む多くのベンダーから市販されている。
【0030】
第1及び第2の捕捉試薬中の第1及び第2の結合分子は、表面に結合している。ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン支持体、磁性又は常磁性ビーズ、アガロースビーズ、及びNHS活性化セファロース又はCNBr活性化セファロースなどの濾過媒体を含むがこれらに限定されない任意の適切な表面を使用することができる。1つの特定の実施形態では、捕捉試薬中の結合分子は、磁性又は常磁性ビーズ、又は非磁性ビーズなどのビーズに結合される。一実施形態では、ビーズは、ポリスチレンビーズを含むがこれに限定されない非磁性ビーズである。そのようなポリスチレンビーズは、直径が5~10、6~9、7~8、又は約7μmの間を含むがこれらに限定されない、任意の適切なサイズであり得る。磁性又は常磁性の捕捉ビーズは、通常、直径が約1mm以下であり、沈降や目詰まりを防ぐために十分なほど小さい。適切なビーズは、様々なソースから入手できる(例えば、ノルウェーのInvitrogen DynalのDynabeads My-One(商標)又はMerck,FranceからのEstapore)。ビーズは、抗体又は抗原の受動的又は能動的結合(coupling)のために、結合(binding)分子で事前に結合又はコーティングすることができる。他の実施形態では、捕捉ビーズはアガロースビーズであり得る。通常、アガロースビーズの直径は約20μm~350μmである。別の特定の実施形態では、捕捉試薬中の結合分子は、マイクロタイタープレートのウェル内の印刷されたアレイに存在する。
【0031】
任意の適切な密度の捕捉試薬をアッセイで使用することができる。1つの非限定的な実施形態では、低濃度又は高濃度のタンパク質に特異的な捕捉試薬の各集団は、1ミリリットルあたり約1万~約1億の捕捉試薬の密度で存在する。様々なさらなる実施形態では、捕捉試薬の各集団は、1ミリリットルあたり、約10万~約5000万の間、約25万~約2500万の間、約50万~約1000万の間、又は約75万~約500万の間の捕捉試薬の密度で存在する。
【0032】
インキュベーション、混合、及び接触の工程は、記載された結合イベントを促進する時間及び条件下で実行される。そのようなインキュベーション、混合、及び接触を促進するための任意の適切な条件を使用することができ、本明細書の教示に基づいて、温度、インキュベーションの長さ、撹拌又は他の混合力の適用、使用する媒体、組み込むための洗浄工程などの適切な条件を決定することは当業者のレベル内である。非限定的な実施形態は、本明細書に詳細に記載されている。
【0033】
第1の結合分子は、生物学的サンプル中の少なくとも1種の低濃度タンパク質に結合して、サンプルウェルの各々において第1の結合混合物を生成し、各サンプルウェルは、第1のサンプルウェルの容積を有する。続いて、同じサンプルウェルにおいて、第1の結合混合物が第2の捕捉試薬と混合され、第2の結合分子が生物学的サンプル中の少なくとも1種の高濃度タンパク質に結合して、サンプルウェルの各々において第2の結合混合物を生成する。混合することは、各サンプルウェルの容積(すなわち、第1のサンプルウェルの容量)を増加させて、第1のサンプルウェルの容積より少なくとも10倍大きい第2のサンプルウェルの容積を生成することを含む。低濃度タンパク質の捕捉後のこの希釈工程により、生物学的サンプル中の少なくとも1種の高濃度タンパク質の濃度を決定するための大幅に改善されたダイナミックレンジが可能になる。様々な実施形態では、第2のサンプルウェルの容積の増加は、本明細書の教示に基づいてユーザーが適切とみなすような、第1のサンプルウェルの容積と比較して、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、125、150、200、又は250倍であり得る。
【0034】
次に、この方法は、生物学的サンプル中の少なくとも1種の低濃度タンパク質及び少なくとも1種の高濃度タンパク質の濃度を決定することを含む。一実施形態では、決定する工程は、
(d)各サンプルウェルの第2の結合混合物を検出試薬と接触させることであって、検出試薬は第1の捕捉試薬に存在する結合分子及び第2の捕捉試薬の結合分子に結合し、接触させることは、検出試薬の第1の捕捉試薬に存在する結合分子及び第2の捕捉試薬中の結合分子へ結合し、検出可能なタンパク質混合物を生成する時間及び条件下で行われる、接触させることと、
(e)各サンプルウェル中で検出可能なタンパク質混合物を検出して、少なくとも1種の低濃度タンパク質及び少なくとも1種の高濃度タンパク質の量を決定することと、を含む。
【0035】
使用される検出可能な標識に応じて、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、フローサイトメトリー、プレートリーダー、メソスケールディスカバリープラットフォーム、及び蛍光顕微鏡法を含むがこれらに限定されない、検出可能なタンパク質混合物を検出するための任意の適切な技術を使用することができる。蛍光標識、ハプテン、比色標識、様々な放射性標識、酵素、補欠分子族、蛍光マーカー、発光マーカー、生物発光マーカー、シリコン、ガラス、又は金属粒子、タンパク質-タンパク質結合ペア、タンパク質-抗体結合ペアなどの標識粒子を含むがこれらに限定されない任意の適切な検出可能な標識を使用することができる。蛍光標識の例には、黄色蛍光タンパク質(YFP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、シアニン、ダンシルクロリド、フィコシアニン、アロフィコシアニン(APC)、ブリリアントバイオレット染料、ブリリアント紫外線染料、及びフィコエリトリンが挙げられるがこれらに限定されない。生物発光マーカーの例には、ルシフェラーゼ(例えば、細菌、ホタル、コメツキムシなど)、ルシフェリン、エクオリンなどが含まれるが、これらに限定されない。視覚的に検出可能なシグナルを有する酵素系の例には、ガラクトシダーゼ、グルコリニダーゼ、ホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、コリンエステラーゼなどが含まれるが、これらに限定されない。検出可能な標識は、様々なソースから市販されている。特定の実施形態では、検出標識は、フルオロフォア又は蛍光タンパク質を含む。
【0036】
1つの特定の実施形態では、検出は、関連する結合複合体を流体の流れに懸濁すること、それらを電子検出装置に通すことによるフローサイトメトリーを含み、1秒あたりの最大数万の複合体の物理的及び化学的特性の同時マルチパラメトリック分析を可能にする。
【0037】
第1及び第2の結合分子が抗体を含む一実施形態では、検出試薬は、第1及び第2の結合分子抗体に結合する能力を保持している、検出可能に標識された標的二次抗体又はそのフラグメントを含み得る。様々な実施形態では、検出試薬は、評価される低濃度タンパク質及び高濃度タンパク質の数に応じて、2個、3個、4個、5個、又はそれ以上、別個に検出可能に標識された二次抗体又はそのフラグメントを含む。このような二次抗体は、BD Biosciences、Sigma Chemical Company、Millipore、及びThermoFisher Scientificなどの多くのベンダーから市販されている。
【0038】
一実施形態では、アッセイプレートが2つ以上の対照ウェルを含み、この方法は、
(d)2つ以上の対照ウェル中で、(i)第1の捕捉試薬ならびに(ii)既知量の少なくとも1種の低濃度タンパク質及び少なくとも1種の高濃度タンパク質を含むタンパク質標準をインキュベートすることであって、インキュベートすることは、タンパク質標準中の低濃度タンパク質の第1の結合分子への結合を促進して、各対照ウェルにおいて第1の対照結合混合物を生成する時間及び条件下であり、各対照ウェルは第1の対照ウェルの容積を有する、インキュベートすることと、
(e)2つ以上の各対照ウェル中で、タンパク質標準中の高濃度タンパク質の第2の結合分子への結合を促進して、各対照ウェルにおける第2の対照結合混合物を生成する時間及び条件下で第1の対照結合混合物を第2の捕捉試薬とインキュベートすることであって、混合することは、各対照ウェルの容積を増加させて、第1の対照ウェルの容積より少なくとも10倍大きい第2の対照ウェルの容積を生成する、インキュベートすることと、
(f)各対照ウェルの第2の対照結合混合物中の少なくとも1種の低濃度タンパク質及び少なくとも1種の高濃度タンパク質の濃度を決定することと、
(g)各対照ウェルの第2の対照結合混合物中の少なくとも1種の低濃度タンパク質及び少なくとも1種の高濃度タンパク質に基づいて、各サンプルウェル中の第2の結合混合物中の少なくとも1種の低濃度タンパク質及び少なくとも1種の高濃度タンパク質の決定された濃度を正規化することと、をさらに含む。
【0039】
工程(d)-(f)は上記の工程(a)-(c)に対応し、1つ以上(2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上)の対照ウェルでのみ実行され、生物学的サンプルではなく、アッセイされる低濃度及び高濃度のタンパク質のためにタンパク質標準を使用する。次に、正規化工程を追加して、第2の対照結合混合物中の少なくとも1種の低濃度タンパク質及び少なくとも1種の高濃度タンパク質の濃度に基づいて、各サンプルウェル中の第2の結合混合物中の少なくとも1種の低濃度タンパク質及び少なくとも1種の高濃度タンパク質の決定された濃度を正規化する。本明細書に詳細に開示されるものを含む、任意の適切な正規化プロセスを使用することができる。一実施形態では、2つ以上の対照ウェルの異なる対照ウェルは、異なる濃度の低濃度タンパク質及び異なる濃度の高濃度タンパク質を有するタンパク質サンプルを含む。一実施形態では、正規化は、タンパク質標準中の各低濃度タンパク質及び高濃度タンパク質の標準曲線を生成することを含み、各生物学的サンプル中の低濃度タンパク質及び高濃度タンパク質の濃度は、各低濃度タンパク質及び高濃度タンパク質の標準曲線を参照することによって測定される。
【0040】
他の実施形態では、これらの方法は、追加の細胞特徴付け及び機能アッセイとともに多重化させることができる。様々な非限定的な実施形態では、そのような追加の細胞特徴付け及び機能アッセイは、T細胞の同一性及び特徴付け、細胞生存率、アポトーシス、細胞数、及び細胞表面バイオマーカーアッセイを含むが、これらに限定されない。例えば、サンプルウェルは、検出可能な細胞生存率色素、細胞表面バイオマーカー、又はアポトーシスのマーカーと接触させることができる。例えば、T細胞とB細胞の表面マーカーは、分化プロセスにおけるそれらの系統と段階を同定する。
【0041】
別の態様では、以下を含むキットが開示されている。
(a)本明細書の任意の実施形態又は実施形態の組み合わせに記載されるような第1の捕捉試薬;
(b)本明細書の任意の実施形態又は実施形態の組み合わせに記載される第2の捕捉試薬;及び
(c)本明細書の任意の実施形態又は実施形態の組み合わせに記載されるような検出試薬。
【0042】
キットは、タンパク質標準、検出可能な標識、アッセイプレート、緩衝液などを含むがこれらに限定されない、本明細書に開示される任意の他の試薬又は方法を実行するための追加の有用なツールをさらに含み得る。
【0043】
本開示の実施形態の説明は、網羅的であるようにも、又は本開示を、開示された正確な形態に限定するようにも意図されていない。本開示の特定の実施形態及び実施例が例証目的で本明細書に記載されているが、当業者であれば認識するであろうように、様々な同等の修正が本開示の範囲内で可能である。
【実施例】
【0044】
タンパク質標準
タンパク質標準(IFNg、TNFa、及びIL-4)を単一の1.5ml遠心分離管に混合して、タンパク質標準を生成した。200μLの新鮮な培養培地(VWRからの10%ウシ胎児血清を含むRPMI 1640)をタンパク質標準とともにチューブに加え、混合した。タンパク質標準の細胞培養培地への連続1:3希釈液を調製した。
【0045】
捕捉試薬の調製
第1の捕捉試薬(低濃度タンパク質)24uLのIL-4捕捉ビーズ(抗IL-4抗体と共有結合したポリスチレンビーズ)(QBeads(商標)キット(IntelliCyt))を1.2mlの緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水中0.1%ウシ血清アルブミン)で希釈及び混合した。
第2の捕捉試薬(高濃度タンパク質)24uLのIFNγ捕捉ビーズ(抗IFNγ抗体と共有結合したポリスチレンビーズ)(QBeads(商標)キット(IntelliCyt))及び24uLのTNFα捕捉ビーズ(抗TNFα抗体と共有結合したポリスチレンビーズ)(QBeads(商標)キット(IntelliCyt))を1.2mlの緩衝液で希釈し、混合した。次に、混合物を17倍量の新鮮な細胞培養培地(VWRからの10%ウシ胎児血清を含むRPMI 1640)で希釈した。
【0046】
IL-4捕捉ビーズ混合物をボルテックスしてリザーバーに移した。各ウェルの底に、10μLのIL-4捕捉ビーズミックス(約12万捕捉ビーズ/mL)をアッセイプレートに添加した。ビーズが沈降することを防ぐために、ビーズをプレートに移す間、ビーズをリザーバー内で時折撹拌した。様々な濃度の10μLサイトカインタンパク質標準を、標準用に指定されたアッセイプレートの各ウェル(対照ウェル)に添加した(例えば、以下の
図1を参照)。
【0047】
プレートを300gで5秒間回転させ、すべてのサンプルがウェルの底にあり、ウェルの側面に付着していないことを確認した。次に、プレートを2,000rpmで20秒間混合し(iQue(商標)プレートシェーカー、Intellicyt))、徹底的に混合した。蓋をプレート上に置き、光を当てずにプレートを室温にて60分間インキュベートした。
【0048】
事前希釈し事前混合したIFNγ/TNFα捕捉ビーズをボルテックスして混合し、180μLの懸濁液(13000ビーズ/mL)を各サンプルウェルに添加した。ビーズが沈降するのを防ぐために、リザーバーからプレートへのビーズの移動中にビーズを時折撹拌した。蓋をプレート上に置き、光を当てずにプレートを室温にて60分間インキュベートした。サンプルウェル内の液体の量のため、この工程ではプレートの振とうは行われなかった。
【0049】
インキュベーション後、プレートを300gで5分間回転させた。製造業者の推奨に従って、上澄みをBioTek(商標)プレートウォッシャー(ELx405モデル)で吸引した。プレート中の残渣の液体中のサンプルは、60秒間、3000rpm、iQue(商標)プレートシェーカー上で撹拌した。
【0050】
10μLのIL-4/IFNg/TNFa検出試薬(様々なサプライヤーから入手可能なサイトカイン検出カクテル)を各ウェルに添加した。検出試薬は、第1の捕捉試薬に存在する結合分子に対するフィコエリシン(PE)結合体化抗体と(サンドイッチイムノアッセイ)、第2の捕捉試薬に存在する結合分子に対するPE結合抗体を含む。プレートを300gで5秒間回転させ、すべてのサンプルがウェルの底にあり、ウェルの側面に付着していないことを確認した。次に、iQue(商標)プレートシェーカーを使用してプレートを2,000rpmで20秒間混合し、完全に混合したことを確認した。アッセイプレートを蓋で覆い、光を当てずに室温で120分間インキュベートした。
【0051】
100μLの洗浄緩衝液を各ウェルに加えた。アッセイプレートを300gで5分間回転させた。製造業者の推奨に従って、上澄みをBioTek(商標)プレートウォッシャー(ELx405モデル)で吸引した。残留液中のサンプルは、のiQue(商標)プレートシェーカーを用いて60秒間3000rpmで十分に撹拌した。20μLの洗浄緩衝液を各ウェルに加え、プレートをベンチで軽くたたいて、すべてのサンプルがウェルの底にあり、ウェルの側面に付着していないことを確認した。
【0052】
サンプル取得は、iQue(商標)Screener PLUS(VBR)システム(Intellicyt)上で実施し、データはIntelliCytのForeCyt(商標)ソフトウェアによって分析した。
【0053】
結果
結果を
図2と
図3に示し、検量線の直線範囲と、入力標準濃度と出力蛍光シグナルユニットの基本的な分布を示す。IFNgの場合、線形範囲は91~22,204pg/mLである(以前の方法を使用した場合の8~1628pg/mlと比較して)。TNFaの場合、線形範囲は181~50,000pg/mLである(以前の方法を使用した場合の12~5831pg/mlと比較して)。IL-4の場合、線形範囲は8~6,759pg/mLである。以前の方法と比較して、IFNgとTNFaの線形範囲は大幅に高い方にシフトしており、これは、サンプル中の高度に分泌されたIFNg及びTNFaタンパク質の定量を可能にする。IL-4の線形範囲は、同じサンプル中で弱く分泌されるIL-4タンパク質を8pg/mLまで定量することを可能にする。これらすべての結果は、本明細書に開示される方法が、同じアッセイにおいて高濃度の分泌タンパク質及び低濃度の分泌タンパク質を同時に検出及び定量することにおいて有意な改善を提供することを示唆している。